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特表2022-540780テトラヒドロピラゾロピリミジノン化合物を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】テトラヒドロピラゾロピリミジノン化合物を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20220912BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220912BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 9/66 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K31/519
C07D487/04 143
A61P9/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P25/28
A61P17/00
A61P9/10
A61P1/00
A61P37/06
A61P35/00
A61K9/10
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/10
A61K9/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577114
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020069230
(87)【国際公開番号】W WO2021005101
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/068419
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517248845
【氏名又は名称】イドーシア ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IDORSIA PHARMACEUTICALS LTD
【住所又は居所原語表記】HEGENHEIMERMATTWEG 91, 4123 ALLSCHWIL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アンブエル
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィール フルニエ
(72)【発明者】
【氏名】アマンディーヌ フレシャール
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ フロワドゥヴォー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ギーゼラー
(72)【発明者】
【氏名】シャリーゼ ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ウブラー
(72)【発明者】
【氏名】マーク マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ドルテ レンネベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ジモン シュタム
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォン ラウマー
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH04
4C076AA16
4C076AA66
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC27
4C076DD08F
4C076DD09F
4C076DD37
4C076DD39
4C076DD46A
4C076DD46F
4C076DD47
4C076EE23F
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086GA12
4C086GA15
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン、並びに、1又は2種以上の親油性賦形剤;1又は2種以上の親水性界面活性剤;及び任意で1又は2種以上の親水性補助溶媒を含有する賦形剤混合物を含有する、水性媒体中で自己乳化性、自己マイクロ乳化性又は自己ナノ乳化性である医薬組成物に関する。本発明はさらに、前記化合物の結晶形及び本発明の組成物の製造のためのその使用に関する。本発明はさらに、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害の予防又は治療のための上記組成物の医薬としての使用に関する。
【化1】
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン:
【化1】
を含有する、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、自己マイクロ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SMEDDS)又は自己ナノ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SNEDDS)である医薬組成物であって、
前記化合物が遊離塩基形態又は薬学的に許容される塩形態であり;
前記医薬組成物が、
- 1又は2種以上の親油性賦形剤;
- 1又は2種以上の親水性界面活性剤;及び
- 任意で1又は2種以上の親水性補助溶媒;
を含有する賦形剤混合物を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
- 化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン:
【化2】
及び
- 賦形剤混合物;
を含有し;
前記化合物は遊離塩基形態又は薬学的に許容される塩形態であり;
上記賦形剤混合物は:
-- 合計で約20~50ww%の1又は2種以上の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が、
--- 1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル及びグリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤;及び/又は
--- 中鎖トリグリセリド油及び1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルから選択される油脂様賦形剤;
から独立に選択される、親油性賦形剤;
-- 合計で約30~80ww%の1又は2種以上の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質及びポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから独立に選択される、親水性界面活性剤;及び
-- 合計で約0~25ww%の1又は2種以上の親水性補助溶媒;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100である;
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
- 総量で約0.05~5ww%の遊離塩基形態の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン;及び
- 総量で少なくとも約80ww%の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルである、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;又は、
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
- 総量で約0.075~4.5ww%の遊離塩基形態の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン;及び
- 総量で少なくとも約80ww%の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
-- 合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
-- 親水性補助溶媒を有さないか;又は、合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
- 総量で約0.075~4.5ww%の遊離塩基形態の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン;及び
- 上記医薬組成物の総重量に対して、総量で少なくとも約90ww%の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルである、親油性賦形剤;
-- 合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油である、親水性界面活性剤;及び
-- 親水性補助溶媒を有さないか;又は、合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100である、賦形剤混合物;及び
- 任意で、1又は2種の従来成分又は添加剤であって、
-- 上記医薬組成物の総重量に対して、約2ww%未満の量の1種の酸素捕そく剤;及び/又は
-- 上記医薬組成物の総重量に対して、約0.3ww%未満の量の1種の連鎖停止剤;から選択される1又は2種の抗酸化剤から選択される、従来成分又は添加剤;
から本質的になり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記酸素捕そく剤が、上記医薬組成物の総重量に対して、約0.1~1ww%の量で存在する;請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記連鎖停止剤が、上記医薬組成物の総重量に対して、約0.05~0.2ww%の量で存在する;請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物がソフトゼラチンカプセル中に充填される;請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
結晶形の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンが前記組成物の製造に使用される;請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.2°、9.5°及び14.4°におけるピークの存在により特徴づけられる、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの結晶形であって、前記粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項11】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.2°、9.5°、14.4°、15.7°及び18.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、請求項10に記載の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-
2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの結晶形であって、前記粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項12】
示差走査熱量測定により測定される約163℃の融点を有する;請求項11に記載の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの結晶形。
【請求項13】
医薬として使用するための請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害の予防又は治療において使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
血管性疾患又は障害、血管内微細小胞放出が関与する炎症性疾患又は障害、免疫複合体(IC)疾患又は障害、神経変性疾患又は障害、補体関連炎症性疾患又は障害、水疱性疾患又は障害、虚血及び/又は虚血再灌流障害関連疾患又は障害、炎症性腸疾患又は障害、自己免疫疾患又は障害及び癌から選択される疾患及び障害の予防又は治療において使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンを含有する、水性媒体中で自己乳化性、自己マイクロ乳化性又は自己ナノ乳化性である医薬組成物に関し、前記化合物は以下において「化合物」とも記載される:
【0002】
【化1】
【0003】
本発明はさらに、遊離塩基形態の「化合物」の結晶形及び本発明の組成物の製造のためのその使用に関する。本発明はさらに、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害の予防又は治療のための、本発明の組成物の医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0004】
「化合物」は、(オクタノール/リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で測定した)6.9のlogPを有するBCSクラスII化合物である。C5a受容体調節剤である「化合物」の製造、及び、その医薬としての使用、特にC5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害(例えば、血管性疾患又は障害(vasculitic diseases or disorders)、血管内微細小胞放出(intravascular microvesicle release)が関与する炎症性疾患又は障害、免疫複合体(IC)疾患又は障害、神経変性疾患又は障害、補体関連炎症性疾患又は障害、水疱性疾患又は障害(bullous diseases
or disorders)、虚血及び/又は虚血再灌流障害(ischemia and/or ischemic reperfusion injury)関連疾患又は障害、炎症性腸疾患又は障害及び自己免疫疾患又は障害;並びに、人工表面(artificial surfaces)との接触により引き起こされる接触過敏症(contact sensitivity)又は炎症;白血球及び血小板活性化の増大(及びその組
織への浸潤);中毒又は外傷、出血、ショック若しくは移植を含む外科手術等の損傷に関連する病理的続発症(そのような続発症は、多臓器不全(MOF)、敗血症性ショック、中毒に起因するショック又は急性炎症性肺障害を含む。);インスリン依存型糖尿病に関連する病理的続発症;心筋梗塞又は血栓症;浮腫又は毛細血管透過性増大;心肺バイパス及び/又は心臓麻痺(cardioplegia)により誘発される冠動脈内皮細胞機能不全の低減;又は癌)の予防又は治療のためのその医薬としての使用はPCT/EP2019/050372に記載されている。
【0005】
C5aR1(CD88)は、ロドプシン様ファミリーに属する7回膜貫通G-タンパク質結合受容体(GPCR)であり、その遺伝子は第19番染色体上にある。それは、百日咳毒素感受性Gialpha2、Gialpha3又は百日咳毒素非感受性Galpha16に結合し、下流の数種のシグナル伝達経路を開始する。C5aR1は、単球、好中球、肥満細胞、好塩基球及び好酸球を含む多くの免疫細胞種上で発現する。加えて、それは、肝細胞、肺及び内皮細胞、ミクログリア、ニューロン及び腎糸球体細胞を含む他の多くの細胞種上で発現する。C5aRに結合すると記述される多くのリガンドがある。これらには、C5a、C5adesArg及びC5a+1kDaが含まれる。C5aは補体系の中心をなすエフェクター分子であり、補体系自体が、侵入する病原体に対して免疫系を補完する上で重要な役割を担うように進化した複雑な酵素カスケードである。しかしながら、偶発的な補体活性化が多くの急性炎症性障害及び自己免疫疾患を引き起こすことを示す多くの証拠があり(Ricklin D.ら(2010)「Complement:a key system for immune surveillance and homeostasis.」、Nat Immunol 11(9):785-797)、これらの多くの炎症性及び自己免疫障害においてC5aが特に上昇していることが示されている。補体系は4つの経路により活性化される:古典経路及びマンノース結合レクチン(MBL)経路、後者は、病原体又は抗体複合体を認識する初期認識及び活性化工程を除いては古典経路と類似する。別の経路は、自発的に活性化した補体C3タンパク(C3bフラグメント)が病原体表面に結合することにより活性化される。これらの3つの経路はすべて最終的にC3転換酵素の形成を引き起こし、この酵素が上記3つの経路の合流点である(Guo R.F.及びP.A.Ward(2005)Annu Rev Immunol 23:821-852)。続いて、C3転換酵素は、膜侵襲複合体の産生に必要な他の補体タンパク質とともにアナフィラトキシンC3a及びC5aの形成を引き起こす。4番目の経路、外因性経路(the extrinsic pathway)には血漿プロテアーゼ(例えば、エラスターゼ、トロンビン)が関与し、C3又はC5に直接作用して、C3a及びC5aの産生を引き起こす。アナフィラトキシンC5aは、細胞接着分子の発現の増強、顆粒系酵素(granule-based enzymes)の放出、アポトーシスの遅延及び増強、食作用、酸化バースト、ヒスタミンの分泌及び放出並びに走化性を一部介して、自然又は適応系(the innate and adaptive system)の炎症性細胞の動員及び活性化を引き起こす。加えて、TNF-a、IL-1、IL-6、IL-8、プロスタグランジン及びロイコトリエン等の他の炎症促進性メディエーターの放出(N.S.Merleら(2015)「Complement
System Part II:Role in Immunity.」Front Immunol 6:257)、内皮細胞の活性化及び血管透過性を誘発し、最終的に血栓性微小血管障害症が生じる事象を引き起こし得る。従って、C5aは、免疫応答において産生される最も強力な炎症性分子の1つであり、その根本的な生物学的重要性から、極めて広範囲の病理に関連している可能性がある(Janeway’s Immunobiology、第8版(2012)Kenneth Murphy、Garland Science、p.48-72)。
【0006】
C5aは免疫系に対して中心的な役割を担い、それ自体炎症及び組織損傷の主要な側面において重要である。加えて、特に自己免疫並びに炎症性疾患及び障害において、C5a
レベルの上昇を多くの疾患及び障害と関連付ける多くの実験的証拠が文献中に存在する(Ricklin D.ら(2010)Nat Immunol 11(9):785-797)。
【0007】
C5a及びその受容体C5aRが血管性疾患に寄与するという多くの証拠があり、それらは、C5aレベルが上昇し、白血球の遊走、続いて炎症を起こし、それが最終的に血管壁の破壊に繋がることを示している(Charles J.ら(2013)Semin Nephrol 33(6):557-564;Vasculitis、第2版(2008)、Ball and Bridges編集、Oxford University Press、pp47-53;Huang、Y.M.ら(2015)Arthritis
Rheumatol 67(10):2780-2790;Kallenberg C.G.及びP.Heeringa(2015)Mol Immunol 68(1):53-56)。C5aRアンタゴニストによるC5aRの阻害は、ヒトC5a受容体を発現するマウスにおいて、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO)誘発NCGNの回復に効果があり(Xiao H.ら(2014)J Am Soc Nephrol 25(2):225-231)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎を有する患者の第2相試験において効果的であることが確認された(ClinicalTrials.gov
ldentifier NCT02222155)。従って、C5aアンタゴニストは、ANCA関連血管炎、白血球破砕性血管炎、Wegener肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、Churg-Strauss症候群、Henoch-Schoenlein紫斑症、結節性多発動脈炎、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、クリオグロブリン血症、巨細胞性動脈炎(GCA)、ベーチェット病(Behcet’s disease)及び高安動脈炎(TAK)等の血管性疾患の治療に有用である可能性がある。
【0008】
C5aは、ヒト血液が、心肺バイパス及び血液透析法における、例えば、冠動脈バイパス術若しくは心臓弁置換術等の血管手術に関連する心肺機器の人工表面上、又は、腎臓透析器の表面上等の人工表面と接触する場合に(Howard R.J.ら(1988)Arch Surg 123(12):1496-1501;Kirklin J.K.ら(1983)J Thorac Cardiovasc Surg 86(6):845-857;Craddock P.R.ら(1977)J Clin lnvest 60(1):260-264;Craddock P.R.ら(1977)N Engl J Med 296(14):769-774)、あるいは、他の人工的な容器又はコンテナの表面(例えば、補助人工心臓、人工心臓機器、輸血管、血液保存バッグ、血漿交換、血小板アフェレーシス等)との接触と関連して生じる。従って、C5aRアンタゴニストは、人工表面との接触により引き起こされる接触過敏症及び/又は炎症の有害な結果の予防に有用である可能性がある。加えて、例えば血栓性微小血管症及び鎌状赤血球症等の血管内微細小胞放出が関与する炎症性障害の治療に有用である可能性がある(Zecher D.ら(2014)Arterioscler Thromb Vasc Biol
34(2):313-320)。C5aRアンタゴニストはまた、凝固及び線溶系の活性化に関連する特定の血液疾患、播種性血管内凝固症候群(DIC)、悪性貧血、温式及び冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、抗リン脂質抗体症候群及びその関連合併症、動脈及び静脈血栓症、反復流産及び胎児死亡等の妊娠合併症、子癇前症、胎盤機能不全、胎児発育不全、子宮頚リモデリング(cervical remodeling)及び早産、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間血色素尿症(PNH)並びにアレルギー性輸血反応においても有用である可能性がある。G5特異的ヒト化抗体であるエクリズマブ(eculizumab)が発作性夜間血色素尿症及び非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)について承認されており(Wong EK、Kavanagh D、Transl Res.(2015)165(2):306-20)、また、急性抗体媒介性腎同種移植片拒絶等の腎移植及び寒冷凝集疾患において効果があることが示されているため、これらの疾患におけるC5aRアンタゴニ
ストの有用性が支持されている。
【0009】
心筋虚血再灌流障害において、C5aが重要な機能を有することが記述されている。マウスにおいて補体の減少が心筋梗塞サイズを減少させ(Weisman H.F.T.ら(1990)Science 249(4965):146-151;De Hoog V.C.ら(2014)Cardiovasc Res 103(4):521-529)、抗C5a抗体による処置は、後肢虚血再灌流のラットモデルにおいて障害を減少させた(Bless N.M.ら(1999)Am J Physiol 276(1 Pt
1):L57-63)。モノクロナル抗C5a IgGで再処置したブタにおいても心筋梗塞中の再灌流障害が顕著に減少した(Amsterdam E.A.ら(1995)Am J Physiol 268(1 Pt 2):H448-457)。組み換えヒトC5aRアンタゴニストは、外科的血管再生のブタモデルにおいて梗塞サイズを減少させ(Riley R.D.ら(2000)J Thorac Cardiovasc Surg 120(2):350-358)、これらの疾患におけるC5aRアンタゴニストの有用性の証拠を提供する。加えて、臓器移植(solid organ transplant)を含む移植に起因するもの等、C5aが重要な役割を担うことが示された虚血/再灌流障害関連疾患(Farrar C.A.及びS.H.Sacks(2014)Curr Opin Organ Transplant 19(1):8-13)に対して、C5aRアンタゴニストが有益である可能性があり、これは、虚血再灌流障害、虚血性大腸炎及び心虚血等の症候群と同様である(Mueller M.ら(2013)Immunobiology 218(9):1131-1138)。
【0010】
さらに、冠動脈血栓症(Distelmaier K.ら(2009)Thromb Haemost 102(3):564-572)、血管閉塞、手術後血管再閉塞、アテローム性動脈硬化症、外傷性中枢神経系損傷、不整脈源性心筋症(arrhythmogenic cardiomyopathy)(Mavroidis M.ら(2015)Basic Res Cardiol 110(3):27)及びゴーシェ病(Gaucher disease)(Pandeyら(2017)Nature 543:108-112)等の補体が関与する疾患に対しても、C5aRアンタゴニストは有益である可能性がある。従って、C5aR調節剤は、心筋梗塞又は血栓症のリスクを有する患者(すなわち、心筋梗塞又は血栓症のリスク因子(肥満、喫煙、高血圧、高コレステロール血症、心筋梗塞又は血栓症の病歴又は遺伝的素因等であるが、これらに限定されるものではない)として認識されているものの1つ又は2つ以上を有する患者)に予防的に使用して、心筋梗塞又は血栓症のリスクを低減させることができる可能性がある。
【0011】
C5aは、毛細血管透過性の増大及び浮腫、白血球及び血小板の活性化及び組織への浸潤並びに気管支収縮を引き起こす(Sarma J.V.及びP.A.Ward(2012)Cell Health Cytoskelet 4:73-82;Czermak
B.J.ら(1998)J Leukoc Biol 64(1):40-48)。抗C5aモノクロナル抗体の投与は、心肺バイパス及び心臓麻痺誘発冠動脈内皮細胞機能不全を低減させることが示された(Tofukuji M.ら(1998)J Thorac Cardiovasc Surg 116(6):1060-1068)。
【0012】
C5a及びその受容体は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)(Hammerschmidt D.E.ら(1980)Lancet 1(8175):947-949)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(Marc M.M.ら(2004)Am J Respir
Cell Mol Biol 31(2):216-219)及び多臓器不全(MOF)(Huber-Lang M.ら(2001)「Role of C5a in multiorgan failure during sepsis.」J Immunol 166(2):1193-1199;Heideman M.及びT.E.Hugl
i(1984)J Trauma 24(12):1038-1043;)の病理にも関与する。C5aは、2つの重要な炎症促進性サイトカインであるTNF-α及びIL-1の単球の産生を増大させ、これらの疾患の病理に寄与する。C5aは、組織損傷、特に肺損傷の進展において重要な役割を担うことが敗血症性ショックの動物モデルにおいて示された(Smedegard G.ら(1989)Am J Pathol 135(3):489-497;Unnewehr H.ら(2013)J Immunol 190(8):4215-4225)。ラット、ブタ及び非ヒト霊長目を用いた敗血症モデルにおいて、エンドトキシン又はE.coliで処理する前に、動物に抗C5a抗体を投与すると、組織損傷が減少し、IL-6産生が減少した(Hopken U.ら(1996)Eur J Immunol 26(5):1103-1109;Stevens J.H.ら(1986)J Clin lnvest 77(6):1812-1816)。抗C5aポリクロナル抗体でC5aを阻害すると、ラットにおける敗血症の腸管穿孔モデルにおいて生存率が有意に改善することが示された(Czermak B.J.ら(1999)Nat Med 5(7):788-792)。同じ敗血症モデルにおいて、抗C5a抗体は胸腺細胞のアポトーシスを阻害することが示された(Guo R.F.ら(2000)J Clin lnvest 106(10):1271-1280)。抗C5a抗体はまた、ラットにおける肺損傷のコブラ毒因子モデルにおいて、及び、免疫複合体誘発肺損傷において保護的であった(Mulligan M.S.ら(1996)J Clin lnvest 98(2):503-512)。免疫複合体介在肺損傷におけるC5aの重要性はマウスにおいても示された(Bozic C.R.ら(1996)Science 273(5282):1722-1725)。従って、C5aRアンタゴニストは、好中球減少症、敗血症、敗血症性ショック、脳卒中(stroke)、重度の火傷に関連する炎症を含む多くの炎症性障害及び関連病態(Hoesel L.M.ら(2007)J Immunol 178(12):7902-7910)、骨関節炎(Yuan G.ら(2003)Chin Med J(Engl)116(9):1408-1412)並びに急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息(Pandey M.K.(2013)Curr Allergy Asthma Rep 13(6):596-606)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、組織移植片拒絶、移植臓器の超急性拒絶反応等、及びに多臓器不全症候群(MODS)において有益である可能性がある。加えて、C5aRアンタゴニストは、糖尿病性腎疾患(Li L.ら(2015)Metabolism 64(5):597-610)、糖尿病性網膜症(Cheng L.ら(2013).lnvest Ophthalmol Vis Sci 54(13):8191-8198)、ループス腎症(lupus
nephropathy)(Bao L.ら(2005)Eur J Immunol
35(8):2496-2506)、ヘイマン腎炎(Heyman nephritis)、膜性腎症(membranous nephritis)及びデンスデポジット病(dense deposit disease)(DDD)を含むC3腎症(C3 glomerulopathy)等の他の形態の糸球体腎炎(ZhangらClin J Am Soc Nephrol(2014)9:1876-1882)等のインスリン依存型糖尿病に関連する病理的続発症の治療において有益である可能性がある。さらに、化合物、エクリズマブは視神経脊髄炎の治療において有用である可能性があることが示された。
【0013】
C5aRアンタゴニストは、洗浄流体採取におけるオボアルブミン(OVA)誘発総細胞(60%)、好中球(66%)及び好酸球(65%)流入を実質的に減少させ、このことは、C5aR遮断が、喘息の発症を減少させる新規な治療剤となり得ることを示唆する(Staab E.B.ら(2014)lnt Immunopharmacol 21(2):293-300)。
【0014】
補体系、そして特にC5aは、とりわけ肥満細胞及び好中球を含む自然細胞(inna
te cells)の活性化を介して、多くの水疱性疾患の発症に寄与する(例えば、水疱性類天疱瘡、bullous acquisita、落葉状天疱瘡及び尋常性天疱瘡)。表皮基底ケラチノサイトのその下の基底膜からの剥離は、皮膚基底膜のケラチノサイトに対する自己抗体により引き起こされると考えられ、水疱並びに上皮層及び水疱腔内双方への好中球の大量の流入を引き起こす。実験モデルにおいては、好中球の減少又は補体の不在(全体的又はC5選択的)により、表皮下水疱の形成が阻害され得る(Heimbach L.ら(2011)J Biol Chem 286(17):15003-15009;Gammon W.R.(1989)Immunol Ser 46:509-525)。最近の証拠は、C5aの阻害が、皮膚障害、化膿性汗腺炎の治療に有益であることを明確に示唆しており、ヒトC5aに対する抗体が非盲検第II相臨床試験において患者の治療成績を改善することが示された。従って、C5a受容体アンタゴニストは水疱性疾患において有用であろう。
【0015】
補体は炎症性腸疾患(IBD)の病理において重要であると考えられており、C5aRが結腸の上皮細胞において発現していることが見い出されている(Cao Q.ら(2012)Am J Physiol Cell Physiol 302(12):C1731-1740)。加えて、PMX205、ペプチド性C5aRアンタゴニストによるC5a活性の薬理学的阻害がDSS誘発大腸炎の予防に効果的であり、IBD 過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)(Johswich K.ら(2009)lnflamm Bowel Dis 15(12):1812-1823)の患者において、CD88を標的とすることが治療的に有益である可能性があるというさらなる証拠が得られている(Woodruff T.M.ら(2003)J Immunol 171(10):5514-5520;Jain U.ら(2013)Br J
Pharmacol 168(2):488-501)。
【0016】
CNSの病理におけるC5a及びその受容体の役割を示唆する多くの証拠がある。炎症を起こしたヒト中枢神経系において、C5aRの発現は、反応性アストロサイト、ミクログリア及び内皮細胞において上方制御されており(O’Barr S.A.ら(2001)J Immunol 166(6):4154-4162;Gasque P.ら(1997)Am J Pathol 150(1):31-41)、C5aが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(Mantovani S.ら(2014)J Neuroimmunol 276(1-2):213-218;Humayun S.ら(2009)J Neuroimmunol 210(1-2):52-62;Woodruff T.M.ら(2008)J Immunol 181(12):8727-8734)、アルツハイマー病(Fonseca M.I.ら(2013)J Neuroinflammation 10:25;Ager R.R.ら(2010)J Neurochem 113(2):389-401)、パーキンソン病(Wang X.J.ら(2007)Neurochem Int 50(1):39-50)及びハンチントン病(Singhraoら(1999)Experimental Neurology 159、362-376)等の多くの神経変性疾患の病理に関与することが報告されている。さらに、C5aがギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)の患者のCSFにおいて上昇していることが見い出されており(Hartung H.P.ら(1987)Neurology 37(6):1006-1009;Wakerley
B.R.及びN.Yuki(2015) Expert Rev Neurother
15(8):847-849)、抗C5抗体が、マウスのニューロパチーの減少に効果的であることが見い出された(Halstead S.K.ら(2008)Brain 131(Pt 5):1197-1208;Basta M.及びD.R.Branch(2014) Clin Exp Immunol 178 Suppl 1:87-88)。また、C5a受容体の阻害は実験的CNSループスを軽減する(Zwirner J.ら(1999)Mol Immunol 36(13-14):877-884;J
acob A.、B.Hackら(2010)J Neuroimmunol 221(1-2):46-52)。従って、本明細書で提供されるC5aRアンタゴニストは、SLE、シェーグレン症候群(Sjoegren’s syndrome)及び関連する免疫学的プロファイル等の疾患における中枢神経系の合併症に加えて、ALS、アルツハイマー病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、ハンチントン病並びに心肺バイパス手術及び関連術式に関連する認知機能低下を治療する可能性がある。
【0017】
多くの自己免疫疾患においては、免疫グロブリンG含有免疫複合体(IC)の沈着が見られる。これらは、腎臓、心臓、肺、肝臓、血管、神経系及び皮膚を含む身体の異なる器官に頻発する疾患の病態生理に寄与する。多くのそのようなIC疾患が存在し、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クリオグロブリン血症、関節リウマチ、シェーグレン症候群(Lawley T.J.ら(1979)J Immunol 123(3):1382-1387)、Goodpasture症候群(抗糸球体基底膜抗体病)及び過敏症である。免疫複合体はC5転換酵素を誘導してC5a産生を引き起こすことが知られており、これはその後これらの疾患に寄与する(Karsten C.M.及びJ.Kohl(2012) Immunobiology 217(11):1067-1079)。補体のIC活性化の機構を再現する動物モデルにおいて、C5aRが重要な役割を担うことが示された。C5aR欠損マウス及びペプチド性C5aRアンタゴニストの使用が、ICにより誘発される組織損傷からの保護という結果を導くことが試験により示されている(Strachan A.J.ら(2000)J Immunol 164(12):6560-6565;Kohl J.及びJ.E.Gessner(1999)Mol
Immunol 36(13-14):893-903;Baumann U.ら(2000)J Immunol 164(2):1065-1070)。従って、C5aRの阻害剤は、自己免疫疾患、関節リウマチ(Jose P.J.ら(1990)Ann Rheum Dis 49(10):747-752;Grant E.P.ら(2002)J Exp Med 196(11):1461-1471;Yuan G.ら(2003)Chin Med J(Engl)116(9):1408-1412)、骨関節炎、全身性エリテマトーデス(Porcel J.M.ら(1995)Clin Immunol Immunopathol 74(3):283-288;Pawaria
S.ら(2014)J Immunol 193(7):3288-3295)、ループス腎炎(Bao L.ら(2005)Eur J Immunol 35(8):2496-2506)、ループス糸球体腎炎及びIgA腎症(Liu L.ら(2014)J
Clin Immunol 34(2):224-232)、ヘイマン腎炎、膜性腎症及び他の形態の糸球体腎炎、血管炎、皮膚筋炎(Fiebiger E.ら(1998)J Clin lnvest 101(1):243-251)、天疱瘡、全身性硬化症(強皮症)(Sprott H.ら(2000)J Rheumatol 27(2):402-404)、気管支喘息、自己免疫性溶血性及び血小板減少性状態、Goodpasture症候群(及び関連糸球体腎炎及び肺出血)(Ma R.ら(2013)J Clin Immunol 33(1):172-178)、免疫血管炎(Immunovasculitis)、及び、非典型溶血性尿毒症症候群を含む補体介在血栓性微小血管症(Song D.ら(2015)Am J Reprod Immunol 74(4):345-356;Davin J.C.、N.C.van de Kar(2015)Ther Adv Hematol 6(4):171-185)、混合型クリオグロブリン血症、アトピー性皮膚炎(Neuber K.R.ら(1991)Immunology 73(1):83-87;Dang L.ら(2015)Mol Med Rep 11(6):4183-4189)並びに慢性じん麻疹(Kaplan A.P.(2004)J Allergy Clin Immunol 114(3):465-474;Yan S.ら(2014)J Dermatol Sci 76(3):240-245)を含むIC疾患の治療に有用である可能性がある。さらに、化合物、エクリズマブが重症筋無力症及び抗リン脂質抗体症候群の治療において有用である可能性が示され
た。
【0018】
C5aは乾癬プラーク中に存在し、T細胞、好中球 肥満細胞及び樹状細胞が疾患の病因に関与し、これらがC5aに対して走化性である乾癬においてC5aRの発現が報告されている(Diani M.、G.Altomare及びE.Reali(2015)Autoimmun Rev 14(4):286-292)。乾癬プラークの重度の炎症を起こした領域において、角質層下の好中球の蓄積が観察され、乾癬病変(薄片(scale))の抽出物は高レベルのC5aを含み、好中球に対して強い走化活性を示し、この効果はC5a抗体の添加により阻害することができる。さらに、T細胞及び好中球は特定の条件下でC5aにより化学誘引され(Nataf S.ら(1999)J Immunol 162(7):4018-4023;Tsuji R.F.ら(2000)J Immunol 165(3):1588-1598;Werfel T.ら(1997)Arch Dermatol Res 289(2):83-86;Mrowietz U.ら(2001)Exp Dermatol 10(4):238-245)、これは、C5aRアンタゴニストが乾癬の治療に有益である可能性があることを意味する。さらに、補体は緑内障の病因に関与している(Howellら(2011)J.Clin.lnvest.121(4):1429-1444)。加えて、チェックポイントブロッカーを用いた癌の治療において、C5aRアンタゴニストの有益性を示唆する実験的証拠がある。例えば、C5aR受容体に対する抗体(IPH5401)が、癌のマウスモデルにおいて効果的であることが報告されている(ウェブページ lnnate Pharma-IPH5401、2018;https://www.innate-pharma.com/en/pipeline/iph5401-first-class-anti-c5ar-mab;Zah H.ら(2017)Oncoimmunology 6(10):e1349587;Wang Y.ら(2016)Cancer Discovery 6(9)1022-1035)。
【0019】
従って、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因の阻害に有用なC5a受容体(C5aR)の新規な低有機分子調節剤、特にC5aRのアンタゴニストに対する需要がある。
【0020】
本発明は、「化合物」の経口投与のための脂質ベースの医薬組成物であって、水性媒体中で自己乳化性、自己マイクロ乳化性又は自己ナノ乳化性であり;従って、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、自己マイクロ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SMEDDS)又は自己ナノ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SNEDDS)を形成する、医薬組成物に関する。
【0021】
脂質ベースのデリバリーシステムの分類はPoutonらによって2000年に初めて提唱され(例えば、C.W.Pouton、Eur.J.Pharm.Sci.11(2000)S93-S98;Feeneyら;Advanced Drug Delivery Reviews 101(2016)167-194を参照されたい。)、以下のように要約することができる:
【0022】
【表1】
【0023】
水性媒体中への希釈の際に、Type IIIA組成物は通常、溶媒能の若干の損失を示し、特に、Type IIIB及びType IV組成物については、顕著な相転移及び溶媒能の潜在的損失が観察されるかもしれない。従って、希釈の際の溶媒能は、所定の有効成分に対するそのような組成物における特定の賦形剤の選択において重要であろう。種々の脂質ベースのデリバリーシステムの典型的な組成を以下に要約する:
【0024】
【表2】
【0025】
そのような脂質ベースの医薬組成物は一般に等方性混合物を形成し、通常、有効成分は液体又は半固体賦形剤中に溶解している。従って、有効成分が賦形剤から沈殿することがない良好な溶解性プロファイル並びに胃腸管内に投与された場合に有効成分が沈殿することない良好な分散及び/又は消化プロファイルが重要であると考えられる。そのような特性は周知のイン ヴィトロアッセイを用いて試験することができる。加えて、「化合物」を含む組成物は、有効成分の酸化的分解を受けやすいかもしれない。従って、「化合物」の適切な医薬組成物においては、そのような製剤中において前記化合物が良好な化学的安定性を有することが必要である。
【0026】
BCSクラスII化合物である2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンは、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害の予防又は治療を意図する医薬品に適切な自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、自己マイクロ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SMEDDS)又は自己ナノ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SMEDDS)である脂質ベース組成物として製剤化できることが見出された。このような自己乳化型、自己マイクロ乳化型又は自己ナノ乳化型(SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS)医薬組成物は、良好なバイオアベイラビリティー及び/又は化学的安定性及び/又は物理的安定性等の有益な特性を有するであろう。加えて、これらの組成物は、相対的に高い薬物含量に適切であり;有効成分の急速なイン ヴィヴォ吸収を生じさせて、薬理学的効果の開始を早め、及び/又は、代替の又は標準的製剤と比べて、イン ヴィヴォ吸収の対象間変動が小
さい。
【0027】
本発明の特定の組成物は、SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS組成物であり、Poutonらによって分類されたType IIIシステムの特定のサブセットに類似する;すなわち、これらの組成物は、1又は2種以上の親油性賦形剤、1又は2種以上の親水性界面活性剤、及び、任意で1又は2種以上の親水性補助溶媒を含有する。特定の好ましい組成物は、疎水性界面活性剤である1又は2種以上の親油性賦形剤、1又は2種以上の親水性界面活性剤、及び、好ましくは1又は2種以上の親水性補助溶媒を含有することにより特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施例2から得られるような結晶形1における「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-30°の範囲の2シータからの選択したピークを報告する。):6.2°(22%)、9.5°(100%)、13.9°(16%)、14.4°(42%)、15.3°(13%)、15.7°(35%)、18.4°(15%)、18.6°(28%)、20.0°(15%)、21.5°(8%)、23.6°(37%)、24.9°(13%)及び25.8°(14%)。いかなる疑義をも避けるために、上記のピークは、図1に示す粉末X線回折の実験結果を記述する。上記のピークのリストとは対照的に、本発明の各結晶形の「化合物」を完全に及び明確に特徴づけるためには、選択された特徴的なピークのみが必要であることが理解されるべきである。図1のX線回折ダイアグラムにおいては、屈折角2シータ(2θ)を横軸に、数値を縦軸にプロットする。
図2図2は、実施例1から得られるような非晶質形の「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。
【発明の概要】
【0029】
本発明の詳細な記述
1) 本発明の第1の側面は、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、自己マイクロ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SMEDDS)又は自己ナノ乳化型ドラッグデリバリーシステム(SNEDDS)である医薬組成物に関し、当該医薬組成物は、化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン(「化合物」):
【0030】
【化2】
【0031】
を含有し、「化合物」は遊離塩基形態又は薬学的に許容される塩形態であり(好ましくは遊離塩基形態である。);
前記医薬組成物は、
- (特に、1又は2種以上の疎水性界面活性剤及び/又は1又は2種以上の油脂様賦形剤である)1又は2種以上の親油性賦形剤;
- 1又は2種以上の親水性界面活性剤;及び
- 任意で1又は2種以上の親水性補助溶媒、
を含有する賦形剤混合物を含有する。
【0032】
2) 別の態様は、前記賦形剤混合物が、
- 合計で約20~50ww%の(特に、1又は2種以上の疎水性界面活性剤及び/又は1又は2種以上の油脂様賦形剤である)1又は2種以上の親油性賦形剤;
- 合計で約30~80ww%の1又は2種以上の親水性界面活性剤;及び
- 合計で約0~25ww%の1又は2種以上の親水性補助溶媒;
を含有し、
前記賦形剤混合物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関し;
好ましくは、親水性界面活性剤の総量が親油性賦形剤の総量よりも少なくとも約10ww%大きい。
【0033】
このような態様1)又は2)の医薬組成物は、好ましくは「化合物」を約0.05ww%~5ww%の総量で、特に約0.075ww%~約3ww%の総量で含有する。前記賦形剤混合物は、好ましくは前記医薬組成物中に少なくとも約80ww%、特に少なくとも約90ww%の総量で存在し、前記医薬組成物の総ww%は100である。前記医薬組成物はさらに従来の成分又は添加剤(以下、従来成分又は添加剤とも記載する。)を含有してもよく、前記従来成分又は添加剤は特に、高分子結晶化抑制剤を含む1又は2種以上のポリマー、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤;とりわけ1又は2種以上の抗酸化剤から選択される。好ましくは、このような医薬組成物は一定の期間、例えば特に1年又はそれより長い期間にわたって化学的及び物理的に安定である。
【0034】
3) 本発明の第2の側面は、医薬組成物、特に態様1)又は2)に従う医薬組成物であって、
- 化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン:
【0035】
【化3】
【0036】
及び
- 賦形剤混合物;
を含有し;
「化合物」は遊離塩基形態又は薬学的に許容される塩形態であり(好ましくは遊離塩基形態である。);
上記賦形剤混合物は:
-- 合計で約20~50ww%の1又は2種以上の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が、
--- 1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル及びグリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤;及び/又は
--- 中鎖トリグリセリド油及び1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルから選択される油脂様賦形剤;
から独立に選択される、親油性賦形剤;
-- 合計で約30~80ww%の1又は2種以上の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質及びポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから独立に選択される、親水性界面活性剤;及び
-- 合計で約0~25ww%の1又は2種以上の親水性補助溶媒;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%は100であり;
好ましくは親水性界面活性剤の総量が上記各親油性賦形剤の総量よりも、(賦形剤混合物中の上記各ww%に関して)大きく、特に少なくとも約10ww%大きい;
医薬組成物に関する。
【0037】
4) 別の態様は態様1)~3)のいずれか1つに従う医薬組成物であって、
- 化合物、2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン:
【0038】
【化4】
【0039】
及び
- 賦形剤混合物;
を含有し;
「化合物」は遊離塩基形態又は薬学的に許容される塩形態であり(好ましくは遊離塩基形態である。);
上記賦形剤混合物は:
-- 約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が、
--- 1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル及びグリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤;又は、
--- 中鎖トリグリセリド油及び1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルから選択される油脂様賦形剤;
から独立に選択される、親油性賦形剤;
-- 約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質及びポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから独立に選択される、親水性界面活性剤;及び
-- 合計で約0~25ww%の1又は2種以上の親水性補助溶媒;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%は100であり;
好ましくは親水性界面活性剤の総量が上記親油性賦形剤の総量よりも、(賦形剤混合物中の上記各ww%に関して)大きく、特に少なくとも約10ww%大きい;
組成物に関する。
【0040】
化合物、塩、医薬組成物、賦形剤、疾患等について複数形が使用される場合は、単数の化合物、塩等をも意味することが意図されている。
【0041】
「化合物」に対するいかなる言及も、状況に応じて、そのような化合物の塩(特に薬学的に許容される塩)をも指すものと解される。好ましくは、「化合物」はその遊離塩基を意味する。
【0042】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象化合物の所望の生物活性を保持し、かつ最小の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。そのよう塩としては、対象化合物中の塩基性基及び/又は酸性基の存在に応じた、無機又は有機の酸及び/又は塩基付加塩が挙げられる。参考としては、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties、Selection and Use.」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(Eds.)、Wiley-VCH、2008;及び「Pharmaceutical Salts
and Co-crystals」、Johan Wouters and Luc Quere(Eds.)、RSC Publishing、2012を参照されたい。
【0043】
本発明において「含有する」という用語は、各組成物が、特定の種類/ファミリーの成分/賦形剤(例えば中鎖トリグリセリド油)について、明示した成分/賦形剤(例えば、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル(glyceryl tri-caprylate/caprate)である中鎖トリグリセリド油)のみを明示した相対的範囲又は量で有し、同じ種類/ファミリーの他の成分/賦形剤を有さないことを意味する。しかしながら、そのような組成物は追加の成分/賦形剤を有してもよく、そのような追加の成分/賦形剤は、各組成物の特性を顕著に変えるような量で存在してはならないものとする。従って、例えば、さらなる有効成分の、あるいは、追加の従来成分又は添加剤(高分子結晶化抑制剤を含む1又は2種以上のポリマー、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の酸、1又は2種以上のキレート剤等)の添加は包含されるであろう。一般に、「含有する」という用語は、明示する量の明示した成分/賦形剤から本質的になる各組成物を意味するものと解され;(「含有する」という用語に関し)好ましくは、前記組成物の全体の少なくとも90重量パーセント、特に少なくとも95重量パーセントの量の明示した成分/賦形剤を有し;すなわち、追加の成分/賦形剤は各組成物の全体の10重量パーセント、特に5重量パーセントを超えない。
【0044】
本発明の医薬組成物は好ましくはカプセル内に充填される。液体又は半固体形態の医薬組成物を内包させるために通常使用されるいかなる種類のカプセルであっても本発明において使用してよい。そのようなカプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル、又は、例えばハードゼラチンカプセル若しくはソフトゼラチンカプセル等の特にゼラチンカプセルであってよい。好ましくは、そのようなカプセルはソフトゼラチンカプセルである。カプセルは(特に、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の)不活性ガス雰囲気下で充填されてよい。そのような不活性ガス雰囲気は有効成分の酸化的分解を低減させるかもしれない。上記のカプセルにはアルミブリスター等の従来の包装手段を使用してよい。一態様において、ブリスター形成工程において、(窒素等の)不活性ガスを用いて酸素をパージする。
【0045】
本発明の組成物は、通常、液体又は半固体であり、「化合物」を好ましくは遊離塩基形態で有する、等方性混合物である。そのような等方性混合物は、特に、有効成分が賦形剤混合物中に溶解しており、上記賦形剤が液体又は半固体である混合物である。非晶質形又は1若しくは2種以上の結晶形又は非晶質形及び結晶形の混成の「化合物」又はその塩を、本発明の組成物の製造に使用してもよい。「化合物」遊離塩基の、塩形態の「化合物」の結晶形又は「化合物」遊離塩基共結晶は無水物又は溶媒和物又は水和物形態であってよい。そのような塩形態及びモルフォロジー形態は「化合物」の範囲に包含される。好ましくは、「化合物」は、遊離塩基の結晶形、特に遊離塩基の無水結晶形で使用される。本発
明の組成物は本質的に純粋な形態の「化合物」を包含する。「化合物」のww%量は、実際の化学的純度又は酸、溶媒和物若しくは水和物等の共結晶形成物、塩形成物の存在を考慮に入れて調整する必要があるかもしれない。
【0046】
本発明において「親油性賦形剤」という用語は、SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS組成物の形成に適した疎水性界面活性剤及び油脂様賦形剤を意味し、それらの任意の混合物を含む。好ましくは、この用語は、疎水性界面活性剤、特に1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルを意味する。
【0047】
本発明において「疎水性界面活性剤」という用語は、SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS組成物の形成に適した1又は2種以上の疎水性界面活性剤を意味し;特に、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(好ましい)、グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル又はソルビタン脂肪酸エステルを意味するものと定義してよい。
【0048】
本発明において「油脂様賦形剤」という用語は、SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS組成物の形成に適した1又は2種以上の非水溶性油脂/油脂様賦形剤を意味し;特に、中鎖トリグリセリド油又は1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルを意味するものと定義してよい。
【0049】
本発明において「親水性界面活性剤」という用語は、SEDDS、SMEDDS又はSNEDDS組成物の形成に適した1又は2種以上の親水性界面活性剤を意味し;特に、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質(好ましい)、ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル又はポリエチレングリコール誘導体化ソルビタン脂肪酸エステルを意味するものと定義してよい。そのような親水性界面活性剤の好ましい例は、(特に、Kolliphor(登録商標)RH40等の)ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油等のポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質である。ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質のさらなる例は、(特に、Kolliphor(商標)EL等の)ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)又は(特に、Solutol(登録商標)HS15等の)ポリエチレングリコール誘導体化ヒドロキシステアリン酸である。
【0050】
本発明の範囲で使用される特定の賦形剤は界面活性剤と定義してよい。そのような界面活性剤は、それらの各親水性-親油性バランス(HLB)値によりさらに定義してよい。HLB値は、非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性及び疎水性を特徴づけるために一般的に使用される経験的パラメータである。低HLB値(一般的に約8又はそれ未満)を有する界面活性剤はより疎水性であり(疎水性界面活性剤)、高HLB値(一般に約12又はそれを超える値)を有する界面活性剤はより親水性であり、水性媒体中でより大きな溶解性を示す(親水性界面活性剤)。
【0051】
特に、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(例えば、モノカプリル酸プロピレングリコール(propylene glycol mono-caprylate))、グリセリン中鎖モノ又はジ脂肪酸エステル(例えば、モノ/ジカプリル酸グリセリル)又はソルビタン脂肪酸エステル等の本発明に適切な疎水性界面活性剤は、約8又はそれ未満、とりわけ約6のHLB値を有する。従って、そのような疎水性界面活性剤は親油性賦形剤と定義してよい。
【0052】
同様に、特に、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質、ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル又はポリエチレングリコール誘導体化ソルビタン脂肪酸エステル等の本発明に適切な親水性界面活性剤は、一般に、約12又はそれ
を超えるHLB値を有する。
【0053】
好ましくは、本発明の組成物において、親水性界面活性剤の総量は各親油性賦形剤の総量よりも(賦形剤混合物中の上記各ww%に関して)大きく、特に少なくとも約10ww%大きい。
【0054】
界面活性剤、特に市販の界面活性剤製品は通常純粋な化合物ではなく、1種の主たる(primary major)界面活性剤成分を有する、むしろ複数の化合物の混成物であるかもしれない。これらの市販の界面活性剤製品は、種々の量の前記主たる界面活性剤成分及び残量のさらなる成分(例えばそれらの対応する各脂肪酸(ポリ)エステル又は脂肪酸等);並びに種々の量の溶媒(水又はエタノール若しくは1,2-プロパンジオール等の有機溶媒等)、又は、市販のポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質の場合には、(化学製造プロセスに由来するかもしれない)残余のポリエチレングリコールを有するかもしれない。存在する場合には、残量のさらなる成分の総重量は、各市販製品によって、(各界面活性剤製品の総重量に対して)好ましくは約55ww%未満、特に約10~30ww%である。上記の残余のさらなる成分は、本明細書で使用される親水性界面活性剤、親油性賦形剤、疎水性界面活性剤、油脂、油脂様賦形剤の用語の範囲に包含される。
【0055】
明示的に別段の記載がない限り、本発明の範囲で使用される界面活性剤は、好ましくは、各界面活性剤の総重量当たり、約45ww%を超える量の、特に約65ww%を超える量の、とりわけ約90ww%を超える量の前記主たる界面活性剤成分を有するものとする。特に、上記界面活性剤は、遊離脂肪酸を本質的に有さず(すなわち、各界面活性剤の総重量当たり、10ww%未満の、特に5ww%未満の、とりわけ1ww%未満の遊離脂肪酸を有する。)、各界面活性剤の総重量当たり、15ww%未満の(特に10ww%未満の、とりわけ5ww%未満の)エタノール又は水を有する。
【0056】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、6~28個の炭素原子、好ましくは8~20個の炭素原子を有する飽和又は部分的に不飽和の直鎖カルボン酸を意味する。
【0057】
「脂肪酸エステル」という用語は、明示的に特定されるアルコール成分[すなわち、グリセリン又は1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)];及び先に定義し、明示的に特定される1又は2種以上の脂肪酸成分からなるエステルを意味する。
【0058】
脂質に関して「中鎖」という用語は、6~12個の炭素原子長の炭素鎖を有する脂質を意味する。従って、脂肪酸のうち、中鎖脂肪酸は、6~12個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子を有するものと定義してよい。例えば、カプリル酸、カプリン酸又はラウリン酸であり、特にカプリル酸及びカプリン酸である。
【0059】
同様に、脂質に関して「長鎖」という用語は、14個又はそれを超える炭素原子、好ましくは14~20個の炭素原子長の骨格鎖を持つ分岐した又は直鎖の炭素鎖を有する脂質を意味する。脂肪酸のうち、長鎖脂肪酸は、14個又はそれを超える炭素原子、好ましくは14~20個の炭素原子を有するものと定義してよい。例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシ-ステアリン酸、リシノール酸及びアラキジン酸(arachidic acid)である。
【0060】
長鎖脂質は、長鎖脂肪酸及びその内部エステル(例えば12-((12-ヒドロキシ-ステアロイル)オキシ)-ステアリン酸等)、モノ、ジ及びトリグリセリド長鎖脂肪酸エステル、1,2-プロパンジオール長鎖モノ及びジ脂肪酸エステル、長鎖ワックス(long chain waxes)並びに(特に、ビタミンEスクシネートを含むビタミンE等の)長鎖脂溶性ビタミン類を含むものと定義してよい。
【0061】
「1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、アルコール成分、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)と1個の中鎖脂肪酸部分からなるモノプロピレングリコレート(mono-propyleneglycolate)(すなわち、1,2-プロパンジオールの2番目のヒドロキシ基が未置換である。)を有する、(特に市販の製品としての)疎水性界面活性剤を意味する。例は、[Capryol(商標)(特にCapryol(商標)90)等の]モノカプリル酸プロピレングリコールである。疑義を避けるために、「1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル」という用語は、前記主成分と、2次成分として少量の対応するジエステルを含有する製品を含む。1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルは、前記賦形剤の総重量当たり、約45%を超える、特に約75ww%を超える、とりわけ約90ww%を超える量の前記主成分を有する。本発明に使用されるモノカプリル酸プロピレングリコールは、市販のものとしては、好ましくはGattefosseのCapryol(商標)(特にCapryol(商標)90)である。代替の市販製品は、例えば、GattefosseのLauroglycol(商標)である。
【0062】
「グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、アルコール成分、グリセリン(プロパン-1,2,3-トリオール)と1又は2個の中鎖脂肪酸部分からなるモノ及び/又はジグリセラート(mono- and/or di-glycerate)(すなわち、グリセリンの1又は2個のヒドロキシ基が未置換である。)を有する、(特に市販の製品としての)疎水性界面活性剤を意味する。グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルの好ましい例は、(Abitecにより製造されるCapmul(登録商標)MCM等の)市販のモノ/ジカプリル酸グリセリルである。すべてのグレードのCapmul(登録商標)MCM製品系列が本発明における使用に適切であるが、米国薬局方(the US National Formulary)(NF)グレードのものは7%のグリセロールを含むのに対し、欧州薬局方(European Pharmacopeia)(EP)グレードのものは3%のグリセロールを含むため、後者を使用することが望ましいであろう。代替市販製品は、例えば、Abitecにより製造されるCapmul(登録商標)MCM C8又はCapmul(登録商標)MCM C10;Sasol Germany GMBHにより製造されるImwitor(登録商標)742又はImwitor(登録商標)988である。
【0063】
「ソルビタン脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、長めの中鎖(例えばC12)又は長鎖脂肪酸でエステル化された(一般にはモノエステル化された)ソルビタンを有する、(特に市販の製品としての)疎水性界面活性剤を意味する。ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートが典型的な市販製品であり、例えばCroda Internationalにより製造されるSpan(登録商標)20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60及びSpan(登録商標)80製品等である。
【0064】
「中鎖トリグリセリド油」(MCT油)という用語は、主成分として、グリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル、すなわち、グリセリンの3個のヒドロキシ基のそれぞれにおいて中鎖脂肪酸でエステル化されたグリセリンを有する、(特に市販の製品としての)油脂様賦形剤を意味する。ここで、同じグリセリン分子に結合する中鎖脂肪酸は同一であっても異なっていてもよいものとし;上記用語は、異なるグリセリン中鎖脂肪酸エステルの混合物を包含するものとする。そのような混合物は市販製品中に存在するかもしれない。そのようなグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステルの好ましい例は、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリルである。市販のグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステルとしては、好ましくは、(例えば、Abitecにより製造されるCaptex(登録商標)300、Captex(登録商標)350、Captex(登録商標)355等の)Captex(登録商標)M
CT油;Sasol Germany GMBHにより製造されるMiglyol(登録商標)810、Miglyol(登録商標)812又はMiglyol(登録商標)8108;Stepan CompanyのNeobee(登録商標)M5;Croda Incにより製造されるCrodamol(登録商標)GTC/C;及びGattefosse Groupにより製造されるLabrafac(登録商標)Lipophile WL 1349である。好ましくはMiglyol(登録商標)812である。
【0065】
「1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、アルコール成分、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)と2個の中鎖脂肪酸部分からなるジ-プロピレングリコレート(すなわち、1,2-プロパンジオールの両方のヒドロキシ基が中鎖脂肪酸でエステル化されており、同じ1,2-プロパンジオール分子に結合する中鎖脂肪酸は同一であっても異なっていてもよいものとし;上記用語は、異なる1,2-プロパンジオール中鎖脂肪酸エステルの混合物を包含するものとする。)を有する、(特に市販の製品としての)油脂様賦形剤を意味する。そのような混合物は市販製品中で使用されているかもしれない。そのような1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルの好ましい例は、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(propyleneglycol di-caprylate/di-caprate)である。市販の1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルとしては、好ましくは、Gattefosse Groupにより製造されるLabrafac(商標)PG及びAbitec Corporationにより製造されるCaptex(登録商標)200である。
【0066】
「ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質(polyethyleneglycol
derivatized long chain lipid)」という用語は、主成分として、(12-ヒドロキシ-ステアリン酸若しくは12-ヒドロキシ-ステアリン酸と12-((12-ヒドロキシ-ステアロイル)オキシ)-ステアリン酸の混合物等のヒドロキシ置換長鎖脂肪酸、ビタミンEスクシネート、ヒマシ油又は特に水素添加ヒマシ油を含む長鎖脂肪酸等の)長鎖脂質を有する、(特に市販の製品としての)親水性界面活性剤を意味し、前記長鎖脂質は、場合により(一般にエチレンオキシドとの化学反応により)1又は2以上の遊離ヒドロキシ及び/又はカルボン酸基においてポリエチレングリコールで、順次誘導体化されている。例えば、ポリエチレングリコール誘導体化12-ヒドロキシ-ステアリン酸、ポリエチレングリコール誘導体化ビタミンEスクシネート、ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油及び、特にポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油である。本発明に適切なポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質は、一般に、約12又はそれを超える、特に約12から15の間のHLB値を有する。報告されるHLB値は各製品に特有であり、たとえ同じ主たる界面活性剤成分を有していても、通常、異なる市販製品の間では異なる値を有する。ポリエチレングリコール誘導体化物(Polyethyleneglycol derivatization)は、好ましくは、脂質1モル当たり5~60モルのPEG、特に各長鎖脂質1モル当たり10~50モルのPEGからなる。一般に市販のポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質は種々の量の遊離ポリエチレングリコールを有する。
【0067】
そのようなポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質の好ましい例は「ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油」であり、この用語は、主たる界面活性剤成分として、水素添加ヒマシ油、アルコール成分、1,2,3-プロパントリオールと3個のリシノール酸部分からなる1,2,3-プロパントリオールトリ脂肪酸エステル(トリグリセリド)を有する、非イオン性親水性界面活性剤、特に市販の界面活性剤製品を意味し、上記リシノール酸部分は順次水素添加され、上記トリグリセリドはポリエチレングリコールで誘導体化されている。ポリエチレングリコール誘導体化物は、好ましくは、トリグリセリド1モル当たり5~60モルのPEG、特にトリグリセリド1モル当たり20~50、と
りわけ25~45モルのPEGからなる。そのようなポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油の例は、PEG-20-、PEG-25-、PEG-30-、PEG-40-、PEG-45-、PEG-50-又はPEG-60水素添加ヒマシ油;特にPEG-40水素添加ヒマシ油等の水素添加ヒマシ油を含有する、例えば(以前にCremophor(登録商標)RH製品と命名されていた)Kolliphor(登録商標)RHとして市販されているもの:Kolliphor(登録商標)RH40又はその同等品である。ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油は、好ましくは、前記主たる界面活性剤成分を賦形剤の総重量当たり約45ww%を超える量で、特に約75ww%を超える量で、とりわけ約90ww%を超える量で有する。市販のPEG誘導体化水素添加ヒマシ油が本発明に好ましく使用され;PEG-40水素添加ヒマシ油(例えば、BASFの(以前にCremophor(登録商標)RH40と命名されていた)Kolliphor(登録商標)RH40)が本発明に好ましく使用される。
【0068】
ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質の別の例は、「ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油」(マクロゴールグリセロールリシノール酸エステル(macrogolglycerol ricinoleate)又はポリオキシルヒマシ油)、特にPEG-35ヒマシ油等のヒマシ油を含有する、例えば、(以前にCremophor(登録商標)EL製品と命名されていた)Kolliphor(登録商標)ELとして市販されているもの:Kolliphor(登録商標)EL又はその同等品である。
【0069】
ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質の別の例は、ポリエチレングリコール誘導体化12-ヒドロキシ-ステアリン酸である。市販のポリエチレングリコール誘導体化12-ヒドロキシ-ステアリン酸は、主たる界面活性剤成分として、12-ヒドロキシ-ステアリン酸のポリエチレングリコールエステルと12-((12-ヒドロキシ-ステアロイル)オキシ)-ステアリン酸のポリエチレングリコールエステルの混合物を有する。加えてそのような市販のポリエチレングリコール誘導体化12-ヒドロキシ-ステアリン酸は、種々の量(例えば、Kolliphor(登録商標)HS15においては約30ww%)の遊離ポリエチレングリコールを有するかもしれない。加えて、12-ヒドロキシ基においてポリエチレングリコールでエーテル化された少量の12-ヒドロキシ-ステアリン酸が存在するかもしれない。好ましくは市販のKolliphor(登録商標)HS15(以前はSolutol(登録商標)HS15)であり、これは約15モルのエチレンオキシドを1モルの12-ヒドロキシ-ステアリン酸と反応させることにより得られる。
【0070】
ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質の別の例はビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)である。
【0071】
「ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、(モノ-/ジ-カプリル酸/カプリン酸グリセリル等の)グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル脂質を有する、(特に市販の製品としての)親水性界面活性剤を意味し、前記中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル脂質は、場合により(一般にエチレンオキシドとの化学反応により)1又は2以上の遊離ヒドロキシ及び/又はカルボン酸基においてポリエチレングリコールで、順次誘導体化されている。本発明に適切なポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルは、一般に、約12又はそれを超える、特に約12から15の間のHLB値を有する。報告されるHLB値は各製品に特有であり、たとえ同じ主たる界面活性剤成分を有していても、通常、異なる市販製品の間では異なる値を有する。ポリエチレングリコール誘導体化物は、好ましくは、脂質1モル当たり5~20モルのPEG、特に各中鎖脂質1モル当たり5~10モルのPEGからなる。一般に市販のポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルは種々の量の遊離ポリエチレングリコールを有する。ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルは、好ましくは、前記主たる界面活性剤成分を
賦形剤の総重量当たり、約45ww%を超える量、特に約75ww%を超える量、とりわけ約90ww%を超える量で有する。そのようなポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルは、例えば、主としてカプリル(C8)及び/又はカプリン(C10)酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステルと少量のモノ-、ジ-及びトリグリセリドからなる製品として市販されており、例えばGattefosseのLabrasol(登録商標)ALF又はその同等品である。
【0072】
「ポリエチレングリコール誘導体化ソルビタン脂肪酸エステル」という用語は、主成分として、ポリエチレングリコール誘導体化ソルビタンを有する、(特に市販の製品としての)親水性界面活性剤を意味し、ポリエチレングリコール誘導体化ソルビタンは、長めの中鎖(例えばC12)又は長鎖脂肪酸で、順次エステル化(一般にモノエステル化)されている。ポリエチレングリコール誘導体化物は、好ましくは、ソルビタン1モル当たり合計で約20モルのポリエチレングリコールからなり、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)が典型的な市販製品であり、例えば、Croda Internationalにより製造される、それぞれTween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60及びTween(登録商標)80製品である。
【0073】
ポリエチレングリコール(PEG)はエチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーを意味し、一般にエチレンオキシドの重合により製造される。PEGの名称中に一般に含まれる数字はそれらの平均分子量を示す(例えば、約400ダルトンの平均分子量を有するPEGはPEG400と表示されるであろう。)。一般にPEGは分子量の分散を伴う分子を含む(すなわち多分散系である。)。液体又は半固体ポリエチレングリコールは一般にPEG400/マクロゴール400等の低分子量PEGであり、親水性補助溶媒として使用してよい。
【0074】
本発明の範囲で使用される賦形剤は、好ましくは約40~50℃の温度で液体である。特に、態様1)の組成物は約40~50℃で明澄な液体等方性混合物(一般には溶液)を形成する。別の態様において、医薬組成物がソフトゼラチンカプセルに充填される場合には、態様1)の組成物は室温から約40℃の間で(特に、約30℃から約38℃の間、とりわけ約35℃で)、明澄な液体等方性混合物(一般には溶液)を形成する。
【0075】
いかなる疑義をも避けるために、ww%量は、賦形剤混合物/医薬組成物に加えられる各(市販の)賦形剤、(市販の)親水性補助溶媒等の全量を意味し;(場合に応じて)賦形剤混合物の総重量/医薬組成物の総重量に対して計算される。従って、ある賦形剤のww%量の計算においては、そのような賦形剤中に(例えば親水性界面活性剤中に)存在するかもしれないいかなる残余のポリエチレングリコール/溶媒/(ビタミンE等の)他の化学物質をも前記賦形剤の部分であるとみなし、そのような賦形剤のww%中に入れるものとする。同様に、親水性補助溶媒のww%量は、その組成物の他の賦形剤/成分の混合物に加えられる親水性補助溶媒の重量に基づいて計算される。
【0076】
いかなる疑義をも避けるために、当然ながら、態様1)~36)のいずれか1つに定義される医薬組成物は、さらなる従来の賦形剤、成分及び/又は添加剤をさらに含有してよく、上記さらなる従来の賦形剤、成分及び/又は添加剤は単独で又は組み合わせて使用してよい(適量(quantum satis)、すなわち、前記さらなる従来成分又は添加剤の最大量及び/又は各賦形剤混合物の最大量は、総ww%を100とするために減らす必要があるかもしれない。)。
【0077】
本発明の医薬組成物に使用してよいさらなる賦形剤は、特にポリマー及び/又は抗酸化剤及び/又はキレート剤及び/又は酸等の従来成分又は添加剤であり、これらは単独で又は組み合わせて使用してよい。本明細書で言及されるこれらの及び他の薬学的に許容される賦形剤及び手順については広範な文献が参照され、例えば、R.C.Rowe、P.J.Seskey、S.C.Owen、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第5版、Pharmaceutical Press 2006;Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版,(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[出版元、Lippincott Williams&Wilkins]を参照されたい。本発明において、そのような従来成分又は添加剤は賦形剤とみなされ、すなわち、従来成分又は添加剤が存在する場合には、それらの対応するww%は一般に賦形剤混合物の総重量に関して考慮されるべきである。
【0078】
本発明において、賦形剤混合物は特に1又は2種以上の抗酸化剤を有する。
【0079】
「抗酸化剤」という用語は、他の分子の酸化を阻害することができるすべての種類の薬学的に許容される抗酸化剤を包含する。医薬組成物における使用に適切なそのような抗酸化剤は本技術分野において周知である。そのような抗酸化剤の2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0080】
2種以上の抗酸化剤を使用する場合には、好ましくは1種の酸素捕そく剤と1種の連鎖停止剤の混合物が使用される。1又は2種以上の抗酸化剤はキレート剤と組み合わせて使用してよい。酸素捕そく剤、連鎖停止剤及び/又はキレート剤は単独で又は任意の組み合わせで使用してよく;それらを組み合わせて使用することにより補完的効果が得られるかもしれない。
【0081】
抗酸化剤のサブグループは酸素捕そく剤である。医薬組成物における使用に適切なそのような酸素捕そく剤は、本技術分野において周知である。例えば、特にアスコルビン酸(E300)及び/又はそのエステルである。好ましい例はパルミチン酸アスコルビル(AP)である。酸素捕そく剤が存在する場合には、組成物中に(医薬組成物の総重量に対して)約2ww%未満(特に約0.1-1ww%、とりわけ約0.5~1ww%、殊に約0.1ww%、約0.5ww%又は約1ww%)の量で含有される。
【0082】
抗酸化剤の別のサブグループは(ラジカル)連鎖停止剤である。このような連鎖停止剤はラジカル連鎖反応を停止させることができ、医薬組成物における使用に適切なものは本技術分野において周知である。好ましくは、本発明の賦形剤混合物と等方性混合物を形成するもの(通常:本発明の賦形剤混合物に可溶である)である。例えば、没食子酸プロピル(PG、E310)、3級ブチルヒドロキノリン(TBHQ)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT、E321)等のブチルヒドロキシトルエン;及び2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソールと3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソールの異性体混合物(BHA、E320)等のブチルヒドロキシアニソールである。好ましくは、没食子酸プロピル(PG、E310)である。他の好ましい例は、アルファ-トコフェロール(E306)等のビタミンEファミリー/トコフェロールの化合物である。場合によっては、ビタミンEベースの賦形剤(例えばビタミンE TPGS)は十分な量の遊離ビタミンEを有しているかもしれず、追加の抗酸化剤/酸素捕そく剤を必要としない。ビタミンEファミリーのそのような連鎖停止剤の好ましい例は酢酸DL-アルファ-トコフェロール(DL-alpha-Tocopheryl acetate)(酢酸ビタミンE)である。好ましい酸素捕そく剤は、本発明の賦形剤混合物と等方性混合物を形成するもの(通常:本発明の賦形剤混合物に可溶である)である。そのよ
うな連鎖停止剤は組み合わせて使用してもよい。連鎖停止剤が存在する場合には、組成物中に(医薬組成物の総重量に対して)約0.3ww%未満(特に約0.01~0.2ww%、とりわけ約0.05~0.1ww%、殊に(例えば、PG、BHT又はBHAについては)約0.1ww%又は(例えば、酢酸DL-アルファ-トコフェロール、BHT又はBHAについては)約0.05ww%)の量で含有される。
【0083】
医薬組成物における使用に適切なキレート剤は本技術分野において周知である。好ましい例は、ヒスチジン及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は例えばEDTA二ナトリウム塩等のその塩である。そのようなキレート剤は組み合わせて使用してもよい。キレート剤が存在する場合には、組成物中に(医薬組成物の総重量に対して)、約0.1ww%未満の総量、特に約0.01ww%未満の総量で含有される。キレート剤は存在しないことが好ましい。
【0084】
そのような従来成分又は添加剤のさらなる例はポリマーである。ポリマーは、本発明の医薬組成物において、例えば高分子結晶化抑制剤(PCI)として、過飽和状態を安定化し、薬剤沈殿プロセスを妨げるために使用してよい。PCIは核表面に吸着し、結晶核/格子の形成を阻害する[例えば:Simonelli、Mehta、Higuchi;「Inhibition of Sulfathiazole Crystal Growth by Polyvinyl Pyrrolidone.」、J.Pharm.Sci.、59、633-638(1970)。Umesh S.Kestur、Lynne
S.Taylor;「Role of polymer chemistry in influencing crystal growth rates from amorphous felodipine」;CrystEngComm、2010、12、2390-2397を参照されたい。]。特にPCI等のポリマーが存在する場合には、その総量は(医薬組成物の総重量に対して)約15ww%未満、特に約4~7ww%である。一般に使用される高分子結晶化抑制剤(PCI)の例は、種々の分子量及び種々の置換を有するセルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC-AS)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、又は、特に種々の分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)誘導体である。本発明の組成物においてポリマーを使用しないことが好ましい。
【0085】
そのような従来成分又は添加剤のさらなる例は酸である。酸は、有効成分分子の塩基性窒素を(部分的に)プロトン化するために使用してよく、従って、組成物中の有効成分の化学的安定性を増強するかもしれない。そのような酸の例は、クエン酸、プロピオン酸及び乳酸である。酸が存在する場合には、酸の総重量は、(賦形剤混合物の総重量に対して)約5ww%未満、特に約0~2ww%である。酸は存在しないことが好ましい。
【0086】
薬学的に許容される賦形剤のそれぞれの絶対量及び他の薬学的に許容される賦形剤に対する相対量は、カプセル剤の所望の特性に依存し、ルーティンの実験により選択することができる。
【0087】
「親水性補助溶媒」という用語は、賦形剤混合物中で使用してよい1又は2種以上の親水性補助溶媒を意味し、例えば、水、又は、好ましくは親水性有機溶媒(特に、クエン酸トリエチル(例えばCitrofol(登録商標)AI)、エタノール若しくはジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えばTranscutol(登録商標)HP);又は、加えて、ジメチルアセタミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリルトリアセタート(トリアセチン)、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルイソソルビド(DMI)若しくは1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)等
)。加えて、本発明の組成物は、親水性補助溶媒として、[例えば、PEG300又はPEG400等の]液体又は半固体ポリエチレングリコールを有してよく、これらは、単独で又は1若しくは2種以上の先に定義した他の親水性補助溶媒と組み合わせて使用される。好ましい親水性補助溶媒は、クエン酸トリエチル(例えばCitrofol(登録商標)AI)、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えばTranscutol(登録商標)HP)又はこれらの任意の混合物である。最も好ましくはクエン酸トリエチルである。
【0088】
組成物に添加される親水性補助溶媒の総量は約0~25ww%である。特に、親水性補助溶媒を加える場合には、約10~25ww%(特に約20ww%)の親水性補助溶媒を加え;当該親水性補助溶媒は先に定義した有機溶媒、特にクエン酸トリエチルである。
【0089】
存在する場合には、賦形剤混合物に添加される水及び/又はエタノールの総量は、賦形剤混合物の界面活性剤部分に含まれるかもしれない残余の水及び/又はエタノールと累積される特定の場合には、約20ww%未満である。いかなる疑義をも避けるために、例えば、親水性補助溶媒、水及び/又はエタノールが賦形剤混合物中に約20ww%の量で存在する特定の場合には、賦形剤混合物の界面活性剤はさらなる残余の水及び/又はエタノールを有することができないであろう。
【0090】
医薬組成物の総重量パーセント(ww%)は100である。
【0091】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-Xの10%からX+Xの10%の間、好ましくはX-Xの5%からX+Xの5%の間を表す(当然のことながら、0%未満の値又は100%を超える値は適用されない。)。約の語がある範囲の前に置かれる場合には、上記の「約」の定義が、上記範囲の両方の値に適用されるものとする。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」という用語は、この出願において、温度Y-10℃からY+10℃の間を表し;好ましくは、温度が少なくとも30℃である場合には、Y-5℃からY+5℃の間を表し;又は、温度が30℃未満である場合には、Y-2℃からY+2℃の間を表す。そのような温度が融点に関する場合には、「約」という用語は、好ましくは、Y-3℃からY+3℃の間を表す。室温は約25℃の温度を意味する。本出願において、n当量(nは数である。)の用語が使用される場合、本出願の範囲内において、nは約nを意味し、好ましくはnは正確な数nを意味するものとする。
【0092】
数値範囲を記述するために「間」又は「から(~)」の語が使用される場合は常に、示された範囲の末端の点は明示的にその範囲に含まれるものとする。例えば:温度範囲が40℃から80℃の間(又は40℃から(~)80℃)であると記述される場合、末端の点である40℃と80℃はその範囲に含まれることを意味し、あるいは、可変数が1から4の間(又は1から(~)4)の整数であると定義される場合、可変数は整数の1、2、3又は4であることを意味する。
【0093】
「から本質的になる」という用語は、本発明に関しては、特に、それぞれの組成物が、各態様に明示的に記載される量のそれぞれの組成物の少なくとも90重量パーセント、特に少なくとも95重量パーセント、とりわけ少なくとも99重量パーセントの量で、そして好ましくは100重量パーセントの量で(すなわち、「からなる」の意味で)存在することを意味するものとする。「含有する」という用語は、好ましくは、「から本質的になる」という用語の意味で理解されるものとする。
【0094】
「本質的に」という用語は、例えば「本質的に純粋な」等の用語中で使用される場合、本発明に関しては、特に、それぞれの組成物/化合物等の少なくとも90重量パーセント
、特に、少なくとも95重量パーセント、そしてとりわけ少なくとも99重量パーセントの量が、それぞれ、純粋な組成物/化合物等であることを意味するものとする。
【0095】
例えば、粉末X線回折ダイアグラムにおけるピークの存在を定義する場合、通常の方法は、S/N比(S=シグナル、N=ノイズ)の点からこれを行うことである。この定義に従えば、粉末X線回折ダイアグラムにピークが存在しなければならないと述べる場合、粉末X線回折ダイアグラムのピークは、x(xは1より大きい数値である。)より大きい、通常は2より大きい、特に3より大きいS/N比(S=シグナル、N=ノイズ)を持つことにより定義されるものとする。
【0096】
結晶形が、それぞれ図1に表される粉末X線回折パターンを本質的に示す、という記載の文脈において、「本質的に」という用語は、当該図に表されるダイアグラムの少なくとも主要なピーク、すなわち、ダイアグラムにおける最も強いピークと比べ、10%を超える、特に20%を超える相対強度を有するピークが存在しなければならないことを意味する。しかしながら、粉末X線回折の当業者は、粉末X線回折ダイアグラムの相対強度が、好ましい配向効果に起因する強い強度変動に付され得ることを認識しているはずである。
【0097】
ww%という表現は、考慮している組成物の総重量に対する重量パーセントを意味する。(例えば、有効成分を含まない組成物である賦形剤混合物の総重量等の)明示的に別段の記載がない限り、考慮される総重量は、有効成分を含む組成物である医薬組成物の総重量である。比に関する(wt/wt)という表現は、各成分の重量比を意味する。ある組成物の「ww%」で表現される総量は100であるものする。
【0098】
比に関する(wt/wt)という表現は、各成分の重量比を意味する。
【0099】
ある値が%値で記載されており、さらなる説明が無い場合、そのような値はww%を意味し、又は、純度に関する場合には、HPLCで測定した面積%を意味する。
【0100】
同様に、v/vという表現は、考慮している2つの成分の体積比を意味する。「vol」という表現は、(例えば反応物のkgで表した)重量当たりの(例えば溶媒のLで表した)体積を意味する。例えば、7volは、(例えば反応物の)kg当たりの7リットル(の溶媒)を意味する。
【0101】
「固液分離」という用語は、当業者に周知のルーティンの固液分離技術を意味する(例えば、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、第7版、Perry、R.H.;Green、D.W.McGraw-Hill 1997を参照されたい。)。特に、この用語は、ろ過、遠心分離及び重力沈降;特にろ過等の技術を含む。
【0102】
本発明のさらなる態様を以下に記述する:
5) 別の態様は、
- 前記親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質及びポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから独立に選択されるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、中鎖トリグリセリド油及び1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルから選択される油脂様賦形剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質から独立に選択される;
態様1)~4)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0103】
6) 別の態様は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質から独立に選択されるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、中鎖トリグリセリド油から選択される油脂様賦形剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質から独立に選択され;
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステルから選択される疎水性界面活性剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステルから独立に選択されるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステルから選択される油脂様賦形剤から独立に選択され;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化長鎖脂質から独立に選択される;
態様1)~4)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0104】
7) 別の態様は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である疎水性界面活性剤であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)であるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である疎水性界面活性剤であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)であるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である疎水性界面活性剤であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)であるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、グリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である油脂様であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)であるか;
- 前記親油性賦形剤が、グリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である油脂様であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)であるか;又は、
- 前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステル(特にジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、とりわけLabrafac(商標)PG)である油脂様であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である;
態様4)に従う医薬組成物に関する。
【0105】
8) 別の態様は、前記親油性賦形剤が、1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である疎水性界面活性剤であり;かつ
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である;
態様4)に従う医薬組成物に関する。
【0106】
9) 本発明の第3の側面は、態様1)~8)のいずれか1つに従う医薬組成物であって:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.05~5ww%(特に総量で約0.075~4.5ww%、とりわけ約0.075~3ww%、殊に約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- [医薬組成物の総重量に対して]総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の態様1)~8)のいずれか1つに定義する賦形剤混合物;
を含有し;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
医薬組成物に関する。
【0107】
疑義を避けるために、態様9)(必要な変更を加えて以下の態様10)~36)に適用される。)の医薬組成物に対して記載される有効成分のww%は、特に、カプセル剤(例えば、サイズ5~16、特にサイズ8.5、10又は12のゼラチンカプセル剤)当たり、0.5mg~30mg、好ましくは0.5mg~20mgの薬物含量(drug load)の遊離塩基形態の「化合物」(例えば、「化合物」は無水結晶又は非晶質形で使用することができる。)に相当する(特に、0.5mg、1mg、5mg、10mg又は20mg)。「化合物」が塩の形態で又は溶媒和物若しくは共結晶の形態で使用される場合には、有効成分のww%は、実際に使用される各形態中の有効成分、すなわち、塩、水和物結晶形、共結晶形、を指すものとする。従って、ある薬物含量(0.5mg、1mg等)に到達するために必要な各ww%は、有効成分が使用される形態に応じて変化するであろう。好ましくは、(無水)遊離塩基形態の「化合物」が使用される。
【0108】
さらに、本明細書に定義される医薬組成物は、明示的に別段の記載がない限り、従来成分又は添加剤をさらに含有してよいものとする(適量、すなわち、医薬組成物の総ww%を100とするために、賦形剤混合物の量は、医薬組成物中に存在する前記従来成分又は添加剤の量に対して調節する必要があるかもしれない。)。好ましくは、そのような追加の従来成分又は添加剤の総量は、0ww%~総最大量で約5ww%(特に、0ww%~合計約2ww%)、又は、PCI等のポリマーが存在する場合には、0ww%~総最大量で約20ww%である。
【0109】
従って、態様9)[及び、同様に下記の10)~36)]の医薬組成物が、(医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.05~5ww%(特に、総量で約0.075~4.5
ww%、とりわけ約0.075~3ww%、殊に約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」を含有する場合には、好ましくは、前記賦形剤混合物の総量と、前記追加の従来成分又は添加剤が存在する場合にはその総量(ww%)の合計(ww%)が、100ww%から「化合物」の各ww%を引いた値であり[特に、約95~99.95ww%(とりわけ約94.5~99.925ww%、特に約97~99.925ww%、殊に約99.925ww%、99.85ww%、99.25ww%、98.5ww%又は97ww%);医薬組成物の総ww%は100である。]。
【0110】
例として、本発明の医薬組成物は、総量で約0.75ww%の「化合物」、総量で約1ww%の酸素捕そく剤及び総量で約0.05ww%の連鎖停止剤を含有する(さらなる追加の従来成分又は添加剤は存在せず、従って、前記追加の従来成分又は添加剤の総量は約1.05ww%である。)。結果として、態様9)に従う前記賦形剤混合物の総量は約(100-0.75)-1.05))ww%=98.2ww%となる。
【0111】
10) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.05~5ww%(特に総量で約0.075~4.5ww%、とりわけ約0.075~3ww%、殊に約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とり
わけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;又は、
-- 合計で約20~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステル(特にジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、とりわけLabrafac(商標)PG)である、親油性賦形剤;
合計で約30~80ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
合計で約0~25ww%の1又は2種の親水性補助溶媒;
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0112】
11) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって;特に、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって;特に、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって;特に、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
-- 合計で約30~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって;特に、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;又は、
-- 合計で約35~45ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステル(特にジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、とりわけLabrafac(商標)PG)である、親油性賦形剤;
合計で約40~60ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって;特に、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒;
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0113】
12) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、
とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
-- 合計で約30~50ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤がグリセリン中鎖トリ脂肪酸エステル(特にトリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、とりわけMiglyol(登録商標)812)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、親水性補助溶媒を有さないか又は10~20ww%のジエチレングリコールモノエチルエーテル);又は、
-- 合計で約35~45ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖ジ脂肪酸エステル(特にジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、とりわけLabrafac(商標)PG)である、親油性賦形剤;
合計で約40~60ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化ヒマシ油(特にPEG-35ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)EL)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、親水性補助溶媒を有さないか又は10~20ww%のエタノール若しくはジエチレングリコールモノエチルエーテル);
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0114】
13) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、特に約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種
の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);又は、
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(登録商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0115】
14) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
を含有する、賦形剤混合物;
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0116】
15) 別の態様は、前記賦形剤混合物が親水性補助溶媒を含有しないか、又は、前記賦形剤混合物が、1又は2種の親水性補助溶媒であって、当該親水性補助溶媒がクエン酸トリエチル、エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルアセタミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリルトリアセタート(トリアセチン)、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルイソソルビド(DMI)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)及び液体又は半固体ポリエチレングリコールから独立に選択される、親水性補助溶媒を含有する;態様1)~11)のいずれか1
つに従う医薬組成物に関する。
【0117】
16) 別の態様は、前記賦形剤混合物が親水性補助溶媒を含有しないか、又は、前記賦形剤混合物が、1又は2種の親水性補助溶媒(特に1種の親水性補助溶媒)であって、当該親水性補助溶媒がクエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから独立に選択される、親水性補助溶媒を含有する;態様1)~11)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0118】
17) 別の態様は、前記賦形剤混合物が親水性補助溶媒を含有しない、態様1)~14)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0119】
18) 別の態様は、前記賦形剤混合物が、クエン酸トリエチル、エタノール又はジエチレングリコールモノエチルエーテル;特にクエン酸トリエチルである、1種の親水性補助溶媒を含有する、態様1)~14)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0120】
19) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);又は、
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化グリセリン中鎖モノ/ジ脂肪酸エステル(特にカプリル及び/又はカプリン酸のPEG-8グリセリンモノ及びジエステル、とりわけLabrasol(登録商標)ALF)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100である、賦形剤混合物;及び
- 任意で、1又は2種以上の追加の従来成分又は添加剤であって、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の高分子結晶化抑制剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤(特に、1又は2種の抗酸化剤、1種の高分子結晶化抑制剤及び/又は1種のキレート剤、とりわけ、1種の酸素捕そく剤及び/又は1種の連鎖停止剤である1又は2種の抗酸化剤)から選択される、追加の従来成分又は添加剤;
から本質的になり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0121】
[この態様において、好ましくは、(前記賦形剤混合物の総量(ww%)と、存在する場合には、前記従来成分又は添加剤の総量(ww%))の合計は、(100ww%から「化合物」の各ww%を引いた値)に等しく;従って、前記賦形剤混合物の総量と前記1又は2種の抗酸化剤の総量の合計は、特に約95.5~99.925ww%;とりわけ約97~99.925ww%、殊に約99.925ww%、99.85ww%、99.25ww%、98.5ww%又は97ww%である。]。
【0122】
20) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約80ww%(特に、少なくとも約90ww%)の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100である、賦形剤混合物;及び
- 任意で、1又は2種以上の追加の従来成分又は添加剤であって、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の高分子結晶化抑制剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤(特に、1又は2種以上の抗酸化剤、1種の高分子結晶化抑制剤及び/又は1種のキレート剤、とりわけ、1種の酸素捕そく剤及び/又は1種の連鎖停止剤である1又は2種の抗酸化剤)から選択される、追加の従来成分又は添加剤;
から本質的になり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0123】
[この態様において、好ましくは、(前記賦形剤混合物の総量(ww%)と、存在する場合には、前記従来成分又は添加剤の総量(ww%))の合計は、(100ww%から「化合物」の各ww%を引いた値)に等しく;従って、前記賦形剤混合物の総量と前記1又は2種の抗酸化剤の総量の合計は、特に約95.5~99.925ww%;とりわけ約97~99.925ww%、殊に約99.925ww%、99.85ww%、99.25ww%、98.5ww%又は97ww%である。]。
【0124】
21) 別の態様は:
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で約0.075~4.5ww%(特に、総量で約0.075~3ww%、とりわけ約0.075ww%、0.15ww%、0.75ww%、1.5ww%又は3ww%)の「化合物」であって;「化合物」が、好ましくは遊離
塩基形態であるか;又は薬学的に許容される塩形態である、「化合物」;及び
- (医薬組成物の総重量に対して)総量で少なくとも約90ww%の賦形剤混合物であって;当該賦形剤混合物が:
-- 合計で約20~40ww%の親油性賦形剤であって、当該親油性賦形剤が1,2-プロパンジオール中鎖モノ脂肪酸エステル(特にモノカプリル酸プロピレングリコール、とりわけCapryol(商標)90)である、親油性賦形剤;
合計で約40~70ww%の親水性界面活性剤であって、当該親水性界面活性剤がポリエチレングリコール誘導体化水素添加ヒマシ油(特にPEG-40水素添加ヒマシ油、とりわけKolliphor(登録商標)RH40)である、親水性界面活性剤;及び
親水性補助溶媒を有さないか;又は、好ましくは合計で約10~20ww%の1又は2種の親水性補助溶媒であって、クエン酸トリエチル、エタノール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される、親水性補助溶媒(特に、10~20ww%のクエン酸トリエチル又はエタノール);
を含有し;
前記賦形剤混合物の総ww%が100である、賦形剤混合物;及び
- 任意で、1又は2種の従来成分又は添加剤であって、
-- (医薬組成物の総重量に対して)約2ww%未満(特に約0.1-1ww%、とりわけ約0.5~1ww%、殊に約1ww%)の量の1種の酸素捕そく剤;及び/又は
-- (医薬組成物の総重量に対して)約0.3ww%未満(特に約0.05-0.2ww%、とりわけ約0.05~0.1ww%、殊に約0.05ww%又は0.1ww%)の量の1種の連鎖停止剤;
から選択される1又は2種の抗酸化剤から選択される、従来成分又は添加剤;
から本質的になり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0125】
[この態様において、好ましくは、(前記賦形剤混合物の総量(ww%)と、存在する場合には、前記従来成分又は添加剤の総量(ww%))の合計は、(100ww%から「化合物」の各ww%を引いた値)に等しく;従って、前記賦形剤混合物の総量と前記1又は2種の抗酸化剤の総量の合計は、特に約95.5~99.925ww%;とりわけ約97~99.925ww%、殊に約99.925ww%、99.85ww%、99.25ww%、98.5ww%又は97ww%である。]。
【0126】
22) 別の態様において、本発明は、前記医薬組成物が、
- 「化合物」、
- (態様1)~21)のいずれか1つに従う)前記賦形剤混合物、及び
- 任意で、(態様1)~21)のいずれか1つに従う、又は、以下の態様23)~28)のいずれか1つに従う)1又は2種以上の従来成分又は添加剤;
からなり;
-- 「化合物」の総量が約0.07~0.08ww%であるか;又は、
-- 「化合物」の総量が約0.14~0.16ww%であるか;又は、
-- 「化合物」の総量が約0.7~0.8ww%であるか;又は、
-- 「化合物」の総量が約1.4~1.6ww%であるか;又は、
-- 「化合物」の総量が約2.8~3.2ww%であり;
上記医薬組成物の総ww%が100である;
態様1)~21)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0127】
[この態様において、結果として:
i. 前記賦形剤混合物の総量(ww%)、及び
ii. 存在する場合には、前記1又は2種以上の従来成分又は添加剤の総量、
の合計(ww%)は、100ww%から本態様22)に定義した「化合物」の各ww%を引いた値であるものとし;従って、前記合計は、それぞれ、約99.92~99.93ww%;又は約99.84~99.86ww%;又は約99.2~99.3ww%;又は約98.4~98.6ww%;又は約96.8~97.2ww%である]。
【0128】
態様22)に記載した量は、それぞれ0.5mg、1mg、5mg、10mg又は20mgの遊離塩基形態の「化合物」の薬物含量を達成することを意図しており、特に、以下の態様37)~42)のいずれか1つに従う結晶性遊離塩基形態の「化合物」が、そのような組成物の製造に使用される。
【0129】
以下に、態様1)~22)の組成物に関するさらなる態様を記載する。いかなる疑義をも避けるために、当然のことながら、態様1)~22)に定義する医薬組成物は従来成分又は添加剤をさらに含有してよく、前記従来成分又は添加剤は、明示的に別段の記載がある場合を除き、高分子結晶化抑制剤を含む1又は2種以上のポリマー、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤から選択される(適量、すなわち、態様9)に記載の例と同様に、医薬組成物の総ww%を100とするために、上記賦形剤混合物の最大量は、前記ポリマー、酸及び/又は抗酸化剤の量に対して調節する必要があるかもしれない。)。
【0130】
23) 別の態様は、前記医薬組成物が、追加の従来成分又は添加剤をさらに含有し、前記従来成分又は添加剤が、特に、高分子結晶化抑制剤である1又は2種以上のポリマー、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤から選択される、態様1)~22)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0131】
副態様において、前記医薬組成物は、「化合物」、明示的に定義された前記賦形剤混合物から本質的になる(すなわち、いかなる従来成分又は添加剤をも含有しない。)。別の副態様において、前記医薬組成物は、好ましくは、「化合物」、明示的に定義された前記賦形剤混合物、及び、加えて、高分子結晶化抑制剤である1又は2種以上のポリマー、1又は2種以上の抗酸化剤、1又は2種以上の酸及び/又は1又は2種以上のキレート剤から選択される従来成分又は添加剤(特に、1又は2種の抗酸化剤及び任意でキレート剤)から本質的になる(すなわち、前記従来成分又は添加剤、特に1又は2種の抗酸化剤及び任意のキレート剤以外には、前記医薬組成物はいかなるさらなる従来成分又は添加剤をも含有しない。)。
【0132】
24) 別の態様において、本発明は、前記医薬組成物が、
- キレート剤を含有せず;酸を含有せず;ポリマーを含有せず;及び高分子結晶化抑制剤(PCI)を含有せず;かつ
- 抗酸化剤を含有しないか、又は、1又は2種の抗酸化剤を含有する;
態様1)~22)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0133】
25) 別の態様は、前記医薬組成物が、最大で1又は2種の抗酸化剤(特に、1種の酸素捕そく剤及び/又は1種の連鎖停止剤)を含有する、態様1)~24)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0134】
副態様において、前記医薬組成物は、「化合物」、明示的に定義された前記賦形剤混合物、及び、加えて、1又は2種の抗酸化剤(特に、1種の酸素捕そく剤及び/又は1種の連鎖停止剤)からなり;すなわち、前記抗酸化剤以外には、いかなるさらなる従来成分又は添加剤をも有さない。
【0135】
26) 別の態様において、本発明は、前記医薬組成物が、
- 1種の酸素捕そく剤;又は、
- 1種の酸素捕そく剤と1種の連鎖停止剤の混合物;
を含有する、態様1)~25)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0136】
27) 別の態様において、本発明は、(好ましくはパルミチン酸アスコルビルである)前記酸素捕そく剤が存在する場合には、医薬組成物の総重量に対して、約2ww%未満(特に約0.1-1ww%、とりわけ約0.5~1ww%、殊に約1ww%)の量で存在する、態様1)~26)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0137】
28) 別の態様において、本発明は、(好ましくは、酢酸DL-アルファ-トコフェロール、没食子酸プロピル、BHT又はBHA、特に、没食子酸プロピル又は酢酸DL-アルファ-トコフェロールである)連鎖停止剤が存在する場合には、医薬組成物の総重量に対して、約0.3ww%未満(特に約0.05-0.2ww%、とりわけ約0.05~0.1ww%、殊に約0.05ww%又は0.1ww%)の量で存在する、態様1)~27)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0138】
29) 別の態様において、本発明は、カプセル(特にソフトゼラチンカプセル、とりわけ、サイズ5~16、殊にサイズ8.5、10又は12のソフトゼラチンカプセル)中に充填される、態様1)~28)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0139】
30) 別の態様において、本発明は、前記カプセルが(特に、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の)不活性ガス雰囲気下で充填される、態様29)に従う医薬組成物に関する。
【0140】
31) 別の態様において、本発明は、医薬組成物が、室温から約50℃の間の温度で(特に、約30から40℃の間の温度で、とりわけ約35℃で)、カプセル中に、特にソフトゼラチンカプセル中に充填される、態様29)又は30)に従う医薬組成物に関する。
【0141】
32) 別の態様において、本発明は、前記医薬組成物が、室温から約60℃の間の温度で(特に、約30から50℃の間の温度で、とりわけ約35℃で)液体である、態様1)~28)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0142】
33) 別の態様において、本発明は、前記医薬組成物がソフトゼラチンカプセル中に充填される場合には、前記医薬組成物が、室温から約40℃の間の温度で(特に、約30℃から38℃の間の温度で、とりわけ約35℃で)前記ソフトゼラチンカプセル中に充填され;前記医薬組成物が、室温から約40℃の間の温度で(特に、約30℃から38℃の間の温度で、とりわけ約35℃で)液体である、態様1)~32)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0143】
34) 第4の側面において、本発明は、前記「化合物」が、結晶形で、特に本質的に純粋な結晶形で、前記組成物の製造に使用される、態様1)~33)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0144】
態様34)に従って使用される前記結晶形は結晶形の「化合物」を含有し、そのような結晶形は、遊離塩基形態の「化合物」の結晶形;遊離塩基形態の「化合物」の結晶形であって、当該結晶形が共結晶である、結晶形、又は、そのような形態のいずれかの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の形態の「化合物」の結晶形であることができるものとする。さらに、前記結晶形は、非配位溶媒及び/又は配位溶媒を含有してよい。配位溶媒は、本明細書において、結晶性溶媒和物についての用語として使用される。同様に、非配位
溶媒は、本明細書において、物理吸着又は物理補足溶媒についての用語として使用される(Polymorphism in the Pharmaceutical Industry(Ed.R.Hilfiker、VCH、2006)、Chapter 8:U.J.Griesser:The Importance of Solvatesによる定義)。そのような結晶形は、特に無水物(すなわち、実質的な量の配位水を有さない。);又は、(半水和物、一水和物又は二水和物等の)水和物(すなわち、例えば、(特に、0.5、1又は2eq.の水等の)約0.5~2当量の配位水,を含有する。)であってよく、また、イソプロパノール、エタノール及び/又は水等のさらなる非配位溶媒、特に水を含有してよい。
【0145】
35) 別の態様において、本発明は、遊離塩基形態の「化合物」を前記組成物の製造に使用する、態様1)~34)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0146】
36) 別の態様において、本発明は、前記遊離塩基形態の「化合物」を、結晶形で、特に本質的に純粋な結晶形で、前記組成物の製造に使用する、態様1)~34)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0147】
好ましい副態様において、態様36)に従う、遊離塩基形態の「化合物」のそのような結晶形は無水物である。
【0148】
別の副態様において、態様36)に従う、遊離塩基形態の「化合物」のそのような結晶形は、約0.5~2eq.(特に約1eq.)の配位水を有する水和物である。
【0149】
37) 第4の側面において、本発明は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.2°、9.5°及び14.4°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形に関する。
【0150】
38) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.2°、9.5°、14.4°、15.7°及び18.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様37)に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0151】
39) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.2°、9.5°、13.9°、14.4°、15.3°、15.7°、18.6°、20.0°、21.5°及び23.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様37)に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0152】
いかなる疑義をも避けるために、上記態様の1つが、「粉末X線回折ダイアグラムにおける、以下の屈折角2θにおけるピーク」に言及する場合は常に、前記粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射(combined Cu Kα1 and Kα2 radiation)を用いて得られ;そして本明細書で提供される2θ値の精度は+/-0.1~0.2°の範囲内であることが理解されるべきである。特に、本発明の態様及び請求項中でピークに対する屈折角2シータ(2θ)を特定する場合、記載された前記2θ値は、当該値-0.2°から当該値+0.2°(2θ+/-0.2°)の間;そして好ましくは当該値-0.1°から当該値+0.1°(2θ+/-0.1°)の間と理解されるべきである。
【0153】
40) 別の態様は、図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様37)~39)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0154】
41) 別の態様は、例えば、本明細書に記載の方法を用いることにより、示差走査熱
量測定により測定される約163℃の融点を有する、態様37)~40)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する(「融点」という用語は、DSCにおいて観察されるピーク温度を意味するものとする。)。
【0155】
42) 別の態様は、前記形が:
a) 非晶物質としての「化合物」を約7volのエタノールと混合する工程;
b) (明澄な溶液を形成させるために)約78℃のITに加熱する工程;
c) 約0℃のITに冷却し、0℃で少なくとも1h(特に、少なくとも約10h)撹拌する工程;
d) ろ過し、ケークを2volの冷エタノールで洗浄する工程;及び
e) (特に約10mbarの)減圧下で生成物を(特に約40℃で)乾燥する工程;
により得ることが可能である、態様37)~41)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0156】
43) 本発明のさらなる側面は、医薬組成物の製造における使用のための態様37)~42)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関し、前記医薬組成物は、有効成分としての「化合物」及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体物質を含有する。特に、この態様43)は、態様1)~36)のいずれか1つに従う医薬組成物の製造における使用のための、態様37)~42)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0157】
いかなる疑義をも避けるために、態様43)の側面は、態様37)~42)のいずれか1つに従う結晶形に関し、そのような結晶形は、医薬組成物の製造に適し/(例えば、医薬製造の純度要件に適合させるために)「化合物」の最終単離工程として使用されるが、(「化合物」の上記元の結晶形は薬学的に許容される担体物質中に溶解し;従って、最終医薬組成物中において、「化合物」は溶解形態等で存在するため)態様43)に従う最終医薬組成物は前記結晶形を有さない。ある医薬組成物の製造における使用のための「化合物」の結晶形に対する言及は、前記医薬組成物の製造における前記結晶形の使用及び「化合物」の前記結晶形の使用を有する前記医薬組成物の製造方法をも意味するものとする。
【0158】
44) 従って、本発明のさらなる態様は、有効成分としての「化合物」及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体物質を含有する医薬組成物[特に、態様1)~36)のいずれか1つに従う医薬組成物]に関し、前記医薬組成物は態様37)~42)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形を用いて製造される。
【0159】
態様1)~36)及び44)のいずれか1つに定義する医薬組成物の総ww%は100である。
【0160】
「医薬組成物」という用語は、「製剤」又は「組成物」という用語と相互に交換可能である。
【0161】
本発明の医薬組成物は、一定の期間の間、「化合物」の初期含有量の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも95%が、溶解状態において前記期間にわたって維持される場合に、物理的に「安定」であるとされる。さらに、外観を組成物の物理的安定性を決定するための基準として考慮してよい。前記医薬組成物の物理的安定性は、例えば特定の温度及び相対湿度で所定の期間貯蔵した後、従来の方法で、例えば、組成物の概観及び/又はその水分含量の測定により試験してよい。
【0162】
前記医薬組成物の化学的安定性は、従来の方法で、例えば「化合物」及びその分解生成物の測定により試験してよい。「化合物」及びその分解生成物の含有量は従来のHPLCにより評価してよい。
【0163】
医薬組成物は、一定の期間の間、「化合物」の初期含有量の少なくとも80%、特に少なくとも95%、とりわけ少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%が、分解することなく、前記期間にわたって維持される場合に、化学的に「安定」であるとされる。
【0164】
好ましくは、本発明の前記医薬組成物は、5℃~50℃の温度及び約75%又はそれ未満のrHで保存した場合に、少なくとも6か月、好ましくは少なくとも12か月の間、化学的及び物理的に「安定」である。より好ましくは、前記医薬組成物は、15℃~45℃の温度及び約75%又はそれ未満のrHで保存した場合に、少なくとも6か月又は好ましくは12か月の間安定である。最も好ましくは、前記医薬組成物は、25℃~40℃の温度及び約75%又はそれ未満のrH、特に40℃及び75%rHで保存した場合に、少なくとも6か月又は好ましくは12か月の間安定である。
【0165】
より好ましい態様において、前記医薬組成物は、1年、好ましくは2年等の一定の期間にわたって化学的及び物理的に安定である。
【0166】
医薬組成物の化学的及び物理的安定性は、従来の方法、例えば、所定の期間の25℃及び60%の相対湿度(RH)における貯蔵及び/又は40℃及び75%の相対湿度(RH)における貯蔵の後、例えば「化合物」及びその分解生成物の測定;溶解;崩壊時間(disintegration time);外観並びに/又は顕微鏡検査により;及び、製剤が薬剤可溶性(drug solubilization)を維持し、分散(dispersion)及び消化に際して沈殿を防ぐ能力を測定することにより、試験してよい。「化合物」及びその分解生成物の含有量は従来のHPLCにより評価してよい。
【0167】
本発明に従う医薬組成物は従来の方法を用いて製造してよい。ソフトジェル(softgel)又はハードシェル(hard shell)カプセル封入法は本技術分野において周知である。使用される手順は従来技術であり、本技術分野において周知であるか、又は、そのような周知手順に基づくものであり、例えば、USP23、General Information、Pharmaceutical Dosage Forms 1151:1942-1943(1995);E.T.Cole、「Liquid Filled Hard Gelatin Capsules」、Pharm.Technol.Int.、Sept./Oct.1989;H.Seager、Soft Gelatin Capsules:a Solution to Many Tableting
Problems、Pharm.Tech.9(1985)に記述されるものである。
【0168】
カプセルのサイズは様々であってよく、目的とする薬物含量及び必要となる組成物の最終的な量に応じて、サイズ2~16の任意のサイズを有してよい。好ましくは、例えばオーバル(oval)カプセル形状のサイズ7.5、8.5、10及びサイズ12カプセルである。本発明のカプセルは、着色し及び/又は印を付して、個別の概観を付与し、直ちに認識できるようにしてもよい。
【0169】
本発明に従う医薬組成物は医薬として使用してよい。
【0170】
45) 従って、本発明の第6の側面は、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害の予防又は治療のための、態様1)~36)又は44)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0171】
C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与するそのような疾患及び障害は、特に:
- 血管性疾患又は障害、
- 血管内微細小胞放出が関与する炎症性疾患又は障害、
- 免疫複合体(IC)疾患又は障害、
- 神経変性疾患又は障害、
- 補体関連炎症性疾患又は障害、
- 水疱性疾患又は障害、
- 虚血及び/又は虚血再灌流障害関連疾患又は障害、
- 炎症性腸疾患又は障害、
- 自己免疫疾患又は障害、又は、上記に加えて、
- 癌、
である。
【0172】
上記の疾患及び障害に加えて、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与するさらなる疾患及び障害は:
- 特に、好中球減少症、敗血症、敗血症性ショック、脳卒中、重度の火傷に関連する炎症、骨関節炎、急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(特に気管支喘息)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、組織移植片拒絶、移植臓器の超急性拒絶反応、多臓器不全症候群(MODS)、糖尿病性網膜症、視神経脊髄炎並びにヘイマン腎炎/膜性糸球体腎炎、ベルジェ病(Berger’s disease)(IgA腎症)及びデンスデポジット病(dense deposit disease)を含むC3腎症等の他の形態の糸球体腎炎を含む糸球体腎炎等の、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連するさらなる炎症性疾患又は障害;
並びに
- 凝固及び線溶系の活性化に関連する血液疾患、播種性血管内凝固症候群(DIC)、悪性貧血、温式及び冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、抗リン脂質抗体症候群及びその関連合併症、動脈及び静脈血栓症、反復流産及び胎児死亡等の妊娠合併症、子癇前症、胎盤機能不全、胎児発育不全、子宮頚リモデリング及び早産、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、アレルギー性輸血反応、急性抗体媒介性腎同種移植片拒絶、寒冷凝集疾患並びに緑内障;
である。
【0173】
本化合物は、加えて、
- 人工表面との接触により引き起こされる接触過敏症及び炎症の有害な結果の予防又は治療;
- 白血球及び血小板活性化の増大(及びその組織への浸潤)の予防又は治療;
- 中毒又は外傷、出血、ショック若しくは移植を含む外科手術等の損傷に関連する病理的続発症(多臓器不全(MOF)、敗血症性ショック、(蛇毒によるショック等の)中毒に起因するショック又は急性炎症性肺障害を含む。)の予防又は治療(特に、組織損傷、とりわけ肺組織損傷の発症の予防又は治療);
- インスリン依存型糖尿病に関連する病理的続発症の予防又は治療;
- 心筋梗塞又は血栓症のリスクの予防/低減;浮腫又は毛細血管透過性増大の予防又は治療;
- 心肺バイパス及び/又は心臓麻痺により誘発される冠動脈内皮細胞機能不全の予防/低減;
に有用である可能性がある。
【0174】
血管性疾患又は障害は、特に、血管炎、ANCA関連血管炎及びANCA関連血管炎に関連する糸球体腎炎(GN、特に急速進行性GN)、白血球破砕性血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(GPA、又はWegener肉芽腫症とも呼ばれる)、顕微鏡的多発血管炎、Churg-Strauss症候群、Henoch-Schoenlein紫斑症、結節
性多発動脈炎、クリオグロブリン血症、巨細胞性動脈炎(GCA)、ベーチェット病及び高安動脈炎(TAK)を含む。
【0175】
血管内微細小胞放出が関与する炎症性疾患又は障害は、特に血栓性微小血管症及び鎌状赤血球症を含む。
【0176】
免疫複合体(IC)疾患又は障害は、特に、クリオグロブリン血症、シェーグレン症候群(及び関連する免疫学的プロファイル)、Goodpasture症候群(抗糸球体基底膜抗体病)及びGoodpasture症候群に関連する糸球体腎炎(GN、特に急速進行性GN)又は肺出血並びに過敏症を含む。
【0177】
神経変性疾患及び障害は、特に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ギラン・バレー症候群、ニューロパチー並びに心肺バイパス手術及び関連術式に関連する認知機能低下を含む。
【0178】
補体関連炎症性疾患又は障害は、特に、冠動脈血栓症、血管閉塞、手術後血管再閉塞、アテローム性動脈硬化症、外傷性中枢神経系損傷、不整脈源性心筋症、気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、非典型溶血性尿毒症症候群を含む補体介在血栓性微小血管症及びゴーシェ病を含む。
【0179】
水疱性疾患又は障害は、特に、水疱性類天疱瘡、bullous acquisita、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、表皮下水疱及び化膿性汗腺炎を含む。
【0180】
虚血及び/又は虚血再灌流障害関連疾患又は障害は、特に、虚血再灌流障害(心筋虚血再灌流傷害及び臓器移植を含む移植に起因する虚血/再灌流傷害を含む。)、虚血性大腸炎及び心虚血を含む。
【0181】
炎症性腸疾患又は障害は、特に、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病及び炎症性腸疾患(IBD)を含む。
【0182】
自己免疫疾患又は障害は、特に、関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)及びエリテマトーデスに関連する糸球体腎炎(GN、特に急速進行性GN)(ループス腎炎)、中枢神経系(CNS)ループス、皮膚筋炎、天疱瘡、全身性硬化症(強皮症)、自己免疫性溶血性及び血小板減少性状態、免疫血管炎、混合型クリオグロブリン血症、アトピー性皮膚炎、慢性じん麻疹、乾癬、重症筋無力症並びに抗リン脂質抗体症候群を含む。
【0183】
C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連するさらなる炎症性疾患又は障害は、特に、好中球減少症、敗血症、敗血症性ショック、脳卒中、重度の火傷に関連する炎症、骨関節炎、急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、とりわけ気管支喘息、全身性炎症反応症候群(SIRS)、組織移植片拒絶、移植臓器の超急性拒絶反応、多臓器不全症候群(MODS)、糖尿病性網膜症、視神経脊髄炎並びにヘイマン腎炎/膜性糸球体腎炎、ベルジェ病(IgA腎症)及びデンスデポジット病を含むC3腎症等の他の形態の糸球体腎炎を含む糸球体腎炎を含む。
【0184】
「癌」という用語は、特に、転移性メラノーマを含むメラノーマを包含する皮膚癌;非小細胞性肺癌を含む肺癌;膀胱癌(urinary bladder cancer)、尿路上皮癌を含む膀胱癌(bladder cancer);腎細胞癌、転移性腎細胞癌、転移性腎明細胞癌を含む腎癌;大腸癌、転移性大腸癌、家族性大腸腺腫症(FAP)、食道癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、肝細胞癌及び膵臓腺癌又は膵管癌等の膵臓癌を含む消化
器癌;子宮体癌;卵巣癌;子宮頚部癌;神経芽細胞腫;去勢抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌;脳転移、悪性神経膠腫、多形膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫を含む脳腫瘍;トリプル・ネガティブ乳癌を含む乳癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌(thoracic cancer);頭頸部癌;急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病を含む白血病;癌種;腺癌;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;絨毛癌;ユーイング肉腫;骨肉腫;横紋筋肉腫;カポジ肉腫;バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、MALTリンパ腫を含むリンパ腫;多発性骨髄腫;並びにウイルス誘発腫瘍を意味する。
【0185】
癌の予防又は治療に使用する場合、そのような使用は、本化合物の単独の治療剤としての使用並びに1又は2種以上の化学療法剤及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせた(特に標的療法と組み合わせた)それらの使用を含む。
【0186】
「放射線療法」(「radiotherapy」又は「radiation therapy」又は「radiation oncology」)という用語は、癌の予防(補助療法)及び/又は治療における電離放射線の医学的使用を意味し;外部及び内部放射線療法を含む。
【0187】
「標的療法」という用語は、特定のタイプの癌細胞又は間質細胞に作用する低分子又は抗体等の1又は2種以上の抗新生物剤を用いた、癌の予防(補助療法)及び/又は治療を意味する。ある種の標的療法は、癌細胞の成長や拡散に関わるある種の酵素、タンパク質又はその他の分子の作用をブロックする。他のタイプの標的療法は、免疫系が癌細胞を殺すのを助け(免疫療法);又は、血管新生、腫瘍内の新しい血管の成長及び形成を阻害し;又は、癌細胞に毒性物質を直接送達して殺す。本発明の化合物と組み合わせるのに特に適した標的療法の例は、免疫療法、特に、プログラム細胞死受容体1(PD-1受容体)又はそのリガンドPD-L1を標的とする免疫療法である。
【0188】
本化合物と組み合わせて使用する場合、「標的療法」という用語は、特に、以下の薬剤等を意味する:
a) 上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤又はブロッキング抗体(例えば、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、イコチニブ(Icotinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、パニツムマブ(Panitumumab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、マツズマブ(Matuzumab)及びセツキシマブ(Cetuximab));
b) RAS/RAF/MEK経路阻害剤(例えば、ベムラフェニブ(Vemurafenib)、ソラフェニブ(Sorafenib)、ダブラフェニブ(Dabrafenib)、GDC-0879、PLX-4720、LGX818、RG7304、トラメチニブ(Trametinib)(GSK1120212)、コビメチニブ(Cobimetinib)(GDC-0973/XL518)、ビニメチニブ(Binimetinib)(MEK162、ARRY-162)、セリメチニブ(Selumetinib)(AZD6244));
c) アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン(Exemestane)、レトロゾール(Letrozole)、アナストロゾール(Anastrozole)、ボロゾール(Vorozole)、フォルメスタン(Formestane)、ファドロゾール(Fadrozole));
d) 血管新生阻害剤、特に、ベバシズマブ(Bevacuzimab)(アバスチン(Avastin))、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ソラフェニブ(Sorafenib)又はアキシチニブ(Axitinib)等のVEGFシグナル伝達阻害剤;
e) 免疫チェックポイント阻害剤(例えば:ペムブロリズマブ(Pembroliz
umab)(ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、MK-3475)、ニボルマブ(Nivolumab)、ピディリズマブ(Pidilizumab)(CT-011)、AMP-514/MED10680、PDR001、SHR-1210;REGN2810、BGBA317等の抗PD1抗体;AMP-224等の、PD-1を標的とする融合タンパク質;例えば、WO2015/033299、WO2015/044900及びWO2015/034820に開示される化合物等の低分子抗PD1剤;BMS-936559、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPDL3280A、RG7446)、MEDI4736、アベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)、デュルバルマブ(durvalumab)(MEDI4736)等の抗PD1L抗体;AMP224等の抗PDL2抗体;イピリムマブ(ipilimumab)、tremelimumab等の抗CTLA-4抗体;BMS-986016、IMP701、MK-4280、ImmuFact IMP321等の抗リンパ球-活性化遺伝子3(LAG-3)抗体;MBG453等の抗T細胞免疫グロブリン ムチン-3(TIM-3)抗体;BMS-663513/urelumab、PF-05082566等の抗CD137/4-1BB抗体;RG6058(抗TIGIT、MTIG7192A)等の抗Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)抗体(anti T
cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains(TIGIT)antibodies);
f) ワクチン療法的アプローチ(例えば、樹状細胞ワクチン療法、ペプチド又はタンパク質ワクチン療法(例えば、gp100ペプチド又はMAGE-A3ペプチドを用いた);
g) 顆粒球単球コロニー刺激因子(GMCSF)遺伝子トランスフェクト腫瘍細胞ワクチン(GVAX)又はFms-関連チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンド遺伝子トランスフェクト腫瘍細胞ワクチン(FVAX)又はToll様受容体増強GM-CSF腫瘍ベースワクチン(TEGVAX)等の免疫調節因子を分泌するように遺伝子的に修飾された患者由来又は同種(allogenic)(非自己)癌細胞の再導入;
h) キメラ抗原受容体(CAR)改変T-細胞(例えばCTL019)を含むT細胞ベース養子免疫療法;
i) サイトカイン又は免疫サイトカインベース治療(例えば、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン15);
j) Toll-様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、レシキモド(resiquimod)、イミクイムド(imiquimod)、グルコピラノシル脂質A、CpGオリゴデオキシヌクレオチド);
k) サリドマイドアナログ(例えば、レナリドマイド(Lenalidomide)、ポマリドミド(Pomalidomide));
l) インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)及び/又はトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)阻害剤(例えば、RG6078/NLG919/GDC-0919;lndoximod/1MT(1-メチルトリプトファン)、INCB024360/Epacadostat、PF-06840003(EOS200271)、F001287);
m) T細胞共刺激受容体の活性化剤(例えば、抗OX40/CD134(RG7888(MOXR0916)、9B12;MEDI6469、GSK3174998、MEDI0562等)(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4)、抗OX40-リガンド/CD252;(TRX518、MEDI1873、MK-4166、BMS-986156等の)抗グルココルチコイド誘発TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、(Dacetuzumab(SGN-40)、HCD122、CP-870,893、RG7876、ADC-1013、APX005M、SEA-CD40等の)抗CD40(TNF受容体スーパーファミリーメンバー5)抗体;(BG9588等の)抗CD40-リガンド抗体;Varlilumab等の抗CD27抗体);
n) 二重特異性抗体等の腫瘍特異性抗原並びにT-細胞表面マーカーに結合する分子(例えば、CEA及びCD3を標的とするRG7802)又は抗体フラグメント、抗体模倣タンパク質(antibody mimetic proteins)(例えば、設計アンキリン反復配列タンパク質(designed ankyrin repeat proteins)(DARPINS))、二重特異性T細胞engager(BITE、例えばAMG103、AMG330);
o) コロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)を標的とする抗体又は低分子量阻害剤(例えば、Emactuzumab(RG7155)、Cabiralizumab(FPA-008)、PLX3397);
p) キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)に対する抗体(例えば、リリルマブ(IPH2102/BMS-986015))等のナチュラルキラー細胞上の免疫細胞チェックポイントを標的とする薬剤;
q) アデノシン受容体又は、ATPをアデノシンに変換するエクトヌクレアーゼCD39及びCD73を標的とする薬剤(例えば、MEDI9447(抗CD73抗体)、PBF-509;CPI-444(アデノシンA2a受容体アンタゴニスト)。
【0189】
本化合物と組み合わせて使用する場合、免疫チェックポイント阻害剤及び、特に、PD-1受容体又はそのリガンドPD-L1を標的とするものが好ましい。
【0190】
本発明はさらに、薬学的に有効な量の態様1)~50)のいずれか1つに定義する式(I)の化合物を対象に投与することを有する、それを必要とする前記対象における[特に、C5aレベルの上昇及び/又はC5aRの活性化に関連する病因が関与する疾患及び障害を有する対象における;とりわけ、血管性疾患又は障害、血管内微細小胞放出が関与する炎症性疾患又は障害、免疫複合体(IC)疾患又は障害、神経変性疾患又は障害、補体関連炎症性疾患又は障害、水疱性疾患又は障害、虚血及び/又は虚血再灌流障害関連疾患又は障害、炎症性腸疾患又は障害、又は、自己免疫疾患又は障害を有する対象における;又は、人工表面との接触により引き起こされる接触過敏症又は炎症;白血球及び血小板活性化の増大(及びその組織への浸潤);中毒又は外傷、出血、ショック若しくは移植を含む外科手術等の損傷に関連する病理的続発症(多臓器不全(MOF)、敗血症性ショック、(蛇毒によるショック等の)中毒に起因するショック又は急性炎症性肺障害を含む。);インスリン依存型糖尿病に関連する病理的続発症;心筋梗塞又は血栓症;浮腫又は毛細血管透過性増大;又は、心肺バイパス及び/又は心臓麻痺により誘発される冠動脈内皮細胞機能不全の低減を有する対象における]補体活性化の結果を(特に、自然細胞を活性化することにより)調節(特に下方制御)する方法に関する。疑義を避けるために、「補体活性化を調節する」という用語は、特に自然細胞を活性化することにより、免疫応答の増幅を下方制御すること/減少させること、及び、細胞殺減膜侵襲複合体(cell-killing membrane attack complex)の活性化を下方制御すること/減少させることと理解される。
【0191】
いかなる疑義をも避けるために、化合物/組成物がある疾患又は障害の予防又は治療について有用であると記載されている場合には、そのような化合物/組成物は、同様に前記疾患の予防又は治療のための医薬の製造における使用に適しており;薬学的に有効な量の前記化合物/組成物をそれを必要とする対象(特に哺乳類、とりわけヒト)に投与することを有する前記疾患の予防又は治療方法における使用に適している。
【0192】
疾患に関連して使用される「予防する」又は「予防」又は「予防すること」、という用語は、前記疾患が患者又は動物において発症しないこと、又は、動物又は患者がその疾患により悪影響を受けているものの、その疾患の症状の一部又は全部が軽減されているか、若しくは存在しないことのいずれかを意味する。「予防(prevention)」という用語は、「予防(prophylaxis)」を意味するものと解してもよい。
【0193】
疾患に関連して使用される「治療する」又は「治療」又は「治療すること」という用語は、前記疾患が患者又は動物において治癒されること、又は、動物又は患者が、その疾患により悪影響を受け続けているものの、その疾患の症状の一部又は全部が軽減されているか若しくは除かれていることのいずれかを意味する。
【0194】
本発明の医薬組成物はカプセル剤として製剤化してよい。0.5mg~20mgの強度を有するカプセル剤(例えば、カプセル当たり667mgの(ソフトゼラチン)カプセル剤(オーバル、サイズ12))は以下のように製造してよい:
【0195】
【表3】
【0196】
約5mgの薬物含量を有する、カプセル当たり667mgの(ソフトゼラチン)カプセル剤(オーバル、サイズ12)の具体例は、以下のように製造してよい:
【0197】
【表4】
【0198】
約10mgの薬物含量を有する、カプセル当たり667mgの(ソフトゼラチン)カプセル剤(オーバル、サイズ12)の具体例は、以下のように製造してよい:
【0199】
【表5】
【0200】
賦形剤の量は、「化合物」の量の増大を招くかもしれない有効成分の純度に対して調整してよい。本発明のカプセル剤形態の医薬組成物の製造方法は、特に実施例と同様に行うことができ、下記の工程を有してよく:工程0(調製)、工程1(バルク充填溶液の調製)、工程2(カプセル充填工程)、工程3(カプセル封止工程)、工程4(カプセル重量選別)及び工程5(包装);例えば下記のプロセスフローチャートに従って行うことができる:
【0201】
【表6】
【0202】
下記の実施例は、本発明をさらに説明する目的で記載される。これらの実施例は、説明のためのものに過ぎず、いかなる形においても本発明を限定するものとは解釈されない。
【実施例
【0203】
原料は市販のものを購入することができる:特に:PEG40水素添加ヒマシ油(Kolliphor(登録商標)RH40)はBASFから購入することができる。モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol(商標)90)、Gelucire(登録商標)48/16、Labrafac(商標)PG、Labrasol(登録商標)ALF、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)):Gattefosse。中鎖トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812):Hanseler AG。BHA(Butylated Hydroxy Anisol):Merck。クエン酸トリエチル:Jungbunzlauer。:Gattefosse。Kolliphor(登録商標)EL、ビタミンE TPGS、エタノール、没食子酸プロピル、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、パルミチン酸アスコルビル及び酢酸トコフェロール:Sigma。
【0204】
温度はすべて℃で示す。市販の出発物質は、さらに精製を行うことなく、入手した状態で使用することができる。
【0205】
化合物の定性分析
本発明に記載した化合物は、以下に記載した条件を用いて、LC-MSデータ(保持時間tはminで示す。)及び/又はNMRで特徴付けることができる。
【0206】
分析用LC-MS:
LC-MS(方法I):Waters i-Class BSMバイナリポンプ、Thermo MSQ Plus MS検出器及びWaters Acquity PDA検出器を備えたWaters Acquity UPLC i-Classシステム。
【0207】
溶出液(酸性条件):A:HO+0.04%TFA;B:MeCN;勾配:5%Bから95%Bへ;ランタイム:1.2min;流速:0.8mL/min;検出:UV/Vis+MS。
【0208】
カラム Agilent Zorbax RRHD SB-aq、2.1x50mm、1.8μm。
【0209】
LC-MS(方法II):Dionex HPG-3200RSバイナリポンプ、Thermo MSQ Plus MS検出器及びDionex DAD-3000RS PDA検出器を備えたDionex Ultimate 3000システム。
溶出液(酸性条件):A:HO+0.04%TFA;B:MeCN;勾配:5%Bから95%Bへ;ランタイム:1.5min;流速:4.5mL/min;検出:UV/Vis+MS。
【0210】
カラム Agilent Zorbax SB-aq、4.6x50mm、3.5μm。
【0211】
HPLC1
試料は希釈せずに直接HPLCで分析した(予測濃度1000μg/mL)。各処理試料のHPLC面積を標準試料のHPLC面積と比較した。
【0212】
HPLCシステム:高圧混合Shimadzu Prominence(HPLC_08_DAD);流速:1.5mL/min;カラム温度:50℃;オートサンプラー温度
:25℃;注入体積:3.0μL;カラム:Waters XBridge BEH C18 2.5μm 2.1*50mm Column XP;波長:DAD 260nm。
【0213】
溶媒A:水+0.05%ギ酸(v/v)
溶媒B:アセトニトリル+0.05%ギ酸(v/v)
【0214】
【表7】
【0215】
NMR分光分析:
500MHz Ultrashield(商標) Magnet及び5mm DCH cryoprobeを備えたBruker Avance HD分光計、又は、400MHz Ultrashield(商標)Magnet及びBBO 5mm プローブヘッドを備えたBruker Avance II分光計。化学シフト(δ)は、NMR溶媒の不完全な重水素化から得られるプロトン共鳴に関連して百万分率(ppm)でレポートされ、例えばジメチルスルホキシドに関してはδ(H)2.49ppmであり、クロロホルムに関してはδ(H)7.24ppmである。略語s、d、t、q及びmはそれぞれ一重項、二重項、三重項、四重項、多重項を意味し、brは広域を意味する。結合定数JはHzでレポートされる。
【0216】
粉末X線回折分析(XRPD)
粉末X線回折パターンは、反射モード(結合2シータ/シータ)においてCuKα-照射で作動するLynxeye検出器を備えたBruker D8 AdvanceX線回折計上で収集した。典型的には、X-線チューブを40kV/40mAで走査させた。3~50°の2θの走査範囲にわたって、0.02°(2θ)のステップサイズ及び76.8秒のステップタイムを適用した。発散スリットは固定的に0.3°に設定した。粉末を、0.5mmの深さのシリコン単結晶サンプルホルダー内にわずかにプレスし、測定の間、試料をそれ自体のプレイン中で回転させた。回折データは、Kα2を除去することなくレポートされる。これまでに記録された粉末X線回折パターンが一般的にそうであるように、本明細書で提供される2θ値の精度は、+/-0.1~0.2°の範囲内である。
【0217】
重量測定蒸気吸着(GVS)分析
測定は、25℃においてステッピングモードで作動するマルチサンプル装置SPS-100n(ProUmid、ウルム、ドイツ)上で行う。予め規定された湿度プログラム(40-0-95-0-95-40%RH、5%のΔRHステップを適用し、各ステップ毎に最大24時間の平衡化時間を設ける。)を開始する前に、試料を40%RHで平衡化する。各試料を約20~30mg使用する。吸湿性の分類は、European Pharmacopea Technical Guide(1999、86頁)(例えば、非吸湿性:質量増加が0.2%mass/mass未満;わずかに吸湿性:質量増加が2%未満で0.2%mass/mass以上;吸湿性:質量増加が15%未満で2%mass/mass以上)に従って行う。最初の吸着スキャンにおける40%相対湿度と80%相対湿
度との間の質量変化を考慮する。
【0218】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、34ポジションのオートサンプラーを備えたMettler Toledo STARe System(DSC822eモジュール、セラミックセンサー付きの測定用セル及びSTAR ソフトウェア version 13.00)上で収集した。装置は、インジウム標品を用いてエネルギー及び温度について平衡化した。典型的には、2mgの各試料を、自動的に削孔される40μL Mettlerアルミニウムパン内で、-20℃から320℃に、10℃ min-1で加熱する。測定の間、サンプル上で窒素パージを20ml min-1で維持した。
【0219】
化合物の精製
化合物は、下記の条件を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び/又はprep.LC-MSにより精製することができる。
【0220】
カラムクロマトグラフィー
カラムクロマトグラフィー(CC)は、Biotageの充填済みカートリッジ(SNAP Ultra(商標)、SNAP KP-SIL(商標)、SNAP KP-NH(商標)、lsolute(商標) Silica II又はlsolute(商標) NH)を用いて行うことができる。
【0221】
分取用LC-MS:
Gilson LH215オートサンプラー、Dionex SRD-3200脱ガス器、Dionex ISO-3100Aメイクアップポンプ、Dionex DAD-3000 DAD検出器及びThermo MSQ Plus Single Quadrupole MS検出器を備えたGilson 333/334 Prep-Scale HPLCポンプ。流速:75mL/min。検出:UV/Vis及び/又はMS。
【0222】
精製についてのさらなる情報を下記の定義を用いて下表に要約する:
XBridge:カラム Waters XBridge C18、10μm、30x75mm
Zorbax:カラム Agilent Zorbax SB-aq、5μm、30x75mm
Atlantis:カラム Waters Atlantis T3、10μm、30x75mm
酸性:溶出液:A=0.5%のHCOOHを含むHO、B=MeCN
塩基性:溶出液:A=0.125%のNHOHを含むHO、B=MeCN
高親油性勾配:4分にわたり50%Bから95%Bへ、次いで2分にわたり95%B
親油性勾配:4分にわたり30%Bから95%Bへ、次いで2分にわたり95%B
通常勾配:4分にわたり20%Bから95%Bへ、次いで2分にわたり95%B
極性勾配:4分にわたり10%Bから95%Bへ、次いで2分にわたり95%B
高極性勾配:3分にわたり5%Bから50%Bへ、次いで1分にわたり50%Bから95%Bへ、そして最後に2分にわたり95%B
【0223】
【表8】
【0224】
【表9】
【0225】
(上記又は下記の部分において使用される)略語:
Ac アセチル
AcOH 酢酸
aq. 水溶液
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
CC カラムクロマトグラフィー
CDI カルボニルジイミダゾール
CDT 1,1’-カルボニル-ジ-(1,2,4-トリアゾール)DCM ジクロロメタン
ジオキサン 1,4-ジオキサン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMA ジメチルアセタミド
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルフォキシド
DSC 示差走査熱量測定
eq. 当量
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
EtO ジエチルエーテル
g グラム
IT 内部温度
h 時間
Hept ヘプタン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
io イオン化
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
mg ミリグラム
min 分
mL ミリリットル
mmol ミリモル
MS 質量分析法
NaBH(OAc) ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド
NMR 核磁気共鳴分光法
OAc アセテート
org. 有機
ON 一晩
prep. 分取用
QuadraPure(登録商標)MPA メルカプトフェニルアミノ修飾ポリスチレンビーズ(mercaptophenyl amino functionalized polystyrene beads)
rac ラセミ体
RT 室温
rxn 反応
sat. 飽和
SEM 2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
soln. 溶液
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
TFE トリフルオロエタノール
THF テトラヒドロフラン
保持時間
XRPD 粉末X線回折
【0226】
I. 化学
「化合物」の合成及びそのC5a受容体調節剤としての生物学的活性はPCT/EP2019/050372に記載されている。
【0227】
(例えば、2-(トリフルオロメチル)ベンジルブロミドのように)市販されていない場合には、構成要素は下記の手順に従って製造される。
【0228】
5-ニトロ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル又は3-ニトロ-1H
-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステルの合成
3-ニトロ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(1eq)のanh.MeOH(4mL/mmol)中の溶液に、AcCl(3eq)を加え、反応混合物を80℃で2.5h撹拌する。MeOHを蒸発させ、残渣をNaHCOの飽和水溶液とEtOAcの間で分画する。有機相をNaCOの10%水溶液及び塩水(brine)で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。t[min](LC/MS法):0.55(I);m/z[M+H]非イオン化。1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ:14.34(s、1H)、8.60(s、1H)、3.79(s、3H)。
【0229】
3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステルの合成
5-ニトロ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル又は3-ニトロ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル(1eq)及びSEM-Cl(1.3eq)のDCM(3.5mL/mmol)中の懸濁液に、0℃でDIPEA(1.5eq)を滴下により加える。反応混合物を0℃で0.5h撹拌し、NaHCOの飽和水溶液でクエンチする。それををDCMで抽出し、有機相をNaHCOの飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.00(I);m/z[M+H] 302.15。1H NMR(500MHz、DMSO-d6) δ:8.80(s、1H)、5.54(s、2H)、3.81(s、3H)、3.61(m、2H)、0.87(m、2H)、-0.03(s、9H)。
【0230】
[3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]-メタノールの合成
3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル(1eq)の、THF(6.3mL/mmol)とMeOH(0.8mL/mmol)の混合物中の溶液に、NaBH(4~8eq)を0℃で少しずつ加える。反応混合物を0℃で3.5h撹拌し、NHClの飽和水溶液中に注ぎ、EtOAcで抽出する。有機相を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):0.89(I);m/z[M+H] 非イオン化。1H NMR(500MHz、DMSO-d6) δ:8.06(s、1H)、5.51(s、2H)、5.39(t、J=5.4Hz、1H)、4.66(dd、J=5.4Hz、2H)、3.59(m、2H)、0.87(m、2H)、-0.03--0.01(m、9H)。
【0231】
3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドの合成
[3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]-メタノール(1eq)のanh.DCM(10mL/mmol)中の溶液に、MnO(9~10eq)をRTで少しずつ加え、反応混合物をRTで18h撹拌する。それをセライトのパッドでろ過し、ろ液を真空下で濃縮する。t[min](LC/MS法):1.00(I);m/z[M+H] 非イオン化。1H NMR(500MHz、DMSO-d6) δ:10.14(s、1H)、8.82(s、1H)、5.58(s、2H)、3.62(m、2H)、0.88(m、2H)、-0.02(m、9H)。
【0232】
[1-(2-フルオロ-6-ホルミル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸tert-ブチルエステルの合成
4-(Boc-アミノ)ピペリジン(1eq)及び2,3-ジフルオロ-ベンズアルデヒド(1.1eq)のDMSO(0.9~1.5mL/mmol)中の溶液に、KCO
(2eq)を加え、混合物を100℃に加熱し、18h撹拌する。それを水でクエンチし、DCMで抽出する。有機相を水及び塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物をDCM/MeOHを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):0.93(II);m/z[M+H] 323.20。
【0233】
[1-(2-フルオロ-6-ヒドロキシメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸tert-ブチルエステルの合成
[1-(2-フルオロ-6-ホルミル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル(1eq)のanh.MeOH(2mL/mmol)中の懸濁液を、0℃に冷却し、NaBH(1.2~1.3eq)を0℃で少しずつ加える。反応混合物を0℃で1h撹拌して反応を完了させる。水を0℃で滴下により加えることにより、それを注意深くクエンチし、EtOAcで抽出する。有機相を水及び塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。t[min](LC/MS法):0.82(II);m/z[M+H] 325.24。
【0234】
酢酸 2-(4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ピペリジン-1-イル)-3-フルオロ-ベンジルエステルの合成
[1-(2-フルオロ-6-ヒドロキシメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1eq)及びTEA(1.5eq)のDCM(0.5~5mL/mmol)中の溶液を、0℃に冷却し、AcCl(1.5eq)を0℃で滴下により加える。反応混合物を0℃で1h撹拌して反応を完了させる。それをDCMで希釈し、クエン酸の10%水溶液で、NaHCOの飽和水溶液で及び塩水で洗浄する。有機相をMgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):0.97(II);m/z[M+H] 367.25。
【0235】
[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸tert-ブチルエステルの合成
酢酸 2-(4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ピペリジン-1-イル)-3-フルオロ-ベンジルエステル(1eq)をMeOH(6mL/mmol)とEtOAc(2mL/mmol)の混合物中に溶解し、フラスコを3回脱気し、窒素で再充填する。含水Pd/C(0.08eq)を加え、フラスコを3回脱気し、水素で再充填する。懸濁液を大気圧下で3h水素化し、セライトのパッドでろ過する。ケークをEtOAc及びMeOHで洗浄し、ろ液を真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.00(II);m/z[M+H] 309.16。
【0236】
1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルアミンの合成
[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1eq)のDCM(4mL/mmol)中の溶液に、TFA(1mL/mmol)を滴下により加え、反応混合物をRTで1h~18h撹拌する。それをNaOHの1M水溶液でpH12-13になるまで塩基性化し、DCMで抽出する。有機相を合わせて、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。t[min](LC/MS法):0.62(I);m/z[M+H] 209.21。
【0237】
[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-[3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イルメチル]-アミンの合成
3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒド(1eq)及び1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリ
ジン-4-イルアミン(1~1.15eq)のTHF(4~8mL/mmol)中の溶液に、AcOH(1.5eq)を加え、反応混合物をRTで20min撹拌する。NaBH(OAc)(1.5eq)を少しずつ加え、反応混合物をRTで2h撹拌する。反応を完了させるために必要な場合は、NaBH(OAc)(1eq)をRTでさらに加える。それをEtOAcとNaHCOの飽和水溶液の間で分画する。有機相を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAc/MeOHを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):0.94(I);m/z[M+H] 464.25。
【0238】
[3-アミノ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イルメチル]-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-アミンの合成
[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-[3-ニトロ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イルメチル]-アミン(1eq)のEtOH(3.5~7.4mL/mmol)中の溶液に、~50%の水で湿潤化した10%Pd/C(0.02eq)を加え、反応混合物をRTにて大気圧下で18h水素化する。それをセライトのパッドでろ過し、ろ液を真空下で濃縮する。必要に応じて、粗製物を、DCM/MeOHを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):0.85(I);m/z[M+H] 434.10。
【0239】
5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-2-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの合成
[3-アミノ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-イルメチル]-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-アミン(1eq)のMeCN(3.7~10mL/mmol)中の溶液に、CDI(1.2~2eq)を加え、反応混合物をRTで1.5h撹拌する。反応を完了させるために必要な場合は、さらなる量のCDI(0.5~1eq)を加える。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc又はDCMと水の間で分画する。有機相を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.16(I);m/z[M+H] 460.26。
【0240】
5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの合成
5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-2-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン(1eq)の、anh.THF(3~7.3mL/mmol)とanh.DMF(0~0.7mL/mmol)の混合物中の溶液に、NaH(1.5~10eq、鉱油中の60%分散液として)を0℃で加える。懸濁液を10min撹拌し、2-(トリフルオロメチル)ベンジルブロミド(1.1~1.5eq)を0℃で加える。反応混合物をRTで24h撹拌する。反応を完了させるために必要な場合は、さらなる量のNaH(0.5eq、鉱油中の60%分散液として)及び/又はブロミド(0.5eq)を加える。混合物を水又はNaHCOの飽和水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出する。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.31(I);m/z[M+H] 618.38。
【0241】
5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの合成
工程A(TFA処理):
SEM保護中間体5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン(1eq)のDCM(2~4mL/mmol)中の溶液に、TFA(4~6mL/mmol)を滴下により加える。この溶液をRTで2.5h撹拌し、NaOHの32%又は1M水溶液で0℃にてpH7-8になるまでクエンチし、DCMで抽出する。有機相を合わせて、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。
【0242】
工程B(追加処理):
粗製物をTHF(5~10mL/mmol)中に溶解し、エチレンジアミン(3eq)で60℃にて30minから1h処理する。反応混合物をDCMと水の間で分画し、有機相を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。必要に応じて、粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.14(I);m/z[M+H] 488.24。
【0243】
実施例1:2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン(非晶質形の「化合物」)の合成
5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オン(1eq)及び2,2-ジフルオロプロパノール(1.5~2eq)のトルエン(6~12mL/mmol)中の混合物に、(トリブチルホスフォラニリデン)アセトニトリルのトルエン中の1M溶液(2eq)をアルゴン下で加える。反応混合物を110℃に加熱し、5h撹拌する。それを水でクエンチし、EtOAc又はDCMで抽出する。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物を、Hept/EtOAcを用いてCCにより精製する。t[min](LC/MS法):1.24(I);m/z[M+H] 566.14。XRPDパターン:図2を参照されたい。
【0244】
実施例2:結晶形1の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンの合成
実施例1から得られるような非晶質形の「化合物」(20g)をEtOH(7vol)に懸濁し、懸濁液をIT=78℃に加熱して、明澄な溶液を形成させる。この溶液をIT=0℃に冷却し、IT=0℃で11h撹拌する。生成物をろ過し、2volの冷EtOHで洗浄し、真空下で40℃にて乾燥する。16.5gの結晶形1の2-(2,2-ジフルオロ-プロピル)-5-[1-(2-フルオロ-6-メチル-フェニル)-ピペリジン-4-イル]-7-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-2,4,5,7-テトラヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-オンを82%の収率で得る。融点:163℃。XRPDパターン:図1を参照されたい。
【0245】
GVSで測定した結晶形1の「化合物」の吸湿性:非吸湿性。
【0246】
【表10】
【0247】
II. 生物学的試験
実施例3:イン ヴィトロアッセイ
接着細胞(CHO-K1 C5AR1 ベータ-アレスチン細胞株、DiscoverX、CA USA)をPBSで洗浄し、Dissociation Buffer(Gibco Cat# 13151-014、165cm2ディッシュ当たり2ml)とともに3分間インキュベーションすることにより剥がし、次いで、10mlのPBS(Mg++及びCa++無し)で洗浄し、カウントする。7’500細胞/384ウェルを、384ウェルプレート(細胞培養用プレート MTP384白色Polystyrene、Corning、Cat# 3570)に、20μl/ウェルの細胞潘種培地(F12 HAM/10%FCS/1%P/S)中に潘種し、37℃/5%C02/24hの条件でインキュベートする。
【0248】
5μlのアンタゴニストを6倍の最終濃度で、又は、DMSOコントロールを、次いで1~10nMのC5aアゴニスト5μlを6倍の最終濃度でアッセイ培地に加える。細胞を1000rpmで1分間遠心し、37℃にて1.5時間インキュベートする。プレートを室温で数分間平衡化した後、12μl/ウェルのDetection Reagent(PathHunter Detection Kit、DiscoverX、Cat#
93-0001)を加える。プレートを1000rpmで1分間遠心し、RTで45分間インキュベートした後、Fluostar Optima、BMG Labtech上で測定する。アンタゴニストの段階希釈範囲から、自社開発ソフトウェアを用いてIC50値を算出し、nmol/lで記載する。
【0249】
算出されるIC50値は、その日の細胞アッセイのやり方によって変動しうる。この種の変動は、当業者に公知である。数回の測定による平均IC50値を、幾何平均値とする。
【0250】
「化合物」のアンタゴニスト活性はこのアッセイにおいて11nMで試験した。
【0251】
III. 医薬組成物の製造
「化合物」を下記の実施例において実施例2の結晶形1で使用する。
【0252】
上記カプセル剤用の湿式ゼラチンシェル(wet gelatine shell)は、例えば下記のように構成してよいが、バッチ間で各成分の量に若干の違いが生じてもよいものとする:
【0253】
【表11】
【0254】
加工助剤は中鎖トリグリセリド及びレシチンであり、これらは潤滑剤として使用される。
【0255】
対応する乾式ゼラチンシェル(dry gelatin shell)は、例えば下記のように構成される:
【0256】
【表12】
【0257】
あるいは、上記カプセル剤用の湿式ゼラチンシェルは、例えば下記のように構成してよい:
【0258】
【表13】
【0259】
加工助剤は中鎖トリグリセリド及びレシチンであり、これらは潤滑剤として使用される。
【0260】
対応する乾式ゼラチンシェルは、例えば下記のように構成される:
【0261】
【表14】
【0262】
実施例4:
カプセル当たり667mgのソフトゼラチンカプセル剤(オーバル、サイズ12)は以下のように製造される:
【0263】
【表15】
【0264】
実施例4a:
あるいは、カプセル当たり667mgのソフトゼラチンカプセル剤(オーバル、サイズ12)は以下のように製造される:
【0265】
【表16】
【0266】
実施例4又は実施例4aのカプセル剤は下記のプロセスに従って製造される:
製造に必要な原料の重量を計測する。各賦形剤は1つ又は数個の別個の識別された容器内で重量計測する。室温で固体であるKolliphor(登録商標)RH40は、加熱したトンネル(tunnel)内で55℃で溶かし、重量計測前に全体を液化させる。
【0267】
次に、充填物の調製を、閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム(closed homogenizer mixer system)(Becomix RW15)で下記の工程に従って行う:
- Kolliphor(登録商標)RH40、クエン酸トリエチル及びCapryol(商標)90を吸引により予熱した閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム内に移す。
【0268】
- 賦形剤を、目視により均一になるまで、真空下において45℃で混合する。賦形剤混合物の均一性について目視検査を行う。
【0269】
- 充填物を35℃にて冷却する。
【0270】
- 抗酸化剤/クエン酸トリエチルプレミックスの調製。
【0271】
- 抗酸化剤/クエン酸トリエチルプレミックスを閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム内へ真空搬送。
【0272】
- 製剤を、目視により均一になるまで、真空下において35℃で混合する。1h撹拌した後にブロッキング顕微鏡検査(blocking microscopic check)を行い、抗酸化剤の可溶化を確認する。
【0273】
- 「化合物」の重量計測を保護装置(アイソレーター又は同等物)内で行い、Capryol(商標)90のアリコートの一部とプレミックスする。この混合物を使い捨てのスパチュラで撹拌し、湿潤粉末の均一な混合物を得る。
【0274】
- 「化合物」/Capryol(商標)90プレミックスを吸引により閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム内に移し、プレミックス容器をCapryol(商標)90の残りの部分でリンスする。「化合物」の閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステムへの完全な
移行について目視検査を行う。
【0275】
- リンスに用いたCapryol(商標)90を閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム内へ移す。
【0276】
- Capryol(商標)90を閉鎖式ホモジナイザーミキサーシステム内に吸引により移し、フレキシブルパイプをリンスする。
【0277】
- 「化合物」が完全に可溶化するまで充填製剤を混合。目視検査により充填物内に結晶が存在しないことを確認し、ブロッキングIPCを行って、試験により「化合物」の可溶化を確認する。
【0278】
- 充填溶液を真空下で脱気。目視検査により充填物内に気泡が無いことを確認する。
【0279】
- 充填混合物を100μmフィルターを通してレシーバー内に排出する。
【0280】
- 貯蔵容器を窒素で覆い、カプセル封入まで待機。
【0281】
カプセル封入工程
- カプセル封入機はロータリーダイタイプであり、成形、充填及び封止操作を連続的に行う。
【0282】
- 上記封入機は2つのレシーバーより供給される。一方はシェルを形成する溶融ジェルを有し、他方は充填物を有する。ゼラチンレシーバーの温度は50から65℃の間に維持する。
【0283】
- 溶融ジェルは、重力により、加熱したチューブを通って2つの加熱したスプレッダボックス(spreader box)に流れる(溶融ジェルは200μmナイロンフィルターでろ過される。)。スプレッダボックスは同時にゼラチンを2本のリボンとし、このリボンは中鎖トリグリセリド(リボン外面の潤滑のために0.3%の大豆レシチンをMCTに加える。)で潤滑されて、ロータリーダイへ運ばれる。
【0284】
- 2本のジェルリボンは2つのロータリーダイの間に供給される。このダイは対になったポケット(12オーバル)を有し、これによりカプセルの形が形成され、封止機構として働く。
【0285】
- 2つのダイの半ポケットが並んだその瞬間に、充填物はゼラチンリボンの間のカプセル封入ウェッジ(wedge)を介して注入される(充填物は重力により、カプセル封入ポンプに入力されるホッパー内に流入する。充填物は容積式(positive displacement)のピストンポンプにより充填ポイントに運ばれる。)。全カプセル封入の間、充填物は容器及びホッパー内で窒素下に維持される。
【0286】
- ダイ間の圧力及びカプセル封入ウェッジにより付与される熱の結果として封止が行われる。
【0287】
- 最初の乾燥は、カプセル封入後すぐに、カプセル封入機に物理的に連結するロータリードライヤーシステム(rotary dryer system)内で、32℃±5℃で行われる(ドライエアー)。カプセル剤は所定の時間回転乾燥される。
【0288】
実施例4と同様に、カプセル当たり667mgのソフトゼラチンカプセル剤(オーバル
、サイズ12)は以下のように製造される:
【0289】
【表17】
【0290】
【表18】
【0291】
【表19】
【0292】
実施例7a:
あるいは、カプセル当たり667mgのソフトゼラチンカプセル剤(オーバル、サイズ12)は以下のように製造される:
【0293】
【表20】
【0294】
【表21】
【0295】
【表22】
【0296】
【表23】
【0297】
【表24】
【0298】
【表25】
【0299】
【表26】
【0300】
【表27】
【0301】
【表28】
【0302】
IV. 実施例組成物の物理的及び化学的特徴づけ:
保存効力試験(Challenge tests)
すべての保存効力試験について、開始時点(initial time point)は「化合物」の完全な可溶化後にレポートされる。
【0303】
分散試験
分散試験は希釈下における製剤の挙動(「化合物」が沈殿のないこと)を確かめるために行われる。選択した「化合物」製剤についての分散試験を、FaSSGF(pH1.6)、FaSSIF(pH6.5)及びFeSSIF(pH5.0)中で行う。約5mLの媒体をバイアル中に入れ、約200mgの充填製剤を室温で媒体に加える。得られた混合物を開始時点でボルテックスにかけ、次いで定期的にひっくり返す。薬剤の沈殿を6時間にわたって顕微鏡観察により検査する。
【0304】
温度サイクル試験
温度サイクル試験は、温度変化の際の、加速条件における、「化合物」の沈殿及び製剤の相分離を評価するために行われる。約5gの選択した充填「化合物」製剤を、交互に2-8℃及び37℃で24h、少なくとも6日間貯蔵する。試料を、明澄さ、粒子状物質及び相分離について目視で観察する。
【0305】
保持時間試験(Hold Time study)
保持時間試験は、室温における時間経過による製剤外観の物理的変化を試験するために行われる。選択した充填「化合物」製剤を少なくとも7日間室温で貯蔵する。試料を、例えば明澄さ、薬剤の沈殿、薬剤の結晶化及び相分離について、最低限で1日に1回観察する。この試験は製剤の短期物理的安定性の指標である。さらに、カプセル充填内容物の物理的外観を目視により観察する。
【0306】
水に対する保存効力
水に対する保存効力試験は、製品製造及び貯蔵の間の充填製剤中に存在し得る最大水分含量において、「化合物」の沈殿が生じないことを試験するために行われる(水が製剤に成分として加えられることはないが、カプセルシェルは8%までの水分を有することがあり、そのいくらかは充填製剤中に移行する可能性がある。)。製剤中への「化合物」の挙動に応じて約6.5%から10%の水を製剤に加えることにより、選択した充填「化合物」製剤に負荷をかける。約2.7gの充填物をバイアル内に秤量し、約0.3gの水を加えて、充填物中10%の水分とする。バイアルを10秒間ボルテックスにかけ、周囲条件下に放置し、10日間までの期間にわたって静置する。目視及び顕微鏡観察を行う(薬剤沈殿、相分離、物理的外観)。
【0307】
可塑剤に対する保存効力
可塑剤保存効力試験は、カプセルシェルからの侵入に起因する、充填製剤中に存在し得る最悪の場合の可塑剤含量において、「化合物」の沈殿が生じないことを試験するために行われる。約3%の可塑剤を製剤に加えることにより、選択した充填「化合物」製剤に負荷をかける。約2.9gの充填物をバイアル内に秤量し、約0.1gの可塑剤を加える。グリセロールとpolysorbについて評価する。バイアルを10秒間ボルテックスにかけ、周囲条件下に放置し、10日間にわたって静置する。目視及び顕微鏡観察を行う(薬剤沈殿、相分離、物理的外観)。
【0308】
消化試験(Digestion test)
イン ヴィトロ消化実験は、文献に記載の手順と同様に行うことができる(Cuine J.ら、2008。Evaluation of the impact of surfactant digestion on the bioavailability
of danazol after oral administration of
lipidic self-emulsifying formulations to dogs。J.Pharm.Sci.97(2)、995-1012)。消化試験は、製剤の「イン ヴィトロ」消化後に「化合物」の沈殿が生じないことを試験するために行われる。約0.5gの選択した充填「化合物」製剤を50mLのSIF溶液に溶解する。得られた混合物を37℃で3h磁気撹拌する。顕微鏡観察を行い「化合物」の沈殿を調べる。参照として、消化試験は(「化合物」を含有しない)プラセボ製剤についても並行して行う。消化実験の間に採取した消化アリコートの水相中に可溶化した「化合物」の百分率をHPLCで測定する。
【0309】
賦形剤溶液の安定性評価
物理的及び化学的安定性試験フォローアップ用の製剤試料を調製し、例えば40℃/75%の相対湿度で、琥珀色ガラスバイアル内に1か月、3か月又は12か月貯蔵した場合の化学的及び物理的安定性について、顕微鏡試験及びHPLCアッセイによる制御を用いて試験することができる。
【0310】
ソフトゼラチンカプセル剤の安定性評価
実施例バッチを有するカプセル剤の25℃/60%RH及び40℃/75%RHにおける
安定性を、含有量及び関連物質について、下記の分析方法を用いてHPLCを用いて評価する:
HPLCシステム:Waters UPLC Acquity H-Class又は同等物;流速:1.5mL/min;カラム温度:50℃;オートサンプラー温度:25℃;注入体積:3.0μL;カラム:Waters Cortecs Shield RP18 1.6μm 2.1*150mm;波長:250nm;試料濃度 20μg/mL;溶媒A:水+0.05%TFA(v/v);溶媒B:アセトニトリル+0.05%TFA(v/v);勾配:
【0311】
【表29】
【0312】
実施例7、7a及び8の組成物は、25℃/60%RHにおいて、1、3、6、9及び12か月の時点で不純物の増大は0.1%w/w未満である。
【0313】
実施例7、7a及び8の組成物は、40℃/75%RHにおいて、1、3及び6か月の時点で、不純物の増大は0.1%w/w未満である。
【0314】
実施例7、7a及び8の組成物は、25℃/60%RHにおいて、1、3、6、9及び12か月の時点で、含有量について安定な結果を示す。
【0315】
実施例7、7a及び8の組成物は、40℃/75%RHにおいて、1、3及び6か月の時点で、含有量について安定な結果を示す。
【0316】
従って、調べたすべてのバッチのカプセル剤は、25℃/60%RHにおいて少なくとも12か月、40℃/75%RHにおいて少なくとも6か月の間安定であると考えられる。
図1
図2
【国際調査報告】