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特表2022-540925熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法
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  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図1
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図2
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図3
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図4
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図5
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図6
  • 特表-熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】熱管理システム、車両、および熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20220912BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20220912BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20220912BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20220912BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220912BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60L58/26 ZHV
B60L58/27
B60K1/00
B60K1/04 Z
B60K11/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502598
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020070196
(87)【国際公開番号】W WO2021009309
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019210575.0
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハルト エーザー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ブレットナー
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ディリンガー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォイルナー
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC22
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD09
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
車両において使用するための熱管理システム(2)であって、バッテリ(10)のための第1の冷却回路(4)と、車両を駆動するための電気モータ(12)のための第2の冷却回路(6)との間のインターフェースにある多位置弁(14)により、2つの冷却回路(4,6)の冷却液の流れを、必要に応じて互いに混合させることができる、熱管理システム(2)が提案される。さらに、そのような熱管理システムを有する車両と、そのような熱管理システムの2つの冷却回路(4,6)を動作させるための方法とが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において使用するための熱管理システム(2)であって、
当該熱管理システム(2)は、バッテリ(10)のための第1の冷却回路(4)と、前記車両を駆動するための電気モータ(12)のための第2の冷却回路(6)とを含み、
2つの前記冷却回路(4,6)は、多位置弁(14)により、
前記システム(2)の第1のモードにあって、かつ前記多位置弁(14)の第1の弁位置では、互いに直列に接続され、
前記システム(2)の第2のモードにあって、かつ前記多位置弁(14)の第2の弁位置では、互いに並列に接続され、
前記システム(2)の第3のモードにあって、かつ第3の弁位置では、前記多位置弁(14)が中間位置をとり、前記中間位置において、2つの前記冷却回路(4,6)の冷却液の流れが必要に応じて互いに混合され、
前記多位置弁(14)は、5ポート3位置弁の形態で構成されており、
前記5ポート3位置弁は、ラジエータ(24)を迂回するための前記第2の冷却回路(6)のバイパス経路(20)と、前記バイパス経路(20)に対して並列な、前記ラジエータ(24)を有する経路(22)とに流体的に接続されており、
前記バイパス経路(20)および前記ラジエータ経路(22)は、前記電気モータ(12)の下流のノード(KP)から延在する
ことを特徴とする、熱管理システム(2)。
【請求項2】
前記第3の弁位置は、複数の可能な中間位置から設定可能である、請求項1記載の熱管理システム(2)。
【請求項3】
個々の前記中間位置は、段階的または無段階に設定可能である、請求項2記載の熱管理システム(2)。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の熱管理システム(2)を有する、車両。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項記載の熱管理システム(2)の2つの冷却回路(4,6)を動作させるための方法であって、
バッテリ(10)のための第1の冷却回路(4)と、車両を駆動するための電気モータ(12)のための第2の冷却回路(6)とが設けられ、
2つの前記冷却回路(4,6)は、多位置弁(14)により、
前記システム(2)の第1のモードにあって、かつ前記多位置弁(14)の第1の弁位置では、互いに直列に接続され、
前記システム(2)の第2のモードにあって、かつ前記多位置弁(14)の第2の弁位置では、互いに並列に接続され、
前記システム(2)の第3のモードにあって、かつ第3の弁位置では、前記多位置弁(14)が中間位置に切り替えられ、前記中間位置において、2つの前記冷却回路(4,6)の冷却液の流れが必要に応じて互いに混合され、
前記多位置弁(14)として、5ポート3位置弁が使用され、
前記5ポート3位置弁は、ラジエータ(24)を迂回するための前記第2の冷却回路(6)のバイパス経路(20)と、前記バイパス経路(20)に対して並列な、前記ラジエータ(24)を有する経路(22)とに流体的に接続され、
前記バイパス経路(20)および前記ラジエータ経路(22)は、前記電気モータ(12)の下流のノード(KP)から延在する
ことを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記第3の弁位置は、複数の可能な中間位置から設定される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
個々の前記中間位置は、段階的または無段階に設定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記システムの第4のモード(またはバイパスモード)および/または第5のモードが設定され、
前記第4のモードでは、前記バッテリ(10)を加熱するために冷却液が前記バイパス経路(20)を介して導かれ、
これに対して、前記第5のモードでは、前記バッテリ(10)を除熱するために冷却液が前記ラジエータ経路(22)を介して導かれる、
請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項5から8までのいずれか1項記載の方法を実行するための、コンピュータプログラム。
【請求項10】
プログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品であって、
前記プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ記録媒体上に格納されており、コンピュータ上で実行されると請求項5から8までのいずれか1項記載の方法を実行する、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において使用するための熱管理システムに関する。本発明はさらに、そのような熱管理システムを有する車両に関する。本発明はさらに、そのような熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法に関する。
【0002】
車両とは、バッテリの温度調整のための少なくとも1つの第1の冷却回路と、電気モータおよびパワーエレクトロニクスの温度調整のための少なくとも1つの第2の冷却回路とを有する任意の種類の車両であるとして理解されるべきである。これは、部分電気自動車または完全電気自動車であり得るが、とりわけ、乗用車および/または商用車であり得る。
【0003】
このような車両では、2つの別々の冷却回路または水回路が必要である。第1の冷却回路または水回路は、バッテリを温度調整するために比較的低温で動作され、その一方で、第2の冷却回路または水回路は、電気モータおよびパワーエレクトロニクスを温度調整するために比較的高温で動作される。複雑な閉ループ制御戦略は、これらのコンポーネントが後々動作中に過熱することなく、各自の最適温度までできるだけ急速に加熱されることを保証する責任がある。
【0004】
上記の形式の熱管理システムは、欧州特許第2392486号明細書から公知である。
【0005】
本発明の基礎となる課題は、このような熱管理システムを改善することである。
【0006】
上記の課題は、請求項1によって保護下に置かれている熱管理システムによって解決される。さらに、そのような熱管理システムを有する車両と、熱管理システムを動作させるための方法とが提案され、保護下に置かれる(請求項4および請求項5を参照)。さらに、コンピュータプログラムと、コンピュータプログラム製品とが保護下に置かれる(請求項9および請求項10を参照)。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
車両において使用するための熱管理システムであって、当該熱管理システムは、バッテリのための第1の冷却回路と、車両を駆動するための電気モータのための第2の冷却回路とを含む、熱管理システムが提案される。2つの冷却回路は、多位置弁により、システムの第1のモードにあって、かつ多位置弁の第1の弁位置では、互いに直列に接続されており(直列接続モード)、システムの第2のモードにあって、かつ多位置弁の第2の弁位置では、互いに並列に接続されている(並列接続モード)。
【0008】
システムの第3のモードにあって、かつ第3の弁位置では、多位置弁が中間位置をとり、中間位置において、2つの冷却回路の冷却液の流れが必要に応じて互いに混合されるようにすることが提案される(必要に応じた混合モード)。
【0009】
このような必要に応じた混合によれば、直列接続モードと並列接続モードとの間の切り替え時に発生し、かつ急激な温度変化および圧力変化の形態で表れるような、システムの急激な移行挙動を経験することなく、電気モータ冷却回路からの排熱または損失熱を、有利にはバッテリ冷却回路に排出することが可能となる。さらに、電気モータが急速に加熱される非定常走行時に、直列接続モードと並列接続モードとが頻繁に切り替わることを回避することができる。
【0010】
したがって、そのような必要に応じた混合により、電気モータ冷却回路とバッテリ冷却回路との両方の温度調整が改善される。
【0011】
第3の弁位置は、複数の可能な中間位置から設定可能である。個々の中間位置は、段階的(または不連続的)または無段階(または連続的)に設定可能である。無段階に設定可能であることにより、電気モータ冷却回路とバッテリ冷却回路との両方の温度の閉ループ制御が支援される。
【0012】
一実施形態では、多位置弁は、4ポート2位置弁の形態で構成可能である。この場合には、第2の冷却回路(または電気モータ冷却回路)において電気モータの下流に、さらなる多位置弁が設けられており、このさらなる多位置弁は、冷却液の流れを選択的に、ラジエータ(または冷却器)を有する経路またはラジエータ経路を介して導き、かつ/またはこの経路に対して並列な、ラジエータを迂回するための経路またはバイパス経路を介して導く。このさらなる多位置弁も、複数の可能な位置-すなわち、終了位置および中間位置-に段階的または無段階に設定可能であり得る。このさらなる多位置弁は、3ポート2位置弁の形態で構成可能である。
【0013】
これに代わる実施形態では、多位置弁を、5ポート3位置弁(5/3-Wegeventil)の形態で構成することができ、5ポート3位置弁は、ラジエータ(または冷却器)を迂回するための第2の冷却回路(または電気モータ冷却回路)のバイパス経路と、バイパス経路に対して並列な、ラジエータ(または冷却器)を有する経路またはラジエータ経路とに流体的に接続されており、バイパス経路およびラジエータ経路は、電気モータの下流のノードから延在する。
【0014】
さらに、上記の形式の熱管理システムを有する車両も提案される。
【0015】
さらに、上記の形式の熱管理システムの2つの冷却回路を動作させるための方法であって、バッテリのための第1の冷却回路と、車両を駆動するための電気モータのための第2の冷却回路とが設けられる、方法が提案される。2つの冷却回路は、多位置弁により、システムの第1のモードにあって、かつ多位置弁の第1の弁位置では、互いに直列に接続され、システムの第2のモードにあって、かつ多位置弁の第2の弁位置では、互いに並列に接続される。
【0016】
システムの第3のモードにあって、かつ第3の弁位置では、多位置弁が中間位置に切り替えられ、中間位置において、2つの冷却回路の冷却液の流れが必要に応じて互いに混合されるようにすることが提案される。
【0017】
第3の弁位置は、複数の可能な中間位置から設定される。個々の中間位置は、段階的または無段階に設定可能である。
【0018】
第1の実施形態では、多位置弁として4ポート2位置弁が使用される。この場合には、第2の冷却回路(または電気モータ冷却回路)において電気モータの下流に、さらなる多位置弁が使用され、このさらなる多位置弁により、冷却液の流れが選択的に、ラジエータ(または冷却器)を有する経路またはラジエータ回路を介して導かれ、かつ/またはこの経路に対して並列な、ラジエータを迂回するための経路またはバイパス経路を介して導かれる。このさらなる多位置弁も、複数の可能な位置-すなわち、終了位置および中間位置-に段階的または無段階に設定可能であり得る。このさらなる多位置弁のために、3ポート2位置弁を使用することができる。
【0019】
これに代わる第2の実施形態では、多位置弁として、5ポート3位置弁が使用され、5ポート3位置弁は、-ラジエータ(または冷却器)を迂回するための-第2の冷却回路(または電気モータ冷却回路)のバイパス経路と、バイパス経路に対して並列な、ラジエータ(または冷却器)を有する経路またはラジエータ経路とに流体的に接続され、バイパス経路およびラジエータ経路は、電気モータの下流のノードから延在する。
【0020】
第1の実施形態または第2の実施形態によれば、さらに有利には、システムの第4のモードおよび/または第5のモードを設定することができる。システムの第4のモード(またはバイパスモード)では、バッテリを加熱するためにラジエータ経路を迂回することができる。これに対して、システムの第5のモードでは、バッテリの過熱を阻止するために、ラジエータ経路を介してバッテリ回路を除熱することができる。
【0021】
さらに、上記の方法を実行するためのコンピュータプログラムが提案される。コンピュータプログラムは、簡単な手段によって制御エレクトロニクスまたは制御ユニットに読み込み可能であり、その後、上記の熱管理システムを相応に制御するために使用可能である。
【0022】
制御エレクトロニクスは、メモリシステムおよびバスシステムにデータ接続されたデジタルマイクロプロセッサユニット(CPU)と、メインメモリ(RAM)と、メモリ手段とを有することができる。CPUは、メモリシステムに格納されたプログラムとして実装された命令を処理し、データバスから入力信号を取得し、出力信号をデータバスに出力するように構成されている。メモリシステムは、磁気、固体、および他の不揮発性の媒体の形態の種々のメモリ媒体を有することができ、このメモリ媒体上に、本方法および有利な実施形態を実行するための対応するコンピュータプログラムが格納されている。プログラムは、本明細書で説明されている方法を具体化または実行することができるように構成可能であり、これにより、CPUは、そのような方法のステップを実行して、上記の熱管理システムを制御することができる。
【0023】
さらに、プログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ記録媒体上に格納されており、コンピュータ上で実行されると上記の方法を実行する、コンピュータプログラム製品が提案される。
【0024】
以下では、図面の表現を参照しながら本発明について詳細に説明する。従属請求項と、好ましい実施形態についての以下の説明から、本発明のさらなる有利な発展形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】提案されている第1の実施形態における熱管理システムを示す図である。
図2図1に示されている熱管理システムの抜粋を示す図である。
図3】提案されている第2の実施形態における熱管理システムを示す図である。
図4】提案されている第1の実施形態の4ポート2位置弁における体積流量の第1および第2の図示である。
図5】第1の実施形態の3ポート2位置弁における体積流量の第3の図示である。
図6】提案されている第2の実施形態の5ポート3位置弁における体積流量の第1および第2の図示である。
図7】第2の実施形態の5ポート3位置弁における体積流量の第3の図示である。
【0026】
図1および図2による熱管理システム2は、バッテリ10のための第1の冷却回路4と、車両を駆動するための電気モータ12のための第2の冷却回路6と、空調設備の冷媒回路8とを示す。車両は、例えば、バッテリ式の電気自動車(Battery Electric Vehicle,略してBEV)、ハイブリッド式の電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,略してHEV)、または燃料電池式の電気自動車(Fuel Cell Electric Vehicle,略してFCEV)であり得る。これらの3つの異なる回路4,6,8は、ある程度、互いに統合されている。2つの冷却回路4,6には、それぞれの流体が独自の電気ポンプ16,17によって圧送される。
【0027】
電気モータ12およびパワーエレクトロニクスLEは、約85℃の冷却液温度または冷却水温度で動作されることが求められている。これに対して、バッテリ10またはバッテリセルは、20℃~40℃の間の所定の冷却液温度枠内または冷却水温度枠内において動作されることが求められている。というのも、このことにより、バッテリ10の最適な動作温度範囲が保証されるからである。バッテリ10または個々のバッテリセル自体の温度は、40℃の温度閾値を完全に超えてしまう可能性がある。したがって、2つの冷却回路4,6が必要とされる。両方の冷却回路4,6は、熱の吸収と熱の排出との両方が可能でなければならない。バッテリ冷却回路4は、熱交換器Ch(図1Chiller,略してChを参照)を介して冷媒回路8に対して除熱され、その一方で、電気モータ冷却回路6は、ラジエータまたは冷却器24を介して周囲に対して冷却可能であり、かつ以下で説明される多位置弁(Coolant Flow Control Valve,略してCFCV)を介してバッテリ冷却回路4に対して除熱可能であり、この場合、多位置弁14は、バッテリ冷却回路4と電気モータ冷却回路6との間のインターフェースとなっている。バッテリ冷却回路4の除熱を、多位置弁14の対応する弁位置においてラジエータまたは冷却器24を介して実施することも可能である。しかしながら、バッテリ冷却液は40℃の温度を超えるべきではないので、ラジエータ24を介した除熱は十分ではないことが多く、したがって、熱交換器Chを介して熱を放散する必要がある。電気モータ冷却回路6では、電気モータ12およびパワーエレクトロニクスLEに加えてさらに充電器(Charger,略してC)も冷却されるべきである。それぞれの冷却回路4,6を閉ループ制御するために、それぞれ1つの温度センサCTSが設けられている。バッテリ冷却回路4には、さらに抵抗加熱器PTCが設けられている。電気モータ12は、水冷却または油冷却されている。後者の油冷却の場合には、電気モータ12の対応する油冷却回路が、-ここには図示されていない-熱交換器によってモータ冷却回路6に接続されている。
【0028】
熱管理システム2は、多位置弁14によって複数の異なるモードで動作可能である。多位置弁14は、いわゆるアクチュエータユニットまたは冷却水制御弁ユニットの一部であり、このアクチュエータユニットまたは冷却水制御弁ユニット自体は、電気サーボモータを有する駆動ユニットと、電気サーボモータを制御するための制御ユニットも含む。
【0029】
システムの第1のモード(Use Case 1,略してUC1=最大の熱回収を伴う直列接続R)であって、かつ多位置弁14の第1の弁位置では、冷却回路4を冷却回路6に対して直列に接続することができる。この場合には、多位置弁14に関して、冷却液は、流入口または入口aを介して冷却回路6から、流出口または出口cを介して冷却回路4へと流れ、最後に、流入口または入口dを介して冷却回路4から、流出口または出口bを介して冷却回路6へと戻るように流れる。
【0030】
この直列接続は、電気モータ12およびパワーエレクトロニクスLEの排熱を利用してバッテリ冷却回路4の急速な加熱をもたらす。したがって、電気モータ冷却回路6は、加熱回路の機能も有している。
【0031】
システムの第2のモード(Use Case 2,略してUC2=過熱保護を伴う並列接続P)であって、かつ多位置弁14の第2の弁位置では、冷却回路4を冷却回路6に対して並列に接続することができ、したがって、2つの冷却回路4,6は、流体的に互いに分離されている。この分離は、バッテリ10を過熱から保護する。
【0032】
さらに、システムの第3のモード(Use Case 3,略してUC3=選択的な熱回収を伴う混合モードM)も提案され、この第3のモードでは、多位置弁14が中間位置-すなわち、第3の弁位置-に切り替えられており、この第3の弁位置では、2つの冷却回路4,6の冷却液の流れが必要に応じて互いに混合される。
【0033】
このような混合モードにより、バッテリ10の温度と電気モータ12の温度との両方をより正確に閉ループ制御することが可能となる。直列接続モードRと並列接続モードとの間の切り替えが行われないので、2つの冷却回路4,6には、顕著な圧力急変および温度急変が生じない。
【0034】
第1の実施形態(図1図2を参照)では、多位置弁14が、4ポート2位置弁の形態で構成されており、この4ポート2位置弁を介して、上記のシステムモードおよび弁位置を設定または制御することができる。冷却回路6において電気モータ12の下流に、3ポート2位置弁の形態のさらなる多位置弁18がさらに設けられており、この多位置弁18の流出口または出口aは、4ポート2位置弁14の流入口または入口aに流体的に接続されている。多位置弁18も、さらなるアクチュエータユニットまたは冷却水制御弁ユニットの一部であり、このアクチュエータユニットまたは冷却水制御弁ユニット自体は、電気サーボモータを有する駆動ユニットと、電気サーボモータを制御するための制御ユニットも含む。
【0035】
3ポート2位置弁18によって、冷却液の流れを選択的に、ラジエータまたは冷却器24を有する経路22を介して導くことができ、かつ/またはこの経路22に対して並列な、ラジエータ24を迂回するための経路20-バイパス経路20-を介して導くことができる。
【0036】
図4は、第1の実施形態の4ポート2位置弁に関連して設定することができる体積流量VSを示す。上側の線図では、入口aと2つの出口b,cとが考慮される。これに対して、下側の線図では、入口dと2つの出口b,cとが考慮される。これら2つの線図には、それぞれ体積流量に関して顕著な変化を有していない左側および右側の領域が示されている。左側の領域は、UC1モードまたは直列接続Rを表している。これに対して、右側の領域は、UC2モードまたは並列接続Pを表している。
【0037】
冷却回路4,6の冷却液の流れを必要に応じて混合させるために(混合モードM=UC3)、これらの2つのモードの間で、弁14の複数の中間位置を有する中央の領域を制御することができる。基本的に、離散的な中間位置を段階的に設定することができる。これに代えて、バッテリ10の温度と電気モータ12の温度との両方のさらに正確な閉ループ制御を可能にするために、中間位置を、中央の領域全体にわたって無段階または連続的に設定することもできる。
【0038】
これに代わる第2の実施形態(図3を参照)では、多位置弁14が、5ポート3位置弁の形態で構成されている。この場合には、5ポート3位置弁の、図3の平面から突出する流入口または入口eも想定する必要があり、この流入口または入口e自体は、バイパス経路20を介して電気モータ12下流のノードKP(またはノードKPの流出口a)に流体的に接続されており、このノードKPから、バイパス経路20と、このバイパス経路20に対して並列な、ラジエータ24を有する経路22との両方が延在する。ラジエータ経路22は、ノードKP(またはノードKPの流出口c)を5ポート3位置弁の流入口または入口aに流体的に接続する。
【0039】
図6は、-図4と同様に-第2の実施形態の5ポート3位置弁に関連して設定することができる体積流量VSを示す。上側の線図では、入口aと2つの出口b,cとが考慮される。これに対して、下側の線図では、入口dと2つの出口b,cとが考慮される。これら2つの線図にも、体積流量に関して顕著な変化を有していない左側および右側の領域が示されている。左側の領域は、UC1モードまたは直列接続Rを表している。これに対して、右側の領域は、UC2モードまたは並列接続Pを表している。
【0040】
冷却回路4,6の冷却液の流れを必要に応じて混合させるために(混合モードM=UC3)、これらの2つのモードの間で、弁14の複数の中間位置を有する中央の領域を制御することができる。上記と同様に、基本的に、離散的な中間位置を段階的に設定することができる。これに代えて、バッテリ10の温度と電気モータ12の温度との両方のさらに正確な閉ループ制御を可能にするために、中間位置を、中央の領域全体にわたって無段階または連続的に設定することもできる。
【0041】
提案されている2つの実施形態に関して、追加的な経路20により、(第1の実施形態による)3ポート2位置弁18の対応する弁位置において、または(第2の実施形態による)5ポート3位置弁の対応する弁位置において-システムの第4のモード(Use Case 4,略してUC4=液圧抵抗の減少&最大の熱回収を伴うバイパスモードB)を設定することができ、この第4のモードでは、液圧抵抗が減少し、それと同時に、バッテリ10を加熱するための最大の熱回収が可能となる。
【0042】
これに対して、これに加えてまたはこれに代えて、経路22を介して、3ポート2位置弁18(第1の実施形態)または5ポート3位置弁(第2の実施形態)の対応する弁位置において、システムの第5のモード(Use Case 5,略してUC5=選択的な過熱保護)を設定することもでき、この第5のモードでは、ラジエータ24を介した除熱によってバッテリ10の過熱が回避される。
【0043】
図5の線図は、第1の実施形態の3ポート2位置弁に関連して設定することができる体積流量VSを示し、これに対して、図7の線図は、第2の実施形態の5ポート3位置弁に関連して設定することができる体積流量VSを示す。図5では、3ポート2位置弁の入口bと2つの出口a,cとが考慮される。これに対して、図7では、5ポート3位置弁の入口a,eを通過する体積流量VSが示されており、より具体的には、電気モータ12の下流のノードKPへの流入口bを通過する体積流量VSから出発して示されており、なお、ノードKPから、バイパス経路20およびラジエータ経路22が延在する。
【0044】
図7の線図は、図5の線図に比べて圧縮されている。これは、第2の実施形態の場合、第1の多位置弁から独立して切り替えることができる第2の別個の多位置弁が設けられていないことに基づく。その限りにおいて、図7を参照すると、調整自由度がある程度省略されているので、入口aの閉弁に付随して入力eの開弁が生じ、逆もまた同様である。
【0045】
前述の説明では、例示的な実施形態について述べられているが、多数の修正が可能であることに留意すべきである。さらに、例示的な実施形態は、保護範囲、用途、および構造を制限することを決して意図しない単なる例であることに留意すべきである。むしろ、前述の説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するためのガイドラインを当業者に提供するものであり、とりわけ、記載されている構成要素の機能および配置に関して、特許請求の範囲およびその均等な特徴の組み合わせから生じるような保護範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】