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特表2022-540927タービン電気推進用非対称24パルス単巻変圧器整流器ユニット、並びに関連するシステム及び方法
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  • 特表-タービン電気推進用非対称24パルス単巻変圧器整流器ユニット、並びに関連するシステム及び方法 図1A
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  • 特表-タービン電気推進用非対称24パルス単巻変圧器整流器ユニット、並びに関連するシステム及び方法 図15
  • 特表-タービン電気推進用非対称24パルス単巻変圧器整流器ユニット、並びに関連するシステム及び方法 図16
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】タービン電気推進用非対称24パルス単巻変圧器整流器ユニット、並びに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20220912BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220912BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
H02M7/06 U
H02M7/06 P
H01F27/28 K
H01F30/12 N
H01F30/12 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502841
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020030440
(87)【国際公開番号】W WO2021011052
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/874,782
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501220547
【氏名又は名称】エルデック・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】シットン,トラビス
(72)【発明者】
【氏名】ファーマンチク,カズ
【テーマコード(参考)】
5E043
5H006
【Fターム(参考)】
5E043AA01
5E043BA03
5E043EA08
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC04
5H006CC05
5H006CC08
(57)【要約】
本明細書では、タービン電気推進用の非対称AC/DC単巻変圧器、並びに関連するシステム及び方法を述べる。一実施形態では、非対称AC/DC単巻変圧器は、デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイル(各コイルは、この対応する入力相で励磁される)、並びに第1のコイルに結合された第1の複数の補正巻線、第2のコイルに結合された第2の複数の補正巻線、及び第3のコイルに結合された第3の複数の補正巻線を備える。複数の整流器を有するブリッジ整流器は、それぞれの個々の補正巻線に結合される。個々の補正巻線の相は、個々の相電圧が逆入力相に対して制御されるように、非対称である。電圧は中性点に対して不平衡である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
非対称単巻変圧器と、ブリッジ整流器とを備え、
前記変圧器は、
対応する入力相で励磁される、デルタ巻線の第1~第3のコイルと、
前記第1のコイルに結合された第1の複数の補正巻線と、
前記第2のコイルに結合された第2の複数の補正巻線と
前記第3のコイルに結合された第3の複数の補正巻線とを有し、
前記ブリッジ整流器は、それぞれの個々の補正巻線に結合された複数の整流器を有し、
前記個々の補正巻線の相は、個々の相電圧が逆入力相に対して制御されるように非対称であり、電圧は中性点に対して不平衡である、システム。
【請求項2】
各複数の補正巻線は、3つの個別巻線を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各複数の補正巻線のタップ位置は、デルタ巻線の各対応するコイルを4つのセグメントに分離する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ブリッジ整流器は、この対応するダイオードの入力で12のAC相を受信し、前記ブリッジ整流器はDC電圧を出力する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ブリッジ整流器は、
前記入力相のAC電圧を整流するように構成された主整流器と
前記補正巻線のAC電圧を整流するように構成された2次整流器とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記主整流器がDC電力の約66%を供給し、前記2次整流器がDC電力の約34%を供給する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記デルタ巻線がトリプレン高調波のための低インピーダンスパスを構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ブリッジ整流器において、個々の相電圧は、ある相から次の隣接する相まで約15度のオフセットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルを有する単巻変圧器の設計方法であって、
前記方法は、巻数選択ステップ、タップ位置選択ステップ、ベクトル図構成ステップ、線を引くステップ、巻数比決定ステップ、及び巻数決定ステップを備え、
前記巻数選択ステップは、デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルの巻数を選択するステップであり、
前記タップ位置選択ステップは、前記デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルのそれぞれに沿って、補正巻線のための3つのタップ位置を選択するステップであり、前記タップ位置は、前記第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルそれぞれを4つのセグメントに分割し、
前記ベクトル図構成ステップは、3相入力の入力相間の巻数に比例した脚の長さを持つ正三角形を用いて変圧器のベクトル図を構成するステップであり、前記三角形の各辺は前記デルタ巻線の完全なコイルを表し、
前記線を引くステップは、前記デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルに沿って、各タップ位置から個々の補正巻線を表す線を引くステップであり、各線は、前記補正巻線に巻きつけられた前記コイルの相に相当する相及び補正巻線の巻数に比例する長さを有する第1の複数のベクトルのベクトルとして表され、前記第1の複数のベクトルの各ベクトルは、前記三角形の辺の1つと平行し、
前記巻数比決定ステップは、前記第1の複数のベクトルの対応するベクトルの前記長さによって、各補正巻線の巻数比を決定するステップであり、並びに
前記巻数決定ステップは、各補正巻線の巻数を、前記巻数比と前記デルタ巻線の完全なコイルの巻数の積として決定するステップを含む、方法。
【請求項10】
前記単巻変圧器の出力相を決定するステップをさらに備え、
前記出力相を決定するステップは、
各補正巻線ベクトルの端から前記正三角形の反対側の頂点まで、第2の複数のベクトルのベクトルを描くステップと
前記第2の複数のベクトルの前記対応するベクトルの長さによって、前記個々の補正巻線の出力相を決定するステップとによって前記出力相を決定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各補正巻線の出力相は、前記三角形の反対側の頂点によって表される相に対する、前記対応する出力相の振幅に比例する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記単巻変圧器の出力電圧は、相間電圧として制御され、相-中性点間電圧としては制御されない、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
隣接するブリッジ整流器伝導対は、約15度ずつ間隔をあけられる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った前記4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.24、N3=0.42、及びN4=0.17の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.13及びN7=0.18の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.42、N3=0.11、及びN4=0.30の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.18、N6=0.13及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.11、N3=0.29、及びN4=0.30の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.24、N3=0.29、及びN4=0.30の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.29、N3=0.24、及びN4=0.17の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.29、N3=0.11、及びN4=0.30の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.11、N3=0.42、及びN4=0.17の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.13及びN7=0.18の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.42、N3=0.24、及びN4=0.17の巻数比を有し、
個々の補正巻線が、N5=0.18、N6=0.13及びN7=0.13の巻数比を有し、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2019年7月16日に出願された米国仮特許出願第62/874782号の優先権を主張するものであり、該仮特許出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
現代の航空機は、搭載するアクチュエータにますます電気を使用している。さらに、全く新しいカテゴリーの、電気で駆動する航空機エンジンが開発されている。結果として、電気航空機の構造のために、AC/DCコンバータの電力品質を向上させるべきである。
【0004】
ある従来のシステムは、六角形の巻線構成に依拠し、DC電圧に変換される12のAC相を確立する(24パルス整流が可能)。しかし、このような従来のシステムでは、トリプレン高調波が発生しやすく、航空宇宙産業用途での使用には限界がある。トリプレン高調波とは、3相システムで共相(co-phasal)になる奇数調波である。このような高調波は、第3高調波、第9高調波、第15高調波などである。これらの高調波は共相であるため、3相システムで相殺されず、循環させるためにリターン路やデルタループが必要となる。これらが備えられていない場合、トリプレン高調波電流の存在により、電圧の不均等や過剰な電力消散などの問題を引き起こす。トリプレン高調波を緩和するためには、典型的には、巻線を追加したり、コアを大きくしたりする必要があり、結果的に、重量が増加し、効率が低下する。一方で、1相あたり8つの巻線を必要とする従来の単巻変圧器の構成では、トリプレン高調波を緩和するためには、1相あたり9つの巻線が必要となる。従来の単巻変圧器では、1相あたり追加の巻線を必要とし、トリプレン高調波緩和専用のデルタ巻線を形成し、トリプレン高調波電流の低インピーダンスパスを設ける。
【0005】
他の従来の設計では、デルタ巻(delta-wound)の対称単巻変圧器に基づき、3つの入力相から12の出力相を複数のブリッジ整流器に供給し、24パルスのAC/DC変換を可能にする。デルタ巻対称アプローチでは、相は中性点に対して均一な振幅とフェージングを有するように設計されている。デルタ巻対称アプローチは、固有のトリプレン高調波緩和により低電流歪みを実現するが、相間変圧器を追加する必要がある。相間変圧器は、負荷に供給されるすべての電力を処理する単巻変圧器を必要とし、これによって、非対称電力処理技術と比較して重量と効率の面でペナルティが発生する。結果として、対称ソリューションは、航空宇宙産業用途で許容可能な重量と効率よりも、重量が増え、効率が低下する。
【0006】
要するに、上記の従来のアプローチは、1つ又は複数の下記の欠点に悩まされている。つまり、固有のトリプレン高調波緩和がない、1コア脚あたり8つ以上の巻線を必要とする複雑な組立プロセス、高重量、及び低効率であることである。一方で、24パルス未満の様態を設けるAC/DCコンバータ、例えば、現代の航空宇宙産業用途で一般的な18パルスや12パルスのATRUは、軽量、高効率、及び固有のトリプレン高調波緩和を備えたものがある。しかし、これらの18パルス及び12パルスATRUは、24パルス変換によって提供される高い電力品質と低電流歪み(全高調波歪み又はTHDi<5%)を提供することはできない。従って、航空宇宙産業用途のニーズに対応するために、許容可能な重量と動作効率を備える24パルス変換とトリプレン高調波緩和を提供できるAC/DCコンバータのシステムと方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本概要は、以下の「詳細な説明」でさらに記載される概念の選択を簡略化して紹介するために提供される。本概要は、クレームされた主題の主要な特徴を特定することを意図したものではなく、また、クレームされた主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【0008】
本発明技術により、3相AC電圧から、平均入力相-中性点間RMS電圧の振幅の約2.35倍の振幅のDC電圧に変換することが可能になる。例えば、本技術では、現代の航空宇宙産業用電力システムで一般的に使用されている230ボルトのAC入力から公称540ボルトのDC出力を実現する。出力電圧は入力電圧に比例する。
【0009】
本発明技術は、単巻変圧器と整流器を組み合わせて、24パルスの単巻変圧器整流器ユニット(Auto-Transformer Rectifier Unit、ATRU)を形成する。24パルス整流に必要な12相のうち3相を提供するために、3つの入力相をブリッジ整流器の3つのノードに直接供給することができる。3つの入力相をブリッジ整流器に直接接続することによって形成される電力経路は、ATRUが処理する電力の大部分(例えば、電力の約3分の2又は約66%)を処理する。この電力経路によって、単巻変圧器のサイズを大幅に減少させることが可能になる。単巻変圧器は、デルタ構成を形成する、3つのコイルで構成されている。また、3つの入力相も単巻変圧器のデルタコイルに供給される。
【0010】
各コイルは、複数の直列巻線を含む。デルタ巻単巻変圧器の3つのコイルのそれぞれは、デルタの辺を形成する4つの直列巻線及び3つの補正巻線を含んでもよい。合わせて9つの補正巻線は、組み合わされた24パルス動作のために、3つの入力相に対して適切な振幅とフェージングを有する9つの出力点を提供する(補正巻線からの9相、及び入力相からの3相)。これらの12相はブリッジ整流器によって直接24パルスに整流され、従来の既知のシステムで一般的に使用されている相間変圧器(Interphase Transformers、IPTs)を追加する必要はない。
【0011】
一実施形態では、システムは、以下を有する非対称単巻変圧器を含む。デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイル(各コイルはこの対応する入力相で励磁される)、前記第1のコイルに結合された第1の複数の補正巻線、前記第2のコイルに結合された第2の複数の補正巻線、並びに前記第3のコイルに結合された第3の複数の補正巻線。また、システムは、それぞれの個々の補正巻線に結合された複数の整流器を有するブリッジ整流器を含み、前記個々の補正巻線の相は、個々の相電圧が逆入力相に対して制御されるように非対称であり、電圧は中性点に対して不平衡である。
【0012】
一態様では、各複数の補正巻線は、3つの個別巻線を含む。別の態様では、各複数の補正巻線のタップ位置は、デルタ巻線の各対応するコイルを4つのセグメントに分離する。
【0013】
一態様では、ブリッジ整流器は、この対応するダイオードの入力で12のAC相を受信し、ブリッジ整流器はDC電圧を出力する。別の態様では、前記ブリッジ整流器は以下を含む。前記入力相のAC電圧を整流するように構成された主整流器、及び前記補正巻線のAC電圧を整流するように構成された2次整流器。一態様では、前記主整流器がDC電力の約66%を供給し、前記2次整流器がDC電力の約34%を供給する。
【0014】
一態様では、前記デルタ巻線がトリプレン高調波のための低インピーダンスパスを構成する。別の態様では、前記ブリッジ整流器において、個々の相電圧は、ある相から次の隣接する相まで約15度のオフセットである。
【0015】
一実施形態では、デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルを有する単巻変圧器の設計方法は以下を含む。
デルタ巻線の第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルの巻数を選択するステップ、前記デルタ巻線の前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれに沿って、補正巻線のための3つのタップ位置を選択するステップ(前記タップ位置は、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれを4つのセグメントに分割する)、3相入力の入力相間の巻数に比例した脚の長さを持つ正三角形を用いて変圧器のベクトル図を構成するステップ(前記三角形の各辺はデルタ巻線の完全なコイルを表す)。
また、前記方法は前記デルタ巻線の前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルに沿って、各タップ位置から個々の補正巻線を表す線を引くステップを含む。各線は、前記補正巻線に巻きつかれた前記コイルの相に相当する相及び補正巻線の巻数に比例する長さを有する第1の複数のベクトルのベクトルとして表され、前記第1の複数のベクトルの各ベクトルは、前記三角形の辺の1つと平行する。
また、前記方法は、前記第1の複数のベクトルの対応するベクトルの前記長さによって各補正巻線の巻数比を決定するステップ、及び各補正巻線の巻数を、巻数比と前記デルタ巻線の完全なコイルの巻数の積として決定するステップを含む。
【0016】
一態様では、また、前記方法は、以下のステップによって単巻変圧器の出力相を決定するステップを含む。各補正巻線ベクトルの端から前記正三角形の反対側の頂点まで、第2の複数のベクトルのベクトルを描くステップ、及び前記第2の複数のベクトルの前記対応するベクトルの長さによって、前記個々の補正巻線の出力相を決定するステップ。
【0017】
一態様では、各補正巻線の出力相は、前記三角形の反対側の頂点によって表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する。
【0018】
他の態様では、単巻変圧器の出力電圧は、相間電圧として制御され、相-中性点間電圧としては制御されない。
【0019】
一態様では、隣接するブリッジ整流器伝導対は、約15度ずつ間隔をあけられる。
【0020】
一態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.24、N3=0.42、及びN4=0.17の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.13及びN7=0.18の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0021】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.42、N3=0.11、及びN4=0.30の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.18、N6=0.13及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0022】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.11、N3=0.29、及びN4=0.30の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0023】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.24、N3=0.29、及びN4=0.30の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0024】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.29、N3=0.24、及びN4=0.17の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0025】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.29、N3=0.11、及びN4=0.30の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.18及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0026】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.30、N2=0.11、N3=0.42、及びN4=0.17の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.13、N6=0.13及びN7=0.18の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【0027】
別の態様では、前記デルタ巻線の個々のコイルに沿った4つのセグメントが、N1=0.17、N2=0.42、N3=0.24、及びN4=0.17の巻数比を有し、個々の補正巻線が、N5=0.18、N6=0.13及びN7=0.13の巻数比を有し、前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明技術の前述の態様及び付随する利点は、添付の図面と併せ、以下の詳細な説明を参照することにより、同様のことがよりよく理解できるようになるにつれて、より容易に理解されるであろう。
【0029】
図1A図1Aは、本発明技術の一実施形態に係るATRUを示す図である。
図1B図1Bは、本発明技術の一実施形態に係るATRUを示す図である。
図2図2は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器の巻線を示す図である。
図3図3は、図2の単巻変圧器のためのデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図4図4は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器を示す図である。
図5図5は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図6図6は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図7図7は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図8図8は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図9図9は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図10図10は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図11図11は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す図である。
図12図12は、本発明技術の実施形態に係る24パルス非対称ATRUの設計方法のフローチャートである。
図13図13は、図3に描かれたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUの3相入力電流波形をシミュレートしたグラフである。
図14図14は、図3に描かれたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUの整流器ブリッジ電流をシミュレートしたグラフである。
図15図15は、図3に描かれたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUのA相入力電圧及び電流をシミュレートしたグラフである。
図16図16は、本発明技術の一実施形態に係る実際の3相入力電流波形のグラフである。詳細な説明
【0030】
例示的実施形態を図示し説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に様々な変更が可能であることを理解されたい。
【0031】
商業航空機は、旅客機装備品電動化(More Electric Aircraft、MEA)へと進化を続けている。これは、油圧及び空圧システムの代わりに電気的なコンテンツの増加を特徴とする。パワーエレクトロニクスと高密度電気モータの分野における最近の進歩は、運用コスト削減への継続的な圧力と共に、この傾向が続くことを確実にする。さらに、航空機の電気推進は、ハイブリッド電気、ターボ・エレクトリック方式、さらには全電気パワートレインへと移行している。あるシナリオの下では、電気推進への移行により、電気システムの電力需要が40倍超増加することが予想される。
【0032】
しかし、従来の電力変換技術では、タービン電気推進のニーズに目下対応することはできない。例えば、従来のATRUは比較的高い電力変換効率と信頼性があるが、従来のATRU技術では重量と電力品質の重大なトレードオフを行わなければならない。いくつかの従来技術では、全電流高調波歪(THDi)5%未満を達成することが可能であるが、24又は30パルス設計が必要である。従来の24パルス設計では、業界をリードする12又は18パルス(7~13%のTHDiを生成する)のソリューションと比較して、約50%の重量ペナルティが発生する。これは、航空機のシステム設計者にとって、重量と電力品質の重要なトレードオフを引き起こす。MEAの既存のほとんどは、10~100kWのアプリケーションの電力品質を犠牲にして重量を削減することを好んできた。
【0033】
しかし、ATRUの電力需要が100kWを超えると、電力品質を犠牲にすることは、はるかに難しくなる。高調波周波数でのラインインピーダンスの増加により、過剰な電流高調波はAC配電システムの波形を著しく歪ませる。これは、ACバス上の他の機器への伝導妨害問題の増加、低力率(実際の電力ではなく皮相電力を送達するための発電機の過度なサイズと分配システムにおける過剰加熱をもたらす)、過剰な放射磁界、発電機及びモータの過剰加熱、並びに回転デバイスの摩耗及び音響ノイズの増加(調和トルクによる)を含む様々な悪影響を引き起こす。
【0034】
従来技術の上述した欠点は、本技術による非対称電力処理に基づく24パルスATRUで克服できる。いくつかの実施形態では、本発明技術による24パルスATRUは、98%を超える効率、THDi5%未満、及び1kgあたり5kWを超える電力重量比を達成する。本発明の非対称単巻変圧器では、出力電圧は中性点に対して不平衡である。
【0035】
いくつかの実施形態では、非対称24パルスATRUは、力率補正及び高調波電流キャンセルのために、まず3相AC入力を12相ACに変換し、次に24パルス整流器ブリッジを介してDC出力に変換する電力コンバータである。いくつかの実施形態では、非対称アプローチは、3相AC入力を直接整流器ブリッジに流すと同時に、単巻変圧器に流す必要がある。単巻変圧器は追加の9相を生成し、これも整流器ブリッジに供給され、合計12相となる。これにより、単巻変圧器はATRU出力に送達される電力の約3分の1を処理するだけで、入力電流の高調波歪みを最小化し、力率を最大化するために必要な、高調波電流キャンセルを実現するので、重量及び電力消散を著しく削減することが可能になる。さらに、単巻変圧器は、この巻線構成に具現化されたデルタを含み、固有のトリプレン高調波緩和をもたらす。本発明技術では、単巻変圧器の巻線はデルタ構成を使用しており、デルタ構成は、主電力を処理し、トリプレン高調波電流の低インピーダンスパスとして機能する。六角形の巻線構成を持つ従来の単巻変圧器は、トリプレン高調波電流のための低インピーダンスパスを設けず、結果として、この機能を実行するために追加のデルタ巻線(通常5脚コア)を必要とする。いくつかの実施形態では、単巻変圧器は、3つのコア脚を含み、それぞれがコア脚に巻きつけられた1つのコイル(例えば、コイルA、B又はC)を有する。各コイルは、7つの異なる巻線のみのため、組立の複雑さとコストの減少を容易にする。
【0036】
図1Aは、本発明技術の一実施形態に係るATRU1000を示す図である。入力側では、3相230ボルトのAC電力100が単巻変圧器300に供給される。後述する代表的な実施形態では、単巻変圧器は、3相入力(A、B、C)を9つの補助相(1~9)に変換して、2次整流回路400に供給し、24パルス動作に必要な全24パルスのうち18パルスを提供する。また、3相入力は主整流回路200にも直接供給され、24パルス動作のための残りの3相及び6パルスを供給する。整流回路200及び400は、入力AC電圧をDC電圧に整流するダイオードの配置を含むことができる。本発明技術の単巻変圧器により、ATRUは、高力率及び高調波含有率が低い24パルス入力波形を維持しながら、高品質の540ボルトDCを出力する。
【0037】
主整流回路200への3つの入力相の直接フィードスルーにより、ATRUによって処理される電力の大部分(例えば、約66%)が単巻変圧器300を迂回することができる。この結果、単巻変圧器300において、著しいサイズ、重量、及び消散の減少を達成することができる。電力の分配66%対34%は例示的な実施形態にすぎず、他の実施形態では、主整流回路200及び2次整流回路400で異なる電力割合を達成してもよい。また、一般に、単巻変圧器300での電力の減少は、単巻変圧器の重量及びサイズも減少させる。
【0038】
また、図1Bは、本発明技術の一実施形態に係るATRUを示す図である。3相入力は、入力フィルタ150を経て、単巻変圧器300に供給される。図示される実施形態では、12の出力相(3つの主相A、B、C及び9つの補助相1~9、まとめて「出力相310」)は、12相を24パルスに整流する共通の整流回路に結合される。結果として生じるパルスは、出力電磁干渉(EMI)フィルタ410を経て供給されてもよい。図示されたATRUは、230ボルトのAC入力を540ボルトのDC出力に変換する。
【0039】
図2は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器の巻線を示す図である。図示されたデルタ巻単巻変圧器は、230ボルトAC、3相入力のための3つの入力点PA、PB及びPC、並びに12の出力相(単巻変圧器の3つの主相及び9つの補助相)のための12の出力タップ(T1~T12)を含む。トポロジーの指向は例示的なものであり、異なる実施形態では異なるトポロジーを適用してもよい。
【0040】
図示された実施形態の各巻線の巻数比は、巻線に隣接して表示されている。例えば、N1、N2、N3、及びN4に対応する、Cコイルに沿った直列巻線は、それぞれ0.17、0.24、0.42、及び0.17の巻数比を有する。N5、N6及びN7に対応する補正巻線は、それぞれ0.13、0.13、0.18の巻数比を有する。Aコイル及びBコイルの巻線の巻数はCコイルの巻数に等しい。
【0041】
所与の巻線の巻数比は、各入力相間の全巻数に対する巻線の巻数の比として定義される。いくつかの実施形態では、最適な巻数比は単巻変圧器の構造、異なる寄生、及び使用ケースによって変化する場合があるため、図示された巻数比は近似値であってもよい。この結果、実際に実装される巻数は、選択された単巻変圧器コアによって変化する場合がある。図2に図示される単巻変圧器の実施形態の巻数の例は、以下の表1及び表2に示される。
【0042】
表1にA、B及びCの各コイルに沿って139巻を有する単巻変圧器の巻数比のサンプルを示す。例えば、N1セグメントは24巻を含み、一方N2セグメントは33巻を含む。同様に、2次巻線N6は18巻、一方2次巻線N7は25巻を含む。個々のコイルの巻数(図示の例では139巻)に関する、これらの巻数の比率が「巻数比」の列に示されている。
【0043】
【表1】
【0044】
表2は、図2に示される単巻変圧器の電圧振幅(「振幅」列)と相(「相」列)を示している(巻線インピーダンスや漏れインダクタンスを含む寄生を補償するために、巻数比に実用的な補正を実装している)。一般に、対応するタップ対(「振幅」列)の電圧差はほぼ一定である。「相デルタ」列の相差もほぼ一定で、1つのブリッジ整流器の伝導対から次の伝導対まで15°刻みで対応している。
【0045】
本発明技術の実施形態による単巻変圧器では、補正巻線相電圧は、逆入力相電圧に対する相間電圧として制御され、公称15度間隔で平衡ブリッジ整流器伝導対を形成する。これは、相と中性点の補正巻線電圧の平衡を達成することを指向する、従来の対称単巻変圧器の設計アプローチとは異なる。例えば、図2の単巻変圧器及び表2の値を参照すると、タップT4は相対的な電圧及び相の振幅を表すためにB相と対になっている。他の例として、タップT12は、相対的な電圧及び相の振幅を表すために、C相と対になっている。表2は、図2の単巻変圧器のすべてのブリッジ整流器伝導対の公称電圧の振幅及び相を含む。ブリッジ整流器の伝導対は、ブリッジ整流器に供給される2相で構成され、各完全な電気サイクル内の一貫した点で互いに伝導する。本発明技術の実施形態による単巻変圧器の場合、各伝導対は、完全な電気サイクルあたり各極性で1回、計2回、伝導することになる。例として、これは、表2の電圧(A相-T8)が相-14.97度を有し、表2の電圧(T8-A相)が相-194.97度を有しており、180度の相差は、電圧極性が逆であることを示す。
【0046】
【表2】
【0047】
図3図2の単巻変圧器のためのデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示している。デルタ構成は、3相AC入力のための3つの入力点A、B及びCを含む。デルタの各辺は4つの直列巻線を有する。BからCへ時計回りに移動すると、BC間に直列巻線N4、N3、N2及びN1が挿入されている。同様に、CA間及びAB間にも巻線が挿入されているが、図では混乱を低減させるためにラベルを付けていない。
【0048】
非対称単巻変圧器の相間電圧を決定するサンプルの方法を以下に述べる。サンプルの方法は、各補正巻線(例えば、タップT6、T7)の端から正三角形の反対側の頂点(例えば、相巻線BとCが交差する頂点)までのベクトルを描くステップを含む。これらのベクトルは、単巻変圧器の出力相を表している。各ベクトルの長さは、三角形の反対側の頂点で表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する(対称単巻変圧器のように中性点に対して相対的ではない)。この相間電圧は、表2に示すように伝導対としてブリッジ整流器に提示される。単巻変圧器の出力電圧と相角を、中性点電圧に対してではなく逆入力相に対して、平衡するように設計することで、電力品質を損なうことなく処理電力の大部分が単巻変圧器を迂回することができ、相間変圧器を排除することができる。いくつかの実施形態では、トリプレン高調波緩和は、N1-N4巻線比によって形成された主デルタ巻線によって保証され、これはトリプレン高調波緩和のための適当な巻線構成を提供する。
【0049】
上述したように、単巻変圧器の出力相の所望の相シフトは、入力相を横断し、T2、T3、T4、T6、T7、T8、T10、T11及びT12で出力を提供する直列巻線の間の選択位置でタップされた補正巻線から得られる。補正巻線が巻きつけられるコイル及び補正巻線の巻線極性によって、補正巻線が、補正巻線の出力相に与える相シフトの方向が決定される。各補正巻線の巻数比と直列巻線間の補正巻線のタップ位置により、出力相の最終的な相角と振幅が決定される。これらの出力相の振幅及び相は、図3の点線で図示されている。24パルス様態の場合、隣接する相間は、公称15度の間隔が望ましい。上で説明したように、実際の出力相の振幅は、単巻変圧器の構造、寄生(例えば、漏れインダクタンス)、及び使用ケース(例えば、電源及び負荷インピーダンス)に依存することになる。図3に図示された実施形態について、巻数及び巻数比を以下の表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
図12に非対称単巻変圧器の相間電圧を決定するためのサンプル方法を図示する。特に、図示された方法は、非対称24パルス動作のための適切な出力相の振幅及び間隔のために巻数比を選択する設計プロセスの概要を示す。異なる実施形態において、図示された方法は、追加のステップを含んでもよく、フローチャートに示されていない他のステップを含んでもよい。
【0052】
この方法は、ブロック510で開始することができる。ブロック515では、選択されたコア、動作周波数、及び動作電圧に対して、許容可能な磁束密度を維持するために、相間巻数が選択される。
【0053】
ブロック520では、相間の巻数に比例した脚の長さを持つ正三角形を用いて変圧器のベクトル図を構成する。三角形の各辺は完全なデルタ巻線を表し、三角形の頂点の各対の間の4つのセグメントからなる(例えば、図2及び図3参照)。各セグメントは直列巻を表し、該当する直列巻線の巻数に比例した長さを有する。セグメントが交わる各脚の頂点間の3点は、補正巻線のタップ位置を表している。
【0054】
ブロック525では、三角形の頂点間の各タップ位置から補正巻線を表す線が引かれる。各線は、補正巻線が巻きつけられているコイルの相に相当する相、及び補正巻線の巻数に比例する長さを持つベクトルである。各ベクトルは、三角形の1辺と平行する。各補正巻線の巻数比は、補正巻線の巻数を完全なデルタ巻線の巻数で割ったものに相当する。これは、変圧器のベクトル図では、正三角形の完全な脚の長さに対する補正巻線ベクトルの長さとして、図示される。
【0055】
ブロック530では、各補正巻線ベクトルの端から正三角形の反対側の頂点にベクトルが描かれる。これらのベクトルは単巻変圧器の出力相を表す。各ベクトルの長さは、三角形の反対側の頂点によって表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する。各出力タップから中性点までベクトルを描くことができ、これは中性点に対する出力相電圧を正確に示すが、非対称設計の性質により、これらの相から中性点への電圧は不均一となる。相と中性点間ではなく、相間電圧を制御することが、非対称設計アプローチと対称設計アプローチの違いである。
【0056】
ブロック535では、デルタセグメント長を最適化し、全デルタ長を一定に保ちながら、タップ位置を調整する。いくつかの実施形態では、補正巻線ベクトル長は、出力相ベクトル長が正三角形の各辺の長さにほぼ等しくなるまで調整され、各三角形の頂点に由来するすべてのベクトルが約15度の相間隔を維持する。この方法を用いて作製された完全な変圧器のベクトル図の例を、図3及び図5図11に示す。
【0057】
ブロック540では、変圧器ベクトル図における各直列巻線のセグメント及び補正巻線ベクトルの最終的な長さに基づいて、単巻変圧器直列巻線及び補正巻線の巻数が設定される。本方法は、ブロック545で終了してもよい。
【0058】
図4は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器を示す図である。いくつかの実施形態では、コイルA、B及びCは、これらそれぞれのハウジング110、120及び130に収容される。出力ポート1~9は、2次巻線(例えば、コイルAに接続された2次巻線N6及びN7)を経てそれぞれのコイルに接続されている。動作中は、ワイヤA、B、C、及び1~9の自由端は、主整流回路/二次整流回路200、400に接続される。
【0059】
図5図11は、本発明技術の実施形態に係るデルタ巻単巻変圧器のトポロジー図を示す。図5図11に図示された実施形態について、巻数及び巻数比は、以下の表4に示される。異なる実施形態では、これらの巻数及び巻数比は、図12に図示された方法を用いて決定される。
【0060】
【表4】
【0061】
図13図15は、図3に描かれたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUの電流波形をシミュレートしたグラフである。漏れインダクタンスや巻線抵抗などの非理想特性が無視されているため、このシミュレートされた非対称ATRUを「理想的」と呼ぶ。図16は、本発明技術の一実施形態に係る実際の3相入力電流波形のグラフである。これらの各グラフにおいて、横軸は経過時間を示している。縦軸は電流(アンペア)を示している。
【0062】
特に、図13は、図3に描いたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUの3相入力電流波形をシミュレートしたグラフである。漏れインダクタンスや巻線抵抗のない理想的な単巻変圧器は、正弦波電圧入力で、24「ステップ」又は「パルス」で正弦波に近似したステップ状の電流波形を示す。これはブリッジ整流器の伝導対が15度ごとに切り替わる結果である。漏れインダクタンス及び巻線抵抗を付加することで、波形が平滑化し、最終的にはほぼ正弦波になる(下図16参照)。
【0063】
図14は、400Hzでの1つの完全な電気サイクル中の24パルス非対称ATRUの整流器ブリッジ電流をシミュレートしたグラフである。図14では、ブリッジ整流器伝導対の15度間隔を確認することができる。ここでは、各伝導対は100マイクロ秒をわずかに超える時間、すなわち2.5msの周期を有する所与の400Hzサイクルの電気角約15度で伝導していることを確認することができる。さらに、図14と表2では、ブリッジ整流器への各入力相接続が5パルス連続して電流を伝導するのに対し、各補正巻線は所与の半周期で1パルスだけ電流を伝導することが確認できる。これは、電力の大部分が単巻変圧器を迂回してATRUによって処理されていることを示しており、これにより効率の向上及び重量の減少を可能になる。
【0064】
図15は、図3に描かれたトポロジーの理想的な単巻変圧器を利用した24パルス非対称ATRUのA相入力電圧及び電流をシミュレートしたグラフである。そして図16は、本発明技術の一実施形態に係る実際の3相入力電流波形のグラフである。図16に図示される実施形態では、実際の電流波形は、図13に示される理想的な入力電流波形よりも滑らかである(高調波歪みが低いことを示している)。これは、少量の漏れインダクタンスの存在により、入力電流波形を滑らかにする機能を果たすためである。ただし、一般的には、漏れインダクタンスは一般的にできるだけ小さく保たれるべきである。図14及び図15に見られるように、補正巻線には、振幅が大きく、持続時間が短いパルス電流が流れる。漏れインダクタンスが大きすぎることが許容される場合、これらのパルス電流はこれらの最大の振幅に達することができず、24パルス動作は、有効パルス数が減少し、24パルスATRUの性能が18又は12パルスソリューションにより近くなるように、劣化する恐れがある。
【0065】
上述した技術の多くの実施形態は、プログラム可能なコンピュータ又はコントローラによって実行されるルーチンを含む、コンピュータ実行可能命令又はコントローラ実行可能命令の形態をとることができる。関連する技術分野の当業者であれば、本技術が、上に示され、述べられたもの以外のコンピュータ/コントローラシステムで実施され得ることを理解するであろう。本技術は、特殊用途のコンピュータ、コントローラ又はデータプロセッサにおいて具現化することができ、これは、上述の1つ又は複数のコンピュータ実行可能命令を実行するように、具体的に、プログラムされ、構成され、又は構築されている。従って、本明細書で通常使用される「コンピュータ」及び「コントローラ」という用語は、任意のデータ処理装置を指し、インターネット電気製品及びハンドヘルドデバイス(パームトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、セルラーフォン又はモバイルフォン、マルチプロセッサシステム、プロセッサベースの家電又はプログラム可能な家電、ネットワークコンピュータ、ミニコンピュータなどを含む)を含むことができる。
【0066】
以上より、本技術の特定の実施形態は、説明のために本明細書に述べられてきたが、本開示から逸脱することなく様々な変更が可能であることが理解されるであろう。さらに、特定の実施形態に関連する様々な利点及び特徴をこれらの実施形態の文脈で上述してきたが、他の実施形態もこのような利点及び/又は特徴を示すことができ、全ての実施形態が本技術の範囲に属するために必ずしもこのような利点及び/又は特徴を示す必要はない。方法が述べられる場合、方法は、より多くの、より少ない、又は他のステップを含むことができる。さらに、ステップは、任意の適当な順序で実行されてもよい。従って、本開示は、本明細書で明示的に示されない、又は述べられない他の実施形態を包含することができる。本開示の文脈では、「約」という用語は、所定の値の±5%を意味する。
【0067】
本開示の目的では、例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」という形式の2つ以上の要素のリストは、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味することを意図し、任意の他の数量の要素がリストされている場合、すべての同様の並べ換えをさらに含む。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】