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特表2022-540921KRASまたはHRAS変異若しくは増幅を有するがんを処置する際に有用な方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】KRASまたはHRAS変異若しくは増幅を有するがんを処置する際に有用な方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4192 20060101AFI20220912BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20220912BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220912BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
A61K31/4192
A61K31/517 ZNA
A61K31/4709
A61K31/496
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/337
A61K45/00
A61K31/704
A61K31/17
A61K31/565
A61K33/24
A61K31/282
A61K31/675
A61K31/198
A61K31/513
A61K31/7076
A61K31/7068
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502559
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020042162
(87)【国際公開番号】W WO2021011674
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/874,474
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.MATLAB
4.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホロスコ クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC28
4C086BC43
4C086BC45
4C086BC50
4C086BC60
4C086DA09
4C086DA35
4C086EA10
4C086EA17
4C086EA18
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086HA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206HA28
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZB27
(57)【要約】
本技術はKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがん、腫瘍、および新生物に関して、がんを処置し、腫瘍の成長を遅くし、腫瘍の成長を後退させ、新生物の成長を遅くし、新生物の成長を後退させ、新生物の増殖を遅くし、および/または新生物の増殖を後退させる際に有用な方法であって、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてがんを処置する方法であって、対象に有効量の化合物を投与してがんを処置するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、がんがKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持し、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、方法。
【請求項2】
がんが、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんが、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化合物がダラプラジブである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
化合物がリラプラジブである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
化合物がAA39-2である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
化合物がML256である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
対象に有効量の化合物を経口投与してがんを処置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
対象において腫瘍の成長を遅くするまたは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が腫瘍の成長を遅くするまたは後退させるのに有効な量であり、腫瘍がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの腫瘍であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、前記方法。
【請求項16】
腫瘍が、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんから選択されるがんの腫瘍である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含むがんの腫瘍である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
対象がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
化合物がダラプラジブである、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
化合物がリラプラジブである、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
化合物がAA39-2である、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
化合物がML256である、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
対象に有効量の化合物を経口投与するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
投与が、腫瘍内へのまたは腫瘍の近位への化合物の注射を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
対象において新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または対象において新生物の増殖を遅くするもしくは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または新生物の増殖を遅くするもしくは後退させるのに有効な量であり、新生物がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの新生物であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、前記方法。
【請求項31】
新生物が、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんから選択されるがんの新生物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
新生物が、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含むがんの新生物である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
対象がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
化合物がダラプラジブである、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
化合物がリラプラジブである、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
化合物がAA39-2である、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
化合物がML256である、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
対象に有効量の化合物を経口投与するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
投与が、新生物内へのまたは新生物の近位への化合物の注射を含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2019年7月15日付で出願された米国仮出願第62/874,474号の利益および優先権を主張し、該出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
(米国政府の権利)
本発明は国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与されたHD075698、および全米科学財団(National Science Foundation)により授与された1752506の政府支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
(分野)
本技術は、KRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがん、腫瘍、および新生物に関して、がんを処置し、腫瘍の成長を遅くし、腫瘍の成長を後退させ、新生物の成長を遅くし、新生物の成長を後退させ、新生物の増殖を遅くし、および/または新生物の増殖を後退させる際に有用な方法であって、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスに誘発される早期老化は、腫瘍形成を遅らせるかまたは中止する腫瘍抑制機構である。有糸分裂を促進するMAPキナーゼカスケードの重要な構成成分であるRAS/RAFを介する構成的シグナル伝達は増殖遅延、アポトーシス1,2,3,4,5,6,7,8およびDNA損傷応答9をin vitroおよびin vivoで7,10,11,12,13引き起こすことができる。この過程は腫瘍の開始を抑制し得るが、発がん遺伝子に誘発される老化(OIS)は生きている細胞が例えば、酸化的損傷および複製欠陥14,15,16,17,18によってゲノム安定性を失うので有害である可能性がある。この考えと一致して、発生中のマウス胚における内因性変異によるKRAS発現は前がん性の組織欠陥:老化、p21waf1/cip1過剰発現、DNA損傷応答、変異アレル、不安定性、および総体的発育不全19,20,21,22を引き起こす。より最近になって、発がん遺伝子に誘発される損傷を再現するために上皮細胞および線維芽細胞が使用されている;例えば、先天的炎症遺伝子発現表現型(老化炎症応答SIR、および老化関連分泌表現型SASP)が記載されている23,24。OISは停止、局所炎症、および細胞外伝達の開始による細胞損傷に対する迅速な応答として起こると考えられる。トランスクリプトーム分析および組織学は、常に、ras発がん遺伝子を保持する悪性の組織および細胞における保存された炎症性酵素である分泌ホスホリパーゼA2(sPLA2)をコードする遺伝子の発現を示す。しかしながら、sPLA2酵素は古典的な白血球産物であり、がん生物学におけるそれらの役割は不明なままである。興味深いことに、証拠は、sPLA2酵素活性の産物、リゾリン脂質および関連種が細胞老化中に大量に生成する25ことを示している。また、いくつかのsPLA2は老化に直接関与する26,27,28,29
【発明の概要】
【0003】
ある態様では、本技術は、対象においてがんを処置する方法であって、対象に有効量の化合物を投与してがんを処置するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、がんがKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持し、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、前記方法を提供する。本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
ある態様では、本技術は、対象において腫瘍の成長を遅くするまたは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が腫瘍の成長を遅くするまたは後退させるのに有効な量であり、腫瘍がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの腫瘍であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、前記方法を提供する。本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
【0004】
ある態様では、本技術は、対象において新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または対象において新生物の増殖を遅くするもしくは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または新生物の増殖を遅くするもしくは後退させるのに有効な量であり、新生物がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの新生物であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、方法を提供する。本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は実施例における不死化されたマウス胚線維芽細胞においてRASにより誘発された損傷を示し、示されている濃度のドキシサイクリンの存在下での初期播種密度に対して付着細胞数の経時変化をプロットしたものである。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
図2図2は実施例においてドキシサイクリンを導入した24時間後のベクター/iKRas細胞の免疫ブロットを提供する。両側検定(n=3):ドキシサイクリン対合iKRasおよびベクターの画素密度。TBPローディング対照またはホスホ/トータル比を使用して正規化した。
図3図3は実施例による細胞周期基質に対するベクター/iKRasの72時間免疫ブロットを提供する。両側検定(n=3);ドキシサイクリン対合MEFの画素強度。TBPを使用して正規化した。
図4図4は実施例によるγH2A.X陽性シグナルを含有する免疫蛍光像からの積分強度の定量化を提供する。誤差は平均±SEM(一方向ANOVA、n=3、各々20×の10撮像場)である。
図5図5は実施例によるJNK(上)またはATF-2(下)に対するベクター/iKRasの24時間および72時間免疫ブロットを提供する。両側検定(n=3);ドキシサイクリン対合したMEFの画素強度。ホスホ/トータル比を使用して正規化した。
図6図6は実施例によるSA-β-ガラクトシダーゼアッセイ(左、スケールバー=30μm)、およびHP1γ核焦点に対する関節免疫蛍光(右、スケールバー=10μm)を提供する。β-Galカラー画像をデコンボリューションし解析して、各々の条件(n=3×10撮像視野、10×倍率)に対して示される陽性%の平均±標準偏差を得た。%陽性SAHFは5+焦点核/全核(各々の条件に対して示された平均±標準偏差、n=3×10撮像視野、40×倍率)を用いて計算された。
図7図7は実施例による、ジヘプタノイルチオ-PC基質およびDTNB色原体を用いた細胞溶解物または馴化培地のPan-sPLA2活性アッセイを提供する。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
図8図8は実施例による、チオ-PAF基質およびDTNB色原体を用いた細胞溶解物または馴化培地のPan-PAF-AH活性アッセイを提供する。全てのサンプルは10kDa膜を用いてスピンフィルターにかけた。エラーバーは標準偏差を表す(両側検定、n=3)。LOD:検出限界。
図9図9は実施例による、PLA2G7A抗体で染色された(赤二次)iKRasまたはベクターの共焦点免疫蛍光イメージングの結果を提供する。青=Hoechst核染色。スケールバー=10μm。
図10図10は実施例による、示されている不死化MEF株に対するセンサー放射波長の定量化を提供する。エラーバーは標準偏差を表す(両側検定、n=3×12~15撮像場)。
図11図11は、実施例による、経路阻害剤またはPAF-AH誘導物質で処置された細胞における脂質リポーター応答を示し、24時間処置された培養物からのリポーター放射波長を提供する。誤差は平均±SDである(一方向ANOVA対ビヒクル、n=3×12~15撮像場)。各々の阻害剤の報告された標的の概要も含まれている。
図12図12は、実施例による、経路阻害剤またはPAF-AH誘導物質で処置された細胞における脂質リポーター応答を示し、形質導入K-rasG12Vを有するかまたは有しないAtg5ダブルノックアウトSV40LT MEFにおけるリポーター放射波長を提供する。別の実験において、細胞はプロテアーゼ阻害剤カクテル(20μMロイペプチン、20μMぺプスタチン、10μM E-64)に5時間曝露された。誤差は平均±SDである(両側t検定、n=3×12~15撮像場)。
図13図13は実施例による、リゾリン脂質に対する内膜リポーターアッセイの結果を提供し、誘導性増幅iKRas株におけるセンサーからの放射中心波長が単一アレルノックイン株eKRasと比較されている。
図14図14は、実施例による、経路阻害剤またはPAF-AH誘導物質で処置された細胞における脂質リポーター応答を示し、100nMデキサメタゾン塩で24時間処置された培養物におけるリポーター放射波長を提供する。誤差は平均±SDである(両側t検定、n=3×12~15撮像場)。
図15図15は実施例による、リゾリン脂質に対する内膜リポーターアッセイの結果を提供し、24時間のインキュベーション期間の間示されている薬剤:20nMバレスプラジブ、MJ-33、75nM BEL、500nM MAFP、50nMダラプラジブ、リラプラジブ、ML256、AA39-2、800nM P11、1μM TSI-01と共にインキュベートされたベクター/iKRas細胞からのセンサー放射波長の定量化が示されている。エラーバーは標準偏差を表す(両側t検定対ビヒクルまたはカッコにより示されている、一方向ANOVA対ビヒクル、n=3×12~15撮像場)。
図16図16は実施例による、リゾリン脂質に対する内膜リポーターアッセイの結果を提供し、24時間のインキュベーション期間の間20μM±-α-トコフェロールと共にインキュベートしたベクター/iKRas細胞からのセンサー放射中心波長が示されている。エラーバーは標準偏差を表す(両側t検定、n=3×12~15撮像場)。
図17図17はiKRasの12~25,000×イメージングからの電子顕微鏡写真(n=25視野)の定量化を提供する。誤差は平均±SDである(一方向ANOVA対ベクター)。
図18図18は500nmにおける定量化によるベクター対照およびiKRas細胞溶解物の全脂質ヒドロペルオキシドを提供する。エラーバーは標準偏差を表す(両側t検定、n=3)。LOD:検出限界。
図19図19図18と同様であるがビヒクルまたはダラプラジブ(50nM)で処置されたiKRas細胞に対する定量化を提供する。
図20図20は、実施例による、グループ7のsPLA2基質および生成物脂質の細胞増殖に対する効果を示し、培養培地中に加えた脂質濃度の関数として付着細胞数の変化を提供する。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
図21図21図20と同様に、しかし10μMの各々の脂質に曝露されたiKRasまたはeKRas細胞株に対して提供する。
図22図22は10μMリゾPCまたはcPAF脂質に24時間曝露後のベクター/iKRasの免疫ブロットを提供する。両側t検定(n=3):対合したiKRasおよびベクター処置条件の画素密度。TBPローディング対照またはホスホ/トータル比を使用して正規化した。PAF-R:血小板活性化因子受容体。
図23図23は、実施例による、グループ7のsPLA2標的化の細胞生存に対する効果を示し、45nM siRNAに曝露後96時間の付着細胞数の変化を提供する。エラーバーは標準偏差を表す(一方向ANOVA、n=3)。
図24図24は、実施例による、グループ7のsPLA2標的化の細胞生存に対する効果を示し、独立した実験からのLDH活性の変化を提供する。データは平均±SEMとして示す(一方向ANOVA、n=3)。
図25図25は、実施例による、グループ7のsPLA2標的化の細胞生存に対する効果を示し、ダラプラジブに対する応答における幾つかの細胞株の生存率を提供する。N=3反復;エラーバーは標準偏差を表す。
図26図26は実施例による、eKRasおよび野生型(WT)MEFに対するダラプラジブの効果を示す。細胞は生存率試験に関して本文に記載されているように平板培養した。ダラプラジブはそのin vitroEC50(10~1000nM)を超える濃度で細胞培養中に滴定した。N=3反復、誤差±SD;データはS字状の用量反応にフィットする。
図27図27は、実施例による、グループ7のsPLA2標的化の細胞生存に対する効果を示し、0日目にKP生殖細胞を注射され、1日目(D1)または6日目(D6)に始めて毎日ビヒクルまたはダラプラディップ(Darap、10mg/kg)を処置された(経口栄養補給)マウスの生存研究の結果を提供する。N(ビヒクル)=8、N(Darap、D1)=8、N(Darap、D6)=9。
【発明を実施するための形態】
【0006】
下に定義される以下の用語が本明細書を通じて使用される。
本明細書中および添付の特許請求の範囲で要素を記載する際に(殊に後記特許請求の範囲との関連で)使用される「a」および「an」ならびに「the」のような単数形態の冠詞および同様な指示対象は、本明細書中で他に示さないかまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形態および複数形態の両方に及ぶと理解されたい。本明細書中値の範囲の記述は単に、本明細書中で他に断らない限り、その範囲内に入る各々別々の値に個々に言及するのを簡潔にした表現方法として役立たせることを意図したに過ぎず、各々別個の値は個別に本明細書中に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されている方法は全て、本明細書中で他に断らないかまたはその他文脈により明らかに矛盾しない限り任意の適切な順序で行なうことができる。本明細書で提供される任意および全ての例、または代表的な言葉(例えば、「のような」)の使用は単に、実施形態の理解をより容易にすることを意図したに過ぎず、他に述べない限り特許請求の範囲の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる言葉も特許請求の範囲に記載されていない要素を必須であるとして示すものと解釈するべきではない。
【0007】
本明細書で使用されるとき、「約」は当業者により理解され、使用される状況に応じてある程度変化する。当業者にとって明らかでない用語が使用されるならば、使用される状況を考えて、「約」は個々の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味し、例えば「約10質量%」は「9質量%~11質量%」を意味すると理解されよう。「約」がある用語に先行するとき、その用語は「約」が付いた用語ならびに「約」による修飾がない用語を開示していると解釈するべきであると理解され、例えば「約10質量%」は「9質量%~11質量%」を開示すると共に「10質量%」を開示する。
本開示において使用される語句「および/または」は列挙されたメンバーのいずれか1つを個別に、またはそのいずれか2つもしくはそれ以上の組合せを意味すると理解され、例えば「A、B、および/またはC」は「A、B、C、AおよびB、AおよびC、またはBおよびC」を意味するであろう。
【0008】
当業者には理解されるように、任意の、そしてあらゆる目的で、特に書面による明細を提供する観点からいって、本明細書に開示されている全ての範囲はまた、そのいずれかおよび全ての可能な部分的範囲ならびにそれらの部分的範囲の組合せも包含する。掲げられているいかなる範囲も、同じ範囲が少なくとも等しい二分の一、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一、等に分解されることを充分に記載し、可能にすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各々の範囲は下側の三分の一、中央の三分の一および上側の三分の一、等に容易に分解することができる。また当業者には理解されるように、「以下」、「少なくとも」、「超」、「未満」などのような言葉はいずれも、列挙されている数を含み、後に上で論じたような部分的範囲にその分解することができる範囲を意味する。最後に、当業者には理解されるように、ある範囲は各々の個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の原子を有する基は1、2、または3個の原子を有する基を意味する。同様に、1~5個の原子を有する基は1、2、3、4、または5個の原子を有する基を意味する、など。
【0009】
本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩は本技術の範囲内であり、所望の薬理学的な活性を保持しており、生物学的に望ましくなくない酸または塩基付加塩を含む(例えば、塩は過度に毒性、アレルギー性、または刺激性であることがなく、生物学的に利用可能である)。本技術の化合物が例えばアミノ基のような塩基性の基を有するとき、薬学的に許容される塩は無機の酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸)、有機の酸(例えばアルギン酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)と共に形成することができる。本技術の化合物が、例えばカルボン酸基のような酸性の基を有するときは、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えばNa+、Li+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn2+)のような金属、アンモニアまたは有機のアミン(例えばジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えばアルギニン、リジンおよびオルニチン)と共に塩を形成することができる。かかる塩は、化合物の単離および精製中その場で、または別途遊離の塩基もしくは遊離の酸形態の精製された化合物をそれぞれ適切な酸もしくは塩基と反応させ、こうした形成された塩を単離することにより、調製することができる。
【0010】
当業者には分かるように、本技術の化合物は互変異性、立体配座異性、幾何異性および/または立体異性の現象を示し得る。本明細書および特許請求の範囲内の式の図は可能な互変異性、立体配座異性、立体化学または幾何学的な異性体形態の1つのみを表すことができるが、本技術は本明細書に記載されている有用性の1つまたは複数を有する化合物のあらゆる互変異性、立体配座異性体、立体化学および/または幾何学的異性体形態、ならびにこれらの様々な異なる形態の混合物を包含すると了解されたい。
「互変異性体」とは化合物の互いに平衡状態にある異性体形態を意味する。異性体形態の存在および濃度は化合物が見出される環境に依存し、例えば、化合物が固体であるか、または有機もしくは水溶液中にあるかどうかで異なり得る。例えば、水溶液中でキナゾリノンは次の異性体形態を示し得、これらは互いに互変異性体といわれる。
【0011】
【化1】
もう1つ別の例として、グアニジンはプロトン性の有機溶液(例えば、水)中で次の異性体形態を示し得、これらも互いに互変異性体といわれる。
【化2】
構造式により化合物を表すことの限界のため、本明細書に記載されている化合物の全ての化学式は化合物の全ての互変異性形態を表し、本技術の範囲内であることと理解されたい。
【0012】
化合物の立体異性体(光学異性体ともいわれる)は、特定の立体化学が明白に示されない限り、ある構造のキラル、ジアステレオマーおよびラセミ形態を全て含む。したがって、本技術で使用される化合物はその表現から明らかなようにいずれかまたは全ての不斉原子において富化または分割された光学異性体を含む。両方のラセミおよびジアステレオマー混合物、ならびに個々の光学異性体はそのエナンチオマーまたはジアステレオマー相手を実質的に含まないように単離または合成することができ、これらの立体異性体は全て本技術の範囲内である。
【0013】
本技術の化合物は溶媒和物、殊に水和物として存在し得る。水和物は化合物もしくは化合物を含む組成物の製造中に形成され得、または水和物は化合物の吸湿性に起因して時間と共に形成し得る。本技術の化合物はまた、中でもDMF、エーテル、およびアルコール溶媒和物を始めとする有機の溶媒和物としても存在し得る。いずれの個々の溶媒和物の同定および調製も合成有機または医薬品化学の通常の技術者の知識の範囲内である。
本開示を通じて、様々な刊行物、特許、および公表された特許明細書が同定する引用により言及される。また本開示内には、言及された引用を参照するアラビア数字もあり、その完全な書誌的詳細は特許請求の範囲の前に提供される。これらの刊行物、特許、および公表された特許明細書の開示は参照により本開示中に組み込まれる。参照により組み込まれる本文に含まれる定義は本開示内の規定と矛盾する範囲において排除される。
【0014】
本技術
ストレスに誘発される早期老化は、腫瘍形成を遅らせるかまたは中止する腫瘍抑制機構である。有糸分裂を促進するMAPキナーゼカスケードの重要な構成成分であるRAS/RAFを介する構成的シグナル伝達は増殖遅延、アポトーシス1,2,3,4,5,6,7,8およびDNA損傷応答9をin vitroおよびin vivoで7,10,11,12,13引き起こすことができる。この過程は腫瘍の開始を抑制し得るが、発がん遺伝子に誘発される老化(OIS)は生きている細胞が例えば、酸化的損傷および複製欠陥14,15,16,17,18によってゲノム安定性を失うので有害である可能性がある。この考えと一致して、発生中のマウス胚における内因性変異によるKRAS発現は前がん性の組織欠陥:老化、p21waf1/cip1過剰発現、DNA損傷応答、変異アレル、不安定性、および総体的発育不全19,20,21,22を引き起こす。より最近になって、発がん遺伝子に誘発される損傷を再現するために上皮細胞および線維芽細胞が使用されている;例えば、先天的炎症遺伝子発現表現型(老化炎症応答SIR、および老化関連分泌表現型SASP)が記載されている23,24。OISは停止、局所炎症、および細胞外伝達の開始による細胞損傷に対する迅速な応答として起こると考えられる。トランスクリプトーム分析および組織学は、常に、ras発がん遺伝子を保持する悪性の組織および細胞における保存された炎症性酵素である分泌ホスホリパーゼA2(sPLA2)をコードする遺伝子の発現を示す。しかしながら、sPLA2酵素は古典的な白血球産物であり、がん生物学におけるそれらの役割は不明なままである。興味深いことに、証拠は、sPLA2酵素活性の産物、リゾリン脂質および関連種が細胞老化中に大量に生成する25ことを示している。また、いくつかのsPLA2は老化に直接関与する26,27,28,29。これらの観察により本発明者は、最初は動物毒および炎症関節で研究された、心臓血管、脂質、および白血球シグナル伝達に不可欠の30,31,32大きいセリンヒドロラーゼファミリーであるsPLA2の発がん性のRAS誘発損傷における役割を評価することになった。
【0015】
この目的で、本発明者は発がん性RAS誘発損傷のネズミモデルにおけるsPLA2の関与を研究した。構成的KRASまたはHRASが、Tet-ONレトロウイルスプラスミド(増幅モデル、iKRas)を用いて、またはマウス胚における内因性組換えにより(単一アレルモデル、eKRas)23SV40マウス胚線維芽細胞(MEF)に導入された。本発明者は発がん性RAS増幅からの細胞損傷の程度を過増殖する内因性変異体と比較した。発がん遺伝子増幅株はp21waf1/cip1の特有の著しい過剰発現、ドキシサイクリン用量依存性停止、老化関連マーカー、DNA損傷、およびSIR/SASP遺伝子発現を示した。酵素およびリピドームアッセイ、ならびにエンドソーム脂質のナノセンサーを用いて本発明者は、グループ7sPLA2アイソフォーム(グループ7はpla2g7、リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2ともいわれるPLA2G7Aおよびpafah2、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ2ともいわれるPLA2G7Bを含む)が、RAS増幅に際して上方調節された活性を示したことを見出した。本発明者は、RAS損傷が、動員されたグループ7sPLA2酵素の特化された酸化リン脂質クリアリングの役割と一致して脂質ヒドロペルオキシド化および内因性酸化剤の増大を引き起こしたことを見出した。細胞停止、p21waf1/cip1、およびリン酸化ERKは非分解性のグループ7基質脂質への曝露の際に刺激された。グループ7sPLA2アイソフォームのノックダウンは選択的にRAS変異体を死滅させた。驚くべきことに、本発明者は、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病に対する臨床試験で以前に試験された有力な第二世代グループ7酵素阻害剤であるダラプラジブが、RAS形質転換細胞においてリゾリン脂質蓄積を阻止し、発がん性のras保持株を優先的に死滅させ、マウスでのKrasG12D/+/p53-/-肺がんモデルにおいて生存を延ばしたことを見出した。
【0016】
したがって、ある態様では、本技術は、対象においてがんを処置する方法であって、対象に有効量の化合物を投与してがんを処置するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256(まとめてまたは個々に「本技術の化合物」などと称され、「本化合物」とも称される)のうちの少なくとも1種であり、がんがKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持し、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、前記方法を提供する。ダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、およびML256のそれぞれの構造式は下のスキーム1に示される。
スキーム1.
【0017】
【化3】



本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
【0018】
ある態様では、本技術は、対象において腫瘍の成長を遅くするまたは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が腫瘍の成長を遅くするまたは後退させるのに有効な量であり、腫瘍がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの腫瘍であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、前記方法を提供する。本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
【0019】
ある態様では、本技術は、対象において新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または対象において新生物の増殖を遅くするもしくは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または新生物の増殖を遅くするもしくは後退させるのに有効な量であり、新生物がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの新生物であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅である、前記方法を提供する。本明細書の任意の実施形態では、それは健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示すがんであり得る。
【0020】
「有効量」は所望の効果をもたらすのに必要とされる化合物または組成物の量を指す。本明細書で開示される任意の実施形態および/または態様では(簡潔にするために、以下では「本明細書で開示される任意の実施形態では」などと表現される)、有効量は対象に関連して決定され得る。本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、哺乳動物、例えばネコ、イヌ、齧歯類または霊長類である。典型的には対象はヒトであり、好ましくは、がん、腫瘍、および/または新生物を患っているまたは患っていると疑われるヒトである。用語「対象」および「患者」は互換的に使用され得る。有効量の一例は、これに限定されないが腫瘍量の減少を含む治療的(薬学的)使用のための許容される毒性およびバイオアベイラビリティレベルをもたらす量または投与量を含む。本明細書で開示される任意の実施形態では、有効量は、がんを処置する、腫瘍を処置する、腫瘍を縮小させる、新生物を処置する、新生物を縮小させる、および/または対象の生存期間を増加させるのに有効な量であり得る。例として、本技術の化合物を含む本明細書の任意の実施形態の有効量は、約0.01μg~約200mgの化合物(例えば約160mgの化合物)であり得る。別の例として、本技術の化合物の有効量(化合物の質量/患者の体重に換算して)は、1×10-5g/kg~1g/kg、1×10-3g/kg~1.0g/kg、0.01mg/kg~100mg/kg、0.01mg/kg~約20mg/kg、または好ましくは0.25mg/kg~10mg/kgであってもよく、したがって、本明細書で開示される任意の実施形態では、本技術の化合物の有効量は、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.15mg/kg、約0.2mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg/約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはこれらの値のうちの任意の2つを含むおよび/もしくはこれらの値のうちの任意の2つの間の任意の範囲であり得る(例えば約0.25mg/kg~約10mg/kgなど)。
【0021】
本明細書で開示される任意の実施形態の方法は、医薬組成物を対象に投与するステップを含むことができ、医薬組成物は有効量の本技術の化合物および薬学的に許容される担体または1種もしくは複数の賦形剤、充填剤もしくは薬剤(特に指示および/または指定されない限り、以下ではまとめて「薬学的に許容される担体」と称される)を含む。したがって、本技術は、本明細書で開示される任意の実施形態の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物および医薬も提供する。組成物は本明細書に記載の方法および処置において使用され得る(参照しやすいように、本技術の医薬および医薬組成物は、本明細書ではまとめて「組成物」または「本技術の組成物」などと称され得る)。医薬組成物は単位剤形でパッケージされ得る。単位剤形は、それを必要とする対象に投与されると、腫瘍を減少させることによって腫瘍を処置するのに有効である。一般的に、本技術の化合物を含む単位投与量は、患者の考慮事項に応じて変動する。そのような考慮事項は、例えば年齢、プロトコール、状態、性別、疾患の程度、禁忌、併用療法などを含む。これらの考慮事項に基づく例示的な単位投与量はまた、当技術分野の熟練医師によっても調整または修正され得る。例えば、本技術の化合物を含む患者のための単位投与量は、1×10-4g/kg~1g/kgまで、好ましくは1×10-3g/kg~1.0g/kgまで変動し得る。本技術の化合物の投与量はまた(化合物の質量/患者の体重に換算して)1×10-5g/kg~1g/kgまで、1×10-3g/kg~1.0g/kgまで、0.01mg/kg~100mg/kgまで、0.01mg/kg~約20mg/kgまで、または好ましくは0.25mg/kg~10mg/kgまで変動してもよく、したがって、本明細書で開示される任意の実施形態では、投与量は、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.15mg/kg、約0.2mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg/約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはこれらの値のうちの任意の2つを含むおよび/もしくはこれらの値のうちの任意の2つの間の任意の範囲であり得る(例えば約0.25mg/kg~約10mg/kgなど)。適切な単位剤形は、これらに限定されないが、非経口液剤、経口液剤、散剤、錠剤、丸剤、ゲルカプセル剤、カプセル剤、トローチ剤、坐剤、貼付剤、鼻内スプレー剤、注射剤、埋込み可能な持続放出製剤、粘膜付着フィルム、局所ワニス、脂質複合体、液体などを含む。
【0022】
医薬組成物および医薬は、1種または複数の本技術の化合物を薬学的に許容される担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合することによって調製され得る。そのような組成物は、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤または液剤の形態であり得る。本組成物は、例えば、経口、非経口、局所、直腸、鼻、膣投与によるまたは埋込みリザーバーを介す様々な投与経路のために製剤化され得る。非経口または全身投与は、これらに限定されないが、皮下、静脈内、腹腔内、および筋肉内注射を含む。以下の剤形は、例として示されており、本技術を限定すると解釈されるべきでない。
【0023】
経口、口腔内、および舌下投与のために、散剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、およびカプレットが固体剤形として許容される。これらは例えば、1種もしくは複数の本技術の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を少なくとも1種の添加剤、例えばデンプンもしくは他の添加剤と混合することによって調製され得る。適切な添加剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成ポリマーまたはグリセリドである。経口剤形は、投与を補助するための他の成分、例えば、不活性希釈剤、または滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、または保存剤、例えばパラベンもしくはソルビン酸、または抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、香味剤または着香剤を含有してもよい。錠剤および丸剤は、当技術分野で公知の適切なコーティング材料でさらに処置され得る。
経口投与のための液体剤形は、不活性希釈剤、例えば水を含有し得る、薬学的に許容される乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、および液剤の形態であり得る。医薬製剤および医薬は、無菌液、例えばこれらに限定されないが、油、水、アルコール、およびこれらの組合せを使用する液体懸濁剤または液剤として調製され得る。薬学的に適切な界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤は、経口または非経口投与のために添加されてもよく、天然および修飾シクロデキストリン化合物を含んでもよい。
【0024】
上記の通り、懸濁剤は油を含み得る。そのような油は、これらに限定されないが、ラッカセイ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油およびオリーブ油を含む。懸濁調製物は、脂肪酸のエステル、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドも含有し得る。懸濁製剤は、アルコール、例えばこれらに限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールを含み得る。エーテル、例えばこれらに限定されないがポリ(エチレングリコール)、石油炭化水素、例えば鉱物油およびワセリン;非プロトン溶媒、例えばジメチルスルホキシド;ならびに/または水も懸濁製剤において使用され得る。
注射可能な剤形は一般的に、適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤を使用して調製され得る水性懸濁剤または油性懸濁剤を含む。注射可能な形態は、溶液相であってもよくまたは懸濁剤の形態であってもよく、これらは溶媒または希釈剤で調製される。許容される溶媒またはビヒクルは、無菌水、リンゲル溶液、または等張生理食塩水溶液を含む。代替的に、無菌油が溶媒または懸濁化剤として用いられ得る。典型的には、油または脂肪酸は、天然または合成油、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドを含む不揮発性である。
【0025】
注射のために、医薬製剤および/または医薬は、上記の適当な溶液での復元に適した粉末であり得る。その例は、これらに限定されないが、凍結乾燥、回転乾燥もしくは噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、または粒状物を含む。注射のために、製剤は安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組合せを含有してもよい。
本技術の化合物は、鼻または口を通す吸入により肺に投与され得る。吸入のための適切な医薬製剤は、任意の適当な溶媒ならびに任意で他の化合物、例えばこれらに限定されないが、安定剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組合せを含有する、液剤、スプレー剤、乾燥散剤、またはエアゾール剤を含む。担体および安定剤は、特定の化合物の必要により変動するが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無毒なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、アミノ酸、例えばグリシン、緩衝剤、塩、糖または糖アルコールを含む。水性および非水性(例えばフルオロカーボン噴射剤中)エアゾール剤は、吸入による本技術の化合物の送達に典型的に使用される。
【0026】
本技術の化合物の局所(口腔内および舌下を含む)または経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、および貼付剤を含む。活性成分は無菌条件下で、必要とされ得る、薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と、および任意の保存剤、または緩衝剤と混合され得る。散剤およびスプレー剤は、例えば賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を用いて調製され得る。軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤およびゲル剤も賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含有し得る。吸収促進薬も皮膚を通した本技術の化合物のフラックスを増加させるために使用され得る。そのようなフラックスの速度は、速度制御膜(例えば経皮貼付剤の一部として)を設けることまたは化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることによって制御され得る。
【0027】
それらの上記の代表的な剤形に加えて、薬学的に許容される賦形剤および担体は、当業者に一般的に公知であり、したがって本技術に含まれる。そのような賦形剤および担体は、例えば“Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub. Co., New Jersey (1991)および“Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” 20th Edition, Editor: Alfonso R Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore (2000)に記載されており、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
本技術の製剤は、下記の短期作用型、高速放出型、長期作用型、および持続放出型になるように設計され得る。したがって、医薬製剤は制御放出または低速放出用にも製剤化され得る。
本組成物は、例えばミセルもしくはリポソーム、もしくは何らかの他の封入形態も含んでもよく、または長期保存および/もしくは送達効果をもたらすために延長放出形態で投与されてもよい。したがって、医薬製剤および医薬は、ペレットまたは注射筒に圧縮され、デポー注射剤としてまたはインプラント、例えばステントとして筋肉内または皮下に埋め込まれ得る。そのようなインプラントは、公知の不活性物質、例えばシリコーンおよび生分解性ポリマーを用い得る。
【0028】
本明細書の任意の実施形態では、特定の投与量は、対象の疾患の状態、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与間隔、投与経路、排出速度、ならびに薬物の組合せに応じて調整され得る。有効量を含有する上記剤形のいずれもが十分に日常的な実験の範囲内であり、したがって、十分に本技術の範囲内である。当業者は、例えば対象において腫瘍量の減少があるまで、本技術の化合物を患者に漸増量で単に投与することによって、有効量を容易に決定することができる。本技術の化合物は、患者に1日当たり約0.1~約1,000mgの範囲の投与量レベル(上でさらに詳細に論じられている)で投与され得る。約70kgの体重を有する普通のヒト成人について、1日当たり体重1kg当たり約0.01~約100mgの範囲の投与量は十分である(上でさらに詳細に論じられている)。しかし、使用される特定の投与量は、変動し得るまたは当業者によって適当と考えられるように調整され得る。例えば投与量は、患者の必要、腫瘍を伴うがんの重症度、および使用されている化合物の薬理学的活性を含むいくつかの因子に依存し得る。特定の患者のための最適な投与量の決定は当業者に周知である。本技術による処置の治療有効性を決定するために、様々なアッセイおよびモデルシステムが容易に用いられ得る。本技術の組成物(および有効量の決定)および方法の有効性も腫瘍量の減少、腫瘍の成長を遅くすること、および/または対象の生存期間が増加することによって実証され得る。本明細書に記載の適応状態のそれぞれについて、試験対象は、プラセボ処置または他の適切な対照対象と比較して、対象において障害によって引き起こされたまたは障害と関連する1種または複数の症状の10%、20%、30%、50%以上の減少、最大75~90%、または95%以上の減少を示す。
【0029】
一態様では、本技術の化合物は、患者に、治療的使用に適した量または投与量(例えば本技術の任意の実施形態の医薬組成物に含まれる)で投与される。一般的に、本技術の化合物を含む単位投与量は、患者の考慮事項に応じて変動する。そのような考慮事項は、例えば年齢、プロトコール、状態、性別、疾患の程度、禁忌、併用療法などを含む。これらの考慮事項に基づく例示的な単位投与量はまた、当技術分野の熟練医師によっても調整または修正され得る。例えば、本技術の化合物を含む患者のための単位投与量は、1×10-4g/kg~1g/kgまで、好ましくは1×10-3g/kg~1.0g/kgまで変動し得る。本技術の化合物の投与量もまた、0.01mg/kg~100mg/kgまで、または好ましくは0.1mg/kg~10mg/kgまで変動し得る。
【0030】
本技術の化合物はまた、薬物動態特性、毒性またはバイオアベイラビリティ(例えばin vivo半減期の増加)を改善するために、例えば有機部分またはコンジュゲートの共有結合によっても修飾され得る。コンジュゲートは、直鎖状または分岐状の親水性ポリマー基、脂肪酸基または脂肪酸エステル基であり得る。ポリマー基は、例えば薬物動態特性、毒性またはバイオアベイラビリティを改善するために当業者によって調整され得る分子量を含み得る。例示的なコンジュゲートは、ポリアルカングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマーまたはポリビニルピロリドンおよび脂肪酸または脂肪酸エステル基を含んでもよく、これらのそれぞれは独立して約8~約70個の炭素原子を含み得る。本技術の化合物と共に使用するためのコンジュゲートは、例えば任意の適切な置換基もしくは基、放射性標識(マーカーまたはタグ)、ハロゲン、タンパク質、酵素、ポリペプチド、他の治療剤(例えば医薬品または薬物)、ヌクレオシド、色素、オリゴヌクレオチド、脂質、リン脂質および/またはリポソームに対するリンカーとしても機能し得る。一態様では、コンジュゲートは、ポリエチレンアミン(PEI)、ポリグリシン、PEIとポリグリシンのハイブリッド、ポリエチレングリコール(PEG)またはメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含み得る。コンジュゲートは、本技術の化合物を例えば標識(蛍光または発光)またはマーカー(放射性核種、放射性同位体および/または同位体)にも連結して、本技術のプローブを含み得る。本技術の化合物と共に使用するためのコンジュゲートは、一態様ではin vivo半減期を改善し得る。本技術の化合物と共に使用するための他の例示的なコンジュゲートならびにその適用および関連する技法は、米国特許第5,672,662号によって一般的に記載されているものを含み、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本明細書で開示される任意の実施形態では、がんは(および/または腫瘍は例えば以下のがんの腫瘍であってもよく、および/または新生物は例えば以下のがんの新生物であってもよい)扁平上皮癌、軟部組織肉腫、口腔黒色腫、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、副腎皮質癌、エイズ関連がん、カポジ肉腫(軟部組織肉腫)、エイズ関連リンパ腫(リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、消化管カルチノイド腫瘍、星細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、皮膚の基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫を含む)、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍(肺がん)、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(消化管)、原発不明の癌腫、心臓(cardiac)(心臓(heart))腫瘍、小児脳がん、胚細胞腫瘍、原発性CNSリンパ腫、子宮頸がん、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性新生物、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管がん(DCIS)、胎児性腫瘍、髄芽腫、子宮内膜がん(子宮がん)、上衣腫、食道がん、感覚神経芽腫(頭頸部がん)、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼がん、網膜芽腫、卵管がん、骨の線維性組織球腫、骨肉腫、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部組織肉腫)、胚細胞腫瘍、小児中枢神経系胚細胞腫瘍(脳がん)、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、精巣がん、妊娠性絨毛性疾患、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓腫瘍、肝細胞(肝臓)がん、組織球症、ホジキンリンパ腫、眼内黒色腫、島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、腎臓(腎細胞)がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん(頭頸部がん)、白血病、口唇および口腔がん(頭頸部がん)、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫および骨肉腫、黒色腫、メルケル細胞癌(皮膚がん)、中皮腫、転移性がん、原発不明転移性扁平上皮頸部がん(頭頸部がん)、nut遺伝子変化を伴う正中線癌、口腔(mouth)がん(頭頸部がん)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉症(リンパ腫)、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄白血病、骨髄増殖性新生物、鼻腔および副鼻腔がん(頭頸部がん)、鼻咽頭がん(頭頸部がん)、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔(oral)がん、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、膵がん、膵神経内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)、乳頭腫症(小児喉頭)、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん(頭頸部がん)、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん(頭頸部がん)、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫(肺がん)、妊娠および乳がん、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、再発性がん、腎細胞(腎臓)がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん(頭頸部がん)、肉腫、小児横紋筋肉腫、小児血管腫瘍、ユーイング肉腫(骨がん)、カポジ肉腫、骨肉腫(骨がん)、セザリー症候群(リンパ腫)、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、皮膚の扁平上皮癌、原発不明扁平上皮頸部がん、転移性(頭頸部がん)、胃(stomach)(胃(gastric))がん、T細胞リンパ腫、咽喉がん(頭頸部がん)、口咽頭がん、下咽頭がん、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、気管気管支腫瘍(肺がん)、腎盂および尿管の移行細胞がん(腎臓(腎細胞)がん)、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、および/またはウィルムス腫瘍ならびに他の小児腎臓腫瘍であり得る。本明細書で開示される任意の実施形態では、がんは(腫瘍は例えば以下のがんの腫瘍であってもよく、新生物は例えば以下のがんの新生物であってもよい)膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんであり得る。本明細書で開示される任意の実施形態では、がんは(および/または腫瘍は以下を含むがんの腫瘍であってもよく、および/または新生物は以下を含むがんの新生物であってもよい)腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含み得る。
【0032】
本明細書の任意の実施形態では、投与するステップは、がん(例えば腫瘍)を含む対象における部位への本化合物の局所投与またはがん(例えば腫瘍)を含む対象における部位への組成物の局所投与を含み得る。本明細書の任意の実施形態では、投与するステップは、経口、直腸、鼻、膣、経皮、静脈内、筋肉内、または吸入投与を含み得る。本明細書の任意の実施形態では、投与するステップは、がん(例えば腫瘍)を含む対象における部位内へのまたはがん(例えば腫瘍)を含む対象における部位の近位への化合物の注射を含み得る。
【0033】
本技術の化合物はまた、患者に、腫瘍の処置またはワクチン接種において有用であり得る他の従来の治療剤と共に投与もされ得る。投与は経口投与、非経口投与、または鼻投与を含み得る。これらの実施形態のいずれかでは、投与は皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、または筋肉内注射を含み得る。これらの実施形態のいずれかでは、投与は経口投与を含み得る。本技術の方法は、1種または複数の本技術の化合物、腫瘍の処置またはワクチン接種に潜在的にまたは相乗的に有効であり得る量の従来の治療剤を逐次的にまたは組み合わせて投与するステップも含み得る。本明細書の任意の実施形態では、投与するステップは、化学療法剤、例えばアルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、またはこれらの任意の2種以上の組合せの投与をさらに含み得る。本明細書の任意の実施形態では、投与するステップは、化学療法剤、例えばブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、またはこれらの任意の2種以上の組合せの投与をさらに含み得る。本明細書の任意の実施形態では、化学療法剤を投与するステップは、がんを含む対象における部位への化学療法剤の局所投与を含み得る。本明細書の任意の実施形態では、化学療法剤を投与するステップは、経口、直腸、鼻、膣、経皮、静脈内、筋肉内、または吸入投与を含み得る。本明細書の任意の実施形態では、化学療法剤を投与するステップは、がんを含む対象における部位へのまたはがんを含む対象における部位の近位への化学療法剤の注射を含み得る。
【0034】
本明細書の実施例は、本技術の利点を説明し、本技術の化合物および組成物を調製または使用することについて当業者をさらに支援するために提供される。本明細書の実施例は、本技術の好ましい態様をより完全に説明するためにも提示される。実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本技術の範囲を限定すると決して解釈されるべきでない。実施例は、上記の本技術の変形、態様、または実施形態のいずれも含み得るまたは組み込み得る。上記の変形、態様、または実施形態は、本技術の任意のまたは全ての他の変形、態様、または実施形態もさらにそれぞれ含み得るまたは組み込み得る。
【実施例
【0035】
統計解析およびソフトウェア。全てのp値は、GraphPad Prism 7.03を使用して、95%信頼区間と共に両側の対応のないt検定を使用して算出した。多重比較は、Holm-Sidakによって補正した一元配置分散分析を使用して行った。反復数Nおよびエラーを各図において報告する。全体を通して、ns=有意でない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。増殖曲線はGraphPad Prism 7.03を使用して作成し、ガウス関数へのナノレポーター分布フィットを含む全ての他のデータは、OriginPro 9.0を使用して分析した。MATLAB R2014aを使用して、カラーピクセルマップ、画像重ね合せ、および生レポーターデータの補正を作成した。ImageJまたはFiji(NIH)を使用して、ウエスタンブロットフィルム密度を分析し、ブロットおよび免疫蛍光画像、β-gal画像、ならびに広視野/共焦点画像(HDF5/Bio-Formatsプラグイン)を作成した。化学構造およびカートゥーンは、ChemBioDraw Ultra 13.0で設計した。図およびスキームのレイアウトは、Adobe Illustrator CS6 v16.0.3で設計した。
【0036】
細胞株。初代マウス胚線維芽細胞(MEF)をMSKCCのLowe研究室C57BL/6マウスコロニーに由来する。SV40ラージT抗原によってMEFを不死化した。82、83cDNAプラスミドでトランスフェクトしたHEK293T系によってパッケージされたレトロウイルスによって不死化MEFに形質導入した。レトロウイルスプラスミドベクターpTRE-Tight(Clonetech)の修正バージョンを使用して、cDNAインサート、空(スクランブル)ベクター、マウスK-rasG12V 4B、またはヒトH-rasG12VをTet-ON 3G pTURN構築物84の前にクローニングした。85Lipofectamine 2000(Life Technologies)およびウイルス量を増やすためのクロロキン/BSA補充を使用してHEK293T細胞において、プラスミドをレトロウイルスパッケージングプラスミドと共トランスフェクトし、16時間後に新しい培地を添加し、トランスフェクションから2日後にウイルス上澄みを回収した。レトロウイルス形質導入は、6x105個の標的細胞への0.45μm濾過HEK馴化培地(4μg/mLポリブレン、Fisher TR1003Gを含む)の曝露により行った。ハイグロマイシン(150μg/mL、ThermoFisher 10687-010)を選択のために使用した。SV40LTによる感染の前に自己切断レトロウイルスCre組換え酵素19、84、86でK-rasG12Dノックイン系を調製した。構成的Akt1またはPtenに対する構成的な短いガイドRNAを保持するSV40LT MEFは以前に記載されている。86SV40LT Atg5ノックアウト系82はpTURNプラスミドによって形質導入した。全ての細胞株は、拡大増殖および保存の前にマイコプラズマについて試験した。RAW 264.7マウスマクロファージ/単球は、ATCC(TIB-71)由来であり、本文に示されている通りであるが、10%熱不活化FBSを添加した培地中で培養した。悪性細胞株は、同じ培地を使用して培養し、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerの研究グループからの寄贈品であり、以下を含んだ:マウス由来のKP肺、KrasG12D/p53R270H浸潤性原発性肺腺癌;ヒトPA-TU-8988T膵腺癌、ヒトHCT-116結腸癌、ヒトA549肺腺癌、ヒトPanc-1膵管類上皮腺癌。
【0037】
細胞培養。細胞培養物を37℃で、5%CO2および周囲酸素でインキュベートした。この研究で使用した完全培養培地は、ピルビン酸塩補充DMEM(ThermoFisher 10313021)ならびに以下の最終濃度の添加剤:4.75%v/v熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(ThermoFisher 10082147)、88.5U/mL Pen Strep(ThermoFisher 15140122)、3.54mM GlutaMAX(ThermoFisher 35050061)、1.77mM L-グルタミン(ThermoFisher 25030081)、および35mM HEPES(ThermoFisher 15630080)からなった。日常的な継代培養は、TrypLE(ThermoFisher 12604013)を用いて行った細胞株は、液体窒素保存から取り出して7~8回の継代培養後には使用しなかった。液体窒素保存から取り出して少なくとも2回の継代培養後に実験を開始した。80~90%コンフルエントになる前に培養細胞を通常通りに分けた。脂溶性薬物を補充するために、DMSOに溶解したストック化合物を適当な体積の37℃完全培養培地とプレインキュベートし、10分間穏やかに混合した。リポタンパク質欠損実験のために、FBSを同じ最終%LPDS(Sigma S5394)で置き換えた。全ての予め作製した溶液は滅菌濾過した(0.22μm)。特に指示されない限り、ドキシサイクリン(500ng/mL)を培地に、他の試験化合物と同時に添加した。脂肪酸を補充するために、1mL中6mMストックを作製するのに必要な体積の脂肪酸油を、窒素ガスでパージした無菌エッペンドルフに移した。このチューブに、1mLの1mM脱脂BSA(フラクションV脂肪酸不含BSA、Sigma A7030、ロット番号5LBQ0873V)を添加した。チューブをオートミキサーに、1000rpm、37℃で30分間入れた(エッペンドルフ ThermoMixer C)。得られたストックPUFA-BSAは、0.22μm PES膜で滅菌濾過した。ストックを小分けし、窒素パージし、使用まで-20℃で保存した。PUFAミックスを補充した培養培地は、5μMドコサヘキサエン酸(Sigma D2534)、5μMアラキドン酸(EMD 181198)、ならびに各2.5μMのリノール酸(LA)(Sigma L1376)およびリノレン酸(ALA)(Sigma L2376)を含有した。脱脂BSAを対照条件に補充した。
【0038】
増殖アッセイ。増殖をアッセイするために、0日目~3/4日目まで6x104個の細胞/ウェルを、完全培地を含む6ウェルプレート(ThermoFisher 140675)に播種し、実験条件当たり3連のウェルを生成した。細胞を蒔いてから6~8時間後に、ウェルを新しい培地で簡単にリンスし、次いで適当に補充した試験培地で培養した。この時点で0日目のプレートを計数した。プレートを24時間間隔で計数した。接着し、広がったMEFは、トリパンブルー染色の欠如または切断されたカスパーゼ7もしくはPARPについて陽性のウエスタンブロットの欠如(データは示していない)によって確認される通り、>95%生存可能である。84接着した細胞を計数するために、培地を各ウェルから吸引し、次いで手動の撹拌を使用して、2回、室温(RT)の1×HBSS(w/o Ca/Mg++)中でリンスした。接着した細胞を1mL TrypLEでトリプシン処理した。イメージングサイトメーター(Thermo T10796、工場デフォルト設定)に24μLのトリプシン処理した細胞懸濁液を含有するチャンバースライド(ThermoFisher T10794)を載せた。18個の視野をイメージングし、サイトメーター出力を細胞/mLで得た。出力を細胞/粒子サイズについてゲーティングして最終計数が7μm以下の粒子を含まないようにし、これは培養からのバックグラウンド残屑を反映するために行った。上のゲーティング閾値を34μmに設定し、測定された17μm平均の2倍のサイズを含むようにした。
【0039】
ハイパースペクトル顕微鏡検査。脂質レポーターイメージング実験のために、細胞を35mmガラス底培養皿(MatTek Corp.P35G-1.5-10-C)に播種し、約0.5~0.8x106個の細胞がアッセイ日に存在するようにした。アッセイの24時間前に、細胞を新しい培地で簡単にリンスし、記載の通りに培養した。アッセイ日に試験培地を無菌エッペンドルフに移動させ、ミニフュージでスピンし、細胞残屑をペレット化し、37℃で保存した。接着した細胞をパルス培地(無血清完全培地)で簡単にリンスし、次いでナノレポーター(パルス培地中0.2μg/mL)に30分間曝露させた。曝露後、余分なナノレポーターを、完全培地中でリンスすることによって取り除き、5時間のインキュベーション期間のために、保存した試験培地を培養皿に再び添加した。近赤外ハイパースペクトル顕微鏡検査87を生きている接着細胞で行い、内膜小胞からの蛍光放射マップを得た。88簡単に述べると、730nm連続波ダイオードレーザーを、ファイバーを通して100×油対物レンズに供給し、接着した細胞内の蛍光レポーターを励起させた。回収した放射を1100~1200nmに調整した符号化された波長のハイパースペクトルイメージングキューブとして保存した。キューブにおける各ピクセルの中心波長は、MATLABにおいてローレンツ関数をフィッティングすることによって得た。100×拡大のイメージング視野を表す、各キューブにおけるピクセルの全集団の中心波長は、OriginPro 9.0においてガウス関数でフィッティングした。得られたフィッティングした中心波長値を報告する。代表図のヒストグラムにおいて(*)は、フィッティング分析に含まれなかった、細胞周囲に位置する固定されたセンサーからの放射値を表す。
【0040】
ウェルプレート分光法。特注の近赤外分光計で全体の分光測定を行った。89脂質ストックをメタノールに予め溶解し、水性緩衝液中で3時間平衡化した後、センサーを添加した(150μL緩衝液中1μg/mLのセンサー)。センサー-脂質混合物を5時間、37℃でインキュベートし、次いで96ウェルプレートに移した。各列は空のウェルを含んだ。試料ウェルをスーパーコンティニュームレーザーによって、500nm~839nmまで3nm刻みで、1秒の露光時間を使用して励起した。930nm~1368nmの放射を取得し、データをMATLABにおいて補正し、ローレンツ関数にフィッティングし、ピーク強度および中心波長を生成した。
【0041】
免疫細胞化学。細胞をチャンバースライド(Millipore PEZGS0416/PEZGS0816)に播種し、記載の通りに処置した。アッセイ時に、細胞を15分間RTで(4℃ 37%ストックを使用して、温かい培養物に滴下添加する)3.7%パラホルムアルデヒドによって固定した。1×PBS中75mM塩化アンモニウムとの10分のインキュベーションによって固定剤を不活化した。1×PBSで2回リンスした後、チャンバーを4℃で保存またはすぐに処理した(全ての試薬緩衝液は1×PHEM緩衝液:60mM PIPES、25mM HEPES、10mM EGTA、2mM MgCl2、5mM NaCl、70mM KCl、pH6.9を使用して調製した):0.1%Tween-20(TW20)で5分間RTでの透過処理、5%BSA/0.3%TW20で3時間RTでのブロッキング、次いで穏やかに揺すりながら5%BSA/0.3%TW20中で一次抗体と4℃で終夜インキュベーション。各5分間の3回のRT洗浄後、5%ヤギ血清(ThermoFisher 016201)の添加後に細胞を上記の通り1時間RTでブロッキングした。蛍光二次抗体を5%BSA/0.3%TW20/5%ヤギ血清中へ希釈し、チャンバーを1時間RTで、暗所でインキュベートした。一部の場合、3回の10分RT洗浄後、希釈した核対比染色液(PBS中のヘキスト、ThermoFisher 62249)を2分間適用し、続いて2分間洗浄した。封入剤(Life Technologies P36961)およびカバーガラス(Fisher 1254418)を各スライドに適用した。標的に応じてICCプロトコールを修正した:核-二次インキュベーションを2時間に増やした;非核内膜-2%固定剤に減らし、100%の-20℃メタノール中で10分間透過処理し、続いて1回リンスし、記載の通りにブロッキングした。以下の一次抗体を使用した:抗HP1γ(1:100、Cell Signaling 2619S)、抗ホスホ-H2A.X(1:300、Cell Signaling 9718)、抗PLA2g7(1:50、Proteintech 15526-1-AP)、抗PAFAH2(1:50、Proteintech 10085-1-AP);二次抗体は以下から選択した:Alexa488/568ヤギ抗マウス、Alexa568抗ウサギIgG(Life Technologies A11001/A11004&A11011)、ヤギ抗ウサギIgG Super Clonal 555/647(Invitrogen A27040/A27039)、またはヤギ抗ラットIgG555/647(Life Technologies 21247/21434)。
【0042】
イムノブロッティング。100μMペプスタチンA(Sigma 11359053001)を補充したプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo 78446)をRIPA緩衝液(Pierce 89901)またはエチルマレイミドを含まない変性免疫沈降(IP)緩衝液(20mM HEPES、50mM NaCl、0.5%NP-40、1mM EDTA、0.5%SDS、0.5%SDC)中へ1:100に希釈し、可溶性標的(RIPA)用または不溶性/膜結合性標的(IP緩衝液)用のワーキング細胞溶解緩衝液を作製した。細胞を2回冷たい1×HBSSで洗浄した。氷冷溶解緩衝液を添加し、細胞をゴム製ポリスマンでこすり取った。溶解物を氷上のエッペンドルフにプールし、30分間4℃で混合するように設定した。溶解物を26G針により5フルストロークで均質化し、次いで16,000rcfで20分間4℃の遠心分離機においてスピンさせた。RTのブラッドフォード試薬(BioRad 5000205)を、BSA標準物質または試料溶解物のいずれかを含有する、脱イオン水で希釈した試料と1:1で混合した。吸光度を595nmでTecan Infinite M1000 Proプレートリーダーにおいて測定した。ローディング緩衝液は、1×Laemmli緩衝液/2-メルカプトエタノール(BioRad 1610747/1610710)および必要に応じて脱イオン水からなった。最終ローディング試料を小分けし、使用まで-80℃で保存した。凍結試料をすぐに8分間75℃で(リン-タンパク質標的)または6分間90℃で(全ての他の標的)加熱した。TGXプレキャストゲル(BioRad 4568094、4~20%)を、冷やした1×トリス/グリシン/SDS緩衝液(BioRad 1610732)を充填したTetra Cell電気泳動装置(BioRad 1658004)に載せた。1.5μL泳動ラダー(LI-COR 92698000)、10~30μL試料、または10~30μL空試料緩衝液を各レーンに注入した。電気泳動を110ボルト、CVで80分間または適当なラダー分離まで行った。ブロットサンドイッチは、緩衝液でぬらしたスタックペーパー(BioRad)とゲルの間に保持された、メタノール、続いて転写緩衝液(BioRad 10026938)中でプレインキュベートした0.2μm PVDF膜(BioRad 1620174)からなった。トランス-ブロットターボ転写システム(BioRad 1704150)を7分のミディ-ターボ設定で使用した。ブロット膜を切り取り、すぐに1×TBS中でリンスし、次いでブロッキング溶液(1×TBS-T中3%w/v BSA)(BioRad 1706435;Sigma P1379)に移し、RTで1.5時間撹拌した。一次抗体を1mLのブロッキング緩衝液中へ希釈し、2枚のパラフィルムシートの間にこれを膜と共に挟んでから密封した。膜サンドイッチを終夜4℃で回転させながらインキュベートした。膜をパラフィルムから剥がし、1×TBS-Tに入れ、10分間RTで撹拌しながら3回洗浄した。HRPコンジュゲート二次抗体を十分なブロッキング溶液中で希釈し、撹拌しながら膜を1時間RTで覆った。さらに3回の10分洗浄の後、膜をRTの1×TBS中でリンスし、次いでHRP基質(Millipore WBLUR0500)中で1分間インキュベートした。フィルムを感光させるために、湿った膜をX線カセット内のプラスチックインサート内に入れた。抗体は以下の通りであった:抗Cox1(1:500、Cell Signaling 9896)、抗Cox2(1:1000、Cell Signaling 12282)、抗p38 MAPK(1:1300、Cell Signaling 8690)、抗ホスホ-p38 MAPK T180/Y182(1:500、Cell Signaling 4511)、抗ATF-2(1:1000、Cell Signaling 9226)、抗ホスホ-ATF-2 T69/T71(1:1000、Cell Signaling 5112)、抗TBP(1:1500、Cell Signaling 44059)、抗cPLA2(1:1000、Cell Signaling 5249)、抗ホスホ-cPLA2 S505(1:750、Cell Signaling 53044)、抗ホスホ-IκBα S32(1:500、Cell Signaling 2859)、抗IκBα(1:1000、Cell Signaling 4812)抗NF-κB p65(1:1000、Selleckchem.com A5075)、抗ホスホ-NF-κB p65 S468(1:1000、Cell Signaling 3039)、抗ホスホ-NF-κB p65 S536(1:1000、Cell Signaling 3033)、抗TNF-α(1:1000、Cell Signaling 11948)、抗IL-6(1:500、Cell Signaling 12912)、抗プロスタグランジンEシンターゼ(1:1000、Abcam ab180589)、抗p44/42 MAPK(1:1000、Cell Signaling 4695)、抗ホスホ-p44/42 MAPK(1:1000、Cell Signaling 9101)、抗p16(1μg、Abcam 189034)、抗p21waf1/cip1(1.6μg、Abcam 109199)、抗SAPK/JNK(1:1000、Cell Signaling 9252)、抗ホスホ-SAPK/JNK T183/Y185(1:500、Cell Signaling 4668)、抗p19ARF(1:1000、Abcam ab80)、抗PLA2g7(1:400、Proteintech 15526-1-AP)、抗PAFAH2(1:400、Proteintech 10085-1-AP);二次抗体はHRPコンジュゲート抗ウサギ(1:2000~1:5000、Cell Signaling 7074)であった。
【0043】
SA-β-ガラクトシダーゼ染色。6ウェルプレートに蒔いた細胞を使用し、製造業者の使用説明書(Cell Signaling 9860)に従って染色を行った。処理後、濃縮したヘキスト色素溶液を各ウェルに添加し、核を対比染色し、高ゲイン蛍光イメージングで細胞質基質のブリードスルーを引き起こした。分析および報告のために、FijiのColor Deconvolutionプラグインを使用して、顕微鏡のカラーカメラによって取得したRGB画像を3種のH&E DAB成分にデコンボリューションした。(R=0.650、G=0.704、B:0.286)で表されるカラー1だけを分析に使用した。同一の閾値を、得られた単一カラー画像(8ビット)に適用し、バイナリーマスクを得た。これらのバイナリー画像は、β-Gal陽性マスクであった。スケーリングを使用して細胞質基質のブリードスルーの強度を増加させた後、同じ視野から取得したDAPI画像上でセグメンテーションプログラムを使用して、全細胞マスクを別々に生成した。マニュアルの検証は、セグメンテーションが正確であることを示した。各視野におけるβ-Gal陽性細胞の割合(および報告された%)は、β-Galと重なっているセグメント化された領域の数/核の合計数として算出した。技術的反復(1つの条件当たり5~10回)を各生物学的反復と合わせ、これを使用して%陽性平均および標準偏差を決定した。各図の代表的な画像は、Fijiのアザン・マロリー設定を使用した、カラーデコンボリューションされた透過光画像であり、β-Gal染色が強調されている。
【0044】
Pan-sPLA2/PAF-AH活性および全脂質ヒドロペルオキシド。発色アッセイのために、sPLA2(Cayman 765001)、PAF-AHアッセイ(Cayman 760901)、または脂質ヒドロペルオキシド(LPO)(Cayman 705003)用の市販の酵素活性ベースキットを製造業者の使用説明書に従って使用した。必要とされる水および溶媒はLC-MSグレードであった。簡単に述べると、アッセイ日に6ウェルプレートのウェルが90%~100%コンフルエントであるように細胞を誘導した。sPLA2アッセイについて、冷たい10kDaカットオフの膜デバイス(Sigma UFC501096)を使用して、溶解物/培地を冷たいPBSに対して2回スピン濾過した。
【0045】
リピドミクスおよび分析。収穫日に培養皿が90~100%コンフルエントであるように、100mmプレートに蒔き、成長させ、誘導した。培養培地はフェノールレッド不含であった。馴化培地を収穫するために、全体積をドライアイス/アルコールスラリー上のガラスバイアルに移し、回収した体積の1/4に等しい体積の新しい冷たいPBSを使用して細胞をリンスし、この塊を回収し、プールした。溶解物を収穫するために、細胞の別の培養皿を3回冷たいHBSSで洗浄し、最後の洗浄で液体を吸引し、培養皿をドライアイス/アルコールスラリー上に置き、30秒間凍結させた。1mLの2:0.8部のメタノール:水ミックス(-80℃に冷やし、ドライアイス上に保存)をプレートに添加した。培養皿をすぐに氷上に移し、ゴム製ポリスマンでこすり取った。溶解物を培養皿の底にプールし、次いで-80℃保存までドライアイス上のガラスバイアルに移した。溶解物抽出物バイアルを窒素ガスで簡単にフラッシュした。修正したBligh-Dyer抽出を専用のメタボロミクス研究室で行った。LC-MS分析は、Agilent 1260 Infinity UHPLC(グリセロリン脂質/スフィンゴ脂質について順相、ステロール/グリセロ脂質について逆相)と一体化したAgilent 6490 Triple Quadrupole MSを使用した。定量は、ポジティブおよびネガティブエレクトロスプレーモードでのMRM法を使用した。生データは、Mol%、または質量分析計で検出された絶対全脂質存在量(ng/mL)に対して正規化した脂質種のng/mLとして報告した。報告したデータは、Mol%を並列処置したプレートからの全接着細胞数で割ったものであり、対照に対する倍率変化として算出される:(iKRas/ベクター)-1。
【0046】
共焦点顕微鏡検査。AiryScanモジュール(Carl Zeiss)、63× 1.4NA油対物レンズ、および適当なレーザー線およびフィルターを使用する点走査LSM 880機器で高分解能共焦点走査を行った。固定細胞実験のために、試料に#1.5カバーガラスを載せ、これを対物レンズと密着させた。露光時間および検出器ゲインは、実験中一定に保持した。
広視野顕微鏡検査。Olympus IX51倒立顕微鏡およびOlympus DP73(カラー)またはXM10(グレースケール)カメラで、透過光および免疫蛍光画像を取得した。X-Citeシリーズ120Q専用水銀蒸気ショートアーク励起ランプで照射した。適当なEx/Emフィルターキューブが利用可能であった。露光時間および検出器ゲインは、実験中一定に保持した。
【0047】
siRNAノックダウン。アッセイ日に80~90%コンフルエンスに到達するように標的細胞を播種することによって、MEF細胞株の一過性ノックダウンを達成した。拡張実験のために、処置日に40~50%コンフルエンスに到達するように細胞を播種した。各siRNAおよび標的ウェルについて、2つのエッペンドルフチューブそれぞれに150μLの無血清および抗生物質不含DMEMを充填した。標的ウェルにおける最終体積が45nMであるようにsiRNAを一方のチューブに移すことによってトランスフェクションカクテルを作製した。他方のチューブに9μLのRNAiMAX(Thermofisher 13778)を添加した。siRNA体積をRNAiMAX体積に添加し、ピペット操作によって混合した。カクテルをRTで10分間インキュベートし、次いで2mLの新しい完全培地を含有する標的ウェルに滴下添加した。プレートを回転させて混合し、37℃で48時間インキュベートした。siRNAへの最初の24時間の曝露後、ドキシサイクリンおよび他の化合物を添加した:ウェルの内容物の1mLのアリコートを取り出し、化合物と混合し、戻した。siRNAは以下の通りであった:普遍的な陰性対照(Sigma SIC001/002 WDAA)、pla2g7 #1(Sigma NM_013737 SASI_Mm01_00162678)、pla2g7 #2(Sigma NM_013737 SASI_Mm01_00162677)、pafah2 #1(Sigma NM_133880 SASI_Mm01_00180435)、pafah2 #2(Sigma NM_133880 SASI_Mm01_00180436)。
【0048】
乳酸脱水素酵素(LDH)アッセイ。市販のキット(ThermoFisher C20300)を使用して、培養馴化培地における乳酸脱水素酵素活性をアッセイした。簡単に述べると、細胞処置およびインキュベーション後の終点時に、プレートを手動で撹拌し、任意の遊離細胞を取り除いた。馴化培地を15mLチューブに移した。脱イオン水中9%v/v Triton X-100(TX100)を各チューブに添加し、ボルテックスした。新しい完全培地を9%Triton X-100とボルテックスし、陰性対照を作製した。陽性対照(すなわち100%溶解)を作製するために、接着細胞の1つのウェルをある体積の新しい陰性対照ミックスに曝露し、こすり取り、チューブに戻した。ボルテックスし、RTで5分間インキュベートした後、全てのチューブを遠心分離した(RTで7,000rcf)。得られた上澄みの適当な体積を製造業者の384ウェルフォーマットアッセイにおいて使用した。結果(死滅%)を各時点で算出し、死滅%比(最終/初期時)を報告する。
【0049】
ダラプラジブ処置後の細胞生存率。処置開始の1日前に、5,000個の細胞/ウェルのドキシサイクリン誘導iKRasまたは標的マウス/ヒト細胞を96ウェルプレートに蒔いた。実験日に漸増濃度のダラプラジブを三連で馴化培地に添加した。48時間のインキュベーション後、CellTiter-Glo(登録商標)放射アッセイ(Promega G9681)を使用して細胞生存率を判定した。使用前に、復元したキット試薬を室温に平衡化した。細胞溶解を開始するために、50μLの試薬を各ウェルに添加した。プレートを10分間室温で、オービタルシェーカー上で穏やかに混合しながらインキュベートした。Tecan Infinite M1000 Proプレートリーダー(Tecan Group Ltd.)を使用して放射を測定した。アッセイからの結果を非処置対照のパーセンテージとして算出した。使用した細胞型および下流マーカーに応じて、ダラプラジブの報告されたEC50は10~1000nMの範囲である。酵素IC50は1~10nMの範囲である。
コレラ毒素サブユニットB(CTxB)標識。細胞をチャンバースライドまたはガラス底培養皿に播種した。細胞にAlexa647-ssDNAコーティングレポーターを単独でまたはコレラ毒素サブユニットB(CTxB、0.5μg)(ThermoFisher C22843)と組み合わせて以前に記載された通りにパルスした。培地を除去し、細胞を室温(RT)の1×HBSS中で3回リンスした。最終時点で、顕微鏡検査グレードのパラホルムアルデヒド(EMS 15714-S)を培養培地に滴下添加し、穏やかに回転させて2%v/vの最終濃度を生成することによって細胞をin situで固定した。一部の場合では、ストックからの1:10希釈で核ヘキスト対比染色液を固定剤に添加した。イメージングは下に示される通りに進めた。内腔におけるCTxBおよびAlexa647で標識した小胞の相関する動きを示す共焦点動画を取得した(データは示していない)。
【0050】
トランスゴルジ網38-GFP融合発現。各35mm培養皿について、2μgのcDNA、Tgoln1(Sino Biological MG5A1193-ACG)を、2μL PLUS試薬を含有する無血清および抗生物質不含DMEMに添加した。8μL Lipofectamine LTX(Thermofisher 15338030)を無血清培地の別のチューブに添加した。チューブをピペット操作によって混合し、室温で10分間放置インキュベートした。トランスフェクション日に50~60%コンフルエンスに到達するように細胞を播種した。Girotti M, Banting G. “TGN38-green fluorescent protein hybrid proteins expressed in stably transfected eukaryotic cells provide a tool for the real-time, in vivo study of membrane traffic pathways and suggest a possible role for ratTGN38.” Journal of cell science 109 (Pt 12), 2915-2926 (1996)を参照されたい。カクテルミックスを完全培地で成長している細胞に滴下添加した。培養皿を回転させ、次いで37℃で36時間インキュベートした。この期間の後、細胞を洗浄し、処置およびイメージングの前に2時間休めるようにした。
【0051】
電子顕微鏡検査。誘導細胞株を保持する6ウェルプレートを80~90%コンフルエンスに成長させ、1×HBSSで2回洗浄し、許容されるEM固定剤で固定した。調製およびイメージングのためにプレートをWeill Cornell MedicineのCLC Imaging Core Facilityに運んだ。
RNAシークエンシング(RNAseq)。十分な出発材料を確実にするために、ベクターおよびK-rasG12Vのそれぞれの2つの生物学的反復を6ウェルプレートにおいて成長させ、3つのウェルをそれぞれの反復専用にした。抽出日に培地を吸引し、500μLのTrizol LS試薬(Thermo 10296010)を各ウェルにピペットで入れた。プレートを氷上に置き、各ウェルの内容物を撹拌し、ゴム製ポリスマンでこすり取り、全ての材料が均質であることを確実にしてから予め冷却した2mLエッペンドルフ(Fisher 05-402-24C)に移した。試料をイソプロパノール/ドライアイススラリーにおいて瞬間凍結し、MSKCC Integrated Genomics Operation(IGO)による処理:抽出、ポリ-A濃縮、品質管理、ライブラリー調製、およびシークエンシング(3~4千万リード数、HiSeq-PE50)まで-80℃で保存した。アライメント、クラスタリング、Htseqカウント、および差次的発現のための標準デリバリーパイプラインを使用してMSKCC Bioinformatics Core(BIC)によって下流バイオインフォマティクスを行った。
【0052】
PC-SUV小胞およびANSアッセイ。500mgのダイズホスファチジルコリン(Lipoid)を200μLのエタノールに溶解し、25μLのエタノール-脂質溶液を750μLの脱イオン水に注入した。得られたMLV分散液を手動の押出し機で200nm膜を通して4回押し出した。得られた小さいユニラメラ小胞(SUV)のサイズは約160nmであった。Portnoy E, et al. “Indocyanine Green Liposomes for Diagnosis and Therapeutic Monitoring of Cerebral Malaria.” Theranostics 6, 167-176 (2016)を参照されたい。ANSアッセイのために、8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩(Sigma 10417-F)の100μMストックを脱イオン水に溶解した。ドデシル硫酸ナトリウム、SDS(Fisher BP166-100)のストック溶液を脱イオン水中で生成した。最初に過剰のワーキング濃度の2μM ANSを1μM SUV(全脂質に基づく算出)と1×PBS中で混合することによってアッセイを準備した。この混合物にビヒクルブランク、SDS、またはレポーターを添加した。対照として、SUVの非存在下で、ANSをSDSまたはレポーターと混合した。UV透過ハーフウェル96ウェルプレート(Corning 3679)を使用する30分の卓上インキュベーション後、蛍光をTecan Infinite M1000 Proプレートリーダー(Tecan Group Ltd.)で測定した。プログラムを350nm励起および470nm放射(5nmバンド幅)に設定した。120の手動ゲインおよびモード1(400Hz)での50回のフラッシュで上方モードを使用した。待機時間は0ミリ秒であり、zポジションは22303であった。
【0053】
メチレンブルー染色。24時間の細胞株誘導後、1%w/vストック溶液(Fisher S25431)を1×HBSSで0.05%v/vに希釈することによってワーキング染色液を製造した。細胞を洗浄し、このワーキング溶液で覆い、次いで5分間37℃でインキュベートした。その後のイメージングのために、細胞をRTの新しい1×HBSS中で完全にリンスし、維持した。画像取得のために、広視野顕微鏡、カラーカメラ、および10×対物レンズを使用した。
【0054】
グループ7遺伝子に対するshRNAのレトロウイルス送達。RT3GEPIR miR-Eベクターバックボーンを使用して、ウミシイタケルシフェラーゼ(ベクター対照)、pla2g7、またはpafah2に対するshRNA標的化配列(遺伝子標的1つ当たり2つ)をクローニングした。shRNAインサートは22塩基長であった。プラスミドDNAは、shRNA生成のためのアルゴリズムを一部使用してMSKCCのGene Editing and Screening Coreによって生成され、供給された。Pelossof R, et al. “Prediction of potent shRNAs with a sequential classification algorithm.” Nature Biotechnology 35, 350-353 (2017)を参照されたい。100mm LB寒天プレート(Teknova L111002)に接種したMach1コンピテント細菌を使用してプラスミド増幅を行った。製造業者の使用説明書(Zymo Research T3002)を使用して細菌ストックを最初に拡大増殖させ、続いて-80℃で保存した。細菌へのプラスミドの形質転換を氷上で行い、20μLのコンピテントMach1を250pgのDNAと穏やかに混合した。この塊を、カルベニシリン(200μg)を含む37℃の予め温めた100mm LB寒天プレート(Teknova L1046)にピペットで滴下し、続いてビーズ回転させた。プレートをドライ37℃インキュベーターにおいて18時間またはしっかりしたコロニーが形成されるまでインキュベートした。単一の形質転換体コロニーを、200μgカルベニシリンを含む3mL Terrific Broth(Teknova T7510;100μgカルベニシリン、Fisher AAJ67159ADを含む)に接種することによってコロニーを増幅した。蓋をゆるくはめた培養チューブを15時間37℃で振盪しながらインキュベートした(225rpm)。保管のために、得られた濁ったブロスから900μLを取り出し、50%無菌グリセロールと1:1混合し、-80℃で凍結した。残りのブロス(または保管を行わない場合は全体積)をミニプレップ(Qiagen 27106)のために遠心沈殿した(6800rcf、3分、15℃)。グリセロール中に保管したプラスミドの再増幅のために、無菌白金耳でグリセロールストックを少しこすり取り、カルベニシリン200μgを含む2つの100mm LB寒天プレート全体に連続ストリーキングした。HEK293T(ATCC CRL3213)に由来するPhoenix-AMPHO細胞株を使用してレトロウイルスバッケージングを達成した。Phoenixを拡大増殖させ、次いで3継代で小分けして液体窒素中で凍結し、使用するために2.5x106個のPhoenix細胞を、60mmプレート上の10%熱不活化FBSを補充したが抗生物質は含まない、別の場所に記載した基本成長培地中にトランスフェクションの24時間前に解凍し、約80%コンフルエンスを達成した。蒔いてから12時間後に新しい培地と交換した。各60mm培養皿を埋めるトランスフェクションカクテルは、6μgプラスミドDNAを、FBS/抗生物質を含まない1mL成長培地、続いて1:1比のDNA:PLUS試薬(ThermoFisher 15338100)中へ希釈し、穏やかに混合したものであった。ミックスを室温で10分間インキュベートし、続いて20μL Lipofectamine LTX(ThermoFisher 15338100)を添加し、このミックスを25分間室温でインキュベートした。トランスフェクションの準備ができたPhoenix培養皿からの2mLの馴化培地を、抗生物質を含まない2mLの新しい培地と混合した。25μMクロロキンをこの4mL体積に添加した。この混合した体積をトランスフェクトされるPhoenix培養皿に、単層を乱さないよう穏やかに移した。次いでトランスフェクションカクテルをPhoenix培養皿に滴下添加し、これを37℃で9~10時間インキュベートした。この時間の後、培地を吸引し、抗生物質および10mg/mL滅菌濾過BSA(1×PBSに溶解したSigma A1470)を補充した5mLの新しい培地を各培養皿に穏やかに添加した。培養皿をインキュベーターに移し、Phoenix細胞の100%コンフルエンスを仮定し、各遺伝子構築物を表すPhoenix馴化培地をプールし、無菌0.45μmフィルターを通して濾過することによって、少なくとも24時間後にウイルス上澄み収穫を開始した。培地の酸性化ゆえに、濾過したウイルス上澄みを、10%v/vHEPES(ThermoFisher 15630106)および25%v/vの新しい完全成長培地で緩衝した。濾過したウイルス上澄みを瞬間凍結し、密封したコニカルチューブに-80℃で保存した。最初に100mm培養皿当たり5x105個の標的細胞を、5%FBSを含む完全培地に終夜播種することによって、標的MEF細胞株にウイルスを感染させた。凍結したウイルス上澄みを37℃の水浴中で迅速であるが不完全に解凍した。4mLのウイルス上澄みを、5%FBSを補充した1mLの新しい培地で希釈することによって形質導入カクテルを作製した。次いでポリブレンを4μg/mLの最終濃度まで添加し、カクテルを穏やかに混合し、室温で10分間インキュベートした。形質導入カクテルを、吸引した標的細胞プレートに添加した。培養皿を37℃で8時間インキュベートし、その後5%FBSを補充した新しい培地を添加して培養皿体積を10mLにした。インキュベーションをさらに36時間または細胞が90%コンフルエンスに到達するまで続けた。HBSSおよび完全培地を使用して馴化培地を完全に洗い流し、次いで標的細胞を新しい培養皿に分け、2日後に80~90%コンフルエンスを達成し、二重の抗生物質選択を開始した。選択するために、完全成長培地に元のpTURNベクターの維持のための30μg/mLハイグロマイシン(死滅濃度約150μg/mL)およびshRNA構築物を保持する細胞の選択のための3μg/mLピューロマイシンを補充した。未感染および未処置の対照を並行して成長させた。抗生物質を含む完全培地を2日ごとに、対照培養物が死滅するまで標的細胞において交換した。選択中に増殖している細胞コロニーを拡大増殖させ、全ハイグロマイシン選択用量にさらに2日間曝露し、元の誘導性cDNAの存在を確実にし、次いで保存またはイムノブロット分析のために収穫した。アッセイは、適当な株(ウミシイタケ対照に対してiKRas/mirG7またはiKRas/mirAH2)がRasG12Vを過剰発現し、グループ7またはpafah2タンパク質の低下したレベルを有することを示したが、対照細胞株は、ナノセンサーによってアッセイすると上昇した炎症脂質含量を示し、キットでアッセイすると上昇したPAFAH活性を示した。iKRas保持ノックダウン細胞株は、ナノセンサー応答の明確な変化を示さず、PAFAHのアッセイは、細胞溶解物および条件培養培地における上昇した活性を報告した(データは示していない)。これらの理由で、安定な誘導性shRNAは報告されず、代わりに一過性RNAiを使用した。
【0055】
分化マーカーのための免疫細胞化学。以下の一次抗体を間接的免疫蛍光に使用した:0.1μg/mL抗ビメンチンマウスモノクローナル(Vector Labs VPV684)、1μg/mL抗SMAマウスモノクローナル(Sigma A5228)、2.5μg/mL抗E-カドヘリンマウスモノクローナル(BD 610181)、1:300抗シンタキシン6(Cell Signaling 2869)、1:300抗LAMP1(Abcam 25245)。結果は、iKRasが、ベクターにおけるバックグラウンド染色またはE-cadの陽性対照細胞株HK-2と比較すると、これらの最終分化マーカーのいずれも発現しないことを示した(データは示していない)。
【0056】
試薬および材料。ナノレポーターを記載の通りに調製した88。簡単に述べると、未加工ナノチューブ(SWCNT)を一本鎖DNA(ssDNA)配列5’-CTTCCCTTC-3’(IDT Technologies)と懸濁し、水性二相(ATP)分離に供して(9,4)カイラリティを精製した。ストック溶液を4℃で維持した。共焦点イメージングのために、1μmolのAlexa647-ssDNA(5’-CTTCCCTTCTT/iSp18//3AlexF647N/-3’、IDT Technologies)を使用してレポーターを生成した。1mgの未加工SWCNT(NanoIntegris、HiPco)と0.1M NaClに溶解した1mg ssDNAとの分散を、この混合物を30分間-20℃のcold block内で超音波処理(2mm段階プローブ、Sonics and Materials Inc.、パルス:1分オン、15秒オフ)することによって達成した。得られた懸濁液を10分間30,000rcfで卓上遠心分離した。上澄みを30分間171,180rcfで超遠心分離した。得られた上澄みを脱イオン水に対して3回スピン濾過し(Millipore Amicon、100kDa)、再懸濁し、次いで10分間、30,000rcfで遠心分離した。上澄みの上部90%を回収し、UV-Vis-NIR分光光度法(Jasco V-670)によって測定した。濃度を算出するために使用した吸光係数はε(910nm)=0.02254L・mg-1・cm-1であった。PBSおよびHBSSはMemorial Sloan Kettering Media Preparation Core Facilityによって調製された。DMSO(Fluka BP2311)をモレキュラーシーブ(Fluka 69839)と共に保存した。この研究で使用した薬物および化合物は以下の通りであった:ドキシサイクリン塩酸塩溶液(Sigma D3072)、バレスプラジブ(Selleckchem S1110)、MJ-33(Cayman 90001844)、BEL(Cayman 70700)、MAFP(Cayman 70660)、ダラプラジブ(Selleckchem S7520)、リラプラジブ(MCE HY-102004/CS-0022446)、ML256(寄贈品)、AA39-2(寄贈品)、P11(Cayman 17507)、TSI-01(Cayman 17628)、メチルカルバミルPAF C-16(Cayman 60908)、(±)-α-トコフェロール(Sigma T3251)、ホスホコリンクロリドカルシウム塩四水和物(Sigma P0378)、リノール酸(Sigma L1376)、1-C16エーテルMG(Avanti 999971)、18:1 BMP(S,R)(Avanti 857133)、C18 LPA(Avanti 857228)、18:1スフィンゴシン-1-リン酸(Avanti 860492)、18:0 PA(Avanti 830865)、8:0 LPC(Avanti 855275)、14:0 LPC(Avanti 855575)、16:0 LPC(Avanti 855675)、C16 2:0 PAF(Avanti 878110)、18:0 LPC(Avanti 855775)、18:1 LPC(Avanti 845875)、20:0 LPC(Avanti 855777)、24:0 LPC(Avanti 855800)、14:0 PC(Avanti 850345)、16:0 PC(Avanti 850355)、18:0 PC(Avanti 850365)、16:0 LPS(Avanti 858142)、16:0 PS(Avanti 840037)、18:0 LPS(Avanti 858144)、14:0 LPE(Avanti 856735)、18:0 LPE(Avanti 856715)、14:0 PE(Avanti 850745)、16:0 LPG(Avanti 858122)、16:0 PG(Avanti 840455)、16:0 LPI(Avanti 850102)、16:0 PI(Avanti 850141)、NaCl(Fisher S2711)、NP-40(Sigma I8896)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(Sigma 436143)、デオキシコール酸ナトリウム(SDC)(Sigma D6750)、EDTA(Sigma EDS)、TAK-632(500nM、Selleckchem S7219)、GDC-0941(500nM、Selleckchem S1065)、Torin1(500nM、Selleckchem S2827)、トラメチニブ(500nM、Selleckchem S2673)、ロスマピモド(500nM、Selleckchem S7215)、JNK-IN-8(20nM、Selleckchem S4901)、GDC-0994(500nM、Selleckchem S7544)、酢酸デキサメタゾン(Cayman 22286)、BQU57(Selleckchem S7607)、QNZ(EVP4593)(Selleckchem S4902)、ロイペプチン(Selleckchem S7380)、ペプスタチン(Selleckchem S7381)、E-64(Selleckchem S7379)、16:0 LPC(Avanti 855675)、ダラプラジブ(Selleckchem S7520)、AA39-2(寄贈品)、LPDS(Sigma S5394)、脱脂BSA(フラクションV脂肪酸不含BSA、Sigma A7030、ロット番号5LBQ0873V)、ドコサヘキサエン酸(DHA)(Sigma D2534)、リノール酸(LA)(Sigma L1376)、およびリノレン酸(ALA)(Sigma L2376)。
【0057】
in vivo生存研究。同系KP移植肺がんモデルを生成するために、KrasG12D/+;Trp53-/-(KP)GEMM肺腫瘍に由来する細胞株にレトロウイルスルシフェラーゼ(Luc)-GFP構築物を感染させ、400μLのPBSに再懸濁した5000個のKP腫瘍細胞を7週齢のメスのC57BL/6マウスに尾静脈注射した。90ビヒクルまたはダラプラジブでの処置前にマウスを様々な研究コホートに無作為化した。処置を強制経口投与によって1日1回月曜から金曜まで投与した。異種移植後73日目までに疾患関連病的状態で死亡しなかったマウスをXenogen IVIS Spectrum(Caliper Life Sciences)での生物発光イメージング(BLI)によって腫瘍形成についてモニタリングし、それらの体重変化を評価した。生物発光陽性マウスは研究に留まり、生物発光陰性マウスは安楽死させ、それらの肺を組織学的検査のために収穫した。組織をリンスし、4℃の緩衝した4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定し、長期保存のために4℃ 70%エタノールに移し、包埋し、切片化し、染色した(H&E、抗GFP一次抗体、抗Ki-67一次抗体)。一部のマウスは注射された体積から腫瘍細胞がうまく播種されなかった可能性があるので、73日目の生存群からのマウスを捕まえ、組織学的検査によって評価した。組織学的異形成について陰性の組織は最終研究分析から除外し、組織学的異形成について陽性の組織は最終研究分析に留めた。各コホートのN値は、最終分析前の組織学的検査の結果を反映するように調整した。生物発光陰性の1匹の処置コホートマウスは、疾患関連病的状態なしの非常に早期の死亡(24日目)ゆえに最終分析において外れ値として標識し、肺生物発光陽性の1匹の処置コホートマウスは、疾患関連死前であっても体重が減った時点で安楽死させ(91日目)、妥当な研究タイムラインを維持した。
【0058】
ヒト発現分析。TCGA PanCancer Atlas Studies91からのヒトデータは、cBioPortalを介してアクセスした。92pla2g7、pafah2、kras、およびhras遺伝子の検索を行った。出力データは、線形またはlog2スケールの発現量中央値によってランク付けされたRNAseq V2である。
【0059】
結果
発がん性RAS増幅は老化関連ストレスおよび損傷を誘導する。
Tet誘導性K-またはH-rasG12VcDNA(iK/HRas)を安定に形質導入したSV40ラージT不死化マウス胚線維芽細胞におけるRASストレスおよび損傷の程度を判定した。ドキシサイクリンに曝露させたiKRas、iHRas、またはベクター(対照)MEFの増殖を最初に測定した(図1)。比較のために、Cre組換え酵素によって前処理された胚から生成された内因性発がん性K-ras(eKRas)細胞を不死化し、対の野生型MEFと共に増殖について試験した。ベクター対照、可逆性Tet-ON系、および内因性変異体の間で増殖の明らかな差異があった。KRAS増幅は細胞を停止させたが、内因性KRASは過剰増殖を促進した。
【0060】
これらの2種のモデルにおけるシグナル伝達変化を調べるために、細胞溶解物に24時間イムノブロットを行った(図2)。イムノブロットは、iKRas細胞において発がん性RAS過剰発現および下流ERK1/2リン酸化を示した。特に、ホスホ-p53は有意な増加を示さなかったが、p21waf1/cip1発現は上昇し、ドキシサイクリン処置にわたり発現を維持した(図3)。増幅RAS細胞と比較して、eKRas内因性RAS細胞において、ERKリン酸化は検出可能でなく、p21waf1/cip1はわずかに検出可能であった。発がん性RASストレスの他の重要な属性が存在するかどうかを決定するために、DNA損傷応答を試験した。図4は、鋭敏な二本鎖切断マーカーγH2A.Xからの免疫蛍光の定量を示す。同様に、遺伝毒性ストレスマーカーであるホスホ-JNKおよびホスホ-ATF-2についてのアッセイを行った(図5)。全てのストレスマーカーは、iKRas細胞において上昇したが、eKRasでも対照でも上昇しなかった。
【0061】
発がん性RAS量と早期老化の関係を確認するために、本発明者らは、RAS変異細胞が老化マーカーの差異を示すかどうかを判定した。ストレス誘導性老化についての2種のマーカーの最小値を踏まえて、本発明者らは老化関連β-ガラクトシダーゼおよびヘテロクロマチン病巣(HP1γ)についてアッセイした。これらのアッセイの両方が、培養72時間後にiKRas細胞においてのみ上昇した老化関連マーカー発現を報告した(図6)。eKRas細胞の場合、β-Galシグナルは確率的であった。iKRas細胞によって発現される明らかな発がんストレス表現型を考慮して、本発明者らはそれらが鋭敏なSIR/SASP炎症発現プロファイルを生成するかどうかを調査した。24時間誘導した細胞培養物のRNAシークエンシングならびに代表的なSIR/SASPマーカーのイムノブロットは、生得的炎症応答の上方調節を報告した。長期細胞培養からのSIRおよびSASP表現型の以前の知見に基づいて23、28、33、34、35、36、37、本発明者らのプロファイリングは、iKRas細胞が、増幅された発がん性RASに対するストレスおよび損傷応答のモデルとなるが、eKRas細胞はモデルとならないことを示した。
【0062】
発がん性RASストレスはグループ7 sPLA2活性を引き起こす。
iKRasおよびeKRas細胞におけるsPLA2アイソフォームの活性を調べた。2種の脂質基質:現在までに知られているほとんどのがん関連sPLA2アイソフォームの基質であるジヘプタノイル-ホスファチジルコリン(PC)、またはグループ7および8 sPLA2アイソフォームの基質である血小板活性化因子(PAF)(血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、PAF-AHとしても公知)を使用して発色酵素アッセイを行った。増幅iKRasモデル、ベクター対照細胞、または過形成性eKRasからの細胞溶解物および馴化培地を調製し、チオール化PCまたはPAFとインキュベートし、DTNB(エルマン試薬)と混合した。精製した酵素、ハチ毒由来グループ3 sPLA2(PCが基質である)、またはヒトPAF-AH(PAFが基質である)を陽性アッセイ対照として試料に加えた。iKRas細胞においてPC特異的活性は観察されなかったが(図7)、上昇したPAF-AH特異的活性は観察され、対照もeKRas溶解物も検出限界を上回る活性を含有しなかった(図8)。これらの結果は、細胞内グループ7および/または8 sPLA2アイソフォームが増幅RAS誘導損傷によって誘導されたことを証明した。
【0063】
細胞内タンパク質発現が、測定されたグループ7 sPLA2活性と一致するかどうかを判定するために、共焦点顕微鏡検査を行い、mRNA配列データを分析した。抗PLA2グループ7A抗体を使用する免疫細胞化学は、iKRas細胞が7Aアイソフォームの内因性過剰発現および点状(小胞状)局在を含有することを示した(図9)。ストレス中に細胞質基質からER/ゴルジに移った38sPLA2 グループ7BアイソフォームがiKRas細胞において散在性に、低い強度で染色されたことが見出された。これらの結果は、グループ7BがiKRas細胞における細胞内PAF-AH活性の主な原因でないことを証明する。さらに、結果はpla2g7 RNAの32倍の増幅と一致していた。グループ7B酵素およびグループ8酵素は、iKRas細胞において同様に過剰発現しなかった。
【0064】
iKRas内膜における脂質調節不全は、PLA2G7活性および酸化したリン脂質に起因する。
グループ7A sPLA2は、動物血清リポタンパク質の正常な成分であるので、本発明者らはiKRas細胞が、この循環酵素の内因性活性に関連する調節不全の細胞内脂質代謝を示し得ることを推測した。生細胞のエンドソーム内腔における近赤外放射のより小さい(より青色の)値へのシフトによって可溶性脂質を測定する、以前に検証されたナノセンサーを使用して39、40、細胞のエンドソーム細胞小器官における脂質調節不全を判定した。本発明者らは最初にセンサーがsPLA2酵素の基質/生成物に応答するかどうかを検索した39。レポーターは、pH非感受性および膜二重層非透過性であることが確認された。幅広い範囲の内因性界面活性剤クラス(水溶性)種を表す個々の脂質に対するin vitroでのセンサー応答を最初に探索し、レポーターの色応答がリゾホスファチジルコリン(lysoPC)、血小板活性化因子(PAF)、およびリゾホスファチジルセリン(lysoPS)に最も感受性であることが見出された。例えば超長鎖lysoPCおよびPCに対する追加の感受性が、それらの内因性臨界ミセル濃度をはるかに上回る脂質濃度で観察された(pM~nM、この点を上回ると自由な溶解性はごくわずかである)。
【0065】
生細胞における脂質調節不全を判定するために、脂質ナノセンサーをRASまたはベクター形質転換細胞株の培養培地に導入した。近赤外ハイパースペクトル顕微鏡検査を利用して、iKRas、iHRas、eKRas、ベクター対照細胞、および並列するPI3K経路における変異を保持するMEF内でナノセンサーの蛍光スペクトルを空間的に取得した。データをフィッティングして、ナノセンサー放射バンドの中心波長を決定し、次いでこれを細胞の明視野画像上にマッピングし戻し、ヒストグラムにプロットした。この方法を使用して、発がん性RAS誘導後24時間および72時間の平均センサー放射波長を測定した。ミリストイル化(構成的)Akt1(myrAkt1)またはPtenをノックアウトするための短いガイドRNAを保持する不死化MEFを培養してから24時間後の平均センサー放射波長も測定した(図10)。構成的RAS変異体だけが、ベクターまたはシグナル伝達対照細胞のいずれかと比較して有意な青色シフト応答を示すことが見出された。eKRas細胞は、iKRas細胞におけるシフトより有意に少ないわずかな青色シフトを示した。MAPK経路エフェクター、例えばRAF、MEK、およびERKの薬理学的阻害剤(それぞれTAK-632、トラメチニブ、およびGDC-0994)は、センサー応答に影響を及ぼさない、mTOR/AKT経路エフェクターの薬理学的阻害剤と比較して、ベクターに対してiKRasにおいて脂質ナノセンサー応答を有意に低下させた(図11)。小胞分解経路の阻害剤は、同様にナノセンサー応答を抑止しなかった(図12)。これらの結果は、発がん性RAS増幅による損傷が、1種の内膜輸送経路のいずれかに固有でないエンドソーム/内膜脂質調節不全を直接的に誘導することを示す。
次にこの細胞内レポーター応答が、リゾリン脂質および関連脂質種のsPLA2媒介生成に感受性であるかどうかを測定した。一連のPLA2阻害剤で細胞を処置してから24時間後にナノセンサーを使用して脂質蓄積を測定した。ナノセンサー応答は、iKRas細胞における脂質調節不全がグループ7 sPLA2(PLA2G7A/B)酵素活性の阻害剤によってのみ防止されることを示した(図13)。阻害剤は、以下の順序でレポーター応答を減弱した:ダラプラジブ>リラプラジブ≒ML256>AA39-2。ダラプラジブおよびリラプラジブは、強力な可逆性PLA2G7A阻害剤であるが、ML256はPLA2G7Aの共有結合阻害剤であり、AA39-2はPLA2G7Bの共有結合阻害剤である。41、42iKRas細胞において脂質レポーター応答を減弱することができなかった他のPLA2阻害剤は、PLA2G2/5/10/12アイソフォームを阻害するバレスプラジブ、PRDX6およびPLA2G15を不活化すると報告されている、アラキドン酸43の遷移状態アナログであるMJ-33、PLA2G6の阻害剤であるBEL、細胞質型PLA2G4の阻害剤であるMAFP、PLA2G8の阻害剤であるP11、およびPAF生合成の阻害剤であるTSI-01を含んだ。RAS損傷細胞におけるグループ7活性と一致して、PLA2G7A刺激因子および抗炎症薬デキサメタゾン44は、ベクター系においてレポーター応答を増加させた(図14)。これらの結果は、グループ7 sPLA2(PLA2G7A/B)活性が、内膜脂質調節不全を誘導するが、広範なsPLA2活性はそれを誘導せず、発がん性RAS増幅による損傷はこの調節不全を著しく悪化させることを証明する。
【0066】
iKRas脂質調節不全が、膜リン脂質酸化によって潜在的に引き起こされるかどうかも調べた。最初に、iKRas細胞の酸化環境を判定するために、生細胞培養物を酸化還元色素メチレンブルーで染色し、これは上昇した細胞染色を示す。この結果は、上昇した細胞内酸化環境を裏付ける。iKRas細胞を次いで、一般的な膜抗酸化剤である脂溶性α-トコフェロール(ビタミンE)とインキュベートした。45レポーター応答は、ビタミンEとプレインキュベートした細胞において抑止され(図15)、これは脂質調節不全が、可溶性リゾリン脂質の放出をもたらす、膜への酸化損傷から生じることを示唆する。
次に、エンドソーム脂質調節不全が、グループ7基質PAF46および酸化リン脂質(PAF-アナログ)の合成に必要である、血清リポタンパク質の多価不飽和脂肪酸(PUFA)成分を必要とするかどうかを調べた。2種の必須PUFA:アラキドン酸(AA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)ありまたはなしでリポタンパク質欠損血清中で細胞をプレインキュベートした。脂質レポーター応答がPUFA枯渇時に抑止されるが、PUFA補充後に救済されることが観察され(図16)、これはこの脂質調節不全がグループ7 sPLA2酵素の多価不飽和脂肪酸基質も必要としたことを示した。
【0067】
発がん性RAS増幅細胞の電子顕微鏡検査を行って、脂質調節不全表現型をさらに調べた。透過型電子顕微鏡検査(TEM)は、iKRasおよびiHRas株における異常なラメラ様構造の存在を示した(図17)。これらの構造は層状体に似ているようである。47これらの画像はエンドソームおよび/または分泌型内膜区画の内腔内の脂質調節不全をさらに裏付け、これらの画像は発がん性RAS誘導損傷の重要な成分としてのPLA2G7の細胞内保持も裏付ける。
これまでに提示されたレポーターデータに基づいて、内膜への直接的損傷が、PAF-アナログ基質およびグループ7 sPLA2酵素の作用によるリゾリン脂質の産生を増加させる、ワーキングモデルを試験した。
【0068】
RAS増幅媒介脂質酸化は、PLA2G7により細胞のリゾリン脂質を増強する。
ワーキングモデルを扱うために、iKRas細胞によって産生された脂質種がグループ7 sPLA2酵素からの活性と一致するかどうかを調べた。全膜脂質ヒドロペルオキシド発色アッセイをiKRasに行い、グループ7 sPLA2酵素基質の存在について試験した。アッセイ(図18)は、iKRas細胞が対照に対して上昇した脂質ヒドロペルオキシドレベルを含有することを示し、これはグループ7 酵素基質の増加した産生を裏付けた。
iKRas代謝がグループ7 sPLA2活性と一致する脂質シグネチャーを産生したかどうかを決定するために、iKRas細胞溶解物および馴化培地をグリセロリン脂質、ステロール、グリセロ脂質、およびスフィンゴ脂質のLC-MS/MSのために調製した。lysoPAFおよびlysoPC種が、ベクター対照と比較して、変異培養物の馴化培地において濃縮されたことが見出された。iKRas細胞溶解物は、ベクター対照より少ない全飽和/不飽和リン脂質、プラズマローゲンリン脂質、およびエーテルリン脂質を含有したが、より多くのリゾリン脂質を含有した。これらの結果は、増加した脂質調節不全がsPLA2生成物を含むという結論を裏付ける。
【0069】
本発明者らは、iKRas細胞における飽和/不飽和リン脂質の低下およびリゾリン脂質の上昇は、直接的な酸化修飾、酵素作用、または両方の働きに起因し得ることを推論した。グループ7 sPLA2活性が実際にリン脂質調節不全の一因となったかどうかを理解するために、iKRas細胞をグループ7酵素阻害剤ダラプラジブで処置した後に脂質代謝を判定した。リピドミクスデータは、リゾリン脂質レベル、特にlysoPCだけでなく、lysoPE、lysoPI、およびlysoPSのような他のPUFA保持クラスの有意な減弱を示し(図19)、これはグループ7酵素活性がiKRasにおけるリゾリン脂質生成の少なくとも部分的な原因であることを示唆した。追加のリピドーム分析は、iKRas細胞溶解物および培地における脂質種の全般的な低下を見出し、これはiKRas表現型が広範に異化作用であり、ならびに/または損傷および脂質の修飾がリン脂質クラスに特有でないことを証明した。
【0070】
グループ7 sPLA2基質および生成物脂質は、細胞増殖に異なる影響を及ぼす。
sPLA2酵素アイソフォームは腫瘍抑制因子および腫瘍促進因子の両方として記載されているので48、49、50、51、52、53、2種の代表的な脂質、グループ7 sPLA2基質および生成物を使用してiKRas細胞を探索した。最初に、ベクター対照細胞を漸増濃度のグループ7 sPLA2生成物である16:0 lysoPC、および基質である16:0メチルカルバミルPAF(cPAF)とインキュベートした。lysoPC生成物がベクター対照細胞増殖(図20)をlysoPC臨界ミセル濃度(CMC、約8~10μM)付近で停止させることが見出された。この濃度での停止は、直接的な洗浄剤様効果を示唆した。一方、グループ7 sPLA2基質であるcPAFは、亜臨界および臨界ミセル濃度(lysoPCと同様のCMC)の両方において対照細胞増殖に対する軽い刺激効果を示した。したがって、ベクター対照細胞において、グループ7 sPLA2生成物の細胞内蓄積は、酵素基質より大きい程度に増殖に影響を及ぼした。iKRasおよびeKRas細胞を臨界ミセル濃度の同じ脂質で探索すると、lysoPCはごくわずかな停止効果または減少した停止効果を促進したが、cPAFはiKRasおよびeKRas細胞の両方に対して強力な停止効果を促進した(図21)。したがって、これらの研究からのデータは、グループ7基質の細胞内蓄積が生成物脂質より顕著に腫瘍抑制性であることを裏付ける。加えて、eKRas細胞は、顕著なRAS関連損傷またはグループ7活性の非存在下で基質脂質にはるかに感受性であった。
【0071】
グループ7とRAS媒介細胞停止の分子的関連を調べるために、グループ7基質/生成物の細胞膜負荷が内因性p21waf1/cip1に影響を及ぼすかどうかを判定した。ベクターおよびiKRas細胞をlysoPCまたはcPAF脂質と24時間インキュベートした。イムノブロットは、ホスホ-ERKおよびp21waf1/cip1発現が、PLA2G7基質であるcPAFへの曝露時に増加したが、lysoPC生成物の場合は増加しなかったことを示し(図22)、これはこの脂質基質の蓄積が発がん性RAS誘導停止に関与していることを裏付けた。
この脂質基質関連停止が発がん性RAS増幅により内因的に刺激されたかどうかを判定するために、本発明者らは、PAFアナログの存在下で下方調節される細胞内標的であるPAF受容体(PAF-R)についてイムノブロットした。PAF-RはcPAFに曝露したベクター細胞において下方調節されたが、iKRas細胞におけるPAF-R状態は、脂質負荷と独立していることが見出された(図22)。グループ7基質の細胞負荷は、発がん性RASの増幅後に観察された停止を引き起こしたので、データは、RAS損傷自体がこれらの細胞増殖抑制性/細胞傷害性脂質種を生成することを裏付ける。
【0072】
グループ7 sPLA2ノックダウンは発がん性KRAS保持細胞を死滅させる。
グループ7 sPLA2の機能が、有害なPAF-アナログ脂質種を除去することであるかどうかを判定するために、本発明者らはグループ7のノックダウンがp21waf1/cip1発現をモジュレートするかどうかを判定した。グループ7 sPLA2遺伝子を標的化する市販のsiRNAをiKRas細胞とインキュベートした。本発明者らは、溶解物をイムノブロットし、停止に対する遺伝子ノックダウンの影響を判定し、ホスホ-ERKおよびp21waf1/cip1発現が消失したことが見出され、発がん遺伝子誘導停止がグループ7発現を必要とすることを裏付けた。しかし、グループ7酵素の除去は、損傷誘導性PAFアナログのより多くの蓄積を可能にするはずであり、cPAF脂質基質単独がホスホ-ERKおよびp21waf1/cip1発現を促進するという知見と一見一致しない予想である。
【0073】
この研究の過程において行われた観察は、iKRas表現型が血清ロットおよび細胞PUFA負荷に依存することを本発明者らに示唆した。ホスホ-ERKおよびp21waf1/cip1発現がPUFAに依存するかどうかを決定するために、本発明者らはsiRNAペアを一緒にプールし、培養培地に15μM PUFAミックス(各5μMのアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、およびリノール酸/リノレン酸)を補充した後に上の実験を繰り返した。得られたイムノブロットは、ホスホ-ERK/p21waf1/cip1発現が、添加したPUFAの存在下でノックダウン後に持続することを示した。同様に、PUFAの存在下でのPLA2G7アイソフォームの薬理学的遮断はホスホ-ERK/p21waf1/cip1発現を増加させ、基質が細胞内に蓄積することを可能にするこれらの酵素のノックダウンと一致する。この酵素経路へのPUFA負荷の重要性は、PUFAの存在へのグループ7 sPLA2タンパク質発現の依存性から推測された。したがって、PUFA由来基質の存在は、酵素誘導および損傷媒介停止の両方の重要な上流のメディエーターであると結論付けられた。
【0074】
グループ7 sPLA2酵素は細胞増殖抑制性/細胞傷害性リン脂質を一掃するので、本発明者らはグループ7ノックダウンが細胞増殖および生存に影響するかどうかを判定した。前述の通り、PUFAおよびsiRNAを補充した培養培地において細胞を維持した。ドキシサイクリン処置の72時間後に接着細胞数を計数した。グループ7ノックダウンはベクター対照細胞増殖を刺激するが、iKRas細胞増殖を刺激しないことが見出された(図23)。細胞死を判定するために、培養培地を72時間で取り出し、細胞破断関連乳酸脱水素酵素(LDH)活性について試験した(図24)。ノックダウンはiKRas細胞における増加したLDH活性をもたらしたが、ベクター対照細胞ではもたらさず、iKRas培養物における細胞死の増加を示した。
グループ7 sPLA2の最も開発された薬理学的阻害剤に対する発がん性RAS保持がん細胞の応答を判定するために、いくつかの腫瘍由来細胞株を、本来心血管疾患を処置するために開発された薬物であるダラプラジブで探索した。iKRas細胞ならびに肺、膵臓、および結腸直腸腫瘍に由来する細胞株をダラプラジブとインキュベートし、生存率についてアッセイし(図25)、全てのRAS保持株が低マイクロモル濃度のダラプラジブで死滅した。高レベルのグループ7 sPLA2を自然に発現する対照細胞株RAW 264.7マウスマクロファージは、処置によってほとんど影響を受けなかった。RAW 264.7細胞はグループ7 sPLA2酵素を発現するので、これらの結果は、顕著な膜損傷の存在が薬物感受性の根底にあることを示唆する。ダラプラジブがRAS変異細胞を選択的に死滅させ得るかどうかを決定するために、eKRas(わずかな発がんストレスを有し、大した7Aアイソフォームを有しない)または野生型SV40 MEFを薬物に曝露した。生存率データは、ダラプラジブが野生型細胞に対してeKRasを死滅させるのに2倍強力であることを示した(図26)。
【0075】
本発明者らは次に、グループ7阻害がRAS保持マウスがんモデルの発症に影響を及ぼすかどうかを判定した。非小細胞肺がんの同系KrasG12D/+;Trp53-/-(KP)移植モデルを使用した。54、55GEMM肺腫瘍に由来するルシフェラーゼ化細胞をWT C57BL/6マウスに静脈内投与した。最初の異種移植注射後の2つの異なる時点から開始する強制経口投与によって、マウスをビヒクルまたはダラプラジブで処置し、がん発生に対する処置の効果を判定した。ダラプラジブで処置されたマウスの肺がん関連死および病的状態の両方において顕著な遅延が観察された(図27)。加えて、本発明者らは、ビヒクル処置コホートの他の臓器において非原発性腫瘍を認めたが、ダラプラジブコホートでは認めなかった。
最後に、がん全体でのこの標的の組織およびヒトの関連を調べるために、本発明者らは2種のグループ7アイソフォームについての発現情報のTCGAデータベースを探索し、膵がんの2つの研究からの回顧的データを分析した。本発明者らは、グループ7転写物が、膵がんを含む多種多様なヒトがんにおいて発現され、増幅されることを見出した。RASの点変異型および構成型を保有することが多い組織を含めてほぼ全てのこれらのがんが、krasおよびhras転写物の過剰発現および増幅を示す。
【0076】
考察
この実施例セクションにおいて、RAS変異腫瘍における細胞生存の一因となる炎症関連脂質調節不全を調べた。様々なsPLA2アイソフォームが、発がん性rasを保持する悪性細胞および組織において発見されているが48、49、50、51、52、53、これらの炎症メディエーターとRASの直接的な関係は、非白血球モデルにおける研究の新生の分野である。胚細胞株モデルにおいて、本発明者らは、全体で発生中のマウスにおける発がん性RASの遺伝子増幅とin vivo発がん性の関連を裏付ける、著しく上昇したp21waf1/cip1、早期老化マーカー、ならびにDNA損傷およびストレスのマーカー(γH2A.X、ホスホ-JNK、およびホスホ-ATF-2)を見出した。19、20、21、22老化マーカーの上方調節と相まって、SIR/SASP遺伝子およびタンパク質上方調節は、iKRas細胞が炎症表現型のモデルになることを示した。23、28、35、56、57特に、単一対立遺伝子過剰増殖性変異細胞株であるeKRasは、p21waf1/cip1発現のわずかな上昇以外はiKRas細胞と同じ損傷サインを示さなかった。
【0077】
不偏の生化学プロファイリングは、本発明者らが広範な分泌型Pla2遺伝子ファミリーPLA2G7の固有の生体活性酵素アイソフォームを損傷のメディエーターとして同定することを可能にした。共焦点イメージングは、グループ7A sPLA2の実質的な過剰発現を示し、RNAseqはPla2g7遺伝子発現の32倍の上昇を報告したが、そのホモログであるPafah2(グループ7B)の上昇は報告しなかった。生細胞のエンドソーム内腔における脂質を検出するナノセンサーを使用して、本発明者らはこのシステムにおける脂質調節不全を調査した。脂質蓄積を評価するための蛍光ナノセンサーを使用して、本発明者らは、発がん性RAS増幅が、細胞内エンドソーム区画における実質的な脂質調節不全および内膜輸送欠陥を誘導することを見出した。グループ7 sPLA2およびRAS-ERKシグナル伝達の特定の阻害剤だけが脂質調節不全を抑止した。ナノセンサーを使用して、本発明者らは、内因性変異体であるeKRasにおける部分的な細胞内脂質調節不全を見出したが、eKRasは顕著なストレス応答もグループ7A発現も示さなかった。これらの知見は、この発がん遺伝子の量依存性に類似しているだけでなく、重要なことに、構成的RASシグナル伝達は酸化性物質を直接生成し得るので14、18、58、59、これらの知見は、eKRasにおける部分的脂質表現型およびp21waf1/cip1の軽い上方調節が、グループ7Aを誘発するのに不十分である酸化したリン脂質基質生成を反映することを裏付ける。p21waf1/cip1発現、細胞老化、および酸化損傷フィードバックの関連が示されている。60、61ストレスおよび炎症誘導性グループ7Aアイソフォームは、発現のためにRAS増幅の高度に上昇したストレスを必要とし得るが、これらのアイソフォームは、直接的な酸化攻撃によって逆説的に不活化される。62
【0078】
本発明者らは、異常な蓄積に関与する脂質の源および正体をさらに調べた。培養培地由来の多価不飽和脂肪酸(PUFA)が細胞内脂質調節不全に必要であることが見出されたが、Pla2ファミリーの膜活性酵素はPUFA放出において重要な役割を果たす一方46、63、グループ7酵素は酸化したPUFAを伴う膜脂質を選択的に攻撃するので64、65、66、67、このことは予期される。PUFA負荷および脂溶性抗酸化剤処置に対する細胞内脂質調節不全の感受性は、グループ7酵素の膜損傷応答の役割と一致する。
グループ7 sPLA2酵素触媒作用の主な生成物は、可溶性リゾリン脂質および酸化した脂肪酸であり、この触媒活性は、酵素が分解された場合に止まるはずである。しかし、エンドリソソーム分解を阻止する本発明者らの試みは、脂質調節不全に一切影響を有しなかった(図23)。理論に縛られるものではないが、これは、グループ7酵素が酸不安定性であり、酸性pHで不活化されるが68、69、Ras形質転換線維芽細胞における内膜区画はアルカリ性であり70、酵素活性を支持するという事実によって説明できる。
非分解性PAF-アナログ基質脂質を使用して炎症性グループ7A活性とRAS媒介生存の関連を試験した。本発明者らは、発がん遺伝子誘導成長遅延の重要なマーカーp21waf1/cip1とこの細胞増殖抑制性基質脂質クラスの細胞内蓄積の関連を証明した。グループ7遺伝子サイレンシングはp21waf1/cip1発現を抑止しなかったが、利用可能なグループ7酵素の化学的阻害はp21waf1/cip1発現を促進したので、生存のために細胞傷害性基質脂質が膜から一掃されなければならないモデルに基づいて、この開示で考察されるデータは実際にこのことを裏付けた。重要なことに、本発明者らは、グループ7遺伝子サイレンシングがRAS損傷細胞を選択的に死滅させるが、対照細胞を死滅させないことを示した。
【0079】
胚性細胞株を含む線維芽細胞は、ras形質転換およびごく最近では老化関連ストレスによって誘導されるSIR/SASP現象を研究するためによく使用されるモデルシステムである。線維芽細胞は、特定の条件下で標準のPAFを合成することができるか、または臨界ミセル濃度の外因性PAF脂質の存在下でIL-6を生成することができる。71、72ここで本発明者らは、RAS過剰発現が細胞溶解物における上昇したIL-6レベルをもたらすことを見出し、これは発がん性RAS増幅による損傷が、保存された炎症応答を刺激することを裏付けた。白血球における損傷関連分子パターン73および紫外線照射からのDNA損傷シグナル伝達74、75も、酸化修飾が鍵となる特徴であるグループ7/PAF/p21waf1/cip1経路に影響を与えることに注目することは興味深い。本発明者らは、この細胞状況におけるグループ7活性化または転写の下流の詳細を探索しなかったが、RAS発がん中のNRF2活性化および抗酸化性遺伝子発現の研究からの最近の証拠は、低レベルの酸化を維持することを含む、酸化ストレスおよび損傷と闘うことは、内因性RAS変異細胞の生存および増殖に重要な事象であることを示唆する。76重度の損傷は細胞成長を止める可能性がより高く、したがって、この損傷を修復する機構は攻撃的な細胞を選択する。
【0080】
PLA2G7Aは、白血球からほとんど誘導される可溶性リポタンパク質関連セリン加水分解酵素であるが、PLA2G7B(pafah2)は細胞質基質からER膜に移動し、肝臓65、77、赤血球78、および酵母の分裂酵母(S.pombe)64における酸化性物質除害剤として初めて記載された。両方の酵素は、ほとんどの基質が位置する膜-水界面の水性側で作用すると考えられているが、細胞質基質に対する活性が関連することが可能である。この活性の少なくとも一部は、エンドソーム区画に局在する内膜である。
【0081】
可溶性リゾリン脂質の出現がグループ7活性と関連するというナノセンサーおよびリピドミクスの知見に基づいて、本発明者らはグループ7 sPLA2酵素の阻害剤を調べた。グループ7阻害剤がRAS過剰発現細胞を選択的に死滅させ得ることが見出された。これらのストレス酵素のための最も開発された化合物は、グループ7Aおよび7B阻害剤であるダラプラジブであり、これは第3相試験に到達した後に、その意図された心血管臨床エンドポイントを満たせなかった。ダラプラジブはin vivoにおいて安全で明らかに副作用がない一方で、ほとんどの細胞はグループ7B酵素を、そのハウスキーパー酵素機能のために保持している。したがって、全面的な阻害は、膜損傷が顕著である、または代謝回転が遅い細胞型に選択的に影響を及ぼし得る。多くのヒト新生物は、構成的シグナル伝達に至る点変異を含めて、RASを過剰発現または増幅する。
【0082】
参考文献:












【0083】
いくつかの実施形態を例示し記載して来たが、当業者は、以上の明細書を読んだ後、本技術の化合物または本明細書に上記したその塩、医薬組成物、誘導体、プロドラッグ、代謝産物、互変異性体、もしくはラセミ混合物に対して変化、等価物の置換およびその他のタイプの変更を加えることができる。上記した各々の局面および実施形態はまた、他の局面および実施形態のいずれかまたは全てに関して開示されたかかる変形または局面を包含し、本明細書に組み込むこともできる。
本技術はまた、本技術の個々の局面のそれぞれの実例として意図される本明細書に記載された特定の局面に関して制限されない。当業者には明らかなように本技術の思想および範囲から逸脱することなく本技術の多くの修正および変形をなすことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本技術の範囲内の機能上等価な方法は以上の記載から当業者には明らかであろう。かかる改変および変形は添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。本技術は、当然変化することができる特定の方法、試薬、化合物、組成物、標識された化合物または生物系に限定されないと理解されたい。また、本明細書で使用されている用語は個々の局面を記載する目的のみのものであり、限定することを意図していないと理解されたい。したがって、本明細書は模範的のみと考えられると意図され、本技術の広がり、範囲および思想は添付の特許請求の範囲、本明細書内の定義およびそのあらゆる等価物によってのみ示される。
【0084】
実例として本明細書に記載されている実施形態は本明細書に具体的に開示されていないいずれか1つまたは複数の要素または限定の不在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」等は広く、制限なしに読むべきである。加えて、本明細書で使用されている用語および表現は限定ではなく説明の用語として使用されており、かかる用語および表現の使用において示され記載されている等価物またはその部分を除外する意図はなく、特許請求の範囲に記載の技術の範囲内で様々な改変が可能であると認識される。さらに、語句「から本質的になる」は具体的に列挙されている要素および特許請求の範囲に記載の技術の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない付加的な要素を含むと理解される。語句「からなる」は規定されてない要素を除外する。
さらに、開示の特徴または局面がMarkushグループで記載されている場合、当業者は、その開示がMarkushグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていると認識するであろう。属の開示内に入るより狭い種および亜属グループの各々も本発明の一部を構成する。これは、除かれるものが具体的に列挙されているかいないかに関わらず、いずれかの主題を属から除去するという条件または否定的な制限と共に本発明の属の記載を含む。
【0085】
当業者により理解されるように、いずれかおよびあらゆる目的のため、特に書面による明細を提供することに関して、本明細書に開示されている全ての範囲はまたいずれかおよび全ての可能な部分的範囲ならびにその部分的範囲の組合せを包含する。掲げられているあらゆる範囲は同じ範囲を十分に記載し、その同じ範囲が少なくとも等しい二分の一、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一、等に分解され得るとして容易に認識することができる。非限定例として、本明細書で論じられている各々の範囲は下側の三分の一、中央の三分の一および上側の三分の一、等に容易に分解することができる。また当業者により理解されるように、「以下」、「少なくとも」、「超」、「未満」などのような全ての言葉は列挙されている数を含み、上で論じられたようにさらに部分的範囲に分解することができる範囲を意味する。最後に、当業者に理解されるように、ある範囲は各々個々のメンバーを含む。
【0086】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、発行された特許、およびその他の文書(例えば、雑誌、論文および/または教科書)は参照により、各々個々の刊行物、特許出願、発行された特許、またはその他の文書が参照によりその全体が組み込まれると具体的かつ個別に示されているかのように本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた本文中に含有される定義は、本開示内の定義と矛盾する限りにおいて除外される。
【0087】
本技術は、これらに限定されないが、以下の文字付きの段落に記載されている特徴および特徴の組合せを含むことができ、以下の段落は、本明細書に添付されている特許請求の範囲を限定するとも、全てのそのような特徴がそのような特許請求の範囲に必ず含まれなければならないことを義務付けるとも解釈されるべきでないことが理解される。
A.対象においてがんを処置する方法であって、対象に有効量の化合物を投与してがんを処置するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、がんがKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持し、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、方法。
B.がんが、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんである、段落Aに記載の方法。
C.がんが、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含む、段落Aまたは段落Bに記載の方法。
D.対象がヒトである、段落A~Cのいずれか1つに記載の方法。
E.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落A~Dのいずれか1つに記載の方法。
F.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落A~Eのいずれか1つに記載の方法。
G.前記化合物がダラプラジブである、段落A~Fのいずれか1つに記載の方法。
H.前記化合物がリラプラジブである、段落A~Fのいずれか1つに記載の方法。
I.前記化合物がAA39-2である、段落A~Fのいずれか1つに記載の方法。
J.前記化合物がML256である、段落A~Fのいずれか1つに記載の方法。
【0088】
K.投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落A~Jのいずれか1つに記載の方法。
L.投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落A~Kのいずれか1つに記載の方法。
【0089】
M.投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、段落A~Lのいずれか1つに記載の方法。
N.対象に有効量の化合物を経口投与してがんを処置するステップを含む、段落A~Mのいずれか1つに記載の方法。
O.対象において腫瘍の成長を遅くするまたは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が腫瘍の成長を遅くするまたは後退させるのに有効な量であり、腫瘍がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの腫瘍であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、方法。
【0090】
P.腫瘍が、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんから選択されるがんの腫瘍である、段落Oに記載の方法。
Q.腫瘍が、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含むがんの腫瘍である、段落Oまたは段落Pに記載の方法。
R.対象がヒトである、段落O~Qのいずれか1つに記載の方法。
S.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落O~Rのいずれか1つに記載の方法。
T.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落O~Sのいずれか1つに記載の方法。
【0091】
U.前記化合物がダラプラジブである、段落O~Tのいずれか1つに記載の方法。
V.前記化合物がリラプラジブである、段落O~Tのいずれか1つに記載の方法。
W.前記化合物がAA39-2である、段落O~Tのいずれか1つに記載の方法。
X.前記化合物がML256である、段落O~Tのいずれか1つに記載の方法。
Y.投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落O~Xのいずれか1つに記載の方法。
【0092】
Z.投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落O~Yのいずれか1つに記載の方法。
【0093】
AA.投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、段落O~Zのいずれか1つに記載の方法。
AB.対象に有効量の化合物を経口投与するステップを含む、段落O~AAのいずれか1つに記載の方法。
AC.投与が、腫瘍内へのまたは腫瘍の近位への化合物の注射を含む、段落O~ABのいずれか1つに記載の方法。
AD.対象において新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または対象において新生物の増殖を遅くするもしくは後退させる方法であって、対象に有効量の化合物を投与するステップを含み、前記化合物がダラプラジブ、リラプラジブ、AA39-2、またはML256のうちの少なくとも1種であり、有効量が新生物の成長を遅くするもしくは後退させるおよび/または新生物の増殖を遅くするもしくは後退させるのに有効な量であり、新生物がKRASまたはHRASの一方または両方の構成的に活性な変異を保持するがんの新生物であり、前記構成的に活性な変異が機能獲得変異、重複、または遺伝子増幅であり、がんが健全な対照細胞と比較してPLA2G7AおよびPAFAH2のうちの少なくとも1種の上昇した発現および/または活性を示してもよい、方法。
AE.新生物が、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、胆管がん、軟部組織肉腫、血液もしくは造血細胞がん、乳がん、肺がん、子宮もしくは子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、中皮腫がん、皮膚がん、頭頸部がん、神経内分泌がんもしくは新生物、食道がん、精巣がん、前立腺がん、または胸腺がんから選択されるがんの新生物である、段落ADに記載の方法。
AF.新生物が、腺腫、腺癌、子宮癌、扁平上皮癌、小細胞癌、移行性癌、漿液性癌、明細胞癌、粘液腺癌、未分化癌、脱分化癌、漿液性腺癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、異形成病変、またはこれらの任意の2種以上の組合せを含むがんの新生物である、段落ADまたは段落AEに記載の方法。
【0094】
AG.対象がヒトである、段落AD~AFのいずれか1つに記載の方法。
AG.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.01mg/kg~約20mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落AD~AGのいずれか1つに記載の方法。
AI.対象に(化合物の質量/対象の体重に換算して)約0.25mg/kg~約10mg/kgの化合物を投与するステップを含む、段落AD~AHのいずれか1つに記載の方法。
AJ.前記化合物がダラプラジブである、段落AD~AIのいずれか1つに記載の方法。
AK.前記化合物がリラプラジブである、段落AD~AIのいずれか1つに記載の方法。
AL.前記化合物がAA39-2である、段落AD~AIのいずれか1つに記載の方法。
AM.前記化合物がML256である、段落AD~AIのいずれか1つに記載の方法。
AN.投与が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、トポイソメラーゼII阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗エストロゲン薬、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン薬、LHRHアゴニスト、コルチコステロイドホルモン、DNAアルキル化剤、タキサン、ビンカアルカロイド、微小管毒、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落AD~AMのいずれか1つに記載の方法。
【0095】
AO.投与が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、八面体白金(IV)化合物、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、テモゾロミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)、フルダラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド(VP-16)、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、プレドニゾン、デキサメタゾン、L-アスパラギナーゼ、ダクチノマイシン、サリドマイド、トレチノイン、イマチニブ(グリベック)、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、リツキシマブ(リツキサン)、ベバシズマブ(アバスチン)、イピリムマブ、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、およびこれらの任意の2種以上の組合せからなる群から選択される化学療法剤の投与をさらに含む、段落AD~ANのいずれか1つに記載の方法。
【0096】
AP.投与が、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与を含む、段落AD~AOのいずれか1つに記載の方法。
AQ.対象に有効量の化合物を経口投与するステップを含む、段落AD~APのいずれか1つに記載の方法。
AR.投与が、新生物内へのまたは新生物の近位への化合物の注射を含む、段落AD~AQのいずれか1つに記載の方法。
以下の特許請求の範囲において、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、他の実施形態が記載される。
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【配列表】
2022540921000001.app
【国際調査報告】