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特表2022-540985被加工物のレーザー加工用光学ユニット及びレーザー加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(54)【発明の名称】被加工物のレーザー加工用光学ユニット及びレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20220913BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220913BHJP
【FI】
B23K26/064 Z
G02B7/02 A
B23K26/064 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576363
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020087640
(87)【国際公開番号】W WO2021130230
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219258.1
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】シャイディガー,ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ムーメンターラー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】リューディ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
2H044
4E168
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AA05
4E168AD07
4E168BA00
4E168DA02
4E168EA24
4E168EA25
(57)【要約】
被加工物のレーザー加工用のレーザービーム、特に高出力レーザービーム用の光学ユニットであって、レーザービームを光学的に結像するための光学素子と、レーザービームに対して透明であり、その外縁部がホルダによって気密な状態で囲まれ、ホルダとともに内部空間を形成し、光学素子が内部空間内に配置されている二つの保護ガラスとを備える、レーザービーム用の光学ユニットが開示される。レーザー加工装置も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物のレーザー加工用のレーザービーム、特に高出力レーザービーム用の光学ユニットであって、
前記レーザービームの光学的結像のための光学素子(12)と、
前記レーザービームに対して透明な2つの保護ガラス(14)と、を含み、
前記保護ガラスの外縁部がホルダ(16)によって気密な状態で囲まれ、前記保護ガラスは前記ホルダとともに内部空間(18)を形成し、
前記光学素子は前記内部空間内に配置され、
前記光学素子(12)は、石英ガラスおよびフッ化カルシウムから選択される少なくとも1つの材料を含むか、またはそれらから形成され、及び
前記保護ガラス(14)は、サファイアおよび硫化亜鉛から選択される少なくとも1つの材料を含むか、またはそれらから形成される、
光学ユニット。
【請求項2】
前記光学素子(12)は、2W/(mK)以下の熱伝導率を有し、及び/又は
前記保護ガラス(14)の少なくとも1つは、10W/(mK)以上の熱伝導率を有する、
請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記保護ガラス(14)と前記ホルダ(16)で形成される前記内部空間(18)には、クリーンルーム雰囲気、不活性ガス、真空、及び/又は非凝結性雰囲気が提供される、
請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記光学素子(12)が、前記保護ガラス(14)の間、及び/又は前記保護ガラス(14)の間の前記レーザービームの光路に配置され、及び/又は
前記光学素子(12)が、前記保護ガラス(14)の少なくとも1つに隣接して、及び/又は保護ガラスから離間して配置され、及び/又は
前記光学素子と前記保護ガラスは、サンドイッチ構造を形成し、及び/又は
前記光学素子(12)及び/又は前記保護ガラス(14)は、前記ホルダ(16)に固定または取り付けられる、
請求項1~3のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記保護ガラスの少なくとも1つは、実質的に平面平行な板として設計され、及び/又は
前記保護ガラスは、互いに実質的に平行に配置され、及び/又は
保護ガラスと、前記光学素子の光軸(22)に垂直に、及び/又は前記レーザービームの伝搬方向(122)に対して垂直に配向された光学素子(12)の平面(22)とは、互いに実質的に平行に配置される、
請求項1~4のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記保護ガラス(14)は、光学接着剤(26)及び/又はねじ接続(28)で前記ホルダ(16)に固定または取り付けられ、及び/又は
前記光学素子(12)は、光学接着剤及び/又はねじ接続(28)で前記ホルダ(16)に固定または取り付けられる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記ホルダは、冷却手段(32)、特に内部冷却チャネルを備える、
請求項1~6のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記レーザービームの光学結像のための前記光学素子は、
前記レーザービームに対して少なくとも部分的に反射性であり、前記レーザービームに対して少なくとも部分的に透過性であり、前記レーザービームに対して焦点距離を設定し、前記レーザービームをガイドし、前記レーザービームを偏向し、及び/又は前記レーザービームを成形するように設計され、及び/又は、
前記保護ガラスの少なくとも1つは、前記レーザービームの光学特性を実質的に変化させない、
請求項1~7のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記光学ユニット及び/又は前記ホルダは、前記光学ユニットの少なくとも1つの構成要素の熱膨張が許容されるように、特に気密の状態において許容されるように設計され、
前記構成要素は、前記保護ガラス、前記光学素子、前記ホルダ、光学接着剤、ねじ接続、冷却手段、内部空間の雰囲気及び/又は内部空間の気体の1又は2つから選択される、
請求項1~8のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項10】
前記保護ガラス(14)及び/又は前記光学素子(12)の少なくとも1つの光学特性、熱特性及び/又は機械的特性をモニタするための少なくとも1つの第1の手段(34)が提供される、
請求項1~9のいずれか1つに記載の光学ユニット。
【請求項11】
レーザー加工装置、特にレーザー加工ヘッドであって、
前記レーザー加工装置は、
レーザービーム(121)を生成するためのレーザー光源(118)用のインタフェース(114)と、
請求項1~10のいずれか1つに記載の光学ユニット(10;20;30)と、
を含み、
前記光学ユニットは、前記レーザービーム(121)の光路に配置されている、
レーザー加工装置。
【請求項12】
前記ホルダ(16)の冷却手段(32)、特に冷却チャネルに連結される冷却装置(116)が設けられる、及び/又は
前記インタフェース(114)が、6kW以上、好ましくは10kW以上のパワーでレーザービーム(121)を供給するレーザー光源(118)と連結する、またはそのようなレーザー光源を備える、
請求項11に記載のレーザー加工装置。
【請求項13】
前記保護ガラス(14)及び/又は前記光学素子(12)の少なくとも一方の、光学特性、熱特性及び/又は機械的特性をモニタするための少なくとも1つの第2の手段(120)をさらに含む、
請求項11または12に記載のレーザー加工装置。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1つに記載の光学ユニット(10;20;30)の使用法、または、被加工物(112)のレーザー加工、特に高出力レーザー加工のための、請求項11~13のいずれか1つに記載のレーザー加工装置の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物をレーザー加工するためのレーザービームの光学ユニット、レーザー加工装置、および光学ユニットまたはレーザー加工装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工装置は、被加工物のレーザー加工、特にレーザー切断のようにレーザー照射によって材料を熱的に分離する方法に使用される。加工用レーザービームは、加工されるシートメタルなどの被加工物に照射される。これは、典型的には、1つ以上の光学素子を用いて加工される被加工物上にレーザービームを光学的に結像させることによって行われる。ここで使用されるにあたり、光学的結像の用語は、例えば屈折、反射、回折及び/又はビーム成形によってレーザービームが被加工物上に導かれることを意味することが明らかである。
【0003】
一般的に、高出力レーザー加工には、レンズなどの石英ガラス(溶融シリカ、FS)製の光学素子が使用されている。石英ガラス製の光学素子は、レーザーパワーの吸収が小さく、発熱がほとんどなく、コーティングが非常にうまくでき、結像特性が非常によく、比較的安価である。しかし、石英ガラス製の光学素子は、汚れに対して非常に敏感であるという欠点がある。光学素子に少しでも汚れがあると、レーザーの出力によって発熱し、石英ガラスは熱をほとんど伝えないため、発生した熱を十分に放熱することができない。そのため、高出力レーザー加工に使用される石英ガラス製の光学素子は、付着した汚れ、例えばゴミや水分によってダメージを受け、結像特性が損なわれることがある。このことは、特に産業環境における高出力レーザーの用途において不利に働く。高出力レーザーアプリケーションの産業環境、特に金属の切断や溶接の際には、通常、高いレベルの汚れが伴うので、使用される部品の汚れに対する感度を考慮することが重要である。例えば、石英製の集光レンズの場合、汚れのある領域での局所的な加熱は、望ましくない焦点移動、すなわちレーザービームの伝搬方向に、および/または伝搬方向に対して斜めに焦点が移動することを誘発する可能性がある。レーザー加工システムはしばしば、(ごくわずかでも)汚れた石英ガラス光学素子のために故障する。EP 2511040 A1には、レーザー加工ヘッドにおいて光学素子を保持するための透明な保護装置を備えたカセットが記載されている。
【0004】
高出力レーザー用光学素子の代替材料として、硫化亜鉛(ZnS)がある。ZnSは熱伝導性に優れている。しかし、この材料は高価であるだけでなく、一般的に結晶性で異方性があり、レーザー吸収が比較的大きく、前方散乱が約2~3%である。これは、印加されたレーザーパワーの2~3%が、意図したとおりに画像化、例えば集光されないことを意味する。むしろ、レーザーパワーの2~3%は、大きな散乱円錐のような状態で制御されない方法で前方に散乱する。この結果、ZnS光学素子の周囲、例えば光学素子ホルダやレーザー加工ヘッド全体が加熱されることになる。また、散乱光によってレーザー加工工程に悪影響が及び得る。
【0005】
高出力レーザー用光学素子のもう1つの材料として、サファイアが提案されている。この材料はZnSよりも散乱量が少なく(FSよりは多い)、熱伝導率も許容範囲であるため、多少の汚れがあってもすぐに光学素子やレーザー加工装置の故障につながることはない。しかし、サファイアは高価であり、硬度が高いため加工(研削、研磨など)が難しい。また、サファイアを用いた曲面光学素子を製造する場合、形状(端部の厚み、曲率半径など)に制約が生じる。
【0006】
また、サファイアには異方性、および複屈折性であるという欠点がある。そのため、サファイアで作られた湾曲した光学素子を通すと、偏光によって光が異なるように写る。特に高出力レーザーの場合、ほとんどの場合、レーザービームは異なる、またはランダムな偏光性を持つため、この複屈折は画像誤差(非点収差)につながる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、表面汚染に対する感度が低く、良好な結像特性を有する光学ユニットを提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の光学ユニット、請求項11に記載のレーザー加工装置、および請求項14に記載の光学ユニットまたはレーザー加工装置の使用方法によって達成される。
【0009】
一実施形態において、本発明は、被加工物のレーザー加工用のレーザービーム、特に高出力レーザービーム用の光学ユニットであって、レーザービームを光学的に結像するための光学素子と、レーザービームに対して透明であり、その外縁部がホルダによって気密な状態で囲まれ、ホルダとともに内部空間を形成し、光学素子が内部空間内に配置されている二つの保護ガラスとを備える、レーザービーム用の光学ユニットに関する。
【0010】
このように、光学ユニットは、透明な保護ガラスと光学素子との複合光学システムとして設計される。光学素子は保護ガラスとホルダで形成される気密性の高い内部空間に配置されるため、光学素子の表面は塵や埃の粒子、湿気、ガスなどの望ましくない汚染から保護される。このため、レーザービーム、特に高出力レーザービームが光学素子に入射しても、表面の汚れによって加熱されることがない。そのため、長期間の使用、および/または高出力レーザーの使用においても、光学素子の損傷が回避され、光学素子の結像特性が損なわれることがない。特に、前方散乱と複屈折は、この光学ユニットによって回避することができる。
【0011】
光学素子は、2W/(mK)以下の熱伝導率を有してもよい。光学素子は、石英ガラスおよびフッ化カルシウムから選択される少なくとも1つの材料をさらに含むか、またはそれらから形成されてもよい。光学素子は、熱伝導率が低いが、表面汚染から保護されているため、レーザー照射時の光学素子の損傷は回避される。
【0012】
保護ガラスの少なくとも1つは、10W/(mK)以上の熱伝導率を有することができる。また、保護ガラスの少なくとも1つは、サファイアおよび硫化亜鉛から選択される少なくとも1つの材料を含むか、またはそれらから形成されることができる。レーザービームの光学的結像は、保護ガラスではなく、光学素子によって行われ得る。したがって、10W/(mK)以上の熱伝導率を有する保護ガラスおよび/または前述のサファイアおよび硫化亜鉛などの材料を使用した場合でも、前方散乱および複屈折を回避することができる。同時に、この種の保護ガラスは、例えばFSと比較して、表面汚染に対して比較的鈍感であり、及び/又は表面汚染に対して比較的強い。全ての実施形態において、保護ガラス及び/又は光学素子の少なくとも1つは、高純度光学材料から形成されてもよい。
【0013】
保護ガラスとホルダで形成される内部空間には、クリーンルーム雰囲気、不活性ガス、真空および/または非凝結性雰囲気を設けてもよい。不活性ガスとしては、窒素や、アルゴンなどの希ガスが使用できる。非凝結性雰囲気は、例えば、絶対湿度が0.2g/m以下であることができる。このような対策により、光学素子の表面汚染をさらに最小限に抑えることができる。
【0014】
光学素子は、保護ガラスの間および/または保護ガラス間のレーザービームの光路に配置することができる。したがって、光学ユニットは、例えば、レーザービームが保護ガラス上と光学素子上の両方に実質的に垂直に入射するように設計することができる。あるいは、光学素子は、例えば、レーザービームが垂直に対してある角度で斜めに入射し、保護ガラスには実質的に垂直に入射する反射鏡として設計することができる。加えて又は代わりに、光学素子は、保護ガラスの少なくとも1つに隣接して及び/又は保護ガラスから離間して配置することができる。例えば、光学素子と隣接する保護ガラスまたはガラスの間には、さらなる要素は配置されない。光学素子が保護ガラスの少なくとも1つから距離を置いている場合、それらの間の接触も回避される。光学素子と保護ガラスは、サンドイッチ構造を形成することも可能である。光学素子および/または保護ガラスは、ホルダに固定または取り付けられることも可能である。前述した光学ユニットの実施形態によれば、光学ユニットのコンパクトで省スペースの構成が可能となる。
【0015】
実施形態の光学ユニットにおいて、保護ガラスの少なくとも1つは、実質的に平面平行な板として設計することができる。平板状の保護ガラスは、有利に安価に製造することができる。さらに、保護ガラスは、互いに実質的に平行に配置することができる。保護ガラスと、光学素子の光軸及び/又はレーザービームの伝搬方向に対して実質的に垂直に配向された光学素子の平面とは、互いに実質的に平行に配置することができる。光学ユニットのこれらの実施形態はまた、表面汚染に対する低感度とレーザービームに対する良好な結像特性を同時に有する光学ユニットのコンパクトで省スペースの構成を可能にする。
【0016】
光学ユニットの実施形態において、保護ガラスを、光学接着剤および/またはねじ接続でホルダに固定する、または取り付けることができる。さらに、光学素子を、光学接着剤および/またはねじ接続でホルダに固定する、または取り付けることができる。これらの構成により、光学ユニットおよび/または保護ガラスをホルダに接続することができる。
【0017】
光学ユニットのさらなる実施形態では、ホルダは、冷却手段、特に内部冷却チャネルを備えることができる。これにより、レーザー加工中の使用中に、ホルダ、ひいては光学素子及び/又は保護ガラスを冷却することができる。これは、光学素子が保護ガラスの間に配置される実施形態、及び/又は保護ガラス間のレーザービームの光路に配置される実施形態、及び/又は光学素子と保護ガラスとがサンドイッチ構造を形成する実施形態についても当てはまる。
【0018】
光学素子は、レーザービームに対して少なくとも部分的に反射性であり、レーザービームに対して少なくとも部分的に透過性であり、レーザービームに対して焦点距離を設定し、レーザービームをガイドし、レーザービームを偏向し、及び/又はレーザービームを成形するように、レーザービームの光学的結像に対して設計することが可能である。代替的に又は追加的に、保護ガラスの少なくとも1つは、レーザービームの光学特性を実質的に変化させないように設計することができる。これらの実施形態で個別に又は組み合わせて達成することができるのは、レーザービームの所望の光学的結像だけでない。レーザービームの光学的結像も、保護ガラスではなく、光学素子によって行われることができる。したがって、10W/(mK)以上の熱伝導率を有する、及び/又はサファイア及び/又は硫化亜鉛を含む保護ガラスを用いる場合であっても、前方散乱及び複屈折を回避することが可能である。同時に、この種の保護ガラスは、表面の汚染に対して比較的鈍感である。
【0019】
光学ユニットの実施形態において、光学ユニット及び/又はホルダは、光学ユニットの少なくとも1つの構成要素の熱膨張が許容されるように、特に気密の状態において許容されるように設計することができ、構成要素は、保護ガラス、光学素子、ホルダ、光学接着剤、ねじ接続部、冷却手段、内部空間の雰囲気及び/又は内部空間の気体の1又は2つから選択される。少なくとも1つの構成要素の熱膨張を許容することによって、結果として生じる構成要素の膨張を、光学ユニットの1つ以上の構成要素を損傷することなく許容することができる。光学素子および/または光学ユニットの別の構成要素が加熱の結果として膨張したとしても、特に光学素子の半径方向の遊びが提供されてもよく、光学ユニットおよび/またはホルダ内でゆがみが発生しないようにされ得る。例えば、その材料の弾性率により、光学系の熱膨張を少なくとも部分的に吸収することができる十分な弾性を有する光学接着剤および/またはホルダを使用することができる。接着剤は、100~500MPa、好ましくは150~250MPa、より好ましくは180~220MPaの弾性係数を有することができる。ねじ接続の場合、保護ガラス14及び/又は光学素子12がホルダ16の内壁又は少なくとも1つの容易に変形可能なマウント、例えば内側リングに横たわり、半径方向の遊びを有するという点で、光学ユニットの少なくとも1つの構成要素の熱膨張は許容されることができる。
【0020】
光学ユニットの実施形態において、保護ガラス及び/又は光学素子の少なくとも1つの光学的特性、熱的特性及び/又は機械的特性をモニタするための少なくとも1つの第1の手段が提供され得る。いくつかの実施形態によれば、保護ガラス上及び/又は光学素子上の任意の汚れは、実質的にモニタされ得る。
【0021】
保護ガラス上及び/又は光学素子上の汚れ及び/又は粒子及び/又は水滴は、典型的には、レーザービームを散乱させることによって散乱光を引き起こす。実施形態によれば、この散乱光は、少なくとも1つのフォトダイオード(PD)を用いて検出することができる。例えば、保護ガラス及び/又は光学素子は、光学ユニットの側面に設けられた少なくとも1つのフォトダイオードでモニタすることができる。少なくとも1つのフォトダイオードは、光学ユニットの一部であってもよく、例えば、光学ユニットのホルダの外側に提供されてもよい。あるいは、ホルダの横方向に透明な孔を設けることができる。このように、光学ユニットの一部である、または別個に設けられる少なくとも1つのフォトダイオードにより、保護ガラスの外側および/または内側表面および/または光学素子を、透明孔を通した側面からの観察によってモニタすることが可能である。
【0022】
さらに、例えばPt100のような熱センサを設け、例えば光学ユニットのホルダなどの温度をモニタすることができる。この目的のために、熱センサと光学ユニットのモニタされる部品との間の接触は、熱センサが少なくとも部分的に光学ユニットの一部となるように提供されてもよい。熱センサは、温度センサとも呼ばれる。
【0023】
さらに、モニタする部品(例えばサーモパイル)から発せられる熱放射を検出する光学検出器を提供することができる。光学検出器は、少なくとも部分的に光学ユニットの一部とすることができる。このような検出器は、光学ユニットとは別に設けることも可能である。
【0024】
一実施形態において、本発明は、レーザー加工装置、特にレーザー加工ヘッドであって、レーザービームを生成するためのレーザー光源用のインタフェースと、先の実施形態の1つによる光学ユニットであって、光学ユニットがレーザービームの光路に配置されている光学ユニットと、を含む装置に関する。したがって、光学ユニットについて述べた利点および効果は、レーザー加工装置において達成することができる。
【0025】
レーザー加工装置の実施形態では、ホルダの冷却手段、特に冷却チャネルに連結される冷却装置を設けることができる。加えてまたは代わりに、インタフェースは、6kW以上、好ましくは10kW以上のパワーでレーザービームを供給するレーザー光源と連結してもよく、またはそのようなレーザー光源を備えてもよい。
【0026】
レーザー加工装置は、さらに、保護ガラス及び/又は光学素子の少なくとも一方の光学的特性、熱的特性及び/又は機械的特性をモニタするための少なくとも1つの第2の手段を有してもよい。例えば、光学ユニットの上方及び/又は下方に少なくとも1つのフォトダイオードを、レーザー加工装置において、それとは別に取り付けることができる。モニタされるべき構成要素の表面、例えば光学ユニット及び/又は一方又は両方の保護ガラスは、少なくとも1つのフォトダイオードで観察することができる。さらに、熱センサをレーザー加工装置に設けることができ、この熱センサで、例えば光学ユニットのホルダの温度がモニタされる。この目的のために、熱センサは、光学ユニットのモニタ対象部品に接触してもよい。さらに、光学検出器をレーザー加工装置に設けてもよく、この検出器は、モニタされる構成要素から発せられる熱放射を検出する(例えば、サーモパイル)。このような検出器は、光学ユニットとは別に設けることができる。RTD(抵抗温度検出器)とも呼ばれる抵抗温度センサ、特に定格抵抗値100オームの白金抵抗温度センサとしてPt100を、熱センサとして使用することができる。
【0027】
上記実施形態のレーザー加工装置では、光学ユニット、特に、同一および/または類似の特徴を有する光学ユニットの実施形態と同様の利点、動作モードおよび機能を実現することができる。
【0028】
特に、光学素子が石英ガラス及びフッ化カルシウムから選択される少なくとも1つの材料を含むか又はそれらから形成される光学ユニットの実施形態、及び/又は保護ガラスの少なくとも1つがサファイア及び硫化亜鉛から選択される少なくとも1つの材料を含むか又はそれらから形成される、及び/又は実質的に平面平行板として設計されている光学ユニットの実施形態は、望ましくない効果を回避しながら、本明細書に記載の利点を提供することが可能である。例えば、サファイア及び硫化亜鉛から選択される少なくとも1つの材料を含むか又はそれらから形成され、平面平行なプレートとして設計される少なくとも1つの保護ガラスを使用すると、前方散乱及び/又は複屈折を決定的に減少又は回避することができる。このことは、特に、同じ材料の湾曲した素子と比較したときに成り立つ。
【0029】
一実施形態において、本発明は、被加工物のレーザー加工、特に高出力レーザー加工のための、先の実施形態の1つによる光学ユニットまたは先の実施形態の1つによるレーザー加工装置の使用に関する。このようにして、光学ユニットについて述べた利点および効果を、被加工物のレーザー加工という分野において実現することができる。特に、光学ユニットは、レーザー切断のため、またはレーザー溶接のために使用することができ、それぞれの場合において、例えば、約1μmの波長を有する高出力レーザー(ファイバレーザー、ディスクレーザー)を使用することができる。
【0030】
さらなる特徴および利点は、以下の実施形態の説明、図、および従属請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
ここに記載された実施形態の相互に排他的でない特徴はすべて、互いに組み合わせることができる。以下の説明において、実施形態の同じ要素には同じ参照符号が付されている。ある実施形態の個々の要素または複数の要素は、さらに言及することなく、他の実施形態で使用することができる。次に、本発明の実施形態を、図を参照しながら以下の例を用いてより詳細に説明するが、これによっていかなる限定も意図するものではない。
【0032】
図1図1は、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニット10の例の模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニット20の例の側面断面模式図である。
図3a図3aは、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニットの詳細を例示する側面断面模式図である。
図3b図3bは、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニットの詳細を例示する側面断面模式図である。
図3c図3cは、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニットの詳細を例示する側面断面模式図である。
図3d図3dは、本発明の実施形態に係る、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用光学ユニットの詳細を例示する側面断面模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る、光学ユニット30のさらなる例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る、レーザー加工装置100の例を示す模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る、レーザー加工装置200の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る光学ユニット及び/又は加工装置について、特に、加工ヘッド(レーザー加工ヘッドともいう)を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。光学ユニットは、例えば、レーザー溶接ヘッドに設けることができ、あるいは、レーザー切断ヘッドに設けることができる。
【0034】
なお、この場合の「気密」という用語には、「気体がもれない」及び/又は「塵が侵入しない」という意味が含まれる。用語「透明保護ガラス」及びその改変は、吸収とは別に、特に垂直に衝突するレーザービームを実質的に光学的に変化させずに通過させる透明な光学ウィンドウを示す。要素に対するレーザービームの垂直入射は、実施形態において、その伝搬方向及び/又は光軸を有するレーザービームが、例えば保護ガラスなどの関連する要素に実質的に垂直に入射することを意味する。「レーザービーム」及び「加工用レーザービーム」という用語は、同義的に使用される。また、「レーザー加工装置」及び「加工装置」という用語も同義的に用いられる。「石英ガラス」と「石英」という用語は、同義で使用される。本明細書で使用される熱伝導率の単位W/(mK)は、W/(m×K)と理解される。
【0035】
さらに、ここで数値範囲を記載する場合、広い範囲に狭い代替範囲または好ましい範囲を指定することは、指定された範囲の下限と指定された範囲の上限の任意の組み合わせによって形成される範囲も開示すると考慮されるものとする。
【0036】
図1は、実施形態に係る被加工物のレーザー加工用レーザービームの光学ユニット10の一例を模式的に示す図である。図1は、光学ユニット10の側面断面図である。
【0037】
光学ユニット10は、レーザービームを光学的に結像させるための光学素子として集光レンズ12を備えている。なお、集光レンズ12は、図では模式的にしか示されていない。さらに、レーザービームに対して透明な2枚の保護ガラス14が設けられ、その間に集光レンズ12が配置されている。保護ガラス14は、周辺外縁部15を有する。後者は、ホルダ16によって、実質的に、気密的に囲まれている。保護ガラス14は、ホルダとともに、光学素子12が配置される内部空間17を形成している。
【0038】
本実施例では、集光レンズ12、保護ガラス14およびホルダ16は、図の平面に垂直な断面(図示せず)において円対称または回転対称になるように設計されている。集光レンズ12の材質は高純度石英ガラス(溶融シリカ、FS、SiO)であり、熱伝導率は約1.38W/(mK)である。集光レンズ12は、直径が約5.00cmである。保護ガラス14は、高純度サファイア(Al)製で、熱伝導率が約27.2W/(mK)である。保護ガラス14は、本実施例では約3mmの厚さを有し、約5.00cmの直径を有している。他の実施例では、保護ガラス14は、約1~3mmの厚さにすることができる。ホルダ16はリング状で、約6mmの厚さ、約5.00cmの内径、約2cmの高さを有し、アルミニウム合金AlMg4.5Mn0.7から作られる。保護ガラス14と集光レンズ12は、ホルダ16に、例えばねじ接続で取り付けられている。
【0039】
光学的結像は石英ガラス製の集光レンズ12で行われ、サファイア製の保護ガラス14とホルダ16が集光レンズ12を汚染から保護する。保護ガラス14は、レーザービームの光学的結像を生じない。したがって、前方散乱および複屈折は光学ユニット10で回避され、集光レンズ12の汚染、湿気および汚れに対する感度は最小化される。石英製の集光レンズやサファイア製の保護ガラスも容易に入手可能である。また、硫化亜鉛製の保護ガラスも同様に、代替品として使用することが可能である。全体として、光学ユニット10の構造のために、その結像特性、特に収差、レーザービームの吸収、汚れに対する感度、光学ユニットによって生じるレーザービームの前方散乱および複屈折、ならびにその製造可能性および製造コストが最適化される。
【0040】
図2は、被加工物をレーザー加工するためのレーザービーム用の光学ユニット20の一例を、側面断面図で模式的に示している。
【0041】
図1の光学ユニット10とは対照的に、光学ユニット20は、内部空間17にクリーンルームの雰囲気を含んでいる。両保護ガラス14は、それぞれ実質的に平面平行な板状に設計され、互いに平行に配置されている。保護ガラス14と、光学素子20の光軸22に直交する向きの光学素子20の平面24とは、互いに平行に配置されている。光学ユニットは、例えば、集光されるレーザービームが、保護ガラス14と光学素子20の両方に実質的に垂直に入射し得るように設計されている。光学素子20は、保護ガラス14に隣接し、保護ガラス14から間隔を空けて配置されている。光学素子20と保護ガラス14は、サンドイッチ構造を形成する。したがって、光学ユニット20の前述の実施形態は、光学ユニットのコンパクトで省スペースの構成を可能にする。
【0042】
図3aおよび図3bは、一例として、ホルダ16と保護ガラス14の一方との接続箇所を示している。図3bは、図3aに示す円形部Aを拡大した図である。ホルダ16は、両端に凹部25を有する。本実施例では、保護ガラス14は約5.30cmの直径を有し、ホルダは約5.00cmの内径を有している。図3a及び3bに示されるように、保護ガラス14は、ホルダ16上の凹部25に載り、光学接着剤26によって支持点でホルダ16に固定される。保護ガラス14は横方向に、すなわちその周辺外縁15がホルダ16から距離を置いて配置されており、これは図3bにおいて二重矢印27で特定されている。
【0043】
光学接着剤26としては、レーザービーム用途に適し、弾性率が500MPa以下の市販の接着剤を選択することができる。本実施例では、光学接着剤26は約200MPaの弾性率を有し、アルミニウム製のホルダ16は約70GPaの弾性率を有している。また、保護ガラス14の材料としてサファイアやZnSを用いた例では、サファイアの弾性率は約345GPaであり得て、ZnSの弾性率は約88GPaであり得る。
【0044】
ホルダ16と光学接着剤26の弾性特性、および光学ユニット20の空間構造により、保護ガラス14はホルダ16内で径方向の遊びを有する。レーザービーム、特に高出力レーザービームによる光学ユニット20の照射の間、ホルダ16、保護ガラス14及び光学接着剤26の熱膨張は許容され、保護ガラス14とホルダ16との間の実質的に気密な接続が維持される。
【0045】
同様に、さらなる例では、光学素子12は、光学接着剤を用いて、ホルダ16の凹部または突起上に取り付けられる。光学素子12は、実質的に気密な方法でホルダ16に取り付けられることも可能である。
【0046】
代替的に又は追加的に、実施形態の光学ユニットにおいて、少なくとも1つの保護ガラス14及び/又は光学素子12は、ネジ接続及び/又はマウント28によってそれぞれの場合にホルダ16に取り付けられることができる。保護ガラス14のためのマウント28および/または光学素子12のためのマウント28は、ホルダ16にねじ込み、クランプし、および/または接着接合することができる。マウント28は、容易に変形させることができる。
【0047】
例えば、図3cに示すように、保護ガラス14は、凹部25内のホルダ16の内壁に設けられ、マウント28として内側リングまたはOリングによって凹部25に保持される。マウント28は、その空間構造及び/又はレーザー用途に適した材料により、容易に変形可能である。マウントまたは内側リング28は、例えば、ステンレス鋼から、またはアルミニウム合金、例えばAlMg4.5Mn0.7から形成することができる。保護ガラス14の側面は、その外縁15がホルダ16から距離27をおいて配置され、半径方向に遊びを有している。内側リング28は、ホルダ16の内ねじ(図示せず)に実質的に気密にねじ込まれるねじ山(図示せず)を有する。保護ガラス14は、変形可能な内側リング28に対して、または内側リング28上に横たわっている。このようにして、保護ガラス14は、実質的に気密な状態でホルダ16に取り付けられる。
【0048】
同様に、さらなる例では、図3dに示すように、光学素子12は、ホルダ16の突起29と、ホルダ16上のマウント28としての内側リングとの間に取り付けられる。光学素子12は、実質的に気密な方法でホルダ16に取り付けられてもよい。
【0049】
図3cと3dの例では、マウント28は、ねじ接続に加えて、またはその代替として、ホルダ16にクランプされる、および/または光学接着剤で接着されることが可能である。
【0050】
保護ガラス14の一方又は両方、光学素子12、マウント28及び/又はホルダ16の熱膨張は、ねじ接続の間に許容され得て、それらの接続、特にそれらの実質的な気密接続は維持される。
【0051】
さらなる例として、図4は、実施形態に係る光学ユニット30を示す。光学ユニット10、20とは対照的に、光学ユニット30は、ホルダ16に設けられた冷却チャネル32を有する冷却手段を有する。レーザー加工中、冷却流体、例えば水または液体窒素が冷却チャネル32を通って流れ、その結果、光学ユニット30を冷却することができる。
【0052】
また、光学ユニット30は、保護ガラス14の一方に熱伝導可能に接続される熱センサ34を備えている。熱センサ34は、例えばPt100で実装することができ、保護ガラス14の熱特性をモニタするための第1の手段として機能する。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置100の一例を模式的に示す図である。
【0054】
レーザー加工装置100は、レーザー加工ヘッドとして設計されている。レーザー加工ヘッド100は、加工用レーザービームを生成するためのレーザー光源用のインタフェース114と、出口開口部115とを有する。図1に示す光学ユニット10は、インタフェース114と出口開口部115との間に配置されている。
【0055】
図6は、一例として加工装置200を模式的に示す図である。加工装置200は、図5のレーザー加工ヘッド100と対照的に、光学ユニット10に代えて図4の光学ユニット30を搭載した加工ヘッドとして設計されている。インタフェース114には、図6に伝搬方向122のビーム束(beam bundle)として破線で示されるレーザービーム121を発生させるためのレーザー光源118が設けられている。本実施例では、レーザー光源118を結合するために、輸送ファイバ119が設けられている。代替例では、加工レーザー光源118は、インタフェース114に直接提供することができる。本実施例では、加工レーザー光源118は、約6kWの出力を有し、1070nmの波長を含むスペクトル範囲において加工レーザービームを生成する。しかしながら、6kWより低い出力、例えば約1kWの出力、又は6kWより大きい出力を有する加工レーザー光源を使用することもできる。
【0056】
加工装置200は、冷却手段、すなわち光学ユニット30の冷却チャネル32に、冷却流体を導通させる状態で接続される冷却装置116を有する。加工装置は、さらに、保護ガラス14の熱特性を監視するための第2の手段120を備え、この手段は、インタフェース114の方向に配置されている。第2の手段120は、順に、当該保護ガラス14と接触している熱センサ34に接続されている。
【0057】
加工装置200の動作中、レーザー光源118でレーザービーム121が発生する。インタフェース114から、レーザービームは、光学ユニット30上に伝搬方向122に向けられる。そこでレーザービーム121は、インタフェース114の方向に配置された保護ガラス14を通過し、集光レンズ12で集光され、出口開口部115の方向に配置された保護ガラス14を通過し、出口開口部115から加工対象の被加工物112に入射する。
【0058】
保護ガラス14とホルダ16との気密な接続と、光学ユニット30の内部空間18のクリーンルーム雰囲気とにより、集光レンズ12の表面の汚染が防止される。そのため、レーザービーム121が集光レンズ12を通過する際に、表面の汚れによって過度に加熱されることはない。したがって、集光レンズ12の損傷や集光レンズ12の結像特性の望ましくない変化も、長時間の使用において回避することができる。
【0059】
加工装置200の動作中、冷却装置116により、ホルダ16の冷却チャネル32に冷却水が導通される。このようにして、ホルダ16の温度、ひいては光学ユニット30全体の温度が所望のレベルに保たれる。同時に、保護ガラス14の温度は、熱センサ34と、保護ガラスの熱特性をモニタするための第2の手段120とで測定される。このようにして、保護ガラス14の温度の望ましくない上昇を検出し、その結果予想される焦点移動に、例えばレーザービームの光路における光学ユニットの位置を変更することによって、対処することができる。代替的に又は追加的に、必要とされる可能性のある光学ユニットの交換をこのように表示することができる。この実施例の変更例では、冷却装置116は、冷却水のための制御可能なバルブを備え、保護ガラス14の熱特性をモニタするための第2の手段120にコントローラによってデータ処理方式で接続される。このようにして、光学ユニット30の温度は制御され、特に、加工装置200の動作中に安定化させることができる。
【0060】
加工装置100及び200の全ての例及び実施形態において、追加の透過型光学素子(例えばレンズ)及び/又は追加の反射型光学素子(例えば平面鏡)を、例えば加工レーザービーム121を偏向させるために、特に加工ヘッドに設けることが可能である。これらの追加の光学素子は、本発明の実施形態に係る光学ユニットとして設計することも可能である。
【0061】
最後に、本発明の説明および例示的な実施形態は、本発明の特定の物理的な実装に関して限定的に理解されるものではないことに留意されたい。本発明の個々の実施形態に関連して説明し示した特徴の全ては、本発明による主題において、その有利な効果を同時に実現するために、異なる組み合わせで提供することができる。
【0062】
本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって与えられ、明細書に例示される特徴、または図に示される特徴によって限定されるものではない。
【0063】
本発明は、レーザー加工装置のみならず、レーザーからなる他の装置にも利用できることは、当業者にとって特に明らかである。さらに、被加工物をレーザー加工するための加工装置の構成要素は、複数の物理的製品に分けられて製造することができる。
【符号の説明】
【0064】
10、20、30 光学ユニット
12 光学素子
14 保護ガラス
15 外縁部
16 ホルダ
18 内部空間
22 光学素子の光軸
24 光学素子の平面
25 凹部
26 光学接着剤
27 距離、二重矢印
28 マウント、ネジ接続
32 冷却手段、冷却チャネル
34 モニタするための第1の手段、熱センサ
100 加工装置、レーザー加工ヘッド
112 被加工物
114 インタフェース
115 出口開口部
116 冷却装置
118 レーザー光源
119 輸送ファイバ
120 モニタするための第2の手段
121 レーザービーム
122 伝搬方向
200 加工装置、レーザー加工ヘッド
A 部分
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
【国際調査報告】