(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】固体酸化物セルスタック用途のためのフェライト鋼製インターコネクトのクロムアップグレード法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/021 20160101AFI20220912BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20220912BHJP
【FI】
H01M8/021
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502113
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020069710
(87)【国際公開番号】W WO2021009100
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ナアビュー・トビーアス・ホルト
(72)【発明者】
【氏名】ラス-ハンスン・イェベ
(72)【発明者】
【氏名】ハイレデール-クラウスン・トマス
(72)【発明者】
【氏名】キュンガス・ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ブレノウ・ベングト・ピーダ・ゴスタウ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126BB06
5H126GG08
5H126HH01
5H126HH02
5H126HH04
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】
インターコネクトの造形、造形されたインターコネクトの少なくとも一つの表面上での、Crを含むコーティングの堆積、及び1000℃未満の温度での一度または二度以上の熱処理の実施のステップを含む、固体酸化物セルスタックに使用されるフェライト鋼製のインターコネクトのクロムアップグレード法において、インターコネクトの表面付近の生じるCr濃度が、造形前のフェライト鋼中のCr濃度よりも大きい。具体的には、造形されたインターコネクトの平均Cr濃度は、26重量%Crまたはそれ超にまで高められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物セルスタックに使用されるフェライト鋼製インターコネクトのクロムアップグレード法であって、次のステップ:
-インターコネクトを造形するステップ、
-前記造形されたインターコネクトの少なくとも一つの表面上に、Crを含むコーティングを堆積するステップ、
-1000℃より低い温度で、一度または二度以上の熱処理を実施するステップ、
を含み、
但し、インターコネクトの表面付近の生じたCr濃度が、造形前のフェライト鋼中のCr濃度よりも高い、前記方法。
【請求項2】
造形されたインターコネクトの平均Cr濃度が、26重量%Crまたはそれ超にまで高められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フェライト鋼が、グループ1のフェライト鋼、グループ2のフェライト鋼、グループ3のフェライト鋼、グループ4のフェライト鋼であるか、またはCrofer22APU、Crofer22H及びZMG G10鋼のうちの一つである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フェライト鋼が、グループ2のフェライト鋼、例えばAISI430である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
堆積ステップが、硬質クロムメッキとして特徴付け得る、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
堆積されたコーティングの厚さが、少なくとも1ミクロンかつ1ミリメータ未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
堆積ステップがクロマイジングプロセスとして特徴付けられる、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項8】
インターコネクトの造形がフォーミング加工によって行われる、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
フォーミング加工が、打ち抜き、プレス、鍛造、圧延加工、コイニング、エンボス加工、押出、ロールフォーミング、ハイドロフォーミングまたは深絞りによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
インターコネクトのフォーミング加工に使用される加圧力が500bar未満、好ましくは200bar未満である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
インターコネクトの造形がマシニング加工によって行われる、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
マシニング加工が、孔あけ、フライス削り、光化学的エッチング、電気化学的エッチング、ドライエッチング、またはレーザーカットによって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クロムアップグレードの後のインターコネクトの熱膨張係数が、12ppm/Kよりも大きいが、13ppm/Kよりは小さい、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一つに記載の方法によって製造される、固体酸化物セルスタックに使用されるフェライト鋼のインターコネクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト鋼材料のクロムアップグレード法に関し、より詳しくは、固体酸化物セル(SOC)スタックで使用されるフェライト鋼インターコネクトのクロムアップグレード法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、最小Cr含有率が10.5重量%及び最大炭素含有率が1.2重量%である鉄合金である。
【0003】
ステンレス鋼は、それらの結晶構造であるオーステナイト系、フェライト系、二相系及びマルテンサイト系構造に基づいて異なるファミリーに分けられる。ステンレス鋼の最も大きなグループはオーステナイト系である。オーステナイト系ステンレス鋼は、更に、次の五つのサブグループ、すなわちCr-Mn系、Cr-Ni系、Cr-Ni-Mo系、高性能系、及び高温度系に分けることができる。最も通常のオーステナイト系鋼はCr-Niであり、これは、8~10重量%のNi及び17~18重量%のCr、及び残部のFeを含み、そしてしばしば18-8タイプステンレス鋼と称される。該鋼中のNiは、室温で安定した状態のままである面心立方系(FCC)結晶構造を有するオーステナイト相(γ-Fe)を安定するために必要とされる。オーステナイトグレードは、良好な溶接性及びフォーミング加工性を持つ非磁性物と分類される。
【0004】
フェライト系ステンレス鋼は、第二の最も使用されるグループのステンレス鋼であり、しばしば、オーステナイト鋼に対する「ニッケルフリー」の代替物と称される。フェライト鋼は、主としてFe及びCrを含み、そしてCr含有率は、用途に応じて広い範囲(10.5~29重量%)で様々であり得る。フェライト鋼は、更に、五つの異なるグループに細分化することができる。グループ1~3は、最も広い範囲の用途を有し、それ故、フェライト鋼のうちで最も多量の生産量も有する。グループ1~3の鋼は、しばしば、「標準フェライトグレード」とも称される。グループ1は、Cr含有率が最も低く(10.5~14重量%の範囲)、他方でグループ2~3は、14~18重量%の範囲でCrを含む。グループ2は、フェライト系ステンレス鋼のうち最も広範に使用されているファミリーである。AISI430は、グループ2ステンレス鋼のうちで特に広範に使用されているタイプのものであり、これは、耐腐食性の重要性が比較的低いが、(Niフリーの処方の故の)価格の低変動性が望ましい多くのインドア用途では、オーステナイト系の代替品であるAISI304より優勢である。グループ3は、炭素及び窒素を結合(tie up)して全ての温度において完全にフェライト系の結晶構造を残すTi、Nb及びZrなどの追加的な安定化元素を含む点でグループ2とは異なる。それ故、グループ3ファミリーは、一般的に、他のグループよりも良好な溶接性及び耐鋭敏化性を示す。グループ4は、10.5~18重量%のCrを含み、そして追加的な耐腐食性のためにMoと合金化される。グループ5のフェライト系は、18重量%超のCrが合金化されているか、または他のグループには属さない。典型的には、グループ5フェライト鋼は非常に高い耐腐食性を持つが、溶接性が低く、そしてまた、脆弱化に対しても敏感である。高Cr及び高Moを有するグループ5のグレードは、「スーパーフェライト系」と称され、そして腐食性が非常に重要視される用途においてチタンを置き換えるように設計されている。フェライト系ステンレス鋼は、体心立方格子系(BCC)結晶構造を有し(α-Fe)、磁性であり、そしてオーステナイト鋼よりも低い熱膨張係数を有する。
【0005】
二相系は、他のグループのステンレス鋼である。二相鋼は、基本的に、50%のフェライトと50%のオーステナイトのおおよその相バランスを有する、フェライト相とオーステナイト相との混合物である。二相系ステンレス鋼は、Cr含有率は高いが(20.1~25.4重量%Cr)、Niの含有率はむしろ低い(1.4~7重量%Ni)ことを特徴とする。二相鋼では、オーステナイト鋼とフェライト鋼の両方からの有益な性質の多くが組み合わされる。二相グレードは、フェライトを含むために磁性である。
【0006】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、最も小さなグループのステンレス鋼である。マルテンサイト鋼は、典型的には、12~17重量%のCr及び0~5重量%の範囲のNiを含む。これは、合金組成と、微細構造を体心正方系(BCT)結晶構造を有するマルテンサイトに変換するクエンチングの間の高い冷却速度との組み合わせである。マルテンサイト鋼は硬化可能かつ磁性である。
【0007】
固体酸化物セル(SOC)は、固体酸化物燃料電池(SOFC)としてもしくは固体酸化物電解セル(SOEC)として作動させ得るか、または可逆的に、すなわちSOFCとSOECモード間でスイッチングして作動させ得る。
【0008】
固体酸化物燃料電池は、酸素イオン伝導性電解質、酸素が還元される酸素極(カソード)、及び燃料(例えば水素、メタンまたは天然ガス)が酸化される燃料極(アノード)を含む。SOFC中の全体的な反応は、使用された燃料及び酸素が電気化学的に反応して電気、熱及び酸化された化学種を生成する反応である。酸化された化学種は、燃料として水素が使用された場合には水であり、燃料として一酸化炭素が使用された場合には二酸化炭素であり、及び炭化水素燃料の場合には水と二酸化炭素との混合物である。
【0009】
固体酸化物電解セルは、酸素イオン伝導性電解質、酸化された化学種(例えば水または二酸化炭素または両方)が外部から適用された電場により還元される燃料極(カソード)、及び酸素イオンが分子状酸素に酸化される酸素極(アノード)を含む。SOEC中の全体的な反応は、酸化された化学種が、電気及び熱を用いて電気化学的に、還元された化学種に転化される反応である。スタック中に供給された酸化された化学種が水である場合には、水素が燃料極上で生成する。酸化された化学種が二酸化炭素である場合は、一酸化炭素が燃料極上に生成する。酸化された化学種が、水と二酸化炭素との混合物である場合には、一酸化炭素と水素との混合物(合成ガスとしても知られる)が生産される。
【0010】
SOCは、約500℃~約1100℃の温度範囲で作動する。高められた作動温度は、電解質中の十分に高い酸素イオン伝導性を保証するために必要なものである。SOC用の常用される電解質材料は、限定はされないが、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)及びガドリニアドープドセリア(CGO)である。
【0011】
SOCスタックでは、各々が燃料極、電解質、酸素極、場合により及び追加の層を含む複数のセルが、各々の対となるセル間の介在する相互接続用プレート(または「インターコネクト」または「インターコネクタ」)によって直列接続される。インターコネクトの役割は、一つのセルから次のセルへの電気接触を供すること、セルを渡るガスの分布を助けること、及び一部の設計では、アノード室及びカソード室間でのガスの混合を避けることである。
【0012】
インターコネクトは、ドープされたランタンまたはイットリウムクロマイトなどのセラミック材料でできていることができるか、あるいはステンレス鋼などの金属でできていることができる。セラミック製インターコネクトに対する金属製インターコネクトの利点には次のものが含まれる:1)材料及び製造コストが低い点、2)造形がより簡単であり、煩雑でない点、3)電気及び熱伝導性がより高い点、4)延性。それ故、850℃未満の温度で作動するSOCでは、金属製インターコネクトが好ましい。
【0013】
金属製SOCインターコネクトのための適当な材料は、酸素極及び燃料極の両方に供給されるガスに対して、高められた作動温度において耐酸化性である必要があり、そしてこれらはまた、セルのセラミック製部品の熱膨張係数(CTE)と適合する熱膨張係数を示す必要がある。更に、高温下に鋼の表面上に形成する保護酸化物バリアは、電気伝導性である必要がある。これらの要件の観点から、酸化クロム表面層を形成するフェライト系合金(例えば、クロミア形成性フェライト鋼)が、SOCスタック用途においてインターコネクトとして使用するのに特に適している。このような高クロムフェライト鋼の例には、限定はされないが、AISI441、AISI444、AISI430、AISI446、Crofer 22H、Crofer 22APU、ZMG G10、E-brite、Plansee ITMなどがある。金属製SOCインターコネクトのために使用される他の材料には、Plansee CFY(<95重量%のCr、5重量%のFe及びYをベースとした合金)などが含まれる。
【0014】
例えば、US6.936.217B2(特許文献1)は、a)12~28重量%のCr、b)0.01~0.4重量%のLa、c)0.2~1.0重量%のMn、d)0.05~0.4重量%のTi、e)0.2重量%未満のSi、f)0.2重量%未満のAlを含む、酸化クロム形成性鉄合金からなる高温材料を開示しており、前記高温材料は、700℃~950℃の温度において、MnCr2O4スピネル相を形成することができる。上記に包含されるフェライト系ステンレス鋼は、Crofer 22APUの商品名で商品化されている。20℃と800℃との間でのCrofer 22APUのCTEは11.9ppmK-1である。
【0015】
本出願人によるWO2008/013498A1(特許文献2)は、a)20~25重量%のCr、b)0.5~2重量%のMo、c)0.3~1.5重量%のNb、d)最大0.1重量%のC、e)最大0.6重量%のMn、f)最大2重量%のNi、g)最大0.5重量%のTi、h)最大0.5重量%のZr、i)最大0.1重量%のAl、j)最大0.07重量%のN、k)最大0.3重量%の希土類金属、l)残部のFe及び通常生じる不純物を含む、フェライト系クロムステンレス鋼を論じており、ここで、Zr+Tiの含有率は少なくとも0.20重量%である。更に、最も好ましい態様は、0.2のSi、0.3のMn、22のCr、1のMo、0.4のNb、0.3のZr、0.05のTi、残部のFe及び通常生じる不純物の近似組成(数値は重量%)を有する鋼である。上記の鋼は、空気中750℃で(La、Sr)MnO3と接触させて試験した時の、該材料の表面上に形成する酸化物の良好な接着性及び低い電気接触抵抗の故に、固体酸化物燃料電池などの燃料電池におけるインターコネクトとしての使用に適している。
【0016】
フェライト系ステンレス鋼の腐食速度は、鋼中のCr含有率に大きく依存する。例えば、I.G.Wight in Metals Handbook,9thEdition,Vol.13 Corrosion(1987)(非特許文献1)は、Fr-Cr合金における腐食の放物線速度定数は、合金中のCr含有率を0から20重量%Crまで増加すると、1000℃で四桁超減少することを教示している。おおよそ28重量%未満のCr含有率では、該合金の表面上に形成する酸化物スケールは、Fe-またはFe-Cr混合酸化物の層からなり、鋼の保護が不完全となる。おおよそ28重量%超のCr含有率では、該合金の表面上に形成する酸化物スケールは、純粋かつ連続的なCr酸化物からなり、鋼のより完全な保護(すなわち、最小の腐食速度)を供する。それ故、SOC用途のためには、Cr含有率が28重量%超のフェライト系ステンレス鋼を使用することが望ましい。SOCスタックが1000℃未満の温度で稼働される場合には、若干より低いCr含有率(例えば26重量%)でも十分であり得る。残念ながら、最も広く使用されているフェライト鋼のCr含有率は、SOC条件への長期間の暴露に耐えるほど十分に高いものではない。
【0017】
SOCインターコネクトのためのグループ1~3のフェライト系ステンレス鋼(17~18重量%)の導入に関する問題は、通常は、高温酸化耐性コーティングで対処される。例えば、J.G.Groligらは、Journal of Power Sources,248(2014)1007-1013(非特許文献2)において、含水率3%の空気中で850℃のSOFCカソード条件に暴露された時の、クロム含有率が17.83重量%のAISI 441の腐食速度は、セリウムもしくはランタンを含む保護コーティングによって、またはコバルトと組み合わせたセリウムもしくはランタンの二重層コーティングによって減少させ得ることを実証している。これらのコーティングは、物理蒸着によって施与されている。このようなコーティングの主たる欠点は、これらが、コーティングが、例えば欠陥、亀裂、ピンホール、接着不良などによって損傷を受けた場合に、腐食に対する保護を供しない点にある。コーティングが上手くいかない場合には、鋼は、大概は、低いCrレベルのために酷い鉄酸化を受けるようになり、SOCスタックが故障する。更に、コーティングの後の鋼の造形は、コーティングの共形性にダメージを与え、その結果、腐食保護が不完全なものとなる。
【0018】
Fe-Cr合金の熱膨張係数(CTE)も、合金のCr含有率に依存する。一般的に、該合金のCTEは、Cr含有率を高めるにつれ低くなる。例えば、25℃と727℃との間で測定したAISI 430(16~18重量%Cr)のCTEは12.94ppm/Kである。20℃と800℃との間で測定したCrofer 22 APU(20~24重量%Cr)のCTEは11.9ppm/Kである。室温と800℃との間で測定したPlansee ITM(26重量%Cr)のCTEは11.6ppm/Kである。室温と800℃との間で測定したCFY(95重量%Cr)のCTEは10.5ppm/Kである。SOCにおける40体積%Ni-60体積%8YSZ(8モル%イットリア安定化ジルコニア)支持層のCTEと適合するのに最適なCTE値は、12.5ppm/Kであろう(F.Tietz,Ionics,5(1999)129(非特許文献3))。
【0019】
製造における金属の造形は、二つの主たるカテゴリー、すなわち材料保持型プロセスと材料除去型プロセスに分けることができる。材料保持型プロセスは、通常は、フォーミング加工または変形加工プロセスとして分類され、そして形状の生成において材料が塑性変形を受けるプロセスである。フォーミング加工性は、多くの場合に、材料保持型プロセスカテゴリーで金属の製造において使用される用語である。「フォーミング加工性」という用語は、加工品にダメージを与えることなく、所望の形状への塑性変形を受ける金属の能力を表すものである。塑性変形中のダメージの例には、裂け目または割れ目の形成が含まれる。フォーミング加工プロセスの例は、限定はされないが、打ち抜き、鍛造、圧延加工、押出、ロールフォーミング及びハイドロフォーミングである。材料除去型プロセスは、加工品から材料を除去することによって金属を造形するプロセスによって説明され、大概は、マシニング加工と称される。マシニング加工には、多種多様の異なるプロセスが包含され、そして三つの異なるカテゴリー、すなわち機械的、化学的及び熱的マシニング加工に分けられる。機械的マシニング加工では、工具が、切断または摩耗によって材料を除去する。化学的マシニング加工及び/または電気化学的マシニング加工は、所望の形状を得るために加工品から材料をエッチングして取り除くことによって材料を除去するプロセスと定義される。熱的マシニング加工は、加工品から材料を蒸発させるために、しばしば電気エネルギーを使用する。それ故、「マシニング加工性」という用語は、多くの異なるプロセスを包含するために、非常に広い用語である。しかし、この用語の意味は、加工品から除去され得る材料の能力である。
【0020】
例えば、本出願人のUS8.663.863B2(特許文献3)は、突出した接触面積を有する金属シートでできた燃料電池用のインターコネクトを記載している。突出部は、打ち抜き、加圧加工、スライス加工、深絞りなどの任意の既知の方法で金属シートを造形することによって作ることができる。
【0021】
US7.718.295B2(特許文献4)は、平板型固体酸化物燃料電池のためのインターコネクトをエッチングにより造形することを含む方法を記載している。適当な方法には、中でも、光化学的及び電気化学的エッチング、及びレーザーカットが含まれる。
【0022】
US9.472.816B2(特許文献5)では、粉末冶金法により成形された部材は、95重量%のCr及び5重量%のFeYマスター合金(0.5重量%のYを含む合金)からなる粉体から製造される。1重量%の加圧助剤(ワックス)がこの粉体バッチに加えられる。次いで、この粉体バッチを、タンブル式ミキサー中で15分間、混合する。加圧ツールを使用して、粉体を圧密物にプレスし、これを脱ロウの目的で、連続ベルト式炉中で水素雰囲気中で20分間1100℃で予備焼結する。その後に、更なる圧密化及び合金形成の目的で、水素雰囲気中で、1400℃で7時間、部材を高温焼結に付す。その後、材料の透過性が十分に低くなる程度まで存在し得る残留細孔を閉じるために、950℃で、10~30時間の間、部材を予酸化する。最後に、サンドブラスト法により、部材の表面から、全ての側で酸化物層を取り除く。記載されている例は、多くの高温焼結ステップを含み、一部は水素雰囲気下で行われ、そして更には、粒度及び形状について厳密な要件を有する金属粉体を使用することを含み、これは、プロセスを非常にコスト高なものとする。更には、粉体冶金法により製造されるインターコネクタプレートのサイズは、型のサイズとプレス機の加圧力によって制限を受ける。
【0023】
US2008/0269495A1(特許文献6)は、シート金属ブランクを供し、そしてこのシート金属ブランクを塑性成形プロセスによってフォーミング加工することを含む、燃料電池スタック用の金属製インターコネクトを製造する方法を記載している。この方法の主な欠点は、シート金属ブランクにエンボス加工を施すために極めて高い加圧力(1000kN/cm2または10000bar)が必要なことであり、これは、この方法を用いて製造できるインターコネクトプレートの大きさを酷く制限してしまう。
【0024】
一般的に、フェライト系ステンレス鋼のフォーミング加工性は、鋼中のCr含有率が小さくなる程に低下する。例えば、Design Guidelines for the Selection and Use of Stainless Steel(Nickel Development Institute,A Designers’ handbook Series No.9014)(非特許文献4)は、AISI430鋼(16~18重量%Cr)が、コイニング、エンボス加工及びロールフォーミングの簡単さの観点で「優(excellent)」と格付けされ、他方で、AISI446鋼(23~27重量%Cr)は「良(good)」と格付けされることを教示している。AISI430鋼は、更に、冷間圧造及びスピニング加工の簡単さの観点で「優」と格付けされ、他方で、AISI446は「可(fair)」と格付けされる。
【0025】
鋼における様々な観点のフォーミング加工性を定量的に記載するためには、幾つかの異なるパラメータを使用することができる。使用されるパラメータには、限定はされないが、加工硬化指数、引張強さと降伏強度との比、全伸び、一様伸び及びr値などが挙げられる。加工硬化指数は、鋼の延伸性を表し、全伸びは鋼の曲げ性を特徴付け、一様伸びは、鋼のシート延伸能と相関し、そしてr値は、鋼の深絞り能に相関する。例えば、AISI430鋼(16~18重量%Cr)の伸び(A5)は≧20~28%であり、他方で、AISI446鋼(23~27重量%Cr)の伸び(A5)は≧10%であり、Cr含有率が高い程、フォーミング加工性が高まることを示唆している。
【0026】
例えば、US2016/0281184A1(特許文献7)は、優れた腐食及びシート形成特性を持つフェライト系ステンレス鋼に関する。この鋼は20~24重量%のCrを含み、17.0%と19.1%との間の一様伸び(Ag)及び1.81と2.55との間のr値を有する。
【0027】
プレスフォーミング加工性及び作業性に優れたフェライト系ステンレス鋼シートが、EP1452616B1(特許文献8)に記載されている。この鋼シート中のCrの含有率は10~19重量%であり、そしてこの鋼シートは、一方のまたは両方の表面上に潤滑膜を有する。この発明の主な欠点は、Cr含有率が低いために、この鋼が、SOC条件下に良好な十分な腐食保護を供しない点にある。
【0028】
それ故、SOC用途のためには、以下の特性を有するステンレス鋼を使用することが望ましい:1)還元性雰囲気及び酸化性雰囲気の両方中での高い耐酸化性、2)SOCの熱膨張係数(CTE)と適合する熱膨張係数、3)電気伝導性酸化物スケールの形成能、4)簡単なフォーミング加工性またはマシニング加工性、5)低コスト、及び6)広い入手可能性(例えば広い範囲のサプライヤー)。
【0029】
特にSOC用途のために開発されたフェライト系ステンレス鋼、例えばPlansee ITM(26重量%Cr)は、それらの高いCr含有率の故に、優れた耐酸化性を与える。ITM鋼は、更に、Cr酸化物をベースとするスケールを形成し、これは、アルミナまたはシリカをベースとするスケールよりも伝導性が高い。高Cr鋼の主な欠点は、材料の造形の困難さに関連し;例えば、Plansee ITM製のインターコネクトは、粉末冶金法により作製される。これらの鋼の高額な造形プロセス及び少ない生産量のために、このような鋼から作られたインターコネクトは非常に費用が高い。更に、この鋼の限られた入手可能性も問題である。最後に、このような鋼のCTEは最適ではなく:Plansee ITMのCTEは11.6ppm/Kであり、他方で、SOCで使用される40体積%Ni-60体積%8YSZのCTEに適合する最適なCTE値は12.5ppm/Kであろう(F.Tietz,Ionics,5(1999)129(非特許文献3))。
【0030】
他方で、標準的なフェライト系ステンレス鋼、例えばグループ2のフェライト系ステンレス鋼は造形が簡単であり、広く入手可能であり、多量に生産されており、そして低廉であるものの、Cr含有率が低い(AISI430では16~18重量%)。この比較的低いCr含有率は、劣った耐腐食性を材料に与え、これは、許容できない低レベルまでSOCスタックの寿命を短くしてしまう。常用されるフェライト系ステンレス鋼のCTEは若干のバリエーションがあるが、AISI430は、例えば、12.94ppm/KのCTEを有し、すなわち、40体積%-60体積%8YSZのCTEと理想的に適合するためには若干高すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】US6.936.217B2
【特許文献2】WO2008/013498A1
【特許文献3】US8.663.863B2
【特許文献4】US7.718.295B2
【特許文献5】US9.472.816B2
【特許文献6】US2008/0269495A1
【特許文献7】US2016/0281184A1
【特許文献8】EP1452616B1
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】I.G.Wight in Metals Handbook,9thEdition,Vol.13 Corrosion(1987)
【非特許文献2】J.G.Grolig et.el.Journal of Power Sources,248(2014) 1007-1013
【非特許文献3】F.Tietz,Ionics,5(1999)129
【非特許文献4】Design Guidelines for the Selection and Use of Stainless Steel(Nickel Development Institute,A Designers’ handbook Series No.9014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
それ故、標準的なフェライト系ステンレス鋼の利点(すなわち、低コスト、広い入手可能性、造形のし易さ)と優れた耐酸化性とを兼ね備えた金属製SOCインターコネクトを製造するための方法を提供することが本発明の目的である。更に、低コストで、広く入手可能であり、造形がし易く、かつ優れた耐酸化性を有する、固体酸化物セルスタックに使用されるフェライト鋼のインターコネクトを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、上記目的は、固体酸化物セルスタックに使用されるフェライト鋼製インターコネクトのクロムアップグレード法であって、次のステップ:
-インターコネクトを造形するステップ、
-前記造形されたインターコネクトの少なくとも一つの表面上に、Crを含むコーティングを堆積するステップ、及び
-1000℃より低い温度で、一度または二度以上の熱処理を実施するステップ、
を含み、
但し、インターコネクトの表面付近の生じたCr濃度が、造形前のフェライト鋼中のCr濃度よりも高い、前記方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで、「クロムアップグレード」という記載は、材料中のCr含有率を高める手段のことである。「インターコネクトの造形」という記載は、所望の形状にインターコネクトをフォーミング加工(forming)またはマシニング加工(machining)することである。「造形されたインターコネクト」という記載は、所望の形状にフォーミング加工またはマシニング加工されたインターコネクトのことである。
【0036】
有利には、造形されたインターコネクトの平均Cr濃度は、26重量%Crまたはそれ超にまで高められる。
【0037】
有利には、フェライト鋼は、グループ1のフェライト鋼、グループ2のフェライト鋼、グループ3のフェライト鋼、グループ4のフェライト鋼であるか、または次の鋼、すなわちCrofer22APU、Crofer22HまたはZMG G10のうちの一つである。
【0038】
有利には、フェライト鋼は、グループ2のフェライト鋼、例えばAISI430である。
【0039】
この際、本発明による方法は、例えば低コストで、造形が容易で、広く入手可能なフェライト系ステンレス鋼からSOCインターコネクトを製造することを可能とし、ここで同時に、優れた耐腐食性を達成するものである。これは、先ず、インターコネクトを所望の形状に造形し、それによって、比較的Cr含有率が低い鋼の造形のし易さの利点を生かすことによって達成される。造形の後には、造形されたインターコネクトのCr含有率を高め、それによって、Cr含有率が比較的高い鋼の比較的高い耐腐食性の利点を生かす。フェライトは、クロムの非常に高い溶解性及び非常に低い炭素含有率を示し、それ故、溶解性及び炭化物形成は、本発明の方法を用いた時のCr含有率の増加に関しては問題とならない。
【0040】
有利には、堆積ステップは、硬質クロムメッキとして特徴付けすることができる。
【0041】
クロムの電気メッキのための方法は、硬質クロムメッキ及び光沢クロムメッキの二つのカテゴリーに分けることができる。本願にとっては重要なものであるが、硬質クロムメッキと光沢クロムメッキとの間の主たる違いは、コーティングの層厚である。硬質クロムメッキは、厚さが1μm~1000μmの比較的厚いコーティングを供し、そして大概は、工業的目的のために耐摩耗性及び耐腐食性コーティングとして使用される。光沢クロムメッキは、0.25μm~1μmの範囲の層厚を供し、それ故、これらは、大概は、装飾目的のために表面の外観を改善するために使用される。「工業用硬質クロム」及び「装飾用光沢クロム」という記載も、これらのコーティングの違いを表すためにしばしば使用される。これらの二つのクロムメッキプロセスのこの副分類は、電気メッキ浴組成物が類似しているにもかかわらず、行われる。慣用のスルフェート触媒クロム電解質は、原則的に組成が近く、その結果、これらは、硬質クロムコーティング及び光沢クロムコーティングの両方のメッキのために使用できる(以下の表1参照)。それらの二つの浴組成物の間の主な違いは、硬質クロムメッキは、かなりより大きい電流密度で行うことができ、光沢クロムメッキプロセスと比べるとより高速な堆積速度が可能となる。
【0042】
【0043】
慣用のスルフェート触媒プロセスは、標準100:1スルフェート浴(すなわち、三酸化クロムとスルフェートとの間の比率が100:1)とも称されるが、これは、歴史的に、クロムの電気メッキのために使用されている最も普及した浴である。しかし、一種以上の触媒の存在無しではクロムを六価クロム(Cr(VI))からそれの金属状態(Cr)に還元できないという事実があるため、工業的には、硬質クロムプロセスに使用される触媒を更に最適化する方向で進んできた。この触媒の開発は、かなりより高い電流効率を有する電気メッキ浴をもたらしただけでなく、硬質クロムコーティングの性質も向上させた。このような向上された性質の例は、より高い硬度、より亀裂フリーの堆積物、及びまた少ない基材エッチングである。
【0044】
上述の通り、硬質クロム電解質の工業的な標準品が開発されており、そして現在は、以下の表2に示す三つの異なるグループに細分化されている。全ての電解質は三酸化クロム及びスルフェートをベースとする。
【0045】
【0046】
有利には、造形されたインターコネクト上に硬質クロムメッキによって堆積されたコーティングの厚さは少なくとも1ミクロン、かつ1ミリメータ未満である。
【0047】
有利には、堆積ステップは、クロマイジング法として特徴付けすることができる。
【0048】
クロマイジングは、主として鋼の合金鉄を、拡散を通じてクロムで飽和することを含む熱化学的プロセスである。これは、900℃までの温度での摩耗及び腐食(ガス腐食も含む)に曝される工具及ぶ部品の使用期間を延長するために行われる。クロマイジングには、ソース金属粉末(この場合は、Cr)、活性化剤(例えばハロゲン化物)及び希釈剤(充填された粉体粒子が互いに焼結することを防止する不活性粉末、例えばAl2O3)が使用され、そしてこの方法は、しばしば、「拡散浸透法(pack cementation)」と称される。グループ1~3のフェライト鋼は、非常に低い炭素含有率を有し、そしてCrの高い溶解性によって特徴づけられ、それ故、クロマイジングプロセスは、特に、金属Crがフェライト系結晶構造中に拡散することを促進する。活性化剤は、境界面を酸化物フリーに維持し、そしてソース金属の拡散を可能にする。クロマイジングは、その用途によって、耐腐食及び表面硬化の二つのタイプに分類される。
【0049】
US6.387.194B1(特許文献9)には、400シリーズのステンレス鋼、特に430ステンレス鋼製部品のクロマイジングのための方法が記載されている。この方法に使用するための拡散コーティング組成物も記載されている。
【0050】
有利には、インターコネクトの造形は、フォーミング加工によって行われる。
【0051】
有利には、フォーミング加工は、打ち抜き、プレス、鍛造、圧延加工、コイニング、エンボス加工、押出、ロールフォーミング、ハイドロフォーミングまたは深絞りによって行われる。
【0052】
有利には、インターコネクトのフォーミング加工に使用される加圧力は500bar未満、好ましくは200bar未満である。
【0053】
有利には、インターコネクトの造形は、マシニング加工によって行われる。
【0054】
有利には、マシニング加工は、孔あけ、フライス削り、光化学的エッチング、電気化学的エッチング、ドライエッチング、またはレーザーカットによって行われる。
【0055】
有利には、クロムアップグレードの後のインターコネクトの熱膨張係数は、12ppm/Kよりも大きいが、13ppm/Kよりは小さい。
【0056】
それにより、本発明の方法は、SOCインターコネクトを、例えば、クロム含有率が比較的低く、CTEがおおよそ12.5ppm/Kの最適値よりも高いが、クロムアップグレードにより、鋼のCTEを最適値近くまで低めるフェライト系ステンレス鋼、例えばAISI430から製造することを可能とする。
【0057】
以下、本発明を、図面を参照してより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、堆積ステップを硬質クロムメッキとして特徴付け得る本発明の一つの態様による方法の概略的説明図である。
【
図2】
図2は、堆積ステップをクロマイジングプロセスとして特徴付け得る本発明の一つの態様による方法の概略的説明図である。
【
図3】
図3は、クロムアップグレードの後のCrofer22APUプレートの表面付近のFe及びCr含有率を示すグラフである。
【0059】
[図面の詳細な説明]
図1は、本発明の可能な態様の一つを例示するものである。フェライト系ステンレス鋼(101)を、先ず造形して(プロセスA)、造形されたSOCインターコネクト(104)とする。その後、Crを含むコーティング(105)を、造形されたインターコネクト(104)の少なくとも一つの表面上に硬質クロムメッキによって堆積し(プロセスB)、コーティングされたSOCインターコネクト(106)を得る。次いで、一度または二度以上の熱処理(プロセスC)を、1000℃未満の温度で行い、クロムアップグレードされたSOCインターコネクト(102)を得る。クロムアップグレードされたインターコネクト(102)の表面付近の生じたCr濃度は、造形前のフェライト鋼(101)中のCr濃度よりも高い。
【0060】
図2は、本発明の可能な態様の一つを例示するものである。フェライト系ステンレス鋼(101)を、先ず造形して(プロセスA)、造形されたSOCインターコネクト(104)とする。その後、Crを含むコーティング(107)を、造形されたインターコネクト(104)の少なくとも一つの表面上にクロマイジングプロセスによって堆積し(プロセスD)、コーティングされたSOCインターコネクト(108)を得る。次いで、一度または二度以上の熱処理(プロセスE)を、1000℃未満の温度で行い、クロムアップグレードされたSOCインターコネクト(103)を得る。クロムアップグレードされたインターコネクト(103)の表面付近の生じたCr濃度は、造形前のフェライト鋼(101)中のCr濃度よりも高い。
【0061】
図3は、クロムアップグレードの後のCrofer22APUシートの表面付近のFe及びCr含有率を示す。元素組成を、クロムアップグレード後のCrofer22APUシートの断面について様々な深さ(すなわちシートの表面からの距離)(
図3で「X」として示す)で行ったエネルギー分散型X線分光法(EDX)点分析によって決定した。鋼中のCr及びFe含有率は、重量%(
図3では「%」として示す)の単位で表す。元々のCrofer22APUシートは、300ミクロンの厚さ及び22重量%のクロム含有率を有していた。EDXデータに基づくと、クロマイジングプロセス(プロセスD)及び熱処理(プロセスE)によるクロムアップグレード後は、クロムアップグレードされた金属シートの表面付近のクロム濃度は、造形前のフェライト鋼(101)中のCr濃度よりも高かった。より具体的には、鋼中のCr含有率は、シートの表面からおおよそ25ミクロンの深さまでは≧26重量%である。
【国際調査報告】