(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】疼痛を緩和するためのイブプロフェン及びトラマドールの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20220912BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220912BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20220912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P25/04
A61P29/02
A61P43/00 121
A61K31/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501259
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069306
(87)【国際公開番号】W WO2021005129
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522011366
【氏名又は名称】ファルマリダー、ソシエダッド、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】FARMALIDER, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、ポルトレス、ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ナルシソ、サンテ、セルナ
(72)【発明者】
【氏名】マリア、デル、ロサリオ、サラス、ブトロン
(72)【発明者】
【氏名】エミリオ、バルガス、カストリリョン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、カランドリア、ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ラケル、オルカハダ、コルドバ
(72)【発明者】
【氏名】アンヘル、ホセ、ムニョス、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】マルタ、ビカリオ、デ、ラ、トレ
(72)【発明者】
【氏名】ヌリア、サンス、メネデス
(72)【発明者】
【氏名】アントニア、ゴメス、カルボ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、アンヘル、サンチェス、ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】エステル、ドゥアルト、ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド、ガルシア、アロンソ
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206FA14
4C206KA01
4C206KA15
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA08
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヒトにおける疼痛の処置に使用するための、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との組合せであって、組合せ中のイブプロフェンの投与量が350mg~450mgであり、トラマドールの投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mgである、組合せに関する。この組合せは、慢性又は急性原因の中等度から重度の疼痛の処置に適しており、より激しい疼痛に苦しむ患者に特に効果的である。本発明はまた、イブプロフェン及びトラマドールの上記固定用量の組合せを含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける疼痛の処置に使用するための、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との組合せであって、前記組合せ中のイブプロフェンの投与量が350mg~450mgであり、前記組合せ中のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mgであることを特徴とする、前記組合せ。
【請求項2】
イブプロフェンの薬学的に許容可能な塩が、イブプロフェンアルギネート、イブプロフェンリシネート及びイブプロフェンナトリウムから選択され、好ましくはイブプロフェンアルギネート及びイブプロフェンリシネートから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用のための組合せ。
【請求項3】
イブプロフェンの薬学的に許容可能な塩が、イブプロフェンアルギネートであり、好ましくはイブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2であるイブプロフェンアルギネートであることを特徴とする、請求項2に記載の使用のための組合せ。
【請求項4】
イブプロフェンの投与量が、390mg~410mg、好ましくは約400mgであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項5】
トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、36mg~39mg、好ましくは約37.5mgであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項6】
トラマドールが、トラマドール塩酸塩の形態であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項7】
前記組合せが、経口経路によって投与されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項8】
前記組合せが、静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項9】
急性疼痛又は慢性疼痛、好ましくは中等度から重度の強度の急性疼痛又は慢性疼痛、より好ましくは重度の急性疼痛又は慢性疼痛の処置用であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項10】
前記組合せが、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンとトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との固定用量の前記組合せ、及び少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項11】
前記医薬組成物が、経口投与用であり、且つ、顆粒、粉末、錠剤及びカプセルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の使用のための組合せ。
【請求項12】
前記医薬組成物が、静脈内注射用の水溶液であることを特徴とする、請求項10に記載の使用のための組合せ。
【請求項13】
約37.5mgのトラマドール塩酸塩と、約400mgのイブプロフェンと、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2となる量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投与用の医薬組成物であって、顆粒、錠剤及びカプセルから選択される、前記医薬組成物。
【請求項14】
約37.5mgのトラマドール塩酸塩と、約400mgのイブプロフェンと、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2となる量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、静脈注射用水溶液。
【請求項15】
疼痛の治療に使用するための請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中等度から重度の疼痛の治療的管理のために特に有用な新たな薬物の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、患者の生活の質に大きな影響を与える苦痛な感覚である。疼痛管理は、おそらく医療専門家にとって最も重要な課題の1つであり、現在の医学研究の主要な主題の1つでもある。
【0003】
疼痛は、知覚的、感情的、認知的及び社会的要素を伴う、実際の又は潜在的な組織損傷に関連する苦痛な経験として定義され得る(Williams et al., Pain 2016, 157, 2420-23)。
【0004】
疼痛の原因は多様であり得、例えば、傷害又は悪性若しくは非悪性のいずれかの基礎疾患若しくは状態に起因し得、或いは、外科的介入の結果であり得る。
【0005】
疼痛のその他の分類は、傷害に対する通常の身体的反応である侵害受容性疼痛と、中枢又は末梢神経系に影響を与える障害から生じる神経障害性疼痛とを区別する。さらに、侵害受容性疼痛の2種の主なタイプは、体性痛及び内臓痛である。体性痛は、筋骨格系、例えば、皮膚、筋肉及び骨に対する傷害を指すが、内臓痛は、内臓組織と関係しており、間接的に感知される場合がある。疼痛はまた、炎症反応と関連することも多い。
【0006】
その期間の観点から、疼痛は急性疼痛及び慢性疼痛に分類され得る。急性疼痛は、一般に短期間で、通常は数週間までであり、組織の外傷に反応して発生し、根底にある傷害又は疾患の治癒とともに減少するため、傷害の可能性又は程度の警告機能がある。逆に、慢性疼痛は、通常の治癒時間を超えて持続する疼痛であり、したがって、生理学的侵害受容の急性警告機能を欠如している。
【0007】
急性疼痛の一般的な原因の1つは外科的外傷であり、術後の急性疼痛は、手術を受けた患者の回復遅延の原因の1つである。
【0008】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、急性及び慢性の両方の疼痛の処置に最も一般的に処方される薬物であり、その中で、イブプロフェンはおそらく最も広く使用されている鎮痛薬の1種である。
【0009】
ほとんどのNSAIDと同様に、イブプロフェンは、主にプロスタグランジンの合成に関与する酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより、鎮痛作用を発揮すると考えられている。イブプロフェンはその他のNSAIDよりも安全であるが、いくつかの望ましくない副作用、例えば、とりわけ胃の傷害及び胃の出血を引き起こす可能性もある。
【0010】
鎮痛剤としてNSAIDを使用することの別の欠点は、一定の強度の疼痛を適切に緩和するには不十分な場合があることである。
【0011】
いくつかの比較臨床試験の結果によると、塩の形態のイブプロフェン、例えばアルギニンとの塩(イブプロフェンアルギネート(ibuprofen arginate))、リシンとの塩(イブプロフェンリシネート(ibuprofen lysinate))又はナトリウム塩は、より迅速な鎮痛の開始及び優れた鎮痛効果を提供すると報告されているため、標準的なイブプロフェン(酸性の形態)よりも有利である(Moore et al. Faster, higher, stronger? Evidence for formulation and efficacy for ibuprofen in acute pain. Pain 2013, 155 (1), 14-21)。
【0012】
さらに、イブプロフェンアルギネートは、胃内視鏡的障害が少なく、臨床的副作用の発生率がイブプロフェンよりも有意に低いことが報告されている。これは、アルギニンによって誘導されるNO合成の増加によって説明することができる(Gallego-Sandin et al., Effect of ibuprofen on cyclooxygenase and nitric oxide synthase of gastric mucosa: correlation with endoscopic lesions and adverse reactions, Dig. Dis. Sci., 2004, 49 (9), 1538-44)。
【0013】
疼痛管理に頻繁に使用される別のクラスの薬物はオピオイドである。重度の疼痛の管理におけるオピオイド鎮痛薬の有効性は広く認識されている。
【0014】
例えば、トラマドールは中枢作用性鎮痛薬であり、オピオイドアゴニストの特性を備え、慢性又は急性原因の中等度から重度の疼痛の処置に頻繁に使用される。その作用機序は、実際には二重性であり、なぜなら、それは低親和性で結合するμオピオイド受容体に作用し、一方でノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込みを阻害するからである(J Pharmacol. Exp. Ther., 1992, 260 (1), 275-85)。
【0015】
それらの優れた鎮痛効果にもかかわらず、疼痛を処置するためのオピオイドの投与は、いくつかの副作用、例えば、胃腸副作用(例えば、悪心又は嘔吐)、又は中枢神経系に影響を与える副作用(例えば、呼吸抑制、認知障害、幻覚又は異痛症)、又は心血管系副作用(例えば、低血圧又は徐脈)、又は皮膚の副作用、並びにホルモン性又は免疫学的副作用に関連する(Arthur et al, Safe opioid use. Management of opioid-related adverse effects and aberrant behaviors, Hematol. Oncol. Clin. N. Am., 2018, 32, 387-403)。
【0016】
したがって、医療従事者は、疼痛の緩和のためにオピオイドを処方する際に、オピオイドに関連するリスク及び利点を慎重に比較検討する必要がある。オピオイドに関連する潜在的なリスクは、効果的且つ安全な疼痛の緩和が重要である術前及び術後の疼痛の処置において特に懸念される。
【0017】
オピオイドに関連する副作用のリスクを減少させる1つの方法は、推奨投与量を可能な限り減少させることであるが、そのような投与量の減少は、治療の有効性を犠牲にしてはならない。
【0018】
鎮痛薬の効果を最大化し、副作用を減少させるための1つの戦略は、異なる作用機序を有する鎮痛薬との適切な組合せである。特に、NSAIDとオピオイドとのいくつかの組合せは、相乗効果を提供し、効果を最大化し、副作用を減少させることができる。
【0019】
特に、トラマドールと、異なるNSAIDとの組合せは、疼痛管理の効果的な戦略として背景技術で報告されている。
【0020】
このような組合せの相乗効果は、良好な鎮痛を保持しつつ、トラマドールの量を減少させることができる。
【0021】
しかしながら、鎮痛効果を保持しつつ副作用を最小限に抑えるための組合せ中の各薬物の用量調整は些細な問題ではない。安全上の理由からオピオイドであるトラマドールの量を最小限に抑えることが望ましい場合であっても、やはり最大の鎮痛効果を保持することが重要ある。
【0022】
トラマドールとNSAIDとの組合せを含むいくつかの医薬品が市場で入手可能であり、これらは組合せの相乗効果を利用している。したがって、例えば、Enanplus(登録商標)及びSkudexa(登録商標)は、75mgのトラマドール塩酸塩と25mgのデクスケトプロフェンとの組合せを含むフィルムコーティング錠である。推奨用量は1錠で、最小投与間隔は8時間である。
【0023】
組合せ医薬のさらなる例は、Tramacet(登録商標)及びZaldiar(登録商標)であり、これらは、トラマドール塩酸塩とパラセタモールとの組合せを含むフィルムコーティング錠である。推奨される薬量は、75mgのトラマドールと650mgのパラセタモールとに相当する2錠の初期投与量で、投与間隔は6時間以上で、1日最大投与量はトラマドール塩酸塩 300mgとパラセタモール 2600mgとである。
【0024】
イブプロフェンアルギネートとトラマドール塩酸塩との固定用量の組合せを含む医薬組成物は、欧州特許出願EP2474309-A1に記載されており、疼痛の処置に有用であると考えられている。特に、400mgのイブプロフェンと、75mgのトラマドール塩酸塩と、340mgのアルギニンとを含むフィルムコーティング錠及び経口顆粒が記載されている。
【0025】
ヨーロッパ諸国でこれまでに認可された、トラマドールと第2の鎮痛薬との組合せを含むすべての医薬品において、トラマドール塩酸塩の最小投与量が75mgであることは注目すべきことである。さらに、トラマドールの専門領域において、トラマドール塩酸塩の推奨投与量は100mgであり、50mgを下回ることはない。
【0026】
疼痛管理のための現在利用可能な代替案にもかかわらず、良好な治療効果及びより少ない副作用を有するさらなる鎮痛薬の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0027】
本発明の対象
本発明の対象は、疼痛の処置に使用するための、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との特定の投与量における組合せである。
【0028】
本発明の別の対象は、特定の投与量における薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、特定の投与量におけるトラマドール又はその薬学的な塩と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例1に記載の比較臨床試験の結果に従った、0~100mm(又は0~10cm)の視覚的アナログスケール(VAS)で測定された疼痛強度の変化を表す図である。歯科手術後の中等度から重度の疼痛に苦しむ患者は、37.5mgのトラマドールHClと400mgのイブプロフェン(イブプロフェンアルギネートとして)との組合せ(群1)、又は75mgのトラマドールHClと400mgのイブプロフェン(イブプロフェンアルギネートとして)との組合せ(群2)、又は100mgのトラマドールHCl(群3)、又はプラセボ(群4)により静脈内処置された。グラフに表示されているVAS値は、各群の平均値である。時点0は、患者に対する処置が行われた開始点を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の対象は、ヒトにおける疼痛の処置に使用するための、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との組合せであって、組合せ中のイブプロフェンの投与量が350mg~450mgであり、組合せ中のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mgであることを特徴とする、組合せである。
【0031】
本発明者らは、イブプロフェンとトラマドールとの特定の組合せであって、両方の薬物の相乗的な鎮痛効果が最大化される組合せを開発した。驚くことに、これまで治療量以下と考えられてきた、顕著に低用量のトラマドールを使用したそのような組合せの鎮痛効果は、イブプロフェンと高用量のトラマドールとの組合せで達成される効果よりもさらに効果的である。この知見は、特に重要且つ予想外であり、鎮痛効果の増強と、臨床診療で一般的に使用される用量でのトラマドールの使用に関連する潜在的な副作用の減少とを同時に可能にする。
【0032】
本発明の対象はまた、それを必要とするヒト対象における疼痛を処置する方法であって、この方法が、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との組合せを対象に投与することを含み、組合せ中のイブプロフェンの投与量が350mg~450mgであり、組合せ中のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mgである、方法として規定され得る。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲において、一般に冠詞「a」、「an」又は「the」が前に付いた単数形は、文脈が明らかにその他のことを示さない限り、複数形も含むことを意味する。さらに、「約」という用語が前に付いた数値は、そのような値付近の一定の変動、すなわち変動又は記載された量の±2%を含むことを意味する。下限の端点及び上限の端点によって定義される数値範囲は、前述の端点も含むことを意味する。
【0034】
トラマドール
トラマドールは、(±)-cis-2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1-(3-メトキシフェニル)シクロヘキサノールという物質の国際一般名(INN)である。
【0035】
トラマドールは、μ-オピオイド受容体のアゴニスト、並びにセロトニン(5-HT)及びノルアドレナリン(NE)再取り込み阻害剤として作用するため、多面的な作用機序を有する中枢作用性鎮痛化合物である。さらに、その代謝物であるO-デスメチルトラマドールもまた、μ-オピオイド受容体に対して活性を有する。
【0036】
トラマドールの分子は、2個のキラル中心を有するため、2対のエナンチオマー、すなわち(1R,2R)及び(1S,2S)(シス型)、並びに(1R,2S)及び(1S,2R)(トランス型)に対応する4種の異なる立体異性体で存在する可能性がある。
【0037】
本発明の範囲内で、トラマドールという用語は、シス型のいずれか(任意の立体異性体、任意の比率の立体異性体の混合物、特にラセミ体、すなわち(1R,2R)及び(1S,2S)立体異性体のラセミ(1:1)混合物を含む)を含む。
【0038】
トラマドールは、アミン基を含有する塩基性化合物である。トラマドールの薬学的に許容可能な塩には、その酸付加塩、例えば、その任意の溶媒和物及び結晶形態が含まれる。
【0039】
トラマドールの薬学的に許容可能な付加塩は、薬学的に許容可能な実質的に非毒性の有機酸又は無機酸を使用して、当業者に周知の従来の方法によって調製され得る。適切な酸には、とりわけ、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸及びフタル酸が含まれる。好ましくは、塩酸が使用される。
【0040】
好ましい実施形態において、トラマドールは塩酸塩の形態である。
【0041】
特に好ましい実施形態において、トラマドールは、ラセミ体のトラマドールの塩酸塩の形態である。
【0042】
トラマドールはいくつかの供給元から市販されており、米国特許第3,652,589号に記載の方法に従っても調製可能である。
【0043】
本明細書及び特許請求の範囲において、トラマドールが遊離塩基として又はその他の塩の形態で使用される場合でも、記載された量のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩は、常にトラマドール塩酸塩の当量として表される。例えば、トラマドール遊離塩基の32.9mgは、トラマドール塩酸塩の当量として表される場合には、37.5mgである。
【0044】
イブプロフェン
イブプロフェンは、(RS)-2-(4-(2-メチルプロピル)フェニル)プロパン酸という化合物の国際一般名(INN)である。
【0045】
イブプロフェンは、鎮痛特性、解熱特性及び抗炎症特性を有する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の群に属する薬である。
【0046】
イブプロフェンの分子は、1個のキラル中心を有するため、2種のエナンチオマー形態で存在する可能性がある。本発明の範囲内で、イブプロフェンという用語は、そのラセミ形態のイブプロフェン((R,S)-イブプロフェン)、イブプロフェンの(S)エナンチオマー((S)-イブプロフェン)及びイブプロフェンの(R)及び(S)エナンチオマーの任意の比率の混合物、好ましくは形態(S)が富化された混合物を含む。好ましくは、本発明で使用されるイブプロフェンは、(R,S)-イブプロフェン及び(S)-イブプロフェンから選択される。より好ましくは、ラセミ化合物の(R,S)-イブプロフェンである。
【0047】
イブプロフェンは市販されており、また、調製され得、例えば、英国特許出願GB-A-971700に記載されている手順に従って調製され得る。イブプロフェンのエナンチオマーの分割は、例えば、Brushanらの論文(Resolution of enantiomers of ibuprofen by liquid chromatography: a review, Biomed. Chromatogr., 1998, 12 (6), 309)に記載されている。
【0048】
イブプロフェンは、カルボン酸部分を含む酸性分子である。本発明において、イブプロフェンは、その薬学的に許容可能な塩の形態で使用される。
【0049】
本発明の実施形態において、イブプロフェンの薬学的に許容可能な塩は、アルギニンとの塩(イブプロフェンアルギネート)、リシンとの塩(イブプロフェンリシネート)及びイブプロフェンナトリウムから選択される。
【0050】
本発明の別の実施形態において、イブプロフェンの薬学的に許容可能な塩は、イブプロフェンアルギネート及びイブプロフェンリシネートから選択される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、イブプロフェンは、アルギニンとの塩の形態(イブプロフェンアルギネート)である。
【0052】
イブプロフェンがアルギニンとの塩の形態である場合には、本発明による医薬組成物は、従来の方法で事前に形成されたイブプロフェンアルギネートの塩を使用するか、又は組成物の別個の成分としてイブプロフェンとアルギニンとを独立に使用することによって調製され得る。後者のオプションでは、イブプロフェン及びアルギニンが、事前に調製した塩を使用した場合に起こるような、1:1の固定された化学量論的モル比にならないようにすることができる。
【0053】
したがって、本発明の文脈において、イブプロフェンアルギネート又はアルギニンとの塩の形態のイブプロフェンという用語は、イブプロフェンが任意のモル比でアルギニンと一緒に投与されることを示すために使用される。一般に、イブプロフェン:アルギニンのモル比は、1.2:1~1:1.2、好ましくは1:1~1:1.2、より一層好ましくは1:1.05~1:1.1である。
【0054】
イブプロフェンアルギネートが事前に形成された塩の形態で使用される場合には(したがって、モル比は1:1)、この塩は、例えば、スペイン特許出願ES435416に記載されているように調製可能である。
【0055】
一方、アルギニンはα-アミノ酸であり、自然界ではそのエナンチオマー形態Lで見られる。本発明の文脈において、アルギニンという用語は、そのエナンチオマー形態:L-アルギニン、D-アルギニン及びそれらの混合物のいずれかを含む。好ましくは、アルギニンはL-アルギニンの形態である。
【0056】
アルギニンは様々な供給元から商業的に入手可能である。
【0057】
本発明の別の実施形態において、イブプロフェンは、リシンとの塩の形態(イブプロフェンリシネート)である。
【0058】
イブプロフェンがリシンとの塩の形態である場合には、本発明による医薬組成物は、従来の方法で事前に形成されたイブプロフェンリシネートの塩を使用するか、又は組成物の別個の成分としてイブプロフェンとリシンとを独立に使用することによって調製され得る。後者のオプションでは、イブプロフェン及びリシンが、事前に調製した塩を使用した場合に起こるような、1:1の固定された化学量論的モル比にならないようにすることができる。
【0059】
したがって、本発明の文脈において、イブプロフェンリシネート又はリシンとの塩の形態のイブプロフェンという用語は、イブプロフェンが任意のモル比でリシンと一緒に投与されることを示すために使用される。一般に、イブプロフェン:リシンのモル比は、1.2:1~1:1.2、好ましくは1.1:1~1:1.1、より一層好ましくは約1:1である。
【0060】
イブプロフェンリシネートが事前に形成された塩の形態で使用される場合には(したがって、モル比は1:1)、この塩は、例えば、スペイン特許出願ES435416に記載されているように調製可能である。
【0061】
リシンはα-アミノ酸であり、自然界ではそのエナンチオマー形態Lで見られる。本発明の文脈において、リシンという用語は、そのエナンチオマー形態:L-リシン、D-リシン及びそれらの混合物のいずれかを含む。好ましくは、リシンはL-リシンの形態である。
【0062】
リシンもまた様々な供給元から商業的に入手可能である。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲において、記載されたイブプロフェン塩の量は、常にイブプロフェン遊離酸の重量として表される。例えば、737.8mgのイブプロフェンアルギネート(1:1のモル比)は、400.0mgのイブプロフェン遊離酸に相当する。
【0064】
併用処置
本発明による治療的使用は、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との組合せであって、
その組合せが、
-組合せ中のイブプロフェンの投与量が、350mg~450mg、好ましくは360mg~440mg、より好ましくは370mg~430mg、より一層好ましくは380mg~420mg、より一層好ましくは390mg~410mg、より一層好ましくは約400mg、より一層好ましくは400mgであり、
-組合せ中のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の投与量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mg、好ましくは36mg~39mg、より好ましくは約37.5mg、より一層好ましくは37.5mgであり、
イブプロフェン塩が、好ましくはイブプロフェンアルギネート、イブプロフェンリシネート及びイブプロフェンナトリウムから選択され、より好ましくはイブプロフェンアルギネート及びイブプロフェンリシネートから選択され、より一層好ましくはイブプロフェンアルギネートであり、より一層好ましくは、アルギニンの量が、1.2:1~1:1.2、より好ましくは1:1~1:1.2、より一層好ましくは1:1.05~1:1.1であるイブプロフェン:アルギニンのモル比となる量であるイブプロフェンアルギネートである、組合せの優れた鎮痛効果に基づく。
【0065】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「用量」又は「投与量」という用語は、単回投与で患者に投与される薬物の組合せにおける2種の薬物の治療有効量(重量)を意味する。
【0066】
そのような用量又は投与量は、治療の必要性に応じて、及び/又はそれぞれの特定の場合の処方に従って、1回又は2回以上繰り返され得る。反復投与する場合には、投与間隔は、一般に約4時間~約8時間であり、例えば、投与間隔は、約4時間、又は約6時間、又は約8時間であり得る。その他のさらに頻度の低い投与スケジュール、すなわち、投与間隔がより長い投与スケジュールもまた、本発明の範囲内に含まれるため、疼痛の強度及び期間に従って、特定の治療要件を満たすように投与量を調整することができる。
【0067】
本発明による組合せを使用する処置期間は、処置される疼痛のタイプ及び持続性に応じて大きく変動する場合があり、分野における一般的な慣行のように、特定の状況ごとに医師によって容易に調整可能である。一般に、処置期間は、単回投与から、例えば、数日(例えば、1、2、3、4、5、6又は7日)にわたる、又は最大数週間にわたる、又は最大数か月にわたる反復投与まで変動し得る。
【0068】
本発明による組合せの各投与量は、両方の薬物の固定用量の組合せ、すなわち、その許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩との固定用量の組合せを含む好ましい固有の医薬組成物で投与されてもよいし、或いは、2種の独立した医薬剤形、すなわち、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンに対する医薬剤形と、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩に対する医薬剤形とを使用して、両方の薬物を同時に投与することもできる。同時投与とは、実質的に同時の投与又は短い時間間隔、例えば、通常5分未満での連続投与のいずれかを意味する。
【0069】
単回投与における固定用量の組合せの使用が、一般的に好ましい。この理由は、投与がより簡単であり、したがって薬物コンプライアンスを促進し、薬物の安全性を高めるためである。
【0070】
本発明による組合せは、任意の適切な投与形態、すなわち経口経路又は静脈内注射によって投与され得る。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、組合せは経口経路によって投与される。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態において、組合せは静脈内投与される。
【0073】
本発明の別の実施形態において、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンは経口投与され、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩は静脈内投与される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンは静脈内投与され、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩は、経口投与される。
【0075】
本発明による組合せは、疼痛の処置を目的としている。この文脈において、疼痛の処置という表現は、医療分野における通常の意味を有し、すなわち、それは、疼痛の感覚を排除するか、又は疼痛強度を低減するか、又は予見可能な疼痛が現れるのを予防することを含む。
【0076】
本発明による疼痛の処置は、疼痛に苦しむ対象又は疼痛に苦しむ傾向のある対象の処置を指し、「対象」という用語は、ヒトに関連する。
【0077】
疼痛は主観的な経験であるため、完全に客観的な方法で疼痛強度を測定することは不可能である。したがって、患者の自己申告による測定が、疼痛強度を測定するために一般的に使用される。疼痛強度を測定するために利用可能な評価尺度には、例えば、Guideline on the clinical development of medicinal products intended for the treatment of pain(EMA/CHMP/970057/2011)に記載の視覚的アナログスケール(VAS)、数値評価スケール(NRS)及び語句評価スケール(VRS)がある。
【0078】
特に、視覚的アナログスケール(VAS)が、疼痛強度を測定するために使用される場合がある。疼痛強度は、一方の端点として「疼痛なし」(0mm)からもう一方の端点として「想像可能な最悪の疼痛」(100mm)までを表す10cm(又は100mm)の線上で連続的に変化する。
【0079】
実施例1は、歯科手術後に、すなわち、少なくとも2本の第3大臼歯(そのうちの少なくとも1本は下顎第3大臼歯、そのうちの少なくとも1本は埋没第3大臼歯)を、骨除去を伴って外科的に抜歯した後に、中等度から重度の疼痛に苦しむ患者における比較臨床試験の結果を示す。これは、ガイドラインEMA/CHMP/970057/2011に記載されている、中等度から重度の急性疼痛に対するよく知られたモデルである。
【0080】
試験に患者を含めるためのVASカットオフ値は≧55mmであったが、処置開始前の時間0における基礎VAS値は、すべての群で約70mmであったこと、すなわち、アッセイを受ける患者は、特に重度の疼痛に苦しんでいたことは注目に値する。
【0081】
実施例1に記載のように、驚くことに、イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せで処置された患者(群1)における疼痛緩和は、2倍量のトラマドールを含む類似の組合せ、すなわち、イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/75mgの組合せで処置された患者(群2)における疼痛緩和よりも優れていたことが見出された(
図1を参照)。実際、イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せが、イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/75mgの組合せよりも良好な疼痛緩和を提供したことは、完全に驚くことであり、予想外であった。
【0082】
本発明の組合せ(400/37.5mg イブプロフェン/トラマドール、群1)によって達成される疼痛緩和が、はるかに高用量のトラマドール単独(100mg トラマドールHCl、群3)(急性の重度な疼痛の管理のための現在の標準的な戦略の1つ)を使用して得られる緩和よりもはるかに優れていることも特に注目に値する。
【0083】
急性疼痛及び慢性疼痛の間に明確な境界は存在しないが、急性疼痛は、警告機能があるという点で適応性があると考えられており、期間が短く(通常は数週間まで)、根底にある傷害又は疾患(例えば、術後の疼痛)の治癒とともに減少する。
【0084】
一方、慢性疼痛は、通常の治癒時間を超えて持続する疼痛として定義可能であり、したがって、急性警告機能を欠如している。通常、疼痛は3~6か月以上続くか、又は繰り返されると、慢性と見なされる。
【0085】
本発明による組合せは、慢性疼痛及び急性疼痛を含む事実上あらゆるタイプの疼痛、好ましくは中等度から重度の強度の疼痛の処置に適している。
【0086】
一実施形態において、本発明による組合せは、慢性疼痛の処置に使用するための組合せである。
【0087】
別の好ましい実施形態において、本発明による組合せは、急性疼痛の処置に使用するための組合せである。
【0088】
実施例1の結果を論じる際に上記したように、本発明による組合せは、重度の疼痛(一般に、VAS値が約7以上である疼痛として定義される)の緩和に特に効果的である。したがって、一実施形態において、本発明による組合せは、重度の疼痛の処置に使用するための組合せである。
【0089】
本発明による組合せで処置される疼痛は、身体の任意の部分又は領域に位置してもよく、任意の病因を有してもよく、すなわち、任意の基礎疾患若しくは状態又は傷害に起因してもよく、或いは外科的介入を含む医療処置の結果に起因してもよい。疼痛は侵害受容性(身体性若しくは内臓性)又は神経障害性のいずれであってもよい。
【0090】
一実施形態において、本発明の組合せは、侵害受容性疼痛の処置のための組合せである。
【0091】
特に、効果的な術後疼痛管理はあらゆる外科手術において不可欠であり、不適切な疼痛管理は、死亡率の増加、回復の遅延及び病院費の増加をもたらし得る。
【0092】
したがって、一実施形態において、本発明による組合せは、急性の術後疼痛の処置に使用するための組合せである。
【0093】
添付の実施例に示されるように、本発明の鎮痛併用処置は、一般に成人を対象としている。したがって、一実施形態において、本発明による組合せは、若年成人を含む成人、すなわち12歳以上の患者に使用するための組合せである。別の特定の実施形態において、本発明による組合せは、18歳以上の成人患者で使用するための組合せである。
【0094】
医薬剤形
本発明の一実施形態によれば、独立した剤形が、各有効成分に対して調製され、すなわち、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンに対して及びトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩に対して調製され、これらは、本発明による適切な用量で、一緒に又は連続して投与することによって組み合わせて使用される。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、両方の薬物は、固定用量の組合せの形態で投与される。固定用量の組合せは、典型的には、両方の有効成分の組合せと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む単一の医薬組成物を意味する。「固定用量の組合せ」という用語は、両方の成分が不可分に、組成物に一緒に調合されているため、両方の成分の比率を変更することができないことを意味する。
【0096】
したがって、本発明の別の態様は、薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物であって、
-イブプロフェンの量が、350mg~450mg、好ましくは360mg~440mg、より好ましくは370mg~430mg、より一層好ましくは380mg~420mg、より一層好ましくは390mg~410mg、より一層好ましくは約400mg、より一層好ましくは400mgであり、
-トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩の量が、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に、35mg~40mg、好ましくは36mg~39mg、より好ましくは約37.5mg、より一層好ましくは37.5mgであり、
イブプロフェン塩が、好ましくはイブプロフェンアルギネート、イブプロフェンリシネート及びイブプロフェンナトリウムから選択され、より好ましくはイブプロフェンアルギネート及びイブプロフェンリシネートから選択され、より一層好ましくはイブプロフェンアルギネートであり、より一層好ましくは、アルギニンが、1.2:1~1:1.2、より好ましくは1:1~1:1.2、より一層好ましくは1:1.05~1:1.1であるイブプロフェン:アルギニンのモル比に相当する量であるイブプロフェンアルギネートである、医薬組成物である。
【0097】
好ましくは、医薬組成物は、上記した量及び好ましい形態の薬学的に許容可能な塩の形態のイブプロフェンと、上記した量及び好ましい形態のトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とからなる。すなわち、組成物は追加の有効成分を含まない。
【0098】
本発明の別の態様は、疼痛の処置に使用するための上記固定用量の組合せの組成物である。
【0099】
一実施形態によれば、本発明による固定用量の組合せは、経口医薬剤形である。
【0100】
経口投与に適した医薬形態は、固形の医薬形態、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、粉末及び丸薬、並びに液状の医薬形態、例えば、溶液、シロップ及び懸濁液である。
【0101】
好ましくは、経口組成物は、経口溶液用の粉末又は顆粒、経口溶液、カプセル及び錠剤からなる群から選択される。
【0102】
別の実施形態によれば、本発明による固定用量の組合せは、静脈内投与に適した注射可能な剤形である。
【0103】
これらの医薬組成物は、この分野の参考書に記載されているような製薬技術の当業者によく知られている従来の手順によって調製可能である。参考書は、例えば、Aulton’s Pharmaceutics. The design and manufacture of medicinesAulton’s Pharmaceutics(M.E. Aulton and K.M.G. Taylor, editors, Churchill Livingstone Elsevier, Fourth Edition, 2013)という本、又はRemington Essentials of Pharmaceutics(L. Felton, editor, Pharmaceutical Press, 2013)という本、又はPharmaceutics. Basic principles and application to pharmacy practice(A.K. Dash, S. Singh, and J. Tolman, editors, Academic Press, Elsevier, 2014)という本である。
【0104】
剤形は、有効成分と、少なくとも1種の薬学的に活性な賦形剤とを含む。
【0105】
医薬剤形の調製に使用するのに適した賦形剤は、例えば、Handbook of pharmaceutical excipients(R.C. Rowe, P.J. Sheskey and M.E. Quinn, editors, Pharmaceutical Press, sixth edition, 2009)という本に記載されている。
【0106】
一実施形態において、本発明による固定用量の組合せは、錠剤、カプセル、及び顆粒又は粉末から選択される経口医薬剤形である。
【0107】
当技術分野でよく知られているように、固体剤形の調合に使用される一般的な賦形剤には、例えば、希釈剤(充填剤又は増量剤としても知られる)、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、固化防止剤、アルカリ化剤、崩壊剤及び湿潤剤が含まれる。その他の追加の賦形剤には、甘味料、香味料及び着色剤が含まれる。
【0108】
固体製剤の調製は、一般に、プロセスに液体を含む湿式法、又は液体を使用しない乾式法のいずれかによる造粒工程を含む。粉末及び顆粒は、それ自体が医薬剤形であり得、これは、小袋に装入されて、摂取され得、典型的には、事前に液体に溶解又は分散され得る。或いは、粉末及び顆粒を圧縮して錠剤にするか、カプセルに装入することができる。
【0109】
イブプロフェンアルギネートと、トラマドール又はその薬学的な塩との固定用量の組合せを含む経口製剤の調製は、欧州特許出願EP2474309-A1に記載されている。
【0110】
特に好ましい剤形は、350mg~450mg、好ましくは360mg~440mg、より好ましくは370mg~430mg、より一層好ましくは380mg~420mg、より一層好ましくは390mg~410mg、より一層好ましくは約400mg、より一層好ましくは400mgのイブプロフェンと、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に35mg~40mg、好ましくは36mg~39mg、より好ましくは約37.5mg、より一層好ましくは37.5mgのトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩、好ましくはトラマドール塩酸塩と、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2、より好ましくは1:1~1:1.2、より一層好ましくは1:1.05~1:1.1となる量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、顆粒、粉末、錠剤及びカプセルから選択される経口投与用の固定用量の組合せである。
【0111】
好ましい実施形態において、経口投与用の組成物は、約37.5mgのトラマドール塩酸塩と、約400mgのイブプロフェンと、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2となる量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含み、ここで、この医薬組成物は、顆粒、粉末、錠剤及びカプセルから選択される。
【0112】
好ましくは、経口組成物は、イブプロフェン、アルギニン及びトラマドール又は薬学的に許容可能な塩の上記固定用量の組合せと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とからなり、すなわち、組成物は、追加の有効成分を含まない。
【0113】
好ましい実施形態において、製剤は粉末又は顆粒である。
【0114】
好ましい実施形態において、製剤は錠剤である。
【0115】
好ましい実施形態において、製剤はカプセルである。
【0116】
別の実施形態において、本発明による固定用量の組合せは、静脈内に注射可能な組成物である。典型的には、静脈内に注射可能な組成物は、両方の有効成分を含む水溶液である。静脈内に注射可能な組成物のその他の一般的な成分は、例えば、当技術分野でよく知られているように、pH調整剤、等張化剤及び保存剤である。
【0117】
この静脈内に注射可能な組成物は、典型的には、注射用の水に有効成分及び任意の追加の賦形剤を溶解させることによって調製される。溶液は通常、滅菌され、例えば濾過及び/又はオートクレーブによって滅菌され、適切な容器に装入される。
【0118】
イブプロフェンアルギネートと、トラマドール又はその薬学的に許容可能な塩とを含む静脈内に注射可能な組成物の調製は、国際特許出願WO2013/124498-A1に記載されている。
【0119】
特に好ましい剤形は、350mg~450mg、好ましくは360mg~440mg、より好ましくは370mg~430mg、より一層好ましくは380mg~420mg、より一層好ましくは390mg~410mg、より一層好ましくは約400mg、より一層好ましくは400mgのイブプロフェンと、トラマドール塩酸塩の当量として表された場合に35mg~40mg、好ましくは36mg~39mg、より好ましくは約37.5mg、より一層好ましくは37.5mgのトラマドール又はその薬学的に許容可能な塩、好ましくはトラマドール塩酸塩と、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2、より好ましくは1:1~1:1.2、より一層好ましくは1:1.05~1:1.1となる量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、静脈内注射用の水溶液形態の固定用量の組合せである。
【0120】
好ましい実施形態において、組成物は、約37.5mgのトラマドール塩酸塩と、約400mgのイブプロフェンと、イブプロフェン:アルギニンのモル比が1.2:1~1:1.2であるような量のアルギニンと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、静脈内注射用の水溶液である。
【0121】
好ましくは静脈内に注射可能な組成物は、イブプロフェン、アルギニン及びトラマドール又は薬学的に許容可能な塩の上記固定用量の組合せと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とからなり、すなわち、組成物は、追加の有効成分を含まない。
【実施例】
【0122】
実施例1:歯科手術後の中等度から重度の疼痛を有する患者において、経静脈のイブプロフェンアルキネートと、異なる用量のトラマドールとの組合せの有効性を評価するための比較臨床試験
第III相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照のパイロット試験を実施して、歯科手術後に中等度から重度の疼痛に苦しむ患者において、経静脈のイブプロフェンアルギネート(400mg)と2種の異なる用量のトラマドール塩酸塩(37.5及び75mg)との組合せ、及び静脈内トラマドール100mgの有効性及び安全性の比較を評価した。
【0123】
視覚的アナログスケール(VAS)を使用して、疼痛強度を評価した。
【0124】
患者は4群に分けられ、以下の医薬が投与された。
-群1:イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400mg/37.5mg(16人の患者)
-群2:イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400mg/75mg(18人の患者)
-群3:トラマドールHCl 100mg(18人の患者)
-群4:プラセボ(生理食塩水)(17人の患者)
【0125】
酸性形態のイブプロフェンの量として、イブプロフェンアルギネート(400mg)の量を表す。群1及び2の各組成物中のL-アルギニンの量は356mgであり、これはイブプロフェン:アルギニンモル比1:1.054に相当する。
【0126】
群1~3の組成物は、注射用の水で調製された薬物の水溶液であった。組成物に含まれるその他の賦形剤は、塩化ナトリウム(浸透圧が310~360mOsm/kgに達するための等張化剤として使用される)、並びに塩酸及び水酸化ナトリウム(溶液のpHを6.8~7.8の値に調製する)である。すべての群における組成物の容量は100mLであり、単回投与で30分間静脈内注入された。群1に使用した組成物の調製は、実施例5に記載の調製と同様である。群2に使用した組成物の調製は、37.5mgのトラマドールHClの代わりに75mgのトラマドールHClを使用した以外は同じであった。
【0127】
試験のために選択された患者は、体重が50~110kgであり、少なくとも2本の第3大臼歯(そのうちの少なくとも1本は下顎第3大臼歯、そのうちの少なくとも1本は埋没第3大臼歯)を、骨除去を伴って外科的に抜歯した後に、中等度から重度の疼痛(VASカットオフ値0-100≧55mm)に苦しむ18歳以上の対象であった。
【0128】
したがって、歯科手術後に、各患者の疼痛強度が55mm以上の値に達するまで、VAS試験に従って各患者の疼痛強度を評価した。その時点で、無作為化された方法で4群のうちの1群に患者を割り当て、無作為化後15分以内及びVAS試験後25分以内に対応する医薬を投与した。注入の開始時に新たなVAS試験を実施し、これを基礎値とした。患者が手術から4時間後に必要な疼痛強度に達しない場合には、動員の失敗(recruitment failure)と見なされた。
【0129】
カットオフVAS値は55mmであったが、実際には、プラセボ群を除いて、すべての処置を受けた患者が約70mmからはるかに高いVAS基礎値を示したことは注目に値する。
【0130】
各医薬の投与後、疼痛強度の変化を評価することにより、患者の進展を4時間追跡した。
【0131】
試験医薬の投与後4時間まで、患者は、プロトコルに従って救急医薬として定義された鎮痛薬を除いて、その他の鎮痛薬を服用しなかった。
【0132】
患者は、各処置の投与後30分から開始して、その期間中に救急医薬を要求することができた。救急医薬は経口経路で投与される1gのパラセタモールであった。2回目の救急医薬が必要な場合には、575mgのメタミゾールのカプセルが投与された。試験医薬の投与後から4時間経過する前に救急医薬を投与した場合には、患者は試験終了とした(ただし、安全性パラメータを評価するために引き続き含まれ、さらに4時間モニターされた)。
【0133】
疼痛強度は、以下の時点で各患者について評価された:医薬投与後から0(基礎)、15、30、45、60、75、90、105、120、150、180、210及び240分。4群のそれぞれについて、平均VAS値が計算された。
【0134】
【0135】
【0136】
驚くことに、群1で投与されたトラマドールの投与量は、群2で投与されたトラマドールの投与量よりも大幅に少なかったが、すなわち、群2で投与されたトラマドールの投与量の半分であった(37.5mg(群1)対75mg(群2))が、疼痛の緩和は、群2の患者よりも群1の患者において優れていたことが見出された。
【0137】
これらの結果は驚くことであった。なぜなら、イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せが、トラマドールが2倍の用量であるイブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400/75mgの組合せよりも良好な疼痛の緩和を提供することは完全に予想外だったからである。
【0138】
また、驚くことに、オピオイドであるトラマドールの用量が顕著に少なかったにもかかわらず(37.5mg対100mg)、群1の患者における疼痛の緩和はまた、群3の患者における疼痛の緩和よりも著しく優れていることも見出された。
【0139】
救急医薬を必要とした各群の患者数及び副作用(AE)を報告した患者数を表2に示す。
【0140】
【0141】
群1において救急処置された患者の割合は、群2、3及び4において救急処置された患者の割合よりも低いことは注目に値する。したがって、本発明の組合せが特に効果的な疼痛緩和を提供することをさらに確認した。
【0142】
さらに、副作用を報告した患者の割合もまた群1において低く、これが最も安全な療法であることを確認した。
【0143】
要約すると、これらの結果は、静脈内投与される本発明によるイブプロフェンアルギニン/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せが、中等度から重度の急性術後疼痛の処置に効果的であること、このような組合せが、驚くことに、含まれるトラマドールの量が半分であるにもかかわらず、イブプロフェンアルギニン/トラマドールHCl 400/75mgの組合せと比較してより効果的であること、さらに、はるかに高用量(100mg)のトラマドールHCl単独を使用するよりも顕著に効果的であることを示している。
【0144】
さらに、本発明の組合せは、有効性の観点からだけでなく、安全性の観点からも最良の選択肢を提供する。
【0145】
実施例2:歯科手術後の中等度から重度の疼痛を有する患者において、経口イブプロフェンアルキネート/トラマドール(400/37.5)の有効性を評価するための比較臨床試験
第III相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の試験を実施して、歯科手術後に中等度から重度の体性痛に苦しむ成人患者(18歳以上)を処置するための、経口経路で投与されたイブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl(400mgのイブプロフェン/37.5mgのトラマドールHCl)の組合せの比較された有効性及び安全性を、経口トラマドール(50mg)、経口イブプロフェンアルギネート(400mgイブプロフェン)及びプラセボと比較して評価した。
【0146】
視覚的アナログスケール(VAS)を使用して、疼痛強度を評価した。
【0147】
試験のために選択された患者は、少なくとも2本の第3大臼歯を、骨除去を伴って外科的に抜歯した後に(もし2本のみの第3大臼歯を抜歯した場合には、それらは同側である必要があり、そのうちの少なくとも1本は埋没第3大臼歯である)、中等度から重度の疼痛(VAS0-100≧45mm)に苦しむ成人であった。
【0148】
患者は4群に分けられ、以下の医薬が投与された。
-群1:イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400mg/37.5mg(95人の患者)
-群2:イブプロフェンアルギネート 400mg(97人の患者)
-群3:トラマドールHCl 50mg(98人の患者)
-群4:プラセボ(93人の患者)
【0149】
酸性形態のイブプロフェンの量として、イブプロフェンアルギネート(400mg)の量を表す。
【0150】
群1の患者に投与されたイブプロフェンアルギネート/トラマドールHClの組合せは、経口投与用の顆粒の形態(実施例4に記載されている)であった。各投与量は340mgのL-アルギニンを含んだ。
【0151】
群2の患者に投与されたイブプロフェンアルギネート 400mgは、市販薬のEspidifen(登録商標)400mgに対応し、各用量は、770mgのイブプロフェンアルギネートとして与えられた400mgのイブプロフェンを含んだ。
【0152】
群3のトラマドールHCl 50mgの50mg用量は、市販薬Adolonta(登録商標)100mg/mL経口液剤を使用して投与された。
【0153】
歯科手術後に、各患者の疼痛強度が45mm以上の値に達するまで、VAS試験に従って各患者の疼痛強度を評価した。その時点で、無作為化された方法で4群のうちの1群に患者を割り当て、対応する医薬を投与した。1回目の医薬投与後に、新たなVAS試験を実施し、これを基礎値とした。6時間の投与間隔で各医薬を4回投与した。
【0154】
各医薬の投与後、疼痛強度の変化を評価することにより、患者の進展を最初の投与から24時間後まで追跡した。
【0155】
患者は、1回目の投与後30分から開始して、その期間中に救急医薬を要求することができた。救急医薬は経口経路で投与される1gのパラセタモールであった。2回目の救急医薬が必要な場合には、575mgのメタミゾールのカプセルが投与された。
【0156】
疼痛強度は、以下の時点で各患者について評価された:医薬投与後から0(基礎)、1、2、3、4、5、6、8、12及び24時間。4群のそれぞれについて、平均VAS値が計算された。
【0157】
例えば、6時間において、本発明による組合せで処置された群1の患者は、最大の疼痛緩和を達成し、以下の表3に示すように、平均疼痛強度の差(疼痛強度差、PID)は、群2(イブプロフェンアルギネート)、群3(トラマドールHCl)及び群4(プラセボ)に対してそれぞれ9mm、13mm及び18mmであったことが観察された(第1行、全集団、基礎VAS≧45mm)。
【0158】
さらに、驚くことに、VAS値のこのような差は、一般に、基礎VAS値が高い患者亜集団で増加することが見出された(表3、基礎VAS≧50、55及び60mmに対応する行を参照)。言い換えると、比較対照(群2、3及び4)に対する本発明(群1)による処置の優位性は、より激しい疼痛に苦しむ患者においてさらに高かった。
【0159】
【0160】
以下の表4に示すように、本発明による医薬を服用した群1における、救急医薬を必要とした患者の数は、患者のうちのわずか4.2%であり、これに対して、群2、4及び4における、救急医薬を必要とした患者の数は、患者のうちの6.2%、38.8%及び55.9%であった。
【0161】
【0162】
これらの結果は、経口投与される本発明によるイブプロフェンアルギニン/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せが、中等度から重度の歯科的術後疼痛の処置に効果的であること、及びより激しい疼痛に苦しむ患者に特に有効であることを示している。これらの結果はまた、このような組合せが、イブプロフェンアルギニン 400mg、トラマドールHCl 50mg及びプラセボと比較してより効果的であること、及びトラマドール50mgと比較してより安全であることも示している。
【0163】
実施例3:子宮摘出後の中等度から重度の疼痛を有する患者において、経口イブプロフェンアルキネート/トラマドールHCl(400/37.5)の有効性を評価するための比較臨床試験
第III相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の試験を実施して、非腫瘍性腹部子宮摘出後に内臓性の中等度から重度の疼痛に苦しむ成人患者(18歳以上)を処置するための、経口経路で投与されたイブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl(400mgのイブプロフェン/37.5mgのトラマドールHCl)の組合せの比較された有効性及び安全性を、経口トラマドール(50mg)、経口イブプロフェンアルギネート(400mgイブプロフェン)及びプラセボと比較して評価した。
【0164】
視覚的アナログスケール(VAS)を使用して、疼痛強度を評価した。
【0165】
試験のために選択された患者は、良性の非腫瘍性疾患に対する腹部子宮全摘出又は部分的子宮摘出後に、中等度から重度の疼痛(VAS0-100≧40mm)に苦しみ、少なくとも48時間の入院が必要である成人であった。
【0166】
患者は4群に分けられ、以下の医薬が投与された。
-群1:イブプロフェンアルギネート/トラマドールHCl 400mg/37.5mg(91人の患者)
-群2:イブプロフェンアルギネート 400mg(94人の患者)
-群3:トラマドールHCl 50mg(98人の患者)
-群4:プラセボ(93人の患者)
【0167】
酸性形態のイブプロフェンの量として、イブプロフェンアルギネート(400mg)の量を表す。
【0168】
群1の患者に投与されたイブプロフェンアルギネート/トラマドールHClの組合せは、経口投与用の顆粒の形態(以下の実施例4に記載されている)であった。各投与量は340mgのL-アルギニンを含んだ。
【0169】
群2の患者には、市販薬のEspidifen(登録商標)400mgが投与され、各用量は、770mgのイブプロフェンアルギネートとして400mgのイブプロフェンを含んだ。
【0170】
群3の患者には、市販薬のAdolonta(登録商標)100mg/mL経口液剤が投与され、用量50mgのトラマドールHClが投与された。
【0171】
手術後に、各患者の疼痛強度が40mm以上の値に達するまで、VAS試験に従って各患者の疼痛強度を評価した。その時点で、各患者を動員し(recruit)、無作為化された方法で4群のうちの1群に割り当て、対応する医薬を投与した。1回目の医薬投与後に、新たなVAS試験を実施し、これを基礎値とした。次いで、6時間の投与間隔で割り当てられた医薬をさらに7回投与して、各患者に合計8回投与した。
【0172】
各医薬の1回目の投与後に、疼痛強度の変化を評価することにより、患者の進展を最初の投与から48時間後まで追跡した。
【0173】
1回目の投与から30分後に、患者は、必要な場合には、救急医薬を要求することができた。救急医薬は経口経路で投与される1gのパラセタモールであった。2回目の救急医薬が必要な場合には、575mgのメタミゾールのカプセルが投与された。
【0174】
疼痛強度は、以下の時点で各患者について評価された:1回目の医薬投与後から0(基礎)、1、2、4、6、8、10、12、18、24、30、36、42及び48時間。4群のそれぞれについて、各時点における平均VAS値が計算された。
【0175】
評価されたすべての期間中、その他のすべての群と比較して、群1の疼痛緩和が優れていることが見出された。
【0176】
以下の表5に示すように、24時間の時点で、群2(イブプロフェン)、群3(トラマドール)及び群4(プラセボ)と比較した群1の平均VAS値の差は、それぞれ7mm、12mm及び22mmであった(第1行、全集団、基礎VAS≧40mm)。さらに、驚くことに、VAS値のこのような差(疼痛強度差、PID)は、一般に、基礎VAS値が高い患者亜集団で増加することが見出された(表5、基礎VAS≧50及び60mmに対応する行を参照)。言い換えると、比較対照(群2、3及び4)に対する本発明(群1)による処置の優位性は、より激しい疼痛に苦しむ患者においてさらに高かった。
【0177】
【0178】
トラマドール(群3)及びプラセボ(群4)と比較して、本発明による組成物(群1)は、6時間の時点から試験終了までのVAS試験における1cm超の差で、より高い疼痛の緩和を示した。
【0179】
群1は、処置の48時間の間に10mm超の疼痛の軽減(疼痛強度差、PID)を示した唯一の群であり、12時間で最も大きな差を示した。
【0180】
以下の表6は、試験の最初の24時間に救急医薬を必要とした各群の患者(24時間で救急処置された患者)及び救急医薬を服用した全患者を示す。最後の行は、救急医薬が必要になるまでの平均時間を示す。
【0181】
【0182】
群1(イブプロフェン/トラマドール)及び群4(プラセボ群)で報告された副作用の数に差はなかった。これは、特許請求された組合せの安全性を裏付けている。
【0183】
群3(トラマドール)で報告された副作用の数は、群1(イブプロフェン/トラマドール)で報告された副作用の数の2倍であった。
【0184】
これらの結果は、経口投与される本発明によるイブプロフェンアルギニン/トラマドールHCl 400/37.5mgの組合せが、中等度から重度の内臓性の術後疼痛の処置に効果的であること、及びより激しい疼痛に苦しむ患者に特に有効であることを示している。このような組合せは、イブプロフェンアルギニン 400mg、トラマドールHCl 50mg及びプラセボと比較してより効果的であること、及びトラマドール50mgより安全であることも示している。
【0185】
実施例4:400mgのイブプロフェン(イブプロフェンアルキネートとして)及び37.5mgのトラマドール塩酸塩を含む経口の固定用量組成物の調製
調製された経口組成物は、経口溶液用の顆粒の形態であり、すなわち、摂取前に水に溶解させることを意図していた。
【0186】
各用量には、400mgのイブプロフェンと、340mgのL-アルギニンと、37.5mgのトラマドール塩酸塩とを含む、1400mgの顆粒が含まれていた。組成物は、単回用量の小袋に装入された。
【0187】
成分のリストは表5に記載されている。
【0188】
【0189】
当技術分野でよく知られている標準的な技術に従って、顆粒を調製した。したがって、トラマドールHClと、スクロースの一部とを精製水に溶解させて、造粒溶液を調製した。イブプロフェンと、スクロースのさらに別の一部と、崩壊剤と、保湿剤とを最初に事前に混合し、次いで、ミキサー内で造粒溶液を添加することにより造粒した。顆粒を流動床で乾燥させ、顆粒外成分(L-アルギニン、スクロースの残り、アルカリ化剤、甘味料、香料及び流動促進剤)と混合し、ミキサー内で完全に混合した。得られた顆粒を小袋に装入し、それぞれの小袋は1400mgを含んだ。製剤中のイブプロフェン:アルギニンのモル比は1:1.0066であった。
【0190】
実施例5:400mgのイブプロフェン(イブプロフェンアルギネートとして)及び37.5mgのトラマドール塩酸塩を含む、静脈内に注射可能な固定用量組成物の調製
静脈内注入用の水性注射用製剤を調製した。単位用量をボトルに詰め、それぞれのボトルは100mLの製剤を含んだ。静脈内注射用製剤の調製に使用される成分を表7に示す。
【0191】
【0192】
製造プロセスは以下のとおりである。注射用水の一部(約70%)を反応器に導入し、透明な溶液が得られるまで連続的に撹拌しながら、トラマドールHCl、塩化ナトリウム、アルギニン及びイブプロフェンを添加した。HCl/NaOHでpHを6.8±0.2の値に調整した。最後に、残りの水を最終容量に達するまで添加した。得られた溶液を濾過し、ボトルに装入し、オートクレーブ滅菌した。
【0193】
製剤中のイブプロフェン:アルギニンのモル比は1:1.054であった。
【国際調査報告】