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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(54)【発明の名称】血管病変の機能的影響
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20220912BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61B5/026 140
A61B5/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503575
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020042500
(87)【国際公開番号】W WO2021016071
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/875,979
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】518406987
【氏名又は名称】キャスワークス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ラビ、イファト
(72)【発明者】
【氏名】コルベット、ジェームス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラビ、ガイ
(72)【発明者】
【氏名】セモ、サリト
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC40
4C017BB13
(57)【要約】
血管病変の機能的影響を決定するための方法及び装置を開示する。例示的方法は、複数の接続された血管分岐のそれぞれにおける複数の位置について単一機能性血流メトリック(例えば、血管造影画像から計算された血流予備量比)の推定値を計算することを含む。本方法は、接続された血管分岐上の閉塞性血管疾患の全体的影響を示すFFR影響スコアに前述の推定値を変換することを含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアの要素がFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄する、計算すること、
を含む方法。
【請求項2】
FFRの前記マップは連続して又はほぼ連続してFFR値を前記特定位置に割り当てる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FFRの前記マップは少なくとも4つの血管セグメントのそれぞれについて少なくとも5つのFFR値を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
FFRの前記マップは前記特定位置のそれぞれに共通する上流位置からの血流能の減少への寄与を表す、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記血管樹は分岐点で接続された前記血管部分の複数の血管範囲をモデル化し、
各前記血管セグメントは、
血管樹の起点、
第1血管分岐点
第2血管分岐点、又は、
前記血管樹の非接続末端
のうち2つの間に延びる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数のスコア要素であって、それぞれがFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄するものの前記複数の血管セグメントの特定の1つへの関連付けを保持する、複数のスコア要素を前記FFR影響スコアは含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについての合計ドロップスコアを含み、前記合計ドロップスコアは、非閉塞血管系を表す基準値からの前記血管セグメントに沿ったFFRにおける合計ドロップを表す、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記合計ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を更に含む、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、当該血管セグメント全体よりも短い当該血管セグメントの画定部分に沿った当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップを表す最大ドロップスコアを含む、
請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記画定部分は、約10mmと約100mmとの間の範囲の血液体積が収まる距離である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記画定部分は、約40mmの血液体積が収まる距離である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記最大ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を更に含む、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、FFRにおける合計ドロップに寄与する病変が当該血管セグメントに沿ってどの程度広く分布しているかの尺度を表す拡散性スコアを含む、
請求項6から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
血管ドロップ拡散性スコアを計算することが、前記最大ドロップスコアが前記合計ドロップスコアから異なる程度を決定することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記血管ドロップ拡散性スコアを計算することは、前記合計ドロップスコアと前記最大ドロップスコアとの比率を計算することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のスコア要素は、前記血管樹内の全ての位置でのFFRの加重平均であって前記血管樹の起点からより離れた距離にある位置ほど下向きに重み付けされる加重平均を表す重症度スコアを含む、
請求項6から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のスコア要素は、前記左主冠動脈を前記血管樹内に表された左主冠動脈の第1分岐点まで含むセグメントに関連する1つ以上のスコア要素を含む、
請求項6から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記FFR影響スコアは、複合的な値ソート順における前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を、異なる血管セグメント由来の値が互いにインターリーブされるように、表す、ソート化値チャートスコア要素を含む、
請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ソート化値チャートスコア要素を色分け円グラフとして表示することを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記FFR影響スコアは、複合的ヒストグラムにおける前記複数の血管セグメントのそれぞれの前記FFR値を表すヒストグラムチャートスコア要素を含み、前記ヒストグラムへの各前記FFR値の寄与は当該FFR値が内部で生じる血管体積の大きさに従って重み付けされる、
請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記FFR影響スコアは、FFR値が連続的に減少する距離に基づき病変長を記述するスコア要素を含む、
請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記FFR影響スコアは、
主血管及び側枝の両方を含むもの、
主血管及びその枝の少なくとも2つを含むもの、
大動脈入口部血管セグメント内で生じるもの、
血管系の屈曲領域に隣接して生じるもの、又は、
血管系の屈曲領域内で生じるもの、
のうち1つ以上として病変ジオメトリを記述するスコア要素を含む、
請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
自動的仮想ステント術、
手動ステント選択、
ステント留置後に測定されたデータ、又は、
複数の診断手順を通して測定されたデータ、
のうち1つ以上に従って修正された、FFRの修正済みマップに基づき、前記FFR影響スコアを調整することを含む、
請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記FFR影響スコアを請求項1に記載の方法に従って計算された第2のFFR影響スコアと比較すること、及び、
血管疾患の進行速度を推定すること、
を含む、
請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記推定に基づき更なる診断手順を予定することを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記FFR影響スコアに基づき治療手順を計画することを含む、
請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記FFR影響スコアに基づきOMTとPCIとの間の選択を行うことを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記FFR影響スコアに基づきPCIとCABG治療との間の選択を行うことを含む、
請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記FFR影響スコアに基づき、配置するステントの、数、位置、及び/又は、種類の少なくとも1つを計画することを含む、
請求項26から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記FFR影響スコアに基づき、配置するCABG移植片の、数、及び/又は、位置の少なくとも1つを計画することを含む、
請求項26又は28に記載の方法。
【請求項31】
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは前記血管セグメントの少なくとも1つに沿ったFFRにおける合計ドロップを当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップと比較する要素を含む、計算すること、
を含む方法。
【請求項32】
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは、前記複数の血管セグメントに由来する個別のFFR値を組み合わせて、隣接血管位置から得られた他の何れのFFR値にも隣接しないグラフ上の位置に前記個別のFFR値の少なくとも幾つかが示される表示とするグラフを含む、計算すること、
を含む方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法を実行するよう構成されたプロセッサを含むシステム。
【請求項34】
血管部分の臨床状態を推定するための装置であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるデータ構造を記憶するデータ記憶装置、及び、
前記データ記憶装置に通信可能に接続され、且つ、
割り当てられた前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算し、
前記FFR値の前記特定位置への割り当てを破棄するための前記FFR影響スコアの要素を使用し、
ユーザインターフェースに前記FFR影響スコアを表示させる、
ように構成された、処理装置、
を含む装置。
【請求項35】
複数のスコア要素であって、それぞれがFFR値の前記特定位置への割り当てを破棄するものの前記複数の血管セグメントの特定の1つへの関連付けを保持する、複数のスコア要素を前記FFR影響スコアは含む、
請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについての合計ドロップスコアを含み、前記合計ドロップスコアは、非閉塞血管系を表す基準値からの前記血管セグメントに沿ったFFRにおける合計ドロップを表す、
請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記処理装置は、
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての合計ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当て、
閉塞血管セグメントの数を数え、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして使用する、
ように構成される、
請求項35又は36に記載の装置。
【請求項38】
前記FFR影響スコアは、複合的な値ソート順における前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を、異なる血管セグメント由来の値が互いにインターリーブされるように、表す、ソート化値チャートスコア要素を含む、
請求項34から37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記処理装置が、前記ユーザインターフェースに前記ソート化値チャートスコア要素を色分け円グラフとして表示させるように構成される、
請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記FFR影響スコアは、複合的ヒストグラムにおける前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を表すヒストグラムチャートスコア要素を含み、前記ヒストグラムへの各前記FFR値の寄与は当該FFR値が内部で生じる血管体積の大きさに従って重み付けされる、
請求項34から39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記処理装置は、前記ユーザインターフェースに前記ヒストグラムチャートスコア要素を表示させるように構成される、
請求項40に記載の装置。
【請求項42】
自動的仮想ステント術、
手動ステント選択、
ステント留置後に測定されたデータ、又は、
複数の診断手順を通して測定されたデータ、
のうち1つ以上に従って修正された、FFRの修正済み割り当てに基づき、前記FFR影響スコアを調整するように前記処理装置は構成される、
請求項34から41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項43】
前記処理装置は、前記FFR影響スコアを第2のFFR影響スコアと比較し、且つ、前記比較に基づき血管疾患の進行速度を推定するように構成される、
請求項34から41のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかの実施形態において、血管撮像の分野に関し、特に、血管画像を用いた血管状態の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓カテーテル検査は、医師が血管造影に基づき冠動脈の狭窄を評価して更なる治療の必要性を決めることを可能とする診断検査である。血管の壁の詳細な画像を得るために心臓カテーテル検査とともに血管内超音波法(intra-vascular ultrasound、IVUS)及び血流予備量比(fractional flow reserve、FFR)などの追加の撮像法を実行する場合もある。診察法に続き、様々な治療選択肢が考慮される。治療は、薬物療法、冠動脈形成術(冠動脈ステント術を伴うもの又は伴わないもの)、又は、冠動脈バイパス術を含み得る。治療は、症状の減少又は排除及び心臓発作の危険性の減少を目的とする。
【0003】
血流予備量比(fractional flow reserve、FFR)は、病的冠動脈での最大達成可能血流と正常冠動脈での理論最大血流との間の比率を求めるため冠動脈狭窄にまたがる血圧勾配を測定するのに用いられる血圧管理技術である。FFR情報の使用は、PCI意思決定及び転帰を潜在的に改善する。例えば、FAME試験(非特許文献1)では、治療(PCI有り又は無し)を決定するための基礎として≦80のカットオフポイントを用いたFFRガイド血管造影と推定視覚評価(血管造影)単独とに1005人の患者を無作為に割り付けられた。研究結果のハイライトとして以下の点が挙げられる。
・推定視覚評価でステントが必要とされた患者の30%がFFRで評価するとステントを受ける必要がなかった。
・用いられたステントの数は、PCI決定が血管造影単独に基づく場合、FFRに基づく場合に対して、約三分の一多かった(2.7対1.9、P<0.001)。
・一年後のMACE(Major Adverse Cardiac Event、主要有害心イベント)がFFRアームと比較して視覚的血管造影評価アームで高かった(18.3%対13.2%、P<0.02)。
・FFRで評価された患者についての平均手術単価が血管造影単独に比べて11.2%減っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tonino Pal等、『Fractional Flow Reserve versus Angiography for Guiding Percutaneous Coronary Intervention』、N Engl J Med、2009年1月15日、360巻、213-224頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の幾つかの実施形態では、
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアの要素がFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄する、計算すること、
を含む方法が提供される。
【0006】
幾つかの実施形態では、FFRの前記マップは連続して又はほぼ連続してFFR値を前記特定位置に割り当てる。
【0007】
幾つかの実施形態では、FFRの前記マップは少なくとも4つの血管セグメントのそれぞれについて少なくとも5つのFFR値を含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、FFRの前記マップは前記特定位置のそれぞれに共通する上流位置からの血流能の減少への寄与を表す。
【0009】
幾つかの実施形態では、前記血管樹は分岐点で接続された前記血管部分の複数の血管範囲をモデル化し、各前記血管セグメントは、血管樹の起点、第1血管分岐点、第2血管分岐点、前記血管樹の非接続末端、のうち2つの間に延びる。
【0010】
幾つかの実施形態では、複数のスコア要素であって、それぞれがFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄するものの前記複数の血管セグメントの特定の1つへの関連付けを保持する、複数のスコア要素を前記FFR影響スコアは含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについての合計ドロップスコアを含み、前記合計ドロップスコアは、非閉塞血管系を表す基準値からの前記血管セグメントに沿ったFFRにおける合計ドロップを表す。
【0012】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記合計ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、当該血管セグメント全体よりも短い当該血管セグメントの画定部分に沿った当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップを表す最大ドロップスコアを含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記画定部分は、約10mmと約100mmとの間の範囲の血液体積が収まる距離である。
【0015】
幾つかの実施形態では、前記画定部分は、約40mmの血液体積が収まる距離である。
【0016】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記最大ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、FFRにおける合計ドロップに寄与する病変が当該血管セグメントに沿ってどの程度広く分布しているかの尺度を表す拡散性スコアを含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、血管ドロップ拡散性スコアを計算することが、前記最大ドロップスコアが前記合計ドロップスコアから異なる程度を決定することを含む。
【0019】
幾つかの実施形態では、前記血管ドロップ拡散性スコアを計算することは、前記合計ドロップスコアと前記最大ドロップスコアとの比率を計算することを含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、前記複数のスコア要素は、前記血管樹内の全ての位置でのFFRの加重平均(前記血管樹の起点からより離れた距離にある位置ほど下向きに重み付けされる)を表す重症度スコアを含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、前記複数のスコア要素は、前記左主冠動脈を前記血管樹内に表された左主冠動脈の第1分岐点まで含むセグメントに関連する1つ以上のスコア要素を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、前記FFR影響スコアは、複合的な値ソート順における前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を、異なる血管セグメント由来の値が互いにインターリーブされるように、表す、ソート化値チャートスコア要素を含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記ソート化値チャートスコア要素を色分け円グラフとして表示することを含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、前記FFR影響スコアは、複合的ヒストグラムにおける前記複数の血管セグメントのそれぞれの前記FFR値を表すヒストグラムチャートスコア要素を含み、前記ヒストグラムへの各前記FFR値の寄与は当該FFR値が内部で生じる血管体積の大きさに従って重み付けされる。
【0025】
幾つかの実施形態では、前記FFR影響スコアは、FFR値が連続的に減少する距離に基づき病変長を記述するスコア要素を含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、前記FFR影響スコアは、主血管及び側枝の両方を含むもの、主血管及びその枝の少なくとも2つを含むもの、大動脈入口部血管セグメント内で生じるもの、血管系の屈曲領域に隣接して生じるもの、血管系の屈曲領域内で生じるもの、のうち1つ以上として病変ジオメトリを記述するスコア要素を含む。
【0027】
幾つかの実施形態では、本方法は、自動的仮想ステント術、手動ステント選択、ステント留置後に測定されたデータ、複数の診断手順を通して測定されたデータ、のうち1つ以上に従って修正された、FFRの修正済みマップに基づき、前記FFR影響スコアを調整することを含む。
【0028】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアを請求項1に記載の方法に従って計算された第2のFFR影響スコアと比較すること、及び、血管疾患の進行速度を推定すること、を含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記推定に基づき更なる診断手順を予定することを含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアに基づき治療手順を計画することを含む。
【0031】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアに基づきOMTとPCIとの間の選択を行うことを含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアに基づきPCIとCABG治療との間の選択を行うことを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアに基づき、配置するステントの、数、位置、及び/又は、種類の少なくとも1つを計画することを含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記FFR影響スコアに基づき、配置するCABG移植片の、数、及び/又は、位置の少なくとも1つを計画することを含む。
【0035】
本開示の幾つかの実施形態では、血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは前記血管セグメントの少なくとも1つに沿ったFFRにおける合計ドロップを当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップと比較する要素を含む、計算すること、
を含む方法が提供される。
【0036】
本開示の幾つかの実施形態では、血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは、前記複数の血管セグメントに由来する個別のFFR値を組み合わせて、隣接血管位置から得られた他の何れのFFR値にも隣接しないグラフ上の位置に前記個別のFFR値の少なくとも幾つかが示される表示とするグラフを含む、計算すること、
を含む方法が提供される。
【0037】
本開示の幾つかの実施形態では、上記の方法を実行するよう構成されたプロセッサを含むシステムが提供される。
【0038】
特記のない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び/又は科学用語は、本開示に関する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は等価の方法及び材料が本開示の実施形態の実施又は試験に用いることができるが、例示的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾が生じる場合、本特許明細書(定義を含む)が優先される。さらに、材料、方法、及び、実施例は、例示にすぎず、必ずしもそれに限定されることを意図するわけではない。
【0039】
当業者であれば理解できるように、本開示の態様は、システム、方法、又はコンピュータプログラム製品として実現できる。これに応じて、本開示の態様は、完全にハードウェアの実施形態の形、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)の形、又は、『回路』、『モジュール』、又は、『システム』と本明細書で全て一般的に呼ばれ得るソフトウェア及びハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形を取ってもよい(例えば、方法は『コンピュータ回路』を用いて実装されてもよい)。さらに、本開示の幾つかの実施形態は、内部に収録されたコンピュータ可読プログラムコードを有する1つ以上のコンピュータ可読媒体に収録されたコンピュータプログラム製品の形を取ってもよい。本開示の幾つかの実施形態の方法及び/又はシステムの実装は、選択されたタスクを、手動で、自動で、又はこれらの組み合わせで、実行及び/又は完遂することを伴い得る。さらに、本開示の方法及び/又はシステムの幾つかの実施形態の実際の機具及び機材によれば、数個の選択されたタスクが、ハードウェアにより、ソフトウェアにより、又は、ファームウェアにより、及び/又は、これらの組み合わせにより、例えば、オペレーティングシステムを用いて、実装され得るだろう。
【0040】
例えば、本開示の幾つかの実施形態に基づく選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装されてもよい。ソフトウェアとして、本開示の幾つかの実施形態に基づく選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いてコンピュータにより実行される複数のソフトウェア命令として実装されてもよい。本開示の幾つかの実施形態では、方法において及び/又はシステムにより実行される1つ以上のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサ(デジタルビットを用いて演算するデータプロセッサを参照して、本明細書では『デジタルプロセッサ』とも呼ぶ)により実行される。任意で、データプロセッサは、命令及び/又はデータを保存するための揮発性メモリ、及び/又は、命令及び/又はデータを保存するための不揮発性記憶装置、例えば、磁気ハードディスク、及び/又は、リムーバブル記憶装置を含む。任意で、ネットワーク接続も同様にもうけられる。ディスプレー、及び/又は、キーボード若しくはマウスなどのユーザー入力装置が、任意で、同様にもうけられる。こうした実装のいずれも、本明細書では、より広義に、コンピュータ回路構成のインスタンスと呼ばれる。
【0041】
本開示の幾つかの実施形態について1つ以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを用いてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体であってもよいし、コンピュータ可読記憶媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、これに限定されるわけではないものの、電子的な、磁気的な、光学的な、電磁的な、赤外線の、又は、半導体の、システム、装置、又は機器、又はこれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非制限列挙)は、1つ以上のワイアを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラム可能リードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光記憶装置、磁気記憶装置、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む。本文書の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、又は機器により又はこれらと関連して使用するためのプログラムを収容又は保存できる任意の有形媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、こうしたプログラムにより使用するための情報を、例えば、コンピュータプログラムが、例えば、1つ以上の、テーブル、リスト、アレイ、データツリー、及び/又は、その他のデータ構造などとして、アクセスできるように、コンピュータ可読記憶媒体により記録されるようなやり方で構造化されたデータを、収容又は保存してもよい。本明細書では、デジタルビットの集合として取得可能な形態でデータを記録するコンピュータ可読記憶媒体もデジタルメモリと呼ばれる。コンピュータ可読記憶媒体がもともと読み取り専用ではない及び/又は読み取り専用状態ではない場合、幾つかの実施形態でコンピュータ可読記憶媒体が任意でコンピュータ書き込み可能記憶媒体としても用いられることを理解されたい。
【0042】
本明細書では、データプロセッサは、コンピュータ可読メモリに結合されて、そこから命令及び/又はデータを取得し、それらを処理し、及び/又は、処理結果を同じ又は別のコンピュータ可読記憶メモリに保存するという範囲で、データ処理活動を実行するように『構成』されているといえる。(任意でデータ上で)実行される処理は命令により特定される。処理行為は、追加的に又は代替的に、例えば、比較、推定、決定、計算、同定、関連付け、保存、分析、選択、及び/又は、変形などの、1つ以上の別の用語で呼ばれてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、デジタルプロセッサは、デジタルメモリから命令及びデータを受け取り、当該命令に従い当該データを処理し、及び/又は、処理結果を当該デジタルメモリに保存する。幾つかの実施形態では、処理結果の『提供』は、処理結果の、送信、保存、及び/又は、提示の1つ以上を含む。提示は、任意で、ディプレイ上に表示すこと、音により示すこと、プリントアウトへ印刷すること、又は、その他のやり方で人の知覚能力で利用可能な形態で結果を与えることを含む。
【0043】
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラムコードが例えばベースバンドに又は搬送波の一部として内部に収録されている伝播データ信号を含んでもよい。こうした伝播信号は、これらに限定されるわけではないものの、電磁形態、光形態、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む、様々な形態の何れの形態を取ってもよい。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく且つ命令実行システム、装置、又は機器により又はこれらと関連して使用するためのプログラムを通信、伝播、又は伝達できる任意のコンピュータ可読媒体であってもよい。
【0044】
コンピュータ可読媒体に収録されているプログラムコード及び/又はこれにより用いられるデータは、これらに限定されるわけではないものの、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、又は、これらの任意の適切な組み合わせを含む、任意の適当な媒体を用いて送信されてもよい。
【0045】
本開示の幾つかの実施形態についてのオペレーションを実行するためのコンピュータプログラムコードは、オブジェクト指向プログラミング言語(Java、Smalltalk、C++など)及び従来の手続き型プログラミング言語(『C』プログラミング言語又は類似のプログラミング言語)を含む1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されてもよい。プログラムコードは、完全にユーザーのコンピュータ上で、部分的にユーザーのコンピュータ上で、スタンドアローンプログラムパッケージとして、部分的にユーザーのコンピュータ上で且つ部分的にリモートコンピュータ上で、又は、完全にリモートコンピュータ若しくはサーバ上で、実行してもよい。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む、任意の種類のネットワークを介してユーザーのコンピュータに接続されてもよく、また、接続は、(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いてインターネットを介して)外部コンピュータになされてもよい。
【0046】
本開示の幾つかの実施形態は、本開示の実施形態に係る、方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品の、フローチャートイラストレーション及び/又はブロック図を参照しつつ、以下に記載されているかもしれない。フローチャートイラストレーション及び/又はブロック図の各ブロック並びにフローチャートイラストレーション及び/又はブロック図のブロックの組み合わせがコンピュータプログラム命令により実装できることを理解されたい。これらのコンピュータプログラム命令は、命令(コンピュータの又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行するもの)がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで特定される機能/行為を実装するための手段を作るように、機械を製造するための、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は、他のプログラム可能なデータ処理装置の、プロセッサに、提供されてもよい。
【0047】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体内に保存された命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで特定される機能/行為を実装する命令を含む製造品を生成するように、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は、特定のやり方で機能する他の装置に指示することができるコンピュータ可読媒体内に記録されてもよい。
【0048】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能な装置上で実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで特定される機能/行為を実装するための処理を提供するように、コンピュータ実装処理を生成する目的で、コンピュータ、他のプログラム可能な装置、又は、他の装置上で一連のオペレーション工程を実行させるために、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、又は、他の装置に、ロードされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本開示の幾つかの実施形態が、添付図面を参照しつつあくまで例示として本明細書に記載される。詳細な図面を具体的に参照するものの、図示されている詳細は、例示であり、本開示の実施形態を説明して論じることを目的とすることを強調しておく。ただし、当業者にとって図面とともに取り上げた記載から本開示の実施形態を実施し得る方法は明らかである。
【0050】
図1A図1Aは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを生成するための方法の模式的フローチャートである。
図1B図1Bは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを生成するための方法の模式的フローチャートである。
図2A図2Aは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを計算する方法の表示結果を表す。
図2B図2Bは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを計算する方法の表示結果を表す。
図2C】2Cは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを計算する方法の表示結果を表す。
図3A図3Aは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、疾患治療選択肢に関連付けして、FFR影響スコアを(円グラフについて既に記載したように構成された円グラフの形態で)模式的に示す。
図3B図3Bは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、疾患治療選択肢に関連付けして、FFR影響スコアを(円グラフについて既に記載したように構成された円グラフの形態で)模式的に示す。
図3C図3Cは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、疾患治療選択肢に関連付けして、FFR影響スコアを(円グラフについて既に記載したように構成された円グラフの形態で)模式的に示す。
図3D図3Dは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、疾患治療選択肢に関連付けして、FFR影響スコアを(円グラフについて既に記載したように構成された円グラフの形態で)模式的に示す。
図4図4は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを計算する方法の表示結果を表す。
図5図5は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、合計FFRスコアの計算及び表示に適合性のあるシステムにより提供されるスクリーン出力の例を示す。
図6図6は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアの計算のためのシステムを模式的に表す。
図7図7は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアの計算のためのシステムのデータ及び処理命令コンポーネントを模式的に表す。
図8図8は、本開示の幾つかの実施形態に基づく、FFR影響スコア成分の計算の模式的フローチャートである。
図9図9は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、重症度平均スコアを計算する方法を模式的に示す。
図10図10は、本開示の幾つかの実施形態に基づき、受け取られたマップ化FFR値をグラフ化する方法の模式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示の幾つかの実施形態の広義の態様は、医学的介入意思決定への直接的な入力として役立つ情報を提供するための血管樹の機能状態を要約するメトリックに関する。幾つかの実施形態では、要約メトリックは血流予備量比(FFR)の尺度を要約する。
【0052】
『FFR』という用語が本明細書で用いられる場合、こうしたFFR結果は、閉塞している可能性のある血管の特定領域を通る現在の血流量(つまり、単位時間当たりの体積という単位で表されるもの)の、閉塞していない点を除けば同等の血管内の同じ部位を通る理想的な血流量に対する、測定された及び/又は推定された比率を表す。FFR(血流予備量比)という略語が暗示するように、FFR結果は、血管が何とかして(例えば、治療により)完全な非閉塞状態に戻るとしたときに(血管閉塞により妨害される)『予備の』血流のどれだけの割合が原理的に血管に回復し得るかの指標となる。FFR値がより減少するほど、より多くの血流がこの意味で『予備』となっており、そして、虚血が潜在的により重度である。
【0053】
こうして定義されるように、『真の』FFR結果は理想であり、実FFR結果は現実世界での限界により拘束される当該理想への近似である。特に、概念的な『非閉塞血管』を実際に利用して現実の同じ血管の病的なものと比較することは不可能なので、一連の計算及び/又は仮定により提供せねばならない。FFRを測定及び/又は推定する実際的な方法は、理想値を近似するために実測定値がどのように用いられるかに部分的に基づいて、異なる。ここで、FFR測定値、FFR推定値、又はFFR値(下記のようにマップ化FFR値を含む)は、こうした測定及び/又は推定方法の全ての結果を包含することを意図する。
【0054】
FFRの血流回復についての推定能力及び機能情報を提供するがそれ自体は(例えば、再正規化による)割合表現ではない値も本明細書ではFFR値として含まれることを理解されたい。
【0055】
さらに、FFRのこの定義はFFRとやはり呼ばれる以前に開発されたインビボでの圧力センサに基づく測定値の上位集合となることを理解されたい(なお、本明細書ではこれを上で定義した『FFR』と区別するために『圧力センサに基づくFFR』と呼ぶ)。圧力センサに基づくFFR結果は、あるベースライン位置での圧力に対する当該ベースライン位置の下流での圧力の割合を表し、ここで、2箇所の位置は、健康な非閉塞血管において当該位置で測定されるはずの圧力がほぼ等しく(例えば、0.8から1又はそれ以上の割合に)なることも期待できるほど、場所的に十分に近い。この割合が約0.8よりも小さい場合、2箇所の測定位置の間に虚血をまねいているのかもしれない閉塞があると考えられる。血流、圧力、及び血流抵抗の関係を表す既知の血流に関する方程式に基づき、圧力は血流の代理として扱われる。
【0056】
圧力センサに基づくFFR測定値は、『真の』血流予備量比を推定するものと解釈され、真の状況を簡略化する傾向のある幾つかの仮定に依拠していると理解することもできる。例えば、こうした仮定として、上流部位自体は更なる顕著な上流の閉塞のない位置にある(現実に実践される本技術では流入位置に上流センサが置かれる)こと、及び/又は、いずれの更なる下流の閉塞も比較的に閉塞のないことが挙げられる。距離が十分に長ければ非閉塞血管に沿って圧力はとにかく減少し得る。全体として、圧力センサに基づくFFR測定値は、血流を部分的に阻害する単一の比較的に限局性の病変により分かたれた2箇所の近くにある位置から測定された場合に、上で定義したFFRと最良の一致を示す傾向がある。
【0057】
一方、画像に基づくFFRは、血管セグメント全体に沿って連続的に、また、同じ血管樹の幾つかの異なる血管セグメントの間でも、血流予備量比を推定する能力を潜在的に有する。画像に基づくFFRは、任意で、別の手段により、例えば、血管に沿った圧力の推定量を獲得するための数値流体力学(数値流体力学、CFD)を用いることにより(圧力は圧力センサに基づくFFRと同様にFFRを計算するために用いられる)、計算される。別の実施例では、画像に基づくFFRは、同じ血管系の狭窄及び仮想的血行再建モデルでのCFDにより決定された血流の比較により計算される。
【0058】
これに応じて、画像に基づくFFRは、FFR値が、2箇所の測定点の間の単一領域のみならず、血管セグメント全体に沿った多様な領域に、任意で、血管セグメント全体に沿って連続的に、また、任意で、こうした血管セグメントの複数に、割り当てられることを可能とする。
【0059】
本明細書では、『血管樹』という用語は、(例えば、患者の、ある特定の血管の解剖学的構造の一部である)血管部分のモデルを意味して用いられ、『血管セグメント』は、血管樹の一部である。特に、血管樹は、分岐点において互いに接続された複数の血管範囲をモデル化する。血管セグメントは、こうした血管範囲の1つ又は複数を表すものとして定義でき、ここで、各血管セグメントは、以下のうち2つの間に延びる。
・血管樹の起点(例えば、心臓動脈血管系をモデル化する血管樹の場合、大動脈基部)
・第1血管分岐点
・第2血管分岐点
・血管樹の非接続末端
【0060】
本開示の幾つかの実施形態の一態様は、複数の接続された血管枝のそれぞれにおける複数位置について計算された単一機能メトリックの推定値の、接続された血管枝における閉塞性血管疾患の全体影響の推定値としての、使用に関する。
【0061】
国際公開第2014/064702号は、血管状態スコア化ツール(vascular state scoring tool、VSST)への入力を提供するための血管造影画像から自動的に収集された様々な血管測定値の使用を記載する。例えば、SYNTAXスコアVSSTである。SYNTAXスコアは、冠血管系疾患状態を特徴付けし解剖学的複雑性に基づき冠動脈インターベンションの転帰を予測するために用いられる血管造影ツールである。SYNTAXスコアは冠動脈疾患の複雑性を等級付けし、これにより患者間の比較及び医師間のより効率的な意思疎通が可能となる。このスコア化計算法は、複雑な心血管症例における意思決定過程の不可欠な部分として心臓ケアの医療専門家の職能団体により推奨されてきている。SYNTAXスコアの質問票は、複数の異なる血管メトリック、例えば、病変の位置及び大きさなどについての入力を必要とし、例えば、閉塞の程度(例えば、スコア化指示書では>50%の閉塞閾値が規定されている)、形状及び長さ、血栓の存在、及び/又は、血管の屈曲度(tortuosity)を含む。VSSTアプローチの代替例は、例えば、『機能的SYNTAXスコア(Functional SYNTAX Score)』(生理学的測定値、例えば、血流能、血管弾性、血管自己調節能力、及び/又は、他の血管機能尺度を、SYNTAXスコア様ツールに統合する)、又は、『臨床SYNTAXスコア(Clinical SYNTAX Score)』(臨床変数、例えば、患者の病歴、並びに/又は、全身的及び/若しくは臓器特異的検査結果を、SYNTAXスコア様ツールに統合する)を潜在的に含む。例には、ARTS試験のために修正された冠動脈枝セグメントのAHA分類、リーマンスコア、ACC/AHA病変分類法、完全閉塞分類法(total occlusion classification system)、及び/又は、分岐部病変のためのデューク分類法及びICPS分類法も含まれる。
【0062】
驚くべきことに、血管系についてのFFRの連続的な又はほぼ連続的なマップがFFR推定値のマップを当該単一パラメータの上に構築されたスコアへと変換することにより多パラメータVSSTに取って代わる能力を潜在的に有するという新たな理解に本発明者は至った。このスコア(これは、例えば、本質的に、スカラー、ベクター、表形式、及び/又は、グラフ形式であってもよい)は、本明細書では、『FFR影響』スコアと呼ばれる。
【0063】
変換は、幾つかの実施形態では、対象の血管ジオメトリの詳細及び/又は血管モデルの完全性に依存する特定の情報の強調を抑え(取り除き)つつ、疾患状態自体の情報は強調することを含む。特に、変換は、FFRのマップから始めて、血管範囲に沿った特定位置のコンテクストからFFR値を抽出して、この関連付けを含まないスコアを作る。幾つかの実施形態では、変換は、分枝末端、基部起点、及び/又は、血管分岐位置(例えば、二分岐部又は三分岐部)の間にそれぞれ画定される複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の)血管セグメントのそれぞれに由来する多数のFFR値(例えば、少なくとも、3、5、10、20、30、又はこれ以上のFFR値)を用いる。幾つかの実施形態では、多数の特定位置が以下の用語の意味合いで連続的に又はほぼ連続的に定義される。
【0064】
本明細書では、『ほぼ連続的』とは、例えば、同定された主要な分岐ノードの間の血管セグメント毎に少なくとも10、20、30、又はこれ以上の推定値、また、より具体的には、通過中にFFRが変化する(減少する)血管部分の長さを識別するのに十分な解像度で取得されたデータを用いた推定値を意味するものであり、すなわち、病変を挟んで存在する2箇所の点だけを定義するわけではなく、病変の始点及び終点も定義する。本明細書では、『連続的』とは、FFR推定値が、血管長に沿って表現解像度の各単位(例えば、各ピクセル)毎に提供され、また、任意で、連続関数、及び/又は、それぞれ自体が連続関数である複数の隣接補間関数のコレクションを用いて計算されることを意味する。FFRの連続的及びほぼ連続的な表現(本明細書では『マップ』とも呼ぶ)は、FFR影響スコア計算の基礎を提供する能力を潜在的に有する。本明細書では、『FFRマップ』、又は、等価表現である『マップ化FFR』という用語は、FFR値を連続的又はほぼ連続的な方式で血管セグメント範囲に沿って別個の特定の位置にマップ化するFFRの表現に相当する。
【0065】
本明細書では、FFR影響スコアを計算する過程で個別のFFR値に変換される非FFR値(例えば、血管機能及び/又は状態の別の尺度)をそれ自体は表す血管マップが『FFRマップ』の種類に属するとも考えられ、また、変換された個別のFFR値もFFRマップに属すると考えられ、例えば、この変換自体が血管位置へのFFR値のマップ化の一部を定義する。
【0066】
FFRの関連性を疾患複雑性へと概念化する一つのやり方は、治療計画の一部として関連するが独立した2つの血管疾患評価の態様を考慮することである。
【0067】
こうした態様の一つは疾患の重症度である。マップ化FFRの値は、少なくとも2つの異なる重症度のメトリック、限局的なもの及び全体的なものへと、まとめ上げられ得る。全体的尺度は、単に、理想的な健康な血管に比べて血流における『合計ドロップがいくらか』を問う。これは、例えば、血管の末端で測定されたFFRの値である。限局的尺度は、要するに、『主要な病変が存在するか』を問うものであり、これは、血流において、例えば、あるウィンドウ内での最大ドロップとして取得される、『最悪の単回ドロップがいくらか』という問いに換言できる。血管疾患の重度の症例には、血流減少状態に明白に寄与し、また、さらには、閉塞が更に進むと、危険な急性虚血の原因となる状態である、重度の局所性狭窄が含まれる可能性がある。重症度の別の態様は、本発明の幾つかの実施形態では、血管樹のどれだけの量がどういった程度でFFRの減少を被っているかの計算値である。これは、例えば、全FFR値がそれらのマップ化位置から取り除かれソート順にグラフ化された場合の曲線より上(且つ最大FFR値の1より下)の相対面積として、計算できる。相対面積が大きいほど、FFRの影響も大きくなる。これは、病状を評価するためのFFRデータの総和型(又は『積分』型の)使用を代表する。
【0068】
別の態様は疾患の治療可能性である。現在許可されている(適切な患者への)標準治療の一部はステント留置術であり、このステントは血管狭窄症の限局性領域を開き且つ開いた状態で保持する役割を果たす。しかし、血管狭窄症の原因が主に限局性領域での構成によるものというわけではない場合、血管ステントは十分な血流の回復を提供できない可能性がある。マップ化FFRの使用により、血管内での合計ドロップは同じであるものの、一方は連続的に及び/又は複数段階に渡ってドロップし、他方は主病変の1又は2箇所だけの限局的位置でドロップするという2つの症例を区別することができる。この場合、前記計算は、例えば、ある血管に沿った所定体積を横切る最大FFRドロップに対する当該血管に沿った合計FFRドロップの比率(任意で、適切な正規化及び/又はオフセット処理される)を取得することを含んでもよい。生の比率又は適切に正規化された比率が低い場合、最大FFRドロップの位置でより多くのFFRドロップが生じており、病変はより限局性である。生の比率か高い場合、当該血管に沿って狭窄部位がより多く分布している可能性がある。幾つかの実施形態では、算術的除算以外の操作、例えば、非線形操作、ルックアップテーブル、又は、患者転帰のデータベースに合計及び最大FFRドロップを一緒に結びつける機械学習結果が用いられる。
【0069】
第1近似について、幾つかの実施形態では、マップ化FFRは、狭窄病変の局限性を示す『微分係数』(又は『傾き』)型情報(微分係数の大きさが大きいほど、局限性が高い)と灌流及び虚血への影響の全体的な重症度を示す『積分』(又は『総和』)型情報とを組み合わせることにより、FFR影響スコアへと変換される。これら3つの型の情報のそれぞれは、任意で、正規化の一部として、他の型に対して正規化される。
【0070】
最後に注目してもよいこととして、FFR影響スコアを生成するためにマップ化FFRに実行できる計算はSYNTAXスコアなどのVSSTが関与するパラメータの種類の幾つかと対応関係を有する。マップ化FFR推定値から決定された限局性は病変長の代理と理解することができる。合計FFRドロップは閉塞のメトリックである。FFRドロップの積分は、何処で病変が生じたのかについてのメトリックであり、(血管に沿った距離の点で)頸動脈に近いほど、制限された灌流による影響を受ける組織領域が広くなる。最後に、これらのメトリックが血管樹の異なる主要分枝上の複数の血管セグメントのそれぞれについてまとめ上げられる場合、血管樹全体についてのスコア状態が決定され得る。
【0071】
FFR影響スコアがSYNTAXスコアが捕捉しようとするのと同じ病変複雑性の基本的な論点の多くに潜在的に『到達する』範囲で、治療をガイドし及び/又は治療転帰を予測するためにFFR影響スコアが同様の価値を有することも潜在的に発見されるかもしれない。同時に、FFR影響スコアは、SYNTAXスコアなどのスコア化方法に対する幾つかの潜在的な利点を有する。単一の基本的な種類の入力データ(FFR)に主に(任意で、それのみに)依拠することにより、FFR影響は数種の異種の入力を一緒に計量する方法を決定するという問題を回避している。FFRを用いた計算は、全てのスコアが再現性を持って追従できるわけではないかもしれないSYNTAXスコアのヒューリスティクスを回避している。スコア化が自動化されていたとしても、閾値条件に依拠することで単一スコアに顕著なノイズが生じ得る。例えば、SYNTAXスコアは、人の意思決定に適しているものの、特に閾値カットオフ値の近くの値について、スコアラー『ノイズ』の影響を潜在的に受ける、閾値で定義された推定値(少なくとも50%が閉塞されている)を含む。個別の症例について大切なものの掛かった決断をせねばならないことから、このノイズは転帰に現実的な影響を与えるが、ノイズエラーを『平均化して取り除く』ために利用できる方法はない。
【0072】
さらに、SYNTAXスコア計算は、自動化できるものの、本来は人が計算するために設計されたものである。FFR影響スコアは、本質的に自動化されているメトリックを用いる。このことにより生じる差異の一例は、人により計算されるスコア化法は記録又は再帰される必要がないので『早期にデータを廃棄』しようとする傾向がある点である。肯定/否定の、及び/又は、おおまかに等級付けされた決定は、人であるスコアラーが対処しやすい。自動化された方法は任意の適切な精度で中間結果データのいずれの量も保持する可能性があるので、単純なスコアが最終結果として必要な場合であってさえも、こうした単純化は、より後の工程で、潜在的には、血管状態スコア自体を生成するための最後の工程で行われる可能性がある。
【0073】
本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示が、その応用において、以下の記載で明記される及び/又は図面で例示される部品及び/又は方法の構造細部及び配列に必ずしも限定されるわけではないことを理解されたい。本開示に記載の特徴(本発明の特徴を含む)は、他の実施形態であったり、様々なやり方で実施又は実行されたりすることが可能である。
【0074】
・FFR影響スコアを生成する方法
ここで、図1A-1Bを参照するが、これらは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアを生成するための方法の模式的フローチャートである。
【0075】
幾つかの実施形態では、ブロック102で、血管造影画像が受け取られる。幾つかの実施形態では、血管造影画像は、複数のX線血管造影図を含む。幾つかの実施形態では、血管造影画像は、別のソースを、例えば、CT、MRI、又は別の撮像手段を有する。本明細書では、特に『2次元撮像』への参照(及びそれにより生じる『2次元画像』)は、センサを撮像平面に置き、放射エネルギー源から撮像される組織を含む体を通過した後に撮像平面で受け取られる放射エネルギー(例えば、X線)を撮像する投影撮像法により得られた血管造影図に関する。
【0076】
血管造影画像は、血管系の一部を含む相互接続された血管セグメントの分岐集合を撮像する。幾つかの実施形態では、この一部は、心臓動脈血管系の一部である。
【0077】
幾つかの実施形態では、ブロック104で、血管造影画像に示された撮像血管が複数の接続された血管を含む血管造形モデルへと変換され、これは本明細書では『血管樹』と呼ばれる。血管樹モデルのセグメントの長手方向範囲は、撮像血管の対応するセグメントの長手方向範囲に対応する。さらに、撮像血管の断面ジオメトリが、モデルで表され、任意で、パラメータ化(例えば、半径、直径、及び/又は、面積としてパラメータ化)され、任意で、例えば、完全な断面形状として特定されるなどして、より完全に記述される。こうしたモデルを生成する方法は、例えば、2014年1月15日に出願された国際公開第2014/111930号に、記述されており、その全体を参照により本明細書で援用する。
【0078】
幾つかの実施形態では、ブロック106で、狭窄症であるか(例えば、狭窄しているか及び/又は少なくとも部分的に閉塞されているか)が決定される血管樹モデルの領域が、血管樹モデルに基づく修整モデルにおいて、『血行再建』される。『血行再建』領域では、血管断面情報は、適切な方法により、修整されて、狭窄症のない状態であったかのようになっている。幾つかの実施形態では、血行再建断面は、狭窄症自体の上流及び/又は下流にある比較的に非閉塞の領域の間で値を補間することにより、回復される。幾つかの実施形態では、他のデータ、例えば、アトラス情報及び/又は一貫性制約が、血行再建直径を回復するために用いられる。血行再建血管樹モデルを生成する方法は、例えば、2014年1月15日に出願された国際公開第2014/111929号に、記述されており、その全体を参照により本明細書で援用する。
【0079】
幾つかの実施形態では、ブロック108で、血管樹全体のFFR値が推定される。幾つかの実施形態では、用いられるFFR値は、元の血管樹モデル及び血行再建された血管樹モデルを通過する流量推定値を比較することにより生成される。FFR値計算は、例えば、2014年1月15日に出願された国際公開第2014/111929号に、記述されている。2017年3月16日に出願された国際公開第2017/199245号(その全体を参照により本明細書で援用する)は、各血管分枝に沿った累積血管抵抗に従った色分け、特に、血管画像データの特徴に基づき計算されたFFRに対応する血管抵抗の表示を記述する。
【0080】
ブロック102-108のこのオペレーションは、必ずしもマップ化FFR値を提供することのできる唯一のアプローチというわけではない。例えば、適切に再構築された血管モデルの数値流体力学(computational flow dynamics、CFD)モデリングが、血管の範囲に沿ったFFRに関連した血流の性質を累積的に決定するために、例えば、圧力センサに基づくFFRで実行されるのと同様に直接的に測定された『かのように』各点で血圧を決定するために、潜在的に用いられ得る。幾つかの実施形態では、FFR影響スコアを計算する方法は、FFRデータのこうした代替源に適用できる。これに応じて、図1Bのフローチャートは単純に血管樹全体のFFR値を受け取るブロック109で始まる。
【0081】
幾つかの実施形態(図1A及び1Bの両方)では、ブロック110で、1つ以上のFFR影響スコアを、例えば、図2A-2Cに関して説明するように、生成するために、複数の推定FFR値がマージされる。
【0082】
・画像に基づくFFR
ここで、図2A-2Cを参照するが、これらは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響を計算する方法の表示結果を表す。本明細書では、『FFR影響スコア』という用語は、FFR測定値自体とは区別して、血管系内のFFR値の全体分布が患者の臨床状態にどのように影響するのかを記述するスコアについての用語として用いられる。異なるFFR影響スコアを持つ患者は異なる治療介入に潜在的に適した候補である。
【0083】
5つの注釈付き血管のうち3つに中等度から重度の虚血性血管疾患を含む症例を図示する図2Aを先ず具体的に参照する。
【0084】
幾つかの実施形態では、FFR影響スコアの基礎は、図1A及び/又は1BのFFRデータを提供するように、血管系に沿った位置で測定及び/計算される個別のFFR値で始まる。
【0085】
画像に基づくFFRの計算の方法は、例えば、2014年1月15日に出願された国際公開第2014/111929号に、記述されている。例えば、幾つかの実施形態では、血管のジオメトリが、血管撮像(例えば、2次元X線血管造影図)に基づき血管樹の大部分について決定され、それらの回復される能力(これは喪失中の『予備能』を回復させると考えられるものである)について評価され、そして、FFR値が、この評価に基づき、例えば、現在の血管状態が計算された非閉塞状態ジオメトリに回復されるとした場合に血管抵抗がどのように変化するかを計算することにより、計算される。
【0086】
画像に基づくFFRのインデックス範囲は、任意で、値が0と1の間の範囲にある圧力センサに基づくFFRのインデックスと同じである。任意で、0.8がカットオフ値として維持され(幾つかの実施形態では、異なるカットオフ値、例えば、0.75又は0.85が、用いられ)、カットオフ値を超える値は、病変が(もしあれば)、少なくともそれ自体としては、非虚血性病変である可能性があることを示し、0.8以下の値は、病変が虚血性病変である可能性があることを示す。
【0087】
幾つかの実施形態では、FFR値は、(例えば、図2Aの血管樹300に示されるように)血管系の3次元モデル又は他のモデルの全体にわたって割り当てられる。表示目的で、幾つかの実施形態では、3次元モデルは、任意で、その位置のそれぞれでFFR推定値に基づき色分けされる(図2Aで、スケールバー320はFFRとグレーレベルとの間の対応を示す)。任意で、個別のFFR値は、例えば、カーソルを用いて冠血管樹モデルの特定位置を選択することにより、見ることができる。
【0088】
・FFR影響スコア化
図2A-2Cを引き続いて参照するが、幾つかの実施形態では、更なる分析は、マップ化FFR(例えば、血管範囲に沿ったFFRの色分けマップに示されるもの)を、血管系の臨床状態へのFFRの影響という意味で、特に、1つ以上の潜在的治療選択肢が血管機能の回復に(すなわち、喪失中の『血流予備量比』の回復に)どのように有効かに関するその影響という意味で、医師が容易に理解できる尺度へと変換することを含む。
【0089】
・グラフ形式のFFR影響スコア化
ここでは少しだけ図10を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、受け取られたマップ化FFR値をグラフ化する方法の模式的フローチャートである。幾つかの実施形態では、ブロック1002で、マップ化FFR値が受け取られる。幾つかの実施形態では、ブロック1004で、FFR値が累積グラフに変換され、これを累積グラフ1004Aと表す。円グラフ330(図2A)は、累積グラフ1004Aの一例を図示しており、FFRデータ自体により示される血管病変のパターンを引き出すために血管ジオメトリを捨象するやり方でマップ化FFRを表示する。血管樹300で血管に沿って分布した状態で示されるFFR値は、代わりに、降順にソートされ(1に最も近い値が最大となる)、等角距離が血管範囲に沿った等距離に当てられた状態で、円に沿って時計回りに色分け(グレースケールに色分け)された半径範囲としてプロットされる。これは、全ての測定された血管(5つの末梢分枝及びそれらに共有される幹セグメント)からのデータを組み合わせて単一の血管樹全体表示とする。
【0090】
円グラフ330は、FFRにおいて病変により生じたステップの数を容易に視覚的に区別することを可能とする。血管位置302、301、308、及び304に位置する4つの病変に対応する、角度314、315、312、及び311ではじまる、4つの顕著な病変後区域が区別できる。血管位置310で終止する血管に沿った微小病変も存在し、角度316及び314の間の対応するFFRドロップが、角度316及び314の間の微小なFFRドロップを角度313及び316の間のドロップのない40%の領域と分けるために線を引くことにより、強調されている。幾つかの病変がより類似した性質を有する一例では、2つ以上のステップが1つのステップへと融合する傾向がある。こうした区域の間で、濃淡のステップは、比較的に短い(限局性病変)又は長い(分散性病変)移行部により分け隔てられている。
【0091】
ステップの数及びシャープネスは、例えば、幾つのステントが血管樹を完全に血行再建するために必要か、また、この血行再建が血管直径の限局的矯正により実現できるかなどの情報を要約する点で、『微分係数関連』である。
【0092】
円グラフ330は、虚血性変化の大きさ(FFRグレースケール値はスケールバー320で示される数に対応する)及び血管系全体のどれだけが罹患しているか(『積分型』情報に対応する)についての情報を与える。『40%』という数字は血管系のどれだけが罹患していないかを示し、一方、名目上の虚血ラインである0.8を超える角度(角度314)は全血管樹のほぼ半分が虚血血流を経験していることを示す。
【0093】
既に触れたように、血管病変はこの表現により幾分か混ぜ合わされる。例えば、角度313から角度316で示される値は、血管位置307と血管位置308、317、304、及び302のそれぞれとの間に延在する唯一の血管範囲をおおよそ結び付けるものである。さらに、FFRにおけるグラデーションは、複数の血管にまたがって組み合わされ、放射状に延在し、例えば、血管位置301と302との間の範囲が寄与する値は、おおよそ角度314と角度311との間に延在しており、血管位置317から310、308から309、並びに304から305及び306の間の範囲が寄与する値と混じり合っている。血管位置301と303との間の範囲(FFRにおける最大ドロップを有する範囲である)は、約角度311と角度313との間の領域のみに対応する。
【0094】
円グラフ330の視覚的パターンのこうした態様は、少なくともおおまかには、疾患重症度に、特に、それに適した治療により例えば次で議論するように指標化される疾患重症度に対応すると理解され得る。
【0095】
ここで、図3A-3Dを参照するが、これらは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、疾患治療選択肢に関連付けて、FFR影響スコア(円グラフ330について既に記載したように構成された円グラフの形態で)を模式的に示す。定性的に単純にみれば、与えられた4つの症例が図3Aの最も重度ものから図3Dの最も健康なものまで疾患重症度を順番に網羅していることが一見して見て取れることができる。
【0096】
こうした定性的印象の量への変換については、先ず現在利用可能な標準治療選択肢の性質を簡単に説明した後に、説明する。
【0097】
冠動脈疾患について現在に一般的に利用可能な治療選択肢を、それらが適用される疾患重症度がおおよそ増加する順番で、以下のように分けることができる。
【表1】
【0098】
3つの治療選択肢を区別するために適用される典型的な判定基準は、OMT、ステント、及びCABGのマーカーとして、それぞれ、一動脈疾患、二動脈疾患、及び三動脈疾患を区別することである。しかし、この大まかな規則は潜在的に患者が誤分類される結果をまねき、例えば、二動脈疾患が実際にはステント留置による治療に抵抗性である可能性もあるし、また、三動脈疾患がそれにもかかわらずステント留置による治療でも治療可能であったりもする。一又は二血管疾患の間でも同様の誤分類の可能性がある。このことを医師は認識しており、一般的にその意思決定では複数の判定基準を用いている。しかし、境界型の患者についてどの治療が適しているかはときおり依然として不明確である。SYNTAXスコアなどの既存の多数のスコア化方法がこれを解決する助けとなり得るものの、本明細書で説明したようにこれらもいくらかの制限を受けるものである。
【0099】
血管系での病変の全体的分布のニュアンスをより多く維持しつつ、依然として、パターンの(ひいては、結果の)直接比較を可能とするほど十分にそれを捨象するスコアは、最適な意思決定に潜在的な利益をもたらす。
【0100】
問題の一態様は、ごく少数の(すなわち、ステント術の実用限界内の数の)病変を修復することが実際に冠血流の十分な改善につながるかを決定する点にある。
【0101】
・数値的FFR影響スコア化の例
図2Aの表形式の要約340は、FFR影響スコアの生成への表形式アプローチの結果を示す。また、図8も参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づく、FFR影響スコア成分の計算の模式的フローチャートである。
【0102】
幾つかの実施形態では、ブロック802で、マップ化FFR値が受け取られる。
【0103】
幾つかの実施形態では、スコアは、複数の成分を含む。幾つかの成分は、ブロック804、806、808、及び810を囲む囲みブロック803のキャプションに示されるように、血管毎に計算される。
【0104】
幾つかの実施形態では、ブロック804で、『合計ドロップスコア』が選択される(ブロック804Aで出力として表される)。モデル化血管樹でマークされた各血管について、最大累積血流障害が選択される(図2Aの症例では、5つの値が結果として得られる)。既に記したように、3つの血管の値は0.8の多血管性スコア閾値に届く(例えば、1.0-0.20=0.8)。実質的に、これはマークされた各血管の末端と非閉塞血管系位置を表す基準値(血管樹の起点でのFFR、又は、単純に、定義上の最大FFRである1)との間の差を測定する。
【0105】
幾つかの実施形態では、ブロック806で、『最大ドロップスコア』(ブロック806Aで出力として表される)が決定される。最大ドロップスコアは、名目上の『単一限局性病変』による最大ドロップの割合を示す。計算目的で、単一限局性病変の最大サイズは、例えば、40mm、又は、別の最大サイズ、例えば、約10mmと100mの間の値の範囲内から選ばれるサイズとされる。
【0106】
幾つかの実施形態では、ブロック810Aは、病変の拡散性重症度の出力を表す(拡散性重症度スコア)。これは、最大ドロップスコアが合計ドロップスコアより次第に小さくなるので、全体の血管疾患が記述された血管に沿って次第に拡散していることの指標である。幾つかの実施形態では、ブロック808で、生の拡散性スコアが、合計ドロップスコアと最大ドロップスコアとの間の比率として計算され、任意で、0のスコアが『最大限局性』病変を示し、より高い値がより拡散性の病変を示すように(例えば、1を引くことで)正規化される。幾つかの実施形態では、ブロック810で、病変の拡散性に任意で分類ランキングが付与される(例えば、なし(無疾患)、限局性(拡散性スコアが、例えば、0.1未満)、中等度(拡散性スコアが、例えば、0.5まで)、及び、重度(拡散性スコアが0.5より大きい))。幾つかの実施形態では、拡散性は、別の方法により、例えば、ルックアップテーブル、非線形関数、及び/又は、患者転帰のデータベースに合計及び最大FFRドロップを一緒に結びつける機械学習結果により、スコア化される。
【0107】
幾つかの実施形態では、ブロック812Aは、『多血管性スコア』出力を表す。幾つかの実施形態では、ブロック812で、多血管性スコアが計算される。
【0108】
幾つかの実施形態では、多血管性スコアは単に(ある限界基準の下で、例えば、0.8の、又は、任意で0.9などのより大きい値の、限界基準の下で)いくつの血管がその長さに沿ったどこかで虚血レベルのFFR値を有するかを数える。示した例では、多血管性スコアは3である。共通病変、例えば、血管4(血管位置306で終止する)と5(血管位置305で終止する)に共通する病変が、1度のみ数えられ、スコア化のために、2つの分枝の一方(この場合、血管4)に割り当てられることに注目されたい。
【0109】
幾つかの実施形態では、多血管性スコア812Aは、『最大ドロップスコア』806Aなどの尺度に(追加的に又は代替的に)基づき、かつ、所定体積内の(例えば、40mm内の、又は、別の体積、例えば、20mm、30m、50mm、又は100mm内の)FFR値におけるドロップの少なくともある量への到達に基づく血管を含む。幾つかの実施形態では、この範囲は、約10mmと100mmとの間の値の範囲内から選択される。この範囲は、PCI治療の良い候補となるのに十分な限局性を有する病変と、拡散性がより高く潜在的にPCI治療への適合性がより低い病変とを区別することを潜在的に可能とする値を含む。
【0110】
図2Aの例では、2つの血管は唯一の病変を有さず、1つは『最大限局性病変』を有する。血管1(血管位置303で終止する)は2つの病変を有し、それらのうちより重度のものが合計ドロップの半分超の原因となる。血管2は1つの明瞭なドロップのみを有するようにみえるが、合計ドロップの約半分を説明するのみであり、このことはこの血管での疾患拡散が『重度』であることを示す。こうした因子は、合わせて検討すれば、特に、血管の1つでの重度に拡散性の疾患の発見を考慮すれば、幾つかの実施形態では、他のリスク因子が許す限り、CABGがこの患者に対する好適な治療である可能性があることを示す。
【0111】
本明細書でFFR影響スコア成分の別の例が図4に関連付けて記載される。
【0112】
図2B及び2Cは、(FFRにより評価して)異なる血管状態及びそれらに関連するFFR影響スコアの例を提供する。
【0113】
図2B(血管樹342、円グラフ341、及び表形式の要約343)では、円グラフ341の(69%とある)最大部分は、1をずっと下回るFFR値を有するが、依然として圧力センサに基づくFFRのカットオフ値である0.80の上をうろついている。そうはいっても、これはより厳格なFFR判定基準によれば『三血管疾患』である(カットオフとして0.9のFFR判定基準を用いて、多血管性スコアが3となる)。したがって、(全ての病変の拡散度が限局性又は中等度であることから)この疾患の重症度はステント術により適しているようにみえる。(全ての病変が0.80のカットオフを上回ることから)対抗として示されるPCIに付随するリスク因子によってはOMTを継続する選択肢も利用可能であるかもしれない。
【0114】
図2C(血管樹352、円グラフ351、及び表形式の要約353)では、全ての血管がある程度は罹患しているが、2つのみが合計ドロップFFRカットオフ値である0.9をパスしており、拡散のレベルは、限局性、又は、悪くとも、中等度である。この対象は、したがって、幾つかの実施形態では、他の場合は二血管疾患状態について選択されるベースライン治療となるPCIを受けるよりもOMTに位置づけられるのが好ましい。
【0115】
値を図表に表すために、例えば、円グラフ341の値を図表に表すために、円グラフを用いることに特に限定されるわけではないことを理解されたい。幾つかの実施形態では、グラフは、値の直交座標グラフ(例えば、FFR値カウントをX軸、FFR値をY軸距離としたもの)、値の極座標プロット(FFR値カウントを角度軸、FFR値を動径長としたもの)、又は、別のグラフ化法である。
【0116】
・数値的FFR影響スコア化の追加例
ここで図4を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響を計算する方法の表示結果を表す。
【0117】
再び表示されるのは、血管樹404、円グラフ402、及び表形式の要約401だが、これらは、概して、図2Aの、血管樹300、円グラフ320、及び表形式の要約340に対応する。血管樹404のラベルは、表形式の要約401にも示される値に対応する重症度及び拡散性の結果の値を(分類評価とともに)付加する。
【0118】
この例では、『TFS』が『合計FFRスコア(Total FFR Score)』の略称として用いられるが、これは『FFR影響スコア』という用語と等価に用いられる。
【0119】
図4の、『合計重症度TFS』、『最大重症度TFS』及び『拡散性TFS』、並びに『多血管性TFS』といったスコアは、図2Aの、『合計ドロップ』スコア、『最大ドロップ』スコア、及び『拡散性』スコアに対応する。
【0120】
図4では、血管樹全体についての『重症度FFR』スコアが示されているが、これは入口部(ostium)からの各位置の距離が離れるのに応じて下向きに重み付けして血管樹の全ての位置についての平均FFR値を計算したものである。1の値は完全に非閉塞である。入口部からの距離に応じた下向きの重み付けにより、血管樹の基部により近い(これに応じてその影響が大きくなる)病変ほどより大きな重要度が付与される。
【0121】
ここで図9を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、重症度平均スコアを計算する方法を模式的に示す。
【0122】
幾つかの実施形態では、ブロック902で、マップ化FFR値が受け取られる。幾つかの実施形態では、ブロック904で、値が距離により重み付けされる(距離が離れるにつれて下向きに重み付けされる)。幾つかの実施形態では、ブロック906で、FFR値をその重みに応じて平均化することにより重症度スコアが計算される。ブロック906Aは得られた重症度スコアを(加重平均として)表す。
【0123】
図4には、体積当たりのFFRを示す棒グラフ403も示されている。基本的に、棒の長さは、体積により重み付けされており、単に血管中央線に沿った距離というわけではない。この方法では、やはり、より下流にある(より狭い血管部位内の)血管領域に幾分か低い重み付けが付与されている。これは、どれだけの範囲が血管の特定部位を通過して流れる血液により最終的に灌流されるのかに、ひいては、当該部位での虚血血流により直接的に影響される範囲の大きさに、対応するという潜在的利点を有する。
【0124】
続いて図10を参照する。ブロック1002で、マップ化FFR値が受け取られる。ブロック1006で、所与の血管位置内の各マップ化FFR値に関連する血管体積を用いて、マップ化FFR値が体積加重値としてグラフ化される。ブロック1006Aはブロック1006で得られた体積加重グラフを表す。
【0125】
幾つかの実施形態では、FFRに基づくサブスコアが『左主狭窄』について提供されるが、左主狭窄では、左冠動脈主幹部内の狭窄が、例えば、個別の血管分枝についてなされた『合計ドロップ』又は『最大ドロップ』の計算値などのメトリックにより、注目対象として特に選抜される
【0126】
幾つかの実施形態では、マップ化FFR値内のパターンは、特定の追加的特徴に関連付けられており、これは、任意で、FFR影響スコアにおいて示される。例を挙げると以下の通り。
【0127】
病変長
全体を通してマップ化FFRが連続して顕著に減少する血管病変の長さ。このメトリックに関して、『顕著に』とは、例えば、全長で所与の閾値(例えば、約0.1)超減少することを意味する。『連続して』とは、中断なく、又は、任意で、特定の血管距離又は体積の閾値よりも短い/小さい(例えば、10mm、20mm、30mm、又は40mmよりも小さい)中断のみを持って、例えば、特定の最小の傾きの大きさで、例えば、10mm、20mm、30mm、又は40mm当たりで、少なくとも0.1という最小の傾きの大きさで、減少することを意味する。
【0128】
主血管+側枝病変
主血管から血管分岐点を過ぎて分枝血管まで延在する、全体を通してマップ化FFRが顕著に減少する(例えば、所与の閾値(例えば、約0.1、任意で、特定の血管長及び/又は体積(40mm、又は、別の体積、例えば、約10mmと100mmとの間の値の範囲内から選ばれる体積など)に対して正規化される)超減少する)血管領域。
【0129】
二分岐部/三分岐部病変
3つ以上の血管セグメント(例えば、主血管と、血管分岐の先の2つの側枝血管と)にわたって延在する、全体を通してマップ化FFRが顕著に減少する(例えば、所与の閾値(例えば、約0.1、任意で、特定の血管長及び/又は体積(40mm、又は、別の体積、例えば、約10mmと100mmとの間の値の範囲内から選ばれる体積など)に対して正規化される)超減少する)血管領域。
【0130】
大動脈入口部病変
大動脈及び/又は大動脈入口部自体が、顕著に減少する、例えば、約0.1(任意で、特定の血管長及び/又は体積(40mm、又は、別の体積、例えば、約10mmと100mmとの間の値の範囲内から選ばれる体積など)に対して正規化される)超減少するマップ化FFRの領域を含む。
【0131】
屈曲度
屈曲度の一尺度は、曲がっている血管セグメントの2箇所の端点の間の最小距離に対する当該血管セグメントに沿った距離の比率が高くなるような過剰な屈曲を血管セグメントが示すことである。例えば、屈曲血管は1.3以上の比率を有する。幾つかの実施形態では、FFR影響スコアは、全体を通してマップ化FFRが連続して顕著に減少する血管領域に関連した屈曲の存在を示す。『顕著に』とは、幾つかの実施形態では、全長で所与の閾値(例えば、約0.1)超減少することを意味する。任意で、減少は、特定の血管長及び/又は体積(40mm、又は、別の体積、例えば、約10mmと100mmとの間の値の範囲内から選ばれる体積など)に対して正規化される。
【0132】
ステント数/ステント有効性の推定値
例えばここまで記載したFFR影響スコア特徴及び/又は図2A-2Cに関連付けて記載したFFR影響スコア特徴の任意の組み合わせにより、ステント数推定値を得ることができる。例えば、病変長及び複雑性が、血流機能をある程度の改善度まで(例えば、0.85、0.90、0.95、又は1.0のFFRまで)回復させると考えられるステント留置の数に適切か評価され得る。任意で又は代替的に、ステントの最大数は、制約され、例えば、術式リスク及び/又は実用性の推定値、並びに、結果として得られる可能性がある改善の程度の推定値とともに得られるステント数推定値(例えば、リスクのため最大値に潜在的に限られる)に基づいて制約される。
【0133】
CABG数/CABG有効性の推定値
例えばここまで記載したFFR影響スコア特徴及び/又は図2A-2Cに関連付けて記載したFFR影響スコア特徴の任意の組み合わせにより、移植片数推定値を得ることができる。例えば、病変長及び複雑性が、血流機能をある程度の改善度まで(例えば、0.85、0.90、0.95、又は1.0のFFRまで)回復させると考えられる移植片の数に適切か評価され得る。任意で又は代替的に、移植片の最大数は、制約され、例えば、術式リスク及び/又は実用性の推定値、並びに、結果として得られる可能性がある改善の程度の推定値とともに得られる移植片数推定値(例えば、リスクのため最大値に潜在的に限られる)に基づいて制約される。
【0134】
・FFR影響スコア化の修正
幾つかの実施形態では、FFR影響スコアを計算するように構成されたシステムは、測定及び/又はシミュレートされた血管状態の変化、例えば、ステント術後の血管造影画像、及び/又は、(例えば、治療及び/又は疾患進行の結果として得られた)疾患状態の変化をシミュレートする血管樹モデルの変化を記述するデータを用いて、FFR影響スコアを再計算するようにも構成される。
【0135】
FFR影響スコア(例えば、図2A-2C及び/又は図4の1つに示された、数値の、グラフ形式の、及び/又は、表形式のデータのいずれか)は、以下の1つ以上に基づき更新される。
【0136】
・自動的仮想ステント術:仮想ステント術後の期待される血行再建された(『回復された健康な』)直径を構成するものについての基準として、近位及び/又は遠位血管位置での血管直径が用いられる。血行再建直径は新しいFFRデータを得るために用いられる血管樹モデルを調整するために用いられ、FFR影響スコアがこれに応じて再計算される。幾つかの実施形態では、最大改善をもたらす判定基準及び最小介入をもたらす判定基準の適切に重み付けされたブレンドにしたがって選択肢が表示される。
【0137】
・手動ステント選択:例えば、位置、長さ、及び直径の提供されたステントのパラメータにしたがって、血管樹モデルが調節されて調整済みFFRデータが得られ、FFR影響スコアがこれに応じて再計算される。任意で、利用可能なステントパラメータは、既知の及び/又は利用可能な(1つ又は複数の)ステントに、例えば、現在の在庫で利用可能なステントに、拘束される。
【0138】
・PCI後データ:ステント術後血管造影画像が血管樹モデルを調整するために用いられる。調整済みFFRデータが得られ、FFR影響スコアがこれに応じて再計算される。
1.フォローアップ:(例えば、数週間、数ヶ月、又は数年の期間にわたり実行された)複数の診断手順の過程にわたり患者から取得された血管造影画像データが、複数の期間依存的血管樹モデルに変換される。各モデルについて調整済みFFRデータが得られ、FFR影響スコアがこれに応じて再計算され、画像監視が及んだ期間にわたるFFR影響スコアの変化を記述する出力がもたらされる。幾つかの実施形態では、複数の診断手順の過程にわたり得られたFFRデータに由来する2つ以上のFFR影響スコアの比較が、血管疾患の進行速度を推定するために用いられる。幾つかの実施形態では、血管疾患の進行速度が、更なる診断手順を予定するために用いられる。任意で、比較は、計算される全てのFFR影響スコアに共通してスコア化される血管セグメントのみを考慮して計算されたFFR影響スコアについて任意で実行される。
【0139】
・システム部品の実装の例
ここで、図6を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアの計算のためのシステム600を模式的に示す。
【0140】
データ記憶装置604が、幾つかの実施形態では、FFRデータを(例えば、本明細書でコンピュータ可読媒体及び/又はメモリとして記載された形態のいずれかで)記憶する。任意で、データ記憶装置604は、例えば図1Aに概説される方法にしたがったFFRの計算で用いられる画像を保存するために用いられる。
【0141】
処理装置608は、幾つかの実施形態では、FFRデータをFFR影響スコアに変換する処理を、例えば本明細書に(例えば、図2A-2C及び/又は図4に関連付けて)記載したFFR影響スコア成分を計算するために用いられる計算の任意の1つ以上にしたがって変換する処理を実行する。
【0142】
ユーザインターフェース602は、幾つかの実施形態では、(例えば、計算のデータを選択及び/又は定義するための、及び/又は、処理を開始及び/又は設定するためのコマンドを提供するための)ユーザ入力を受け付ける。幾つかの実施形態では、ユーザインターフェース602は、FFR影響スコア情報を、例えば本明細書で図2A-4に関連して例示及び/又は記載したような形式で、表示もする。任意で、図6のシステムは、より一般的に血管造影画像分析のためのシステムでもあり、例えば、図5に関連付けて記載したようなシステムである。
【0143】
ここで、図7を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、FFR影響スコアの計算のためのシステム600のデータ及び処理命令コンポーネントを模式的に表す。
【0144】
マップ化FFRデータ702は、例えば図1A-1Bに関連付けて記載したように計算され、データ記憶装置604に記憶された、FFRデータを含む。
【0145】
処理命令コンポーネントは、幾つかの実施形態では、例えば、記憶装置604に記憶され、処理装置608により処理される、コンピュータコードを含む。処理命令コンポーネントの一部はFFR影響サブスコア計算コード704を含み、これは、幾つかの実施形態では、例えば図2A-2C及び/図4に関連付けて記載した、サブスコア計算の1つ以上を実行する。幾つかの実施形態では、処理命令コンポーネントは、FFR影響スコア表示モジュール、例えば、影響サブスコア計算コード704のサブスコア計算値を、表示に、例えば、図2A-4に関連付けて記載した表示に、変換するように構成されたFFR影響スコア表示モジュールも含む。
【0146】
ここで、図5を参照するが、これは、本開示の幾つかの実施形態に基づき、合計FFRスコアの計算及び表示のために適応できるシステム600により提供されるスクリーン出力の例を示す。
【0147】
幾つかの実施形態では、システム600は、侵襲性FFRに類似の、冠動脈病変の機能的意義の定量分析、及び、ルーチンのPCI手順中の、例証された冠動脈の定性的三次元モデルを、医師に提供する、非侵襲性の画像に基づくソフトウェア装置である。例えば、要約ブロック506は、三次元冠動脈モデル501の選択された血流制限血管501Bについて、0.66のFFRを示しており、血流制限血管501Bの色は501Cにあるカラーバー502の濃淡に一致している。中心線血管樹504も示され、これは三次元冠動脈モデル501に対応し、X線血管造影図503上に重ね合わせられている。血流制限血管501Bの直径はグラフ505に沿ってグラフ化され、当該グラフは血流制限血管501BのFFRが完全な健康値である1.00からその表記の値である0.66まで低下することに主に寄与する血流制限の位置に対応する位置505Bでの下降を含む。
【0148】
システム600は、幾つかの実施形態では、冠動脈カテーテル法の最中に取得された血管造影画像及び血行動態情報に基づき、処理及び計算を実行する。
【0149】
任意で、システム600は、追加の侵襲性装置又は血管拡張治療の使用を必要としない。FFRガイドPCI意思決定に関連するシステム600の潜在的利点及び/又は特徴は、幾つかの実施形態では、以下を含む。
・狭窄症の定量化、PCI決定の最適化、及び症例終了時の血行再建の確認のための、術中撮像の送達、計算、及び三次元多血管モデル化。
・追加的介入及び薬理学的投与を含む侵襲性FFRワイアに関連するリスクを伴わない客観的FFR測定。
・主要な血管造影システムと互換な、既存のカテ室撮像及び血管造形装置の使用。
・追加のSKU又は装置関連手順コストの導入を伴わない、直接的及び間接的なFFRワイアコストの除去。
【0150】
システム600により提供された再構築三次元モデルは、血管の形状及び体積を記述し、血行動態パラメータとともに、血流分析の基礎としての役割を果たす。血流分析に基づき、点検された血管についてFFRが計算され得る。幾つかの実施形態では、血流計算は動脈の集中化モデルに基づき、これにより、PCI手順中の医師へのFFR結果の送達の処理時間を短くすることを可能とする。計算後、システム600は、図5に示すように、管状樹の三次元シミュレーション及び注目血管についての計算されたFFR値を提示する。
【0151】
幾つかの実施形態では、例えば図1A-4に関連付けて記載したような合計FFRスコアが、適切に構成されたシステム600により提供された情報に基づき、特に個別の血管及び/又は個別の血管に沿った位置についてのFFR計算値に基づき、計算される。
【0152】
(一般事項)
量及び数値を参照して本明細書で用いられる『約(~)』という用語は『(~)の±10%の範囲内』を意味する。
【0153】
『(~)を含む(comprises、comprising、includes、including)』、『(~)を有する(having)』という用語及びその活用形は、『(~)を含むが(~)に限られるわけではない』を意味する。
【0154】
『(~)からなる』という用語は、『(~)を含み且つ(~)に限られる』を意味する。
【0155】
『(~)から実質的になる』という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の、成分、工程、及び/又は部品を、追加の、成分、工程、及び/又は部品が請求項に記載の組成物、方法、及び構造の基本的且つ新規の特性を実質的に変更しない限り、含んでもよいことを意味する。
【0156】
本明細書では、単数表記は、文脈が明確にそうではないことを示していない限り、複数への言及も含む。例えば、『化合物』又は『少なくとも1つの化合物』という用語は、複数の化合物(これらの混合物も含む)を含み得る。
【0157】
『例』及び『例示的』という語は本明細書では『例、事例、又は、例示として働く』を意味して用いられる。『例』又は『例示的』と記載される如何なる実施形態も、必ずしも、他の実施形態よりも好適又は有利と解釈されるわけではなく、及び/又は、他の実施形態からの特徴の取り込みを排除するわけではない。
【0158】
『任意で』という語は本明細書では『ある実施形態では提供されるが別の実施形態では提供されない』を意味して用いられる。本開示の如何なる特定の実施形態も、複数の『任意』の特徴を、こうした特徴が矛盾しない限り、含み得る。
【0159】
本明細書で用いられる『方法』という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、及び医学の分野の当業者にとって既知である、又は、当該当業者であれば、既知の、方式、手段、技術、及び手順から容易に開発できる、方式、手段、技術、及び手順を含むがこれらに限られるわけではない、所定の目的を達成するための、方式、手段、技術、及び手順を指す。
【0160】
本明細書で用いられる『治療』という用語は、状態の進行を、終わらせる、実質的に阻害する、遅らせる、若しくは逆転させること、状態の臨床若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は、状態の臨床若しくは審美的症状の発症を実質的に防ぐことを含む。
【0161】
本出願を通して、実施形態は範囲形式を参照して提示され得る。範囲形式での記載は、利便性及び簡便性のためのものに過ぎず、本開示の記載の範囲への厳格な制限と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、全ての可能な副範囲並びに当該範囲内の個別の数値を具体的に開示したものと解釈されるべきである。例えば、『1から6』などの範囲の記載は、『1から3』、『1から4』、『1から5』、『2から4』、『2から6』、『3から6』などの、副範囲、並びに、当該範囲内の個別の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6を、具体的に開示したものと解釈されるべきである。
【0162】
数値範囲(例えば、『10~15』、『10から15』、又は、この種の別の範囲表記により接続された任意の数値の組)が本明細書で示されるときは常に、文脈が明確にそうではないことを示していない限り、示された範囲閾値内の任意の数(非整数又は整数)(範囲閾値を含む)を含むことを意図している。第1表示値と第2表示値との『間の範囲』という語句、及び、第1表示値『から』第2表示値『の』又は『までの』(又はこの種の別の範囲表記用語)『範囲』という語句が、本願明細書では互換的に用いられ、第1及び第2表示値並びにその間の全ての非整数値及び整数値を含むことを意図する。
【0163】
本開示の記載は特定の実施形態と合わせて提供されているが、多数の代替例、修正例、及び変形例が可能であることは当業者には明らかである。したがって、特許請求の範囲に記載の請求項に係る発明の趣旨及び広義の範囲に包含されることとなる、こうした代替例、修正例、及び変形例の全てを包含することが意図される。
【0164】
明確性を理由に独立した実施形態の文脈で本開示に記載された幾つかの特徴が単一の実施形態として組み合わせて提供されてもよいことは明らかである。また、反対に、簡潔性を理由に単一の実施形態の文脈で記載された種々の特徴が、独立して、又は、任意の適切なサブコンビネーションで、又は、本開示の任意の別の記載実施形態として、提供されてもよい。種々の実施形態の文脈で記載の幾つかの特徴は、これらの実施形態がその要素なしでは機能しないのでない限り、当該実施形態の必須の特徴と解釈すべきではない。
【0165】
個別の文献、特許、及び特許出願のそれぞれが具体的且つ個別的に本明細書で参照により援用されると記載された場合と同じ範囲まで、本明細書で言及された全ての文献、特許、及び特許出願の全内容を参照により本明細書で援用する。さらに、本出願での如何なる参考文献の引用又は特定もこうした参考文献が本開示に対する先行技術として利用可能であることの自白と解釈されてはならない。節の見出しが用いられる範囲について、これらは必ずしも限定的なものと解釈されるべきではない。さらに、本出願の優先権書類の全内容を参照により本明細書で援用する。
【0166】
[付記]
[付記1]
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアの要素がFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄する、計算すること、
を含む方法。
【0167】
[付記2]
FFRの前記マップは連続して又はほぼ連続してFFR値を前記特定位置に割り当てる、
付記1に記載の方法。
【0168】
[付記3]
FFRの前記マップは少なくとも4つの血管セグメントのそれぞれについて少なくとも5つのFFR値を含む、
付記1又は2に記載の方法。
【0169】
[付記4]
FFRの前記マップは前記特定位置のそれぞれに共通する上流位置からの血流能の減少への寄与を表す、
付記1又は2に記載の方法。
【0170】
[付記5]
前記血管樹は分岐点で接続された前記血管部分の複数の血管範囲をモデル化し、
各前記血管セグメントは、
血管樹の起点、
第1血管分岐点
第2血管分岐点、又は、
前記血管樹の非接続末端
のうち2つの間に延びる、
付記1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
[付記6]
複数のスコア要素であって、それぞれがFFR値の前記特定位置へのマップ化を破棄するものの前記複数の血管セグメントの特定の1つへの関連付けを保持する、複数のスコア要素を前記FFR影響スコアは含む、
付記1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
[付記7]
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについての合計ドロップスコアを含み、前記合計ドロップスコアは、非閉塞血管系を表す基準値からの前記血管セグメントに沿ったFFRにおける合計ドロップを表す、
付記6に記載の方法。
【0173】
[付記8]
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記合計ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を更に含む、
付記6又は7に記載の方法。
【0174】
[付記9]
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、当該血管セグメント全体よりも短い当該血管セグメントの画定部分に沿った当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップを表す最大ドロップスコアを含む、
付記6から8のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
[付記10]
前記画定部分は、約10mmと約100mmとの間の範囲の血液体積が収まる距離である、
付記9に記載の方法。
【0176】
[付記11]
前記画定部分は、約40mmの血液体積が収まる距離である、
付記10に記載の方法。
【0177】
[付記12]
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての前記最大ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当てること、
閉塞血管セグメントの数を数えること、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして提供すること、
を更に含む、
付記9又は10に記載の方法。
【0178】
[付記13]
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについて、FFRにおける合計ドロップに寄与する病変が当該血管セグメントに沿ってどの程度広く分布しているかの尺度を表す拡散性スコアを含む、
付記6から12のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
[付記14]
血管ドロップ拡散性スコアを計算することが、前記最大ドロップスコアが前記合計ドロップスコアから異なる程度を決定することを含む、
付記13に記載の方法。
【0180】
[付記15]
前記血管ドロップ拡散性スコアを計算することは、前記合計ドロップスコアと前記最大ドロップスコアとの比率を計算することを含む、
付記14に記載の方法。
【0181】
[付記16]
前記複数のスコア要素は、前記血管樹内の全ての位置でのFFRの加重平均であって前記血管樹の起点からより離れた距離にある位置ほど下向きに重み付けされる加重平均を表す重症度スコアを含む、
付記6から15のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
[付記17]
前記複数のスコア要素は、前記左主冠動脈を前記血管樹内に表された左主冠動脈の第1分岐点まで含むセグメントに関連する1つ以上のスコア要素を含む、
付記6から16のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
[付記18]
前記FFR影響スコアは、複合的な値ソート順における前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を、異なる血管セグメント由来の値が互いにインターリーブされるように、表す、ソート化値チャートスコア要素を含む、
付記1から16のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
[付記19]
前記ソート化値チャートスコア要素を色分け円グラフとして表示することを含む、
付記18に記載の方法。
【0185】
[付記20]
前記FFR影響スコアは、複合的ヒストグラムにおける前記複数の血管セグメントのそれぞれの前記FFR値を表すヒストグラムチャートスコア要素を含み、前記ヒストグラムへの各前記FFR値の寄与は当該FFR値が内部で生じる血管体積の大きさに従って重み付けされる、
付記1から19のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
[付記21]
前記FFR影響スコアは、FFR値が連続的に減少する距離に基づき病変長を記述するスコア要素を含む、
付記1から20のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
[付記22]
前記FFR影響スコアは、
主血管及び側枝の両方を含むもの、
主血管及びその枝の少なくとも2つを含むもの、
大動脈入口部血管セグメント内で生じるもの、
血管系の屈曲領域に隣接して生じるもの、又は、
血管系の屈曲領域内で生じるもの、
のうち1つ以上として病変ジオメトリを記述するスコア要素を含む、
付記1から21のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
[付記23]
自動的仮想ステント術、
手動ステント選択、
ステント留置後に測定されたデータ、又は、
複数の診断手順を通して測定されたデータ、
のうち1つ以上に従って修正された、FFRの修正済みマップに基づき、前記FFR影響スコアを調整することを含む、
付記1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
[付記24]
前記FFR影響スコアを付記1に記載の方法に従って計算された第2のFFR影響スコアと比較すること、及び、
血管疾患の進行速度を推定すること、
を含む、
付記1から23のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
[付記25]
前記推定に基づき更なる診断手順を予定することを含む、
付記24に記載の方法。
【0191】
[付記26]
前記FFR影響スコアに基づき治療手順を計画することを含む、
付記1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
[付記27]
前記FFR影響スコアに基づきOMTとPCIとの間の選択を行うことを含む、
付記26に記載の方法。
【0193】
[付記28]
前記FFR影響スコアに基づきPCIとCABG治療との間の選択を行うことを含む、
付記26又は27に記載の方法。
【0194】
[付記29]
前記FFR影響スコアに基づき、配置するステントの、数、位置、及び/又は、種類の少なくとも1つを計画することを含む、
付記26から28のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
[付記30]
前記FFR影響スコアに基づき、配置するCABG移植片の、数、及び/又は、位置の少なくとも1つを計画することを含む、
付記26又は28に記載の方法。
【0196】
[付記31]
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは前記血管セグメントの少なくとも1つに沿ったFFRにおける合計ドロップを当該血管セグメントに沿ったFFRにおける最大ドロップと比較する要素を含む、計算すること、
を含む方法。
【0197】
[付記32]
血管部分の臨床状態を推定する方法であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるFFRのマップを受け取ること、及び、
マップ化された前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算することであって、前記FFR影響スコアは、前記複数の血管セグメントに由来する個別のFFR値を組み合わせて、隣接血管位置から得られた他の何れのFFR値にも隣接しないグラフ上の位置に前記個別のFFR値の少なくとも幾つかが示される表示とするグラフを含む、計算すること、
を含む方法。
【0198】
[付記33]
付記1に記載の方法を実行するよう構成されたプロセッサを含むシステム。
【0199】
[付記34]
血管部分の臨床状態を推定するための装置であって、
複数の血流予備量比(FFR)値を前記血管部分を表す血管樹の複数の血管セグメントのそれぞれの上での特定位置に割り当てるデータ構造を記憶するデータ記憶装置、及び、
前記データ記憶装置に通信可能に接続され、且つ、
割り当てられた前記FFR値を用いてFFR影響スコアを計算し、
前記FFR値の前記特定位置への割り当てを破棄するための前記FFR影響スコアの要素を使用し、
ユーザインターフェースに前記FFR影響スコアを表示させる、
ように構成された、処理装置、
を含む装置。
【0200】
[付記35]
複数のスコア要素であって、それぞれがFFR値の前記特定位置への割り当てを破棄するものの前記複数の血管セグメントの特定の1つへの関連付けを保持する、複数のスコア要素を前記FFR影響スコアは含む、
付記34に記載の装置。
【0201】
[付記36]
前記複数のスコア要素は、前記複数の血管セグメントのそれぞれについての合計ドロップスコアを含み、前記合計ドロップスコアは、非閉塞血管系を表す基準値からの前記血管セグメントに沿ったFFRにおける合計ドロップを表す、
付記35に記載の装置。
【0202】
[付記37]
前記処理装置は、
前記複数の血管セグメントのそれぞれに少なくとも当該セグメントについての合計ドロップスコアに基づき閉塞又は非閉塞の状態を割り当て、
閉塞血管セグメントの数を数え、及び、
その総数を前記FFR影響スコアのスコア要素である多血管性スコアとして使用する、
ように構成される、
付記35又は36に記載の装置。
【0203】
[付記38]
前記FFR影響スコアは、複合的な値ソート順における前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を、異なる血管セグメント由来の値が互いにインターリーブされるように、表す、ソート化値チャートスコア要素を含む、
付記34から37のいずれか1つに記載の装置。
【0204】
[付記39]
前記処理装置が、前記ユーザインターフェースに前記ソート化値チャートスコア要素を色分け円グラフとして表示させるように構成される、
付記38に記載の装置。
【0205】
[付記40]
前記FFR影響スコアは、複合的ヒストグラムにおける前記複数の血管セグメントのそれぞれのFFR値を表すヒストグラムチャートスコア要素を含み、前記ヒストグラムへの各前記FFR値の寄与は当該FFR値が内部で生じる血管体積の大きさに従って重み付けされる、
付記34から39のいずれか1つに記載の装置。
【0206】
[付記41]
前記処理装置は、前記ユーザインターフェースに前記ヒストグラムチャートスコア要素を表示させるように構成される、
付記40に記載の装置。
【0207】
[付記42]
自動的仮想ステント術、
手動ステント選択、
ステント留置後に測定されたデータ、又は、
複数の診断手順を通して測定されたデータ、
のうち1つ以上に従って修正された、FFRの修正済み割り当てに基づき、前記FFR影響スコアを調整するように前記処理装置は構成される、
付記34から41のいずれか1つに記載の装置。
【0208】
[付記43]
前記処理装置は、前記FFR影響スコアを第2のFFR影響スコアと比較し、且つ、前記比較に基づき血管疾患の進行速度を推定するように構成される、
付記34から41のいずれか1つに記載の装置。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】