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特表2022-540698放射線療法の副作用のエコバイオロジカル治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】放射線療法の副作用のエコバイオロジカル治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/718 20060101AFI20220909BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/734 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/736 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/719 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20220909BHJP
   A61K 31/726 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 31/731 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220909BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220909BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20220909BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20220909BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20220909BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220909BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
A61K31/718
A61K33/00
A61K31/734
A61K31/728
A61K31/736
A61K31/719
A61K33/243
A61K31/726
A61K31/727
A61K31/737
A61K31/731
A61P17/02
A61P17/00
A61P17/00 101
A61L15/28 100
A61L15/18 100
A61L15/60 100
A61L15/44 100
A61K9/06
A61K47/02
A61K47/36
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502974
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020070323
(87)【国際公開番号】W WO2021009360
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】1908136
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521136541
【氏名又は名称】バイオヌークレアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アン・アタラン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ノエル・トレル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD21
4C076EE30
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C081AA02
4C081CD031
4C081CD041
4C081CD051
4C081CD061
4C081CD071
4C081CD081
4C081CG07
4C081CG08
4C081DA02
4C081DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086EA24
4C086EA25
4C086EA26
4C086EA27
4C086HA05
4C086HA12
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、皮膚の病変及び/又はただれの発症及び悪化に関与する様々な生理病理学的パラメータを中和することができる生物学的及び生体力学的活性を作動する三次元二元重合体マトリックスであって:- 架橋された非硫酸化多糖に非共有結合した第1のコロイド(Col-1)を含む第1の重合体網目構造;及び- 硫酸化多糖に共有結合又は非共有結合した第2のコロイド(Col-2)を含む第2の重合体網目構造を組み合わせた、三次元二元重合体マトリックスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の病変及び/又はただれの発症及び悪化に関与する様々な生理病理学的パラメータを中和することができる、生体力学的活性を示す三次元二元重合体マトリックスであって、
- 架橋された非硫酸化多糖に非共有結合した第1のコロイド(Col-1)を含む第1の重合体網目構造、及び
- 硫酸化多糖と共有結合又は非共有結合した第2のコロイド(Col-2)を含む第2の架橋された重合体網目構造
を組み合わせた、三次元二元重合体マトリックス。
【請求項2】
Col-1コロイドが二酸化セリウムコロイドであり、非硫酸化多糖がアルギン酸、ヒアルロン酸、グアーガム、キサンタンガム、アカシアガム、プルラン、デキストラン、及びそれらの混合物を含む群から選択され、好ましくはアルギン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項3】
Col-2コロイドが白金コロイドであり、硫酸化多糖が、INCI名がaphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)である化合物、グリコサミノグリカン硫酸塩、例えば、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸;グルカン、フカン、フコイダン、カラギーナン、ウルバン、ポリ硫酸ペントサン、及びそれらの混合物を含む群から選択され、好ましくはスイゼンジノリ多糖体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマトリックス。
【請求項4】
第2のコロイド(Col-2)が硫酸化多糖に非共有結合していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項5】
皮膚のただれを予防及び/又は治癒する包帯剤としての使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項6】
病変が乾性又は滲出性であることを特徴とする、請求項5に記載の使用のためのマトリックス。
【請求項7】
放射線皮膚炎を予防及び/又は治癒する包帯剤としての使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項8】
放射線皮膚炎が乾性から滲出性のグレードであることを特徴とする、請求項7に記載の使用のための重合体マトリックス。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元二元重合体マトリックスを製造する方法であって、マトリックスが、
- 非硫酸化多糖と非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及びコロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと表面で共有結合したCol-2コロイドを含む溶液(A)、並びに
- 酸性化剤及び硫酸化多糖を含む溶液(B)
を混合することにより得られることを特徴とする、方法。
【請求項10】
- Col-1コロイドが二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖がアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源が、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドが、酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくは酸化状態ゼロのコアを持つ白金のコロイドであり、コロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと表面で共有結合しており、
- 酸性化剤がグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖がINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物である
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2つの溶液(A)及び(B)を溶液(A)が4/5で溶液(B)が1/5の割合で混合することを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項13】
2つの溶液が、ボトル、噴霧器、シリンジ、又は単回用量バイアル中に詰められることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
2つの溶液が二区画容器中に詰められることを特徴とする、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
- 溶液(A)がpH7であり、非硫酸化多糖に非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及びコロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと共有結合したCol-2コロイドを含み、
- 溶液(B)がpH3であり、酸性化剤及び硫酸化多糖を含む
ことを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
- Col-1コロイドが二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖がアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源が、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドが、酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金であり、コロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと共有結合しており、
- 酸性化剤がグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖がINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物である
ことを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の病変及び/又はただれ、特に放射線皮膚炎の発症及び悪化に関与する様々な生理病理学的パラメータを中和することができる生体力学的活性を作動する三次元二元重合体マトリックス(three-dimensional bipolymeric matrix)に関する。
【背景技術】
【0002】
国際がん研究機関が185カ国で収集されたデータをもとに発表した最新の推計値によると、2018年に世界で新たにがんと診断された症例は1,810万例であった。
【0003】
フランスでは、全体的な新規がん症例数は30年間毎年増加している。これは主に、人口の高齢化と診断方法の向上によるものである。アメリカ国立がん研究所によると、2017年にはフランス首都圏では、がんの新規症例は推定40万例であった。
【0004】
がんはフランス及び世界中で依然として大きな公衆衛生上の問題であるということになる。
【0005】
腫瘍の性質、その分子プロファイル及び/又はその位置に依存して、多数の治療が疾患の進行を抑える又は止めるために実施される。単独で行われようと、集学的ケアの枠組みの中で組み合わせて行われようと、手術、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、標的療法、又は化学療法が古典的に区別される。
【0006】
これらの治療は特に身体に攻撃的であり、通常は副作用を伴う。
【0007】
特に、放射線療法(又は照射法)は、がん細胞を破壊又は損傷するために高エネルギー光線の使用を含む。電離放射線の主な生物学的効果は、直接的に、又はフリーラジカルの形成によって腫瘍細胞中のDNA鎖を破壊し、これらの細胞を死滅させることである。
【0008】
しかしながら、電離放射線への曝露は、放射線皮膚炎等の副作用の発症を誘導する。これらは皮膚の病変であり、その重症度は国際的な分類である「有害事象共通用語規準」によってグレードで分類される:
- グレード1:放射線療法期間後数日から最長で3週間以内に、特に明るいスキンフォトタイプの対象に生じる紅斑。疼きの感覚及び浮腫がしばしば伴う。頻繁に発生するが、治療を中止すると、皮膚付属器(毛包、汗腺、又は皮脂腺)の損傷によって引き起こされる落屑の段階及びしばしば一過性の脱毛の後に急速に退行する。
- グレード2:中強度の紅斑及び浮腫、照射箇所に限定された滲出性の斑。
- グレード3:照射法を進めていくと通常は紅斑の後に続く滲出性放射線皮膚炎(exudative radiodermatitis)。照射法から数週間後の、真皮がむき出しになったままの剥離及び融合性潰瘍を特徴とする。上皮化(又は上皮の再構築)が、病変部位に応じて数週間~数ヶ月をかけて起こり、その結果、色素異常症及び脱毛症が生じ、ほとんどの場合永久的に続く。放射線療法は、治癒するための時間を与えるように通常中止しなければならない。
- グレード4:現在のところ、非常に広範囲の表面又は浸潤した腫瘍(非常に短時間に大量の照射)の場合を除き、例外的に発生する過剰照射の証拠となる急性放射線壊死。数日以内に非常に痛みの強い炎症性の斑として現れ、壊死及び出血現象が進行して深部壊死となり、筋肉、腱、及び骨が露出しうる。
【0009】
したがって、単なる乾性紅斑(erythema sicca)から組織壊死までの範囲にわたって、多かれ少なかれ滲出性の中間段階を経て、放射線皮膚炎は特定の治療プロトコルの対象とはならない。放射線皮膚炎は非常に多様であるが、このタイプの皮膚の病変を治療するのに一般に使用される治療法は、火傷の際に使用される治療法(皮膚軟化剤、皮膚コルチコイド、ワセリンガーゼ、ハイドロゲル、ハイドロコロイド、又は炭若しくは銀でコーティングした包帯剤等の包帯剤)と同様である。
【0010】
最良の治療の選択は治療する病変のタイプ、すなわち、乾性、滲出、重度の滲出性、感染している等に直接的に依存する。例えば、ハイドロゲルタイプの包帯剤は、乾性病変を湿潤環境に保ちながらその治癒を促進しやすい。一方で、滲出性放射線皮膚炎に対してそれを適用すると、浸軟の現象を引き起こしやすく、これは次いで治癒を抑制し、感染又は重複感染を引き起こす場合がある。
【0011】
より一般的には、皮膚は放射線療法による電離放射線以外の手段でも損傷を受ける可能性がある。
【0012】
皮膚のただれ又は病変は組織の連続性の途切れである。皮膚又は粘膜が壊されたり、切断されたり、又は引き裂かれたりする場合、創傷がある。ただれの重症度は、その位置、外見、及び原因(火傷、咬傷、切り傷等)により特徴づけられる。
【0013】
皮膚の病変は、水分補給/栄養補給の必要性及び閉塞の必要性等の生物学的及び臨床的特徴に基づいて分類することができる。病変は3つのファミリーに分類することが可能である:
- 滲出病変:これらは空気を通過させるために非閉塞性のケアで乾燥させる必要がある浸軟を受けやすい病変である。これらには、例えば、滲出病変又は水疱を伴うおむつかぶれ、ひだの浸軟、及び水痘が含まれる。
- タイプI非滲出病変:これらは半閉塞性の通気性のあるケアで水分補給が必要である表在性から中程度の大きさの病変である。これらには、例えば、縫合、切り傷、ただれが乾いた後の日常生活での擦り傷、治癒段階の水痘、美容行為(ピーリング、レーザー、永久脱毛、刺青、刺青除去等)後の病変、又は非滲出おむつかぶれが含まれる。
- タイプII非滲出病変:これらは外部環境に対するバリアを作るための閉塞性ケアで脂質を補充する栄養補給が必要である中程度から大きな病変である。これらには、例えば、あかぎれの皮膚、ただれ、歯髄炎、火傷、擦過傷が含まれる。
【0014】
皮膚は外部環境から身体を隔離し保護する。ただれが生じると、身体は自然な生物学的現象である治癒を誘発する。これは、身体が起こりうる出血を止め、創傷を保護し、浄化し、塞がなければならない複雑な修復プロセスである。損傷を受けた組織は、可能な限り初めの組織に近い状態に再構築されなければならない。
【0015】
病変の自然な治癒プロセスは生化学的、生物学的、及び細胞学的な段階の連続であり、これらの全てが治癒に必須である。
【0016】
治癒は、特定の細胞活性を特徴とする3つの連続する段階を含む現象として定義されうる。これらの段階は、互いに重なり合う正確な時間的順序に従って修復プロセスを進める。
【0017】
段階1 - 炎症又はデブリドマンの段階:病変が形成された直後、局所の血管が拡張し、血管透過性の増加と血漿の漏出を引き起こす。この血管拡張に続いて直ぐに血管収縮が起こり、その後、特に血小板の働きのために病変の底に血栓が形成され、出血が抑えられる。その後、走化性物質に引き寄せられて、炎症誘発性細胞(白血球及びマクロファージ)が周囲の組織から到着して、死んだ組織、病原菌、及び細菌を除去して病変を浄化する。この段階は12時間~24時間の間に始まり、赤み(紅斑)、腫れ(浮腫)、痛み、及び局所的な温度上昇を特徴とする炎症反応を引き起こす。
【0018】
必要ではあるが、この炎症状態が3日より長く続かないことが重要であり、さもなければその後の細胞増殖及び新たな上皮形成(又は上皮化)の段階が遅れる可能性がある。しかし、いくつかの場合では、活性窒素種(RNS)及び活性酸素種(ROS)等のフリーラジカルの存在によって、炎症が刺激及び持続されうる。これらの化合物は病変で新たに合成された生体分子の酸化を自然に誘導するため、細胞再生及び治癒のプロセスを遅らせることになる。
【0019】
段階2:出芽又は肉芽組織形成の段階:この段階の間、結合組織細胞である線維芽細胞は、マクロファージによる刺激及び動員後に大量に出現する。線維芽細胞は多量のコラーゲン、エラスチン、及び真皮の細胞マトリックスの他の要素を産生する。同時に、内皮細胞が損傷を受けた毛細血管の末端で芽を形成する。この過剰成長は、肉芽組織が物質の損失を補い、線維芽細胞が病変の端に達すると停止する。
【0020】
ステップ3:表皮化又は上皮化の段階:25日目又は30日目頃に、一次瘢痕(primary scar)が形成すると、コラーゲンが著しく劣化し始め、一次瘢痕のリモデリングが開始される。この段階の間、筋線維芽細胞の働き、及び表皮と真皮の間の接合部の強化によって病変の端はゆっくりと収縮し続ける。その結果、少しずつ瘢痕がより柔軟で、より滑らかで、より柔らかい感触になる。このリモデリングの結果、最終瘢痕が6ヶ月~1年以上後に形成される。
【0021】
最終瘢痕の質はその大きさ、その位置、及び特に初期の治癒の進行状況に依存し、したがって一次瘢痕の形成中のケア及びフォローアップが重要である。
【0022】
急性病変の一次治癒プロセスが変化すると、いわゆる「指示された」治癒を可能にする包帯剤及び材料を用いた専門的なケアを必要とする慢性的で複雑な病変が形成される場合があり、又は機能的な後遺症さえ残る可能性がある異常な見苦しい瘢痕が形成される場合がある。
【0023】
適切に治療されない病変は重大な感染のリスクを示し、これは次に治癒プロセスに影響を与える。用語「汚染」は損傷を受けた組織にまだ増殖していない細菌が生息している場合に使用される。対照的に、「定着」段階は病変内での細菌の増殖を含む。定着は「臨界的定着」になり、次いで病変の局所感染になる可能性がある。次いで細菌は損傷を受けた組織の奥深くに侵入し、そこで増殖し、炎症反応を引き起こす。このような感染症の一般症状は、発熱、発疹、病変部の痛み、又は白血球増加である。血流に乗って、局所感染が「全身感染」に発展し、全身に拡がり、場合によっては対象が死に至る可能性のある急性敗血症に発展し得る。
【0024】
創傷ケアの分野では、その治療的効果を保証し、必要とされる無菌状態下でケアを行うために包帯剤の選択が決定的な役割を果たす。
【0025】
最良の治療の選択は、治療される創傷のタイプに直接的に依存することは明らかである。最大限の効果を達成するために、包帯剤は理想的には、感染のリスクを予防することができる、過剰の滲出物及び血液を吸収することができる、病変の周囲に湿潤環境を作る又は維持することができる、白血球の移動を促すことができる、良好な断熱性が維持できる又は通気性がある等の多くの性質及び機能を兼ね備えるべきである。
【0026】
今日、このような様々な性質を備えた単一の包帯剤は見つかっていない。包帯剤を病変のタイプに合わせること、又は治癒段階が進むにつれてそれを変えることまでも必要である。
【0027】
したがって、あらゆるタイプの皮膚の病変及び/又は重症度グレードの病変、特に放射線皮膚炎を、最大限の効果で治療することができる唯一の包帯剤を開発する明確な必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本出願人は、病変のタイプ、その発症状態、及び/又はその治癒状態に関わらず、三次元二元重合体マトリックスが病変の治癒のために必須である条件(湿度、温度、pH、酸素供給)を構成し制御することが可能であることを認めた。
【0029】
本発明は上述の先行技術の問題点を解決するものである。
【0030】
第1の態様によれば、本発明は、皮膚の病変及び/又は創傷の発症及び悪化に関与する様々な生理病理学的パラメータを中和することができる生体力学的活性を作動する三次元二元重合体マトリックスであって、
- 架橋された非硫酸化多糖に非共有結合した第1のコロイド(Col-1)を含む第1の重合体網目構造、及び
- 硫酸化多糖に共有結合又は非共有結合した第2のコロイド(Col-2)を含む第2の重合体網目構造
を組み合わせた、三次元二元重合体マトリックスに関する。本発明の目的のために、用語「コロイド」は、それを構成する分子の秩序ある積み重ねから生じる結晶性粒子(非アモルファス形態)を意味すると理解される。これらのコロイドは「量子ドット」又はナノ結晶と呼ばれることもある。これらは、水性媒体中のコロイドの懸濁液の形態であってもよい。
【0031】
Col-1コロイドとCol-2コロイドの結合という概念は、当業者の一般的な知識の一部である。結合とは、非共有結合又は共有結合の形成である。
【0032】
当然のことながら、非共有結合又は共有結合は単一の化合物の結合に限定されない。それは各ナノ結晶上の少なくとも1種類の化合物の多数の分子の結合であるかもしれない。
【0033】
Col-2/硫酸化多糖複合体の形成、特に共有結合又は非共有結合の形成は、当業者の知識に基づいて行われる。
【0034】
特定の実施形態において、第2のコロイド(Col-2)は硫酸化多糖に共有結合している。
【0035】
例えば、硫酸化多糖はチオール基(R-S-H)の添加によって修飾できる。チオール基の添加により修飾された硫酸化多糖の存在下にCol-2コロイドを入れると、硫酸化多糖が担持するチオール基の硫黄原子(S)とコロイドCol-2を構成する金属分子との間に共有結合が形成される。
【0036】
好ましい実施形態では、第2のコロイド(Col-2)は硫酸化多糖に非共有結合している。
【0037】
例えば、Col-2コロイドはコロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと表面で共有結合していてもよく、これにより第2のコロイド(Col-2)と負に帯電した硫酸化多糖との間に非共有静電相互作用を確立することが可能になる。
【0038】
本発明の目的のために、用語「正に帯電した」及び「負に帯電した」は、中性、生理的、又は酸性のpH(pH3~7)でコロイドの表面に提示される電荷を意味すると理解される。
【0039】
コロイドは従来技術によって、例えば前駆体を成長させるいわゆる「ボトムアップ」アプローチによって、合成することができる。この合成経路は、ナノ材料の分野で一般に使用され、孤立した原子からの核形成ステップ及び成長ステップを含む。これにより、コロイドの大きさを制御することが可能になる。
【0040】
Col-1コロイドとCol-2コロイドとは互いに異なる、すなわちそれらは少なくとも1つの異なる化学元素から構成されている。実際に、それらは同じ特性を持たない。
【0041】
特定の実施形態によれば、Col-1コロイドは、Ce、Si、Ge、Sn、Te、B、N、P、As、Al、Sb、Ga、In、Cd、Zn、Cu、Cl、Pb、Tl、Bi、Ti、U、Ba、Sr、Li、Nb、La、I、Mo、Mn、Ca、Fe、Ni、Eu、Cr、Br、Ag、Pt、Hg、及びそれらの集合体を含む群から選ばれる化学元素からなる。
【0042】
特定の実施形態によれば、Col-2コロイドは、化学元素、好ましくは金属、好ましくはPt、Au、Ni、Cu、Pd及びAgを含む群から選ばれるものからなる。
【0043】
特定の実施形態によれば、Col-2コロイドを構成する金属は酸化状態ゼロを示す。
【0044】
特定の実施形態によれば、本発明によるCol-1コロイドは二酸化セリウム(CeO2)コロイドである。
【0045】
特定の実施形態によれば、本発明によるCol-2コロイドは白金(Pt)コロイドである。
【0046】
好ましくは、Col-2コロイドはその表面にアミン基を有する。
【0047】
本発明の目的のために、Col-2コロイドは金属でできたコアを持ち、一方で硫酸化多糖に共有結合又は非共有結合した表面を有する。これはコア/表面型(core/surface type)の概念である。用語「コア」はコア/シェル型構造とは関係がない。
【0048】
Col-2コロイドの表面は任意で酸化物層を有してもよい。この場合、コロイドは金属コア及び酸化物表面を有し、それが硫酸化多糖に共有結合している。
【0049】
好ましくは、Col-1コロイドは二酸化セリウム(CeO2)コロイドであり、Col-2コロイドは酸化状態ゼロの白金(Pt)コロイドであり、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金である。
【0050】
一般に、Col-1コロイド及び/又はCol-2コロイドの平均の大きさは数ナノメートルから数十ナノメートルオーダーである。
【0051】
したがって、本発明によるCol-1コロイド及び/又はCol-2コロイドの大きさは好ましくは0.1nm~1000nm、より好ましくは0.3nm~100nm、更により好ましくは10nm未満、又は更には5nm未満であり、その大きさは好ましくはXRDにより測定される。
【0052】
好ましくは、Col-1コロイドの大きさは0.4nm~2nmである。
【0053】
好ましくは、Col-2コロイドの大きさは1~5nmであり、好ましくは2~3nmである。
【0054】
X線回折(XRD)は、従来、固体の状態の結晶の大きさを測定するために使用される技術である。
【0055】
用語「大きさ」は、Col-1及びCol-2コロイドの最大の寸法、例えば、球形のCol-1及びCol-2コロイドの場合、直径を意味すると理解される。それは非共有結合Col-1コロイド及び共有結合Col-2コロイドの数平均サイズを指す。しかし、任意でデキストロース、ミオイノシトール、又はポリビニルピロリドン(PVP)等のポリマーでコーティングした非共有結合又は共有結合前のコロイドの大きさもまた、上記に示した値の範囲に含まれる。適切な場合、当業者は、非結合CeO2コロイド及び非結合Ptコロイドの大きさを適合させることができるであろう。
【0056】
本発明によるコロイドをコーティングすることにより、それらの形成中のそれらの成長を制御することが可能になる。例えば、Col-1/デキストロース又はCol-1/ミオイノシトール複合体において、デキストロース及びミオイノシトールは、Col-1粒子の大きさをそれらの形成中に制御する役割を担っている。
【0057】
本発明の目的のために、用語「コロイドの成長の制御」とは、コロイドの大きさがより小さく、多分散化がより少ない、すなわち、平均値近くに狭い分布を形成する際に全ての粒子が十分に近い大きさを持つというメカニズムを意味すると理解される。
【0058】
本発明によるコロイドは好ましくは球形である。
【0059】
コロイドはドープされていない。場合によって、コロイドは元素、好ましくは遷移金属を含むことができ、それはコロイドの合成中に導入される。
【0060】
特定の実施形態によれば、本発明による非硫酸化多糖の分子量は1kDa~5ミリオンダルトン(MDa)であり、好ましくは5kDa~1MDaである。
【0061】
特定の実施形態によれば、本発明による非硫酸化多糖は、アルギン酸、ヒアルロン酸、グアーガム、キサンタンガム、アカシアガム、プルラン、デキストラン、及びそれらの混合物を含む群から選ばれ、好ましくはアルギン酸である。
【0062】
好ましくは、本発明による第1の重合体網目構造は、好ましくは金属、好ましくは2価の金属、更により好ましくはアルカリ土類金属、例えばカルシウム又はマグネシウムに相当する架橋剤によって架橋される。この架橋剤は特にカルシウムである。
【0063】
好ましくは、本発明による重合体網目構造は金属によって架橋されたアルギン酸に相当する。
【0064】
特定の実施形態によれば、架橋剤と非硫酸化多糖との質量比は1~10、好ましくは1~4である。
【0065】
特定の実施形態によれば、Col-1コロイドと非硫酸化多糖との質量比は1:50~1:1、好ましくは1:15~1:5、好ましくは、質量比は1:10である。
【0066】
一実施形態によれば、本発明によるCol-1コロイド/非硫酸化多糖複合体において、Col-1コロイドは二酸化セリウムコロイドであり、非硫酸化多糖は、アルギン酸、ヒアルロン酸、グアーガム、キサンタンガム、アカシアガム、プルラン、デキストラン、及びそれらの混合物を含む群から選ばれ、好ましくはアルギン酸である。
【0067】
特定の実施形態によれば、本発明による硫酸化多糖の分子量は1~40ミリオンダルトン(MDa)、好ましくは5~30MDa、好ましくは15~25MDaである。
【0068】
特定の実施形態によれば、本発明による硫酸化多糖は、INCI名がaphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)である化合物;硫酸化グリコサミノグリカン、例えば、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸;グルカン;フカン;フコイダン;カラギーナン;ウルバン、ポリ硫酸ペントサン、及びそれらの混合物を含む群から選ばれ、好ましくはスイゼンジノリ多糖体である。
【0069】
特定の実施形態によれば、本発明による硫酸化多糖は、Col-2コロイドと接触させる前に、チオール基を添加することによって修飾されたスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)である。
【0070】
好ましくは、本発明による第2の重合体網目構造は、Col-2コロイド、好ましくは酸化状態ゼロで、チオール基の添加により修飾されたINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)と表面で共有結合した白金コロイドによって架橋される。
【0071】
他の特定の実施形態によれば、Col-2コロイド、好ましくは酸化状態ゼロの白金コロイドは、コロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと表面で共有結合しており、これにより、本発明によるCol-2のアミン基と、硫酸化多糖、好ましくはスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)の硫酸基との間に非共有相互作用を確立することが可能になる。
【0072】
上述の2つの実施形態では、Col-2コロイドは架橋剤として作用してもよい。
【0073】
特定の実施形態によれば、Col-2コロイドと硫酸化多糖との質量比は1:50~1:1、好ましくは1:25~1:15、好ましくは、質量比は1:20である。
【0074】
特定の実施形態によれば、非共有結合Col-1コロイド対共有結合又は非共有結合Col-2コロイドの比率は30:1~2:1、好ましくは15:1~5:1である。
【0075】
一実施形態によれば、本発明によるCol-2コロイド/硫酸化多糖複合体において、Col-2コロイドは白金コロイドであり、硫酸化多糖は、INCI名がaphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)である化合物;硫酸化グリコサミノグリカン、例えば、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸;グルカン;フカン;フコイダン;カラギーナン;ウルバン、ポリ硫酸ペントサン、及びそれらの混合物を含む群から選ばれ、好ましくはスイゼンジノリ多糖体である。
【0076】
特定の実施形態によれば、本発明による三次元二元重合体マトリックスは水を含む。
【0077】
他の特定の実施形態によれば、非硫酸化多糖と非共有結合したCol-1コロイドは、本発明による二元重合体マトリックスの0.01質量%~1質量%を示し、一方で硫酸化多糖と共有結合又は非共有結合したCol-2コロイドは、0.001質量%~0.1質量%を示し、水は70質量%~99質量%を示す。
【0078】
特定の実施形態によれば、本発明による二元重合体マトリックスは:
- 二酸化セリウムコロイド;
- アルギン酸;
- 炭酸カルシウム;
- ゼロ酸化白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金;
- ポリビニルピロリドン;
- グルコン酸又はグルコノラクトン、好ましくはグルコノラクトン;
- チオール基を添加することによって修飾されたスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide);及び
- 水
を含有する。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明による二元重合体マトリックスは:
- 二酸化セリウムコロイド;
- アルギン酸;
- 炭酸カルシウム;
- ゼロ酸化白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示し、システアミンの添加によって修飾された白金;
- グルコノラクトン;
- スイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)及び
- 水
を含有する。
【0080】
他の態様によれば、本発明は、皮膚の病変を予防及び/又は治癒するための包帯剤としての使用のための上記で定義されたマトリックスに関する。
【0081】
他の実施形態によれば、皮膚の病変は乾性又は滲出性である。
【0082】
他の態様によれば、本発明は、放射線皮膚炎を予防及び/又は治癒するための包帯剤としての使用のための上記で定義されたマトリックスに関する。
【0083】
他の実施形態によれば、放射線皮膚炎は乾性から滲出性のグレードである。
【0084】
言い換えれば、これらはグレード1、2、又は3の放射線皮膚炎である。
【0085】
特に、本発明による二元重合体マトリックスは2つの架橋された網目構造のもつれに相当し、病変の周囲に前記病変の悪化を予防し、且つ/又はその治癒を加速するのに好都合な環境(湿度、温度、pH、酸素供給、抗菌機能、及び抗酸化機能)を作り出す。
【0086】
好ましくは、本発明による二元重合体マトリックスはイオン結合によって架橋されたマトリックスに相当する。
【0087】
病変がある場合、本発明による二元重合体マトリックスは、包帯剤として使用することで治癒の速度及び質に好都合な湿潤環境を確保する。特に、上皮化の段階の間、この湿潤環境は新しく作られた細胞の分裂及び移動の助けとなる。病変の保湿は、完治を遅らせる表面のかさぶたの形成も予防し、患者を病変部位の軽い落ち込み等の特定の有害な副作用から守る。
【0088】
更に、本発明による使用のための二元重合体マトリックスは、病変を体温に近い温度、すなわちおよそ37℃に維持することを可能にし、ケラチノサイトの十分な増殖及び酵素反応を行うための最適な条件を確保する。
【0089】
本発明による使用のための二元重合体マトリックスは、7~7.6のpHが維持されることを確実にし、したがって病変の病原体の増殖を抑える一方で上皮の増殖を確実にする。
【0090】
本発明による使用のための二元重合体マトリックスは、物理的バリアとして機能し、これは本来皮膚に備わっている役割であるが、皮膚が傷ついた後はもはやその役割を果たすことができない。本発明による包帯剤は、酸素供給、すなわち、病変と外部環境との間のガス交換を行い、それは治癒に必須である。
【0091】
本発明による使用のための二元重合体マトリックスは、病変による出血及び滲出物の効果的で重要な高い吸収力を有する。その結果、本発明による包帯剤は頻繁に交換する必要がなく、表皮の再構築のプロセスに支障をきたさない。
【0092】
本発明によれば、アルギン酸及びINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物は、液体及び滲出物の吸収を可能にし、機械的強度及び弾力性に寄与し、病変の温度及びpHを維持することによって断熱的役割を果たす。
【0093】
同時に、アルギン酸に非共有結合したCeO2のCol-1コロイドによって形成された複合体は、炎症を完全に抑制することなくその制御で抗酸化作用を持つ。言い換えれば、この複合体は、連続した合成が病変を慢性化する可能性のあるRNS及び/又はROSタイプのフリーラジカルの合成を排除、減少、又は抑制することを可能にする。
【0094】
更に、スイゼンジノリ多糖体に共有結合又は非共有結合したCol-2コロイド、好ましくはPt Col-2コロイドによって形成された複合体は、抗菌作用を持つ。
【0095】
本発明による三次元二元重合体マトリックスは、包帯剤として使用することで、皮膚の病変、特に放射線皮膚炎の予防及び/又は治癒においてより効果的でより長続きする。
【0096】
本発明による三次元二元重合体マトリックスはまた、包帯剤としての使用について、交換回数が少ないためより経済的であり、したがって形成中の新しい上皮細胞の引き裂きが抑えられるため、治療を受けている病変に対する外傷性がより低い。
【0097】
更に、本発明による三次元二元重合体マトリックスは、包帯剤として使用することで、患者の入院に代わる新たな選択肢を提供し、その患者の治癒の進行を従来の遠隔医療の手段で遠隔監視することが可能になる。
【0098】
実際、革新的な方法で、病変が感染すると細菌集団の増殖がpHの変化を引き起こし、好ましくはpHが上昇する。これに続いてセリウムの価電子準位が変化する。これによってマトリックスの色が透明から例えばオレンジ色に変化して、適切な治癒を確保し、対象の合併症(敗血症等)のリスクを低減するために、包帯剤の交換及び/又は病変感染を治療する必要性を示す。
【0099】
更に、本発明による二元重合体マトリックスの透明構造は、医師が治癒の進行を、場合によっては遠隔で容易に観察することを可能にし、起こり得る合併症をリアルタイムで特定することが可能になる。
【0100】
本発明による三次元二元重合体マトリックス及び包帯剤は、これらが
- 非毒性及び非アレルゲン性であり、
- 病変を外部環境から効果的に保護することができ、
- 感染のリスクを予防することができ、
- 過剰の滲出物及び血液を吸収することができ、
- 病変の周囲に湿潤環境を作り、又は維持し、
- 治癒を加速及び改善し、
- 血流及び表皮細胞の移動を改善するために病変の周囲に優れた断熱性を維持し、
- 通気性があり、病変とその環境との間でガス交換が可能であり
- 病変において生物の増殖を抑えながら上皮の成長を促進するレベルにpHを維持し、
- 病変に付着することなく容易に取り外すことができ、
- 長期間の使用をもたらす、すなわち、より経済的で病変に対する外傷性がより低く、
- ハイドロゲル包帯剤とハイドロコロイド包帯剤の中間的な吸収特性を有し、
- 保護的であり、
- 抗酸化性であり、
- 抗菌性である
ことを可能にするいくつかの特徴及び機能を兼ね備える。
【0101】
他の態様によれば、本発明は上記で定義された三次元二元重合体マトリックスの製造方法であって、2つの溶液:
- 非硫酸化多糖と非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及び生体適合性ポリマーと表面で非共有結合したCol-2コロイドを含む溶液(A);並びに
- 酸性化剤及び硫酸化多糖を含む溶液(B)
を使用した、三次元二元重合体マトリックスの製造方法に関する。
【0102】
好ましい実施形態によれば、本発明は上記で定義された三次元二元重合体マトリックスの製造方法であって、2つの溶液:
- 非硫酸化多糖と非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及びコロイドを正に帯電させることのできる作用物質、好ましくはシステアミンと表面で共有結合したCol-2コロイドを含む溶液(A)、並びに
- 酸性化剤及び硫酸化多糖を含む溶液(B)
を使用した、三次元二元重合体マトリックスの製造方法に関する。
【0103】
本発明による二元重合体マトリックスは、溶液(A)及び(B)を混合することにより得られる。
【0104】
好ましくは、2つの溶液(A)及び(B)を、溶液(A)が4/5で溶液(B)が1/5の割合で混合する。
【0105】
特定の実施形態によれば、本発明による方法で実施される溶液(A)及び(B)において、
- Col-1コロイドは二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖はアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源は、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドは酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金であり、
- 生体適合性ポリマーはポリビニルピロリドンであり、
-酸性化剤はグルコン酸又はグルコノラクトン、好ましくはグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖はチオール基の添加により修飾されたINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物である。
【0106】
他の特定の実施形態によれば、本発明による方法で実施される溶液(A)及び(B)において、
- Col-1コロイドは二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖はアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源は、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドは酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金であり、システアミンと表面で共有結合しており、
- 酸性化剤はグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖はINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物に相当する。
【0107】
本発明によれば、2つの溶液(A)及び(B)の混合後、重合体網目構造は架橋され、相互に作用することなくもつれ、可塑化効果によってゲルの形態の三次元二元重合体マトリックスを形成し、これは治療する病変を覆い、病変の周囲に保護性及び通気性のあるフィルムを維持する。
【0108】
好ましくは、本発明による二元重合体マトリックスはイオン結合によって架橋されたゲルに相当する。
【0109】
他の態様によれば、本発明は本発明による方法を実施するための装置に関する。
【0110】
特定の実施形態によれば、2つの溶液(A)及び(B)は、ボトル、噴霧器、シリンジ、又は単回投与バイアル中に詰められる。
【0111】
他の特定の実施形態によれば、2つの溶液(A)及び(B)は二区画容器中に詰められる。
【0112】
特定の実施形態によれば、本発明による装置は、
- 溶液(A)はpH7であり、非硫酸化多糖に非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及び生体適合性ポリマーと共有結合したCol-2コロイドを含み、
- 溶液(B)はpH3であり、酸性化剤及び硫酸化多糖を含む
ことを特徴とする。
【0113】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、
- 溶液(A)はpH7であり、非硫酸化多糖に非共有結合したCol-1コロイド、2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源、及びシステアミンと共有結合したCol-2コロイドを含み、
- 溶液(B)はpH3であり、酸性化剤及び硫酸化多糖を含む
ことを特徴とする。
【0114】
特定の実施形態によれば、本発明による装置で実施される溶液(A)及び(B)において、
- Col-1コロイドは二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖はアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源は、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドは酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金であり、
- 生体適合性ポリマーはポリビニルピロリドンであり、
- 酸性化剤はグルコン酸又はグルコノラクトン、好ましくはグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖はチオール基の添加により修飾されたINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物である。
【0115】
本発明によるマトリックスの形成に適した二区画容器の例としては、
- Doseurope社が販売しており、4:1の比用に特別に設計された42ml体積のダブルシリンジ(製品コード:D-KART-050-04)、スタティックミキサーL212(製品コード:M-50-212)、及び4:1ダブルシリンジガン(製品コード:PIST-50-4:1)からなる二区画シリンジ、又は
- Neopac社が販売している二区画Easymix Tube
がある。
【0116】
好ましい実施形態によれば、本発明による装置で実施される溶液(A)及び(B)において、
- Col-1コロイドは二酸化セリウムコロイドであり、
- 非硫酸化多糖はアルギン酸であり、
- 2価の金属、好ましくはアルカリ土類金属の供給源は、カルシウム塩、好ましくは炭酸カルシウムであり、
- Col-2コロイドは酸化状態ゼロの白金コロイド、好ましくはコアが酸化状態ゼロを示す白金であり、システアミンと共有結合しており、
- 酸性化剤はグルコノラクトンであり、
- 硫酸化多糖はINCI名aphanothece sacrum polysaccharide(スイゼンジノリ多糖体)に相当する化合物である。
【0117】
本発明及びそれから生じる利点は、本発明を説明するために与えられ、限定的ではない以下の図及び実施例からより明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】アルギン酸と非共有結合する前のCeO2コロイドのディフラクトグラムを示すグラフである。
図2】チオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)と共有結合する前のPtコロイドのディフラクトグラムを示すグラフである。
図3】本発明による二元重合体マトリックスのABTSの分解活性(単位:%)を2つの市販製品と比較して、時間(単位:分)の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
1/ 本発明による二酸化セリウムコロイド(Col-1)の合成
0.1~2mmolのデキストロース又はミオイノシトール及び0.5~5当量の塩化セリウム等の二酸化セリウム前駆体を10~100mLの水に溶解する。溶解する際、1~10当量のアンモニアを添加する。溶液を1~5時間撹拌し続ける。アセトンを逆溶媒として添加して、遠心分離により精製する。ペレットを、所望の濃度で水に再分散させる。
【0120】
この合成方法の結果、デキストロース又はミオイノシトールでコーティングされた二酸化セリウムが得られる。この複合体において、デキストロース及びミオイノシトールは粒子の大きさを制御し、粒子の大きさを平均の大きさの近くで狭く分散させる役割を果たす。
【0121】
2/ 硫酸化多糖と共有結合するための本発明による白金コロイド(Col-2)の合成
0.1~10mmolのグルコノラクトンを10~100mLの水に溶解して溶液を調製し、次いで、還流するまで加熱する。
【0122】
還流に達したら、10~100mLの水に溶解した塩化白金酸等のコロイド状白金前駆体塩0.01~10mmol及びポリビニルピロリドン(PVP)0.001~1mmolを反応媒体に添加する。
【0123】
溶液を1~5時間還流させる。
【0124】
次いで、溶液を室温に冷まし、アセトンを逆溶媒として添加して、遠心分離により精製する。次いで、ペレットを水に再分散させて所望の濃度とする。
【0125】
この合成方法の結果、PVP中に分散した白金コロイドが得られる。これらのコロイドは本発明による硫酸化多糖、例えばチオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)に共有結合することができ、その半合成を実施例3に記載する。
【0126】
3/ チオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)の半合成
10~100×10-7mmolのスイゼンジノリ多糖体を10~100mLの水に溶解し、溶液を撹拌する。
【0127】
100,000~100,000,00×10-7mmolのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩を添加する。溶液を10~100分間撹拌し続ける。
【0128】
1,000,000~100,000,000×10-7mmolのシステインを添加し、固体が溶解するまで溶液を撹拌し続ける。pHを4に調製する。
【0129】
溶液を6~24時間撹拌し続ける。次いで、pHを6に調製する。
【0130】
チオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体を析出させるために、溶液をそのおよそ10倍量のエタノールに注ぎ入れ、遠心分離によりこの化合物を回収後、少量の水にそれを溶解して(1~5質量%の溶液)、凍結乾燥する。
【0131】
4/ 硫酸化多糖と非共有結合するための本発明による白金コロイド(Col-2)の合成
0.1~10mmolのグルコノラクトンを10~100mLの水に溶解し、溶液を還流するまで加熱する。
【0132】
還流に達したら、10~100mLの水に溶解した塩化白金酸等のコロイド状白金前駆体塩0.1~1当量及びポリビニルピロリドン(PVP)0.01~0.1当量を反応媒体に添加する。
【0133】
溶液を1~5時間還流し続ける。溶液を室温に冷まし、0.1~1当量のシステアミン塩酸塩を添加する。溶液を1~5時間撹拌し続け、次いで、アセトンを逆溶媒として添加して、遠心分離により精製する。次いで、ペレットを水に分散させて所望の濃度とする。
【0134】
合成方法の結果、システアミンの添加によって修飾されPVP中に分散した白金コロイドが得られる。これらのコロイドは硫酸化多糖、例えばスイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)と非共有結合(クーロン相互作用)できる。
【0135】
5/ 本発明によるCeO2/アルギン酸コロイド及びPt/スイゼンジノリ多糖体コロイド
CeO2及びPt粒子の大きさが小さいことで、覆う面積が大きくなり、したがってそれぞれの粒子の表面に多くの分子を結合することが可能になる。
【0136】
ディフラクトグラムは粉末をCu-Kα線源のXRDで透過して測定した。
【0137】
アルギン酸と非共有結合する前のCeO2コロイドのディフラクトグラムを図1に示す。
【0138】
チオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体と共有結合する前のPtコロイドのディフラクトグラムを図2に示す。
【0139】
6/ 本発明による二元重合体マトリックスの製造方法
2つの溶液(A)及び(B)を、溶液(A)が4/5で溶液(B)が1/5の割合で混合する。
【0140】
溶液(A)は、実施例1から得られた本発明によるCeO2コロイドと、アルギン酸と、炭酸カルシウムと、実施例2及び3に記載された反応の混合物から得られる本発明によるPt/スイゼンジノリ多糖体コロイドと、水とを含む。
【0141】
溶液(B)は、水に分散した自然の(未変性の)スイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)及びグルコノラクトンを含む。
【0142】
或いは、溶液Aは実施例1から得られた本発明によるCeO2コロイドと、アルギン酸と、炭酸カルシウムと、実施例4による白金コロイドと、自然の(未変性の)スイゼンジノリ多糖体(INCI名、aphanothece sacrum polysaccharide)と、水とを含み、溶液Bは水に分散した自然の(未変性の)スイゼンジノリ多糖体及びグルコノラクトンを含む。
【0143】
混合後、本発明による三次元二元重合体マトリックスが、本発明による2つの架橋された重合体網目構造のもつれにより数分(1~5分)又は数秒(1分未満)で形成される。
【0144】
7/ 本発明による三次元二元重合体マトリックスの抗酸化活性の決定
本発明による二元重合体マトリックスは、
- マトリックスの0.01~1質量%を示す量の、アルギン酸と非共有結合したCol-1コロイド、
- マトリックスの0.001~0.1質量%を示す量の、チオール基の添加により修飾されたスイゼンジノリ多糖体に共有結合したCol-2コロイド、及び
- マトリックスの70~99質量%を示す量の水
を含む。
【0145】
14mMのABTS(2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))の原液を過硫酸アンモニウムの水圧溶液の4.9mM溶液と等量でインキュベートして、カチオン性のABTSラジカルを生成する。反応混合物を暗所で16時間室温でインキュベートする。得られた溶液を150mMのNaClを含有するリン酸緩衝液(0.2M、pH7.4)で1/100に希釈して、734nmでの吸光度が1.5となるようにする。
【0146】
本発明による三次元二元重合体マトリックスの1.2~12mgの間の異なる質量の試料を水に240g/Lで分散させ、0.07mMのカチオン性ABTS水溶液2970μLに添加し、次いで、撹拌しながら暗所に置く。
【0147】
30分のインキュベート後、ABTSは完全に分解する。
【0148】
生成物を、ポリメチルメタクリレート製の紫外(UV)分光光度計用容器中で、上記で調製したABTS溶液3000μLと混合する。反応混合物を暗所で30分間室温でインキュベートする。次いで、吸光度を20分毎に測定する。
【0149】
本発明による二元重合体マトリックスの抗酸化特性を2つの市販製品、
- 乾性、線維性、又は壊死性のただれのためのアルギン酸ナトリウムを含有するハイドロゲルに相当するNu-Gel(登録商標)包帯剤、
- アルギン酸及び抗菌性酵素系を含むゲルに相当するFlaminal Hydro(登録商標)包帯剤
と比較する。
【0150】
データを図3に示す。
【0151】
結果は、120時間後、およそ85%のABTSが本発明による二元重合体マトリックスにより分解され、一方でNu-Gel(登録商標)及びFlaminal Hydro(登録商標)包帯剤はそれぞれおよそ18%及び27%のABTSを分解することを示している。
【0152】
結論として、本発明による二元重合体マトリックスを含有する溶液の抗酸化活性は、2つの市販包帯剤と比較して指数関数的であり、はるかに大きい。
【0153】
8/ 本発明による三次元二元重合体マトリックスによる滲出物の吸収能の決定
本発明による二元重合体マトリックスによる滲出物の吸収能を、滲出性の、又は滲出性が非常に高いただれの治療用として示されている様々な市販製品と比較した。
【0154】
滲出物溶液はウシ胎仔血清50mLと0.1%ペプトン及び0.9%塩化ナトリウムを含有する希釈液50mLとを混合することにより調製する。シート包帯剤は1.98cm2の面積となるようにカットする。ゲル包帯剤は1.98cm2の面積を覆うように注ぎ入れる。
【0155】
各試料を直径3cmのペトリ皿に入れた後、重さを量る(m0)。各包帯剤を4mLの滲出物で覆った後、ペトリ皿を密封し、それを21℃で72時間保存する。残った滲出物を各皿から取り除き、各試料の重さを再び量る(m1)。
【0156】
各包帯剤の滲出物吸収能を以下の式:
【0157】
【数1】
【0158】
によって決定する。
【0159】
結果を以下のTable 1(表1)に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
結果は、滲出性の、又は滲出性が非常に高いただれ用として示されているハイドロファイバー及びハイドロセルラータイプの包帯剤が、滲出物の吸収量が65~100g/cm2とより良好な吸収性を持つことを示す。
【0162】
ハイドロゲルタイプのシート包帯剤は10~35g/cm2の滲出物を吸収する。
【0163】
滲出性の低いただれの治療用として示されているハイドロコロイドタイプの包帯剤は、20~30g/cm2の滲出物を吸収する。
【0164】
本発明による二元重合体マトリックスは、15g/cm2の滲出物を吸収し、これをハイドロゲルタイプのシート包帯剤に入れる。評価した2つの市販ハイドロゲル(Intrasite Conformable及びHydrotac)は部分的に又は完全に滲出物に溶解したため、これは、滲出物の吸収試験に耐えた唯一の液状形態のシートハイドロゲルである。
【0165】
これは、本発明による二元重合体マトリックスの架橋により、包帯剤の形状を維持しながら滲出物を吸収することが可能だからである。
【0166】
更に、滲出物の吸収がゆっくりと徐々に行われ、二元重合体マトリックスの再編成が可能になる。逆に、試験した市販製品は滲出物をスポンジのように吸収する。その結果、飽和状態後は、これらの製品はもはや滲出物を吸収できなくなり、したがってもはや効果がなくなる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】