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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】放射線を監視するための方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/60 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
G01J5/60 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501016
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020070275
(87)【国際公開番号】W WO2021013722
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19187373.6
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ホース,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エグェン,セラル モハン
(72)【発明者】
【氏名】ゼント,ロベルト
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AA04
2G066AC20
2G066BA11
2G066BA12
(57)【要約】
本発明は、具体的に熱放射源の発光スペクトルを決定するために、可視および赤外線スペクトル範囲内の熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線(112)を監視するための方法および装置(110)に関する。本発明の方法は、以下の工程を含む:
a)放射線放出要素を含む熱放射源を提供する工程。ここで、放射線放出要素は、監視されるべき放射線(112)を放出し、ここで、放射線放出要素は、白熱灯(116)のワイヤーフィラメント(114)または熱赤外線エミッターの放射表面を含む。
b)少なくとも1つの放射線感受性要素(124)を提供する工程。ここで、放射線感受性要素(124)は、放射線放出要素によって放出される放射線(112)を測定するために指定される。
c)少なくとも2つの個別の波長で放射線放出要素によって放出される放射線(112)のスペクトル放射輝度を測定する工程。および
d)少なくとも2つの個別の波長での放射線(112)のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって、放射線放出要素の放出温度を決定する工程。
ここで、温度の関数としての2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値の比は、1000Kから4000Kの温度範囲内の2次の多項式関数(158)を使用することによって概算される。
この方法および装置(110)は、熱放射源の動作モードを監視するために、特に熱放射源が照明源として使用される可視および赤外線スペクトル範囲での分光学的用途において使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線(112)を監視するための方法であって、この方法は、以下の工程:
a) 放射線放出要素を含む熱放射源を提供する工程であって、前記放射線放出要素は、監視されるべき放射線(112)を放出し、前記放射線放出要素は、白熱灯(116)のワイヤーフィラメント(114)または熱赤外線エミッターの放射線放出表面を含む工程;
b) 少なくとも1つの放射線感受性要素(124)を提供する工程であって、前記放射線感受性要素(124)は、前記放射線放出要素によって放出される放射線(112)を測定するために指定される工程;
c) 少なくとも2つの個別の波長で前記放射線放出要素によって放出される前記放射線(112)のスペクトル放射輝度を測定する工程;および
d) 少なくとも2つの個別の波長での前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって、前記放射線放出要素の放出温度を決定する工程、を含み、
温度の関数としての2つの個別の波長の前記スペクトル放射輝度の測定値の前記比は、1000Kから4000Kの温度範囲内の二次の多項式関数(158)を使用することによって概算される、方法。
【請求項2】
少なくとも2つの個別の波長での前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度が、前記放射線放出要素によって放出される前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度と前記放射線放出要素の前記放出温度との関係を提供するプランクの法則の使用によって評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線放出要素の前記放出温度は、少なくとも2つの個別の波長での前記スペクトル放射輝度の測定値を比較することによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2つの個別の波長での前記スペクトル放射輝度の測定値の比が、2つの個別の波長での前記スペクトル放射輝度の測定値の商である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スペクトル放射輝度が測定される第1の波長が視覚スペクトル範囲から選択され、前記スペクトル放射輝度が測定される第2の波長が近赤外線範囲から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの個別の波長での前記放射線感受性要素(124)の相対スペクトル感度が、少なくとも2つの個別の波長での前記放射線のスペクトル放射輝度を評価するときにさらに考慮される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線放出要素によって放出される前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度が単一波長で測定され、前記放射線放出要素の前記放出温度が、前記単一波長に対する前記スペクトル放射輝度の測定値を、前記単一波長に対する前記スペクトル放射輝度の既知の値と比較することにより決定され、前記スペクトル放射輝度の前記既知の値は前記放射線感受性要素(124)の較正で得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線放出要素の既知の放出温度を有する既知の熱放射源が、前記放射線感受性要素(124)の較正に使用され、前記放射線放出要素によって放出される前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度の測定は、前記放射線感受性要素要素(124)の較正が実行されるのと同じ制御された環境で実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線(112)を監視するための装置(110)であって、前記放射線放出要素は、白熱灯(116)のワイヤーフィラメント(114)または熱赤外線エミッターの放射線放出表面を含み、前記装置(110)は、
- 少なくとも1つの放射線感受性要素(124)および
- 評価装置(130)を含み、
前記放射線感受性要素(124)は、少なくとも2つの個別の波長で前記熱放射源の前記放射線放出要素によって放出される放射線(112)を測定するために指定され、
前記評価装置(130)は、少なくとも2つの個別の波長で前記放射線(112)のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって前記放射線放出要素の放射温度を決定するために指定され、
温度の関数としての2つの個別の前記スペクトル放射輝度の測定値の比は、1000Kから4000Kの温度範囲内の2次の多項式関数(158)を使用することによって概算される。
【請求項11】
前記評価装置(130)は、前記放射線放出要素により放出される放射線(112)の前記スペクトル放射輝度と前記放射線放出要素の放射温度との関係を提供するプランクの法則を使用することで、少なくとも1つの波長での前記放射線(112)の前記スペクトル放射輝度を評価するように指定されている、請求項10に記載の装置(110)。
【請求項12】
前記放射線感受性要素(124)が少なくとも1つのセンサー領域(128)を有する放射センサー(126)を含み、前記センサー領域(128)が放射線感受性材料を含み、前記放射線感受性材料は、シリコン、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムヒ素(InAs)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、アンチモン化インジウム(InSb)、およびテルル化水銀カドミウム(MCT、HgCdTe)から選択される、請求項10または11に記載の装置(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱放射源の発光スペクトルを決定するために、可視および赤外線スペクトル範囲内で熱放射源、特に白熱ランプまたは熱赤外線エミッターによって放出される放射線を監視するための方法および装置に関する。本発明は、さらに、方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。この方法、コンピュータプログラム製品、および装置は、熱放射源の様々な動作モードを監視するために、具体的に分光学的用途において、特に、熱放射源が照明源としてこの好ましく使用される可能性がある可視および赤外線スペクトル範囲において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
可視および赤外線スペクトル範囲内の光など、放射線を監視するための様々な方法および装置が知られており、特に、白熱灯を構成するワイヤーフィラメントの発光スペクトルの決定に使用されている。本明細書において、フィラメント温度は、典型的には、2000から3300Kの範囲であり、したがって、主に可視および赤外線スペクトル範囲内にある発光をもたらす。さらに、これらの方法および装置は、他の熱放射源、特に熱赤外線エミッターの放射線を監視するためにも使用することができる。
【0003】
以下では「ランプ」とも略される白熱ランプは、特に広い波長範囲にわたって赤外光の放出を示すため、今日、通常、赤外分光計のサンプル照明で使用されている。別の方法として、熱赤外線エミッターをこの目的に使用することができる。近似として、熱放射源から放出される放射線は、プランクの黒体放射の法則を使用して合理的に推定できる。本明細書において、以下により詳細に説明されるプランクの法則によって与えられる温度Tは、白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射放出面などの熱放射源の放射線放出要素の温度に対応する。しかしながら、放射線放出要素の温度は、さらに、外気温、電池の状態、寿命、全体的な使用時間、動作からの時間、または熱放射源の製造の詳細を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存し得る。したがって、一般に、熱放射源を操作するために使用される電流または電圧を単に制御することによって、あるいは熱放射源の輝度を測定することによって、熱放射源の実際の放出を制御することは簡単ではない。
【0004】
一般に、バックグラウンドスペクトルと見なすことができる熱放射源の発光スペクトルは、対象のスペクトルを記録する前に記録される。この種の手順により、熱放射源の発光の変化を補正することができる。この目的のために、白熱灯を操作するために使用される電流および電圧を測定して、ランプ、具体的に、典型的にはタングステンを含むワイヤーフィラメントの抵抗Rを決定することができる。金属ワイヤーフィラメントの抵抗Rは、式(1)で次のように表されるように、温度Tの非線形関数で近似できるためである。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、R0は室温での抵抗を指し、ΔT = T-T0であり、ここでT0は室温に等しく、αおよびβはワイヤーフィラメントに含まれるワイヤ材料の係数であり、温度Tはこの方法で決定することができる。それにもかかわらず、係数αおよびβを決定するために較正手順が必要である。ここでは、特に較正手順の品質と精度に影響を与える、室温T0でのランプの抵抗R0を見つけるために特別な注意が必要である。電流と電圧の測定に関する小さな誤差でさえ、この方法で決定されるように温度Tの大きな変動をもたらす可能性がある。さらに、特にランプの動作中のタングステンの蒸発によるワイヤーフィラメントの変化は、ランプ内のワイヤーフィラメントの温度Tの決定においてシステマティックなエラーを引き起こす可能性がある。同様の考慮事項が熱赤外線エミッターにも当てはまる。
【0007】
少なくとも1つの波長での放射線のスペクトル放射輝度を評価することによって放射線放出要素の放出温度を決定することを含む、熱放射源によって放出される放射線を監視するための方法および装置は、以下に開示されている。
【0008】
Raytek: "Filament Control - Function Test of the Filament Light Bulb", Raytek Application Note, 2009, available via http://www.appliedmc.com/content/images/RaytekAN19_Glass_Glass_Filament_ RevB.pdf; DE 10 2012 112 412 A1; Far Associates: "Tungsten Filament Emissivity Behavior", 2006, http://pyrometry.com/farassociates_tungstenfilaments.pdfより入手可能; Vittorio Zanetti: "Temperature of incandescent lamps", Am. J. Phys. 53(6), 1985, pp. 546-548; Zdenek Navratil et al: "Study of Planck law with a small USB grating spectrometer, Phys. Education, Inst. Phys. Publishing 48(3), 2013, pp. 289-297; Javier E. Hasbun: "Simple experiments and modeling of incandescent lamp spectra", Georgia Journal of Science 73(2-4), 2015, pp. 160-168; and Lechner W. et al.: "Temperature measurement of filaments above 2500K applying two-wavelength pyrometry", DATABASE INSPEC [Online], Database accession no. 860213, & TEMPERATURE MEASUREMENT, 1975, pp. 297-305.
【0009】
さらに、Arnaud J. Onnink et al.: "How hot is the wire: Optical, electrical, and combined methods to determine filament temperature", Thin Solid Films 67(4), 01.03.2019, pp. 22-32に開示されており、ここで分光器は、2つの検出器を有し、1つは可視領域の、1つはNIR領域のものであり、検出器は、InGaAsダイオードアレイおよび単一チャネルの高温計を含んでいる。
【0010】
さらに、Senkov A.G. et al.: "Reduction of methodological errors in determining the temperature of metals by two-color pyrometers", J. Engineering Physics & Thermophysics 79(4), 2006, pp. 768-772; Madruga F. J. et al.: "Error Estimation in a Fiber-Optic Dual Waveband Ratio Pyrometer", IEEE Sensors Journal 4(3), 2004, pp. 288-293; Mueller B et al.: "Development of a fast fiber-optic two-color pyrometer for the temperature measurement of surfaces with varying emissivities", Rev. Sc. Instr. 72(8), 2001, pp. 3366-3374; Igor Bonefacic et al.: "Two-color temperature measurement method using BPW34 PIN photodiodes", Eng. Rev. 35(3), 2015, pp. 259-266; and "Theory and Practice of Radiation Thermometry", Chapter 13: “Tungsten Ribbon Lamps”, pp. 773-779, 1988に本願に関する背景情報が開示されている。
【0011】
上記の方法および装置によって暗示される利点にもかかわらず、簡単さや費用効果に関して、および放射線、特に熱放射源、特に可視および赤外線スペクトルの範囲内で、具体的に分光学的用途でバックグラウンドスペクトルとして使用できる熱放射源の発光スペクトルを決定するための白熱灯または熱赤外線エミッターにより放出される放射線を監視するための信頼できる方法および装置に関してまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明によって対処される問題は、放射線を監視するための方法および装置、ならびに方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品を明示することであり、これは、このタイプの既知の装置および方法の欠点を少なくとも実質的に回避する。
【0013】
特に、本方法および装置は、可視および赤外線スペクトル範囲内で、具体的に、熱放射源の発光スペクトルを決定するため、特に、具体的に可視および赤外線スペクトル範囲の少なくとも一部をカバーする分光学的用途で熱放射源のさまざまな動作モードを監視するために、熱放射源、特に、白熱灯および熱赤外線エミッターにより放出される放射線を監視できることが望ましい。
【0014】
より特別には、放出を安定かつ再現可能な方法で維持するために、熱放射源の放出を監視することができることが望ましい。さらに、高い再現性と装置の独立性が望ましく、これにより、具体的に、分光学的用途で得られた記録データの品質と信頼性を向上させるために、異なる装置間の転送が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、独立特許請求項に記載の特徴を備えた発明によって解決される。個別にまたは組み合わせて実現することができる本発明の有利な開発は、従属請求項および/または以下の明細書および詳細な実施形態に示されている。
【0016】
本明細書で使用される場合、「持つ」、「有する」および「含む」という表現、ならびにそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、「AはBを持つ」という表現、ならびに「AはBを有する」または「AはBを含む」という表現は両方とも、Bに加えて、Aが1つまたは複数のさらなる成分および/または構成要素を含むという事実、および、B以外にAに他のコンポーネント、構成要素、または要素が存在しない場合の両方を指す。
【0017】
本発明の第1の態様では、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための方法が開示される。本明細書に開示される方法は、以下の工程を含み、これらは、好ましくは、所与の順序で実行され得る。さらに、ここにリストされていない追加の工程を提供することができる。特に明記されていない限り、工程のいずれかまたはすべてを少なくとも部分的に同時に実行することができる。さらに、工程のいずれかまたはすべては、繰り返される方法などで、2回または2回を超えて実行され得る。
【0018】
本発明による方法は、以下の工程を含む。
a)放射線放出要素を含む熱放射源を提供する工程。ここで、放射線放出要素は、監視される放射線を放出し、ここで、放射線放出要素は、白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射線放出表面を含む。
b)少なくとも1つの放射線感受性要素を提供する工程。ここで、放射線感受性要素は、放射線放出要素による放射線を測定するために指定される。
c)少なくとも2つの個別の波長で放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度を測定する工程。および
d)少なくとも2つの個別の波長での放射線のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって、放射線放出要素の放出温度を決定する工程。
【0019】
工程a)によれば、熱放射源が提供され、ここで、放射線放出要素は、監視される放射線を放出する。本明細書で使用される場合、「熱放射源」という用語は、特に少なくとも可視および赤外線スペクトル範囲の分割において、熱プロセスにおいて放射線放出要素によって放射線を放出するように構成される源を指す。特に、熱放射源は、白熱灯または熱赤外線エミッターから選択することができる。一般的に使用されるように、「白熱灯」、「白熱電球」または「白熱ライトグローブ」という用語は、バルブ、特にガラスまたは溶融石英によって閉じ込められた体積を有するデバイスに関する。ここで、ワイヤーフィラメントは、具体的には、タングステンを含み、好ましくは不活性ガスで満たされているか、または真空を含む体積内に放射線放出要素として配置され、そこでそれは監視される放射線を放出する。さらに使用される場合、「熱赤外線エミッター」という用語は、監視される放射線を放出する放射線放出要素として放射線放出表面を含む、微細加工された熱放出デバイスを指す。例として、熱赤外線エミッターは、“emirs50”という名でAxetris AG, Schwarzenbergstrasse 10, CH-6056 Kaegiswil, Switzerlandから、“thermal infrared emitters”としてLASER COMPONENTS GmbH, Werner-von-Siemens-Str. 15 82140 Olching, Germanyから、または“infra-red emitters”としてHawkeye Technologies, 181 Research Drive #8, Milford CT 06460, United Statesから入手可能である。しかしながら、さらなるタイプの熱赤外線エミッターもまた実現可能であるかもしれない。本明細書において、放射線放出要素、すなわち白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射線放出表面は、それらの加熱がかなりの量の電磁放射線をもたらすように電流によって衝突されるように指定される。本明細書で使用される場合、「放射線」という用語は、放出された光子の波長がかなり広いスペクトル範囲、具体的には、可視スペクトル範囲、特に近赤外線(NIR)スペクトル範囲をカバーするように、加熱された放射線放出要素、特に加熱されたワイヤーフィラメントまたは放射線放出表面による光子の放出を指す。一般的に使用されているように、可視スペクトル範囲は380nmから780nmの波長をカバーし、NIRスペクトル範囲は780nmから1400nmの波長をカバーする。
【0020】
本明細書でさらに使用される場合、「監視」という用語は、ユーザの操作なしに連続的に取得されたデータから所望の情報を導出する工程を指し、「測定」という用語は、ユーザの操作なしにデータを連続的に取得する工程に関する。この目的のために、複数の測定信号が生成および評価され、そこから所望の情報が決定される。本明細書では、複数の測定信号は、固定または可変の時間間隔内で、あるいは、代替的にまたは追加で、少なくとも1つの事前に指定されたイベントの発生時に記録および/または評価され得る。特に、本発明による方法は、具体的に熱照射源が照明源として好ましく使用される分光学的用途において、熱放射源、具体的に白熱灯または熱赤外線エミッターの動作モードに関連するパラメータを連続的に決定するように指定される。
【0021】
工程b)によれば、少なくとも1つの放射線感受性要素が提供され、ここで放射線感受性要素は、放射線を測定するために指定される。本明細書で使用される場合、「放射線感受性要素」は、一般に、放射線感受性要素またはその一部による放射の受信に依存する方法で少なくとも1つのセンサー信号を生成するように指定されたデバイスである。一例として、センサー信号は、デジタルおよび/またはアナログ信号であり得るか、またはそれらを含み得る。一例として、センサー信号は、電圧信号および/または電流信号であり得るか、またはそれらを含み得る。追加的または代替的に、センサー信号は、デジタルデータであり得るか、またはそれを含み得る。センサー信号は、単一の信号値および/または一連の信号値を含み得る。センサー信号は、2つ以上の信号を平均化することによって、および/または2つ以上の信号の商を形成することによってなど、2つ以上の個々の信号を組み合わせることによって導出される任意の信号をさらに含み得る。
【0022】
本明細書において、放射線感受性要素は、好ましくは、センサー領域を有する放射線センサーから選択され得る。本明細書で使用される場合、「センサー領域」は、少なくとも1つのセンサー信号の生成がトリガーされ得る方法で、放射線放出要素によって生成された放射線を受信するように指定された放射線センサーの一部と見なされる。ここで、センサー信号の生成は、センサー信号とセンサー領域の照明の方法との間の定義された関係によって支配され得る。一般に、センサー領域は、均一なセンサー領域であり得るか、または代替として、複数の放射線感受性ピクセルに分割され得る放射線感受性アレイを含み得る。特定の実施形態では、放射線感受性要素は、電子デバイス、特にスマートフォンまたはタブレットなどの電子通信ユニットによって構成され得る。例として、スマートフォンは、典型的にはカメラとしておよび/またはディスプレイ制御のために使用される1つまたは複数の放射線感受性要素を含み得る。代替の実施形態では、放射線感受性アレイは、分光計デバイスで使用されている分光計ピクセルアレイによって提供され得、分光計ピクセルアレイの少なくとも2つの放射線感受性ピクセルがセンサー領域を構成し得る。この特定の実施形態では、分光計ピクセルアレイのエッジに位置するピクセルは、好ましくは、特に、この目的のために使用されるピクセル間の最大スペクトル距離を得るために、センサー領域として使用され得る。ただし、さらなるアレンジメントも可能である。
【0023】
したがって、センサー信号は、放射線によるセンサー領域の照明に依存する方法で生成することができ、センサー信号は、センサー領域を照明する入射放射線のスペクトル放射輝度を示す任意の信号であり得る。照明時にセンサー信号を生成する目的で、センサー領域は放射線感受性材料を含み、放射線感受性材料は、特に最大1μmの入射波長に対して、好ましくはシリコンから選択され得る。あるいは、1μmを超える入射波長の場合、特に2.6μmまでの入射波長の場合、放射線感受性材料はインジウムガリウムヒ素(InGaAs)、特に3.1μmまでの入射波長の場合、インジウムヒ素(InAs)、特に3.5μmまでの入射波長の場合、硫化鉛(PbS)、特に入射波長5μmまでの入射波長の場合、セレン化鉛(PbSe)、特に5.5μmまでの入射波長の場合、アンチモン化インジウム(InSb)、特に16μmまでの入射波長の場合、テルル化水銀カドミウム(MCT、HgCdTe)から選択され得る。しかしながら、さらなる種類の材料も考えられる。
【0024】
工程c)によれば、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度は、少なくとも2つの個々の波長で測定される。本明細書で使用される場合、「スペクトル放射輝度」という用語は、単位立体角、単位面積、および波長ごとの熱放射源によって構成される放射線放出要素によって放出される放射線束を指す。結果として、スペクトル放射輝度は、特定の角度から放射線放出要素を見て、放射線放出要素によって放出された電力のどれだけが、放射線感受性要素によって特定の波長で実際に受け取られることができるかを示す。したがって、スペクトル放射輝度は、放射線放出要素によって放出される放射線束の「強度」という用語によって表すこともできる。
【0025】
さらに、他のボディと同様に、放射線放出要素の表面は、自発的かつ連続的に電磁放射線を放出し、放射線放出要素のスペクトル放射輝度は、異なる放射波長で放射線放出要素によって放出されるエネルギーの量に関係する。プランクの法則に従って、放射線放出要素の単位Kの放出温度Tでの波長λに対する放射線放出要素のスペクトル放射輝度Bλは、式(2)によって次のように定義される。
【0026】
【数2】
【0027】
ここで、hはプランク定数、cは光速、kBはボルツマン定数である。したがって、プランクの法則は、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度Bλと放射線放出要素の放出温度との間の関係を提供する。
【0028】
プランクの法則は、厳密に言えば実際には存在しない完全な黒体の放出に基づいているが、たとえば、熱放射源の放射線放出要素、特に白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射表面によって、実際にはこれにより正確に近似することができる。プランクの法則の結果として、放射線放出要素のスペクトル放射輝度Bλは、放射線の波長λと放射線放出要素の温度Tにのみ依存する。波長が長くなると、式(2)による放射線放出要素のスペクトル放射輝度の曲線は、一般に知られているように、立ち上がりエッジ、続いてピーク、続いて立ち下がりエッジを示す。
【0029】
特定の実施形態では、放射線のスペクトル放射輝度は、波長[λ1、λ2]の少なくとも1つの選択された範囲内で放射線を放出するように指定された特定の熱放射源によって提供され得る波長[λ1、λ2]の少なくとも1つの選択された範囲内で測定することができる。この目的のために、少なくとも1つのフィルター、具体的には、バンドパスフィルターなどの吸収フィルター、または代替として、フォトニック結晶を使用することができる。一例として、白熱灯のワイヤーフィラメントの前にバンドパスフィルターを配置することができる。あるいは、フォトニック結晶を、熱赤外線エミッターの放射線放出面の前に配置することができる。一般的に使用されるように、「フォトニック結晶」という用語は、特に少なくとも1つの許可されないエネルギーバンドが生成され得る様式で、ナノ構造内の光子の伝播に影響を与えるように設計された周期的光学ナノ構造を指す。ここで、光子の伝播は抑制される。その結果、フォトニック結晶は、許可されていないエネルギーバンド内の波長のフィルターとして機能することができる。ただし、この目的に使用できる別の種類のフィルターも考えられる。
【0030】
したがって、工程d)によれば、熱放射源に含まれる放射線放出要素の放出温度と見なすことができるK単位の温度Tは、波長λで放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度Bλを評価することによって決定することができる。その結果、較正されたセンサーを使用した所与の波長での単一の強度測定は、原則として、放射線放出要素の温度を決定するためにすでに十分である。
【0031】
したがって、放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度を単一の波長で測定することができる実施形態では、放射線放出要素の放出温度は、単一波長のスペクトル放射輝度の測定値を単一波長のスペクトル放射輝度の既知の値と比較することによって決定することができる。本明細書において、スペクトル放射輝度の既知の値は、特に、放射線感受性要素の較正において得られ、ここで、較正は、好ましくは、測定を実行する前に実行され得る。ただし、異なるシーケンスも実行可能である。この目的のために、既知の熱放射源、特に白熱灯のワイヤーフィラメントまたは放射線放出面をそれぞれ有する、既知の白熱灯又は既知の熱赤外線エミッターは、放射線感受性要素の較正に個々に使用できる。
【0032】
特定の実施形態では、放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度の測定は、放射線感受性要素の較正が実行されるのと同じ制御された環境で実行され得、具体的には、先行する放射線感受性要素が実行される。好ましくは、較正は、較正エラーを可能な限り回避するために、一定の周囲条件下で制御された環境で実行される。さらに、放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度の測定は、同じ制御された環境で実行することができ、これは、特に、較正データからのドリフト、その結果としての測定誤差を回避するために、検出器の温度などの検出器条件を含むがこれらに限定されない。一例として、ワイヤーフィラメントから電球の内面への金属の蒸発による白熱灯の黒化は、ワイヤーフィラメントの放出温度の決定においてエラーをもたらす可能性がある。ただし、較正データのドリフトの可能性についてのさらなる理由も考えられる。
【0033】
本発明によれば、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度は、2つ以上の個別の波長、好ましくは、互いに異なる2つの個別の波長で測定される。上に示したように、2つの個別の波長は、少なくとも1つの選択された波長範囲[λ1、λ2]から選択され得る。特に好ましい実施形態では、スペクトル放射輝度を測定できる第1の波長λ1は、したがって、スペクトル放射輝度曲線の立ち上がりエッジから、好ましくは視覚スペクトル範囲内で、特に500nmから600nmの波長から選択することができる。一方、スペクトル放射輝度を測定できる第2の波長λ2も、スペクトル放射輝度曲線の立ち下がりエッジから、好ましくは近赤外スペクトル範囲内、特に800nmから1000の波長から選択することができる。ここで、一般に、第1の波長と第2の波長との間のより大きな差は、放射線放出要素の放出温度の決定の精度の向上に寄与する可能性があるため、好ましい場合がある。ここで、曲線の勾配の増加は、温度決定の精度の増加をもたらす可能性がある。さらに、安定した簡単にアクセスできるシリコン検出器を、選択した両方のスペクトル範囲に使用することができる。しかし、スペクトル放射輝度を測定できるさらなる波長も実現可能である。
【0034】
放射線放出要素の温度を決定するために、2つ以上の個別の波長で放射線放出要素の放射線のスペクトル放射輝度を測定することは、様々な利点を示す。実際のセットアップでは、さまざまな外部衝撃、特にワイヤーフィラメントの抵抗の変化やワイヤーフィラメントからの金属の蒸発により、単一波長を使用した場合の測定が悪化する可能性があるが、ワイヤーフィラメントの温度の決定は、測定が少なくとも2つの異なる波長で実行されると、より安定することが実証されている。
【0035】
したがって、熱放射源の放射線放出要素の放出温度は、好ましくは、スペクトル放射輝度が測定された2つ以上の個別の波長λ1、λ2、…のスペクトル放射輝度の測定値を比較することによって決定することができる。外部からの衝撃をさらに低減するために、熱放射源の放射線放出要素の放出温度は、個々の波長λ1、λ2の2つのスペクトル放射輝度の測定値の比率、特に2つの個々の波長λ1、λ2のスペクトル放射輝度の測定値の商を提供することで決定することができる。2つの異なる波長λ1、λ2に対して上記の式(2)を使用すると、次のように式(3)に従って商を決定することができる。
【0036】
【数3】
【0037】
商生成の結果として、商
【数4】
は、放射線の2つの異なる波長λ1、λ2と放射線放出要素の放出温度Tにのみ依存する。したがって、商の結果としてほとんどの外部からの衝撃がキャンセルされるため、較正に関する労力を大幅に減らすことができる。
【0038】
特定の実施形態では、選択された波長での放射線感受性要素の相対スペクトル感度は、それぞれの波長での放射線のスペクトル放射輝度を評価するときにさらに考慮に入れることができ、それによって測定の精度をさらに高める。この目的のために、放射線感受性要素のスペクトル感度は、好ましくは、2つの個別の波長λ1、λ2に亘って、合計または加重積分を使用するか、またはそれぞれの波長λ1、λ2で較正測定を実行することによって、式(3)に組み込むことができる。
【0039】
それでも、式(3)による関数は、解析的にインバート(invert)できない超越関数である。しかしながら、放射線放出要素のTの関数としての2つの個別の波長λ1、λ2のスペクトル放射輝度の測定値の比は、特にλ1、λ2の個々の波長および熱放射源で使用される放射線放出要素に適用可能な温度を含む特定の温度範囲の特定の値について、代数関数を使用することによって概算することができる。好ましくは、代数関数は、多項式関数から選択することができ、ここで、多項式関数は、具体的に、4次以下の多項式関数であり得る。さらに、多項式関数は、選択された温度範囲内、特に1000Kから4000Kの温度範囲内で2次の多項式関数からでさえ選択することができることを以下のように示すことができる。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本明細書の他の場所に記載されているように、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品に言及する。
【0041】
特に、実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品は、電子デバイス、特に電子通信ユニット、具体的にはスマートフォンまたはタブレット、または分光計デバイスに完全にまたは部分的に統合することができる。本明細書において、それは、カメラとしての使用のために、および/またはディスプレイ制御のために、スマートフォンに既に含まれている放射線感受性要素と、様々な目的のためにスマートフォンにすでに含まれているデータ処理デバイスとの関係で方法を実行することができる。一例として、この方法は、この目的のために、スマートフォン上で「アプリ」とも呼ばれるアプリケーションとして実行され得る。あるいは、コンピュータプログラム製品は、分光計ピクセルアレイおよびデータ処理デバイスの両方がすでに分光計装置に含まれている関係でこの方法を実行することができる場合がある。さらに、さらなる種類の電子デバイスも考えられる。
【0042】
本発明のさらなる態様において、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するためのデバイスであって、放射線放出要素は、白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射線放出面を含む装置が開示されている。本発明によれば、装置は以下を含む。
【0043】
- 少なくとも1つの放射線感受性要素。ここで、放射線感受性要素は、少なくとも2つの個別の波長で熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を測定するために指定されている。および
- 評価装置。ここで、評価装置は、少なくとも2つの個別の波長での放射線のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって、熱放射源の放射線放出要素の放出温度を決定するために指定される。温度の関数としての2つの個々の波長のスペクトル放射輝度の測定値の比率は、1000Kから4000Kの温度範囲内で2次の多項式関数を使用して概算される。
【0044】
本明細書において、リストされた構成要素は、別個の構成要素であり得る。あるいは、2つ以上のコンポーネントを1つのコンポーネントに統合することもできる。さらに、評価装置は、放射線感受性要素から独立した別個の評価装置として提供され得るが、好ましくは、センサー信号を受信するために放射線感受性要素に接続され得る。あるいは、少なくとも1つの評価装置は、放射線感受性要素または評価装置に完全にまたは部分的に統合され得、放射線感受性要素は、電子装置、特にスマートフォンまたはタブレットなどの電子通信ユニットに共同で統合することができる。しかしながら、さらなる種類の電子デバイスも考えられる。以下により詳細に説明されるさらなる代替として、デバイスは、分光計装置に統合され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「評価装置」という用語は、一般に、測定データに基づいて情報の項目を生成するために設計された任意の装置を指す。より具体的には、本発明による評価装置は、1つまたは複数の波長での放射線放出要素の放射のスペクトル放射輝度に関連する測定データを評価することによって、放射線放出要素の放出温度Tを決定するために指定される。ここで、測定データは、少なくとも1つの放射線感受性要素によって取得され、評価装置に転送される。この目的のために、評価デバイスは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または1つまたは複数のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、および/または1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、および/または1つまたは複数のコンピュータ、好ましくは1つまたは複数のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラなどの1つ又は複数のデータ処理デバイスなどの1つまたは複数の集積回路であり得るか、またはそれらを含み得る。センサー信号を受信および/または前処理するための1つまたは複数のデバイス、例えば1つまたは複数のADコンバーターおよび/または1つまたは複数のフィルターなどの追加の要素を含むことができる。さらに、評価装置は、1つまたは複数のデータ記憶装置を含み得る。さらに、上で概説したように、評価デバイスは、1つまたは複数の無線インターフェースおよび/または1つまたは複数の有線インターフェースなどの1つまたは複数のインターフェースを備え得る。さらに、上で概説したように、様々な目的のためにスマートフォンにすでに含まれているデータ処理デバイスを評価装置として使用することができる。上でさらに概説したように、分光計装置によってすでに含まれているようなデータ処理装置もまた、評価装置として使用することができる。
【0046】
本発明のさらなる態様において、分光計装置が開示される。本発明によれば、分光計装置は以下を含む。
【0047】
- 照明源。ここで、照明源は、物体のスペクトルを記録するために物体を照明するために指定されている。
- 複数の放射線感受性ピクセルを含む分光計ピクセルアレイ。ここで、分光計ピクセルアレイは、少なくとも1つのピクセルセンサー信号を生成することによって物体のスペクトルを記録するように指定されている。
- 分光計評価装置。ここで、分光計評価装置は、少なくとも1つのピクセルセンサー信号から物体のスペクトルを決定するために指定されている。
【0048】
ここで、照明源は、物体を照明するための放射線を放出するための放射線放出要素を有する熱放射源を含み、放射線放出要素は、白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射線放出面を含み、
ここで、放射線感受性ピクセルの少なくとも1つは、少なくとも1つの放射線感受性要素を構成し、放射線感受性要素は、熱放射源の放射線放出要素によって少なくとも2つの個別の波長で放出される放射線を測定するために指定され、
ここで、分光計評価装置は、少なくとも2つの個別の波長での放射線のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって、熱放射源の放射線放出要素の放出温度を決定するためにさらに指定される。温度の関数としての2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値は、1000Kから4000Kの温度範囲内で2次の多項式関数を使用し、放射線放出要素の放出温度を使用して物体のスペクトルを調整するために概算される。
【0049】
その結果として、「放射線監視装置」としても表すことができる本発明による装置は、この好ましい実施形態では、統合された様式で分光計装置によって含まれ得る。しかしながら、代替として、放射線監視装置は、本明細書の他の場所で説明されるように、好ましくは、類似または同じ機能を達成するために任意の分光計装置に取り付け可能であり得る別個の装置として提供され得る。放射線監視装置の実施形態に関係なく、放射線監視装置は、特に、分光計装置の予熱段階の監視に使用することができる。熱放射源の安定した動作の監視に使用することができる。したがって、高速測定と分光計装置との短い積分時間を可能にする。分光計装置の較正に使用するための熱放射源の可変色温度用に使用することができる。特に、ワイヤーフィラメントから電球の内面へのタングステン金属の蒸発による、分光計装置のランプの黒化などの熱放射源の偏差を監視するために使用することができる。ただし、装置のさらなる使用がまだ考えられる。
【0050】
本発明による放射線監視装置、分光計装置、またはコンピュータプログラム製品に関するさらなる詳細については、本書の他の場所で提供されているとおり、熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための方法の説明を参照することができる。
【0051】
熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための上記の方法および装置、ならびに装置の提案された使用法は、従来技術に比べてかなりの利点を有する。特に、本方法および装置は、可視および赤外線スペクトル範囲内で熱放射源に含まれる放射線放出要素により放出される放射線、具体的に、放射線放出要素の放出を安定して再現可能な方法で維持し、それによって高い再現性および装置の独立性を達成するために、熱放射源または熱放射源の様々な動作モードの放射スペクトルを監視することができる。その結果、特に分光学的用途で得られる記録データの品質および信頼性を改善するために、異なる装置間の転送が実現可能である。
【0052】
要約すると、本発明の文脈において、以下の実施形態が特に好ましいと見なされる。
【0053】
実施形態1:熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための方法であって、この方法は、以下の工程を含む。
【0054】
a)放射線放出要素を含む熱放射源を提供する工程。ここで、放射線放出要素は、監視されるべき放射線を放出する。
b)少なくとも1つの放射線感受性要素を提供する工程。ここで、放射線感受性要素は、放射線放出要素による放射線を測定するために指定される。
c)少なくとも1つの波長で放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度を測定する工程。および
d)少なくとも1つの波長での放射線のスペクトル放射輝度を評価することによって、放射線放出要素の放出温度を決定する工程。
【0055】
実施形態2:プランクの法則を使用して、少なくとも1つの波長での放射のスペクトル放射輝度が評価される、実施形態1に記載の方法。
【0056】
実施形態3:プランクの法則が、放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度と放射線放出要素の放出温度との間の関係を提供する、実施形態2に記載の方法。
【0057】
実施形態4:放射線のスペクトル放射輝度が、少なくとも1つの選択された波長範囲[λ1、λ2]内で測定される、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態5:放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度が、少なくとも2つの個別の波長で測定される、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態6:少なくとも2つの個別の波長での放射のスペクトル放射輝度を評価する際に、少なくとも2つの個別の波長での放射線感受性要素の相対スペクトル感度がさらに考慮される、実施形態5に記載の方法。
【0060】
実施形態7:放射線放出素子の放射温度は、少なくとも2つ個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値を比較することによって決定される、実施形態5または6に記載の方法。
【0061】
実施形態8:放射線放出素子の放射温度は、2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値の比を提供することによって決定される、実施形態5から7のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態9:2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値の比が、2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値の商である、実施形態8に記載の方法。
【0063】
実施形態10:温度の関数としての2つの個別の波長のスペクトル放射輝度の測定値の比が代数関数を使用することによって概算される、実施形態8または9に記載の方法。
【0064】
実施形態11:代数関数が多項式関数から選択される、実施形態10に記載の方法。
【0065】
実施形態12:多項式関数が4次以下の多項式関数である、実施形態11に記載の方法。
【0066】
実施形態13:多項式関数が、選択された温度範囲内の2次の多項式関数である、実施形態12に記載の方法。
【0067】
実施形態14:温度範囲が1000Kから4000Kで選択される、実施形態13に記載の方法。
【0068】
実施形態15:スペクトル放射輝度が測定される第1の波長が視覚スペクトル範囲から選択される、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態16:第1の波長が、スペクトル放射輝度曲線の立ち上がりエッジの波長から、好ましくは視覚スペクトル範囲内、特には500nmから600nm内で選択される、実施形態15に記載の方法。
【0070】
実施形態17:スペクトル放射輝度が測定される第2の波長が近赤外スペクトル範囲から選択される、実施形態15または16に記載の方法。
【0071】
実施形態18:第2の波長が、スペクトル放射輝度曲線の立ち下がりエッジの波長から、好ましくは近赤外スペクトル範囲、特には800nmから1000nmの範囲内で選択される、実施形態17に記載の方法。
【0072】
実施形態19:放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度が単一の波長で測定される、実施形態1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態20:放射線放出要素の放出温度は、単一波長のスペクトル放射輝度の測定値を単一波長のスペクトル放射輝度の既知の値と比較することによって決定される、実施形態19に記載の方法。
【0074】
実施形態21:スペクトル放射輝度の既知の値が、放射線感受性要素の較正において得られる、実施形態20に記載の方法。
【0075】
実施形態22:放射線放出要素の既知の放出温度を有する既知の熱放射源が、放射線感受性要素の較正のために使用される、実施形態21に記載の方法。
【0076】
実施形態23:放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度の測定が、放射線感受性要素の較正が実行されるのと同じ制御された環境で実行される、実施形態21または22に記載の方法。
【0077】
実施形態24:熱放射源が、白熱灯または熱赤外線エミッターの少なくとも1つから選択される、実施形態1から23のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態25:白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射表面のうちの少なくとも1つから放射線放出要素が選択される、実施形態24に記載の方法。
【0079】
実施形態26:実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法を実行するための実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品。
【0080】
実施形態27:熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための装置であって、装置は以下を含む:
- 少なくとも1つの放射線感受性要素。ここで、放射線感受性要素は、少なくとも1つの波長で熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を測定するために指定されている。および
- 評価装置。ここで、評価装置は、少なくとも1つの波長での放射のスペクトル放射輝度を評価することによって、熱放射源の放射線放出要素の放出温度を決定するために指定される。
【0081】
実施形態28:評価装置は、プランクの法則を使用することによって、少なくとも1つの波長での放射線のスペクトル放射輝度を評価するために指定される、実施形態27に記載の装置。
【0082】
実施形態29:プランクの法則が、放射線放出要素によって放出される放射線のスペクトル放射輝度と放射線放出要素の放出温度との間の関係を提供する、実施形態28に記載の装置。
【0083】
実施形態30:装置は、少なくとも2つの個別の波長での放射のスペクトル放射輝度を評価する際に少なくとも2つの個別の波長での放射線感受性要素の相対スペクトル感度を考慮するためにさらに指定される、実施形態28または29に記載の装置。
【0084】
実施形態31:放射線感受性要素が、少なくとも1つのセンサー領域を有する放射センサーを含む、実施形態28から30のいずれか1つに記載の装置。
【0085】
実施形態32:センサー領域が放射線感受性材料を含む、実施形態31に記載の装置。
【0086】
実施形態33:放射線感受性材料が、シリコン、インジウムガリウム砒素(InGaAs)、インジウム砒素(InAs)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、アンチモン化インジウム(InSb)およびテルル化水銀カドミウム(MCT、HgCdTe)から選択される、実施形態32に記載の装置。
【0087】
実施形態34:センサー領域が均一なセンサー領域である、実施形態31から33のいずれか1つに記載の装置。
【0088】
実施形態35:センサー領域が電子デバイスによって提供される、実施形態34に記載のデバイス。
【0089】
実施形態36:センサー領域が電子通信ユニットによって提供される、実施形態35に記載のデバイス。
【0090】
実施形態37:センサー領域がスマートフォンまたはタブレットによって提供される、実施形態36に記載のデバイス。
【0091】
実施形態38:センサー領域は、複数の放射線感受性ピクセルに分割された放射線感受性アレイを含む、実施形態33から37のいずれか1つに記載の装置。
【0092】
実施形態39:放射線感受性アレイが分光計ピクセルアレイによって提供され、分光計ピクセルアレイの少なくとも2つの放射線感受性ピクセルがセンサー領域を構成する、実施形態38に記載の装置。
【0093】
実施形態40:少なくとも2つのピクセルが分光計ピクセルアレイのエッジに配置されている、実施形態39に記載の装置。
【0094】
実施形態41:放射線感受性素子は、センサー領域の少なくとも一部の電気抵抗または導電率を測定してセンサー信号を生成することによって放射線を測定するように指定されている、実施形態27から40のいずれか1つに記載の装置。
【0095】
実施形態42:放射線感受性要素が、少なくとも1つの電流-電圧測定および/または少なくとも1つの電圧-電流測定を実行することによってセンサー信号を生成するように指定されている、実施形態41に記載の装置。
【0096】
実施形態43:熱放射源が、白熱灯または熱赤外線エミッターの少なくとも1つから選択される、実施形態27から42のいずれか1つに記載の装置。
【0097】
実施形態44:放射線放出要素が白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射表面のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態43に記載の装置。
【0098】
実施形態45:放射線のスペクトル放射輝度を測定するため少なくとも1つの波長範囲[λ1、λ2]を選択するための少なくとも1つのフィルターをさらに備える、実施形態27から44のいずれか1つに記載の装置。
【0099】
実施形態46:フィルターが、吸収フィルター、特にバンドパスフィルターまたはフォトニック結晶のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態45に記載の装置。
【0100】
実施形態47:以下を含む分光計装置:
- 照明源。ここで、照明源は、物体のスペクトルを記録するために物体を照明するように指定されている。
- 複数の放射線感受性ピクセルを含む分光計ピクセルアレイ。ここで、分光計ピクセルアレイは、少なくとも1つのピクセルセンサー信号を生成することによって物体のスペクトルを記録するように指定されている。
- 分光計評価装置。ここで、分光計評価装置は、少なくとも1つのピクセルセンサー信号から物体のスペクトルを決定するために指定されている。
【0101】
ここで、照明源は、物体を照明するため放射線を放出するための放射線放出要素を有する熱放射源を含み、
ここで、放射線感受性ピクセルの少なくとも1つは、少なくとも1つの放射線感受性要素を構成し、放射線感受性要素は、少なくとも1つの波長で放射線放出要素によって放出される放射線を測定するために指定され、
ここで、分光計評価装置は、少なくとも1つの波長での放射線のスペクトル放射輝度を評価することによって放射線放出要素の放出温度を決定するため、および放射線放出要素の放出温度を使用することによって物体のスペクトルを調整するためにさらに指定される。
【0102】
実施形態48:少なくとも2つの放射線感受性ピクセルがセンサー領域を構成する、実施形態47に記載の分光計装置。
【0103】
実施形態49:少なくとも2つのピクセルが分光計ピクセルアレイのエッジに配置されている、実施形態48に記載の分光計装置。
【0104】
実施形態50:熱放射源が白熱灯または熱赤外線エミッターの少なくとも1つから選択される、実施形態47から49のいずれか1つに記載の分光計装置。
【0105】
実施形態51:放射線放出要素が、白熱灯のワイヤーフィラメントまたは熱赤外線エミッターの放射放出面のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態50に記載の分光計装置。
【0106】
本発明のさらなるオプションの詳細および特徴は、従属請求項に関連して続く好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈では、特定の機能を単独で実装することも、機能を組み合わせて実装することも可能である。本発明は、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、図に概略的に示されている。個々の図の同一の参照番号は、同一の要素または同一の機能を有する要素、またはそれらの機能に関して互いに対応する要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】本発明による熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための装置の好ましい例示的な実施形態を示す。
図2】本発明による熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための装置のさらに好ましい例示的な実施形態を示す。
図3】本発明による熱放射源の放射線放出要素によって放出される放射線を監視するための方法の好ましい例示的な実施形態を示すダイアグラムを示す。
図4】2つの異なる波長で測定されたスペクトル放射輝度の2つの値の商と、放射線放出要素の放出温度の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、非常に概略的な方法で、本発明による熱放射源の放射線放出要素によって放出された放射線112を監視するための装置110の例示的な実施形態を示す。本発明の範囲を制限することなく、白熱灯116のワイヤーフィラメント114が、以下の実施例において、放射線放出要素として使用され、白熱灯116が、この目的のための熱放射源として選択される。別の方法として、他の種類の熱放射源、特に上記でより詳細に説明した熱赤外線エミッターも、図1から4の例示的な実施形態内で同様の方法で熱放射源として使用することができる。
【0109】
図1に概略的に示されるように、白熱灯116は、特にガラスまたは溶融石英のバルブ118を含み、ここで、具体的にはタングステンを含み得るワイヤーフィラメント114は、好ましくは不活性ガスで満たされた体積120内に、キャリア122により支えられて配置される。所望の放射線112を生成する目的で、ワイヤーフィラメント114の加熱がかなり広いスペクトル範囲、具体的に可視スペクトル範囲、特に近赤外(NIR)スペクトル範囲にわたって光子の放出をもたらすように、ワイヤーフィラメント114は、電流によって衝突される。一般的に使用されているように、可視スペクトル範囲は380nmから780nmの波長をカバーし、NIRスペクトル範囲は780nmから1400nmの波長をカバーする。
【0110】
図1にさらに示されるように、本発明による装置110は、1つまたは複数の波長で白熱灯116のワイヤーフィラメント114によって放出される放射線112を測定するように指定された放射線感受性要素124を含む。図1の特定の実施形態では、放射線感受性要素124は、均一なセンサー領域128を含む放射センサー126であり、センサー領域128は、少なくとも1つのセンサー信号の生成がトリガーされる仕方で、ワイヤーフィラメント114によって生成される放射線112による放射センサー126の照明を受信するように指定されている。本明細書では、センサー信号の生成は、センサー信号とセンサー領域128の照明の方法との間の定義された関係によって支配され得る。ここで、センサー領域128は、10mm×10mm以下、好ましくは5mm×5mm以下、より好ましくは2mm×2mm以下のサイズを有する。
【0111】
照明時に少なくとも1つのセンサー信号を生成する目的で、センサー領域128は、特に1μmまでの入射波長に対して、好ましくはシリコンから選択され得る放射線感受性材料を含む。1μmを超える入射波長の場合、特に2.6μmまでの入射波長の場合、放射線感受性材料はインジウムガリウムヒ素(InGaAs)、特に3.1μmまでの入射波長の場合、インジウムヒ素(InAs)、特に3.5μmまでの入射波長の場合、硫化鉛(PbS)、特に入射波長5μmまでの入射波長の場合、セレン化鉛(PbSe)、特に5.5μmまでの入射波長の場合、アンチモン化インジウム(InSb)、特に16μmまでの入射波長の場合、テルル化水銀カドミウム(MCT、HgCdTe)から選択され得る。しかしながら、さらなる種類の材料も考えられる。
【0112】
上部および以下でより詳細に説明するように、ワイヤーフィラメント114によって生成される放射線112は、好ましくは、2つの異なる波長で測定される。この目的のために、図1に示されるような放射線感受性要素124は、特に、異なる波長に対して感受性であるように選択される。代替として、放射線センサー126は、2つ以上の個々の均一センサー領域128を含み得、ここで、個々の均一センサー領域128のそれぞれは、特定の波長に敏感であり得る。好ましい例として、個々のセンサー領域128は、約550nmなどの500nmから600nmの間、および約900nmなどの800nmから1000nmの間でそれぞれ高いスペクトル感度を示し得る。本明細書では、2つの異なる波長での放射感受性要素124の異なるスペクトル感度は、好ましくは、2つの異なる波長でセンサー領域128によって測定される放射線112を評価するときに考慮に入れることができる
【0113】
図1にさらに示されるように、本発明による装置110は、白熱灯116のワイヤーフィラメント114の放出温度Tを、放射線112のスペクトル放射輝度を1つまたは、好ましくは、より多くの選択された波長評価することによって決定するように指定された評価装置130を含む。この目的のために、放射線感受性要素124によって生成された少なくとも1つのセンサー信号は、無線インターフェースおよび/または有線インターフェースなどのインターフェース132によって評価装置130に転送される。さらに、評価装置130は、コンピュータ、好ましくはマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラなどの処理装置134を含み得、これは、特に、方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品を生成することによって、本発明による方法を実行するように指定され得る。さらに、評価装置130は、好ましくは装置110の外側に配置され得るモニター136および/またはキーボード138に接続され得る。しかしながら、評価装置130の他の実施形態もまた考えられ得る。
【0114】
特定の実施形態では、放射線感受性要素124および評価装置130、ならびにモニター136およびタブレット138は、特にスマートフォンまたはタブレットなどの電子デバイス(ここには示されていない)に含まれ得る。本明細書において、スマートフォンは、カメラの使用および/またはディスプレイ制御のためにスマートフォンに既に含まれている1つまたは複数の放射線感受性要素を使用することによって、およびスマートフォンのディスプレイをモニターやキーボードとして使用するだけでなく、さまざまな目的のためにスマートフォンにすでに含まれているデータ処理デバイスを使用することによって、本発明による方法を実行することができる。この点で、この方法は、本発明の目的のために、スマートフォン上で、「アプリ」の略語によっても示されるアプリケーションとして実行することができる。
【0115】
図2は、非常に概略的な方法で、本発明による装置110のさらに好ましい例示的な実施形態を示す。この実施形態では、分光計装置140は、統合された様式で本発明の装置110を含み、放射線感受性要素124は、分光学的目的のための分光計装置140ですでに使用されている分光計ピクセルアレイ144によって提供される放射線感受性アレイ142を含み得る。ここで、分光計ピクセルアレイ144の2つ以上の放射感受性ピクセル146は、センサー領域128を構成する。この目的のために、第1のビーム経路148において、ワイヤーフィラメント114によって生成された放射線112は、放射線感受性ピクセル146とは別に、分光計ピクセルアレイ144の前に配置された回折装置152に反射されて物体150に向かって導かれ、一方、第2のビーム経路154において、ワイヤーフィラメント114によって生成された放射線112は、センサー領域128を構成する放射感受性ピクセル146に向かって直接導かれる。図2に概略的に示されるように、分光計ピクセルアレイ144のエッジ156に位置する放射線感受性ピクセル146は、それらが最大スペクトル距離を取得することを可能にするので、センサー領域128として使用されるために好ましい場合がある。ただし、他の種類のアレンジメントも実行可能である。この実施形態について図2にさらに示されるように、評価装置130、ならびにモニター136およびタブレット138はまた、分光計装置140によって含まれ得る。好ましくは、分光計ピクセルアレイ144に関連して方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品をホストするために指定される。
【0116】
図2に概略的に示されている実施形態に関するさらなる詳細については、上記の図1に示されている実施形態の説明を参照することができる。
【0117】
しかしながら、ここでは、図1または2に示されるような本発明による装置110の好ましい例示的な実施形態とは別に、装置110のさらなる実施形態も考えられ得ることが示されている。
【0118】
本発明の方法の工程a)によれば、監視対象の放射線112を放出するように設計されたワイヤーフィラメント114を含む、図1または2に概略的に示されるような白熱灯116が提供される。
【0119】
本発明の方法の工程b)に従って、放射112を測定するために指定された放射線感受性要素124がさらに提供される。
【0120】
本発明の方法の工程c)によれば、白熱灯116のワイヤーフィラメント114によって放出される放射線112のスペクトル放射輝度Bλは、2つ以上の波長で測定される。図3は、式(2)によって定義されるプランクの法則に従って、3000K、4000K、および5000Kのさまざまな放出温度Tで、特定の波長λに対するワイヤーフィラメント114の放射112のスペクトル放射輝度Bλを非常に概略的に示す。
【数5】
【0121】
ここで、hはプランク定数、cは光速、κBはボルツマン定数である。したがって、プランクの法則は、白熱灯116のワイヤーフィラメント114によって放出される放射のスペクトル放射輝度Bλと、紫外線(UV)、可視(VIS)および赤外線(IR)のスペクトル範囲にわたるワイヤーフィラメント114の放出温度Tとの関係式を提供する。プランクの法則は、厳密に言えば実際には存在しない完全な黒体の放出に基づいているが、たとえば白熱灯116のワイヤーフィラメント114で構成されるような黒体の放出は、これにより実際に、正確に近似することができる。
【0122】
式(2)の結果として、ワイヤーフィラメント114のスペクトル放射輝度Bλは、放射線の波長λおよびワイヤーフィラメント114の放出温度Tのみに依存し、したがって、本発明の方法の工程d)による1つまたは好ましくは波長λについての放射線112のスペクトル放射輝度Bλを評価することにより、白熱灯116のワイヤーフィラメント114の発光温度Tの決定を可能にする。本明細書では、個々のセンサー領域128がこれらの波長λ1、λ2の周りで高いスペクトル感度を示す上記の好ましい例に従って、それぞれ550nm付近の第1の波長λ1および900nm付近の第2の波長λ2が図3に概略的に示されている。
【0123】
図4は、図1の装置110を2つの個々の均一なセンサー領域128と共に使用することによって得られた実験結果を非常に概略的に示しており、第1のセンサー領域128は、白熱灯116のワイヤーフィラメント114によって、520nmの第1の波長λ1、すなわち可視スペクトル範囲の緑色部分で放出された放射112のスペクトル放射輝度Bλを測定するために、第2のセンサー領域128は、白熱灯116のワイヤーフィラメント114によって、850nmの第2の波長λ2、すなわち近赤外スペクトル範囲で放出された放射線112のスペクトル放射輝度Bλをそれぞれ測定するために設計された。
【0124】
図4に示すように、λ1= 520nmおよびλ2= 850 nmの式(3)による商
【数6】
は、式(4)による多項式関数158で正確に近似できる
【数7】
【0125】
さらに、多項式関数158は、1000Kから4000Kの温度範囲内で、式(5)に従って2次の多項式に簡略化することができる。
【数8】
【0126】
ここで、式(4)および(5)による両方の多項式関数は可逆であり、したがって、商から白熱灯116のワイヤーフィラメント114の放出温度Tを決定するための逆関数

【数9】
として使用することができる。
【符号の説明】
【0127】
110 装置
112 放射線
114 ワイヤーフィラメント
116 白熱灯
118 バルブ
120 体積
122 キャリア
124 放射線感受性要素
126 放射線センサー
128 センサー領域
130 評価装置
132 インターフェース
134 処理装置
136 モニター
138 キーボード
140 分光計装置
142 放射線感受性アレイ
144 分光計ピクセルアレイ
146 放射感受性ピクセル
146 第1のビーム経路
150 物体
152 回折要素
154 第2のビーム経路
156 エッジ
158 多項式関数
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】