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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】水素センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20220912BHJP
   G01N 31/10 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
G01N31/00 C
G01N31/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502065
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 KR2020009078
(87)【国際公開番号】W WO2021006689
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0083060
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522013887
【氏名又は名称】デヒョンエスティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヒョン タク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソン イク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン アン
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB02
2G042BB03
2G042CA01
2G042CA02
2G042CB01
2G042CB03
2G042DA03
2G042DA07
2G042DA08
2G042FA13
2G042FB04
2G042FC03
(57)【要約】
水素センサが開示される。水素センサは、基板と、前記基板上に配置され、水素イオンまたは水素原子と反応して色が変化する酸化物半導体物質で形成された色変換層と、前記色変換層の表面上に位置し、水素分子(H)を水素原子(H)または水素イオン(H)に解離する触媒物質で形成された触媒層と、前記触媒層の表面及び前記色変換層の露出表面を被覆するように位置し、水分子の透過は防止しながら水素分子は透過させることができる高分子物質で形成された保護膜層と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
前記基板上に配置され、水素イオンまたは水素原子と反応して色が変化する酸化物半導体物質で形成された色変換層と、
前記色変換層の表面上に位置し、水素分子(H)を水素原子(H)または水素イオン(H)に解離する触媒物質で形成された触媒層と、
前記触媒層の表面及び前記色変換層の露出表面を被覆するように位置し、水分子の透過は防止しながら水素分子は透過させることができる高分子物質で形成された保護膜層と、を含む、水素センサ。
【請求項2】
前記触媒層は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)またはこれらの一つ以上を含有する合金で形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
【請求項3】
前記触媒層は、4~4.5nmの厚さで形成された、ことを特徴とする請求項2に記載の水素センサ。
【請求項4】
前記色変換層及び前記触媒層は、前記基板及び前記保護膜層によって密封された、ことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
【請求項5】
前記保護膜層は、ポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)で形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
【請求項6】
前記保護膜層は、4.4~5.4umの厚さで形成された、ことを特徴とする請求項5に記載の水素センサ。
【請求項7】
基板上にタングステン酸化物を蒸着して色変換層を形成するステップと、
前記色変換層上にパラジウムまたは白金を蒸着して触媒層を形成するステップと、
ポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)溶液を利用したスピンコーティング工程を通じて前記触媒層の上部にPVB膜を形成する第1ステップ、及び前記PVB膜上に超純水(D.I water)をスピンコーティングする第2ステップからなるサイクルを4~6回実行して、前記触媒層の表面及び前記色変換層の露出表面を被覆する保護膜層を形成するステップと、を含む、水素センサの製造方法。
【請求項8】
前記保護膜層は、4.4~5.4umの厚さで形成される、ことを特徴とする請求項7に記載の水素センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の色変化を通じて水素を感知することができる水素センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガス(H)は、化学分野、燃料セル技術、自動車燃料、ロケットエンジンなど幅広く応用される、エネルギーの新再生クリーンエネルギー源(source)である。燃料として、水素ガスは、高い燃焼熱(142kJ/g)を出しながら完全に燃消するので、未来エネルギーとして脚光を浴びている。しかしながら、水素ガスは、揮発性が高く、爆発性及び引火性があって、水素濃度が臨界値を超える場合に危険である。
【0003】
水素ガスは、色、ニオイ、味のない可燃性気体であるので、人間の五感では感知できない。よって、水素を安全に用いるためには、水素センサが必ず要求される。多様な方式の水素センサが報告されているが、そのうち、電気的センサとガスクロミック(gasochromic)センサに対する関心が増加している。しかしながら、電気的センサは、高い感知度を有するが、電磁気ノイズによる誤作動や使用環境が制限されるという問題点がある。
【0004】
一方、最近、水素が多様な産業分野のエネルギー源として開発されているが、この場合、大気中の水素だけでなく、液体内に溶解された水素を検出する技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、大気中の気体状態で存在する水素だけでなく、液体内で溶解された水素も同時に感知することができる水素センサを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記水素センサを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る水素センサは、基板と、前記基板上に配置され、水素イオンまたは水素原子と反応して色が変化する酸化物半導体物質で形成された色変換層と、前記色変換層の表面上に位置し、水素分子(H)を水素原子(H)または水素イオン(H)に解離する触媒物質で形成された触媒層と、前記触媒層の表面及び前記色変換層の露出表面を被覆するように位置し、水分子の透過は防止しながら、水素分子は透過させることができる高分子物質で形成された保護膜層と、を含む。
【0008】
一実施形態において、前記触媒層は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)またはこれらの一つ以上を含有する合金で形成されることができる。
【0009】
一実施形態において、前記触媒層は、4~4.5nmの厚さで形成されることができる。
【0010】
一実施形態において、前記色変換層及び前記触媒層は、前記基板及び前記保護膜層によって密封されることができる。
【0011】
一実施形態において、前記保護膜層は、ポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)で形成されることができる。
【0012】
一実施形態において、前記保護膜層は、4.4~5.4umの厚さで形成されることができる。
【0013】
本発明の実施形態に係る水素センサの製造方法は、基板上にタングステン酸化物を蒸着して色変換層を形成するステップと、前記色変換層上にパラジウムまたは白金を蒸着して触媒層を形成するステップと、ポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)溶液を利用したスピンコーティング工程を通じて前記触媒層の上部にPVB膜を形成する第1ステップ、及び前記PVB膜上に超純水(D.I water)をスピンコーティングする第2ステップからなるサイクルを4~6回実行して、前記触媒層の表面及び前記色変換層の露出表面を被覆する保護膜層を形成するステップと、を含む。
【0014】
一実施形態において、前記保護膜層は、4.4~5.4umの厚さで形成されることができる。
【発明の效果】
【0015】
本発明の水素センサ及びその製造方法に係ると、水を通過させないながら、水素は選択的に通過させるようにポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)で形成された保護膜層で前記色変換層と前記触媒層を密封することにより、気相だけでなく、液相でも水素を感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る水素センサを説明するための図面である。
図2a】実施形態1[ガラス基板/色変換層(WO3)/触媒層(Pd)/保護膜層(PVB)]及び実施形態2[PET基板/色変換層(WO3)/触媒層(Pd)/保護膜層(PVB)]の水素センサの液体内部での水素感知結果を示すイメージである。
図2b】実施形態1及び2の水素センサに対して測定された水素との反応前及び反応後の波長による透過度を測定した結果を示すグラフである。
図3】実施形態2の水素センサに対して、水素と反応後のイメージ及びこれを水素のない大気中で10秒間保持した後のイメージを示す。
図4】実施形態2の水素センサに対して水素と反応させた後回復する過程を繰り返し実行した結果を示すグラフである。
図5】「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルの繰り返し回数にPVB保護膜層の厚さ変化を説明するためのイメージである。
図6a】「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを1回、5回及び7回それぞれ実行して形成されたPVB保護膜層をそれぞれ備える実施形態に係る水素センサを1日間水に浸漬させた結果を示すイメージである。
図6b】前記実施形態に他の水素センサをガス状態及び液体状態で水素と反応させた場合に測定された反応前後の色差値変化量を示すグラフである。
図7a】乃至
図7b】保護膜層をPVB、PDMS(Polydimethylsiloxane)、ZIF-8(Zeolitic Imidazolate Framework)、Alでそれぞれ形成した水素センサに対して測定された水中耐久性及び色変化性能を示すグラフである。
【発明の実施のための形態】
【0017】
本出願で用いた用語は、ただ特定の実施形態を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は文脈上明白に異なりに意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはその以上の他の特徴やステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないことに理解すべきである。
【0018】
異なりに定義されない限り、技術的または科学的用語を含んで、ここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に用いられる辞典に定義されているような用語は関連技術の文脈において有する意味と一致する意味を有することに解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る水素センサを説明するための図面である。
【0020】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る水素センサ100は、基板110、色変換層120、触媒層130及び保護膜層140を含む。
【0021】
前記基板110は支持体として、前記色変換層120、触媒層130及び保護膜層140を支持することができれば、特に制限されない。例えば、前記基板110は、高分子、硝子、セラミックス、金属などの材料で形成されることができる。
【0022】
前記色変換層120は前記基板110上に配置され、水素イオンまたは水素原子と反応して色が変化する酸化物半導体物質で形成されることができる。一実施形態において、前記色変換層120はタングステン酸化物(WO)で形成されることができる。前記タングステン酸化物は、特定の光学的、化学的刺激によって酸化物自体の色変化が発生する。例えば、前記色変換層120に水素イオンまたは水素原子が供給される場合、前記タングステン酸化物が前記水素イオンまたは水素原子と反応して前記色変換層120の内部に酸素空孔が形成され、その結果、前記タングステン酸化物は近赤外線領域の光を吸収することができるようになって、前記タングステン酸化物の色がダークグレーからダークブルーに変化することができる。一方、反応した前記水素イオンまたは水素原子が前記タングステン酸化物から脱着された場合、前記色変換層120は再びダークグレーの初期色に変換されることができる。
【0023】
前記色変換層120を形成する方法は特に制限されず、酸化物薄膜を形成する公知の方法などを通じて前記基板110上に形成されることができる。例えば、前記色変換層120はスパッタリング工程などのような気相蒸着の方法で前記基板110上に形成されることができる。
【0024】
前記触媒層130は前記色変換層120の表面に形成されることができる。前記触媒層130は水素分子(H)を水素原子(H)または水素イオン(H)に解離することができる触媒物質で形成されることができる。例えば、前記触媒層130は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、これらの合金などで形成されることができる。
【0025】
前記触媒層130を形成する方法は特に制限されない。例えば、前記触媒層130は電子ビーム蒸着(E-beam evaporator)などを利用した気相蒸着の方法で形成されることができる。
【0026】
一実施形態において、前記触媒層130は、約4~4.5nmの厚さで形成されることができる。前記触媒層130の厚さが4nm未満の場合には、水素解離反応が弱くなって、反応性が低くなるという問題点が発生し得、4.5nmを超える場合には、センサの初期透過率(Transmittance)の数値が低くなって、水素反応の時、変化量が少なくなって十分な信号を得にくいという問題点が発生し得る。
【0027】
前記保護膜層140は、前記触媒層130の表面及び前記色変換層120の露出表面を被覆するように形成されることができる。例えば、前記色変換層120及び前記触媒層130は、前記基板110及び前記保護膜層140によって密封されることができる。
【0028】
一実施形態において、前記保護膜層140は、水分子の透過は防止しながら水素分子は透過させることができる高分子物質で形成されることができる。例えば、前記保護膜層140は、ポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)で形成されることができる。
【0029】
前記色変換層120及び前記触媒層130が水分に露出される場合、水分は、前記色変換層120及び前記触媒層130に吸着されることができ、このように吸着された水分は前記触媒層130の金属触媒と水素分子の接触を阻む障壁として作用したり、または解離された水素原子または水素イオンが前記色変換層120の内部に拡散する速度を遅延させるという問題点を発生し得る。また、水分の内部の各種ラジカル(radical)によって前記色変換層120のタングステン酸化物がタングステンヒドロキシド(HWOx)に変換されることがあり、それにより、前記色変換層120の性能が急激に低下されるという問題点が発生され得る。前記保護膜層140は、水素分子は透過させるが、水分の透過は防止することにより、外部水分が前記色変換層120及び前記触媒層130に到逹することを防止することができ、それによって、前記のような水分によって惹起される問題点を防止することができる。また、前記保護膜層140によって本発明の実施形態に係る水素センサ100は水中でも水素を感知することができる。
【0030】
一実施形態において、前記保護膜層140は、約4.4~5.4umの厚さで形成されることができる。前記保護膜層140の厚さが4.4um未満の場合には、前記水素センサ100の耐久性が低下されて寿命が短すぎるという問題点が発生し得、5.4umを超える場合には、水素分子の透過度が低すぎて前記水素センサ100の水素に感知度が低すぎるというという問題点が発生し得る。
【0031】
一実施形態において、前記保護膜層140は溶液工程を通じて形成されることができる。例えば、前記保護膜層140は、スピンコーティング(spin-coating)法で前記触媒層130の表面及び前記色変換層120の露出表面を被覆するように形成されることができる。具体的には、メタノールを溶媒として用いたPVB溶液を利用したスピンコーティング工程を通じて前記触媒層130の上部にPVB膜を形成する第1ステップ、及び前記PVB膜上に超純水(D.I water)をスピンコーティングする第2ステップを含むサイクルを複数回実行して、既定の厚さを有し、防水特性を有する前記保護膜層140を形成することができる。この場合、前記保護膜層140の厚さは、前記第1ステップと前記第2ステップの繰り返し回数を通じて調節することができる。
【0032】
本発明の水素センサに係ると、水を通過させないながら、水素は選択的に通過させるようにポリビニルブチラール(PVB、Polyvinyl Butiral)で形成された保護膜層で前記色変換層と前記触媒層を密封することにより、気相でだけでなく、液相でも水素を感知することができる。
【0033】
図2aは、実施形態1[ガラス基板/色変換層(WO3)/触媒層(Pd)/保護膜層(PVB)]及び実施形態2[PET基板/色変換層(WO3)/触媒層(Pd)/保護膜層(PVB)]の水素センサの液体内部での水素感知結果を示すイメージであり、図2bは、実施形態1及び2の水素センサに対して測定された水素との反応前及び反応後の波長による透過度を測定した結果を示すグラフである。
【0034】
図2aを参照すると、実施形態1及び2の水素センサを水素水の内部に3分間浸漬させた場合、センサの色が変化されたことを確認することができる。すなわち、保護膜層を備える本発明の水素センサは、液体内部で水素を安定的に検出することができることを確認することができる。
【0035】
図2bを参照すると、ガラス基板を利用した実施形態1の水素センサは、水素との反応後の透過度が反応前の透過度に比べて約30~55%減少することが示され、PET基板を利用した実施形態2の水素センサは、水素との反応後の透過度が反応前の透過度に比べて約40~70減少することが示された。
【0036】
図3は、実施形態2の水素センサに対して、水素と反応後のイメージ及びこれを水素のない大気中で10秒間保持した後のイメージを示し、図4は、実施形態2の水素センサに対して水素と反応させた後回復する過程を繰り返し実行した結果を示すグラフである。
【0037】
図3を参照すると、水素と1分間反応した後、濃青色を呈していた実施形態2の水素センサを水素のない大気中に保持させる場合、再び初期の灰色に変化されることを確認することができる。すなわち、本発明に係る水素センサは、繰り返し的に水素を感知することができ、1分以内の感知速度及び10秒以内の回復速度などの優れた特性を有することを確認することができる。
【0038】
図4を参照すると、水素と反応させた後に回復する過程を繰り返し実行した結果、実施形態2の水素センサは、安定的に水素を感知することができることを確認することができる。
【0039】
図5は、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルの繰り返し回数にPVB保護膜層の厚さ変化を説明するためのイメージである。
【0040】
図5を参照すると、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」を1サイクル実行した場合には、約3.53um厚さのPVB保護膜層が形成され、5サイクル実行した場合には、約5.36um厚さのPVB保護膜層が形成され、7サイクル実行した場合には、約6.15um厚さのPVB保護膜層が形成されたことが示された。すなわち、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルの繰り返し回数が増加するほど形成されるPVB保護膜層の厚さはほぼ線形的に増加することを確認することができ、その結果、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルの繰り返し回数を通じて前記PVB保護膜層の厚さを制御することができることが分かる。
【0041】
図6aは、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを1回、5回及び7回それぞれ実行して形成されたPVB保護膜層をそれぞれ備える実施形態に係る水素センサを1日間水に浸漬させた結果を示すイメージであり、図6bは、前記実施形態に他の水素センサをガス状態及び液体状態で水素と反応させた場合に測定された反応前後の色差値変化量及び耐久性を示すグラフである。
【0042】
図6aを参照すると、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを1回実行して形成された保護膜層を備える水素センサの場合、水に1日間浸漬させることにより保護膜層が脱離されるなど耐久性が良くないことが示された。これに対して、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを5回及び7回それぞれ実行して形成された保護膜層をそれぞれ備える水素センサは、1ヶ月間水に浸漬させても前記保護膜層が安定的に保持されて耐久性が優れることが示された。よって、前記保護膜層は、「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを1回実行した場合の厚さである3.53umよりは厚く、好ましくは、前記「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを約3回以上実行して、すなわち、約4.4um以上の厚さに形成されることが好ましいと判断される。
【0043】
図6bを参照すると、前記保護膜層の厚さが増加するにつれてガス状態及び液体状態で全部水素との反応前後の色差値変化量が減少することが示された。特に、前記保護膜層は、前記「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを 3回~5回実行して形成した場合、他の領域に比べて色差値変化量の変化が相対的に少ないことが示された。よって、前記保護膜層は、前記「溶液スピンコーティング工程後に超純水をスピンコーティングする工程」サイクルを3回以上且つ5回以下実行した場合の厚さに対応する約4.4以上5.4um以下の厚さに形成されることが好ましいことと判断される。
【0044】
図7a及び図7bは、保護膜層をPVB、PDMS(Polydimethylsiloxane)、ZIF-8(Zeolitic Imidazolate Framework)、Alでそれぞれ形成した水素センサに対して測定された水中耐久性及び色変化性能を示すグラフである。図7bのグラフは、保護膜層のない水素センサの色変化性能に対する比率を示す。
【0045】
図7aを参照すると、PVB保護膜層は、水素センサを水素水の水分から安定的に保護して、30日間その性能が保持されたことに対して、PDMS保護膜層、ZIF-8保護膜層及びAl保護膜層は、センサの性能を1日以上保持できないことが示された。
【0046】
図7bを参照すると、保護膜層のない水素センサの色変化性能を基準として、PVB保護膜層を適用したセンサは、水素水の内部で85%の色変化性能を示すことに対して、PDMS保護膜層及びZIF-8保護膜層をそれぞれ適用したセンサは約10%の色変化性能を示すことが示され、Al保護膜層を適用したセンサは50%の色変化性能を示すことが示された。
【0047】
したがって、保護膜層をPVBで形成する場合が最も水中で耐久性及び色変化性能を向上させることができることが分かる。これは、PVB保護膜が最も水分子を遮断しながら、これより小さな水素分子やイオンをよく通過させることができるからである。
【0048】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野において通常の知識を有する者は特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0049】
100:水素センサ
110:基板
120:色変換層
130:触媒層
140:保護膜層
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
【国際調査報告】