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特表2022-540737漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその製造方法と、これを充填した中和器
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  • 特表-漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその製造方法と、これを充填した中和器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその製造方法と、これを充填した中和器
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/06 20060101AFI20220912BHJP
   A62D 3/30 20070101ALI20220912BHJP
   A62D 3/36 20070101ALI20220912BHJP
   A62C 13/00 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
A62D1/06
A62D3/30
A62D3/36
A62C13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548707
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 KR2021003882
(87)【国際公開番号】W WO2021201543
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039502
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317015331
【氏名又は名称】ジーティーサイエン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・キュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジェ・ホン
【テーマコード(参考)】
2E191
【Fターム(参考)】
2E191AA10
2E191AB11
2E191AB12
2E191AB41
2E191BA01
2E191BA11
2E191BD11
(57)【要約】
本発明は、漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその製造方法と、これを充填した中和器に関し、酸性、塩基性、及び/又は有機化学物質の中和吸収に汎用可能な無機吸着剤40~60重量%と、増粘剤20~30重量%と、界面活性剤20~30重量%、そして色変化指示薬を含み、固相に剤形化され、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、酸性、塩基性、及び/又は有機化学物質の漏出事故時に漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、迅速かつ安全に即時1次的初動措置に効果的であり、それによって2次事故防止にも有用であるだけでなく、使用時に酸塩基反応によって生成される水による汚染拡散のおそれがないことはもちろん、非毒性化学吸収剤を使用することにより、除毒剤による追加的な2次汚染の発生のおそれを最小限に抑えることができ、除毒過程を漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、リアルタイムで視覚的に確認可能であり、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された中和器を使用すると、初動措置時にさらに安全かつ効果的に漏出化学物質に対する除毒が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性、塩基性、及び有機化学物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学物質の中和吸収に汎用可能な無機吸着剤40~60重量%と、増粘剤20~30重量%と、界面活性剤20~30重量%と、を含む除毒中和吸収剤100重量部と、
メチルレッドまたはメチルオレンジと、メチレンブルーと、フェノールフタレインからなる色変化指示薬0.01~0.02重量部と、を含み、
前記無機吸着剤がゼオライト、アルミナ、パーライト、及びベントナイトからなる群から選ばれる少なくも1種の無機吸着剤であり、
固相に剤形化された、漏出化学物質除毒用中和吸収剤。
【請求項2】
前記増粘剤がシリカゲル、シリカスターチ、澱粉、天然セルロース、及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記界面活性剤がポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールとプロピレングリコールの混合物であり、
前記色変化指示薬が天然指示薬をさらに含む、請求項1に記載の漏出化学物質除毒用中和吸収剤。
【請求項3】
前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の含水率が5~10重量%である、請求項1に記載の漏出化学物質除毒用中和吸収剤。
【請求項4】
前記無機吸着剤が平均粒径30μm~100μmであり、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤が平均粒径30μm~100μmのパウダー、平均粒径0.5mm~1.0mmのグレイン、平均粒径1.5~3.0mmのペレット、グラニュール、フレーク、またはタブレット状に剤形化されている、請求項1に記載の漏出化学物質除毒用中和吸収剤。
【請求項5】
下記段階を含む漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法。
a)酸性、塩基性、及び有機化学物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学物質の中和吸収に汎用可能なゼオライト、アルミナ、パーライト、及びベントナイトからなる群から選ばれる少なくとも1種の平均粒径30μm~100μmの無機吸着剤40~60重量%と、増粘剤20~30重量%と、界面活性剤20~30重量%を均質に混合する除毒用中和吸収剤の製造段階と、
b)前記除毒用中和吸収剤100重量部に対してメチルレッドまたはメチルオレンジと、メチレンブルーと、フェノールフタレインからなる色変化指示薬0.01~0.02重量部を混合する指示薬混合段階と、
c)含水率5~10重量%に乾燥する乾燥段階と、
d)色変化指示薬が含まれている前記乾燥された除毒用中和吸収剤を平均粒径30μm~100μmのパウダー、平均粒径0.5mm~1.0mmのグレイン、平均粒径1.5~3.0mmのペレット、グラニュール、フレーク、またはタブレット状に剤形化する段階。
【請求項6】
請求項1に記載の漏出化学物質除毒用中和吸収剤が不活性ガスまたは窒素ガスとともに充填されている消火器の形態または蓄圧式粉末散布機の形態の漏出化学物質除毒用中和器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその製造方法と、これを充填した中和器に関し、より詳細には、研究室や実験室または産業現場で不意に発生することがある塩酸、酢酸、フッ酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム溶液、過酸化水素、アンモニア水、トルエン、またはベンゼンなどの酸性、塩基性、及び/又は有機化学物質の漏出事故時に漏れた化学物質の種類や特性にかかわらず、迅速かつ安全に効果的に中和処理することにより、2次事故を防止するのに有用な漏出化学物質除毒用中和吸収剤及びその効果的な製造方法と、その除毒用中和吸収剤が充填された中和器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、亀尾と清州のフッ酸漏出事故、尚州の塩酸漏出事故など産業現場での化学物質の漏出事故により多くの財産と人命被害が発生しており、様々な種類の化学物質を多く使用する大学や研究機関の研究室や実験室でも実験中において化学物質の漏出事故が頻繁に発生している。
【0003】
このような化学物質漏出事故の発生時に初動措置の不在は、さらに大きな2次事故につながるため、迅速かつ適切な初動措置は、国民の財産と人命被害を最小限に抑える上で特に重要である。
【0004】
現在、化学物質の漏出事故時の初期対応方法は、手作業によるフェンス設置や吸着剤または中和剤を散布することが一般的であり、前述した亀尾のフッ酸漏出事故では、消防士がフッ酸に水を噴射することにより、事故がさらに大きくなる事態を招いた。
【0005】
従来の化学物質の漏出事故の処理は、酸性化学物質の漏出時には、塩基性化学物質で中和処理し、塩基性化学物質の漏出時には、酸性化学物質で中和処理し、有機化学物質の漏出時には、吸着剤や吸収布を用いて処理する、それぞれ別途の厳格に区分された方法が適用されている。
【0006】
漏れた化学物質の種類と性状を知らなかったり、誤った中和器を使用する場合、さらなる事故につながりかねない。また、従来の酸性化学物質の漏出時に使用する中和器の場合、過量使用時に塩基性化学物質が残留し、2次汚染を引き起こすおそれがある。
【0007】
従来の酸性用又は塩基用中和器は、使用時に酸と塩基の反応による水が生成されるため、反応しない中和薬品と水が混在することになるため、拡散のおそれを常時内包している。
【0008】
また、漏出化学物質の種類に応じて中和器を区分選択して使用しなければならないので、その選択過程により初動措置が遅くなるとともに、適正使用量を初動措置者が正確に判断することが困難であり、迅速かつ適正な中化除毒が行われていないため、さらなる財産と人命被害が発生する可能性が大きいという問題点がある。
【0009】
したがって、従来の技術的限界は、漏れた化学物質の種類に応じて酸、塩基中和反応による中和器を選別して使用しなければならないという点と、有機化学物質の漏出事故時には、その使用において明確な制約が存在する。
【0010】
化学物質の漏洩時の初動措置として除毒のための典型的な従来技術としては、下記のものが挙げられる。
【0011】
韓国登録特許公報第10-1605582号(2016.03.16.登録)が挙げられ、塩基性化学物質の中和のための中和剤が内蔵された蓄圧式本体容器と、本体容器に装着される中和剤噴射用レバーと、放射ホースと、安全ピンを含む放射部と、を含み、蓄圧式本体容器には界面活性剤が含まれ、本体容器は、7~9.8kgf/cmの圧力状態であり、中和剤は、クエン酸、フマル酸、希塩酸、酢酸、またはこれらの任意の混合物である漏出塩基性化学物質中和用中和装置が提案されている。
【0012】
また、韓国公開特許公報第10-1996-0010030号(1996.02.14.公開)には、漏れた少量の酸や有毒ガスなどを処理除去する酸中和剤組成物として中和反応時に緩やかに反応しうる塩基性物質(トリエタノールアミン)と漏れるガスや中和反応時に発生するガスを容易に吸収中和するガス吸収剤(ジエタノールアミン)及び反応状態を肉眼で識別できる機能を持つアリザリンレッドなどで組成させた酸中和剤組成物が提示されている。
【0013】
また、韓国公開特許公報第10-1997-0009831号(1997.03.27.公開)には、少量の酸や有毒ガス等を処理除去する酸中和剤組成物として中和反応時に緩やかに反応しうる塩基性物質(無水炭酸カルシウム、無水炭酸ソーダ、酸化マグネシウム)と漏れたガスや中和反応時に発生するガスを容易に吸収中和するガス吸収剤及び反応状態を肉眼で識別できる能力を持つB.T.B(色素)などで組成させた粉末状酸中和剤組成物が提案されている。
【0014】
しかし、前記従来技術は、すべて酸性または塩基性化学物質の特定の種類に限定して適用できるだけで、酸性及び塩基性化学物質の両方に併用できるものではなく、さらに有機化学物質の除毒は可能でないという制限がある。
【0015】
下記表1は、前述した従来技術を参照し、類型別にまとめて比較して説明したものである。
【0016】
【表1】
【0017】
一方、登録実用新案公報第20-0272280号(2002.04.03.登録)には、塩素及びアンモニアガスの中和剤散布装置が、そして韓国登録特許公報第10-1409521号(2014.06.12.登録)には、湿式及び乾式中和剤散布装置が開示されているが、その処理対象の化学物質が特定の種類に限定されるという問題点があり、また、韓国登録特許公報第10-2038255号(2019.10.23.登録)は、車両搭載型防災剤散布システムが、そして、韓国登録特許公報第10-1951724号(2019.02.19.登録)には、車両用中和剤散水装置が開示されているが、これらは車両を用いて事故現場に移動して処理する技術に関し、1次的な即時初動措置に必要なポータブルタイプではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1605582号(2016.03.16.登録)
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-1996-0010030号(1996.02.14.公開)
【特許文献3】韓国公開特許公報第10-1997-0009831号(1997.03.27.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の第1の目的は、酸性、塩基性及び/又は有機化学物質の漏出事故時で漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、迅速かつ安全に即時1次的初動措置に効果的であり、それによりさらに大きな2次事故防止に有用な漏出化学物質除毒用中和吸収剤を提供するためのものである。
【0020】
本発明の第2の目的は、使用時に酸塩基反応によって生成される水による汚染拡散のおそれがないことはもちろん、非毒性物質から構成された化学吸収剤を使用することにより、除毒剤による追加的な2次汚染発生のおそれを最小限に抑えた漏出化学物質除毒用中和吸収剤を提供するためのものである。
【0021】
本発明の第3の目的は、除毒過程を漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、リアルタイムで視覚的に確認可能な漏出化学物質除毒用中和吸収剤を提供するためのものである。
【0022】
本発明の第4の目的は、前述した諸目的に応じた漏出化学物質除毒用中和吸収剤の効果的な製造方法を提供するためのものである。
【0023】
本発明の第5の目的は、前記第1ないし第3の目的による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填(filling)され、汚染源に効果的に適用して除毒できる中和器を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記本発明の第1ないし第3の目的は、酸性、塩基性、及び有機化学物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学物質の中和吸収に汎用可能な無機吸着剤40~60重量%と、増粘剤20~30重量%と、界面活性剤20~30重量%を含む除毒用中和吸収剤100重量部と、メチルレッドまたはメチルオレンジと、メチレンブルーと、フェノールフタレインからなる色変化指示薬0.01~0.02重量部を含み、前記無機吸着剤がゼオライト、アルミナ、パーライト、及びベントナイトからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機吸着剤であり、固相に剤形化された漏出化学物質除毒用中和吸収剤により円滑に達成しうる。
【0025】
削除
【0026】
ここで、前記増粘剤は、シリカゲル、シリカスターチ、澱粉、天然セルロース、ハイセル、ゼラチン、またはこれらの任意の混合物であってもよく、前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールとプロピレングリコールの混合物であってもよく、前記色変化指示薬は、天然指示薬をさらに含んでもよい。
【0027】
前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の含水率は、制限的なものではないが、5~10重量%であってもよい。
【0028】
また、前記無機吸着剤は、平均粒径30μm~100μmであってもよく、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、平均粒径30μm~100μmのパウダー、平均粒径0.5mm~1.0mmのグレイン、平均粒径1.5~3.0mmのペレット、グラニュール、フレーク、またはタブレット状に剤形化されたものであってもよい。
【0029】
前記本発明の第4の目的は、a)酸性、塩基性、及び有機化学物質からなる群から選ばれる少なくも1種の化学物質の中和吸収に汎用可能なゼオライト、アルミナ、パーライト、及びベントナイトからなる群から選ばれる少なくとも1種の平均粒径30μm~100μmの無機吸着剤40~60重量%と、増粘剤20~30重量%と、界面活性剤20~30重量%を均質に混合する除毒用中和吸収剤の製造段階と、b)前記除毒用中和吸収剤100重量部に対して、メチルレッドまたはメチルオレンジと、メチレンブルーと、フェノールフタレインからなる色変化指示薬0.01~0.02重量部を混合する指示薬混合段階と、c)含水率5~10重量%に乾燥する乾燥段階と、d)色変化指示薬が含まれている前記乾燥された除毒用中和吸収剤を平均粒径30μm~100μmのパウダー、平均粒径0.5mm~1.0mmのグレイン、平均粒径1.5~3.0mmのペレット、グラニュール、フレーク、またはタブレット状に剤形化する段階と、を含む漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法によって円滑に達成しうる。
【0030】
前記本発明の第5の目的は、前述した漏出化学物質除毒用中和吸収剤が不活性ガスまたは窒素ガスとともに充填されている消火器の形態または蓄圧式粉末散布機の形態で漏出化学物質除毒中和器によって円滑に達成しうる。
【発明の効果】
【0031】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、酸性、塩基性、及び/又は有機化学物質の漏出事故時に漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、迅速かつ安全に即時1次的初動措置に効果的であり、それによって2次事故防止にも有用であるだけでなく、使用時に酸塩基反応によって生成される水による汚染拡散のおそれがないことはもちろん、非毒性の化学吸収剤を使用することにより、除毒剤による追加的な2次汚染発生のおそれを最小限に抑えることができ、除毒過程を漏れた化学物質の種類や性状、そして特性にかかわらず、リアルタイムで視覚的に確認可能である。
【0032】
また、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された中和器を使用すると、初動措置時により安全かつ効果的に漏出化学物質に対する除毒が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法を説明する例示的フローチャートである。
図2図2は、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の剤形に対する例示図である。
図3図3は、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された消火器形態の中和器に対する例示図である。
図4図4は、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された蓄圧式粉末散布機形態の中和器に対する例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0035】
以下の説明は、本発明の具体例を挙げて記述するものと理解されるべきであり、本発明の技術的思想が下記の説明に限定されるものではない。そして、添付された図面は、本発明の理解を助けるために提供されるもので、本発明の技術思想が添付図面に限定されるものではない。
【0036】
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の構成
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、酸性、塩基性、有機化学物質、またはこれらの任意の混合化学物質の中和吸収に汎用可能な無機吸着剤と、増粘剤と、界面活性剤と、色変化指示薬と、を含み、固相に剤形化される。
【0037】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、研究室や実験室、または産業現場などで発生することがある漏出事故時に漏れた化学物質の吸収処理、廃棄化学薬品の固形化処理など様々な用途に広範囲に活用することができる。
【0038】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、食品添加物、化粧品原料、化学物質の製造などに常用される原料を混合して製造しうる。前記無機吸着剤としては、これに限定されるものではないが、ゼオライト、アルミナ、パーライト、ベントナイト、またはこれらの任意の混合物であってもよい。
【0039】
前記無機吸着剤は、前記本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量に対して40~60wt%の範囲で含まれる。例えば、前記無機吸着剤が1種類の場合、前記1種類の無機吸着剤は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、40~60wt%の範囲で含有され、もし前記無機吸着剤が2種類以上の場合、前記2種類以上の無機吸着剤の含有量をすべて合わせた総含有量が、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、40~60wt%の範囲内であってもよい。
【0040】
前記無機吸着剤の含有量が40wt%未満の場合には、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が意図する除毒用中和吸収剤の性能を具現することが困難であり、前記無機吸着剤の含有量が60wt%を超える場合には、増粘剤、界面活性剤の活性が低下するおそれがあるか、または吸収ゲル化しにくく、吸収率が低下するおそれがある。
【0041】
また、前記増粘剤としては、これに限定されるものではないが、シリカゲル、シリカスターチ、澱粉、天然セルロース、ハイセル、ゼラチン、またはこれらの任意の混合物であってもよい。
【0042】
前記増粘剤は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量に対して20~30wt%の範囲で含まれる。例えば、前記増粘剤が1種類の場合、前記1種類の増粘剤は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、20~30wt%の範囲内で含まれてもよい。もし、前記増粘剤が2種類以上の場合、前記2種類以上の増粘剤の含有量をすべて合わせた総含有量が、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、20~30wt%の範囲であってもよい。前記増粘剤の含有量が20wt%未満の場合には、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が意図する性能を具現することが困難であり、前記増粘剤の総含有量が30%を超える場合には、無機系吸着素材、界面活性剤の活性が低下するおそれがあり、または無機系吸着素材の気孔を塞いで吸収率が低下するおそれがある。
【0043】
また、界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはこれらの混合物であってもよい。
【0044】
前記界面活性剤は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量に対して20~30wt%の範囲で含まれる。例えば、前記界面活性剤が1種類の場合、前記1種類の界面活性剤は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、20~30wt%の範囲で含有されてもよい。もし、前記界面活性剤が2種類以上の場合、前記2種類以上の界面活性剤の含有量をすべて合わせた総含有量が、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤の総重量を基準として、20~30wt%の範囲であってもよい。前記界面活性剤の含有量が20wt%未満の場合には、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が意図する除毒用中和吸収剤の性能を具現することが困難であり、前記界面活性剤の含有量が30wt%を超える場合には、無機系吸着素材、増粘剤の活性が低下するおそれがあり、または増粘剤の役割を妨害して吸収率が低下するおそれがある。
【0045】
一方、色変化指示薬としては、これに限定されるものではないが、メチルレッド、メチルオレンジ、メチレンブルー、フェノールフタレイン、天然指示薬(紫キャベツ、ナス、バラなど)、またはこれらの任意の混合物であってもよい。
【0046】
ここで、メチルレッドは、赤色(pH4.4)⇔黄色(pH6.2)の指示薬であり、メチルオレンジは、赤色(pH3.1)⇔黄色(pH4.4)の指示薬であり、フェノールフタレインは、赤色(pH0)⇔無色⇔紫色(pH8.2)⇔無色(pH12)の指示薬であり、メチレンブルーは、酸化状態では青色が濃く、還元状態では薄くなる酸化還元指示薬である。
【0047】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、酸性化学物質の中和吸収除毒にはフェノールフタレインが、塩基性化学物質の中和吸収除毒にはメチルオレンジまたはメチルレッドが、そして、有機化学物質の中和吸収除毒には、酸化還元指示薬であるメチレンブルーが適切であり、特に好ましくは、フェノールフタレインと、メチルオレンジまたはメチルレッドと、メチレンブルーが同時に含まれるものであり、特定にはこれらの指示薬が等量でともに含まれたものであってもよい。
【0048】
前記色変化指示薬は、前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤100重量部に対して0.01~0.02重量部の範囲で含まれたものであってもよい。前記色変化指示薬の含有量が定められた範囲より少ないか多い場合には、本発明において意図する色変化感知役割が低下するおそれがある。
【0049】
なお、選択的には、本発明による前記漏出化学物質除毒用中和吸収剤100重量部に対して、0.1~3.0重量部の範囲で脱臭剤が含まれてもよく、このような脱臭剤としては、微粒化した多孔質材料としての赤色頁岩粉末やケイ酸質鉱物粉末が挙げられる。
【0050】
このようなセラミック脱臭剤を含む場合、除毒過程において発生する悪臭の脱臭ないし消臭に有用になる。
【0051】
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法
次に、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法について説明する。
【0052】
図1は、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法を説明する例示的フローチャート(順序図)であって、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法は、a)無機吸着剤と増粘剤、界面活性剤を混合する除毒用中和吸収剤の製造段階と、選択的にb)前記除毒用中和吸収剤に色変化指示薬を混合する指示薬混合段階と、c)指示薬が混合された除毒用中和吸収剤を含水率5~10wt%の範囲に乾燥する段階と、また選択的に、d)乾燥された除毒用中和吸収剤を望む粒径及び形態で剤形化する段階と、を含んでもよい。
【0053】
前記剤形化は、圧縮成形機を用いてペレットやタブレット状に作製してもよく、またはボールミルなどを用いてパウダー状に作製してもよく、またはグラニュール成形機やフレーク成形機を用いて、グラニュールやフレーク状に作製してもよい。
【0054】
ここで、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法に使用される各成分及び組成比は、前述した漏出化学物質除毒用中和吸収剤の構成による。
【0055】
すなわち、無機吸着剤40~60wt%、増粘剤20~30wt%、界面活性剤20~30wt%の混合物から構成され、これらの混合物100重量部に対して色変化指示薬を0.01~0.02重量部wt%含む。
【0056】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造方法によって製造される本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の形態に対する例示は、添付の図2の拡大図を参照してもよいが、これは例示に過ぎず、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤の形態を制限するものではない。
【0057】
漏出化学物質除毒用中和吸収剤充填中和器
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤は、酸性、塩基性、有機化学物質、またはこれらの任意の混合物が事故で漏れた場合、漏れた化学物質に本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤を初動措置者が直接投げるか、または散布してもよいが、使用便宜性及び安全性の面から、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された蓄圧式ポータブル消火器の形態、または蓄圧式粉末散布機の形態の中和器を用いて漏れた化学物質から5m以上離れた地点から散布して中和吸収させることが好ましい。
【0058】
本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された消火器のような形態の中和器には、窒素ガスや不活性ガスが7~9.8kgf/cmの圧力で充填されてもよい。また、蓄圧式粉末散布機の場合には、使用圧力最大3barの範囲で窒素ガスまたは不活性ガスが充填される。
【0059】
図3図4は、それぞれ、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された消火器の形態及び蓄圧式粉末散布機の形態の中和器に対する例示図であって、その基本構造は公知であるため、これに対する追加説明は、省略する。
【0060】
一方、表1に示した従来技術に比べて、本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤が充填された消火器の形態及び蓄圧式粉末散布機の形態の中和器について言及すると、事故現場から5m以上離れて噴射することで人身事故の危険性のおそれが少なく、使いやすさが高く、即時初動措置が可能であり、酸、塩基、有機化学物質の区分による選択の必要性なしに緊迫した瞬間にすぐに使用可能であり、界面活性剤を含有しているため、有毒ガス及び液の蒸発を抑制し、中和剤(化学吸収剤)が固相の非毒性物質であって、2次汚染のおそれがないという長所を持つ。
【0061】
実施例1:漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の全重量を基準として、無機吸着剤としてのゼオライト50重量%、増粘剤としてのシリカスターチ20重量%、及び界面活性剤としてのポリエチレングリコール30重量%を粉末混合機であるリボンミキサーを使用して1時間均質に混合した後、この混合物100重量部に対してフェノールフタレインとメチルオレンジとメチレンブルーの等重量指示薬0.01重量部を混合し、再び5分間混合した。
【0062】
前記のようにして製造された混合された化学中和吸収剤は、混合機の下部収集部に捕集され、水分含量7重量%となるように乾燥し、漏出化学物質除毒用中和吸収剤を製造した。
【0063】
実施例2:漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の全重量を基準として、無機吸着剤としてのベントナイト60重量%、増粘剤としてのシリカゲル20重量%、及び界面活性剤としてのポリプロピレングリコール20重量%を粉末混合機であるリボンミキサーを使用して1時間均質に混合した後、この混合物100重量部に対してフェノールフタレインとメチルオレンジとメチレンブルーの等重量指示薬0.02重量部を混合し、再び5分間混合した。
【0064】
前記のようにして製造された混合された化学中和吸収剤は、混合機の下部収集部に捕集され、水分含量7重量%となるように乾燥し、漏出化学物質除毒用中和吸収剤を製造した。
【0065】
比較例1:漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の全重量を基準として、無機吸着剤としてのゼオライト80重量%、増粘剤としてのシリカスターチ10重量%、及び界面活性剤としてのポリエチレングリコール10重量%を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法及び手順を用いて漏出化学物質除毒用中和吸収剤を製造した。
【0066】
比較例2:漏出化学物質除毒用中和吸収剤の製造
漏出化学物質除毒用中和吸収剤の全重量を基準として、無機吸着剤としてのベントナイト50重量%、増粘剤としてのシリカゲル10重量%、及び界面活性剤としてのポリプロピレングリコール40重量%を使用したことを除いては、実施例2と同じ方法及び手順を用いて漏出化学物質除毒用中和吸収剤を製造した。
【0067】
試験例:酸性、塩基性、及び有機化学物質吸収率の測定
実施例1及び2と比較例1及び2で製造した漏出化学物質除毒用中和吸収剤の酸性、塩基性、有機化学物質の単位g当たり吸収率を測定した。使用した試薬は、濃い塩酸(HCl、35.4%)、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH試薬を水100mlに20gを溶かして製造)、ベンゼン(Benzene、99.5%)を使用した。
【0068】
結果を下記表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
前記表2の結果から、実施例1~実施例2の場合、比較例1~比較例2に比べて約2倍に近い化学物質の吸収率を示した。
【0071】
比較例1のように無機吸着剤が過量に使用される場合、増粘剤の役割が低下し、ゲル化の進行が遅く、吸収率が低下し、また、比較例2のように界面活性剤が過量である場合、実施例2に比べて吸収率が低下することが確認された。
【0072】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明の技術分野に属する者は、本発明が本質的な特性から逸脱しない範囲内で様々な変更及び修正を容易に行うことができるだろう。したがって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されるべきであり、本発明の真の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての差異点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0073】
10、50:本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤
20、40:本体
30、80:放射部
31:安全ピン
32:レバー
33、81:放射ホース
60:安全弁
70:ピストンポンプ
100:本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤(パウダー)
200:本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤(ペレット)
300:本発明による漏出化学物質除毒用中和吸収剤(タブレット)
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】