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  • 特表-多結晶シリコンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】多結晶シリコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20220912BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C01B33/035
C01B33/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544550
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2019069110
(87)【国際公開番号】W WO2021008693
(87)【国際公開日】2021-01-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルフ,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ベンツァイス,マルクス
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB12
4G072GG03
4G072GG04
4G072HH04
4G072HH07
4G072HH09
4G072HH10
4G072JJ01
4G072MM21
4G072NN14
(57)【要約】
本発明は、シラン及び/又は少なくとも1種のハロシラン並びに水素を含む反応ガスを気相成長反応器の反応空間に導入することを含む多結晶シリコンを製造する方法であって、反応空間は、その上に堆積によりシリコンが堆積して多結晶シリコンを形成する少なくとも1つの加熱された支持体を含み、粉塵沈着の検出のために少なくとも1つの測定装置を使用して堆積の間の反応空間の内部のヘーズを測定する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン及び/又は少なくとも1種のハロシラン並びに水素を含む反応ガスを気相成長反応器の反応空間に導入することを含む多結晶シリコンを製造する方法であって、該反応空間は、その上に堆積によりシリコンが堆積して多結晶シリコンを形成する少なくとも1つの加熱された支持体を含み、粉塵沈着の検出のために少なくとも1つの測定装置を使用して堆積の間の反応空間の内部のヘーズを測定する、方法。
【請求項2】
前記測定装置が散乱放射線検出器及び/又は減衰検出器を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定装置がさらに電磁放射線の外部源を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定装置が光学カメラを含み、ヘーズがカメラで作製された画像の品質の変化として測定されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定装置が温度センサを含み、ヘーズが温度の変化として測定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度センサは、パイロメータ、熱画像カメラ、熱電対及びそれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定装置が光学カメラ及び温度センサの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ヘーズが少なくとも2つの異なる測定点で測定されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヘーズが堆積全体中に連続的に、又は堆積中の様々な時期に不連続的に測定されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ヘーズの閾値を超えると、前記堆積を中断又は停止させることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヘーズの閾値を超えるか又は下回ると、反応器圧力、支持体温度、反応ガス組成及び体積流量を含む群から選択される少なくとも1つのパラメータが変更される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
堆積の間にヘーズが実質的に一定であるように、堆積が制御されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記気相成長反応器がシーメンス反応器であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記気相成長反応器が流動床反応器であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
堆積中の反応空間内部のヘーズを決定するための測定装置を含み、該測定装置が、電磁放射線の外部源を有する散乱光検出器及び/又は減衰検出器を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するための気相成長反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長反応器において多結晶シリコンを製造するための方法であって、粉塵沈着を回避するために、少なくとも1つの測定装置を用いて、堆積の間、反応器の反応空間の内部のヘーズを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、単結晶(モノクリスタリン)シリコンの製造における出発材料として、例えば、るつぼ引き上げ(チョクラルスキー又はCZ方法)によって、又はゾーンメルティング(浮遊帯法)によって使用される。半導体産業では、電子部品(チップ)の製造に単結晶シリコンが使用される。
【0003】
例えば、ブロック鋳造法による多結晶シリコンの製造には、ポリシリコンがさらに必要である。ブロックの形態で得られた多結晶シリコンは、太陽電池の製造に使用することができる。
【0004】
ポリシリコンは、例えば、シーメンス法-化学的気相成長法によって得ることができる。これは、電流を直接通電することによりベル型反応器(シーメンス反応器)支持体(通常はポリシリコンで構成される)内で加熱し、シリコン含有成分及び水素を含む反応ガスを導入することを含む。シリコン含有成分は一般にモノシラン(SiH)又は一般組成SiH4-nのハロシラン(n=0、1、2、3;X=Cl、Br、I)である。シリコン含有成分は、典型的にはクロロシラン又はクロロシラン混合物であり、通常はトリクロロシラン(SiHCl、TCS)である。水素と混合したSiH又はTCSが主に使用されている。典型的なシーメンス反応器の構成については、例えば、EP2077252A2号又はEP2444373A1号に記載されている。反応器の床(床板)には、一般に支持体を受け入れる電極が設けられている。支持体は一般にシリコンでできたフィラメント棒(細い棒)である。典型的には、電極により電気回路を形成する棒の対を与えるために、2つのフィラメント棒がブリッジ(シリコン製)と接続される。フィラメント棒の表面温度は、典型的には堆積中に1000℃を超える。これらの温度で、反応ガスのシリコン含有成分は分解し、元素状シリコンがポリシリコンとして気相から堆積する。これによりフィラメント棒及びブリッジの直径が大きくなる。棒の所定の直径に達した後、典型的には堆積を終了させ、得られたポリシリコン棒は取り外される。ブリッジを除去した後、ほぼ円柱状のシリコン棒が得られる。
【0005】
さらに、流動床反応器では、顆粒の形態でポリシコンを生成することができる。これは、流動床中のガス流によりシリコン種粒子を流動化することによって達成され、ここで、前記流れは加熱装置により高温まで加熱される。シリコン含有反応ガスの添加は高温の粒子表面での堆積反応をもたらし、元素状シリコンが種粒子上に堆積する。このように種粒子の直径が増大する。直径が増大した粒子を定期的に取り除き、さらなるシリコン種粒子を加えることで、方法を連続的に操作することができる。使用可能なシリコン含有反応ガスには、シリコン-ハロゲン化合物(例えば、クロロシラン又はブロモシラン)、モノシラン(SiH)、これらのガスと水素との混合物などがある。ポリシリコンを製造するための典型的な流動床反応器は、例えば、US4900411A号に記載される。
【0006】
ポリシリコンの堆積、特にシーメンス法では、不要な粉塵沈着が、様々な理由により発生することがある。これらの理由には、特に、ハロシランの割合が高すぎる反応ガス、望ましくないシラン(例えば、ジクロロシラン)の割合の増加、一般にはガス流の変化による反応空間における局所的なガス温度の差又は支持体の局所的な温度差(特に表面温度)の発生が含まれる。
【0007】
ポリシリコンの堆積では、二つの競合する処理、すなわち、棒/シリコン顆粒の表面へのシリコンの堆積及び単体粒子の形成(粉塵沈着)が、一般に平衡状態にある。形成される単体粒子は反応器の種類及び反応条件によって異なり、その組成は純粋なシリコン(非晶質から結晶質)から一般式SiClの複合化合物まで様々である。
【0008】
粉塵沈着により形成された粒子は、ガス流とともに反応空間全体に正規分布し、棒/シリコン顆粒及び特に内側反応器壁に沈着する。棒又は顆粒上に沈着した粒子は、場合によっては、さらなる堆積過程で新しく形成された層によって過剰に成長し、このためポリシリコン製品に組み込まれる可能性がある。したがって、粉塵沈着は一般に製品の降級及び生産量低減につながる。反応器壁、特に反応器の下流に配置された処理装置(例えば、熱交換器、フィルタ)上に堆積した粒子は、時々除去を必要とするより厚い被膜を経時により形成する。このため、反応器がアイドリングしている時間が長くなり、製造コストが高くなる。内側反応器壁の洗浄は、バッチ交換のたびに必要になることもある。閉塞による損傷又は短い洗浄間隔は、コストのかかるプラントのアイドリングを引き起こす可能性がある。
【0009】
粉塵沈着物の検出は、これまで、反応空間のくもりによって肉眼で粉塵沈着物を検出すべく、一定間隔で反応器壁ののぞき窓で視覚的モニタリングを行うことを含んでいた。しかし、粉塵沈着は、一般に、進行した状態、すなわち、ポリシリコン生成物の純度が既に損なわれている時点でしか、明白に検出できない。さらに、途切れのないモニタリングは高い人件費と関連している。粉塵沈着は、根本的には適時に検出されず、その結果、製品を降級するか、又は該製品を廃棄する必要さえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2077252号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2444373号明細書
【特許文献3】米国特許第4900411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
粉塵沈着のリスクは、原理的には最適化された方法の管理により最小限に抑えられるが、それにもかかわらず粉塵沈着は起こり続ける。粉塵沈着は、処理パラメータを即座に適応させることによって対応することができる。したがって、できるだけ早期に粉塵沈着を検出できることが望ましい。したがって、本発明は、その目的として、その生成の間でさえ粉塵沈着の検出を可能にする方法を提供することを有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、シラン及び/又は少なくとも1種のハロシラン並びに水素を含む反応ガスを気相成長反応器の反応空間に導入することを含む多結晶シリコンを製造する方法であって、反応空間は、その上で堆積によりシリコンが堆積して多結晶シリコンを形成する少なくとも1つの加熱された支持体を含む方法によって達成される。粉塵沈着の早期検出のために、少なくとも1つの測定装置を用いて、堆積中の反応空間内部のヘーズを測定する。
【0013】
粉塵沈着の開始時には、約100nmの平均サイズを有する粒子が形成される。進行した粉塵沈着では、これらの粒子は約10μmの平均サイズを有することがある。粉塵沈着物中の粒径は、典型的には100nm~10μmの範囲である。これらの粒子は電磁放射、特に可視領域及び赤外領域での電磁放射を吸収及び散乱する。電磁放射の源が加熱された支持体自体であるか、外部光源、すなわち反応空間の外側に配置された光源であるかは重要ではない。反応空間におけるガス雰囲気中の粒子数の増加とそれに伴う透過する電磁放射の変化(例えば、方向、散乱、吸収、強度)のため、原理的にはヘーズが検出される。
【0014】
以下により詳細に説明した測定装置により、粉塵沈着を早期に検出することができる。その結果、目標とする対策(特に処理パラメータの変更)が、ポリシリコンの汚染及び処理機器(例えば、反応器内壁、フィルタ、熱交換器、パイプ)上の被膜の形成を回避するために使用できる。このような対策は、原則として、手動で又は自動的に実施することができる。沈着は特に、ヘーズの(連続的又は不連続的である)測定に基づいて制御することができる。
【0015】
気相成長反応器はシーメンス反応器であることが好ましい。したがって、加熱された支持体は、棒の対を与えるためにシリコンでできたブリッジを介して接続されたシリコンでできた2つの細い棒であることが好ましく、棒の対の2つの自由端は、反応器床上の電極に接続される。このように、支持体の加熱は、典型的に通電(ジュール加熱)によって行われる。支持体の直径は、堆積されたシリコンの結果として、堆積の過程にわたって増大する。反応空間に配置されたシリコン棒/シリコン棒の対の数は、一般に、本発明による方法の性能にとっては重要ではない。気相成長反応器は、特に、前記導入部において、及び、例えば、EP2662335A1号に記載されているようなシーメンス反応器である。反応器中のシリコン棒の数の典型的な例は、36(18個の棒の対)、48(24個の棒の対)、54(27個の棒の対)、72(36個の棒の対)又はさらに96(48個の棒の対)である。堆積中の任意の時点において、シリコン棒は、近い近似で円柱形として記載されてもよい。この近似は、一般に、細い棒が円柱形であるか、又は、例えば、正方形であるかに無関係である。
【0016】
気相成長反応器は、例えば、前記導入部で述べたように、ポリシリコン顆粒を製造するための流動床反応器でもよい。したがって、加熱された支持体は、流動化されたシリコン種粒子又はシリコンの堆積によってそこから成長した粒状粒子であることができる。シリコン種粒子/堆積によって種粒子から形成された粒状粒子は、約0.5~5mmのサイズを有し、従って、一般的に、粉塵沈着で形成される粒子よりもはるかに大きく、したがってヘーズの検出は、流動床又は少なくとも流動床の縁領域においてさえ可能である。この場合、支持体は、典型的には反応空間の外側の加熱装置により加熱される。加熱は、反応空間に導入されたヒーターによっても行われ得る。
【0017】
好ましい実施形態において、反応空間内のヘーズを測定するための測定装置は、散乱放射線検出器及び/又は減衰検出器を含む。
【0018】
散乱放射線検出器及び/又は減衰検出器に加えて、測定装置は、好ましくは反応器の外側、例えば、のぞき窓の前に配置された電磁放射線の少なくとも1つの外部源、特に光源及び/又はレーザーを含むことができる。「外部源」という用語は、検出される加熱された支持体から放射される電磁放射線だけではないという意味として理解されるべきである。このように、散乱放射線及び/又は減衰検出器は、特に、外部源から発生し、測定経路の後散乱され、減衰され得る電磁放射線を検出する。この測定経路は、外部源と検出器間の距離に対応する。外部源は、シリコンの発光スペクトルの典型的な波長とは異なる波長(複数又は単数)を有する放射線を放射することが好ましい。これにより、加熱された支持体によって放射される放射線から(外部源の)測定放射線を区別できることが確保される。
【0019】
検出器は、反応器の外側、例えば、反応器壁ののぞき窓の前に配置することが好ましい。減衰検出器は、常に外部源の反対側に配置されるため、放射線は検出器に直接向けられる。散乱放射線検出器は、典型的には、放射される放射線に対してある角度で配置される。複数の散乱放射線検出器を放射線に対して異なる角度で配置することも可能である。測定経路は反応空間を通過し、例えば、反応空間の内径に対応することができる。測定装置は、散乱放射線検出器と減衰検出器との組み合わせであることが好ましい。散乱放射線検出器及び減衰検出器を含む測定装置の典型的な配置が図1に示される。
【0020】
加熱された支持体自体が電磁放射線(波長範囲は約100~2000nm)の源であるため、ヘーズを測定するための電磁放射線の外部源/追加の源は、原理的には回避され得る。この放射線は、原理的には、減衰又は散乱放射線センサとしても適した検出器で堆積中に検出することができる。粉塵沈着時には、支持体から放出された放射線は、吸収及び散乱の両方によって減衰する。このように支持体が放射する放射線を減衰させることにより、塵埃沈着を検出することが可能となる。電磁放射源の外部源を有しない測定装置の典型的な配置を図2に示す。
【0021】
測定装置は、光学カメラを含んでもよい。測定装置は、特に光学カメラであってもよい。例えば、光学カメラは、下流の可視化方法と共に放射線センサアレイを含んでもよい。ヘーズはカメラで生成された画像の質の変化として測定される。あるいは又はさらにヘーズは、最適な画質を確立するための操作された変数の変化として測定されてもよい。カメラは原則として電磁放射線の検出器でもあるので、図2に関連する説明が参照されることもある。
【0022】
カメラは、例えば、白黒カメラ又はカラーカメラであることができる。カメラは、好ましくはデジタルカメラである。
【0023】
カメラで生成された画像の質の変化は、例えば、画像の鮮明度、解像度、コントラスト、色の分布及びグレースケールの変化に反映されることがある。このような変化は、画像処理ソフトウェアを用いて評価することが好ましい。
【0024】
典型的には、粉塵沈着中に、反応器の内部が、より曇り、より暗くなること(画像の灰色化)が観察可能である。したがって、例えば、シリコン棒支持体の縁及び表面の輪郭がぼやける。カメラ画像におけるこのような変化は、例えば、画素ソフトウェアを用いて検出され、評価され得る。
【0025】
各画素には、原則として、放射線強度に応じた数値を割り当てることができる。これらの値を先行する値又は正常値と比較することにより、ヘーズについて結論を導くことが可能になる。例えば、ヘーズが存在しない場合、シリコン棒の縁の値の勾配は急である。ヘーズが存在すると、勾配は平らになり、全体の値の変化は小さくなる。ヘーズが存在すると、センサに入射した放射線の強度がヘーズの結果として低下するため、数値は一般に低下する。
【0026】
グレースケールの差は、2回連続の画像記録の後に測定されてもよい。実測値が一定の閾値を超えた場合には、対策を導入することができる。
【0027】
最適な画質を確立するための操作された変数は、例えば、露光時間、F値、及び/又はISO値であることができる。例えば、カメラに実装された自動制御システムは、反応器内部の最適な可能性のある画像を生成するように調整されてもよい。したがって、露光時間は、入射放射線に応じて調整される。粉塵沈着とそれに伴うヘーズが発現すると、一般的により長い露光時間が必要となる。その後、露光時間の閾値を超えると、対策を導入することができる。
【0028】
カメラを用いるヘーズの測定は、特にシーメンス法において有利であり得る。なぜなら、シリコン棒の太さ及び/又は相互の距離、及び任意にシリコン棒の温度が、いずれにしても一般に白黒カメラ又は熱画像カメラを用いて測定されるからである。ここでは、WO2019/110091A1号を参照する。このように、新しい測定装置の改造又は設置は、ヘーズの検出には原則として必要ない。
【0029】
別の実施形態では、測定装置は温度センサを含み、ここで、ヘーズは好ましくは温度の変化として測定される。測定装置は、特に温度センサである。
【0030】
温度センサは、パイロメータ(放射温度計)、熱画像カメラ、熱電対、及びそれらの組み合わせを含む群から選択されることが好ましい。
【0031】
気相成長反応器の場合、特にシーメンス反応器の場合、反応空間の温度は通常、標準として監視される。例えば、シーメンス法では、支持体(シリコン棒)の温度は、パイロメータ又は熱画像カメラで測定され、堆積中に重要な応答変数として機能する。
【0032】
パイロメータ及び熱画像カメラは、支持体本体及び任意にその環境によって放射される電磁放射線を測定する検出器を備える。図2にも示すように、通常、測定は反応器の外部から実施される。粉塵沈着とそれに伴うヘーズの発生は、温度測定に破壊変数として作用する。検出器に到達する放射線は減衰され、それに応じて予想される測定温度値は、誤って過度に低い読み取り値となる。この誤った読み取りは、一般に、制御工学的な数学的関係の結果として、閉ループ制御回路の多くのパラメータにおいて永続し得る。したがって、これらの下降パラメータ及びそれらの正常値からの偏差も、粉塵沈着を検出するために使用され得る。
【0033】
流動床反応器の反応域中のシリコン粒子(支持体)の平均温度は、例えば、EP0896952A1号に記載されている赤外線パイロメータで測定することができる。
【0034】
測定装置は、特に、光学カメラと温度センサとの組み合わせであることができる。それは、例えば、反応空間を観察するための白黒カメラ、及び支持体温度を測定するためのパイロメータ又は熱画像カメラを含むことができる。
【0035】
ヘーズは、少なくとも2つの異なる測定点で測定することが望ましい。これは、例えば、反応器の異なる位置における測定装置の使用によって実現され得る。例えば、流動床反応器の場合には、1つのカメラを流動床の上の反応空間の領域上に、1つを流動床の下の領域上に向けることができる。同様に、シーメンス反応器の場合には、異なるシリコン棒で棒の温度を測定する熱画像カメラを使用することができる。粒子は原則的に粉塵沈着時に反応空間に均一に分布するので、反応空間の異なる部位でのヘーズの測定は厳密には必要ではない。
【0036】
ヘーズは、堆積全体の間連続的に、又は堆積中の様々な時間で不連続的に、好ましくは同一の時間間隔で測定することができる。ヘーズの測定は、迅速な介入及び特に正確な堆積制御を可能にするために連続的に実施することが好ましい。
【0037】
一般にセンサに入射する電磁放射線の変化としてヘーズを検出し得るさらなるセンサは、半導体センサ、例えば、CCD(電荷結合素子)センサ及びCMOSセンサ(能動画素センサ)及び光抵抗(光依存抵抗器)を含む。
【0038】
ヘーズの閾値を超えると、堆積を中断又は停止させることが好ましい。例えば、特に重度の粉塵沈着により、対策によって除去できない高い不純物レベルが予想される場合には、停止させることが考えられる。
【0039】
しかし、測定したヘーズに応じて堆積を制御することが好ましい。これは特に、堆積の典型的なパラメータの変動によって達成される。
【0040】
ヘーズの閾値を超えた場合又は下回った場合に、反応器の圧力、支持体の温度、体積流量(流量)及び反応ガス組成を含む群から選択された少なくとも1つの処理パラメータを変化させることが好ましい。
【0041】
支持体温度は、例えば、閉ループ制御回路を介する支持体への入熱により変化させてもよい。次に、入熱は、電流により行われ、電流は、電極により接触式で、又は電磁誘導を介して無接触で、支持体に導入され、熱エネルギーに変換され得る。さらに、入熱は、電磁放射により、特に放熱器によって、主に非接触的に支持体に導入されてもよい。上記のエネルギー変換器の出力変化は、典型的には、エネルギー変換器の上流に配置された電流又は周波数の逆変換装置を用いて、また、通常は整流変換器を用いて行われる。
【0042】
反応ガスの体積流量又は反応ガスの個々の成分の制御は、例えば、流量測定装置の閉ループ制御回路、制御装置及び反応器への供給導管の制御バルブにより行うことができる。体積流量は、典型的には、反応ガスが反応器に入る前に、例えば、DIN EN 1343に従って測定される。
【0043】
反応ガス組成は、例えば、反応器への反応ガスのさらなる成分(例えば、TCS、H)の流量制御回路により変化させることができる。
【0044】
反応器圧力は、例えば、圧力測定手段の閉ループ制御回路、制御装置及び反応器のオフガストラクト内に設置された制御バルブにより変化させることができる。
【0045】
記載されたパラメータは、通常、プロセス制御ステーションで常に表示され、任意にプロットされる。
【0046】
堆積の間のヘーズが実質的に一定であり、特に実質的にゼロに等しいか、又は少なくともゼロに近い値をとるように、堆積が制御されることが好ましい。粉塵沈着によるヘーズが発生しないことが原則として望ましい。しかし、運転コストを削減するために粉塵沈着がある程度許容され得るかどうかは、堆積されるポリシリコンに対する品質要求に依存することがある。
【0047】
「実質的に」という用語は、特に、目標値からのわずかな逸脱が一時的に生じる可能性があることを意味するものとして理解される。その理由としては、例えば、反応器の上流及び下流に配置された処理ユニットにおける反応変数の変動、反応器自体における反応変数の変動、反応ガス中の望ましくないシラン成分の割合の増加が挙げられる。
【0048】
測定装置は、プロセス制御ステーションと連結することが好ましい。堆積の制御はさらに、閉ループ制御回路において自動的に行われ得る。
【0049】
本発明のさらなる態様は、堆積中の反応空間内部のヘーズを測定するための測定装置を含む、本発明による方法を実施するための気相成長反応器に関する。測定装置は、少なくとも1つの外部電磁放射線源を有する散乱放射線検出器及び/又は減衰検出器を含む。前記源から放出される放射線の相互作用は、反応空間を通る測定経路の後、検出器を用いて測定される。
【0050】
気相成長反応器は、シーメンス反応器又は流動床反応器が好ましい。
【0051】
反応器のさらなる実施形態に関しては、上記の解明及び実施例を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による方法を実施するための気相成長反応器の断面を示す図である。
図2】本発明による方法を実施するための気相成長反応器の断面を示す図である。
図3】粉塵沈着における温度及び露光時間のプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、反応器壁14によって区切られる反応空間13、支持体16が配置されている、本発明による気相成長反応器12の断面を示す。支持体16はシリコン棒であり、明確さの理由から棒の一部のみが示される。
【0054】
反応空間13内のヘーズ測定のために、反応器12は測定装置を備える。これは、のぞき窓21の前に配置された別の電磁放射線源、この例では光源10(515nm又は488nmのレーザー)を含む。反応器12はさらに、光源10の反対側に配置され、同様にのぞき窓21(ホウケイ酸塩又は石英ガラスで作られる)の前に配置された減衰検出器18を含む。
【0055】
さらに、散乱光検出器20、22、24(適切なCCDセンサアレイ)は、いずれの場合ものぞき窓21の前方の光源10の放射方向に対して様々な角度で配置される。散乱光検出器20、22、24は、必ずしも光源10と同じ高さにある必要はない。
【0056】
粉塵沈着の間、粒子17は反応空間13において形成され始める。吸収を通して、これらは光源10によって放出される光を減衰させる。これは、減衰検出器18によって記録される。粒子17は、散乱光検出器20、22、24によって捕捉され得る光散乱の増大をさらにもたらす。測定値は、通常、プロセス制御ステーションによって捉えられ、また任意に参照/正常値と比較される。その後、これらの測定値をもとに対策を講じることがある。粉塵沈着中、粒子17は反応空間13に通常均一に分布しているので、検出器20、22、24及び源10が取り付けられる高さは、原則として重要ではない。シリコン棒の高さの中部3分の1の高さでそれらが取り付けられている場合が好ましい。
【0057】
図2は、気相成長反応器12の断面を示しており、実質的な要素に関しては、図1を参照することができる。明瞭化のために、1つの加熱されたシリコン棒のみが放射線放出支持体16として示される。この実施形態において、2つの検出器26a、26b(例えば、光ダイオード及び/又はフォトマルチプライヤー)は、いずれの場合も反応器壁の中でのぞき窓21の前に配置される。矢印は、粉塵沈着によって形成される粒子7によって散乱される光と、吸収によって減衰される光の両方を示す。模式的には、吸収によって減衰される光のみが検出器26aに入射し、一方、散乱光と吸収によって減衰された光との両方が検出器26bに入射する。ヘーズは、このように、センサに入射する放射線の変化として測定される。
【実施例
【0058】
図3にプロットしたのは、測定された支持体温度θ、時間t及びt(堆積時間)に対するシーメンス反応器ののぞき窓の前に配置された白黒カメラの露光時間tに関するその一次導関数のプロファイルの図である。示されたプロファイルは、60時間の体積時間から始まる。
【0059】
シーメンス反応器には24個の棒の対が装備されており、反応器の種類は原則として本発明の性能に重要ではない。θの測定は、のぞき窓の前に配置したパイロメータでポリシリコン棒(ブリッジと電極の間の棒の中央の高さで)上で実施した。パイロメータのデータをプロセス制御ステーションに移し、プロットした。白黒カメラにCMOSセンサを設け、同様にほぼ棒の中央部の高さで反応空間に向けた。カメラは、プロセス制御ステーションの処理ソフトウェアに転送される画像を連続的に生成した。このソフトウェアが、暗くなったり明るくなったりしたときに、露光時間tの自動調整を行った。
【0060】
60時間の堆積時間後、θは最初約1040℃で一定であった。約5分後にθが約12℃(見かけ上)低下し、約4分後にはθは前の値に戻った。粉塵沈着は画像の暗色化をもたらすので、tが同じ時間窓(破線Iの内側の領域)にわたり上昇(360μsから450μs)及び下降することにより、この不規則性が短い粉塵沈着であることが確認された。
【0061】
粉塵沈着におけるθのプロファイルは、シリコン棒の熱容量及び温度制御回路の制御経路を考慮すると、測定値が実際に可能であろうよりも急激に変化することを原則として特徴とする。不変の新たな段階(約10分)の後、tの急峻な上昇と連動してθが大幅に低下した。この異常な曲線プロフィルは完全な粉塵沈着であった。
【0062】
一時的な粉塵沈着では、ガス流の結果として、新しい粒子が形成されるよりも多くの粒子が排気ガスにより反応器から排出される場合に、方法は回復することができる。しかし、反応器中に多すぎる粉塵粒子が形成されると、これらはガス流によって反応器から排出できなくなる。反応ガスの供給が変わらず、入熱が変わらない又は増加することさえあると、システムから吹き出されるよりも多くの粉塵粒子が沈着し、反応器雰囲気が恒久的に暗くなる。
【0063】
とくにθ及びtの不規則性により、ヘーズ指数を測定し、それに応じて(手動又は自動で)粉塵沈着を防止する対策を講じることができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】