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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ボラン-アミン錯体による重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/12 20060101AFI20220912BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20220912BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20220912BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20220912BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220912BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220912BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220912BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220912BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220912BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C08F4/12
C08F2/38
C08F12/08
C08F20/10
C08L101/00
C09J201/00
C09J11/06
C09D5/00 D
C09D7/63
C09D201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502895
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 FR2020051239
(87)【国際公開番号】W WO2021009448
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】1908159
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミショー, ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】シモン, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】フーカイ, ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コリン, ボリ
(72)【発明者】
【氏名】リアウタール, ビルジニ
(72)【発明者】
【氏名】プシェオー, マチュー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J015
4J038
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BC031
4J002BG051
4J002BG061
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD058
4J002FD209
4J002FD342
4J002GJ01
4J002HA05
4J011AA05
4J011NA01
4J011NA13
4J011NA32
4J011NB00
4J011NC00
4J015EA04
4J015EA09
4J038CC021
4J038CG141
4J038GA09
4J038GA16
4J038JC37
4J038KA02
4J038KA06
4J038KA08
4J038PA07
4J038PA19
4J040DB021
4J040DF051
4J040GA15
4J040HD39
4J040KA12
4J040KA23
4J040KA26
4J040MB09
4J100AB02P
4J100AL03P
4J100CA01
4J100FA08
4J100FA18
4J100JA03
(57)【要約】
本発明は、ラジカル開始剤としてのボランBHのアミンとの錯体の存在下で、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を重合するための方法であって、
- ボランBHのアミンとの錯体を用意する工程と、
- 錯体を、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を含む組成物と接触させる工程と
を含み、
重合が酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤の非存在下で行われる、方法に関する。
本発明はまた、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物、並びにボランBHのアミンとの錯体を含む組成物であって、酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤を有さない組成物、さらに2つの基材を一緒に結合させるための接着剤としてのこの組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル開始剤としてのボランBHのアミンとの錯体の存在下で、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を重合するための方法であって、
- ボランBHのアミンとの錯体を用意する工程と、
- 錯体を、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を含む組成物と接触させる工程と
を含み、
重合が酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤の非存在下で行われる、方法。
【請求項2】
- アミンが、式(I):
[式中、R、R及びRは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(II):
[式中、R、R及びR10は、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R及びRiiは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、t、x及びyは、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(III):
[式中、Rは2~60個の炭素原子、好ましくは2~40個の炭素原子を含む二価の基を表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、二価のアルキルラジカル、二価のシクロアルキルラジカル、二価のアリールアルキルラジカル又は二価のアリールラジカルから選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(IV):
[式中、R、R及びRは、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、v、w及びzは、0~90、さらにより優先的には0~70の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(V):
[式中、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、a及びbは、1~20、好ましくは2~11の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(VI):
[式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、Rは、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、nは、0~30、好ましくは0若しくは1に等しい数を表し、z+z+zの和、v+v+vの和及びw+w+wの和は、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであり、アミンが、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、テトラメチルピペリジン、モルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピリジン、ポリエーテルアミン及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の重合方法。
【請求項3】
ラジカル重合性化合物が、スチレン、ビニル、アクリル系又はメタクリル系モノマー及びこれらの組合せから選択され、好ましくは、ラジカル重合性化合物がアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、メタクリロニトリル及びこれらの組合せから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ボランBHのアミンとの錯体が、ラジカル重合性化合物の質量に対して0.01質量%~25質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%の含有量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ラジカル重合性化合物が、組成物の合計質量に対して5質量%~100質量%、好ましくは50質量%~100質量%の含有量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
錯体を少なくとも1つの重合性化合物を含む組成物と接触させた後に加熱する工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加熱する工程が、20~100℃、好ましくは35~85℃の温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、充填剤、可塑剤、粘着付与樹脂、溶媒、UV安定剤、吸湿剤、蛍光材料、レオロジー添加剤及びこれらの組合せから選択される1つ又は複数の添加剤を追加的に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物、並びにボランBHのアミンとの錯体を含む組成物であって、酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤を有さない、組成物。
【請求項10】
- アミンが、式(I):
[式中、R、R及びRは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(II):
[式中、R、R及びR10は、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R及びRiiは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、t、x及びyは、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(III):
[式中、Rは2~60個の炭素原子、好ましくは2~40個の炭素原子を含む二価の基を表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、二価のアルキルラジカル、二価のシクロアルキルラジカル、二価のアリールアルキルラジカル又は二価のアリールラジカルから選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(IV):
[式中、R、R及びRは、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、v、w及びzは、0~90、さらにより優先的には0~70の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(V):
[式中、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され;a及びbは、1~20、好ましくは2~11の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンが、式(VI):
[式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、Rは、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基又はアリール基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、nは、0~30、好ましくは0若しくは1に等しい数を表し、z+z+zの和、v+v+vの和及びw+w+wの和は、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであり、アミンが、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、テトラメチルピペリジン、モルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピリジン、ポリエーテルアミン及びこれらの組合せから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ラジカル重合性化合物が、スチレン、ビニル、アクリル系又はメタクリル系モノマー及びこれらの組合せから選択され、好ましくは、ラジカル重合性化合物がアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、メタクリロニトリル及びこれらの組合せから選択される、請求項9及び10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
2つの基材を一緒に結合させるための接着剤としての、又は基材の表面へのコーティングとしての、又は基材の表面へのプライマーとしての、請求項9から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
基材又は2つの基材のうちの少なくとも1つが、45mJ/m以下、好ましくは40mJ/m以下、より好ましくは35mJ/m以下の表面エネルギーを有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項9から11のいずれか一項に記載の組成物を架橋させることによって得られる少なくとも1つの層を含む物品。
【請求項15】
層が接着剤層である、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボランのアミンとの錯体の存在下で、少なくとも1つのエチレン性結合を含むラジカル重合性化合物を重合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合は、重合性モノマーの多様性、その実行容易性及び用いられる合成方法の多様性(塊状、乳化、溶液、懸濁)のために、産業で最も利用される重合方法の1つである。
【0003】
エチレン性結合を含む化合物のラジカル重合のための有機ボランの使用は、先行技術で公知である。しかし、有機ボランの不安定かつ自然発火性の性質に起因して、酸化分解を回避するために、有機ボランはアミンと錯化されなければならない。
【0004】
一般的に、重合開始前に、重合を開始するための酸化剤(過酸化物など)などの化合物の存在が必要である。しかし、これらの種類の化合物は反応性も非常に高く、重合中にそれらを利用することは危険な場合がある。
【0005】
一般的に、反応を開始するには、有機ボランの存在又はアミン-ボラン錯体との組合せの開始剤(過酸化物など)の存在のいずれかが必要である。
【0006】
文献US2,973,337は、ボラザンを過硫酸塩型の酸化剤と組み合わせて使用する、1つ又は複数のエチレン性結合を含む不飽和化合物の重合について記載している。
【0007】
文献US3,036,048は、有機ボラン-アミン錯体をチタン及びジルコニウム塩などの触媒と組み合わせて使用する、1つ又は複数のエチレン性結合を含む不飽和化合物の重合について記載している。
【0008】
文献US3,236,823は、有機ボラン-アミンを使用する1つ又は複数のエチレン性結合を含む不飽和化合物の重合について記載している。
【0009】
文献US8,202,932は、重合性(メタ)アクリル系組成物及びこれらの組成物から調製される接着剤系に関する。これらの組成物は、アルキル化水素化ホウ素又はテトラアルキルボラン金属又はアンモニウム塩及びアミノシランを含む。この文献によると、これらの組成物は、少なくとも1つの低エネルギー表面を含む結合用途に好適である。
【0010】
文献US6,632,908は、金属、プラスチック又はガラス基材を、同じ性質又は異なる性質の基材、例えば低エネルギー表面を有する基材に接着させるために使用される(メタ)アクリル系組成物に関する。この文献に記載される(メタ)アクリル系組成物は、(メタ)アクリレート化合物並びに有機金属化合物、過酸化物化合物、アジリジンに基づく化合物及び酸官能基を有する化合物を含む開始剤系を含む。
【0011】
文献US9,315,701は、有機ボラン-アミン錯体、ポリアミン、ラジカル重合性化合物及びポリイソシアネート化合物を含む2部接着剤組成物について記載している。これらの組成物は、低表面エネルギーを有する基材の接着に特に好適である。
【0012】
しかし、特定の場合、有機ボランのアミンの錯化にもかかわらず、有機ボラン-アミン錯体の高い反応性は、モノマーの架橋中のそれらの反応性の有効な制御の妨げとなる(言い換えると、モノマーは非常に急速に架橋する)。
【0013】
したがって、ラジカル重合性化合物の効率的な重合方法であって、重合に使用される化合物が長期間貯蔵可能であり、安全に使用でき、かつ制御可能な反応性を有する重合方法を提供するための真の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、第1に、ラジカル開始剤としてのボランBHのアミンとの錯体の存在下で、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を重合するための方法であって、
- ボランBHのアミンとの錯体を用意する工程と、
- 錯体を、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物を含む組成物と接触させる工程と
を含み、
重合が、酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤の非存在下で行われる、方法に関する。
【0015】
特定の実施形態によると、
- アミンは、式(I):
[式中、R、R及びRは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(II):
[式中、R、R及びR10は、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R及びRiiは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、t、x及びyは、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(III):
[式中、Rは2~60個の炭素原子、好ましくは2~40個の炭素原子を含む二価の基を表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、二価のアルキルラジカル、二価のシクロアルキルラジカル、二価のアリールアルキルラジカル又は二価のアリールラジカルから選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(IV):
[式中、R、R及びRは、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、v、w及びzは、0~90、さらにより優先的には0~70の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(V):
[式中、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、a及びbは、1~20、好ましくは2~11の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(VI):
[式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、Rは、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、nは0~30、好ましくは0若しくは1に等しい数を表し、z+z+zの和、v+v+vの和及びw+w+wの和は、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものである。
【0016】
特定の実施形態によると、アミンは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、テトラメチルピペリジン、モルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピリジン、ポリエーテルアミン及びこれらの組合せから選択される。
【0017】
特定の実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、スチレン、ビニル、アクリル系又はメタクリル系モノマー及びこれらの組合せから選択される。
【0018】
特定の実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、アクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、メタクリロニトリル及びこれらの組合せから選択されるモノマーである。
【0019】
特定の実施形態によると、ボランBHのアミンとの錯体は、ラジカル重合性化合物の質量に対して0.01質量%~25質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%の含有量で存在する。
【0020】
特定の実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、組成物の合計質量に対して5質量%~100質量%、好ましくは50質量%~100質量%の含有量を有する。
【0021】
特定の実施形態によると、方法は、錯体を少なくとも1つの重合性化合物を含む組成物と接触させた後に加熱する工程を含む。
【0022】
特定の実施形態によると、加熱する工程は、20~100℃、好ましくは35~85℃の温度で行われる。
【0023】
特定の実施形態によると、組成物は、充填剤、可塑剤、粘着付与樹脂、溶媒、UV安定剤、吸湿剤、蛍光材料、レオロジー添加剤及びこれらの組合せから選択される1つ又は複数の添加剤を追加的に含む。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1つのエチレン性結合を含む少なくとも1つのラジカル重合性化合物、並びにボランBHのアミンとの錯体を含む組成物であって、酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤を有さない組成物に関する。
【0025】
特定の実施形態によると、
- アミンは、式(I):
[式中、R、R及びRは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(II):
[式中、R、R及びR10は、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R及びRiiは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、t、x及びyは、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(III):
[式中、Rは2~60個の炭素原子、好ましくは2~40個の炭素原子を含む二価の基を表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、二価のアルキルラジカル、二価のシクロアルキルラジカル、二価のアリールアルキルラジカル又は二価のアリールラジカルから選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択される。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(IV):
[式中、R、R及びRは、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、v、w及びzは、0~90、さらにより優先的には0~70の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(V):
[式中、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、a及びbは、1~20、好ましくは2~11の数を独立して表す。]
のものであるか;
- 又はアミンは、式(VI):
[式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、1~10個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、飽和又は不飽和であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、Rは、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から選択され、R、Rii、Riii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表し、この基は線状又は分岐状であり、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択され、nは0~30、好ましくは0若しくは1に等しい数を表し、z+z+zの和、v+v+vの和及びw+w+wの和は、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表す。]
のものである。
【0026】
特定の実施形態によると、アミンは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、テトラメチルピペリジン、モルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピリジン、ポリエーテルアミン及びこれらの組合せから選択される。
【0027】
特定の実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、スチレン、ビニル、アクリル系又はメタクリル系モノマー及びこれらの組合せから選択される。
【0028】
特定の実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、アクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、メタクリロニトリル及びこれらの組合せから選択されるモノマーである。
【0029】
本発明はまた、その固有の特性を有する材料としての上述の組成物の使用に関する。
【0030】
本発明はまた、2つの基材を一緒に結合させるための接着剤としての上述の組成物の使用に関する。
【0031】
本発明はまた、基材の表面へのコーティングとしての上述の組成物の使用に関する。
【0032】
本発明はまた、基材の表面へのプライマーとしての上述の組成物の使用に関する。
【0033】
特定の実施形態によると、基材又は2つの基材のうちの少なくとも1つは、45mJ/m以下、好ましくは40mJ/m以下、より好ましくは35mJ/m以下の表面エネルギーを有する。
【0034】
特定の実施形態によると、基材又は2つの基材のうちの少なくとも1つは、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリファルネセン、ポリミルセンから選択されるポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリテトラフルオロエチレン、及びこれらの共重合体又はこれらの混合物からなる。
【0035】
本発明はまた、上述の組成物を架橋させることによって得られる少なくとも1つの層を含む物品に関する。
【0036】
特定の実施形態によると、層は接着剤層である。
【0037】
本発明は、上記で表された必要性を満たすことができる。本発明は、より詳細には、ラジカル重合性化合物の効率的な重合方法であって、重合に使用される化合物が長期間貯蔵可能であり、安全に使用でき、かつ制御可能な反応性を有する重合方法を提供する。
【0038】
これは、ボラン-アミン(すなわち、BH-アミン)錯体の使用によって達成される。ボラン-アミン錯体は、有機ボランを含む錯体と比較して改善された安定性をもたらし、それにより長期貯蔵を可能にする。さらに、有機ボラン-アミン錯体と比較して低いこれらの錯体の反応性は、架橋中の組成物の反応性のより良好な制御を可能にする。
【0039】
さらに、反応性化合物(酸化物質、共開始剤、過酸化物、金属塩など)が存在しないことにより、重合方法が促進及び簡素化される。
【0040】
そのような錯体によって開始される重合機構は、先行技術で利用される有機ボラン錯体によって開始されるものとは必然的に異なるという点で、そのような錯体を良好に使用できることは全くの驚きである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで、以下に続く記載でより詳細に、かつ非限定的な様態で本発明を説明する。
【0042】
ボラン-アミン錯体
本発明による重合は、ボランのアミンとの錯体によって行われる。
【0043】
体系的命名法による「ボラン」又は「トリヒドリドボロン」という用語は、式「BH」を有する分子を意味すると理解される。
【0044】
ボランは反応性の高い分子であるため、その分解を回避し、その貯蔵を可能にするためにアミンと錯化する必要がある。
【0045】
アミンは、モノアミン(単一のアミン基を含む)又はポリアミン(1個より多くのアミン基、例えば2、3若しくは4個のアミン基を含む)であってもよい。主鎖を含むポリアミンの場合、アミン基は主鎖の末端に存在してもよく、及び/又は主鎖に沿って側基若しくはペンダント基の形態で存在してもよい。
【0046】
好ましくは、アミンはモノアミンである。
【0047】
アミンがモノアミンである場合、第一級、第二級又は第三級モノアミンから選択されてもよい。
【0048】
特定の実施形態によると、モノアミンは、式(I):
のものであってもよい。
【0049】
、R及びRは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。この基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0050】
、R及びRは、酸素原子、硫黄原子並びにハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素など)から選択される1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0051】
特定の実施形態によると、R、R及びRは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基から独立して選択されてもよい。例として、R、R及びRは、独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキルフェニルなどのアリール基(アリールアルキル)によって置換されているアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ、好ましくはtert-ブトキシ基、フェノキシ基、無置換であるか、又はアルキル基(アルキルアリール)若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているフェニル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているナフチル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているヘテロアリール基であってもよい。ヘテロアリール基の例として、ピリジン、ピロール及びカルバゾールを挙げることができる。代替的に、R、R及びRのうちの2つは、環、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン又はこれらの高級ホモログのうちの1つの一部を形成してもよい。さらに代替的に、R、R及びRのうちの2つは、例えば1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(又はキヌクリジン)などの複数の環の一部を形成してもよい。
【0052】
特定の実施形態によると、R、R及びRは同一であってもよい。
【0053】
他の実施形態によると、R、R及びRは互いに異なってもよい。
【0054】
特定の実施形態によると、R、R及びRのうちの少なくとも2つは同一である。
【0055】
特定の実施形態によると、R、R及びRのうちの少なくとも1つは水素である。
【0056】
他の実施形態によると、R、R及びRはいずれも水素ではない。
【0057】
特定の実施形態によると、R、R及びRのうちの少なくとも2つは、環、例えばモルホリン又はピペリジンの一部を形成する。
【0058】
特定の実施形態によると、R、R及びRは、環、例えば置換されている又は無置換のピリジンの一部を形成する。
【0059】
好ましい実施形態によると、式(I)のモノアミンが第一級アミンである場合、モノアミンはtert-ブチルアミンであってもよい。
【0060】
好ましい実施形態によると、式(I)のモノアミンが第二級アミンである場合、モノアミンは、ジイソプロピルアミン又はジシクロヘキシルアミン又はモルホリン又は2,6-ジメチルピリジン、好ましくはジイソプロピルアミンであってもよい。
【0061】
好ましい実施形態によると、式(I)のモノアミンが第三級アミンである場合、モノアミンは、ジイソプロピルエチルアミン又は芳香族アミン、例えば2,6-ジメチルピリジンであってもよい。
【0062】
他の実施形態によると、モノアミンは、ポリエーテルアミン、すなわち複数のエーテル官能基を含むアミンであってもよい。
【0063】
好ましい実施形態によると、モノアミンは第一級ポリエーテルアミンである。
【0064】
他の実施形態によると、モノアミンは第二級又は第三級ポリエーテルアミンである。
【0065】
したがって、ポリエーテルアミンであるモノアミンの場合、モノアミンは、式(II):
のものであってもよい。
【0066】
、R及びR10は、水素原子又は1~10個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。この基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。好ましくは、R、R及びR10は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を含む線状又は分岐状の基を独立して表す。
【0067】
特定の実施形態によると、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基又はアリール基から選択されてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリールアルキル及びアリール基は上述の通りである。
【0068】
好ましくは、Rは、好ましくは1~7個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0069】
特定の実施形態によると、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択されてもよく、これらの基は上述の通りである。好ましくは、Rは、好ましくは1~2個の炭素原子を含むアルキル基である。より好ましくは、Rは、メチル基及びエチル基から選択される。
【0070】
特定の実施形態によると、R10は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選択されてもよく、アルキル、シクロアルキル及びアリール基は上述の通りである。好ましくは、R10は、好ましくは1~2個の炭素原子を含むアルキル基である。より好ましくは、R10はメチル基及びエチル基から選択される。
【0071】
特定の好ましい実施形態によると、R、R及びR10は同一であってもよい。
【0072】
他の実施形態によると、R、R及びR10は互いに異なってもよい。
【0073】
好ましい実施形態によると、R及びR10は互いに異なってもよい。例えば、R及びR10のうちの1つはエチル基であってもよく、R及びR10のうちの他方はメチル基であってもよい。
【0074】
好ましい実施形態によると、R、R及びR10のうちの少なくとも1つはメチル基である。
【0075】
及びRiiは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。この基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0076】
特定の実施形態によると、R及びRiiは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基から独立して選択されてもよい。例として、R及びRiiは、独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキルフェニルなどのアリール基によって置換されているアルキル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているフェニル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているナフチル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているヘテロアリール基であってもよい。ヘテロアリール基の例として、ピリジン、ピロール及びカルバゾールを挙げることができる。代替的に、R及びRiiは、環、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン又はこれらの高級ホモログのうちの1つの一部を形成してもよい。
【0077】
特定の好ましい実施形態によると、R及びRiiはいずれも水素原子である。この場合、モノアミンは第一級ポリエーテルアミンである。
【0078】
他の実施形態によると、R及びRiiのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を含む基である。この場合、モノアミンは第二級ポリエーテルアミンである。
【0079】
他の実施形態によると、R及びRiiの両方は、独立して1~20個の炭素原子を含む基である。この場合、モノアミンは第三級ポリエーテルアミンである。
【0080】
特定の実施形態によると、t、x及びyは、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表してもよい。したがって、t、x及びyは、0~10、又は10~20;又は20~30;又は30~40;又は40~50;又は50~60;又は60~70;又は70~80;又は80~90の数を独立して表してもよい。
【0081】
tが0以外である場合、数tは、式(II)のモノアミン中に存在する、基R10によって置換されているエトキシ基(好ましくは、R10がメチルである場合はプロポキシ基、又はR10がエチルである場合はブトキシ基)の数を表す。
【0082】
数tは、整数であってもなくてもよい。例えば、異なるアルキレンオキシドの混合物が使用される場合、tは、基R10によって置換されているエトキシ基の平均エトキシル化度(好ましくは、R10がメチルである場合は平均プロポキシル化度、又はR10がエチルである場合は平均ブトキシル化度)に対応する。
【0083】
xが0以外である場合、数xは、式(II)のモノアミン中に存在するエトキシ基の数を表す。
【0084】
数xは、整数であってもなくてもよい。例えば、異なる分子の混合物が使用される場合、xは平均エトキシル化度に対応する。
【0085】
yが0以外である場合、数yは、式(II)のモノアミン中に存在する、基Rによって置換されているエトキシ基(好ましくは、Rがメチルである場合はプロポキシ基、又はRがエチルである場合はブトキシ基)の数を表す。
【0086】
数yは、整数であってもなくてもよい。例えば、異なるアルキレンオキシドの混合物が使用される場合、yは、基Rによって置換されているエトキシ基の平均エトキシル化度(好ましくは、Rがメチルである場合は平均プロポキシル化度、又はRがエチルである場合は平均ブトキシル化度)に対応する。
【0087】
t及びyが0以外である場合、t+yの和は、式(II)のアミン中に存在する、基R及びR10によって置換されているエトキシ基(好ましくは、R及びR10がメチルである場合はプロポキシ基、又はR及びR10がエチルである場合はブトキシ基)の数を表す。
【0088】
特定の実施形態によると、tが0に等しい場合、yは0以外である。
【0089】
他の実施形態によると、yが0に等しい場合、tは0以外である。
【0090】
さらに他の実施形態によると、特にR及びR10が異なる場合、t及びyはいずれも0以外である。
【0091】
特定の実施形態によると、y及び/又はtが0に等しい場合、xは0以外である。
【0092】
他の実施形態によると、xが0に等しい場合、y及び/又はtは0以外である。
【0093】
式(II)のモノアミンは、200~5500g/mol、好ましくは500~2500g/molの分子量を有してもよい。例えば、式(II)のモノアミンは、200~500g/mol;又は500~750g/mol;又は750~1000g/mol;又は1000~1250g/mol;又は1250~1500g/mol;又は1500~1750g/mol;又は1750~2000g/mol;又は2000~2250g/mol;又は2250~2500g/mol;又は2500~2750g/mol;又は2750~3000g/mol;又は3000~3250g/mol;又は3250~3500g/mol;又は3500~3750g/mol;又は3750~4000g/mol;又は4000~4250g/mol;又は4250~4500g/mol;又は4500~4750g/mol;又は4750~5000g/mol;又は5000~5250g/mol;又は5250~5500g/molの分子量を有してもよい。
【0094】
この種類のポリエーテルアミンは、例えば名称Jeffamine MシリーズでHuntsman社によって販売されている。
【0095】
アミンがポリアミンである場合、第一級及び/又は第二級及び/又は第三級ポリアミンから選択されてもよい。好ましくは、ポリアミンは第一級ポリアミンである、すなわちそのアミン基のすべてが第一級アミン基である。より好ましくは、ポリアミンはジアミンである。しかし、ポリエチレンイミン(PEI)などの2個より多くのアミン基(例えば、3個又は4個)を含むポリアミンが使用されてもよい。
【0096】
特定の実施形態によると、ポリアミンは、式(III):
のものであってもよい。
【0097】
は、2~60個の炭素原子、好ましくは2~40個の炭素原子、より好ましくは2~15個の炭素原子を含む二価の基を表してもよい。
【0098】
は、線状又は分岐状であってもよく、環式又は脂環式であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0099】
は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はハロゲンなどの1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。好ましくは、単一のヘテロ原子がR中に存在してもよい。
【0100】
さらに、Rは、二価のアルキルラジカル、二価のシクロアルキルラジカル、二価の脂環式ラジカル、二価のアリールアルキルラジカル又は二価のアリールラジカルから選択されてもよい。好ましくは、Rはアルキル基である。
【0101】
及びRiiは、上記で詳述された通りである。
【0102】
iii及びRivは、水素原子又は1~20個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。この基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0103】
特定の実施形態によると、Riii及びRivは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基から独立して選択されてもよい。例として、Riii及びRivは、独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキルフェニルなどのアリール基によって置換されているアルキル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているフェニル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているナフチル基、無置換であるか、又はアルキル若しくはシクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びカルボニル基などの1個又は複数の基で置換されているヘテロアリール基であってもよい。ヘテロアリール基の例として、ピリジン、ピロール及びカルバゾールを挙げることができる。代替的に、Riii及びRivは、環、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン又はこれらの高級ホモログのうちの1つの一部を形成してもよい。
【0104】
特定の好ましい実施形態によると、R及びRii並びに/又はRiii及びRivは、すべて水素原子である。
【0105】
他の実施形態によると、R及びRiiのうちの少なくとも1つ並びに/又はRiii及びRivのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を含む基である。
【0106】
他の実施形態によると、R及びRiiの両方並びに/又はRiii及びRivの両方は、独立して1~20個の炭素原子を含む基である。
【0107】
好ましい実施形態によると、式(III)のポリアミンは、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、2-メチルベンゼン-1,4-ジアミン、ジエチレントリアミン、4,6-ジエチル-2-メチルベンゼン-1,3-ジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンアミン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、及びナフタレン-1,8-ジアミンから選択されてもよい。
【0108】
より好ましくは、式(III)のポリアミンは、エチレンジアミン及び1,3-プロパンジアミンから選択されてもよく、好ましくは式(III)のポリアミンは、1,3-プロパンジアミンである。
【0109】
他の実施形態によると、ポリアミンは、2個のアミン基、好ましくは第一級アミン基を含むポリエーテルアミンであってもよい。代替的に、ポリアミンは、2個のアミン基を含む第二級又は第三級ポリアミンであってもよい。
【0110】
したがって、2個のアミン基を含むポリエーテルアミンである場合、ポリアミンは、式(IV):
のものであってもよい。
【0111】
、R及びRは、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~2個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。これらの基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0112】
、R及びRは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から独立して選択されてもよく、これらの基は上述の通りである。好ましくは、R、R及びRのうちの少なくとも1つはアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0113】
特定の好ましい実施形態によると、R、R及びRは同一であってもよい。
【0114】
他の実施形態によると、R、R及びRは互いに異なってもよい。
【0115】
好ましい実施形態によると、R、R及びRのうちの少なくとも1つはメチル基であり、好ましくはR、R及びRはメチル基である。
【0116】
好ましい実施形態によると、R及びRは互いに異なってもよい。
【0117】
他の実施形態によると、R及びRのうちの少なくとも1つはメチル基であり、R及びRの他方はエチル基である。
【0118】
、Rii、Riii及びRivは、上記で詳述された通りである。
【0119】
特定の好ましい実施形態によると、R及びRii並びに/又はRiii及びRivは、すべて水素原子である。
【0120】
他の実施形態によると、R及びRiiのうちの少なくとも1つ並びに/又はRiii及びRivのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を含む基である。
【0121】
他の実施形態によると、R及びRiiの両方並びに/又はRiii及びRivの両方は、独立して1~20個の炭素原子を含む基である。
【0122】
特定の実施形態によると、v、w及びzは、0~90、優先的には0~70の数を独立して表してもよい。したがって、v、w及びzは、0~10、又は10~20;又は20~30;又は30~40;又は40~50;又は50~60;又は60~70;又は70~80;又は80~90の数を独立して表してもよい。
【0123】
特定の実施形態によると、zは0に等しく、vは0以外である。
【0124】
他の実施形態によると、zは0以外であり、vは0に等しい。
【0125】
また他の実施形態によると、z及びvはいずれも0以外である。
【0126】
z及びvが0以外である場合、z+vの和は、式(IV)のポリアミン中に存在する、置換されているエトキシ基(好ましくはプロポキシ基又はブトキシ基)の数を表す。
【0127】
z+vの和は、整数であってもなくてもよい。例えば、異なる分子の混合物が使用される場合、z+vは、置換されているエトキシ基の平均エトキシル化度(好ましくはプロポキシル化度又はブトキシル化度)に対応する。
【0128】
vが0に等しい場合、数zは、式(IV)のポリアミン中に存在する、置換されているエトキシ基(好ましくは、Rがメチルである場合はプロポキシ基、又はRがエチルである場合はブトキシ基)の数を表す。
【0129】
zが0に等しい場合、数vは、式(IV)のポリアミン中に存在する、置換されているエトキシ基(好ましくは、Rがメチルである場合はプロポキシ基、又はRがエチルである場合はブトキシ基)の数を表す。
【0130】
数z及びvは、整数であってもなくてもよい。
【0131】
数wは、ポリアミン中に存在するエトキシ基の数を表す。
【0132】
数wは、整数であってもなくてもよい。例えば、異なる分子の混合物が使用される場合、wは平均エトキシル化度に対応する。
【0133】
特定の実施形態によると、v及びwは0であってもよい。この種類のポリエーテルアミンは、例えば名称Jeffamine Dシリーズ及びJeffamine SDシリーズでHuntsman社によって販売されている。
【0134】
他の実施形態によると、wは0以外であってもよいが、vは0より大きい。
【0135】
他の実施形態によると、v及びwは0より大きくてもよい。この場合、z+vの和は、1~10、好ましくは1~8であってもよい。例えば、この和は、1~2;又は2~3;又は3~4;又は4~5;又は5~6;又は6~7;又は7~8;又は8又は9;又は9~10であってもよい。この種類のポリエーテルアミンは、例えば名称Jeffamine EDシリーズでHuntsman社によって販売されている。
【0136】
式(IV)のポリエーテルアミンは、100~5000g/mol、好ましくは200~4000g/molの分子量を有してもよい。例えば、式(IV)のポリエーテルアミンは、100~500g/mol;又は500~750g/mol;又は750~1000g/mol;又は1000~1250g/mol;又は1250~1500g/mol;又は1500~1750g/mol;又は1750~2000g/mol;又は2000~2250g/mol;又は2250~2500g/mol;又は2500~2750g/mol;又は2750~3000g/mol;又は3000~3250g/mol;又は3250~3500g/mol;又は3500~3750g/mol;又は3750~4000g/mol;又は4000~4250g/mol;又は4250~4500g/mol;又は4500~4750g/mol;又は4750~5000g/molの分子量を有してもよい。
【0137】
他の実施形態によると、2個のアミン基を含むポリエーテルアミンは、式(V):
のものであってもよい。
【0138】
、Rii、Riii及びRivは上述の通りである。
【0139】
特定の好ましい実施形態によると、R及びRii並びに/又はRiii及びRivは、すべて水素原子である。
【0140】
他の実施形態によると、R及びRiiのうちの少なくとも1つ並びに/又はRiii及びRivのうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を含む基である。
【0141】
他の実施形態によると、R及びRiiの両方並びに/又はRiii及びRivの両方は、独立して1~20個の炭素原子を含む基である。
【0142】
特定の実施形態によると、a及びbは、1~20、好ましくは2~11の数を独立して表してもよい。
【0143】
特定の好ましい実施形態によると、a及びbは同一である。好ましくは、a及びbは2又は3に等しい。
【0144】
他の実施形態によると、a及びbは異なる。この場合、a及びbのうちの少なくとも1つは、好ましくは2又は3に等しい。
【0145】
式(V)のポリエーテルアミンは、150~1500g/mol、好ましくは150~1000g/molの分子量を有してもよい。例えば、式(V)のポリエーテルアミンは、150~160g/mol;又は160~170g/mol;又は170~180g/mol;又は180~190g/mol;又は190~200g/mol;又は200~300g/mol;又は300~400g/mol;又は400~500g/mol;又は500~600g/mol;又は600~700g/mol;又は700~800g/mol;又は800~900g/mol;又は900~1000g/mol;又は1000~1100g/mol;又は1100~1200g/mol;又は1200~1300g/mol;又は1300~1400g/mol;又は1400~1500g/molの分子量を有してもよい。
【0146】
この種類のポリエーテルアミン(式(V))は、例えば、名称Jeffamine EDRシリーズでHuntsman社によって販売されている。
【0147】
他の実施形態によると、ポリアミンは、3個のアミン基を含む第一級ポリエーテルアミンであってもよい。代替的に、ポリアミンは、3個のアミン基を含む第二級又は第三級ポリアミンであってもよい。
【0148】
したがって、3個のアミン基を含むポリエーテルアミンである場合、ポリアミンは、式(VI):
のものであってもよい。
【0149】
、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~2個の炭素原子を含む基を独立して表してもよい。これらの基は、線状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0150】
、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から独立して選択されてもよく、これらの基は上述の通りである。好ましくは、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR のうちの少なくとも1つは、アルキル基である。より好ましくは、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、メチル基又はエチル基から選択される。
【0151】
特定の好ましい実施形態によると、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は同一であってもよく、例えば、これらはすべてメチル基である。
【0152】
他の実施形態によると、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、互いに異なってもよい。
【0153】
特定の実施形態によると、R は、R 及び/又はR とは異なる。
【0154】
特定の実施形態によると、R は、R 及び/又はR とは異なる。
【0155】
好ましい実施形態によると、R 、R のうちの少なくとも1つ、及び/又はR 、R のうちの少なくとも1つ、及び/又はR 、R のうちの少なくとも1つはメチル基であり、R 、R 及び/又はR 、R 及び/又はR 、R の他方はエチル基である。
【0156】
Rは、水素原子又は1~10個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む基を表してもよい。この基は、線状又は分岐状であってもよい。
【0157】
特定の実施形態によると、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基又はアリール基から選択されてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル及びアリール基は上述の通りである。
【0158】
Rが1~10個の炭素原子を含む基である場合、Rは好ましくは、好ましくは1~3個の炭素原子、好ましくは1~2個の炭素原子を含む、アルキル基である。
【0159】
特定の実施形態によると、Rは水素原子である。
【0160】
他の実施形態によると、Rはエチル基である。
【0161】
、Rii、Riii及びRivもまた、上記で詳述された通りである。
【0162】
特定の実施形態によると、z、z及びzは、0~80、好ましくは0~70の数を表してもよい。例えば、z、z及びzは、0~5;又は5~10;又は10~15;又は15~20;又は20~25;又は25~30;又は30~35;又は35~40;又は40~45;又は45~50;又は50~55;又は55~60;又は60~65;又は65~70;又は70~75;又は75~80であってもよい。数z、z及びzは、整数であってもなくてもよい。
【0163】
特定の実施形態によると、w、w及びwは、0~50、好ましくは0~40の数を表してもよい。例えば、w、w及びwは、0~5;又は5~10;又は10~15;又は15~20;又は20~25;又は25~30;又は30~35;又は35~40であってもよい。数w、w及びwは、整数であってもなくてもよい。
【0164】
特定の実施形態によると、v、v及びvは、0~20、好ましくは0~10の数を表してもよい。例えば、v、v及びvは、0~2;又は2~4;又は4~6;又は6~8;又は8~10;又は10~12;又は12~14;又は14~16;又は16~18;又は18~20であってもよい。数v、v及びvは、整数であってもなくてもよい。
【0165】
特定の実施形態によると、z、z及びzのうちの少なくとも1つは、0以外である。
【0166】
特定の実施形態によると、v、v及びvのうちの少なくとも1つは、0以外である。
【0167】
他の実施形態によると、z、z及びzのうちの少なくとも1つは0以外であり、v、v及びvは0に等しい。
【0168】
特定の実施形態によると、w、w及びwのうちの少なくとも1つは、0以外である。
【0169】
他の実施形態によると、w、w及びwのうちの少なくとも1つは0に等しく、好ましくはw、w及びwのうちの少なくとも2つ、好ましくはw、w及びwの3つすべてが0に等しい。
【0170】
特定の実施形態によると、v及びzのうちの少なくとも1つは0に等しく、かつ/又はv及びzのうちの少なくとも1つは0に等しく、かつ/又はv及びzのうちの少なくとも1つは0に等しい。
【0171】
好ましい実施形態によると、v及びzのうちの少なくとも1つは0に等しく、かつ/又はv及びzのうちの少なくとも1つは0に等しく、かつ/又はv及びzのうちの少なくとも1つは0に等しく、かつw、w及びwのうちの少なくとも1つは0に等しく、好ましくはw、w及びwのうちの少なくとも2つ、好ましくはw、w及びwの3つすべてが0に等しい。
【0172】
+w+wの和は、式(VI)のポリアミン中に存在するエトキシ基の数を表す。
【0173】
+v+v+z+z+zの和は、式(VI)のポリアミン中に存在する、R 、R 、R 、R 、R 及びR によって置換されているエトキシ基(好ましくはプロポキシ基又はブトキシ基)の数を表す。
【0174】
+v+v+z+z+zの和は、整数であってもなくてもよい。例えば、異なるアルキレンオキシドの混合物が使用される場合、この和は、R 、R 、R 、R 、R 及びR によって置換されているエトキシ基の平均エトキシル化度(好ましくはプロポキシル化度及び/又はブトキシル化度)に対応する。
【0175】
+z+zの和、v+v+vの和及びw+w+wの和は、0~90、優先的には0~70、優先的には0~50、さらにより優先的には0~30の数を独立して表してもよい。したがって、この数は、0~10;又は10~20;又は20~30;又は30~40;又は40~50;又は50~60;又は60~70;又は70~80;又は80~90であってもよい。
【0176】
特定の実施形態によると、w、w、w、z、z及びzが0に等しい場合、v+v+vは、2~90、好ましくは4~90であってもよい。例えば、この和は、2~5;又は5~10;又は10~20;又は20~30;又は30~40;又は40~50;又は50~60;又は60若しくは70;又は70~80;又は80~90であってもよい。
【0177】
数nは、0~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10の数を表してもよい。例えば、nは0~5;又は5~10;又は10~15;又は15~20;又は20~25;又は25~30であってもよい。
【0178】
特定の好ましい実施形態によると、nは0又は1であってもよい。
【0179】
式(VI)のポリエーテルアミンは、300~6000g/mol、好ましくは300~5000g/molの分子量を有してもよい。例えば、式(VI)のポリエーテルアミンは、300~500g/mol;又は500~750g/mol;又は750~1000g/mol;又は1000~1250g/mol;又は1250~1500g/mol;又は1500~1750g/mol;又は1750~2000g/mol;又は2000~2250g/mol;又は2250~2500g/mol;又は2500~2750g/mol;又は2750~3000g/mol;又は3000~3250g/mol;又は3250~3500g/mol;又は3500~3750g/mol;又は3750~4000g/mol;又は4000~4250g/mol;又は4250~4500g/mol;又は4500~4750g/mol;又は4750~5000g/mol;又は5000~5250g/mol;又は5250~5500g/mol;又は5500~5750g/mol;又は5750~6000g/molの分子量を有してもよい。
【0180】
この種類のポリエーテルアミン(式(VI))は、例えば名称Jeffamine Tシリーズ及びJeffamine STシリーズでHuntsman社によって販売されている。
【0181】
上記の式のすべてにおいて、添え字t、x、y、v、w、z、v、w及びzを有する基は、分子に隣接してもしなくてもよい。例えば、エトキシ基は、同じ鎖に沿ってプロポキシ及び/又はブトキシ基とランダムに(特定の統計的分配に従って)交互になっていてもよい。
【0182】
代替的に、本発明の文脈で使用されてもよい他の種類のポリアミンは、ポリエチレンイミン(又はポリアジリジン)、つまりアミン基及びビラジカル「-CHCH-」基から構成される反復単位を含むポリマーである。これらの種類のポリアミンは、線状、分岐状又はデンドリマーであってもよい。例として、テトラエチレンペンタミン、EPOMIN SP012、さらにBASF社から販売される名称Lupasol(登録商標)(特にLupasol(登録商標)FG)のポリエチレンイミンが挙げられる。
【0183】
本発明によると、ボランはアミン基と錯体を形成することができ、ボランのアミンに対するモル比は、0.1~10、好ましくは0.5~5である。好ましくは、この比は0.5~2である。この比は、特に0.1~0.5;又は0.5~1;又は1~2;又は2~4;又は4~6;又は6~8;又は8~10であってもよい。例えば、モノアミンが含まれる場合、この比は、好ましくはおよそ1である。しかし、ジアミンが含まれる場合、この比は、好ましくはおよそ2である。
【0184】
ボラン-アミン錯体は、ラジカル重合性化合物の質量に対して0.01質量%~25質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%の含有量で使用されてもよい。この含有量は、特に0.01%~0.1%;又は0.1%~1%;又は1%~2%;又は2%~3%;又は3%~4%;又は4%~5%;又は5%~6%;又は6%~7%;又は7%~8%;又は8%~9%;又は9%~10%;又は10%~11%;又は11%~12%;又は12%~13%;又は13%~14%;又は14%~15%;又は15%~16%;又は16%~17%;又は17%~18%;又は18%~19%;又は19%~20%;又は20%~21%;又は21%~22%;又は22%~23%;又は23%~24%;又は24%~25%であってもよい。
【0185】
より詳細には、ボラン-アミン錯体の含有量は、完全な反応を可能にするのに十分でなければならない。
【0186】
特定の実施形態によると、ボラン-アミン錯体は、特許EP2189463に記載される方法によって、又はP.Veeraraghavan Ramachandran et al.による論文(Amine-boranes bearing borane-incompatible functionalities:application to selective amine protection and surface functionalization、Chem.Commun.、2016、52、11885)に記載される方法によって調製されてもよい。より詳細には、ボラン-アミン錯体は、上述のアミンを水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、又は水素化ホウ素リチウムなどの水素化ホウ素化合物と反応させることによって調製されてもよい。この反応は、特に硫酸、メタンスルホン酸、塩酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸などの酸の存在下、好ましくは硫酸の存在下で行われてもよい。
【0187】
これにより、ボラン-アミン錯体中に存在するボランがラジカル重合性化合物の重合を開始することができる。
【0188】
ラジカル重合性化合物
重合される組成物は、少なくとも1つのラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物は、少なくとも1つのエチレン性結合を含む。「ラジカル重合」は、活性種としてラジカルを含む連鎖重合である。ラジカル重合は、開始、成長、停止及び連鎖移動反応を含む。したがって、ボラン-アミン錯体に存在するボランは、重合性化合物の重合を開始させることができ、ポリマーのネットワークが形成される。
【0189】
ラジカル重合性化合物は、オレフィン系不飽和を含み、ラジカル重合可能な任意のモノマー、オリゴマー又はポリマー、さらにこれらの混合物を含んでもよい。例えば、ラジカル重合性化合物は、スチレン、ビニル、アクリル系及びメタクリル系モノマーから選択されてもよい。これらは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルエステル、例えばネオデカン酸ビニル及び酢酸ビニル、アクリル系及びメタクリル系モノマー又はオリゴマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド(又はアクリルアミド)、メタクリル酸アミド(又はメタクリルアミド)、アクリル酸エステル(又はアクリレート)及びメタクリル酸エステル(メタクリレート)を含んでもよい。
【0190】
好ましい実施形態によると、ラジカル重合性化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレート及びメタクリレートなどのアクリル系又はメタクリル系モノマーである。
【0191】
ラジカル重合性化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー及びこれらの混合物から選択されてもよく、アクリル酸エステル(アクリレート)及びメタクリル酸エステル(メタクリレート)のアルキル基は、好ましくは1~22個の炭素原子を含み、飽和又は不飽和であり、線状、分岐状又は環式であり、場合により少なくとも1個のヘテロ原子(O、S)又は1個のエステル官能基(-COO-)を含み、アルキル基は、好ましくは1~12個の炭素原子を含み、線状、分岐状又は環式である。
【0192】
有利には、ラジカル重合性化合物は、アルキル及びシクロアルキルアクリレート並びにメタクリレート、例えばアクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、アリルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR440)、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、イソデシルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR395)、ラウリルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR335)、トリデシルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR489)、C12~C14アルキルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR336)、n-オクタデシルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR484)、C16~C18アルキルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR257C)、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルヘキシルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR217)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR420)、イソボルニルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR506D)、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート及びこれらの混合物から選択されてもよい。特に好ましい化合物は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及び2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0193】
さらに、ラジカル重合性化合物は、ヘテロ原子を含むアクリレート及びメタクリレート、つまりエステルのアルコール部分の基に炭素又は水素でない原子を少なくとも1個含有する(エステル基自体の原子を考慮に入れずに)アクリレート及びメタクリレートから選択されてもよい。好ましくは、原子は酸素である。したがって、ラジカル重合性化合物は、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR285)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(Sartomerによって販売されるSR203H)、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-及び3-エトキシプロピルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR256)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(好ましくは2~8個の(エトキシ)反復単位を含む)、ポリプロピレングリコールアクリレート(好ましくは2~8個の(プロポキシ)反復単位を含む)、ポリカプロラクトンアクリレート(Sartomerによって販売されるSR495B)、2-フェノキシエチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR339C)、2-[2-[2-(2-フェノキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR410)、2-[2-[2-(2-ノニルフェノキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR504D)、環式トリメチロールプロパンホルマルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR531)、環式グリセロールホルマルアクリレート、2-[2-[2-(2-ドデシルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチルアクリレート(Sartomerによって販売されるSR9075)、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-及び3-エトキシプロピルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(好ましくは2~8個(エトキシ)の反復単位を含む)、ポリエチレングリコールメタクリレート(好ましくは2~8個(エトキシ)の反復単位を含む)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(好ましくは2~8個(プロポキシ)の反復単位を含む)、環式トリメチロールプロパンホルマルメタクリレート、環式グリセロールホルマルメタクリレート(Evonikによって販売されるVisiomer(登録商標)Glyfoma)、並びにこれらの混合物から選択されてもよい。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチルプロパン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、及びペンタプロピレンのアクリレート及びメタクリレートも使用可能である。特に好ましい化合物は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリカプロラクトンアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート及びポリカプロラクトンメタクリレートである。
【0194】
ジアクリレート及びジメタクリレート化合物も本発明の文脈内で使用可能である。そのような化合物として、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR238)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR341)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR595)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR833S)、エステルジオールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR606A)、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR272)、ジプロピレングリコールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR508)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR306)、テトラエチレングリコールジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR268G)、エトキシル化及び/又はプロポキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR349)、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR602)、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(40)ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR259)、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR344)、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート(Sartomerによって販売されるSR610)、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、アルコキシル化脂肪族メタクリレート、例えばトリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ヘキサンジオールジメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ネオペンチルグリコールジメタクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシル化(40)ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ネオペンチルグリコールジメタクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0195】
トリアクリレート及びトリメタクリレート化合物も本発明の文脈内で使用可能である。そのような化合物として、グリセロールトリメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomerによって販売されるSR351)、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerによって販売されるSR444D)、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomerによって販売されるSR368)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロールトリメタクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、並びにペンタエリスリトールトリメタクリレートが挙げられる。
【0196】
3個より多くのアクリレート又はメタクリレート基を含む化合物、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomerによって販売されるSR295)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Sartomerによって販売されるSR355)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomerによって販売されるSR399)、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、並びにエトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレートも使用可能である。
【0197】
さらに、ラジカル重合性化合物は、アクリル系及びメタクリル系オリゴマー、例えばウレタン-アクリレート及びウレタン-メタクリレート、ポリエステル-アクリレート、ポリエステル-メタクリレート、ポリブタジエン-アクリレート(Sartomerによって販売されるSR307)、及びポリブタジエン-メタクリレートから選択されてもよい。このカテゴリーで好ましい化合物は、例えばSartomerによって販売されるCN1963、CN1964、CN992、CN981、CN9001、CN9002、CN9012、CN9200、CN964A85、CN965、CN966H90、CN991、CN9245S、CN998B80、CN9210、CN9276、CN9209、PRO21596、CN9014NS、CN9800、CN9400、CN9167、CN9170A86、CN9761、及びCN9165Aである。
【0198】
本発明の文脈内で使用されてもよいラジカル重合性化合物は、アクリルアミド及びメタクリルアミドも含んでもよい。例えば、これらのモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’-メチレンジメタクリルアミド、N,N’-メチレンジアクリルアミド、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスメタクリルアミド及びN,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドから、さらにアクリル若しくはメタクリル酸(又はこの酸の塩化アシル)の、第一級及び/又は第二級(ポリ)アミン、例えば1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ポリアミドアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンとの反応後に形成されるアクリルアミド及びメタクリルアミドから選択されてもよい。
【0199】
ラジカル重合性化合物は、組成物の合計質量に対して5質量%~100質量%、好ましくは50質量%~100質量%の含有量で組成物に存在してもよい。この含有量は、例えば5%~10%;又は10%~15%;又は15%~20%;又は20%~25%;又は25%~30%;又は30%~35%;又は35%~40%;又は40%~45%;又は45%~50%;又は50%~55%;又は55%~60%;又は60%~65%;又は65%~70%;又は70%~75%;又は75%~80%;又は80%~85%;又は85%~90%;又は90%~95%;又は95%~100%であってもよい。
【0200】
重合方法
本発明による重合方法は、
- 上述のボラン-アミン錯体を用意する工程と、
- この錯体を、上述の少なくとも1つのラジカル重合性化合物を含む組成物と接触させる工程と
を含む。
【0201】
ラジカル重合性化合物の他に、組成物は、充填剤、可塑剤、粘着付与樹脂、溶媒、UV安定剤、吸湿剤、蛍光材料及びレオロジー添加剤から選択される1つ又は複数の添加剤も含んでもよい。
【0202】
充填剤は、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、硫酸バリウム、普通角閃石、角閃石、クリソタイル、カーボンブラック、炭素繊維、ヒュームド又は熱分解法シリカ、分子ふるい、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラスビーズ、ガラス繊維及びこれらの組合せから選択されてもよい。充填剤は、ナノフィラー、例えばカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなども含んでもよい。
【0203】
可塑剤に関しては、コーティング又は接着剤産業の当業者に公知のものから選択されてもよい。例えば、フタレート、ポリオールエステル(例えば、Perstorpによって販売されるペンタエリスリトールテトラバレレートなど)、エポキシ化油、フェノールのアルキルスルホン酸エステル(Lanxessによって販売されるMesamoll(登録商標)製品)及びこれらの混合物に基づく可塑剤が挙げられてもよい。
【0204】
粘着付与樹脂は特に、フリーデルクラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールの重合によって得られる樹脂、例えばモル質量がおよそ870Daである、DRTから入手可能なDertophene(登録商標)1510、モル質量がおよそ630Daに等しい、同社から入手可能なDertophene(登録商標)H150、モル質量がおよそ1200Daである、Arizona Chemicalから入手可能なSylvarez(登録商標)TP 95;α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂、例えばフェノールの作用を伴わずにα-メチルスチレンの重合によって得られる、数平均モル質量が900DaであるCray Valleyから入手可能なNorsolene(登録商標)W100樹脂、モル質量がおよそ1740Daであり、その生成方法がフェノールの添加も含む、Arizona Chemicalから同様に入手可能なSylvarez(登録商標)510;天然起源又は変性ロジン、及び水素化、ダイマー化、重合、又はモノアルコール若しくはポリオールでエステル化されたそれらの誘導体、例えばArizona Chemicalから入手可能な、ロジンとペンタエリスリトールのエステルであり、モル質量がおよそ1700DaであるSylvalite(登録商標)RE 100樹脂;石油画分から得られる、およそ5、9又は10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合又は共重合によって得られる樹脂;テルペン樹脂;天然テルペンに基づく共重合体;並びに100℃で100Pa.s未満の粘度を有するアクリル樹脂から選択されてもよい。
【0205】
溶媒は、常温(およそ23℃の温度)で揮発性の溶媒であってもよい。揮発性溶媒は、例えば常温で揮発性のアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールから選択されてもよい。代替的に、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)であってもよい。溶媒が揮発性の性質であると、組成物の架橋後に得られるポリマーがそれ以上溶媒を含有しないことが可能になる。
【0206】
UV安定剤は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、「ヒンダード」アミン、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、及びこれらの混合物から選択されてもよい。例えば、BASFによって販売される製品Tinuvin(登録商標)328又はTinuvin(商標)770を挙げることができる。
【0207】
蛍光材料は、例えば2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール)(Uvitex(登録商標)OB)であってもよい。
【0208】
レオロジー添加剤に関しては、コーティング又は接着剤産業の当業者に公知のものから選択されてもよい。例えば、シリカ(特に熱分解法シリカ)、又は微細化アミドワックス(例えば、Arkemaによって販売されるCrayvallacシリーズなど)を挙げることができる。
【0209】
添加剤は、組成物の合計質量に対して0.01質量%~5質量%、好ましくは0.01質量%~3質量%の含有量で組成物に存在してもよい。したがって、添加剤は、特に0.01質量%~0.5質量%;又は0.05質量%~0.1質量%;又は0.1質量%~0.5質量%;又は0.5質量%~1質量%;又は1質量%~1.5質量%;又は1.5質量%~2質量%;又は2質量%~2.5質量%;又は2.5質量%~3質量%;又は3質量%~3.5質量%;又は3.5質量%~4質量%;又は4質量%~4.5質量%;又は4.5質量%~5質量%の含有量で組成物に存在してもよい。
【0210】
ボラン-アミン錯体は、例えば組成物を錯体と混合することによって組成物と接触されてもよい。この混合は、例えば常温で行われてもよい。
【0211】
ボラン-アミン錯体を組成物と接触させる工程の後、本発明による方法は、ボラン-アミン錯体と組成物の混合物を加熱し、重合性化合物の架橋を促進させる工程を含んでもよい。特定の実施形態によると、加熱は、20~100℃、好ましくは35~85℃の温度で行われてもよい。したがって、この温度は、特に20~25℃;又は25~30℃;又は30~35℃;又は35~40℃;又は40~45℃;又は45~50℃;又は50~55℃;又は55~60℃;又は60~65℃;又は65~70℃;又は70~75℃;又は75~80℃;又は80~85℃;又は85~90℃;又は90~95℃;又は95~100℃であってもよい。
【0212】
本発明による重合は、酸化剤及び/又はボラン-アミン錯体以外のさらなるラジカル開始剤の非存在下で行われる。したがって、ラジカル重合性化合物の重合は、さらなる化合物を利用することなく、重合性化合物へのボラン-アミン錯体の作用のみによって開始される。
【0213】
「酸化剤」又は「酸化性物質」又は「酸化物質」という用語は、酸化還元反応中に別の化学種から少なくとも1つの電子を受け取る単体、化合物又はイオンを意味すると理解される。この反応中に少なくとも1つの電子を受容した酸化物質は還元されると言われ、少なくとも1つの電子を付与した化学種は酸化されると言われる。
【0214】
特に、アゾイソブチロニトリル(AIBN)型のラジカル開始剤及びジ-tert-ブチル次亜硝酸塩(DTBHN)は、反応性混合物中に存在しない。
【0215】
特に、以下の酸化剤:過酸化物化合物、過硫酸塩化合物、次亜塩素酸塩化合物、過マンガン酸塩化合物、及び過ホウ酸塩化合物は反応性混合物中に存在しない。
【0216】
例えば、過酸化物化合物として、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチリル、及び過酢酸などの有機及び無機過酸化物が挙げられてもよい。
【0217】
過硫酸塩化合物として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられてもよい。
【0218】
次亜塩素酸塩化合物として、次亜塩素酸ナトリウム及び次亜塩素酸カルシウムが挙げられてもよい。
【0219】
過マンガン酸塩化合物として、過マンガン酸カリウムが挙げられてもよい。
【0220】
過ホウ酸塩化合物として、過ホウ酸ナトリウムが挙げられてもよい。
【0221】
また、さらなるラジカル開始剤、例えば、チタン塩(特に、三塩化チタン及び四塩化チタン)、ジルコニウム塩(特に、四塩化ジルコニウム)、アルミニウム塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、白金塩、マンガン塩、クロム塩、モリブデン塩、ハフニウム塩、タンタル塩、バナジウム塩、ウラン塩、ネオジム塩、トリウム塩及びタングステン塩は反応性混合物中に存在しない。
【0222】
ラジカル重合性化合物の重合は、15分間~3日間、好ましくは30分間~2日間の継続時間を有してもよい。
【0223】
本発明による重合方法により、1000~1000000g/mol、好ましくは1000~500000g/mol、好ましくは1000~250000g/molの数平均モル質量を有するポリマーを得ることができる。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されてもよい。
【0224】
したがって、本発明は、少なくとも1つのラジカル重合性化合物(上述)及びボランBHのアミンとの錯体(上述)を含む重合性組成物を提供する。この組成物は、酸化剤及び/又はボランBHのアミンとの錯体以外のさらなるラジカル開始剤を有さない。言い換えると、重合性組成物は、ラジカル重合性化合物を含む上述の組成物及びボラン-アミン錯体を含み、ラジカル重合性化合物を含む上述の組成物とボラン-アミン錯体を混合することによって形成されてもよい。
【0225】
重合性組成物の使用
本発明による重合性組成物は、特に低表面エネルギーを有する基材の処理に使用されてもよい。より詳細には、本発明による重合性組成物は、45mJ/m以下、好ましくは40mJ/m以下、より好ましくは35mJ/m以下の表面エネルギーを有する基材の処理に使用されてもよい。例えば、この表面エネルギーは、10~15mJ/m;又は15~20mJ/m;又は20~25mJ/m;又は25~30mJ/m;又は30~35mJ/m;又は35~40mJ/m;又は40~45mJ/mであってもよい。低表面エネルギーを示す基材は、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリテトラフルオロエチレン、さらにこれらの共重合体である。これらの表面エネルギー値は、先行技術で周知である。
【0226】
特定の実施形態によると、重合性組成物は、20~100℃、好ましくは35~85℃の温度で基材の表面にコーティングされてもよい。
【0227】
これにより、重合性組成物が基材の表面に層を形成することができる。この層は、1μm~500mm、好ましくは10μm~100mm、より好ましくは10μm~10mmの厚さを有してもよい。
【0228】
特定の実施形態によると、本発明による重合性組成物は、2つの基材を一緒に結合させるための接着剤組成物として使用されてもよい。したがって、組成物は、2つの基材を固定して一緒に保持する接着剤層を架橋後に形成してもよい。より詳細には、重合性組成物を基材の表面にコーティングした後、コーティングされた表面に追加の基材の表面を接触させ、2つの基材を結合させてもよい。特定の実施形態によると、追加の基材をコーティングされた表面と接触させて、アセンブリを加熱プレス下に配置して2つの基材の結合を加速させてもよい。このプレスの温度は、例えば60~110℃、好ましくは80~100℃であってもよい。
【0229】
好ましくは、2つの基材のうちの少なくとも1つが低表面エネルギーを有する基材である。第2の基材もまた、低表面エネルギーを有する基材であってもよい。代替的に、第2の基材は、紙、アルミニウムなどの金属、低表面エネルギー基材以外のポリマー材料、例えばポリアミド、ポリスチレン、ビニルポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエステル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、及び天然又は合成ゴムから選択される材料であってもよい。
【0230】
他の実施形態によると、本発明による重合性組成物は、基材の表面のコーティングとして使用されてもよい。したがって、組成物は、例えば基材の表面の1つ又は複数の特性を改質するために、基材の表面を覆う層を架橋後に形成してもよい。好ましくは、この基材は、上述の通り低表面エネルギーを有する。
【0231】
また他の実施形態によると、本発明による重合性組成物は、プライマーとして使用されてもよい。「プライマー」という用語は、プライマー層を含む基材にさらなる層が塗布可能になるように、基材にコーティングされ、この基材の1つ又は複数の表面特性を改善する(例えば、基材の材料への接着を改善する)層を意味すると理解される。例えば、本発明による重合性組成物を低表面エネルギー基材にコーティングすることにより、その表面エネルギーを増加させることができ、別の接着剤組成物を重合性組成物の上に塗布することが容易になる。
【0232】
したがって、本発明による重合性組成物の塗布後に製造される物品は、重合性組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む。
【0233】
重合性組成物がプライマー又はコーティングとして使用される場合、これは物品の外面である。
【0234】
重合性組成物が接着剤として使用される場合、これは物品の内面、つまり、例えば物品の別の表面と接触される物品の表面であり、重合性組成物はこれら2つの表面の間に配置される。
【0235】
架橋された重合性組成物は、30%以上の破断点伸びを示してもよい。この破断点伸びは、例えば30%~40%;又は40%~50%;又は50%~60%;又は60%~70%;又は70%~80%;又は80%~90%;又は90%~100%;又は100%より高くてもよい。破断点伸びは、規格ISO37によって測定されてもよい。
【0236】
架橋された重合性組成物は、100MPa以下、より好ましくは60MPa以下の弾性係数を示してもよく、弾性係数は、例えば1~100MPa、好ましくは3~50MPaであってもよい。弾性係数は、規格ISO37によって測定されてもよい。
【実施例
【0237】
以下に続く実施例は、本発明を限定することなく例示する。
【0238】
実施例1では、ボラン-アミン錯体によるメチルメタクリレートの重合のために異なるアミンを使用した。重合は、異なる温度(40、60及び80℃)で、異なる質量での含有量のボラン-アミン錯体(メチルメタクリレートの質量に対して0.1%、1%及び10%)を用いて、100%メチルメタクリレートを含む組成物から開始して行う。より詳細には、ボラン-アミン錯体を、メタクリル系モノマーを含む組成物と混合し、次いでこの混合物を40、60又は80℃に加熱する。
【0239】
実施例2では、スチレンの質量に対して16%の含有量の異なるボラン-アミン錯体を用いて、60℃の温度でスチレンの重合を行う。重合は、100%スチレンを含む組成物をボラン-アミン錯体と混合し、この混合物を60℃に加熱することによって行う。
【0240】
実施例1
以下の表は、ボラン-アミン錯体中に存在する種々のアミンを含む(反応1~22)。これらの反応によると、重合は、10%ボラン-アミン錯体を用いて60℃の温度で行われる。
【0241】
「反応時間」という用語は、ボラン-アミン錯体が重合性化合物と混合される瞬間からポリマーが形成される瞬間までの重合の継続時間を意味すると理解される(形成されるポリマーは固体状態であるのに対し、ボラン-アミン錯体と重合性化合物の初期の混合物は液体状態である)。
【0242】
本発明による方法は、異なるボラン-アミン錯体を使用して効率的にメタクリル系ポリマーを合成できることが観察される。
【0243】
実施例2
次に、本発明の方法によるスチレンの重合を試験する。以下の表は、ボラン-アミン錯体中に存在する種々のアミンを含む(反応23及び24)。上述のように、重合は、16%ボラン-アミン錯体を用いて60℃の温度で行われる。
【0244】
本発明による方法は、異なるボラン-アミン錯体を使用して効率的にスチレン系ポリマーを合成できることが観察される。
【国際調査報告】