(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】プローブの組合せを用いたゲノム配列の検出、プローブ分子、および生物の特異的検出用のプローブを含むアレイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6837 20180101AFI20220909BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220909BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20220909BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220909BHJP
C12Q 1/689 20180101ALI20220909BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
C12N15/09 Z
C12N15/09 200
C12Q1/689 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503578
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020070308
(87)【国際公開番号】W WO2021013736
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518213606
【氏名又は名称】セイフガード バイオシステムズ ホールディングズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Safeguard Biosystems Holdings Ltd.
【住所又は居所原語表記】Quadrant House, Floor 6, 4 Thomas More Square, London E1W 1YW, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー クラップロート
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ ベトナー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR39
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR84
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
異なる生物由来のゲノム配列に異なる結合をするプローブの組合せを利用して、サンプル中に存在し得る相同ゲノム配列を同定する方法、相同ゲノム配列を識別するためのアレイ、相同ゲノム配列を識別するためのシステム、ならびにその方法、アレイおよびシステムに有用な細菌結合プローブ分子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2つ以上のプローブ分子を含み、各プローブ分子が、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であり、前記プローブ分子が前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸に異なってハイブリダイズし、それによって、前記第1のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸および前記第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸への前記プローブ分子のハイブリダイズにより、前記第1のゲノムに対応する前記標的核酸と前記第2のゲノムに対応する前記標的核酸とを区別することができる、仮想プローブで試験サンプルをプローブすることと、
(b)前記仮想プローブ中の前記プローブ分子と、もしあれば、前記試験サンプル中の核酸とのハイブリダイゼーションによるシグナルを検出および/または定量化し、それにより、第1の生物または第2の生物が、前記試験サンプルまたは初期サンプル中に存在するかを決定することと
を含む、第1のゲノムを有する第1の生物または第2のゲノムを有する第2の生物が、試験サンプルまたは前記試験サンプルを調製した初期サンプル中に存在するかを決定する方法。
【請求項2】
前記第1のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、前記第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、前記仮想プローブ中の各プローブ分子が、前記第1のアンプリコンセットおよび/または前記第2のアンプリコンセットの1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、前記プローブ分子が前記第1のアンプリコンセットの前記アンプリコンおよび前記第2のアンプリコンセットの前記アンプリコンに異なってハイブリダイズし、それによって、前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットの前記アンプリコンへの前記プローブ分子のハイブリダイズにより、前記第1のアンプリコンセットと前記第2のアンプリコンセットとを区別することができる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のゲノムおよび前記第2のゲノムの両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて前記初期サンプルに対してPCR増幅反応を行い、前記第1のゲノムおよび第2のゲノムが前記初期サンプル中に存在する場合に前記第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットをそれぞれ得ることによって、前記試験サンプルを調製することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記PCRプライマーが2つ以上のプライマー対を含み、前記第1のアンプリコンセットが複数の第1のアンプリコンを含み、かつ/または前記第2のアンプリコンセットが複数の第2のアンプリコンを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記複数の第1のアンプリコンが前記第1のゲノム中の異なる領域に対応し、かつ/または前記複数の第2のアンプリコンが前記第2のゲノム中の異なる領域に対応する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記PCRプライマーが単一のプライマー対を含み、前記第1のアンプリコンセットが単一の第1のアンプリコンからなり、前記第2のアンプリコンセットが単一の第2のアンプリコンからなる、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記仮想プローブの前記プローブ分子が、アレイ上に存在する、それぞれが前記アレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なプローブ分子である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、rRNAをコードする遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項2から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、rRNA遺伝子の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項2から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の生物および第2の生物が微生物である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記微生物が同じ目、科、属または群のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記微生物が細菌である、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記第1の生物および第2の生物が細菌であり、前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列および/または23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S-23S遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
(a)前記第1の微生物がコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種であり、かつ前記第2の微生物がコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種であるか、
(b)前記第1の微生物がストレプトコッカス・ゴルドニイであり、かつ前記第2の微生物がストレプトコッカス・アンギノーサスであるか、または
(c)前記第1の微生物がストレプトコッカス・ミティスであり、かつ前記第2の微生物がストレプトコッカス・ニューモニエである、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
(a)第1のゲノム配列と第2の相同ゲノム配列とを区別するための1つ以上の仮想プローブであって、各仮想プローブが、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み、前記1つ以上の仮想プローブ中の各プローブ分子が、前記第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続したヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む、仮想プローブと、
(b)任意に、1つ以上の対照プローブ分子と
を含む、アドレス可能なアレイ。
【請求項19】
少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)またはGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むプローブ分子を含む、請求項18記載のアドレス可能なアレイ。
【請求項20】
(a)2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブを含み、各プローブ分子が、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であり、前記プローブ分子が前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸に異なってハイブリダイズし、それによって、前記第1のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸および前記第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸への前記プローブ分子のハイブリダイズにより、前記第1のゲノムに対応する前記標的核酸と前記第2のゲノムに対応する前記標的核酸とを区別することができる、請求項18または19記載のアレイで試験サンプルをプローブすることと、
(b)非結合核酸分子を前記アレイから洗い流すことと、
(c)前記アレイ上の各プローブ分子位置でのシグナルを検出および/または定量化することと、
(d)前記シグナルが、
(i)前記アレイの前記プローブ分子にハイブリダイズする標的核酸が前記試験サンプル中に存在することを示す場合、前記シグナルを分析して、前記第1のゲノムに対応する標的核酸もしくは前記第2のゲノムに対応する標的核酸が前記サンプル中に存在するかを決定し、それにより、前記第1の生物もしくは第2の生物が初期サンプルもしくは前記試験サンプル中に存在するかを決定すること、または
(ii)前記仮想プローブの前記プローブ分子にハイブリダイズする標的産物が工程(a)において生成しないことを示す場合、その初期サンプルもしくは試験サンプルが前記第1の生物もしくは前記第2の生物を含有しないと決定し、それにより、前記第1の生物もしくは第2の生物が前記初期サンプルもしくは前記試験サンプル中に存在するかを決定することと
を含む、第1のゲノムを有する第1の生物または第2のゲノムを有する第2の生物が、試験サンプルまたは前記試験サンプルが由来する初期サンプル中に存在するかを決定する方法。
【請求項21】
(a)請求項18または19記載のアレイの各プローブ分子位置に対してシグナルデータを生成する光学読取り装置と、
(b)少なくとも1つのプロセッサであって、
(i)前記光学読取り装置からシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)1つ以上の仮想プローブについて前記シグナルデータを分析するように構成され、かつ
(iii)分析の結果を出力するために記憶もしくは表示デバイスまたはネットワークへのインターフェースを有する、少なくとも1つのプロセッサと
を備える、生物がサンプル中に存在するかを決定するためのシステム。
【請求項22】
ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)またはGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
【請求項23】
(a)仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有し、かつ前記仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有するか、
(b)前記仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有し、かつ前記仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むヌクレオチド配列を有するか、または
(c)前記仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有し、前記仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むヌクレオチド配列を有し、かつ前記仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有する、
複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブ。
【請求項24】
それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なプローブ分子の群を含むアドレス可能なアレイであって、前記プローブ分子の群が請求項22記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、アレイ。
【請求項25】
請求項23記載の仮想プローブを含むアドレス可能なアレイであって、前記仮想プローブ中の各プローブ分子が前記アレイ上の別々の位置にある、アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本願は、2019年7月17日に出願された米国特許仮出願第62/876,413号明細書および2020年4月3日に出願された米国特許仮出願第63/004,664号明細書の優先権の利益を主張し、それらの内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0002】
2.配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、その全体を参照により本明細書に援用するものとする。2020年7月14日に作成された上記ASCIIコピーは、SGB-006WO_ST25という名前であり、1581バイトのサイズである。
【0003】
3.背景
感染性病原体の特定は、個体の適切な診断および治療方針を決定する上で重要であることが多い。感染因子の誤認は、不適切または非効果的な治療方針につながる恐れがある。シークエンシング技術の改善により、多数の病原菌のゲノムの一部または全体の配列が決定されている。近縁の細菌種は、非常に高度の配列同一性を有するゲノム配列を含むことが多い。近縁種の区別には、2つ以上の相同ゲノム配列の違いを検出する高感度の正確な方法が必要とされる。単一のオリゴヌクレオチドプローブ分子を用いた相同ゲノム配列の区別は、不可能ではないにせよ、場合によっては実際的でないことがある。
【0004】
このため、微生物の近縁種を区別する新たな方法が必要とされる。
【0005】
4.発明の概要
本開示は、サンプル中に存在し得るゲノム配列を特定し、かつ/または相同ゲノム配列を区別する方法を提供する。この方法は、微生物の近縁種に由来する相同ゲノム配列を個別に区別することはできないが、集合的に区別することができ、また、サンプル中に存在する可能性が高いゲノム配列を特定し得るプローブ分子の組合せを利用するものである。このようなプローブ分子の組合せを本明細書では便宜上、「仮想プローブ」と称する。
【0006】
仮想プローブは、複数(例えば2つ、3つまたは4つ以上)の個々のプローブ分子を含み得る。ゲノムDNA(またはゲノムDNAから増幅されたPCR産物)と個々のプローブ分子とのハイブリダイゼーションは、特にゲノムDNAを増幅するために関連種における保存配列を標的とするユニバーサルプライマーを使用する場合、シークエンシングがなければ、ゲノムDNAと、同じサンプル中に存在する可能性がある遺伝的に関連する種の相同ゲノムDNAとを識別するには十分でない可能性がある。しかしながら、ゲノムDNAまたは対応するPCRアンプリコンを、2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブでプローブする場合、仮想プローブに対するハイブリダイゼーションパターンの違いにより、2つの関連種に由来するゲノムDNAまたはそれから増幅された相同アンプリコンを識別することができる。
【0007】
したがって、複数のプローブ分子(例えば、区別可能なシグナルを有するプローブ分子)を含むことにより、本開示の仮想プローブは、組み合わせて、ゲノム配列と相同ゲノム配列(またはそれから調製されたアンプリコン)とを区別し、生体サンプル中に存在する微生物種を特定することができる。例えば、本開示の方法に従い、2つまたは3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子の組合せは、組み合わせて、S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)等の関連種に由来するアンプリコンを区別する仮想プローブを形成することができる。このため、サンプルを、例えばPCR反応において鋳型DNAの供給源として使用する場合、得られる任意のPCR産物と仮想プローブとのハイブリダイゼーションにより、2つの種のいずれがサンプル中に存在するかを決定することができる。
【0008】
本明細書に開示される仮想プローブを用いて相同ゲノム配列を特定する方法は、細菌16S rRNA遺伝子に由来する配列を用いて設計された種特異的オリゴヌクレオチドプローブ分子が異なる種間で交差反応性を示すことが認識された後に開発された。ゲノムのこの領域の配列間の多様性が小さいことから、種特異的プローブ分子を設計することができなかった。しかしながら、それにもかかわらず、単独では個別に異なる種を区別することができない複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を組み合わせた仮想プローブとのハイブリダイゼーションによるシグナルを分析することによって異なる種を区別し得ることが発見された。
【0009】
一態様では、本開示は、第1の生物(または対応する第1のゲノム)および/または第2の生物(または対応する第2のゲノム)がサンプル中に存在するかを決定する方法を提供する。
【0010】
かかる方法は、第1の生物および第2の生物に対する仮想プローブでサンプルをプローブし、第1のゲノムまたは第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸の有無を決定することを含み得る。標的核酸は、例えばゲノム断片またはPCR等のDNA増幅反応において生成するアンプリコンであり得る。仮想プローブは、それぞれが第1のゲノムに対応する標的核酸の1つ以上および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能な2つ以上のプローブ分子を含む。プローブ分子が第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に異なってハイブリダイズするため、仮想プローブは、第1のゲノムに対応する標的核酸と第2のゲノムに対応する標的核酸とを区別することができる。
【0011】
例示的な方法は、以下の工程を含む:
(a)サンプル中に存在する場合に第1および第2のゲノムにハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能な1対以上のPCRプライマーを用いて、サンプルに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応を行う工程。プライマーの各セットは、好ましくはサンプル中に存在する可能性がある各生物に特有のアンプリコンセットを生じさせる。このため、増幅により、第1のゲノムが存在する場合に第1のアンプリコンセットが生じ、第2のゲノムがサンプル中に存在する場合に第2の異なるアンプリコンセットが生じる。PCRプライマーが1対のみ使用される場合、各アンプリコンセットは、単一のアンプリコンのみを含み、複数のPCRプライマー対が使用される場合、アンプリコンセットは、2つ以上のアンプリコン(例えば、複数の単一のアンプリコン)を含み得る。
(b)工程(a)に続いて、得られる任意のPCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットの有無を決定する工程。仮想プローブが、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットに異なった形で特異的にハイブリダイズすることが可能な2つ以上のプローブ分子(例えば、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含むため、仮想プローブは、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。各仮想プローブ内のプローブ分子は、異なる標識(例えば、蛍光標識、例えば異なる蛍光標識で標識された分子ビーコン)を有するか、またはアレイ上の別々の位置に配置されるために区別することができる。
【0012】
したがって、PCR反応のPCR増幅産物と仮想プローブとのハイブリダイゼーションによって、第1および第2のゲノムを区別し、それによりサンプルにおける第1および/または第2の生物の存在を特定することができる。本明細書で使用される場合、サンプルにおける生物の存在への言及は、サンプルが生きた生物を有していたことを意味するのではなく、検出されるか、またはPCR反応等の増幅反応の鋳型となるのに十分な、生物に由来するゲノムDNAがサンプル中に存在していたことを単に意味する。同様に、サンプルにおけるゲノムの存在への言及は、サンプルが無傷のゲノムを有していたことを意味するのではなく、検出されるか、またはPCR反応等の増幅反応の鋳型となるのに十分な、ゲノムに由来するDNAがサンプル中に存在していたことを単に意味する。
【0013】
第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットは、例えばPCR増幅反応においてプライマーの単一セットを使用する場合、それぞれ1つのアンプリコン(それぞれ「第1のアンプリコン」および「第2のアンプリコン」と称される)を含み得る。代替的には、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセットは、例えばPCR増幅反応において2セット以上のプライマーを使用する場合、2つ以上のアンプリコン(「第1のアンプリコン」と称される第1のアンプリコンセットの各アンプリコンおよび「第2のアンプリコン」と称される第2のアンプリコンセットの各アンプリコン)を含み得る。相同ゲノム配列に由来する相同アンプリコンを区別するための更なる例示的な方法は、以下のセクション6.2、ならびに番号付き実施形態1~86、実施形態130~132および実施形態135に記載される。
【0014】
本開示は、相同ゲノム配列を区別するためのアレイ、相同ゲノム配列を区別するためのシステム、ならびに例えば本開示の方法、アレイおよびシステムにおいて有用なオリゴヌクレオチドプローブ分子をさらに提供する。
【0015】
一態様では、本開示は、第1のゲノムに由来する第1のゲノム配列と第2のゲノムに由来する第2の相同ゲノム配列とを区別するためのアドレス可能なアレイを提供する。本開示のアドレス可能なアレイは、例えば本明細書に記載される方法において使用することができる。本開示のアドレス可能なアレイは、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み得るが、オリゴヌクレオチドプローブ分子の群の各プローブ分子は、第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続したヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む。アドレス可能なアレイは、任意に1つ以上の対照プローブ分子をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本開示の例示的なアドレス可能なアレイは、以下のセクション6.3、ならびに番号付き実施形態87~129および実施形態153~155に記載される。
【0017】
別の態様では、本開示は、サンプル中に存在する場合に第1のゲノム配列と第2の相同ゲノム配列とを区別するためのシステムを提供する。例示的なシステムは、
(a)本開示のアレイの各プローブ分子位置に対してシグナルデータを生成する光学読取り装置と、
(b)少なくとも1つのプロセッサであって、
(i)光学読取り装置からシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)1つ以上の仮想プローブ(例えば、本明細書に記載されるような特徴を有する仮想プローブ)についてシグナルデータを分析するように構成され、かつ
(iii)分析の結果を出力するために記憶もしくは表示デバイスまたはネットワークへのインターフェースを有する、少なくとも1つのプロセッサと
を備え得る。
【0018】
例示的なシステムは、以下のセクション6.4、ならびに番号付き実施形態133および実施形態134に記載される。
【0019】
別の態様では、本開示は、仮想プローブへの使用に適した例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびかかるオリゴヌクレオチドプローブ分子を2つ以上含むキットを提供する。本開示のオリゴヌクレオチドプローブ分子は、本開示のアドレス可能なアレイ上に含まれ、かつ/または本開示の方法に使用され得る。例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子および仮想プローブは、以下のセクション6.2.4および番号付き実施形態136~152に記載される。例示的なキットは、以下のセクション6.5および番号付き実施形態156~167に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】GenBankから入手した幾つかのスタフィロコッカス種の16S rRNA遺伝子から作成した樹状図(
図1Aおよび
図1Bに分けられる)である。CLC sequence viewerソフトウェアを用いてツリーを構築し、ブートストラップ分析によってデータの信頼性を示した。スタフィロコッカス群の各種を、GenBankアクセッション番号によって示される2つの配列を用いて表す。ツリーの各ノードのブートストラップ値(整数)は、反復試験間のデータの信頼性のパーセンテージを定義するものである。ブートストラップ値が高いほど、それぞれの分類群のデータがより支持される。それぞれの種の横線は、ブランチと呼ばれ、その種における遺伝子変化の量を表す。ブランチの長さの単位は、配列の長さで除算した変化または置換の数として示される。
【
図2】16s rRNAおよび16s-23s rRNAゲノム配列の多重アラインメントから作成されたストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridians)群の種の樹状図(
図2Aおよび
図2Bに分けられる)である。I-ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)群、II-ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)群、III-ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)群、IV-ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)群、およびV-ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群。数字は、データセットの信頼性のパーセンテージを示すブートストラップ値を表す。アラインメントパターンおよびそれらの病因的重要性に応じて、種をI、IIおよびIIIの3つの群として扱う。
【
図3】16S rRNAおよび16S-23S rRNA ITSゲノム配列、ならびに16Sフォワード(16S Fw)、16Sリバース(16S Rv)、ITSフォワード(ITS Fw)およびITSリバース(ITS Rv)プライマーの図である。
【
図4】非伸長プライマー(対称PCRプロセスに使用される従来のプライマーであり得る)と、標的核酸に相補的な「A」領域、「A」領域の少なくとも一部の直接反復または逆方向反復を含む「B」領域、ならびにスペーサー配列および/または制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一部もしくは全体を含み得る任意の「C」領域から構成される伸長プライマーとを含む、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR法に有用なプライマー対を示す図である。
【
図5A】「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の逆方向反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子間ハイブリダイゼーションを示す図である。「A」領域と「B」領域との間の相補性領域は、「A」領域の5’末端またはその近くにあるのが好ましい。
【
図5B】「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の直接反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子間ハイブリダイゼーションを示す図である。「A」領域と「B」領域との間の相補性領域は、「A」領域の5’末端またはその近くにあるのが好ましい。
【
図5C】「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の逆方向反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子内ハイブリダイゼーションを示す図である。「A」領域と「B」領域との間の相補性領域は、「A」領域の5’末端またはその近くにあるのが好ましい。
【
図6】セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応における変性工程を示す図である。変性工程では、PCR反応混合物(通例、標的核酸を含有するか、または含有するリスクがある生体サンプル、非対称プライマー対、耐熱性DNAポリメラーゼおよびPCR試薬を含む)を標的核酸の融点を超えるまで加熱し、標的核酸(存在する場合)および非対称プライマー対の伸長プライマーの変性を引き起こして、一本鎖を形成する。
【
図7】非伸長プライマーの融解温度未満で生じる、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的増幅期のアニーリング工程を示す図である。非対称プライマー対の非伸長プライマーおよび伸長プライマーの両方が、それらのそれぞれの相補鎖にハイブリダイズする。
図7には、PCRの初回サイクルにおいて生じる標的DNAへのアニーリング(ハイブリダイゼーションまたは結合とも称される)を示すが、その後のサイクルでは、プライマーとPCR産物中の相補配列との間でアニーリングが生じる可能性が高い。伸長プライマー内の「B」領域および任意の「C」領域のために、PCR産物は、
図8Bおよび
図9に示されるように、これらの配列またはそれらの相補体を有する。
【
図8A】耐熱性DNAポリメラーゼが相補的DNAを鋳型として用いてプライマーDNAを伸長させる、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的増幅期の伸長工程を示す図である。伸長領域を破線で示す。鋳型は標的DNAの鎖である。
【
図8B】耐熱性DNAポリメラーゼが相補的DNAを鋳型として用いてプライマーDNAを伸長させる、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的増幅期の伸長工程を示す図である。伸長領域を破線で示す。鋳型は、非対称プライマー対および標的DNAを用いて生成したPCR産物の鎖である。
【
図9】PCR産物鎖2を鋳型として用いた、非伸長プライマーの融解温度超かつ伸長プライマーの融解温度未満で生じる、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の線形増幅期の同時のアニーリングおよび伸長工程を示す図である。これによりPCR産物鎖2の非対称増幅が生じ、PCR反応の終了時までにPCR産物鎖1分子に対して過剰なPCR産物鎖2分子が得られる。
【
図10A】コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CNS)に対する仮想プローブにおいて2つのプローブ分子がどのように用いられ得るかを示す図である。PCR増幅産物と2つのプローブ分子とのハイブリダイゼーションによるシグナルを、ブール演算子を用いて組み合わせ、CNSがサンプル中に存在するかを決定することができる。
【
図10B】コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CNS)に対する仮想プローブにおいて3つのプローブ分子がどのように用いられ得るかを示す図である。PCR増幅産物と3つのプローブ分子とのハイブリダイゼーションによるシグナルを、ブール演算子を用いて組み合わせ、CNSがサンプル中に存在するかを決定することができる。
【
図11A】ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)に由来する16S rRNAアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナルを示す図である。
【
図11B】ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)に由来する16S rRNAアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナルを示す図である。
【
図12】ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)およびストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)に由来するPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す図である。
【
図13】サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)およびエシェリキア・コリ(Escherichia coli)に由来するPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す図である。
【
図14】クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)およびクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に由来するPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す図である。
【
図15】エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・アスブリアエ(Enterobacter asburiae)およびエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)に由来するPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す図である。
【0021】
6.詳細な説明
6.1.定義
アンプリコン:アンプリコンは、PCR増幅反応によって生成する核酸分子である。
【0022】
非対称プライマー対:伸長プライマーと非伸長プライマーとからなるプライマー対。
【0023】
対応する:配列同一性を有するか、または相補的な異なる長さの2つの核酸鎖に関して、「対応する」という用語は、文脈により指示されるような両方の鎖に存在する配列の重複または相補性の領域を指す。
【0024】
直接反復:伸長プライマーの「B」領域との関連で、「直接反復」は、「A」領域の一部に対して直接相補体である(すなわち、同じ5’から3’の順序で相補配列を有する)ヌクレオチド配列を意味する。
【0025】
伸長プライマー:(a)標的鎖1の対応する領域に対して少なくとも75%の配列同一性または標的鎖2の対応する領域に対して少なくとも75%の配列相補性を有する、その3’末端の「A」領域;(b)「A」領域の少なくとも一部と相補的な配列を含む、その5’末端の「B」領域;および(c)「A」領域と「B」領域との間に位置する任意の「C」領域を有するPCRプライマー。
【0026】
相同ゲノム配列:相同ゲノム配列は、共通の祖先を有するが、ヌクレオチド配列が同一でない異なる種または株に見られるゲノム配列である。例示的な相同ゲノム配列としては、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子および16S-23S内部転写スペーサー領域(ITS)配列が挙げられる。
【0027】
逆方向反復:伸長プライマーの「B」領域との関連で、「逆方向反復」は、「A」領域の一部に対して逆相補体である(すなわち、逆の5’から3’の順序で相補配列を有する)ヌクレオチド配列を意味する。
【0028】
融解温度(Tm):DNA二重鎖の半分が解離して一本鎖となる温度。デオキシリボヌクレオチド(DNA)から構成される線状プライマーのTmは、一般に「パーセントGC」法(PCR PROTOCOLS, a Guide to Methods and Applications, Innis et al. eds., Academic Press (San Diego, Calif. (USA)) 1990)または「2(A+T)プラス4(G+C)」法(Wallace et al., 1979, Nucleic Acids Res. 6 (11): 3543-3557)または「最近傍」法(Santa Lucia, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 1460-1465;Allawi and Santa Lucia, 1997, Biochem. 36: 10581-10594)によって算出されている。特許請求の範囲の目的上、DNAのTmは「最近傍」法に従って算出され、非自然発生塩基(例えば、2-デオキシイノシン)はアデニンとして扱われる。
【0029】
PCR産物鎖1:PCR産物鎖1は、非対称プライマー対の非伸長プライマーに相補的な、標的核酸および非対称プライマー対から生成した二本鎖PCR産物中の鎖を指す。
【0030】
PCR産物鎖2:PCR産物鎖1は、非対称プライマー対の伸長プライマーに相補的な、標的核酸および非対称プライマー対から生成した二本鎖PCR産物中の鎖を指す。
【0031】
PCR試薬:文脈上他の指示がない限り、「PCR試薬」という用語は、鋳型核酸、耐熱性ポリメラーゼおよびプライマー以外のPCR反応の構成要素を指す。PCR試薬は通例、dNTP(非標識dNTPに加えて標識、例えば蛍光標識dNTPを含んでいてもよい)、バッファー、および二価カチオンを有する塩(例えば、MgCl2)を含む。
【0032】
プライマー:その3’末端に遊離ヒドロキシル基を有する、少なくとも12ヌクレオチドのDNAオリゴヌクレオチド。プライマーは、自然発生および非自然発生ヌクレオチド(例えば3-ニトロピロール、5-ニトロインドールまたは2-デオキシイノシン等のユニバーサル塩基を含むヌクレオチド、2-デオキシイノシンが好ましい)を含み得る。文脈上他の指示がない限り、「プライマー」という用語は、混合塩基がプライマー設計および構築に含まれ、プライマー分子が標的核酸分子中の変異体配列にハイブリダイズすることを可能とする場合に生じるプライマー分子の混合物も指す。標的配列変異体は、種間または種内変異体であり得る。混合塩基の標準命名法を表1に示す:
【表1】
好ましくは、各プライマーは、標的核酸に対する相補性の領域に3つ以下の混合塩基を含む。幾つかの実施形態では、プライマーは、標的核酸に対する相補性の領域に0、1つ、2つまたは3つの混合塩基を含む。
【0033】
プライマー対:5000塩基対未満の領域内で同じ核酸分子の異なる鎖にハイブリダイズするとともに、そこからDNA重合反応を開始することが可能なフォワードおよびリバースプライマー対(それぞれ標的配列の考え得る変動に相当する配列変動を有するプライマーの混合物であり得る)。或る特定の実施形態では、プライマー対は、2500塩基対未満または1500塩基対未満の領域内で同じ核酸分子の異なる鎖にハイブリダイズするとともに、そこからDNA重合反応を開始することが可能である。
【0034】
サンプル:「サンプル」という用語は、本明細書で使用される場合、対象の核酸、例えばゲノム、ゲノム断片、ゲノムの領域に対応するアンプリコン、または別の標的核酸を含有するか、または含有する疑いがある任意のサンプルを指す。サンプルは、1つ以上のプロセスに供してからも「サンプル」とみなすことができる。例えば、PCR増幅反応に供されるサンプルは、PCR増幅反応後も「サンプル」のままである。
【0035】
単一のアンプリコン:「単一のアンプリコン」という用語は、本明細書で使用される場合、単一のプライマー対を用いた単一の生物からのPCR増幅反応によって生成する核酸分子または核酸分子の群を指す。通例、「単一のアンプリコン」は、特有の配列を有するPCR産物を指すが、例えば生物が増幅される配列についてヘテロ接合である場合に、特有の配列の群、例えば対を有するPCR産物を指すこともある。
【0036】
特異的:「特異的」という用語は、プローブ分子とアンプリコンとの結合に関して本明細書で使用される場合、プローブ分子が、その標的アンプリコンに対して他の非相同アンプリコンよりも大きな親和性、通例、はるかに大きな親和性を有することを意味するが、プローブ分子がその標的に対して完全に特異的である必要はない。このため、プローブ分子は例えば、第1のゲノム配列を含むアンプリコンおよび第1のゲノム配列と1つ以上のヌクレオチドが異なる第2の相同ゲノム配列を含むアンプリコンにハイブリダイズし得る可能性がある。
【0037】
標的鎖1:標的鎖1は、非対称プライマー対の非伸長プライマーが相補的な二本鎖標的核酸の鎖を指す。
【0038】
標的鎖2:標的鎖2は、非対称プライマー対の伸長プライマー中の「A」領域が相補的な二本鎖標的核酸の鎖を指す。
【0039】
非伸長プライマー:標的鎖2の対応する領域に対して少なくとも75%の配列同一性または標的鎖1の対応する領域に対して少なくとも75%の配列相補性を有するヌクレオチド配列から本質的になるPCRプライマー。非伸長プライマーに関して、「から本質的になる」という用語は、ヌクレオチド配列が、標的配列に対して(少なくとも75%の)相補性の領域の5’に3つ以下の付加的なヌクレオチドを含み得ることを意味する。
【0040】
6.2.仮想プローブを用いて相同ゲノム配列を区別する方法
本開示は、第1の生物に由来する第1のゲノム配列と第2の生物に由来する第2の相同ゲノム配列とを区別する方法を提供する。この方法は、仮想プローブを用いたサンプル中に存在する生物の特定を可能にする。ゲノム配列に対する仮想プローブは概して、例えばアドレス可能なアレイ上のそれらの別々の位置のために、または例えば異なる蛍光部分での差次標識によって区別することができる2つ以上のプローブ分子を含む。便宜上、仮想プローブ内の個々のプローブ分子からの読出しが、本明細書で「シグナル」と称されることがある。明確にするために、プローブ分子は、「シグナル」を生成するために標識する必要はない。例えば、蛍光標識アンプリコンへのハイブリダイゼーションの欠如が「シグナル」となり得る。
【0041】
ゲノム配列に対する各仮想プローブは、ゲノム配列に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることが可能な(仮想プローブを構成する複数のプローブ分子の)少なくとも1つのプローブ分子を含む。場合によっては、仮想プローブ中の2つ以上のプローブ分子が、ゲノム配列に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)にハイブリダイズすることが可能である。関連するゲノム配列に由来する異なる標的核酸(例えば、アンプリコン)に対する仮想プローブのプローブ分子のハイブリダイゼーションパターンは、関連するゲノム配列に由来する標的核酸を区別し、例えば第1のゲノムに由来する第1のアンプリコンセットと相同ゲノム配列を有する第2のゲノムに由来する第2のアンプリコンセットとを区別するように十分に異なる。この方法を用いて、例えばプローブするアンプリコンが増幅されたサンプル中の細菌の特定の種または株の存在を、直接(例えば、サンプルがPCRに直接用いられる場合)または間接的に(例えば、セクション6.2.1に記載のビーズビーティング法等の中間精製または富化工程によって)決定することができる。本明細書に開示される様々な実施形態は、PCR反応等のDNA増幅反応の産物を仮想プローブでプローブすることを説明するものであるが、代替的には非増幅ゲノムDNAを検出することが可能な方法を用いてプロービングを行うことができると理解すべきである。非増幅ゲノムDNAを検出する例示的な方法は、Detection of Non-Amplified Genomic DNA, 2012, Spoto and Corradini (eds) doi.org/10.1007/978-94-007-1226-3に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。かかる方法としては、光学的検出法(例えば、Li and Fan, 2012, “Optical Detection of Non-amplified Genomic DNA,” pp. 153-183 in Detection of Non-Amplified Genomic DNAを参照されたい)、電気化学的検出法(例えば、Marin and Merkoci, 2012, “Electrochemical Detection of DNA Using Nanomaterials Based Sensors,” pp. 185-201 in Detection of Non-Amplified Genomic DNAを参照されたい)、圧電検知法(例えば、Minunni, 2012, “Piezoelectric Sensing for Sensitive Detection of DNA,” pp. 203-233 in Detection of Non-Amplified Genomic DNAを参照されたい)、表面プラズモン共鳴ベースの方法(例えば、D’Agata and Spoto, 2012, “Surface Plasmon Resonance-Based Methods,” pp. 235-261 in Detection of Non-Amplified Genomic DNAを参照されたい)、および並列光学・電気化学的方法(例えば、Knoll et al., 2012, “Parallel Optical and Electrochemical DNA Detection,” pp. 263-278 in Detection of Non-Amplified Genomic DNAを参照されたい)が挙げられる。このため、幾つかの実施形態では、サンプルのプロービングは、DNA増幅工程なしに行われる(例えば、サンプルがゲノム断片である標的核酸を含有するか、または含有する疑いがある場合)。
【0042】
第1の生物に由来する第1のゲノムまたは第2の生物に由来する第2のゲノムの存在を決定する方法は、いずれかがサンプル中に存在する場合、第1のゲノムおよび第2のゲノムにハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて、PCR増幅反応(例えば、セクション6.2.3に記載される)をサンプルに対して行う工程を含み得る。第1のゲノムがサンプル中に存在する場合の第1のゲノムからの増幅は、第1のアンプリコンセットを生じる。第2のゲノムがサンプル中に存在する場合の第2のゲノムからの増幅は、第2のアンプリコンセットを生じる。PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットの有無を決定することができる。プロービングは、PCR増幅反応中に(例えば、リアルタイムPCRを、例えばセクション6.2.3.5に記載されるように用いる場合)またはPCR増幅反応後に(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ分子を含むアレイを、例えばセクション6.3に記載されるように使用することによって)行うことができる。プロービングをPCR反応後に、例えばアレイ上で行う場合、蛍光標識ヌクレオチドをPCR混合物に加え、得られるPCRアンプリコンを標識することが有用である。アドレス可能なアレイ上の蛍光標識の位置および場合によってはその強度が、仮想プローブを構成するプローブ分子のシグナルとなり得る。
【0043】
第1のアンプリコンセットが存在することが決定された場合、サンプルが第1のゲノムを含有すると結論付けることができる。同様に、第2のアンプリコンセットが存在することが決定された場合、サンプルが第2のゲノムを含有すると結論付けることができる。仮想プローブを使用して、関連する微生物、例えばコアグラーゼ陰性およびコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種(例えば、セクション6.2.5.1に記載される)、S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)(例えば、セクション6.2.5.2に記載される)、またはS.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)(例えば、6.2.5.3に記載される)から調製された第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。
【0044】
サンプルは、例えば生体サンプル、環境サンプルまたは食品であり得る。幾つかの実施形態では、サンプルは、1つ以上の微生物に感染しているか、または感染のリスクがある。例示的なサンプルは、セクション6.2.1に記載される。
【0045】
任意の相同ゲノム配列(および相同ゲノム配列に対応するアンプリコン)を区別するための本開示の方法の使用が企図される。細菌の種または細菌の関連種がサンプル中に存在する可能性が高いかを決定する場合、rRNA(例えば、16S rRNAまたは23S rRNA)をコードするゲノム配列、またはrRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域(例えば、16S rRNA-23S rRNA遺伝子間スペーサー領域)に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)を区別することが可能な仮想プローブを使用することができる。本開示の方法によって区別することができる例示的な相同ゲノム配列の特徴は、セクション6.2.2に記載される。
【0046】
本開示の方法に従って仮想プローブでプローブされるアンプリコンは、第1の生物のゲノムおよび第2の生物のゲノムにハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて、第1の生物および/または第2の生物を含有するか、または含有する疑いもしくはリスクがあるサンプルに対してPCR増幅反応を行うことによって生成することができる。PCR増幅反応は、プライマーの単一セット(第1および第2の生物がサンプル中に存在する場合、第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンのそれぞれを生成するはずである)を用いて行うことができる。代替的には、第1および第2の生物がそれぞれサンプル中に存在する場合に、2セット以上のプライマーを用いてPCR増幅反応を行い、第1のゲノムに対応する複数のアンプリコンおよび第2のゲノムに対応する複数のアンプリコンを生成することができる。本開示の方法に用いることができる例示的なPCR増幅反応は、セクション6.2.3に記載される。PCR以外の核酸増幅法(例えば、等温増幅法)、例えばループ介在等温増幅(LAMP)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)およびローリングサークル増幅(RCA)を用いてアンプリコンを調製することもできる(例えば、Fakruddin et al., 2013, J Pharm Bioallied Sci.5(4): 245-252を参照されたい)。このため、PCR増幅産物に適用可能として本明細書に記載される実施形態が、代替的な増幅法を用いて生成した増幅産物にも同様に適用可能であると理解すべきである。
【0047】
仮想プローブに使用することができるプローブ分子の例示的な特徴および仮想プローブの例示的な特徴は、それぞれセクション6.2.4およびセクション6.2.5に記載される。
【0048】
幾つかの実施形態では、PCR増幅産物のプロービングは、PCR増幅産物を、例えばセクション6.3に記載されるアレイに接触させる工程と、非結合核酸分子をアレイから洗い流す工程と、アレイ上の各プローブ分子位置での標識(例えば、蛍光標識)のシグナル強度を測定する工程とを含む。
【0049】
他の実施形態では、PCR増幅産物のプロービングは、リアルタイムPCR反応に使用されるオリゴヌクレオチドプローブ分子からのシグナルを測定することを含む。
【0050】
本開示の方法を行うために使用することができるシステムは、セクション6.4に記載される。
【0051】
本開示の方法に使用することができるキットは、セクション6.5に記載される。
【0052】
6.2.1.サンプル
本開示の方法に使用されるサンプルは、PCR増幅に適した状態にあるか、またはその状態で調製されるゲノムDNAを含有する任意のタイプまたは形態のサンプルであり得る。或る特定の実施形態では、サンプルは1つ以上の微生物、例えば1つ以上の種の微生物による感染のリスクがある。他の実施形態では、サンプルは1つ以上の微生物、例えば1つ以上の種の微生物に感染している疑いがある。サンプルは、例えば生体サンプル、環境サンプルまたは食品であり得る。
【0053】
サンプルの例として、様々な液状サンプルが挙げられる。場合によっては、サンプルは被験体からの体液サンプルであり得る。サンプルは、被験体から採取された組織を含んでいてもよい。サンプルは、被験体の体液、分泌物および/または組織を含んでいてもよい。サンプルは生体サンプルであってもよい。生体サンプルは体液、分泌物および/または組織サンプルであり得る。生体サンプルの例としては、血液、血清、唾液、尿、胃液および消化液、涙液、糞便、精液、膣液、腫瘍性組織に由来する間質液、眼液、汗、粘液、耳垢、油、腺分泌物、呼気、髄液、毛髪、爪、皮膚細胞、血漿、鼻腔スワブまたは鼻咽頭洗浄液、髄液、脳脊髄液、組織、咽頭スワブ、創傷スワブ、生検材料、胎盤液、羊水、臍帯血、リンパ液、体腔液、痰、膿または他の創傷滲出液、創傷清拭または切除によってサンプリングした感染組織、脳脊髄液、洗浄液、白血球生成試料、腹膜透析液、乳汁および/または他の排泄物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
被験体がサンプルを提供してもよく、かつ/またはサンプルを被験体から採取してもよい。被験体は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。サンプルは、生きているまたは死んだ被験体から採取することができる。動物は、家畜(例えばウシ、ブタ、ヒツジ)、競技用動物(例えば、ウマ)または愛玩動物(例えば、イヌまたはネコ)等の哺乳動物であり得る。被験体は患者、臨床被験体または前臨床被験体であり得る。被験体は診断、治療、および/または疾病管理、または生活様式もしくは予防的なケアを受けていてもよい。被験体は、医療専門家の保護下にあっても、またはそうでなくてもよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、サンプルは環境サンプルであり得る。環境サンプルの例としては、空気サンプル、水サンプル(例えば地下水、地表水または廃水)、土壌サンプルおよび植物サンプルが挙げられる。
【0056】
付加的なサンプルとしては、食品、飲料、製造材料、織物、化学物質および療法剤が挙げられる。
【0057】
幾つかの実施形態では、サンプルは病原体、例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクローシス(Mycobacterium avium subsp paratuberculosis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(メチシリン感受性およびメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)を含む)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、ヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィラス・パラインフルエンザエ(Haemophilus parainfuluezae)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター種、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis)、ノカルディア種、アクチノマイセス種、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumonia)、レジオネラ種、ニューモシスチス・イロベジイ(Pneumocystis jiroveci)、A型インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ライノウイルス、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)、コリネバクテリウム・アミコラツム(Corynebacterium amycolatum)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)CI 4413、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ステノトロホモナス(キサントモナス)・マルトフィリア(Stenotrophomonas(Xanthomonas) maltophilia)およびサルモネラ種の1つ以上を含有するか、または含有する疑いがあるサンプルである。幾つかの実施形態では、サンプルは、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アスブリアエ(Enterobacter asburiae)またはエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)等の腸内細菌科群の細菌を含有するか、または含有する疑いがあるサンプルである。
【0058】
PCR増幅を行う前にサンプルを前処理することができる。このため、本開示の方法においてPCR増幅に供されるサンプルは例えば、本セクションまたは本開示の他の部分に記載されるいずれかのタイプのサンプルから処理、抽出または分画されたサンプル(例えば尿、痰、創傷スワブ、血液または腹膜透析液から処理、抽出または分画されたサンプル)であり得る。
【0059】
用いることができる前処理工程の例としては、本明細書で論考するかまたは別に当該技術分野で既知のように、濾過、蒸留、抽出、濃度、遠心分離、干渉成分の不活性化、試薬の添加等が挙げられる。
【0060】
PCRの前に、対象の細胞型からのゲノムDNAの回収率を最大化するために不要な細胞型および粒子状物質を生体サンプルから除去することが特に有利であり得る。
【0061】
生体サンプル中の細菌を検出することが意図される場合、微粒子および非細菌細胞がフィルター上に保持される一方で、細菌細胞(必要に応じて、それらの芽胞を含む)が通過するようにフィルターを通して生体サンプルを前処理することが望ましい場合がある。「フィルター」は、本明細書で使用される場合、サイズに基づく粒子および分子の差別的通過を可能にする膜またはデバイスである。これは通例、特定の公称サイズの細孔をフィルターに設けることによって達成される。例えば、細菌検出用途にとって特に関心が持たれるフィルターは、細菌の通過を可能にするのに十分に大きいが、対象のサンプル中に存在する真核細胞の通過を防ぐのに十分に小さな細孔を有する。概して、細菌細胞は直径0.2~2μm(マイクロメートルまたはミクロン)の範囲であり、殆どの真菌細胞は直径1~10μmの範囲であり、血小板は直径およそ3μmであり、殆どの有核哺乳動物細胞は通例、直径10~200μmである。したがって、細菌の検出が意図される場合、2μm未満または1μm未満のフィルター細孔径が、非細菌細胞を生体サンプルから除去するのに特に適している。
【0062】
濾過工程に加えてまたはその代わりに、生体サンプルを遠心分離に供して、細胞および残屑をサンプルから除去することができる。真核細胞を沈殿させるが細菌細胞を沈殿させない遠心分離パラメーターは、当該技術分野で既知である。次いで、上清を必要に応じて濾過することができる。
【0063】
サンプルは、当該技術分野で既知のPCRのためのゲノムDNAを含むサンプルを調製する様々なプロセスのいずれかを用いて(例えば、上記の前処理工程の1つ以上に従って)、PCR増幅のために調製することができる。幾つかの実施形態では、市販のDNA抽出試薬、キットおよび/または機器、例えばQIAamp DNA Mini Kit(Qiagen)、MagMAX(商標) DNA Multi-Sample Kit(ThermoFisher Scientific)、Maxwell(登録商標) RSC Instrument(Promega)等を使用することができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、例えば米国特許第10,036,054号明細書(その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする)に記載されるビーズビーティングを含むプロセスによってPCRのためにサンプルを調製する。血液を市販の血液採取チューブに採取した後、例えばビーズビーティングビーズを採取チューブに添加し、採取チューブを撹拌に供することによって直接ビーズビーティングに供することができる。血液サンプルの採取に使用することができる市販の採取チューブの例としては、EDTAを含むラベンダートップチューブ、クエン酸ナトリウムを含むライトブルートップチューブ、シュウ酸カリウムを含むグレートップチューブまたはヘパリンを含むグリーントップチューブが挙げられる。
【0065】
6.2.2.相同ゲノム配列
本開示の方法を用いて、第1および第2の相同ゲノム配列(ならびに第1および第2の相同ゲノム配列に対応するアンプリコン等の標的核酸)を特定および/または区別することができる。相同ゲノム配列は、共通の祖先を有するが、ヌクレオチド配列が同一でない種または株に見られるゲノム配列である。このため、相同ゲノム配列は例えば、細菌の近縁種または株に見られる。
【0066】
第1のゲノム配列および第2のゲノム配列は概して、第1の微生物および第2の微生物(例えば細菌、ウイルスまたは真菌)に由来するゲノム配列である。第1および/または第2の微生物は、例えばヒト病原体および/または動物病原体であり得る。微生物は同じ目、同じ科、同じ属、同じ群、またはさらには同じ種であってもよい。好ましい実施形態では、第1および第2の微生物は細菌である。
【0067】
シークエンシング技術の進歩により、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)、欧州分子生物学研究所(EMBL)および日本DNAデータバンク(DDBJ)等の多数の公開データベースリポジトリにおいて利用可能な全細菌ゲノム配列の数が大幅に増加しており、かかるデータベースを用いて相同ゲノム配列を特定することができる。
【0068】
近縁の微生物における相同ゲノム配列は、rRNAをコードする遺伝子およびrRNAをコードする遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域に見られることが多い。細菌種の配列比較は長年、16SリボソームRNA(16S rRNA)の遺伝子を用いて行われてきた。16S リボソームRNA遺伝子は、タンパク質産生に関与するタンパク質/RNA複合体である細菌リボソームの30S小サブユニットの16S RNA要素をコードする。この遺伝子は、9つの超可変領域(V1~V9)が組み入れられた高度保存配列の領域を含む。超可変領域における配列変動により、近縁種間で観察可能な差異の殆どが可能となる。これらの遺伝子間で観察される配列進化の速度が遅いことから、16S rRNA配列は、多数の細菌種について系統樹の構築に使用されている。GenBankから入手した幾つかのスタフィロコッカス種の16S rRNA遺伝子から作成した例示的な系統樹を
図1に示す。
【0069】
細菌ゲノムは、第2のリボソームrRNA遺伝子である23S rRNA遺伝子を含む。16S rRNAおよび23S rRNA遺伝子は、16S-23S内部転写スペーサー領域(ITS)または16S-23S遺伝子間スペーサー領域として知られるスペーサー領域によって互いに隔てられている。16S-23S rRNA ITS領域は、特定の細菌種を区別および特定するために用いることができる種および種間特異的配列を含む超可変領域を含む(K. Okamura, et al., 2012)。16s rRNAおよび16s-23s rRNAゲノム配列の多重アラインメントによって作成したストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridians)群の例示的な系統樹を
図2に示す。
【0070】
本開示の方法の幾つかの実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、rRNAをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、rRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域のヌクレオチド配列を含む。
【0071】
微生物が細菌である実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、例えば16S rRNA遺伝子または23S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含み得る。幾つかの実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、23S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、ゲノム配列は、16S-23S遺伝子間スペーサー領域に見られるヌクレオチド配列を含む。
【0072】
或る特定の具体的な実施形態では、第1のゲノム配列および/または第2の相同ゲノム配列は、ヒトの血液、尿または腹腔液に見られ得る病原体、例えば細菌、ウイルスまたは真菌に由来するゲノム配列である。かかる病原体の例としては、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクローシス(Mycobacterium avium subsp paratuberculosis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(メチシリン感受性およびメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)を含む)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、ヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィラス・パラインフルエンザエ(Haemophilus parainfuluezae)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター種、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis)、ノカルディア種、アクチノマイセス種、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumonia)、レジオネラ種、ニューモシスチス・イロベジイ(Pneumocystis jiroveci)、A型インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ライノウイルス、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)、コリネバクテリウム・アミコラツム(Corynebacterium amycolatum)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)CI 4413、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ステノトロホモナス(キサントモナス)・マルトフィリア(Stenotrophomonas(Xanthomonas) maltophilia)およびサルモネラ種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
6.2.3.PCR増幅
本開示の方法の幾つかの実施形態では、サンプル中に存在し得るゲノムにハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて、サンプルに対してPCR増幅を行う。PCR増幅反応は、「対称」PCR反応とすることができ、すなわち、互いに等しいかまたは数℃以内の「融解温度」または「Tm」を有するように設計されたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを利用することで、反応により鋳型DNAの二本鎖コピーを作製する。一般的に使用されているプライマー設計用のコンピューターソフトウェアプログラムは、高いTm差を回避するようユーザーに警告し、自動Tm整合機能を有する。一本鎖DNAアンプリコンを作製することができる「非対称」PCR反応を用いてもよい。リアルタイムPCR反応を用いることもできる。PCR増幅反応との関連では、反応によって増幅したゲノム配列は、「標的」核酸、「鋳型」核酸等と称されることがある。
【0074】
PCR増幅反応には、単一のプライマーセットまたは複数のプライマーセット(例えば、PCR増幅がマルチプレックスPCRである場合)を使用することができる。マルチプレックスPCRは、例えば第1のゲノム配列(例えば、16S rRNA遺伝子)に対応するアンプリコンおよび/または第2のゲノム配列(例えば、23S rRNA遺伝子)に対応する異なるアンプリコンを生成するのに有用であり得る。マルチプレックスPCRの代替として、異なるプライマーセットを用いて行われた別個のPCR増幅反応によって生成したアンプリコンを、その後の分析のためにプールすることができる。有利には、単一のプライマーセットを用いて、例えば同じ属のメンバーであってもよい複数の株または種、例えば2つ、3つ、4つまたは5つ以上の種のゲノムに見られる相同ゲノム配列に対応するアンプリコンを作製することができる。
【0075】
PCR増幅条件は、例えばDNA増幅産物が100~1000ヌクレオチドの長さとなるように選択することができる(対称または非対称、シングルプレックスまたはマルチプレックスを問わない)。幾つかの実施形態では、PCR反応は、DNA増幅産物が300~800ヌクレオチドの長さとなるように選択される。他の実施形態では、PCR条件は、DNA増幅産物が400~600ヌクレオチドの長さとなるように選択される。
【0076】
幾つかの実施形態では、本開示の方法に用いられるPCR増幅反応は、測定可能なシグナルを生じる標識を、反応によって生成する任意のアンプリコンに組み込むものである。標識は、例えば蛍光標識、電気化学的標識または化学発光標識であり得る。蛍光標識は、PCR中の蛍光標識ヌクレオチドの取込みおよび/またはPCRへの標識プライマーの使用によって達成することができる。電気化学的標識は、PCR中のレドックス活性標識ヌクレオチドの取込みおよび/またはPCRへのレドックス活性標識プライマーの使用によって達成することができる(例えば、Hocek and Fojta, 2011, Chem. Soc. Rev., 40: 5802-5814; Fojta, 2016, Redox Labeling of Nucleic Acids for Electrochemical Analysis of Nucleotide Sequences and DNA Damage. In: Nikolelis D., Nikoleli GP. (eds) Biosensors for Security and Bioterrorism Applications. Advanced Sciences and Technologies for Security Applications. Springer, Chamを参照されたい)。化学発光標識は、例えばPCRにビオチン標識プライマーを使用し、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲートを結合した後、化学発光1,2-ジオキセタン基質とインキュベートすることによって達成することができる。
【0077】
好適な蛍光部分の例としては、FITC、EDANS、テキサスレッド、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、R110、TAMRA、テキサスレッドおよびx-ローダミンが挙げられる。
【0078】
蛍光部分をdNTP、特にシトシンを塩基として含むもの(シチジル酸、シチジン5’-リン酸、シチジン5’-二リン酸、シチジン5’-三リン酸、またはそれらのポリマー、またはシチジル酸を含有するポリマー)に付着させることができる。
【0079】
dNTP標識の位置は塩基(アミノ基)、リン酸基(OH基)またはデオキシリボース部分(2’-または3’-OH基)であり得る。好ましい位置は塩基である。
【0080】
他のヌクレオチドと同様、蛍光標識dNTPをPCRアンプリコンの両鎖のランダムな部位、通例、dC部位に組み込み、DNAポリメラーゼによって伸長することができる。
【0081】
蛍光dNTPは、高濃縮形態で市販されており、各非標識dNTPの濃度を調整することなくPCR反応混合物に添加することができる。殆どのPCR増幅について、dNTPと蛍光dNTPとの典型的な比率は、100:1~1000:1である。このため、蛍光標識dNTPを非標識dNTPの(モル)量の0.1%~1%でPCR試薬に加えることができる。
【0082】
蛍光標識PCR産物の検出は、プローブ分子、例えばマイクロアレイに結合したプローブ分子へのハイブリダイゼーションによって達成することができる。好適なマイクロアレイシステムは、米国特許第9,738,926号明細書(その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする)に記載される三次元架橋ポリマーネットワークを利用したものである。
【0083】
6.2.3.1.プライマー
PCR反応において用いられるプライマーは、所与の核酸鋳型の配列、例えば標的ゲノム配列を認識し、それにハイブリダイズするように設計される。プライマーおよび標的核酸鋳型の配列におけるミスマッチは、PCR反応の効率の低下および/または所望の配列以外の配列の増幅を引き起こす恐れがある。上首尾のプライマー設計のためのパラメーターは、当該技術分野で既知であり(例えば、Dieffenbach, et al., 1993を参照されたい)、プライマー長、融解温度、GC含量等が含まれる。PCRプライマーは、所与の標的核酸鋳型と100%の配列同一性を有する必要はなく、標的配列と少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%または99.5%の同一性を有するPCRプライマーが、標的配列にハイブリダイズし、その増幅を可能にするように機能し得る。
【0084】
本開示は、高い特異性および良好な増幅効率を有する特有のプライマー系を作製するのに適した付加的なパラメーターを提供する。プライマーは通例、18~24塩基長であるが、より長く、例えば25~50塩基長、例えば25~45塩基長、例えば30~45塩基長、例えば35~45塩基長、例えば40~45塩基長、または例えば40~50塩基長であってもよい。PCR増幅に使用されるプライマーは、対で設計されることが多く、一方のプライマーが「フォワード」プライマーと称され、一方のプライマーが「リバース」プライマーと称される。本開示のフォワードプライマーは、Gおよび/またはC残基を3’末端に有し、「GCクランプ」を生じるように設計することができる。GおよびCヌクレオチド対は、A-Tヌクレオチド対よりも強い水素結合を示すため、プライマーの3’末端のGCクランプは、配列特異性を高め、ハイブリダイゼーションの可能性を高め、PCR反応の全体的効率を高めるのに役立ち得る。
【0085】
プライマーのセットは、2つのゲノム領域を増幅するように設計することができ、例えば、プライマーのセットは、16S rRNA遺伝子に特異的な1つのプライマー対および16S-23S rRNA ITS領域に特異的な第2のプライマー対を含み得る(
図3を参照されたい)。かかるプライマーセットは、例えば単一のPCR反応において複数のアンプリコンを生成するために使用することができる。
【0086】
PCRプライマー対は、多数の種間で保存されている配列を増幅し、例えば複数の細菌種の16S rRNA遺伝子を増幅するように設計することができる。このため、単一のPCRプライマー対を用いて相同ゲノム配列に対応するアンプリコンを生成することが可能な場合があり、これは、可能性がある多数の生物の1つを含有するか、または含有する疑いがあるサンプルに対してPCRを行う場合に有利である。保存配列を増幅するように設計されたプライマーのパラメーターは、様々な種間で保存されている領域を特定すること、任意に保存領域における任意の配列の差異が正確であると証明すること(例えば、公開された配列が正確であるかが不確かである場合)、および配列間で少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、またはさらには100%保存されている配列を選択することを含み得る。100%未満の配列同一性を示すプライマーは、単に所与の鋳型と異なる1つ以上の単一のヌクレオチド塩基を含んでいてもよく、すなわち、調製物中の全てのプライマーが互いに同じ配列を含む。代替として、プライマーは、配列の特定の位置に代わりのヌクレオチド残基を有するように作製することができる。例えば、幾つかの種の16S 領域の増幅のためのリバースプライマーは、オリゴヌクレオチドのプールを含むことができ、そのうち或るパーセンテージ、例えば50%がプライマーの或る位置に第1のヌクレオチドを有し、或るパーセンテージ、例えば50%がその位置に第2のヌクレオチドを有する。
【0087】
幾つかの実施形態では、本開示の方法において用いられるプライマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)で標識される。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも1つのプライマーが5’蛍光標識される。他の実施形態では、2つ以上のプライマーが5’蛍光標識される。プライマーの標識に適した蛍光標識は、当該技術分野で既知であり、Cy5、FAM、JOE、ROXおよびTAMRAが含まれる。
【0088】
6.2.3.2.対称PCR増幅
本開示の方法に用いることができる典型的な三段階PCRプロトコル(PCR PROTOCOLS, a Guide to Methods and Applications, Innis et al. eds., Academic Press (San Diego, Calif. (USA)) 1990, Chapter 1を参照されたい)は、93~95℃で5秒超の変性、すなわち鎖融解、55~65℃で10~60秒のプライマーアニーリング、およびポリメラーゼが高活性である温度、例えばTaq DNAポリメラーゼについては72℃で15~120秒のプライマー伸長を含み得る。典型的な二段階PCRプロトコルは、プライマーアニーリングとプライマー伸長とが同じ温度、例えば60℃または72℃であることが異なり得る。三段階PCRまたは二段階PCRのいずれについても、増幅は、反応混合物に上述の一連の工程を多数回、通例、25~40回繰り返すことを含む。反応の過程で、反応の個々の工程の回数および温度は、サイクル間で変化しないままであってもよく、または効率を上げるか、もしくは選択性を高めるために、反応の過程の1つ以上の時点で変化させてもよい。
【0089】
プライマー対および標的核酸に加えて、PCR反応混合物は通例、典型的には等モル濃度の4つのデオキシリボヌクレオチド5’三リン酸(dNTP)のそれぞれ、耐熱性ポリメラーゼ、二価カチオン(通例、Mg2+)および緩衝剤を含有する。かかる反応の容量は通例、20~100μlである。複数の標的配列を同じ反応において増幅することができる。特定のPCR増幅のサイクル数は、a)出発物質の量、b)反応の効率、ならびにc)産物の検出またはその後の分析の方法および感度を含む幾つかの要因によって決まる。典型的なサイクル増幅反応のためのサイクル条件、試薬濃度、プライマー設計および適切な装置は、当該技術分野で既知である(例えば、Ausubel, F. Current Protocols in Molecular Biology (1988) Chapter 15: “The Polymerase Chain Reaction,” J. Wiley (New York, N.Y. (USA))を参照されたい)。
【0090】
6.2.3.3.非対称PCR増幅
例示的な非対称PCR法は、Gyllensten and E.lich, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 7652-7656 (1988)およびGyllensten and Erlichの1991年の米国特許第5,066,584号明細書に記載されている。従来の非対称PCRは、プライマーの一方を限定量、通例、他方のプライマーの濃度の1/100~1/5で添加する点で対称PCRと異なる。対称PCRと同様、二本鎖アンプリコンが初期の温度サイクル中に蓄積するが、一方のプライマーが出発鋳型の数に応じて、通例15~25回のPCRサイクル後に枯渇する。一方の鎖の線形増幅が、その後のサイクルにおいて枯渇していないプライマーを用いて行われる。文献に報告されている非対称PCR反応に使用されるプライマーは、対称PCRに使用されることが知られるものと同じプライマーであることが多い。Poddar(Poddar, 2000, Mol. Cell Probes 14: 25-32)は、40回の熱サイクルを含むエンドポイントアッセイによってアデノウイルス基質の増幅について対称および非対称PCRを比較した。Poddarは、50:1のプライマー比が最適であり、非対称PCRアッセイがより良好な感度を有するが、より少数の標的分子を含有すると推定される希薄基質溶液については顕著に低下することを報告している。
【0091】
6.2.3.4.改良非対称PCR増幅
改良非対称PCR法は、米国特許第10,513,730号明細書に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。改良非対称PCR法は、指数関数的増幅期および線形増幅期の両方を含む。指数関数的増幅期において、標的核酸の両方の鎖が増幅される。線形増幅期において、鎖の一方のみが増幅され、標的核酸の単一鎖が過剰となる。
【0092】
改良非対称PCR法は、異なる長さおよび融解温度のプライマー対の使用にもかかわらず単一鎖の過剰を達成し、長い方のプライマーは「伸長プライマー」と称され、短い方のプライマーは「非伸長プライマー」と称される。伸長プライマーは、非伸長プライマーよりも高い融解温度を有し、非伸長プライマーの融解温度よりも高いが、伸長プライマーの融解温度よりも低い温度でアニーリング工程を行うPCRサイクルを用いて、標的核酸の単一鎖を選択的に増幅するために使用することができる。選択的増幅により、その後の検出アッセイにおいてプローブすることができる標的鎖に富んだPCR産物の混合物が生じる。
【0093】
伸長プライマーは、標的核酸に相補的な配列に加えて、同じプライマーの標的結合部分に相補的な配列を有する5’伸長を有する。理論に束縛されるものではないが、5’伸長の使用が、伸長プライマー分子の分子内または分子間ハイブリダイゼーションを可能にし、PCR反応の開始時にPCR反応中に存在するDNA分子へのこれらのより長いプライマーの任意のまたは非特異的な結合を防ぐと考えられる。これにより、非特異的なDNA増幅が妨げられ、生体サンプル中に少量で存在する標的を増幅する際に問題となり得るPCR産物中の「ノイズ」が妨げられる。
【0094】
初期PCR反応混合物は、
・核酸サンプルと、
・非対称プライマー対と、
・耐熱性DNAポリメラーゼと、
・PCR試薬と
を含む。
【0095】
PCR反応における伸長プライマーおよび非伸長プライマーの初期濃度は、それぞれ200nM~8μMの範囲とすることができる。伸長プライマーおよび非伸長プライマーは、初期PCR反応において等モル量、例えばそれぞれ約200nM~1μMの範囲の濃度、例えばそれぞれ500nMの濃度で含まれ得る。代替的には、伸長プライマーおよび非伸長プライマーは、初期PCR反応において非等モル量で含まれ得る。或る特定の実施形態では、伸長プライマーの初期濃度は、好ましくは非伸長プライマーの濃度より過剰であり、例えば約2倍~30倍モル過剰である。したがって、或る特定の態様では、伸長プライマーの濃度は、約1μM~8μMの範囲であり、非伸長プライマーの濃度は、約50nM~200nMの範囲である。
【0096】
非対称プライマー対は、任意の供給源からの核酸を増幅するように設計することができ、診断用途では、セクション6.2.1で特定されるような病原体に由来するDNAを増幅するように非対称プライマー対を設計することができる。
【0097】
非対称プライマー対は、多くの種に存在する相同核酸配列、例えば細菌において高度に保存された16S リボソーム配列を同時に増幅することが可能なように設計することができる。
耐熱性DNAポリメラーゼ:本開示の非対称PCR反応に使用することができる耐熱性ポリメラーゼとしては、Vent(Tli/サーモコッカス・リトラリス(Thermoccus Literalis))、Vent exo-、Deep Vent、Deep Vent exo-、Taq(サームス・エクアティカス(Thermus aquaticus))、Hot Start Taq、Hot Start Ex Taq、Hot Start LA Taq、DreamTaq(商標)、TopTaq、RedTaq、Taqurate、NovaTaq(商標)、SuperTaq(商標)、Stoffel Fragment、Discoverase(商標) dHPLC、9° Nm、Phusion(登録商標)、LongAmp Taq、LongAmp Hot Start Taq、OneTaq、Phusion(登録商標) Hot Start Flex、Crimson Taq、Hemo KlenTaq、KlenTaq、Phire Hot Start II、DyNAzyme I、DyNAzyme II、M-MulV Reverse Transcript、PyroPhage(登録商標)、Tth(サームス・サーモフィラス(Thermos termophilus)HB-8)、Tfl、Amlitherm(商標)、Bacillus DNA、DisplaceAce(商標)、Pfu(ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus))、Pfu Turbot、Pfunds、ReproFast、PyroBest(商標)、VeraSeq、Mako、Manta、Pwo(ピロコッカス・ウーゼイ(pyrococcus woesei))、ExactRun、KOD(サーモコッカス・コダカラエンシス(thermococcus kodakkaraensis))、Pfx、ReproHot、Sac(スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius))、Sso(スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus))、Tru(サームス・ルバー(Thermus ruber))、Pfx50(商標)(サーモコッカス・ジリジイ(Thermococcus zilligi))、AccuPrime(商標) GC-Rich(ピロロブス・フマリイ(Pyrolobus fumarius))、ピロコッカス種GB-D、Tfi(サームス・フィリフォルミス(Thermus filiformis))、Tfi exo-、ThermalAce(商標)、Tac(サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum))、Mth(M.テルモオートトロフィカム(M. thermoautotrophicum))、Pab(パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi))、Pho(ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikosihi))、B103(ピコウイルス亜科バクテリオファージB103)、Bst(バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus))、Bst Large Fragment、Bst 2.0、Bst 2.0 WarmStart、Bsu、Therminator(商標)、Therminator(商標) II、Therminator(商標) IIIおよびTherminator(商標) Tが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼはTaq、Hot Start Taq、Hot Start Ex Taq、Hot Start LA Taq、DreamTaq(商標)、TopTaq、RedTaq、Taqurate、NovaTaq(商標)またはSuperTaq(商標)等のTaqポリメラーゼである。
【0098】
改良非対称方法に用いられる非対称サイクルの例示的なセットを表2に示す。
【表2】
【0099】
表2に示すサイクル数の範囲は、任意の非対称プライマー対に用いることができ、最適なサイクル数は、初期PCR混合物中の標的DNAのコピー数によって決まる:初期コピー数が大きいほど、線形増幅期の鋳型とするのに十分な量のPCR産物を生成するために指数関数的増幅期において必要とされるサイクル数がより少なくなる。サイクル数の最適化は、当業者にとって日常的である。
【0100】
表2に示す温度は、伸長プライマーのTmが72℃より高く(例えば、75~80℃)、非伸長プライマーのTmが58℃を超えるが72℃未満(例えば、60~62℃)である場合、および耐熱性DNAポリメラーゼが72℃で活性である場合に特に有用である。
【0101】
サイクル時間、特に伸長時間は、プライマーの融解温度およびPCR産物の長さに応じて変化させることができ、より長いPCR産物は、より長い伸長時間を必要とする。大体の目安は、伸長工程をアンプリコン1000塩基当たり少なくとも60秒とすることである。伸長工程は、アニーリングに追加の時間を取るために線形増幅期において延長することができる。
【0102】
6.2.3.4.1.伸長プライマー
伸長プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域に対して少なくとも75%の配列同一性を有する。或る特定の実施形態では、プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。さらに他の実施形態では、プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域に対して100%の配列同一性を有する。
【0103】
別の言い方をすれば、様々な実施形態において、伸長プライマーの「A」領域は、標的鎖2の対応する領域の相補体に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、または100%の配列同一性を有する。通例、プライマー配列と標的配列との間の任意のミスマッチがより5’側に位置するほど、それらがPCR反応中に許容される可能性が高くなる。当業者は、標的鎖に対して100%未満の配列同一性を有するが、それでも標的DNAを効率的に増幅することができるプライマー配列を容易に設計することができる。
【0104】
「A」領域の少なくとも一部に相補的な「B」領域の配列は、直接反復または逆方向反復であり得る。「B」領域が「A」領域の一部の直接反復を有する場合、
図5Bに示すように、異なる伸長プライマー分子が互いに分子間でハイブリダイズすることができる。「B」領域が「A」領域の一部の逆方向反復を有する場合、伸長プライマー分子は、
図5Cに示すように分子内で、または
図5Aに示すように互いに分子間でハイブリダイズすることができる。
【0105】
「B」領域の配列が相補的な「A」領域の部分は、好ましくは「A」領域の5’末端またはその近く(例えば、5’末端から1、2または3ヌクレオチド以内)であり、すなわち、「A」領域が「B」領域(または「C」領域が存在する場合に「C」領域)に隣接する箇所またはその近くである。
【0106】
伸長プライマーの「B」領域は、好ましくは6~12ヌクレオチド長であり、すなわち、好ましくは6、7、8、9、10、11または12ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、伸長プライマーの「B」領域は、8~10ヌクレオチド長であり、すなわち8、9または10ヌクレオチド長である。
【0107】
「C」領域は、伸長プライマー中に存在する場合、好ましくは1~6ヌクレオチド長であり、すなわち、好ましくは1、2、3、4、5または6ヌクレオチド長である。
【0108】
伸長プライマーのTmは、好ましくは(必ずしもというわけではない)およそ68℃~およそ80℃である。特定の実施形態では、非伸長プライマーのTmは、およそ72℃~およそ78℃、例えばおよそ72℃、およそ73℃、およそ74℃、およそ75℃、およそ76℃、およそ77℃またはおよそ78℃である。
【0109】
領域「A」および「B」の間に位置する任意の領域「C」は、「A」領域および「B」領域の間のスペーサーとして働くことができ、伸長プライマーがヘアピンループを形成し、かつ/または制限エンドヌクレアーゼ配列(好ましくは6-カッター配列)をPCR産物に導入することが可能となる。制限エンドヌクレアーゼ配列は、その全体が「C」領域内にあっても、または「C」領域の全てもしくは一部と、「B」領域および「A」領域のそれぞれの隣接5’および/または3’配列とから形成されていてもよい。標的核酸とのハイブリダイゼーションへの干渉を最小限に抑えるために、「C」領域は、標的鎖1または標的鎖2に相補的でないのが好ましい。
【0110】
伸長プライマーのTmは、好ましくは非伸長プライマーのTmよりも少なくともおよそ6℃高い。好ましくは、伸長プライマーは、非伸長プライマーのTmよりもおよそ15℃~30℃高いTmを有する。
【0111】
伸長プライマーの「A」領域のTmは、好ましくは標的に(少なくとも75%)相補的な非伸長プライマーの部分(任意の5’伸長を除く)のTmよりもおよそ3℃超高くまたは低くならず、すなわち、標的にハイブリダイズするフォワードプライマーの領域のTmは、好ましくは標的にハイブリダイズするリバースプライマーの領域のTmよりもおよそ3℃超高くまたは低くならず、逆の場合も同じである。
【0112】
伸長プライマーの「A」領域は、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド長であり、好ましくは12~30ヌクレオチド、より好ましくは14~25ヌクレオチドの範囲である。或る特定の実施形態では、伸長プライマーの「A」領域は14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド長である。
【0113】
6.2.3.4.2.非伸長プライマー
非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域に対して少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。或る特定の実施形態では、非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。さらに他の実施形態では、非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域に対して100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
【0114】
別の言い方をすれば、様々な実施形態において、非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域の相補体に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。通例、プライマー配列と標的配列との間の任意のミスマッチがより5’側に位置するほど、それらがPCR反応中に許容される可能性が高くなる。当業者は、標的鎖に対して100%未満の配列同一性を有するが、それでも標的DNAを効率的に増幅することができるプライマー配列を容易に設計することができる。
【0115】
非伸長プライマーは、1、2または3ヌクレオチドの5’テールをさらに有していてもよい。
【0116】
非伸長プライマーのTmは、好ましくは(必ずしもというわけではない)およそ50℃~およそ62℃である。特定の実施形態では、非伸長プライマーのTmは、およそ59℃~およそ62℃、例えばおよそ59℃、およそ60℃、およそ61℃またはおよそ62℃である。
【0117】
非伸長プライマーのTmは、好ましくは伸長プライマーのTmよりも少なくともおよそ6℃低い。好ましくは、非伸長プライマーは、伸長プライマーのTmよりもおよそ15℃~30℃低いTmを有する。
【0118】
標的に(少なくとも75%)相補的な非伸長プライマーの領域(任意の5’伸長を除く)のTmは、好ましくは伸長プライマーの「A」領域のTmよりもおよそ3℃超高くまたは低くならず、すなわち、標的にハイブリダイズするフォワードプライマーの領域のTmは、好ましくは標的にハイブリダイズするリバースプライマーの領域のTmよりもおよそ3℃超高くまたは低くならず、逆の場合も同じである。
【0119】
非伸長プライマーは、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド長であり、好ましくは12~30ヌクレオチド、より好ましくは14~25ヌクレオチドの範囲である。或る特定の実施形態では、非伸長プライマーは14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド長である。
【0120】
6.2.3.4.3.汎用プライマー
幾つかの非対称PCR法では、例えば米国特許第8,735,067号明細書に記載されるように、フォワードおよびリバースプライマー対に加えて、プライマーの一方に付加した5’オリゴヌクレオチドテールと同様の配列を有する第3の「汎用」プライマーが使用される。汎用プライマーは、初期PCRサイクル後に増幅反応に関与し、多重増幅反応における異なる標的の増幅効率の「バランスを取る」ことを意図したものである。
【0121】
理論に束縛されるものではないが、改良非対称PCR法との関連では伸長プライマーの「B」領域の配列から本質的になる配列を有する、米国特許第8,735,067号明細書に記載されるような汎用プライマー(かかる汎用プライマーを本明細書で「汎用プライマー」と称する)の組入れは、本明細書に記載される非対称プライマー対を用いた増幅効率を低下させると考えられる。したがって、本明細書に記載される改良非対称DNA増幅法は、好ましくは汎用プライマーの非存在下で行われる。
【0122】
関連の実施形態では、本明細書に記載される改良非対称DNA増幅法は、標的領域1つ当たり単一の非対称プライマー対を利用することができる、すなわち、個々のプライマーが、混合塩基をプライマーの或る特定の位置に組み入れることによって生じる密接に関連した配列を有するプライマー分子の混合物であり得ることを認めた上で、任意の付加的なプライマーを含まない。明確にし、誤解を避けるために、本実施形態は、単一の非対称プライマー対が各アンプリコンに使用される限りにおいて、多重増幅反応への複数の非対称プライマー対の使用を除外するものではない。
【0123】
6.2.3.5.リアルタイムPCR増幅
本開示の方法に用いられるPCR増幅反応は、リアルタイムPCR増幅反応であってもよい。
【0124】
リアルタイムPCRは、増幅DNA産物の蓄積を反応の進行とともに、通例、PCRサイクル毎に1回測定することができる、成長している一連の手法を指す。経時的な産物の蓄積のモニタリングにより、反応の効率を決定するとともに、DNA鋳型分子の初期濃度を推定することが可能である。リアルタイムPCRに関する大まかな詳細については、Real-Time PCR: An Essential Guide, K. Edwards et al., eds., Horizon Bioscience, Norwich, U.K. (2004)を参照されたい。
【0125】
現在、増幅DNAの存在を示す幾つかの異なるリアルタイム検出化学が存在している。これらの殆どが、PCRプロセスの結果として特性を変化させる蛍光指示薬に依存する。これらの検出化学には、二本鎖DNAへの結合後に蛍光効率が高まるDNA結合色素(SYBR(登録商標) Green等)が含まれる。他のリアルタイム検出化学には、色素の蛍光効率が別の光吸収部分またはクエンチャーとの近接性に強く依存する現象である蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が利用される。これらの色素およびクエンチャーを通例、DNA配列特異的プローブまたはプライマーに付着させる。FRETベースの検出化学には、加水分解プローブおよび立体構造プローブが含まれる。加水分解プローブ(TaqMan(登録商標)プローブ等)は、ポリメラーゼ酵素を用いて、オリゴヌクレオチドプローブに付着したクエンチャー色素分子からレポーター色素分子を切断する。立体構造プローブ(分子ビーコン等)は、オリゴヌクレオチドに付着した色素を利用し、標的DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの立体構造変化によって蛍光発光が変化する(例えば、Tyagi S et al., 1996, Molecular beacons: probes that fluoresce upon hybridization. Nat Biotechnol 14, 303-308を参照されたい)。
【0126】
リアルタイムPCRは、対称または非対称であり、例えば、セクション6.2.3.3またはセクション6.2.3.4に記載される対称または非対称PCR増幅反応の反応混合物中の加水分解プローブ分子を用いて行うことができる。
【0127】
リアルタイムPCRを行うために使用することができる市販の機器は多数ある。利用可能な機器の例としては、Applied BiosystemsのPRISM 7500、Bio-RadのiCylcerおよびRoche DiagnosticsのLightCycler 2.0が挙げられる。
【0128】
6.2.4.プローブ分子
本開示は、PCR反応において生成するアンプリコンの配列特異的検出に適したプローブ分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブ分子を提供する。
【0129】
上首尾のオリゴヌクレオチドプローブ分子設計のためのパラメーターは、当該技術分野で既知であり、プローブ分子長、クロスハイブリダイゼーション効率、融解温度、GC含量、自己アニーリング、および二次構造を形成する能力が挙げられるが、これらに限定されない。本開示は、マイクロアレイ、例えばアドレス可能なアレイへのオリゴヌクレオチドプローブ分子の使用を提供し、この場合、プローブ分子が基板、例えば膜、例えばガラス基板、例えばプラスチック基板、例えばポリマーマトリックス基板に固定され、同様ないし同一の配列、例えば少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、またはさらには100%の類似性または同一性を有する配列を有するアンプリコンとのオリゴヌクレオチドプローブ分子のハイブリダイゼーションを可能にする条件下で核酸に曝露される。
【0130】
幾つかの実施形態では、本開示の方法に使用されるオリゴヌクレオチドプローブ分子は、第1のゲノム配列および/または第2のゲノム配列中の15~40個の連続したヌクレオチドに90%~100%(例えば、90%~95%または95%~100%)相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0131】
例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子は、実施例に記載され、配列番号1~7のヌクレオチド配列を含むプローブ分子が含まれる。
【0132】
幾つかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ分子は、アレイ上に存在する。各プローブ分子は、オリゴヌクレオチドプローブ分子がアレイ上に存在する位置的にアドレス可能なプローブ分子となるように、アレイ上の別々の位置にあり、アレイ上のその位置によって区別可能とすることができる。
【0133】
幾つかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ分子は、ポリチミジンテール、例えば最大10個のヌクレオチドを含むポリチミジンテール、または例えば最大15個のヌクレオチドを含むポリチミジンテール、または例えば最大20個のヌクレオチドを含むポリチミジンテールを含む。一実施形態では、ポリチミジンテールは、10~20個のヌクレオチド、例えば15個のヌクレオチドを含む。ポリチミジンテールは、プローブ分子をアレイに付着させる場合に有用な可能性があり、ポリチミジンテールは、アレイ基板と、標的配列に対して部分的または完全な相補性を有するプローブ分子の領域との間のスペーサーとして働く。
【0134】
オリゴヌクレオチドプローブ分子は標識されていても、または非標識であってもよい。幾つかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ分子は標識されている。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ分子は非標識である。オリゴヌクレオチドプローブ分子は、例えばセクション6.2.3またはセクション6.2.3.1に記載されるような蛍光色素であり得る蛍光レポーターで標識することができる。標識オリゴヌクレオチドプローブ分子は、例えばリアルタイムPCR反応に使用することができる。リアルタイムPCR用の標識オリゴヌクレオチドプローブ分子は、プローブ分子の一方の端に蛍光レポーターを含み、プローブ分子の他方の端にレポーターの蛍光を消光するクエンチャー部分を含んでいてもよい。PCR中に、プローブ分子がアニーリング段階でその標的配列にハイブリダイズすることができ、ポリメラーゼが伸長段階でプローブ分子に達した後、その5’-3’エキソヌクレアーゼがプローブを分解し、蛍光レポーターとクエンチャーとを物理的に分離することで、蛍光が増加し、これを測定することができる。
【0135】
プローブ分子上の蛍光標識およびクエンチャー部分の位置は、2つの部分の間でFRETが生じ得るようなものであってもよい。蛍光標識を、例えばプローブ分子の5’末端またはその近くとし、クエンチャー部分をプローブの3’末端またはその近くとすることができる。幾つかの実施形態では、蛍光標識とクエンチャーとの間の分離距離は、約14~約22ヌクレオチドであるが、約6、約8、約10または約12ヌクレオチドのような他の距離を用いてもよい。用いることができる付加的な距離としては、約14、約16、約18、約20または約22ヌクレオチドが挙げられる。
【0136】
リアルタイムPCR用のオリゴヌクレオチドプローブ分子に使用することができる例示的な蛍光標識は、FAMまたは6-FAMであり、代表的なクエンチャー部分はMGBである。レポーター部分の他の非限定的な例としては、フルオレセイン、HEX、TET、TAM、ROX、Cy3、Alexaおよびテキサスレッドが挙げられ、クエンチャーまたはアクセプター蛍光部分の非限定的な例としては、TAMRA、BHQ(ブラックホールクエンチャー)、LC RED 640、およびCY5等のシアニン色素が挙げられる。当業者には理解されるように、レポーターおよびクエンチャー/アクセプター部分の任意の対を、それらがドナーからクエンチャー/アクセプターへの伝達が起こり得るように適合する限りにおいて使用することができる。さらに、好適なドナーおよびクエンチャー/アクセプターの対は、当該技術分野で既知であり、本明細書で提供される。対の選択は、当該技術分野で既知の任意の手段によって行うことができる。特注のリアルタイムPCRプローブ分子が、例えばThermoFisher Scientific、Sigma-Aldrich等から市販されている。
【0137】
6.2.5.仮想プローブ
便宜上、本セクション(および本開示の他のセクション)では、仮想プローブでプローブすることができるアンプリコンおよびアンプリコンセットに言及する。しかしながら、仮想プローブを同様にゲノム断片等の非増幅標的核酸を含有するか、または含有する疑いがあるサンプルをプローブするために使用することができると理解すべきである。
【0138】
第1のアンプリコンセット(第1のゲノム中の領域に対応する単一の第1のアンプリコンまたは第1のゲノム中の異なる領域に対応する複数の第1のアンプリコンを含む)と第2のアンプリコンセット(第2のゲノム中の領域に対応する単一の第2のアンプリコンまたは第2のゲノム中の異なる領域に対応する複数の第2のアンプリコンを含む)との間のヌクレオチドミスマッチの数は、比較的小さいことがあり、個々のオリゴヌクレオチドプローブ分子は、第1および第2のアンプリコンセットを個別に区別することができない可能性がある。本発明者らは予期せぬことに、それにもかかわらず、仮想プローブを用いることにより、かかる状況で第1および第2のアンプリコンセットを区別し得ることを発見した。仮想プローブのプローブ分子は、第1および第2のアンプリコンセットを仮想プローブのプローブ分子でプローブした場合に観察される異なるハイブリダイゼーションパターンにより、2つのアンプリコンセットを個別に区別することはできないが、集合的に区別することができる。
【0139】
プローブ分子が第1のアンプリコンセットにハイブリダイズした場合およびプローブ分子が第2のアンプリコンセットにハイブリダイズした場合に(例えば、アレイ上でまたはリアルタイムPCR反応中に)、仮想プローブを構成する2つ以上のプローブ分子のシグナルパターンに違いが見られるように、第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンのヌクレオチド配列は、仮想プローブに使用されるプローブ分子が結合し得るアンプリコンの領域に少なくとも1つ(例えば1つ、少なくとも2つ、2つ、少なくとも3つまたは3つ)のヌクレオチドミスマッチを有する必要がある。シグナルパターンの違いを用いて、第1および第2のアンプリコンセットを特定および/または区別することができる。仮想プローブを用いて第1のアンプリコンセットが存在することが決定された場合、第1のアンプリコンセットが作製されたサンプルが第1のアンプリコンセットに対応するゲノム(さらに言うと、ゲノムがサンプル中に含まれる生物)を含有すると結論付けることができる。同様に、仮想プローブを用いて第2のアンプリコンセットが存在することが決定された場合、第2のアンプリコンセットが作製されたサンプルが第2のアンプリコンセットに対応するゲノム(さらに言うと、ゲノムがサンプル中に含まれる生物)を含有すると結論付けることができる。
【0140】
PCR増幅産物にハイブリダイズした際の仮想プローブの個々のプローブ分子のシグナル(例えば、アレイ上の位置によって区別可能であるか、または異なる蛍光標識に対応するシグナル)を、例えば1つ以上のブール演算子、1つ以上の関係演算子、または1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって任意の組合せで組み合わせて、第1および第2のアンプリコンセットを区別することができる。幾つかの実施形態では、シグナルを1つ以上のブール演算子によって組み合わせる。他の実施形態では、シグナルを1つ以上の関係演算子によって組み合わせる。さらに他の実施形態では、シグナルを1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって組み合わせる。
【0141】
場合によっては、ブール演算子「AND」、「OR」および「NOT」を用いて仮想プローブの個々のプローブ分子からのシグナルを組み合わせ、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。一例として、2つの相同アンプリコン(この例では、「アンプリコンA」および「アンプリコンB」)に対する仮想プローブは、2つのプローブ分子(この例では、「プローブ1」および「プローブ2」)からなる。プローブ1およびプローブ2はどちらもアンプリコンAに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、プローブ1はアンプリコンBに特異的にハイブリダイズすることが可能であるが、プローブ2はそうではない。PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、PCR増幅産物に対するプローブ1のハイブリダイゼーションによるシグナルおよびプローブ2のハイブリダイゼーションによるシグナルがどちらも陽性である場合(ブール演算子「AND」を用いて「プローブ1ANDプローブ2」と表すことができる)、アンプリコンAがPCR増幅産物中に存在すると決定することができる。PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、PCR産物に対するプローブ1のハイブリダイゼーションによるシグナルが陽性であり、PCR産物に対するプローブ2のハイブリダイゼーションによるシグナルが陽性でない場合(ブール演算子「NOT」を用いて「プローブ1NOTプローブ2」と表すことができる)、アンプリコンBがPCR増幅産物中に存在すると決定することができる。例えば、ハイブリダイゼーションシグナルがバックグラウンドレベルを超える場合、ハイブリダイゼーションシグナルを陽性であるとみなすことができる。例えば、シグナルが観察されないか、または観察されたシグナルがバックグラウンドレベルを超えない場合、ハイブリダイゼーションシグナルを陽性でないとみなすことができる。
【0142】
場合によっては、関係演算子「より大きい」(「>」)および「より小さい」(「<」)を用いて仮想プローブの個々のプローブ分子からのシグナルを組み合わせ、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。一例として、2つの相同アンプリコン(この例では、「アンプリコンC」および「アンプリコンD」)に対する仮想プローブは、2つのプローブ分子(この例では、「プローブ3」および「プローブ4」)からなる。プローブ3およびプローブ4はどちらもアンプリコンCおよびアンプリコンDに特異的にハイブリダイズすることが可能である。プローブ3およびプローブ4がアンプリコンCにハイブリダイズする場合、プローブ3のシグナルは、プローブ4のシグナルよりも大きい(「より大きい」関係演算子を用いて「プローブ3>プローブ4」と表すことができる)。一方、プローブ3およびプローブ4がアンプリコンDにハイブリダイズする場合、プローブ3のシグナルは、プローブ4のシグナルよりも小さい(「より小さい」関係演算子を用いて「プローブ3<プローブ4」と表すことができる)。このため、PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、プローブ3のシグナルがプローブ4のシグナルよりも大きい場合、アンプリコンCがPCR増幅産物中に存在すると決定することができ、プローブ3のシグナルがプローブ4のシグナルよりも小さい場合、アンプリコンDがPCR増幅産物中に存在すると決定することができる。
【0143】
ハイブリダイゼーションシグナルを組み合わせる場合、シグナルは例えば、絶対シグナル、正規化シグナルまたは微量シグナルであり得る(例えば、仮想プローブに使用されるプローブ分子のシグナルの値は、例えば実施例3に記載されるような所定の関数を用いてスケーリングすることができる)。プローブ分子のシグナルは、例えば所定のカットオフを超える場合に陽性であるとみなすことができる。カットオフを例えば、所与のプローブ分子について観察されるバックグラウンドシグナル(例えば、非特異的なハイブリダイゼーションによるバックグラウンドシグナル)でまたはそのバックグラウンドシグナルを超えて設定することができる。このため、例えば、プローブ分子のシグナルが観察されるが、シグナルがバックグラウンドレベルを超えない場合、シグナルを陽性でないとみなすことができる。
【0144】
一実施形態では、仮想プローブは、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子(例えば、2つのオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含む。別の実施形態では、仮想プローブは、3つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子(例えば、3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子または4つのオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含む。
【0145】
幾つかの実施形態では、第1の生物および第2の生物に対する仮想プローブは、2つのプローブ分子からなる。一実施形態では、2つのプローブ分子は、第1のアンプリコンセットの第1のアンプリコン(第1の生物に対応する)および第2のアンプリコンセットの第2のアンプリコン(第2の生物に対応する)に特異的にハイブリダイズすることが可能な第1のプローブ分子と、第2のアンプリコンセットのアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であるが、第1のアンプリコンセットのアンプリコンにはハイブリダイズすることができない第2のプローブ分子とを含む。かかる実施形態では、サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、かつ第2のプローブ分子のシグナルが陽性でない場合に第1の生物がサンプル中に存在すると決定することができる。一方、PCR増幅産物をプローブした際に第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、かつ第2のプローブ分子のシグナルが陽性である場合、第2の生物がサンプル中に存在すると決定することができる。
【0146】
幾つかの実施形態では、第1の生物および第2の生物に対する仮想プローブは、3つのプローブ分子からなる。一実施形態では、3つのプローブ分子は、第1のアンプリコンセットの第1のアンプリコン(第1の生物に対応する)および第2のアンプリコンセットの第2のアンプリコン(第2の生物に対応する)に特異的にハイブリダイズすることが可能な第1のプローブ分子と、第1のアンプリコンセットのアンプリコンおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、第1のプローブとは異なる第2のプローブ分子と、第1のアンプリコンセットのアンプリコンおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、第1および第2のプローブ分子とは異なる第3のプローブ分子とを含む。かかる実施形態では、PCR増幅産物をプローブする際に観察される3つのプローブ分子の相対シグナルを用いて、PCR増幅産物の調製に使用されたサンプルが第1の生物または第2の生物を含有するかを決定することができる。
【0147】
仮想プローブを用いて相同ゲノム配列を区別することができるため、近縁の生物、例えば近縁の微生物を区別するために仮想プローブを使用することができる。例えば、仮想プローブを用いて同じ目、同じ科、同じ属、同じ群、またはさらには同じ種(例えば、同じ種の異なる株)の微生物を区別することができる。例えば、仮想プローブを用いてラクトバチルス種とリステリア種とを区別し、コリネバクテリウム種とプロピオニバクテリウム種とを区別し、ミクロコッカス種とコクリア種とを区別し、パスツレラ種とヘモフィラス種とを区別し、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種とコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種とを区別し、ストレプトコッカス種(例えば、S.アンギノーサス(S. anginosus)、S.ゴルドニイ(S. gordonii)、S.ミティス(S. mitis)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)、S.アガラクティアエ(S. agalactiae)、S.ピオゲネス(S. pyogenes)、S.ガロリティカス(S. gallolyticus)、S.インファンタリウス(S. infantarius)、S.ベスティブラリス(S. vestibularis)、S.サリバリウス(S. salivarius)、S.ハイオインテスティナリス(S. hyointestinalis)、S.コンステラタス(S. constellatus)、S.インターメディウス(S. intermedius)、S.オラリス(S. oralis)、S.サングイニス(S. sanguinis)、S.パラサングイニス(S. parasanguinis))を区別し、スタフィロコッカス種(例えば、S.ルグドゥネンシス(S. lugdunensis)、S.エピデルミディス(S. epidermidis))を区別し、エンテロコッカス種(例えば、E.フェカーリス(E. fecalis)、E.フェシウム(E. faecium))を区別し、クロストリジウム種(例えば、C.パーフリンゲンス(C. perfringens)、C.クロストリディオフォルメ(C. clostridiiforme)、C.イノキュウム(C. innocuum))を区別し、バチルス種(例えば、B.セレウス(B. cereus)、B.コアグランス(B. coagulans))を区別し、シュードモナス種(例えば、P.エルジノーサ(P. aeruginosa)、P.プチダ(P. putida)、P.スタッツェリ(P. stutzeri)、P.フルオレッセンス(P. fluorescens)、P.メンドシナ(P. mendocina))を区別し、アシネトバクター種(例えば、A.バウマンニイ(A. baumannii)、A.ルヴォフィイ(A. lwoffii)、A.ウルシンギイ(A. ursingii)、A.ヘモリティカス(A. haemolyticus)、A.ジュニイ(A. junii))を区別することができる。
【0148】
セクション6.2.5.1~6.2.5.3およびセクション7の実施例1~5に、異なるタイプの近縁の細菌を特定および/または区別するための例示的な仮想プローブを記載する。
【0149】
6.2.5.1.コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種に対する仮想プローブ
本開示は、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種がサンプル中に存在するかを決定するために使用することができ、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種を含むサンプルと、コアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種を含むサンプルとを区別するために使用することができる仮想プローブを提供する。コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種に対する仮想プローブに使用することができる第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むか、またはそれからなる。コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種に対する仮想プローブに使用することができる第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むか、またはそれからなる。配列番号1および配列番号2のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプローブするように設計される。このため、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列を有するプローブ分子は、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種の16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを用いて行われるPCR増幅反応によって生成するアンプリコンをプローブするために使用することができる。プローブ分子は例えば、アレイ上に含まれるか、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0150】
サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、第1のオリゴヌクレオチドプローブ(「プローブ1」)のシグナルが陽性であり、かつ第2のオリゴヌクレオチドプローブ(「プローブ2」)のシグナルが陽性でない場合(「NOT」演算子を用いて「プローブ1NOTプローブ2」と表すことができる)、サンプルがコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種を含有すると決定することができる。コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種に対する例示的な仮想プローブは、実施例1にさらに記載される。
【0151】
6.2.5.2.ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)およびストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)に対する仮想プローブ
本開示は、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)またはストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)がサンプル中に存在するかを決定するために使用することができ、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)を含むサンプルとストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)を含むサンプルとを区別するために使用することができる仮想プローブを提供する。S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)に対する仮想プローブに使用することができる第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)に対する仮想プローブに使用することができる第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。配列番号3および配列番号4のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプローブするように設計される。このため、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子は、S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)に由来する16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを用いて行われるPCR増幅反応によって生成するアンプリコンをプローブするために使用することができる。プローブ分子は例えば、アレイ上に含まれるか、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0152】
サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、第1のプローブ(「プローブ1」)のシグナルが陽性であり、かつ第2のプローブ(「プローブ2」)のシグナルが陽性でない場合(「NOT」演算子を用いて「プローブ1NOTプローブ2」と表すことができる)、サンプルがS.ゴルドニイ(S. gordonii)を含有すると決定することができる。サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、プローブ1のシグナルが陽性であり、かつプローブ2のシグナルが同様に陽性である場合(「AND」演算子を用いて「プローブ1ANDプローブ2」と表すことができる)、サンプルがS.アンギノーサス(S. anginosus)を含有すると決定することができる。S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)に対する例示的な仮想プローブは、実施例2にさらに記載される。
【0153】
6.2.5.3.ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)およびストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)に対する仮想プローブ
本開示は、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)またはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)がサンプル中に存在するかを決定するために使用することができ、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)を含むサンプルとストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を含むサンプルとを区別するために使用することができる仮想プローブを提供する。S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に対する仮想プローブに使用することができる第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むか、またはそれからなる。S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に対する仮想プローブに使用することができる第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むか、またはそれからなる。S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に対する仮想プローブに使用することができる第3の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。配列番号5、配列番号6および配列番号7のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプローブするように設計される。このため、配列番号5、配列番号6または配列番号7のヌクレオチド配列を有するプローブ分子は、S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)の16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを用いて行われるPCR増幅反応によって生成するアンプリコンをプローブするために使用することができる。プローブ分子は例えば、アレイ上に含まれるか、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0154】
サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、第2のプローブ(「プローブ2」)および/または第3のプローブ(「プローブ3」)のシグナルが、スケーリングされた第1のプローブ(「プローブ1」)のシグナルよりも小さい場合、サンプルがS.ミティス(S. mitis)を含有すると決定することができる。サンプルがS.ミティス(S. mitis)を含有するかを決定するためのシグナル間の関係は、ブール演算子および関係演算子を用いて「(プローブ2ORプローブ3)<(プローブ1)/n」と表すことができ、ここで、nはプローブ1のシグナルのスケーリングに使用される所定の値である。サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、プローブ2および/またはプローブ3のシグナルが、スケーリングされたプローブ1のシグナルよりも大きい場合、サンプルがS.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有すると決定することができる。サンプルがS.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有するかを決定するためのシグナル間の関係は、ブール演算子および関係演算子を用いて「(プローブ2ORプローブ3)>(プローブ1)/n」と表すことができる。「n」の好適な値は例えば、S.ミティス(S. mitis)を含有することが知られるサンプルから作製されたPCR産物をプローブし、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有することが知られるサンプルからのPCR産物をプローブすることによって決定することができる。
【0155】
代替的には、サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、プローブ1のシグナルで除算したプローブ3のシグナルが、所定の値「n」よりも小さい場合、サンプルがS.ミティス(S. mitis)を含有すると決定することができる。サンプルから調製されたPCR増幅産物をプローブした際に、プローブ1のシグナルで除算したプローブ3のシグナルが「n」よりも大きい場合、サンプルがS.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有すると決定することができる。「n」の好適な値は例えば、S.ミティス(S. mitis)を含有することが知られるサンプルから作製されたPCR産物をプローブし、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有することが知られるサンプルからのPCR産物をプローブすることによって決定することができる。
【0156】
S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に対する例示的な仮想プローブは、実施例3にさらに記載される。
【0157】
6.3.アレイ
本開示は、それぞれが第1のゲノム配列と第2の相同ゲノム配列とを区別するのに有用であり得る1つ以上の仮想プローブを含むアドレス可能なアレイを提供する。
【0158】
本開示のアドレス可能なアレイは、本明細書に記載される方法に使用することができる。本開示のアドレス可能なアレイは、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み得る。幾つかの実施形態では、仮想プローブを構成するオリゴヌクレオチドプローブ分子の群(通例、2つまたは3つの異なるプローブ分子)の各プローブ分子は、仮想プローブにより区別されることが意図される第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続したヌクレオチド(例えば15~20個、15~30個、20~40個、20~30個または30~40個の連続したヌクレオチド)に90%~100%(例えば、90%~95%または95%~100%)相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0159】
アドレス可能なアレイは任意に、1つ以上の対照プローブ分子(例えば、DNA抽出および増幅工程の効率を評価するのに有用な抽出および増幅対照、ならびに/またはアレイへのDNAハイブリダイゼーションの効率を評価するのに有用なハイブリダイゼーション対照)をさらに含み得る。
【0160】
幾つかの実施形態では、アレイのプローブ分子はポリチミジンテール、例えば最大10個のヌクレオチドを含むポリチミジンテール、または例えば最大15個のヌクレオチドを含むポリチミジンテール、または例えば最大20個のヌクレオチドを含むポリチミジンテールを含む。幾つかの実施形態では、ポリチミジンテールは10マー~20マー、例えば15マーである。
【0161】
幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、12個以上のプローブ分子、例えば12~100個のプローブ分子、または例えば12~50個のプローブ分子、または例えば25~75個のプローブ分子、または例えば50~100個のプローブ分子を含む。幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、12個のプローブ分子を含む。他の実施形態では、アドレス可能なアレイは、14個のプローブ分子を含む。さらに他の実施形態では、アドレス可能なアレイは、84個のプローブ分子を含む。
【0162】
幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、少なくとも2個の仮想プローブ、例えば少なくとも3個の仮想プローブ、もしくは例えば少なくとも5個の仮想プローブ、もしくは例えば少なくとも10個の仮想プローブに対するオリゴヌクレオチドプローブを含み、または例えば、アドレス可能なアレイは、最大10個もしくは最大15個の仮想プローブに対するオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0163】
仮想プローブは、プローブ分子が2つ以上の仮想プローブの構成要素であり得るように重複していてもよい。仮想プローブは、重複していなくてもよい。
【0164】
幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、少なくとも5個の異なるタイプの微生物、例えば細菌を区別することが可能な仮想プローブを含む。他の実施形態では、アドレス可能なアレイは、少なくとも10個の異なるタイプ、例えば少なくとも20個の異なるタイプ、例えば少なくとも30個の異なるタイプ、例えば少なくとも40個の異なるタイプ、または例えば最大50個の異なるタイプの微生物、例えば細菌を区別することが可能な仮想プローブを含む。
【0165】
幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、それぞれがサンプル中に存在する可能性がある異なるタイプの微生物、例えば細菌、例えば異なる株または種の細菌を特定することが可能な、少なくとも5個の仮想プローブ、例えば少なくとも10個の仮想プローブ、例えば少なくとも15個の仮想プローブ、または例えば少なくとも20個の仮想プローブを含む。
【0166】
幾つかの実施形態では、本開示のアドレス可能なアレイは、真正細菌の種に由来するゲノム配列と真正細菌の種ではない微生物のゲノム配列とを識別するための1つ以上の仮想プローブを含む。幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、グラム陽性細菌に由来するゲノム配列とグラム陰性細菌に由来するゲノム配列とを識別するのに適した1つ以上の仮想プローブを含む。幾つかの実施形態では、アドレス可能なアレイは、異なる目の微生物に由来するゲノム配列を識別するのに適した1つ以上の仮想プローブを含む。幾つかの実施形態では、仮想プローブは、異なる科の微生物に由来するゲノム配列を識別するのに適している。幾つかの実施形態では、仮想プローブは異なる属、異なる群および/または異なる種の微生物に由来するゲノム配列を識別するのに適している。
【0167】
本開示のアレイの作製に使用することができる好適なマイクロアレイシステムは、米国特許第9,738,926号明細書および米国特許出願公開第2018/0362719号明細書に記載されており、それらの内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。米国特許第9,738,926号明細書および米国特許出願公開第2018/0362719号明細書に記載されるマイクロアレイシステムは、三次元架橋ポリマーネットワークを利用するものである。このため、幾つかの実施形態では、本開示のアレイは、米国特許第9,738,926号明細書に記載されるアレイを含み、アレイのプローブ分子が本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含む。他の実施形態では、本開示のアレイは、米国特許出願公開第2018/0362719号明細書に記載されるアレイを含み、アレイのプローブ分子が本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含む。
【0168】
本開示の一態様では、本開示は、本開示のアレイを用いて第1の生物または第2の生物がサンプル中に存在するかを決定する方法を提供する。例示的な方法は、
第1の生物のゲノム(「第1のゲノム」)および第2の生物のゲノム(「第2のゲノム」)の両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて、サンプルに対してPCR増幅反応を行う工程であって、第1のゲノムおよび第2のゲノムがサンプル中に存在する場合に、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが生じ、PCR増幅反応により、測定可能なシグナルを生じる標識が反応によって生成する任意のPCR増幅産物に組み込まれる工程と、
PCR増幅産物を、それぞれが第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセットの1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能である2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む1つ以上の仮想プローブを有する本開示のアレイに接触させる工程であって、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子が、第1のアンプリコンセットのアンプリコンおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンに異なってハイブリダイズし、それによって第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンへのプローブ分子のハイブリダイズにより、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる工程と、
非結合核酸分子をアレイから洗い流す工程と、
アレイ上の各プローブ分子位置での標識のシグナルを測定する工程と、
プローブ分子にハイブリダイズするPCR増幅産物がPCR増幅反応によって生成することがシグナルにより示される場合、本明細書に記載されるようにシグナルを分析して、第1のアンプリコンセットもしくは第2のアンプリコンセットがPCR増幅反応によって生成するかを決定するか、またはプローブ分子の群にハイブリダイズするPCR増幅産物がPCR増幅反応によって生成しないことがシグナルにより示される場合、そのサンプルが第1の生物もしくは第2の生物を含有しないと決定する工程とを含み、
これにより第1の生物または第2の生物がサンプル中に存在するかを決定する。
【0169】
6.4.システム
本開示は、生物がサンプル中に存在するかを決定するためのシステムを提供する。システムは例えば、(i)オリゴヌクレオチドプローブ分子を有するアレイ(例えば、本開示のアレイ)の各プローブ分子位置に対してシグナルデータを生成する光学読取り装置と、(ii)光学読取り装置からシグナルデータを受信するように構成され、仮想プローブ(例えば、本明細書に記載されるような特徴を有する仮想プローブ)を用いてシグナルデータを分析するように構成され、分析の結果を出力するために記憶もしくは表示デバイスまたはネットワークへのインターフェースを有する、少なくとも1つのプロセッサとを備えることができる。
【0170】
本開示のシステムに使用することができる光学読取り装置としては、市販のマイクロプレートリーダー(例えば、GloMax(登録商標) Discover(Promega)、ArrayPix(商標)(Arrayit)、Varioskan(商標) LUX(Thermo Scientific)、Infinite(登録商標) 200 PRO(Tecan))が挙げられる。
【0171】
システムは、シグナルデータの分析を実行するためのプロセッサ実行可能命令を含む非一時的記憶媒体(例えばハードディスク、フラッシュドライブ、CDまたはDVD)を備えていてもよい。
【0172】
システムは、汎用または専用コンピューティングシステム環境または構成を含み得る。本開示のシステムとともに使用することができる既知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、パーソナルコンピューター、サーバーコンピューター、スマートフォン、タブレット、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークPC、ミニコンピューター、メインフレームコンピューター、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
本開示のシステムは、プログラムモジュール等のコンピューター実行可能命令を実行することができる。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか、または特定の抽象データタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。幾つかの実施形態は、通信ネットワークを介して接続される遠隔処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境でも実施され得る。これらの分散システムは、企業コンピューティングシステムとして知られるものであってもよく、または幾つかの実施形態では、「クラウド」コンピューティングシステムであってもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶デバイスを含むローカルおよび/またはリモートコンピューター記憶媒体の両方に格納され得る。
【0174】
コンピューティング環境は、1つ以上の入力/出力デバイスを含み得る。幾つかのかかる入力/出力デバイスは、ユーザーインターフェースを提供し得る。ユーザーは、キーボード等の入力デバイスおよびマウス等のポインティングデバイスによってコンピューターにコマンドおよび情報を入力することができる。しかしながら、トラックボール、タッチパッドまたはタッチスクリーンを含む他の形態のポインティングデバイスを使用してもよい。
【0175】
本開示のシステムは、ユーザーインターフェースの一部を形成し得る出力デバイス、例えばモニターを含む1つ以上の出力デバイスを備えていてもよい。
【0176】
本開示のシステムは、1つ以上のリモートコンピューターとの論理的な接続を用いてネットワーク化環境で運用することができる。リモートコンピューターは、パーソナルコンピューター、サーバー、ルーター、ネットワークPC、ピアデバイスまたは他の一般的なネットワークノードであり得る。論理的な接続には、ローカルエリアネットワーク(LAN)および広域ネットワーク(WAN)が含まれるが、他のネットワークが含まれることもある。かかるネットワーキング環境は、オフィス、企業規模のコンピューターネットワーク、イントラネットおよびインターネットにおいて一般的である。代替的または付加的には、WANはセルラーネットワークを含んでいてもよい。
【0177】
LANネットワーキング環境において使用する場合、本開示のシステムは、ネットワークインターフェースまたはアダプターを介してLANに接続することができる。WANネットワーキング環境において使用する場合、システムは、インターネット等のWAN上で通信を確立するためのモデムまたは他の手段を備えていてもよい。
【0178】
ネットワーク化環境では、仮想プローブを用いてシグナルデータを分析するためのプログラムモジュールをリモートメモリ記憶デバイス(例えば、ハードドライブまたはフラッシュドライブ)に格納することができる。
【0179】
本開示のシステムは、PCR増幅反応の産物をアレイに添加することができ、非結合核酸分子をアレイから洗い流すことができるプレートハンドリングロボットをさらに備えていてもよい。多数のプレートハンドリングロボットが市販されており、かかるロボットを本開示のシステムに使用することができる(例えば、TecanのMSP 9000、MSP 9250もしくはMSP 9500、TecanのCavro(登録商標) Omni Flex、TricontinentのTriTon(XYZ)、またはAuroraのVersa(商標))。
【0180】
6.5.キット
本開示は、本開示の方法への使用に適したキットを提供する。
【0181】
キットは例えば、本明細書に記載されるリアルタイムPCR反応への使用に適した2個以上の標識プローブ分子(例えば、2~20個のプローブ分子、2~10個のプローブ分子、2~5個のプローブ分子、5~10個のプローブ分子または10~20個のプローブ分子)のセットを含み得る。例えば、キットは、(1)ヌクレオチド配列が配列番号1を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号2を含むプローブ分子;(2)ヌクレオチド配列が配列番号3を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むプローブ分子;または(3)ヌクレオチド配列が配列番号5を含むプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むプローブ分子を含むことができる。幾つかの実施形態では、キットは(1)および(2)のプローブ分子の組合せを含む。他の実施形態では、キットは(1)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。他の実施形態では、キットは(2)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。さらに他の実施形態では、キットは(1)、(2)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。
【0182】
他の実施形態では、キットは例えば、本明細書に記載されるアレイ(例えば、非標識プローブ分子)での使用に適した2個以上のプローブ分子(例えば、2~20個のプローブ分子、2~10個のプローブ分子、2~5個のプローブ分子、5~10個のプローブ分子または10~20個のプローブ分子)のセットを含み得る。例えば、キットは、(1)ヌクレオチド配列が配列番号1を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号2を含むプローブ分子;(2)ヌクレオチド配列が配列番号3を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むプローブ分子;または(3)ヌクレオチド配列が配列番号5を含むプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むプローブ分子を含むことができる。幾つかの実施形態では、キットは(1)および(2)のプローブ分子の組合せを含む。他の実施形態では、キットは(1)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。他の実施形態では、キットは(2)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。さらに他の実施形態では、キットは(1)、(2)および(3)のプローブ分子の組合せを含む。
【0183】
他の実施形態では、キットは本明細書に記載されるアレイを含み得る。
【0184】
本明細書に記載されるキットは、PCR反応を行うための1つ以上の試薬、例えば相同ゲノム配列を増幅するための1つ以上(例えば、2つ)のプライマー、および/またはハイブリダイゼーション反応を行うための1つ以上の試薬、例えば洗浄バッファーをさらに含んでいてもよい。
【0185】
本明細書に記載されるキットは、PCR増幅反応用のサンプルを調製するための1つ以上の試薬および/または1つ以上のデバイス、例えば溶解バッファーまたはビーズビーティングシステムをさらに含んでいてもよい。
【0186】
本明細書に記載されるキットは、キットの構成要素を用いて本明細書に記載される方法の工程の一部または全てを行うための1つ以上の容器および/または説明書をさらに含んでいてもよい。
【0187】
7.実施例
7.1.実施例1:コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(CNS)に対する仮想プローブ
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)は、コアグラーゼ陽性種であり、身体の微生物叢の通常のメンバーである。しかしながら、S.アウレウス(S. aureus)は日和見病原体となり、皮膚感染症、呼吸器感染症および食中毒を引き起こすことがある。このため、臨床サンプルにおいてS.アウレウス(S. aureus)と他のスタフィロコッカス種とを区別し得る試験が臨床的に必要とされている。他のコアグラーゼ陽性スタフィロコッカスも少数存在するが、通常は疾患において大きな役割を果たさないため、殆どの分析目的では無視することができる。
【0188】
スタフィロコッカス種を非特異的に特定するために使用することができるオリゴヌクレオチドプローブである「AllStaph-146abp」(ヌクレオチド配列CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を有する)を作製した。言い換えると、AllStaph-146abpは、属プローブ分子であり、単独ではサンプル中のS.アウレウス(S. aureus)とコアグラーゼ陰性種とを区別することができない。実施例に使用されるプローブ分子名に含まれる数字は、プローブ分子でプローブすることができるアンプリコンを作製するためのフォワードPCRプライマーとプローブの開始点との間のヌクレオチド数での距離を指している。第2のオリゴヌクレオチドプローブである「Sau-71p」(ヌクレオチド配列GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を有する)は、S.アウレウス(S. aureus)に由来するアンプリコンでは陽性シグナルを与えるが、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカスに由来するアンプリコンでは陽性シグナルを与えない16S rRNAプローブ分子である。このため、臨床的に関連するコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種がS.アウレウス(S. aureus)のみである場合、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種に対する例示的な仮想プローブは、AllStaph-146abpおよびSau-71pからなり得る。PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、AllStaph-146abpのシグナルが陽性であり、かつSau-71pのシグナルが陽性でない場合(「AllStaph-146-abp NOT Sau-71p」と表すことができる)、PCR増幅産物が作製されたサンプルがコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種を含有すると決定することができる(
図10Aを参照されたい)。より多くの種が関連する状況では、仮想プローブが付加的なプローブ分子を含んでいてもよい。例えば、ウシ、ウマおよびブタにおいて皮膚疾患を引き起こす恐れがあるS.ヒイカス(S. hyicus)が関連する場合、S.ヒイカス(S. hyicus)に特異的なプローブが同様に陽性でなければ(「AllStaph-146abp NOT Sau71P NOT S.hyicus」と表すことができる)、サンプルがコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種を含有すると決定することができる(
図10Bを参照されたい)。
【0189】
7.2.実施例2:ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)およびストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)を識別するための仮想プローブ
ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)は、ヒトの口腔内に通常見られる細菌である。S.ゴルドニイ(S. gordonii)は、通常は口腔内で無害であるが、血流に侵入すると急性細菌性心内膜炎を引き起こすことがある。ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)もヒト微生物叢のメンバーであり、免疫不全個体において感染症を引き起こすことが知られている。
【0190】
サンプル中のS.アンギノーサス(S. anginosus)とS.ゴルドニイ(S. gordonii)とを区別するための仮想プローブに使用することができる2つのオリゴヌクレオチドプローブ分子を作製した。ヌクレオチド配列CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子「Stango85p」は、S.アンギノーサス(S. anginosus)およびS.ゴルドニイ(S. gordonii)のいずれかがサンプル中に存在する場合に陽性シグナルを生じ得る16S rRNAプローブ分子である。一方、ヌクレオチド配列TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子「Sang156p」は、S.アンギノーサス(S. anginosus)に由来するアンプリコンでは陽性シグナルを与え、S.ゴルドニイ(S. gordonii)に由来するアンプリコンでは陽性シグナルを与えない。S.ゴルドニイ(S. gordonii)およびS.アンギノーサス(S. anginosus)に対する例示的な仮想プローブは、Stango85pおよびSang156pからなる。PCR増幅産物を仮想プローブでプローブし、Stango85pのシグナルが陽性であり、かつSan156pのシグナルが陽性でない場合(「Stango85p NOT Sang156p」と表すことができる)、PCR増幅産物の調製に使用したサンプルがS.ゴルドニイ(S. gordonii)を含有すると決定することができ、Stango85pのシグナルが陽性であり、かつSan156pのシグナルが陽性である場合(「Stango85p AND Sang156p」と表すことができる)、サンプルがS.アンギノーサス(S. anginosus)を含有すると決定することができる。
【0191】
7.3.実施例3:ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)およびストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を識別するための仮想プローブ
ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)およびストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)は、どちらも病原性であり得るが、16S rRNAがほぼ同一であるため、16S rRNA用の単一オリゴヌクレオチドプローブ分子を用いて2つの種を区別することは困難である。
【0192】
S.ミティス(S. mitis)とS.ニューモニエ(S. pneumoniae)とを区別するための仮想プローブに使用することができる3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子を作製した。ヌクレオチド配列AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を有する第1のプローブである「AllStrep-261p」は、異なるストレプトコッカス種を区別することができない属プローブ分子である。ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を有する第2のプローブである「Spneu-229p」は、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)に由来するゲノム配列を含むが、単独ではS.ミティス(S. mitis)とS.ニューモニエ(S. pneumoniae)とを区別するために使用することができない。ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を有する第3のプローブである「Spneu-229bp」は、Spneu-229pと単一のヌクレオチドが異なり、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)のSNPに相当する。
【0193】
S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に由来する16S rRNAアンプリコンを、3つのプローブ分子を含むアレイに結合させると、3つのプローブ分子のそれぞれについて陽性シグナルが観察された(
図11Aおよび
図11B)。このため、3つのプローブ分子を個別に使用して、S.ミティス(S. mitis)とS.ニューモニエ(S. pneumoniae)とを区別することはできない。しかしながら、S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に由来する16S rRNAアンプリコンを3つのプローブでプローブした場合のシグナルパターンを評価することによって、S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)に由来するアンプリコンを区別することができた。具体的には、S.ミティス(S. mitis)を含有するサンプルから作製されたPCR増幅産物をプローブすることで、「(Spneu-229p OR Spneu-229bp)<(AllStrep-261p)/3」と表すことができるシグナルパターンが生じ、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有するサンプルから作製されたPCR増幅産物をプローブすることで、「(Spneu-229p AND Spneu-229bp)>(AllStrep-261p)/3」と表すことができるシグナルパターンが生じた。
【0194】
S.ミティス(S. mitis)およびS.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含有するサンプルによるハイブリダイゼーションデータの更なる分析から、Spneu-229bpおよびAllStrep-261pプローブについて「(Spneu-229bp/AllStrep-261p)≦0.39」のシグナルパターンがS.ミティス(S. mitis)の存在を示し、Spneu-229bpおよびAllStrep-261pプローブについて「(Spneu-229bp/AllStrep-261p)>0.39」のシグナルパターンがS.ニューモニエ(S. pneumoniae)の存在を示すことが決定された。
【0195】
このため、本実施例では仮想プローブの概念が実証される。
【0196】
7.4.実施例4:ストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridians)群を検出するための仮想プローブ
ビリダンスストレプトコッカス群(VGS)は、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)群、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)群、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)群、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)群およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群の5つの部分群にまとめられる24種超を含む、臨床的に関連するグラム陽性細菌の主要群の1つである。VGS群細菌は、免疫不全患者において肺炎および敗血症を引き起こすことがある。
【0197】
群としてのVGS種は、遺伝的に異質であるように見え、異なる種が単一のプローブで検出され得ることが示唆される。異なるVGS群細菌について複数のプローブを設計したが、幾つかの種が他のVGS部分群に対するプローブと交差反応性を示した(S.ニューモニエ(S. pneumoniae)とS.ミティス(S. mitis)プローブSmit-79pとの交差反応性を示し、S.ミティス(S. mitis)およびS.オラリス(S. oralis)とS.ニューモニエ(S. pneumoniae)プローブSpneu-229pおよびSpneu-229bpとの交差反応性を示す
図12を参照されたい)。交差反応性を考慮して、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)とS.ミティス(S. mitis)/S.オラリス(S. oralis)とを区別することができる、S.ミティス(S. mitis)群細菌に対する仮想プローブを設計した:
S.ミティス(S. mitis)部分群=(Spar-205p AND AllStrep-261p)OR(Smit-79p AND AllStrep-261p AND NOT Shyo-193p)OR(Ssang-193p AND AllStrep-261p AND NOT Stmu-86p)OR(Stango-85p AND NOT Sang-156p AND AllStrep-261p>0.01)AND IF Smit-79p THEN(Spneu-229bp/AllStrep-261p)/AllStrep-261p≦3。
【0198】
7.5.実施例5:腸内細菌科群の種を検出するための仮想プローブ
腸内細菌科は、病原性種および非病原性種の両方を含むグラム陰性細菌の大きな科である。病原性の科のメンバーには、クレブシエラ種、エンテロバクター種、エシェリキア種、シトロバクター種、セラチア種およびサルモネラ種が含まれる。
【0199】
この科のメンバーの16s rRNA領域は、種間の遺伝子配列変動が最小であるため、種を区別することが可能な16S プローブを設計することは困難である。しかしながら、16S 配列の類似性を考慮して、プローブ「Entb-299p」によって特定され得るパントエア種を除く殆どの科のメンバーを腸内細菌科として特定することができる共通プローブ「Entb-132p」を設計した。
【0200】
16S rRNAゲノム領域における腸内細菌科種に由来する種のクラスタリングパターンに従って2つの群プローブを設計した。エンテロバクターおよびクレブシエラ属の種は、プローブ「Enklspss-95p」によって特定することができ、シトロバクター、サルモネラおよびエシェリキア属の種は、プローブ「SaEsCi-91p」によって特定することができる。腸内細菌科種を区別することが可能な単一のプローブの設計が困難であることから、腸内細菌科種の階層的特定および識別のために16S rRNAおよびITSプローブの組合せを設計した(
図13および
図14を参照されたい)。
【0201】
16s-23s ITS領域の使用により、E.クロアカエ(E. cloacae)、E.アスブリアエ(E. asburiae)およびE.ホルメシェイ(E. hormaechei)を含むエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)複合体の種を識別することが可能となった。「Encl-1871p」、「Encl-1659p」および「ECC3-1729p」の3つのプローブを組み合わせて使用することで、異なるエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)複合体種の特異的特定が可能となった(
図15を参照されたい)。
E.クロアカエ(E. cloacae)=Encl-1659p NOT(Encl-1871p OR ECC3-1729p)
E.アスブリアエ(E. asburiae)=Encl01871p NOT(Encl-1659p OR ECC3-1729p)
E.ホルメシェイ(E. hormaechei)=(Encl-1871p AND ECC3-1729p)NOT Encl-1659p
【0202】
8.具体的な実施形態
本開示を以下の具体的な実施形態によって例示する。
1.
(a)2つ以上のプローブ分子を含み、各プローブ分子が、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であり、プローブ分子が第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に異なってハイブリダイズし、それによって、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸へのプローブ分子のハイブリダイズにより、第1のゲノムに対応する標的核酸と第2のゲノムに対応する標的核酸とを区別することができる、仮想プローブで試験サンプルをプローブすることと、
(b)仮想プローブ中のプローブ分子と、もしあれば、試験サンプル中の核酸とのハイブリダイゼーションによるシグナルを検出および/または定量化し、それにより、第1の生物または第2の生物が、試験サンプルまたは初期サンプル中に存在するかを決定することと
を含む、第1のゲノムを有する第1の生物または第2のゲノムを有する第2の生物が、試験サンプルまたは試験サンプルを調製した初期サンプル中に存在するかを決定する方法。
2.第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセットの1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、プローブ分子が第1のアンプリコンセットのアンプリコンおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンに異なってハイブリダイズし、それによって、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンへのプローブ分子のハイブリダイズにより、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる、実施形態1記載の方法。
3.第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて初期サンプルに対してPCR増幅反応を行い、第1のゲノムおよび第2のゲノムが初期サンプル中に存在する場合に第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットをそれぞれ得ることによって、試験サンプルを調製することをさらに含む、実施形態2記載の方法。
4.PCRプライマーが2つ以上のプライマー対を含み、第1のアンプリコンセットが複数の第1のアンプリコンを含み、かつ/または第2のアンプリコンセットが複数の第2のアンプリコンを含む、実施形態3記載の方法。
5.(a)第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーの第1のセットを用いて初期サンプルに対して第1のPCR増幅反応を行うこと、(b)PCRプライマーの第1のセットとは異なり、第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーの第2のセットを用いて初期サンプルに対して第2のPCR増幅反応を行うこと、ならびに(c)第1および第2のPCR反応において生成したアンプリコンを組み合わせ、第1のゲノムおよび第2のゲノムが初期サンプル中に存在する場合に、複数の第1のアンプリコンを含む第1のアンプリコンセットおよび複数の第2のアンプリコンを含む第2のアンプリコンセットをそれぞれ得ることによって、試験サンプルを調製することをさらに含む、実施形態2記載の方法。
6.複数の第1のアンプリコンが第1のゲノム中の異なる領域に対応し、かつ/または複数の第2のアンプリコンが第2のゲノム中の異なる領域に対応する、実施形態4または実施形態5記載の方法。
7.PCRプライマーが単一のプライマー対を含み、第1のアンプリコンセットが単一の第1のアンプリコンからなり、第2のアンプリコンセットが単一の第2のアンプリコンからなる、実施形態3記載の方法。
8.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることが可能なアンプリコンの領域に少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態7記載の方法。
9.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることが可能なアンプリコンの領域に少なくとも2つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態7記載の方法。
10.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることが可能なアンプリコンの領域に少なくとも3つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態7記載の方法。
11.PCR増幅反応により、測定可能なシグナルを生じる標識を、反応によって生成する任意のアンプリコンに組み込む、実施形態3から10までのいずれか1つ記載の方法。
12.プライマーが標識される、実施形態3から11までのいずれか1つ記載の方法。
13.少なくとも1つのプライマーが5’蛍光標識される、実施形態12記載の方法。
14.2つ以上のプライマーが5’蛍光標識される、実施形態12記載の方法。
15.PCR反応が蛍光標識デオキシヌクレオチドを含む、実施形態3から14までのいずれか1つ記載の方法。
16.各プローブ分子が、第1のゲノムおよび/または第2のゲノム中の15~40個の連続したヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む、実施形態1から15までのいずれか1つ記載の方法。
17.仮想プローブが、互いに1つ以上のヌクレオチドミスマッチを有する2つのプローブ分子を含む、実施形態1から16までのいずれか1つ記載の方法。
18.仮想プローブが、互いに1つのヌクレオチドミスマッチを有する2つのプローブ分子を含む、実施形態17記載の方法。
19.仮想プローブが、互いに2つのヌクレオチドミスマッチを有するプローブ分子を含む、実施形態17記載の方法。
20.仮想プローブのプローブ分子が、アレイ上に存在する、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なプローブ分子である、実施形態1から19までのいずれか1つ記載の方法。
21.仮想プローブ中のプローブ分子とPCR増幅産物とのハイブリダイゼーションによるシグナルを検出および/または定量化することが、仮想プローブ中のプローブ分子の位置での標識を検出および/または定量化することを含む、実施形態20記載の方法。
22.工程(b)が、
(i)PCR増幅産物をアレイと接触させることと、
(ii)非結合核酸分子をアレイから洗い流すことと、
(iii)アレイ上の各プローブ分子位置での標識のシグナル強度を測定することと
を含む、実施形態20または実施形態21記載の方法。
23.アレイが1つ以上の対照プローブ分子を含む、実施形態20から22までのいずれか1つ記載の方法。
24.プローブ分子がオリゴヌクレオチドプローブ分子である、実施形態20から23までのいずれか1つ記載の方法。
25.プローブ分子の1つ以上がポリチミジンテールを有する、実施形態24記載の方法。
26.ポリチミジンテールが10マー~20マーである、実施形態24記載の方法。
27.ポリチミジンテールが15マーである、実施形態26記載の方法。
28.PCR増幅反応がリアルタイムPCR増幅反応である、実施形態3から19までのいずれか1つ記載の方法。
29.
(a)各プローブ分子が、区別可能な標識と、標識およびクエンチャー部分の両方がプローブに付着している場合に標識の検出を阻害するクエンチャー部分とを含み、
(b)標識が、リアルタイムPCR増幅反応中のプローブ分子の切断により測定可能なシグナルを生じ、
(c)各標識が互いに区別可能である、実施形態28記載の方法。
30.標識が蛍光標識である、実施形態29記載の方法。
31.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、rRNAをコードする遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態2から30までのいずれか1つ記載の方法。
32.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、rRNA遺伝子の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態2から31までのいずれか1つ記載の方法。
33.第1の生物および第2の生物が微生物である、実施形態1から32までのいずれか1つ記載の方法。
34.微生物が同じ目のメンバーである、実施形態33記載の方法。
35.微生物が同じ科のメンバーである、実施形態33記載の方法。
36.微生物が同じ属のメンバーである、実施形態35記載の方法。
37.微生物が同じ群のメンバーである、実施形態36記載の方法。
38.微生物の1つ以上がヒト病原体または動物病原体である、実施形態33から37までのいずれか1つ記載の方法。
39.微生物が細菌、ウイルスまたは真菌である、実施形態33から38までのいずれか1つ記載の方法。
40.微生物が細菌である、実施形態33から39までのいずれか1つ記載の方法。
41.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列および/または23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態40記載の方法。
42.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態41記載の方法。
43.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態41または実施形態42記載の方法。
44.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S-23S遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態40から43までのいずれか1つ記載の方法。
45.プローブ分子と標的核酸とのハイブリダイゼーションによるシグナルを、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、または(iii)1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって組み合わせ、第1のゲノムと第2のゲノムとを区別することができる、実施形態1から44までのいずれか1つ記載の方法。
46.仮想プローブ中のプローブ分子と標的核酸とのハイブリダイゼーションによるシグナルを、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、または(iii)1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって組み合わせ、第1のゲノムと第2のゲノムとを区別することをさらに含む、実施形態45記載の方法。
47.各ブール演算子が「AND」、「OR」および「NOT」から独立して選択される、実施形態45または実施形態46記載の方法。
48.各関係演算子が「より大きい」(「>」)および「より小さい」(「<」)から独立して選択される、実施形態45から47までのいずれか1つ記載の方法。
49.シグナルを1つ以上のブール演算子によって組み合わせることができる、実施形態45から47までのいずれか1つ記載の方法。
50.シグナルを1つ以上の関係演算子によって組み合わせることができる、実施形態45から48までのいずれか1つ記載の方法。
51.シグナルを1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって組み合わせることができる、実施形態45から48までのいずれか1つ記載の方法。
52.仮想プローブが2つのプローブ分子を含むか、またはそれからなる、実施形態1から51までのいずれか1つ記載の方法。
53.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセットの第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセットの第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることが可能な第1のプローブ分子と、(ii)第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であるが、第1の標的核酸にはハイブリダイズしない第2のプローブ分子とを含む、実施形態52記載の方法。
54.第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、かつ第2のプローブ分子のシグナルが陽性でない場合に、第1の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態53記載の方法。
55.第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、かつ第2のプローブ分子のシグナルが陽性である場合に、第2の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態53または実施形態54記載の方法。
56.第1の微生物がコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種であり、第2の微生物がコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス種である、実施形態53から55までのいずれか1つ記載の方法。
57.第2の微生物がS.アウレウス(S. aureus)である、実施形態56記載の方法。
58.第1のプローブ分子が、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態56または実施形態57のいずれか1つ記載の方法。
59.第2のプローブ分子が、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態56から実施形態58までのいずれか1つ記載の方法。
60.第1の微生物がストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)であり、第2の微生物がストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)である、実施形態53から55までのいずれか1つ記載の方法。
61.第1のプローブ分子が、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態60記載の方法。
62.第2のプローブ分子が、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態60または実施形態61記載の方法。
63.第1および第2の微生物が腸内細菌科細菌である、実施形態53から55までのいずれか1つ記載の方法。
64.第1および第2の微生物がエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アスブリアエ(Enterobacter asburiae)およびエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)から選択される、実施形態63記載の方法。
65.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセットの第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセットの第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることが可能な第1のプローブ分子と、(ii)第1の標的核酸および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能な第2のプローブ分子とを含む、実施形態52記載の方法。
66.第2のプローブ分子のシグナルで除算した第1のプローブ分子のシグナルが、所定のカットオフ値よりも小さい場合に、第1の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態65記載の方法。
67.第2のプローブ分子のシグナルで除算した第1のプローブ分子のシグナルが所定のカットオフ値よりも大きい場合に、第2の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態65または実施形態66記載の方法。
68.第1の微生物がストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)であり、第2の微生物がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)である、実施形態65から67までのいずれか1つ記載の方法。
69.第1のプローブ分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態65から68までのいずれか1つ記載の方法。
70.第2のプローブ分子が、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態65から69までのいずれか1つ記載の方法。
71.仮想プローブが3つのプローブ分子を含むか、またはそれからなる、実施形態1から51までのいずれか1つ記載の方法。
72.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセットの第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセットの第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることが可能な第1のプローブ分子と、(ii)第1のプローブ分子とは異なり、第1および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能な第2のプローブ分子と、(iii)第1および第2のプローブ分子とは異なり、第1および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能な第3のプローブ分子とを含む、実施形態71記載の方法。
73.
(a)第1のプローブ分子のシグナルが陽性であるか、または第2のプローブ分子のシグナルが陽性である場合、および
(b)第1のプローブ分子のシグナルまたは第2のプローブ分子のシグナルが、第3のプローブ分子のシグナルまたはシグナルの適切な分数よりも小さい場合、
第1の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態72記載の方法。
74.
(a)第1のプローブ分子のシグナルおよび第2のプローブ分子のシグナルが陽性である場合、ならびに
(b)第1のプローブ分子のシグナルおよび第2のプローブ分子のシグナルが、第3のプローブ分子のシグナルまたはシグナルの適切な分数よりも大きい場合、
第2の生物が試験サンプルまたは初期サンプル中に存在すると決定することを含む、実施形態72または実施形態73記載の方法。
75.第1の微生物がストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)であり、第2の微生物がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)である、実施形態65から74までのいずれか1つ記載の方法。
76.第1のプローブ分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態75記載の方法。
77.第2のプローブ分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態75または実施形態76記載の方法。
78.第3のプローブ分子が、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有する、実施形態75から77までのいずれか1つ記載の方法。
79.PCR増幅産物が300~800ヌクレオチド長となるようにPCR条件を選択する、実施形態3から78までのいずれか1つ記載の方法。
80.PCR増幅産物が400~600ヌクレオチド長となるようにPCR条件を選択する、実施形態79記載の方法。
81.初期サンプルまたは試験サンプルが、1つ以上の微生物による感染のリスクがある、実施形態33から80までのいずれか1つ記載の方法。
82.初期サンプルまたは試験サンプルが、1つ以上の微生物に感染している疑いがある、実施形態33から81までのいずれか1つ記載の方法。
83.初期サンプルまたは試験サンプルが生体サンプル、環境サンプルまたは食品である、実施形態1から82までのいずれか1つ記載の方法。
84.初期サンプルまたは試験サンプルが血液、血清、唾液、尿、胃液、消化液、涙液、糞便、精液、膣液、間質液、腫瘍性組織に由来する液体、眼液、汗、粘液、耳垢、油、腺分泌物、呼気、髄液、毛髪、爪、皮膚細胞、血漿、鼻腔スワブから得られる液体、鼻咽頭洗浄液から得られる液体、脳脊髄液、組織サンプル、咽頭スワブから得られる液体もしくは組織、創傷スワブから得られる液体もしくは組織、生検組織、胎盤液、羊水、腹膜透析液、臍帯血、リンパ液、体腔液、痰、膿、微生物叢、胎便、母乳から選択される生体サンプル、または上記のいずれかから処理、抽出もしくは分画されたサンプルである、実施形態83記載の方法。
85.生体サンプルが、
(a)尿、痰、もしくは尿から処理、抽出もしくは分画されたサンプル;
(b)痰、もしくは痰から処理、抽出もしくは分画されたサンプル;
(c)創傷スワブ、もしくは創傷スワブから処理、抽出もしくは分画されたサンプル;
(d)血液、もしくは血液から処理、抽出もしくは分画されたサンプル;または
(e)腹膜透析液、もしくは腹膜透析液から処理、抽出もしくは分画されたサンプル
である、実施形態84記載の方法。
86.初期サンプルまたは試験サンプルが土壌、地下水、地表水、廃水から選択される環境サンプル、または上記のいずれかから処理、抽出もしくは分画されたサンプルである、実施形態83記載の方法。
87.
(a)第1のゲノム配列と第2の相同ゲノム配列とを区別するための1つ以上の仮想プローブであって、各仮想プローブが、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み、1つ以上の仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続したヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む、仮想プローブと、
(b)任意に、1つ以上の対照プローブ分子と
を含む、アドレス可能なアレイ。
88.少なくとも2つの仮想プローブを含む、実施形態87記載のアドレス可能なアレイ。
89.少なくとも3つの仮想プローブを含む、実施形態87記載のアドレス可能なアレイ。
90.少なくとも4つの仮想プローブを含む、実施形態87記載のアドレス可能なアレイ。
91.少なくとも5つの仮想プローブを含む、実施形態87記載のアドレス可能なアレイ。
92.少なくとも10個の仮想プローブを含む、実施形態87記載のアドレス可能なアレイ。
93.最大10個の仮想プローブを含む、実施形態87から91までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
94.最大15個の仮想プローブを含む、実施形態87から92までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
95.各仮想プローブが2つ~4つのオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態87から94までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
96.各仮想プローブが2つまたは3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態95記載のアドレス可能なアレイ。
97.12個以上のプローブ分子を含む、実施形態87から96までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
98.12~100個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
99.12~50個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
100.25~75個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
101.50~100個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
102.12個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
103.14個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
104.84個のプローブ分子を含む、実施形態97記載のアドレス可能なアレイ。
105.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列が、それぞれ第1の微生物および第2の微生物に由来するゲノム配列である、実施形態87から104までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
106.微生物が同じ目のメンバーである、実施形態105記載のアドレス可能なアレイ。
107.微生物が同じ科のメンバーである、実施形態105記載のアドレス可能なアレイ。
108.微生物が同じ属のメンバーである、実施形態107記載のアドレス可能なアレイ。
109.微生物が同じ群のメンバーである、実施形態108記載のアドレス可能なアレイ。
110.プローブ分子の1つ以上がポリチミジンテールを含む、実施形態87から109までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
111.ポリチミジンテールが10マー~20マーである、実施形態110記載のアドレス可能なアレイ。
112.ポリチミジンテールが15マーである、実施形態111記載のアドレス可能なアレイ。
113.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列がそれぞれ、rRNAをコードする遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態87から112までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
114.rRNAをコードする遺伝子が16S rRNA遺伝子または23S rRNA遺伝子である、実施形態113記載のアドレス可能なアレイ。
115.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列がそれぞれ、rRNA遺伝子の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態87から112までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
116.少なくとも1つの仮想プローブが、真正細菌の種に由来するゲノム配列と真正細菌の種ではない微生物のゲノム配列とを識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から115までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
117.少なくとも1つの仮想プローブが、グラム陽性細菌に由来するゲノム配列とグラム陰性細菌に由来するゲノム配列とを識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から116までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
118.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる目の微生物に由来するゲノム配列を識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から117までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
119.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる科の微生物に由来するゲノム配列を識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から118までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
120.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる属の微生物に由来するゲノム配列を識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から119までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
121.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる群の微生物に由来するゲノム配列を識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から120までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
122.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる種の微生物に由来するゲノム配列を識別するためのプローブ分子を含む、実施形態87から121までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
123.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から122までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
124.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から123までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
125.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がCAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から124までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
126.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がTATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から125までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
127.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がAGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から126までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
128.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から127までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
129.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むプローブ分子を含む、実施形態87から128までのいずれか1つ記載のアドレス可能なアレイ。
130.
(a)2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブを含み、各プローブ分子が、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であり、プローブ分子が第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に異なってハイブリダイズし、それによって、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸へのプローブ分子のハイブリダイズにより、第1のゲノムに対応する標的核酸と第2のゲノムに対応する標的核酸とを区別することができる、実施形態87から129までのいずれか1つ記載によるアレイで試験サンプルをプローブすることと、
(b)非結合核酸分子をアレイから洗い流すことと、
(c)アレイ上の各プローブ分子位置でのシグナルを検出および/または定量化することと、
(d)シグナルが、
(i)アレイのプローブ分子にハイブリダイズする標的核酸が試験サンプル中に存在することを示す場合、シグナルを分析して、第1のゲノムに対応する標的核酸もしくは第2のゲノムに対応する標的核酸がサンプル中に存在するかを決定し、それにより、第1の生物もしくは第2の生物が初期サンプルもしくは試験サンプル中に存在するかを決定すること、または
(ii)仮想プローブのプローブ分子にハイブリダイズする標的産物が工程(a)において生成しないことを示す場合、その初期サンプルもしくは試験サンプルが第1の生物もしくは第2の生物を含有しないと決定し、それにより、第1の生物もしくは第2の生物が初期サンプルもしくは試験サンプル中に存在するかを決定することと
を含む、第1のゲノムを有する第1の生物または第2のゲノムを有する第2の生物が、試験サンプルまたは試験サンプルが由来する初期サンプル中に存在するかを決定する方法。
131.第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセットの1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることが可能であり、プローブ分子が第1のアンプリコンセットのアンプリコンおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンに異なってハイブリダイズし、それによって、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットのアンプリコンへのプローブ分子のハイブリダイズにより、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる、実施形態130記載の方法。
132.第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズするとともに、そこからPCR増幅を開始することが可能なPCRプライマーを用いて初期サンプルに対してPCR増幅反応を行い、第1のゲノムおよび第2のゲノムがサンプル中に存在する場合に第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットをそれぞれ得ることによって、試験サンプルを調製することをさらに含む、実施形態131記載の方法。
133.
(a)実施形態87から129までのいずれか1つ記載のアレイの各プローブ分子位置に対してシグナルデータを生成する光学読取り装置と、
(b)少なくとも1つのプロセッサであって、
(i)光学読取り装置からシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)1つ以上の仮想プローブについてシグナルデータを分析するように構成され、かつ
(iii)分析の結果を出力するために記憶もしくは表示デバイスまたはネットワークへのインターフェースを有する、少なくとも1つのプロセッサと
を備える、生物がサンプル中に存在するかを決定するためのシステム。
134.PCR増幅反応の産物をアレイに添加することができ、非結合核酸分子をアレイから洗い流すことができるプレートハンドリングロボットをさらに備える、実施形態133記載のシステム。
135.実施形態133または134のシステムを用いて行われる、実施形態1から86または130から132までのいずれか1つ記載の方法。
136.ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
137.ヌクレオチド配列がGCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
138.ヌクレオチド配列がCAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
139.ヌクレオチド配列がTATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
140.ヌクレオチド配列がAGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
141.ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
142.ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
143.ポリチミジンテールを含む、実施形態136から142までのいずれか1つ記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
144.ポリチミジンテールが10マー~20マーである、実施形態143記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
145.ポリチミジンテールが15マーである、実施形態144記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
146.標識を含む、実施形態136から145までのいずれか1つ記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
147.複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブであって、仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有する、仮想プローブ。
148.複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブであって、仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むヌクレオチド配列を有する、仮想プローブ。
149.複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブであって、仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子が、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有する、仮想プローブ。
150.各オリゴヌクレオチドプローブ分子がポリチミジンテールを含む、実施形態147から149までのいずれか1つ記載の仮想プローブ。
151.ポリチミジンテールが10マー~20マーである、実施形態150記載の仮想プローブ。
152.ポリチミジンテールが15マーである、実施形態151記載の仮想プローブ。
153.
(a)実施形態136から146までのいずれか1つ記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、それぞれアレイ上の別々の位置に位置的にアドレス可能なプローブ分子の群と、
(b)任意に、1つ以上の対照プローブ分子と
を含む、アドレス可能なアレイ。
154.実施形態147から152までのいずれか1つ記載の仮想プローブを含むアドレス可能なアレイであって、仮想プローブ中の各プローブ分子がアレイの別々の位置にある、アレイ。
155.1つ以上の対照プローブ分子をさらに含む、実施形態154記載のアドレス可能なアレイ。
156.ヌクレオチド配列が配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6または配列番号7を含むプローブ分子から選択される2つ以上のプローブ分子を含む、キット。
157.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
158.ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
159.ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
160.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
161.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
162.ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
163.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子と、ヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子とを含む、実施形態156記載のキット。
164.プローブ分子が標識される、実施形態156から163までのいずれか1つ記載のキット。
165.プローブ分子が蛍光標識で標識される、実施形態164記載のキット。
166.プローブ分子が非標識である、実施形態156から163までのいずれか1つ記載のキット。
167.第1のゲノム配列および第2の相同ゲノム配列を増幅することが可能な1つ以上のPCRプライマー対をさらに含む、実施形態156から166までのいずれか1つ記載のキット。
【0203】
9.参照文献の引用
本願に引用される全ての刊行物、特許、特許出願および他の文献は、個々の刊行物、特許、特許出願または他の文献がそれぞれ、あらゆる目的で参照により援用されることが個別に示される場合と同じ程度に、それらの全体をあらゆる目的で参照により本明細書に援用するものとする。本明細書に援用される1つ以上の参照文献の教示と本開示との間に矛盾が見られる場合、本明細書の教示が意図される。
【配列表】
【国際調査報告】