(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20220914BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20220914BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C03B37/012 A
G02B6/032 Z
G02B6/02 356
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570389
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2020069973
(87)【国際公開番号】W WO2021009208
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ローゼンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ザットマン
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AB03
2H250AC53
4G021BA03
4G021BA04
4G021BA13
(57)【要約】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部のクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法が公知である。公知の方法には、被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、複数の反共振要素プリフォームを提供する工程と、反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバの一次プリフォームを形成する工程と、一次プリフォームを延伸して中空コアファイバを形成する工程、または一次プリフォームのさらなる加工によって二次プリフォームを形成する工程とが含まれている。ここから出発して、高い精密性と反共振要素の正確な位置決めを十分に安定的で再現可能な仕方で達成するため、被覆管の提供は、被覆管壁の目標位置の領域に切削加工によって、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造を設けるという加工措置を含むことが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ前記中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法であって、
(a)被覆管内部ボア(16)と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(2)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(1)を提供する工程と、
(b)複数の反共振要素プリフォーム(5)を提供する工程と、
(c)前記反共振要素プリフォーム(5)を前記被覆管壁(2)の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する前記中空コアファイバのための一次プリフォーム(17)を形成する工程と、
(d)前記一次プリフォーム(17)を前記中空コアファイバに延伸する工程、または前記一次プリフォーム(17)を、前記中空コアファイバが線引きされる二次プリフォーム(18)にさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが1回または反復して実行される、製造方法において、
工程(a)による前記被覆管(1)を提供する工程は、前記被覆管壁(2)の前記目標位置の領域に切削加工によって、前記被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造(3)を設けるという加工措置を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記被覆管内壁(2)の前記長手方向構造(3)は、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工、切断加工または研磨加工によって作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
円形の内側断面を持つ被覆管(1)が提供され、前記長手方向構造(3)は前記被覆管壁内側の長手方向溝として、または長手方向スロットとして構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆管(1)は端面側の端部(12)を有しており、前記長手方向構造(3)は前記端面側の端部の手前で終端していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)に従って前記反共振要素プリフォーム(5)を前記目標位置に配置する際に、前記反共振要素プリフォームはそれぞれ2箇所の縁部(3a;3b)で前記長手方向構造(3)に接触することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記長手方向構造(3)は、前記被覆管内側の周方向に最大幅S
Bを有し、前記反共振要素プリフォーム(5)は、前記長手方向構造(3)の前記最大幅S
Bよりも小さい外径を有していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反共振要素プリフォーム(5)は、少なくとも部分的に前記長手方向構造(3)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被覆管内部ボアの中に挿入管(8)が挿入され、前記反共振要素プリフォーム(5)は、前記長手方向構造(3)と前記挿入管(8)との間にある圧力チャンバの中にそれぞれ封鎖されていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)に従ってプロセスを実行する際に、前記長手方向構造(3)の領域において前記挿入管(8)の壁部分を、前記圧力チャンバに内圧を加えることによって変形させることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記長手方向構造(3)は、前記被覆管壁(2)の周囲に分散された長手方向スロットを有しており、前記反共振要素プリフォーム(5)は、それぞれ1つの前記長手方向スロットに配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記長手方向スロットは、平行な長手方向縁部(3a;3b)を備え、最大スロット幅S
Bを有しており、前記反共振要素プリフォーム()は、前記長手方向縁部(3a;3b)に接続されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反共振要素プリフォーム(5)と前記長手方向縁部(3a;3b)とは、好ましくは同時延伸を伴う軟化によって接続されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反共振要素プリフォーム(5)は、それぞれ少なくとも1つの反共振要素(5a、5b)と、前記反共振要素(5a、5b)に接続されている少なくとも1つの毛細管(9)とを有しており、前記毛細管(9)は、前記長手方向構造(3)の凹部に収容され、工程(d)によるプロセスを実行する際に、前記毛細管(9)は毛細管内部ボアに内圧を加えることによって変形することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反共振要素(5)は、前記中空コアの周りに奇数対称に配置されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法であって、
(a)被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(2)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(1)を提供する工程と、
(b)複数の反共振要素プリフォーム(5)を提供する工程と、
(c)前記反共振要素プリフォーム(5)を前記被覆管壁(2)の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する前記中空コアファイバの一次プリフォーム(17)を形成する工程と、
(d)前記一次プリフォーム(17)を前記中空コアファイバのための二次プリフォーム(18)に、任意でさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが1回または反復して実行される、製造方法において、
工程(a)による前記被覆管(1)を提供する工程は、前記被覆管壁(2)の前記目標位置の領域に切削加工によって、前記被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造(3)を設けるという加工措置を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法に関し、この製造方法は、
(a)被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b)複数の反共振要素プリフォームを提供する工程と、
(c)反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバのための一次プリフォームを形成する工程と、
(d)一次プリフォームを中空コアファイバに延伸する工程、または一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが1回または反復して実行される。
【0002】
さらに本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法に関し、この製造方法は、
(a)被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b)複数反共振要素プリフォームを提供する工程と、
(c)反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバのための一次プリフォームを形成する工程と、
(d)一次プリフォームを中空コアファイバのための二次プリフォームに任意でさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが1回または反復して実行される。
【背景技術】
【0003】
中実材料から作製される従来のシングルモード光ファイバは、低屈折率のガラスからなるクラッド領域により取り囲まれたガラス製のコア領域を有している。このとき、光の伝搬は、コア領域とクラッド領域間の全反射に基づいている。しかし、導波光と中実材料の相互作用は、データ伝送時の遅延時間の増大や、エネルギー放射線に対する損傷のしきい値の相対的低下に結びついている。
【0004】
これらの欠点は、コアがガスまたは液体を充填した真空の空洞部からなる「中空コアファイバ」によって回避されるか、または軽減される。中空コアファイバでは、光とガラスの相互作用が中実コアファイバの場合よりも減少する。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも小さいため、全反射による光の伝搬は不可能であり、通常光はコアからクラッドに漏れ出ると考えられる。光の伝搬の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」に区別される。
【0005】
「フォトニックバンドギャップファイバ」では、中空コア領域が、小さな中空チャネルを周期的に配置したクラッドによって取り囲まれている。クラッド内の中空チャネルの周期的構造には、半導体技術に依る「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果があり、これにより、クラッド構造に散乱する特定の波長領域の光はブラッグ反射に基づいて中心の空洞部で構造的に干渉するため、クラッド内で横方向に広がることはできない。
【0006】
「反共振中空コアファイバ」(「antiresonant hollow-core fibers」;ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空のコア領域が内部のクラッド領域によって取り囲まれており、いわゆる「反共振性要素」(または「反共振要素」;略号:「AREs」)の中に配置されている。中空コア周辺に均等に分散された反共振要素の壁は、反共振に作動されるファブリ・ペロー空洞として機能し、この空洞は入射光を反射し、ファイバコアに通すことができる。
【0007】
このファイバ技術により、光減衰を軽減することができ、透過スペクトルが非常に広くなり(紫外線または赤外線の波長帯域でも)、データ伝送時の遅延時間も少なくなる。
【0008】
中空コアファイバの潜在的用途は、データ伝送、材料加工などに用いる高性能ビーム制御、モーダルフィルタリング、特に超紫外線波長帯域から赤外線波長帯域までのスーパーコンティニウムを発生させる非線形光学の分野にある。
【0009】
従来技術
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが自動的に抑制されないため、長い伝達距離にわたって純粋なシングルモードにならないことが多く、出力光線の品質が悪化することにある。
【0010】
Francesco Poletti「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber」;Optics Express,Vol.22, No.20 (2014);DOI:10.1364/OE 22.023807の文献では、反共振要素が単純な単一構造要素として形成されているのではなく、互いに入れ子になった(英語:nested)複数の構造要素から構成されたファイバ設計が提案されている。入れ子になった反共振要素は、高次コアモードがクラッドモードに位相整合されて抑制されるが、基本コアモードは抑制されないように設計されている。これにより、基本コアモードの伝搬が常に保証され、限定された波長帯域にわたって中空コアファイバを効率的にシングルモードにすることができる。
【0011】
効率的なモード抑制は、伝搬光の中心波長の他に、中空コアの半径および反共振要素内で入れ子になっているリング構造の直径差といったファイバ設計の構造パラメータにも左右される。
【0012】
EP3136143A1から、コアが基本モード以外に別のモードも伝搬することができる反共振中空コアファイバ(「バンドギャップのない中空コアファイバ」と呼ばれる)が公知である。この目的のため、コアは、反共振モードと高次モードの位相整合を提供する「非共振要素」を有する内部クラッドによって取り囲まれている。中空コアファイバの製造は、いわゆる「スタック&ドロー法」によって行われ、そこでは出発要素を軸平行の集合体になるように並べ、固定することによってプリフォームを形成し、続いてそのプリフォームを延伸する。ここでは、内側断面が六角形の被覆管が使用され、被覆管の内縁部には、いわゆる「AREプリフォーム」(反共振要素プリフォーム)が6個固定される。このプリフォームを2段階に分けて線引きすることによって中空コアファイバを形成する。
【0013】
国際特許出願2018/169487A1から、反共振中空コアファイバのプリフォーム製造方法が公知であり、ここでは第1のクラッド領域が多数のロッドから構成され、第2のクラッド領域は、外側の被覆管によって取り囲まれている多数の管から構成されている。ロッド、管、被覆管は「スタック&ドロー」法によって接合され、プリフォームが形成される。プリフォームを延伸する前に、プリフォーム端部に封止材を塗布して封止が行われる。封止材としては、例えばUV接着剤が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
反共振中空コアファイバや、特に入れ子になっている構造要素を持つそのようなファイバは複雑な内部形状を有するため、これを正確かつ再現可能に製造することは困難である。さらに、共振条件または反共振条件を満たすには伝搬させる光の動作波長の大きさに僅かな寸法許容差があっても許されないため、このことは一層困難なものとなる。目標形状からの逸脱は、ファイバプリフォームの構成時にその原因が作られるおそれがあるが、ファイバ線引きプロセス時にも縮尺に沿わない不適切な変形によって生じる可能性がある。
【0015】
公知の「スタック&ドロー」法では、多数の要素が正確な位置に接合されなければならない。例えば、冒頭に述べた文献から公知の「NANF」設計の中空コアファイバを製造するには、それぞれが反共振要素外管(略号:ARE外管)からなる6つの反共振要素プリフォームと、ARE外管の内側クラッド面の片側に溶接されている反共振要素内管(略号:ARE内管)とを被覆管の内側に取り付けなければならない。
【0016】
小さい減衰値と広範な伝播範囲を実現するためには、反共振要素の壁の均等な壁厚の他に、被覆管内部における反共振要素の方位角位置も重要である。このことは、「スタック&ドロー」法では簡単に実現できない。本発明の目的は、従来の製造方法の制限を回避して、反共振中空コアファイバを低コストで実現する製造方法を提供することである。
【0017】
特に本発明の目的は、反共振中空コアファイバと反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法を提供することであり、本方法によって、構造要素の高い精密性とファイバ内での反共振要素の正確な位置決めを、十分に安定的で再現可能な仕方で達成することが可能となる。
【0018】
さらに、必要な構造精度、特に反共振要素の均等な壁厚および規定の方位角位置への正確な位置決めが容易に達成できない従来の「スタック&ドロー」法の欠点をできる限り回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
反共振中空コアファイバの製造方法に関して、この課題は、冒頭で述べた種類の方法から出発して、本発明に基づき、工程(a)による被覆管を提供する工程が、被覆管壁の目標位置の領域に切削加工によって、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造を設けるという加工措置を含むことによって解決される。
【0020】
反共振中空コアファイバ製造の出発点は、ここでは、「一次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームである。このプリフォームは被覆管を含み、そこには中空コアファイバ内に反共振要素を形成するための前段階またはプリフォーム(ここでは短く「反共振要素」と呼ぶ)が含まれている。一次プリフォームは延伸によって中空コアファイバを形成することができるが、通常は、この一次プリフォームをさらに加工して、ここでは「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを作製する。必要に応じて、この二次プリフォームを延伸することにより中空コアファイバが作られる。代替的に、一次プリフォームまたは二次プリフォームを、構成部品の同軸集合体を形成しながら、1つまたは複数の外層シリンダにより取り囲み、この同軸集合体を直接延伸して中空コアファイバを形成する。この場合、一般的な「プリフォーム」という用語は、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成部品または構成部品の同軸集合体の名称と理解される。
【0021】
プリフォームの位置決め精度は、被覆管をあらかじめ切削機械加工によって構造化することによって改善される。
【0022】
切削加工とは、旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工などの切削機械加工技術を意味する。これらの加工技術は、熱や圧力を使用するその他の周知の変形技術と比べ、より正確で極めて微細な構造を提供し、ノズル、プレスまたは鋳造型などの成形工具による表面の汚れを回避することができる。好ましくは、被覆管内壁の長手方向構造が、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工、切断加工または研磨加工によって作られる。
【0023】
この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。これにより、反共振要素プリフォームが被覆管の内側の規定位置に配置されやすくなる。このために、長手方向構造は少なくとも被覆管内側からアクセスできるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0024】
本発明により、反共振中空コアファイバならびにそのためのプリフォームを精密かつ再現可能に製造することができる。
【0025】
好ましくは円形の内側断面を持つ被覆管が提供され、長手方向構造は被覆管壁内側の長手方向溝として、または長手方向スロットとして構成される。
【0026】
被覆管内側を構造化する目的のために、円形の内側断面を持つ被覆管が提供されることにより、被覆管自体の製造費用は、六角ソケット形の内部ボアを持つ被覆管よりも低減される。
【0027】
位置決め箇所は異なる形状を有していてよい。被覆管壁の内側の長手方向溝として、または半径方向に連続する長手方向スロットとして構成されている長手方向構造は、例えばフライス加工、穴あけ加工または切断加工によって簡単かつ正確に作製可能である。溝およびスロットの内部形状は、例えば半円形、半楕円形、v字形、u字型または多角形である。これはまた、内側から外側へ細くなる窪みまたは凹部であってもよい。
【0028】
特に連続する長手方向スロットの場合、被覆管が端面側の端部を有しており、長手方向構造がこの端面側の端部の手前で終端していることが有利である。
【0029】
長手方向構造の形状および反共振要素プリフォームの形状とサイズに応じて、固定する際に反共振要素プリフォームと長手方向構造との間に複数の接触点または広い接触面が生じる。特に実績のある方法では、工程(c)に従って反共振要素プリフォームを目標位置に配置する際に、反共振要素プリフォームがそれぞれ2箇所の縁部で長手方向構造に接触する。
【0030】
これにより、接触線が1本だけの場合よりも安定した状態が得られ、延伸中に反共振要素プリフォームが「動き出す」のを確実に阻止できる。プリフォームの外部寸法(外径など)は、長手方向構造の最大幅SBよりも大きくすることができるため、プリフォームは長手方向溝またはスロットの上に載り、完全に中に沈み込んでしまうことはない。接触縁部の下部には、必要に応じて、ガスを送り込んだり、吸引したりできる空洞部を長手方向溝または長手方向スロットの中に設けることができる。
【0031】
別の好適な方法では、反共振要素プリフォームが、長手方向構造の最大幅SBよりも小さい外径を有している。ここでは、例えば溝の深さを浅くすることによって、溝が反共振要素プリフォームに対して好ましい位置だけを設定できるようにする。
【0032】
さらなる好適な方法では、反共振要素プリフォームが、同様に長手方向構造の最大幅SBよりも小さい外径を有しているが、ここでは反共振要素プリフォームが少なくとも部分的に長手方向構造によって取り囲まれているため、反共振要素プリフォームは被覆管の内壁に完全に固定されている。
【0033】
本方法の特に有利な実施形態では、被覆管内部ボアの中に追加的に挿入管が挿入され、反共振要素プリフォームは、長手方向構造と挿入管との間にある圧力チャンバの中にそれぞれ封鎖されている。
【0034】
このようにしてプリフォームの長手方向構造にそれぞれ1つの中空チャネルが形成され、反共振要素プリフォームはこの中空チャネルの中に装入され、長手方向構造と挿入管の壁によって画定される。
【0035】
工程(d)に従ってプロセスを実行する場合、例えば延伸またはコラップスの際に、中空チャネルの中にガスを送り込み、圧力チャンバに内圧を加えることによって挿入管を変形させる。このとき、長手方向構造(正確には、圧力チャンバ)に接触している挿入管の壁部分が変形して、長く伸びた膨らみを挿入管の内側に形成し、この膨らみは中空コアの方向に向かって内側へ突き出しており、反共振要素として用いられる。
【0036】
実績のある方法の変形例では、反共振要素プリフォームがそれぞれ少なくとも1つの反共振要素と、この反共振要素に接続されている少なくとも1つの毛細管とを有しており、このとき、毛細管は長手方向構造の凹部に収容され、プリフォームおよび/または半製品の延伸時に毛細管内部ボアに内圧を加えることによって変形する。
【0037】
この場合、毛細管は、一方では反共振要素プリフォームを長手方向構造に固定するために用いられるが、この目的のために長手方向構造は毛細管の収容に十分な寸法を持つ凹部を備えている。他方では、毛細管には伸長プロセス時に追加の圧力が加えられるため、毛細管はその変形と膨張の結果として、プリフォームの本来の反共振要素を位置決めする。このとき、変形した毛細管の壁は、プリフォームの追加の反共振要素を形成することができる。
【0038】
好適な方法の変形例では、長手方向構造が被覆管壁の周囲に分散された長手方向スロットを有しており、反共振要素プリフォームが長手方向スロットに配置されている。
【0039】
長手方向スロットは、被覆管の両方の端面領域を除いて、被覆管壁を内側から外側へ貫通している。長手方向スロットは平行な長手方向の縁部を備え、最大スロット幅SBを有し、反共振要素プリフォームが好ましくは長手方向縁部に接続される。
【0040】
この場合、反共振要素プリフォームは最大幅SBよりも大きな幅寸法を有しているため、プリフォームが完全に長手方向スロットの中に沈み込むことはない。
【0041】
より精密な幾何構造を保証するため、反共振要素プリフォームとそれぞれの長手方向縁部との間の接合は、軟化と同時に接合の伸長を伴って行われる。そのために、被覆管と反共振要素プリフォームからなる集合体が延伸される。このとき、反共振要素プリフォームはその長さ全体にわたって被覆管内部で切断縁部に接続される。
【0042】
長手方向縁部の下部領域は、ガスを送り込んだり、吸引したりできる空洞部になっている。
【0043】
特に、中空コアファイバの低い光減衰と幅広い光学的伝送帯域幅に関しては、反共振要素プリフォームが中空コアの周りに奇数対称に配置されている場合は特に有利であることが証明されている。
【0044】
好適な方法の変形例では、反共振要素プリフォームの配置、および/または一次プリフォームの延伸、および/または中空コアファイバの線引きが、非晶質SiO2粒子含有の封止材または接合材を使用した固定措置および/または封止措置を含んでいる。
【0045】
封止または固定に使用される封止材または接合材には、例えば分散液に取り込まれた非晶質SiO2粒子が含まれている。この材料は、接合すべき面または封止すべき面の間に塗布され、使用時は通常ペースト状である。低温で乾燥させると、分散液が部分的または完全に取り除かれ、材料が硬化する。封止材または接合材、および特に乾燥後に得られる硬化したSiO2含有封止材または接合材は、固定および圧縮の要件を満たしている。乾燥に必要な温度は300℃以下であり、これによりプリフォームの寸法安定性の維持が促進され、熱による悪影響が回避される。例えばプリフォームを中空コアファイバに延伸する際に、800℃周辺の高温まで加熱すると、封止材または接合材のさらなる熱凝固が生じるため、曇りガラスや透明ガラスの形成にも適している。このことは焼結やガラス化によって生じるが、この場合、曇りガラスへの焼結は、完全に透明になるまでガラス化するよりも比較的低い温度および/または短い加熱時間で済む。従って、封止材または接合材は加熱によって完全に圧縮することができ、熱成形プロセスでの加熱によってガラス化が可能である。
【0046】
熱成形プロセスでは封止材または接合材は分解されず、不純物をほとんど放出しない。従って、これは熱成形プロセス時の温度安定性と純度によって特徴付けられ、異なる熱膨張率による変形を回避する。
【0047】
封止材および接合材は、一次プリフォームの延伸時および/または中空コアファイバの線引き時に、反共振要素プリフォームの開放端および/または反共振要素プリフォームの個々の構造要素および/または管要素の間にある環状の隙間を封鎖するためにも有利に使用することができる。
【0048】
このようにして、一次プリフォームおよび/または二次プリフォームの個々の構成部品は、延伸時またはファイバ線引きプロセス時にさまざまな内圧を受ける可能性がある。
【0049】
好適な方法では、管状の構造要素が提供され、そのうちの少なくとも一部は0.2~2mmの範囲の壁厚を有し、好ましくは0.25~1mmの範囲の壁厚を有することによって、被覆管におけるプリフォームの位置決め精度をさらに改善する。このとき、被覆管は外径が90~250mmの範囲のもの、好ましくは外径が120~200mmの範囲のものが提供される。これらの構成部品はそれぞれ少なくとも1mの長さがあり、反共振要素を形成するための比較的容積の大きな構造要素である。これにより、取扱いが容易になる。さらに、被覆管と構造要素が垂直に配置されており、好ましくは上述の封止材または接合材を使用して、例えば構造要素がそれぞれ上部の端面で目標位置に位置決めされ、固定されている場合は、構造要素長手方向軸の平行性と垂直方向への整列が重力によってサポートされる。
【0050】
中空コアファイバのプリフォームの製造に関して、上述の技術的課題は、冒頭で述べた種類の方法から出発して、本発明に基づき、工程(a)による被覆管の提供が、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造を切削加工によって被覆管壁の目標位置の範囲に取り付けるという加工措置を含むことによって解決される。
【0051】
プリフォームは反共振中空コアファイバ製造に対する出発点である。反共振中空コアファイバは、一次プリフォームを直接延伸することで線引きできるが、最初に一次プリフォームをさらに加工して、別の半製品(「二次プリフォーム」とも呼ぶ)を作製し、そこから反共振中空コアファイバを線引きすることもできる。
【0052】
いずれの場合も、プリフォームの製造には反共振要素プリフォームと被覆管の取付けおよび接続が含まれている。プリフォームの位置決め精度は、被覆管をあらかじめ構造化することによって改善される。プリフォームを製造するための措置は、中空コアファイバの製造に関連して上記に詳しく説明されており、それらの説明がここに引用される。
【0053】
定義
これまでに述べた明細書の個々の工程と用語について、以下に補足的に定義する。これらの定義は本発明の明細書の構成要素である。以下の定義のいずれかと残りの明細書との間で実質的な矛盾がある場合、残りの明細書の中で言及していることが優先される。
【0054】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素または入れ子構造要素であってよい。これは、中空コアの方向から見て負の曲率(凸部)を持つか、曲率を持たない(平面、直線)少なくとも2つの壁を有している。通常、反共振要素は動作光に対して透明な材料、例えばガラス(特にドープしたSiO2またはドープしないSiO2)、プラスチック(特にポリマー)、複合材料または結晶材料からなる。
【0055】
反共振要素プリフォーム/反共振要素前段階
反共振要素プリフォームとは、主にファイバ線引きプロセスにおける単純な線引きによって中空コアファイバ内で反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素前段階とは、変形によって初めて反共振要素プリフォームまたは直接的に反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素プリフォームは、単純な構成部品または入れ子になっている構成部品であってよく、これに追加的に位置決め補助を固定することができる。反共振要素プリフォームは、もともと一次プリフォームの中に存在する。
【0056】
入れ子の反共振要素プリフォームは、中空コアファイバの中で入れ子になっている反共振要素を形成する。これは、1本の外管と、外管の内部ボア内に配置されている少なくとも1つのさらなる構造要素とから構成されている。さらなる構造要素は、外管の内側クラッド面に接しているさらなる管であってよい。外管は「反共振要素外管」または略して「ARE外管」と呼ばれ、さらなる管は「反共振要素内管」または略して「ARE内管」または「入れ子になっているARE内管」とも呼ばれる。
【0057】
入れ子になっているARE内管の内部ボアの中には、反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合、少なくとも1つのさらなる構造要素、例えば入れ子になっているARE内管の内部クラッド面に接する第3の管を配置してもよい。
【0058】
反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合は、ARE外管の中に配置されている複数の管を区別するため、必要に応じて「入れ子になっている外側のARE内管」と「入れ子になっている内側のARE内管」とが区別される。
【0059】
シリンダ形の反共振要素プリフォームおよびそれらのシリンダ形構造要素に関連する「断面」という用語は、常に、それぞれのシリンダ長手方向軸に対して垂直の断面を示し、特に指定がない限り、管状構成部品における外部輪郭の断面を示すものである(内部輪郭の断面ではない)。
【0060】
一次プリフォームのさらなる加工により、とりわけ熱成形処理により、元の反共振要素プリフォームが初期形状に対して変化した形状で存在する中間製品を作ることができる。ここでは、変化した形状も同様に反共振要素プリフォームまたは反共振要素前段階と呼ぶ。
【0061】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバが線引きされる構成部品である。これには、一次プリフォームまたは一次プリフォームのさらなる加工によって作製される二次プリフォームがある。一次プリフォームは、少なくとも1本の被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている、反共振要素のためのプリフォームまたは前段階とからなる集合体であってよい。一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工することは、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが1回または反復して実行されることを含む。
【0062】
文献においてコアプリフォーム(英語:ケーン、Cane)とは、一次プリフォームのコラップスおよび/または延伸によって得られるプリフォームである。通常、コアプリフォームは、中空コアファイバの線引き前または線引き時に追加のクラッド材料により覆われる。
【0063】
延伸/コラップス
延伸では、一次プリフォームが長く伸ばされる。この延伸は、同時コラップスなしで行ってよい。延伸は一定の縮尺に従って行うことができるため、例えば一次プリフォームの構成部品の形状および配置は延伸した最終製品に反映されている。しかし、延伸では、一次プリフォームが寸法どおりに線引きされず、幾何形状が変化する可能性もある。
【0064】
コラップスでは内部ボアを狭くしたり、管状構成部品間の環状の隙間を塞いだり、狭くしたりする。このコラップスは、通常、延伸と平行して行われる。
【0065】
中空コア/内部クラッド領域/外部クラッド領域
少なくとも1つの被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている反共振要素のプリフォームまたは前段階とからなる集合体を、ここでは「一次プリフォーム」とも呼ぶ。この一次プリフォームは、中空コアとクラッド領域から構成される。このクラッド領域は、例えば集合体へのコラップスによって形成された「外部クラッド領域」が存在しており、これらのクラッド領域を区別する必要がある場合は、「内部クラッド領域」とも呼ばれる。「内部クラッド領域」と「外部クラッド領域」という名称は、中空コアファイバや一次プリフォームのさらなる加工によって得られる中間製品の該当する領域に対しても使用される。
【0066】
「管内側」という名称は「管の内部クラッド面」の同義語としても用いられ、「管外側」という名称は「管の外部クラッド面」の同義語としても用いられる。管に関連した用語「内部ボア」は、内部ボアが穴あけ作業によって形成されたことを意味するものではない。
【0067】
切削加工
加工物を分離加工するための機械的製造方式であり、特に旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工を意味する。この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。長手方向構造は被覆管内側からアクセスできるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0068】
粒度および粒度分布
SiO2粒子の粒度および粒度分布は、D50値に基づき特徴付けられる。この値は、SiO2粒子の累積量を粒度に応じて示す粒度分布曲線から読み取られる。粒度分布は、それぞれのD10値、D50値、D90値に基づき特徴付けられることが多い。このとき、D10値はSiO2粒子の累積量の10%に達しない粒度を示し、対応して、D50値およびD90はSiO2粒子の累積量の50%または90%に達しない粒度を示す。粒度分布は、ISO13320に準拠した散乱光およびレーザー回折分光法によって検出される。
【0069】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。詳細は図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】複数の実施形態において、反共振要素プリフォームを位置決めするための長手方向構造を備える中空コアファイバのプリフォーム製造に使用する被覆管の図である。
【
図2】複数の実施形態において、反共振要素プリフォームを位置決めするための長手方向構造を備える中空コアファイバのプリフォーム製造に使用する被覆管の図である。
【
図3】複数の実施形態において、反共振要素プリフォームを位置決めするための長手方向構造を備える中空コアファイバのプリフォーム製造に使用する被覆管の図である。
【
図4】長手方向構造と、接触点および接触面に基づいてその中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管の図である。
【
図5】長手方向構造と、接触点および接触面に基づいてその中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管の図である。
【
図6】長手方向構造と、その中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管のさらなる実施形態の図である。
【
図7】長手方向構造と、その中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管のさらなる実施形態の図である。
【
図8】長手方向構造と、その中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管の実施形態の図であり、調整可能な位置決めのために毛細管が設けられている。
【
図9】長手方向構造と、その中に位置決めされた反共振要素プリフォームとを備える被覆管の実施形態の図であり、調整可能な位置決めのために毛細管が設けられている。
【
図10】スロットのある被覆管を使用して中空コアファイバのプリフォームを製造するための工程図である。
【
図11】
図10cの長手方向構造と反共振要素の一部を拡大した図である。
【
図12】反共振要素の別の実施形態による、
図11に対応する部分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
中空コアファイバまたは中空コアファイバのためのプリフォームの製造では、多数の構成部品を相互に接続しなければならない。さらに、熱成形プロセスを実行する場合、プリフォームに存在している隙間やチャネルを封止することは有益である。独国特許出願公開第102004054392A1から公知のように、接合または封止には、SiO2ベースの封止材または接合材が使用される。このとき、シリカガラス粉粒体の湿式製粉によって、D50値が約5μmおよびD90値が約23μmによって特徴付けられる粒度分布を有する非晶質SiO2粒子を含む水性スラリーが生成される。このベーススラリーに、約5μmの中等度の粒度を持つ非晶質SiO2粒子が混合される。接合材として使用されるスラリーは、90%の固形物含有量を有し、少なくとも99.9質量%はSiO2から構成されている。
【0072】
図1~8は、被覆管端面をそれぞれ上から見た図である。被覆管1は、被覆管壁2の内側にそれぞれ長手方向溝3を有している。長手方向溝3は、6個がそれぞれの被覆管1の内周に対称的に均等分散されている。
【0073】
被覆管1は、シリカガラスで構成されている。長さは500mm、外径73m、内径24mmである。
【0074】
図1は、穴あけ加工によって作製された、断面がほぼ閉じられた円形の深くて細い長手方向溝3を示す。最大深さは3mm、内径は4mmである。
【0075】
図2は、フライス加工によって作製された、断面が半円形の平坦で細い長手方向溝3を示す。
【0076】
図3は、同様にフライス加工によって作製された、断面が皿形の平坦で広い長手方向溝3を示す。
【0077】
長手方向溝3は、反共振要素プリフォーム5の位置決め補助として用いられる。これらは、
図4および5に示されているように、ARE外管5aとARE内管5bからなる互いに入れ子になっている要素の集合体であってよい。
【0078】
図4は、穴あけ加工によって作製された、断面がほぼ閉じられた円形の深くて細い長手方向溝3を示し、そこには反共振要素プリフォーム5がそれぞれ2箇所の縁部3a,3bで接している。ARE外管は、それぞれ73mmの外径を有している。ARE内管とARE外管の壁厚はほぼ同じであり、0.35mmである。
【0079】
図5は、フライス加工によって作製された、断面がほぼ皿形の平坦で広い長手方向溝3を示し、そこには反共振要素プリフォーム5がそれぞれ広い接触面3cで接している。ARE外管は、それぞれ73mmの外径を有している。ARE内管とARE外管の壁厚はほぼ同じであり、0.35mmである。
【0080】
図6は、穴あけ加工によって作製された、断面がほぼ閉じられた円形の深くて細い長手方向溝3を示し、その中に反共振要素プリフォーム5が収納されている。反共振要素プリフォーム5は、この場合、単純な毛細管として形成されている。
【0081】
図7は、穴あけ加工によって作製された、断面がほぼ閉じられた円形の深くて細い長手方向溝3を示し、その中に反共振要素プリフォーム5が収納されている。反共振要素プリフォーム5は、この場合、単純な毛細管として形成されている。被覆管内部ボア7には、被覆管長手方向軸と同軸に挿入管8が挿入されている。
【0082】
挿入管8の外径は被覆管1の内径と類似し(
図1を参照)、その壁厚は反共振要素プリフォームの壁厚と類似している。ファイバ線引きプロセス前に、被覆管1は挿入管8の上に圧潰されるため、長手方向溝3は閉じられる。閉じられた長手方向溝は中空チャネルを形成し、これらは続いて(プリフォームの延伸時などに)膨張する。これにより、挿入管8には、内部ボア7の方向に内側を向く、凸形表面を持つ突出部が形成され、これらの突出部は追加の反共振境界層として機能する。
【0083】
図には示されていない方法の変形例では、断面がほぼ閉じられた円形の長手方向溝が穴あけ加工によって作製される。被覆管内部ボアには、被覆管長手方向軸と同軸に挿入管が挿入されている。挿入管8の外径は被覆管の内径と類似しており(
図1を参照)、その壁厚は反共振要素プリフォームの壁厚と類似している。ファイバ線引きプロセス前に、被覆管は挿入管の上に圧潰されるため、長手方向溝は閉じられる。閉じられた長手方向溝は中空チャネルとなり、これらは続いて(プリフォームの延伸時などに)膨張する。これにより、挿入管には、内部ボアの方向に内側を向く、凸形表面を持つ突出部が形成され、これらの突出部は追加の反共振要素として機能する。
【0084】
図8に示されている方法の変形例では、反共振要素プリフォーム5に、反共振要素に加えて位置決め用毛細管9が設けられている。位置決め用毛細管9は、断面がほぼ閉じられた円形の、穴あけ加工によって作製された長手方向溝3の中にそれぞれ挿入されている。位置決め用毛細管9は、集合体を軟化する際、例えばプリフォームを延伸する際に膨張させることができるため、そこに固定されている反共振要素を中心(コア領域)に近づけることができる。この場合、移動量は中空チャネル(位置決め用毛細管9)の内圧によって簡単に設定および制御することができる。これにより、方位角位置の正確な調整の他に、反共振要素の半径方向の位置も調整できるため、反共振中空コアファイバのコア径が調整可能になる。
【0085】
図9は、それぞれ位置決め用毛細管9が設けられている反共振要素プリフォーム5の2つの異なる実施形態を示す。
【0086】
図10~12は、中空コアファイバを製造するための工程を図示したものであり、ここでは反共振要素プリフォームを精密に位置決めするために長手方向溝3を備えるシリカガラス被覆管1が使用される。
図10(a)に示されているように、被覆管1の壁は、あらかじめ規定された方位角位置で均等な間隔で長手側に、例えば機械的鋸、水ジェット切断、レーザーなどによって切り込まれる。長手方向切断部3の数は、位置決めする反共振要素プリフォーム5の数に対応し、本実施例のプリフォーム5は6個である。長手方向切断部3は、被覆管端部の手前で終端しているため、端面側の端部領域12は、引き続き周囲が閉じられたままであり、残ったウェブ14を接続している。続いて、切断縁部がガラス化される。
【0087】
長手方向スロット3の切断幅は統一されており、2mmである。反共振要素プリフォーム5は、直径が7.4mmの実質的に円形の外側断面を有している。
【0088】
切断線A-Aに沿った中間管10の断面を上から見た
図10(b)から、6つの長手方向スロット3が管壁2の周囲に均等に分散されているのが分かり、またこの図では、長手方向溝3にそれぞれ2つの接触線、すなわち切断縁部3a;3bで接し、被覆管内部ボア16の中に突入している反共振要素プリフォーム5が示されている。固定するためには、反共振要素プリフォーム5の両方の端部を、例えば被覆管1の内側に接着または溶接する。代替として、また好適には、上述したSiO
2含有の封止材および接合材を使って反共振要素プリフォームを被覆管の内側クラッド面に接続する。そのためには、特に両方の端面側の端部領域での局所的固定で十分である。
【0089】
続いて行われるこの集合体の延伸により、反共振要素プリフォーム5はその長さ全体にわたって被覆管1の内部で切断縁部3a;3bに接続される。被覆管1の内部ボアに圧力を加えることにより、切断継ぎ目3が完全に反共振要素プリフォーム5によって塞がれているかどうか確認することができる。従って、長手方向スロット3は、それぞれの反共振要素プリフォーム5を精密に位置決めし、固定できる正確な位置決め補助として用いられる。
【0090】
図10(c)では、被覆管1と、その中に位置決めされている反共振要素プリフォームとからなる集合体17をかぶせ管15によって覆うことにより、付加的なクラッド材料を追加し、中空コアファイバに規定されているコアとクラッドの直径比を二次プリフォーム18において調整できるようになっている。このようにして得られた二次プリフォーム18には、かぶせ管15と集合体17との間に環状の隙間19が残されている。
【0091】
このプリフォーム18を延伸して中空コアファイバにする際に、環状の隙間19を介して、かぶせ管15と溶融された反共振要素プリフォーム5との間にある切断継ぎ目3に形成された中空チャネルの中にガスを送り込んだり、抜き取ったりすることで、中空チャネル内に正圧または負圧を作り出すことができる。
【0092】
従って、必要または希望に応じて、
図11に図示されているように、被覆管内部ボア16の中で反共振要素プリフォーム5の半径方向の位置を変更し、修正することができる。このとき、スケッチ(a)には、ARE外管5aと、入れ子になっている内部要素(ARE内管5b)とを備える反共振要素プリフォーム5が、初期位置で示されている。スケッチ(b)には、圧力と熱によって変形して部分的に内側へ陥入したARE外管壁と、初期位置に対して半径方向の位置が変化している、陥入部に固定されたARE内管5bが示されている。このようにして、従来の「スタック&ドロー」法とは異なり、非六角形対称および特に非整数対称を有するファイバ設計を実現することもできる。
【0093】
中空チャネル内に圧力を加えることにより、反共振要素プリフォーム5の壁部分を反共振要素プリフォームの内側に「折り返す」ことも可能である。
図12(a)には、初期位置にある単純なARE外管5a(入れ子になっている追加のARE内管を持たない)を備える反共振要素プリフォーム5が示されている。熱と圧力の作用により、両方の接触線の間にある壁部分が内側へ膨張する。
図12bに示されているように、ARE外管5aの内部には負の(凸形)湾曲面を持つ別のガラス膜5cが形成され、これはARE内管5bのように入れ子になった内部要素(文献では「nested element」とも呼ばれる)を代替することができる。
【国際調査報告】