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特表2022-541058ニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、ニコチンアミドリボフラノシド塩自体、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、ニコチンアミドリボフラノシド塩自体、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20220913BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220913BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20220913BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220913BHJP
【FI】
C07H19/048
A61K31/706
A61P43/00 111
A23L33/15
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503801
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020070451
(87)【国際公開番号】W WO2021013795
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19187314.0
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19206542.3
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522023912
【氏名又は名称】バイオシント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シャベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウルス シュピッツ
(72)【発明者】
【氏名】アイセル ゾイデミル
(72)【発明者】
【氏名】イーリス ツィマーマン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD23
4B018ME01
4B018MF10
4C057AA13
4C057AA30
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL05
4C057LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086EA04
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA20
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ニコチンアミドリボフラノシド(ribofuranosie)塩、特に薬学的に許容されるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法に関する。本発明は、そのニコチンアミドリボフラノシド塩自体、特に結晶形態におけるカルボン酸塩、そして栄養補助食品および医薬組成物におけるそれらの使用にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法であって、下記工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを、対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法。
【請求項2】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法であって、下記工程(A)および(B):
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(B)前記ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化して前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法。
【請求項3】
工程(A)の前に下記工程(X)、工程(Y)および工程(Z):
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化1】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
を酢酸中の臭化水素に晒し、下記化学式のトリ-О-アシル--D-リボフラノシドブロミド
【化2】

を提供する工程;
(Y)前記トリ-O-アシル-D-リボフラノシドブロミドを下記化学式のニコチンアミド
【化3】

と反応させて、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド
【化4】

を提供する工程;
(Z)工程(Y)で得られる前記ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドを、好ましくは酢酸中の臭化水素を使用して、前記R基を除去することにより脱アシル化し、下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド化合物
【化5】

を提供する工程、であってここで工程(Z)で形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは工程(A)で使用される;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)の前に下記工程(X)および工程(Y):
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化6】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
を酢酸中の臭化水素に晒し、下記化学式のトリ-О-アシル-D-リボフラノシドブロミド
【化7】

を提供する工程;
(Y)前記トリ-О-アシル-D-リボフラノシドブロミドを下記化学式のニコチンアミド
【化8】

と反応させて、
下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド
【化9】

を提供する工程、であってここで工程(Y)で形成されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは工程(A)で使用される;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(A)の前に下記工程(X)および(Y):
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化10】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
をトリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルトリフレート、トリメチルシリルノナフレート、トリメチルシリルフルオロスルホネートまたはトリメチルシリルパーコレートの存在下で、下記化学式のニコチンアミド
【化11】

に供し、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供する工程;
【化12】

(Y)工程(X)で得られる前記ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを、前記R基を除去することにより脱アシル化し、下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート化合物
【化13】

を提供する工程、であってここで工程(Y)で形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートは工程(A)で使用される、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(A)の前に下記工程(X):
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化14】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
をトリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルトリフレート、トリメチルシリルノナフレート、トリメチルシリルフルオロスルホネートまたはトリメチルシリルパーコレートの存在下で、下記化学式のニコチンアミド
【化15】

に供し、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化16】

を提供する工程、であってここで工程(X)で形成されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートは工程(A)で使用される;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
対イオン交換を介して工程(A)で得られる前記塩の前記対イオンが薬学的に許容されるイオンである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的に許容されるイオンが下記:
無機イオン;
カルボキシレートであって、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、ケト、アミノ、モノC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキレンおよびジ(C1-6アルキル)アミノからなる基から独立に選択される一つまたは複数の置換基で任意に置換される;
1-12アルキルスルホネート;または
アリールスルホネートであって、前記アリール部分がカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、モノC1-6アルキルおよびジ(C1-6アルキル)アミノ、ハロゲン、およびC1-6アルキルからなる基から独立に選択される一つまたは複数の置換基で任意に置換される;
そしてここで、前記薬学的に許容される塩が、ブロミド、トリフレート、ノナフレートまたはパーコレートではない、
からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記無機イオンが、クロリド、ハイドロゲンスルフェート、スルフェート、ジヒドロゲンホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ホスフェート、からなる基から選択され;
前記カルボキシレートが、ホメート、アセテート、オキサレート、マロネート、サクシネート、フマレート、マリエート、シトレート、マレート、タルトレート、アスコルベート、α-ケトグルタレート、グルクロネート、ベンゾエートおよびサリチレートからなる基から選択され;
前記C1-12アルキルスルホネートが、メシレートおよびカムシレートからなる基から選択され;
前記アリールスルホネートが、ベシレートおよびトシレートからなる基から選択される、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薬学的に許容されるイオンが、マレート、好ましくはハイドロゲンマレート、そして特にD-、L-またはDL-ハイドロゲンマレートであって、または、
前記薬学的に許容されるイオンが、タルトレート、好ましくはハイドロゲンタルトレート、特にD-、L-またはDL-ハイドロゲンタルトレートである、
請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対イオンが、前記カチオン[NR1234+を含むアンモニウム塩または前記カチオン[PR1234+を含むホスホニウム塩に由来するものであって、ここでR1、R2、R3およびR4がH、C1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され;または前記対イオンがリチウムまたはナトリウム塩に由来するものである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩メタセシスがメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール、またはその二つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択されるアルコール中で行われ、ここで前記アルコールまたは前記混合物は任意に水を含む;または、
前記塩メタセシスは、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール、またはその二つまたはそれ以上の混合物を含む溶媒中で行われ、ここで溶媒は任意に水を含む、
前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
下記経路(P1)から(P5):
(P1)下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む経路:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂して、前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供する工程;
(β)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを単離および任意に精製する工程;
(γ)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
(P2)下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む経路:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)前記ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
(γ)前記ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド塩のアシル基を開裂してニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
(P3)下記工程(α)および(β)を含む経路:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂して、前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供し、そして形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを事前に単離することなく塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
(P4)下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む経路:
(α)α-アノマーを5%以上含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)前記ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
(γ)前記ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド塩のアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程;
および
(P5)下記工程(α)および(β)を含む経路:
(α)α-アノマーを5%以上含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供し、そして形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドまたはクロリドまたはヨージドまたはトリフレートまたはノナフレートまたはフルオロスルホネート、またはパーコレートを事前に単離することなく塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程、
の群から選択される経路をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記経路(P3)および(P5)における塩メタセシスがin situで行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対イオン交換に使用される前記薬学的に許容されるアニオンを含む塩がin situで形成される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド塩であって、
図1に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレート;
図2に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレート;
図3に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレート。
図4に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートモノハイドレート;
図5に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート;
図6に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレート;
図7に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート;図8に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート;および
図9に規定される粉末X線回折パターンを特徴とする結晶性無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート、
からなる群から選択される、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド塩。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、または請求項16に記載のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、栄養補助食品。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、または請求項16に記載のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、医薬組成物。
【請求項19】
下記工程(A):
(A)請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、または請求項16に記載の化合物を提供する工程、
を含む、化学合成を行う方法。
【請求項20】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートまたはヨージドの製造方法であって、下記工程(A):
(A)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化17】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
を1モルのテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して0.9~1.5モル当量、好ましくは1.0~1.3モル当量、そしてより好ましくは1.0~1.2モル当量のトリメチルシリルトリフレートまたはトリメチルシリルヨージドの存在下で、
下記化学式のニコチンアミド
【化18】

と反応させる工程、
を含む、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートまたはヨージドの製造方法。
【請求項21】
下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化19】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
または;
下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート。
【化20】
【請求項22】
下記工程(A1)および(A2):
(A1)NH3またはNR12またはNR12HまたはNR123または[NR1234]OHを酸と反応させてアンモニウム塩を提供し、ここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される工程。
(A2)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを工程(A1)からの前記アンモニウム塩と反応させて、対イオン交換を含む塩メタセシスを行い、前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または前記ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、
を含む工程(A)であって、請求項1、3、5、7から15のいずれか一項、または請求項2、4、6、7から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
NR123または[NR1234]OHが工程(A1)で使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または前記ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩がヨージドである、請求項1から15、または請求項22から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
下記工程(A1)および(A2):
(A1)NH3またはNR12またはNR12HまたはNR123または[NR1234]OHを酸と反応させてアンモニウム塩を提供し、ここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される工程。
(A2)第一のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または第一のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を工程(A1)からの前記アンモニウム塩と反応させて、対イオン交換を含む塩メタセシスを行い、第二のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または第二のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、
を含む、第一のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩から第二のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を製造する方法、または第一のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩から第二のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を製造する方法。
【請求項26】
NR123または[NR1234]OHが工程(A1)で使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
塩メタセシス反応において、R1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され任意に置換される、NH4 +またはNR13 +またはNR122 +またはNR123+または[NR1234+を含むアンモニウム塩の使用。
【請求項28】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩が塩メタセシスに供する、請求項27に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ニコチンアミドリボフラノシド塩、特に薬学的に許容されるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法に関する。本発明は、ニコチンアミドリボフラノシド塩自体、特に結晶形態におけるカルボン酸塩、そして栄養補助食品および医薬組成物におけるそれらの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
下記化学式のニコチンアミドリボシド(ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド;CAS番号 1341-23-7)
【化1】

は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+/NADH)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+/NADPH)の前駆体である。加えて、ニコチンアミドリボシドはナイアシン(ビタミンB3)の等価物である。
【0003】
ニコチンアミドリボシドは、肝臓および骨格筋のNAD+レベルを増加し、そして高脂肪食を与えたマウスの体重増加を防ぐことが報告されている。また、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、大脳皮質のNAD+濃度の増加、および認知機能の低下を抑制する。これらの理由のため、ニコチンアミドリボシド塩は、栄養補助食品および医薬組成物での使用が提案されている。実際に、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドの塩化物塩は、市販の栄養補助食品である。
【0004】
しかしながら、栄養補助食品としてのこれらの化合物の幅広い応用は、低い収率、乏しい立体選択性を有し、および/または高価および/または危険な試薬を使用する製造方法、あるいは薬学的に不適切な対イオンを含むピリジニウム塩をもたらす製造方法によって制限されてきた。それゆえ、多くの既知の合成方法は、大規模で、商業的な合成には適さない。
【0005】
WO2016/014927は、ニコチンアミドリボシド塩の非晶質形態と比較して、有利な特性、例えば精製の容易さを有すると記載される、ニコチンアミドリボシドクロリドの結晶形態を開示している。
【0006】
WO2017/218580は、薬学的に許容されるアニオンを含む塩を含むニコチンアミドリボシド塩を調製するための合成方法を開示している。当該方法は、イオン交換クロマトグラフィーまたは塩交換反応および沈殿を通して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド部分の一つの薬学的に許容される対イオンを別の薬学的に許容される対イオンに変換することを含んでもよい。特定の実施形態では、記載された方法は、塩が塩化物塩でないニコチンアミドリボシドまたはその類似体の塩を、その対応する塩化物塩に変換することを含む。
【0007】
WO2015/186068 A1は、イオン交換反応におけるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートとナトリウムメチレートとの反応で、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボシドクロリドを提供することを開示している。
【0008】
CN108774278は、そのフラノシドを脱アセチル化するためのニコチンアミドトリアセチルリボフラノシドトリフレートと塩基との反応を開示している。続いて、脱アセチル化された生成物は酸で処理され、その対応する塩生成物を与える。
【0009】
しかしながら、所定の応用のために、ニコチンアミドリボシドの代替の薬学的に許容される塩、並びに安価で、効率的および便利な方法でそれらの調製を可能にする方法が所望されている。
【0010】
発明の目的
したがって、当業界では、薬学的に許容されるニコチンアミドリボフラノシド塩、好ましくは結晶塩、および低コストかつ工業規模において高い純度および収率で薬学的に許容されるニコチンアミドリボフラノシド塩を製造するための方法が必要である。
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本目的は、対イオン交換反応を含む塩メタセシスを介してそのブロミドおよびトリフレート塩以外のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を製造するための出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドまたはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネートを使用する方法によって達成された。
【0012】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドパーコレートは、本発明による方法における他の適切な出発物質である。
【0013】
さらに別の実施形態では、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドまたはヨージドは、本発明による方法における出発物質として使用される。
【0014】
一実施形態では、出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドおよびニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、そして特にニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージドを使用することが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態では、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は本発明による方法を介して利用可能となるものであって、ここでその塩は有利に結晶形態で提供され得る。
【0016】
第1の態様によると、本発明は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0017】
上記方法により製造されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートではない。
【0018】
第2の態様によると、本発明は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するもので、下記工程(A)および(B)を含む:
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート,ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(B)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化してニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0019】
上記方法により製造されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートではない。
【0020】
第3の態様によると、本発明はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレートから、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を製造する方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0021】
上記方法により製造されるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩はブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートではない。
【0022】
第4の態様によると、本発明は結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-、L-またはDL-ハイドロゲンマレート;または結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-、L-またはDL-ハイドロゲンタルトレートに関するもので;それぞれ、粉末X線回折パターンによって特徴づけられる。
【0023】
本発明の方法により調製されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、しばしば非晶質形態で得られ、そしてその後、所望により、および可能であれば、結晶化させなければならない。
【0024】
しかしながら、対処されたD-、L-またはDL-ハイドロゲンマレートおよびD-、L-またはDL-ハイドロゲンタルトレートは驚くべきことに、高純度かつ優れた収率で結晶形態における塩メタセシスを介して直接的に得られることがある。これは、例えば応用およびさらなる処理の観点から、非常に有利である。それゆえ、これらの塩を栄養補助食品に、または栄養補助食品として使用することが提案される。さらに、上記の塩は、さらなるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または関連化合物を製造するための出発物質として提供することができる。
【0025】
第5の態様によると、本発明は、第1または第2の態様で記載されたような方法により得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、または第4の態様で記載されたようなニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む栄養補助食品に関する。
【0026】
第6の態様によると、本発明は、第1または第2の態様で記載されたような方法により得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、または第4の態様で記載されたようなニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む医薬組成物に関する。
【0027】
第7の形態によると、本発明は、化学合成を行う方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)第1または第2の態様で記載されたような方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する、または第4の態様に記載された化合物を提供する工程。
【0028】
第8の態様によると、本発明は、下記工程(A):
(A)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化2】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
を1モルのテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して0.9~1.5モル当量のトリメチルシリルトリフレートまたはヨージドの存在下で、
下記化学式のニコチンアミド
【化3】

と反応させる工程、
を含む方法で、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートまたはヨージドの製造方法に関する。
【0029】
第9の態様では、本発明はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレート、およびニコチンアミド-β-D-リボフラノシドパーコレート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネート、およびニコチンアミド-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートから選択される化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の簡単な説明
本発明は、下記のように、添付の図面によってさらに説明される:
図1図1は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図2図2は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図3図3は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図4図4は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートモノハイドレートの粉末X線パターンを示す;
図5図5は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図6図6は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図7図7は、結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図8図8は、結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図9図9は、結晶性無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;{それぞれ、x軸:位置[°2θ](銅(Cu));y軸:カウント}
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の様々な態様を、ここで図面を参照しながらより詳細に説明することになる。
【0032】
第1、第2および第3の態様:本発明による方法
第1の態様によると、本発明は、下記化学式の化合物中の
【化4】

アニオンX-=Br-、Cl-、I-、CF3SO3 -(トリフレート)、n-C49SO3 -(ノナフレート)、FSO3-またはClO4 -を、対イオン交換を含む塩メタセシスを介してアニオンY-に置換する方法に関する。
【0033】
したがって、第1の態様では、本発明はニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0034】
代替の実施形態では、第2の態様によると、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化5】

を、アニオンY-を介してBr-、Cl-、I-、CF3SO3 -、n-C49SO3 -、FSO3 -またはClO4 -を交換するために塩メタセシスに供する。続いて、アシル基は、所望のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供するために開裂される。
【0035】
したがって、第2の態様では、本発明はニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するもので、下記工程(A)および(B)を含む:
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;および
(B)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化してニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0036】
所望により、工程(A)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は工程(B)とは異なる目的で使用してもよい。
【0037】
したがって、第3の態様では、本発明はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを対イオン交換を含む塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0038】
第1の態様で記載された方法の工程(A)で使用されるような下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド[N1-(β-D-リボフラノシル)-3-アミノカルボニルピリジニウムブロミド)
【化6】

は、周知の化合物(CAS番号78687-39-5)である。例えば、Leeらは、その化学合成方法を開示している(Chem.Commun.,1999,729-730)。さらなる合成方法は、本出願の出願日には未公開であるEP18173208.2に開示されている。
【0039】
上記参考文献はまた、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの前駆体としてニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドの調製を開示している。
【0040】
下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレート[N1-(β-D-リボフラノシル)-3-アミノカルボニルピリジニウムトリフレート]
【化7】

はまた、周知の化合物(CAS番号 445489-49-6)である。
【0041】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートは、例えば、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)の存在下で、アセトニトリル中で、ニコチンアミドとテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースとを反応させることによって、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートを提供することにより調製されることができる。アシル基は、その後ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートを提供するために、既知の方法に従って開裂されることができる(例えば、Makarovaら:“Syntheses and chemical properties of β-nicotinamide riboside and its analogues and derivatives”,Beilstein J Org Chem 2019,15:401-430; Tanimoriら,“An Efficient Chemical Synthesis of Nicotinamide Riboside (NAR) and Analogues”, Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 12(2002)1135-1137)。
【0042】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフレートおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれニコチンアミド-β-D-リボフラノシドパーコレートおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレートは、トリメチルシリルノナフルオロブタンスルホネート(CAS番号 68734-62-3)、それぞれトリメチルシリルパーコレート(CAS番号 18204-79-0)の存在下でアセトニトリルなどの溶媒中でニコチンアミドとテトラ-О-アシル-β-D-リボフラノースとを反応させて、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれパーコレートを提供することで調製されることができる。アシル基はその後既知の方法によって開裂され、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれパーコレートを提供することができる。
【0043】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージドおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、それぞれニコチンアミド-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートおよびニコチンアミド-2,3,5-トリ-О-アシル-β-D-リボフラノシドスルホネートは、トリメチルシリルクロリド(CAS番号 75-77-4)、トリメチルシリルヨージド(CAS番号 16029-98-4)、それぞれトリメチルシリルフルオロスルホネート(CAS番号 3167-56-4)の存在下でアセトニトリルなどの溶媒中でニコチンアミドとテトラ-О-アシル-β-D-リボフラノースとを反応させて、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ヨージド、それぞれフルオロスルホネートを提供することで調製されることができる。アシル基はその後既知の方法によって開裂され、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ヨージド、それぞれフルオロスルホネートを提供することができる。
【0044】
本開示で使用される「塩メタセシス」という用語は、「二重置換反応(double replacement reaction)」、「二重置換反応(double displacement reaction)」、または「複分解反応(double decomposition reaction)」などの用語と同義的に使用される。二つの異なる塩の間で対イオンを交換する塩メタセシスは既知の技術である。
【0045】
このように、工程(A)は反応を規定するものであって、ここで第一の塩、例えばニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR+Br-(またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONR+Br-)をカチオンCat+およびアニオンYを含む適切な第二の塩を用いて塩メタセシスに供し、対イオン交換、すなわちNR+Br-(またはAcONR+Br-)中のBr-をY-で交換することを介して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR+-(またはAcONR+-)およびCat+Br-を提供する。本反応は、次の式で要約される:
【0046】
NR+Br-(またはAcONR+Br-)+Cat+-→NR+-(またはAcONR+-)+Cat+Br-
【0047】
上式のような塩メタセシス反応の駆動力は、より安定な塩の形成ならびに反応の化学平衡から生成物の除去、例えば形成されたNR+-(AcONR+-)またはCat+Br-のうち一つの沈殿によるものであり得る。このように、反応を生成物に導くためには、エダクトは互いにまたは溶媒中の溶解性の観点から、それぞれ好ましいエネルギーの観点から選択されなければならない。
【0048】
類似の機序が、そのクロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートおよびパーコレートの反応に適用される。
【0049】
塩メタセシス反応が溶媒中で行われる場合、反応への同様の影響は、下記のそれぞれ溶媒についての項でより詳細に説明されることになる。
【0050】
本明細書で使用される「塩メタセシス」という用語は、そのβ-ニコチンアミドリボシドのアニオンがイオン交換体を使用してイオン交換による別のアニオンによって交換されることを意味するものではない。このように、工程(A)に記載された方法は、イオン交換体によるアニオン交換を除外する。
【0051】
しかしながら、その方法は、工程(A)の前または工程(A)の後の任意の反応工程において、イオン交換体が使用され得ることを除外するものではない。
【0052】
第2の態様による方法の工程(B)で使用されるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドパーコレートは既知であるか、または既知の方法によって調製することができる。
【0053】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩、すなわちそのブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートに関連する「アシル」という用語は、アシルがアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであることを意味し、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される。
【0054】
一実施形態では、工程(A)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は工程(B)で脱アシル化される前に単離および精製され得る。
【0055】
別の実施形態では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は工程(B)の脱アシル化の前に精製されない。
【0056】
工程(B)による脱アシル化(脱保護)は、当業界において既知の方法、例えば工程(A)で得られる塩を、臭化水素、塩化水素、ヨウ化水素または硫酸などの酸、またはアンモニアなどの塩基に供する方法により行われることができる。
【0057】
第1、第2および第3の態様による好ましい実施形態:出発物質として工程(A)で使用されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
本発明によると、工程(A)で使用されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩はブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートである。そのブロミドおよびトリフレートは、十分に適合性のある化合物であり、そしてそれゆえ多くのその後の方法工程の出発物質として当業界で使用されてきた。
【0058】
さらに、少なくともニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドまたはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリドは、さらなる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を製造する観点においてその純度のため、好ましい結晶形態で提供されることができる。
【0059】
好ましい実施形態では、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、EP18173208.2(本出願の出願日には未公開)で開示されるように使用される。当該参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
したがって、第1の態様の一実施形態では、本発明による方法は、工程(A)の前に下記工程(X)および(Y)および(Z)を含む:
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化8】

を酢酸中の臭化水素に晒し、下記化学式のトリ-О-アシル-D-リボフラノシドブロミド(β-およびα-アノマーの混合物の形態)
【化9】

を提供する工程;
(Y)トリ-O-アシル-D-リボフラノシドブロミドを下記化学式のニコチンアミド
【化10】

と反応させて、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド
【化11】

を提供する工程;
および
(Z)工程(Y)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドを酢酸中の臭化水素を使用して、R基を除去することにより脱アシル化し、下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド化合物
【化12】

を提供する工程、であってここで工程(Z)で得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは工程(A)で使用される。
【0061】
基本的に、他の実施形態では、酢酸中のHBrとは異なる酸またはアンモニアなどの塩基は、脱アシル化の工程(Z)で使用され得る。
【0062】
工程(Y)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、典型的にはα-アノマーとの混合物で得られる。例えば、モル比β:αは、約85:15であり得る。
【0063】
したがって、一実施形態では、β-およびα-アノマーとの混合物の段階で精製しない場合、後続の工程で、エダクトはまたβ-およびα-アノマーとの混合物として提供される。精製は、純粋なβ-アノマーをもたらすことができる。
【0064】
別の実施形態では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、アシル基の開裂が行われる前に純粋なβ-アノマーを得るために精製されることがある。
【0065】
第1の態様の別の実施形態によると、本発明は工程(A)の前に下記工程(X)および工程(Y)を含む方法に関する:
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化13】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
をトリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルトリフレート、トリメチルシリルノナフレート、トリメチルシリルフルオロスルホネートまたはトリメチルシリルパーコレートの存在下で、下記化学式のニコチンアミド
【化14】

に供し、それぞれ下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化15】

を提供する工程;
(Y)工程(X)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレートまたはパーコレートを、R基を除去することにより脱アシル化し、下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート化合物
【化16】

を提供する工程;であって、ここで工程(Y)で形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートは工程(A)で使用される。
【0066】
第2の態様の一実施形態では、本発明による方法は工程(A)の前に下記工程(X)および(Y)を含む:
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化17】

を酢酸中の臭化水素に晒し、下記化学式のトリ-O-アシル-D-リボフラノシドブロミド(β-およびα-アノマーの混合物の形態)
【化18】

を提供する工程;
(Y)トリ-O-アシル-D-リボフラノシドブロミドを下記化学式のニコチンアミド
【化19】

と反応させて、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド
【化20】

を提供する工程;であってここで工程(Y)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは工程(A)で使用される。
【0067】
工程(Y)で得られる生成物はまた、第3の態様に記載された方法において使用されることができる。
【0068】
Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択されるアシル基で、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される。
【0069】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドにおいて「アシル基」という用語と同義的に使用される「アシル」という用語は、アシル基がアルキルカルボニル、アリールカルボニルまたはヘテロアリールカルボニルから独立に選択されてもよいことを意味する。
【0070】
「アルキルカルボニル」という用語は、「アルカノイル」という用語と同義的に使用される。
【0071】
一実施形態では、Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そして好ましくはアセチルである。
【0072】
一実施形態では、アシルは置換され得る。
【0073】
一実施形態では、アシルは次に示す一つまたは複数の置換基から独立に置換されてもよい:C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2
【0074】
一実施形態では、アシルは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリルまたはシクロヘキシルなどのC1-6アルカノイルであり、上記に記載された一つまたは複数の置換基で任意に置換される。
【0075】
別の実施形態では、アシルはベンゾイルまたはナフトイル、好ましくはベンゾイルであり、上記に記載された一つまたは複数の置換基で任意に置換される。
【0076】
テトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースは、既知の化合物であるか、または既知の方法によって調製することができる。
【0077】
好ましい実施形態では、下記化学式の、市販のテトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノース(CAS番号13035-61-5)
【化21】

は、工程(X)で使用され、2,3,5-トリ-O-アシル-D-リボフラノシドブロミドを提供する。
【0078】
工程(Y)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、典型的には、アノマーβおよびαの混合物など、β:αの比率が約5:1~6:1の比率などのアノマーの混合物として製造される。
【0079】
一実施形態では、粗ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、第2の態様による方法の工程(A)で使用されることができ、すなわち塩メタセシスに供されることがある。続いて、形成された塩は、工程(B)によって脱アシル化され、所望のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する。
【0080】
別の実施形態では、粗ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、脱アシル化を介してニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを得る工程(Z)で使用されることがある。ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは次に、第1の態様による方法の工程(A)で使用され、塩メタセシスを介して所望のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供することができる。
【0081】
さらに別の実施形態では、工程(Z)の前に工程(Y)で得られる粗ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドを精製および結晶化することが有利であり得る。工程(Z)による脱アシル化(脱保護)工程において精製および結晶化されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドを使用することは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドが結晶化され、そしてこのように実質的に純粋な形態となる傾向を改善することができる。
【0082】
好ましくは、工程(Y)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、アセトンから再結晶化され得る。純粋なβ-アノマーが得られる。
【0083】
したがって、一実施形態では、方法は下記工程(Y1)をさらに含む:
(Y1)工程(Y)で得られる生成物を精製する工程。
【0084】
好ましくは、工程(Y1)による精製は、結晶化または再結晶化である。
【0085】
工程(X)、(Y)および(Y1)にわたる収率は、典型的に40~50%の範囲である。
【0086】
一実施形態では、精製されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは、第2の態様で記載された工程(A)で使用され得る、すなわち塩メタセシスに供し得る。続いて、形成された塩は工程(B)によって脱アシル化され、所望のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する。
【0087】
別の実施形態では、精製されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドは脱アシル化され、第1の態様による方法の工程(A)で使用され得るニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドが得られ、塩メタセシスを介して所望のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供することができる。
【0088】
第1の態様で記載された工程(A)が行われる場合、工程(Y)または(Y1)で得られるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドのアシル基は開裂されなければならない、すなわち、保護された水酸基は脱保護される。
【0089】
基本的に、当業界で知られている任意の方法は、保護されたOH基からアシル基を除去することに使用されることができる。開裂は、酢酸中の臭化水素で有利に行われることができる。
【0090】
本方法は、大規模においても有益に実施されることができる。
【0091】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは、しばしば脱保護工程で得られる溶液から結晶の形態で直接的に沈殿する。
【0092】
結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは、97%以上の純度、すなわちα-アノマーをほとんど含まず、そしてトリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドにおけるブロミド置換、それぞれ過剰量の臭化水素の中和に使用したニコチンアミドを微量しか含まずに得られることができる。
【0093】
さらに必要がある場合、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドはさらに精製されてもよく、好ましくは再結晶によって精製される。適切な溶媒は、例えばメタノールである。
【0094】
好ましい実施形態では、その方法は下記工程(Z1)をさらに含む:
(Z1)工程(Z)で得られる生成物を精製する工程。
【0095】
好ましい実施形態では、工程(Z1)による精製は結晶化または再結晶化を含む、またはそれである。
【0096】
工程(Z)および(Z1)にわたる収率は、典型的に60~70%の範囲である。
【0097】
有利には、アニオンが好ましくは薬学的に許容されるアニオンである、他の塩、好ましくは結晶性塩は、本発明の方法により塩メタセシスを介してそのブロミドまたはトリフレートから開始して調製することができる。
【0098】
好ましくは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートおよびニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、好ましくは結晶形態で、その2,3,5-O-トリアシル化合物と同様に合成され得る。
【0099】
第2の態様の別の実施形態では、本発明は工程(A)の前に下記工程(X)を含む方法に関する:
(X)下記化学式のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース
【化22】

(式中、各Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択され、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換される)、
をトリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルトリフレート、トリメチルシリルノナフレート、トリメチルシリルフルオロスルホネートまたはトリメチルシリルパーコレートの存在下で、下記化学式のニコチンアミド
【化23】

に供し、下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化24】

を提供する工程;であって、ここで工程(X)で形成されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートは工程(A)で使用される。
【0100】
薬学的に許容されるイオン
好ましくは、塩Cat+-に由来する対イオン交換を介して工程(A)で得られる塩の対イオンY-は、薬学的に許容されるイオンである。
【0101】
本明細書で使用される「薬学的に許容されるイオン」という用語は、下記からなる群から選択されるイオンを含む。
無機イオン;または
カルボキシレート、ここでこのカルボキシレートが由来するカルボン酸は、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、ケト、アミノ、モノC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキレンおよびジ(C1-6アルキル)アミノからなる基から独立に選択される一つまたは複数の置換基で任意に置換される;
1-12アルキルスルホネート;または
アリールスルホネート、ここでアリール部分はカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、モノC1-6アルキルおよびジ(C1-6アルキル)アミノ、ハロゲン、C1-6アルキルからなる基から独立に選択される一つまたは複数の置換基で任意に置換される;
そしてここで、薬学的に許容される塩が、ブロミドまたはヨージドまたはトリフレートまたはノナフレートまたはフルオロスルホネートまたはパーコレートではない。
【0102】
好ましい実施形態では、上記の
無機イオンは、クロリド、ハイドロゲンスルフェート、スルフェート、ジヒドロゲンホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ホスフェート、ニトレート、ハイドロゲンカルボネートおよびカルボネートからなる基から選択される;
カルボキシレートは、ホメート、アセテート、オキサレート、マロネート、サクシネート、フマレート、マリエート、シトレート、マレート、タルトレート、アスコルベート、グルクロネート、α-ケトグルタレート、ベンゾエートおよびサリチレートからなる基から選択される;
1-12アルキルスルホネートは、メシレートおよびカムシレートからなる基から選択される;
アリールスルホネートは、ベシレートおよびトシレートからなる基から選択される。
【0103】
好ましい実施形態では、薬学的に許容されるイオンはマレートである。
【0104】
特に好ましい実施形態では、薬学的に許容されるイオンはハイドロゲンマレートである。
【0105】
「ハイドロゲンマレート」という用語は、モノカルボキシレートを意味する。
【0106】
さらに特に好ましい実施形態では、ハイドロゲンマレートはD-、L-またはDL-立体異性体である。
【0107】
さらに好ましい実施形態では、薬学的に許容されるアニオンはタルトレートである。
【0108】
特に好ましい実施形態では、薬学的に許容されるアニオンはハイドロゲンタルトレートである。
【0109】
「ハイドロゲンタルトレート」という用語は、モノカルボキシレートを意味する。
【0110】
さらに特に好ましい実施形態では、ハイドロゲンタルトレートイオンはD-、L-またはDL-立体異性体である。
【0111】
ハイドロゲンマレートまたはハイドロゲンタルトレートのD-、L-またはDL-立体異性体の調製は、本発明による方法によりこれらの化合物を高い収率および、塩の取り扱いおよびさらなる処理の観点から特に有利な結晶化度で提供できることから、特に好ましい。
【0112】
典型的に、結晶性化合物は、塩メタセシス反応において既に直接的に得られている。
【0113】
これは、例えば化合物が典型的に非晶質の形態で得られ、その後の工程で結晶化させなければならないイオン交換体を介した対イオン交換と比較して有利である。
【0114】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートと塩メタセシスに供する薬学的に許容されるイオンY-に関するカチオンCat+
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートは、基本的に薬学的に許容されるアニオンを有する任意の塩を使用して塩メタセシスに供されることができる。
【0115】
限定されるものではないが、薬学的に許容されるアニオンに関して使用されるカチオンCat+は、好ましくはアンモニウム塩またはホスホニウム塩に由来する。
【0116】
好ましくは、一実施形態では、塩のカチオンは[NR1234+であって、ここでR1、R2、R3およびR4は、H、C1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0117】
一実施形態では、塩のカチオンはNH4 +である。
【0118】
好ましい実施形態では、塩のカチオンは第一級アンモニウム塩に由来し、すなわち塩のカチオンは[NR13+であって、ここでR1はC1-12アルキルおよびアリールから選択され、任意に置換される。
【0119】
別の好ましい実施形態では、塩のカチオンは第二級アンモニウム塩に由来し、すなわち塩のカチオンは[NR122+であって、ここでR1およびR2はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0120】
さらに好ましい実施形態では、[NR1234+におけるR1、R2、R3およびR4のうちの一つはHである。したがって、塩のカチオンは第三級アンモニウム塩に由来し、すなわち塩のカチオンは[NR123H]+であって、ここでR1、R2およびR3はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0121】
さらに別の実施形態では、カチオンは、第四級アンモニウム塩である。したがって、塩のカチオンは、[NR1234+であって、ここでR1、R2、R3およびR4は、C1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0122】
好ましい実施形態では、[NR1234+は[N(C254+または[N(C494+である。
【0123】
さらに好ましい実施形態では、R1、R2、R3またはR4のうちの一つはベンジルである。
【0124】
別の実施形態では、塩のカチオンは、ピリジンまたはn-メチルピリジンなどのN-複素環芳香族系またはN-アルキル化複素環芳香族系に由来する。
【0125】
別の実施形態では、塩のカチオンは[PR1234+であって、ここでR1、R2、R3およびR4は、H、C1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0126】
さらに好ましい実施形態では、[PR1234+におけるR1、R2、R3およびR4のうち一つはHである。
【0127】
本発明による塩メタセシス反応において薬学的に許容されるアニオンを含むリチウム塩またはナトリウム塩を使用することも考えられる。
【0128】
適切な塩は市販されているか、または既知の方法、例えばトリエチルアミンまたはトリブチルアミンまたはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドまたはベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドを、硫酸などの酸またはリンゴ酸または酒石酸などのカルボン酸と一価または二価のアニオンを調製できるモル比で反応させることにより、調製することができる。
【0129】
溶媒
塩メタセシスは、溶媒無しに、すなわち固体のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または固体のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩と例えば液体塩との塩メタセシスにより行われることができる。
【0130】
好ましい実施形態では、工程(A)における塩メタセシスは、溶媒の存在下で行われる。
【0131】
上記に記載された塩メタセシス反応を行うための下記の非限定的な実施形態I、II、IIIまたはIVが好ましい:
【0132】
実施形態I:溶媒は、NR+Br-(またはAcONR+Br-)およびCat+-の両方が上記溶媒に溶解するが、工程(A)で得られるNR+-(またはAcONR+-)は上記溶媒に溶解せずに沈殿し、一方でCat+Br-は溶解するように選択される。NR+(またはAcONR+-)はその後濾過により単離されることができる。
【0133】
実施形態II:溶媒は、NR+Br-(またはAcONR+Br-)およびCat+-の両方が上記溶媒に溶解するが、工程(A)で得られるNR+-(またはAcONR+-)は上記溶媒に溶解し、一方でCat+Br-は溶解せずに沈殿するように選択される。NR+-(またはAcONR+-)は、例えばその後既知の技術により上清から単離されることができる。
【0134】
実施形態III:溶媒は、工程(A)で得られるNR+Br-およびNR+-(またはAcONR+Br-およびAcONR+-)は上記溶媒に溶解しないが、一方でCat+Br-およびCat+-の両方は溶解するように選択される。NR+-(またはAcONR+-)は、例えばその後濾過により単離されることができる。
【0135】
実施形態IV:溶媒は、工程(A)で得られるNR+Br-およびNR+-(またはAcONR+Br-およびAcONR+-)は上記溶媒に溶解するが、一方でCat+-およびCat+Br-は溶解しないように選択されるが。NR+-(またはAcONR+-)は、例えばその後既知の技術によって上清から単離されることができる。
【0136】
NR+Br-およびAcONR+Br-の代わりに、NR+Cl-およびAcONR+Cl-、NR+-およびAcONR+-、NR+CF3SO3 -およびAcONR+CF3SO3 -またはNR+n-C49SO3 -およびAcONR+n-C49SO3 -、NR+FSO3 -およびAcONR+FSO3 -またはNR+ClO4 -およびAcONR+ClO4 -も実施形態I~IVで使用されることができる。
【0137】
したがって、工程(A)で記載された塩メタセシスで使用される溶媒の適切な選択によって、すなわち溶解度チャート(solubility chart)を規定することによって、塩メタセシス反応の結果は予測されることができる。当業者は、日常的な実験によってこのような溶解度チャートを規定することが期待され得る。
【0138】
実施形態Iは、Cat+-が上記に記載されたアンモニウム塩またはホスホニウム塩、好ましくはアンモニウム塩である場合に良好な結果を提供する。
【0139】
さらに好ましい実施形態では、実施形態Iはアルコールが溶媒として使用されるか、または溶媒がアルコールを含み、およびCat+-が好ましくは上記で記載されたアンモニウム塩またはホスホニウム塩、好ましくはアンモニウム塩であるような場合に良好な結果を提供する。
【0140】
好ましくは、塩メタセシスに使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール、またはその二つまたはそれ以上の混合物、任意に水を含むアルコールまたは混合物からなる群から選択される。
【0141】
本発明の発明者らは、予想外に、形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドおよびニコチンアミド-トリアシル-O-β-D-リボフラノシド塩が、特に実施形態Iにおける反応条件下で選択される方法であるように特定のアルコールにおいて塩メタセシスに使用されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、ニコチンアミド-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートそれぞれと比較して、異常な高溶解度の差異をもたらすことを発見した。
【0142】
好ましくは、工程(A)において、任意に水を含む上記で記載された一つまたは複数のアルコール中のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートの飽和溶液、および適切なアンモニウム塩またはホスホニウム塩を互いに組み合わせ、ここで工程(A)が行われる、すなわち対イオン交換により生成されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は沈殿し、そして濾過より単離されることができる。
【0143】
「飽和溶液」という用語は、好ましい実施形態では、NR+Br-(またはAcONR+Br-)およびCat+-の濃縮溶液が、23℃における溶解度の限界を超えないように調製されることを意味する。
【0144】
「飽和溶液」という用語は、別の好ましい実施形態では、NR+Br-、NR+Cl-、NR+-、NR+CF3SO3 -、NR+n-C49SO3 -、NR+FSO3 -、またはNR+ClO4 -(またはAcONR+Br-、AcONR+Cl-、AcONR+-、AcONR+CF3SO3 -、AcONR+n-C49SO3 -、AcONR+FSO3 -またはAcONR+ClO4 -)およびCat+-の濃縮溶液が、23℃における溶解度の限界を超えないように調製されることを意味する。
【0145】
好ましくは、工程(A)による塩メタセシス反応は、周囲温度、すなわち5~60℃、好ましくは10~40℃の範囲で行われる。
【0146】
工程(A)に記載された塩メタセシス反応は、上記に記載されたアンモニウム塩またはホスホニウム塩およびアルコールに限られるものではないことは明らかである。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明はニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関するものであって、ここで第1および第2の態様に記載された工程(A)は少なくとも下記工程(A1)および(A2)を含む:
(A1)NH3またはNR12またはNR12HまたはNR123または[NR1234]OHを好ましくは薬学的に許容されるアニオンを含む酸と反応させてそれぞれのアンモニウム塩を提供する工程、であってここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
(A2)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを工程(A1)からのアンモニウム塩と反応させて、対イオン交換を含む塩メタセシスを行い、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、であってここでアシルは上記に記載された意味を有する。
【0148】
好ましい実施形態では、NR123または[NR1234]OHは工程(A1)で使用される。
【0149】
同様に、別の実施形態では、本発明は、下記の工程:
(A1)PH3またはPR12またはPR12HまたはPR123または[PR1234]OHを酸と反応させて、それぞれのホスホニウム塩を提供する工程、であってここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
(A2)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを工程(A0)からのホスホニウム塩と反応させて対イオン交換を含む塩メタセシスを行い、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程、であってここでアシルは上記に記載された意味を有する。
を含み、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関する。
【0150】
好ましい実施形態では、PR123または[PR1234]OHは工程(A1)で使用される。
【0151】
さらなる沈殿
必要があれば、工程(A)または工程(B)で得られる生成物は、純粋なβ-アノマーを得るために既知の方法によって精製してよい。
【0152】
一実施形態では、生成物は再結晶化されてよい。
【0153】
別の実施形態では、生成物は適切な溶媒で溶解され、そしてその後その生成物が溶解しない溶媒の添加によって沈殿されることがある。
【0154】
したがって、第1、第2または第3の態様で記載された方法は、下記工程(C)をさらに含む:
(C)好ましくは結晶化によって、工程(A)または(B)で得られる塩を精製する工程。
【0155】
一実施形態では、本発明による方法は、工程(A)において、純粋なβ-アノマー、すなわち純粋なニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、または純粋なニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートから開始することができる。
【0156】
「純粋な」という用語は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、またはニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートがα―アノマーを5%まで含み得ることを意味する。
【0157】
一実施形態では、その塩は、工程(A)で使用される前に単離された形態で提供され、任意に精製される。
【0158】
別の実施形態では、本方法は、工程(A)においてα-アノマーを5%以上含むβ-アノマー、すなわち未精製のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレート、または未精製のニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートから開始してもよい。
【0159】
一実施形態では、その塩は、工程(A)でのそれらの使用の前にそれぞれの合成において生成された溶解形態、すなわち非精製形態で提供される。
【0160】
要約すると、本発明による方法は、純粋なβ-アノマーまたはα-アノマーを含むβ-アノマーのいずれかから開始する様々な経路、好ましくは経路(P1)から(P5)による経路で、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を有利に調製することが可能である。
【0161】
経路(P1)は下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供する工程;
(β)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを単離および任意に精製する工程;
(γ)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程。
【0162】
経路(P2)は下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドを単離および任意に精製する工程;
(γ)ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシド塩のアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程。
【0163】
経路(P3)は下記工程(α)および(β)を含む:
(α)α-アノマーを5%まで含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供し、そして形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを事前に単離することなく塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程。
【0164】
経路(P4)は下記工程(α)、(β)、(γ)および(δ)を含む:
(α)α-アノマーを5%以上含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドを単離および任意に精製する工程;
(γ)ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド塩のアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(δ)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程。
【0165】
工程(P5)は下記工程(α)および(β)を含む:
(α)α-アノマーを5%以上含むニコチンアミド-2,3,5-O-トリアシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートのアシル基を開裂して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを提供し、そして形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートを事前に単離することなく塩メタセシスに供し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程;
(β)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離および任意に精製する工程。
【0166】
経路(P3)および(P5)で使用されるような「事前に単離することなく」という用語は、塩メタセシスがin situで行われることを表す。
【0167】
好ましくは、薬学的に許容されるアニオンを有する塩はまたin situ、すなわちアシル基の開裂工程で得られる反応混合物中で形成される。
【0168】
一実施形態では、様々な経路は、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドブロミドから開始し、そのL-ハイドロゲンタルトレートを調製する下記のスキームで例示的に示される:
【0169】
スキーム1:ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドブロミドから開始し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートを製造する経路P1からP5
【化25】
【0170】
別の実施形態では、様々な経路P1からP5は、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートから開始し、そのL-ハイドロゲンタルトレートを調製するスキーム2で例示的に示される(経路P2およびP3は示さない):
【化26】
【0171】
既に上述したように、一実施形態では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩のアシル基の開裂は、硫酸、塩酸または臭化水素酸またはヨウ化水素酸を使用して酸性条件下で行われることができる。得られる酸性混合物は、必要に応じて、それぞれのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離する前に、アンモニアまたはトリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどのアミンで中和されることができる。
【0172】
別の実施形態では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩におけるアシル基の開裂は、それぞれのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単離する前に、アンモニアまたはトリエチルアミンまたはトリブチルアミンを使用して塩基性条件(basis condition)下で行われることができる。
【0173】
第4の態様:結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドマレート、およびニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドタルトレート
第4の態様によると、本発明は結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドマレート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドタルトレート、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドマレート、およびニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドタルトレートに関する。
【0174】
好ましい実施形態では、本発明は結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート、ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート、およびニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートに関する。
【0175】
特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートはニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレートであり、実質的に下記の表1で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得る:
【0176】
【表1】
【0177】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートであり、実質的に下記の表2で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得る:
【0178】
【表2】
【0179】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレートであり、実質的に下記の表3で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得る:
【0180】
【表3】
【0181】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表4で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得るニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートモノハイドレートである:
【0182】
【表4】
【0183】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表5で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得るニコチンアミド-β-L-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートである:
【0184】
【表5】
【0185】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表6で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得るニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレートである:
【0186】
【表6】
【0187】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表7で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得るニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートである:
【0188】
【表7】
【0189】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表8で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得るニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートである:
【0190】
【表8】
【0191】
さらに特に好ましい実施形態では、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、実質的に下記の表9で提供されるようなピーク±0.2°2θを有する粉末X線回折パターンを特徴とし得る無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートである:
【0192】
【表9】
【0193】
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明は、下記からなる群から選択される結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩に関する:
【0194】
図1に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレート;
【0195】
図2に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレート;
【0196】
図3に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレート;
【0197】
図4に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートモノハイドレート;
【0198】
図5に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート;
【0199】
図6に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレート;
【0200】
図7に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート;
【0201】
図8に規定された粉末X線回折パターンを特徴とするニコチンアミド-2,3,5-O-トリアセチル-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート;
【0202】
図9に規定された粉末X線回折パターンを特徴とする無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート。
【0203】
第4の態様の別の実施形態では、第1または第2の態様の実施形態のいずれか一つに記載された方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩に関する。
【0204】
第5の態様:栄養補助食品
第5の態様によると、本発明は第1または第2の態様で記載された方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含むか、または第4の態様で記載されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む栄養補助食品に関する。
【0205】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含むそのような栄養補助食品を製造するための適切な方法は、当業界で知られているか、またはそのような既知の方法に類似して調製されることができる。
【0206】
第6の態様:医薬組成物
第6の態様によると、本発明は、第1または第2の態様で記載された方法によって得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含むか、または第4の態様で記載されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む医薬組成物に関する。
【0207】
医薬組成物は、ニコチンアミドリボシドキナーゼ経路またはNAD+生合成の他の経路に関する疾患または状態の予防または治療に使用されることができる。これらの経路は当業者に知られている。
【0208】
第7の態様:化学合成のために出発物質として第4の態様で記載された化合物の使用
第4の態様に記載された結晶性化合物は、それらの純度、および入手の容易さのため、他のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩、例えば市販の塩化物、または関連化合物を製造するための出発材料として提供されてもよく、すなわちそれらは化学合成における出発物質として使用されてもよい。
【0209】
第7の態様によると、本発明は化学合成を行う方法に関するもので、下記工程(A)を含む:
(A)第1、第2または第3の態様に記載されたような方法により得られるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供、または第4の態様で記載された化合物を提供する工程。
【0210】
第8の態様:ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートまたはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ブロミド、ヨージド、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートの調製
発明者らは、第3の態様で開示されたようなTanimori氏によって開発された方法をさらに修正した。この既知の方法は、その後の反応のために十分に純粋なニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートを形成するためには、1当量のテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して、とてつもなく過剰な7.3当量のTMSOTfが必要になるとこれまで信じられてきた。
【0211】
本発明の発明者らは、はるかに少ないTMSOTfの使用が、とてつもないモル過剰のTMSOTfで得られる生成物と比較して、より高い純度を有する生成物をもたらすことを予想外に発見した。これは、経済的な側面において特に有利である。
【0212】
したがって、上記第8の態様では、本発明は下記工程(A):
(A)1モルのテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して0.9~1.5モル当量のTMSOTfの存在下で、ニコチンアミドをテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースと反応させる工程
を含む方法で、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートの製造方法に関する。
【0213】
好ましくは、1.0~1.5モル当量、より好ましくは1.0~1.3モル当量、さらにより好ましくは1.0~1.2モル当量のTMSOTfが使用される。
【0214】
好ましくは、アセトニトリルが溶媒として使用される。
【0215】
好ましくは、反応は10~40℃、より好ましくは20~30℃の温度範囲で行われる。
【0216】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートは、非晶質の泡沫として溶媒を除去した後に得られることがある。
【0217】
アシル基は、その後既知の方法によって開裂され、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートを提供する。
【0218】
アシル化された生成物と並んで脱アシル化された生成物の両方は、第1、第2および第3の態様で記載された発明によるそれぞれの方法で使用されることができる。
【0219】
一実施形態では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートは、塩メタセシスの前、または脱アシル化の前に単離されない。
【0220】
そのヨージドは、類似の方法で調製されることができる。したがって、この態様では、本発明は下記工程(A):
(A)1モルのテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して0.9~1.5モル当量のTMSIの存在下で、ニコチンアミドとテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースを反応させる工程、
を含む方法で、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージドの製造方法に関する。
【0221】
好ましくは、その反応は10~50℃、より好ましくは20~40℃の温度範囲で行われる。
【0222】
この反応はまた、そのブロミド、クロリド、ノナフレート、フルオロスルホネートおよびパーコレートの調製に展開されることができる。したがって、一実施形態では、この態様はまた、下記工程(A):
(A)1モルのテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースに対して0.9~1.5モル当量のTMSBr、TMSCl、TMSOSO249、TMSOSO2FまたはTMSOClO3の存在下で、ニコチンアミドをテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースと反応させる工程、
を含む方法で、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ノナフレート、フルオロスルホネートまたはパーコレートの製造方法に関する。
【0223】
そのヨージドの合成は、形成された生成物の高い収率および純度、そして経済的な優位性のために特に好ましい。
【0224】
第9の態様:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフルオロブタンスルホネート、フルオロスルホネート、パーコレート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフルオロブタンスルホネート、フルオロスルホネート、パーコレート
第9の態様によると、本発明は下記に関する。
【0225】
下記化学式のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフルオロブタンスルホネート、フルオロスルホネートまたはパーコレート;
【化27】
【0226】
および下記化学式のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ノナフルオロブタンスルホネート、フルオロスルホネートまたはパーコレート
【化28】

(式中、Rはアルキルカルボニル、アリールカルボニルおよびヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニルおよびベンゾイルから独立に選択されるアシル基で、そしてより好ましくはアセチルであって、そしてここでRは任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2から選択される一つまたは複数の置換基で独立に置換され;ここで好ましくは、Rはアセチルである。
【0227】
本発明の別の態様では、第1の態様および第2の態様で記載された工程(X)および(Y)のような本発明による合成で使用されるニコチンアミドは、前駆体の形態、すなわちニコチン酸エステルの形態で使用される。
【0228】
一実施形態では、エステル部分は分枝状または非分枝状または環状であり得るC1-10アルコキシから選択される。別の実施形態では、エステル部分はフェノキシであり、任意に置換される。別の実施形態では、エステル部分はベンジルオキシであり、任意に置換される。本明細書において、「任意に置換される」という用語は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、およびSO2N(C1-6アルキル)2を参照する。
【0229】
続いて、ニコチン酸エステル部位を有するそれぞれの化合物は、上記に記載されたように塩メタセシスに供されてもよい。
【0230】
最終的に、それぞれの化合物のニコチン化エステル部分はアンモニアでニコチンアミド部位に転移される。
【0231】
別の実施形態では、本発明は第一のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩から第二のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩、または第一のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩から第二のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を製造する方法に関するもので、下記工程(A1)および(A2)を含む:
(A1)NH3またはNR12またはNR12HまたはNR123または[NR1234]OHを酸と反応させて、アンモニウム塩を提供する工程であって、ここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
(A2)第一のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または第一のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を工程(A1)からのアンモニウム塩と反応させて、対イオン交換を含む塩メタセシスを行い、第二のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩または第二のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供する工程。
【0232】
好ましい実施形態では、NR123または[NR1234]OHは工程(A1)で使用される。
【0233】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩に使用されるアセチル残基は、上記に記載される。
【0234】
好ましくは、工程(A2)は、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールまたはその二つまたはそれ以上の混合物で、任意に水を含む溶媒またはアルコールからなる群から選択されるアルコールを含む溶媒中で行われる;または、溶媒はメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール、またはその二つまたはそれ以上の混合物で、任意に水を含む群から選択される。
【0235】
別の実施形態では、本発明は、塩メタセシス反応において、NH4 +またはNR13 +またはNR122 +またはNR123+または[NR1234+を含むアンモニウム塩の使用に関するものであって、ここでR1、R2、R3およびR4はC1-12アルキルおよびアリールから独立に選択され、任意に置換される。
【0236】
好ましくは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩またはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は塩メタセシスに供される。
【0237】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩に使用されるアセチル残基は、上記に記載される。
【0238】
好ましくは、塩メタセシス反応はメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールまたはその二つまたはそれ以上の混合物、任意に水を含む溶媒またはアルコールからなる群から選択されるアルコールを含む溶媒中で行われ;または、溶媒はメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールまたはその二つまたはそれ以上の混合物からなる群から選択され、任意に水を含む。
【0239】
下記の実施例は本発明をさらに説明する。
【実施例
【0240】
実施例
実施例1:第2または第3の態様による方法の工程(A)において開始の塩として使用されるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドの調製
274gのβ-D-リボフラノース 1,2,3,5-テトラアセテートを274mlのアセトニトリルに溶解した。氷酢酸中の180mlの臭化水素(濃度33%)を0℃~5℃の温度に保ちながら、攪拌溶液に添加した。攪拌をさらに15分間続けた。さらに15分間攪拌しながら、41gのニコチンアミドを添加した。次に、700mlのアセトニトリル中の96gのニコチンアミドの熱い(70℃)溶液を添加し、それから混合物を約0℃~5℃に冷却した。攪拌を15時間続け、その後、形成された懸濁液を濾過した。濾液を蒸留に供した。得られた油状残留物をアセトンで希釈し、表題生成物の結晶を得た。表題生成物を濾過し、そして乾燥して、167g(43%収率)のほぼ無色の生成物を得た;融点:133~134℃。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): 2.09 (s, 6H), 2.13 (s, 3H) 4.45 (m, 2H, H5’), 4.69 (m, 1H, H4’), 5.43 (t, 1H, H3’), 5.62 (dd, 1H, H2’), 6.69 (d, 1H, H1’), 8.23 (s, 1H, NH), 8.41 (dd, 1H, H5), 8.74 (s, 1H, NH), 9.13 (d, 1H, H4), 9.28 (d, 1H, H6), 9.49 (s, 1H, H2);
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6): 20.3, 20.4, 20.5, 62.1 (C5‘), 68.7 (C3‘), 75.3 (C2‘), 81.8 (C4‘), 97.2 (C1‘), 128.1 (C5), 133.9 (C3), 141.2 (C2), 143.1 (C6), 145.5 (C4), 162.7 (CONH2), 169.2, 169.4, 170.1
【0241】
実施例2:第1の態様による方法において工程(A)で開始の塩として使用されるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの調製
167gの実施例1で得られた生成物を870mlのメタノールに溶解した。その後、酢酸中の135mlの臭化水素(濃度33%)を、5℃~10℃の温度に保ちながら、撹拌溶液に添加した。得られた混合物を20℃で2日間撹拌し、ここで生成物は結晶化を開始した。形成された結晶を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、そして乾燥した。表題化合物は、77g(63%)の収率で淡黄色の結晶性粉末として得られた。融点:118~119℃。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.83 (dd, 1H, H5’), 3.98 (dd, 1H, H5’), 4.29 (t, 1H, H3’), 4.39-4.48 (m, 2H, H4’, H2’), 6.18 (d, 1H, H1’), 8.22 (t, 1H, H5), 8.91 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2);
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.0 (C5‘), 69.5 (C3‘), 77.2 (C2‘), 87.5 (C4‘), 99.7 (C1‘), 128.3 (C5), 133.7 (C3), 140.2 (C2), 142.5 (C6), 145.5 (C4), 165.6 (CONH2).
【0242】
実施例3:塩メタセシスのための様々なアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート塩を使用したニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドからニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例3a:TEA・L-ハイドロゲンタルトレートの使用
3.90gのL-酒石酸(26.0 mMol)を10mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。無色の溶液を氷浴で冷却し、そして3.64mlのトリエチルエアミン(26.1 mMol)を添加した。わずかに黄色を帯びた溶液のpHは大体4~4.5であった。このようにして、TEA・L-ハイドロゲンタルトレートの1.73モル溶液15mlを調製した。
【0243】
5.8gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド(NR・Br)を3.5mlの水に室温で攪拌しながら溶解した。10mlのメタノールを添加した。10mlの上記で調製したトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの溶液を、無色透明の溶液に添加した。白色の生成物が沈殿し始める。
【0244】
懸濁液を室温でさらに一時間攪拌した。生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。6.62g(95%)の白色の結晶性粉末を得た;融点:129~130℃;IC:残留ブロミド0.20%。その固体は、所望により、水性メタノールから再結晶化してもよい。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.38-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 4.41 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2). 不純物: < 1 mol% ニコチンアミド; 1.2 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 7.3 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 176.3 (2x COO, H-タルトレート). 不純物: 8.2, 46.6 (TEA). 溶媒: 48.9 (メタノール).
XRD:結晶(図5
【0245】
実施例3b:TBA・L-ハイドロゲンタルトレートの使用
3.90gのL-酒石酸(26.0 mMol)を10mlのメタノールに撹拌しながら溶解した。無色の溶液を氷浴で冷却し、そして6.3mlのトリブチルアミン(26.0 mMol)を添加した。わずかに黄色を帯びた溶液のpHは大体4であった。このようにして、トリブチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの1.53モル溶液17.5mlを調製した。
【0246】
5.80gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを、3.5mlの水に室温で撹拌しながら溶解した。10mlのメタノールを添加した。11.1mlの上記で調製したトリブチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート溶液を無色透明の溶液に添加した。白色の生成物は直ちに結晶化し始める。
【0247】
懸濁液を室温でさらに一時間攪拌した。生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。6.37g(91%)の白色の結晶性粉末を得た;融点:128℃;IC:残留ブロミド0.62%。
【0248】
不純物(NMR):<1mol%ニコチンアミド,2.7mol%TBA塩:0.84(t,9H),1.28(m,6H),1.58(m,6H),3.04(q,6H);溶媒:3.7mol%メタノール:3,25(s,3H).
【0249】
実施例3c:テトラブチルアンモニウム・L-ハイドロゲンタルトレートの使用
3.90gのL-酒石酸(26.0 mMol)を10mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。無色の溶液を氷浴で冷却し、そして水中のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの40%溶液(26.0mMol)17.0mlを添加した。わずかに黄色を帯びた溶液のpHは大体4であった。このようにして、テトラブチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの0.9モル溶液29mlを調製した。
【0250】
5.80gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを3.5mlの水に室温で攪拌しながら溶解した。10mlのメタノールを添加した。19.3mlの上記で調製したテトラブチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの溶液を無色透明の溶液に添加した。白色の生成物が結晶化し始める。
【0251】
懸濁液を室温でさらに一時間攪拌した。生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。5.60g(80%)の白色の結晶性粉末を得た;融点:129~130℃;IC:残留ブロミド0.13%。
【0252】
不純物(NMR):<1mol%ニコチンアミド;0.35mol%TBA塩:0.36(t,9H),1,27(m,6H),1,56(m,6H),3.11(q,6H);溶媒:2.4mol%メタノール:3.26(s,3H).
【0253】
実施例4:下記の表の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を実施例3aに類似して調製した。
【0254】
【表10】
【0255】
実施例5:塩メタセシスのための様々なアンモニウム L-ハイドロゲンマレート塩を使用したニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドからニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートの調製
実施例5a:TEA・L-ハイドロゲンマレートの使用
5.8gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを10mlのメタノールに撹拌しながら懸濁した。トリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンマレートの1.73モル溶液10mlを添加した。懸濁液を固体が完全に溶解するまで加熱した。冷却後、白色固体が沈殿した。この懸濁液を30分間撹拌し、そしてその後濾過した。残留物をメタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。4.15g(62%)の白色結晶性粉末を得た。融点:116.5~117℃.IC:残留ブロミド0.10%。生成物は、所望により、メタノールから再結晶化されても良い。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.53 (dd, 1H, CH2, H-マレート), 2.72 (dd, 1H, CH2, H-マレート), 3.81 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.29 (dd, 1H, CHOH, H-マレート), 4.38-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2). 不純物: < 1 mol% ニコチンアミド; 0.7 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 6.3 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 40.0 (CH2, H-マレート), 60.2 (C5‘), 68.5 (CHOH, H-マレート), 69.7 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.7 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.7 (CONH2), 176.3 (COO, H-マレート), 179.0 (COO, H-マレート). 溶媒: 48.9 (メタノール).
XRD:結晶(図2
【0256】
実施例5b:TBA・L-ハイドロゲンマレートの使用
3.50gのL-リンゴ酸(26.0 mMol)を10mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。無色の溶液を氷浴で冷却し、そして6.3mlのトリブチルアミン(26.0 mMol)を添加した。わずかに黄色を帯びた溶液のpHは大体5であった。このようにして、トリブチルアンモニウム L-ハイドロゲンマレートの1.53モル溶液17.5mlを調製した。
【0257】
5.80gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを、17.5mlのメタノールに撹拌しながら懸濁した。11.1mlの上記で調製したトリブチルアンモニウム L-ハイドロゲンマレートの溶液を添加した。固体が完全に溶解するまで懸濁液を加熱した。冷却(colling)後、白色の固体が結晶化した。懸濁液を30分間撹拌し、そしてその後濾過した。残留物をメタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。4.89g(73%)の白色結晶性粉末を得た;融点:115.5℃;IC:残留ブロミド0.64%。
【0258】
不純物:<1mol%ニコチンアミド;0.2mol%TBA塩;2mol%メタノール。
【0259】
実施例6:下記の表の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を、実施例5aに類似して調製した。
【0260】
【表11】
【0261】
実施例6d:化合物6cの再結晶によるモノハイドレート化
実施例6cで調製した2.0gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートを9mlの水に溶解した。70mlのメタノールを無色の溶液に攪拌しながら添加した。おおよそ1分後、白色の結晶が沈殿した。1時間後、形成された懸濁液を濾過した。残留物をメタノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。1.54g(77%)のそのモノハイドレートの白色結晶性粉末を得た。水分含量:4.24%(カールフィッシャー法(K. Fischer)により決定);融点:115~116℃;IC:残留ブロミド:<0.01%。
XRD:結晶(図4
【0262】
実施例7:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド メソ-ハイドロゲンタルトレートの調製
0.57gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを1mlのメタノールに撹拌しながら懸濁した。トリエチルアンモニウム メソ-ハイドロゲンタルトレートの1.69モル溶液1mlを添加した。懸濁液を沸点まで加熱し、そしてその後冷却した。形成されたエマルジョンを20mlのエタノールに滴下した。形成された懸濁液を濾過し、そして残留物を室温で真空中で乾燥した。0.44g(62%)の薄片状の吸湿性粉末を得た。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.38-4.46 (m, 2H, H4’, H2’), 4.35 (s, 1.5H, 2x CHOH, メソ-H-タルトレート), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.21 (t, 1H, H5), 8.91 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.53 (s, 1H, H2). 不純物: 5 mol% ニコチンアミド: 7.65 (m, 1H), 8.33 (m, 1H), 8.68 (d, 1H), 8.90 (s, 1H); 10.2 mol% TEA 塩: 1.20 (t, 9H), 3.12 (q, 6H). 溶媒: 16 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H); 40 mol% エタノール: 1.09 (t, 3H), 3.56 (q, 2H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 73.7 (2x CHOH, メソ-H-タルトレート), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 175.7 (2x COO, H-タルトレート). 不純物: 125.0, 138.6, 146.0, 149.8 (ニコチンアミド); 8.2, 46.6 (TEA). 溶媒: 48.9 (メタノール); 16.8, 57.4 (エタノール).
【0263】
実施例8:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-グルクロネートの調製
5.10gのグルクロン酸を15mlのメタノールに攪拌しながら懸濁した。無色の懸濁液を氷浴で冷却し、そして3.60mlのトリエチルアミンを添加した。TEA・D-グルクロネートの1.35モル溶液19.5mlを調製した。
【0264】
5.0gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを3.0mlの水に室温で攪拌しながら溶解した。10mlのメタノールを添加した。上記で調製した11.1mlのトリエチルアンモニウム D-グルクロネート溶液を添加した。この透明な黄色を帯びた溶液を455mlのn-ブタノールにゆっくり滴下し、ここで白色懸濁液を生成した。
【0265】
懸濁液を、室温でさらに5時間攪拌した。生成物を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、そして35℃の真空中で乾燥した。6.64gの乾燥した粗生成物を6.6mlの水に溶解し、そして33mlのメタノールで希釈した。この黄色を帯びた溶液を550mlのブタノールに滴下し、ここで白色の懸濁液を生成した。この懸濁液を濾過し、残留物をイソプロパノールで洗浄し、そして35℃で乾燥した。融点:66~76℃;残留ブロミド1.43%(IC)。
1H-NMR (400 MHz, D2O): NR: 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.38-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.21 (t, 1H, H5), 8.91 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.53 (s, 1H, H2); GlcUA (アノマー混合物): 3.19 (m), 3.42 (m), 3.50 (m), 3.63 (m), 4.00 (t), 4.55 (d, β-アノマー), 5.14 (d, α-アノマー). 不純物: 2 mol% ニコチンアミド; 0.9 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 23 mol% メタノール: 3.26 (s, 3H); 5.7 mol% ブタノール: 0.80 (t, 1H, H4), 1.25 (m, 2H, H3), 1.43 (m, 2H, H2).
13C-NMR (100 MHz, D2O): NR: 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2); GlcUA: 71.3, 71.7, 71.8, 72.0, 72.5, 74.0, 75.5, 76.1, 92.1, 95.9, 175.7, 176.7. 溶媒: 48.9 (メタノール); 13.1, 18.4, 33.4, 61.5 (ブタノール).
【0266】
実施例9:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-アスコルベート
粗生成物を実施例8に類似して調製した、しかしながら沈殿のためにエタノールを使用した。3.11gの粗生成物を1.9mlの水に溶解した。オレンジ色の透明な溶液を濾過し、そして16mlのメタノールで希釈した。この溶液を238mlのエタノールに滴下し、ここでオレンジ色の懸濁液を生成した。この生成物を濾過により単離し、そして35℃で乾燥した。1.13gの黄色を帯びた粉末を得た(収率36.3%)。IC:残留ブロミド0.38%。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.38-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2); アスコルベート: 3.64 (m, 2H), 3.92 (m, 1H), 4.43 (m, 1H). 不純物: 16 mol% ニコチンアミド: 7.49 (t, 1H), 8.13 (d, 1H), 8.60 (d, 1H), 8.82 (s, 1H); TEA塩無し. 溶媒: 1.3 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H); 46 mol% エタノール: 1.08 (t, 3H), 3.55 (q, 2H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.7 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2); アスコルベート: 62.5, 69.5, 78.2, 113.3, 174.6, 177.2. 不純物: ニコチンアミド: 124.2, 129.3, 136.5, 147.6, 151.7. 溶媒: 16.8, 57.4 (エタノール).
【0267】
実施例10:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドシトレート
5.52gのクエン酸モノハイドレートを55mlのDMSOに攪拌しながら溶解した。無色の溶液を氷浴中で冷却し、そして12mlのトリエチルアミンを添加した。TEA・シトレートの0.36モル溶液73mLを調製した。
【0268】
9.0gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを18mlのDMSOに懸濁した。73mlの上記で生成した溶液を添加し、そして55℃に加熱した。この褐色の溶液を1125mlのイソプロパノールに添加し、ここで白色の懸濁液を生成した。この固体を濾過により単離し、そして35℃で乾燥した。6.32g(74%)の粉末を得た。
【0269】
3.22gの粗生成物を16mlのメタノールおよび2mlの水の混合物に溶解した。この溶液を220mlのイソプロパノールに滴下し、ここで白色の懸濁液を生成した。この固体を濾過により単離し、イソプロパノールで洗浄し、そして35℃で真空中で乾燥した。2.67の白色粉末を得た(82.9%)。IC:残留ブロミド0.19%
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.61 (m, 4H, CH2, シトレート), 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.97 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.38-4.46 (m, 2H, H4’, H2’), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.21 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2). 不純物: 6 mol% ニコチンアミド: 7.50 (dd, 1H), 8.15 (m, 1H), 8.61 (d, 1H), 8.82 (s, 1H); 1.5 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 31 mol% メタノール: 3.26 (s, 3H); 18 mol% イソプロパノール: 1.08 (d, 6H), 3.92 (m, 1H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 44.6 (CH2, シトレート), 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.7 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.7 (CONH2), 176.9 (2x COO, シトレート), 180.0 (COO, シトレート). 不純物: ニコチンアミド: 124.3, 129.3, 136.7, 147.5, 151.6; TEA塩: 8.2, 46.6. 溶媒: 48.9 (メタノール); 23.7, 64.2 (イソプロパノール).
【0270】
実施例11:ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例11a:ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートブロミドから塩メタセシスを介して
3.90gのL-酒石酸を10mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。溶液を0~5℃に冷却した。3.64mlのトリエチルアミンを添加した。pHの値は、4.1であった。トリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの1.73モル溶液15mlを得た。
【0271】
8.0gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボシドブロミドを10mlのメタノールに撹拌しながら懸濁した。10mlの上記で生成したトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート溶液を添加した。白色結晶性粉末がゆっくりと沈殿を開始した。濾過後に得られた残留物を35℃で真空中で乾燥した。6.00g(65.2%)の白色結晶性粉末を得た。融点128℃;IC:残留ブロミド<0.1%。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.08, 2.12, 2.15 (3x s, 3x 3H, COCH3), 4.43 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 4.52 (m, 2H, H5’), 4.88 (m, 1H, H4´), 5.44 (t, 1H, H3’), 5.55 (dd, 1H, H2’), 6.58 (d, 1H, H1’), 8.27 (t, 1H, H5), 8.99 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.43 (s, 1H, H2). 不純物: < 0.1 mol% ニコチンアミド; 0.6 mol% TEA塩: 1.21 (t, 9H), 3.13 (q, 6H). 溶媒: 2 mol% メタノール: 3.27 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 19.8, 19.9, 20.2 (3x COCH3), 62.6 (C5‘), 69.4 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 76.3 (C2‘), 82.6 (C4‘), 97.3 (C1‘), 128.6 (C5), 134.2 (C3), 140.4 (C2), 143.1 (C6), 146.2 (C4), 165.5 (CONH2), 172.3, 172.4, 173.3 (3x CO), 176.3 (2x COO, H-タルトレート).
XRD:結晶(図7
【0272】
実施例11b:イオン交換体を使用したイオン交換を介して(比較のため)
145gのAmbersep900水酸化フォームを110mlの水に懸濁した。続いて、21gのL-酒石酸を攪拌しながら添加した。L-ハイドロゲンタルトレートを担持したイオン交換体を濾過により単離し、そして水で3回洗浄した。
【0273】
10.0gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボシドブロミドを70mlの水に撹拌しながら溶解した。22gの担持イオン交換体を添加し、そして16分間攪拌した。イオン交換体を濾過により分離し、そして水で2回洗浄した。濾液に再び22gの担持イオン交換体を供し、そして洗浄および濾過し、ここで濾液を回収した。これを2回繰り返した。濾液を濃縮した。14.08gの無色のオイルを得た。このオイルを水性メタノールに供し、ここで白色懸濁液を得た。9.09gの白色粉末を濾過および乾燥後に得た。
【0274】
5.05gの非晶質生成物は、25mlのメタノールに溶解し、ここで数分後に結晶化を開始した。結晶を濾過により単離し、そして35℃で真空中で乾燥した。3.92gで、融点は130℃であった。XRDは、実施例11aで得られた生成物のXRDと同一であった。
【0275】
実施例12:ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートの調製
実施例12a:本発明によって
11.55g(0.094モル)のニコチンアミドおよび29.7g(0.093モル)のβ-D-リボフラノース 1,2,3,5―テトラアセテートをモレキュラーシーブ3オングストローム上で乾燥させた750mlのアセトニトリル中に、室温で撹拌しながら溶解した。18.2ml(0.097モル)のトリメチルシリルトリフレートを20分以内に添加した。黄色溶液を20分間攪拌した。続いて、その溶媒を35℃で真空中で除去した。形成した泡沫を300mlのジクロロメタンに溶解し、そして4.5gの活性炭を添加した。懸濁液を濾過した。濾液を濃縮した。49.5g(100%)の黄色の泡沫を得た。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.02, 2.06, 2.09 (3x s, 3x 3H, COCH3), 4.45 (m, 2H, H5’), 4.82 (m, 1H, H4´), 5.38 (t, 1H, H3’), 5.49 (dd, 1H, H2’), 6.51 (d, 1H, H1’), 8.22 (t, 1H, H5), 8.92 (d, 1H, H4), 9.13 (d, 1H, H6), 9.37 (s, 1H, H2). 不純物: 3 mol% アルファ-アノマー, 4 mol% ニコチンアミド.
13C-NMR (100 MHz, D2O): 19.8, 19.9, 20.2 (3x COCH3), 62.6 (C5‘), 69.4 (C3‘), 76.4 (C2‘), 82.7 (C4‘), 97.3 (C1‘); 114.9 + 118.1 + 121.2 + 124.4 (q, CF3); 128.7 (C5), 134.2 (C3), 140.4 (C2), 143.1 (C6), 146.2 (C4), 165.5 (CONH2), 172.3, 172.4, 173.3 (3x CO).
【0276】
実施例12b:比較のため
方法は、高過剰のトリメチルシリルトリフレートを使用して、Tanimori氏により記載されたように行い、ここで生成物は実施例12aに記載したように単離した。得られた泡沫は、おおよそβ-アノマー:α-アノマー:ニコチンアミド=2:1:1の混合物を含んでいた。
【0277】
実施例13:実施例12によって調製したニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートトリフレートからニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例12からの5.00gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートを50mlのエタノールに溶解した。1.42gのL-酒石酸を添加した。続いて、1.31mlのトリエチルアミンを添加した。生成されたエマルジョンは結晶化を促進するために短時間加熱し、そして冷却した。形成された沈殿物は濾過により単離し、そして30℃で真空中で乾燥した。5.07g(101.4%)の白色結晶性粉末を得た(融点127℃)。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.08, 2.12, 2.16 (3x s, 3x 3H, COCH3), 4.43 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 4.52 (m, 2H, H5’), 4.88 (m, 1H, H4´), 5.44 (t, 1H, H3’), 5.56 (dd, 1H, H2’), 6.58 (d, 1H, H1’), 8.28 (t, 1H, H5), 8.99 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.43 (s, 1H, H2). 不純物: < 1 mol% ニコチンアミド; 0.35 mol% TEA塩: 1.21 (t, 9H), 3.13 (q, 6H). 溶媒: 2 mol% エタノール: 3.57 (q, 2H), 1.10 (t, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 19.8, 19.9, 20.2 (3x COCH3), 62.6 (C5‘), 69.4 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 76.3 (C2‘), 82.6 (C4‘), 97.3 (C1‘), 128.6 (C5), 134.2 (C3), 140.4 (C2), 143.1 (C6), 146.3 (C4), 165.5 (CONH2), 172.3, 172.4, 173.3 (3x CO), 176.3 (2x COO, H-タルトレート).
【0278】
実施例14:ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートブロミドからニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート D―ハイドロゲンタルトレートの調製
結晶性ニコチンアミド-2,3,5-О-トリアセチル-β-D-リボシド D―ハイドロゲンタルトレートを実施例11aにより調製した。
【0279】
比較のため、生成物は実施例11bの方法により調製した。結晶化に供した非晶質の生成物は実施例11aで得られた生成物と同一であった。
【0280】
XRDは図8に示される。
【0281】
実施例15:経路2を例示するニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレート(実施例11から)の脱アシル化
実施例15a:硫酸を使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
メタノール中の希釈硫酸の調製:27gのメタノールを0℃に冷却した。3.00gの硫酸を攪拌しながら添加し、10%のメタノール性硫酸(methanolic sulfuric acid)を得た。
【0282】
ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L―ハイドロゲンタルトレートの脱アシル化:3.00gのニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L―ハイドロゲンタルトレートを15mlのメタノールに攪拌しながら懸濁した。11.7gの上記メタノール性硫酸を添加した後、黄色を帯びた溶液を生成した。室温で5日間攪拌した後、薄層クロマトグラフィーで検出したところ、生成物および不純物としてのニコチンアミドのみが存在した。
【0283】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへ変換:1.1mlのトリエチルアミンを、pH約3.5に調整するために上記溶液に添加した。0.85gのL-酒石酸を添加した。0.8mlのトリエチルアミンを添加した後、生成物は結晶化を開始した。この懸濁液をさらに1時間撹拌し、そしてその後冷蔵庫で12時間保存した。生成した結晶を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。126~127℃の融点を有する1.01g(44.2%)の白色結晶性粉末を得た。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.96 (dd, 1H, H5’), 4.27 (t, 1H, H3’), 4.37-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 4.42 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2). 不純物: 3 mol% ニコチンアミド: 7.85 (m, 1H), 8.56 (m, 1H), 8.77 (d, 1H), 9.00 (s, 1H); 3.4 mol% TEA塩: 1.18 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 11.3 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 176.3 (2x COO, H-タルトレート). 不純物: 8.2, 46.6 (TEA塩). 溶媒: 48.9 (メタノール).
【0284】
実施例15b:氷酢酸中でHBrを使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L―ハイドロゲンタルトレートの脱アシル化:3.0gのニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L―ハイドロゲンタルトレートを15mlのメタノールに攪拌しながら懸濁した。この懸濁液を5℃に冷却し、そして氷酢酸中の3.0mlのHBr33%を添加した。黄色を帯びた溶液を、室温で3日間攪拌して生成した。薄層クロマトグラフィーにより、脱アシル化が完了したことが明らかになった。
【0285】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:1mlのトリエチルアミンを上記溶液に少しずつ添加した。1.5mlの水を加え、ここで黄色溶液を形成した。続いて、0.85gのL-酒石酸を添加した。0.8mlのトリエチルアミンを添加した後、生成物は結晶化を開始した。生成物の懸濁液を室温でさらに1時間撹拌した。形成した結晶を濾過し、7mlのイソプロパノールおよび5mlのアセトンで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。129~130℃の融点を有する白色結晶性粉末0.82g(36%)を得た。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例15aに類似。不純物:1mol%ニコチンアミド;0.1mol%TEA塩.溶媒:2.7mol%メタノール.
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例15aに類似。
【0286】
実施例16:経路3を例示するニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミド(実施例1から)の脱アシル化
実施例16a:硫酸を使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
メタノール中の希釈硫酸の調製:20mlのメタノールを0℃に冷却した。2.00gの96%硫酸を攪拌しながら添加した。0.93Mメタノール性硫酸21mlを得た。
【0287】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドの脱アシル化:5.00gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドを24.4mlのメタノールに攪拌しながら懸濁し、ここでエダクトの一部を溶解した。5.6mlの上記メタノール性硫酸を添加した。得られた無色の溶液を室温で撹拌した。その溶液を3日間撹拌し、ここで懸濁液を生成した。
【0288】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:1.36mlのトリエチルアミンを上記懸濁液に添加した。3.4mlの水を添加した後、透明な溶液を生成した。1.63gのL-酒石酸を添加し、ここで生成物は沈殿を開始した。さらに1.35mlのトリエチルアミンを添加した後、さらなる生成物が沈殿した。懸濁液を濾過し、得られた固体をメタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。2.4g(55%)の結晶性白色粉末を得た。融点129.5℃。IC:残留ブロミド0.05%。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.96 (dd, 1H, H5’), 4.27 (t, 1H, H3’), 4.37-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 4.42 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2). 不純物: 2 mol% ニコチンアミド: 7.83 (m, 1H), 8.54 (m, 1H), 8.76 (d, 1H), 9.00 (s, 1H); 0.7 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 7 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 176.3 (2x COO, H-タルトレート). 溶媒: 48.9 (メタノール).
【0289】
実施例16b:氷酢酸中のHBrを使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドの脱アシル化:5.00gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドを30mlのメタノールに室温で攪拌しながら溶解した。氷酢酸中の3.75mlのHBr33%を添加した後、形成した黄色溶液を室温で3日間攪拌した。ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの白色懸濁液は薄層クロマトグラフィーにより制御されるように生成した。
【0290】
トリエチルアミンを使用した中和後、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:2.50mlのトリエチルアミンを上記懸濁液に少しずつ添加した。続いて、2.5mlの水を添加した。1.63gのL-酒石酸を、形成された黄色を帯びた溶液に添加した。生成物は、pH3.5~4で1.52mlのトリエチルアミンをさらに追加した後、沈殿を開始した。この結晶生成物を濾過し、10mlのイソプロパノールおよび10mlのアセトンで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。2.93g(66.9%)の白色結晶性粉末を得た。融点127.5~128.5℃。IC:残留ブロミド0.33%。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例15aに類似。不純物:1mol%ニコチンアミド;2.3mol%TEA塩。溶媒:7mol%メタノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例15aに類似。
【0291】
実施例16c:トリエチルアミンを使用した脱アシル化
5.00gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドを30mlのメタノールに室温で攪拌しながら溶解した。1.52mlのトリエチルアミン(1当量)を添加した。黄色溶液を24時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーによる制御は、ほぼ完全に変換したことを示したが、しかしながらニコチンアミドの形成もまた示された。1.63gのL-酒石酸を形成した懸濁液に添加した。生成物は沈殿を開始した。生成物の懸濁液を0℃で1時間撹拌し、形成した生成物を濾過により単離し、12mlのイソプロパノールおよび12mlのアセトンで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。1.86g(42.4%)の白色粉末を得た。融点127℃;IC:残留ブロミド0.26%。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例15aに類似。不純物:6mol%ニコチンアミド;1.7mol%TEA塩。溶媒:18mol%メタノール、0.5mol%イソプロパノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例15aに類似。
【0292】
実施例16d:0~5℃でトリエチルアミンを使用した脱アシル化
【0293】
実施例16cはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドブロミドを0℃でトリエチルアミンに供したことを相違点として、実施例16cを繰り返した。収率は85.8%に増加した。
【0294】
実施例17:経路4を例示するニコチンアミドを1-ブロモ-2,3,5-トリアセチル-D-リボフラノシドでグリコシル化して生成したβ-およびα-アノマーの混合物からそのL-ハイドロゲンタルトレート塩を分離することにより得られるニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートの調製
理論上54mmolのニコチンアミド-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテートを含むアノマーの粗混合物100ml(実施例1に類似して得られた)に、11.7mlのトリエチルアミンを添加し、ここで、含まれる酸(HBrおよび酢酸)を部分的に中和した。5.16gのL-酒石酸を橙黄色の溶液に攪拌しながら添加した。酒石酸が完全に溶解してすぐに、4.8mlのトリエチルアミンを添加した。
【0295】
その溶液を42ml蒸留して除去することで濃縮し、ここでトリエチルアミンハイドロブロミドの針状物が沈殿を開始した。30mlのイソプロパノールを添加し、そして懸濁液を撹拌しながら0℃に冷却した。懸濁液を濾過し、そして残留物(トリエチルアミンハイドロブロミド)を14mlのイソプロパノールで洗浄した。
【0296】
その濾液にいくつかの生成物の結晶を播種した。続いて、30mlのtert-ブチル-メチルエーテルをゆっくりと加え、ここで生成物が沈殿を開始した。生成物を冷蔵庫で12時間保存した。濾過後、25mlのイソプロパノールでそれぞれ2回洗浄し、その固体を35℃で真空中で乾燥した。白色結晶の形態でニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレート13.86g(48.5%)を得た。融点123~124℃。IC:残留ブロミド2.64%。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.08, 2.12, 2.15 (3x s, 3x 3H, COCH3), 4.43 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 4.52 (m, 2H, H5’), 4.88 (m, 1H, H4´), 5.44 (t, 1H, H3’), 5.56 (dd, 1H, H2’), 6.58 (d, 1H, H1’), 8.27 (t, 1H, H5), 8.99 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.43 (s, 1H, H2). 不純物: < 1 mol% ニコチンアミド; 20 mol% TEA塩: 1.21 (t, 9H), 3.13 (q, 6H). 溶媒: 2.2 mol% イソプロパノール: 1.09 (d, 6H), 3.93 (m, 1H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 19.8, 19.9, 20.2 (3x COCH3), 62.6 (C5‘), 69.4 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-tartrate), 76.3 (C2‘), 82.6 (C4‘), 97.3 (C1‘), 128.6 (C5), 134.2 (C3), 140.4 (C2), 143.1 (C6), 146.2 (C4), 165.5 (CONH2), 172.3, 172.4, 173.3 (3x CO), 176.3 (2x COO, H-タルトレート). 不純物: TEA塩: 8.2, 46.7.
【0297】
実施例18:経路5を例示するニコチンアミド-α/β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートブロミドのアノマー混合物の脱アシル化
理論上約54mmolのニコチンアミド-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテートブロミドを含むアノマーを含む100mlの粗溶液(実施例1参照)を、ロータリーエバポレーターを使用して、35~40℃の範囲の温度で完全に濃縮した。得られた黄色の粘性油を44mlのメタノールで希釈した。続いて、氷酢酸中の10mlのHBr33%を添加した。黄色を帯びた透明な溶液を室温で撹拌した。1日後、ニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドが沈殿した。5日後、薄層クロマトグラフィーで制御することで、完全な脱アシル化を達成した。
【0298】
ニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートとしての分離:HBrおよび酢酸を中和するために、7.5mlのトリエチルアミンを上記懸濁液に添加した。4mlの水を添加した後、透明な溶液が得られた。8.6gの酒石酸をこの黄色を帯びた溶液に添加し、不溶性の沈殿物を除去するために濾過した。続いて、5.4mlのトリエチルアミンを添加し、ここで所望の生成物が沈殿を開始した。濾過し、そしてエタノールおよびメタノールで洗浄後、得られた固体を30℃で真空中で乾燥した。7.27g(33.3%)の白色結晶性粉末を得た。融点 128.5~129.5℃;IC:残留ブロミド0.16%。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例15aに類似。不純物:3mol%ニコチンアミド;1.2mol%TEA塩。溶媒:7mol%メタノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例15aに類似。
【0299】
実施例19:経路5を例示するニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートトリフレートの脱アシル化
実施例19a:硫酸を使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
【0300】
メタノール中の希釈硫酸の調製:27gのメタノールを0℃に冷却した。3.00gの96%硫酸を攪拌しながら添加した。30gの10%メタノール性硫酸を得た。
【0301】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートの脱アシル化:3.00gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフラ-トを15mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。5.86gの上記メタノール性硫酸を添加した。得られた無色の溶液を室温で攪拌した。その溶液を3日間攪拌した。薄層クロマトグラフィーによる制御で完全な脱アシル化およびいくつかのニコチンアミドの不純物を明らかにした。
【0302】
トリエチルアミンで中和後、ニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:1.1mlのトリエチルアミンを上記溶液に添加した。トリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの1.7モルのメタノール性溶液3.3mlを添加し、ここで生成物は直ちに沈殿を開始した。続いて、0.40gのL-酒石酸を添加した。生成物の懸濁液を冷蔵庫で12時間保存した。濾過の後、得られた固体をメタノールおよびエタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。1.23g(53.8%)の白色結晶性粉末を得た。融点127~128℃。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.82 (dd, 1H, H5’), 3.96 (dd, 1H, H5’), 4.27 (t, 1H, H3’), 4.37-4.45 (m, 2H, H4’, H2’), 4.41 (s, 2H, 2x CHOH, H-タルトレート), 6.17 (d, 1H, H1’), 8.20 (t, 1H, H5), 8.90 (d, 1H, H4), 9.19 (d, 1H, H6), 9.51 (s, 1H, H2). 不純物: 2 mol% ニコチンアミド: 7.83 (m, 1H), 8.54 (m, 1H), 8.76 (d, 1H), 9.00 (s, 1H); 2.9 mol% TEA塩: 1.19 (t, 9H), 3.11 (q, 6H). 溶媒: 16 mol% メタノール: 3.25 (s, 3H), 2 mol% エタノール.
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 72.8 (2x CHOH, H-タルトレート), 77.4 (C2‘), 87.6 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 176.3 (2x COO, H-タルトレート). 不純物: 8.2, 46.6 (TEA塩). 溶媒: 48.9 (メタノール).
【0303】
実施例19b:氷酢酸中のHBrを使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
8.00gニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートを32mlのメタノールに撹拌しながら溶解した。この溶液を0~5℃に冷却した。氷酢酸中で5.2mlのHBr33%を添加した後、溶液を室温で攪拌し続けた。薄層クロマトグラフィーによる制御によって、2日後に生成物を脱アシル化した。
【0304】
溶液を、二つに分けた。
【0305】
形成した中間体ブロミドの単離:溶液の半分(20.5ml)にニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドを播種し、室温で攪拌した。約30分後、懸濁液を形成した。この懸濁液を濾過し、そして残留物をメタノールおよびエタノールで洗浄し、そしてその後30℃で真空中で乾燥した。0.62g(24.5%)の白色結晶性粉末を得た。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 3.83 (dd, 1H, H5’), 3.98 (dd, 1H, H5’), 4.29 (t, 1H, H3’), 4.39-4.48 (m, 2H, H4’, H2’), 6.18 (d, 1H, H1’), 8.22 (t, 1H, H5), 8.92 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.52 (s, 1H, H2).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 60.2 (C5‘), 69.7 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.7 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.5 (C5), 134.0 (C3), 140.4 (C2), 142.7 (C6), 145.7 (C4), 165.8 (CONH2).
【0306】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:1.8mlのトリエチルアミンを溶液の残りの半分に添加し、ここでHBrおよび酢酸を部分的に中和した。トリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレートの1.7molメタノール性溶液4.4mlを黄色を帯びた溶液に添加し、ここで生成物は沈殿を開始した。濾過し、そしてメタノールおよびエタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した後、1.62g(53.2%)の白色結晶性粉末を得た。融点127~128℃。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例19aに類似。不純物:1mol%ニコチンアミド;3.7mol%TEA塩。溶媒:12.5mol%メタノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例19aに類似。
【0307】
実施例19c:トリエチルアミンを使用した脱アシル化
ニコチンアミド-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートトリフレートの脱アシル化:3.00gのトリフレートを18mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。0.8mlのトリエチルアミン(1当量)を0℃に冷却した溶液に加えた。0~5℃で4日間攪拌した後、薄層の制御は完全な変換を示した。
【0308】
ニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:上記の工程で得られた茶橙色の溶液を室温まで温めた。続いて、0.86gのL-酒石酸を添加した。生成物が沈殿を開始した。生成物の懸濁液を0℃に冷却および撹拌した。冷蔵庫で12時間保存した後、懸濁液を濾過し、得られた固体を5mlのイソプロパノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。1.44g(63.0%)の黄褐色を帯びた結晶性粉末を得た。融点127℃。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例19aに類似。不純物:2mol%ニコチンアミド;1.9mol%TEA塩。溶媒:13.3mol%メタノール、4mol%イソプロパノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例19aに類似。
【0309】
上記の配列において、1当量のトリエチルアミンが脱アシル化に必要であることから、トリエチルアミンは意外にも触媒活性を有すると結論づけることができる。
【0310】
実施例19d:氷酢酸中のHBrを使用した脱アシル化、トリブチルアミンを使用した中和
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-D-リボフラノシドトリフレートの脱アシル化:2.00gのトリフレートを8mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。その溶液を0~5℃に冷却した。氷酢酸中の1.3mlのHBr33%を添加した後、黄緑色を帯びた溶液を室温で攪拌した。2日後、薄層クロマトグラフィーではエダクトはその溶液中に検出できなかった。
【0311】
トリブチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートへの変換:1.3mlのトリブチルアミンを上記溶液に添加した。0.6mlの水を添加した後、任意の沈殿物質は完全に溶解した。0.51gのL-リンゴ酸を黄褐色の溶液に添加した。さらなる0.9mlのトリブチルアミンを添加した後、生成物は結晶化を開始した。形成された生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。0.48g(33%)のニコチンアミド-β-D―リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートを得た。融点115.5~116.5℃。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.55 (dd, 1H, CH2, H-マレート), 2.73 (dd, 1H, CH2, H-マレート), 3.83 (dd, 1H, H5’), 3.98 (dd, 1H, H5’), 4.28 (t, 1H, H3’), 4.29 (dd, 1H, CHOH, H-マレート), 4.39-4.46 (m, 2H, H4’, H2’), 6.18 (d, 1H, H1’), 8.21 (t, 1H, H5), 8.91 (d, 1H, H4), 9.20 (d, 1H, H6), 9.53 (s, 1H, H2). 不純物: < 1 mol% ニコチンアミド; 0.35 mol% TBA塩: 0.85 (t, 9H), 1.29 (m, 6H), 1.59 (m, 6H), 3.05 (q, 6H). 溶媒: 2.3 mol%メタノール: 3.27 (s, 3H).
13C-NMR (100 MHz, D2O): 40.0 (CH2, マレート), 60.2 (C5‘), 68.5 (CHOH, H-マレート), 69.8 (C3‘), 77.4 (C2‘), 87.7 (C4‘), 99.9 (C1‘), 128.4 (C5), 133.9 (C3), 140.4 (C2), 142.6 (C6), 145.6 (C4), 165.8 (CONH2), 176.3 (COO, H-マレート), 179.0 (COO, H-マレート).
【0312】
実施例20:ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドヨージドの調製
6.00g(0.049モル)のニコチンアミドおよび14.9g(0.047モル)のβ-D-リボフラノース 1,2,3,5-テトラアセテートをモレキュラーシーブ3オングストローム上で乾燥させた190mlのアセトニトリル中に室温で攪拌しながら懸濁した。ほとんどの固体が溶解する間、懸濁液を35℃に温めた。6.9ml(0.048モル)のトリメチルシリルヨージドを20分以内に添加し、そして黄色懸濁液を35℃でさらに2時間撹拌した。続いて、内部温度を40℃および45℃で各1時間維持した。その溶媒を35℃で真空中で除去した。形成された泡沫を100mlのジクロロメタンに溶解し、そして1.2gの活性炭を添加した。懸濁液を濾過した。濾液を濃縮した。22g(93%)の濃い黄色の泡沫を得た。
1H-NMR (400 MHz, D2O): 2.05, 2.07, 2.12 (3x s, 3x 3H, COCH3), 4.46 (m, 2H, H5’), 4.84 (m, 1H, H4´), 5.41 (t, 1H, H3’), 5.53 (dd, 1H, H2’), 6.58 (d, 1H, H1’), 8.28 (t, 1H, H5), 8.94 (d, 1H, H4), 9.18 (d, 1H, H6), 9.38 (s, 1H, H2). 不純物: 15 mol% アルファ-アノマー, 3 mol% ニコチンアミド.
13C-NMR (100 MHz, D2O): 20.0, 20.1, 20.4 (3x COCH3), 62.6 (C5‘), 69.3 (C3‘), 76.1 (C2‘), 82.5 (C4‘), 97.2 (C1‘), 128.8 (C5), 134.1 (C3), 140.4 (C2), 143.1 (C6), 146.2 (C4), 165.1 (CONH2), 172.0, 172.1, 173.0 (3x CO).
【0313】
実施例21:経路5を例示するニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートヨージドの脱アシル化
硫酸を使用した脱アシル化およびトリエチルアミンを使用した中和
【0314】
メタノール中の希釈硫酸の調製:10mlのメタノールを0℃に冷却した。1.20mlの96%硫酸を攪拌しながら添加した。メタノール性硫酸を下記の脱アセチル化に使用した。
【0315】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドヨージドの脱アシル化:11.0gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドヨージドを33mlのメタノールに攪拌しながら溶解した。上記調製したメタノール性硫酸を添加した。得られた橙褐色溶液を1日間室温で攪拌した。薄層クロマトグラフィーによる制御は、完全な脱アシル化およびいくつかの不純物を明らかにした。3.5mlのトリエチルアミンを添加した。
【0316】
その溶液を二つに分けた。
【0317】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:上記の溶液の半分に、1.65gのL-酒石酸を添加し、続いてさらに1.6mlのトリエチルアミンを添加した。生成物はほとんど直ちに沈殿を開始した。生成物の懸濁液を周囲温度で1時間、氷浴中で2時間撹拌し、冷蔵庫で12時間保存した。濾過後、得られた固体をメタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。2.10g(48%)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートのほぼ白色の結晶性粉末を得た。融点125.5~126℃。
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例19aに類似。不純物:1mol%ニコチンアミド;3.8mol%TEA塩。溶媒:18.2mol%メタノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例19aに類似。
【0318】
トリエチルアミンで中和後のニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンマレートへの変換:上記溶液の残り半分に1.45gのL-リンゴ酸を加え、その後さらに1.1mlのトリエチルアミンを添加した。この溶液を播種した。生成物は数分後に沈殿を開始した。生成物の懸濁液を周囲温度で1時間、氷浴中で2時間撹拌し、その後冷蔵庫で12時間保存した。濾過後、得られた固体をメタノールおよびエタノールで洗浄し、そして30℃で真空中で乾燥した。1.37g(32.7%)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートをほぼ白色の結晶性固体として得た。融点114~115℃.
1H-NMR(400MHz,D2O):実施例19dに類似。不純物:0.5mol%ニコチンアミド;0.5mol%TEA塩。溶媒:2.4mol%メタノール、0.4mol%エタノール。
13C-NMR(100MHz,D2O):実施例19dに類似。
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【国際調査報告】