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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】廃触媒からの金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/68 20060101AFI20220912BHJP
   B01J 38/64 20060101ALI20220912BHJP
   B01J 38/04 20060101ALI20220912BHJP
   B01J 38/66 20060101ALI20220912BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20220912BHJP
   B01J 23/94 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B01J38/68 A
B01J38/64
B01J38/04 B
B01J38/66
B01J23/883 M
B01J23/94 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501263
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2020056420
(87)【国際公開番号】W WO2021005526
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/871,258
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/963,222
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バドゥリ、ラーフル シャンカール
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ、ブルース エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ、オレグ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】クーパーマン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シフレット、ウッドロウ ケイ.
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA10
4G169BC53A
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC66B
4G169BC68B
4G169CC02
4G169DA05
4G169DA08
4G169FC06
4G169FC07
4G169FC09
4G169GA06
4G169GA12
4G169GA13
(57)【要約】
廃触媒、特に廃スラリー触媒から金属を回収するための改善された方法が開示される。本方法及び本方法を含む関連プロセスは、石油及び化学処理産業で使用される触媒金属を回収するのに有用である。本方法は、一般に、乾式製錬法及び湿式製錬法に関係し、ソーダ灰と混ぜ合わされた不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物を含有する、廃触媒の苛性浸出残渣のソーダ灰か焼物を形成することと、ソーダ灰か焼物から可溶性VIB族金属及び可溶性VB族金属化合物を抽出及び回収すること、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱油廃触媒から金属を回収する方法であって、
硫黄及び炭素レベルを事前設定した量未満に減少させ、かつ、か焼廃触媒を形成するのに十分な第1の時間、第1の事前設定した温度で、酸化性条件下において、VIB族金属、VIII族金属、及びVB族金属を含む脱油廃触媒を加熱することと、
前記か焼廃触媒を苛性浸出液と接触させて、事前設定した浸出温度で、事前設定した浸出時間及び事前設定した浸出pHで廃触媒スラリーを形成することと、
前記廃触媒スラリーからの第1濾液と第1固体残渣を分離及び除去することであって、前記第1濾液は可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を含み、前記第1固体残渣は不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物を含む、前記分離及び除去することと、
前記不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物第1固体残渣を乾燥させることと、
前記乾燥したVIII族/VIB族/VB族金属化合物第1固体残渣を無水ソーダ灰と混ぜ合わせて、固体残渣/ソーダ灰混合物を形成することと、
前記金属化合物固体残渣/ソーダ灰混合物を、第2の事前設定した温度で、第2の事前設定した時間、ガス流条件下で加熱して、ソーダ灰か焼物を形成することと、
前記ソーダ灰か焼物から可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を浸出させるのに十分な温度及び時間で、前記ソーダ灰か焼物を水と接触させて、ソーダ灰か焼物スラリーを形成することと、
前記ソーダ灰か焼物スラリーから第2濾液と第2固体残渣を分離及び除去することであって、前記第2濾液は前記可溶性VIB族金属化合物及び前記可溶性VB族金属化合物を含み、前記第2固体残渣は不溶性VIII族金属化合物を含む、前記分離及び除去することと、
前記廃触媒スラリー第1濾液及び前記ソーダ灰か焼物スラリー第2濾液から前記可溶性VIB族金属化合物及び前記可溶性VB族金属化合物を回収することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記脱油廃触媒は、残留炭化水素を実質的に欠いているか、もしくは残留炭化水素を欠いているか、または約1000ppm、もしくは500ppm、もしくは100ppm未満の量の残留炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱油廃触媒は残留炭化水素を含み、前記プロセスは、残留炭化水素レベルを約1000ppm、または500ppm、または100ppm未満の量に減少させるのに十分な時間、事前設定した温度で非酸化性条件下において前記触媒を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記事前設定した温度は、約350℃~500℃の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱油廃触媒は、アルミナ、シリカ、チタニア、もしくはそれらの組み合わせを含む触媒担持物質を実質的に欠いているか、または、アルミナ、シリカ、チタニア、もしくはそれらの組み合わせを含む触媒担持物質は、前記触媒の調製に使用されていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記廃触媒は、スラリー触媒を含むか、またはスラリー触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化性加熱条件は、不活性ガス、空気、またはそれらの組み合わせの存在下で加熱することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化性加熱条件は、空気、または約20vol%以下の酸素を含むガス混合物の存在下で、前記第1の事前設定した温度で前記脱油廃触媒を加熱することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化性加熱条件は、約80vol%超の酸素を含むガス条件下で、前記第1の事前設定した温度で前記脱油廃触媒を加熱することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化性加熱条件は、空気、または約20vol%以下の酸素を含むガス混合物の存在下で、前記第1の事前設定した温度で前記脱油廃触媒を加熱した後、約80vol%超の酸素を含むガス条件下で、前記第1の事前設定した温度で前記脱油廃触媒を加熱することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の事前設定した温度は、約600℃~約650℃、もしくは約600℃~約650℃、もしくは約610℃~約630℃の範囲にあるか、または約600℃、もしくは約610℃、もしくは約620℃、もしくは約630℃、もしくは約640℃、もしくは約650℃超である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記硫黄及び炭素レベルは、約1wt%未満、または約0.8wt%未満、または約0.5wt%未満、または約0.2wt%、または約0.1wt%未満のCO及びSO排ガス分析により測定されて、個々または両方が、事前設定した量未満に減少する、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記事前設定した浸出温度は、約60~90℃、もしくは60~80℃、もしくは70~80℃の範囲にあるか、または約60℃、もしくは70℃超である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記事前設定した浸出温度は、約1~5時間、または約2~5時間、または約2~4時間の範囲にある、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記事前設定した浸出pHは、約9.5~11、または約10~11、または約10~10.5の範囲にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1濾液は、可溶性モリブデン酸塩もしくはバナジン酸塩化合物、またはそれらの混合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1濾液は、前記脱油廃触媒中に存在する、約80wt%超の前記VIB族金属もしくは約85wt%超の前記VB族金属を含有するか、または前記脱油廃触媒中に存在する、約80wt%超の前記VIB族金属と約85wt%超の前記VB族金属の両方を含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1固体残渣は、約110~140℃、または約110~130℃、または約120~130℃の範囲にある温度で、0.5~2時間、または1~2時間の範囲にある時間で乾燥される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1固体残渣は、水の量を約2wt%、または1wt%、または0.5wt%、または0.2wt%、または0.1wt%未満に減少させるのに十分な温度及び時間で乾燥される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1固体残渣は、VB族及び/またはVIB族金属化合物固体を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の事前設定した温度は、約600℃~約650℃、もしくは約600℃~約650℃、もしくは約610℃~約630℃の範囲にあるか、または約600℃、もしくは約610℃、もしくは約620℃、もしくは約630℃、もしくは約640℃、もしくは約650℃超である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の事前設定した時間は、約0.5~2時間、または1~2時間の範囲にある、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ガス流条件は、不活性ガスを含み、任意の排ガスを除去するのに十分である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ソーダ灰か焼物は、約60~90℃、もしくは60~80℃、もしくは70~80℃の範囲にある温度で、または約60℃もしくは70℃超の温度で水と接触して、前記ソーダ灰か焼物スラリーが形成される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ソーダ灰か焼物の浸出時間は、0.5~4時間、または1~3時間、または2~3時間の範囲にある、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ソーダ灰か焼物浸出は、pHを調整しないで実施される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2濾液は、モリブデン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、またはそれらの混合物を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2濾液は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超の量で、前記VB族及び/またはVIB族金属化合物中に存在する前記VB族金属を含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第2濾液は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超の量で、前記VB族及び/またはVIB族金属化合物中に存在する前記VIB族金属を含有する、請求項20または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記脱油廃触媒中に存在する前記VB族金属の全体的な抽出率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記脱油廃触媒中に存在する前記VIB族金属の全体的な抽出率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
VIB族及びVB族金属化合物を含む水性混合物からVIB族及びVB族金属化合物を別々に回収する方法であって、
前記金属化合物をVB族金属アンモニウム及びVIB族金属アンモニウム化合物に変換するのに有効なメタセシス反応条件下で、前記VIB族及びVB族金属化合物水性混合物をアンモニウム塩と接触させることと、
前記VB族金属アンモニウム化合物を含む前記混合物を、前記VB族金属アンモニウム化合物を結晶化させるのに有効な条件に付すことと、
前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物を、事前設定した洗浄温度で飽和VB族金属アンモニウム化合物洗浄溶液により濾過及び洗浄し、前記VB族金属アンモニウム化合物とVIB族金属アンモニウム化合物の濾液を別々に回収することと、
アンモニアを放出するのに有効な条件下で前記VB族金属アンモニウム化合物を加熱し、前記VB族金属化合物とアンモニアを別々に回収することと、
前記VIB族金属アンモニウム化合物の濾液を、VIB族金属酸化化合物の沈殿物及び無機酸のアンモニウム塩を形成するのに有効な条件下で前記無機酸と接触させることと、
前記VIB族金属酸化化合物の沈殿物を、事前設定した洗浄温度で飽和VIB族金属アンモニウム酸化化合物洗浄溶液により濾過及び洗浄し、前記VIB族金属酸化化合物の沈殿物を回収することと、
を含む、前記方法。
【請求項33】
前記VB族金属はバナジウムを含む、及び/または前記VIB族金属はモリブデンを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
VIB族及びVB族金属化合物を含む前記水性混合物は、前記VIB族化合物のナトリウム塩及び前記VB族金属化合物のナトリウム塩を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記アンモニウム塩は硝酸アンモニウムを含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記メタセシス反応条件は、約9未満、もしくは約8.5未満の範囲、もしくは約7~8.5、もしくは約8の範囲にあるpH;約80℃未満、もしくは約70℃未満、もしくは約50~70℃、もしくは55~65℃、もしくは約60℃の範囲にある温度;及び/または約0.25~2時間、もしくは約0.25~1.5時間、もしくは約0.5~1.5時間、もしくは約1~2時間の範囲にある反応時間を含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記メタセシス反応条件は、対応するバナジン酸アンモニウム化合物とナトリウム塩へのバナジン酸ナトリウムの前記変換を含む、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記メタセシス反応条件は、前記水性混合物の前記pHを約8~約9の範囲に調整することと、前記水性混合物に前記アンモニウム塩を添加することと、及び約7.5~8.5の範囲にある、好ましくは約8のpHでVB族金属アンモニウム化合物シードを前記水性混合物に添加すること、の連続工程を含む、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記VIB族/VB族金属化合物混合物は、水性濾液混合物、または廃触媒金属回収プロセスからの水性濾液混合物である、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記VB族金属アンモニウム化合物の結晶化条件は、0℃超~約15℃、または0℃超~約10℃の範囲にある温度、真空条件、及び約1時間~約6時間、または約1時間~約4時間、または約1時間~約3時間の結晶化時間を含む、請求項32~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物の前記濾過及び洗浄条件は、0℃超~約15℃、もしくは0℃超~約10℃の範囲にある洗浄温度、または約10℃の洗浄溶液温度を含み、好ましくは、前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物及び前記洗浄溶液はメタバナジン酸アンモニウムを含み、所望により、前記洗浄溶液は前記VB族金属アンモニウム化合物の結晶化のために再利用される、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記VB族金属アンモニウム化合物の前記加熱条件は、前記VB族金属アンモニウム化合物中に存在する量のうち少なくとも約90%、または95%、または98%、または99%の量のアンモニアを放出するのに十分な時間、約200~450℃、もしくは300~450℃、もしくは350~425℃、または約375~425℃の範囲にある温度で、前記VB族金属アンモニウム化合物を加熱することを含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記VIB族金属アンモニウム化合物の濾液を無機酸と接触させるための前記条件は、約50~80℃、または50~70℃、または55~70℃の範囲にある温度で前記無機酸を導入して、約1~3、または約1~2、または約1のpHを得ることを含み、好ましくは、前記無機酸は硝酸もしくは硫酸を含む、または硝酸である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記VIB族金属酸化化合物の沈殿物を飽和VIB族金属酸化アンモニウム化合物洗浄溶液で濾過及び洗浄する前記条件は、0℃超~約15℃、もしくは0℃超~約10℃の範囲にある洗浄温度、または約10℃の洗浄溶液温度を含み、好ましくは、前記洗浄溶液はヘプタモリブデン酸アンモニウムを含み、所望により、前記VIB族金属酸化化合物の濾過及び洗浄のために前記洗浄溶液が再利用される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記VIB族及びVB族金属化合物を含む前記水性混合物中に存在する前記VB族金属の全体的な回収率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記VIB族及びVB族金属化合物を含む前記水性混合物中に存在する前記VIB族金属の全体的な回収率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記VIB族及びVB族金属化合物を含む前記水性混合物は、脱油廃触媒に由来するものであるか、またはVIB族及びVB族金属化合物を含む濾液である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記飽和VB族金属アンモニウム化合物洗浄溶液は、前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物と同一の前記VB族金属アンモニウム化合物を含むか、または前記洗浄溶液の前記飽和VB族金属アンモニウム化合物は、前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物と同一の前記VB族金属アンモニウム化合物である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記飽和VIB族金属アンモニウム酸化化合物洗浄溶液は、前記結晶化VIB族金属アンモニウム酸化化合物と同一の前記VIB族金属アンモニウム酸化化合物を含むか、または前記洗浄溶液の前記飽和VIB族金属アンモニウム酸化化合物は、前記結晶化VB族金属アンモニウム化合物と同一の前記VIB族金属アンモニウム酸化化合物である、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記VIB族及びVB族金属化合物水性混合物は、請求項1に記載の前記第1濾液及び前記第2濾液を含む、請求項32~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
脱油廃触媒から金属を回収するための乾式製錬法と湿式製錬法を組み合わせた方法であって、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法及び請求項32~49のいずれか一項に記載の方法を含む、前記組み合わせ方法。
【請求項52】
請求項1~31のいずれか一項に記載の前記第1濾液及び前記第2濾液は、請求項32~49のいずれか一項に記載の前記VIB族及びVB族金属化合物水性混合物として使用される、請求項51に記載の組み合わせ方法。
【請求項53】
IIA族化合物が前記方法から除外されるか、またはカルシウム化合物が前記方法から除外されるか、または炭酸カルシウムが前記方法から除外される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月8日に出願された米国特許仮出願第62/871,258号、及び2020年1月20日に出願された同第62/963,222号に対する優先権の利益を主張し、これらの開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、廃スラリー水素化処理触媒を含めた廃触媒から金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
触媒は精製及び化学処理産業において、長年の間、広く用いられてきた。現在、水素処理及び水素化分解触媒を含めた水素化処理触媒が、世界中の施設で広く用いられている。もはや十分な活性がなくなった(あるいは他の理由で交換が必要になった)使用済みまたは「廃」水素化処理触媒は、通常、モリブデン、ニッケル、コバルト、バナジウムなどといった金属成分を含有している。
【0004】
粗原料油の重質化に伴い、精油業者は、水素化処理のために以前よりも多くの触媒を使用することと、原料油からの触媒の硫黄及び汚染物質を除去することの必要に迫られている。これらの触媒作用プロセスにより、大量の廃触媒が生成し、それらが有する金属価値に対する市場価値と環境への配慮から、触媒を金属回収源とすることができる。
【0005】
廃触媒から触媒金属を回収する種々のプロセスが文献に記載されている。例えば、米国特許第7,255,795号には、塩酸等の薬剤を用いて、酸性pHにおいてエチルキサントゲン酸カリウムにより、液体混合物由来のバナジウムを含む他の金属元素から、モリブデンをキサントゲン酸モリブデンとして抽出することが記載されている。米国特許公開第2007/0025899号は、モリブデン及びニッケル金属錯体を回収するための複数の工程及び装置を用いて、廃触媒からモリブデン、ニッケル、及びバナジウム等の金属を回収するプロセスを開示している。米国特許第6,180,072号は、少なくとも金属硫化物を含有する廃触媒から金属を回収するために、酸化工程及び溶媒抽出を必要とする、別の複雑なプロセスを開示している。米国特許第7,846,404号は、廃触媒の加圧酸化浸出によって生成したアンモニア性加圧浸出液から金属を回収するための、pH調整及び沈殿析出を用いるプロセスを開示している。米国特許公開第2007/0,025,899号は、モリブデン及びニッケル金属錯体を回収するための複数の工程及び装置を用いて、廃触媒からモリブデン、ニッケル、及びバナジウム等の金属を回収するプロセスをさらに開示している。米国特許第6,180,072号は、少なくとも金属硫化物を含有する廃触媒から金属を回収するために、溶媒抽出ならびに酸化工程を必要とする、別の複雑なプロセスを開示している。
【0006】
廃触媒からの触媒金属回収の進歩にもかかわらず、特に湿式製錬法においては、限定されないがモリブデン、ニッケル、及びバナジウムを含む廃触媒から触媒金属を回収するための改善及び簡略化されたプロセスに対する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、廃触媒、特にスラリー触媒等の廃水素化処理触媒から触媒金属を回収する方法を対象とする。本発明の目的の1つは、廃触媒金属回収プロセスを改善することであり、これにより金属回収のための資本及び運転費用が下がり、好ましくは金属回収効率が向上する。本発明は、触媒金属回収のための革新的かつ費用対効果の高い手段を提供する一方、触媒金属回収を全体的に改善して、オイル及びガスならびに金属回収産業における重要なニーズに応えるものでもある。
【0008】
廃触媒、特に廃スラリー触媒から金属を回収するための改善された方法が開示される。本方法及び本方法を含む関連プロセスは、石油及び化学処理産業で使用される触媒金属を回収するのに有用である。本方法は、一般に、乾式製錬及び湿式製錬技法ならびに方法の両方に関係する。乾式製錬法は、廃触媒の苛性浸出残渣のソーダ灰か焼物を形成することであって、そのか焼物はソーダ灰と混ぜ合わされた不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物を含有する、形成することと、ソーダ灰か焼物から可溶性VIB族金属及び可溶性VB族金属化合物を抽出及び回収することに関係する。湿式製錬法は、乾式製錬法と併用してもよく、VB族金属酸化化合物とVIB族金属酸化化合物との混合物とアンモニウム塩とのメタセシス反応と、VB族金属酸化アンモニウム化合物メタセシス生成物の結晶化及び分離後、アンモニアを除去してVB族金属酸化化合物を形成及び回収することと、VIB族金属酸化アンモニウム化合物の酸性化分離により、VIB族金属酸化化合物の沈殿物を形成及び回収すること、に関係する。
【0009】
一態様では、乾式製錬法は、触媒中に存在する硫黄及び炭素レベルを事前設定した量未満に減少させ、かつ、か焼廃触媒を形成するのに十分な第1の時間、第1の事前設定した温度で、酸化性条件下において、VIB族金属、VIII族金属、及びVB族金属を含む脱油廃触媒を加熱することと、か焼廃触媒を苛性浸出液と接触させて、事前設定した浸出温度で、事前設定した浸出時間及び事前設定した浸出pHで廃触媒スラリーを形成することと、廃触媒スラリーからの濾液と固体残渣の分離及び除去することであって、濾液は可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を含み、固体残渣は不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物を含む、分離及び除去することと、不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物固体残渣を乾燥させることと、乾燥したVIII族/VIB族/VB族金属化合物固体残渣を無水ソーダ灰と混ぜ合わせて、固体残渣/ソーダ灰混合物を形成することと、金属化合物固体残渣/ソーダ灰混合物を、第2の事前設定した温度で、第2の事前設定した時間、ガス流条件下で加熱して、ソーダ灰か焼物を形成することと、ソーダ灰か焼物から可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を浸出させるのに十分な温度及び時間で、ソーダ灰か焼物を水と接触させて、ソーダ灰か焼物スラリーを形成することと、ソーダ灰か焼物スラリーから濾液と固体残渣の分離及び除去することであって、濾液は可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を含み、固体残渣は不溶性VIII族金属化合物を含む、分離及び除去することと、廃触媒スラリー濾液及びソーダ灰か焼物スラリー濾液から可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を回収すること、を含む。
【0010】
別の態様では、本方法は一般に、廃触媒からの金属の回収率を高めるためのソーダ灰の使用に関するものであり、ソーダ灰か焼物は、廃触媒由来の可溶性VIB族金属及び可溶性VB族金属化合物の苛性浸出抽出物からの固体残渣とソーダ灰を混ぜ合わせることによって形成され、次いで、可溶性VIB族金属及び可溶性VB族金属化合物は、ソーダ灰か焼物から抽出及び回収される。
【0011】
さらなる態様では、湿式製錬法は、金属化合物をVB族金属アンモニウム及びVIB族金属アンモニウム化合物に変換するのに有効なメタセシス反応条件下で、VIB族/VB族金属化合物混合物をアンモニウム塩と接触させることと、VB族金属アンモニウム化合物を含む混合物を、VB族金属アンモニウム化合物を結晶化させるのに有効な条件に付すことと、結晶化VB族金属アンモニウム化合物を、事前設定した洗浄温度で飽和VB族金属アンモニウム化合物洗浄溶液により濾過及び洗浄し、VB族金属アンモニウム化合物とVIB族金属アンモニウム化合物の濾液を別々に回収することと、アンモニアを放出するのに有効な条件下でVB族金属アンモニウム化合物を加熱し、VB族金属化合物とアンモニアを別々に回収することと、VIB族金属アンモニウム化合物の濾液を、VIB族金属酸化化合物の沈殿物及び無機酸のアンモニウム塩を形成するのに有効な条件下で無機酸と接触させることと、VIB族金属酸化化合物の沈殿物を、事前設定した洗浄温度で飽和VIB族金属アンモニウム酸化化合物洗浄溶液により濾過及び洗浄し、VIB族金属酸化化合物の沈殿物を回収することにより、VIB族及びVB族金属化合物を含む混合物からVIB族及びVB族金属化合物を別々に回収することを含む。
【0012】
本発明の範囲は、この開示に付随する任意の代表的な図によって限定されず、本願の特許請求の範囲によって定義されると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による脱油廃触媒から金属を回収する乾式製錬法の実施形態を概略して説明する一般的なブロックダイアグラムである。
図2】本発明による脱油廃触媒から金属を回収する湿式製錬法の実施形態を概略して説明する一般的なブロックダイアグラムである。
図3】本発明による脱油廃触媒から金属を回収する乾式/湿式製錬法の組み合わせの実施形態を概略して説明する一般的なブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、1つまたは複数の態様の例示的な実施形態を示すが、開示したプロセスは、任意数の技法を使用して実施され得る。本開示は、本明細書で説明及び記載する模範的な設計及び実施形態を含む、本明細書で説明する例示的または具体的な実施形態、図面、及び技法に限定されず、添付の特許請求の範囲内の他、それらの均等物の全範囲内で変更されてもよい。
【0015】
特に指示がない限り、以下の用語、専門用語、及び定義を本開示に適用できる。本開示で用いられているが、本明細書で具体的に定義されていない用語の場合、定義が任意の他の開示または本明細書に適用される定義と矛盾しない限り、あるいはその定義が適用される任意の請求項を不明確または不可能にすることのない限り、the IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed (1997)からの定義が適用され得る。参考として本明細書に組み込まれている任意の文献により示される任意の定義または用法が、本明細書に示される定義または用法と矛盾する範囲で、本明細書に示される定義または用法が適用されると理解されたい。
【0016】
「スラリー触媒」は、「バルク触媒」または「非担持触媒」もしくは「自己担持触媒(self-supported catalyst)」と交換可能に使用され得、触媒組成物が、予め形成され次いで含浸または沈着触媒により金属が担持される、成形触媒担体を有する従来の触媒形態ではないことを意味する。このようなバルク触媒は、沈殿によって形成され得るか、または触媒組成物に組み込まれる結合剤を有し得る。スラリーまたはバルク触媒はまた、金属化合物から形成され、いかなる結合剤も有し得ない。スラリー形態において、このような触媒は、炭化水素油等の液体混合物中に分散した粒子、すなわち「スラリー触媒」を含む。
【0017】
「重質油」供給物または原料油は、重質及び超重質原油を指し、残油、石炭、ビチューメン、タールサンド、廃棄物の熱分解から得られる油、ポリマー、バイオマス、コークス由来の油及びオイルシェールなどを含むが、それらに限定されない。重質原料油は、液体、半固体、及び/または固体であり得る。重質原料油の例は、カナダのタールサンド、ブラジルのサントス及びカンポス盆地、エジプトのスエズ湾、チャド、ベネズエラのスリア、マレーシア、ならびにインドネシアのスマトラからの減圧残油を含むが、それらに限定されない。重質原料油の他の例は、「バレル残渣油」及び「残留油」(もしくは「残油」)、少なくとも650°F(343℃)の沸点を有する大気圧塔残渣油、もしくは少なくとも975°F(524℃)の沸点を有する減圧塔残渣油、または975°F(524℃)以上の沸点を有する「残油ピッチ」及び「減圧残渣」を含む、精油プロセスから残った残留油を含む。
【0018】
「処理」、「処理された」、「改良」、「改良する」及び「改良された」は、重質原料油に関連して使用される場合、重質原料油の分子量が低下した、重質原料油の沸点範囲が縮小した、アスファルテン濃度が低下した、炭化水素フリーラジカル濃度が低下した、ならびに/または、硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属等の不純物の量が低下した、水素化処理に付されている、もしくは付された重質原料油、または得られた物質もしくは粗生成物を表す。
【0019】
重質油供給物の改良または処理は、本明細書において、概して「水素化処理」(水素化分解、または水素化変換)として指される。水素化処理は、水素の存在下で行われる任意のプロセスを意味し、水素化変換、水素化分解、水素化、水素処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素異性化、水素化脱ろう、及び選択的水素化分解を含む水素化分解を含むが、それらに限定されない。
【0020】
用語「水素」は、水素それ自体、及び/または水素源を提供する化合物(複数可)を指す。
【0021】
「炭化水素質(Hydrocarbonaceous)」、「炭化水素」及び同様の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含有する化合物を指す。炭化水素中に特定の基が存在する場合には、その存在を指し示すために他の識別名が使用され得る(例えば、ハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の同数の水素原子を置換している1つまたは複数のハロゲン原子の存在を指し示す)。
【0022】
「廃触媒」は、水素化処理操作に使用されており、それによってその活性が減少している触媒を指す。概して、特定の温度における触媒の反応速度定数が、新鮮な触媒と比較して、ある特定の値を下回る場合、その触媒は「廃(使用済み)」と呼ばれ得る。状況次第では、「廃」であり得る触媒の反応速度定数は、新鮮な未使用触媒と比較して80%以下であり、または別の実施形態では、ことによると50%以下である。一実施形態では、廃触媒の金属成分は、(周期表の)VB族、VIB族、及びVIII族金属、例えば、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)のうち少なくとも1つを含む。回収しようとする金属で最も一般的に見受けられるのは、Moである。必ずしもこれに限定されるものではないが、廃触媒は、通常、Mo、Ni、及びVの硫化物を含有する。
【0023】
「脱油廃触媒」は、一般に、脱油処理に付されてある本明細書の上記「廃触媒」を指す。概して、脱油廃触媒は、未変換油等のいくらかの残油炭化水素及び/または水素化処理生成物、ならびに他の化合物及び物質を含有する。例えば、脱油廃触媒は、通常、15wt%以上の残留炭化水素、または、このような炭化水素を除去するために処理された場合には、1wt%以下、もしくは1000ppm以下等の低減された量を含有し得る。このような追加の成分についての含有量の詳記は、用語が一般的か具体的かを問わず、必要に応じて本明細書に明記する。
【0024】
「金属」は、元素、化合物、またはイオン形態としての金属を指す。「金属前駆体」は、方法においての、またはプロセスへの金属化合物供給物を指す。単数形の用語「金属」、「金属前駆体」、または「金属化合物」は、単一の金属、金属前駆体、または金属化合物、例えばVIB族、VIII族、またはV族金属に限定されず、金属混合物についての複数形の言及も含む。VIB族、VIII族、もしくはV族金属または金属化合物に関する用語「可溶性」及び「不溶性」は、特に指定しない限り、金属成分がプロトン性液体形態であること、または金属もしくは金属化合物が特定の段階または溶媒において可溶性もしくは不溶性であることを意味する。
【0025】
「IIB族」または「IIB族金属」は、元素、化合物、またはイオン形態のいずれかとしての亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0026】
「IVA族」または「IVA族金属」は、元素、化合物、またはイオン形態のいずれかとしてのゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、または鉛(Pb)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0027】
「V族金属」は、元素、化合物、またはイオン形態としてのバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0028】
「VIB族」または「VIB族金属」は、元素、化合物、またはイオン形態のいずれかとしてのクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0029】
「VIII族」または「VIII族金属」は、元素、化合物、またはイオン形態のいずれかとしての鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Rh)、ロジウム(Ro)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びそれらの組み合わせを指す。
【0030】
Moまたは「モリブデン」への言及は、VIB族金属としての例証のために過ぎず、他のVIB族金属/化合物及びVIB族金属/化合物の混合物を除外することを意味するものではない。同様に、「ニッケル」への言及は例証のために過ぎず、水素化処理触媒に用いられることがある他のVIII族非貴金属成分、VIIIB族金属、VIB族金属、IVB族金属、IIB族金属及びそれらの混合物を除外することを意味するものではない。同様に、「バナジウム」への言及は、廃触媒中に存在し得る任意のVB族金属成分についての例証のために過ぎず、金属回収に使用される廃触媒中に存在し得る他のVB族金属/化合物及び混合物を除外することを意図するものではない。
【0031】
存在し得る金属化合物を説明するために、用語「VIII族/VIB族/VB族」を用いることで表される金属化合物の組み合わせを説明することは、VIII族、VIB族、またはVB族金属化合物ならびにそれらの任意の組み合わせが存在し得ることを意味するように意図している。例えば、廃触媒が、酸素及び/または硫黄を含有している化合物として、Mo、V、Ni、及びFeの金属化合物を含む場合、用語「VIII族/VIB族/VB族」は、単一及び混合金属化合物、すなわちVIII族、VIB族、VB族金属、またはそれらの組み合わせを含む金属化合物、を含むと理解されるべきである。代表的な化合物としては、例えば、MoS、V、NiS、FeS、MoO、V、NiO、V、Fe、NiMoO、FeVOなどが挙げられる。同様に、用語「VB族/VIB族」金属(複数可)及び金属酸化物(複数可)は、VB族、VIB族金属、もしくはそれらの組み合わせを含む金属または金属酸化化合物を指す。
【0032】
用語「担体」は、特に用語「触媒担体」において使用されるように、通常、表面積が大きい固体であり、それに触媒物質が付着される従来の物質を指す。担体物質は、不活性であり得るかまたは触媒反応に関与し得、多孔質または非多孔質であり得る。典型的な触媒担体としては、種々の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、ならびにこれらに他のゼオライト及び他の複合酸化物を添加することにより得られた物質が挙げられる。
【0033】
「モレキュラーシーブ」は、枠構造内に均一な分子細孔径を有する物質を指し、それによってモレキュラーシーブの型に応じて特定の分子のみがモレキュラーシーブの細孔構造に接近し、他の分子が、例えば、分子サイズ及び/または反応性によって除外される。ゼオライト、結晶性アルミノホスフェート、及び結晶性シリコアルミノホスフェートは、モレキュラーシーブの代表的な例である。
【0034】
本開示において、組成物及び方法またはプロセスは、しばしば様々な構成要素または工程「を含む(comprising」」点から説明されるが、組成物及び方法は、特に指定しない限り、様々な構成要素または工程「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of」」こともあり得る。
【0035】
用語「a」、「an」、及び「the」は、複数の代替(例えば、少なくとも1つ)を含むように意図している。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」の開示は、特に規定しない限り、1種の遷移金属もしくはアルカリ金属、または2種以上の遷移金属もしくはアルカリ金属の混合物または組み合わせを包含することを意味する。
【0036】
本明細書の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲における全ての数値は、指定値を「約(about)」または「おおよそ(approximately)」で修飾してあり、当業者が予想するであろう実験上の誤差及び変動を考慮している。
【0037】
本発明は、脱油廃触媒から金属を回収するための方法である。一態様では、本方法は、
硫黄及び炭素レベルを事前設定した量未満に減少させ、かつ、か焼廃触媒を形成するのに十分な第1の時間、第1の事前設定した温度で、酸化性条件下において、VIB族金属、VIII族金属、及びVB族金属を含む脱油廃触媒を加熱することと、
か焼廃触媒を苛性浸出液と接触させて、事前設定した浸出温度で、事前設定した浸出時間及び事前設定した浸出pHで廃触媒スラリーを形成することと、
廃触媒スラリーからの濾液と固体残渣を分離及び除去することであって、濾液は可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を含む、固体残渣は不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物を含む、分離及び除去することと、
不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物固体残渣を乾燥させることと、
乾燥したVIII族/VIB族/VB族金属化合物固体残渣を無水ソーダ灰と混ぜ合わせて、固体残渣/ソーダ灰混合物を形成することと、
金属化合物固体残渣/ソーダ灰混合物を、第2の事前設定した温度で、第2の事前設定した時間、ガス流条件下で加熱して、ソーダ灰か焼物を形成することと、
ソーダ灰か焼物から可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を浸出させるのに十分な温度及び時間で、ソーダ灰か焼物を水と接触させて、ソーダ灰か焼物スラリーを形成することと、
ソーダ灰か焼物スラリーから濾液と固体残渣を分離及び除去することであって、濾液は可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を含み、固体残渣は不溶性VIII族金属化合物を含む、分離及び除去することと、
廃触媒スラリー濾液及びソーダ灰か焼物スラリー濾液から可溶性VIB族金属化合物及び可溶性VB族金属化合物を回収すること、
を含む、乾式製錬法を含む。
【0038】
本発明の方法では、2つの浸出抽出段階を用いることにより、触媒金属の回収率を向上させる。第1は、脱油廃触媒の苛性浸出抽出であり、第2は、苛性浸出抽出段階から得られた不溶性残渣をソーダ灰と組み合わせることにより形成されたソーダ灰か焼物の水浸出抽出である。本方法では、他の溶剤を添加するか、または苛性浸出液もしくはソーダ灰の使用と併せた追加の有機及び/もしくは無機化合物処理の使用など、追加の抽出段階を(本方法内で)用いる必要がない。このように、本方法により、廃触媒から金属を回収するための費用対効果の高い簡便な手段が提供される。
【0039】
廃触媒は、一般的に、V、NbなどのVB族金属、Ni、CoなどのVIII族金属、FeなどのVIIIB族金属、TiなどのIVB族金属、ZnなどのIIB族金属、及びそれらの組み合わせから選択される金属を任意に含有する、バルク非担持VIB族金属硫化物触媒に由来する。選択された特性を改善するために、または触媒活性及び/もしくは選択性を調整するために、特定の追加金属が触媒調製に加えられることがある。廃触媒は、炭化水素油の水素化処理用にVIII族金属で促進された分散(バルクまたは非担持)VIB族金属硫化物触媒に由来するものであり得、または、別の実施形態において、廃触媒はVIII族金属硫化物触媒に由来するものであり得る。また、廃触媒は、VIB族金属硫化物から本質的になる触媒に由来するものであり得、または、別の実施形態において、廃触媒は、分散またはスラリー触媒の形態であるバルク触媒に由来するものであり得る。バルク触媒は、例えば、コロイド状または分子状触媒であり得る。
【0040】
本方法における廃触媒として使用するのに適した触媒は、米国特許公開第US20110005976A1号、第US20100294701A1号、第US20100234212A1号、第US20090107891A1号、第US20090023965A1号、第US20090200204A1号、第US20070161505A1号、第US20060060502A1号、及び第US20050241993A号を含む、多数の公報に記載されている。
【0041】
一実施形態におけるバルク触媒は、米国特許第7,901,569号、第7,897,036号、第7,897,035号、第7,708,877号、第7,517,446号、第7,431,824号、第7,431,823号、第7,431,822号、第7,214,309号、第7,390,398号、第7,238,273号及び第7,578,928号、米国公開第US20100294701A1号、第US20080193345A1号、第US20060201854A1号、及び第US20060054534A1号を含む多数の公報に記載されているように(関連する開示が参照により本明細書に含まれる)、重質油製品の改良のために使用される。
【0042】
金属回収前、及び重質油改良後に、廃触媒は、油等の残留炭化水素、沈殿したアスファルテン、他の残油などを除去するために処理され得る。脱油前の廃触媒は、通常、炭素微粉末、金属微粉末、及び(廃)非担持スラリー触媒を未変換炭化水素残油中で含有し、固形物含有率は5~50wt%の範囲に及ぶ。脱油処理プロセスには、油除去用の溶剤の使用、及び脱油廃触媒を回収するための後続の液体/固体分離工程が含まれ得る。処理プロセスには、廃触媒から炭化水素を除去するための熱処理工程、例えば、乾燥及び/または熱分解がさらに含まれ得る。他の態様では、脱油には、廃触媒から油を洗浄/除去するために、任意で界面活性剤及び添加剤を用いた、亜臨界濃厚相ガスの使用が含まれ得る。
【0043】
脱油後の廃触媒は、通常、未変換残油として5wt%未満の炭化水素、または、より詳細には、2wt%未満の炭化水素、もしくは1wt%未満の炭化水素を含有する。脱油廃触媒において回収される金属の量は、一般に、水素化処理で使用する触媒の組成上の構成、例えば、硫化VIB族金属触媒、VIB族金属及びVIII族金属を含有するバイメタル触媒、または少なくともVIB族金属と他の(例えば、助触媒)金属(複数可)を有する多金属触媒、に依存する。油除去処理プロセス後、回収する金属を含有する廃触媒は、コークス状物質の形態であり得、これを後続の金属回収プロセスに対応するように粉砕して、通常、0.01~約100ミクロンの範囲にある粒径にすることがある。
【0044】
脱油または廃触媒からの炭化水素除去については、US7790646、US7737068、WO20060117101、WO2010142397、US20090159505A1、US20100167912A1、US20100167910A1、US20100163499A1、US20100163459A1、US20090163347A1、US20090163348A1、US20090163348A1、US20090159505A1、US20060135631A1、及びUS20090163348A1を含む多数の公報に記載されている。
【0045】
本発明の実施形態による乾式製錬方法またはプロセスの実例を、図1に概略的に示す。脱油廃触媒(DSC)、例えば、本明細書に記載されているような残留炭化水素を欠くまたは実質的に欠く触媒は、加熱または焙焼段階10に送り込まれて、触媒中に存在する硫黄及び/または炭素含有量が事前設定した量未満に減少し、17を経て、か焼段階20で、か焼廃触媒が形成される。加熱/焙焼及びか焼工程は、同一のまたは異なる装置で、個別のバッチまたは連続プロセス工程で実施され得る。触媒からの硫黄及び炭素の排ガスは、先に記載した通り、か焼に必要な時間(またはか焼工程の完了)を確立するために使用され得る。廃触媒か焼物は、27を経て、通常、約15wt%の固形物含有量で数時間(2~3時間)、約75℃で、NaOH(例えば、約10.2のpH)を含む苛性浸出液による抽出(浸出)段階30に付される。浸出スラリーは、37を経て、通常、洗浄液42、例えばアルカリ温水で、固体残渣から濾液45が分離される(40)。濾液は、可溶性VIB族及びVB族金属を含み、その後47の金属回収のために分離され、不溶性固体残渣は、含水量が適切な量、例えば約1wt%未満になるまで、例えば125℃で乾燥される(50)。乾燥した固体残渣は、57を経て、無水ソーダ灰(例えば、主に100μm未満の粒径である粒状ソーダ灰)と混合され(60)、乾燥した混合物は、67を経て、か焼される(70)。ソーダ灰か焼物を形成するための典型的なか焼条件としては、600~650℃の範囲にある温度が挙げられる。ソーダ灰か焼物は、77を経て、可溶性VIB族及びVB族金属化合物を抽出するために、通常60~90℃の温度で水と混合されて(80)、ソーダ灰か焼物スラリーが形成される。スラリーは、87を経て可溶性VIB族及びVB族金属化合物を含む濾液95と、不溶性化合物(例えば、Ni、Fe及びその他の金属化合物等)を含む残渣96とに分離される(90)。濾液45及び95は、VB族及びVIB族金属化合物を回収するために、例えば、V及びMoOとしてのバナジウム及びモリブデンの場合、さらなるプロセスに付され得る。残渣96も、可能性がある金属回収のためにさらに処理され得るか、または製錬所に送られ得る。
【0046】
最初の加熱/焙焼段階(図1の10)は、一般に、必要な際または適宜、その後の廃触媒のか焼の前に、残留炭化水素を除去するために用いられる。前処理されている触媒で獲得され得るような、残留炭化水素の含有量が低い、例えば、約1000ppm未満の脱油廃触媒では、最初の加熱/焙焼段階は必要がない可能性がある。これに限定されるものではないが、加熱は、例えば、アルゴン等の不活性ガスの下で、残留炭化水素を除去するのに適した時間(例えば、1~2時間)、初期温度、例えば350~500℃の範囲まで緩やかに昇温させることを含み得る。
【0047】
続いて、廃触媒のか焼は、通常、酸化性ガス条件下(例えば、アルゴン等の不活性ガスと空気の混合ガス)で、好適な時間(例えば、通常1~2時間超及び約24時間未満、または、より詳細には約12時間未満)、適切なか焼温度、例えば600~650℃の範囲まで温度を上げることにより実施して、か焼廃触媒を形成する。概して、か焼廃触媒はまた、か焼の適切な終点を決定するために、か焼段階の間、CO及びSO除去についての排ガス分析によりモニターされ得る。例えば、CO及びSOレベルが約1wt%未満、または約0.8wt%未満、または約0.5wt%未満、または約0.2wt%未満、または約0.1wt%未満であることが終点となり得る。
【0048】
廃触媒か焼工程の間、酸化性加熱条件は、一般に、不活性ガス、空気、またはそれらの組み合わせの存在下で加熱することを含む。酸化条件は必要に応じて変化させることができ、例えば、約20vol%以下の酸素を含む初期ガス環境に続いて、約80vol%超の酸素を含むガス環境も使用し得る。
【0049】
廃触媒のか焼の間、例えば、触媒が、例えば、Mo、Ni、V、Fe、C、及びSを含む場合、以下の代表的な反応により、可溶性及び不溶性金属化合物ならびに排ガス生成物が形成されると考えられる。
【化1】
【0050】
廃触媒か焼に続いて、浸出抽出工程を実施して可溶性金属化合物を浸出し、第1濾液及び不溶性VIII族/VIB族/VB族金属化合物(複数可)を含む不溶性金属化合物(複数可)残渣を形成する。濾液は、通常、可溶性モリブデン酸塩及びバナジン酸塩化合物を含み、不溶性化合物は、通常、混合金属化合物を含む。例えば、先に述べた代表的な反応の場合、このような不溶性金属化合物は、NiMoO及びFeVOを含むと考えられる。必ずしもこれに限定されるものではないが、典型的な浸出条件は、約60~90℃、もしくは60~80℃、もしくは70~80℃の範囲、または約60℃、もしくは70℃超の浸出温度、約1~5時間、または約2~5時間、または約2~4時間の範囲にある浸出時間、及び約9.5~11、または約10~11、または約10~10.5の範囲にある浸出pHを含む。
【0051】
第1濾液は、一般に、脱油廃触媒中に存在する約80wt%超のVIB族金属、もしくは約85wt%超のVB族金属、または脱油廃触媒中に存在する約80wt%超のVIB族金属及び約85wt%超のVB族金属の両方を含有する。
【0052】
苛性浸出段階からの残渣は、通常、VB族/VIB族金属酸化物固体を含み、続いて濾液から分離され、適切な条件下で、例えば、約110~140℃、または約110~130℃、または約120~130℃の範囲にある温度で、0.5~2時間、または1~2時間の範囲にある時間で乾燥される。典型的には、第1固体残渣は、水の量を約2wt%、または1wt%、または0.5wt%、または0.2wt%、または0.1wt%未満に減少させるのに十分な温度及び時間で乾燥される。
【0053】
乾燥した苛性浸出残渣は、続いて適切な条件下で無水ソーダ灰と混合されて、固体残渣/ソーダ灰の、十分混合された粒状または粉末状混合物が形成される。固体残渣/ソーダ灰混合物は、続いて加熱/焙焼か焼工程に付されて、通常、約600℃~650℃、または約600℃~650℃、または約610℃~630℃、または約600℃超、または約610℃、または約620℃、または約630℃、または約640℃、または約650℃の範囲にある第2の事前設定温度で、約0.5~2時間、または1~2時間の範囲にある第2の事前設定時間で、ソーダ灰か焼物が形成される。任意の排ガスを除去するために十分な、通常不活性ガスを含む、ガス流条件が用いられる。
【0054】
ソーダ灰か焼物は、続いて、通常約60~90℃、もしくは60~80℃、もしくは70~80℃の範囲にある温度で、または約60℃もしくは70℃超の温度で水と接触して、ソーダ灰か焼物スラリーが形成される。これに限定されるものではないが、ソーダ灰か焼物の浸出時間は、通常、0.5~4時間、または1~3時間、または2~3時間の範囲にある。必要に応じてpHを変更してもよいが、通常、この工程の間にpHを変更する必要はない。第2濾液中に存在する代表的な金属化合物は、モリブデン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウム、またはこれらの混合物を含む。
【0055】
より大まかには、第2濾液は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超の量で、VB族/VIB族金属酸化物中に存在するVB族金属を含有する。加えて、第2濾液は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超の量で、VB族/VIB族金属酸化物中に存在するVIB族金属を含有する。
【0056】
固体残渣/ソーダ灰混合物のか焼の間、例えば、触媒が、例えば、Mo、Ni、V、Fe、C、及びSを含む場合、以下の代表的な反応により、可溶性及び不溶性金属ならびに排ガス生成物が形成されると考えられる。
【化2】
【0057】
苛性浸出抽出段階からの第1濾液、及びソーダ灰か焼物水浸出抽出段階からの第2濾液は、可溶性VB族及びVIB族金属を回収するために、さらに加工及び/または処理され得る。このようなさらなるプロセスのために用いられ得る従来の工程に関する詳細は、本明細書では提供されない。
【0058】
廃触媒金属の全体的な抽出率に関しては、脱油廃触媒中に存在するVB族金属の全体的な抽出率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である。同様に、脱油廃触媒中に存在するVIB族金属の全体的な抽出率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超である。
【0059】
本発明の実施形態による湿式製錬方法またはプロセスの実例を、図2に概略的に示す。VIB族金属化合物及びVB族金属化合物水性混合物を含む、1つまたは複数のソース、例えば図1に示した乾式製錬法からの廃触媒濾液ストリーム45及び95、からの濾液(F)は、メタセシス反応条件下でアンモニウム塩102と混合されて(100)、金属化合物がVB族金属アンモニウム及びVIB族金属アンモニウム化合物に変換される。メタセシス反応混合物は、続いて、VB族金属アンモニウム化合物を結晶化させるのに有効な結晶化条件107、110に付される。結晶化VB族金属アンモニウム化合物は、続いて分離120に向けて117を通り、VB族金属アンモニウム化合物及びVIB族金属アンモニウム化合物の濾液が回収される。VB族金属アンモニウム化合物結晶の濾過及び洗浄には、必要に応じて、事前設定した洗浄温度での飽和VB族金属アンモニウム化合物洗浄溶液122が使用され得る。VB族金属アンモニウム化合物は、続いて、加熱130及びアンモニアを放出するのに有効な条件下でのアンモニア除去のために、そして、VB族金属化合物135及びアンモニア137を別々に回収するために、127を通る。分離工程120からのVIB族金属アンモニウム化合物の濾液は、続いて、VIB族金属酸化化合物の沈殿物と無機酸アンモニウム塩の混合物を形成するのに有効な条件下で、無機酸142との混合140を通る。沈殿物と塩の混合物は、続いて、VIB族金属酸化化合物の沈殿物の分離150に向けて147を通り、VIB族金属酸化化合物の沈殿物157が回収される。VIB族金属酸化化合物の沈殿物の濾過及び洗浄には、必要に応じて、事前設定した洗浄温度での飽和VIB族金属酸化アンモニウム化合物洗浄溶液152が使用され得る。分離150からの濾液155は、続いて、必要に応じてさらなる金属回収工程、例えば、イオン樹脂を介する交換工程、に付され得、所望によりアンモニアの回収/再利用を伴う。
【0060】
濾液(F)とアンモニウム塩との混合は、通常、VIB族及びVB族金属化合物をVB金属アンモニウム及びVIB金属アンモニウム化合物に変換するのに有効な条件下で実施される。メタバナジン酸アンモニウム(AMV)等のシード結晶が、通常、約2000~8000ppm、または4000~6000ppm、または約5000ppmの濃度で使用され得る。典型的には、AMVシードを導入する際のpH範囲は約8未満である。当業者はメタセシス反応を行うための適切な方法を容易に決定し得るが、1つの有用な手順は、まず硝酸を用いてpHを約9まで下げ、続いて硝酸アンモニウムを導入し、約8未満、好ましくは8以下、または7.5~8.5、もしくは7.5~8の範囲にあるpHでAMVシードを導入することである。
【0061】
濾液(F)の混合及びメタセシス反応の間、例えば、濾液が、例えば、Mo、Ni、V、Fe、C、及びSを含む廃触媒に由来する場合、以下の代表的な反応により、可溶性(Mo)及び不溶性(V)金属化合物が形成されると考えられる。
【化3】
【0062】
結晶化条件では、例えば、メタバナジン酸アンモニウム(AMV)結晶が生成する場合、通常、減温及び減圧を伴い、例えば、約21in.Hgの真空下で約10℃の温度が使用され得る。当業者は、異なる温度及び圧力(真空)条件ならびに結晶化時間が使用され得ることを理解するであろう。概して、0℃超~約15℃、または0℃超~約10℃の範囲にある温度、真空条件、及び約1時間~約6時間、または約1時間~約4時間、または約1時間~約3時間の結晶化時間が有用である。減温した洗浄溶液を用いた結晶の濾過及び洗浄には、例えば、約10℃での約5000ppmのAMV洗浄溶液が使用され得る。結晶化工程への洗浄溶液の再利用を伴う約2~5回、または約3回の複数回洗浄もまた用いられ得る。典型的には、0℃超~約15℃、もしくは0℃超~約10℃の範囲にある洗浄温度、または約10℃の洗浄溶液温度が適していることが認められており、好ましくは、結晶化VB族金属アンモニウム化合物及び洗浄溶液はメタバナジン酸アンモニウムを含み、所望により、洗浄溶液はVB族金属アンモニウム化合物の結晶化のために再利用される。
【0063】
VB族金属アンモニウム化合物は、続いて、VB族金属アンモニウム化合物中に存在する量のうち少なくとも約90%、または95%、または98%、または99%の量のアンモニアを放出するのに十分な時間、約200~450℃、または300~450℃、または350~425℃、または約375~425℃の範囲にある温度で加熱され得る。VB族金属化合物は続いて、例えば炉で、さらに処理されて、VB族金属化合物片が生成する。VIB族及びVB族金属化合物を含む水性混合物中に存在するVB族金属の全体的な回収率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超であり得る。
【0064】
VIB族金属アンモニウム化合物の濾液を無機酸と接触させるための酸性化条件は、約50~80℃、または50~70℃、または55~70℃の範囲にある温度で無機酸を導入して、約1~3、または約1~2、または約1のpHを得ることを含み、好ましくは、無機酸は硝酸もしくは硫酸を含む、または硝酸である。
【0065】
酸性化反応の間、例えば、濾液が、例えば、Mo、Ni、V、Fe、C、及びSを含む廃触媒に由来する場合、以下の代表的な反応により、不溶性(Mo)金属化合物が形成されると考えられる。
【化4】
【0066】
酸性化反応の後、濾過及び洗浄して液体と固体の分離が行われ得る。VIB族金属酸化化合物の沈殿物を濾過及び洗浄する条件は、例えば、飽和VIB族金属酸化アンモニウム化合物洗浄溶液を用いて、0℃超~約15℃、もしくは0℃超~約10℃の範囲にある洗浄温度で、または約10℃の洗浄溶液温度で行われ得る。典型的には、廃触媒がVIB族金属としてMoを含む場合、洗浄溶液はヘプタモリブデン酸アンモニウムを含む。全ての洗浄工程と同様に、洗浄溶液は、例えば、VIB族金属酸化化合物の濾過及び洗浄のために、所望により再利用され得る。
【0067】
VIB族及びVB族金属化合物を含む水性混合物中に存在するVIB族金属の全体的な回収率は、約90wt%、または約95wt%、または約97wt%、または約98wt%、または約99wt%超であり得る。
【0068】
本乾式製錬法及び湿式製錬法はさらに、例えば、カルシウム化合物、またはより詳細には炭酸カルシウム等のIIA族化合物(例えば、US8057763 B2ならびに炭酸カルシウムを利用する他の特許及び方法に記載されている)を含む、他の乾式製錬法及び/または湿式製錬法で使用される特定の化合物の除外、または使用の回避を考慮している。
【実施例
【0069】
以下の実施例は、脱油廃スラリー(非担持)触媒からのVB族及びVIB族金属化合物の回収を説明するものである。実施例は、代表的な目的のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【0070】
実施例1-A-廃触媒(原状)の焙焼
Mo及びV化合物を含む脱油廃スラリー触媒1,750gのバッチ式制御による酸化は、7″径×29″作動長の回転式石英管状炉において、O欠乏条件下で、複数の炉床炉条件をシミュレートしながら、最大8時間の保持時間で実施し、S及びCをそれぞれ<0.1wt%含有するか焼物が生成した。運転は、廃触媒中の残留炭化水素を除去するために、アルゴンガス流下で500℃へ急速に昇温することから開始した。これに続いて、空気流を抑制した状態で、CO及びSOの排出量を測定しながら維持時間を延長し、作動炉床温度を620℃へ緩やかに昇温した後、反応終了の間、Oガス流下で緩やかに冷却した。段階的な温度制御は、Moの損失及び固体焼結をもたらすことになる著しい熱放出を避けるために行った。低Vか焼物では、約57%の減量が観察され(表9)、これはS及びCのほぼ完全な除去(<0.1wt%)と、金属硫化物の金属酸化物への変換とに対応する。表1及び表2は、供給物及びか焼物の金属分析結果を示している。用語「Lo-V」は、使用した廃触媒サンプルのバナジウム含有量が、バナジウム含有量がより高い「Hi-V」サンプル(例えば、4.74wt%)と比較して、比較的低いこと(例えば、0.94wt%)を指すために用いている。
【表1】
【0071】
以下に示した反応(1)~(6)は、廃触媒の焙焼の間に生じると考えられる燃焼反応を表している。600℃におけるギブズの自由エネルギーは、V>Mo>Fe>Niの順による酸化を意味し、CO及びSOについての600℃における自由エネルギーは、CがSよりも大きい速度で燃焼することを意味する。
【化5】
【0072】
以下の反応7は、脱油物質の非担持、高表面積特性、ならびにアルミナ及び/またはシリカの非存在により、原料油中に存在するニッケルが、約620℃での燃焼反応の間にモリブデン上に固定されて、浸出されない難溶性のNiMoOスピネル相が形成されることを示している。この成分は、XRDとQEMSCAN(走査型電子顕微鏡による物質の定量的評価)の両方により検出した。
【化6】
【0073】
XRDでは検出できなかったが、QEMSCANで明らかになった別の相には、(MoNi)Oという構成の混合金属酸化物が含まれていた。混合金属酸化物中の構成要素Vは、苛性及び酸性の両環境で浸出されないものであった。
【0074】
実施例1B-苛性(NaOH)を用いたか焼物浸出
75℃、固体15wt%、pH10.0~10.5、及び2.25時間の保持時間において低Vか焼物を苛性浸出したところ、最大83%のMo及び83%のV抽出率が得られた(表3)。NiはNiMoOとして残渣相に残留した(表4)。Lo-Vか焼物の塊については、苛性により最大73%の溶解(表9)が観察され、洗浄した浸出残渣中に残留した塊は、スピネルを構成した。
【0075】
浸出残渣をXRDでスキャンし、スピネル構造をα-NiMoOとして確認した。難溶性V成分は同定できなかった。
【表2】
【0076】
実施例1C-ソーダ灰を用いた苛性浸出残渣のか焼
焙焼した廃触媒の苛性浸出から得られたMo及びVの抽出率は低く、商業的金属回収及び事業の経済性において魅力的なものではないであろうことが示唆された。しかしながら、さらなる研究により、モリブデン酸ニッケルスピネルとソーダ灰を約600℃で反応させると、難溶性Mo塩が可溶性のものに変わる可能性が明らかになった。この変換については、反応8で表し得る。
【化7】
【0077】
乾燥した苛性浸出残渣(スピネル)100gを、か焼物中のMo及びV含有量よりも化学量論的に最大30%多い無水ソーダ灰(NaCO、P80 100μm)と混ぜた後、4″径×14″作動長の回転式石英管状炉において、空気を継続的に流しながら、600℃~625℃の間で1.5時間か焼した。運転は、500℃へ急速に昇温することから開始し、続いて、作動炉床温度を625℃まで緩やかに昇温し、1.5時間維持した後、反応終了の間、緩やかに冷却した。温度操作を順に行うことで、固体の可融性及び焼結を避けた。表5は、か焼物中の金属分析結果を示している。約43%の増量(表9)がLo-Vか焼物において認められ、このことは、スピネルが可溶性モリブデン酸塩及びバナジン酸塩にほぼ完全に分解されたことを示していると思われる。
【表3】
【0078】
実施例1D-ソーダ灰か焼物の温水浸出
75℃(pH10.5~11.0)の温水において、ソーダ灰か焼物を、サンプルのpHは変更せずに、固体15wt%で1.5時間浸出した。浸出残渣を真空濾過、洗浄、乾燥し、金属含有量を分析した。浸出液は、MoからVを分離する湿式製錬の評価のために取っておいた。
【0079】
Lo-Vソーダ灰か焼物の温水浸出により、Mo及びVの抽出率はそれぞれ最大95%及び70%に達し(表6)、廃触媒からの全体的な乾式製錬によるMo及びVの抽出率は、それぞれ最大99%及び95%となった。最大71%の減量が明らかになった(表9)。表7に示されている浸出残渣の金属分析結果によれば、Niが未反応の固相の最大2/3を占めた。
【表4】
【0080】
実施例1E-実施例1A~1Dの全体的な質量バランス
表8は、元のLo-V廃触媒に対して単位操作を記載順に行った後に、持続して多く残留したNiが、5wt%未満であることを指し示している。
【表5】
【0081】
表9は、廃触媒供給物から始まり、不溶性Ni残渣に至るまでのプロセス段階における、金属除去の進行、または金属の残留を説明するものである。各工程の累積減量(「累積Wt減少」)を示す。各プロセス工程のMo及びVの乾式製錬金属抽出率(「抽出率(%)」)と共に、全体のMo抽出率(99.1%)、及び全体のV抽出率(94.7%)を示す。
【表6】
【0082】
実施例1F-苛性浸出で得た溶液からのメタバナジン酸アンモニウム(AMV)結晶化
浸出濾液(pH10.5以上)の撹拌溶液を60℃に加熱し、十分に濃縮した70%HNOを加えてpHを約8.8に下げた。100gpLのNHNO結晶を加え、HNOまたはNHOHでpHを約7.5に調整した。注:バナジウム濃度が<10gpLの溶液には、10gpLのメタバナジン酸アンモニウム(AMV)シード/スパイクを粉末形態で高温撹拌溶液に添加する。メタセシス反応は、pHを7.0~8.0の間に維持しながら、60℃で1.5時間続けた。
【0083】
反応9及び10に示された以下の二重置換反応は、NH とNaとの間のメタセシスまたはイオン交換を構成する。
【化8】
【0084】
続いて、溶液を真空冷却晶析装置に移し、21inHg下10℃で3時間、穏やかに回転させながら結晶化を続けた。AMV結晶を真空濾過し、濾液はMoの沈殿のために取っておいた。結晶は、10℃に冷やした4,800mg/Lの純AMV溶液を3体積分用いて洗浄した。洗浄溶液は、残留Mo濃度が増大して最大25,000ppmwに達するまでは再利用に適していると考えられ、その後はメタセシスサイクルに再利用されることになる。黄色がかったAMV結晶を60℃~70℃で乾燥させた。表10は、10℃で冷却しながら結晶化を続けることで、不用液中のV含有量が低下することを示している。なお、推定されるAMVの純度については、最大97wt%のNHVOと、それ以外にMo及びNa種と共にNO アニオンが含まれることに留意されたい。不用液またはMo濾液は、Mo回収のために酸沈殿サイクルに移した。
【表7】
【0085】
実施例1G-AMV不用液からの三酸化モリブデンの沈殿析出
V結晶化サイクルからの撹拌不用液を65℃に加熱し、続いて70%濃HNOを注意深く添加してpHを約1.0にした。pH及び温度は、2.5時間、十分に撹拌しながら維持した。表11は、Mo回収率が、2時間以内で、低pH及び低温、ならびに適用量の多いHNOにより、最大99%になることを示している。スラリーは、反応終了時及び濾過前に周囲温度付近に冷却した。<1,000mg/LのMo及び<100mg/LのVを含有する不用濾液は、残留金属除去のためのイオン交換に移すのに適していた。ケーキは、周囲温度のpH1ヘプタモリブデン酸アンモニウム(AHM)を2体積分(PV)用いて洗浄し、洗浄濾液は再利用した。その後、ケーキ固体を周囲温度で15分間撹拌しながら、pH1のAHMにおいて固体25wt%で再度スラリー化した。スラリーを再度濾過し、流れ出た不用濾液を洗浄のために再利用した。濾過ケーキは、周囲温度でpH1のAHMを4体積分用いて洗浄した。不用濾液は洗浄液として再利用した。固体は70℃~100℃で乾燥させた。推定されるMoOの純度については、最大95wt%のMoO.HO、最大0.75wt%の全Na及びV、ならびに残りのNH 及びNO イオンが含まれる。記載した一連の洗浄工程は、MoO生成物中のNaイオンレベルを<0.5wt%に下げるために行った。アルカリ金属は触媒合成時に有害なものとして作用するため、値を低減することが望まれるからである。MoOスラリー中のNaイオンレベルは、層状のMoO構造中における、ヒドロニウムイオンを置換するNaイオンの不動の及び除去できない画分を伴い、最大で10%に及ぶことがある。
【0086】
pH1のAHMは、200gpLの純ヘプタモリブデン酸アンモニウム(AHM)溶液を、濃HNOを用いて65℃で2.5時間かけてpH1に酸性化することによって調製される。固液分離後、MoO固体は最終生成物として回収し、濾液は市販のMoOケーキの洗浄溶液として使用してもよい。
【表8】
【0087】
このように、乾式製錬抽出(Mo最大99%及びV最大95%)と、湿式製錬回収(Mo最大99%及びV最大95%)とを組み合わせることで、Mo98%及びV90%の金属回収率が得られる。
【0088】
実施例2-A-廃触媒(原状)の焙焼
Mo及びV化合物を含む脱油廃スラリー触媒1,750gのバッチ式制御による酸化は、7″径×29″作動長の回転式石英管状炉において、O欠乏条件下で、複数の炉床炉条件をシミュレートしながら、最大8時間の保持時間で実施し、S及びCをそれぞれ<0.1wt%含有するか焼物が生成した。運転は、廃触媒中の残留炭化水素を除去するために、アルゴンガス流下で500℃へ急速に昇温することから開始した。これに続いて、空気流を抑制した状態で、CO及びSOの排出量を測定しながら維持時間を延長し、作動炉床温度を620℃へ緩やかに昇温した後、反応終了の間、Oガス流下で緩やかに冷却した。段階的な温度制御は、Moの損失及び固体焼結をもたらすことになる著しい熱放出を避けるために行った。低Vか焼物では、約57%の減量(表9)が観察され、これはS及びCのほぼ完全な除去(<0.1wt%)と、金属硫化物の金属酸化物への変換とに対応する。上記の表1及び表2は、焙焼供給物及びか焼物の金属分析結果を示している。上記の反応(1)~(6)は、燃焼反応を表している。600℃におけるギブズの自由エネルギーは、V>Mo>Fe>Niの順による酸化を意味し、CO及びSOについての600℃における自由エネルギーは、CがSよりも大きい速度で燃焼することを意味する。
【0089】
上記の反応7は、脱油廃触媒物質の非担持、高表面積特性、ならびにアルミナ及び/またはシリカの非存在により、原料油中に存在するニッケルが、約620℃での燃焼反応の間にモリブデン上に留まって、浸出されない難溶性のNiMoOスピネル相が形成されることを示している。
【0090】
実施例2B-ソーダ灰を用いた焙焼生成物のか焼
以下の反応(1)及び(3)~(6)は、か焼中の焙焼生成物とソーダ灰の反応を表している。600℃におけるギブズの自由エネルギーは、これらの条件下で、スピネル相がソーダ灰で分解される有利性を意味する。
【化9】
【0091】
焙焼した物質(か焼物)に、か焼物中のMo及びV含有量よりも化学量論的に30%多いソーダ灰を混ぜた。運転は、4″径×14″作動長の石英キルンにおいて、空気流下で500℃へ急速に昇温することから開始し、続いて空気流を抑制した状態で、作動炉床温度を620℃へ緩やかに昇温した。維持時間は、CO排出量を<0.1wt%へ下げるのに十分である2時間とした。これに続いて、キルン固形物を除去する前に、空気流下で100℃へ緩やかに冷却した。作動条件下ではアルカリの腐食性のため、管の数箇所でシリカがエッチングされて、物質のおおよそ75%は、回転式石英キルンの壁に融着した。集積した粘着性のか焼物のまとまりを除去するために、市販の間接加熱式の回転式か焼炉を、頻繁に運転停止する必要があった。ソーダ灰か焼物(すなわち、回転式キルンから最終的に回収できた部分)の温水浸出からは、Mo及びVの高い金属抽出率>95%が得られたが、この手段は商業的に実用的ではないとみなした。
【0092】
実施例3-A-ソーダ灰を用いた焙焼
以下の反応(1)~(7)は、ソーダ灰を用いた金属酸化反応を表す。600℃におけるギブズの自由エネルギーは、V>Mo>Fe>Ni>C>Sの順に応じて酸化が有利になることを意味し、CO及びSOについての600℃における自由エネルギーは、CがSよりも大きい速度で燃焼することを意味する。
【化10】
【0093】
ソーダ灰を用いた、Mo及びV化合物を含む脱油廃スラリー触媒100gのバッチ式制御による酸化は、4″径×14″作動長の回転式石英管状炉において、O欠乏条件下で、複数の炉床炉条件をシミュレートしながら、最大2.5時間の保持時間で実施し、約0.1wt%のS及び<0.5wt%のCをそれぞれ含有するか焼物が生成した。廃触媒は、か焼物中のMo及びV含有量よりも化学量論的に30%多い無水ソーダ灰(P80 100μm)と完全に混ぜた。運転は、廃触媒中の残留炭化水素を除去するために、アルゴンガス流下で500℃へ急速に昇温することから開始し、続いて、空気流を抑制した状態で、CO及びSOの排出量を測定しながら維持時間を延長し、作動炉床温度を600℃へ緩やかに昇温した後、反応終了の間、Oガス流下で緩やかに冷却した。SOの放出が最小限であったことにより、硫化物が直接的に硫酸塩に変換されたことが明白になった。冷却後、クリンカー及び粘着性の固形物が、管状反応炉の石英壁に著しく付着して、表面化した。この現象により、集積した粘着性のか焼物を炉床及び撹拌アームから落とすために、市販の複数の炉床炉が、毎週またはそれより高い頻度で停止することになる。Lo-Vソーダ灰か焼物(すなわち、回転式の炉から最終的に回収できた部分)の温水浸出からは、Mo及びVの抽出率がそれぞれ>98%及び>86%に達したが、この手段は商業的に実用的ではないとみなした。
【0094】
本発明及び開示の範囲に関する追加の詳細は、添付の特許請求の範囲から決定され得る。
【0095】
本発明の1つまたは複数の実施形態についての先の記述は、主に説明のためのものであり、依然として本発明の本質を組み込むであろう多くのバリエーションが用いられ得ることを認識されたい。本発明の範囲を決定する際には、以下の特許請求の範囲が参照されるべきである。
【0096】
米国特許実務、及び許可された他の特許事務所の目的のために、本発明の先の記述において引用された全ての特許及び公報は、それらに含有されている任意の情報が先の開示と一致する、及び/または補足する範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
【国際調査報告】