(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ヒトTREM-1に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220912BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220912BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220912BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220912BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220912BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220912BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220912BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220912BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220912BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220912BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220912BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220912BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220912BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220912BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220912BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220912BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220912BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220912BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220912BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P13/12
A61P9/00
A61P25/00
A61P31/04
A61P11/00
A61P5/00
A61P11/06
A61P37/08
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502493
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020042172
(87)【国際公開番号】W WO2021011681
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】パシン アチャル エム
(72)【発明者】
【氏名】トス ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ラケストロー ジンジャー シー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA87
4B065AA90X
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4B065BA02
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4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、TREM-1に特異的に結合し、TREM-1シグナル伝達を阻害する抗体またはその抗原結合部分が提供される。また例えば自己免疫性疾患の治療などの治療用途における、当該抗体またはその抗原結合部分の使用も提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
triggering receptor expressed on myeloid cells-1(TREM-1)に特異的に結合し、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗体であって、
(a)前記抗体は、アミノ酸E27~L37(EKYELKEGQTL、配列番号9)、E88~M100(EDYHDHGLLRVRM、配列番号10)、および/またはK120~R128(KEPHMLFDR、配列番号11)を含むエピトープでTREM-1に結合する、
(b)前記抗体は、配列番号1のD38~F48以外のエピトープでTREM-1に結合する、
(c)前記抗体は、mAb 0170とは異なるエピトープでTREM-1に結合する、または
(d)前記抗体は、TREM-1への結合に関し、参照抗体と交差競合し、前記参照抗体は、配列番号13、15、23、25もしくは130を含むVH、および/または配列番号14、16、17、24、131もしくは132を含むVLを含む、抗体。
【請求項2】
前記VH中に重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに前記VL中に軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、前記重鎖CDR3は、EGYDILTGYEYYGMDV(配列番号28)、GVLWFGELLPLLDY(配列番号34)、MVRGNYFYFYGMDV(配列番号47)、DGRHYYGSTSYFGMDV(配列番号52)、またはTYYDILTYHYHYGMDV(配列番号138)を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)前記重鎖CDR1は、X1、X2、X3、X4、およびX5を含み、X1は、SまたはNであり、X2は、S、Y、またはEであり、X3は、Y G、またはAであり、X4は、W、M、またはIであり、およびX5は、S、T、H、またはNである、または
(b)前記重鎖CDR1は、NSEAIN(配列番号136)を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
前記重鎖CDR2は、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、およびX17を含み、X1は、Y、V、またはGであり、X2は、TまたはIであり、X3は、W、I、または無しであり、X4は、H、Y、またはPであり、X5は、Y、D、またはIであり、X6は、S、G、またはFであり、X7は、G、S、またはDであり、X8は、I、Y、N、またはTであり、X9は、S、T、またはKであり、X10は、NまたはYであり、X11は、YまたはGであり、X12は、NまたはAであり、X13は、P、D、またはQであり、X14は、SまたはKであり、X15は、L、V、またはFであり、X16は、KまたはQであり、およびX17は、SまたはGである、請求項2または3に記載の抗体。
【請求項5】
(a)前記軽鎖CDR1は、R、A、S、Q、X1、X2、X3、S、S、X4、L、およびAを含み、X1は、SまたはGであり、X2は、VまたはIであり、X3は、Sまたは無しであり、およびX4は、YまたはAである、
(b)前記軽鎖CDR2は、X1、A、S、S、X2、X3、およびX4を含み、X1は、G、DまたはAであり、X2は、RまたはLであり、X3は、A、E、またはQであり、およびX4は、TまたはSである、ならびに/または
(c)前記軽鎖CDR3は、Q、Q、X1、X2、S、X3、P、X4、およびTを含み、X1は、YまたはFであり、X2は、GまたはNであり、X4は、SまたはYであり、およびX5は、L、Y、または無しである、請求項2~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
(a)前記重鎖CDR2は、YTHYSGISNYNPSLKS(配列番号27)、YIYDSGYTNYNPSLKS(配列番号33)、GIIPIFGTTNGAQKFQG(配列番号46)、VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号51)、またはGIIPIFDITNYAQKFQG(配列番号137)を含む、および/または
(b)前記重鎖CDR1は、SSYWS(配列番号26)、NYYWT(配列番号32)、SSAIS(配列番号45)、またはNYGMH(配列番号50)を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
(a)前記軽鎖CDR1は、RASQSVSSSYLA(配列番号29)またはRASQGISSALA(配列番号35)を含む、
(b)前記軽鎖CDR2は、GASSRAT(配列番号30)、DASSLES(配列番号36)、またはAASSLQS(配列番号48)を含む、および/または
(c)前記軽鎖CDR3は、QQYGSSPT(配列番号31)、QQFNSYPYT(配列番号37)、QQYGSSPLT(配列番号38)、QQYNSYPLT(配列番号49)、またはQQYNSYPIT(配列番号103)を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
(a)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号26、27および28と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号29、30および31と記載されるアミノ酸配列を含む、
(b)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含む、
(c)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号29、30および38と記載されるアミノ酸配列を含む、
(d)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号45、46および47と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、48および49と記載されるアミノ酸配列を含む、
(e)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号50、51および52と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含む、
(f)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および139と記載されるアミノ酸配列を含む、または
(g)前記重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および103と記載されるアミノ酸配列を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
(a)前記VHは、配列番号13、15、23、25、または130として記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、および/または
(b)前記VLは、配列番号14、16、17、24、131、または132として記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
(a)前記VHは、配列番号13を含み、前記VLは、配列番号14を含む、
(b)前記VHは、配列番号15を含み、前記VLは、配列番号16を含む、
(c)前記VHは、配列番号15を含み、前記VLは、配列番号17を含む、
(d)前記VHは、配列番号23を含み、前記VLは、配列番号24を含む、
(e)前記VHは、配列番号25を含み、前記VLは、配列番号16を含む、
(f)前記VHは、配列番号130を含み、前記VLは、配列番号131を含む、または
(g)前記VHは、配列番号130を含み、前記VLは、配列番号132を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
重鎖(HC)定常領域および軽鎖(LC)定常領域をさらに含み、
(a)前記HC定常領域は、配列番号123、配列番号122、配列番号124、または配列番号125に対し、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、および/または
(b)前記LC定常領域は、配列番号126に対し、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
第二の結合特異性を有する分子に結合された、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体を含む二特異性分子。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体をコードする、核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含有する、細胞。
【請求項16】
剤に結合された、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体または請求項12に記載の二特異性分子を含む、免疫結合体。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12に記載の二特異性分子、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクター、請求項15に記載の細胞、または請求項16に記載の免疫結合体、および担体を含む、組成物。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12に記載の二特異性分子、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクター、請求項15に記載の細胞、または請求項16に記載の免疫結合体、および使用説明書を含む、キット。
【請求項19】
その必要のある対象においてTREM-1活性を阻害する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12に記載の二特異性分子、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクター、請求項15に記載の細胞、または請求項16に記載の免疫結合体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項20】
その必要のある対象において、炎症性疾患または自己免疫性疾患を治療する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12に記載の二特異性分子、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクター、請求項15に記載の細胞、または請求項16に記載の免疫結合体を前記対象に投与することを含み、前記炎症性疾患または前記自己免疫性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、アレルギー、喘息、急性炎症もしくは慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項21】
一つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含み、好ましくは前記追加の治療薬が、抗IP-10抗体または抗TNF-α抗体である、請求項19または20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は2019年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/874,316号明細書の優先の利益を主張するものであり、当該内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表への参照
本出願とともに送付される、ASCIIテキストファイル(名称:3338_0960000_SeqListing_ST25.txt;サイズ:451,353バイト;作成日:2019年7月14日)の配列表の内容は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
TREM-1は、単球、マクロファージおよび好中球で発現される活性化受容体である。これらの細胞は、炎症を誘発するサイトカインおよび他のメディエーターを放出することによって、慢性炎症性疾患において中心的な役割を果たす。TREM-1のmRNAやタンパク質の発現は、関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)の患者で上方制御されており、そしてTREM-l陽性細胞は炎症部位に蓄積し、疾患の重症度と相関している。Bouchon et al.,Nature 410:1103-1107(2001);Schenk et al.,Clin Invest 117:3097-3106(2007);およびKuai et al.,Rheumatology 48:1352-1358(2009)を参照のこと。主に活性化好中球によって発現されるPeptidoglycan-recognition-protein 1(PGLYRP1)は、TREM-1のリガンドであり、結合の際にTREM-1シグナル伝達を介在する。
【0004】
インビトロにおいて、TREM-1の係合は、TNF、IL-8、および単球走化性タンパク質-1を含む炎症促進性サイトカインの分泌を誘発する。それに加えてTREM-1シグナル伝達は、複数のToll様受容体(TLR)と相乗効果を発揮し、炎症促進シグナルをさらにブーストする。次いでこれによりTREM-1の発現が上方制御され、炎症を増幅する危険なサイクルが発生する。Bouchon et al.,J Immunol 164:4991-4995(2000)を参照のこと。例えばRAやIBDなどの慢性炎症性疾患の発生および進行にTLRが寄与することを示す証拠が増えている。
【0005】
ヒトおよびカニクイザルの両方のTREM-1の機能を阻害するヒト化抗TREM-1 mAbは、別段に開示されている。WO2013/120553A1およびWO2016/009086A1を参照のこと。しかしながら、そのような抗体は製造工程を妨げ得る粘度プロファイルを有しているか、またはその治療上の能力を制限する可能性のある他の問題(例えばサイトカインストームやADCC)を抱えている。Shire et al.,J.Pharm.Sci.93:1390-1402(2004);およびWarncke et al.,J Immunol.188:4405-11(2012)を参照のこと。したがって過去の抗TREM-1抗体の課題を伴わずに、TREM-1に特異的に結合し、その機能を阻害し得る別の抗TREM-1抗体に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、例えばモノクローナル抗体(例えばヒトモノクローナル抗体)等の単離抗体が提供され、当該単離抗体は、triggering receptor expressed on myeloid cells-1(TREM-1)に特異的に結合し、望ましい機能特性を有する。一部の実施形態では、本開示の抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、この場合において当該抗体は、アミノ酸E27~L37(EKYELKEGQTL、配列番号9)、E88~M100(EDYHDHGLLRVRM、配列番号10)、および/またはK120~R128(KEPHMLFDR、配列番号11)を含むエピトープでTREM-1に結合する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、アミノ酸E27~L37(EKYELKEGQTL、配列番号9)を含むエピトープでTREM-1に結合する。他の実施形態では、本開示の抗体は、アミノ酸E88~M100(EDYHDHGLLRVRM、配列番号10)を含むエピトープでTREM-1に結合する。さらなる実施形態では、本開示の抗体は、アミノ酸K120~R128(KEPHMLFDR、配列番号11)を含むエピトープでTREM-1に結合する。
【0007】
一部の態様では、本開示は、TREM-1に特異的に結合し、VHおよびVLを含む単離抗体を提供するものであり、この場合において当該抗体は、配列番号1のD38~F48以外のエピトープでTREM-1に結合する。
【0008】
一部の態様では、本開示は、TREM-1に特異的に結合し、VHおよびVLを含む単離抗体を提供するものであり、この場合において当該抗体は、mAb 0170とは異なるエピトープでTREM-1に結合する。
【0009】
一部の態様では、本開示はさらに、triggering receptor expressed on myeloid cells-1(TREM-1)に特異的に結合し、VHおよびVLを含む単離抗体を提供するものであり、この場合において当該抗体は、TREM-1への結合に関して参照抗体と交差競合し、この場合において当該参照抗体は、配列番号13、15、23、25、もしくは130を含む重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号14、16、17、24、131、または132を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、VH中に重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、ならびにVL中に軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、この場合において当該重鎖CDR3は、EGYDILTGYEYYGMDV(配列番号28)、GVLWFGELLPLLDY(配列番号34)、MVRGNYFYFYGMDV(配列番号47)、DGRHYYGSTSYFGMDV(配列番号52)、TYYDILTYHYHYGMDV(配列番号138)を含む。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖CDR1は、X1、X2、X3、X4、およびX5を含み、この場合においてX1は、SまたはNであり、X2は、S、Y、またはEであり、X3は、Y G、またはAであり、X4は、W、M、またはIであり、およびX5は、S、T、H、またはNである。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖CDR1は、NSEAIN(配列番号136)を含む。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖CDR2は、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、およびX17を含み、この場合においてX1は、Y、V、またはGであり、X2は、TまたはIであり、X3は、W、I、または無しであり、X4は、H、Y、またはPであり、X5は、Y、D、またはIであり、X6は、S、G、またはFであり、X7は、G、S、またはDであり、X8は、I、Y、N、またはTであり、X9は、S、T、またはKであり、X10は、NまたはYであり、X11は、YまたはGであり、X12は、NまたはAであり、X13は、P、D、またはQであり、X14は、SまたはKであり、X15は、L、V、またはFであり、X16は、KまたはQであり、およびX17は、SまたはGである。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR1は、R、A、S、Q、X1、X2、X3、S、S、X4、L、およびAを含み、この場合においてX1は、SまたはGであり、X2は、VまたはIであり、X3は、Sまたは無しであり、およびX4は、YまたはAである。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR2は、X1、A、S、S、X2、X3およびX4を含み、この場合においてX1は、G、DまたはAであり、X2は、RまたはLであり、X3は、A、EまたはQであり、およびX4は、TまたはSである。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR3は、Q、Q、X1、X2、S、X3、P、X4、およびTを含み、この場合においてX1は、YまたはFであり、X2は、GまたはNであり、X4は、SまたはYであり、およびX5は、L、Y、または無しである。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖CDR2は、YTHYSGISNYNPSLKS(配列番号27)、YIYDSGYTNYNPSLKS(配列番号33)、GIIPIFGTTNGAQKFQG(配列番号46)、VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号51)、またはGIIPIFDITNYAQKFQG(配列番号137)を含む。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の重鎖CDR1は、SSYWS(配列番号26)、NYYWT(配列番号32)、SSAIS(配列番号45)、またはNYGMH(配列番号50)を含む。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR1は、RASQSVSSSYLA(配列番号29)またはRASQGISSALA(配列番号35)を含む。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR2は、GASSRAT(配列番号30)、DASSLES(配列番号36)、またはAASSLQS(配列番号48)を含む。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体の軽鎖CDR3は、QQYGSSPT(配列番号31)、QQFNSYPYT(配列番号37)、QQYGSSPLT(配列番号38)、QQYNSYPLT(配列番号49)、またはQQYNSYPIT(配列番号103)を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、VH中に重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにVL中に軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、
(a)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号26、27および28と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号29、30および31と記載されるアミノ酸配列を含み、
(b)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含み、
(c)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号29、30および38と記載されるアミノ酸配列を含み、
(d)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号45、46および47と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、48および49と記載されるアミノ酸配列を含み、
(e)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号50、51および52と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含み、
(f)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および139と記載されるアミノ酸配列を含み、または
(g)当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および103と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号32、33および34と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号29、30および38と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号45、46および47と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、48および49と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号50、51および52と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および37と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および139と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
一部の実施形態では、当該重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号136、137および138と記載されるアミノ酸配列を含み、当該軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ配列番号35、36および103と記載されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
一部の実施形態では、VHは、配列番号13、15、23、25、または130として記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VLは、配列番号14、16、17、24、131、または132として記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0029】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、VHおよびVLを含み、この場合において、
(a)当該VHは、配列番号13を含み、当該VLは、配列番号14を含む、
(b)当該VHは、配列番号15を含み、当該VLは、配列番号16を含む、
(c)当該VHは、配列番号15を含み、当該VLは、配列番号17を含む、
(d)当該VHは、配列番号23を含み、当該VLは、配列番号24を含む、
(e)当該VHは、配列番号25を含み、当該VLは、配列番号16を含む、
(f)当該VHは、配列番号130を含み、当該VLは、配列番号131を含む、または
(g)当該VHは、配列番号130を含み、当該VLは、配列番号132を含む。
【0030】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体はさらに、重鎖(HC)定常領域および軽鎖(LC)定常領域を含み、この場合において当該HC定常領域は、配列番号123、配列番号122、配列番号124、または配列番号125に対し、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、当該LC定常領域は、配列番号126に対し、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0031】
また本明細書において、第二の結合特異性を有する分子に連結された本開示の抗体を含む二特異性分子が提供される。
【0032】
本開示は、本明細書に開示される抗体をコードする核酸、当該核酸を含むベクター、および当該ベクターを含む細胞をさらに提供する。
【0033】
本明細書において、本明細書に開示されるように剤に連結された抗体または二特異性分子を含む免疫結合体も提供される。
【0034】
本開示は、本明細書に開示される抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞、または免疫結合体、および担体を含む組成物を提供する。
【0035】
また本開示において、本明細書に開示される抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞、または免疫結合体、および使用説明書を含むキットも提供される。
【0036】
本明細書において、本明細書に開示される抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞、または免疫結合体を対象に投与することを含む、その必要のある対象においてTREM-1活性を阻害する方法が提供される。
【0037】
本明細書において、本明細書に開示される抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞、または免疫結合体を対象に投与することを含む、その必要のある対象において炎症性疾患または自己免疫性疾患を治療する方法が提供される。
【0038】
一部の実施形態では、炎症性疾患または自己免疫性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、アレルギー、喘息、急性炎症もしくは慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、一つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、追加の治療薬は、抗IP-10抗体または抗TNFα抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本明細書に開示される、異なるエピトープ操作された(epitope-steered)抗TREM-1抗体の重鎖可変領域(VH)の配列アライメントを示す。示される抗体には、(i)P1-047248、(ii)P1-047246、(iii)P1-047247、(iv)P1-047239、(v)P1-047334、(vi)P1-047323、および(vii)P1-047328が含まれる。重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3の領域は、ボックスで囲まれている。
【0041】
【
図2】
図2は、本明細書に開示される、異なるエピトープ操作された(epitope-steered)抗TREM-1抗体の軽鎖可変領域(VL)の配列アライメントを示す。示される抗体は、
図1で示される抗体と同じ抗体である。軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3の領域が示されている(ボックスで囲まれている)。
【0042】
【
図3】
図3は、異なる抗TREM-1抗体に関する、エピトープ競合分析(y軸)と、THP1阻害アッセイの結果(x軸)の比較を示す。エピトープ競合分析のデータは、TREM-1へのmAb170結合の阻害割合として提供される。ひし形は、エピトープ操作されていないクローンから作製された異なる抗TREM-1抗体を表す。円は、エピトープ操作されたクローンから作製された異なる抗TREM-1抗体を表す。
【0043】
【
図4】
図4は、操作(steered)、および非操作(non-steered)エピトープのビンが、重鎖CDR3(HCDR3)アミノ酸配列によってグループ化された抗体とどのように相関するかを示す。提供される各HCDR3配列は、個々の群を表しており、各群は、同じHCDR3配列を共有する一つ以上の抗体からなる。Cisbio HTRFキットで測定されたIL-1ベータタンパク質シグナルの分布に基づいて、異なるHCDR3グループをさらに低nM(0~50、斜線)、中nM(51~500、グレー)、および高nM(501~900、黒色)のIC50カテゴリーへとグループ化した。図の左側に示されるバーは、エピトープ操作されていないクローンから作製された抗TREM-1抗体に対応する。図の右側に示されるバーは、エピトープ操作されたクローンから作製された抗TREM-1抗体に対応する。
【0044】
【
図5A】
図5Aは、様々な抗TREM-1抗体の結合解析の比較を示す。y軸は、様々な抗TREM-1抗体が、TREM-1への結合についてmAb170と競合する能力を示す。データは、mAb170結合の阻害割合として示されている。x軸は、様々な抗TREM-1抗体が、TREM-1への結合についてPGRPと競合する能力を示す。データは、PGRP結合の阻害割合として示されている。示されている異なる抗TREM-1抗体は、エピトープ操作されていないクローン(黒色の菱形)またはエピトープ操作されたクローン(グレーの円)のいずれかから作製された。
図5Aの円で囲まれた抗体(右下の四分円)は、PGRPのTREM-1への結合を最も阻害した、エピトープ操作された抗TREM-1抗体に対応する。箱で囲まれた抗体(右上の四分円)は、PGRPおよびmAb170の両方のTREM-1への結合を最も阻害した、エピトープ操作されていない抗体に対応する。HMEP(High Throughput Mammalian Expression and Purification)緩衝液(すなわち抗体無し)を陰性対照として使用した(白四角)。mAb 0170を陽性対照(白丸)として使用した。
【0045】
【
図5B】
図5Bは、THP1阻害アッセイの結果(y軸)、および
図5Aに示される様々な抗TREM-1抗体の重鎖可変領域(VH)に対応するヒト生殖細胞系列遺伝子(x軸)の両方を示す。軽鎖可変領域に対応するヒト生殖細胞系列の遺伝子も提示されており、各形状は異なる生殖細胞系列遺伝子を表す。THP1阻害アッセイの結果は、阻害割合として示されている。示されている様々な抗TREM-1抗体は、エピトープ操作されていないクローン(黒色/グレー)またはエピトープ操作されたクローン(白)のいずれかから作製された。
図5Aにおいて円で囲まれた抗体および箱で囲まれた抗体は、それぞれ黒色の輪郭および黒色の陰影で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書がより理解され易いように、特定の用語について最初に定義する。追加の定義は、詳細な記述の全体を通して記載される。
【0047】
「a」または「an」の実体という用語は、当該実体のうちの一つ以上を指すことに留意されたい。例えば、「a nucleoride sequence」は、一つ以上のヌクレオチド配列を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「一つ以上」、および「少なくとも一つ」という用語は、本明細書では相互交換可能に使用され得る。
【0048】
さらに、「および/または」は、本明細書で使用される場合、その他を伴うか否かに関わらず、二つの指定された特性または構成要素のそれぞれについての具体的な開示としとして捉えられる。ゆえに本明細書において、「Aおよび/またはB」などの文言中で使用される場合、「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの文言中で使用される場合、「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0049】
本明細書において、態様が「含む」という文言で記述されている場合は、「~からなる」および/または「本質的に~からなる」として記述される他の類似した態様も提供されることを理解されたい。
【0050】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くに関する辞書を当業者に提供する。
【0051】
単位、接頭辞、および記号は、Systeme International de Unites(SI)で許容される形式で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数字を含む。別段の示唆が無い限り、ヌクレオチド配列は、5’から3’の方向に左から右に記載される。アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向に、左から右に記載される。本明細書に提供される見出しは、本開示の様々な態様の限定ではなく、全体としての本明細書に対する参照によりつけられ得たものである。したがって以下に定義される用語は、その全体で本明細書を参照することによって、より完全に定義される。
【0052】
「約」という用語は、本明細書において、領域の大体、概略、またはおよそを意味するために使用される。「約」という用語が数値的な範囲と併せて使用されるとき、当該用語は、当該範囲を、記載される数値よりも上および下に境界を拡張することにより修正する。概して、「約」という用語は、例えば、10%の上下(高低)の分散により、表示される値の上下の数値を修正し得る。
【0053】
「triggering receptor expressed on myeloid cells 1」(TREM1、TREM-1、およびCD354としても知られる)という用語は、単球、マクロファージおよび好中球上で発現される受容体を指す。TREM-1の主要なリガンドとしては、peptidoglycan-recognition-protein 1(PGLYRP1)が挙げられ、PGLYRP1はペプチドグリカン(PGN)結合タンパク質(PGRP)のファミリーに属している。活性化されると、TREM-1は、ITAM含有シグナル伝達アダプタータンパク質であるDAP12と会合する。下流シグナル伝達には、NFAT転写因子の活性化が含まれる場合があり、これにより炎症促進性サイトカインの産生が上方制御される。「TREM-1」という用語には、細胞によって天然に発現されるTREM-1の任意のバリアントまたはアイソフォームが含まれる。したがって一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒト以外の種のTREM-1(例えばカニクイザルのTREM-1)と交差反応し得る。
【0054】
ヒトTREM-1は三つのアイソフォームが特定されている。アイソフォーム1(アクセッション番号NP_061113.1、配列番号1)は、234個のアミノ酸からなり、標準配列である。アイソフォーム2(アクセッション番号NP_001229518.1、配列番号2)は、225個のアミノ酸からなり、アミノ酸残基の201~234で標準配列と異なっている。当該アミノ酸残基は、膜貫通ドメインの一部と細胞質ドメインをコードしている。アイソフォーム3(アクセッションNP_001229519、配列番号3)は、150個のアミノ酸からなり、可溶性である。アミノ酸残基の151-234を欠いており、その部分は、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、および細胞外ドメインの一部をコードする。またアミノ酸残基の138-150も、上述の標準配列と異なっている。
【0055】
以下は、三つの公知のヒトTREM-1アイソフォームのアミノ酸配列である。
(A)ヒトTREM-1アイソフォーム1(アクセッション番号NP_061113.1、配列番号1、アクセッション番号NM_018643、配列番号4のヌクレオチド配列によりコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRVPVFNIVILLAGGFLSKSLVFSVLFAVTLRSFVP(下線部分はシグナル配列);
(B)ヒトTREM-1アイソフォーム2(アクセッション番号NP_001229518.1、配列番号2、アクセッション番号NM_001242589、配列番号5のヌクレオチド配列によりコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRYSFQVPGPLVWTLSPLFPSLCAERM(下線部分はシグナル配列);
(C)ヒトTREM-1アイソフォーム3(アクセッション番号NP_001229519、配列番号3、アクセッション番号NM_001242590、配列番号6のヌクレオチド配列によりコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFRCSTLSFSWLVDS(下線部分はシグナル配列)。
【0056】
カニクイザルTREM-1タンパク質(アクセッション番号XP_001082517、配列番号7)は、以下のアミノ酸配列を有すると予測される:
MRKTRLWGLLWMLFVSELRATTELTEEKYEYKEGQTLEVKCDYALEKYANSRKAWQKMEGKMPKILAKTERPSENSHPVQVGRITLEDYPDHGLLQVQMTNLQVEDSGLYQCVIYQHPKESHVLFNPICLVVTKGSSGTPGSSENSTQNVYRTPSTTAKALGPRYTSPRTVTQAPPESTVVVSTPGSEINLTNVTDIIRVPVFNIVIIVAGGFLSKSLVFSVLFAVTLRSFGP(下線部分はシグナル配列)。
【0057】
本開示は、TREM-1に特異的に結合し、機能を阻害する抗体に関する。抗体は、TREM-1の活性化および下流シグナル伝達を低下/遮断することによって、TREM-1の機能を妨害する。
【0058】
本開示の抗TREM-1抗体は、TREM-1を直接または間接的に妨害するいくつかの異なるメカニズムの一つまたは組み合わせにより、TREM-1のシグナル伝達を遮断する。一つの実施形態では、抗体は、TREM-1の天然リガンドであるpeptidoglycan recognition protein 1(PGLYRP1)が、TREM-1と機能的複合体を形成することを防止する。別の実施形態では、抗体は、個々のTREM-1分子が、二量体または多量体を形成するのを防止することによって、TREM-1を阻害する。一部の実施形態では、TREM-1の二量体形成または多量体形成は、TREM-1の一部分に結合する能力を有する抗TREM-1抗体により低下または防止される。当該TREM-1の一部分は、そうでなければTREM-1二量体の境界面に存在するものであり、ゆえに個々のTREM-1分子が互いに会合することが防止される。他の実施形態では、TREM-1の二量体形成または多量体形成は、TREM-1とそのリガンドとの相互作用に干渉する抗TREM-1抗体によって低下または防止される。
【0059】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、PGLYRP1誘導型のTREM-1活性化を妨害し得る。PGLYRP1は高度に保存されており、シグナルペプチドとペプチドグリカン結合ドメインからなる196アミノ酸の長さのタンパク質であり、好中球で発現され、好中球の活性化で放出される。PGLYRP1(アクセッション番号NP_005082.1、配列番号8)のアミノ酸配列を以下に示す:
MSRRSMLLAWALPSLLRLGAAQETEDPACCSPIVPRNEWKALASECAQHLSLPLRYVVVSHTAGSSCNTPASCQQQARNVQHYHMKTLGWCDVGYNFLIGEDGLVYEGRGWNFTGAHSGHLWNPMSIGISFMGNYMDRVPTPQAIRAAQGLLACGVAQGALRSNYVLKGHRDVQRTLSPGNQLYHLIQNWPHYRSP(下線部分はシグナル配列)。
【0060】
したがって一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、例えば樹状細胞および単球(例えばTHP-1細胞)などの骨髄細胞からの炎症促進性サイトカインの放出を下方制御または遮断する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、本明細書に開示されるように、マクロファージ、好中球、滑膜組織細胞、および/またはレポーター細胞からのTNF-α、MIP-1ベータ、MCP-1、IL-1ベータ、GM-CSF、IL-6、および/またはIL-8の放出を遮断する。
【0061】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、ヒトのTREM-1、および別種のTREM-1の両方に結合する。したがって本明細書で使用される場合、「TREM-1」という用語は、任意の適切な生物体から誘導され得る任意の天然型のTREM-1を包含する。例えば、本明細書に記載される使用のためのTREM-1は、例えば霊長類(例えばヒト、チンパンジー、カニクイザル、またはアカゲザルなど)、齧歯類(例えばマウスまたはラット)、ウサギ目(例えばウサギ)、または偶蹄目(例えばウシ、ヒツジ、ブタまたはラクダ)に由来するTREM-1など、哺乳動物のTREM-1などの脊椎動物TREM-1であってもよい。特定の実施形態では、TREM-1は、配列番号1(ヒトTREM-1、アイソフォーム1)である。TREM-1は、例えば適切な細胞内で翻訳後プロセッシングを受けたTREM-1タンパク質など、成熟型のTREM-1であってもよい。そのような成熟型TREM-1タンパク質は、例えば、グリコシル化されてもよい。TREM-1は、全長のTREM-1タンパク質であってもよい。
【0062】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、Bリンパ球の単一クローンから直接または間接的に誘導されたという意味で、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、国際特許出願公開WO2013/120553に記載される方法などを使用して作製、スクリーニングおよび精製される。簡潔に述べると、例えばTREM-1、またはTREM-l/TREM-3ノックアウト(KO)マウスなどの適切なマウスを、TREM-1、TREM-1発現細胞、またはその両方の組み合わせを用いて免疫化する。別の実施形態では、抗TREM-1抗体は、本明細書に開示されるモノクローナル抗体の混合物であるという意味で、ポリクローナル抗体である。
【0063】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、原核細胞または真核細胞で組換え発現される。一部の実施形態では、原核細胞は、大腸菌である。特定の実施形態では、真核生物は、酵母、昆虫、または哺乳動物の細胞であり、例えば霊長類(例えばヒト、チンパンジー、カニクイザル、またはアカゲザルなど)、齧歯類(例えばマウスまたはラットなど)、ウサギ目(例えばウサギなど)、または偶蹄目(例えばウシ、ヒツジ、ブタまたはラクダなど)である生物体から誘導された細胞である。好適な哺乳動物細胞株としては限定されるものではないが、HEK293細胞、CHO細胞、およびHELA細胞が挙げられる。本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、例えばファージディスプレイまたは酵母ディスプレイなどの当業者に公知の他の方法によっても作製することができる。作製された時点で当該抗体を、例えば国際特許出願公開2013/120553の実施例に記載される方法を使用して全長TREM-1またはその変異体への結合に関してスクリーニングすることができる。
【0064】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、参照抗体(例えば、mAb 0170)により認識される、ヒトTREM-1上のエピトープから離れて操作される。したがって一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1への結合に関して参照抗体(例えば、mAb 0170)と競合しない。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(配列番号1)のアミノ酸D38~F48に結合しない。特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(配列番号1)のアミノ酸D38~L45、E46~Q56、および/またはY90~L96に結合しない。参照抗体mAb 0170の結合エピトープは、当分野で公知である。例えば、米国特許第9,000,127号を参照のこと。
【0065】
本明細書で使用される場合、「エピトープ操作された」という用語は、ヒトTREM-1(配列番号1)のD38~L45、E46~Q56、および/またはY90~L96以外のエピトープに結合するように選択される抗TREM-1抗体を指す。一部の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(例えば、アイソフォーム1、配列番号1)の(1)27EKYELKEGQTL37(配列番号9)、(2) 88EDYHDHGLLRVRM100(配列番号10)、(3) 120KEPHMLFDR128(配列番号11)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される一つ以上のエピトープに結合する。
【0066】
本明細書に記載されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、例えば実施例に記載される方法など、当分野で公知の任意の方法により作製することができる。一部の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、上記のエピトープ(例えば、配列番号1のアミノ酸残基38~48)のうちの一つで変異を含むヒトTREM-1ポリペプチドを用いて動物(例えば、マウス)を免疫化することにより生成することができる。免疫化が為された時点で、生成された抗体を、ヒトTREM-1への結合に関してさらに特徴解析してもよい。一部の実施形態では、対象となるエピトープを含む合成ペプチドを合成し、そしてこれを使用して動物(例えば、マウス)を免疫化してもよい。一部の実施形態では、対象となるエピトープを含む代替的足場(例えば、第10ヒトフィブロネクチンIII型ドメイン、10Fn3またはα3D、高度に熱安定性の3ヘリックスバンドルタンパク質)を使用してもよい。
【0067】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、エピトープ操作されておらず、それゆえに参照抗体(例えば、mAb170)と同じエピトープに結合することができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原(TREM-1)またはその一部に特異的に結合する能力を有する生殖系列免疫グロブリン配列に由来するタンパク質を指す。当該用語は、任意のクラスまたはアイソタイプ(すなわち、IgA、IgE、IgG、IgMおよび/またはIgY)の全長抗体、および任意の一本鎖またはその断片を含む。抗原またはその一部に特異的に結合する抗体は、当該抗原またはその一部に排他的に結合してもよく、または限られた数の相同抗原もしくはその一部に結合してもよい。全長抗体は通常、少なくとも四つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続される二つの重(H)鎖と二つの軽(L)鎖を含む。特定の医薬的な対象となる免疫グロブリンのサブクラスの一つは、IgGファミリーである。ヒトでは、IgGクラスは、以下の4つのサブクラスに下位分割され得る:IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4。これらはその重鎖定常領域の配列に基づいている。軽鎖は、配列組成の差異に基づいて、カッパとラムダの二つのタイプに分けられ得る。IgG分子は二つ以上のジスルフィド結合によって連結された二つの重鎖と、各々がジスルフィド結合によって重鎖に付加された二つの軽鎖から構成される。重鎖は、重鎖可変領域(VH)、ならびにCH1、CH2およびCH3の最大3個の重鎖定常(CH)領域を含み得る。軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含み得る。VH領域とVL領域はさらにフレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存的な領域と、その間に配置された相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変性の領域に下位分割され得る。VH領域とVL領域は典型的には三つのCDRと四つのFRから構成され、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の超可変領域は、抗原と相互作用することができる結合ドメインを形成する。一方で抗体の定常領域は、限定されないが免疫システム(エフェクター細胞)の様々な細胞、Fc受容体、および古典的補体系の第一成分(C1q)をはじめとする宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を介在し得る。本発明の抗体は、単離され得る。「単離抗体」という用語は、自身が産生された環境中の他の構成要素から分離および/または回収された抗体、および/または自身が産生された環境中に存在する構成要素の混合物から精製された抗体を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により実施され得ることが示されているため、抗体の特定の抗原結合断片は、本発明の状況下において好適であり得る。
【0069】
抗体の「抗原結合部分」という用語は、本明細書に記載される例えばTREM-1などの抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の一つ以上の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)S、Fv(典型的には、抗体の一つのアームのVLドメインとVHドメイン)、一本鎖Fv(scFv、例えば、Bird et al.,Science 242:42S-426(1988);Huston et al.,PNAS 85:5879-5883(1988)を参照のこと)、dsFv、Fd(典型的には、VHおよびCH1ドメイン)およびdAb(典型的には、VHドメイン)断片;VH、VL、VhHおよびV-NARドメイン;一つのVHと一つのVLを含有する一価分子;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびカッパボディ(例えば、Ill et al.,Protein Eng 10:949-57(1997)を参照のこと):ラクダ科IgG;IgNAR;ならびに一つ以上の単離CDRまたは機能性パラトープであって、当該単離されたCDRまたは抗原結合残基もしくはポリペプチドは、互いに関連付けられ、または連結されて、機能性抗体断片を形成することができるもの、が挙げられる。様々なタイプの抗体断片が、例えば、Holliger and Hudson,Nat Biotechnol 2S:1126-1136(2005);国際特許出願公開WO2005/040219、ならびに米国特許公開2005/0238646および2002/0161201に記載され、レビューされている。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来的な技術を使用して取得されてもよく、断片は、完全抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされてもよい。
【0070】
「ヒト」抗体(HuMAb)とは、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、当該定常領域も、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な突然変異誘導により導入された変異、またはインビボでの体細胞突然変異により導入された変異)を含んでもよい。しかしながら「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むことは意図されていない。「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体という用語は、同意語として使用される。
【0071】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する一つ以上の配列(CDR領域またはその一部)を含有するヒト/非ヒトのキメラ抗体を指す。すなわちヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の少なくとも数残基が、所望の特異性、アフィニティ、配列組成および機能性を有する、例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)由来の抗体の超可変領域由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基で置換される。そのような改変の一例は、一つ以上のいわゆる復帰突然変異の導入であり、復帰突然変異は、典型的にはドナー抗体に由来するアミノ酸残基である。抗体のヒト化は、当業者に公知の組み換え技術を使用して実施され得る(例えば、Antibody Engineering,Methods in Molecular Biology,vol.248,edited by Benny K.C.Loを参照のこと)。軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方に適したヒトレシピエントフレームワークは、例えば、配列相同性または構造相同性により特定されてもよい。あるいは、例えば、構造、生物物理学的および生化学的な特性に関する知識に基づいて、固定されたレシピエントフレームワークを使用してもよい。レシピエントフレームワークは、生殖細胞系列由来であってもよく、または成熟抗体配列に由来してもよい。ドナー抗体由来のCDR領域は、CDR移植によって移送されてもよい。CDR移植ヒト化抗体は、ドナー抗体由来のアミノ酸残基の再導入(復帰突然変異)が当該ヒト化抗体の特性に有益な影響を与えるような重要なフレームワーク位置を特定することによって、例えばアフィニティ、機能性、および生物物理特性に関してさらに最適化することができる。ドナー抗体に由来する復帰突然変異に加えて、ヒト化抗体は、CDRまたはフレームワーク領域に生殖細胞系列の残基の導入、免疫原性エピトープの除去、部位特異的突然変異誘導、アフィニティ成熟などによって操作することができる。
【0072】
さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には存在しない残基を含むことができる。これらの改変は、抗体性能をさらに改良するために行われる。概してヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインを含有し、その中で、CDR領域のすべて、または実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そしてFR残基のすべて、または実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。またヒト化抗体は任意で、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含有する。「ヒト化抗体誘導体」という用語は、例えば抗体と、別の剤または別の抗体との結合体など、ヒト化抗体の任意の改変型を指す。
【0073】
「組み換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである、またはトランスクロモゾーマル(transchromosomal)である動物(例えばマウス)、またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)など、抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞から単離された抗体、(c)組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む任意の他の手段により調製され、発現され、生成され、または単離された抗体、など、組み換え手段により調製され、発現され、生成され、または単離されたすべてのヒト抗体を含む。こうした組換えヒト抗体は、生殖細胞系列遺伝子によってコードされる、特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を利用する可変領域および定常領域を含むが、例えば、抗体成熟中に生じるその後の再構成および変異も含む。当分野で公知のように(例えば、Lonberg Nature Biotech.23(9):1117-1125(2005)を参照のこと)、可変領域は抗原結合ドメインを含み、当該ドメインは、外来性抗原に特異的な抗体を形成するために再構成する様々な遺伝子によりコードされる。再構成に加えて、可変領域は、外来性抗原に対する抗体のアフィニティを増加させるために、複数の単一アミノ酸変化(体細胞突然変異または超変異と呼称される)によってさらに修飾され得る。定常領域は抗原に対するさらなる応答において、変化する(すなわちアイソタイプスイッチ)。したがって、軽鎖免疫グロブリンポリペプチドおよび重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする、抗原に応答して再構成された、および体細胞変異した核酸分子は、元の核酸分子と配列同一性を有していない場合があるが、その代わりに実質的に同一であるか、または類似である(すなわち少なくとも80%の同一性を有する)。
【0074】
「キメラ抗体」とは、可変領域が一つの種に由来し、定常領域は別の種に由来する抗体を指し、例えば、可変領域はマウス抗体に由来し、定常領域はヒト抗体に由来する抗体などである。
【0075】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、IgG抗体である。本明細書で使用される場合、例えばヒトIgG1などの「IgG抗体」は、特定の実施形態において、天然IgG抗体の構造を有する。すなわち、IgG抗体は、同じサブクラスの天然IgG抗体と同じ数の重鎖と軽鎖、およびジスルフィド結合を有する。例えば、TREM-1 IgG1抗体は、二つの重鎖(HC)と二つの軽鎖(LC)からなり、この場合において当該重鎖と軽鎖は、天然IgG1抗体に存在するジスルフィド架橋と同じ数および位置で連結される(当該抗体が、ジスルフィド架橋を改変する変異を受けている場合を除く)。
【0076】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEの抗体)を指す。
【0077】
「アロタイプ」とは、特定のアイソタイプ群内で自然発生するバリアントを指し、当該バリアントはいくつかのアミノ酸で異なっている(例えば、Jefferis et al.,mAbs 1:1(2009)を参照のこと)。本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、任意のアロタイプであってもよい。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、「IgG1.3f」アロタイプの抗体であり、当該抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号12)と比較して、EUナンバリングで、L234A、L235E、およびG237Aからなる群から選択される一つ以上のアミノ酸置換を含む。他の実施形態では、抗TREM-1は、「IgG1.1f」アロタイプの抗体であり、当該抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号12)と比較して、EUナンバリングで、L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sからなる群から選択される一つ以上のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体は、「IgG1-Aba」アロタイプの抗体であり、当該抗体は野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号12)と比較して、EUナンバリングで、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される一つ以上のアミノ酸置換を含む。さらなる実施形態では、抗TREM-1抗体は、「IgG4-Aba」アロタイプの抗体であり、当該抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号12)と比較して、EUナンバリングで、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229S、P238Sからなる群から選択される一つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0078】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という文言は、本明細書において「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と相互交換可能に使用される。
【0079】
「単離抗体」は、本明細書で使用される場合、自身が産生された環境中の他の構成要素から分離および/または回収された抗体、および/または自身が産生された環境中に存在する構成要素の混合物から精製された抗体を指す。
【0080】
「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域と、Fc受容体またはリガンドの相互作用、またはそれから生じる生化学的な事象を指す。「エフェクター機能」の例としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、例えばADCCおよび抗体依存性細胞介在性ファゴサイトーシス(ADCP)などのFcγ介在型のエフェクター機能、および細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)の下方制御が挙げられる。そのようなエフェクター機能は概して、Fc領域を、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)に結合させることを必要とする。一つの実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、一つ以上のFcγRに結合せず、したがってエフェクター機能を欠く(すなわち、エフェクターレス)Fc領域を含む。
【0081】
「Fc受容体」または「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、FcγRファミリーの受容体を含み、それら受容体のアレルバリアントおよび代替的スプライシング型を含む。FcγRファミリーは、三つの活性化受容体(マウスではFcγRI、FcγRIII、およびFcγRIV。ヒトではFcγRIA、FcγRIIA、およびFcγRIIIA)、および一つの阻害性受容体(FcγRIIB)からなる。ヒトFcγRの様々な特性は、当分野で公知である。生来のエフェクター細胞型の大部分は、一つ以上の活性化FcγR、および阻害性FcγRIIBを共発現している。一方でナチュラルキラー(NK)細胞は、一つの活性化Fc受容体(マウスではFcγRIII、ヒトではFcγRIIIA)を選択的に発現するが、マウスおよびヒトでは阻害性FcγRIIBは発現しない。ヒトIgG1はほとんどのヒトFc受容体に結合し、結合する活性化Fc受容体のタイプに関し、マウスIgG2aと同等であると考えられている。
【0082】
「Fc領域」(フラグメント結晶化可能領域)または「Fcドメイン」または「Fc」とは、宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を介在する抗体重鎖のC末端領域を指し、当該結合は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置するFc受容体への結合、または古典的補体系の第一成分(C1q)への結合を含む。したがって、Fc領域は、第一の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1またはCL)を除く抗体の定常領域を含む。
【0083】
IgGでは、Fc領域は、免疫グロブリンドメインのCH2およびCH3、ならびにCH1ドメインとCH2ドメインの間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界の定義は、本明細書に定義されるように変化し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、IgG1については、アミノ酸残基D221、IgG2についてはV222、IgG3についてはL221、およびIgG4についてはP224から、重鎖のカルボキシ末端までの範囲と定義され、この場合においてナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、アミノ酸237からアミノ酸340にわたり、CH3ドメインは、Fc領域内のCH2ドメインのC末端側に位置する。すなわち、IgGのアミノ酸341からアミノ酸447または446(C末端リジン残基が存在しない場合)または445(C末端グリシン残基とリジン残基が存在しない場合)にわたる。本明細書で使用される場合、Fc領域は、任意のアロタイプバリアントを含む天然配列のFcであってもよく、またはバリアントFc(例えば、非天然Fc)であってもよい。Fcとはさらに、単離された当該領域を指す場合もあり、またはFc含有タンパク質ポリペプチド、例えば「Fc融合タンパク質」(例えば、抗体または免疫接着(immunoadhesion))とも呼称される「Fc領域含有結合タンパク質」などの背景下の当該領域を指す場合もある。
【0084】
「天然配列のFc領域」または「天然配列Fc」は、自然界に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、および天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然バリアントが含まれる。天然配列Fcは、Fcの様々なアロタイプを含む(例えば、Jefferis et al.,mAbs 1:1(2009)を参照のこと)。
【0085】
「バリアント配列Fc領域」または「非天然Fc」は改変を含み、典型的には、例えば血清半減期、補体結合反応、Fc受容体結合、タンパク質安定性、および/または抗原依存性細胞傷害、または特にそれらの欠落など、その機能的特性のうちの一つ以上が変化する。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、化学的に改変されてもよく(例えば、一つ以上の化学的部分が抗体に結合されてもよい)、または改変されてそのグリコシル化を変化させ、再び抗体の一つ以上の機能的特性を変化されてもよい。一つの実施形態では、抗TREM-1抗体は、IgG1アイソタイプであり、以下の変異のうちの一つ以上、おそらくはすべてを含む改変Fcドメインを担持する:それぞれ、特定のFc受容体へのアフィニティを低下させる(L234A、L235E、およびG237A)、およびC1q-介在型補体結合反応を低下させる(A330SおよびP331S)(残基はEUインデックスに従いナンバリングされる)。
【0086】
「ヒンジ」、「ヒンジドメイン」、「ヒンジ領域」、および「抗体ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに結合させる重鎖定常領域のドメインを指し、ヒンジの上部、中間部、および下部を含む(Roux et al.,J Immunol 161:4083(1998))。ヒンジは、抗体の結合領域とエフェクター領域との間に様々なレベルの柔軟性を提供し、そして二つの重鎖定常領域間の分子間ジスルフィド結合のための部位も提供する。本明細書で使用される場合、ヒンジは、すべてのIgGアイソタイプのGlu216で始まり、Gly237で終わる(Roux et al.,J Immunol 161:4083(1998))。野生型のIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4ヒンジの配列は当分野で公知である(例えば、国際PCT出願公開のWO 2017/087678)。一つの実施形態では、抗TREM-1抗体のCH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変わるように、例えば増加または減少するように改変される。この方法は、例えば米国特許第 第5,677,425号にさらに記載されている。
【0087】
定常領域は、抗体を安定化させ、例えば、二価抗体が、二つの一価VH-VL断片に分離するリスクを減少させるように改変されてもよい。例えば、IgG4定常領域において、残基S228(EUインデックスによる残基ナンバリング)を、プロリン(P)残基に変異させて、ヒンジで重鎖間ジスルフィド架橋形成を安定化させてもよい(例えば、Angal et al.,Mol Immunol.30:105-8(1995)を参照のこと)。抗体またはその断片は、その相補性決定領域(CDR)の観点から定義することもできる。本明細書において使用される場合、「相補性決定領域」または「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与するアミノ酸残基が位置する抗体の領域を指す。超可変領域またはCDR領域は、抗体可変ドメインのアミノ酸アラインメントにおいて最も高い変動性を有する領域として特定することができる。例えば、軽鎖可変ドメインのアミノ酸残基24-34(CDR1)、50-59(CDR2)、および89-97(CDR3)、ならびに重鎖可変ドメインのアミノ酸残基31-35(CDR1)、50-65(CDR2)、および95-102(CDR3)を含むと定義されるCDRなど、KabatデータベースなどのデータベースをCDR特定に使用することができる(Kabat et al.1991;Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)。あるいはCDRは、「超可変ループ」(軽鎖可変ドメインの残基26-33(L1)、50-52(L2)および91-96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの26-32(H1)、53-55(H2)および96-101(H3)(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol 196 : 901-917(1987))に由来する残基と定義することもできる。典型的には、当該領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、上記のKabatらに記載される方法により行われる。例えば「Kabat位置」、「Kabat残基」、および「Kabatに従い」といった文言は、本明細書において、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに関する当該ナンバリングシステムを指す。Kabatナンバリングシステムを使用することで、ペプチドの実際の線形アミノ酸配列は、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含む場合があり、それらは可変ドメインのフレームワーク(FR)またはCDRの短縮型または挿入に相当する。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後にアミノ酸挿入(Kabatに従い、残基52a、52bおよび52c)、および重鎖FRの残基82の後に挿入残基(Kabatに従い、例えば残基82a、82bおよび82c)を含む場合がある。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体について、「標準」Kabatナンバリング配列と当該抗体配列の相同領域でのアライメントによって判定されてもよい。
【0088】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原(例えばTREM-1)上の部位を指し、例えば、エピトープを特定するために使用される特定の方法によって定義される。エピトープは、連続的なアミノ酸(通常、線形エピトープ)から形成されることができ、またはタンパク質の三次元フォールディングによって並置される非連続的なアミノ酸(通常、立体構造エピトープ)からも形成されることができる。連続的なアミノ酸から形成されたエピトープは、常にではないが典型的には、変性溶媒へ暴露されても保持されるのに対して、三次元フォールディングにより形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒を用いた処理によって失われる。典型的にはエピトープは、固有の空間構造にある少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。どのエピトープが所与の抗体に結合されるかを判定するための方法(すなわちエピトープマッピング)は当分野に公知であり、例えば、免疫ブロットアッセイおよび免疫沈降アッセイが挙げられる。この場合において、重複または連続ペプチド(例えば、TREM-1に由来する)は、所与の抗体(例えば、抗TREM-1抗体)との反応性について試験される。エピトープの空間構造を決定する方法としては当分野の技術および本明細書に記載される技術が挙げられ、例えば、X線結晶構造解析、抗原変異解析、2次元核磁気共鳴およびHDX-MSが挙げられる(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照のこと)。
【0089】
二つ以上の抗体を参照して「同じエピトープに結合する」という用語は、所与の方法によって決定される、抗体がアミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と「TREM-1上の同じエピトープ」に結合するかを判定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法が挙げられ、例えばエピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線解析、および水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)が挙げられる。他の方法は、抗原断片、または抗原の変異型への抗体の結合をモニタリングするものであり、抗原配列内のアミノ酸残基の改変による結合の消失はしばしばエピトープ構成要素の指標とみなされる。さらに、エピトープマッピングのためのコンピューターコンビナトリアル法も使用され得る。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイのペプチドライブラリに由来する特定の短いペプチドをアフィニティ単離する対象となる抗体の能力に依存する。同じVHおよびVL、または同じCDR1、2および3の配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0090】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体とは、標的への他の抗体の結合を阻害する(部分的または完全に)抗体を指す。二つの抗体が、標的への結合に関して相互に競合するか否か、すなわち、一方の抗体が、他方の抗体の標的への結合を阻害するかどうか、そしてどの程度まで阻害するかを、例えばBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)解析などの公知の競合実験を使用して決定することができる。特定の実施形態では、抗体は、標的に対する結合を別の抗体と競合し、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「ブロッキング抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされるコールド抗体)であるかに応じて異なり得る。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harb Protoc ;2006;doi: 10.1101/pdb.prot4277、または“Using Antibodies”by Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA 1999のチャプター11に記載されるように実施することができる。二つの抗体が少なくとも50%、両方向で互いに阻害する場合、すなわち一方の抗体または他方の抗体が競争実験で抗原と最初に接触したかに関わらず、互いに阻害する場合、「交差競合する」。
【0091】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」という用語は、既定の抗原上のエピトープに結合する抗体を指す。典型的には、抗体は、(i)例えば分析物として組み換えヒトTREM-1などの規定の抗原およびリガンドとして抗体を使用して、例えばBIACORE(登録商標)2000装置において表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定されたときに、または抗原陽性細胞に対する抗体のScatchard分析により、約10-7M未満、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満もしくは10-10M未満またはさらに低い平衡解離定数(KD)で結合し、および(ii)規定の抗原または近縁の抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼインなど)への結合のアフィニティよりも少なくとも二倍超高いアフィニティで既定の抗原に結合する。したがって、「ヒトTREM-1に特異的に結合する」抗体とは、10-7M以下、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満もしくは10-10M未満またはさらに低いKDで可溶性または細胞結合型のヒトTREM-1に結合する抗体を指す。「カニクイザルTREM-1と交差反応する」抗体とは、10-7M以下、例えば、およそ10-8M未満、10-9M未満、もしくは10-10M未満、またはさらに低いKDで、カニクイザルTREM-1に結合する抗体を指す。特定の実施形態では、非ヒト種由来のTREM-1と交差反応しないような抗体は、標準結合アッセイにおいて、これらのタンパク質に対し、本質的に検出不可能な結合を示す。
【0092】
本明細書において「結合特異性」という用語は、例えば抗体またはその断片などの分子と、単一の排他的抗原との相互作用、または限られた数の高度に相同な抗原(またはエピトープ)との相互作用を指す。対照的に、TREM-1に特異的に結合することができる抗体は、非類似の分子に結合することができない。本発明による抗体は、ナチュラルキラー細胞p44関連タンパク質であるNkp44に結合する能力を有さない場合がある。
【0093】
相互作用の特異性、および平衡結合定数の値は、公知の方法によって直接決定することができる。リガンド(例えば抗体など)が自身の標的に結合する能力を評価するための標準的なアッセイは、当分野で公知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー分析が挙げられる。抗体の結合動態および結合アフィニティも、例えばSPRなど、当分野で公知の標準的なアッセイにより評価することができる。
【0094】
二つの抗体が結合に関して競合するか、または交差競合するかを判定するための競合結合アッセイとしては、例えば実施例に記載されるように、フローサイトメトリーによる、TREM-1発現骨髄細胞への結合に対する競合が挙げられる。他の方法としては、以下が挙げられる:SPR(例えば、BIACORE(登録商標))、固相直接または間接の放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接の酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)を参照)、1-125標識を使用した固相直接標識RIA(Morel et al.,Mol.Immunol.25(1):7(1988)を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990))、および直接標識RIA。(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32:77(1990)を参照)。
【0095】
本明細書で使用される場合、「ビン」という用語は、参照抗体を使用して規定される。第二の抗体が、参照抗体と同時に抗原に結合することができない場合、当該第二の抗体は、参照抗体と同じ「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体と第二の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合し、「競合抗体」という言葉が作られた。第二の抗体が、参照抗体と同時に抗原に結合することができる場合、当該第二の抗体は、別個の「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体と第二の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合せず、「非競合抗体」という言葉が作られた。
【0096】
抗体の「ビン化」は、エピトープに関する直接的な情報は提供しない。競合抗体、すなわち、同じ「ビン」に属する抗体は、同一のエピトープ、重複するエピトープ、または別個のエピトープでさえ有する可能性がある。後者は、抗原上の自身のエピトープに結合した参照抗体が、第二の抗体が抗原上の自身のエピトープと接触するために必要な空間を占有する場合である(立体障害)。非競合抗体は、一般的には別個のエピトープを有する。
【0097】
本明細書において「結合アフィニティ」という用語は、例えば抗体またはその断片と抗原など、二つの分子間の非共有結合性の相互作用の強度の尺度を指す。「結合アフィニティ」という用語は、一価の相互作用(内在的な活性)を記述するために使用される。
【0098】
例えば抗体またはその断片と抗原など、二つの分子間の一価相互作用を介した結合アフィニティは、平衡解離定数(KD)の決定によって定量化され得る。同様に、KDは、例えばSPR法によって、複合体の形成と解離の動態を測定することによって決定され得る。一価複合体の結合と解離に対応する速度定数は、それぞれ、結合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd(またはk0ff)と呼称される。KDは、式KD=kd/kaを通して、kaおよびkdに関連付けられる。上記の定義に続いて、例えば所与の抗原に対する異なる抗体の結合アフィニティの比較など、異なる分子相互作用と関連する結合アフィニティは、個々の抗体/抗原複合体に対するKD値を比較することによって比較され得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、IgG抗体に関する「高アフィニティ」という用語は、標的抗原に対して10-8M以下、10-9M以下、または10-10M以下のKDを有する抗体を指す。しかし他の抗体アイソタイプに関しては、「高アフィニティ」の結合は変化する可能性がある。例えば、IgMアイソタイプに関する「高アフィニティ」の結合は、10-10M以下または10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0100】
抗体またはその抗原結合断片を使用したインビトロアッセイまたはインビボアッセイの状況下で、「EC50」という用語は、最大応答の50%、すなわち最大応答と基準の間の中間である応答を誘導する、抗体またはその抗原結合部分の濃度を指す。
【0101】
本明細書において使用される場合、物体に対して適用される場合の「天然」という用語は、物体が自然界に存在し得るという事実を指す。例えば自然界で源から単離され得る生物体(ウイルスを含む)中に存在し、実験室においてヒトにより意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列は、天然である。
【0102】
「ポリペプチド」とは、鎖の長さに上限のない、少なくとも二つの連続する連結アミノ酸残基を含む鎖を指す。タンパク質中の一つ以上のアミノ酸残基は、例えば限定されないが、グリコシル化、リン酸化、またはジスルフィド結合の形成などの改変を含有し得る。「タンパク質」は、一つ以上のポリペプチドを含み得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を含むことが意図されている。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってもよく、cDNAであってもよい。
【0104】
「保存的アミノ酸置換」とは、類似の側鎖を有するアミノ酸残基とのアミノ酸残基の置換を指す。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野に規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体中の予測される非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合を消去しないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を特定する方法は、当分野で公知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32: 1180-1187(1993);Kobayashi et al.Protein Eng.12(10):879-884(1999);およびBurks et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412-417(1997)を参照のこと)。
【0105】
核酸については、「実質的相同性」という用語は、二つの核酸またはその指定配列が最適にアライメントされ、比較されたときに、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を伴い、少なくとも約80%のヌクレオチド、少なくとも約90%~95%のヌクレオチド、または少なくとも約98%~99.5%のヌクレオチドにおいて同一であることを示す。あるいは実質的相同性は、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で当該鎖の相補鎖にハイブリダイズするときに存在する。
【0106】
ポリペプチドについては、「実質的相同性」という用語は、二つのポリペプチドまたはその指定配列が最適にアライメントされ、比較されたときに、適切なアミノ酸の挿入または欠失を伴い、少なくとも約80%のアミノ酸、少なくとも約90%~95%のアミノ酸、または少なくとも約98%~99.5%のアミノ酸において同一であることを示す。
【0107】
二つの配列間の同一性の百分率は、配列によって共有される同一な位置の数の関数であり(すなわち相同性%=同一な位置の数/位置の総数x100)、当該二つの配列の最適アライメントのために導入が必要なギャップ数、および各ギャップの長さを考慮する。配列の比較、および二つの配列間の同一性百分率の決定は、以下の非限定的な例に記載されるような数学的アルゴリズムを使用して実施されてもよい。
【0108】
二つのヌクレオチド配列間の同一性百分率は、GCGソフトウェアパッケージ(worldwideweb.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリクス、および40、50、60、70、または80のギャップ重量、および1、2、3、4、5、または6の長さ重量を使用して決定されてもよい。二つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性百分率はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、E.MeyersおよびW.Miller(CABIOS,4: 11-17(1989))のアルゴリズムを使用して、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して決定されてもよい。さらに二つのアミノ酸配列間の同一性百分率は、GCGソフトウェアパッケージ(worldwideweb.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ重量、および1、2、3、4、5、または6の長さ重量を使用して決定されてもよい。
【0109】
本明細書に記載される核酸配列およびタンパク質配列はさらに、例えば、関連配列の特定を目的とした公共データベースに対する検索を実施するための「クエリ配列」として使用されてもよい。そのような検索は、Altschul,et al.(1990),J.Mol.Biol.215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施されてもよい。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施して、本明細書に記載される核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得してもよい。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施して、本明細書に記載されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得してもよい。比較目的でのギャップ化アライメントを取得するために、Gapped BLASTを、Altschul et al.,(1997) Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されるように利用してもよい。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用してもよい。worldwideweb.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0110】
核酸は、全細胞、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分精製された、もしくは実質的に純粋な形態で存在してもよい。他の細胞構成要素または他の混入物、例えば他の細胞核酸(例えば染色体の他の部分)またはタンパク質から、アルカリ/SDS処置、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当分野に公知の他の方法を含む標準的な技術により精製された場合、核酸は「単離された」または「実質的に純粋となる」。F.Ausubel,et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)を参照のこと。
【0111】
例えばcDNAなどの核酸は、遺伝子配列を提供するための標準的な技術に従って変異を受けてもよい。コード配列に関し、これらの変異はアミノ酸配列に望ましい影響を及ぼし得る。特に、天然のV配列、D配列、J配列、定常配列、スイッチ配列、および本明細書に記載される他のかかる配列に対し実質的に相同であるか、またはそれらから誘導されるDNA配列が予期される(この場合、「誘導される」とは、配列が別の配列と同一であるか、別の配列から改変されていることを示す)。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図される。ある種のベクターは、「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがその中にライゲーションされ得る環状二本鎖のDNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このベクターでは追加のDNAセグメントはウイルスゲノム内にライゲーションされ得る。特定のベクターは、自身が導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば細菌複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると、宿主細胞のゲノム内に組み込まれることができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに特定のベクターは、自身が操作可能に連結される遺伝子の発現を誘導する能力を有する。そのようなベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組み換えDNA法で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるために相互交換可能に使用される場合がある。しかしながら、例えばウイルスベクター(例えば複製欠損したレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの同等の機能を果たす他の形態の発現ベクターも含まれる。
【0113】
本明細書において使用される場合、「組み換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、細胞中に自然には存在しない核酸を含み、組み換え発現ベクターが導入される細胞であり得る細胞を指すことが意図される。当該用語は、特定の対象細胞だけでなく、当該細胞の子孫細胞も指すことも意図されていることを理解されたい。突然変異または環境的影響のいずれかに起因して特定の修飾がその後の世代に発生する可能性があるため、そのような子孫細胞は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書において使用される場合には、それでも「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「結合された」という用語は、二つ以上の分子の会合を指す。結合は、共有結合または非共有結合であってもよい。結合はまた、遺伝的であってもよい(すなわち組み換え融合であってもよい)。そのような結合は、例えば化学的結合や組み換えタンパク質の作製など、当分野に認識される広範な技術を使用して実現され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「投与すること」とは、当業者に公知の様々な方法および送達システムのいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入を指す。本明細書に記載される抗TREM-1抗体に関する、様々な投与経路としては、例えば注射または点滴による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊椎または他の非経口の投与経路が挙げられる。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という文言は、腸内投与および局所投与以外の投与様式を意味し、通常、注射により行われ、限定されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節包内、眼窩内、心腔内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨下の注射ならびに点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションが挙げられる。あるいは本明細書に記載される抗体は、例えば局所、表皮または粘膜の投与経路、例えば鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下、または局所などの非経口経路を介して投与され得る。また投与は、例えば、1回、複数回、および/または一回以上の延長期間にわたって実施され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「阻害する」または「ブロッキングする」という用語(例えば、細胞上のTREM-1へのTREM-1リガンドの結合の阻害/ブロッキングを指す)は、相互交換可能に使用され、部分的および完全な阻害/ブロッキングの両方を包含する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば本明細書にさらに記載されるように、TREM-1へのTREM-1リガンドの結合を少なくとも約50%、例えば、約60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%阻害すると判定される。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば本明細書にさらに記載されるように、TREM-1へのTREM-1リガンドの結合を50%以下、例えば、約40%、30%、20%、10%、5%、または1%阻害すると判定される。
【0117】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、疾患に関連する症状、合併症、状態、もしくは生化学的な徴候の進行、発現、重症度、または再発を逆転させる、緩和する、改善する、阻害する、または遅延させる、または予防する目的で、対象に実施される任意のタイプの介入もしくはプロセス、または対象に活性薬剤を投与することを指す。治療は、疾患を有する対象の治療、または疾患を有していない対象の治療(例えば、予防目的)であってもよい。
【0118】
「有効投与量」または「有効用量」という用語は、所望される効果を実現する、または少なくとも部分的に実現するために充分な量として規定される。薬剤または治療剤の「治療有効量」または「治療有効用量」は、単独で使用される場合、または別の治療剤と併用されて使用される場合、疾患症状の重症度の減少、無症状期間の頻度および期間の増加、または疾患罹患を起因とする機能障害もしくは身体障害の予防によって証明される、疾患退行を促進する薬剤の任意の量である。薬剤の治療有効量または治療有効用量は、疾患を発症するリスクのある対象、または疾患の再発を患うリスクのある対象に、単独で、または別の治療剤と併用されて投与される場合、疾患の発症または再発を阻害する薬剤の任意の量である、「予防有効量」または「予防有効用量」を含む。疾患退行を促進する、または疾患の発症もしくは再発を阻害する治療剤の能力は、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステムにおいて、またはインビトロアッセイでの剤の活性を評価することにより、当業者に公知の様々な方法を使用して評価することができる。
【0119】
「患者」という用語は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
【0120】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。例えば、本明細書に記載される方法および組成物を使用して、癌を有する対象を治療してもよい。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0121】
本明細書で使用される場合、「ug」および「uM」は、それぞれ「μg」および「μM」と相互交換可能に使用される。
【0122】
本明細書に記載される様々な態様は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記述される。
【0123】
I.抗TREM-1抗体
本明細書において、特定の機能的な特徴または性質によって特徴付けられる例えば完全ヒト抗体などの抗体が記載される。例えば本開示の抗体は、ヒトTREM-1、より具体的にはヒトTREM-1の細胞外ドメイン内の特定のドメイン(例えば機能性ドメイン)に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、TREM-1リガンド(例えばPGLYRP1)が結合するTREM-1リガンド上の部位に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、アンタゴニスト性抗体である。すなわち抗体は、例えば単球、マクロファージおよび好中球などの細胞上のTREM-1の活性を阻害または抑制する(すなわち、結合時にアゴナイズしない)。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えばカニクイザルTREM-1など、一種以上の非ヒト霊長類に由来するTREM-1と交差反応する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、活性化された際の細胞(例えばマクロファージ、樹状細胞、好中球)による炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-α、IL-8、IL-1β、IL-12、およびそれらの組み合わせ)の産生を遮断する。一部の実施形態では、本明細書に記載される特定の抗TREM-1抗体は、参照抗体(例えばmAb170)とは異なるエピトープでヒトTREM-1に結合する(すなわちエピトープ操作された)、例えばモノクローナル抗体、組み換え抗体、および/またはヒト抗体などの抗体である。したがって一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1への結合に関し、参照抗体(例えばmAb170)と交差競合しない。言い換えると、一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、参照抗体(例えば、mAb170)とは異なる「ビン」に属する。
【0124】
一部の実施形態では、本開示のエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、表1の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む。特定の実施形態では、VHは、配列番号13、15、23、25、または130として記載されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VLは、配列番号14、16、17、24、131、または132として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0125】
一部の実施形態では、本開示のエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、VHおよびVLを含み、この場合において、
(a)VHおよびVLは、それぞれ配列番号13および14として記載されるアミノ酸配列を含み、
(b)VHおよびVLは、それぞれ配列番号15および16として記載されるアミノ酸配列を含み、
(c)VHおよびVLは、それぞれ配列番号15および17として記載されるアミノ酸配列を含み、
(d)VHおよびVLは、それぞれ配列番号23および24として記載されるアミノ酸配列を含み、
(e)VHおよびVLは、それぞれ配列番号25および16として記載されるアミノ酸配列を含み、
VHおよびVLは、それぞれ配列番号130および131として記載されるアミノ酸配列を含み、または
(f)VHおよびVLは、それぞれ配列番号130および132として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0126】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、配列番号13、15、23、25、および130からなる群から選択される重鎖可変領域のCDRを含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、配列番号14、16、17、24、131、および132からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDRを含む。
【0127】
一部の実施形態では、本開示のエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、重鎖可変領域(VH)のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに軽鎖可変領域(VL)のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、この場合において、
(a) VH CDR1は、配列番号26、32、45、50、および136からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(b) VH CDR2は、配列番号27、33、46、51、および137からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(c) VH CDR3は、配列番号28、34、47、52、および138からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(d) VL CDR1は、配列番号29および35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(e) VL CDR2は、配列番号30、36、および48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、および/または
(f) VL CDR3は、配列番号31、37、38、39、103、および139からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0128】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、重鎖可変領域(VH)のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに軽鎖可変領域(VL)のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、この場合において、
(a)VH CDR1は、配列番号26として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号27として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号28として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号29として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号30として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号31として記載されるアミノ酸配列を含む、
(b)VH CDR1は、配列番号32として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号33として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号34として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号35として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号36として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含む、
(c)VH CDR1は、配列番号32として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号33として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号34として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号29として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号30として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号38として記載されるアミノ酸配列を含む、
(d)VH CDR1は、配列番号45として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号46として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号47として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号35として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(e)VH CDR1は、配列番号50として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号51として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号52として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号35として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号36として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含む、
(f)VH CDR1は、配列番号136として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号137として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号138として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号35として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号36として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号139として記載されるアミノ酸配列を含む、または
(g)VH CDR1は、配列番号136として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号137として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号138として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号35として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号36として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号103として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0129】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、重鎖可変領域(VH)のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに軽鎖可変領域(VL)のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、この場合においてCDRのうちの一つ以上は、本明細書に開示される抗TREM-1抗体と比較して、一つ以上のアミノ酸変異(例えば、置換または欠失)を含む。したがって特定の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、X1、X2、X3、X4、およびX5を含むVH CDR1を含み、この場合においてX1はSまたはNであり、X2はS、Y、またはEであり、X3はY G、またはAであり、X4はW、MまたはIであり、そしてX5はS、T、H、またはNである。一部の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、およびX17を含むVH CDR2を含み、この場合においてX1はY V、またはGであり、X2はTまたはIであり、X3はW、I、または無しであり、X4はH、Y、またはPであり、X5はY、D、またはIであり、X6はS、G、またはFであり、X7はG、S、またはDであり、X8はI、Y、N、またはTであり、X9はS、T、またはKであり、X10はNまたはYであり、X11はYまたはGであり、X12はNまたはAであり、X13はP、D、またはQであり、X14はSまたはKであり、X15はL、V、またはFであり、X16はKまたはQであり、そしてX17はSまたはGである。一部の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、G、X13、X14、X15、X16、X17、X18、D、およびX19を含むVH CDR3を含み、この場合において、X1はE、D、M、T、または無しであり、X2はG、V、またはYであり、X3はY、R、または無しであり、X4はD、H、G、または無しであり、X5はI、Y、または無しであり、X6はL、Y、または無しであり、X7はT、G、N、または無しであり、X8はG、S、Y、または無しであり、X9はY、V、T、F、またはHであり、X10はE、L、S、またはYであり、X11はY、W、F、またはHであり、X12はYまたはFであり、X13はEまたは無しであり、X14はLまたは無しであり、X15はLまたは無しであり、X16はPまたは無しであり、X17はLまたは無しであり、X18はMまたはLであり、そしてX19はVまたはYである。特定の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は.R、A、S、Q、X1、X2、X3、S、S、X4、L、およびAを含むVL CDR1を含み、この場合においてX1はSまたはGであり、X2はVまたはIであり、X3はSまたは無しであり、そしてX4はYまたはAである。一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作された抗TREM-1抗体は、X1、A、S、S、X2、X3、およびX4を含むVL CDR2を含み、この場合においてX1はG、DまたはAであり、X2はRまたはLであり、X3はA、E、またはQであり、そしてX4はTまたはSである。特定の実施形態では、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、Q、Q、X1、X2、S、X3、P、X4、およびTを含むVL CDR3を含み、この場合において、X1はYまたはFであり、X2はGまたはNであり、X3はSまたはYであり、そしてX4はL、Y、I、または無しである。
【0130】
また本明細書において、参照抗体(例えばmAb170)と同じエピトープでヒトTREM-1に結合する抗TREM-1抗体(すなわちエピトープ操作されていない)であるが、当該抗TREM-1抗体は、mAb170ではない。したがって一部の実施形態では、これらエピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1への結合に関し、参照抗体(例えばmAb170)と交差競合する。言い換えると、一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、参照抗体(例えば、mAb170)と同じ「ビン」に属し、この場合において当該抗TREM-1抗体は、mAb170ではない。参照抗体mAb 0170の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、以下の通りである:
(A)重鎖可変領域:
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSTYAMHWVRQASGKGLEWVGRIRTKSSNYATYYAASVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTRDMGIRRQFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号193);
(B)軽鎖可変領域:
DIVLTQSPDSLAVSLGERATINCRASESVDTFDYSFLHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQSNEDPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号194)。国際特許出願公開WO2016/009086A1を参照のこと。
【0131】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、表2の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含む。特定の実施形態では、VHは、配列番号53、55、57、59、62、64、66、68、73、74、75、76、78、80、81、83、または133として記載されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VLは、配列番号54、56、58、60、61、63、65、67、69、70、71、72、77、79、82、134、または135として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、VHおよびVLを含み、この場合において、
(a)VHは、配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(b)VHは、配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号56に記載されるアミノ酸配列を含む、
(c)VHは、配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号58に記載されるアミノ酸配列を含む、
(d)VHは、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む、
(e)VHは、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含む、
(f)VHは、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(g)VHは、配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含む、
(h)VHは、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含む、
(i)VHは、配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含む、
(j)VHは、配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含む、
(k)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(l)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含む、
(m)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号70に記載されるアミノ酸配列を含む、
(n)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含む、
(o)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む、
(p)VHは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む、
(q)VHは、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(r)VHは、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含む、
(s)VHは、配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(t)VHは、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(u)VHは、配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含む、
(v)VHは、配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号79に記載されるアミノ酸配列を含む、
(w)VHは、配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、
(x)VHは、配列番号81に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む、
(y)VHは、配列番号83に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む、
(z)VHは、配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号134に記載されるアミノ酸配列を含む、
(aa)VHは、配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む、または
(bb)VHは、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号135に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0133】
一部の実施形態では、エピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、53、55、57、59、62、64、66、68、73、74、75、76、78、80、81、83、および133からなる群から選択される重鎖可変領域のCDRを含む。一部の実施形態では、エピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、54、56、58、60、61、63、65、67、69、70、71、72、77、79、82、134、および135からなる群から選択から選択される軽鎖可変領域のCDRを含む。
【0134】
一部の実施形態では、本開示のエピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、重鎖可変領域(VH)のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに軽鎖可変領域(VL)のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、この場合において、
(a)VH CDR1は、配列番号45、84、89、93、99、106、109、112、および140からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(b)VH CDR2は、配列番号85、90、94、97、98、100、102、104、107、110、113、116、119、および141からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(c)VH CDR3は、配列番号86、91、95、101、105、108、111、114、115、117、120、および142からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(d)VL CDR1は、配列番号87および42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(e)VL CDR2は、配列番号48、および30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、および/または
(f)VL CDR3は、配列番号38、49、88、92、96、103、118、および143からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0135】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるエピトープ操作されていない抗TREM-1抗体は、VHのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにVLのCDR1、CDR2およびCDR3を含み、この場合において、
(a)VH CDR1は、配列番号84として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号85として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号86として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(b)VH CDR1は、配列番号89として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号90として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号91として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号92として記載されるアミノ酸配列を含む、
(c)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号94として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号96として記載されるアミノ酸配列を含む、
(d)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号97として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(e)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号97として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(f)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号98として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(g)VH CDR1は、配列番号99として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号100として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号101として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(h)VH CDR1は、配列番号99として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号102として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号101として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(i)VH CDR1は、配列番号99として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号102として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号101として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号103として記載されるアミノ酸配列を含む、
(j)VH CDR1は、配列番号99として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号102として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号101として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(k)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号102として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(l)VH CDR1は、配列番号45として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号104として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号105として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、または
(m)VH CDR1は、配列番号106として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号107として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号108として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(n)VH CDR1は、配列番号109として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号110として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号111として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(o)VH CDR1は、配列番号112として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号113として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号114として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号96として記載されるアミノ酸配列を含む、
(p)VH CDR1は、配列番号112として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号113として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号115として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、
(q)VH CDR1は、配列番号45として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号116として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号117として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号118として記載されるアミノ酸配列を含む、
(r)VH CDR1は、配列番号45として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号119として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号120として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号49として記載されるアミノ酸配列を含む、
(s)VH CDR1は、配列番号140として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号141として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号142として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号143として記載されるアミノ酸配列を含む、
(t)VH CDR1は、配列番号140として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号141として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号142として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号87として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号48として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号88として記載されるアミノ酸配列を含む、または
(t)VH CDR1は、配列番号93として記載されるアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号97として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVH CDR3は、配列番号95として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号42として記載されるアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号30として記載されるアミノ酸配列を含み、およびVL CDR3は、配列番号38として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0136】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、本明細書に記載されるCDRおよび/または可変領域配列(例えば、表1、2、5および6)に対し、少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性)を有するCDRおよび/または可変領域配列を含む。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この場合において当該重鎖は、本明細書に開示される重鎖定常領域(例えば、配列番号122、123、124、または125)に融合された、本明細書に開示されるVHドメイン(例えば、表1および2に提示されるもの)を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この場合において当該軽鎖は、本明細書に開示される軽鎖定常領域(例えば、配列番号126)に融合された、本明細書に開示されるVLドメイン(例えば、表1および2に提示されるもの)を含む。
【0138】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この場合において重鎖は、配列番号197-207および209-232からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖は、配列番号233-243および245-268からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0139】
本明細書に記載される重鎖または軽鎖のいずれかに対し、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖は、例えば本明細書に詳述される特徴などの所望の特徴を有する抗TREM-1抗体を形成させるために使用され得る。
【0140】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば表面プラズモン共鳴を使用して決定された場合に、ヒトTREM-1のバリアント(例えば、TREM-1のアイソフォーム2および3、それぞれ配列番号2および3)に結合する能力を有する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば表面プラズモン共鳴を使用して決定された場合に、カニクイザルのTREM-1(配列番号7)に結合する能力を有する。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に高いアフィニティで結合し、例えば、BIACORE(商標)で決定された場合に(例えば、実施例に記載されるように)、10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、または10-9M~10-7MのKDで結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、カニクイザルTREM-1に、例えばBIACORE(商標)により決定された場合に(例えば、実施例に記載されるように)、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、または10-9M~10-7MのKDで結合する。
【0142】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、参照抗体(例えばmAb170)(すなわち、エピトープ操作された)とは異なるエピトープでTREM-1に結合し、それにより、本開示の抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1への結合に関し、参照抗体と競合しない。したがって特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(配列番号1)のアミノ酸D38~L45、E46~Q56、および/またはY90~L96に結合しない。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(例えば、アイソフォーム1、配列番号1)の(1)27EKYELKEGQTL37(配列番号9)、(2)88EDYHDHGLLRVRM100(配列番号10)、および(3)120KEPHMLFDR128(配列番号11)からなる群から選択される一つ以上のエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(例えばアイソフォーム1、配列番号1)の(1)E27、K28、Y29、E30、L31、K32、E33、G34、Q35、T36、L37、およびそれらの任意の組み合わせ、(2)E88、D89、Y90、H100、D101、H102、G103、L104、L105、R106、V107、R108、M109、およびそれらの任意の組み合わせ、ならびに(3)K120、E121、P122、H123、M124、L125、F126、D127、R128、およびそれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基で特異的に結合する能力を有する。
【0143】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、参照抗体(例えば、mAb170)と同じエピトープでTREM-1に結合する(すなわちエピトープ操作されていない)。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(例えば、アイソフォーム1、配列番号1)の(i)A21、T22、K23、L24、T25、E26およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基、および(ii)A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、157、158、R59、D60、G61、E62、M63、P64、K65、T66、L67、A68、C69、T70、E71、R72、P73、S74、K75、N76、S77、H78、P79、V80、Q81、V82、G83、R84、185およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基、および(iii)C113、V114、1115、Y116、Q117、P118、P119およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基、で特異的に結合する能力を有する。WO2016/009086を参照のこと。
【0144】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、HDX-MSまたはX線回折を使用して決定される場合、配列番号1(ヒトTREM-1)のアミノ酸D38~F48に特異的に結合する能力を有する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、HDX-MSまたはX線回析を使用して決定される場合、配列番号1(ヒトTREM-1)のアミノ酸残基D38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44、およびL45のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはすべて、および配列番号1(ヒトTREM-1)のE46、K47、およびF48からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの1つ、2つまたはすべて、を含むエピトープを有する。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体は、TREM-1のバリアントおよび表面プラズモン共鳴を使用して決定される場合、配列番号1(ヒトTREM-1)のD42、E46、D92、およびH93からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの一つ、二つ、三つ、またはすべてを含むエピトープを有する。
【0145】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、TREM-1のバリアントおよび表面プラズモン共鳴を使用して決定される場合、配列番号1(ヒトTREM-1)の少なくともアミノ酸残基E46および/またはD92を含むエピトープを有する。別の実施形態では、抗TREM-1抗体は、配列番号1(ヒトTREM-1)のL31、I86、およびV101からなる群から選択されるアミノ酸残基の一つ、二つ、またはすべてを含む。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、HDX-MSまたはX線回折を使用して決定される場合、カニクイザルTREM-1(配列番号7)のアミノ酸残基E19~L26を含むポリペプチドに特異的に結合する能力を有する。
【0146】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合する能力を有し、この場合において当該抗体のエピトープは、配列番号1のV39、K40、C41、D42、Y43、L45、E46、K47、F48、およびA49からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはすべてを含む。
【0147】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合する能力を有し、この場合において当該抗体のエピトープは、配列番号1のD42を含む。他の実施形態では、抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合する能力を有し、この場合において当該抗体のエピトープは、配列番号1のE46を含む。一部の実施形態では、抗体のエピトープは、配列番号1のV39、C41、D42、Y43、L45を含み得る。さらなる実施形態では、抗体のエピトープは、配列番号1のE46、K47、およびA49を含み得る。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体のエピトープは、配列番号1のF48をさらに含み得る。
【0148】
本明細書に記載される抗TREM-1抗体の可変領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFcなどのFcに結合され得る(例えば、共有結合され得る、または融合され得る)。当該Fcは、任意のアロタイプまたは同型アロタイプ(isoallotype)のものであってもよく、例えばIgG1に関しては:G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2に関しては:G2m、G2m23(n);IgG3に関しては:G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v);そしてKに関しては:Km、Km1、Km2、Km3であってもよい(例えば、Jeffries et al.(2009)mAbs 1:1を参照のこと)。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体の可変領域は、例えばIgG1などのエフェクターが無い、またはほとんどエフェクターが無いFcに結合される。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体の可変領域は、一つ以上のFcγRに対する結合が低下したFc、または結合することができないFcに結合される。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4などのヒトIgGの定常ドメイン(すなわちFc)に融合されてもよく、それらは例えば本明細書に詳述されるように、天然または改変されている。例えば、VHドメインは、例えば以下の野生型ヒトIgG1定常ドメインアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号12)、または配列番号12のアロタイプバリアントの配列、などの例えばIgG1などのヒトIgGの定常領域に融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含んでもよく、および以下のアミノ酸配列を有してもよい:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号121、アロタイプ特異的アミノ酸残基は、下線の太字部分である)。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、例えば、以下のエフェクターが無いヒトIgG1定常ドメインアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号122、「IgG1.1f」、EUナンバリングに従い、L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331Sの置換を含む、下線部分)
または
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号123、「IgG1.3f」、EUナンバリングに従い、L234A、L235E、およびG237Aの置換を含む、下線部分)などのエフェクターが無い定常領域に融合された本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0151】
例えば、IgG1のアロタイプバリアントは、K97R、D239E、および/またはL241M(上記の下線の太字部分)、ならびに配列番号121-123に従うナンバリングを含む。全長重鎖領域内で、およびEUナンバリングに従い、これらアミノ酸置換は、K214R、D356E、およびL358Mと番号付けられる。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体の定常領域は、配列番号121-123に番号付けられるようにアミノ酸L117、A118、G120、A213、およびP214(上記の下線部分)で、またはEUナンバリングに従いアミノ酸L234、A235、G237、A330、およびP331で、一つ以上の変異または置換をさらに含む。さらなる実施形態では、抗TREM-1抗体の定常領域は、配列番号12のアミノ酸L117A、A118E、G120A、A213S、およびP214Sで、またはEUナンバリングに従いアミノ酸L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331Sで、一つ以上の変異または置換を含む。抗TREM-1抗体の定常領域は、配列番号12のL117A、A118E、およびG120Aで、またはEUナンバリングに従いL234A、L235E、およびG237Aで、一つ以上の変異または置換を含んでもよい。
【0152】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、例えば、以下のアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTSPPSPAPELLGGSSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号124、「IgG1-Aba」、EUナンバリングに従い、K214R、C226S、C229S、およびP238Sの置換を含む、下線部分)、または
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTSPPSPAPELLGGSSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号125、「IgG4-Aba」、EUナンバリングに従い、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229S、P238Sの置換を含む、下線部分)、を含むIgG1定常ドメインに融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含む。
【0153】
本明細書に記載されるVLドメインは、ヒトのカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖の定常ドメインに融合され得る。例えば、抗TREM-1抗体のVLドメインは、以下のヒトIgG1カッパ軽鎖アミノ酸配列:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号126)に融合された、本明細書に記載される任意のVLドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0154】
特定の実施形態では、重鎖定常領域は、C末端でリシンまたは別のアミノ酸を含む。例えば、重鎖中に以下のような最後のアミノ酸を含む:LSPGK(配列番号127)。特定の実施形態では、重鎖定常領域は、C末端で一つ以上のアミノ酸を欠き、および例えば、C末端配列のLSPG(配列番号128)またはLSPを有する。
【0155】
概して、本明細書に記載される可変領域は、典型的には、例えばFc受容体結合、炎症性サイトカインの放出、血清半減期、補体結合、および/または抗原依存性細胞傷害活性などの抗体の一つ以上の機能的特性を変化させる改変を一つ以上含むFcに結合され得る。さらに本明細書に記載の抗体は、化学的に改変されてもよく(例えば、一つ以上の化学的部分が抗体に結合されてもよい)、または改変されてそのグリコシル化を変化させ、抗体の一つ以上の機能的特性を変化されてもよい。これらの実施形態の各々は、以下に詳細に記述される。Fc領域中の残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスのナンバリングである。
【0156】
Fc領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ならびに例えばIgA、IgD、IgE、およびIgMなどの他のクラス)の定常領域に由来し、当該定常領域の断片、アナログ、バリアント、変異体または誘導体を含む。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC末端領域に相同な天然ポリペプチドまたは合成されたポリペプチドとして定義され、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはCH4ドメインを別々に、または組み合わせて含み得る。
【0157】
Ig分子は、複数のクラスの細胞受容体と相互作用する。例えば、IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的な三つのクラスのFcγ受容体(FcγR)、すなわち、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIと相互作用する。IgGのFcγR受容体への結合に重要な配列は、CH2ドメインおよびCH3ドメイン内に位置することが報告されている。抗体の血清半減期は、当該抗体がFc受容体(FcR)に結合する能力に影響を受ける。
【0158】
一つの実施形態では、抗TREM-1抗体のFc領域は、バリアントFc領域であり、例えば、親Fc配列(例えば、その後に改変されて、バリアントを生成する非改変Fcポリペプチド)と比較して(例えばアミノ酸の置換、欠失および/または挿入により)改変されており、それにより所望の構造的特性および/または生物学的活性を提供するFc配列である。
【0159】
例えば、(a)抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)が増加した、または減少したFcバリアント、(b)補体介在性細胞傷害活性(CDC)が増加したまたは低下したFcバリアント、(c)C1qに対するアフィニティが増加した、または低下したFcバリアント、および/または(d)親Fcと比較してFc受容体に対するアフィニティが増加した、または低下したFcバリアントを生成するために、Fc領域中に改変を行うことができる。そうしたFc領域バリアントは概して、Fc領域中に少なくとも一つのアミノ酸改変を含む。アミノ酸改変の組み合わせるは、特に望ましいと考えられる。例えば、バリアントFc領域は、例えば本明細書に特定される、特定のFc領域の位置など、領域中に2、3、4、5個などの置換を含み得る。
【0160】
バリアントFc領域は配列変化も含み得、この場合においてジスルフィド結合形成に関与するアミノ酸が除去されるか、または他のアミノ酸と置換される。そのような除去によって、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を産生するために使用される宿主細胞中に存在する他のシステイン含有タンパク質との反応が回避され得る。システイン残基が除去された場合でも、一本鎖Fcドメインは依然として二量体Fcドメインを形成することができ、当該二量体Fcドメインは非共有結合で保持される。他の実施形態では、Fc領域は、選択された宿主細胞との適合性が高まるように改変され得る。例えば、典型的な天然Fc領域のN末端近傍のPA配列を除去してもよい。PA配列は、例えばプロリンイミノペプチダーゼなどの大腸菌中の消化酵素によって認識され得る。他の実施形態では、Fcドメイン内の一つ以上のグリコシル化部位を除去してもよい。典型的にはグリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)は、細胞溶解性の反応をもたらすことができる。そのような残基は削除されてもよく、または非グリコシル化残基(例えば、アラニン)で置換されてもよい。他の実施形態では、例えばC1q結合部位など、補体との相互作用に関与する部位をFc領域から除去してもよい。例えば、ヒトIgG1のEKK配列を削除または置換してもよい。特定の実施形態では、Fc受容体への結合に影響を及ぼす部位、好ましくは、サルベージ受容体結合部位以外の部位を除去してもよい。他の実施形態では、Fc領域は、ADCC部位を取り除くように改変されてもよい。ADCC部位は当分野で公知であり、例えば、IgG1中のADCC部位に関しては、Sarmay et al.,Molec.Immunol.29(5): 633-9(1992)を参照のこと。バリアントFcドメインの具体的な例は、例えば、WO97/34631およびWO96/32478に開示されている。
【0161】
一つの実施形態では、Fcのヒンジ領域は、当該ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変わるように、例えば増加または減少するように改変される。当該方法は、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号に詳述されている。Fcのヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖のアセンブリを促進するように、または抗体の安定性が増加または低下するように変更される。一つの実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメインのインターフェース領域に一つ以上のアミノ酸変異が導入され、それにより抗体は、天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比較して、ブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合が減弱される。この方法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号に詳述される。
【0162】
さらに他の実施形態では、Fc領域は、少なくとも一つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基で置換して、抗体のエフェクター機能を変化させることによって変化する。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、322、330、および/または331から選択される一つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基と置換され、それにより、抗体は、エフェクターリガンドに対するアフィニティが変化し、しかし親抗体の抗原結合能力は保持され得る。アフィニティが変化するエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であってもよい。この方法は、Winterらによる米国特許第5,624,821号および第5,648,260号に詳述される。
【0163】
別の例では、アミノ酸残基329、331、および322から選択される一つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基と置換され、それにより、抗体は、C1q結合を変化させ、および/または補体依存性細胞傷害活性(CDC)が低減もしくは無効化され得る。この方法は、Idusogieらの米国特許第6,194,551号に詳述される。
【0164】
別の例では、アミノ酸231位および239位内の一つ以上のアミノ酸残基が変化し、それにより、補体を結合する抗体の能力が変化する。この方法は、Bodmerらによる国際特許出願公開WO94/29351に詳述される。
【0165】
さらに別の実施形態では、以下の位置で一つ以上のアミノ酸を改変することにより、Fc領域を改変して、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を低減させ、および/またはFcγ受容体に対するアフィニティを低下させてもよい:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438、または439。例示的な置換としては、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、および332Eが挙げられる。例示的なバリアントとしては、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、および267E/268F/324Tが挙げられる。FcγRと補体の相互作用を強化する他の改変としては限定されないが、298A、333A、334A、326A、2471、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、3051、および396Lが挙げられる。これらの改変および他の改変は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685-691に概要が記載される。
【0166】
Fcに為され得る他のFc改変は、FcγRおよび/または補体タンパク質への結合を低減または除去するための改変であり、それにより、例えばADCC、ADCP、およびCDCなどのFc介在性のエフェクター機能が低減または除去される。例示的な改変としては限定されないが、234、235、236、237、267、269、325、328、330、および/または331(例えば、330および331)の位置での置換、挿入および欠失が挙げられる。ナンバリングはEUインデックスに従う。例示的な置換としては限定されないが、234A、235E、236R、237A、267R、269R、325L、328R、330S、および331S(例えば、330Sおよび331S)が挙げられる。ナンバリングはEUインデックスに従う。Fcバリアントは、236R/328Rを含み得る。FcγRと補体の相互作用を低減するための他の改変としては、297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233P、および234Vの置換、ならびに変異的手段もしくは酵素的手段、またはタンパク質をグリコシル化しない細菌などの生物体において産生することによる、297位でのグリコシル化の除去が挙げられる。これらの改変および他の改変は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685-691に概要が記載される。
【0167】
任意で、Fc領域は、当分野に公知の追加の位置および/または代替的な位置で、非天然アミノ酸残基を含んでもよい(例えば、米国特許第5,624,821号、第6,277,375号、第6,737,056号、第6,194,551号、第7,317,091号、第8,101,720号、国際特許出願公開WO00/42072、WO01/58957、WO02/06919、WO04/016750、WO04/029207、WO04/035752、WO04/074455、WO04/099249、WO04/063351、WO05/070963、WO05/040217、WO05/092925、およびWO06/0201 14を参照のこと)。
【0168】
自身のリガンドに対するFc領域のアフィニティおよび結合の特性は、当分野に公知の様々なインビトロアッセイ法(生化学系または免疫学系のアッセイ)により決定することができ、限定されないが、平衡法(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または放射免疫アッセイ(RIA))、または動態(例えば、BIACORE解析)、および例えば間接結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えばゲルろ過)等の他の方法が挙げられる。これらの方法および他の方法は、試験される構成要素のうちの一つ以上に標識を利用することができ、および/または限定されないが、発色性、蛍光性、発光性、または同位体性の標識を含む様々な検出方法を採用することができる。結合アフィニティおよび動態に関する詳細な記述は、Paul,W.E.,ed.,Fundamental immunology,4th Ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia(1999)に見出すことができ、当該文献は、抗体-免疫原の相互作用に焦点を当てている。
【0169】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、(a)IgG1アイソタイプであり、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基で、Fc領域中に一つ以上のアミノ酸置換を含む:N297A、N297Q、D270A、D265A、L234A、L235A、C226S、C229S、P238S、E233P、L234V、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、L234F、L235E、P331S、T394D、A330L、M252Y、S254T、T256E、L328E、P238D、S267E、L328F、E233D、G237D、H268D、P271G、A330Rおよびそれらの任意の組み合わせであり、この場合において当該残基のナンバリングはEUナンバリングまたはKabatのナンバリングに従う、もしくはグリシン236に相当する位置でFc領域中にアミノ酸の欠失を含む、(b)IgG2アイソタイプであり、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基で、Fc領域中に一つ以上のアミノ酸置換を含む:P238S 、V234A、G237A、H268A、H268Q、H268E、V309L、N297A、N297Q、A330S、P331S、C232S、C233S、M252Y、S254T、T256E、およびそれらの任意の組み合わせであり、この場合において当該残基のナンバリングは、EUナンバリングまたはKabatのナンバリングに従う、または(c)IgG4アイソタイプであり、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基でFc領域中に一つ以上のアミノ酸置換を含む:E233P、F234V、L234A/F234A、L235A、G237A、E318A、S228P、L236E、S241P、L248E、T394D、M252Y、S254T、T256E、N297A、N297Q、およびそれらの任意の組み合わせであり、この場合において当該残基のナンバリングは、EUナンバリングまたはKabatのナンバリングに従う。一部の実施形態では、(a)Fc領域は、A330L、L234F、L235E、P331Sおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸残基で一つ以上の追加のアミノ酸置換をさらに含み、残基のナンバリングは、EUまたはKabatのナンバリングに従う、(b)Fc領域は、M252Y、S254T、T256E、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置で一つ以上の追加のアミノ酸置換をさらに含み、残基のナンバリングは、EUまたはKabatのナンバリングに従う、または(c)Fc領域は、EUまたはKabatのナンバリングに従う、S228Pのアミノ酸置換をさらに含む。WO2017/152102を参照のこと。
【0170】
特定の実施形態では、補体結合が低下したFcが選択される。補体結合が低下した例えばIgG1 Fcなどの例示的なFcは、以下の二つのアミノ酸置換を有する:A330SおよびP331S。
【0171】
特定の実施形態では、エフェクター機能が本質的にないFcが選択される。すなわち、FcγRへの結合が低下し、補体結合が低下している。エフェクターの無い例えばIgG1 Fcなどの例示的なFcは、以下の五つの変異を含む:L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331S。
【0172】
II.核酸、ベクター、および細胞
本明細書に記載される別の態様は、本明細書に記載される抗TREM-1抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、全細胞、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分精製された、もしくは実質的に純粋な形態で存在してもよい。他の細胞構成要素または他の混入物、例えば他の細胞核酸(例えば他の染色体DNA、例えば、自然界で当該単離DNAに結合している染色体DNA)またはタンパク質から、アルカリ/SDS処置、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動および当分野に公知の他の方法を含む標準的な技術により精製された場合、核酸は「単離された」または「実質的に純粋となる」。F.Ausubel,et al.,ed.(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New Yorkを参照のこと。本明細書に記載される核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含有してもしなくてもよい。一部の実施形態では、核酸は、cDNA分子である。
【0173】
本明細書に記載される核酸は、標準的な分子生物学的技術を使用して取得することができる。ハイブリドーマ(例えば、以下に詳述されるようにヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)により発現される抗体については、ハイブリドーマから作製された抗体の軽鎖と重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅技術またはcDNAクローニング技術により取得することができる。(例えば、ファージディスプレイ法を使用して)免疫グロブリン遺伝子ライブラリから取得された抗体については、抗体をコードする核酸は、ライブラリから収集することができる。
【0174】
一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸は、本開示の抗TREM-1抗体のVH配列およびVL配列をコードする核酸である。VH配列をコードする例示的なDNA配列を、配列番号144~168として記載する。VL配列をコードする例示的なDNA配列を、配列番号169~192、195、および196として記載する。配列は、表3および4にも提供される。
【0175】
本明細書に開示される抗TREM-1抗体の作製方法は、シグナルペプチドとともに重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列、例えばそれぞれ、配列番号269および305、配列番号270および306、配列番号271および307、配列番号272および308、配列番号273および309、配列番号274および310、配列番号275および311、配列番号276および312、配列番号277および313、配列番号278および314、配列番号279および315、配列番号281および317、配列番号282および318、配列番号283および319、配列番号284および320、配列番号285および321、配列番号286および322、配列番号287および323、配列番号288および324、配列番号289および325、配列番号290および326、配列番号291および327、配列番号292および328、配列番号293および329、配列番号294および330、配列番号295および331、配列番号296および332、配列番号297および333、配列番号298および334、配列番号299および335、配列番号300および336、配列番号301および337、配列番号302および338、配列番号303および339、配列番号304および340などを含む細胞株において、重鎖と軽鎖を発現させることを含んでもよい。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は、本明細書に包含される。
【0176】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNA断片が取得されたら、これらのDNA断片を標準的な組み換えDNA技術によりさらに操作して、例えば可変領域の遺伝子を、全長の抗体鎖遺伝子、Fab断片の遺伝子、またはscFv遺伝子へと変化してもよい。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNA断片は、例えば抗体定常領域または柔軟性のあるリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に動作可能に連結される。この背景下で使用される場合、「動作可能に連結される」という用語は、二つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームの状態を維持するように二つのDNA断片が結合されることを意味することが意図される。
【0177】
VH領域をコードする単離DNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3)をコードする別のDNA分子に動作可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換してもよい。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照のこと)、これら領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅により取得することができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であってもよく、例えば、IgG2および/またはIgG4定常領域であってもよい。Fab断片の重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に動作可能に連結されてもよい。
【0178】
VL領域をコードする単離DNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域のCLをコードする別のDNA分子に動作可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換してもよい。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照のこと)、これら領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅により取得することができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であってもよい。
【0179】
本明細書に記載される別の態様は、本明細書に記載される抗TREM-1抗体ならびに関連するポリヌクレオチドおよび発現ベクターを(組み換えにより)発現する細胞(例えば宿主細胞)に関連する。本明細書において、抗TREM-1抗体またはその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。一部の実施形態では、ベクターは、例えば哺乳動物細胞などの宿主細胞において、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を組み換え発現することに使用され得る。本明細書に開示される抗TREM-1抗体を発現するために使用され得る細胞の非限定的な例としては、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞株(例えばHEK293)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞株、COS細胞株、メイディン・ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞株、およびHeLa細胞株が挙げられる。一部の実施形態では、ベクターは、遺伝子療法に使用され得る。
【0180】
本開示の好適なベクターとしては、発現ベクター、ウイルスベクター、およびプラスミドベクターが挙げられる。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0181】
本明細書で使用される場合、発現ベクターとは、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な因子を含有する任意の核酸構築物を指し、またはRNAウイルスベクターの場合には、適切な宿主細胞に導入されたときに、複製および翻訳に必要な因子を含有する任意の核酸構築物を指す。発現ベクターには、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびそれらの誘導体が含まれ得る。
【0182】
本開示の発現ベクターは、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分のコード配列は、発現制御配列に動作可能に連結される。本明細書で使用される場合、二つの核酸配列は、各構成要素の核酸配列がその機能性の保持が可能となるような方法で共有結合されている場合、動作可能に連結される。コード配列および遺伝子発現制御配列は、コード配列の発現もしくは転写および/または翻訳が、遺伝子発現制御配列の影響下または制御下に置かれるような方法で、それらが共有結合された時に、動作可能に連結されると言われる。5’遺伝子発現配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、および二つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない場合、(2)コード配列の転写を誘導するプロモーター領域の能力を妨害しない場合、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質へと翻訳される能力を妨害しない場合、当該二つのDNA配列は、動作可能に連結されると言われる。したがって、遺伝子発現配列が、当該コード核酸配列の転写を行うことができ、それにより得られた転写物が、所望の抗体またはその抗原結合部分へと翻訳される場合に、当該遺伝子発現配列は、コード核酸配列に動作可能に連結される。
【0183】
ウイルスベクターとしては限定されないが、以下のウイルスに由来する核酸配列が挙げられる:モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、およびラウス肉腫ウイルスなどのレトロウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバールウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;および例えばレトロウイルスなどのRNAウイルス。当分野で周知の他のベクターも簡易に採用することができる。特定のウイルスベクターは、非必須遺伝子が対象となる遺伝子で置換されている、非細胞傷害性の真核ウイルスに基づいている。非細胞傷害性ウイルスとしては、そのライフサイクルにゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写と、それに引き続く宿主細胞DNAへのプロウイルスの統合が含まれる、レトロウイルスが挙げられる。レトロウイルスは、ヒトの遺伝子治療試験に承認されている。最も有用なのは、複製欠損のレトロウイルスである(すなわち、所望のタンパク質の合成を誘導することはできるが、感染性粒子を作製することはできない)。そのような遺伝子改変レトロウイルス発現ベクターは、インビボでの高効率な遺伝子導入に対し、一般的な有用性を有している。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準プロトコル(プラスミドへの外因性遺伝物質の組み込みの工程、プラスミドを含むパッケージング細胞株のトランスフェクションの工程、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生の工程、組織培養培地からのウイルス粒子の回収の工程、およびウイルス粒子による標的細胞の感染の工程、を含む)は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)、およびMurry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)に提示されている。
【0184】
一部の実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルス、二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損となるように操作されてもよく、広範な細胞型および細胞種に感染する能力を有する。例えば熱安定性や脂質溶媒安定性、造血細胞を含む多様な系統の細胞における高い形質導入頻度、および重複阻害の欠落などの利点をさらに有し、それにより多重形質導入が可能となる。アデノ随伴ウイルスは、部位特異的な様式でヒト細胞DNAに統合することができ、それにより、挿入変異誘導の可能性が最小化され、およびレトロウイルス感染に特徴的な挿入遺伝子発現の変動性を最小化され得ることが報告されている。さらに、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧力の非存在下で、100回を超える継代の組織培養において追跡されており、アデノ随伴ウイルスのゲノム統合が比較的安定した事象であることが示唆される。アデノ随伴ウイルスは、染色体外の様式でも機能し得る。
【0185】
III.免疫結合体
本開示はまた、本明細書に開示される抗TREM-1抗体のいずれかを含む免疫結合体も提供する。一部の実施形態では、免疫結合体は、剤に結合された抗体またはその抗原結合部分を含む。一部の実施形態では、免疫結合体は、(例えば、治療剤または診断剤としての)剤に結合された本明細書に開示される二特異性分子を含む。
【0186】
診断目的については、適切な剤は、検出可能な標識であり、全身撮像に対しては放射性同位体、サンプル検査に対しては放射性同位体、酵素、蛍光標識、および他の適切な抗体タグが挙げられる。本明細書に記載される任意の抗TREM-1抗体に結合され得る検出可能な標識は、インビトロ診断の分野で現在使用されている様々なタイプのいずれであってもよく、例えば金コロイドなどの金属ゾルを含む粒子標識、例えば、N2S2、N3SまたはN4型のペプチドキレート剤とともに提示されるI125またはTc99などの同位体、蛍光マーカー、発光マーカー、リン光マーカーなどを含む発色団、ならびに所与の基質を検出可能なマーカーへと転換する酵素標識、および例えばポリメラーゼ連鎖反応などの増幅後に明らかとなるポリヌクレオチドタグが挙げられる。適切な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが挙げられる。例えば、標識は、酵素のアルカリホスファターゼであってもよく、例えばアダマンチルメトキシホスホリルオキシフェニルジオキセタン(AMPPD:adamantyl methoxy phosphoryloxy phenyl dioxetane)、3-(4-(メトキシスピロ{l,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ{3.3.1.1 3,7}デカン}-4-イル)フェニルリン酸二ナトリウム(CSPD:disodium 3-(4-(methoxyspiro{l,2-dioxetane-3,2’-(5’-chloro)tricyclo{3.3.1.1 3,7}decan}-4-yl) phenyl phosphate)などの1,2ジオキセタン基質、ならびにCDPおよびCDP-STAR(登録商標)または当分野に公知の他の発光基質、例えばTerbium(III)およびEuropium(III)などの適切なランタニドのキレート剤の転換後の化学発光の存在または形成を測定することにより検出される。検出手段は、選択された標識により決定される。標識またはその反応生成物の出現は、標識が粒子状であり、適切なレベルで蓄積する場合には肉眼で捉えることができ、または例えば分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計などの機器を使用して捉えることができる。それらすべて、標準的な慣行に従う。
【0187】
一部の実施形態では、結合法によって、実質的に(またはほぼ)非免疫原性である結合が生じる。例えばペプチド-結合(すなわちアミド-結合)、スルフィド-結合、(立体障害)、ジスルフィド-結合、ヒドラゾン-結合、およびエーテル結合が生じる。これらの結合は、ほぼ非免疫原性であり、血清中で合理的な安定性を示す(例えば、Senter,P.D.,Curr.Opin.Chem.Biol.13(2009)235-244;WO 2009/059278;WO95/17886を参照のこと)。
【0188】
部分および抗体の生化学的性質に応じて、様々な結合戦略を採用することができる。部分が50~500アミノ酸の天然または組み換え物質である場合、タンパク質結合体の合成に関する化学技術に関して記述する教科書において、標準的な手順が存在しており、当業者は容易に従うことができる(例えば、Hackenberger,C.P.R.,and Schwarzer,D.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.47(2008) 10030-10074を参照のこと)。一部の実施形態では、マレイミド部分と、抗体または部分内のシステイン残基との反応が使用される。例えば、抗体のFabまたはFab’断片の場合には、これが特に適したカップリング化学法であり、使用される。あるいは一部の実施形態では、抗体または部分のC末端へのカップリングが実施される。例えばFab断片などのタンパク質のC末端の改変は、(Sunbul,M.and Yin,J.,Org.Biomol.Chem.7(2009)3361-3371)に記載されるように実施することができる。
【0189】
概して、部位特異的反応および共有結合カップリングは、天然アミノ酸を、存在する他の官能基の反応性に対してオルソゴナルな反応性を有するアミノ酸へと転換することに基づく。例えば稀な配列内の特定のシステインを、アルデヒド中で酵素的に転換させることができる(Frese,M.A.,and Dierks,T.,ChemBioChem.10(2009) 425-427を参照のこと)。また、所与の配列内の天然アミノ酸と、特定の酵素との特異的酵素反応を利用することにより、所望のアミノ酸改変を行うことも可能である(例えば、Taki,M.et al.,Prot.Eng.Des.Sel.17(2004) 119-126;Gautier,A.et al.Chem.Biol.15(2008) 128-136を参照のこと。およびBordusa,F.,Highlights in Bioorganic Chemistry(2004) 389-403による、C-N結合のプロテアーゼ触媒形成が使用される)。部位特異的な反応および共有結合カップリングも、、末端アミノ酸を適切な改変試薬と選択的に反応させることにより、実現され得る。
【0190】
N末端システインとベンゾニトリルの反応性(Ren,H.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.48(2009)9658-9662)を使用して、部位特異的共有結合カップリングを実現することもできる。
【0191】
ネイティブケミカルライゲーションも、C末端システイン残基に依存し得る(Taylor,E.Vogel;Imperiali,B,Nucleic Acids and Molecular Biology(2009),22(Protein Engineering),65-96)。
【0192】
US6437095 B1は、負電荷アミノ酸内のシステインと、正電荷アミノ酸中に位置するシステインとのより急速な反応に基づく結合法を記述している。
【0193】
部分は、合成ペプチドまたはペプチド模倣体であってもよい。ポリペプチドが化学的に合成される場合、オルソゴナルな化学反応性を有するアミノ酸を、かかる合成中に組み込んでもよい(例えば、de Graaf,A.J.et al.,Bioconjug.Chem.20(2009)1281-1295を参照のこと)。多種多様なオルソゴナル性の官能基が懸案となっており、合成ペプチドに導入することもできるため、そのようなペプチドをリンカーに結合することは、標準的な化学法となっている。
【0194】
単標識ポリペプチドを取得するために、1:1の化学量論を用いた結合体は、クロマトグラフィーにより他の結合体副産物から分離することができる。この手順は、色素標識された結合ペア要素、および荷電リンカーを使用することによって容易に行うことができる。この種の、標識され、非常に負電荷の強い結合ペア要素を使用することにより、荷電の差異、および分子量の差異を選択に使用することができるため、単結合されたポリペプチドを、非標識ポリペプチドおよび複数のリンカーを担持するポリペプチドから容易に分離することができる。蛍光色素は、標識された一価結合物質などの非結合の構成要素からの複合体の精製に有用であり得る。
【0195】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体に付加される部分は、結合部分、標識部分、および生物活性部分からなる群から選択される。
【0196】
本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、治療剤に結合され、例えば抗体-薬剤結合体(ADC:antibody-drug conjugate)などの免疫結合体を形成することもできる。好適な治療剤としては、代謝拮抗剤、アルキル化剤、DNA副溝結合物質、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはIIの阻害剤、ヒートショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、および抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCでは、抗体および治療剤は、例えばペプチジル、ジスルフィド、またはヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して結合されることが好ましい。一部の実施形態では、リンカーは、例えばVal-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val(配列番号129)、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、またはGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号、第6,989,452号、および第7,129,261号、PCT国際特許出願公開WO02/096910、WO07/038658、WO07/051081、WO07/059404、WO08/083312、およびWO08/103693、米国特許出願公開20060024317、20060004081、および20060247295に記載されるように調製することができる。
【0197】
例えば本明細書に記載される抗体などの抗TREM-1抗体は、TREM-1、例えば組織または組織サンプル中のヒトTREM-1などのヒトTREM-1の検出にも使用することができる。抗体は例えば、ELISAアッセイにおいて、またはフローサイトメトリーにおいて使用することができる。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば組織中の細胞などの細胞と、特異的結合が発生するのに適した時間、接触し、次いで例えば抗TREM-1抗体を検出する抗体などの試薬が添加される。例示的なアッセイを、実施例に提示する。抗TREM-1抗体は、完全ヒト抗体であってもよく、または例えばヒト可変領域とマウス定常領域またはその一部を有する抗体などのキメラ抗体であってもよい。サンプル(細胞または組織のサンプル)中のヒトTREM-1などのTREM-1を検出するための例示的な方法は、(i)サンプル中のTREM-1に抗TREM-1抗体が特異的結合させるために充分な時間、サンプルと抗TREM-1抗体を接触させること、および(2)例えば抗TREM-1抗体、例えば抗TREM-1抗体のFc領域などに特異的に結合する抗体などの検出試薬とサンプルを接触させ、それにより抗TREM-1抗体に結合されたTREM-1を検出すること、を含む。洗浄工程は、抗体および/または検出試薬とのインキュベーションの後に含まれてもよい。これらの方法で使用するための抗TREM-1抗体は、標識または検出剤に結合される必要はなく、別個の検出剤を使用することができる。
【0198】
例えば単剤療法または併用療法としてなど、抗TREM-1抗体の他の用途は、本明細書の別段、例えば併用療法に関するセクションにおいて提示される。
【0199】
IV.二特異性分子
本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、二特異性分子を形成するために使用することができる。抗TREM-1抗体またはその抗原結合部分は、別の機能性分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体または受容体に対するリガンド)に誘導体化または結合され、少なくとも二つの異なる結合部位または標的分子に結合する二特異性分子を生成してもよい。例えば、抗TREM-1抗体は、本明細書に記載されるタンパク質(例えば、IP-10またはTNF-αに対する抗体など)など、併用治療の潜在的標的として使用され得る任意のタンパク質に特異的に結合する抗体またはscFvに結合されてもよい。本明細書に記載される抗体は、実際には複数の他の機能性分子に誘導体化または結合されて、三つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多特異性分子を生成してもよい。そのような多特異性分子も、本明細書において使用される「二特異性分子」という用語に包含されることが意図される。本明細書に記載される二特異性分子を生成するために、本明細書に記載される抗体は、二特異性分子が結果として得られるよう、例えば別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣体などの他の結合分子の一つ以上に機能的に結合されてもよい(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合、または別手段により)。
【0200】
したがって本明細書において、TREM-1に対する少なくとも一つの第一の結合特異性と、第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む二特異性分子が提供される。本明細書に記載される一部の実施形態では二特異性分子は多特異性であり、当該分子は第三の結合特異性をさらに含み得る。
【0201】
一部の実施形態では、本明細書に記載される二特異性分子は、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)を含む、少なくとも一つの抗体またはその抗体断片で結合特異性を含む。抗体は軽鎖もしくは重鎖の二量体、または例えばFv、もしくはLadnerらの米国特許第4,946,778号に記載される一本鎖構築物などの任意の最小断片であってもよい。
【0202】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本明細書に記載される二特異性分子に採用され得る他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0203】
本明細書に記載される二特異性分子は、当分野で公知の方法を使用して、構成結合特異性を結合させることにより調製され得る。例えば、二特異性分子の各結合特異性は、別々に生成され、その後に互いに結合されてもよい。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤または架橋剤を、共有結合に使用してもよい。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオ酢酸塩(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(スルホ-SMCC)(例えば、Karpovsky et al.(1984)J.Exp.Med.160: 1686;Liu,MA et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照のこと)が挙げられる。他の方法には、Paulus(1985) Behring Ins.Mitt.No.78,118-132;Brennan et al.(1985)Science 229:81-83)、およびGlennie et al.(1987)J.Immunol.139:2367-2375)に記載される方法が挙げられる。一部の結合剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.から入手可能である(イリノイ州ロックフォード)。
【0204】
結合特異性が抗体である場合、それらは、二つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合されてもよい。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、結合前に、奇数、好ましくは一つのスルフヒドリル残基を含有するように改変される。
【0205】
あるいは、両方の結合特異性は、同じベクター中でコードされ、同じ宿主細胞中で発現およびアセンブリされてもよい。この方法は、二特異性分子が、mAb x mAb、mAb x Fab、mAb x(scFv)2、Fab x F(ab’)2、またはリガンドx Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。二特異性抗体は、各重鎖のC末端にscFvを含む抗体を含み得る。本明細書に記載される二特異性分子は、一つの一本鎖抗体と結合決定基を含む一本鎖分子、または二つの結合決定基を含む一本鎖二特異性分子であってもよい。二特異性分子は、少なくとも二つの一本鎖分子を含み得る。二特異性分子の作製方法は、例えば米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0206】
特定の標的に対する二特異性分子の結合は、当分野に認識される方法、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイなどを使用して確認することができる。これらの各アッセイは概して、対象となる複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を採用することによって、特定の対象となるタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0207】
V.キット
本明細書に記載される一つ以上の抗TREM-1抗体、またはその抗原結合部分、二特異性分子、またはその免疫結合体を含むキットが本明細書に提供される。一部の実施形態では、本明細書において、例えば本明細書に提供される一つ以上の抗体またはその抗原結合部分など、本明細書に記載の医薬組成物の成分のうちの一つ以上で充填された一つ以上の容器、任意で使用説明書を含む医薬品パックまたはキットが提供される。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載される医薬組成物、および本明細書に記載されるものなどの任意の予防的または治療的な剤を含有する。
【0208】
VI.組成物および製剤
本明細書において、本明細書に開示される抗TREM-1抗体(抗TREM-1抗体をコードおよび/または発現するポリヌクレオチド、ベクター、および細胞を含む)のうちの一つ以上を含む組成物(例えば、医薬組成物)および製剤がさらに提供される。例えば、一つの実施形態では、本開示は、薬学的に許容可能な担体と共に製剤化される、本明細書に開示される一つ以上の抗TREM-1抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0209】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性のあるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。一部の実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮投与(例えば、注射または点滴による)に好適である。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、免疫結合体または二特異性分子は、当該化合物を不活化し得る酸の作用および他の自然条件から当該化合物を防御する物質中でコーティングすることができる。
【0210】
したがって本開示の一つの目的は、抗TREM-1抗体の安定性を改善し、それに伴い長期保存が可能な医薬製剤を提供することである。一部の実施形態では、本明細書に開示される医薬製剤は、(a)抗TREM-1抗体、(b)緩衝剤、(c)安定剤、(d)塩、(e)増量剤、および/または(f)界面活性剤を含む。一部の実施形態では、医薬製剤は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、またはそれ以上、安定的である。一部の実施形態では、製剤は、4℃、25℃、または40℃で保存されたとき、安定的である。
【0211】
緩衝剤
本発明に有用な緩衝剤は、別の酸または塩基の添加後に、選択値に近い溶液の酸度(pH)が維持されるよう使用される弱い酸または塩基であってもよい。適切な緩衝剤は、製剤のpH制御を維持することにより、医薬製剤の安定性を最大化することができる。適切な緩衝剤は、生理学的な適合性を保証し、または溶解度を最適化することができる。レオロジー、粘度、および他の特性も、製剤のpHに依存し得る。一般的な緩衝剤としては限定されないが、ヒスチジン、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。一部の実施形態では、緩衝剤は、等張剤とともにヒスチジン(例えば、L-ヒスチジン)を含み、および当分野で公知の酸または塩基を用いた潜在的なpH調整を含む。特定の実施形態では、緩衝剤は、L-ヒスチジンである。特定の実施形態では、製剤のpHは、約2~約10、または約4~約8で維持される。
【0212】
安定剤
安定剤は、当該製品を安定化させるために、医薬品に添加される。そのような剤は、多様な異なる方法でタンパク質を安定化することができる。一般的な安定化剤としては限定されないが、例えばグリシン、アラニン、リシン、アルギニン、またはスレオニンなどのアミノ酸、例えばグルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、またはマルトースなどの炭水化物、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリン、または任意の種類および分子量のデキストランなどのポリオール、またはPEGが挙げられる。本発明の一つの態様では、安定剤は、凍結乾燥調製物における、固定ポリペプチドの安定性を最大化するために選択される。特定の実施形態では、安定剤は、スクロースおよび/またはアルギニンである。
【0213】
増量剤
増量剤を医薬品に添加して、生成物に体積および質量を加え、それにより正確な計量と取り扱いを容易にすることができる。一般的な増量剤としては限定されないが、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
界面活性剤
【0214】
界面活性剤は、親溶媒性基および疎溶媒性基を有する両親媒性の物質である。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双イオン性、または非イオン性であってもよい。非イオン性界面活性剤の例としては限定されないが、アルキルエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アミンエトキシレート、ポリエチレン酸化物、ポリプロピレン酸化物、例えばセチルアルコールまたはオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート、またはドデシルジメチルアミン酸化物が挙げられる。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0215】
一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、以下を含有する:
(a)約0.25mg/mL~250mg/mL(例えば、10~200mg/mL)の抗TREM-1抗体;
(b)約20mM ヒスチジン、
(c)約150mM スクロース、
(d)約25mM アルギニン、および
(e)約50mM NaCl。
【0216】
製剤は、緩衝系、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定剤、および/または界面活性剤、ならびにそれらの様々な組み合わせのうちの一つ以上をさらに含んでもよい。医薬組成物における防腐剤、等張剤、キレート剤、安定剤、および界面活性剤の使用は、当業者に公知である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995を参照されたい。
【0217】
一部の実施形態では、医薬製剤は、水性製剤である。かかる製剤は典型的には溶液または懸濁液であるが、コロイド、分散体、エマルション、および多層性の物質を含んでもよい。「水性製剤」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤として定義される。同様に、「水性溶液」という用語は、少なくとも50% w/wの水を含む溶液として定義され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50% w/wの水を含む懸濁液として定義される。
【0218】
一部の実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥製剤であり、医師または患者が使用前に当該製剤に溶媒および/または希釈剤を加える。
【0219】
本明細書に記載の医薬組成物は、併用療法、すなわち他の剤と組み合わせて投与されることもできる。例えば、併用療法は、少なくとも一つの他の治療剤と組み合わされた、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を含んでもよい。併用療法で使用され得る治療剤の例としては、疾患または障害(例えば、炎症性障害)の治療に使用される他の化合物、薬剤、および/または剤が挙げられる。かかる化合物、薬剤、および/または剤は、例えば、炎症性サイトカインの産生を妨害または低下させる抗炎症薬剤または抗体を含んでもよい。一部の実施形態では、治療剤としては、抗IP-10抗体、抗TNF-α抗体(例えば、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標)))、インターフェロンベータ-1a(例えば、AVONEX(登録商標)、 REBIF(登録商標))、インターフェロンベータ-1b(例えば、BETASERON(登録商標)、EXTAVIA(登録商標))、酢酸グラチラマー(例えば、COPAXONE(登録商標)、GLATOPA(登録商標))、ミトキサントロン(例えば、NOVANTRONE(登録商標))、非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAIDs)、鎮痛薬、コルチコステロイド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0220】
本明細書に記載される医薬化合物は、一つ以上の薬学的に許容可能な塩を含み得る。「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を保持し、任意の望ましくない毒性作用を与えない塩を指す(例えば、Berge,S.M.,et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1-19を参照のこと)。かかる塩の例としては、酸付加塩、および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸、ならびに例えば脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、ならびに例えばN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性の有機アミンに由来するものが挙げられる。
【0221】
本明細書に記載される医薬組成物は、薬学的に許容可能な抗酸化剤も含んでもよい。薬学的に許容可能な抗酸化剤の例としては、(1)例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、(2)例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの脂溶性抗酸化剤、および(3)例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤、が挙げられる。
【0222】
本明細書に記載される医薬組成物に採用され得る適切な水性担体および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、例えばオリーブオイルなどの植物性油、ならびに例えばオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル類が挙げられる。例えばレシチンなどのコーティング物質の使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。
【0223】
これらの組成物はさらに、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の発生の予防は、上記の滅菌手順を行うこと、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含有させることの両方により確保されてもよい。例えば、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物内に含有させることが望ましい場合もある。さらに注射用医薬品の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を含有させることにより実現されてもよい。
【0224】
薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水溶液または滅菌分散液、および滅菌注射溶液または滅菌分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質に対する、そのような媒および剤の使用は、当分野に公知である。任意の従来的な媒または剤が、活性化合物と不適合である場合を除き、本明細書に記載される医薬組成物中でのその使用が予期される。医薬組成物は、防腐剤を含んでもよく、または防腐剤を含まなくてもよい。補足的な活性化合物が、組成物内に組み込まれてもよい。
【0225】
治療用組成物は、典型的には、滅菌され、そして製造および保管の条件下で安定的でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の秩序構造物として製剤化されてもよい。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒または分散媒、およびそれらの適切な混合物であってもよい。例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持されてもよい。多くの場合において、組成物は、例えばマンニトール、ソルビトールなどの糖類、ポリオール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含んでもよい。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸塩やゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を組成物中に含有することによりもたらされてもよい。
【0226】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中の必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列記される成分の一つまたは組み合わせと混合し、次いで滅菌マイクロろ過を行うことにより調製されてもよい。概して、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒を含有する滅菌ビヒクル、および本明細書において列記される物質から必要とされる他の成分と組み合わせることにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合には、調製方法のいくつかは、真空乾燥法およびフリーズドライ法(凍結乾燥法)であり、それら方法により、従前に滅菌ろ過されたその溶液から、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0227】
単一剤形を作製するための担体物質と混合され得る活性成分の量は、治療される対象、および特定の投与様式に応じて変化する。単一剤形を作製するための担体物質と混合され得る活性成分の量は概して、治療効果を生じさせる組成物の量である。概して、100パーセントのうち、当該量は、約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分の範囲であり、または薬学的に許容可能な担体と組み合わされて、約0.1パーセント~約70パーセント、または約1パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0228】
投薬レジメンは、最適な望ましい応答(例えば治療応答)をもたらすように調整される。例えば単回ボーラスを投与してもよく、数回に分けられた投与量を経時的に投与してもよく、または治療状況の要件に指定されるように投与量を相対的に減少または増加させてもよい。投与の簡易性および用量の均一性のために、単位剤型で非経口組成物を製剤化することが特に有益である。本明細書において使用される場合、単位剤型とは、治療される対象に対する単位形態の用量として適合された、物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な薬学的担体と関連付けられて、望ましい治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本明細書に記載される単位剤型の仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴および達成される特定の治療的効果、および(b)個体の治療感受性に関し、かかる活性化合物の調合分野に内在する制限、により影響を受け、および直接的に依存する。
【0229】
例えば本明細書に記載される抗TREM-1抗体の投与については、用量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、より一般的には0.01~5または10mg/kgの範囲である。例えば用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重、または1~10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的な治療レジメンは、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1か月に1回、3か月に1回、または3~6か月に1回の投与を伴う。本明細書に記載される抗TREM-1抗体の例示的な投与レジメンは、1mg/kg体重または3mg/kg体重を静脈内投与することを含み、抗体は、以下の投薬スケジュールのうちの一つを使用して与えられる:(i)4週間ごとに6回の投薬、その後は3か月ごとの投薬、(ii)3週間ごとの投薬、(iii)3mg/kg体重を1回、その後は1mg/kg体重を3週間ごとに投薬。
【0230】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、一律な投与量(一律な投与レジメン)で投与される。他の実施形態では、抗TREM-1抗体は、別の抗体との固定投与量で投与される。特定の実施形態では、抗TREM-1抗体は、体重に基づく投与量で投与される。
【0231】
一部の方法では、異なる結合特異性を有する二つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与された各抗体の用量は、指定範囲内にある。抗体は通常、複数回投与される。単回用量の間の間隔は、例えば毎週、毎月、3カ月ごと、または毎年であってもよい。また間隔は不規則であってもよく、患者中の標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することにより指定される。一部の方法では、用量は、約1~1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整され、一部の方法では約25~300μg/mlである。
【0232】
抗体は、徐放性製剤として投与されてもよく、その場合、より少ない頻度での投与が必要とされる。用量と頻度は、患者中の抗体の半減期に応じて変化する。概して、ヒト抗体は半減期が最長であり、続いてヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体が続く。用量と投与頻度は、治療が予防的であるか、または治療的であるかに応じて変化し得る。予防的アプリケーションの場合、長期間にわたり比較的低い用量を、比較的に低頻度の間隔で投与する。一部の患者は、その生涯にわたり治療を受け続ける。治療アプリケーションの場合、疾患の進行が遅くなる、または停止するまで、そして患者が疾患症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い用量が必要とされる場合がある。その後、患者は予防的レジメンを投与されてもよい。
【0233】
本明細書に記載される医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性をもたらすことなく、特定の患者、組成物および投与様式にとって望ましい治療応答を実現させるために有効な活性成分の量が得られるように変化し得る。選択された用量レベルは、採用された本明細書に記載される特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用された特定の化合物の排出速度、治療期間、他の薬剤、採用された特定の組成物と併用して使用される化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康状態および既往歴、ならびに医学分野に公知の類似因子をはじめとする様々な薬物動態因子に依存する。
【0234】
本明細書に記載される組成物は、当分野で公知の様々な方法のうちの一つ以上を使用して、一つ以上の投与経路を介して投与されてもよい。当業者に認識されるように、投与経路および/または投与様式は、望まれる結果に応じて変化する。本明細書に記載される抗TREM-1抗体の投与経路としては、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊椎または他の非経口の投与経路が挙げられる。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という文言は、腸内投与および局所投与以外の投与様式を意味し、通常、注射により行われ、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨下の注射ならびに点滴が挙げられる。
【0235】
あるいは本明細書に記載される抗体は、潜在的に、例えば局所、表皮または粘膜の投与経路、例えば鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下、または局所などの非経口経路を介して投与され得る。
【0236】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル送達システムを含む、例えば放出制御性製剤など、急速な放出から化合物を保護する担体を用いて調製されてもよい。生分解性で生体適合性ポリマー、例えば酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などを使用してもよい。かかる製剤の調製のための多くの方法が特許取得済みであるか、または当業者に一般的に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0237】
治療用組成物は、当分野で公知の医療用デバイスを用いて投与されてもよい。例えば特定の実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物は、例えば米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号に開示されるデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与されてもよい。本明細書に記載される抗TREM-1抗体を用いた使用のための公知のインプラントおよびモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号であり、当該特許は、制御された速度で医薬品を投薬するためのインプラント用マイクロ注入用ポンプを開示している;米国特許第4,486,194号であり、当該特許は、皮膚を通して医薬品を投与するための治療用デバイスを開示している;米国特許第4,447,233号であり、当該特許は、正確な注入速度で医薬品を送達するための医薬品注入ポンプを開示している;米国特許第4,447,224号であり、当該特許は、継続的な薬剤送達のための変動流インプラント用注入装置を開示している;米国特許第4,439,196号であり、当該特許は、マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬剤送達システムを開示している;および米国特許第4,475,196号であり、当該特許は、浸透圧薬剤送達システムを開示している。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような多くの他のインプラント、送達システム、およびモジュールが、当業者に公知である。
【0238】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗TREM-1抗体は、インビボで適切な分布が確保されるように製剤化されてもよい。例えば、血液脳関門(BBB)は、高度に親水性の化合物は除外される。本明細書に記載される治療化合物は、BBBを確実に通過するように(例えば脳腫瘍など、必要に応じて)、リポソーム中で製剤化されてもよい。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号、第5,374,548号、および第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送される一つ以上の部分を含んでもよく、それにより、標的化薬剤送達が強化される(例えば、V.V.Ranade(1989) J.Clin.Pharmacol.29:685を参照のこと)。標的化部分の例としては、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらの米国特許第5,416,016号を参照のこと)、マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153: 1038)、抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39: 180)、サーファクタントプロテインA受容体(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)、pl20(Schreier et al.(1994)J.Biol.Chem.269:9090)が挙げられ、さらに、K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0239】
VII.使用および方法
本開示の抗TREM-1抗体、およびかかる抗体を含む組成物(例えば医薬組成物、製剤、ポリヌクレオチド、ベクター、および細胞)は、(例えばTREM-1活性を阻害することによって)炎症性疾患の治療に使用され得る。
【0240】
したがって一つの態様では、本開示は、治療有効量の抗TREM-1抗体を対象に投与することを含む、その必要のある対象において炎症性疾患を治療する方法を提供する。本開示の抗TREM-1抗体で治療され得る炎症性疾患の例としては、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、ループス腎炎、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、アレルギー、喘息、および急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患が挙げられる。
【0241】
一つの実施形態では、抗TREM-1抗体は、炎症性腸疾患を有する個体の治療での使用に適している。炎症性腸疾患(IBD)は、口から肛門までの消化管のすべての部分が罹患する可能性がある疾患であり、様々な症状を引き起こす。IBDは主に腹痛、下痢(血性の場合もある)、嘔吐または体重減少を引き起こすが、例えば皮膚の発疹、関節炎、眼の炎症、疲労および集中力の欠如などの消化管外の合併症を引き起こす場合もある。IBD患者は、潰瘍性大腸炎(UC)の患者とクローン病(CD)の患者の二つの主要クラスに分けられ得る。CDは一般的に回腸と結腸が関与し、腸管のすべての領域が罹患する可能性があるが、多くの場合、非連続的である(罹患部が集積した領域が腸管全体に広がる)。UCは常に直腸(結腸)が関与し、より連続的である。CDでは、炎症は貫壁性であり、膿瘍、瘻孔、および狭窄を生じさせる。一方でUCは、典型的には炎症は粘膜に限定される。クローン病に対し、判明している医薬的または外科的な治療法は存在しないが、UC患者の一部は、結腸の外科的除去によって治癒される場合がある。治療選択肢は、症状のコントロール、寛解の維持、および再発の予防に限定される。臨床での炎症性腸疾患における有効性は、CDに関するクローン病の疾患活動度指標(CDAI:Crohn’s Disease Activity Index)のスコアにおける低下として測定されてもよく、当該スコアは、臨床検査、および生活の質問票の質に基づく尺度をスコア化する。動物モデルにおいて有効性は主に体重の増加によって測定され、さらに疾患活動度指標(DAI:disease activity index)でも測定される。当該指標は、便の硬さ、体重および血便の組み合わせである。
【0242】
一つの実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、関節リウマチを有する個体の治療での使用に適している。関節リウマチ(RA)は全身性の疾患であり、身体の全てではないにしても、ほぼ全身が罹患し、関節炎の最も普遍的な形態の一つである。関節の炎症を特徴とし、痛み、凝り、熱感、発赤、および腫れを引き起こす。この炎症は、関節に浸潤する炎症性細胞による結果であり、これらの炎症性細胞は、骨および軟骨を消化し得る酵素を放出する。結果として、この炎症は骨および軟骨に重大なダメージをもたらし、他の生理学的作用の中でも特に関節の劣化と重度の疼痛をもたらし得る。影響を受けた関節は、その形状と噛み合わせを失い、疼痛および動きの喪失がもたらされ得る。当分野で公知の関節リウマチに関する動物モデルがいくつか存在する。例えば、コラーゲン誘導性関節炎(CIA:collagen-induced arthritis)モデルでは、マウスが、ヒト関節リウマチに類似した炎症性関節炎を発症する。CIAはRAと類似した免疫学的および病理学的な特性を共有しているため、有望なヒトの抗炎症化合物のスクリーニングに適したモデルになる。このモデルにおける有効性は、関節の腫れの減少によって測定される。臨床でのRAにおける有効性は、患者の症状を低減させる能力により測定され、症状は、関節の腫れ、赤血球沈降率、C反応性タンパク質のレベル、および例えば抗シトルリン化タンパク質抗体などの血清因子のレベルの組み合わせとして測定される。
【0243】
一つの実施形態では、本明細書に開示される抗TREM-1抗体は、乾癬を有する個体の治療での使用に適している。乾癬は、皮膚のT細胞介在性の炎症性障害であり、相当な不快感を引き起し得る。現在治療法がなく、あらゆる年齢の人々が罹患する疾患である。軽度の乾癬を有する個体は、局所用の剤で自身の疾患を制御し得ることが多いが、世界中で100万人を超える患者が、紫外線光治療または全身的な免疫抑制療法を必要とする。残念なことに、紫外線照射の不便さとリスク、および多くの治療法に関する毒性により、長期的な使用は制限される。さらに患者は通常、乾癬が再発し、場合によっては免疫抑制剤治療を中止した直後にリバウンドする。近年開発された、CD4+T細胞の移植に基づく乾癬モデルは、ヒト乾癬の多くの態様を模倣しており、乾癬治療における使用に好適な化合物の特定に使用することができる(Davenport et al.,Internat.Immunopharmacol 2:653-672,2002)。このモデルにおける有効性は、スコアリングシステムを使用した皮膚病態の低下によって測定される。同様に、患者における有効性も、皮膚病態の低下によって測定される。
【0244】
一つの実施形態では、抗TREM-1抗体は、乾癬性関節炎を有する個体の治療での使用に適している。乾癬性関節炎(PA)は、乾癬患者の亜群で発生する炎症性関節炎の一種である。これらの患者において、皮膚の病態/症状は、関節リウマチにおいて認められる症状に似た関節の腫れを伴う。落屑を伴い、まだらに隆起し、赤みを帯びた皮膚炎症領域を特徴とする。乾癬はしばしば肘と膝の先端、頭皮、へそ、および生殖器エリアと肛門の周りが罹患する。乾癬患者のおよそ10%は、関節にも関連炎症を発症する。
【0245】
本開示の観点では、予防的、緩和的、対症療法的および/または根治的な治療は、本開示の別の態様を表し得る。本発明の抗体は、例えば静脈内、例えば筋肉内、例えば皮下など、非経口的に投与することができる。あるいは本発明の抗体は、例えば経口的または局所的など、経口的な経路を介して投与することもできる。本発明の抗体は、予防的に投与することができる。本発明の抗体は、(要求に応じて)治療的に投与することができる。
【0246】
以下の実施例は、解説を目的として提供されるものであり、限定を目的としてはいない。本明細書全体を通じて引用される全ての参照文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0247】
実施例1:抗TREM-1抗体の作製
ヒト抗体を発現するトランスジェニックマウスの6つのコホート(各コホートは2~4匹のマウスを含有する)を、組み換えTREM-1細胞外ドメイン、TREM-1 Jurkat細胞株、またはTREM-1 Jurkat細胞株の細胞膜調製物のいずれかで免疫化した。免疫化マウスの脾臓、リンパ節、および骨髄を採取し、これを使用して4種の免疫抗体scFv(一本鎖可変断片)ライブラリを作製した。簡潔に述べると、mRNAを採取細胞から抽出し、逆転写してcDNAを生成した。抗体可変領域遺伝子は、プライマーカクテルを使用してcDNAからPCR増幅され、重複伸長PCRを使用してアセンブリし、scFvライブラリを作製した。scFvライブラリを、mRNAディスプレイ(Xu L et al.(2002)Chemistry & Biology 9:933;Roberts RW and JW Szostak(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:12297;Kurz et al.(2000)Nucleic Acids Res.28(18):E83)を使用して発現および選択した。第1ラウンドを実施して、組換えTREM-1細胞外ドメインFc融合タンパク質に対して、mRNAディスプレイscFvライブラリを選択することによりTREM-1特異的抗体を濃縮し、続いてプロテインG磁気ビーズ上で捕捉した。第1のラウンドの結果は、mRNAディスプレイのその後のラウンドを通して取り込まれ、ライブラリは以下の2群に分割された:(1)組換えTREM-1細胞外ドメインFc融合タンパク質に対する連続的な選択ラウンドとそれに続くプロテインG磁気ビーズ上での捕捉を行い、すべてのTREM-1-結合scFvを濃縮する。および(2)mAb170とともに予めインキュベートされた組換えTREM-1細胞外ドメインFc融合タンパク質に対する連続的な選択ラウンドとそれに続くプロテインG磁気ビーズ上での捕捉を行い、新規エピトープに対する抗体を濃縮する(エピトープ操作群)。両選択群の最終結果の配列を解析し、見込みのある固有クローンをクローニングし、全長免疫グロブリンG(IgG)として発現させた。当該IgG抗体は、エフェクター機能を低下させるための変異を含有するIgG1.1f定常領域を含む。これらのIgG抗体を、その後の特徴解析とアッセイに使用した。
【0248】
実施例2:ヒトTREM-1への、エピトープ操作された抗TREM-1抗体の結合競合解析
エピトープ操作された抗TREM-1抗体の機能特性を解析するために、これらの抗体が、mAb170およびPGRPのヒトTREM-1への結合を阻害する能力を評価した。簡潔に述べると、mAb 170を、試薬メーカーのプロトコルを使用してAlexaFluor 647染料で直接標識した。mAb170に対して試験される抗体は、4℃で1時間、huTREM1を発現するJurkat細胞上で結合された。細胞を洗浄した後、直接標識したmAb170を300pMで細胞に添加した。4℃でさらに30分間インキュベーションした後、細胞を洗浄し、標準的な方法を使用してFACSにより分析した。非標識のmAb 170を、100%阻害の対照として使用した。
【0249】
図3および5Aに示すように、エピトープ操作されていない抗TREM-1抗体(
図3および5Aの両方における黒色ひし形)は、予想されたように、TREM-1へのmAb170の結合を阻害した。対照的に、エピトープ操作された抗TREM-1抗体(
図3および5Aの両方における灰色の円)は、TREM-1へのmAb170の結合を阻害することはできなかった。この結果から、エピトープ操作された抗TREM-1抗体は、mAb170抗体のエピトープとは異なるエピトープでヒトTREM-1に結合することが確認される。
【0250】
エピトープ操作された抗TREM-1抗体が、ヒトTREM-1へのPGRPの結合を阻害する能力は、mAb170と比較してはるかに多様であった。
図5Aに示されるように、mAb170は、エピトープ操作されていない抗体の大部分と共に、TREM-1とその天然リガンドであるPGRPとの間の相互作用を効率的に阻害することができた。しかしながらエピトープ操作された抗体については、少数の抗体のみが、mAb170と同様の効率性でTREM1へのPGRPの結合を阻害することができた(
図5Aの円)。エピトープ操作された抗体の大部分に関しては、阻害割合は約90%から10%未満の低さまでの範囲であった。
【0251】
実施例3:エピトープ操作された抗TREM-1抗体によるTHP-1細胞活性化の阻害解析
エピトープ操作された抗TREM-1抗体のアンタゴニスト性の性能を評価するために、これら抗体が活性化ヒト細胞からの炎症性サイトカインの放出を妨害する効力を評価した。簡潔に述べると、ヒト単球のTHP-1細胞を、プレート結合したPGRP1とTLR2活性を欠く可溶性ペプチドグリカンを含む培養液中、抗TREM-1抗体(エピトープ操作された、またはされていない)の存在下または非存在下のいずれかで刺激した。
【0252】
図3に示されるように、エピトープ操作されていない抗TREM-1抗体(黒丸)の大部分は、THP-1細胞の活性化を阻害し、IC50値は約100nM未満であった。しかし試験されたエピトープ操作された抗TREM-1抗体(灰色の円)は一つのみが、100nM未満のIC50値を有していた。この結果は、少数のエピトープ操作された抗体のみが、ヒトTREM-1へのPGRPの結合を効率的に阻害することができたという実施例2のデータと一致すると思われる。
図4は、
図3に示される抗TREM-1抗体に関する重鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列を提示する。
【0253】
実施例4:エピトープ操作された抗TREM-1抗体の配列解析
エピトープ操作された抗TREM-1抗体をさらに特徴解析するために、当該抗体のVH領域およびVK領域に対応するヒト生殖細胞系列遺伝子を決定した。次いで重鎖V遺伝子ファミリーおよびHCDR3配列に従って配列をグループ化した。
【0254】
図5Bに示されるように、エピトープ操作された抗体(
図5Aの灰色の円)のVHは、ヒト生殖細胞系列遺伝子の1-18、1-69、3-09、3-13、3-33、4-59、および5-51に対応した。VL領域は、主にヒト生殖細胞系列遺伝子のL15、L4、L6、L10、L1、およびA27に対応した。TREM-1へのPGRPの結合を最も阻害したエピトープ操作抗体(
図5Aの円内-右下の四分円を参照)は、ヒト生殖細胞系列遺伝子1-69、3-33、および4-59に対応するVH、ならびにヒト生殖細胞系列遺伝子L4およびA27に対応するVLを有した。
【0255】
対照的に、
図5Aに示されるエピトープ非操作抗TREM-1抗体(黒いひし形)は、ヒト生殖細胞系列遺伝子1-08および1-69に対応するVH、ならびにヒト生殖細胞系列遺伝子L15およびL4に対応するVLを有した。それらのうち、TREM-1へのPGRPおよびmAb170の両方の結合を最も良く阻害した抗体(
図5Aの四角内-右上四分円を参照)は、それぞれヒト生殖細胞系列遺伝子1-69およびL15に対応するVHならびにVLを有した。比較としては、mAb170のVHおよびVLは、それぞれ3-73およびB3に対応する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【配列表】
【国際調査報告】