(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】免疫療法構築物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20220912BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220912BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220912BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220912BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220912BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220912BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220912BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220912BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K45/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/04
A61K9/00
A61K9/127
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A61K31/7105
A61K31/7088
A61K48/00
A61K9/14
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/34
A61P37/04
A61K31/519
A61K39/00 G
A61K31/337
A61K31/454
A61K31/136
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502029
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020041844
(87)【国際公開番号】W WO2021011496
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508070909
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】522012488
【氏名又は名称】ピーディーエックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヤンタシー ワッサナ
(72)【発明者】
【氏名】ガムシャードトラクル ウォラポル
(72)【発明者】
【氏名】ランド アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】レダ ムタズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA51
4C076BB11
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4C206ZB21
4C206ZB26
(57)【要約】
本明細書において、送達粒子と、少なくとも1つのアジュバントと、抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する1つまたは複数の治療剤/化合物とを含む免疫療法構築物が開示される。これらの免疫療法構築物は、例えば、広範囲な種類の癌を予防および治療するために使用され得る適応免疫または抗癌免疫応答を生じさせる。ヒトおよび動物の癌を予防および治療することを含む、免疫療法構築物の使用がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する少なくとも1つの治療剤と、少なくとも1つのアジュバントとを含む、送達システム
を含む、免疫療法構築物であって、
腫瘍特異的抗原またはオボアルブミンを含まない、前記免疫療法構築物。
【請求項2】
送達システムが、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、またはそれらのハイブリッドを含む、請求項1記載の免疫療法構築物。
【請求項3】
送達ビヒクルが、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、またはポリマーもしくは脂質で被覆された無機粒子である、請求項2記載の免疫療法構築物。
【請求項4】
送達ビヒクルが、無機粒子であり、メソポーラスシリカ、金、アルミニウム、銀、酸化鉄、リン酸カルシウム、または抗酸化剤粒子のうちの1つまたは複数を含む、請求項3記載の免疫療法構築物。
【請求項5】
無機粒子が、酸化セリウムを含む抗酸化剤粒子を含む、請求項4記載の免疫療法構築物。
【請求項6】
送達ビヒクルが、メソポーラスシリカ粒子を含む、請求項4記載の免疫療法構築物。
【請求項7】
送達ビヒクルが、フラーレン、エンドヘドラル金属フラーレン(endohedral metallofullerene)、三金属窒化物鋳型エンドヘドラル金属フラーレン、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、分枝状カーボンナノチューブおよび樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層ホウ素/ナイトレートナノチューブおよび多層ホウ素/ナイトレートナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ケイ素、シリカマイクロスフェアおよびシリカナノスフェア、ポリマーマイクロスフェアおよびポリマーナノスフェア、シリカシェル、生分解性PLGAマイクロスフェアおよび生分解性PLGAナノスフェア、金粒子、酸化セリウム粒子、酸化亜鉛粒子、銀粒子、アルミニウム粒子、炭素粒子、鉄粒子、酸化鉄粒子、アジュバント粒子、ならびに/または修飾ミセルのうちの1つまたは複数を含む、請求項1記載の免疫療法構築物。
【請求項8】
送達ビヒクルが、PLGA、PLL、デキストラン、デンドリマー、ポリアルギニン、PEG、PEI、またはキトサンのうちの1つまたは複数を含むポリマー粒子である、請求項1~7のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項9】
5nm~999nmの流体力学的サイズを有する、請求項1~8のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項10】
1ミクロン~1000ミクロンの流体力学的サイズを有する、請求項1~8のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項11】
送達ビヒクルが、約5~約200nmのサイズを有するメソポーラスシリカナノ粒子を含む、請求項6記載の免疫療法構築物。
【請求項12】
メソポーラスシリカナノ粒子が、架橋されたポリエチレンイミンおよびポリエチレングリコールで被覆されている、請求項11記載の免疫療法構築物。
【請求項13】
少なくとも1つの治療剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、DNA、sgRNA(CRISPR-cas9エレメント)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、化学療法薬、毒素、抗酸化剤、小分子阻害剤、抗体、または放射線療法剤を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項14】
少なくとも1つの治療剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、またはDNAを含む、請求項13記載の免疫療法構築物。
【請求項15】
少なくとも1つの治療剤が、siRNAを含む、請求項14記載の免疫療法構築物。
【請求項16】
少なくとも1つの治療剤が、STAT3、CD39、CD73、TGF-β、PD-L1、PD1、CTLA4、MIF、PLK1、HIF、NOX1~4、HER2、EGFR、BCL2、AKT1、HIF1-α、NOX1~4、AR、MYC、BRAF、BRAF V600E、またはMTDHの発現または活性を阻害するsiRNAを含む、請求項15記載の免疫療法構築物。
【請求項17】
少なくとも1つの治療剤が、STAT3の発現または活性を阻害するsiRNAを含む、請求項15または16記載の免疫療法構築物。
【請求項18】
少なくとも1つの治療剤が、HER2の活性の発現を阻害するsiRNAを含む、請求項15~17のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項19】
少なくとも1つの治療剤が、STAT3、CD39、CD73、TGF-β、PD-L1、PD1、CTLA4、MIF、PLK1、HIF、NOX1~4、HER2、EGFR、BCL2、AKT1、HIF1-α、NOX1~4、AR、MYC、BRAF、BRAF V600E、またはMTDHの発現または活性を阻害する、請求項1~12のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項20】
少なくとも1つの治療剤が、抗生物質、植物アルカロイド、PLK1阻害剤、分裂期キナーゼ阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、白金系化学療法剤、HER2小分子阻害剤、抗EGFR抗体、および抗HER2抗体から選択される1つまたは複数の抗癌剤を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項21】
少なくとも1つの治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤を含み、免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1、PD1、またはCTLA4に対する抗体である、請求項20記載の免疫療法構築物。
【請求項22】
免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1に対する抗体である、請求項21記載の免疫療法構築物。
【請求項23】
少なくとも1つの治療剤が、PLK1阻害剤を含む、請求項1~22のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項24】
PLK1阻害剤がボラセルチブである、請求項23記載の免疫療法構築物。
【請求項25】
少なくとも1つの治療剤が、ドセタキセル、ミトキサントロン、またはカバジタキセルのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~24のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項26】
少なくとも1つの治療剤が、抗EGFR抗体を含む、請求項1~25のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項27】
抗EGFR抗体がセツキシマブである、請求項26記載の免疫療法構築物。
【請求項28】
少なくとも1つの治療剤が、抗HER2抗体を含む、請求項1~25のいずれか一項記載の免疫療法抗体。
【請求項29】
抗HER2抗体がトラスツズマブである、請求項28記載の免疫療法抗体。
【請求項30】
アジュバントが、免疫刺激活性を有し、CpGオリゴヌクレオチド、CpG配列を含むDNA TLRアゴニスト、非CpG DNA TLRアゴニスト、RNA TLRアゴニスト、アルミニウム塩、抗CD40抗体、融合タンパク質、サイトカイン、小分子TLRアゴニスト、油系アジュバントもしくは界面活性剤系アジュバント、リポ多糖、植物抽出物、またはそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~29のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項31】
アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ガーディキモド、ポリI:C、ポリICLC、dSLIM、またはEnanDIMを含む、請求項1~30のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項32】
アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチドを含む、請求項1~31のいずれか一項記載の免疫療法構築物。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物と、
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、またはそれらの混合物と
を含む、組成物。
【請求項34】
癌を有する対象に、請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の有効量を投与する工程を含む、癌を処置する方法。
【請求項35】
対象が哺乳動物である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
癌の症状を示す細胞を処置する方法であって、
該細胞と、請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の治療有効量とを接触させる工程
を含む、前記方法。
【請求項38】
癌または別の過剰増殖性障害の症状を示す対象から得られた細胞を処置する方法であって、
該細胞と、請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の治療有効量とを接触させる工程
を含む、前記方法。
【請求項39】
癌または別の過剰増殖性障害の症状を示す対象から得られた細胞を処置する方法であって、
細胞と、請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の治療有効量とをエクスビボで接触させる工程
を含む、前記方法。
【請求項40】
細胞が癌細胞である、請求項38または39記載の方法。
【請求項41】
細胞が癌細胞ではない、請求項38または39記載の方法。
【請求項42】
細胞が免疫細胞である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
細胞が不死化される、請求項38または39記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの処置された細胞を対象に戻すように投与する工程をさらに含む、請求項37~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
過剰増殖性疾患もしくは過剰増殖性病態を有すると診断されたかまたはそのような疾患もしくは病態を発症するリスクが高いと診断された対象を処置する方法であって、
請求項33記載の組成物の有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項46】
対象が哺乳動物である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
哺乳動物がヒトである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
過剰増殖性疾患または過剰増殖性病態が、癌、前癌、または癌転移のうちの1つまたは複数を含む、請求項45~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
過剰増殖性疾患が、黒色腫、肺癌、乳癌、膵癌、脳癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎癌、結腸直腸癌、リンパ腫、胃癌、結腸癌、肝癌、または稀な癌のうちの1つまたは複数を含む、請求項45~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
投与する工程が、
対象の腫瘍への、もしくは対象の腫瘍での注射、
対象の腫瘍への、もしくは対象の腫瘍での局所的な注入、
対象における全身注射、
対象における全身注入、または
対象への局所適用
を含む、請求項45~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
投与工程が、対象へのマイクロニードル適用を含む、請求項45~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
それを必要とする対象において抗癌療法の効果を増強する方法であって、
請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の有効量と、
少なくとも1つの抗癌剤と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項53】
抗癌剤が、化学療法剤または標的療法剤である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
新生物を有すると診断された対象においてチェックポイント遮断免疫療法の効果を増強する方法であって、
請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の有効量と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項55】
新生物を有すると診断された対象において放射線療法の効果を増強する方法であって、
請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物または請求項33記載の組成物の有効量と、
少なくとも1つの放射線療法と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項56】
免疫療法構築物または組成物と抗癌療法とが、連続的にまたは同時に投与される、請求項52~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
対象が哺乳動物である、請求項52~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
哺乳動物がヒトである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
請求項1~32のいずれか一項記載の免疫療法構築物と、
少なくとも1つの抗癌剤と
を含む、キット。
【請求項60】
抗癌剤が、化学療法剤、標的療法剤、または免疫チェックポイント阻害剤である、請求項59記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金R44CA217534およびR43TR001906の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本開示は、癌ならびに他の疾患および病態を治療および予防するための組成物および方法に関する。組成物は、少なくとも1つの治療活性剤(腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する)と、少なくとも1つのアジュバント(または免疫賦活剤)とを含有する、送達システム(粒子など)を含み、対象自身の前癌細胞内または癌細胞内で抗原を利用することによって適応免疫を生じさせる免疫療法構築物を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-L1、PD-1、CTLA-4などに対する阻害剤は、診療所で有望な結果を示しており、多くの癌型についてFDAのファストトラック承認を得ている。ただし、この処置は、癌患者の一部に対してのみ機能する(約10~約40%)。応答の欠如は、典型的には、既存の抗腫瘍免疫(例えば、CD8+T細胞)の欠如に起因するため、体内の抗腫瘍T細胞の数を増強するためのワクチンの必要性が高まる。
【0004】
古典的な癌ワクチンは、免疫刺激因子(アジュバントと呼ばれる)および腫瘍タンパク質(抗原と呼ばれる)を利用する。理想的には、癌細胞上にのみ存在するネオ抗原を使用すべきである。ただし、これらのネオ抗原は、腫瘍型および患者にわたって大きく異なるため、患者ごとに個別化されたワクチンを開発することが困難になり、費用がかさむ。これらの抗原を同定する必要性を回避するために、放射線、化学療法および操作されたウイルス、例えばタリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)を使用して腫瘍を死滅させ、抗原を放出させて、インサイチューで適応免疫応答を誘発している。ただし、これらの手法は、抗腫瘍T細胞数を減少させるか抗腫瘍T細胞を無効にする免疫抑制性腫瘍微小環境では(例えば、酸化物質と呼ばれる化学的ストレス因子を増加させることによって、または免疫抑制経路を促進することによって)、望ましくない環境を作り出す。さらに、インサイチュー腫瘍ワクチン接種戦略は、腫瘍の免疫抑制性微小環境、およびワクチン成分を保持して標的細胞(例えば、抗原提示細胞)に効果的に送達することができないことに悩まされている。
【発明の概要】
【0005】
前述の欠点を克服するために、本発明者らは、インサイチュー腫瘍ワクチン接種戦略を利用する新たなクラスの免疫療法薬を開発した。インサイチュー腫瘍ワクチン接種とは、免疫刺激の存在下で腫瘍が局所的に死滅し、腫瘍抗原を放出し、これらが一緒になって腫瘍に対する全身適応免疫をプライミングする戦略である。一定の場合には、腫瘍微小環境(TME)に既に存在する腫瘍抗原が利用される。この戦略は、従来の癌ワクチン開発のように腫瘍(ネオ)抗原を事前に同定する必要性を回避するため、非常に有望である。これはまた、腫瘍抗原の固有のセットが放出され、患者ごとに特異的免疫をプライミングするため、個別化療法である。
【0006】
アジュバントと、抗原放出を誘導することができる、および/または免疫抑制環境を調節することができる化合物とを同時送達して、CD8+T細胞レパートリーを増強し、全身性抗腫瘍免疫療法効果を誘導するための操作された粒子が、本明細書において記載される。この技術は、Augmenting Immune Response and Inhibiting Suppressive Environment of Tumorsの略であるAIRISEと呼ばれ得る。
【0007】
アジュバントと、抗原放出を誘導することができる(例えば、癌細胞を死滅させることによって)、および/または免疫抑制環境(腫瘍微小環境、TMEなど)を調節することができる治療活性剤との同時送達を可能にする操作された粒子に基づく新たなクラスの免疫療法薬(一般に、免疫療法構築物)が、本明細書において記載される。これらの免疫療法構築物はまた、TME内に既に存在する抗原を使用し得る。免疫療法構築物は、処置される癌にどの抗原が関連しているかを知る必要なく、CD8+T細胞レパートリーを増強し、全身性抗腫瘍免疫療法効果を誘導する。本明細書において、細胞性免疫が広く記載されているが、体液性免疫(抗体産生)も何らかの役割を果たし、同じ概念に従う。
【0008】
提供される操作された免疫療法構築物によって癌細胞に送達される治療活性剤(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、shRNA、DNA、他のオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、小分子阻害剤、化学療法薬、抗体など)の例は、癌細胞を死滅させ、腫瘍抗原を放出し、および/または免疫抑制性腫瘍微小環境を操作するのに対して、同時送達されるアジュバント(例えば、CpG、R848、ポリI:Cなど)は、腫瘍抗原に対して適応免疫細胞をプライミングおよび活性化する。活性化されたエフェクター細胞は、体内の任意の部位(免疫療法構築物の局所送達から離れた部位を含む)で腫瘍を認識し、攻撃することができるのとともに、処置された腫瘍と同じ腫瘍抗原のうちの1つまたは複数を有する新しい腫瘍の拡散または発生を低減するか、予防することさえできる。この現象は、アブスコパル効果と呼ばれることがある。癌細胞の死は、長期持続効果を伴って適応免疫ループをさらに増幅する。記憶適応免疫もまた、継続的な抗腫瘍免疫監視のために確立されると考えられる。
【0009】
免疫療法構築物は、例えば、容易に到達可能な腫瘍、例えば、黒色腫、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、膀胱癌およびリンパ腫に対して、局所投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、脳脊髄内投与、皮下投与、関節内投与、関節滑液嚢内投与、髄腔内投与、経口投与、局所的投与、経皮投与、静脈内投与することができるか、吸入によって投与することができるか、他の癌、例えば、肺癌、肝癌、膵癌、前立腺癌、脳癌、腎癌、血液癌および転移性癌のために全身投与することができる。
【0010】
操作された免疫療法構築物は、ナノメートル範囲またはマイクロメートル範囲の直径を有することができ、治療剤/アジュバントカーゴを負荷し、それらを標的部位(癌細胞、免疫細胞、細胞外マトリックスなど)に送達し、それらが所望の機能を有することを可能にすることができる任意の材料(例えば、脂質、無機材料、ポリマーおよびそれらの組合せ)から作製され得る。
【0011】
任意で、免疫療法構築物はまた、それらが標的癌細胞および/または様々な免疫細胞型(例えば、樹状細胞(DC)、マクロファージ、単球、T細胞)に優先的に送達される、および/または取り込まれることを可能にする1つまたは複数のホーミング剤(抗体、アプタマー、リガンド、ペプチドなど)を含有する。
【0012】
本明細書において提供される免疫療法構築物は、単独で、または限定されることなく、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法、手術、標的療法および放射線療法を含む標準的な治療法と組み合わせて使用され得る。あるいは、免疫療法構築物上に/免疫療法構築物内に、治療活性剤としてチェックポイント阻害剤(PD-L1/PD-1、CTLA-4などに対するsiRNA、阻害剤、または抗体)、他の標的療法薬(例えば、他の腫瘍性タンパク質を標的とする小分子阻害剤もしくは抗体、または医療用放射性同位体)を直接負荷することができる。
【0013】
免疫療法構築物は、局所送達のために、任意で局所製剤またはマイクロニードル製剤に製剤化することができる。
【0014】
特定の態様では、腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する少なくとも1つの治療剤と、少なくとも1つのアジュバントとを含む、送達システムを含む、免疫療法構築物が提供される。免疫療法構築物は、腫瘍特異的抗原またはオボアルブミンを含まなくてもよい。別の態様では、免疫療法構築物は、いずれかがタンパク質である場合、1つの治療剤または少なくとも1つのアジュバント以外のタンパク質を含まない。治療剤およびアジュバントは、送達システム内に負荷され得るか、送達システムの表面に付着され得るか、送達システムに結合され得るか、送達システム内に封入され得るか、送達システム内に含有され得る。提供される免疫療法構築物の特定の態様では、送達システムは、水性媒体(PBS、Tris緩衝液または水など)中で測定した場合に5nm~999nm(例えば、約80nm~約200nmまたは約90nm~約130nm)の流体力学的サイズを有するナノ粒子である。さらに他の例では、免疫療法構築物は、1ミクロン~1000ミクロンの流体力学的サイズを有するマイクロ粒子である。いくつかの態様では、送達システムは、約5nm~約200nm、約5nm~約90nm、約5nm~約20nm、約30nm~約100nm、約30nm~約80nm、約30nm~約60nm、約40nm~約80nm、約70nm~約90nm、または約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nmもしくは約100nmのサイズを有する。
【0015】
免疫療法構築物の様々な態様では、治療剤は、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、DNA、shRNAまたはsgRNA(CRISPR-cas9エレメント))、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、化学療法薬、毒素、抗酸化剤、小分子阻害剤、抗体、または放射線療法剤を含む。
【0016】
免疫療法構築物の例では、アジュバント化合物は、免疫刺激活性を有する。例として、アジュバント化合物は、TLR結合DNA置換基、例えばCpGオリゴヌクレオチド(例えば、ISS 1018;Amplivax;CpG ODN 7909、CpG ODN 1826、CpG ODN D19、CpG ODN 1585、CpG ODN 2216、CpG ODN 2336、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2007、ODN 2395、ODN M362またはSD-101);CpG配列を含むDNA TLRアゴニスト(例えば、dSLIM);非CpG DNA TLRアゴニスト(例えば、EnanDIM);RNA TLRアゴニスト(例えば、ポリI:Cまたはポリ-ICLC);アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウムまたは硫酸アルミニウムカリウム);抗CD40抗体(例えば、CP-870、893);サイトカイン、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);カチオン性ペプチドコンジュゲートCpGオリゴヌクレオチド(例えば、IC30、IC31);小分子TLRアゴニスト(例えば、イミキモド、レシキモド、ガーディキモドまたは3M-052);融合タンパク質(例えば、ImuFact IMP321およびONTAK);油/界面活性剤系アジュバント、例えば、MF59、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50VおよびMontanide ISA-51;サポニンに由来するQS21スティミュロン(Aquila Biotech、Worcester,Mass.,USA);マイコバクテリア抽出物もしくは合成細菌細胞壁模倣物、例えばリポ多糖(例えば、モノホスホリルリピドA、OM-174、OM-197-MP-ECまたはPam3Cys);キサンテノン誘導体(例えば、バジメザン);それらの混合物(例えば、AS-15);または独自のアジュバント、例えば、Ribi's Detox、Quil、もしくはSuperfosのうちの1つまたは複数を含み得る。例えば、癌または別の過剰増殖性疾患を治療または予防する方法に、本明細書において記載される免疫療法構築物を使用する方法も提供される。一例として、黒色腫の場合、免疫療法構築物は、多数の異型母斑または他の一見良性の母斑を有する患者(特に遺伝的素因を有する患者を含む)に対する予防ワクチンとして使用され得る。別の例として、免疫療法構築物は、外科的除去の前に(すなわち、ネオアジュバント設定)腫瘍内/病巣内注射を介して到達可能な腫瘍/病変に投与されて、再発の可能性を減少させ、および/または免疫系を動員して任意の検出可能または検出不能な転移を死滅させ得る。別の例として、免疫療法構築物は、腫瘍が切除不能であっても、腫瘍内注射によって腫瘍に投与され得る。これにより、処置された腫瘍および未処置の腫瘍の両方を体内の他の場所で攻撃するように、免疫系が活性化および動員される。別の例として、免疫療法構築物は、抗腫瘍適応免疫応答を開始させるために全身投与され得る。一定の態様では、免疫療法構築物は、腫瘍の周囲の領域(腫瘍周囲)、または腫瘍除去後に残っている領域(アジュバント設定)に投与され得る。別の例として、免疫療法構築物は、全身投与され得、これにより、体内のどの部位でも癌に対する適応免疫を発達させる。一定の態様では、免疫療法構築物は、リンパ節(検出可能な腫瘍の有無に関わらず)に直接投与され得る。
【0017】
別の態様は、癌の症状を示す対象から得られた細胞を処置する方法であって、該細胞と、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の治療有効量とを接触させる工程を含む方法である。この態様の例では、対象から得られた細胞は癌細胞である。他の態様では、細胞は癌細胞ではない。例えば、いくつかの例では、非癌(例えば、正常)細胞は免疫学的/免疫細胞である。細胞を処置する方法の例では、方法は、少なくとも1つの処置された細胞を対象に投与して戻す工程をさらに含む。
【0018】
免疫療法構築物の投与を少なくとも1つの他の処置、例えば、癌または別の過剰増殖性疾患もしくは過剰増殖性病態の処置と組み合わせる方法態様も提供される。
【0019】
記載される方法態様のいずれかにおいて免疫療法構築物を投与する工程は、対象の腫瘍への直接注射;対象における全身注射;対象への局所適用;対象による吸入;対象への肝動脈注入;対象への対流強化送達(convection-enhanced delivery);または対象へのマイクロニードル適用のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0020】
提供される方法態様のいずれかの例では、対象(処置される、構築物もしくは組成物が投与される、または細胞が得られる)は哺乳動物である。例えば、一定の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0021】
本明細書において、提供される免疫療法構築物の態様のいずれか、およびそのような構築物を使用する方法の態様は、免疫療法構築物が腫瘍特異的抗原またはオボアルブミンを含まない例を含むことが特に企図される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】癌治療。標的療法は、非特異的毒性化学療法よりも有意に癌予後を改善した。ただし、この効果は持続しない。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、癌を攻撃するために身体自身の免疫系を解放し、潜在的に治癒をもたらす。ただし、この処置に応答するのは、患者のごく一部に過ぎない。本発明者らの目標は、腫瘍微小環境(TME)を操作して抗腫瘍T細胞レパートリーを増強し、これにより、ICIを用いて処置された癌患者の治癒率を高める新規免疫療法構築物(Augmenting Immune Response and Inhibiting Suppressive Environment of tumors-AIRISE)を開発することである。
【
図2】本発明者らの新規免疫療法構築物のインサイチュー腫瘍ワクチン接種機構。腫瘍(例えば、黒色腫または胸部腫瘍)のうちの1つのみに免疫療法構築物AIRISEを腫瘍内注射する。一例、すなわち、AIRISE-01またはCpG/DTX-NPでは、同じくアジュバント特性を有する化学療法薬であるドセタキセル(DTX)が、局所癌細胞を死滅させて腫瘍抗原を放出し、CpGオリゴヌクレオチド(アジュバント)が、局所抗原提示細胞(APC)(主に樹状細胞(DC))を活性化する。別の例、すなわち、AIRISE-02またはsiSTAT3-CpG-NPでは、siSTAT3が一部の癌細胞を死滅させることができ、STAT3をノックダウンすると、抗腫瘍適応免疫応答のプライミング、活性化および機能を妨げる免疫抑制性腫瘍微小環境が減少する。既に腫瘍微小環境(癌、免疫細胞などを含むTME)にあるか、本発明者らの処置によって放出された腫瘍抗原は、腫瘍および腫瘍排出リンパ節内でAIRISE活性化APCによって取り込まれる。次いで、APCは、これらの抗原を(交差)提示して、腫瘍抗原特異的T細胞をプライミングする。これらの活性化された細胞傷害性(エフェクターCD8+)T細胞は、増殖し、全身循環に入る。それらは、体内のどこに位置する場合でも、処置された腫瘍と同じ抗原の一部を有する腫瘍に特異的にホーミングする(例えば、処置された腫瘍および未処置の転移性腫瘍の両方にホーミングする)。細胞傷害性T細胞による癌細胞の死が多くなれば、さらに多くの腫瘍抗原がさらに放出され、ポジティブフィードバックループにおけるエフェクター(既にプライミングされた)T細胞の増殖が増幅される。抗腫瘍体液性免疫も、同じ概念に従って活性化される。また、これらの実施例では、メソポーラスシリカナノ粒子が抗酸化特性を有し(Morry,J.Biomaterials,66:41-52,2015)、この抗酸化特性はまた、免疫抑制性TMEをさらに調節し、腫瘍促進活性を阻害することができる。腫瘍部位で局所的に誘導されたこのワクチン接種は、全身の全身性抗腫瘍免疫応答を生じさせる。
【
図3】CpGを上回る、CpG-NPによる処置後の樹状細胞(MHCII+CD80+CD11c+細胞)の優れた活性化。足蹠注射によってCpGまたはCpG-NPをマウスに投与した。処置の1日後、排出リンパ節(DLN)および非排出リンパ節(NDLN)を採取し、フローサイトメトリー分析のために単一細胞に処理して、活性化樹状細胞率(%)を同定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001。特に明記しない限り、実施例を通してCpG ODN 1826(SEQ ID NO:7)を使用した。
【
図4A】局所処置腫瘍(
図4B)および遠位未処置腫瘍(
図4C)の腫瘍増殖曲線の阻害と、マウスの生存曲線の延長(
図4D)とによって示されるように、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の誘導における、(
図4A、両側性腫瘍を移植したマウス)のように黒色腫マウスモデルに投与されたCpG-NPの効果。250,000個および100,000個のB16F10細胞を各マウス(C57BL/6)に移植して、それぞれ局所腫瘍および遠位腫瘍を樹立した。腫瘍移植の8日後、局所腫瘍に、CpG-NPまたは生理食塩水を3日ごとに合計3回腫瘍内注射した。用量(各注射当たり)は、CpG 20μgおよびNP 0.2mgであった。腫瘍体積を平均およびSEMとしてプロットする。CpG-NPと生理食塩水との間の統計的有意差(*)を評価した。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図5A】局所処置腫瘍(
図5B)および遠位未処置腫瘍(
図5C)の腫瘍増殖曲線の阻害と、マウスの生存曲線の延長(
図5D)とによって示されるように、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の誘導における、(
図5A)のように黒色腫マウスモデルに投与された、CpGおよび/またはドセタキセル(DTX)を負荷したNP(AIRISE-01)の効果。CpG-NP、CpG-DTX-NPまたは生理食塩水を用いて、マウス(
図4と同じモデル)を処置した。用量(各注射当たり):CpG 20μg;DTX 2μg;NP 0.2mg。腫瘍体積を平均およびSEMとしてプロットする。*は、生理食塩水とCpG-NPとの間の統計的有意差を示す。
$は、生理食塩水とCpG-DTX-NPとの間の統計的有意差を示す。**pおよび
$$p<0.01;****pおよび
$$$$p<0.0001。
【
図6】局所腫瘍および遠位腫瘍における細胞傷害性CD8+T細胞の増加、局所腫瘍(処置された)および遠位腫瘍のDLN、ならびにCpG-DTX-NP(この図ではNPとして示される)によって誘導される非DLN。条件はいずれも、
図5Aと同じである。最初の注射の7日後に、腫瘍およびリンパ節(腫瘍排出および非排出)を採取した(
図5Aを参照)。抗体のパネルを用いて細胞を染色して、リンパ系細胞集団および活性を評価した。p値;*p<0.05。**p<0.01、***p<0.001。
【
図7A】局所処置腫瘍(
図7B)および遠位未処置腫瘍(
図7C)の腫瘍増殖曲線の阻害と、マウスの生存曲線の延長(
図7D)とによって示されるように、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の誘導における、(
図7A)のように黒色腫マウスモデルに投与されたsiSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)の効果。腫瘍体積を平均およびSEMとしてプロットする。用量(各注射当たり):CpG 20μg;siSTAT3 4μg;NP 0.2mg。CpG-NPとsiSTAT3-CpG-NP(最良に応答する2群)との間で統計的有意差(指定されたp値、*)を評価した。
【
図8A】siSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)のCD8依存性の効果。B16F10腫瘍を担持するC57/BL6マウスを樹立し、
図8Aのように処置し、AIRISE-02の最初の腫瘍内処置の1日前から開始して、試験全体を通してCD8枯渇抗体(Clone 2.43、BioXcell、200μg/マウス、週2回、i.p.)をマウスの群に投与した。CD8枯渇は、局所腫瘍(
図8B)、遠位未処置腫瘍(
図8C)の阻害、およびマウスの生存期間の延長(
図8D)におけるAIRISE-02の効果を低下させることが示され、AIRISE-02の効果が、直接細胞傷害性ではなく免疫依存性であることを示している。
【
図9A】siSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)は、チェックポイント阻害剤(PD1抗体およびCTLA4抗体)の効果を増強した。B16F10腫瘍を担持するC57/BL6マウスを樹立し、(
図9A)のように処置した。1つの群では腫瘍内AIRISE-02と同時に、1つの群では単独で、2つの群のマウスに、チェックポイント阻害剤(PD1 mAb 200μg/マウスおよびCTLA4 mAb 100μg/マウス、i.p.)を投与した(すなわち、3日ごとに3回の投与)。AIRISE-02は、チェックポイント阻害剤カクテルの効果を大幅に増強した。組合せは、局所腫瘍(
図9B)および遠位未処置腫瘍(
図9C)の両方を制御し、マウスの生存期間を、AIRISE-02またはチェックポイント阻害剤カクテル単独よりも良好に延長した(
図9D)。組合せを投与したマウス8匹のうち5匹が治癒した(腫瘍なし)。
【
図10】siSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)は、実験的転移性肺腫瘍を担持するマウスの生存期間を延長した。C57/BL6マウスに200,000個のルイス肺癌(LLC-JSP)細胞を(尾静脈を介して)注射し、マウスの肺に肺癌を樹立した。処置は、(
図10A)に示すように静脈内投与した。生存期間は、(
図10B)に示すように、静脈内AIRISE-02によって有意に延長された。
【
図11A】カチオン性脂質粒子(DharmaFECT)とともに送達されたCpGおよびsiSTAT3は、インサイチューワクチン接種効果をもたらす。B16F10腫瘍を担持するC57/BL6マウスを樹立し、
図11Aのように処置した。治療用構築物は、処置腫瘍(
図11B)および遠位腫瘍(
図11C)を減少させるとともに、マウスの生存期間を延長した(
図11D)。用量(各注射当たり):CpG 20μg;siSTAT3 4μg。治療用構築物は、DLSによって測定した場合、1068nm(1.1ミクロン)の平均サイズを有する。
【
図12A】癌細胞および免疫細胞へのsiRNAおよびCpGのNP媒介同時送達。STAT3に対するsiRNAまたはスクランブルsiRNA(siSCR)を担持するNPまたはCpG負荷NP(CpG-NP)を用いて、B16F10(
図12A)細胞およびJ774(
図12B)細胞(いずれもマウス細胞株であった)と、(
図12C)C3H/HEJマウスの骨髄から採取した樹状細胞(BMDC)とを処理した。各siRNAの用量は50nM、およびNPの2.0重量%であり、CpGの用量は、B16F10およびJ774についてはNPの2重量%、BMDCについてはNPの4重量%であった。処置の48時間後に、qRT-PCRを用いてmRNAを分析した。データは、癌細胞および免疫細胞の両方にsiRNA(例えば、siSTAT3)をトランスフェクトするためのナノ粒子の効果を示し、この効果は、NP上に負荷されたCpGによって高度に影響を及ぼされなかった。実施例を通して特に明記しない限り、「NP」は、Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015および米国特許出願公開第2017/0173169号に記載されているように、架橋PEIおよびPEGで被覆されたメソポーラスシリカナノ粒子を示す。
【
図13】HER2またはSTAT3に対するsiRNAを担持するトラスツズマブコンジュゲートNP(T-NP)を用いて、HCC1954細胞(ヒトHER2+癌細胞)を処理した。各siRNAの用量は、全体を通して30nM、およびNPの2.0重量%であった。処理の72時間後にウエスタンブロットによってタンパク質を分析したところ、STAT3の80%ノックダウンが達成されたことが示された。データは、ナノ粒子が、単一のsiRNAと比較して効果を失うことなく、少なくとも2つのsiRNA配列(例えば、siHER2およびsiSTAT3)を送達することができることを示している。
【
図14A】ホーミング標的剤として抗体を含有するナノ粒子の優先的な取込み。曝露の1時間後、EGFR抗体(セツキシマブ)コンジュゲートナノ粒子(C-NP)は、
図14Aに示すように、正常な肺細胞(NL20)よりも、EGFRを過剰発現する肺癌細胞(A549およびH460)によって優先的に取り込まれた。
図14Bは、フローサイトメトリーによって測定したこれらの細胞株のEGFR発現のレベルを示す。同様に、
図14Cは、HER2抗体(トラスツズマブ)コンジュゲートナノ粒子(T-siSCR-NP)もまた、MCF7(ウエスタンブロット分析((
図14C)の挿入図)によって示されるようにHER2発現が低い)よりも、HER2を過剰発現する乳癌細胞(BT474、SKBR3)によって優先的に取り込まれたことを示す。優先的効果は、リツキシマブ(CD20抗体)コンジュゲートナノ粒子(R-siSCR-T)では観察されなかった。siSCRは、スクランブルsiRNAを示す。
【
図15】PLK1阻害剤を含有するナノ粒子(p-iPLK1-NP)にCpG(SEQ ID NO:7)を加えると、カプランマイヤー生存曲線によって示されるように、治療上の利益が増大する。C57BL/6マウスの右側腹部に100KのLLC-JSP細胞(肺癌細胞)を注射し、左側腹部に40Kの細胞を注射した。腫瘍接種後12日目に、マウスの右(局所)腫瘍に対して、生理食塩水、PD-L1抗体被覆ナノ粒子(p-NP)、PLK1阻害剤を負荷したナノ粒子(iPLK1-NP)、PLK1阻害剤を負荷したp-NP(p-iPLK1-NP)、またはPLK1阻害剤およびCpGを負荷したp-NP(p-iPLK1-NP-CpG)の腫瘍内処置を行った。50μl中0.5mgのNP(iPLK1 2.5μg、PD-L1抗体20μg、CpG 20μg)を3日ごとに合計3回投与した。
【
図16A】局所処置腫瘍(
図16B)および遠位未処置腫瘍(
図16C)の腫瘍増殖曲線の阻害と、マウスの生存曲線の延長(
図16D)とによって示されるように、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の誘導における、(
図16A)のように黒色腫マウスモデルに投与された、CpGおよびミトキサントロン(MTX)を負荷したNPの効果。CpG-MTX-NPまたは生理食塩水を用いてマウスを処置した。用量(各注射当たり):CpG 20μg;MTX 2μg;NP 0.2mg。腫瘍体積を平均およびSEMとしてプロットする。腫瘍体積については、CpG-MTX-NP対生理食塩水について**p<0.01。
【
図17A】AIRISE-02は、局所(処置)腫瘍および未処置腫瘍ならびにそれらの腫瘍排出リンパ節(DLN)内でCD8+T細胞の増殖を増強した。モデル、治療用量およびスケジュールは、
図7の通りであった。最初の処置の7日後に、腫瘍ならびに局所(処置)腫瘍および遠位(未処置)腫瘍の両方のDLNから採取した細胞を分析して、リンパ節(C)内のエフェクター(CD44+)CD8+T細胞の増殖状態(Ki-67)とともに、腫瘍(A)およびDLN(B)の生CD45+CD3+T細胞集団におけるCD8+T細胞とCD4+FoxP3+制御性T細胞との比を決定した。括弧が別途指定しない限り、AIRISE-02対生理食塩水について、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001(n=3/群)。
【
図18】TME内のNP細胞取込み。マウス(
図7と同じモデル、(B16F10腫瘍サイズ約100mm
3 n=3/群、平均およびSDとしてプロット)に、Alexa 488-siRNA-CpG-NPを腫瘍内注射した。注射の2時間後、処置腫瘍内の細胞をプロファイリングし、各集団におけるsiRNA-CpG-NP(NP+)の存在について分析した。
【
図19】siSTAT3-NPは、複数の種の複数の細胞内でSTAT3をノックダウンすることができる。siSTAT3-NP(50nM)を用いて、D-17(イヌ骨肉腫)、BMDC(マウス由来の骨髄由来樹状細胞)、J774(マウスマクロファージ)、B16F10(マウス黒色腫)およびHCC1954(ヒト乳癌)を48時間処理した。対応する種のプライマーを用いて、STAT3およびHPRT mRNAについてqRT-PCR分析を行った。全体を通して、単一のsiSTAT3配列を使用した。siSCR=スクランブルsiRNA対照。***p<0.001;****p<0.0001。
【
図20】AIRISE-02(siSTAT3-CpG-NP)+ICIは、CT26両側性腫瘍を担持するマウスに対して完全奏効をもたらした。250Kおよび100KのCT26細胞を各マウス(Balb/c)の両側腹部に移植した。腫瘍移植の15日後、マウスを概説の通り処置した。局所処置腫瘍および遠位未処置腫瘍の腫瘍増殖曲線をスパイダープロットとしてプロットする(各線は個々のマウスを表す)。注射用量:CpG 16μg;siSTAT3 5μg;NP 0.25mg。1つの群では腫瘍内AIRISE-02と同時に、1つの群では単独で、2つの群のマウスに、チェックポイント阻害剤(PD1 mAb 200μg/マウスおよびCTLA4 mAb 100μg/マウス、i.p.)を投与した。
【
図21】AIRISE-02(siSTAT3-CpG-NP)+ICIはまた、高悪性度の4T1胸部両側性腫瘍を担持するマウスに対しても有効である。100Kおよび40Kの4T1細胞を各マウス(Balb/c)の両側乳房脂肪体に移植した。腫瘍移植の11日後、マウスを概説の通り処置した。局所処置腫瘍および遠位未処置腫瘍の腫瘍増殖曲線をスパイダープロットとしてプロットする(各線は個々のマウスを表す)。用量は
図20と同じである。
【
図23】siSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)の安全性プロファイル。雌のBalb/cマウス3匹にAIRISE-02を筋肉内投与した。マウスを脱毛し、尾方大腿筋(caudal thigh muscle)に1回注射した。注射前、注射後、注射後24時間および注射後72に注射部位の画像を撮影した。注射用量:CpG 16μg;siSTAT3 5μg;NP 0.25mg。
【
図24】マウスにおけるAIRISE-02の安全性プロファイル。2週間にわたって各マウスの2つの腫瘍のうちの1つへの5回の腫瘍内注射によって、AIRISE-02を用いて、乳房脂肪体に移植された両側性MM3MG-HER2d16腫瘍を担持するマウス(Balb/c)(Tsao et al.,JCI Insight,4(24):e131882,2019に記載されているように)を処置した。(A)に示すように体重をモニタリングする。腫瘍が直径2cmを超えた際に、またはマウスが疼痛もしくは苦痛の徴候を示した際に(処置後15~55日間)、マウスを安楽死させた。安楽死後、血液を採取し、血清に処理した。血清バイオマーカーをBeckman AU680(IDEXX BioAnalytics、West Sacramento,CA)によって測定し、(B)に報告した。用量は
図20と同じである
【
図25】カニクイザルにおけるAIRISE-02の安全性プロファイルを説明する概略図。カニクイザル(約2歳、3.1±0.2kg、n=3)に、表に記載されているように、3つの漸増用量のAIRISE-02を皮下注射した。CpG 7909/2006(ヒト配列)を使用した(SEQ ID NO:8)。体重、食物消費量、ケージ側および詳細な観察、死亡率、罹患率、注射部位での反応、PK、臨床病理、サイトカインレベル、補体分解産物ならびに抗薬物抗体をモニタリングした。
【
図26】構築物全体の重量%として特定した、異なる量のsiRNAおよびCpGを負荷した、架橋PEIおよびPEG(NP)で被覆したメソポーラスシリカナノ粒子の流体力学的サイズ。Malvern Zetasizerを使用した3回の測定から、平均サイズ(Z平均)および多分散性指数(PDI)を示す。
【
図27】CpG-NPは、抗原の存在下で抗原特異的(適応)免疫応答を生じさせることができる。図は、SF(SIINFEKLペプチド)の存在下でのインキュベーション後のIFNγ活性化CD8+T細胞の割合を示す。未処置マウス、SFおよびCpGを負荷したNP(CpG-SF-NP)を用いて処置したマウス、SFを負荷したNP(SF-NP)を用いて処置したマウス、またはCpGを負荷したNP(CpG-NP)を用いて処置したマウス、ならびに不完全フロイントアジュバントを用いて製剤化したSF(IFA/SF)を用いて処置したマウスのリンパ節から細胞を得た。*p<0.05。使用した用量:CpG 16μgおよびSF 40μg。マウスにおける投与経路は、足蹠注射である。
【
図28】PBS中で測定した、約2重量%および約9重量%のポリI:Cを負荷したナノ粒子(MSNP-PEI-PEG)の流体力学的サイズ。
【
図29A】AIRISE-02。(A)メソポーラスシリカナノ粒子コアのTEM画像、(B)以前に記載されたように架橋された(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)、PEIで被覆されたメソポーラスシリカナノ粒子を含み、PEGとコンジュゲートされ、ナノ粒子構築物(NP)をもたらすAIRISE-02の概略図。PBS中で10~40分混合することによる静電相互作用によって、NPにsiSTAT3およびCpGを負荷した。(C)AIRISE-02((2%)siSTAT3-(6%)CpG-NP)の流体力学的サイズ。
【
図30】マイクロニードルローラー前処理を用いた場合および用いない場合のブタ皮膚における局所siRNA-NP。マイクロニードルローラーを用いて皮膚を前処理した場合および前処理しない場合の、Aquaphor中のDy677-siSCR-NPの1回の局所適用によって1時間処理したブタ皮膚の蛍光画像。siRNAシグナルを矢印によって示す。Hoechst 33342を用いて、組織の核も染色した。
【
図31】マイクロニードルローラー前処理を用いた場合および用いない場合のマウスにおける局所siRNA-NP/Tween-Aquaphor。マイクロニードルローラーを用いて皮膚を前処理した場合および前処理しない場合の、Tween/Aquaphor中のDy677-siSCR-NPの一回の局所適用によって1.5時間処理したマウス皮膚の蛍光画像。siRNAシグナルを矢印によって示す。Hoechst 33342を用いて、組織の核も染色した。
【
図32】マイクロニードルローラーを用いた局所siRNA-NP対注射されたsiRNA-NPのEGFRノックダウン効果。マイクロニードルローラー適用を用いて、Tween/Aquaphor中のsiEGFR-NPもしくはsiSCR-NPによる局所処理を1回行った3日後(A)、または生理食塩水中のsiEGFR-NPもしくはsiSCR-NPの注射を1回行った3日後(B)に、マウスの皮膚を採取した。皮膚組織を固定し、EGFRシグナル定量のために蛍光標識EGFR抗体を用いて染色した。1条件当たり4~8枚の画像(20倍)および1群当たり動物3匹を処理した。
【
図33】Dy677-siRNAを負荷したNPを含有する、デキストランベースのマイクロニードル
【
図34】異なる量のCpGと2重量%のsiSTAT3とを含有するAIRISE-02による処置の2日後のマウス(A)骨髄由来樹状細胞および(B)J774細胞の生存率。用量:siRNA 50nM。
【
図35】C3H/HEJマウスから採取した樹状細胞へのNPまたはDharmafectによる非標的スクランブルsiRNA(siSCR)とCpGとの同時送達。各siRNAの用量は50nM、およびNPの2.0重量%であり、CpGの用量はNPの4重量%であった。製造業者のプロトコルに従って、siRNA-Dharmafect製剤を調製した。処置の48時間後にqRT-PCRを用いてmRNAを分析した。「NP」は、Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015および米国特許出願公開第2017/0173169号に記載されているように、架橋PEIおよびPEGで被覆されたメソポーラスシリカナノ粒子を示す。
【
図36】siSTAT3/siCXCR4-CpG-NP+ICIは、高悪性度の4T1胸部腫瘍を担持するマウスに対して有効である。100Kおよび40Kの4T1細胞を各マウス(Balb/c)の両側乳房脂肪体に移植した。腫瘍移植の8日後、
図20および
図21と同様の様式で、siSTAT3/siCXCR4-CpG-NPを用いて、または用いずに、ICIによってマウスを処置した(3回投与;3日ごとに)。局所処置腫瘍および遠位未処置腫瘍の腫瘍増殖曲線をスパイダープロットとしてプロットする(各線は個々のマウスを表す)。注射用量:CpG 16μg;siSTAT3 5μg;siCXCR4 5μg;NP 0.25mg。
【発明を実施するための形態】
【0023】
配列表への参照
本明細書において記載される核酸配列は、37 C.F.R.§1.822において定義されているように、ヌクレオチド塩基の標準的な略語を使用して示されている。各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、相補鎖は、適切であれば、態様に含まれると理解される。2020年7月13日またはその付近に作成され、ファイルサイズ2KBの「51127-004WO2_Sequence Listing_07.13.20_ST25.txt」と題されたコンピュータ可読テキストファイルは、本出願の配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
SEQ ID NO:1は、STAT3に特異的なsiRNA(siSTAT3)の代表的なセンス配列である:
(最後の2つの位置はデオキシ塩基である)。
【0025】
SEQ ID NO:2は、STAT3に特異的なsiRNA(siSTAT3)の代表的なアンチセンス配列である:
(最後の2つの位置はデオキシ塩基である)。
【0026】
SEQ ID NO:3は、HER2に特異的なsiRNA(siHER2)の代表的なセンス配列である:
【0027】
SEQ ID NO:4は、HER2に特異的なsiRNA(siHER2)の代表的なアンチセンス配列である:
【0028】
SEQ ID NO:5は、SCRに特異的なsiRNA(siSCR)の代表的なセンス配列である:
【0029】
SEQ ID NO:6は、SCRに特異的なsiRNA(siSCR)の代表的なアンチセンス配列である:
【0030】
SEQ ID NO:7は、実施例を通して使用したCpG ODN 1826(マウス系)の配列である:
このODNは、完全なホスホロチオエート骨格を含み、ヌクレアーゼ耐性である。
【0031】
SEQ ID NO:8は、サルおよびヒトの系を用いた実施例で使用したCpG ODN 2006/7909の配列である:
このODNは、完全なホスホロチオエート骨格を含み、ヌクレアーゼ耐性である。
【0032】
詳細な説明
本明細書において記載される、癌治療のためのAIRISE(Augmenting Immune Response and Inhibiting Suppressive Environment of Tumors)と呼ばれる免疫療法アプローチ(
図1および
図2)は、腫瘍抗原の個別化されたセットのデポー(インサイチュー腫瘍ワクチン接種)として患者自身の腫瘍を利用する。提供される免疫療法構築物は、少なくとも1つのアジュバント(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)と、抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する1つまたは複数の治療剤/化合物(例えば、siRNA、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、薬物、小分子、抗体など)とを担持する。そのような治療剤の具体例は、ドセタキセル、およびSTAT3に対するsiRNAである。
【0033】
提供される免疫療法構築物を腫瘍部位に投与すると(例えば、腫瘍内注射を介して、または全身送達による腫瘍ホーミングを介して)、免疫刺激(供給されるアジュバントによって提供される)の存在下で腫瘍抗原が放出される。この抗原放出および免疫刺激は、ともに抗原特異的適応免疫を開始および支援する。腫瘍抗原は、ナイーブT細胞に抗原を提示する既存の抗原提示細胞(APC)によって取り込まれ得る。それによって、T細胞(それらの腫瘍抗原に対する)は、エフェクターT細胞(リンパ節内または腫瘍部位内のいずれかで)になるようにプライミングおよび活性化され、全身で増殖し、ひいては、処置される腫瘍に対する、および最初の投与から離れた他の腫瘍(例えば、転移部位)に対する免疫応答の増加および改善をもたらす。最初の投与部位から離れた腫瘍に対する効果は、アブスコパル効果としても当分野において知られている。
【0034】
特異的腫瘍抗原を認識するように訓練されたこれらの抗腫瘍T細胞は、注射部位および体内の他の場所の両方で腫瘍を制御する(
図2を参照)。カーゴの組合せは、任意の種類のマイクロ/ナノ粒子に適用することができ、すなわち、免疫療法構築物およびその使用方法の態様は、送達ビヒクルに依存しない。具体的な例示的な送達ビヒクルが本明細書において記載される。
【0035】
本発明は、CpGおよびsiSTAT3(siSTAT3-CpG-NP)またはCpGおよびドセタキセル(CpG/DTX-NP)を負荷した免疫療法構築物によって例示される、本明細書において記載される免疫療法を使用するインサイチュー腫瘍ワクチン接種効果を提供する。これら2つの例示的な治療活性剤では、ドセタキセル(DTX)は、局所癌細胞を死滅させて腫瘍抗原を放出し、CpGは、局所抗原提示細胞(APC、主にDC)を活性化するのに対して、siSTAT3は、一部の癌細胞を死滅させるが、その主な役割は、抗腫瘍適応免疫応答のプライミングおよび作用を妨げる免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)を減少させることである。siSTAT3-CpG-NPは、癌およびAPCの両方によって取り込まれるように設計されていることに留意されたい。siSTAT3-CpG-NPは、一部の癌細胞内でいくらかの死滅効果を有し得るが、STAT3をノックダウンすることによって、死滅させるのではなく、むしろAPCを活性化する。腫瘍抗原(既にTME内にあるか、提供される処置によって放出される)は、腫瘍および腫瘍排出リンパ節内でCpG活性化APCまたはAIRISE活性化APCによって取り込まれる。次いで、APCは、これらの抗原を(交差)提示して、腫瘍抗原特異的T細胞をプライミングする。これらの活性化された細胞傷害性(エフェクター)T細胞は、増殖し、全身循環に入る。それらは、体内のどこに位置する場合でも、処置された腫瘍と同じ抗原の一部を有する腫瘍に特異的にホーミングする(例えば、処置された腫瘍および遠位(未処置)の腫瘍の両方にホーミングする)。細胞傷害性T細胞による癌細胞の死が多くなれば、さらに多くの腫瘍抗原がさらに放出され、ポジティブフィードバックループにおけるエフェクター(既にプライミングされた)T細胞の増殖が増幅される。一定の態様では、抗酸化剤メソポーラスシリカナノ粒子(MSNP)は、局所免疫抑制性TMEをさらに調節し、腫瘍促進活性を阻害することができる。腫瘍部位で局所的に誘導されたこのワクチン接種は、全身の全身性抗腫瘍免疫を生じさせる。
【0036】
一定の態様では、送達ビヒクルは、オリゴ負荷およびエンドソーム脱出のために、生体内還元性架橋カチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)で被覆された、薬物負荷用のMSNPコア(例えば、約50nm)と、安定剤、例えば、ナノ粒子凝集を防止し、オリゴカーゴを血液酵素による分解から保護し(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)、PEIの電荷を遮蔽し、安全性を高めるポリエチレングリコール(PEG)とを含む。オリゴ(siRNAおよび/またはCpG)は、構築物に最後に負荷され、室温でPBS中で数分間(例えば、5分)混合される。オリゴ(siRNAおよび/またはCpG)は、オリゴ配列に依存しない様式でPEIに静電的に結合し、PEG層の下で酵素分解から保護される(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)。得られたナノ粒子(NP)は、MSNPサイズ、PEIおよびPEGの分子量および組成、PEI架橋条件(緩衝能を高め、電荷を低下させるため)、オリゴおよび(任意で)抗体の負荷量に関して、siRNA送達効果のために高度に最適化された(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)。siRNA-NPのこの態様は、50nmの剛性MSNPコアサイズ(TEMによる)と、狭いサイズ分布を有する100nmの流体力学的サイズ(ポリマー被覆を有するNP)とを有する。siRNA-NPのこの態様は、13.5重量%のPEI、18.2重量%のPEGを含み、2~4重量%のsiRNAまたは最大10重量%のCpGオリゴを負荷することができる。薬物(例えば、タキサン)は、0.5~3重量%でMSNPコア内に、またはポリマー上に負荷され得る。この段落の値はいずれも、ナノ構築物の重量による。米国特許出願公開第2017/0172923号も参照されたい。
【0037】
第1の具体的な態様では、送達システムと、例えば、送達システム内に負荷されるか、送達システムの表面に付着されるか、送達システムに結合されるか、送達システム内に封入されるか、送達システム内に含有された少なくとも1つの治療剤であって、腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する治療剤と、例えば、送達システムの表面に付着されるか、送達システムに結合されるか、送達システム内に封入されるか、送達システム内に含有された少なくとも1つのアジュバント化合物とを含む、免疫療法構築物が提供される。
【0038】
この態様の例では、送達システムは、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、ポリマーもしくは脂質で被覆された無機粒子、またはそれらのハイブリッドを含む(または、他の態様では、送達システムは、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、ポリマーもしくは脂質で被覆された無機粒子、もしくはそれらのハイブリッドである)。
【0039】
免疫療法構築物の様々な例では、送達ビヒクルは、無機粒子であり、メソポーラスシリカ、金、アルミニウム、リン酸カルシウム、酸化鉄、または抗酸化剤粒子(酸化セリウムなど)のうちの1つまたは複数を含む。
【0040】
免疫療法構築物のさらに多くの例では、送達ビヒクルは、フラーレン、エンドヘドラル金属フラーレン(endohedral metallofullerene)、三金属窒化物鋳型エンドヘドラル金属フラーレン、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、分枝状カーボンナノチューブおよび樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層ホウ素/ナイトレートナノチューブおよび多層ホウ素/ナイトレートナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ケイ素、シリカマイクロスフェアおよびシリカナノスフェア、ポリマーマイクロスフェアおよびポリマーナノスフェア、シリカシェル、生分解性PLGAマイクロスフェアおよび生分解性PLGAナノスフェア、金粒子、酸化セリウム粒子、酸化亜鉛粒子、銀粒子、アルミニウム粒子、炭素粒子、鉄粒子、酸化鉄粒子、アジュバント粒子(例えば、ビロソームまたは他のウイルス様粒子)、ならびに/または修飾ミセルのうちの1つまたは複数を含む。任意で、送達ビヒクルはポリマーを含む。特定の例では、ポリマー粒子は、PLGA、PLL、ポリアルギニン、PEG、PEI、またはキトサンのうちの1つまたは複数を含む。
【0041】
提供される免疫療法構築物の態様のいずれかでは、例は、水性媒体(PBS、Tris緩衝液または水など)中で測定した場合に5nm~999nm(例えば、約80nm~約200nmまたは約90nm~約150nm)の流体力学的サイズを有するナノ粒子であることが企図される。いくつかの態様では、免疫療法構築物は、水性媒体(PBS、Tris緩衝液または水など)中で測定した場合に150nm未満の流体力学的サイズを有する。さらに他の例では、免疫療法構築物は、水性媒体(PBS、Tris緩衝液または水など)中で測定した場合に1ミクロン~1000ミクロン(例えば、1ミクロン~50ミクロン)の流体力学的サイズを有するマイクロ粒子である。
【0042】
記載される免疫療法構築物の様々な態様では、治療剤は、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、DNA、sgRNA(CRISPR-cas9エレメント)、他のオリゴヌクレオチド、他のポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、化学療法薬、毒素、抗酸化剤、小分子阻害剤、抗体、または放射線療法剤を含む。具体的な例では、治療剤は、STAT3、CD39、CD73、TGF-β、PD-L1、PD1、CTLA4、MIF、PLK1、HIF、NOX1~4、HER2、EGFR、BCL2、AKT1、HIF1-α、NOX1~4、AR、MYC、またはMTDHの発現または活性を阻害する。
【0043】
免疫療法構築物のなおさらなる態様では、治療剤は、抗生物質(例えば、ドセタキセル、ドキソルビシン、またはミトキサントロン)植物アルカロイド(例えば、カバジタキセル)、PLK1阻害剤、分裂期キナーゼ阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤(PD-L1、PD1、またはCTLA4に対する抗体など)、白金系化学療法剤、小分子HER2阻害剤、またはHER2特異的抗体のうちの1つまたは複数を含む抗癌剤である。分裂期キナーゼ阻害剤の例には、限定されることなく、ポロ様キナーゼ(PLK)、オーロラキナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)1、CDK2、HASPIN、単極紡錘体1キナーゼ(monopolar spindle 1 kinase)(Mps1)、またはNimA関連キナーゼ(NEK)のうちの少なくとも1つの阻害剤が含まれる。いくつかの態様では、分裂期キナーゼ阻害剤は、GSK461364、BI2536、Tak960、NMS-P937、BI6727(ボラセルチブ)、Chk 1キナーゼ阻害剤LY2603618、AU14022、YK-4-279、またはPMNのうちの1つまたは複数を含む。
【0044】
免疫療法構築物の任意の態様の例では、アジュバント化合物は、免疫刺激活性を有する。例として、アジュバント化合物は、CpGオリゴヌクレオチド、CpG配列を含むDNA TLRアゴニスト、非CpG DNA TLRアゴニスト、RNA TLRアゴニスト、アルミニウム塩、抗CD40抗体、融合タンパク質、サイトカイン、小分子TLRアゴニスト、油系アジュバントもしくは界面活性剤系アジュバント、リポ多糖、植物抽出物、またはそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含み得る。具体的な例では、アジュバント化合物は、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ガーディキモド、ポリIC、ポリICLC、dSLIM、またはEnanDIMを含む。
【0045】
本明細書において、提供される免疫療法構築物の態様のいずれも、腫瘍特異的抗原またはオボアルブミンを含まなくてもよいことが特に企図される。
【0046】
さらに別の提供される態様は、本明細書において提供される少なくとも1つの免疫療法構築物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、またはそれらの混合物とを含む、組成物である。
【0047】
本明細書において記載される免疫療法構築物を使用する方法、例えば、癌または別の過剰増殖性疾患を治療または予防する方法も提供される。
【0048】
癌を治療する1つの提供される方法は、癌の1つまたは複数の症状を低減するために、癌を有する対象に、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の有効量を投与する工程を含む。
【0049】
提供される別の方法態様は、癌の症状を示す細胞を処置する方法であって、該細胞と、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の治療有効量とを接触させる工程を含む方法である。
【0050】
提供される別の方法態様は、癌の症状を示す対象から得られた細胞を処置する方法であって、該細胞と、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の治療有効量とを接触させる工程を含む方法である。この態様の例では、対象から得られた細胞は癌細胞である。他の態様では、細胞は癌細胞ではない。例えば、いくつかの例では、非癌(例えば、正常)細胞は免疫学的細胞である。細胞を処置する方法の例では、方法は、少なくとも1つの処置された細胞を対象に投与して戻す工程をさらに含む。
【0051】
別の提供される態様は、過剰増殖性疾患もしくは過剰増殖性病態を有すると診断されたかまたはそのような疾患もしくは病態を発症するリスクが高いと診断された対象を処置する方法であって、本明細書において記載される少なくとも1つの免疫療法構築物を含む組成物の有効量を対象に投与する工程を含む方法である。例として、様々な態様では、過剰増殖性疾患または過剰増殖性病態は、癌、前癌、または癌転移のうちの1つまたは複数を含むことが企図される。例えば、過剰増殖性疾患は、場合によっては、黒色腫、肺癌、乳癌、膵癌、脳癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎癌、結腸直腸癌、リンパ腫、結腸癌、または肝癌のうちの1つまたは複数を含む。
【0052】
免疫療法構築物の投与を少なくとも1つの他の治療、例えば、癌または別の過剰増殖性疾患もしくは過剰増殖性病態の治療と組み合わせる方法態様も提供される。そのような併用方法の第1の例では、それを必要とする対象に、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の有効量と、少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法剤、標的療法剤または免疫チェックポイント阻害剤)とを投与する工程を含む方法は、それを必要とする対象において抗癌療法の効果を増強する。別の例示的な併用方法では、それを必要とする対象に、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の有効量と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤とを投与する工程を含む方法は、新生物を有すると診断された対象においてチェックポイント遮断免疫療法の効果を増強する。さらに別の併用方法は、新生物を有すると診断された対象において放射線療法の効果を増強する方法であって、それを必要とする対象に、記載された態様のいずれか1つの免疫療法構築物、または免疫療法構築物を含む組成物の有効量と、少なくとも1つの放射線療法とを投与する工程を含む方法である。併用方法の態様のいずれかでは、免疫療法構築物または組成物と、第2の薬剤(一般に、抗癌療法剤または抗癌療法治療)とが連続的または同時に投与される例が提供される。本明細書において使用される場合、抗癌療法の治療効果に関して「増強する」という用語は、抗癌療法が本発明の免疫療法構築物を用いず投与される場合に通常得られる治療効果を超える抗癌療法(例えば、抗癌剤、放射線療法またはチェックポイント免疫療法による治療)の治療効果の増加を指す。「治療効果の増加」は、抗癌療法によって得られる治療効果の加速、および/または強度および/または程度の増加がある場合に現れる。「治療効果の増加」はまた、治療上の利益の有用期間の延長を含む。「治療効果の増加」はまた、本発明によって提供される免疫療法構築物と同時投与される場合、抗癌療法の比較的高い投与量、頻度または期間が単独で投与される場合と同じ利益および/または効果を得るために、抗癌療法の比較的低い投与量、頻度または治療期間が必要とされる場合も現れ得る。増強効果は、必ずしもそうとは限らないが、好ましくは、抗癌療法単独では効果がないか、治療的に効果が低い急性症状の治療をもたらす。本発明の免疫療法構築物を抗癌療法と同時投与した場合、抗癌療法単独の投与と比較して、治療効果が少なくとも10%増加すると(例えば、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも100%)、増強が達成される。
【0053】
記載される方法態様のいずれかにおいて免疫療法構築物を投与する工程は、対象の腫瘍、病変もしくは切除された腫瘍領域の中もしくは周囲への直接注射;または対象における全身注射;または対象への局所適用;または吸入;または移植装置;または対象へのマイクロニードル適用のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0054】
提供される方法態様のいずれかの例では、対象(処置される、構築物もしくは組成物が投与される、または細胞が得られる)は哺乳動物である。例えば、一定の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0055】
本明細書において記載される免疫療法構築物と、少なくとも1つの抗癌剤とを含むキットも本明細書において提供される。いくつかの態様では、抗癌剤は、化学療法剤、標的療法剤、または免疫チェックポイント阻害剤である。
【0056】
以下、本開示の教示を支援するために、本開示の局面を追加の詳細および選択肢を用いて、以下の通り説明する:(I)免疫療法構築物;(II)治療剤(腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する);(III)アジュバント化合物;(IV)任意の追加の成分;(V)送達システム;(VI)薬学的組成物および投与製剤;(VII)例示的な使用方法;(VIII)キット;(IX)例示的な態様;ならびに(X)実施例。
【0057】
(I)免疫療法構築物
アジュバントと治療活性剤とを癌細胞に同時送達する操作された粒子を含む新たなクラスの免疫療法薬(一般に、「免疫療法構築物」)が、本明細書において記載される。態様は、抗原放出(具体的には、腫瘍抗原放出)を誘導する、および/または免疫抑制環境(腫瘍微小環境など)を調節する治療活性剤を提供する。これらの免疫療法構築物は、処置されている癌にどの抗原が関連しているかを知るまたは同定する必要なく、CD8+T細胞レパートリーを増強し、全身性抗腫瘍免疫療法効果を誘導する。
【0058】
この戦略は多くの重要な特徴を有する。それらは、効果的であり、個別化されており、局所送達に起因して安全であり、記憶効果によって癌を攻撃するように身体の免疫細胞を訓練および利用するため恒久的であり、安価であり(例えば、低投与量および低投与回数が必要とされる)、多くの種類の癌に適用可能である。
【0059】
免疫療法構築物中の各成分(例えば、治療剤、アジュバント、送達ビヒクル、または送達ビヒクルの任意の成分)の量は、態様に応じて変化し得ることが理解されるであろう。例として、任意の個々の成分は、免疫療法構築物の0.001重量%~80重量%、0.01重量%~75重量%、0.5~50重量%、0.5~10重量%、0.5~5重量%、1~10重量%または2~4重量%を構成し得る。いくつかの態様では、治療剤は、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA、または本明細書において記載される任意の他のオリゴヌクレオチド)を含み、オリゴヌクレオチドは、免疫療法構築物の0.5~30重量%、例えば、0.5~10%、1~5%、5~15%または10~30%を構成する。いくつかの態様では、治療剤は、抗癌剤(例えば、小分子阻害剤、または本明細書において記載される任意の他の抗癌剤)を含み、抗癌剤は、免疫療法構築物の0.1~30重量%、例えば、0.5~10%、1~5%、5~15%または10~30%)を構成する。いくつかの態様では、治療剤は抗体を含み、抗体は、免疫療法構築物の0.1~30重量%、例えば、0.5~10%、1~5%、5~15%または10~30%を構成する。
【0060】
(II)治療剤
提供される操作された免疫療法構築物によって癌細胞および/または免疫細胞に送達される治療活性剤(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、sgRNA-cas9、DNAおよびmRNAを含む治療用オリゴヌクレオチド、ならびに小分子阻害剤、化学療法薬、抗体、化学剤など)の例は、腫瘍抗原放出を引き起こし、および/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する。具体的な態様では、活性剤は、癌細胞を死滅させ、それによって腫瘍抗原を放出し、同時に、同時送達されたアジュバント(例えば、CpG、R848、ポリI:Cなど)は、放出された腫瘍抗原に対して適応免疫細胞をプライミングおよび活性化する。活性化されたエフェクター細胞は、体内の任意の部位(免疫療法構築物の局所送達から離れた部位を含む)で腫瘍を認識し、攻撃することができるのとともに、処置された腫瘍と同じ腫瘍抗原のうちの1つまたは複数を有する新しい腫瘍の拡散、再発または発生を低減するか、予防することさえできる。一定の態様では、免疫療法構築物上の治療剤の用量は、有益な免疫細胞に対する毒性を低下させるように調整され得る。一定の態様では、免疫細胞に害を与えることなく癌の生存率に影響を及ぼす治療剤が、免疫療法構築物上で利用される。他の例では、治療活性剤(例えば、siRNA、阻害剤、またはSTAT3、CD39、CD73、IDO-6、PD-L1、TGF-βに対する他の薬物、抗酸化剤など)が、送達ビヒクル(例えば、粒子)上/内に負荷されて免疫抑制性腫瘍微小環境を調節し、免疫細胞のプライミングおよび活性化を可能にして、既に腫瘍内にある抗原、またはその放出が免疫療法構築物によって引き起こされる抗原を利用して癌細胞を効果的に攻撃することもできる。治療剤は、一例として、STAT3、IDO-1、TGF-β、CD47、NOX1~5、HSP47、XBP1、BCL2、BCL-XL、AKT1、AKT2、AKT3、MYC、HER2、HER3、AR、サバイビン、GRB7、EPS8L1、RRM2、PKN3、EGFR、IRE1-α、VEGF-R1、RTP801、proNGF、ケラチンK6A、LMP2、LMP7、MECL1、HIF1α、フューリン、KSP、eiF-4E、p53、β-カテニン、ApoB、PCSK9、SNALP、CD39、CD73、PD-L1、PD-1、CTLA-4、MIF、VEGF、PIGF、CXCR4、CCR2、PLK1、MTDH、Twist、Lcn2、IL-6、IL-10、SOCS1、TRAIL、p65および分裂期キナーゼ(例えば、PLK1、PLK2、PLK3、PLK4、CDK1、CDK2、CHK1、CHK2、BUB1、BUBR1、MPS1、NEK2、HASPIN、オーロラA)を標的とすることができる。治療剤は、当技術分野において公知の他の免疫抑制遺伝子を標的とすることができる(例えば、Liu et al.,Database,bax094,2017;Rabinovich et al.,Annu Rev Immunol,25:267,2010)。治療剤はまた、当技術分野において公知の免疫チェックポイントの活性を阻害することができる。阻害された場合に癌治療に有益な免疫チェックポイントには、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、B7-H3、VISTA、A2AR、IDOなどが非網羅的に含まれる(Khair et al.,Frontiers Immunology,10:453,2019)。まとめると、免疫療法構築物は、長期持続性の免疫媒介性抗癌効果を引き起こす。記憶適応免疫も確立され得る。
【0061】
一定の態様では、免疫療法構築物は、免疫応答を活性化するために使用される。そのような態様は、免疫応答を活性化する特定の様式に限定されない。
【0062】
治療用オリゴヌクレオチド。様々なタイプの治療用オリゴヌクレオチドを使用することができ、様々なタイプの治療用オリゴヌクレオチドには、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、DNA、mRNA、sgRNA(CRISPR用)およびCRISPR-cas9エレメントが非網羅的に含まれ得る。換言すれば、特定の遺伝子およびタンパク質の作用または合成を特異的に調節(干渉または増強)することができる限り、ヌクレオチドの任意の鎖がこの技術分野において利用され得る。各特定のオリゴヌクレオチドは、単一または複数の標的を有し得る。本発明にとって関心対象の遺伝子/タンパク質標的の例には、免疫チェックポイント、転写因子、ホスファターゼ、キナーゼなどが挙げられる。具体的な標的には、STAT3、IDO-1、TGF-β、CD47、NOX1~5、HSP47、XBP1、BCL2、BCL-XL、AKT1、AKT2、AKT3、MYC、HER2、HER3、AR、サバイビン、GRB7、EPS8L1、RRM2、PKN3、EGFR、IRE1-α、VEGF-R1、RTP801、proNGF、ケラチンK6A、LMP2、LMP7、MECL1、HIF1α、フューリン、KSP、eiF-4E、p53、β-カテニン、ApoB、PCSK9、SNALP、CD39、CD73、PD-L1、PD-1、CTLA-4、MIF、VEGF、PIGF、CXCR4、CCR2、PLK1、MTDH、Twist、Lcn2、IL-6、IL-10、SOCS1、TRAIL、p65および分裂期キナーゼ(例えば、PLK1、PLK2、PLK3、PLK4、CDK1、CDK2、CHK1、CHK2、BUB1、BUBR1、MPS1、NEK2、HASPIN、オーロラA)が含まれる。治療用オリゴヌクレオチドはまた、当技術分野において公知の他の免疫抑制遺伝子も標的とすることができる(例えば、Liu et al.,Database,bax094,2017;Rabinovich et al.,Annu Rev Immunol,25:267,2010)。治療用オリゴヌクレオチドは、当技術分野において公知の免疫チェックポイントの発現および活性を阻害することができる。阻害された場合に癌治療に有益な免疫チェックポイントには、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、B7-H3、VISTA、A2AR、IDOなどが非網羅的に含まれる(Khair et al.,Frontiers Immunology,10:453,2019)。治療用オリゴヌクレオチドはまた、2つの遺伝子を標的とする2本の鎖を含むことができる(例えば、BLC2およびAKT1に対するsiRNA、ARおよびMYCに対するsiRNA)。それらはまた、免疫応答を同時に増強し、標的遺伝子の発現を調節することができる免疫刺激配列/エレメントを含むことができる。それらは、変異を有する前述の遺伝子を標的とするように設計することもできる。
【0063】
一定の態様では、免疫療法構築物は、活性剤として、RNA干渉を媒介するオリゴヌクレオチドを含む。RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)によって引き起こされ、dsRNAに相同な遺伝子の転写物をダウンレギュレートすることができる高度に保存された機構である。dsRNAは、ダイサーによって、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる21~23ヌクレオチドの短い二本鎖に最初にプロセシングされる。dsRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれると、標的mRNAの切断を介して遺伝子サイレンシングを媒介することができる。「siRNA」または「低分子干渉リボ核酸」は、生理学的条件下で相補的領域に沿ってハイブリダイズするリボヌクレオチドの2本の鎖を指す。siRNA分子は、標的遺伝子のmRNAの領域と実質的に同一の二本鎖領域を含む。標的遺伝子の対応する配列と100%の同一性を有する領域が適している。この状態を「完全に相補的」という。ただし、この領域はまた、標的とされるmRNAの領域の長さに応じて、標的遺伝子の対応する領域と比較して1つ、2つまたは3つのミスマッチを含む場合があり、したがって、完全に相補的でない場合がある。特定の標的配列の発現を効果的に阻害するために十分な配列同一性を有するsiRNAを分析および同定する方法は当技術分野において公知である。好適なmRNA標的領域はコード領域であると考えられる。非翻訳領域、例えば、5'-UTR、3'-UTRおよびスプライスジャンクションもまた、それらの領域がmRNA標的に固有である限り、好適である。
【0064】
いくつかの態様では、免疫療法構築物内にカプセル化されたか免疫療法構築物と結合したsiRNAが、RNA干渉を含む方法およびシステムで利用される。そのような態様は、siRNA分子の特定のサイズまたはタイプに限定されない。標的に相補的なsiRNAの領域の長さは、例えば、15~100ヌクレオチド、18~25ヌクレオチド、20~23ヌクレオチド、または15、16、17もしくは18ヌクレオチド超であり得る。対応する標的領域にミスマッチがある場合、相補的領域の長さは、一般に、幾分長くする必要がある。
【0065】
一定の態様では、本明細書において開示される免疫療法構築物を使用するsiRNA送達手法(例えば、免疫療法構築物上にsiRNAを負荷することによって)を使用して、関心対象の任意の遺伝子の発生を阻害することができることが企図される。具体的な標的には、癌および他の疾患におけるドライバーとして知られる遺伝子の中で、STAT3、IDO-1、TGF-β、CD47、NOX1~5、HSP47、XBP1、BCL2、BCL-XL、AKT1、AKT2、AKT3、MYC、HER2、HER3、AR、サバイビン、GRB7、EPS8L1、RRM2、PKN3、EGFR、IRE1-α、VEGF-R1、RTP801、proNGF、ケラチンK6A、LMP2、LMP7、MECL1、HIF1α、フューリン、KSP、eiF-4E、p53、β-カテニン、ApoB、PCSK9、SNALP、CD39、CD73、PD-L1、PD-1、CTLA-4、MIF、VEGF、PIGF、CXCR4、CCR2、PLK1、MTDH、Twist、Lcn2、IL-6、IL-10、SOCS1、TRAIL、p65および分裂期キナーゼ(例えば、PLK1、PLK2、PLK3、PLK4、CDK1、CDK2、CHK1、CHK2、BUB1、BUBR1、MPS1、NEK2、HASPIN、オーロラA)が含まれる。公知の他の潜在的な免疫抑制遺伝子は、Liu et al.,Database,bax094,2017およびRabinovich et al.,Annu Rev Immunol,25:267,2010に記載されている。さらに、siRNAは、野生型遺伝子ではなく、変異体または変異遺伝子を対象とし得ることが特に企図される。
【0066】
当業者であれば、公開配列データベースにおいて容易に入手可能な、これらの標的の代表的な配列を利用する方法を理解するであろう。以下の表は、サンプル配列情報を提供する:
【0067】
そのような態様は、インビトロおよび/またはインビボでsiRNAの送達プロファイルを評価する特定の様式に限定されない。いくつかの態様では、イメージング剤(例えば、蛍光色素FITC、RITC、Cy(商標)色素、Dylight(登録商標)色素またはAlexa Fluor(登録商標)色素)または放射性トレーサーによってsiRNA分子を標識することにより、器官レベルでのsiRNA分子の生体内分布と細胞内送達プロファイルとの可視化が可能になる。いくつかの態様では、それぞれmRNAレベルおよびタンパク質レベルで標的タンパク質を分析するために、RT-PCR、FISH、IHC、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットが使用される。
【0068】
一定の態様では、本開示は、RNA干渉によって標的遺伝子を阻害することができるsiRNAを細胞に導入する工程を含む、細胞内の標的遺伝子を阻害する方法であって、siRNAが、互いに相補的な2本のRNA鎖を含み、siRNAが、免疫療法構築物上に負荷される方法を提供する。いくつかの態様では、siRNAは3'センス鎖でコレステロールによって修飾されている。いくつかの態様では、細胞は、ヒトまたは動物対象(例えば、ウマ、イヌ、ネコ、もしくは他の飼育動物、家畜、または癌を有する他の動物)内にある。
【0069】
マイクロRNA(miRNA)またはmiRNA模倣物は、3'-UTRエレメントを介してタンパク質コード遺伝子を標的化し、実質的にサイレンシングすることができる短い非コードRNAである。多数の生物学的プロセスに果たすmiRNAの重要な役割が確立されているが、複雑な疾患におけるmiRNA機能の包括的な分析は不足している。miRNAは一次miRNA(pri-miRNA)として最初に転写され、これが次いで、核RNAse DroshaおよびPashaによって切断されて、前駆体-miRNA(pre-miRNA)が得られる。これらの前駆体は、細胞質RNAse IIIダイサーによってさらにプロセシングされて、短い二本鎖miR-miR*二重鎖を形成し、その一方の鎖(miR)は、次いで、酵素ダイサーおよびアルゴノート(Ago)を含むRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる。成熟型miRNA(約17~約24nt)は、標的遺伝子の3'UTR内に位置する特定の標的部位にRISCを導く。標的部位に結合すると、miRNAは、mRNA分解、翻訳阻害、および/またはプロセシングボディ(Pボディ)への隔離を介して翻訳を抑制する(Eulalio et al.,Cell,132:9-14,2008;Behm-Ansmant et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.,71:523-530,2006;Chu and Rana,Plos.Biology.,4:e210,2006)。近年の推定では、60%を超えるタンパク質コード遺伝子が、3'-UTR miRNA標的部位を有することが見出されている(Friedman et al.,Genome Res.,19:92-105,2009)。これに関して、miRNAは、初期発生(Reinhart et al.,Nature,403:901-906,2000)、細胞増殖および細胞死(Brennecke et al.,Cell,113(1):25-36,2003)、アポトーシスおよび脂肪代謝(Xu et al.,Curr.Biol.,13(9):790-795,2003)、ならびに細胞分化(Chen et al.,Mol.Microbiol.,53843-856,2004;Dostie et al.,RNA-A Publication of the RNA Society,9:180-186,2003)のように多様な過程の重要な調節因子として作用する。さらに、慢性リンパ性白血病(Calin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,105:5166-5171,2008)、結腸腺癌(Michael et al.,Mol.Cancer Res.,1:882-891,2003)、バーキットリンパ腫(Metzler et al.,Genes Chromosomes Cancer,39:167-169,2004)、心疾患(Zhao et al.,Cell,129:303-317,2007)およびウイルス感染(Pfeffer et al.,Science,304:734-736,2004)におけるmiRNA発現の試験は、miRNAと多数の疾患との間の重要な関連を示唆している。
【0070】
これまでに観察されているmiRNAは、通常、21~22ヌクレオチド長を有し、それらは、非タンパク質コード遺伝子から転写されるさらに長い前駆体から生じる。Carrington and Ambros(Science,301(5631):336-338,2003)に概説。前駆体は、自己相補的領域内で互いに折り返す構造を形成する。次いで、それらは、動物ではヌクレアーゼダイサー(または植物ではDCL1)によってプロセシングされる。miRNA分子は、それらの標的との正確なまたは不正確な塩基対形成を介して翻訳を中断する。いくつかの態様では、miRNAは、疾患、例えば癌などを処置するために、対象、例えば、ヒト患者などに治療的に提供されるか、投与される免疫療法構築物の成分として使用され得る。あるいは、いくつかの態様では、miRNAに相補的な核酸が、インビボで対象に治療的に投与されるか、インビトロで使用されて、所望の治療結果(例えば、miRNA-142-3p、miRNA-142-3p、miRNA-124またはmiRNA-138)を生じさせ得る。このように、相補的核酸を鋳型として使用して、所望の治療用miRNA(例えば、miRNA-142-3p、miRNA-142-3p、miRNA-124またはmiRNA-138)を作製してもよい。
【0071】
治療用オリゴヌクレオチドがSTAT3を対象とするかSTAT3に特異的である態様が特に企図される。STAT3とは、タンパク質「シグナル伝達性転写因子3」およびそのホモログを指す。この用語は、タンパク質の野生型または変異型に関わらず、ヒトタンパク質を含む。態様では、「STAT3」は、Entrez Gene 6774、OMIM 102582、UniProt P40763および/またはRefSeq(タンパク質)NP 003141(これは、本出願の出願日の時点で公知のタンパク質および関連する核酸を指す)に関連するタンパク質を指す。「リン酸化STAT3」は、リン酸化され、リン酸化によって活性化されるSTAT3タンパク質を指す。態様では、リン酸化STAT3は、チロシン705上、またはホモログ中のチロシン705に対応する残基上でリン酸化されている。態様では、STAT3の活性化とは、STAT3が、他の遺伝子の転写を活性化することができることを意味する。態様では、活性化STAT3は、チロシン705上、またはチロシン705に対応する残基上でリン酸化され、二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し、核に転座し、および/または転写を活性化する。態様では、活性化STAT3は、ホモ二量体を形成する。STAT3をリン酸化し、それによってSTAT3を活性化するタンパク質の例には、JAK2、EGFR、c-METおよびPDGF-Rが挙げられる。
【0072】
抗癌剤。抗癌剤という語句は、その単純な通常の意味に従って使用され、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を阻害する能力を有する組成物(例えば、化合物、薬物、アンタゴニスト、阻害剤、モジュレーター)を指す。いくつかの態様では、抗癌剤は化学療法剤である。いくつかの態様では、抗癌剤は標的療法剤である。いくつかの態様では、抗癌剤は免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、抗癌剤は、癌を処置する方法において有用性を有する、本明細書において同定される薬剤である。いくつかの態様では、抗癌剤は、癌を処置するために、FDA、または米国以外の国の同様の規制当局によって承認された薬剤である。
【0073】
抗癌剤の例には、限定されることなく、MEK(例えば、MEK1、MEK2、またはMEK1およびMEK2)阻害剤(例えば、XL518、CI-1040、PD035901、セルメチニブ/AZD6244、GSK1120212/トラメチニブ、GDC-0973、ARRY-162、ARRY-300、AZD8330、PD0325901、U0126、PD98059、TAK-733、PD318088、AS703026、BAY 869766、PD184352、SB239063、BAY 43-9006);アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、ウラムスチン、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファンおよびヘプスルファム(hepsulfam))、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムシチン(lomusitne)、セムスチンおよびストレプトゾシン)ならびにトリアゼン(例えば、デカルバジン);代謝拮抗物質、例えば、葉酸類似体(例えば、メトトレキセート、ロイコボリン、ラルチトレキセドおよびペメトレキセド)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン(floxouridine)、シタラビン、カペシタビンおよびゲムシタビン)およびプリン類似体(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、フルダラビンおよび5-アザチオプリン);植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセルおよびホモハリントニン);トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン誘導体(例えば、イリノテカンおよびトポテカン)、アムサクリンおよびエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシドおよびテニポシド);抗生物質、例えば、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンおよび塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride))、ストレプトマイセス(streptomyces)由来抗生物質もしくはその誘導体(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ゲルダナマイシン、プリカマイシンおよび17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG;タネスピマイシン)、クロファジミンおよびβラクタム誘導体;白金系化学療法剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素);メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタンおよびアミノグルテチミド);血管新生阻害酵素(例えば、L-アスパラギナーゼおよびアルギニンデイミナーゼ);PI3K阻害剤(例えば、ワートマニンおよびLY294002);mTOR阻害剤(例えば、セルトラリン);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザ-2'-デオキシシチジン);アンチセンスオリゴヌクレオチド;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節因子(例えば、デオキシアデノシンおよびトリプトライド);BCR/ABLアンタゴニスト;bFGF阻害剤;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);硝酸ガリウム;ゼラチナーゼ阻害剤;グルタチオン阻害剤(例えば、エタニダゾール);免疫賦活剤ペプチド;インスリン様増殖因子1受容体阻害剤;白血病阻害因子;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;MIF阻害剤;ミスマッチ二本鎖RNA;マイコバクテリア細胞壁抽出物;一酸化窒素モジュレーター;ホスファターゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);プロテインA系免疫モジュレーター;タンパク質キナーゼCモジュレーター;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;リボザイム;シグナル伝達阻害剤/モジュレーター(例えば、イトラコナゾール);一本鎖抗原結合タンパク質;幹細胞阻害剤;ストロメライシン阻害剤;合成グリコサミノグリカン;テロメラーゼ阻害剤;甲状腺刺激ホルモン;翻訳阻害剤;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)、例えば、ゴセレリンおよびリュープロリド(リュープロレリン);ステロイド、例えば、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾンおよびデキサメタゾン);プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン);抗プロゲストロゲン薬(antiprogestrogen)(例えば、ミフェプリストン);エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);抗エストロゲン薬、例えば、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、ファドロゾール、レトロゾール、ペントロゾールおよびアナストロゾール)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン類似体、タモキシフェンメチオジド類似体、パノミフェン類似体およびクロミフェン類似体);アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミド、フィナステリドおよびビカルタミド);免疫賦活剤、レバミソール、インターロイキン(例えば、インターロイキン-2)およびインターフェロン/インターフェロンアゴニスト(例えば、α-インターフェロン);モノクローナル抗体、例えば、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)、抗HER2モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブ)、抗CD52モノクローナル抗体、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)、抗HLA-DRモノクローナル抗体および抗VEGFモノクローナル抗体);イムノトキシン(例えば、抗CD33モノクローナル抗体-カリチアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体-緑膿菌外毒素コンジュゲートなど);放射免疫療法剤(例えば、111In、90Yまたは131Iにコンジュゲートされた抗CD20モノクローナル抗体など);スタチン(例えば、セリバスタチンおよびピタバスタチン);5-T1B受容体アゴニスト(例えば、5-ノニルオキシトリプタミン);BRAFキナーゼ阻害剤(例えば、ベムラフェニブおよびダブラフェニブ);チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、EGFR、HER2、KDR、FLT4、EphB4、およびSrcのうちの1つもしくは複数の阻害剤(例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、ラパチニブ(Tykerb(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商標))バンデタニブ(Caprelsa(商標))、アファチニブ/BIBW2992、CI-1033/カネルチニブ、ネラチニブ/HKI-272、CP-724714、TAK-285、AST-1306、ARRY334543、AG-1478、ダコミチニブ/PF299804、OSI-420/デスメチルエルロチニブ、AZD8931、ARRY-380、AEE788、ペリチニブ/EKB-569、CUDC-101、WZ8040、WZ4002、WZ3146、AG-490、XL647、PD153035、BMS-599626、ソラフェニブ、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、スニチニブならびにダサチニブ;免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体、抗PD1/L1抗体);PLK1阻害剤(GSK461364、BI2536、Tak960、NMS-P937、ボラセルチブ)など、またはそれらの混合物(例えば、リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン)が挙げられる。
【0074】
さらに、本明細書において記載される免疫療法構築物は、限定されることなく、免疫賦活剤(例えば、Bacille Calmette-Guerin(BCG)、レバミソール、インターロイキン-2、α-インターフェロンなど)、治療用モノクローナル抗体(例えば、抗CD20モノクローナル抗体、抗HER2モノクローナル抗体、抗CD52モノクローナル抗体、抗HLA-DRモノクローナル抗体および抗VEGFモノクローナル抗体)、イムノトキシン(例えば、抗CD33モノクローナル抗体-カリチアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体-緑膿菌外毒素コンジュゲートなど)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体)および放射免疫療法(例えば、111In、90Yまたは131Iにコンジュゲートされた抗CD20モノクローナル抗体など)を含む従来の免疫療法剤と同時投与され得る。これらの免疫療法剤はまた、それらの治療効果を増強し、毒性を低減し、投与時間を短縮するために免疫療法構築物上に直接負荷され得る。
【0075】
さらなる態様では、本明細書において記載される免疫療法構築物は、限定されることなく、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211Atおよび212Biなどの放射性核種を含む従来の放射線療法剤と同時投与され得る。これらの放射線療法剤はまた、治療効果を増強し、毒性を低減し、投与時間を短縮するために免疫療法構築物上に直接負荷され得る。
【0076】
オリゴヌクレオチドの代わりに、標的遺伝子および標的タンパク質の活性を妨害または増強する抗体および小分子阻害剤を同様の様式で使用することができる。例えば、PD-1に対するsiRNAの代わりに、本明細書において提供される免疫療法構築物中の治療剤成分としてPD-1抗体をナノ粒子上に負荷することもできる。
【0077】
(III)アジュバント
本明細書において提供される免疫療法構築物は、例えば、送達ビヒクル内に含有されるか、そうでなければ送達ビヒクルと結合した少なくとも1つのアジュバント成分を含む。免疫療法構築物の態様は、特定の種類のアジュバントに限定されないが、具体例が本明細書において提供される。アジュバントはまた、治療剤の一部であり得るか、治療剤とコンジュゲートされ得る。例えば、標的遺伝子をノックダウンするsiRNAは、免疫刺激配列を含むように設計することができる。いくつかの態様では、少なくとも1つのアジュバントは、免疫療法構築物の0.5~20重量%を構成する。
【0078】
一般に、アジュバントは、ワクチン組成物に混合すると(癌)抗原に対する免疫応答を増加させるか、そうでなければ改変する任意の物質である。免疫刺激活性を有するアジュバントが特に企図される。アジュバントは、抗原と会合していない限り、免疫系の非特異的活性化を誘導する(例えば、ワクチン中のアジュバント)。抗原に対する免疫応答を増加させるアジュバントの能力は、典型的には、免疫媒介反応の顕著な増加、または疾患症状の低減によって明らかにされる。例えば、体液性免疫の増加は、典型的には、抗原に対して惹起された抗体の力価の顕著な増加によって現れ、T細胞活性の増加は、典型的には、抗原特異的T細胞増殖の増加、標的細胞の死、またはサイトカイン分泌に現れる。アジュバントはまた、例えば、主に体液性応答またはTh2応答を主に細胞性応答またはTh1応答に変化させることによって、免疫応答を変化させ得る。
【0079】
好適なアジュバントには、TLR結合DNA置換基、例えばCpGオリゴヌクレオチド(例えば、ISS1018;Amplivax;CpG ODN 7909、CpG ODN 1826、CpG ODN D19、CpG ODN 1585、CpG ODN 2216、CpG ODN 2336、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2007、ODN 2395、ODN M362およびSD-101)、CpG配列を含むDNA TLRアゴニスト(例えば、dSLIM)、非CpG DNA TLRアゴニスト(例えば、EnanDIM)、およびカチオン性ペプチドコンジュゲートCpGオリゴヌクレオチド(例えば、IC30、IC31);RNA TLRアゴニスト(例えば、ポリI:Cおよびポリ-ICLC);アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび硫酸アルミニウムカリウム);抗CD40抗体(例えば、CP-870、893);サイトカイン、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);小分子TLRアゴニスト(例えば、イミキモド、レシキモド、ガーディキモドおよび3M-052);融合タンパク質(例えば、ImuFact IMP321、CyaAおよびONTAK);油系アジュバントまたは界面活性剤系アジュバント、例えば、MF59、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50VおよびMontanide ISA-51;植物抽出物、例えば、サポニンに由来するQS21スティミュロン(Aquila Biotech、Worcester,Mass.,USA);マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣物、例えばリポ多糖(例えば、モノホスホリルリピドA、OM-174、OM-197-MP-ECおよびPam3Cys);キサンテノン誘導体(例えば、バジメザン);それらの混合物(例えば、AS-15);ならびに他の独自のアジュバント、例えば、Ribi's Detox、QuilまたはSuperfosが含まれる。いくつかの免疫学的アジュバント(例えば、樹状細胞に特異的なMF59およびそれらの調製物が、以前に記載されている(Dupuis et al.,Cell Immunol.186(1):18-27,1998;Allison,Dev Biol Stand.;92:3-11,1998)。
【0080】
また、サイトカインを使用してもよい。いくつかのサイトカインは、リンパ系組織への樹状細胞遊走に影響を及ぼし(例えば、TNF-α)、Tリンパ球のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を促進し(例えば、GM-CSF、IL-1およびIL-4)(米国特許第5,849,589号)、免疫アジュバントとして機能する(例えば、IL-12)(Gabrilovich et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.(6):414-418,1996)ことに直接関連している。また、Toll様受容体(TLR)、またはTLRを活性化する薬剤は、アジュバントとして使用されてもよく、「病原体関連分子パターン」(PAMPS)と呼ばれる、多くの微生物に共有される保存されたモチーフを認識するパターン認識受容体(PRR)のファミリーの重要なメンバーである。
【0081】
いくつかの態様では、アジュバントは、CpGオリゴヌクレオチドを含む。CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドはまた、ワクチン設定では、アジュバントの効果を増強することが報告されている。いかなる具体的に機構的な理論にも束縛されるものではないが、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を介して自然(非適応)免疫系を活性化することによって少なくとも部分的に機能する。CpGによって引き起こされたTLR9活性化は、予防ワクチンおよび治療ワクチンの両方で、ペプチド抗原またはタンパク質抗原、生ウイルスまたは死ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチンおよび多糖コンジュゲートを含む多種多様な抗原に対する抗原特異的な体液性応答および細胞性応答を増強する。さらに重要なことには、CpGによって引き起こされたTLR9活性化は、CD4 T細胞の助けがない場合でも、樹状細胞の成熟および分化を促進し、TH1細胞の活性化を増強し、強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成する。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常TH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバントの存在下であっても維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、製剤化された場合、もしくは他のアジュバントと同時投与された場合、または抗原が比較的弱い場合に強い応答を誘導するために特に必要なマイクロ粒子、ナノ粒子、脂質エマルジョンもしくは同様の製剤などの製剤中で、さらに大きなアジュバント活性を示す。それらはまた、免疫応答を加速し、いくつかの実験では、CpGを含まない完全用量ワクチンに匹敵する抗体応答を得ながら、抗原用量を2桁減少させることを可能にした(Krieg,Nature Reviews,Drug Discovery,5:471-484,2006)。米国特許第6,406,705号は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバントおよび抗原の併用を記載している。市販のCpG TLR9アゴニストは、Mologen(Berlin,GERMANY)製のdSLIM(double Stem Loop Immunomodulator)である。他のTLR結合分子、例えば、RNA結合TLR 7、RNA結合TLR 8および/またはRNA結合TLR9を使用してもよい。
【0082】
例えば、バジメザンまたはAsA404(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)としても知られる)などのキサンテノン誘導体もまた、本発明の態様によるアジュバントとして使用され得る。あるいは、そのような誘導体はまた、腫瘍部位で免疫を刺激するために、例えば、全身送達または腫瘍内送達を介して、本発明のワクチンと並行して投与され得る。理論に拘束されるものではないが、そのようなキサンテノン誘導体は、IFN遺伝子ISTING)受容体の刺激因子を介してインターフェロン(IFN)産生を刺激することによって機能すると考えられる(例えば、Conlon et al.,J Immunology,190:5216-5225,2013;およびKim et al.,ACS Chem Biol,8:1396-1401,2013を参照)。有用なアジュバントの他の例には、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera)、ポリ(I:C)(例えば、ポリi:CI2U)、非CpG細菌DNAまたは非CpG細菌RNA、ならびに免疫活性小分子および抗体、例えば、治療的におよび/またはアジュバントとして機能し得るシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、Celebrex(商標)、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ(sorafinib)、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブおよびSC58175が含まれる。本発明の文脈では、有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は、過度の実験を用いることなく当業者によって容易に決定され得る。追加のアジュバントには、コロニー刺激因子、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)が含まれる。
【0083】
ポリ-ICLCは、平均長5000ヌクレオチドのポリl鎖およびポリC鎖を含む合成的に調製された二本鎖RNAであり、ポリリジンおよびカルボキシメチルセルロースを加えることによって熱変性と、血清ヌクレアーゼによる加水分解とに対して安定化されている。この化合物は、いずれもPAMPファミリーのメンバーであるTLR3とMDA5のRNAヘリカーゼドメインとを活性化し、DCおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、ならびにI型インターフェロン、サイトカインおよびケモカインの「天然混合物」の産生をもたらす。さらに、ポリ-ICLCは、2つのIFN誘導性核酵素系、すなわち、2'5'-OAS、およびPKR(4-6)としても知られるPl/eIF2aキナーゼ、ならびにRIG-IヘリカーゼおよびMDA5によって媒介されるさらに直接的な、広範囲な宿主を標的とする抗感染性効果と、おそらくは抗腫瘍効果とを発揮する。
【0084】
免疫療法構築物と結合させることができる免疫学的アジュバントの例には、TLRリガンド、C型レクチン受容体リガンド、NOD様受容体リガンド、RLRリガンドおよびRAGEリガンドが挙げられる。TLRリガンドには、リポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、グリコピラノシルリピドA、PET-リピドAおよび3-O-デサシル-4'-モノホスホリルリピドAを含むリピドAおよびその誘導体が含まれ得る。具体的な態様では、免疫学的アジュバントはMPLである。別の態様では、免疫学的アジュバントはLPSである。TLRリガンドにはまた、TLR3リガンド(例えば、ポリイノシン-ポリシチジン酸(ポリ(I:C))、TLR7リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)およびTLR9リガンドが含まれ得る。
【0085】
本明細書において使用される場合、用語「TLR結合DNA置換基」は、少なくとも1つのデオキシリボ核酸を含む、toll様受容体(「TLR」)に結合することができる置換基または部分を指す。態様では、TLR結合DNA置換基は核酸である。態様では、TLR結合DNA置換基は、少なくとも1つの核酸類似体を含む。態様では、TLR結合DNA置換基は、代替骨格(例えば、ホスホジエステル誘導体(例えば、ホスホルアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ボロンホスホネートまたはO-メチルホスホロアミダイト)、ペプチド核酸骨格、LNAまたは結合)を有する少なくとも1つの核酸類似体を含む。態様では、TLR結合DNA置換基はDNAを含む。態様では、TLR結合DNA置換基中のヌクレオチド糖はいずれも、デオキシリボースである(例えば、ヌクレオチドはいずれもDNAである)。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホジエステルおよびホスホジエステル誘導体(例えば、ホスホルアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ボロンホスホネート、O-メチルホスホロアミダイトまたはそれらの組合せ)から選択されるヌクレオチド間結合を有するDNAを含むか、そのようなDNAである。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホジエステルおよびホスホロチオエートから選択されるヌクレオチド間結合を有するDNAを含む。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホジエステルおよびホスホロジチオエートから選択される骨格結合を有するDNAを含むか、そのようなDNAである。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホジエステル骨格結合を含むDNAを含むか、そのようなDNAである。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホロチオエート骨格結合を含むDNAを含むか、そのようなDNAである。態様では、TLR結合DNA置換基は、ホスホロジチオエート骨格結合を含むDNAを含むか、そのようなDNAである。態様では、TLR結合DNA置換基は、他のTLRよりもTLR9に優先的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、TLR9に特異的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、TLR3に特異的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、TLR7に特異的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、TLR8に特異的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、細胞サブコンパートメント(例えば、エンドソーム)関連TLR(例えば、TLR3、TLR7、TLR8またはTLR9)に特異的に結合する。態様では、TLR結合DNA置換基は、Gリッチオリゴヌクレオチドを含むか、Gリッチオリゴヌクレオチドである。態様では、TLR結合DNA置換基は、CpGモチーフを含み、ここで、CおよびGはヌクレオチドであり、pは、CおよびGを連結するホスフェートである。態様では、CpGモチーフは非メチル化である。態様では、TLR結合DNA置換基は、クラスA CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。態様では、TLR結合DNA置換基は、クラスB CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。態様では、TLR結合DNA置換基は、クラスC CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。態様では、TLR結合DNA置換基(例えば、TLR9結合DNA置換基)は、A塩基、G塩基、C塩基またはT塩基と、ホスホジエステル結合および/またはホスホジエステル誘導体結合(例えば、ホスホロチオエート結合)とを有するデオキシリボ核酸を含む。
【0086】
「CpGモチーフ」という語句は、ホスホジエステルヌクレオチド間結合またはホスホジエステル誘導体ヌクレオチド間結合を介して3'Gヌクレオチドに連結された5'Cヌクレオチドを指す。態様では、CpGモチーフは、ホスホジエステルヌクレオチド間結合を含む。態様では、CpGモチーフは、ホスホジエステル誘導体ヌクレオチド間結合を含む。
【0087】
本明細書において使用される場合、用語「クラスA CpG ODN」または「AクラスCpG ODN」または「D型CpG ODN」または「クラスA CpG DNA配列」は、生物学的科学および化学的科学におけるその一般的な意味に従って使用され、5'、3'もしくは両末端にあるポリG配列;CpGモチーフを含む内部回文配列;またはデオキシヌクレオチドを結合する1つもしくは複数のホスホジエステル誘導体のうちの1つまたは複数を含むオリゴデオキシヌクレオチドを含むCpGモチーフを指す。態様では、クラスA CpG ODNは、5'、3'または両末端にあるポリG配列と、CpGモチーフを含む内部回文配列と、デオキシヌクレオチドを結合する1つまたは複数のホスホジエステル誘導体とを含む。態様では、ホスホジエステル誘導体はホスホロチオエートである。クラスA CpG ODNの例には、ODN D19、ODN 1585、ODN 2216およびODN 2336が挙げられる。
【0088】
用語「クラスB CpG ODN」または「BクラスCpG ODN」または「K型CpG ODN」または「クラスB CpG DNA配列」は、生物学的科学および化学的科学におけるそれらの一般的な意味に従って使用され、CpGモチーフを含む6量体モチーフ;あらゆるデオキシヌクレオチドを結合するホスホジエステル誘導体のうちの1つまたは複数を含むオリゴデオキシヌクレオチドを含むCpGモチーフを指す。態様では、クラスB CpG ODNは、CpGモチーフを含む6量体モチーフ、およびあらゆるデオキシヌクレオチドを結合するホスホジエステル誘導体の1つまたは複数のコピーを含む。態様では、ホスホジエステル誘導体はホスホロチオエートである。態様では、クラスB CpG ODNは、CpGモチーフを含む1つの6量体モチーフを含む。態様では、クラスB CpG ODNは、CpGモチーフを含む6量体モチーフの2つのコピーを含む。態様では、クラスB CpG ODNは、CpGモチーフを含む6量体モチーフの3つのコピーを含む。態様では、クラスB CpG ODNは、CpGモチーフを含む6量体モチーフの4つのコピーを含む。クラスB CpG ODNの例には、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006およびODN 2007が挙げられる。
【0089】
用語「クラスC CpG ODN」または「CクラスCpG ODN」または「C型CpG DNA配列」は、生物学的科学および化学的科学におけるそれらの一般的な意味に従って使用され、CpGモチーフを含む回文配列と、あらゆるデオキシヌクレオチドを結合するホスホジエステル誘導体(ホスホロチオエート)とを含むオリゴデオキシヌクレオチドを指す。クラスC CpG ODNの例には、ODN 2395およびODN M362が挙げられる。
【0090】
(IV)任意の追加の成分
標的化部分
1つまたは複数の標的化部分(別名、標的化分子)が含まれ得、例えば、送達ビヒクル内に負荷され得、送達ビヒクルの表面に付着され得、および/または送達ビヒクル内に封入され得る。態様では、標的化部分は、送達ビヒクルの外面に提示される。一定の態様では、そのような標的化部分は、特異的な細胞標的化(例えば、免疫細胞への毒性治療剤の送達の防止、細胞特異的機能を有する治療剤の送達の富化/標的化)を可能にする。一定の態様では、標的化部分はまた、治療活性を有し得るため、本明細書において提供される免疫療法構築物の治療剤(例えば、PD-L1抗体)としても機能し得る。そのような標的化部分は、全身送達に特に有益であり得る。
【0091】
例示的な標的化分子には、器官、組織、細胞もしくは細胞外マトリックスまたは特定の種類の腫瘍もしくは感染細胞に関連する1つまたは複数の標的に結合するタンパク質、ペプチド、リガンド、核酸、脂質、糖、抗体、アプタマー、アフィボディ分子、リガンド、小分子または多糖が含まれる。送達ビヒクルが標的化される特異性の程度は、適切な親和性および特異性を有する標的化分子の選択によって調節され得る。例えば、抗体は非常に特異的である。これらは、ポリクローナル、モノクローナル、断片、組換えまたは一本鎖であり得、その多くは市販されているか、標準的な技術を使用して容易に得られる。T細胞特異的分子、抗原および腫瘍標的化分子は、免疫療法構築物の表面に結合させることができる。標的化分子は、粒子の表面に存在する1つまたは複数のPEG鎖の末端にコンジュゲートされ得る。
【0092】
いくつかの態様では、標的化部分は、悪性細胞(例えば、腫瘍抗原)などの標的細胞上に排他的にまたは高量で存在する細胞または腫瘍マーカーを特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片(例えば、一本鎖可変断片)である。免疫療法構築物を関心対象の細胞および組織に導くために使用され得る好適な標的化分子、ならびに標的分子をナノ粒子にコンジュゲートする方法は、当技術分野において公知である。例えば、Ruoslahti et al.(Nat.Rev.Cancer,2:83-90,2002)を参照されたい。抗体などの抗原結合分子を用いて標的とすることができる例示的な腫瘍抗原は、ワクチン抗原に関して上述されている。一定の場合には、治療剤は、癌細胞および免疫細胞の両方に対して毒性であり、最適以下の効果をもたらし得る。したがって、一定の態様では、免疫療法構築物を標的化部分とコンジュゲートさせて、癌細胞のみに対して治療剤およびアジュバントの送達を富化することができる。例には、癌細胞上に発現されるか、任意で過剰発現されるHER2、EGFR、PSMA、PD-L1などに対する抗体が挙げられる。いくつかの態様では、免疫療法構築物を標的化部分とコンジュゲートさせて、免疫細胞のみに対して治療剤およびアジュバントの送達を富化することができる。
【0093】
標的化分子には、ニューロピリンおよび内皮標的化分子、インテグリン、セレクチン、接着分子、骨標的化分子、例えば、ゾレドロン酸およびアレンドロン酸(例えば、骨に転移した癌を標的とするため)、間質、ならびに線維芽細胞標的化分子も含まれ得る。
【0094】
いくつかの態様では、標的化部分は、抗原提示細胞(APC)に対して、特に樹状細胞として知られる、APCのサブクラスに対して免疫療法構築物を標的化する。樹状細胞は、エンドサイトーシスを媒介することができるいくつかの細胞表面受容体を発現する。いくつかの態様では、免疫療法構築物は、腫瘍抗原をプロセシングするDCの活性を増強し、それによって、インサイチュー腫瘍ワクチン接種をさらに良好に誘導する。DCへの標的送達が行われてもよい。全身に分布する抗原提示細胞上の内在化表面分子に対して外因性抗原を標的化すると、粒子の取込みが促進され、治療における主要な律速段階を克服することができる。
【0095】
樹状細胞標的化分子には、樹状細胞の表面に提示されるエピトープを認識し、それに結合するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはそれらの断片が含まれる。樹状細胞標的化分子にはまた、樹状細胞上の細胞表面受容体に結合するリガンドも含まれる。そのような受容体の1つであるレクチンDEC-205は、インビトロで、およびマウスに使用されて、体液性(抗体に基づく)応答および細胞性(CD8 T細胞)応答の両方を2~4桁増強している(Hawiger et al.,J.Exp.Med.,194(6):769-79,2001;Bonifaz et al.,J.Exp.Med.,196(12):1627-38 2002;Bonifaz et al.,J.Exp.Med.,199(6):815-24,2004)。これらの報告では、抗原が抗DEC205重鎖に融合され、組換え抗体分子が免疫化に使用された。
【0096】
マンノース特異的レクチン(マンノース受容体)およびIgG Fc受容体を含む様々な他のエンドサイトーシス受容体も、このように標的とされており、抗原提示効率が同様に向上している。標的とされ得る他の好適な受容体には、DC-SIGN、33D1、SIGLEC-H、DCIR、CD11c、熱ショックタンパク質受容体およびスカベンジャー受容体が含まれる。これらの受容体を発現する免疫細胞への優先的な取込みのために、これらの受容体に対する標的化部分を免疫療法構築物に付着することができる。例には、高レベルのマンノース受容体を有するマクロファージおよびDCへの標的送達のために免疫療法構築物上に付着させたマンノースがある。
【0097】
標的とされ得る他の受容体には、toll様受容体(TLR)が含まれる。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、それに結合する。PAMPは、樹状細胞の表面上のTLRを標的とし、内部でシグナル伝達し、それによって、DC抗原取込み、成熟およびT細胞刺激能力を潜在的に増大させる。粒子表面にコンジュゲートされるか共カプセル化されるPAMPには、非メチル化CpG DNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポ多糖(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンニン(lipoarabinomannin)(細菌性)、ザイモサン(酵母)、マイコプラズマリポタンパク質、例えばMALP-2(細菌性)、フラジェリン(細菌性)ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)またはイミダゾキノリン(合成)が含まれる。
【0098】
標的化分子は、当技術分野において公知の様々な方法を使用して送達ビヒクルに共有結合させることができる。好ましい態様では、PEG化またはビオチン-アビジン架橋によって送達ビヒクルに標的化部分を付着させる。
【0099】
CD40アゴニスト。特定の態様では、標的化部分はCD40を標的とする。該部分は、CD40アゴニストであり得る。細胞表面分子CD40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、免疫細胞、造血細胞、血管細胞、上皮細胞、および広範囲の腫瘍細胞を含む他の細胞によって広く発現される。癌療法の潜在的な標的として、CD40は、免疫活性化の間接的な効果、および腫瘍に対する直接的な細胞傷害効果の両方を介して腫瘍退縮を媒介し、CD40アゴニストの「2対1」の作用機序をもたらし得る。CD40アゴニストは当技術分野において公知であり、Vonderheide(Clin Cancer Res,13(4):1083-1088,2007)に概説されている。例示的なアゴニストには、組換えCD40L(組換えヒト三量体)、CD-870、893(完全ヒトIgG2 mAb)、SGN-40(ヒト化IgG1)およびHCD 122(完全ヒトIgG1 mAb)が含まれる。可溶性アゴニストCD40抗体は、T細胞媒介性免疫のマウスモデルでは、CD4+リンパ球によって提供されるT細胞支援に取って代わることが示されている(Khalil et al.,Update Cancer Ther.,2:61-65,2007)。
【0100】
インテグリンリガンド。別の態様では、標的化部分は、インテグリンに対するリガンドである。試験では、インテグリンが、腫瘍細胞の表面に過剰発現されるため、腫瘍細胞と正常細胞とを区別するマーカーとして機能し得ることが示されている。特定のインテグリンはまた、細胞外経路を介してTGF-βを活性化する。潜在型TGF-βは、腫瘍細胞から放出された後、腫瘍細胞の表面のインテグリンと結合し、潜在型TGF-βの活性化がもたらされる。腫瘍微小環境内でTGF-β濃度が増加すると、免疫抑制が支援され、制御性T細胞が腫瘍環境に動員される。
【0101】
RGDペプチドは、二重の機能を果たすことができる。RGDペプチドは、典型的なインテグリン標的化リガンドであるだけでなく(Ruoslahti et al.,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.,12:697-715,1996)、APCを活性化する免疫危険シグナル(immune danger signal)としても機能する(Altincicek et al.,Biol Chem.,390,1303-11,2009)。したがって、好ましい態様では、RGDペプチドは、送達ビヒクル内に負荷され、送達ビヒクルの表面に付着され、および/または送達ビヒクル内に封入される。
【0102】
p53抗原を認識するT細胞受容体。特定の態様では、標的化部分は、ヒトMHCに関連してp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)である。アルファ鎖、ベータ鎖またはガンマ/デルタ鎖から構成されるT細胞受容体(α/β TCRまたはγ/Δ TCR)を含む、細菌細胞、真核細胞または酵母細胞に由来するT細胞受容体組換えタンパク質。
【0103】
IL-15/IL-15Rα。別の態様では、標的化部分は、IL-15/IL-15Rα複合体である。インターロイキン-15(IL-15)は、特定の受容体サブユニットをIL-2と共有し、したがって、いくつかの重複する作用機序を有するサイトカインである。IL-15は、樹状細胞によって発現され、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖およびプライミングのための重要なシグナルを提供する。したがって、IL-15/IL-15Rα複合体を使用して、例えばナチュラルキラー(NK)細胞に対してナノ微粒子組成物を標的化することができる。
【0104】
(V)送達システム
本明細書において提供される免疫療法構築物の態様は、治療剤およびアジュバントの送達のために使用される送達システムに関して非依存性である。したがって、様々な態様では、送達システムは、任意の種類の公知のまたは開発予定の微粒子送達ビヒクルを使用し得るか、それに基づき得る。これらには、ナノ粒子、フラーレン、エンドヘドラル金属フラーレン、三金属窒化物鋳型エンドヘドラル金属フラーレン、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、分枝状カーボンナノチューブおよび樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層ホウ素/ナイトレートナノチューブおよび多層ホウ素/ナイトレートナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、脂質系ナノ粒子、リポプレックス、ポリマーナノ粒子、リン酸カルシウム粒子、アルミニウム塩粒子、ポリプレックス、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラスマイクロスフェアおよびガラスナノスフェア、およびポリマーマイクロスフェアおよびポリマーナノスフェア、生分解性PLGAマイクロスフェアおよび生分解性PLGAナノスフェア、金ナノ粒子、アジュバント粒子(例えば、ビロソームまたは他のウイルス様粒子)、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、多孔質シリカナノ粒子および非多孔質シリカナノ粒子、ならびに修飾ミセルが含まれる。いくつかのクラスの材料を含むハイブリッド粒子も使用することができる。ナノメートルおよびミクロンサイズの粒子を使用することができる。粒子は、任意の形状、構造および多孔性であり得る。治療剤、アジュバントおよび任意の追加の化合物は、任意の好適な手段によって、例えば、送達システム内に負荷されたか、送達システムの表面に付着されたか、送達システムに結合されたか、送達システム内に封入されたか、送達システム内に含有された送達剤とともに含まれ得る。そのような薬剤は、カプセル化されるか、共有結合されるか、非共有結合され得る(例えば、静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用または化合物特異的相互作用(そのような核酸塩基対形成、リガンド-受容体、抗体-抗原、ビオチン-アビジンなどによって)。
【0105】
いくつかの態様では、送達システムは、米国特許出願公開第US2017/0173169号または米国特許出願公開第US2017/0172923号に記載されているものなどのメソポーラスシリカナノ粒子(MSNP)を含み、そこに記載されているMSNPは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0106】
いくつかの態様では、メソポーラスナノ粒子(または異なるナノ粒子)の平均粒径は、約5nm~約200nm、約5nm~約90nm、約5nm~約20nm、約30nm~約100nm、約30nm~約80nm、約30nm~約60nm、約40nm~約80nm、約70nm~約90nm、または約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nmもしくは約100nmである。いくつかの態様では、メソポーラスシリカナノ粒子は、カチオン性ポリマーまたは他の化合物で被覆される。カチオン性ポリマーは、任意の適切な手段を使用してナノ粒子の表面に結合し得る。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、静電相互作用を介してナノ粒子に結合する。カチオン性ポリマーは、正電荷を有する任意のポリマー、例えば、限定されることなく、PEI、ポリアミドアミン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、キトサン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-コ-アクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-コ-アクリル酸)、ポリ(L-リジン)、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ポリ(N-エチル-ビニルピリジニウムブロミド)、ポリ(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)またはポリ(エチレングリコール)-コ-ポリ(トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド)であり得る。他のカチオン性ポリマーは、当業者には明らかであり、例えば、Polymer Handbook,4th Edition,Edited by:Brandrup,E.H.Immergut,and E.A.Grukle;John Wiley&Sons,2003)に見出され得る。
【0107】
カチオン性ポリマーは、直鎖状または分枝状であり得る。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、約500Da~約25kDaのサイズの範囲であり得、分枝状または直鎖状であり得る。例えば、1.8kDa~10kDaの平均サイズを有する分枝状PEIをナノ粒子コア上に負荷してもよい。カチオン性ポリマーとナノ粒子との比は、所望の結果に応じて変化し得る。カチオン性ポリマーは、ナノ構築物の1~50重量%、例えば、5~40重量%、10~30重量%、20~30重量%、5~15重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、10~20重量%、10~25重量%または25~40重量%、例えば、約5、約10、約15、約20、約25、約30または約35重量%で存在し得る。いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、10~20重量%で存在する。
【0108】
いくつかの態様では、カチオン性ポリマーは、ナノ粒子上への被覆前または被覆後に、例えば、切断可能なジスルフィド結合によって架橋される。いくつかの態様では、付着したカチオン性ポリマーは、例えば、DSP(ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート])、DTSSP(3,3'-ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)およびDTBP(ジメチル3,3'-ジチオビスプロピオンイミデート)を使用して、ナノ粒子、例えばMSNPに結合した後に架橋される。架橋は、溶液中の遊離カチオン性ポリマーの非存在下または存在下で起こり得る。他の態様では、カチオン性ポリマーは架橋されていない。
【0109】
安定剤は、例えば、任意の適切な手段によって、MSNP(または異なるナノ粒子)および/またはカチオン性ポリマーにコンジュゲートされ得る。いくつかの態様では、安定剤は、ナノ粒子(例えば、MSNP)上に被覆された架橋カチオン性ポリマーのアミン基または他の反応性基にコンジュゲートされる。例示的な安定剤には、限定されることなく、PEG、デキストラン、ポリシアル酸、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリアクリルアミドまたはそれらの組合せが含まれる。
【0110】
安定剤は、例えば、ナノ粒子、カチオン性ポリマーおよび/または他の成分に付着するための複数の化学反応性基を有し得る。例えば、反応性安定剤、例えばPEG誘導体は、2つの親電子部分、例えば、マイケル受容体および活性化エステルの両方を含むマレイミド-PEG-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(Mal-PEG-NHS)を有し得る。本発明の組成物および方法と併せて使用される安定剤、例えばPEGは、一般に、500Da~40kDa、例えば2~10kDaの範囲の分子量を有する。安定剤は、ナノ構築物の1~50重量%、例えば、5~30重量%、10~20重量%、10~25重量%、5~15重量%、5~20重量%、5~25重量%または1~10重量%、例えば、約5、約10、約15、約20、約25、約35、約40または約45重量%で存在し得る。
【0111】
本明細書において使用される「平均粒径」は、一般に、粒子集団内の粒子の統計的平均粒径(直径)を指す。本質的に球形の粒子の直径とは、物理的直径または流体力学的直径を指し得る。非球形粒子の直径とは、流体力学的直径を優先的に指し得る。本明細書において使用される場合、非球形粒子の直径とは、粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指し得る。平均流体力学的粒径は、当技術分野において公知の方法、例えば動的光散乱を使用して測定することができる。
【0112】
「単分散」および「均一なサイズ分布」は、本明細書において区別なく使用され、全粒子が同じまたはほぼ同じサイズであるナノ粒子集団またはマイクロ粒子集団を表す。本明細書において使用される場合、単分散分布とは、分布の90%がメジアン粒径の15%以内、さらに好ましくはメジアン粒径の10%以内、最も好ましくはメジアン粒径の5%以内にある粒子分布を指す。
【0113】
本明細書において使用される「ナノ粒子」は、一般に、5nm~1ミクロン未満まで、好ましくは20nm~1ミクロンの直径を有する粒子を指す。粒子は、任意の形状を有することができる。球形を有するナノ粒子は、一般に、「ナノスフェア」と呼ばれる。本開示は、癌および関連する過剰増殖性障害を治療または予防するように構成されたアジュバントおよび治療剤と複合体を形成するための特定のタイプまたは種類のナノ粒子に限定されない。
【0114】
ナノ粒子の例には、フラーレン(別名C60、C70、C76、C80、C84)、追加の原子、イオンまたはクラスターをそのフラーレンケージの内側に含むエンドヘドラル金属フラーレン(EMI))、三金属窒化物鋳型エンドヘドラル金属フラーレン(炭素ケージ内の三金属窒化物鋳型内に形成された高対称性4原子分子クラスターエンドヘドラルであるTNT EME)、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、分枝状カーボンナノチューブおよび樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層ホウ素/ナイトレートナノチューブおよび多層ホウ素/ナイトレートナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド(内部金属フラーレンおよび/または他の内部化学構造を有するナノチューブ)、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、脂質粒子リポソーム、リポプレックス、ポリマーナノ粒子、ポリプレックス、ナノシェル、デンドリマー、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、アジュバント粒子(例えば、ビロソームまたは他のウイルス様粒子)、ならびにセルロースナノ粒子が挙げられる。他の例示的なナノ粒子には、ガラスマイクロスフェアおよびガラスナノスフェア、およびポリマーマイクロスフェアおよびポリマーナノスフェア、生分解性PLGAマイクロスフェアおよび生分解性PLGAナノスフェア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、カーボンナノ粒子、ならびに鉄ナノ粒子が含まれる。
【0115】
いくつかの態様では、ナノ粒子は修飾ミセルである。これらの態様では、修飾ミセルは、疎水性ポリマーブロックを含むように修飾されたポリオールポリマーを含む。本開示において使用される用語「疎水性ポリマーブロック」は、それ自体が疎水性であるポリマーのセグメントを示す。本明細書において使用される用語「ミセル」は、液体中に分散した分子の凝集体を指す。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触している親水性「頭部」領域と凝集体を形成し、ミセル中心に疎水性単一尾部領域を隔離する。いくつかの態様では、頭部領域は、例えば、ポリオールポリマーの表面領域であってよく、尾部領域は、例えば、ポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってよい。
【0116】
本発明は、ナノメートルスケールに加えてマイクロメートルスケールの粒子の使用をさらに包含する。マイクロ粒子が使用される場合、それらは比較的小さく、1~50マイクロメートル程度であることが好ましい。説明を容易にするために、本明細書における「ナノ粒子」の使用は、真のナノ粒子(1nm~1000nmのサイズ)、マイクロ粒子(例えば、1マイクロメートル~50マイクロメートル)、またはその両方を包含する。
【0117】
ナノ粒子の例には、例として、限定されることなく、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子、フラーレン様材料、無機ナノチューブ、デンドリマー、共有結合した金属キレートを有するデンドリマー、ナノファイバー、ナノホーン、ナノオニオン、ナノロッド、ナノロープ、アジュバント粒子(例えば、ビロソームまたは他のウイルス様粒子)および量子ドットが挙げられる。いくつかの態様では、ナノ粒子は、金属ナノ粒子(例えば、金、パラジウム、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、イリジウム、またはそれらの2つ以上の合金のナノ粒子)である。ナノ粒子は、コア-シェルナノ粒子のように、コア、またはコアおよびシェルを含むことができる。いくつかのクラスの材料を含むハイブリッド粒子も使用することができる。
【0118】
それぞれ送達ビヒクル内に負荷され、送達ビヒクルの表面に付着され、および/または送達ビヒクル内に封入された1つまたは複数の活性剤と1つまたは複数のアジュバント化合物とを含む免疫療法構築物含有組成物が開示される。ナノ微粒子組成物は、単数または複数の活性剤を溶液中の標的細胞に送達することを超えるいくつかの利点を提供する。例えば、ナノ微粒子組成物は、ナノ粒子上またはナノ粒子内に局所濃度の1つまたは複数の活性剤を提示し、ナノ粒子が標的細胞に遭遇した際の結合活性を増加させる。ナノ微粒子組成物はまた、単数または複数の薬剤の有効な全身半減期および有効性を延ばすように数日間にわたって延長し得る調整可能な放出動態を有する活性剤のデポーとして機能することができる。
【0119】
典型的には、2つ以上の活性剤(1つの治療剤と1つのアジュバントとを含む)が、送達ビヒクル内に負荷され、送達ビヒクルの表面に付着され、および/または送達ビヒクル内に封入される。2つ以上の活性剤の各々の相対濃度と、送達ビヒクル上または送達ビヒクル内のそれらの位置とは、標的細胞によって受け取られる好ましい投与量および提示を適合させるために組成物の製造中に操作することができる。2つ以上の活性剤を同じ送達ビヒクル内または同じ送達ビヒクル上に負荷することにより、2つ以上の活性剤を標的細胞または同じ腫瘍微小環境に同時に提示するか、標的細胞に他の所定の順序で提示することが可能になる。
【0120】
送達ビヒクルは、例えば、ナノリポゲル(nanolipogel)、ポリマー粒子、シリカ粒子、リポソームまたは多層ベシクルであり得る。一定の態様では、微粒子送達ビヒクルは、ナノスケールの組成物、例えば、10nm~1ミクロン未満までである。ただし、いくつかの態様およびいくつかの用途では、粒子は、さらに小さくても大きくてもよい(例えば、マイクロ粒子など)ことが理解されるであろう。本明細書において開示される例示的な免疫療法構築物はナノ微粒子組成物と呼ばれ得るが、いくつかの態様およびいくつかの用途では、微粒子組成物は、ナノ粒子よりもいくらか大きてよいことが理解されるであろう。例えば、微粒子組成物はまた、1ミクロン~1000ミクロンであり得る。そのような組成物は、微細粒子組成物と呼ぶことができる。
【0121】
癌を処置するための態様では、粒子が腫瘍微小環境に到達するのに適したサイズであることが望ましい。特定の態様では、粒子は、増強された透過性および保持(EPR)効果によって腫瘍微小環境および/または腫瘍細胞に到達するのに適したサイズである。EPRとは、特定のサイズの分子(例えば、本明細書において説明される微粒子組成物)が正常組織よりもはるかに多く腫瘍組織に蓄積する傾向がある特性を指す。したがって、癌の治療ための組成物では、送達ビヒクルは、25nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましく、30nm以上300nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0122】
ナノリポゲル。ナノリポゲルは、活性剤の持続的送達のためにリポソームおよびポリマー系粒子の両方の利点を組み合わせたコア-シェルナノ微粒子である。これらの態様および用途のいくつかでは、ナノリポゲルは、従来のナノ粒子組成物と比較して、巨大分子と分子との組合せについて、増加した負荷効率、増大した持続放出、および改善された治療効果を示すことができる。
【0123】
典型的には、ナノリポゲルの外側シェルは、カーゴを保護し、生体適合性と、標的化分子による官能基化のための表面とを提供する。外側シェルは、例えば、環境条件または刺激に応答して、所望されるまで露出されないように成分をカプセル化し、単分散の再現性のある粒子集団を作り出し、所望の細胞型への内在化を媒介する。内側コアは、デンドリマーまたは他のポリマーであってよく、外側シェルに対して別個の付加的な機能を有する。例えば、内側シェルは、薬物、ワクチンまたはイメージング剤の二次堆積を可能にし、粒子内への異なる物理化学的特性を有する成分の負荷を増加させ、粒子からの内容物の調整可能な放出を可能にし、エンドソームを破壊することによって、DNA/RNA、薬物および/またはタンパク質の細胞質ゾル利用可能性を増加させ、これらいずれによっても薬物効果、抗原提示、およびトランスフェクション/サイレンシングが増強される
【0124】
ナノリポゲルは、1つまたは複数のホスト分子を含むポリマーマトリックスコアを有する。ポリマーマトリックスは、好ましくは、ヒドロゲル、例えば、ポリエチレングリコールなどの1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)セグメントと、ポリ乳酸などの1つまたは複数の脂肪族ポリエステルセグメントとを含む架橋ブロックコポリマーである。1つまたは複数のカーゴ分子は、ポリマーマトリックス内に分散されているか、ポリマーマトリックスに共有結合している。ヒドロゲルコアは、リポソームシェルによって取り囲まれている。
【0125】
ナノリポゲルは、制御された様式でその後に放出され得る様々な活性剤を組み込むように構築することができる。活性剤は、ヒドロゲルマトリックス内に分散させることができ、リポソームシェル内に分散させることができ、リポソームシェルに共有結合させることができ、およびそれらの組合せが可能である。活性剤は、ナノリポゲル内のこれらの場所の各々に選択的に組み込むことができる。さらに、これらの場所の各々からの活性剤の放出速度は、独立して調整することができる。これらの場所の各々は、サイズおよび疎水性/親水性を含む異なる特性を有するため、これらの場所の各々に独立して組み込まれた化学成分は、サイズおよび組成に関して劇的に異なり得る。例えば、ナノリポゲルに、ポリマーマトリックス内に分散した1つまたは複数の化合物と、結合した小分子疎水性薬物、およびアジュバントとを負荷することができる。ナノリポゲルは、化学組成および分子量が大きく異なる薬剤の同時持続放出をもたらすことができる。
【0126】
ナノリポゲルは、典型的には球形であり、平均粒径は、50nm~1000nm、さらに好ましくは75nm~300nm、最も好ましくは90nm~200nmの範囲である。一定の態様では、ナノリポゲルは、100nm~140nmの平均粒径を有する。粒子は非球形であってよい。
【0127】
ナノリポゲルのリポソームシェル内に存在する脂質の性質に応じて、正、負またはほぼ中性の表面電荷を有するナノリポゲルを調製してもよい。一定の態様では、ナノリポゲルは、ほぼ中性の表面電荷を有する。一定の態様では、ナノリポゲルは、10mV~-10mV、さらに好ましくは5mV~-5mV、さらに好ましくは3mV~-3mV、最も好ましくは2mV~-2mVのζ電位を有する。
【0128】
タンパク質などの疎水性活性剤は、ナノリポゲルの表面に共有結合していてもよいのに対して、親水性活性剤は、ナノリポゲルの表面に共有結合していてもよいか、リポソームシェル内に分散していてもよい。一定の態様では、リポソームシェルは、1つまたは複数のPEG化脂質を含む。これらの場合、1つまたは複数の活性剤は、リポソームシェルの表面上に存在する1つまたは複数のPEG鎖の末端にコンジュゲートされ得る。
【0129】
別の態様では、脂質は、アビジン部分を含むように修飾され、所望であれば、ビオチン化標的化部分、検出可能な標識、または他の活性剤をそれに結合させることを可能にする。
【0130】
特定の態様では、1つまたは複数の活性剤は、所望の生理学的場所で活性剤の放出を引き起こすように、周囲pHの変化などの外部の化学的刺激または物理的刺激に応答して切断される結合基を介してナノリポゲルの表面に共有結合している。
【0131】
コア。ナノリポゲルコアは、ポリマーマトリックスから形成される。マトリックスは、以下にさらに詳細に説明されるように、1つまたは複数のホスト分子を含むことができる。ナノリポゲルコアは、1つまたは複数の活性剤をさらに含み得る。活性剤は、ホスト分子に複合体化されてもよいか、ポリマーマトリックスに分散されてもよいか、それらの組合せであってよい。
【0132】
ナノリポゲルのポリマーマトリックスは、1つまたは複数のポリマーまたはコポリマーから形成され得る。ポリマーマトリックスの組成および形態を変化させることによって、様々な制御放出特性を達成し、長期間にわたって中程度の一定用量の1つまたは複数の活性剤の送達を可能にすることができる。
【0133】
ポリマーマトリックスは、非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーから形成され得る。ただし、好ましくは、ポリマーマトリックスは生分解性である。ポリマーマトリックスは、1日~1年間、さらに好ましくは7日~26週間、さらに好ましくは7日~20週間、最も好ましくは7日~16週間の範囲の期間にわたって分解するように選択され得る。ポリマーの分子量を増加させるために、生分解性架橋剤が使用されてもよく、生分解性架橋剤は、架橋剤の分解後に小さな断片として身体から除去することが可能である。
【0134】
一般に、合成ポリマーが好ましいが、天然ポリマーを使用してもよい。代表的なポリマーには、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリヒドロキシアルカノエート、例えば、ポリ3-ヒドロキシブチレートまたはポリ4-ヒドロキシブチレート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-コ-カプロラクトン);ポリカーボネート、例えばチロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成ポリアミドおよび天然ポリアミドを含む)、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;他の生体適合性ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンサクシネート;ポリ(マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド)、例えばポリエチレングリコール(PEG);誘導体化セルロース、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸のポリマー、メタクリル酸、またはエステルを含むそれらのコポリマーもしくは誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)(本明細書においてまとめて「ポリアクリル酸」と呼ばれる)、ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよびブレンドが含まれる。
【0135】
本明細書において使用される場合、「誘導体」には、当業者によって常用的に行われる上記のポリマー骨格への置換、化学基の付加および他の修飾を有するポリマーが含まれる。タンパク質、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、プロラミン、例えば、ゼイン、ならびに多糖、例えば、アルジネートおよびペクチンを含む天然ポリマーが、ポリマーマトリックスに組み込まれてもよい。様々なポリマーを使用してポリマーマトリックスを形成してもよいが、一般に、得られるポリマーマトリックスはヒドロゲルである。一定の場合には、ポリマーマトリックスが天然ポリマーを含む場合、天然ポリマーは、加水分解によって分解するバイオポリマー、例えばポリヒドロキシアルカノエートである。
【0136】
ポリマーマトリックスは、任意で1つまたは複数の架橋性ポリマーを含有してもよい。好ましくは、架橋性ポリマーは、1つまたは複数の光重合性基を含み、ナノリポゲル形成後のポリマーマトリックスの架橋を可能にする。好適な光重合性基の例には、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基およびアクリルアミド基が挙げられる。光重合性基は、存在する場合、架橋性ポリマーの骨格内に、架橋性ポリマーの側鎖のうちの1つもしくは複数の中に、架橋性ポリマーの末端のうちの1つもしくは複数に、またはそれらの組合せに組み込まれてもよい。
【0137】
ポリマーマトリックスは、特定の用途に最適な薬物放出速度を含む特性を有するナノリポゲルを形成するように、様々な分子量を有するポリマーから形成され得る。一般に、ポリマーマトリックスを構成するポリマーは、500 Da~50 kDaの範囲の平均分子量を有する。ポリマーマトリックスが非架橋性ポリマーから形成される場合、ポリマーは、典型的には、1 kDa~50 kDa、さらに好ましくは1 kDa~70 kDa、最も好ましくは5 kDa~50 kDaの範囲の平均分子量を有する。ポリマーマトリックスが架橋性ポリマーから形成される場合、ポリマーは、典型的には、500 Da~25 kDa、さらに好ましくは1 kDa~10 kDa、最も好ましくは3 kDa~6 kDaの範囲のさらに低い平均分子量を有する。特定の態様では、ポリマーマトリックスは、5 kDaの平均分子量を有する架橋性ポリマーから形成される。
【0138】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスは、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、または1つもしくは複数のポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むブロックコポリマーから形成される。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーまたはポリ(アルキレンオキシド)ポリマーセグメントは、8~500個の繰返し単位、さらに好ましくは40~300個の繰返し単位、最も好ましくは50~150個の繰返し単位を含み得る。好適なポリ(アルキレンオキシド)には、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシドまたはPEGとも呼ばれる)、ポリプロピレン1,2-グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリプロピレン1,3-グリコールおよびそれらのコポリマーが含まれる。
【0139】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスは、脂肪族ポリエステル、または1つもしくは複数の脂肪族ポリエステルセグメントを含むブロックコポリマーから形成される。好ましくは、ポリエステルまたはポリエステルセグメントは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)PGAまたはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。
【0140】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスは、1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)セグメントと、1つまたは複数の脂肪族ポリエステルセグメントと、任意で1つまたは複数の光重合性基とを含むブロックコポリマーから形成される。これらの場合、1つまたは複数のポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、得られたポリマーマトリックスが好適なヒドロゲルを形成するように、ポリマーに必要な親水性を付与するのに対して、ポリエステルセグメントは、調整可能な疎水性/親水性特性および/または所望のインビボ分解特性を有するポリマーマトリックスを提供する。
【0141】
ポリエステルセグメントの分解速度、および多くの場合、対応する薬物放出速度は、数日(純粋なPGAの場合)から数ヶ月(純粋なPLAの場合)まで変化させることができ、ポリエステルセグメント内のPLAとPGAとの比を変化させることによって容易に操作することができる。さらに、ポリ(アルキレンオキシド)、例えばPEG、ならびに脂肪族ポリエステル、例えば、PGA、PLAおよびPLGAは、ヒトに使用するのに安全であるとして確立されている。これらの材料は、30年超にわたって、薬物送達システムを含むヒト臨床用途に使用されてきた。
【0142】
一定の態様では、ポリマーマトリックスは、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントと、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントのいずれかの末端に付着した隣接する脂肪族ポリエステルセグメントと、1つまたは複数の光重合性基とを含むトリブロックコポリマーから形成される。好ましくは、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントはPEGであり、脂肪族ポリエステルセグメントはPGA、PLAまたはPLGAである。
【0143】
一般に、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、隣接するポリエステルセグメントの平均分子量よりも大きい。一定の態様ではでは、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、隣接するポリエステルセグメントのうちの1つの平均分子量の少なくとも3倍であり、さらに好ましくは、隣接するポリエステルセグメントのうちの1つの平均分子量の少なくとも5倍であり、最も好ましくは、隣接するポリエステルセグメントのうちの1つの平均分子量の少なくとも10倍である。
【0144】
場合によっては、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、500 Da~10,000 Da、さらに好ましくは1,000 Da~7,000 Da、最も好ましくは2,500 Da~5,000 Daの範囲の平均分子量を有する。特定の態様では、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は4,000 Daである。典型的には、各隣接するポリエステルセグメントは、100 Da~3,500 Da、さらに好ましくは100 Da~1,000 Da、最も好ましくは100 Da~500 Daの範囲の平均分子量を有する。
【0145】
天然ポリマーの例には、タンパク質、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンおよびプロラミン、例えばゼイン、ならびに多糖、例えば、アルジネート、セルロース誘導体およびポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリヒドロキシブチレートが挙げられる。マイクロ粒子のインビボ安定性は、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合したポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などのポリマーを使用することによって製造中に調整することができる。PEGが外面に露出している場合、PEGの親水性のためにこれらの材料が循環する時間が増加する可能性がある。
【0146】
非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、コポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0147】
マトリックスはまた、従来のイオンゲル化技術によって製造されたアルジネートなどのゲル型ポリマーから作製することもできる。ポリマーは、水溶液に最初に溶解され、硫酸バリウムまたは何らかの生物活性剤と混合され、次いで、場合によっては液滴を破壊するために窒素ガスの流れを使用する微小液滴形成装置を通して押し出される。ゆっくり撹拌される(例えば、100~170RPM)イオン硬化浴を押出装置の下に配置して、形成される微小液滴を捕捉する。ゲル化が起こるのに十分な時間を可能にするために、マイクロ粒子を浴中で20~30分間インキュベートする。マイクロ粒子サイズは、様々なサイズの押出機を使用するか、窒素ガスまたはポリマー溶液の流量を変化させることによって制御される。キトサンマイクロ粒子は、ポリマーを酸性溶液に溶解し、トリポリホスフェートを用いて架橋することによって調製することができる。カルボキシメチルセルロース(CMC)マイクロ粒子は、ポリマーを酸溶液に溶解し、鉛イオンを用いてマイクロ粒子を沈殿させることによって調製することができる。負に帯電したポリマー(例えば、アルジネート、CMC)の場合、異なる分子量の正に帯電したリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)をイオン結合させることができる。
【0148】
おそらく最も広く使用されているのは、脂肪族ポリエステル、特に疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、比較的親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびそれらのコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。これらのポリマーの分解速度、および多くの場合、対応する薬物放出速度は、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化し得、PLAとPGAとの比を変化させることによって容易に操作される。第2に、PLGAおよびそのホモポリマーPGAおよびPLAの生理学的適合性は、ヒトに対する安全な使用について確立されている。これらの材料は、薬物送達システムを含む様々なヒト臨床用途では、30年超の歴史を有する。PLGAナノ粒子は、受動的標的化または能動的標的化のいずれかによって薬物動態と標的組織への生体内分布とを改善する様々な方法で製剤化することができる。マイクロ粒子は、数日から数週間にわたって、カプセル化または付着される分子を放出するように設計される。放出持続時間に影響を及ぼす因子には、周囲の培地のpH(PLGAの酸触媒加水分解によるpH5以下での比較的速い放出速度)と、ポリマー組成とが含まれる。脂肪族ポリエステルは疎水性が異なり、これにより、分解速度に影響が及ぼされる。具体的には、疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、比較的親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびそれらのコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)は、様々な放出速度を有する。これらのポリマーの分解速度、および多くの場合、対応する薬物放出速度は、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化し得、PLAとPGAとの比を変化させることによって容易に操作される。
【0149】
シェル構成要素。ナノリポゲルは、1つまたは複数の同心脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。シェルは、1つまたは複数の活性剤、標的化分子またはそれらの組合せをさらに含むことができる。
【0150】
ナノリポゲルは、1つまたは複数の同心脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。リポソームシェルの組成は、インビボで1つまたは複数の活性剤の放出速度に影響を及ぼすように変化させてもよい。また、所望であれば、インビボ薬物放出を変化させるために、脂質を共有結合的に架橋してもよい。
【0151】
脂質シェルは、単一の脂質二重層(単層)またはいくつかの同心脂質二重層(多層)から形成することができる。脂質シェルは、単一の脂質から形成されてもよい。ただし、好ましい態様では、脂質シェルは、複数の脂質の組合せから形成される。脂質は、生理学的pHで中性、アニオン性またはカチオン性であり得る。
【0152】
好適な中性脂質およびアニオン性脂質には、ステロールおよび脂質、例えば、コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質およびスフィンゴ脂質が含まれる。中性脂質およびアニオン性脂質には、1,2-ジアシル-グリセロ-3-ホスホコリンを含むホスファチジルコリン(PC)(卵PC、大豆PCなど);ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質、例えばスフィンゴミエリン;スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとしても知られる)、例えば、セラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドおよびセレブロシド;脂肪酸、カルボン酸基を含むステロール、例えばコレステロール、またはそれらの誘導体;ならびに1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたは1,2-ジオレオリルグリセリルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)を含む1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンが含まれる。これらの脂質の天然誘導体(例えば、組織由来L.-α.-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、大豆)および/または合成誘導体(例えば、飽和および不飽和1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)も適している。
【0153】
好適なカチオン性脂質には、TAP脂質とも呼ばれるN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、例えばメチル硫酸塩が含まれる。好適なTAP脂質には、DOTAP(ジオレオイル-)、DMTAP(ジミリストイル-)、DPTAP(ジパルミトイル-)およびDSTAP(ジステアロイル-)が含まれる。他の好適なカチオン性脂質には、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジアシルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオロイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチルアミン(DODAP)、1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-[N--(N',N'-ジメチルアミノ-エタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);2,3-ジオレオイルオキシ-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)-エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパナム-イニウムトリフルオロ-アセテート(DOSPA)、.β.-アラニルコレステロール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、diC14-アミジン、N-tert-ブチル-N'-テトラデシル-3-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン、N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル-D-グルタメートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル-N-(トリメチルアンモニオ-アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシ-スペルミル)-プロピルアミド(DOSPER)、およびN,N,N',N'-テトラメチル-、N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタンジアンモニウムヨージド、1-[2-(アシルオキシ)エチル]2-アルキル(アルケニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリニウムクロリド誘導体、例えば、1-[2-(9(Z)-オクタデセノイルオキシ)エチル]-2-(8(Z)-ヘプタデセニル-3-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)および1-[2-(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]-2-ペンタデシル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)、ならびに第4級アミン上にヒドロキシアルキル部分を含む2,3-ジアルキルオキシプロピル第4級アンモニウム誘導体、例えば、1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE-HP)、1,2-ジオレイル-オキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE-HB)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE-Hpe)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2-ジパルミチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)および1,2-ジステリルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE)が含まれる。
【0154】
他の好適な脂質には、上記の中性脂質、アニオン性脂質およびカチオン性脂質のPEG化誘導体が含まれる。1つまたは複数のPEG化脂質誘導体を脂質シェルに組み込むことにより、その表面にポリエチレングリコール鎖を提示するナノリポゲルを得ることができる。得られたナノリポゲルは、その表面にPEG鎖を欠くナノリポゲルと比較して、インビボでの安定性および循環時間が増加し得る。好適なPEG化脂質の例には、DSPE PEG(2000MW)およびDSPE PEG(5000MW)を含むジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG)、ジパルミトイル-グリセロ-コハク酸ポリエチレングリコール(DPGS-PEG)、ステアリル-ポリエチレングリコールならびにコレステリル-ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0155】
一定の態様では、脂質シェルは、複数の脂質の組合せから形成される。一定の態様では、脂質シェルは、少なくとも3つの脂質の混合物から形成される。特定の態様では、脂質シェルは、ホスファチジルコリン(PC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)およびコレステロールの混合物から形成される。
【0156】
いくつかの態様では、脂質シェルは、1つまたは複数のPEG化リン脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとの混合物から形成される。一定の場合には、1つまたは複数のPEG化脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとのモル比は、1:1~1:6、さらに好ましくは1:2~1:6、最も好ましくは1:3~1:5の範囲である。特定の態様では、1つまたは複数のPEG化脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとのモル比は1:4である。
【0157】
いくつかの態様では、脂質シェルは、1つまたは複数のリン脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとの混合物から形成される。一定の場合には、1つまたは複数のリン脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとのモル比は、1:1~6:1、さらに好ましくは2:1~6:1、最も好ましくは3:1~5:1の範囲である。特定の態様では、1つまたは複数のリン脂質と1つまたは複数の追加の脂質またはステロールとのモル比は4:1である。
【0158】
好ましい態様では、脂質シェルは、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)と、PEG化リン脂質、例えば1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)と、コレステロールとの混合物から形成される。特定の態様では、脂質シェルは、ホスファチジルコリンと、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)と、コレステロールとの3:1:1モル比の混合物から形成される。
【0159】
ポリマー粒子。送達ビヒクルはまた、ポリマー粒子、例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子であり得る。粒子は、生分解性または非生分解性であり得る。ポリマー粒子を製造するために使用され得る例示的なポリマーは、ナノリポゲルのポリマーマトリックス成分に関して上述されている。
【0160】
好ましい生分解性ポリマーの例には、乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー、ならびにPEG、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、それらのブレンドおよびコポリマーとのコポリマーが挙げられる。好ましい態様では、粒子は、1つまたは複数のポリエステルから構成される。
【0161】
例えば、粒子は、以下のポリエステル、すなわち、本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位、および本明細書において総称して「PLA」と呼ばれるポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位、および本明細書において総称して「PCL」と呼ばれるポリ(.ε.-カプロラクトン)などのカプロラクトン単位を含むホモポリマー;および本明細書において総称して「PLGA」と呼ばれる、乳酸:グリコール酸の比を特徴とする、乳酸単位およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えば、様々な形態のポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド);およびポリアクリレート、ならびにそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含有することができる。例示的なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)と前述のポリエステルとのコポリマー、例えば、本明細書において総称して「PEG化ポリマー」と呼ばれる様々な形態のPLGA-PEGコポリマーまたはPLA-PEGコポリマーも含まれる。一定の態様では、PEG領域をポリマーと共有結合させて、切断可能なリンカーによって「PEG化ポリマー」を得ることができる。アルジネートポリマーも使用され得る。
【0162】
いくつかの態様では、粒子は、PLGAから構成される。PLGAは、安全なFDA承認ポリマーである。PLGA粒子は、活性剤を保護することができ(すなわち、カプセル材)、長期放出を促進し、標的化部分を加えるのに適しているため、有利である。
【0163】
粒子は、ポリマーと標的化部分、検出可能な標識または他の活性剤との間の末端間結合を含む1つまたは複数のポリマーコンジュゲートを含有することができる。例えば、修飾ポリマーはPLGA-PEG-ホスホネートであり得る。別の例では、粒子は、アビジン部分を含むように修飾され、ビオチン化標的化部分、検出可能な標識または他の活性剤をそれに結合させることができる。
【0164】
好ましい天然ポリマーの例には、タンパク質、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンおよびプロラミン、例えばゼイン、ならびに多糖、例えば、アルジネート、セルロース誘導体およびポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリヒドロキシブチレートが挙げられる。粒子のインビボ安定性は、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合したポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などのポリマーを使用することによって製造中に調整することができる。PEGが外面に露出している場合、PEGの親水性のためにこれらの材料が循環する時間が増加する可能性がある。
【0165】
非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、コポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0166】
ナノリポゲル。ナノリポゲルは、核酸、タンパク質および/または小分子の持続的送達のためにリポソームおよびポリマー系粒子の両方の利点を組み合わせたナノ粒子である。ナノリポゲルは、スフェア、ディスク、ロッド、または異なるアスペクト比を有する他の形状の形態であり得る。ナノスフェアは、比較的大きく、すなわちマイクロ粒子であり得る。ナノリポゲルは、典型的には、遠位負荷によって薬剤をカプセル化することができ、異なる放出速度を促進するように特性が調整可能な合成ポリマーまたは天然ポリマーから形成される。放出速度は、ポリマーと脂質との比を0.05から5.0に、さらに好ましくは0.5から1.5に変化させることによって調節される。
【0167】
ナノリポゲルは、形成前、形成中または形成後のいずれかに薬剤が負荷され、その後、薬剤の制御放出ビヒクルとして機能するように設計される。ナノリポゲルには、複数の薬剤の制御放出がその後達成されるように、複数の薬剤が負荷され得る。
【0168】
ナノリポゲルには、1つまたは複数の治療剤および/またはアジュバントが、形成中および/または形成後に、薬剤の存在下でのナノリポゲルの再水和プロセスによって負荷される。例えば、ナノリポゲルには、アジュバントとして機能する分子が負荷され、ナノリポゲルは、その後、形成後に1つまたは複数の抗癌剤を組み込んで、抗癌剤とともにアジュバントを送達および放出する。
【0169】
ポリマーナノ粒子
エマルジョン法。いくつかの態様では、ポリマーナノ粒子は、エマルジョン溶媒蒸発法を使用して調製される。例えば、ポリマー材料を水非混和性有機溶媒に溶解し、薬物溶液、または薬物溶液の組合せと混合する。水非混和性有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、および酢酸アシルのうちの1つまたは複数であり得る。薬物は、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの1つまたは複数に溶解させることができる。次いで、得られた混合物溶液に水溶液を加えて、乳化によってエマルジョン溶液を得る。乳化技術は、プローブ超音波処理、またはホモジナイザーによる均質化であり得る。ペプチドまたはフルオロフォアまたは薬物は、粒子のポリマーマトリックスの表面と結合されてもよく、粒子のポリマーマトリックス内にカプセル化されてもよく、粒子のポリマーマトリックスによって取り囲まれてもよく、および/または粒子のポリマーマトリックス全体に分布してもよい。
【0170】
ナノ沈殿法。別の態様では、ポリマーナノ粒子は、ナノ沈殿法またはマイクロ流体デバイスを使用して調製される。ポリマー材料は、水混和性有機溶媒中で薬物、または薬物の組合せと混合される。次いで、得られた混合溶液を水溶液に加えて、ナノ粒子溶液を得る。
【0171】
例示的な調製方法。粒子は、粒子のポリマー組成を含む基準に基づいて選択され得る様々な方法を使用して様々なポリマーから製造することができ、薬剤は、当技術分野において公知の方法に従って粒子内に負荷されるか、粒子と結合される。例示的な方法を以下に提供する。
【0172】
溶媒蒸発。この方法では、ポリマーを塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒に溶解する。薬物(可溶性、または微粒子として分散)を溶液に加え、混合物をポリ(ビニルアルコール)などの界面活性剤を含有する水溶液に懸濁する。有機溶媒の大部分が蒸発するまで、得られたエマルジョンを撹拌し、固体粒子を残す。得られた粒子を水で洗浄し、凍結乾燥機内で一晩乾燥させる。この方法によって、異なるサイズ(0.5~1000ミクロン)および形態を有する粒子を得ることができる。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定なポリマーに有用である。
【0173】
ただし、ポリ無水物などの不安定なポリマーは、水の存在に起因して製造プロセス中に分解する可能性がある。これらのポリマーについては、完全に無水の有機溶媒中で行われる以下の2つの方法の方が有用である。
【0174】
ホットメルトマイクロカプセル化。この方法では、まずポリマーを溶融し、次いで固体粒子と混合する。混合物を非混和性溶媒(シリコン油など)に懸濁し、連続的に撹拌しながら、ポリマーの融点よりも5℃高く加熱する。エマルジョンが安定化されたら、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。得られた粒子を石油エーテルを用いてデカンテーションすることによって洗浄して、流動性粉末を得る。この方法によって、0.5~1000ミクロンのサイズを有する粒子が得られる。この技術によって調製されたスフェアの外面は、通常、滑らかで高密度である。この手順は、ポリエステルおよびポリ無水物から作製される粒子を調製するために使用される。ただし、この方法は、1,000~50,000の分子量を有するポリマーに限定される。
【0175】
溶媒除去。この技術は、主にポリ無水物用に設計されている。この方法では、薬物は、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液に分散または溶解される。この混合物を有機油(例えば、シリコン油)中で撹拌することによって懸濁させて、エマルジョンを形成する。溶媒蒸発とは異なり、この方法は、高融点および様々な分子量を有するポリマーから粒子を作製するために使用され得る。この手順によって、1~300ミクロンの範囲の粒子を得ることができる。この技術によって製造されたスフェアの外部形態は、使用されるポリマーのタイプに大きく依存する。
【0176】
噴霧乾燥。この方法では、ポリマーは有機溶媒に溶解される。既知量の活性薬物をポリマー溶液に懸濁(不溶性薬物)または共溶解(可溶性薬物)する。次いで、溶液または分散液を噴霧乾燥する。ミニ噴霧乾燥機(Buchi)の典型的なプロセスパラメーターは以下の通りである:ポリマー濃度=0.04g/mL、入口温度=-24℃、出口温度=13~15℃、アスピレーター設定=15、ポンプ設定=10mL/分、噴霧流量=600Nl/時間、およびノズル直径=0.5mm。1~10ミクロンの範囲のマイクロ粒子が、使用されるポリマーのタイプに依存する形態で得られる。
【0177】
ヒドロゲル粒子。アルジネートなどのゲル型ポリマーから作製される粒子は、従来のイオンゲル化技術によって製造される。ポリマーは、水溶液に最初に溶解され、硫酸バリウムまたは何らかの生物活性剤と混合され、次いで、場合によっては液滴を破壊するために窒素ガスの流れを使用する微小液滴形成装置を通して押し出される。ゆっくり撹拌される(例えば、100~170RPM)イオン硬化浴を押出装置の下に配置して、形成される微小液滴を捕捉する。ゲル化が起こるのに十分な時間を可能にするために、粒子を浴中で20~30分間インキュベートする。粒径は、様々なサイズの押出機を使用するか、窒素ガスまたはポリマー溶液の流量を変化させることによって制御される。キトサン粒子は、ポリマーを酸性溶液に溶解し、トリポリホスフェートを用いて架橋することによって調製することができる。カルボキシメチルセルロース(CMC)粒子は、ポリマーを酸溶液に溶解し、鉛イオンを用いて粒子を沈殿させることによって調製することができる。負に帯電したポリマー(例えば、アルジネート、CMC)の場合、異なる分子量の正に帯電したリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)をイオン結合させることができる。
【0178】
他の送達ビヒクル
いくつかの態様では、送達ビヒクルは、リポソームまたは脂質ナノ粒子である。リポソームは、典型的には、ラメラ相脂質二重層から構成される球形ベシクルである。リポソームは、例えば、多層ベシクル(MLV)、小型単層リポソームベシクル(SUV)、大型単層ベシクル(LUV)または渦巻き状ベシクルであり得る。開示されるナノ微粒子組成物の調製に有用なリポソーム、ミセルおよび他の脂質系送達ビヒクルは、当技術分野において公知である。例えば、Torchilin et al.(Adv Drug Delivery Rev,58(14):1532-55,2006)を参照されたい。多種多様なリポソームおよびエキソソームが本発明とともに使用され得ることが予測される。リポソームは、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル-スルフェート(DOTAP)またはLipofectamine(商標)を含み得る。いくつかの態様では、例えば、Lu et al.(Cancer Cell,18:185-197,2010)に記載されているように、キトサンを含む送達システムが使用され得る。いくつかの態様では、ナノベクターが、miRNAを対象に送達するために使用され得る。ナノベクターは、例えば、Pramanik et al.(Mol Cancer Ther,10:1470-1480,2011)に記載されている。
【0179】
送達ビヒクルは、シリカ粒子であってよい。開示されるナノ微粒子組成物の調製に有用な好適なシリカ粒子も当技術分野において公知である。例えば、Barbe et al.(Adv Materials,16(21):1959-1966,2004)、Ngamcherdtrakul et al.(Adv Func Materials,25:2646-2659,2015)およびArgyo et al.(Chem.Mater.,26(1):435-451,2014)を参照されたい。例えば、いくつかの態様では、シリコーンナノ粒子(例えば、Bharali et al.PNAS,102(32):11539-11544,2005に記載されているように)を使用して、アジュバントおよび別の治療活性剤を細胞に送達してもよい。体内へのシリカまたはケイ素の溶解度は、粒子が担持する薬剤の持続放出能を提供する。さらに、生分解性ポリマーまたは生体内還元性架橋剤を使用して、シリカ粒子またはケイ素粒子を修飾して、持続放出能を提供することができる。
【0180】
(VI)薬学的組成物および投与製剤
癌、前癌および他の増殖性疾患の処置に使用するための組成物が、本明細書において提供される。組成物は、少なくとも2つの活性成分/薬剤を含み、その1つは、(1)腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または(2)免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する治療活性剤であり、もう1つはアジュバントである。本明細書において記載されるように、活性剤は、例えば、リポソーム、有機(ナノまたはマイクロ)粒子または無機(ナノまたはマイクロ)粒子などの送達ビヒクル中に送達/送達ビヒクルと結合される。
【0181】
組成物は、直接的に、例えば、細胞と接触させることによって、または間接的に、例えば、任意の生物学的プロセスの作用によって、細胞に提供され得る。例えば、組成物は、生理学的に許容される担体またはビヒクル中で製剤化され、細胞を取り囲む組織または流体に注入され得る。組成物は、単純な拡散、エンドサイトーシスによって、または任意の能動的もしくは受動的な輸送機構によって細胞膜を通過することができる。
【0182】
治療化合物(少なくとも1つの治療剤および少なくとも1つのアジュバントと組み合わせた送達システムなど)が、薬学的組成物に製剤化される場合、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合され得る。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、一般に生理学的に忍容性であると考えられ、ヒトまたは獣医学的対象に投与した場合に、アレルギー反応または同様の不都合な反応、例えば、胃の不調、めまいなどを典型的には引き起こさない分子実体および組成物を指す。
【0183】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される誘導体」は、レシピエントに投与すると所望の活性剤またはその活性代謝産物もしくは残基を(直接的または間接的に)提供することができる、所望の活性剤の任意の薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグ、例えばエステルを意味する。そのような誘導体は、過度の実験を用いることなく当業者に認識可能である。それでもなお、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery,5th Edition,Vol 1:Principles and Practiceの教示を参照されたい。薬学的に許容される誘導体には、塩、溶媒和物、エステル、カルバメートおよびリン酸エステルが含まれる。
【0184】
処置のための組成物をそのまま使用することが可能であるが、例えば、意図された投与経路および標準的な薬務に関して選択された好適な薬学的賦形剤、薬学的希釈剤、または薬学的担体と混合して、薬学的製剤で投与することが好ましい場合がある。したがって、一局面では、薬学的組成物または薬学的製剤は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、および/または担体と組み合わせて、少なくとも1つの活性組成物またはその薬学的に許容される誘導体を含む。賦形剤、希釈剤、および/または担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに顕著に有害ではないという意味で「許容される」。
【0185】
本明細書において開示される任意の組成物製剤は、研究的、予防的および/または治療的処置のためであるかどうかに関わらず、投与の利益を上回る顕著に有害なアレルギー反応または他の不都合な反応を生じないものを含む任意の他の薬学的に許容される担体を有利に含むことができる。治療的使用のための例示的な薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、および担体は、製薬分野において周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy.Lippincott Williams&Wilkins(A.R.,Gennaro edit.2005)およびRemington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990に記載されている。さらに、製剤は、米国FDA Office of Biological Standardsおよび/または他の関連する外国の規制当局によって要求される無菌性、発熱原性、一般的な安全性および純度の基準を満たすように調製することができる。薬学的賦形剤、薬学的希釈剤、および薬学的担体は、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。
【0186】
そのような薬学的製剤は、1つまたは複数の好適な賦形剤、希釈剤、および担体を用いて従来の方法で使用するために提供され得る。薬学的に許容される賦形剤は、生物活性材料のための剤形の形成を補助するか可能にし、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤、および他の成分を含む。保存剤、安定剤、色素、さらには香味剤が薬学的組成物中に提供され得る。保存剤の例には、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤および懸濁化剤も使用され得る。賦形剤は、その所望の機能を果たすことに加えて、非毒性であり、摂取時に十分に忍容され、生物活性材料の吸収を妨げない場合、薬学的に許容される。
【0187】
例示的な一般的に使用される薬学的に許容される担体には、ありとあらゆる増量剤または充填剤、溶媒または共溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、保存剤、等張剤、吸収遅延剤、塩、安定剤、緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTA)、ゲル、結合剤、崩壊剤および/または潤滑剤が含まれる。
【0188】
例示的な緩衝剤には、シトレート緩衝液、スクシネート緩衝液、タータレート緩衝液、フマレート緩衝液、グルコネート緩衝液、オキサレート緩衝液、ラクテート緩衝液、アセテート緩衝液、ホスフェート緩衝液、ヒスチジン緩衝液および/またはトリメチルアミン塩が含まれる。
【0189】
例示的な保存剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハライド、ヘキサメトニウムクロリド、アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが含まれる。
【0190】
例示的な等張剤には、3価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトールを含む多価糖アルコールが含まれる。
【0191】
例示的な安定剤には、有機糖、多価糖アルコール、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、アミノ酸、低分子量ポリペプチド、タンパク質、免疫グロブリン、親水性ポリマーまたは多糖が含まれる。
【0192】
「治療有効量」または「治療有効用量」は、状態、障害または病態を処置するために対象に投与された場合、そのような状態、障害または病態を達成するのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに処置される哺乳動物の年齢、体重、体調および応答性に応じて変化する。正確な用量および配合は、治療の目的に依存し、公知の技術(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Editor(2003)、およびPickar,Dosage Calculations(1999)を参照)を使用して当業者によって確認され得る。一定の場合には、「治療有効量」は、所望の活性を例えば、10%、50%または90%調節する、例えば、増加または減少させるのに十分な量または用量を意味するために使用される。一般に、治療有効量は、1つまたは複数の治療剤を含む治療レジメン後に、宿主に臨床的に顕著な病態の改善を引き起こすのに十分である。活性成分の濃度または量は、本明細書において説明されるように、所望の投与量および投与レジメンに依存する。
【0193】
特定の対象に投与される実際の用量は、標的、体重、癌の病期、癌の種類、以前または同時の治療的介入、対象の特発性疾患、および投与経路を含む物理的因子、生理学的因子および心理学的因子などのパラメーターを考慮して、医師、獣医または研究者によって決定され得る。
【0194】
この使用に有効な量は、特に転移部位が関与する場合、疾患の重症度およびその位置、ならびに処置される患者の体重および全身状態に依存する。一般に、投与量は、1日当たり免疫療法構築物0.01mg/kg~100mg/kg宿主体重の範囲であり、1日当たり0.1mg/kg~10mg/kgの投与量、例えば、3~7mg/kgの投与量がさらに一般的に使用される。長期間にわたる維持投与量は、必要に応じて調整され得る。ただし、投与量は、患者の要件、処置される病態の重症度、および使用される化合物に応じて変化させてもよい。例えば、投与量は、特定の患者では、診断された癌の種類および病期を考慮して経験的に決定され得る。本発明の文脈では、患者に投与される用量は、患者に経時的に有益な治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量のサイズはまた、特定の患者に対する特定のベクターまたは形質導入された細胞型の投与に伴ういずれかの有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、施術者の技能の範囲内にある。一般に、処置は、化合物の最適用量未満の比較的少ない投与量で開始される。その後、状況下で最適な効果に達するまで、投与量を少しずつ増加させる。便宜上、所望であれば、総1日投与量を分割し、1日の間に分割して投与してもよい。
【0195】
選択された投与量は、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間、および使用される特定の免疫療法複合体の影響を受け得る。一般に、免疫療法構築物は、1投与当たり0.001mg/kg~100mg/kg(例えば、以下にさらに詳細に説明するように、連日;または週に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上;または月に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上など)の範囲で投与され得る。投与経路は、投与量を決定する際にも考慮することができる。例えば、特定の態様では、免疫療法構築物は、静脈内経路もしくは腹腔内経路によって0.01mg/kg~100mg/kg(例えば、連日;または週に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上;または月に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上など)の範囲で、または皮下経路(例えば、腫瘍もしくはTMEへの局所注射、または腫瘍もしくはTMEに隣接する局所注射)では0.0001mg/kg~1mg/kg(例えば、連日;または週に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上;または月に2回、3回、4回、5回もしくはそれ以上など)の範囲で投与される。さらに例示的な投与量を以下に説明する。
【0196】
好適な投与量は、0.01mg/kg~100mg/kg体重/日、週または月の範囲であり得る。例示的な用量は、本明細書において開示される活性化合物(免疫療法構築物)0.05mg/kg~10.0mg/kgを含み得る。総1日用量は、60分間の経口投与、静脈内投与または他の投与を使用した薬物投与形態の0.05~3.0、0.1~3.0、0.5~3.0、1.0~3.0、1.5~3.0、2.0~3.0、2.5~3.0および0.5~3.0mg/kg/日の総1日用量の投与を含めて、対象に1日に1~3回投与される薬剤0.05mg/kg~30.0mg/kgであり得る。特定の一例では、用量は、例えば、本明細書において開示される化合物を最大92~98%wt/v含む組成物1.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kgまたは7.5mg/kgの総1日用量で、対象にQD投与またはBID投与され得る。
【0197】
追加の有用な用量は、多くの場合、0.1~5μg/kgまたは0.5~1μg/kgの範囲であり得る。他の例では、用量には、1μg/kg、10μg/kg、20μg/kg、40μg/kg、80μg/kg、200μg/kg、0.1~5mg/kgまたは0.5~1mg/kgが含まれ得る。他の例では、用量には、1mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg、80mg/kg、200mg/kg、400mg/kg、450mg/kgまたはそれ以上が含まれ得る。
【0198】
本開示の処置材料は、重篤な疾患状態、すなわち、生命を脅かす、または潜在的に生命を脅かす状況で使用され得る。そのような場合、これらの組成物を実質的に過剰に投与することが可能であり、治療医によって望ましいと感じられ得る。
【0199】
当業者によって理解されるように、特定の投与量は、活性化合物の薬物動態の影響を受ける。投与のために、インビトロアッセイおよび/または動物モデル試験から得られた結果に基づいて、治療有効量(本明細書において用量とも呼ばれる)を最初に推定することができる。そのような情報は、関心対象の対象に対して有用な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。有用な前臨床試験には、薬力学的分析、毒性分析などが含まれる。
【0200】
治療有効量は、治療レジメンの経過中に単回用量または複数回用量を投与することによって(例えば、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、9時間ごと、12時間ごと、18時間ごと、連日、隔日、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または毎月)達成することができる。
【0201】
活性剤を含有する化合物の有効量には、所望の治療効果、予防効果および/または生物学的効果を部分的または完全に達成する用量が含まれる。特定の用途に有効な実際の量は、処置される病態と、投与経路とに依存する。ヒトに使用するための有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトに対する用量は、動物に対して有効であることが判明している局所(例えば、腫瘍内)レベルまたは循環レベルを達成するように製剤化され得る。
【0202】
組成物は、エタノール、ブピバカイン、クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、デスフルラン、イソフルラン、ケタミン、プロポフォール、セボフルラン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、マーカイン、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、レミフェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ナルブフィン、トラマドール、ベンゾカイン、ジブカイン、塩化エチル、キシロカインおよび/またはフェナゾピリジンを含む1つまたは複数の麻酔薬とともに投与することができる。
【0203】
癌(例えば、癌転移を含む)を治療または予防することを含む特定の態様では、本明細書において開示される組成物は、化学療法剤、放射線療法および/または免疫療法などの他の癌治療と組み合わせて使用することができる。本明細書において記載される組成物は、選択された時間枠内、例えば、10分、1時間、3時間、10時間、15時間、24時間もしくは48時間の時間枠内で、または相補的治療が臨床的に関連する治療枠内にある場合に、別の治療と同時にまたは連続して投与することができる。
【0204】
薬学的組成物は、各投与経路に適切な剤形に製剤化された、非経口(筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内(IV)注射または皮下注射)によるか、点滴によるか、デポーでの投与のためのものであり得る。
【0205】
いくつかの態様では、組成物は、標的細胞への組成物の送達に有効な量で、例えば、静脈内投与または腹腔内投与によって全身投与される。他の経路には、点滴または粘膜が含まれる。
【0206】
一定の態様では、組成物は、例えば、処置される部位への直接注射によって局所投与される。いくつかの態様では、組成物は、1つまたは複数の腫瘍または疾患組織に直接注射または投与される。典型的には、局所注射は、全身投与によって達成され得る濃度よりも高い、組成物の局所濃度の増加を引き起こす。いくつかの態様では、組成物は、カテーテルまたはシリンジを使用することによって適切な細胞に局所的に送達される。そのような組成物を細胞に局所的に送達する他の手段には、注入ポンプを使用すること、またはインプラントの直近領域に組成物の持続放出をもたらすことができるポリマーインプラントに組成物を組み込むことが含まれる。
【0207】
例として、一定の態様では、免疫療法構築物は、例えば、容易に到達可能な腫瘍、例えば、黒色腫、頭頸部癌、乳癌およびリンパ腫に局所投与されるか、他の癌、例えば、肺癌、肝癌、膵癌、前立腺癌および転移性癌のために全身投与される。
【0208】
したがって、本明細書において記載される治療用組成物は、ヒト用医薬品または動物用医薬品に使用するための任意の好都合な方法を含む様々な経路によって(単独で、または併用療法の一部として)投与され得る。所望の活性剤の治療有効量は、非経口的、経粘膜的(例えば、経口的、経鼻的または直腸的)、または経皮的に導入される薬学的組成物に製剤化することができる。いくつかの態様では、投与は、例えば、静脈内注射、または細動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与および頭蓋内投与を介した非経口である。投与は、ボーラスとしてであるか、一定期間にわたる連続注入によるものであるか、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、関節滑液嚢内経路、髄腔内経路、経口経路、局所経路または吸入経路によるものであり得る。一定の態様では、非皮膚腫瘍への局所送達、例えば、肝動脈注入ポンプ、対流強化送達を可能にする埋込みシステムを使用して、本明細書において提供される免疫療法構築物を送達することもできる。一定の態様では、例えば、関節に影響を及ぼす炎症状態の治療に関与する態様では、薬学的組成物は、好ましくはシリンジを用いた注射によって滑膜、滑液または関節包に直接投与され得る。投与は、局所的または全身的であり得る。選択は、処置される病態、ならびに投与される活性剤および組成物の影響を受け得る。
【0209】
注射では、水溶液として、例えば、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩水などの緩衝液中で組成物を作製することができる。溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいは、組成物は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水を用いて構成するために、凍結乾燥形態および/または粉末形態であり得る。
【0210】
免疫療法構築物を含む組成物は、非経口注射によって水溶液で投与され得る。注射用製剤は、懸濁液またはエマルジョンの形態であり得、任意で、薬学的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体を含む。そのような注射用組成物は、希釈剤、例えば、滅菌水、様々な緩衝液含有物(例えば、Tris-HCl、アセテート、ホスフェート)、pHおよびイオン強度の緩衝生理食塩水と、任意で、添加剤、例えば、洗浄剤および可溶化剤(例えば、TWEEN(商標)20、TWEEN(商標)80は、ポリソルベート20または80とも呼ばれる)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、および保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)とを含むことができる。非水性の溶媒またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油およびトウモロコシ油、ゼラチン、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルがある。注射用製剤を凍結乾燥し、例えば使用直前に再懸濁してもよい。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、組成物に滅菌剤を組み込むことによって、組成物を照射することによって、または組成物を加熱することによって滅菌され得る。
【0211】
他の態様では、免疫療法構築物含有組成物は、局所的に、または点滴によって適用される。局所投与は、肺、鼻、口腔(舌下、頬側)、膣または直腸粘膜への適用を含み得る。これらの投与方法は、粘膜輸送要素を用いて送達ビヒクルのシェルまたはコーティングを製剤化することによって行うことができる。組成物は、5ミクロン未満の空気動力学的直径を有するエアロゾルまたは噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達される場合、吸入中に肺上皮内層を横断して血流に移動しながら肺に送達され得る。
【0212】
限定されることなく、いずれも当業者によく知られているネブライザー、定量吸入器および粉末吸入器を含む、治療用製品の肺送達用に設計された広範囲の機械装置を使用することができる。
【0213】
粘膜に投与するための製剤は、典型的には、錠剤、ゲル、カプセル、懸濁液またはエマルジョンに組み込まれ得る噴霧乾燥された薬物粒子である。標準的な薬学的賦形剤は、任意の処方者から入手可能である。
【0214】
経皮製剤が調製されてもよい。これらは、典型的には、軟膏、ローション、スプレーまたはパッチであり、これらはいずれも標準的な技術を使用して調製され得る。経皮製剤は、浸透促進剤を含むことができる。この方法と組み合わせて、化学的促進剤、ならびにエレクトロポレーションおよびマイクロニードルを含む物理的方法が機能し得る。
【0215】
マイクロニードル(MN)は、高さが10~2000μm、幅が10~50μmのミクロンサイズの針であり、痛みを最小限に抑えるか全く伴わずに表皮層を通って真皮組織まで直接貫通することができる(Hao et al.,J Biomed Nanotechnol,13(12):1581-1597,2017)。いくつかのタイプのマイクロニードルを使用することができる。いくつかの態様では、金属系またはプラスチックのマイクロニードルローラーを使用して皮膚表面を物理的に破壊して、適用された局所剤(この場合は免疫療法構築物)の浸透を促進することができる。いくつかの態様では、分解性および溶解性のマイクロニードルが免疫療法構築物を含有することができる。マイクロニードルは、皮膚に投与すると、皮膚の層の深部で構築物を溶解および放出することができる。いくつかの態様では、非分解性マイクロニードルを免疫療法構築物で被覆して、被覆された構築物を皮膚層の深部に送達してもよい。マイクロニードルは、限定されることなく、ポリマー、糖、多糖、ペプチド、タンパク質、金属、無機化合物などを含む多くのクラスの材料から製造することができる(Ye et al.,Adv Drug Deliv Rev,127:106-118,2018)。マイクロニードル技術について当技術分野において公知のあらゆる材料および製造方法が、この免疫療法構築物の送達を増強するために適用可能である。
【0216】
治療薬の全身送達または局所送達を容易にする任意の装置もまた、本発明者らの免疫療法構築物に適用可能である。例えば、本明細書において記載される免疫療法構築物を送達するために、全身毒性を最小限に抑えながら高濃度の細胞毒性剤を肝転移に直接送達する移植化学療法装置である肝動脈注入(HAI)ポンプ(Cohen et al.,The Oncologist,8(6):553-566,2003)を利用することもできる。
【0217】
(VII)例示的な使用方法:
少なくとも1つのアジュバントと、抗原放出を誘導することができる、および/または免疫抑制環境(腫瘍微小環境など)を調節することができる少なくとも1つの治療活性剤とを含む免疫療法構築物を本明細書において提供することにより、ここで、癌、癌の症状、癌の進行(前癌から癌までを含む)、および癌転移を含む過剰増殖性疾患、過剰増殖性障害または過剰増殖性病態を治療および/または予防する方法が可能になる。過剰増殖性疾患、過剰増殖性障害または過剰増殖性病態の具体例には、癌が挙げられる。いくつかの態様では、癌は、癌を有する対象または個体の免疫系を抑制し得る。いくつかの態様では、本明細書において提供される免疫療法構築物は、癌媒介性免疫抑制を抑制または逆転させ、悪性腫瘍の免疫認識および排除を可能にすることができる。
【0218】
本明細書において使用される場合、用語「処置(治療)」または「処置する(治療する)」は、未処置の対象と比較して、処置された対象に起こる癌の何らかの改善を指す。そのような改善は、癌の悪化または進行の予防(例えば、無増悪生存期間の改善)であり得る。さらに、そのような改善はまた、癌またはその付随する症状の減少または治癒(例えば、腫瘍体積の減少、部分寛解、完全寛解(例えば、6ヶ月、1年、2年、3年、4年もしくは5年またはそれ以上にわたる)、癌の再発もしくは再燃の予防、転移の減少、または腫瘍もしくは病変の数の減少)であり得る。処置は、処置される対象の100%では成功しない可能性があるが、当業者(例えば、医師)によって決定されるように、個体が受けた他の処置と比較して、ある個体では成功する可能性があることが理解されるであろう。本明細書において使用される場合、用語「予防する」は、本明細書において使用される癌またはそれに付随する症候群の発症を回避することを指す。予防とは、将来のある時間枠内で癌の発症を回避することを指すことが理解されるであろう。該時間枠は、好ましくは、本発明の意味における化合物の投与時に開始し、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間、少なくとも10年間、またはさらには対象の残りの生理学的寿命の間続くものとする。予防は、処置される対象の100%では成功しない可能性があるが、当業者(例えば、医師)によって決定されるように、個体が受けた他の処置と比較して、ある個体では成功する可能性があることが理解されるであろう。予防はまた、例えば、集団内の再発の確率の低下によって測定されるように、寛解後の癌の再発に関連し得る。予防はまた、そうでなければ再増殖し、後日陽性の予後および疾患症状を示し得る、体内のいずれかの部位の癌細胞の排除を指す。
【0219】
開示される組成物は、良性または悪性の癌およびその腫瘍を処置するために使用することができる。処置は、癌細胞を直接標的とし、死滅させることができるか、癌細胞に対する免疫応答を増大させることによって癌細胞を間接的に標的とすることができるか、それらの組合せであり得る。
【0220】
成熟動物では、通常、ほとんどの器官および組織内で細胞再生と細胞死との間でバランスが維持される。体内の様々な種類の成熟細胞は、所与の寿命を有する。これらの細胞が死滅するにつれて、様々な種類の幹細胞の増殖および分化によって新しい細胞が生成される。正常な状況下では、新しい細胞の生成は、いずれかの特定の種類の細胞の数が一定のままであるように調節される。ただし、時折、正常な増殖制御機構にもはや応答しない細胞が生じる。これらの細胞は、かなりの大きさに増殖し、腫瘍または新生物を生じさせることができる細胞のクローンを生じる。不定に増殖することができず、健康な周囲組織に広範囲に浸潤しない腫瘍は良性である。増殖し続け、次第に浸潤性になる腫瘍は悪性である。癌という用語は、具体的には悪性腫瘍を指す。悪性腫瘍は、制御されない増殖に加えて、転移を示す。このプロセスでは、癌性細胞の小さなクラスターが腫瘍から脱落し、血管またはリンパ管に浸潤し、他の組織に運ばれ、そこで増殖し続ける。このように、ある部位の原発腫瘍が、別の部位に続発性腫瘍を生じさせる可能性がある。
【0221】
開示される組成物は、対象の腫瘍の増殖を遅延させるか阻害することができ、腫瘍の増殖またはサイズを減少させることができるか、腫瘍を完全に排除することができ、腫瘍の転移を阻害するか減少させることができ、および/または腫瘍の発生または増殖に関連する症状を阻害するか減少させることができる。例えば、いくつかの態様では、組成物は、対象の腫瘍負荷を減少させるか、腫瘍増殖を経時的に遅延させるか予防する。
【0222】
悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚起源に従って分類され得る。癌腫は、内胚葉組織または外胚葉組織、例えば、皮膚、または内臓および腺の上皮内層から生じる腫瘍である。肉腫は、あまり頻繁に発生しないが、中胚葉結合組織、例えば、骨、脂肪および軟骨に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単一細胞として増殖するが、リンパ腫は腫瘍塊として増殖する傾向がある。悪性腫瘍は、身体の多数の器官または組織に現れて癌を確立することがある。
【0223】
提供される組成物および方法を用いて処置され得る癌の種類には、限定されることなく、多発性骨髄腫などの血管癌、ならびに骨、膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸、直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃および子宮の腺癌および肉腫を含む固形癌が含まれる。いくつかの態様では、開示される組成物は、複数の癌型を同時に処置するために使用される。組成物はまた、複数の位置で転移または腫瘍を処置するために使用され得る。
【0224】
投与は、既存の腫瘍の処置に限定されず、個体においてそのような疾患を発症するリスクを予防するか低下させるために、すなわち予防的使用のために、および例えば転移による癌の広がりを減少させるためにも使用され得る。予防的ワクチン接種の潜在的な候補には、癌を発症するリスクが高い、すなわち、特定の種類の癌の個人歴または家族歴を有する個体が含まれる。
【0225】
一態様では、アジュバント剤CpGと、黒色腫と前駆細胞(母斑内のメラノサイト)とを死滅させ、抗原放出をもたらすためのBRAFV600Eに対するsiRNAと、免疫抑制環境を緩和するためのSTAT3に対するsiRNAとを含む免疫療法構築物を使用して、黒色腫を発症するリスクが高い対象、および黒色腫患者に適応免疫を生じさせることができる。免疫療法構築物は、黒色腫を予防および治療するだけでなく、後期病期の黒色腫患者の手術後の将来の再発または再燃からの保護も提供する。標的化剤とともに、他の遺伝子に対するsiRNAをナノ粒子/構築物の上または中に組み込んでもよい。
【0226】
全身免疫療法、化学療法および生物化学療法を含む様々な治療様式がアジュバント状況で試験されているが、それらはまた、本明細書において記載される免疫療法構築物による局所治療によって克服され得る全身毒性および副作用をもたらす。一定の態様では、免疫療法構築物(例えば、化学療法薬、標的療法、および/またはSTAT3に対するsiRNAとともにCpGまたは別のアジュバントを含有する)を使用して、原発性胸部腫瘍の外科的除去の前に腫瘍内注射によってアジュバント状況で乳癌を治療することができ、これにより、全身性薬物の毒性を伴わず癌の再発および転移を予防する。
【0227】
本明細書において使用される場合、用語「癌」は、白血病、リンパ腫、癌腫および肉腫を含む、哺乳動物に見られるあらゆる種類の癌、新生物または悪性腫瘍を指す。本明細書において提供される化合物、薬学的組成物または方法を用いて処置され得る例示的な癌には、リンパ腫、肉腫、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、結腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、腎癌、骨髄腫、甲状腺癌、白血病、前立腺癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、Herceptin(登録商標)抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、乳管癌、小葉癌、原発性、転移性)、卵巣癌、膵癌、肝癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、腺癌、肺大細胞癌、小細胞肺癌、カルチノイド、肉腫)、多形神経膠芽腫、神経膠腫、黒色腫、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、神経膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば、頭部、頸部または食道)、結腸直腸癌、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫が含まれる。追加の例には、甲状腺、内分泌系、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、食道、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮もしくは髄芽腫の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、多形神経膠芽腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、癌、悪性膵インスリノーマ(malignant pancreatic insulinoma)、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変(premalignant skin lesion)、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖路癌(genitourinary tract cancer)、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、膵内分泌部もしくは膵外分泌部の新生物、甲状腺髄様癌、髄様甲状腺癌、黒色腫、結腸直腸癌、乳頭様甲状腺癌、肝細胞癌、乳頭パジェット病、葉状腫瘍、小葉癌、乳管癌、膵星細胞の癌、肝星細胞の癌、または前立腺癌が挙げられる。本明細書において使用される用語「前癌」は、癌に先行するか癌に進行する病態または増殖を指す。本明細書において使用される用語「癌転移」は、ある器官、または身体の一部から別の器官、または身体の一部への癌細胞または腫瘍の広がりを指す。
【0228】
用語「白血病」は、血液形成器官の進行性悪性疾患を広く指し、一般に、血液および骨髄内の白血球およびその前駆体の増殖および発達の歪みを特徴とする。白血病は、一般に、(1)急性または慢性の疾患の持続期間および特徴;(2)関与する細胞の種類;骨髄球性(骨髄性)、リンパ性(リンパ向性)または単球性;および(3)血液白血病性または無白血病(亜白血病性)の異常細胞の数の増加または非増加に基づいて臨床的に分類される。本明細書において提供される化合物、薬学的組成物または方法を用いて処置され得る例示的な白血病には、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血病性白血病、白血球血症性白血病(leukocythemic leukemia)、好塩基球性白血病、芽球性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血芽球性白血病(hemoblastic leukemia)、血芽球細胞性白血病(hemocytoblastic leukemia)、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病(lymphatic leukemia)、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病(lymphocytic leukemia)、リンパ性白血病(lymphogenous leukemia)、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄顆粒球性白血病(myeloid granulocytic leukemia)、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病(Naegeli leukemia)、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病または未分化性細胞白血病が含まれる。
【0229】
用語「肉腫」は、一般に、胚性結合組織のような物質から構成され、一般に線維性物質または均質な物質に埋め込まれた密集した細胞から構成される腫瘍を指す。本明細書において提供される化合物、薬学的組成物または方法を用いて処置され得る肉腫には、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバネシー肉腫(Abemethy's sarcoma)、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状横紋筋肉腫、緑色肉腫(chloroma sarcoma)、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー星細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性骨肉腫、網状赤血球肉腫(reticulocytic sarcoma)、ラウス肉腫、漿液瘤嚢胞性肉腫、滑膜肉腫または毛細管拡張性肉腫(telangiectaltic sarcoma)が含まれる。
【0230】
用語「黒色腫」は、皮膚および他の器官のメラノサイト系から生じる腫瘍を意味すると解釈される。本明細書において提供される化合物、薬学的組成物または方法を用いて処置され得る黒色腫には、例えば、末端黒子型黒色腫、無色素性悪性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫(Cloudman's melanoma)、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫(subungal melanoma)または表在拡大型黒色腫が含まれる。
【0231】
用語「癌腫」は、周囲組織に浸潤し、転移を引き起こす傾向がある、上皮細胞から構成される悪性新生物を指す。本明細書において提供される化合物、薬学的組成物または方法を用いて処置され得る例示的な癌腫には、例えば、髄様甲状腺癌、家族性髄様甲状腺癌、腺房癌、小葉癌、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌、腺腫様癌(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質の癌腫、肺胞癌、肺胞上皮癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底扁平上皮癌(basosquamous cell carcinoma)、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、脳状癌腫(cerebriform carcinoma)、胆管細胞癌、絨毛癌(chorionic carcinoma)、膠様癌、面皰癌、子宮体癌(corpus carcinoma)、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円筒形癌(cylindrical carcinoma)、円筒細胞癌、腺管癌、乳管癌、硬膜癌(carcinoma durum)、胚性癌腫、髄様癌、類表皮癌(epiermoid carcinoma)、腺様上皮癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌、潰瘍癌、線維性癌(carcinoma fibrosum)、ゼラチン状癌(gelatiniforni carcinoma)、コロイド腺癌、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌(glandular carcinoma)、顆粒膜細胞癌、毛母癌、血液様癌腫(hematoid carcinoma)、肝細胞癌、ハースル細胞癌、ヒアリン癌腫(hyaline carcinoma)、副腎様癌腫、乳児胚性癌腫、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロンペシェール癌腫(Krompecher's carcinoma)、クルチツキー細胞癌腫、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫性癌腫(lipomatous carcinoma)、小葉癌、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌、モール癌腫(carcinoma molle)、粘液性癌腫、粘液分泌性癌腫(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌腫(carcinoma mucocellulare)、粘表皮癌、粘液癌、粘液性癌、粘液腫様癌、上咽頭癌、燕麦細胞癌、骨化性癌腫(carcinoma ossificans)、類骨癌腫(osteoid carcinoma)、乳頭癌、門脈周囲性癌腫(periportal carcinoma)、前浸潤癌、有棘細胞癌、粥状癌腫(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌腫(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌腫、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌腫(solanoid carcinoma)、回転楕円面細胞癌腫、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、ストリング癌腫(string carcinoma)、毛細血管拡張性癌腫(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張様癌腫(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、管状癌、結節癌(tuberous carcinoma)、疣状癌または絨毛癌(carcinoma villosum)が含まれる。
【0232】
(VIII)キット
特に少なくとも1つの記載された治療用構築物(少なくとも1つの治療剤および少なくとも1つのアジュバントを含有するか、それらと結合した送達ビヒクルを含む)を含む活性成分は、キットとして提供され得る。キットは、任意で、処置に使用するための1つまたは複数の追加の薬剤とともに、本明細書において記載される1つまたは複数の化合物または複合体(例えば、抗癌剤)を含む(収容する)1つまたは複数の容器を含むことができる。例えば、一部のキットは、ある量の少なくとも1つの追加の抗癌組成物、もしくはある量の少なくとも1つの追加の抗炎症剤、またはその両方を含む。
【0233】
キット内の任意の活性成分は、事前に測定された投与量で提供され得るが、これは必須ではない。特定のキットが複数の用量を含むことが予測される。
【0234】
キットはまた、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知を含むことができ、その通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映する。通知は、提供される活性成分が対象に投与され得ることを記載し得る。キットは、キットを使用するための追加の説明書、例えば、投与、関連廃棄物の適切な処分などに関する説明書を含むことができる。説明書は、キット内に提供される印刷された説明書の形態であり得るか、説明書は、キット自体の一部に印刷されてもよい。説明書は、シート、パンフレット、小冊子、CD-ROMまたはコンピュータ可読装置の形態であってよいか、ウェブサイトなどの遠隔地で説明書に対する指示を提供することができる。特定の態様では、キットはまた、キットを効果的に使用するために必要とされる必須の医療用品、例えば、アプリケーター、アンプル、スポンジ、滅菌接着剤ストリップ、Chloraprep、手袋などの一部または全部を含むことができる。本明細書において記載されるキットのいずれかの内容物を変化させてもよい。キットの説明書は、本明細書において記載される臨床的使用および/または治療的使用を実現するために、そのキットに含まれる活性成分の使用を指示する。
【0235】
開示される発明の態様の実施および/または試験に使用される好適な方法、材料および例は、本明細書において記載されている。そのような方法および材料は単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書において記載されるものと同様または同等の他の方法、材料および例を使用することができる。
【0236】
以下の例示的な態様および実施例は、本開示の特定の態様を実証するために含まれる。当業者は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において開示された特定の態様に多くの変更を加えることができ、同様または類似の結果を依然として得ることができることを本開示に照らして認識すべきである。
【0237】
(IX)例示的な態様
1. 送達システムと、例えば、送達システム内に負荷されるか、送達システムの表面に付着されるか、送達システムに結合されるか、送達システム内に封入されるか、送達システム内に含有された少なくとも1つの治療剤であって、腫瘍抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する治療剤と、
例えば、送達システムの表面に付着されるか、送達システムに結合されるか、送達システム内に封入されるか、送達システム内に含有された少なくとも1つのアジュバント化合物と
を含む、免疫療法構築物であって、
腫瘍特異的抗原またはオボアルブミンを含まない、前記免疫療法構築物。
2. 送達システムが、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、ポリマーもしくは脂質で被覆された無機粒子、またはそれらのハイブリッドを含む、態様1の免疫療法構築物。
3. 送達ビヒクルが、リポソーム、脂質系粒子、ポリマー粒子、無機粒子、またはポリマーもしくは脂質で被覆された無機粒子である、態様2の免疫療法構築物。
4. 送達ビヒクルが、無機粒子であり、メソポーラスシリカ、金、アルミニウム、酸化鉄、リン酸カルシウム、または抗酸化剤粒子のうちの1つまたは複数を含む、態様3の免疫療法構築物。
5. 無機粒子が、酸化セリウムを含む抗酸化剤粒子を含む、態様4の免疫療法構築物。
6. 送達ビヒクルが、メソポーラスシリカ粒子を含む、態様4の免疫療法構築物。
7. 送達ビヒクルが、フラーレン、エンドヘドラル金属フラーレン(endohedral metallofullerene)、三金属窒化物鋳型エンドヘドラル金属フラーレン、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ、分枝状カーボンナノチューブおよび樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層ホウ素/ナイトレートナノチューブおよび多層ホウ素/ナイトレートナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ケイ素、シリカマイクロスフェアおよびシリカナノスフェア、ポリマーマイクロスフェアおよびポリマーナノスフェア、シリカシェル、生分解性PLGAマイクロスフェアおよび生分解性PLGAナノスフェア、金粒子、酸化セリウム粒子、酸化亜鉛粒子、銀粒子、アルミニウム粒子、炭素粒子、鉄粒子、酸化鉄粒子、リン酸カルシウム、アジュバント粒子、ならびに/または修飾ミセルのうちの1つまたは複数を含む、態様1の免疫療法構築物。
8. 送達ビヒクルが、PLGA、PLL、ポリアルギニン、PEG、PEI、またはキトサンのうちの1つまたは複数を含むポリマー粒子である、態様1~7のいずれか一つの免疫療法構築物。
9. 5nm~999nmの流体力学的サイズを有するナノ粒子である、態様1~8のいずれか一つの免疫療法構築物。
10. 1ミクロン~1000ミクロンの流体力学的サイズを有するナノ粒子である、態様1~8のいずれか一つの免疫療法構築物。
11. 送達ビヒクルが、約5~約200nmのサイズを有するメソポーラスシリカナノ粒子を含む、態様6の免疫療法構築物。
12. メソポーラスシリカナノ粒子が、架橋されたポリエチレンイミンおよびポリエチレングリコールで被覆されている、態様11の免疫療法構築物。
13. 少なくとも1つの治療剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、DNA、sgRNA(CRISPR-cas9エレメント)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、化学療法薬、毒素、抗酸化剤、小分子阻害剤、抗体、または放射線療法剤を含む、態様1~12のいずれか一つの免疫療法構築物。
14. 少なくとも1つの治療剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、またはDNAを含む、態様13の免疫療法構築物。
15. 少なくとも1つの治療剤が、siRNAを含む、態様14の免疫療法構築物。
16. 少なくとも1つの治療剤が、STAT3、CD39、CD73、TGF-β、PD-L1、PD1、CTLA4、MIF、PLK1、HIF、NOX1~4、HER2、EGFR、BCL2、AKT1、HIF1-α、NOX1~4、AR、MYC、BRAF、BRAF V600E、またはMTDHの発現または活性を阻害するsiRNAを含む、態様15の免疫療法構築物。
17. 少なくとも1つの治療剤が、STAT3の発現または活性を阻害するsiRNAを含む、態様15または16の免疫療法構築物。
18. 少なくとも1つの治療剤が、HER2の活性の発現を阻害するsiRNAを含む、態様15~17のいずれか一つの免疫療法構築物。
19. 少なくとも1つの治療剤が、STAT3、CD39、CD73、TGF-β、PD-L1、PD1、CTLA4、MIF、PLK1、HIF、NOX1~4、HER2、EGFR、BCL2、AKT1、HIF1-α、NOX1~4、AR、MYC、またはMTDHの発現または活性を阻害する、態様1~12のいずれか一つの免疫療法構築物。
20. 治療剤が、抗生物質、植物アルカロイド、PLK1阻害剤、分裂期キナーゼ阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、白金系化学療法剤、HER2小分子阻害剤、またはおよびHER2特異的抗体のうちの1つまたは複数を含む抗癌剤である、態様1~19のいずれか一つの免疫療法構築物。
21. 治療剤がチェックポイント阻害剤であり、チェックポイント阻害剤が、PD-L1、PD1、またはCTLA4に対する抗体である、態様20の免疫療法構築物。
22. チェックポイント阻害剤が、PD-L1に対する抗体である、態様21の免疫療法構築物。
23. 少なくとも1つの治療剤が、PLK1阻害剤を含む、態様1~22のいずれか一つの免疫療法構築物。
24. PLK1阻害剤がボラセルチブである、態様23の免疫療法構築物。
25. 少なくとも1つの治療剤が、ドセタキセル、ミトキサントロン、またはカバジタキセルのうちの1つまたは複数を含む、態様1~24のいずれか一つの免疫療法構築物。
26. 少なくとも1つの治療剤が、抗EGFR抗体を含む、態様1~25のいずれか一つの免疫療法構築物。
27. 抗EGFR抗体がセツキシマブである、態様26の免疫療法構築物。
28. 少なくとも1つの治療剤が、抗HER2抗体を含む、態様1~25のいずれか一つの免疫療法構築物。
29. 抗HER2抗体がトラスツズマブである、態様28の免疫療法構築物。
30. アジュバントが、免疫刺激活性を有し、CpGオリゴヌクレオチド、CpG配列を含むDNA TLRアゴニスト、非CpG DNA TLRアゴニスト、RNA TLRアゴニスト、アルミニウム塩、抗CD40抗体、融合タンパク質、サイトカイン、小分子TLRアゴニスト、油系アジュバントもしくは界面活性剤系アジュバント、リポ多糖、植物抽出物、またはそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含む、態様1~29のいずれか一つの免疫療法構築物。
31. アジュバント化合物が、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ガーディキモド、ポリI:C、ポリICLC、dSLIM、またはEnanDIMを含む、態様1~30のいずれか一つの免疫療法構築物。
32. アジュバント化合物が、CpGオリゴヌクレオチドを含む、態様1~31のいずれか一つの免疫療法構築物。
33. 態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物と、
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、またはそれらの混合物と
を含む、組成物。
34. 癌の1つまたは複数の症状を低減するために、癌を有する対象に、態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の有効量を投与する工程を含む、癌を処置する方法。
35. 対象が哺乳動物である、態様34の方法。
36. 哺乳動物がヒトである、態様35の方法。
37. 癌の症状を示す細胞を処置する方法であって、
該細胞と、態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の治療有効量とを接触させる工程
を含む、前記方法。
38. 癌の症状を示す対象から得られた細胞を処置する方法であって、
該細胞と、態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の治療有効量とを接触させる工程
を含む、前記方法。
39. 細胞と、態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の治療有効量とをエクスビボで接触させる工程
を含む、方法。
40. 細胞が癌細胞である、態様38または39の方法。
41. 細胞が癌細胞ではない、態様38または39の方法。
42. 細胞が免疫細胞である、態様41の方法。
43. 細胞が不死化される、態様38または39の方法。
44. 少なくとも1つの処置された細胞を対象に戻すように投与する工程をさらに含む、態様37~43のいずれか一つの方法。
45. 過剰増殖性疾患もしくは過剰増殖性病態を有すると診断されたかまたはそのような疾患もしくは病態を発症するリスクが高いと診断された対象を処置する方法であって、
態様33の組成物の有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
46. 対象が哺乳動物である、態様45の方法。
47. 哺乳動物がヒトである、態様46の方法。
48. 過剰増殖性疾患または過剰増殖性病態が、癌、前癌、または癌転移のうちの1つまたは複数を含む、態様45~47のいずれか一つの方法。
49. 過剰増殖性疾患が、黒色腫、肺癌、乳癌、膵癌、脳癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎癌、結腸直腸癌、リンパ腫、結腸癌、または肝癌のうちの1つまたは複数を含む、態様45~48の方法。
50. 投与する工程が、
対象における腫瘍への直接注射、
対象における全身注射、または
対象への局所適用
のうちの1つまたは複数を含む、態様45~49のいずれか一つの方法。
51. 投与工程が、対象へのマイクロニードル適用を含む、態様45~50のいずれか一つの方法。
52. それを必要とする対象において抗癌療法の効果を増強する方法であって、
態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の有効量と、
少なくとも1つの抗癌剤と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
53. 抗癌剤が、化学療法剤または標的療法剤である、態様52の方法。
54. 新生物を有すると診断された対象においてチェックポイント遮断免疫療法の効果を増強する方法であって、
態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の有効量と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
55. 新生物を有すると診断された対象において放射線療法の効果を増強する方法であって、
態様1~32のいずれか一つの免疫療法構築物または態様33の組成物の有効量と、
少なくとも1つの放射線療法と
をそれを必要とする対象に投与する工程
を含む、前記方法。
56. 免疫療法構築物または組成物と抗癌療法とが、連続的にまたは同時に投与される、態様52~55のいずれか一つの方法。
57. 対象が哺乳動物である、態様52~56のいずれか一つの方法。
58. 哺乳動物がヒトである、態様57の方法。
59. 態様1~32のいずれか一つの免疫療法剤と、
抗癌剤と
を含む、キット。
60. 抗癌剤が、化学療法剤、標的療法剤、または免疫チェックポイント阻害剤である、態様59のキット。
【実施例】
【0238】
(X)実施例
実施例1:全身性抗腫瘍免疫をプライミングする癌ワクチン接種のためのデポーになるように腫瘍を操作するためのナノテクノロジーの利用
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、例えば、PD-L1/PD-1、CTLA-4などに対する阻害剤は、診療所で優れた結果を示している(Sharon et al.,Chin J Cancer,33(9):434-44,2014;Buchbinder&Desai,Am J Clin Oncol,39(1):98-106,2016)。免疫チェックポイント阻害剤は、患者自身の免疫系のブレーキを解放して癌と戦い、免疫記憶を提供し、処置が停止した後であっても長期持続性の免疫応答をもたらす。したがって、ICIは、末期癌では、
図1に示すように、化学療法および標的療法よりも恒久的な応答をもたらすことができる。ただし、この処置は、患者の一部(約10~約40%)に対してのみ機能する(Ribas,Update Cancer Therapeutics,2(3):133-139,2007;Topalian et al.,N Engl J Med,366(26):p.2443-54,2012)。応答の欠如は、典型的には、既存の抗腫瘍免疫(例えば、腫瘍に対するエフェクター(CD8+)T細胞)の欠如に起因する(Santarpia&Karachaliou,Cancer Biology&Medicine,12(2):74-78,2015;Tumeh et al.,Nature,515(7528):568-571,2014)。したがって、抗腫瘍CD8+T細胞レパートリーをプライミングする能力は、免疫療法に不可欠である。
【0239】
インサイチュー腫瘍ワクチン接種は、免疫刺激の存在下で腫瘍が局所的に死滅し、腫瘍抗原を放出し、これらが一緒になって腫瘍に対する全身適応免疫をプライミングする戦略である(Pierce et al.,Hum Vaccin Immunother,11(8):1901-9,2015)。この戦略は、従来の癌ワクチン開発における腫瘍抗原を事前に同定する必要性を回避するため、非常に有望である。これはまた、腫瘍抗原の固有のセットが放出され、患者ごとに特異的免疫をプライミングするため、個別化療法である。
【0240】
本明細書において提供される、癌の免疫療法アプローチは、腫瘍抗原の個別化されたセットのデポー(インサイチュー腫瘍ワクチン接種)として患者自身の腫瘍を利用する。本明細書において記載されるシステムの例は、AIRISE(Augmenting Immune Response and Inhibiting Suppressive Environment of Tumors)と呼ばれる。AIRISEは、単独で、またはチェックポイント阻害剤と一緒に使用した場合に患者の生存転帰を改善することを目的としている(
図1)。提供される粒子(免疫療法構築物)は、アジュバント(例えば、CpG)と、抗原放出を引き起こすおよび/または免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する1つまたは複数の化合物(siRNA、薬物、小分子など)(例えば、ドセタキセル、STAT3に対するsiRNA)とを担持する。提供される免疫療法構築物を用いて腫瘍部位を処置すると(例えば、局所腫瘍内注射を介して、または全身送達による腫瘍ホーミングを介して)、免疫刺激(アジュバントによって提供される)の存在下で腫瘍抗原が放出され、適応免疫が開始される。同時に、免疫抑制性腫瘍微小環境を調節する化合物を同じナノ粒子上に同時送達し、インサイチュー腫瘍ワクチン接種効果を最大化することができる。腫瘍抗原は、ナイーブT細胞に抗原を提示するAIRISE活性化抗原提示細胞(APC)によって取り込まれ得る。T細胞(これらの腫瘍抗原に対する)は、プライミングされ、エフェクターT細胞(リンパ節内または腫瘍部位内のいずれかで)になるように活性化され、全身で増殖する。エフェクターT細胞は、体内のどこに位置する場合でも、同じ腫瘍抗原を共有する腫瘍(例えば、局所処置された腫瘍、および身体の他の場所の未処置の転移性腫瘍の両方)に特異的にホーミングする。細胞傷害性T細胞による癌細胞の死は、さらに多くの腫瘍抗原を放出し、ポジティブフィードバックループにおける抗腫瘍T細胞生成の過程を増幅する。特に、処置が局所的であっても(例えば、腫瘍内注射)、腫瘍部位で局所的に誘導されたワクチン接種効果は、全身性の長期持続性抗腫瘍免疫応答を生じさせる(
図2)。例えば、AIRISEは、黒色腫病変に直接注射することができ、処置は、肺または肝臓内の注射された腫瘍および未処置の転移性黒色腫腫瘍の両方に影響を及ぼし得る。
【0241】
特異的腫瘍抗原を認識するように訓練されたこれらの抗腫瘍T細胞は、注射/処置部位および体内の他の場所の両方で腫瘍を制御する(
図2)。カーゴの組合せは、AIRISEを作製するために任意の種類のマイクロ/ナノ粒子に適用することができる。以下の実施例は、確立されたメソポーラスシリカナノ粒子(米国特許出願公開第2017/0172923号)を概念実証として利用する。
図11に示す別の例では、CpGおよびsiSTAT3によるインサイチューワクチン接種のために1.1ミクロンの流体力学的サイズを有するカチオン性脂質粒子を利用したところ、
図7と同様の結果がもたらされ、様々なタイプおよびサイズの粒子を使用することができることが示唆される。
【0242】
方法および材料
ナノ粒子の合成および特性評価:以前に記載されたように、メソポーラスシリカ系ナノ粒子を合成した(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015;Ngamcherdtrakul et al.,International J Nanomed,13:4015-4027,2018)。要約すると、ゾルゲル合成によってメソポーラスシリカナノ粒子(MSNP)を合成した。ポリエチレンイミン(PEI)およびポリエチレングリコール(PEG)によって、MSNPコアを層ごとに被覆した。また、以前に説明されたように、オリゴヌクレオチド送達の効果および安全性を高めるために、MSNP上のPEIを架橋した(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)。架橋されたPEIと、PEGで被覆されたMSNPは、以後、この実施例では「NP」と呼ばれる。
【0243】
NP上へのカーゴ負荷:10分の混合によって、ナノ粒子(NP)上にsiRNAおよびCpG(ODN 1826;SEQ ID NO:7)を静電的に負荷したが、さらに短い時間(2~5分)も効果的であった。水溶液(例えば、PBS)中、室温で4時間混合することによって、ミトキサントロンもNPに負荷した。遠心分離によってカーゴ負荷NPを分離する際に上清中に遊離カーゴ分子が存在しないことによって確認されるように、完全な結合様式で負荷を行った。分光光度法によってカーゴ含有量を測定した。siRNAをDy677色素(Dharmacon)とコンジュゲートさせ、蛍光シグナルによって定量した。Nanodrop Spectrophotometryを用いてCpGを測定した。結合していないsiRNAおよびCpGもゲル電気泳動によって測定することができた。658nmでの吸光度測定によって、ミトキサントロン(MTX)を定量した。Zetasizerによって、PBS中の流体力学的サイズについて、CpGおよびsiRNAを含む最終NPを特性評価した(
図26および
図29)。
【0244】
PEIが結合する前に、ドセタキセルをナノ粒子上に過剰に負荷した。要約すると、PEIが結合する前に、MSNPをドセタキセルのエタノール溶液と一晩混合した。結合していないドセタキセルおよびPEIをPBS中で洗い流した。次いで、以前の方法(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015;Ngamcherdtrakul et al.,International J Nanomed,13:4015-4027,2018)に従って、PEI-NP(DTX)をPEGとコンジュゲートさせた。最終生成物は、出発DTX対MSNP質量比0.2~0.8で、0.5~1.7重量%のDTXを含有する。それらは、100nmのDLSサイズを有する。
【0245】
B16F10両側同所性マウス黒色腫腫瘍モデル:Charles River NCIコロニー(Wilmington,MA)から、6週齢の雌C57BL/6マウスを得た。各マウスの左肩(局所、250,000個の細胞)および右肩(遠位、100,000個の細胞)に、B16F10細胞を皮内移植した。移植後8日目に、試験化合物/構築物を左(局所)腫瘍のみに腫瘍内注射し、右(遠位)腫瘍は未処置のままにした。特に明記しない限り、試験化合物/構築物を3日ごとに3回投与した。1~2日ごとにVernier Caliperを用いて、マウスの局所腫瘍および遠位腫瘍の両方の負荷を測定し、V=0.5×長さ×幅2によって腫瘍体積を計算した。生存もモニタリングした。総腫瘍負荷が2000mm3を超えた際に、マウスを殺処分した。
【0246】
NP処置を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせる試験のために、NP化合物の腫瘍内処置と同じ日に、PD-1 Ab(200μg/マウス)とCTLA-4 Ab(100μg/マウス)とのカクテルを腹腔内投与した(3日ごとに3回投与)。
【0247】
治療効果が免疫媒介性であることを確認するために、試験化合物/構築物を用いて処置したマウスに、最初の腫瘍内処置の1日前から開始し、試験全体を通して継続して、CD8抗体(200μg/マウス)を腹腔内注射した。
【0248】
免疫プロファイリングのために、当技術分野において確立されたプロトコルに従って、局所腫瘍および遠位腫瘍ならびにそれらのそれぞれの排出リンパ節を採取し、単一細胞に処理した。次いで、採取した細胞を、様々な表面タンパク質(例えば、CD45、CD8、CD4、CD44、TIM3、PD-1、CD39、LAG3、CD3、CD19、CD11b、CD11c、MHCII、CD80、Ly6C、Ly6G、F4/80、CD206)について、様々な免疫細胞集団およびそれらの状態を一緒に同定する蛍光標識抗体のセットを用いて染色した。製造業者のプロトコル(BD Biosciences)に従って、特定の細胞内タンパク質(例えば、Ki67、FoxP3、STAT3)を染色することもできる。典型的には、BD Fortessa(4つのレーザー、最大18のパラメーター)によって、2つの別個の抗体パネル(リンパ系および骨髄系)に対してフローサイトメトリーを行った。マルチカラーフローサイトメトリー分析の堅牢性を保証するために、当技術分野において公知の確立されたプロトコルに従って、蛍光補償を行った。腫瘍微小環境内のAIRISE取込み試験(
図18)のために、前述のように、両側性B16F10腫瘍を担持するマウスにAIRISE-02(siSTAT3の代わりに、Alexa488色素コンジュゲートsiSCRを負荷)を腫瘍内注射した。処置の2時間後、腫瘍(処置および未処置)を採取し、単一細胞に処理し、本明細書において記載される抗体のパネルを用いて表面染色した。フローサイトメトリーによって、腫瘍内の様々な細胞集団内のAIRISE-02の存在を分析した。
【0249】
LLC-JSP転移性マウス肺腫瘍モデル:LLC-JSP(200,000個の細胞)を6週齢のC57BL/6マウスに静脈内(尾静脈)注射した。癌細胞注射の3日後、マウスを無作為に群分けし、3日ごとに試験化合物/構築物を用いて合計4回処置した。このモデルでは、AIRISE-02を腫瘍内ではなく尾静脈から静脈内注射した。
【0250】
CT26両側異所性腫瘍モデル。250Kおよび100KのCT26(マウス結腸直腸癌)細胞を各マウス(Balb/c)の両側腹部に移植した。腫瘍移植の15日後、試験化合物/構築物を用いてマウスを処置した。
【0251】
4T1両側同所性腫瘍モデル。100Kおよび40Kの4T1細胞を各マウス(Balb/c)の両側乳房脂肪体に移植した。腫瘍移植(指定の通り)の8または11日後、試験化合物/構築物を用いてマウスを処置した。
【0252】
結果および考察
CpG負荷ナノ粒子は、遊離CpGよりも良好なアジュバント特性を示す
C57BL/6マウス(n=3/群)のマウスの足蹠1つに、遊離CpG 4μg、またはNP上のCpG 4μgを注射した。注射の24時間後、局所排出リンパ節(DLN)および非排出リンパ節(NDLN)を採取し、フローサイトメトリーによってCD11c、MHCIIおよびCD80の発現について分析した。CpG負荷ナノ粒子は、遊離CpGよりも有意に良好に局所DLN内の樹状細胞を活性化した(
図3)。CpGナノ粒子はまた、いくつかの治療用カーゴを同じ部位に同時送達する可能性を高めている。さらに、例示的なナノ粒子は、mRNAレベルで腫瘍の免疫抑制特性を調節することができるsiRNAの送達について高度に最適化された。免疫療法効果を有益にプライミングするために、腫瘍免疫抑制のいくつかの特徴に対処するsiRNAまたは他の標的分子とCpG(または別のアジュバント)を同時送達することが提案されている。
【0253】
アジュバント負荷ナノ粒子は、インサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導する
インサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導するCpG-NPの能力を評価するために、2つの(両側)黒色腫腫瘍を担持するマウスを使用した。2つの腫瘍のうちの1つのみに処置を腫瘍内注射し、他方の腫瘍は未処置のままにした。両腫瘍の増殖をモニタリングした。CpG-NPの腫瘍内処置は、全身免疫応答を首尾よくプライミングし、強力なアブスコパル効果(局所処置腫瘍および遠位未処置腫瘍の両方の阻害)を誘導した(
図4)。その結果、生存期間も延長される。本明細書において記載される免疫療法構築物技術は、インサイチューワクチン接種を誘導するため、腫瘍抗原を複合体のいずれかの上または中に負荷する必要はない。
【0254】
同じNP上の薬物およびCpGの同時送達は、効果的なインサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導することができる
インサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導する化学療法薬の腫瘍内注射は、広く検討されていない。実際、化学療法薬およびアジュバントを含有するナノ粒子の腫瘍内注射はこれまで行われていない。これは、活性化された免疫療法応答を無効にし得る、免疫細胞に対する化学療法薬の潜在的な毒性に起因する。
【0255】
驚くべきことに、同じナノ粒子上の化学療法薬ドセタキセル(DTX)およびCpG(CpG-DTX-NP)の同時送達は、免疫細胞に対する潜在的な化学療法の毒性にも関わらず、CpG-NPのインサイチューワクチン接種効果を悪化させなかった(
図5)。実際、CpG-DTX-NPは、CpG-NPよりも良好に局所処置腫瘍を制御することができる。同時に、CpG-DTX-NPは、依然として、遠位腫瘍の制御およびマウスの長期生存によって示されるように、CpG-NPよりもわずかに良好なインサイチューワクチン接種効果を誘導する。また、DTX-NPは顕著な活性を示さない。
【0256】
同じナノ粒子上の別の化学療法薬ミトキサントロン(MTX)およびCpGの同時送達もまた、CpG-NPのインサイチューワクチン接種効果を誘導した(
図16)。
【0257】
免疫細胞分析は、腫瘍およびリンパ節内の活性化CD8+T細胞の有意な増加を示す
処置後(
図5A)、最初の投与後7日目に、局所腫瘍および遠位腫瘍内のT細胞状態を特性評価した。生理食塩水と比較して、CpG-DTX-NP(
図6では「NP」と短縮されている)による処置は、以下のような細胞傷害性CD8+T細胞の望ましい特徴をもたらした:処置された腫瘍および遠位腫瘍内のPD1の比較的低い発現(
図6A)、処置された腫瘍内のCD8+T細胞の比較的高い増殖(
図6B)、処置された腫瘍内のCD8+T細胞の比較的少ない消耗(
図6C)、および制御性T細胞よりも高いCD8+T細胞の比(
図6D)。同様に、処置された腫瘍の排出リンパ節(DLN)内に見られたCD8+T細胞の方が多く(
図6E)、このCD8+T細胞の方が活性が高かった(
図6F)。両腫瘍のDLN内では、活性化CD8+T細胞の方が増殖性が高かった(Ki67マーカーによる)(
図6G)。増殖性および活性が比較的高いCD8+T細胞が非DLN内で観察されたことから(
図6H)、T細胞が局所リンパ節の外側(例えば、血液中)に輸送され、処置のアブスコパル効果に寄与したことが示唆された。これらのT細胞特性は、本明細書において記載されるナノ粒子が有益な抗腫瘍T細胞レパートリー(非消耗状態)を増加させ、全身免疫を生じさせることができることを示している。本発明者らのNP上のDTXは腫瘍細胞を死滅させて腫瘍抗原を放出したが、CD8+T細胞に害を及ぼさず、むしろ増殖を増加させた。
【0258】
同じNP上のsiRNAおよびCpGの同時送達は、効果的なインサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導することができる
腫瘍内注射を介してアジュバントおよびsiRNAを同時送達するために単一NPを初めて使用した。ナノ粒子による免疫原性化学療法薬、腫瘍抗原またはアジュバントの送達は以前に行われているが、siRNAはナノ粒子上のアジュバントと同時送達されたことはない。
【0259】
NP上のCpGオリゴおよびsiSTAT3の腫瘍内同時送達は、黒色腫マウスモデルにおいて全身性抗腫瘍免疫応答を誘導した
siSTAT3(2重量%)をNPのメソポーラスシリカコア内に負荷し、CpGオリゴ(10重量%)を外面(カチオン性ポリマー層に結合しているが、PEG下で酵素分解から保護されている)に負荷した。腫瘍抗原(既に腫瘍内にあるか、処置時に癌死によって放出される)が、CpGによる免疫刺激の存在下で抗腫瘍免疫をプライミングすることが提案されている。siSTAT3は、免疫抑制性腫瘍環境を調節し、免疫療法応答を増幅する。これを実証するために、マウスの両側性B16F10黒色腫腫瘍モデルを対象として、siSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02)を評価した(
図7A)。腫瘍移植の8日後に、腫瘍の1つ(局所)に合計3回、3日ごとにAIRISE-02を注射した。AIRISE-02は、マウスの生存率を有意に改善し(
図7D)、局所腫瘍(処置、
図7B)および遠位腫瘍(未処置、
図7C)の両方を減少させ、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の成功と、処置のアブスコパル効果(処置/注射部位を越える部位での効果)とが示唆された。
図7B~
図7Cはまた、siSTAT3-CpG-NPが、CpG-NPおよびsiSTAT3-NPよりも優れていることを示す。
【0260】
別の実験では、
図7と同じ方法でAIRISE-02(siSTAT3-CpG-NP)を用いてマウスを処置した。3回目の投与の1日後(または1回目の投与の7日後)にマウスを殺処分した。腫瘍および関連する排出リンパ節(DLN)を採取し、マルチカラーフローサイトメトリーによる免疫プロファイリングに供した。
図17は、AIRISE-02が、局所腫瘍(処置)および遠位腫瘍(未処置)ならびに関連するDLNの両方に対して有意に高いCD8/Treg比をもたらしたことを示しており(AIRISE-02対生理食塩水についてp<0.05)、インサイチュー腫瘍ワクチン接種の成功が確認された。患者の腫瘍内では、制御性T細胞(Treg)は典型的に上昇し、CD8+T細胞活性を含む抗腫瘍免疫応答を抑制する。したがって、さらに高い腫瘍内CD8/Treg比が望ましく、癌患者の長期生存の1つの指標である。CpG-NPは、
図7のAIRISE-02よりも低い効果と一致して、この時点で腫瘍内またはリンパ節内のいずれでもCD8/Tregを有意に増加させなかった。さらに、AIRISE-02処置マウスでは、リンパ節内のエフェクターCD8+T細胞は、他の対照群よりも増殖性が高かった(Ki-67)(
図17C)。
【0261】
別の実験では、siRNA-CpG-NP(AIRISE-02)を腫瘍内注射することによってマウスを処置した(
図7と同様のモデル)。Alexa-488を用いてsiRNAをタグ付けした。
図18は、腫瘍内注射の2時間後にsiRNA-CpG-NPがTME内の細胞の15%によって取り込まれたのに対して、以前の研究では、CpG-siSTAT3コンジュゲートが、腫瘍内注射の1時間後および3時間後にTME内の細胞の2%によって取り込まれたに過ぎなかったと報告されたことを示している(Kortylewski et al.,Nature biotechnology,27(10):925-932,2009)。TMEが80~90%の癌細胞からなるという本発明者らの知見に従って、siRNA-CpG-NPを取り込んだ細胞のうち、80%が癌細胞(CD45-)であり、20%が免疫細胞(CD45+)であった。対照的に、前述のCpG-siSTAT3コンジュゲートは、処理についてCpGに依存し、TLR9-癌細胞ではなくTLR9+細胞のみによって主に取り込まれる。癌細胞および免疫細胞の両方へのsiSTAT3およびCpGの送達の方が望ましい。免疫細胞のうち、骨髄系細胞(CD45+CD3-CD19-)がsiSTAT3-CpG-NPを最も多く取り込んだ。これらには、マクロファージ(F4/80+)およびDC(CD11c+MHCII+)が含まれた。NPは、遠位未処置腫瘍では検出されず(図示せず)、未処置腫瘍へのNPの浸出は示されなかった。
【0262】
また、AIRISE-02の治療作用は、治療薬の直接的な細胞傷害効果ではなく、免疫応答に依存することも確認された。抗CD8抗体を使用してマウスからCD8を枯渇させた場合(
図8A)、siSTAT3-CpG-NPの治療応答は有意に減少した(
図8B~
図8D)。これは、治療効果が免疫媒介性であったことを示している。
【0263】
さらに、NP処置では比較的多くのCD8+T細胞レパートリーが生じるため、この処置をチェックポイント阻害剤処置と有益に組み合わせて抗癌効果を高めることができることが提案されている。これを、診療所で現在使用されている2つのチェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体)とともにsiSTAT3-CpG-NP(AIRISE-02、
図9A)を使用することによって試験した。NP処置(2つの腫瘍のうちの1つのみへの腫瘍内)は、生存率に関してチェックポイント阻害剤カクテル(腹腔内投与)と同様の効果を有する(
図9D)。AIRISE-02とチェックポイント阻害剤カクテルとの組合せは、局所腫瘍(
図9B)および遠位腫瘍(
図9C)ならびにマウス生存率(
図9D)の制御に関して効果を実質的に改善した。注目すべきことに、マウス8匹のうち5匹では完全治癒が達成されたが(現在まで10ヶ月間腫瘍が存在しないままである)、AIRISE-02またはICI単独ではマウスは治癒しなかった(
図10C)。B16F10モデルに対する治癒効果は優れていると考えられ、これは、このモデルが文献では高悪性度であることが知られており、腫瘍移植の1週間後に処置が開始された場合、以前のCpGベースのワクチン+ICIでは治癒効果が見出されないためである(予防的状況では治癒効果が報告されることもある)。治癒したマウスの別の一群では、最後の処置の3ヶ月後にB16F10細胞を移植することによって腫瘍の再負荷を行った。治癒したマウスでは癌の増殖が拒絶され、AIRISE+ICIの長期持続性抗腫瘍効果(記憶効果)の成功が示唆された。
【0264】
NP上のCpGオリゴおよびsiSTAT3の全身同時送達は、マウスの生存期間を延長し、潜在的な免疫プライミングおよび活性化が示唆された
AIRISE-02は、腫瘍内投与に加えて、腫瘍内注射にとって容易に到達可能でない癌、例えば肺癌を処置するために全身投与することができる。
図10Aは、ルイス肺癌(LLC-JSP)腫瘍を担持するマウスの尾静脈を介したAIRISE-02の処置スケジュールを示す。長期生存が観察され(
図10B)、抗癌免疫療法効果の成功が示唆された。
【0265】
カチオン性脂質によるCpGオリゴおよびsiSTAT3の腫瘍内同時送達も、インサイチュー腫瘍ワクチン接種を誘導する
siSTAT3およびCpGをカチオン性脂質(Dharmacon製のDharmafect)と混合して脂質ナノ粒子を形成し、これを
図7と同じ方法でマウスに投与した。
図11A~
図11Cは、メソポーラスシリカナノ粒子を用いた場合に観察された(
図7)のと非常に類似した応答が、カチオン性脂質を用いて達成されたことを示す。これは、腫瘍内注射では、多様なタイプのナノ粒子を使用して、本明細書において記載されるカーゴの組合せを用いて治療薬を作製することができることを示している。
【0266】
NPは、siRNAをCpGとともに癌細胞および免疫細胞の両方に送達し、標的遺伝子のノックダウンをもたらすことができる
B16F10癌細胞については
図12A、J774マクロファージについては
図12B、およびマウス初代DCについては
図12Cに示すように、NPは、siRNAを癌細胞および免疫細胞の両方に送達し、STAT3遺伝子をノックダウンすることができる(一例として)。興味深いことに、siSCR-NPもDC内でSTAT3レベルを低下させることが見出された(
図12C対未処置を参照)。細胞生存率が未処置対照と対比して変化せず(
図34)、STAT3 mRNAがハウスキーピングmRNAによって正常化されたため、これはナノ粒子毒性によって引き起こされなかった。いかなる説明にも拘束されるものではないが、抗酸化剤が、STAT3活性化を含む免疫抑制経路に対抗することが以前に報告されたため(Yoon et al.,Autophagy,6(8):1125-1138,2010)、これは、メソポーラスシリカナノ粒子の抗酸化特性に起因し得ることが提案されている。一方、Dharmafect(Horizon Discovery製の、カチオン性脂質(非抗酸化剤)に基づく市販のトランスフェクション剤)は、DC内でSTAT3発現を増加させ(
図35)、望ましくない免疫抑制性TMEをもたらし得ることが見出された。これは、Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015に記載されている抗酸化剤メソポーラスシリカナノ粒子プラットフォームの使用が、STAT3媒介経路を制御するために脂質ナノ粒子よりも有利であり得ることを示唆している。
図19はまた、同じsiSTAT3配列がイヌ、マウスおよびヒトの細胞内でSTAT3をノックダウンすることができるほどSTAT3が保存されており、マウスの試験からイヌおよびヒトの試験への直接的な変換が促進されることを示す。したがって、本出願を通して、種全体にわたって同じsiSTAT3配列を使用した。
【0267】
癌細胞、DCおよびマクロファージをトランスフェクトし、STAT3などの特定の遺伝子を減少させる能力は、本明細書において記載される免疫療法構築物を免疫細胞のエクスビボ操作に使用することができることを示唆している。そのようなエクスビボで操作された免疫細胞は、治療効果および免疫応答(例えば、癌細胞を死滅させる)のために患者に戻すように投与することができる。細胞は、処置される患者、または異なる健常ドナーに由来し得る(例えば、幹細胞およびその誘導体(Senju et al.,Int J Hematol,91(3):392-400,2010))。全細胞癌ワクチンを作製するために、本発明者らの免疫療法構築物を用いてエクスビボで(追加の薬剤の有無に関わらず)癌細胞を処理してもよい(Keenan et al.,Int J Hematol,91(3):392-400,2010;Goldstein et al.,Int J Hematol,117:118-127,2011)。
【0268】
また、AIRISE-02(siSTAT3-CpG-NP)が、結腸癌(
図20)および乳癌(
図21および
図22)を含む他の腫瘍モデルでも効果を有することが見出された。特に、本発明者らは、これらの2つのモデルでは、ICI(全身i.p.投与)と各マウスの2つの腫瘍のうちの1つに局所的に投与されるAIRISEとを組み合わせると、AIRISE単独またはICI単独のいずれかよりも良好な効果がもたらされることを示す。
【0269】
AIRISE-02の安全性プロファイル。マウスおよびサルの両方を対象としてAIRISEの安全性を評価した。マウスへのAIRISE-02の筋肉内注射は、マウスの皮膚に対して毒性を引き起こさないことが見出された(浮腫も紅斑も認められず、
図23)。マウスを生理食塩水を用いて処置した場合と対比してAIRISE-02を用いて処置した場合、体重、ならびに腎機能および肝機能の血清バイオマーカーにも変化はなかった(
図24)。また、サルを対象としてAIRISE-02を試験し、安全であることが分かった。具体的には、1週間ごとに用量漸増様式(1、2.8および9.5mg/kg、n=3匹/群、
図25)でカニクイザルにAIRISE-02を皮下投与した。動物3匹はいずれも、予定された試験終了まで生存した。臨床所見に対する試験物関連の影響はなかった。皮膚の所見に関して、低用量では、薬剤に関連する皮膚の所見はなかった。中用量では、試験物に関連する浮腫(グレード2~3)が投与後48および/または72時間の時点で認められたが、7日後に回復した。高用量では、試験物に関連する浮腫(グレード1~3)および紅斑(グレード1)が、投与後24時間という早い時間から始まって7日間(最後の観察)にわたって継続して動物全頭に認められたが、懸念には及ばなかった。体重に対する試験物関連の影響はなかった。血液学パラメーターに対する試験物関連の影響はなかった。凝固パラメーターに対する試験物関連の影響はなかった。臨床化学パラメーターに対する試験物関連の影響はなかった。
【0270】
実施例2:免疫療法構築物(NPなど)に、効果を失うことなく同時に2種類のsiRNAを負荷することもできる
本明細書において記載される免疫療法構築物はまた、siRNAおよびCpGの同時送達に加えて、複数のsiRNAを同時送達することもできる。例えば、
図13は、NP(本質的に実施例1に記載されるように調製)にHER2またはSTAT3に対する2つの個々のsiRNAを負荷した場合、各タンパク質の特異的ノックダウンが達成されたことを示す。
図13はまた、両siRNAを同じNPバイアルに負荷した場合(T-siHER2/siSTAT3-NPを参照)、2つのタンパク質の同様のノックダウンが、それらを2つの別個のNPバイアルに負荷した場合と同様に達成されたことを示す(T-siHER2-NP+T-siSTAT3-NPを参照)。別の例として、
図36は、黒色腫モデルに対する免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強する点での、siCXCR4、siSTAT3およびCpG(siSTAT3/siCXCR4-CpG-NP)を負荷したNPの効果を示す。
【0271】
これは、効果を失うことなく複数の種類のオリゴヌクレオチドを負荷する際の本明細書において記載される免疫療法構築物粒子の汎用性を示す。本明細書において記載されるナノ粒子送達はまた、それぞれが癌細胞を死滅させることができる、および/または免疫抑制の複数の局面を調節することができる複数のsiRNAの負荷を可能にするため、有益である。
【0272】
図13に示すデータは、NPが、siRNA、または2つ以上の異なるsiRNAのカクテルを送達することができることを明確に示しており、siRNAは、癌細胞に対して細胞傷害効果をもたらすか、免疫抑制性腫瘍微小環境を無効にするか、免疫刺激配列を含むか、これらの特徴の任意の組合せを有し得る。
【0273】
実施例3:細胞型特異的/標的免疫療法構築物
siRNAは、任意の遺伝子を正確かつ効果的に調節することができるため、大きな可能性を有する。免疫療法構築物(AIRISE)は、特異的送達のために本発明者らのナノ粒子上の抗体(または他の標的化剤)を利用することによって、異なる免疫抑制経路または異なる免疫細胞集団に対処することができる。本明細書において提供されるNPを含む免疫療法構築物は、特定の細胞集団、例えば腫瘍内の特定の細胞への標的送達のための標的化剤とコンジュゲートさせることができる。抗PD-L1抗体などのいくつかの抗体は、免疫抑制経路の標的化剤およびモジュレーターの両方として機能し得る。
【0274】
図14A~
図14Cは、NPのそのような標的化の例を提供する。セツキシマブ(抗EGFR抗体)とコンジュゲートさせたNPは、低EGFR細胞よりもEGFR+細胞に対して優先的な取込みを示す(
図14A~
図14B)。同様に、トラスツズマブ(抗HER2抗体)とコンジュゲートさせたNPは、低HER2細胞よりもHER2+細胞への優先的な取込みを示す(
図14C)(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015)。
【0275】
このタイプの標的化は、本明細書において記載されるように、アジュバントおよび活性剤が負荷されたNPでも等しく良好に作用すると考えられる。
【0276】
実施例4:多剤ナノ粒子による処置
この実施例では、PLK1阻害剤(ボラセルチブ)およびCpGを負荷した、本質的に実施例1のように調製されたメソポーラスシリカナノ粒子上に、PD-L1抗体(BioXcell製のマウスPD-L1)をコンジュゲートする。PD-L1抗体は、ICIおよび腫瘍ホーミング剤(標的化剤)の両方として機能する。
【0277】
方法
PEIが結合する前に、ボラセルチブ(PLK1阻害剤;iPLK1)をナノ粒子上に過剰に負荷した。要約すると、PEIが結合する前に、MSNPをボラセルチブのエタノール/DMSO溶液と一晩混合した。結合していないドセタキセルまたはボラセルチブおよびPEIをPBS中で洗い流した。次いで、以前に公開された方法(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015;Ngamcherdtrakul et al.,International J Nanomed,13:4015-4027,2018)に従って、PEI-NP(iPLK1)をPEGとコンジュゲートさせた。最終生成物は0.5~2重量%のiPLK1を含有する。それらは、100nmのDLSサイズを有する。PD-L1抗体を含有する構築物(p-NP)については、PD-L1抗体をチオール化し、本発明者らが以前に公開した方法(Ngamcherdtrakul et al.,Advanced Functional Materials,25(18):2646-2659,2015;Ngamcherdtrakul et al.,International J Nanomed,13:4015-4027,2018)に従って、ナノ粒子上のPEG層の末端にコンジュゲートさせた。
【0278】
LLC-JSP両側性マウス肺腫瘍モデル:Charles River NCIコロニー(Wilmington,MA)から、6週齢の雌C57BL/6マウスを得た。各マウスの左腹部(局所、100,000個の細胞)および右腹部(遠位、40,000個の細胞)に、LLC-JSP細胞を皮下注射した。移植後12日目に、試験化合物/構築物を左(局所)腫瘍のみに腫瘍内注射し、右(遠位)腫瘍は未処置のままにした。特に明記しない限り、試験化合物/構築物を3日ごとに3回投与した。1~2日ごとにVernier Caliperを用いて、マウスの局所腫瘍および遠位腫瘍の両方の負荷を測定し、V=0.5×長さ×幅2によって腫瘍体積を計算した。生存もモニタリングした。総腫瘍負荷が2000mm3を超えた際に、マウスを殺処分した。
【0279】
結果
腫瘍接種後12日目に、マウスの左(局所)腫瘍に対して、生理食塩水、PD-L1抗体被覆ナノ粒子(p-NP)、PLK1阻害剤を負荷したナノ粒子(iPLK1-NP)、PLK1阻害剤を負荷したp-NP(p-iPLK1-NP)、またはPLK1阻害剤およびCpGを負荷したp-NP(p-iPLK1-NP-CpG)の腫瘍内処置を行った(一方、遠位腫瘍は未処置のままであった)。50μl中0.5mgのNP(iPLK1 2.5μg、PD-L1抗体20μg、CpG 20μg)を3日ごとに合計3回投与した。免疫療法構築物は、CpGを含まない同じ免疫療法構築物を上回ってマウスの生存期間を延長した(
図15)。免疫療法構築物はまた、それぞれナノ粒子上のものの5倍の濃度で投与された遊離PD-L1抗体およびボラセルチブよりもはるかに効果的であった。アジュバント(CpG)を同じNP上に組み込むことにより、生存率がさらに改善された。例えば、本発明者らは、p-iPLK1-NP上へのCpGの組込み(p-iPLK1-NP-CpGと呼ばれる)が、マウス7匹のうち2匹の生存率を有意に改善し、マウス1匹が腫瘍を完全に有しないことを見出した。
【0280】
実施例5:局所製剤、およびAIRISEの適用
本明細書において開示される免疫療法構築物は、局所製剤に製剤化することができる。当技術分野において公知のいくつかのビヒクル、例えば、Aquaphor(軟膏系)およびCarbopol(ゲル系)を構築物と混合することができる。熱または界面活性剤(例えば、乳化剤としてのポリソルベート80(Tween 80))を使用して、ビヒクルとAIRISEの水性懸濁液とのさらに良好な混合を可能にすることができる。一例として、10重量%のTween-80が、ナノ粒子からのsiRNAの早期漏出を引き起こさないことを確認した。また、2.5重量%のTween-80が、混合物を55℃に加温した際にsiRNA-NPとAquaphorとの混合を増強するのに十分であることが示された。
【0281】
浸透を同時に促進する方法、例えば、超音波およびマイクロニードルローラー(例えば、0.5mm~1.5mmの範囲のニードル高さを有するDermaroller(登録商標))を使用することができる。ブタ皮膚(
図30)およびマウス(
図31)に対して試験した場合、0.5mmという短いニードル高さを有するマイクロニードルを適用すると、局所siRNAナノ粒子製剤の浸透を増強することができる。
【0282】
図30は、ヒト皮膚と厚さが類似しているブタ皮膚に対して試験した場合、マイクロニードルローラーが、siRNAナノ粒子構築物の浸透を増強することを示している。ブタ皮膚を製剤(Dy677-siSCR-NPのAquaphor溶液)とともに1.5時間インキュベートした(37℃;5%CO2)。1.5時間後、処理領域から皮膚パンチを採取し、標準的な手法を使用して蛍光イメージングのために処理した。マイクロニードルローラーによる皮膚浸透の顕著な増強が観察された。ローラーを用いずsiRNA-NPのAquaphor溶液を投与した場合、siRNAシグナル(矢印)はブタ皮膚の外面に限定されたが、本発明者らは、マイクロニードルの適用前に表皮を越えて真皮層に至るsiRNAシグナル(矢印)を観察した(
図30)。
【0283】
図31は、マイクロニードルローラーが、siRNA-NPの局所送達を増強することを示している。まず、処置の1日前にマウスを剃毛した。Dy677-siSCR-NP(0.72nmol siRNA)を100μLの2.5%Tween-Aquaphorと混合した(適用1回当たり)。処置の直前に、真皮マイクロローラーを背部の片側のみに4方向に一定して適用し、他方の側は前処理しなかった。比較のために、マイクロニードル前処理の有無に関わらず、混合物を剃毛領域(約2cm
2の適用領域)に適用した。1.5時間の処理時間後、処理した皮膚試料を採取し、イメージングのために処理した。
【0284】
図32は、マイクロローラー+局所siRNAナノ構築物適用の3日後に得られた遺伝子ノックダウンを示す。生理食塩水処置群と対比して、siEGFR-NP群では55%のEGFRノックダウン(*p<0.05)(
図32A)が観察された。比較すると、siEGFR-NPの1回の皮内注射(0.72nmolの同じsiEGFR用量)は、生理食塩水処置群と対比して40%のEGFRノックダウンをもたらした(
図32B)。
【0285】
AIRISE-02のマイクロニードル形態。
図33に示すように、マイクロニードル製造について、デキストラン、アミロペクチン、PVP、PEG、メチルセルロース、キトサン、または当技術分野において公知の他のポリマーもしくは化合物に基づく溶解性マイクロニードルの使用を検討し、この溶解性マイクロニードルの使用は、無痛の在宅治療を可能にし、高いニードル密度(ニードル100本/1cm
2)に起因してAIRISE-02を送達するのに非常に効果的である。例(
図33)として、Dy677コンジュゲートsiRNAを負荷したNPを含有するデキストラン溶液(300mg/ml水溶液)をマイクロニードル型枠上に流延した。溶液を遠心分離するか真空にして、型枠を密に充填した。マイクロニードルを空気、デシケーター、真空オーブン、冷蔵庫またはそれらの組合せによって乾燥させ、型枠から取り出した。ニードルの高さは、型板および最適化に応じて300~800ミクロンまで変化させた。siRNA-NPをこれらのニードルアレイに首尾よく負荷し(約0.5nmol siRNA/アレイで)、ニードルはブタ皮膚への適用後5分以内に完全に溶解した。マイクロニードルの成分を変化させることにより、異なる溶解時間を操作することができる。異なる型板を用いて、異なる形状および形態のマイクロニードルパッチを製造することもできる。
【0286】
実施例6:異なるナノ粒子材料を使用して、開示されるカーゴの組合せを送達し、同様の免疫療法効果をもたらすことができる
一例として、siSTAT3およびCpGをカチオン性脂質粒子(Dharmafect;市販品)上に負荷し、実施例1と同じ方法で(メソポーラスシリカに基づくAIRISE-02)マウスに投与した。カチオン性脂質粒子とともに送達されたCpGおよびsiSTAT3もインサイチュー腫瘍ワクチン接種/免疫刺激効果をもたらすことが見出された(
図11)。同様の結果は、送達システムとしてjetPEI(臨床段階に達した市販のPEIベースのトランスフェクション剤)を使用しても得られた。これは、開示されるカーゴの組合せの汎用性と、送達プラットフォームに関する非依存的性質とを示す。ただし、脂質プラットフォームがsiRNAを癌細胞に送達するのに一般に効果的であるのに対して、層ごとに官能化されたメソポーラスシリカナノ粒子(本明細書において記載される)が、免疫細胞(例えば、初代樹状細胞)では脂質対応物よりも良好なsiRNAノックダウン活性を示すことは価値がない(
図12)。
【0287】
当業者によって理解されるように、本明細書において開示される各態様は、その特定の記載された要素、工程、成分または構成要素を含むか、それから本質的になるか、それからなることができる。したがって、用語「含む(include)」または「含む(including)」は、「含む(comprise)、からなる(consist of)、またはから本質的になる(consist essentially of)」を列挙するように解釈されるべきである。移行用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」は、不特定の要素、工程、成分または構成要素を大量であっても含むこと、および含むことを可能にすることを意味する。移行句「からなる(consisting of)」は、指定されていないいかなる要素、工程、成分または構成要素も排除する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、態様の範囲を、指定された要素、工程、成分または構成要素、および態様に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。重大な影響とは、これに関連して、免疫療法構築物の生物学的影響(抗癌効果など)の測定可能な減少である。
【0288】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、いずれの場合も用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメーターは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。さらに明確にする必要がある場合、用語「約」は、記載された数値または範囲と組み合わせて使用される際に、当業者によって合理的に与えられる意味を有し、すなわち、記載された値または範囲よりもいくらか大きいかいくらか小さく、記載された値の±20%、記載された値の±19%、記載された値の±18%、記載された値の±17%、記載された値の±16%、記載された値の±15%、記載された値の±14%、記載された値の±13%、記載された値の±12%、記載された値の±11%、記載された値の±10%、記載された値の±9%、記載された値の±8%、記載された値の±7%、記載された値の±6%、記載された値の±5%、記載された値の±4%、記載された値の±3%、記載された値の±2%、または記載された値の±1%の範囲内であることを示す。
【0289】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるとしても、特定の実施例に示される数値は、実行可能な程度に正確に報告される。ただし、任意の数値は、それぞれの試験測定値に見出された標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。
【0290】
本発明を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の指示対象は、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入る各別個の値を個別に言及する簡略方法として機能することを意図しているに過ぎない。本明細書において別段の指定がない限り、各個々の値は、本明細書において個別に記載されているかのように本明細書に組み入れられる。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書において提供されるいずれかのおよびすべての実施例または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をさらによく説明することを意図するものであり、他の方法で特許請求される本発明の範囲に対して限定を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていないいずれかの要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0291】
本明細書において開示される、本発明の代替的な要素または態様の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群構成要素は、個別に、または群の他の構成要素もしくは本明細書において見出される他の要素と任意に組み合わせて参照および特許請求され得る。便宜および/または特許性の理由から、ある群の1つまたは複数の構成要素が、ある群に包含されるか、ある群から削除され得ることが予測される。そのようないずれかの包含または削除が生じる場合、本明細書は、改変された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記述された説明を満たすと見なされる。
【0292】
本発明を実施するために本発明者に公知の最良の形態を含めて、本発明の一定の態様が本明細書において記載されている。言うまでもなく、前述の説明を読めば、これらの記載された態様に対する変形例が当業者に明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形例を適切に使用することを予測しており、本発明者らは、本発明が本明細書において具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法が許容する限り、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形例における上述の要素の任意の組合せは、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0293】
さらに、本明細書全体を通して、特許、印刷刊行物、学術論文および他の文章(本明細書において参照される資料)が多数参照されている。参照される資料の各々は、参照される教示について参照によりその全体が本明細書に個別に組み入れられる。
【0294】
本明細書において開示される本発明の態様は、本発明の原理の例示であることを理解されたい。使用され得る他の改変は、本発明の範囲内である。このため、限定されることなく例として、本明細書における教示に従って、本発明の代替的な構成が利用され得る。したがって、本発明は、示され記載されたものと正確に同じものに限定されない。
【0295】
本明細書において示される詳細は、例としてのものであり、本発明の好ましい態様の例示的な説明のためのものに過ぎず、本発明の様々な態様の原理および概念的局面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されている。これに関連して、本発明の基本的な理解のために必要なものよりも詳細に本発明の構造的詳細を示すことは試みられておらず、図面および/または実施例を用いた説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現化され得るかを当業者に明らかにする。
【0296】
本開示において使用される定義および説明は、実施例において明確かつ一義的に変更されない限り、または意味の適用により任意の構成が無意味もしくは本質的に無意味になる場合を除いて、将来の任意の構成を制御することを意味および意図している。定義は、用語の構成がそれを無意味または本質的に無意味にする場合、Webster's Dictionary,3rd Editionまたは当業者に公知の辞書、例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Ed.Anthony Smith,Oxford University Press,Oxford,2004)から解釈されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】