(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】高コントラストを有する、偏光系のコンパクトなコリメータ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220912BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220912BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220912BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220912BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220912BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G02B5/00 Z
G02B3/00 Z
H05B33/02
H05B33/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500994
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 US2020041259
(87)【国際公開番号】W WO2021007354
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520494530
【氏名又は名称】ゲイリー シャープ イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャープ、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】マクゲッティガン、アンソニー
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2H199
3K107
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA04
2H042AA19
2H042AA20
2H042AA26
2H149BA02
2H149BA04
2H149DA02
2H149DA04
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2H149FC02
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2H199CA23
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2H199CA47
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2H199CA86
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE21
3K107EE26
3K107EE29
3K107FF06
3K107FF15
(57)【要約】
複数の偏光系の高性能トリプルパスレンズは、任意の範囲の入射角および波長にわたる、偏光の正確な管理を必要とする。これらのレンズは、(たとえば、)眼の近くで使う広視野の没入型ディスプレイ適用分野について必要であるように、コンパクトな配置において高い光パワーをもたらす潜在性を有する。よって、本明細書に開示しているのは、第1の透過直線偏光を生成する入力偏光子と、直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、曲面状の部分リフレクタと、円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、反射型の直線偏光子と、入力偏光子および第1の位相子スタック、第2の1/4波長位相子および反射型の直線偏光子、または両方の間の幾何学的補償器(GC)とを含む、偏光系の広角なトリプルパス形式のレンズである。GCは、法線外で入射する光線について、レンズの第1のパス透過率を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透過直線偏光を生成する入力偏光子と、
直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、
曲面状の部分リフレクタと、
円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、
反射型の直線偏光子と、
前記入力偏光子と前記第1の位相子スタックとの間、第2の1/4波長位相子と前記反射型の直線偏光子との間、または両方の間の幾何学的補償器(GC)と
を備える、偏光系の広角なトリプルパス形式のレンズであって、
GCは、法線外で入射する光線に対して、前記レンズの第1のパス透過率を低減する、
レンズ。
【請求項2】
吸収型の直線偏光子は、透過においてO型であり、前記反射型の偏光子は、反射においてO型であり、吸収軸が反射軸と交差する、
請求項1記載のレンズ。
【請求項3】
前記幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成される、
請求項1記載のレンズ。
【請求項4】
前記第2の位相子スタックは、前記第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有する、
請求項1記載のレンズ。
【請求項5】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項4記載のレンズ。
【請求項6】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、前記複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、前記第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項5記載のレンズ。
【請求項7】
ディスプレイ装置と、
第1の透過直線偏光を生成する入力偏光子と、
直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、
曲面状の部分リフレクタと、
円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、
反射型の直線偏光子と、
前記入力偏光子と前記第1の位相子スタックとの間、第2の1/4波長位相子と前記反射型の直線偏光子との間、または両方の間の幾何学的補償器(GC)と
を備える、広角に拡大するイメージングシステムであって、
GCは、法線外で入射する光線に対して、レンズの第1のパス透過率を低減する、
広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項8】
吸収型の直線偏光子は、透過においてO型であり、反射型の偏光子は、反射においてO型であり、吸収軸が反射軸と交差する、請求項7記載のイメージングシステム。
【請求項9】
前記幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成される、請求項7記載のイメージングシステム。
【請求項10】
前記第2の位相子スタックは、前記第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有する、
請求項7記載のイメージングシステム。
【請求項11】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項10記載のイメージングシステム。
【請求項12】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、前記複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、前記第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項11記載のイメージングシステム。
【請求項13】
ディスプレイ装置と、
前記ディスプレイ装置に取り付けられ、第1の透過直線偏光を生成する吸収型の入力偏光子と、
前記入力偏光子と物理的に分離される曲面状の反射型の直線偏光子と、
直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、
部分リフレクタと、
円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、
入力偏光子軸と交差する吸収軸を有する吸収型の直線偏光子である検光偏光子と
を備える、
ゴースティングを低減させる、広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項14】
曲面状の反射型の偏光子、前記第1の位相子スタック、前記部分リフレクタ、前記第2の位相子スタック、および前記検光偏光子がすべて、反射を最小にするように光学的に結合される、請求項13記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項15】
前記曲面状の反射型の偏光子は、入力凸面を形成し、および凹面が等方性の屈折率整合誘電体で充填され、入力位相子スタックに結合するための平坦面を形成する、
請求項14記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項16】
前記部分リフレクタは、平坦である、
請求項13記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項17】
曲面状の反射型の偏光子は、前記第1の位相子スタックと物理的に分離されており、前記第1の位相子スタック、前記部分リフレクタ、前記第2の位相子スタック、および前記検光偏光子がすべて、光学的に結合される、
請求項13記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項18】
前記曲面状の反射型の偏光子の出力面、および第1の1/4波長位相子の入力面は、反射防止コーティングを有する、
請求項17記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項19】
反射型の偏光子と前記第1の位相子スタックとの間、前記第2の位相子スタックと吸収型の検光偏光子との間、または両方の間に、幾何学的補償器(GC)をさらに備え、GCは、法線外で入射する光線に対して、レンズの第1のパス透過率を低減する、
請求項13記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項20】
前記幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成される、
請求項19記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項21】
前記第2の位相子スタックは、前記第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有する、
請求項19記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項22】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、前記正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項21記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【請求項23】
前記第1の位相子スタックと前記部分リフレクタとの間、前記部分リフレクタと前記第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、前記複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択される、
請求項21記載の広角に拡大するイメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年7月8日付で出願された米国仮出願第62/871,680号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により、本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
偏光系(polarization-based)のトリプルパスレンズは、コンパクトな広角コリメータを可能にすることが知られている。しかし、不適切な偏光管理は、たとえば仮想現実ヘッドセット内でそうしたレンズを使用する場合に、視覚体験の品質を損なう迷光を生成し得る。これは、ベイリンググレア、拡散背景散乱、およびゴースト像の形態をとり得る。たとえば、1組のゴースト像は、直線および円偏光基底ベクトル間で(相互に)変換するうえでの制御の欠如による場合がある。別の組は、消されず、および、観察者に向けて効率的に出るフレネル反射に関連付けられ得る。
【発明の概要】
【0003】
偏光系のトリプルパスレンズ内の偏光を管理するための最適化された光学構成を説明する。レンズは、最適化を2つのステップ、および、よって、2つの関連した光学システムに分けることにより、解析され得る。第1の最適化は第1のパス光の透過率を最小にすることに関連付けられる場合があり、および、第2の最適化は第2/第3のパス光についての偏光を正確に管理することに関連付けられる場合がある。後者は、第4のパス光に関連付けられたパワーを最小にすること、または第2/第3のパスにおける偏光変換を最大にすることと組み合わせられ得る。(フレネル)反射に関連付けられたゴーストは、別個の成分として解析され、および、光学配置が、これらの寄与を軽減するように提供される。
【0004】
本明細書に開示されているのは、第1の透過直線偏光を生成する入力偏光子と、直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、曲面状の部分リフレクタと、円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、反射型の直線偏光子と、入力偏光子と第1の位相子スタックとの間、第2の1/4波長位相子と反射型の直線偏光子との間、または両方の間に、幾何学的補償器(GC)とを含む、偏光系の広角なトリプルパス形式のレンズである。GCは、法線外で入射する光線に対して、レンズの第1のパス透過率を低減する。
【0005】
吸収型の直線偏光子が透過においてO型であり、反射型の偏光子が反射においてO型であり、および吸収軸が反射軸と交差させられる場合がある。幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成され得る。第2の位相子スタックは、第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有し得る。レンズは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間位、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択され得る。レンズは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択される場合がある。
【0006】
さらに開示されているのは、ディスプレイ装置と、第1の透過直線偏光を生成する入力偏光子と、直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、曲面状の部分リフレクタと、円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、反射型の直線偏光子と、入力偏光子と第1の位相子スタックとの間、第2の1/4波長位相子と反射型の直線偏光子との間位、または両方の間の幾何学的補償器(GC)とを含む、広角に拡大するイメージングシステムである。GCは、法線外で入射する光線に対して、レンズの第1のパス透過率を低減する。
【0007】
吸収型の直線偏光子は透過においてO型である場合があり、反射型の偏光子は反射においてO型であり、および吸収軸は反射軸と交差させられている。幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成され得る。第2の位相子スタックは、第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有し得る。イメージングシステムは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択され得る。イメージングシステムは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択され得る。
【0008】
さらに開示されているのは、ディスプレイ装置と、ディスプレイ装置に取り付けられ、第1の透過直線偏光を生成する吸収型の入力偏光子と、入力偏光子と物理的に分離される曲面状の反射型の直線偏光子と、直線偏光から円偏光に変換するための第1の位相子スタックと、部分リフレクタと、円偏光から直線偏光に変換するための第2の位相子スタックと、入力偏光子軸と交差する吸収軸を有する吸収型の直線偏光子である検光偏光子とを含む、ゴースティングを低減させる、広角に拡大するイメージングシステムである。
【0009】
曲面状の反射型の偏光子、第1の位相子スタック、部分リフレクタ、第2の位相子スタック、および検光偏光子はすべて、反射を最小にするように光学的に結合され得る。曲面状の反射型の偏光子は入力凸面を形成する場合があり、および凹面は、等方性の屈折率整合誘電体で充填され、入力位相子スタックに結合するための平坦面を形成する場合がある。部分リフレクタは平坦であり得る。曲面状の反射型の偏光子は、第1の位相子スタックと物理的に分離されている場合があり、ならびに、第1の位相子スタック、部分リフレクタ、第2の位相子スタック、および検光偏光子はすべて、光学的に結合されている場合がある。曲面状の反射型の偏光子の出力面、および第1の1/4波長位相子の入力面は、反射防止コーティングを有し得る。
【0010】
広角に拡大するイメージングシステムは、反射型の偏光子と第1の位相子スタックとの間、第2の位相子スタックと吸収型の検光偏光子との間、または両方の間に、幾何学的補償器(GC)をさらに含み、GCは、法線外で入射する光線に対して、レンズの第1のパス透過率を低減し得る。幾何学的補償器は、70~130nmの位相差を有する正のAプレートおよび70~130nmの位相差を有する正のCプレートで構成され得る。第2の位相子スタックは、第1の位相子スタックに対して、0°に対する逆順序投影の関係を有し得る。広角に拡大するイメージングシステムは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、正のCプレートをさらに含み、正のCプレートのリターデーションは、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択され得る。広角に拡大するイメージングシステムは、第1の位相子スタックと部分リフレクタとの間、部分リフレクタと第2の位相子スタックとの間、または両方の間に、複吸収補償器をさらに含み、複吸収補償器の吸収率は、法線外で入射する光線に対して、第1のパス光の透過率を最小にするように選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1のパス光に関連付けられた光学システムの分解図である。
【
図3】一対の交差偏光子、対、本発明の幾何学的補償を備えた一対の交差偏光子についてのコントラスト比較である。
【
図4】第1のパス光について最適化された、偏光系のトリプルパスレンズの例である。
【
図5】
図4の配置についてのコントラスト対入射角である。
【
図6】第2/第3のパス光に関連付けられた光学システムの分解および展開図である。
【
図7】第2/第3のパス光について最適化された光学システムの分解および展開図の例である。
【
図8】
図7の配置についてのコントラスト対入射角である。
【
図9】第1のパス光、および第2/第3のパス光について最適化された、本発明のトリプルパスレンズの例である。
【
図10】2つのディスプレイ反射ゴーストのトレースを示す、従来技術のトリプルパスレンズである。
【
図11】低減されたディスプレイ反射ゴーストを示す、本発明の例示的なトリプルパスレンズである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1のパス最適化
図1は、偏光系の広角コリメータの第1のパス光に関連した、従来技術の光学システムの分解図を示す。(たとえば、)液晶ディスプレイ(LCD)により生成される画像光は、ディスプレイ検光子、および円偏光子に対する入力としての役割も果たし得る共用直線偏光子(P1)を有し得る。円偏光は、併せて1/4波長のリターデーションを与える1つまたは複数の層の異方性材料(QW
1)により、生成され得る。実際の出力は、入射角、および波長依存楕円率ε
1(θ,φ,λ)によって表され得る。これには、光キャビティの第1の層を形成する部分リフレクタ(PR)が続く。この構成要素は、偏光状態(SOP)に対して、それを楕円率ε
2(θ,φ,λ)に変換する、重大な影響をおよぼし得る。第2の1/4波長位相子(QW
2)は、(理想的には、)元の直線SOPを回復させるために使用され得る。最終楕円率ε
3(θ,φ,λ)は最小源、表した3つの要素の影響の結果である。表していないが、重要であるのは、(角度/波長に対する、)この楕円SOPの向きである。反射型の偏光子(P2)は、光キャビティの第2の層も形成する、第1のパス光のSOPについての検光子としての役割を果たす。
【0013】
解析が考慮するのは、第1のパス光のみであり、および、示している層間で生じ得る反射でない。実際には、これらの表面は、光結合(たとえば、整合屈折率を有する接着剤)により、実質的に除去され得る。撮像光学系に関連付けられた各要素を通る光線角度における差による、いかなる影響も、この単純化された解析では考慮に入れないことにも留意する。最適化された設計は、関連した入射角(AOI)、方位角、および波長それぞれすべてにわたり、ゼロ透過ルーメン(L(θ,φ,λ))をもたらす。AOIはディスプレイ法線に対するものであり、および、方位は局所入射面(POI)を規定する。透過率における、第1のパスのヌルを実現するための機能要素は、入力偏光子(P1)および反射型の偏光子(P2)であり、前者の吸収軸は好ましくは、後者の反射軸と交差させられる。これは、透過率をゼロにするために、偏光子間での、実際の偏光変換が必要でないことを意味する。法線入射では、その最適化は、ゼロ純回転および楕円率をもたらすために、偏光子間の要素が併せて「消える」ことを必要とする。しかし、そうであるならば、性能は、法線外光について、必ずしも最適でない。これは、純粋に幾何形状によるものであり得るが、それは、POIが複数の偏光子軸の1つを含む場合、交差偏光子が通常、法線外でのみ、最適に機能するからである。
【0014】
幾何学的回転
第1のパスの最適化は、波長および入射角すべてにわたり、観察者に対する透過を最小にすることを必然的に伴う。入力偏光子は通常、吸収軸がPVA(ポリビニルアルコール)延伸方向にあるヨウ素系または色素偏光子である。これは、異常軸に対応し、よって、これらの偏光子はO型として知られているが、それはそれらが、異常軸に対して直交している光を透過させる(すなわち、それらは通常光を透過させる)からである。検光子は、通常、ワイヤグリッド偏光子(WGP)または延伸多層ポリマである反射型の偏光子である。前者の例は、旭化成またはモックステック(Moxtek)社によるWGP製品を含み、および後者の例は、3M社による延伸共押出製品(たとえば、DBEF)である。法線外の幾何学的回転の問題を軽減する1つの手法は、透過においてE型である反射型の偏光子を使用することである。この場合、軸を交差させることは異常軸の相互アラインメントと同義である。幾何学的回転はいずれの偏光子にも共通であるので、コントラストはすべての入射角において高い状態に留まる。本発明は、(透過における)O型入力偏光子およびE型反射型の偏光子、または逆の組み合わせを含み、これは補償要件を単純にするうえで有用であり得る。
【0015】
偏光子がいずれもO型であり、またはいずれもE型である場合、純粋に幾何形状による漏れの問題が存在し得る。すなわち、±45°方位では、偏光子軸の幾何学的逆回転は、性能を制限し得る漏れをもたらす。これは、(たとえば、)高密度設定において可変中性密度フィルタを使用する際に写真家/映像作家が直面する「恐るべきX」問題として知られている。最悪の場合(±45°)の方位では、理想的な交差直線偏光子のコントラストは、24°AOIにおいて1,000:1であり、28°AOIにおいて500:1であり、36°AOIにおいて200:1であり、および44°AOIにおいて100:1である。本発明は、この性能制限要因を認識し、および、必要に応じてSOPを補正するために法線外に入る、Aプレート/Cプレートの組み合わせなどの補助的な幾何学的補償器(GC)を含み得る。あるいは、本発明は、幾何学的補償を、既存の偏光管理構成要素についての複数の機能要件に組み入れ得る。これらは、第2の光学構成(すなわち、第2/第3のパス光についてのもの)を最適化するのに必要な偏光変換を含む。交差偏光子のみで実現されるよりも高い法線外コントラストをもたらすいずれの組の構成要素も、統合化されたGC機能を有すると考えられる。
【0016】
本発明のスタンドアロン型幾何学的補償器(GC)は、O型交差偏光子を使用する場合に、最適化された設計の開始点としての役割を果たし得る。それをいずれかの偏光子に隣接して配置することにより、入射角すべてにおける高コントラストを確実にするために、適切な偏光補正が施され得る。具体的には、SOPが、入射角/方位にかかわらず、反射型の偏光子の反射軸に沿ってのみ、投影するように、必要に応じて、補償器により、小さな回転が施される。そして、この場合、他の機能的構成要素(たとえば、QW)は、幾何学的回転のさらなる負荷を有するものでない。あるいは、組み合わせが、それ以外の手法で実現可能であり得るよりも高い性能をもたらすために相補的な手法で機能し得る。
【0017】
図2は、本発明の3要素GCを組み入れた配置を示す。ディスプレイは、透明支持基板により、境界を付けられた機能的PVA層(すなわち、一軸性吸収体)からなる直線入力偏光子に光学的に結合される。入力基板は、ディスプレイの性能(たとえば、FOVにわたるコントラスト)を最適化するための機能を有し得る。面内スイッチ(IPS)モードLCDの場合、この基板は好ましくは等方性を有し得る。32nmの負のCプレートのリターデーションを有する(トリアセチルセルロース)TACとして示す、この場合における出力基板は、GCの一部としての機能的便益を有する。Cプレートは、光軸が基板に対して垂直である一軸性を有する。正のCプレートは面内屈折率であって、厚さ方向におけるそれよりも低い面内屈折率を有しており、および負のCプレートは面内屈折率であって、厚さ方向におけるそれよりも大きい面内屈折率を有している。後続する要素は、100nmの+A-プレート(一軸性面内位相子)および100nmの+C-プレートを含む。検光子(P2)は、反射型の直線偏光子であり得る交差直線偏光子として示す。偏光子間には、(たとえば、)トリプルパスレンズについて必要であるような汎用的な光学システムがある。
【0018】
図3は、従来の交差偏光子のコントラスト対入射角、および最悪の場合の方位における
図2のシステムのそれを示す。この例では、
図2に示す光学システムは、偏光機能(たとえば、等方性)を有するものでない。GCが存在している状態では、コントラストは一般に、はるかに高い。たとえば、40°AOIにおける交差偏光子のコントラストは130:1に過ぎず、およびGCを備えたそれは、3,484:1であり、27倍の改善である。十分なコントラストを実現するためにそうしたGCが組み入れられる範囲で、第1のパス光の最適化は、関連した角度および波長すべてにわたり、光学システムを設計することにおいて、消えることが明らかになる課題になり得る。なお、この手法は、より広い解空間の例としての役割を果たすに過ぎない。
【0019】
部分リフレクタ偏光歪み
図1に戻れば、入力円偏光子(P1+QW
1)を出る光は、おおよそ、入射角(AOI)、方位、および波長の関数である楕円率ε
1(θ,φ,λ)を有する。QW
1(およびQW
2)は、波長依存性を含む面内リターデーション(または経路長差)(R
e)、および法線外光線に対するSOPにおけるいずれかの変化を表す厚さ方向リターデーション(R
th)を有しているものとして特徴付けられ得る。同様に、部分リフレクタ(PR)などのコーティングは、SOPを、特に法線外光線について歪ませ得る。楕円率ε
2(θ,φ,λ)への変換は、コーティングにより、もたらされるリターデーション(SおよびP偏光間の位相差)、ならびに、複吸収(SおよびP偏光間の透過率差)の結果であり得る。コーティング上の入射角は、画像光の光線角度と、複合曲面状であり得る局所面法線との間に形成されるものである。光軸上に実質的にセンタリングされる方位角的に対称なレンズの場合、局所Pは径方向にあり、および局所Sは方位方向にある。本出願では、部分リフレクタ上に入射する光は、略円偏光を有しており、および、そういうものとして、偏光歪みは、POIをたどり、および、方位に実質的に依存しないものであり得る。
【0020】
1つの例示的な場合には、部分リフレクタは、円偏光子によってもたらされるSOPの忠実度をおおよそ維持する(ε2(θ,φ,λ)=ε1(θ,φ,λ))。これがあてはまるためには、コーティングは、入射角および波長すべてについてゼロリターデーションおよびゼロ複吸収を有するべきである。これらの問題を埋め合わせするために、(その内容全体を参照により、本明細書に援用する、傾斜面用偏光補償器と題する、同時係属中の米国仮特許出願第62/832,824号に記載されているように、)補償器が追加され得る一方、薄膜コーティング設計の場合、これは極めて困難である。たとえば、整合Cプレート位相子が、いずれかのコーティングRthを埋め合わせるために追加される場合があり、ならびに、吸収型のCプレートが、SおよびP透過率を均衡させるために追加される場合がある。この要素は、QW1の出力、QW2の入力、または両方に追加され得る。各補償器は、複吸収/リターデーションをいずれも補償する単一層であり、または、二層、すなわち、複吸収を補償する1つのもの、およびリターデーションを補償する別のものであり得る。
【0021】
円偏光がPR上に入射する本システムでは、リターデーションおよび複吸収は、性能に対して非常に類似した影響をおよぼし得る。複吸収による、楕円率における歪みは、局所POIに含まれる向きを有する楕円をもたらす一方、位相差によるそれは、POIに対して±45°に向けられる。しかし、理想的な交差円偏光子間に歪みがもたらされる場合、検光子を通る光漏れの量が楕円率歪みの大きさのみに依存すること、および楕円の結果として生じる向きが重要でないことが示され得る。
【0022】
局所POI内の透過する場についてのジョーンズベクトルは、3つの項、すなわち、入力円偏光ベクトル、部分リフレクタについてのジョーンズ行列、および理想的な交差円偏光子である検光子についてのジョーンズ行列の積として、
で記述することができ、ここで、T
S、T
Pは、SおよびP偏光それぞれについてのパワー透過率を表し、ならびに、Γは位相差である。
【0023】
上記式から、理想的でない部分リフレクタにより、システムを通る合計パワー漏れは、2つの項の和として、
で表され、ここで、第1項は、複吸収により、もたらされる楕円率歪みによるものであり、および第2のものは位相差によるものである。部分リフレクタの寄与によるコントラストはおおよそ、上記の逆数である。
【0024】
角度および波長すべてにわたり、これらの項をいずれも除去する薄膜設計をもたらすという課題は手ごわい。本発明は、いずれの項も、広いFOVにわたり、無視できるレベルに追い込むうえでの援助を1つまたは複数のさらなる偏光制御層が与え得ることを期待する。この補償器は、第1のQWの出力、第2のQWの入力、または両方に追加され得る。
【0025】
Reおよび向きを整合させる
トリプルパスレンズの基本機能は、直線および円偏光基底ベクトル間の変換を必然的に伴い、その詳細は第2/第3のパス最適化の一部である。第1のパスの意味合いでは、法線入射コントラストは、これらの変換が完全に相殺するものである場合に最適である。すなわち、QW位相子対からの純偏光変換はゼロである。単純なQW直線位相子の場合、第1のQWが向き45°を有しており、および第2のQWが向き-45°を有しており、または逆である。関連付けられた行列の積は、法線入射では、単位行列である。これらのQWは、パンチャラトナム(Pancharatnam)HW/QW対などの、位相子スタックベースのものである場合もある。交差QWの概念は、一般に、従来技術において開示されるように、法線入射においてジョーンズ単位行列を与える「逆順序交差」(ROC)配置を使用することにより、位相子スタックに拡張され得る。ROC配置では、第1のスタック内の各位相子は、第2のスタック内の等しいリターデーションの相手層と交差させられる。しかし、および、同時係属中の出願(その内容全体を参照により、本明細書に援用する、偏光基底ベクトル変換用位相子スタック対と題する、米国特許出願第16/289,335号明細書)に記載されているように、ROC配置は過剰制約を表し、およびこれを実現するための他の選択肢(すなわち、スタック対の固有偏光)が好ましい場合がある。代替的なスタック対設計に関する正当化根拠は次の節において述べる。
【0026】
ROCの場合には、最適なコントラストは、スタック1(QW1)内の位相子層が、リターデーションにおいて整合させられ、およびスタック2(QW2)内の相手層と交差させられる場合に軸上で生じる。実用的な観点からは、位相子層の不正確な整合による、順方向パス光の漏れは、システムコントラストを制限し得る。ウェブ製造(web-manufactured)された(たとえば、延伸ポリマの)位相子、またはウェブコーティングされた位相子(たとえば、反応性ミソゲンコーティング)の場合、一般に、スタック対のRe整合を制限し得る、遅相軸の向きおよびリターデーション公差の統計分布が存在している。厚さの均一性は一般に、リターデーション均一性を維持するのに不可欠である。これは、RMにとって困難であり得るが、それは、複屈折が比較的大きくなりがちであり、および、したがって、厚さ公差がより厳しいからである。鋳造/押出フィルムベースの位相子の場合、延伸均一性が、遅相軸の向きおよびリターデーションをクロスウェブで制御することに不可欠である。
【0027】
複合回転角αおよび複合リターデーションΓを有するスタック対は、
の(二次までの)透過率を与え、ここで、トリプルパスレンズ内では、コントラストは、おおよそ、1/(2T)で表される。たとえば、(550nmにおいて)5.5nmの残留リターデーション、または1.8°の回転を有するレンズ、および、12.4nmの残留リターデーション、または4°の回転を有するレンズは、200:1のコントラストを有する。(たとえば、)パンチャラトナム設計では、スタック対は、3つの半波長の総和されたR
e(または約800nm)を有し、1,000:1を上回るコントラストを維持するために約0.7%のレベルに残留R
eが管理されることを必要とする。
【0028】
位相子材料の製造時の統計に加えて、ロバストな性能が、積層により、もたらされる応力、または環境条件における変化が上記性能をさらに損なう訳でないことを要求する。たとえば、積層プロセスは、複数の層が集約される方法に関連付けられた応力、接着剤の熱硬化、または材料の熱膨張差をもたらし得る。水分の吸収は、内部応力をもたらし得る膨潤をもたらし得る。そして、柔らかく、および高応力光学係数を有する位相子材料(たとえば、ポリカーボネート)は、これらの課題に特に左右され得る。逆に、環状オレフィンポリマは、比較的高いデュロメータ硬さ、低応力光学係数を有しており、および、水分を吸収しない傾向にある。それはさらに、ヘーズにおいて非常に低い。
【0029】
合成Rthを最小にする
法線入射における第1のパスを最適化することは、QW1またはQW2からの具体的な偏光変換を必要とするものでない。幾何学的補償が存在していると仮定すれば、P2におけるSOPが反射軸に沿って直線であるために上記組み合わせが消えることが必要であるに過ぎない場合がある。すなわち、反射軸に沿った向きで、ε3(θ,φ,λ)=0であることが必要である。汎用位相子スタックの場合、従来技術のQW1/QW2の逆順序交差(ROC)配置はこれを実現する。スタックからのゼロ純Rthが存在しているという条件で、AOIすべてについて、理想的な状況が持続する。しかし、すぐに利用可能な一軸性位相子(理想的なNz=0.5(またはRth=0)に対する、位相子Nz=1(またはRth=1/2))使用するという実用的な現実は、Rthの蓄積が避けられない可能性が高く、および、ある程度のさらなる補償が広角システムについて必要であるということである。Rthについての補償の実用的な形態は、スタック対全体を補償する+Cプレートである。しかし、それは、方位に依存しない補償器(すなわち、Cプレート)が正の全体の影響を有し得るようなある程度の方位無感受性をQW1およびQW2間の空間内のSOPが有することを必要とし得る。多くの場合には、ROC構成は、スタック対の方位依存性が理由で、Cプレートにより、効果的に補償される訳でない。
【0030】
同時係属中の出願(その内容全体を参照により、本明細書に援用する、偏光基底ベクトル変換用位相子スタック対と題する、米国特許出願第16/289,335号明細書)に記載されているように、「非縮退固有偏光」と呼ばれる、ROCに対する代替策が存在している。この空間からの1組の解決策は、第1のスタック内の各層が、角度の符号が逆にされた、第2のスタック内の整合リターデーション相手を有する、0°に対する逆順序投影(reverse-order-reflection-about-zero:RORAZ)構成である。RORAZ構成は、特に、最適な+Cプレートがスタック間に施された場合に、非常に良好に機能し得る。実際に、QW1およびQW2の組み合わせは、前述した単純な理想的な交差偏光子よりも、AOI/方位にわたり、より高いコントラストを発生し得る。これは、QW1上流に(またはQW2下流に)さらなる幾何学的補償器を追加することなく、45°方位における、ある程度のレベルの幾何学的補償が得られ得ることを示す。
【0031】
最適化された第1のパスの実施形態
図4は、第1のパス(
図1)の構成の最適化されたバージョンの実施形態である。第1のパス最適化(すなわち、透過におけるゼロ)が、具体的な偏光基底ベクトル変換を必要としない一方、上記最適化原理の一部を例証するために具体的なCP設計を挿入することが適切である。この場合、パンチャラトナムCPが、キャビティに対する入力についてのSOPを生成するために使用される。RORAZ相手が、PRと、反射型の偏光子との間に挿入される。180nmの合成リターデーションを有する一対の+Cプレートが、部分リフレクタのいずれかの側のスタック間に挿入される。吸収型の一軸性Cプレートが、部分リフレクタを介した透過において生じ得るいかなる複吸収も埋め合わせるように挿入され得る。A/CプレートGCが、図示したように、入力偏光子とQW
1との間に挿入される。
図5は、
図4の構成についての、最悪の場合の方位におけるコントラスト対AOIを示す。法線入射において理論上無限大のコントラストを有するROCと違って、コントラストはここでは、固有偏光の残留波長依存性により、制限される。法線入射において(、および10°をゆうに超えるまで)、このコントラストは約14,000:1に留まる。より重要なことは、コントラストが、38°まで、1,000:1を上回る状態に留まることである。
【0032】
特筆すべき、
図4の構成の一部の具体的な詳細が存在している。まず、第1のスタックに対して0°または90°偏光を入力する(すなわち、90°または0°偏光それぞれを検光する、)設計の選択肢が存在している。より良好なコントラスト性能が、0°偏光を入力することにより、この例において実現され、これは、吸収軸が90°に沿って示されている理由である。第2に、この例では、入力偏光子出口基板は好ましくは、等方性を有し(すなわち、Cプレートのリターデーションを有するものでなく)、これは、さもなければ、大きな入射角における性能を損なうものである。第3に、選択された純Cプレートのリターデーション値(180nm)は、平均屈折率1.52を有する低複屈折位相子(0.01)に基づく。これが(たとえば、1.60に)変更された場合、最適なR
th値は上方に調節される必要がある。これは、平均屈折率における増加が位相子内の光線角度における減少、および、よって、予測R
thにおける低減を表すからである。第4に、上記例は、反射型の偏光子に関連付けられたゼロR
thが存在していること、および、よって、(たとえば、)直線入射偏光が一般に、検光される前に、変わらない状態に留まることを前提としている。第6に、幾何学的補償器は、入力偏光子の後に、または検光子の前に配置され得る。入力偏光子の後にそれを配置することにより、それは、第2/第3のパス光に対して影響をおよぼさない。検光子においてそれを配置することにより、それは、第2および第3のパス光のいずれにおいてもSOPに寄与し得る。第7に、すべての位相子は、一軸性を有しており、および無分散である(すなわち、経路長差の波長依存性がない)とみなされる。第8に、一軸性吸収体である複吸収補償器は、かなりのR
thも有する可能性が高い。選択された180nmCプレート補償器は、この寄与を無視するものであるが、完全なスタックに関連付けられた純R
thを最小値に追い込むという全体の目的は、一貫した状態に留まる。合成R
thは、交差QW、部分リフレクタ、および複吸収補償器に関連付けられる。実用的な観点から、最適な+Cプレート値が、全体目的を実現するために180nmから調整されることがあり得る。
【0033】
図5は、
図4の設計について、最悪の場合の方位におけるコントラスト対入射角を示す。コントラストは、17°において10,000:1であり、24°において5,000:1であり、32°において2,000:1であり、および、38°において1,000:1である。
【0034】
第2/第3のパス最適化
図6は、キャビティの第2および第3のパスを表す分解および展開配置を示す。この場合、光は、90°方向に向けられた反射型の偏光子により、キャビティに再導入される。反射型の偏光子が反射においてE型であり、および、透過においてO型であり(、または逆である)場合、交差偏光子の幾何学的回転の問題は法線外光について大いに低減され得る。この種の自己補償は、それが第1のパス最適化について説明したような補償を除去し得る点で有益である。反射型の偏光子が、(Cプレート挙動などの)何らかの二軸性を表す場合には、反射型の偏光子との相互作用による、楕円率の導入を最小にするために補償が加えられ得る。
【0035】
反射軸に沿って偏光する光はまず、QW2を介した逆方向パスを実行し、理想的には単位であるε4(θ,φ,λ)で表される楕円率を生み出す。光は次いで、部分リフレクタから反射し、これはさらに、複吸収およびリターデーションにより、楕円率を歪ませ得る。これは、展開配置であるので、それは、SOPを楕円率ε5(θ,φ,λ)に変換する透過性構成要素として表される。最終的に、光は、QW2を介した順方向パスをたどり、それは楕円率ε6(θ,φ,λ)で出てくる。この場合、SOPは理想的には直線(ε6(θ,φ,λ)=0)であり、投影は反射軸に対しておおよそ直交している。厳密に実現された場合、画像光は効率的に出ていき、および反射型の偏光子はキャビティに光を戻すものでない。前者は最適化の漸増的スループット利益を指すが、より重要なことは、キャビティに光を戻さないことにより、後続パスがさらなるゴーストを生み出すことを、最適化された設計が可能にしないことである。最適化は、反射軸に直交する投影を最大にすることにより、または反射軸に沿った投影を最小にすることにより、実現され得る。
【0036】
QW2のダブルパス:面内リターデーション(Re)
第2/第3のパスの場合、最適化はダブルパスにおけるQW2の関数に大きく依存する。これは、反射軸に沿った投影を最小にすることが、関連した波長および入射角すべてにおける光を直交SOPに変換することと同等であるからである。すなわち、QW2のダブルパスは理想的には、波長および入射角すべてにわたり、半波長のリターデーションを発生する。
【0037】
法線入射では、可視帯にわたり、ダブルパスHWを最適化するために、非常に具体的な逆分散関数が必要である。これは、デザイナ(たとえば、ポリマまたはRM)分子を合成すること、位相子スタックを設計すること、または2つの、いずれかの組み合わせにより、実現され得る。位相子スタックは、任意のレベルのReの制御が単に、より多くの層を追加することにより、実現される場合があるという利点を有しており、および、したがって、それがもたらす精度がそれをこの最適化の焦点とする。
【0038】
QW
2が位相子スタックである場合、構造の2つのパス間に、固定された関係が存在している。これは、従来技術(たとえば、「LCD投影のための偏光設計」の145~148ページを参照されたい)において述べられた逆順序(RO)配置である。複数の層の数および各層の向きは、
の理想的な分散関係に対する、任意的に正確な近似をもたらすように選択され、ここで、λは波長であり、およびdは位相子厚さである場合がある。二層のみでは、パンチャラトナム型CPは通常、いずれの市場で入手可能な単一層分散制御位相子よりも良好に機能する。この範囲を超え、およびより多くの数の半波長位相子を追加することにより、上記に対する近似がさらに改善され得る。展開配置では、ROスタックは、奇数の半波長位相子の形態をとり得る。CPを形成するように分割された場合、QW
2構造は、任意数の半波長位相子、およびそれに続く単一QW位相子になる。4層CPの例が、分散関数をさらに調整する場合に実現され得るコントラスト改善を例証するために使用される。
【0039】
QW2ダブルパスの合成Rthを最小にする
Reの波長依存性を調整するためにさらなる層を追加することに関連付けられた潜在的なトレードオフは、それがさらに、合成Rthを増加させ、および、よって、法線外の性能を損なう場合があることである。本発明は、自己補償関数を有するスタックの選択により、これを認識する。これは、例示的な設計の合成Rthが、合計スタックReの最小部分であることを指す。さらに、例示的な設計は、Cプレート補償に対して好ましく応答する、Rthの方位依存性を示し得る。この場合もまた、広い範囲の入射角にわたり、性能を維持する4層CP設計の例を示している。
【0040】
反射における部分リフレクタ偏光歪みを最小にする
順方向パス最適化において述べたように、複吸収および位相差は、部分リフレクタにおける反射により、生じる場合もある。その結果は、透過の場合と非常に類似しており、透過係数が反射係数により、置き換えられ、および反射位相差の置換をともなう。この場合、S偏光の反射率は通常、Pのそれを超え、これは、S偏光のAOI感応性吸収により、複吸収を最小にする異方性吸収体を必要とする傾向にある。これは、透過モード補償器の逆であり、および実際には実現することがより困難であり得る。しかし、部分リフレクタ上の入射角は、第1のパス光よりも第2のパス光について小さい場合があり、これは、複吸収補償に対する必要性を減らす傾向にある。位相差の補償はなお、QW2と部分リフレクタとの間に存在し得る+Cプレート補償器における調整により、最小にされ得る。
【0041】
最適化された第2/第3のパスの実施形態
図4の例が、第1のパス光を最適化するのに必要であり得る構成を示す一方、第2/第3のパス光のそれに対しては具体的に注目されているものでない。使用されるパンチャラトナム設計の場合、QW
2の逆順序(RO)の平行の偏光子の漏れは、法線入射において約1,200:1のコントラストを生み出す。より高いコントラストはよって、より高いダブルパス変換効率を備えたスタック設計を、理想的には、R
thを増加させることに関連付けられたトレードオフをもたらすことなく、必要とする。
図7は、さらに第2/第3のパス光を最適化する、
図6の分解・展開光学構成の実施形態を示す。前述の例に対する最も重要な変更は、QW
2性能の重視である。この設計は、パンチャラトナム設計(スタック毎に4つの位相子)に対するさらなる2つの半波長層を有しており、これは、より大きな分散制御を付与し、および、よって、より良好な法線入射性能を可能にする。この例では、QW
2の逆順序(RO)の平行の偏光子の漏れは、法線入射において、50,000:1を上回る、理論的なコントラストを生み出す。この場合におけるRORAZ交差偏光子コントラストが、パンチャラトナム設計の場合の13,700に対して、理論的には77,000:1を超えることにも留意する。しかし、より重要なことは、この具体的な設計のさらなるR
thが、パンチャラトナム設計に対する、第1のパスコントラストの角度依存性を損なうものでないことである。いずれの設計も、32°のAOIにおいて約2,000:1の第1のパスコントラストを生み出す。角度にわたる性能を最適化するために、+Cプレート補償器が、図示するように、対称軸のいずれかの側に追加される。
【0042】
図7は、反射におけるE型偏光子および透過におけるO型偏光子それぞれとしての反射型の偏光子との2つの相互作用も示す。この場合、補償を必要とするいずれの相互作用による位相差も存在していないとみなされる。さらに、部分リフレクタからの反射を補償するための、Cプレートのリターデーションにおけるいかなる調整も、前述したように行われ得る。平行のO型偏光子が、交差するO型およびE型偏光子を近似する範囲で、モデルは、(共通の)幾何学的回転を十分に補償するはずである。
【0043】
図8は、最悪の場合の方位における、
図7のROスタックの平行の偏光子の漏れを示す。高コントラストを維持するために、(明所視的に加重された)波長すべてを直交SOPに変換するために、ダブルパスが必要であるので、コントラスト対入射角における降下は、第1のパス最適化の場合よりも急峻である。コントラストは、9°において10,000:1であり、および18.5°において1,000:1である。
【0044】
最適化されたトリプルパスレンズの例
第1のパス光および第2/第3のパス光の最適化の結果を統合化した、本発明の例示的なレンズを
図9に示す。IPSモードLCDは、等方性入力基板、機能的PVA O型偏光子、および32nmの-Cプレートのリターデーションを有するTAC出力基板を備える検光偏光子を有する。後者は通常、TAC基板の固有の態様であり、これは、幾何学的補償器(GC)の機能層としての役割も果たす。GCは、前述したようにAプレート/Cプレートの組み合わせからなる。この偏光子は、この場合には前述した4層の設計である第1の円偏光子に対する入力としての役割も果たす。やはり前述したように、Cプレート補償は、それぞれが部分リフレクタ(PR)の両側にある、QW
1の出口およびQW
2の入口において配置される。図示された補償は一軸性RORAZスタックの性能を最適化するのに必要なものであり、および、PRのいかなる影響も含むものでない。前述したように、PRの影響が加えられた場合に補償を最適化するのに調整が必要であり、これは位相および複吸収を含み得る。
【0045】
フレネル反射ゴースト
モノリシックディスプレイ構成(すなわち、すべての層間の光結合)は、ゴースト像を生み出し得る不必要な複数の(フレネル)反射を最小にし得る。しかし、光学システム内のエアギャップを受け入れることに関する有効な正当化根拠が存在している場合がある。それは、光学的に結合するには大きすぎる、表面間の経路長に対する必要性、異なる曲率を有する表面間のギャップの存在、製造性設計の考慮事項、動的/可変焦点経路長調整要件、および光結合に関係した実用的な性能トレードオフに関係し得る。たとえば、ディスプレイスタック出口と、レンズの第1の表面との間に数ミリメートルを必要とする光学システムは、エアスペースの好みをもたらし得る。本発明の態様は、エアスペースに関連付けられたトレードオフが特定のフレネル反射を受け入れることの好みをもたらし得るという認識である。しかし、重要なのは、本発明は、そうした複数の反射が、特に、焦点が合っているゴーストをそれらが表す場合にレンズ出力に対する弱い結合を有するアーキテクチャを明確にしようとすることである。
【0046】
実用的な限りいかなる場合でも、屈折率整合誘電体を使用して、隣接面を光学的に結合することが通常、好ましい。しかし、これは、(1)表面間の光路長が、(たとえば、光学システム設計を最適化するのに必要であるように)必然的に大きく、(2)表面が、(機能的または実用的理由で)同じ曲率を有するものでなく、および(3)製造組立プロセスにおいてそうしたギャップを埋めることが実用的でない場合に困難になり得る。エアスペースが必要な場合、反射防止コーティングは、法線入射において4%から0.2%未満に反射を追い込み得る。しかし、これは、実際には十分でない場合がある。さらに、広角システムでは、反射の総計は、薄膜ARコーティングを使用する場合にかなり悪い場合がある。
【0047】
偏光系のトリプルパス集光レンズでは、SOPに影響をおよぼすいかなる結合誘電体を導入しても、特に厚いセクション内で性能を損なう可能性が高い。シリコーンゲルなどの、架橋する材料は、硬化時の、または環境(たとえば、温度/湿度)における変化、および機械的応力(たとえば、ポッティング)によって誘起された誘起複屈折を有し得る。たとえば、ポリマが、平坦面および複合曲面を結合するために使用された場合、材料は均一でない厚さを有する。架橋されると、リターデーションをもたらす残留応力が存在し得る。さらに、ヘーズは、通常の接着剤セクションにおいて非常に小さい(10~100ミクロン)場合があるが、それは、ミリメートルを超える厚さのセクションにおける性能に対してかなりの影響をおよぼし得る。さらに、結合材料の厚いセクションは、かなりの重量を加え、および製造上の課題をもたらし得る。
【0048】
光学システムの機能層は、ガラスまたはポリマで構成され得る屈折または反射能に必要な複合曲面状を有し得る。前者は低い複屈折を有する場合があるが比較的重い一方、後者は軽量である場合があるが、かなりの複屈折を有する場合がある。屈折性材料の場合、光パワーは、光結合材料の使用を排除し得る光路長差から得られる。逆に、Hoppe(米国特許第6,075,651号明細書)の従来技術のシステムにおいて示されるように、反射能は埋没表面において生じ得る。基本的には、全反射アーキテクチャは、モノリシックスタック内にレンズを実現する潜在性を有しており、これは、ストレイ反射ゴーストを最小にする観点から最適であり得る。しかしこの場合もまた、SOP、画像品質、および重量に対する、さらなる誘電体材料の影響はトレードオフを生み出し得る。
【0049】
ディスプレイスタックと、レンズの入力面との間のエアスペースを必要とする偏光系のトリプルパスレンズを検討する。従来技術のシステムでは、画像光は通常、初期反射が(理想的には)消された初期部分リフレクタ透過から得られる。反射された約50%は、ディスプレイスタックフレネル反射率に比例する振幅でレンズに戻される。そして、この光は画像光と同じSOPを共用するので、それは出力に効率的に結合され、およびゴーストを引き起こす。
【0050】
図10は、仮想現実ヘッドセット20に有用な、従来技術の光学システムであって、観察者22がトリプルパスレンズを介してディスプレイ(この場合、有機発光ディスプレイ(OLED))を観察する、従来技術の光学システムを示す。偏光トレーシングを容易にするために分解図を示すが、エアスペースがディスプレイスタックとレンズとの間のみに存在しており、レンズがすべての層間の光結合を有するとみなされる。2つの偏光トレースを示す(破線で分けている)。光学構成要素のさらなる挿入損失(たとえば、偏光子および部分リフレクタの吸収)はこの解析に含まれていない。ディスプレイスタックは、併せて、バックプレーン電極から反射された周囲光を吸収するようにふるまう広帯域1/4波長(QW
0)位相子24および直線偏光子26を含み得る。LCD内には、直線ディスプレイ検光偏光子しかない場合がある。
【0051】
単位パワーの画像光が、広帯域QW位相子28(QW1)により、左回り円SOPに変換され、その50%は、部分リフレクタ30により、キャビティ内に透過させられる。(たとえば、第1と交差する)第2の広帯域QW位相子32(QW2)は、入力直線SOPを回復させる。反射型の偏光子34は、キャビティに光すべてを戻すように向けられる。この要素は、平円筒状である場合があり、または、光パワーを供給するために、複合曲面状である(たとえば、熱成形される)場合がある。QW2からのLH(左回り)円偏光は、部分リフレクタ30において、利き手の変更を経て(、右回り円偏光をもたらし)、さらに、反射時にさらなる50%損失をこうむる。キャビティのさらなる往復はよって、光を直交SOPに変換し、ここで、それは、反射型の偏光子34により、効率的に透過させられる。この光は次いで、クリーンアップ偏光子36を通過し得る。従来技術のトリプルパスレンズはよって、25%の最大効率を有する場合があり、ここで、ディスプレイに後方反射された残りの75%は(せいぜい、)ディスプレイ偏光子により、吸収される。この光の一部は、あるいは、画像のコントラストおよび全体品質を劣化させる迷光およびゴーストに寄与し得る。かなり大きな2つのディスプレイ反射ゴースト、すなわち、部分リフレクタの初期の(50%の)反射により、生み出される1つのものと、部分リフレクタを通って透過させられる(25%の)第2のパス光により、生み出される別のものが存在している。
【0052】
部分リフレクタ30により、当初戻された円偏光光の50%は、(理想的には、)QW
128により、直交直線SOPに変換され、および、偏光子26により、吸収される。この光はディスプレイにおいて熱に変換される。この項は
図10の下方トレースにおいて示す。戻り光の一部分は、QW
1の外表面によっても反射され、および、部分リフレクタ30に向けて後方反射される。この光は画像光と同じSOPを有するので、それは、観察者に向かう画像経路を効率的にたどり得る。画像光は、25%の(理想的な)振幅を有するので、関連付けられた信号対ゴーストコントラスト(SGC)は、QW
1の表面の反射率の逆数の約2倍である。良好なARコーティングは、200:1を上回るコントラストを発生し、約400:1の全体SGCを生み出し得る。
【0053】
図10の上方トレースにおいて示す部分リフレクタにより、透過する第2のパス光の25%は、QW
128の表面上にも入射する。QW
1の外表面からの反射後、この光は、画像光と同じSOPを有する。この光の半分は、部分リフレクタ30により、透過させられ、および、反射型の偏光子の透過軸に沿って偏光するQW
232から出てくる。前述と同様に、このゴーストは、QW
1の表面の反射率の逆数の2倍のSGCを有する。
【0054】
ディスプレイスタックとレンズとの間にエアスペースが必要な場合、好ましい設計は、ディスプレイ表面からの(フレネル)反射の結合を最小にする。本発明の構成では、画像光は、初期透過が(理想的には)消された初期部分リフレクタ反射から得られ得る。これには、(たとえば、)曲面状の反射型の偏光子が入力にあり、平部分リフレクタが出力にあるように、レンズを反転させることが関係する。ディスプレイは、直線SOPを出力し、これは、ディスプレイスタックを単純にするという利点を有する。さらに、レンズに対する、ディスプレイスタックの向き感受性は弱いが、それは、不適切な向きが漸増的スループット損失を表すからである。従来技術の円偏光子(すなわち、28の追加)は、出力に移動させられ、および、第1のパス光を吸収する一方で、透過のための画像光を選択するために使用される。
【0055】
本発明の
図11は、キャビティを形成する反射型の要素が逆にされた、従来技術の構成に対する代替策を示す。これは、偏光トレーシングの分解図であるが、前述したように、ディスプレイとレンズとの間にのみ、エアスペースが存在しているとみなされ得る。
図11は、本発明のトリプルパスレンズ46を介して、観察者42が電子ディスプレイシステム44を観察する光学システム40を示す。この例は、あるいは、液晶ディスプレイであり得る、前述したような、円偏光子を有する有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを示す。この場合、ディスプレイスタックは、従来技術と違って、(場合によっては、出力面上のARコーティング以外は)トリプルパスレンズ固有の要素を何ら含むものでない。
【0056】
例証的な目的で、構成要素は、ゼロ挿入損失を有するように採用されている。反射型の偏光子48(WGP)は、図の平面内で偏光する、ディスプレイからの光をキャビティ内に透過させる。ディスプレイ偏光子の向きは、非限界性を有しており、いずれの誤差も主に、漸増的スループット損失をもたらす。さらに、(たとえば、)反射型の偏光子の凸面状の基板が理由である、小複屈折の問題は、コントラストに影響をおよぼすことなく、漸増的スループット損失をもたらし得るが、それは、反射型の偏光子がSOPのクリーンアップを行うからである。ディスプレイスタックと反射型の偏光子との間の露出面からの二重反射は、関連のゴーストを比較的小さいものにするはずである。この例における広帯域1/4波長位相子50(QW1)は、偏光を左回り円に変換する。幾何学的補償器(図示せず)は、(48と50との間の)キャビティ内に配置され、これは前述した幾何学的回転、および反射型の偏光子の曲率を補償する。50:50部分リフレクタ52は入射光の半分を透過させる。残りの50%は、部分リフレクタから反射し、ならびに、右回り円に、および、その後、画像光に変換される。この例では、反射型の偏光子が曲面状であり、および、部分リフレクタが平坦であるが、一方または両方のリフレクタ面が曲面状であり得る。しかし、特定の構成は、エアスペースを除去するために偏光光学系(たとえば、QW2)の熱成形を利用する場合もある。
【0057】
この例における1/4波長位相子54(QW2)は、遅相軸であって、QW1のそれに垂直である遅相軸を有しており、よって、QW2を通過した後、元の直線SOPが回復させられる。部分リフレクタ52により、透過する第1のパス光は、直線偏光子56により、実質的に吸収され、吸収軸は図の平面内にある。これは、通常、従来技術システムでは、ディスプレイに後方反射し、ディスプレイスタックの出口面からゴーストをもたらす項である。部分リフレクタ52とQW254との間のエアスペースは、従来技術のシステムに関連付けられたものと同様な戻り光(η/4)の振幅を有する項をもたらすが、ここでは光学的に結合することが仮定される。
【0058】
部分リフレクタ52により、反射された50%は、QW1の第2のパスを行い、これは、図に対して垂直に偏光させられて、直線にSOPを変換する。この光は反射型の偏光子48から反射する。QW1の第3のパス後、SOPがもう一度、右回り円偏光させられ、部分リフレクタの第2の反射後、利き手が逆にされる。この25%は、QW1の第4のパス後、反射型の偏光子の透過軸に対して平行に偏光させられて、直線SOPに変換される。この光の大半は、ディスプレイ内に透過させられるが、一部分(反射率η)はディスプレイスタックから反射し、および、もう一度、反射型の偏光子を通過する。パス5~7については、偏光トレースはパス1~3と同じであり、ゴーストは、キャビティを出ると、振幅がη/16に減らされる。他の層すべての間の屈折率整合を前提とすれば、これは、最も重要なフレネルゴースト項(ディスプレイ反射率の逆数の4倍のSGC)であり、および、従来技術のシステムのディスプレイ反射ゴーストよりも脱焦させられている場合がある。
【0059】
従来技術に対して、本発明の実施例の製造プロセス上の利点が存在し得る。まず、ディスプレイスタックは、いかなる特殊材料(たとえば、QW)も導入することなく、ディスプレイ製造業者により、従来の手法で製造され得る。ディスプレイ出口面に対してARコーティングを加えることはごく標準的である。第2に、複合曲面状の反射型の偏光子は、スタンドアロン型構成要素として製造され得る。それは、熱成形され、および、次いで、インサート成形され、機械的支持基板が凸面に取り付けられ得る。ARコーティングは、反射型の偏光子の片/両面に施され得る。外部支持基板における複屈折の問題はコントラストの観点からは比較的瑣末であり、スループットにおける漸増的な損失をもたらすに過ぎない。第3に、偏光光学系スタックのシート規模の製造、およびそれに続くシンギュレーションが行われ得る。たとえば、一製造過程は以下のようなものであり得る。(1)別個のQW1およびQW2スタックを積層する、(2)偏光子をQW2に積層する、(3)QW1を部分リフレクタに積層する、(4)部分リフレクタに(QW2および偏光子を)積層する、(5)レンズを個片化し、および接合する。ステップ(2)は、反射型の偏光子に対する、完成スタックのアラインメントと同様に、重要な、向きのアラインメントを表す。後者は、最終的な光学アラインメントとして行われ得る。部分リフレクタは、機械的支持を加え、および無視できる複屈折をもたらす、セル鋳造アクリルなどの等方性基板上に製造され得る。幾何学的補償器が、形成された反射型の偏光子により、もたらされる幾何学的回転を管理するためにQW1の入力に追加され得る。
【0060】
漸増的反射およびヘーズ
個々に小さい、迷光の原因の多くは併せて、視覚体験の品質を制限し得る。基板における小さな特徴(内部/界面)、および積層接着剤からのランダムな散乱、ならびに、不適切な屈折率整合による漸増的反射は、黒色のコントラストを制限し、および色の彩度を低下させる背景光をもたらし得る。それは、暗領域内深くへの、明るい状態のしみだし光により、画像鮮鋭度を制限するベイリンググレアをもたらす場合もある。
【0061】
パンチャラトナム的なスタックが、直線および円偏光間で後方/前方変換するために使用される場合を検討する。COPスタック(n=1.52)が、圧力感応接着剤(n=1.46)により、組立てられた場合、単一の界面の反射率は約0.04%である。入力円偏光子、および等方性基板を備えたCプレートを含む
図4の場合、12の界面が存在し得る。一度レンズ内に入ると、3つのパスを有する、さらなる10の界面である、合計30の界面が存在している場合がある。42の界面について効果を現す、反射における総パワーは、最大1.7%である場合があり、これは、全体的なコントラストを極度に制限し得る。ポリカーボネート(n=1.59)では、この反射ははるかに大きい場合がある。
【0062】
本発明の例示的な構造では、(類似している)位相子層間の界面が、屈折率整合接着剤または溶剤接着により、除去される。さらに、高屈折率接着剤(たとえば、ウレタンまたはウレタンアクリレート)が、ガラス対位相子、偏光子対位相子(TAC対COP)、および位相子対ガラスなどの異なる基板を事実上整合させ得る。あるいは、化学的グラフト化が、異なる基板を接合するために、TACへのPVAの取り付けのものと同様に、使用され得る。1つの課題には、RM Cプレートとの屈折率整合が関係する。
【国際調査報告】