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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021572287
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2020051684
(87)【国際公開番号】W WO2021005382
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1909984.5
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロクター、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バローン、ダミアーノ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】クルト、ヴィンセンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ウッディントン、ベン
(72)【発明者】
【氏名】マリアラス、ジョージ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB24
4C053BB35
(57)【要約】
約2mm以下の曲げ半径を有する可撓性電極アレイと、流体構成要素であって、流体構成要素は流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素と、を備える医療デバイスが提供され、流体構成要素および可撓性電極アレイは、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2mm以下の曲げ半径を有する可撓性電極アレイと、
流体構成要素であって、前記流体構成要素は前記流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素と、
を備える医療デバイスであって、
前記流体構成要素および前記可撓性電極アレイは、前記流体構成要素の構成の変化が前記可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成されている、
医療デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、近位セクションおよび遠位セクションを有し、前記可撓性電極アレイおよび前記流体構成要素は、前記遠位セクションに配置され、さらに、前記遠位セクションは、第1の方向に約2mm以下の曲げ半径を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記遠位セクションが、前記第1の方向の前記曲げ半径よりも大きい、前記第1の方向に直交する第2の方向の曲げ半径を有する、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスは細長いものであり、前記第1の方向は前記デバイスの長手方向軸に対して実質的に垂直である、請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、取り外し可能な支持要素を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記取り外し可能な支持要素が取り外されると、前記遠位セクションが、前記第1の方向および前記セクション方向の各々において約2mm以下の曲げ半径を有する、請求項3または4に従属する請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記可撓性電極アレイおよび前記流体構成要素は、前記流体構成要素の構成の変化が、前記可撓性電極アレイを圧縮構成と、前記圧縮構成よりも大きい投影表面積を有する拡張構成との間で移行させるように配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記圧縮構成では、前記可撓性電極アレイおよび任意選択的に前記流体構成要素が巻かれている、請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記圧縮構成では、前記可撓性電極アレイが実質的に円筒形である、請求項7または8に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記圧縮構成と前記拡張構成との間の前記移行が、前記可撓性電極アレイを解きほどくことを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記解きほどくことが、前記第1の方向に実質的に垂直な軸を中心にしている、請求項2に従属する請求項10または請求項2に従属する任意の請求項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記拡張構成において、前記可撓性電極アレイが実質的に平面である、請求項7から11のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記拡張構成において、前記医療デバイスが、5mm以下、任意選択的に3mm以下、任意選択的に2mm以下の厚さを有する、請求項7から12のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記医療デバイスが、構成の変更中に前記デバイスの厚さの拡張を制限するように配置される、請求項7から13のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記医療デバイスが、前記流体構成要素に実質的に平行に配置され、前記構成の変更中に前記デバイスの厚さ方向における前記流体構成要素の拡張を防止または制限するように配置された非弾性材料の1つまたは複数の部分を含む拘束層をさらに備える、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記医療デバイスが、前記流体構成要素に実質的に平行に配置され、互いに実質的に平行に配置された剛性材料の複数のストリップを含む拘束層をさらに備え、前記ストリップ間の前記拘束層の前記部分は、前記ストリップよりも可撓性が高い、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記剛性材料の前記部分が、前記厚さ方向以外の方向の前記構成の変更を妨げないように配置される、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記流体構成要素が、前記流体構成要素内に延在する流体チャネルを備え、前記流体構成要素は、構成の変更中に前記デバイスの前記厚さ方向における前記流体チャネルの拡張を防止または制限するように、前記流体チャネルの対向する側面を接合する少なくとも1つのタイをさらに備える、請求項14から17のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記流体構成要素が、独立して膨張可能な複数のチャンバを含み、前記チャンバは、構成の変更中に前記デバイスの前記厚さ方向における前記流体チャネルの拡張を防止または制限するようなサイズになっている、請求項14から18のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記流体構成要素が、第1の前記独立して膨張可能なチャンバと第2の前記独立して膨張可能なチャンバとの間に流体的に配置された圧力弁をさらに含み、前記圧力は、前記第1のチャンバ内で所定の流体圧力に達するまで、流体が前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに通過しないようになっている、請求項19に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記流体構成要素と流体連通する流体コネクタと、前記電極アレイと電気的に接触する電気コネクタとをさらに備え、前記コネクタは、前記流体構成要素および前記電極アレイを外部デバイスに接続するために前記デバイスの前記近位セクションに設けられている、
請求項2または請求項2に従属する任意の請求項に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記デバイスの前記遠位セクションが、前記近位セクションよりも可撓性が高い、請求項21に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記遠位セクションが、前記デバイスの容積の少なくとも90%を含む、請求項21または22に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記電極アレイを前記電気コネクタに接続する導電性コネクタと、前記導電性コネクタを取り囲む第1のシースとをさらに備える、請求項21から23のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項25】
前記流体構成要素を前記流体コネクタに接続する流体チャネルをさらに備え、前記第1のシースはまた、前記流体チャネルを取り囲む、請求項24に記載の医療デバイス。
【請求項26】
前記可撓性電極アレイ、前記流体構成要素、および前記第1のシースを取り囲む第2の取り外し可能なシースをさらに備える、請求項24または25に記載の医療デバイス。
【請求項27】
前記可撓性電極アレイおよび前記流体構成要素が、前記第2のシース内に圧縮構成で配置され、前記デバイスは、前記シースの取り外し後の前記流体構成要素の作動が、前記流体構成要素および前記可撓性電極アレイを、前記圧縮構成よりも大きい投影表面積を有する拡張構成に変更させるように配置される、請求項26に記載の医療デバイス。
【請求項28】
前記第2のシースの内径が1cm以下、任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下である、請求項26または27に記載の医療デバイス。
【請求項29】
前記流体構成要素および前記可撓性電極アレイが、別個であるか、または分離可能である、請求項1から28のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項30】
前記医療デバイスが、X線によって画像化可能な1つまたは複数の構成要素を含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項31】
前記可撓性電極アレイが、可撓性基板上に設けられた電極を備える、請求項1から30のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項32】
前記流体構成要素が流体チャネルを備え、前記流体チャネルは、
5mm以下、任意選択的に3mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下、さらに任意選択的に100μm以下、さらに任意選択的に50μm以下、さらに任意選択的に5μm以下の最大非膨張幅寸法を有し、および/または
5mm以下、任意選択的に2mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下の最大膨張厚さを有する、
請求項1から31のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載の医療デバイスを使用する方法であって、前記方法は、
前記流体構成要素の構成の変化を引き起こすように、前記流体構成要素に流体を供給するステップ
を含み、
前記流体構成要素は、構成を変化させるにつれて、前記可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こす、
方法。
【請求項34】
前記方法が、前記流体構成要素を前記可撓性電極アレイから取り外すステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から32のいずれか一項に記載の医療デバイスを埋め込む方法であって、前記方法は、
展開に適した第1の構成で前記医療デバイスを構成するステップと、
前記医療デバイスを展開するステップと、
前記医療デバイスを第1の構成から第2の構成に変更するように前記医療デバイスを流体的に作動させるステップと
を含む、方法。
【請求項36】
前記医療デバイスが経皮的に展開される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記医療デバイスが、穿頭孔を通して展開され、前記穿頭孔は、任意選択的に直径20mm以下、さらに任意選択的に10mm以下、さらに任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記作動させるステップが、前記医療デバイスの前記電極を標的組織と接触または近接させるステップをさらに含む、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
人体または動物の身体を治療する方法であって、前記方法は、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法に従って医療デバイスを埋め込むステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極アレイを有する医療デバイスに関する。本発明は、埋め込み型デバイス、例えば、科学的または診断的目的のための細胞活動の記録、電気刺激、疼痛管理、リハビリテーション、およびブレイン・マシン・インターフェースなどの目的のために神経系などの生体組織と相互作用するデバイスに特に関連する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな医療デバイスは、組織を能動的に刺激するため、または受動的に感知するため(または2つの組み合わせ)のために、電極アレイを組み込むことができる。近年、疾患を治療および診断するための埋め込み型バイオ電子デバイスが、現代のヘルスケアの重要な構成要素として浮上している。慢性障害の治療に使用される場合、埋め込み型バイオ電子デバイスは、電気パルスを利用して、例えば、臓器の生理学的機能を回復させる(心臓ペースメーカーおよび人工内耳の場合のように)、または神経変性症候群の慢性副作用を軽減する(パーキンソン病の振戦を止めるための脳深部刺激装置(DBS)の場合のように)。これに加えて、埋め込み型バイオ電子デバイスは、てんかん原性組織の外科的脳切除を受けている患者における神経活動の急性(最大3週間)記録/マッピングのために臨床的に使用されている。
【0003】
しかしながら、埋め込みデバイスに対する手術のリスクおよびコストは、依然として制限要因である。
【0004】
特定の例として、臨床的に利用可能な脊髄刺激装置(SCS)が疼痛管理に使用される。今日まで、SCSデバイスは、とりわけ、失敗した背部手術症候群および狭心症によって引き起こされる慢性疼痛管理に主に使用されてきた。このようなデバイスは、脊髄と脊椎との間の硬膜外腔に埋め込まれる。それらは、それらの供給源から脳内に記録されている場所への神経信号の伝達を妨げる局所電場を生成することによって機能する。
【0005】
市販の刺激装置には、線形設計とパドル設計の2種類がある。電極の線形アレイ(例えば、単一のワイヤ上に順次配置された電極)は、簡単で費用効果の高い手順で、針を介して経皮的に埋め込まれることができる。残念なことに、このタイプのデバイスの容易な埋め込みの利点は、これらの細いワイヤ状のデバイスが提供することができる非常に限られた空間分解能と解剖学的標的化能力の不足の両方によって打ち消される。対照的に、パドルはミリメートルの厚さであり、例えば単一のワイヤデバイスよりも広い「パドル形状」領域にわたって例えば列状に電極を提示し、したがって脊髄のより大きな表面積を覆い、脊髄電気刺激のためのより具体的かつ有効な領域を提供する。しかしながら、より大型のパドル設計の埋め込みは、それほど単純には行うことができず、したがって、一般的な麻酔下で危険かつ高価な外科的処置を必要とする。
【0006】
膨張式デバイスが知られているが、多くの場合、いくつかの欠点を抱えている。特に、それらは、非膨張状態から膨張状態に展開するためにかなりの空間を必要とする場合があり、および/または膨張プロセスによって引き起こされるデバイスの拡張に起因する望ましくない副作用を有する場合がある。膨張式デバイスのパッケージングも、経皮的挿入のために十分小さい圧縮状態に巻いたり折り畳んだりするのに十分な可撓性がインプラントに必要であるため、課題となっている。対照的に、脊髄刺激装置および皮質脳波記録アレイなどの臨床的に利用可能なデバイス、ならびに他の提案されている膨張式デバイスは、剛性が高すぎて十分に小さい半径で弾性的に曲がることができない厚い金属電極またはシリコンチップなどの構成要素を有する。
【0007】
したがって、そのような医療デバイスの既存の選択肢は満足のいくものではない。本発明は、この問題に少なくとも部分的に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様は、約2mm以下の曲げ半径を有する可撓性電極アレイと、流体構成要素であって、流体構成要素は流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素と、を備える医療デバイスを提供し、流体構成要素および可撓性電極アレイは、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成される。
【0009】
上記態様の電極アレイは、極めて可撓性が高く、曲げ半径が2mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下である。内側曲率に対して測定される曲げ半径は、構成要素(この場合は電極アレイ)を損傷することなく少なくとも一方向に曲げることができる最小半径である。本明細書で定義される曲げ半径は、最小曲げ半径よりも大きい半径まで加えられた力の下で曲げられた電極アレイが加えられた力の除去によってその元の形状に少なくとも部分的に戻るような、塑性変形とは対照的な弾性変形を指す。言い換えれば、この態様のデバイスの電極アレイは、例えば、デバイスが患者への挿入のために配置されているときに巻くことによって2mmの内側曲率に曲げられ、続いて拡張されたあまり曲げられていない構成(例えば、実質的に平坦な構成)に展開され(例えば、時広げられ)、曲げられる前と全く同じように依然として機能することができる。
【0010】
好ましくは、可撓性電極アレイは、約1.5mm以下、より好ましくは約1mm以下、より好ましくは約0.5mm以下の曲げ半径を有する。可撓性電極のより低い曲げ半径は、デバイスが流体構成要素の構成の変更によって展開されるときに電極アレイの機能性を依然として保持しながら、電極アレイを展開のためにより密な(したがってより薄い)円筒構造に巻くことを可能にすることができる。
【0011】
デバイスは、近位セクションおよび遠位セクションを有することができ、可撓性電極アレイおよび流体構成要素は、遠位セクションに配置される。遠位セクションは、第1の方向に約2mm以下(より小さいことが好ましく、例えば1.5mm、1mmもしくは0.5mm、またはそれ以下)の曲げ半径を有することができる。例えば患者に埋め込まれたときに、電極アレイがその機能を実行するように配置されるために展開する必要があるのは、一般に、デバイスの遠位セクションである。したがって、流体構成要素の作動時に構成を変更するのは遠位セクションである可能性がある。デバイスを埋め込みパルス発生器などのさらなる装置に接続し、剛性であり得る(剛性であることが必要とされ得る)チューブおよびワイヤなどの外部構成要素へのコネクタなどのデバイスの他の部分は、近位セクションに配置されることができ、したがって、流体作動時に構成を変更する遠位セクションの能力に影響を与えない。
【0012】
特定の配置では、医療デバイス、特にデバイスの遠位セクションは、異なる方向に異なる特性を有することができる。例えば、遠位セクションは、第1の方向の曲げ半径よりも大きい、前記第1の方向に直交する第2の方向の曲げ半径を有することができる。これは、遠位セクションの全体または遠位セクションの特定の部分(可撓性電極アレイなど)に適用され得る。そのような特性の変化は、例えば、挿入軸に沿って比較的剛性または非弾性であり、依然として直交方向に十分に可撓性でありながら、インプラントの位置決めを支援するデバイスの形態をとることができ、それにより、デバイスは、小さな切開部を介した埋め込みを可能にするように巻かれるか、または圧縮され得る。
【0013】
特定の実施形態では、医療デバイスは細長いものであり、第1の方向はデバイスの長手方向軸に対して実質的に垂直である。これにより、可撓性電極アレイおよび/または遠位セクションを、(例えば、デバイスの展開中に小さな切開部、開口部、管腔またはカテーテルを通過するために)デバイスの厚さを減少させるようにパッケージ化し、次いで所望の位置にあるときに流体作動によってより大きな構成に展開することができる。多くの場合、可能な限り小さな隙間を通して展開するためのデバイスの厚さ寸法を小さくすることが望ましいが、必要な切開部、開口部、管腔またはカテーテルのサイズに影響を与えないため、デバイスの長さ寸法を変更または小さくすることはあまり重要ではない。
【0014】
特定の実施形態では、デバイスは取り外し可能な支持要素を有する。取り外し可能な支持要素は、デバイスの展開を支援するために、1つまたは複数の方向においてデバイスに剛性を提供することができる。例えば、取り外し可能な支持要素は、(例えば、デバイスが患者の中に押し込まれるときのデバイスの「クランプル」を防止することによって)展開中にデバイスの剛性を維持するために、デバイスの長手方向範囲の一部または全部に沿って延びる剛性要素であってもよい。
【0015】
特定の実施形態では、デバイスは、取り外し可能な支持要素が取り外されると、遠位セクションが第1および第2の方向のそれぞれにおいて約2mm以下(好ましくはそれより小さい、例えば1.5mm、1mm、0.5mmなど)の曲げ半径を有するように構成される。したがって、取り外し可能な支持要素は、デバイスに一時的または取り外し可能な支持または剛性を提供してもよく、その後、その支持がもはや必要とされなくなったら取り外すことができる。
【0016】
本発明のさらなる態様は、可撓性電極アレイと、流体構成要素であって、流体構成要素は流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素と、を備える医療デバイスを提供し、流体構成要素および可撓性電極アレイは、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成され、さらに、可撓性電極アレイおよび流体構成要素は、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイを圧縮構成と、圧縮構成よりも大きい投影表面積を有する拡張構成との間で移行させるように配置される。
【0017】
特定の実施形態では、圧縮構成では、可撓性電極アレイおよび任意選択的に流体構成要素は巻かれている。可撓性電極アレイの巻きは、限られた直径の切開部、開口部、管腔またはカテーテルにおいて利用可能な断面を良好に利用する。また、構成を変更する部分の曲げ半径が小さいデバイスによっても巻きが容易になる。
【0018】
特定の実施形態では、圧縮構成と拡張構成との間の移行は、可撓性電極アレイを解きほどくことを含む。この解きほどくことは、デバイスの長手方向範囲に平行な軸の周り、ならびに/または電極アレイおよび/もしくは流体構成要素が小さい曲げ半径を有する方向(例えば、上記態様における第1の方向)に垂直な軸の周りであってもよい。
【0019】
圧縮構成では、可撓性電極アレイおよび/または流体構成要素は、実質的に円筒形であってもよく、および/または円形断面を有してもよい。電極アレイおよび/または流体構成要素を円筒形に、または円形断面を有するように圧縮することにより、患者への挿入に利用可能な直径へのデバイスの充填が最適化される。
【0020】
拡張構成では、可撓性電極アレイは実質的に平面であってもよい。好ましくは、拡張構成では、電極アレイは、能動的または受動的のいずれかの方法で相互作用することが意図されている器官または組織に適合する。そのような構造は、ある程度の曲率を有することができるが、デバイスの全体的な構成は、例えば圧縮構成と比較して、依然として実質的に平面であり得る。
【0021】
好ましくは、拡張構成では、医療デバイスは5mm以下、より好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下の厚さを有し、いくつかの実施形態では1mm以下であってもよい。デバイスの厚さは、周囲の組織との相互作用の低減または最小化を確実にするために重要であり得る。圧縮構成よりも大きな投影面積を有するような展開構成における電極アレイの拡張は、電極アレイが患者に挿入されるものよりも大きい治療または検出領域にわたって展開することが望ましいが、厚さ方向の拡張は一般にあまり望ましくなく、可能であれば減少および回避されるべきである。
【0022】
特定の実施形態では、電極アレイおよび/または流体構成要素は、流体構成要素がその後、部分的または全体的に収縮しても、電極アレイがその展開形状を保持できるように配置される。これは、展開構成においてデバイスの厚さを低減するのを助けることができる。そのような実施形態では、拡張または展開構成の医療デバイスの厚さは、0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下であり得る。
【0023】
好ましくは、医療デバイスは、構成の変更中にデバイスの厚さの拡張を制限するように配置される。
【0024】
特定の実施形態では、医療デバイスは、流体構成要素に実質的に平行に配置され、構成の変更中にデバイスの厚さ方向における流体構成要素の拡張を防止または制限するように配置された剛性または非弾性または低弾性材料の1つまたは複数の部分を含む拘束層をさらに含む。以下の説明における「非弾性」への言及は、低レベルの弾性を有する材料を含むと理解されよう。拡張を制限する機能にはより低いレベルの弾性が好ましいが、他の目的にはある程度の弾性が望ましい場合がある。
【0025】
剛性材料の部分は、互いに実質的に平行に配置された複数のストリップを含むことができ、前記ストリップ間の拘束層の部分は可撓性が高い。
【0026】
代替的または追加的に、剛性材料の部分は、厚さ方向以外の方向の構成の変更を妨げないように配置されてもよい。
【0027】
特定の実施形態では、垂直拡張の制限は、流体構成要素の上方および/または下方の1つまたは複数の層に非弾性材料を組み込むことによって達成される。この比較的非弾性の材料は、変形に抵抗し、したがって垂直方向の拡張を制限する可能性がある。同様に、流体構成要素の上方および/または下方の可撓性であるが非弾性の材料は、流体チャンバがより大きな容積に伸張または膨らむのを防ぐ。そのような材料系は、例えば、シリコーンの層の有無にかかわらず、パリレン-Cまたはポリイミドの薄層の形態をとることができる。
【0028】
そのような非弾性材料は、展開プロセスのためのデバイスの全体的な可撓性の要件を考慮するように特に構成され得る。これは、例えば、剛性材料のストリップ間に可撓性材料の領域を設けることによって達成することができ、ストリップは展開中にデバイスの解きほどき(unrolling)または広がり(unfurling)の方向に対して垂直に配向され、その結果、可撓性材料は、デバイス全体が依然として展開するのに十分に可撓性であることを保証し、剛性ストリップは、そのような拡張を引き起こすのに必要な力を増加させることによって垂直拡張を防止または低減する。
【0029】
代替的または追加的に、材料を使用して、異方性特性を有する流体構成要素の上方および/または下方のデバイス内に層を形成することができ、それにより、材料は、巻き(rolling)/解きほどき(unrolling)の方向に可撓性であるが、垂直方向(例えば長手方向)に剛性である。
【0030】
特定の実施形態では、流体構成要素は、流体構成要素内に延在する流体チャネルを備え、流体構成要素は、構成の変更中にデバイスの厚さ方向における流体チャネルの拡張を防止または制限するように、流体チャネルの対向する側面を接合する少なくとも1つのタイをさらに備える。
【0031】
タイ(複数可)を、チャネル自体の一部として製造することができ、または流体チャネルの上層と底層との間の結合または溶接によって形成することができる。タイは、チャネルに沿って分布する複数のそのような接合を有するスポット接合であってもよく、またはチャネルの全部または一部に沿って連続していてもよい。
【0032】
代替的または追加的に、流体構成要素は、独立して膨張可能な複数のチャンバを含むことができ、チャンバは、構成の変更中にデバイスの厚さ方向における流体チャネルの拡張を防止または制限するようなサイズになっている。流体構成要素の個々のチャンバまたはセクションの断面が十分に小さい場合、垂直拡張を防止または制限することができる。したがって、流体構成要素の全体的な設計では、断面が小さい流体チャネルが設けられ得る。複数のこのようなチャネルは、互いに平行に配置され、いずれかの端で接合されてもよい。
【0033】
代替的または追加的に、流体構成要素は、第1の前記独立して膨張可能なチャンバと第2の前記独立して膨張可能なチャンバとの間に流体的に配置された圧力弁をさらに含み、前記圧力は、前記第1のチャンバ内で所定の流体圧力に達するまで、流体が第1のチャンバから第2のチャンバに通過しないようになっている。デバイスの垂直拡張は、チャンバの形状の設計と弁によって設定された圧力制限によって制限され得る。
【0034】
本発明のさらなる態様は、可撓性電極アレイと、流体構成要素であって、流体構成要素は流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素と、を備える医療デバイスを提供し、流体構成要素および可撓性電極アレイは、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成され、デバイスは近位セクションおよび遠位セクションを有し、可撓性電極アレイおよび流体構成要素は遠位セクションに配置され、デバイスは、流体構成要素と流体連通する流体コネクタと、電極アレイと電気的に接触する電気コネクタとをさらに備え、前記コネクタは、流体構成要素および電極アレイを外部デバイスに接続するためにデバイスの近位セクションに設けられる。
【0035】
デバイスの遠位セクションは、近位セクションよりも少なくとも一方向に可撓性が高い可能性がある。
【0036】
したがって、デバイスの遠位セクションは、流体構成要素および電極アレイなどの可撓性および再構成可能な構成要素を含むことができ、一方、コネクタなどの可撓性の低い(または非可撓性の)構成要素は、近位端に位置することができ、これは、好ましくは、デバイスの展開中に構成を変更しない。
【0037】
遠位セクションおよび近位セクションという用語は、この態様で説明した構成要素の相対的な配置を指すことを意図している。特に、特定の実施形態では、デバイス自体が、デバイスを、デバイスの挿入後に患者の外部にある、または患者の皮膚レベルにあるさらなる装置またはデバイス(コントローラおよび/または流体および/または電源など)に接続するのに役立つワイヤまたは他のコネクタ(例えばチューブ)を含むことは想定されていない。したがって、デバイスの近位セクションは、そのようなアイテムへの接続を行うのに必要な構成要素のみを含むことができる。
【0038】
そのような配置では、デバイスの近位セクションは、デバイス全体の比較的小さな割合、例えば展開状態におけるデバイスの全容積の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下(能動的構成要素を有する遠位セクションが、デバイスの容積の80%、85%、90%または95%をそれぞれ含むように)を形成することができる。
【0039】
デバイスは、電極アレイを電気コネクタに接続する導電性コネクタと、導電性コネクタを取り囲む第1のシースとをさらに備えてもよい。第1のシースは電気絶縁性であってもよい。
【0040】
特定の実施形態では、デバイスは、流体構成要素を流体コネクタに接続する流体チャネルをさらに備えてもよく、第1のシースはまた、流体チャネルを取り囲む。
【0041】
デバイスは、可撓性電極アレイ、流体構成要素、および第1のシースを取り囲む第2の取り外し可能なシースをさらに備えてもよい。第2のシースは、患者へのデバイスの挿入中に流体構成要素、電極アレイおよびコネクタ(複数可)を保護するように、ならびに/または挿入中にデバイスの変形を防止するように機能することができる。
【0042】
特に、可撓性電極アレイおよび流体構成要素は、第2のシース内に圧縮構成で配置されてもよく、デバイスは、シースの取り外し後の流体構成要素の作動が、流体構成要素および可撓性電極アレイを、圧縮構成よりも大きい投影表面積を有する拡張構成に変更させるように配置される。
【0043】
第2のシースの内径は、好ましくは1cm以下、任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下である。
【0044】
本発明の別の態様によれば、可撓性電極アレイ、および流体構成要素であって、流体構成要素は流体構成要素に構成を変更させるように流体的に作動可能である、流体構成要素、のうちの1つまたは複数を備える医療デバイスが提供され、流体構成要素および可撓性電極アレイは、流体構成要素の構成の変化が可撓性電極アレイの構成の変化を引き起こすように構成される。
【0045】
任意選択的に、医療デバイスは生体電気インプラントである。生体電気インプラントは、脊髄刺激装置などの能動インプラントであってもよい。生体電気インプラントは、皮質脳波記録センサなどの受動インプラントである。
【0046】
任意選択的に、可撓性電極アレイは、可撓性基板上に設けられた電極を備える。可撓性基板は、厚さ500μm以下であってもよく、任意選択的に厚さ200μm以下、さらに任意選択的に厚さ100μm以下、さらに任意選択的に厚さ50μm以下、さらに任意選択的に厚さ25μm以下、さらに任意選択的に厚さ10μm以下、さらに任意選択的に厚さ5μm以下であってもよい。可撓性基板は、ポリマー材料、任意選択的に熱可塑性樹脂から作製されてもよく、任意選択的にポリウレタン、シリコーン、パリレン、ポリイミド、ポリアミド、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはエポキシのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0047】
任意選択的に、可撓性基板は流体構成要素を備える。
【0048】
任意選択的に、流体構成要素は、流体構成要素内に流体を供給するための流体入口を備える。
【0049】
任意選択的に、流体構成要素は、流体入口に接続された流体チャネルを備え、チャネルは流体構成要素内に延在する。
【0050】
任意選択的に、流体チャネルは剛性ではない。
【0051】
任意選択的に、流体チャネルは、5mm以下、任意選択的に3mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下、さらに任意選択的に100μm以下、さらに任意選択的に50μm以下、さらに任意選択的に5μm以下の最大非膨張幅寸法を有し、および/または5mm以下、任意選択的に2mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下の最大膨張厚さを有する。
【0052】
任意選択的に、流体構成要素は、流体チャネルに流体を供給することによって作動される。
【0053】
任意選択的に、流体チャネルは、流体構成要素内に分岐および/または対称構造を有する。
【0054】
任意選択的に、医療デバイスは、1cm以下、任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下、さらに任意選択的に1mm以下の直径を有する第1の構成に構成され得る。
【0055】
任意選択的に、医療デバイスは、流体作動によって、前記第1の構成から、第1の構成よりも大きい投影表面積を有する拡張構成に作動させることができる。
【0056】
任意選択的に、デバイスは、流体作動が流体構成要素を広げ(unfurl)またはアンフォールドし(unfold)、それによって可撓性電極アレイを広げるまたはアンフォールドするように構成される。
【0057】
任意選択的に、流体構成要素は、可撓性電極アレイとは別個であるか、または分離可能である。
【0058】
上記のデバイスのいずれかにおける流体構成要素および可撓性電極アレイは、別個であっても分離可能であってもよい。これにより、流体構成要素を電極アレイの送達および展開に使用することができるが、その後、アレイのみを患者の体内に残して引き抜くことができる。これにより、患者内に保持されるデバイスのサイズを大幅に縮小することができ、周囲の組織および器官に対するより低いレベルの破壊を提供することができる(したがって、デバイスの埋め込みからの副作用が潜在的に少なくなる)。
【0059】
上記態様のいずれかの医療デバイスは、BaSOを注入されたポリマー材料のストリップなどのX線によって画像化可能な1つまたは複数の構成要素を含むことができる。これにより、デバイスが患者に展開されている間および/または展開された後に、デバイスの位置をチェックおよび/または監視することが可能になる。
【0060】
特に指示がない限り、上記の態様の1つに関連して説明された特徴(任意選択のまたは好ましい特徴を含む)のいずれも、他の上記の態様のいずれかによる医療デバイスと組み合わせて等しく適用可能である。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、前述の態様(これらの態様の任意選択の、および好ましい特徴の一部または全部を含むか、全く含まない)のいずれかに従って医療デバイスを使用する方法が提供され、本方法は、流体構成要素の構成の変化を引き起こすために、流体構成要素に流体を供給するステップの少なくとも1つを含み、流体構成要素は、構成を変更しているときに、可撓性電極アレイの構成の変更を引き起こす。
【0062】
任意選択的に、本方法は、流体構成要素を可撓性電極アレイから取り外すステップをさらに含む。
【0063】
任意選択的に、本方法は、展開に適した第1の構成に生体電気インプラントを構成するステップと、生体電気インプラントを展開するステップと、生体電気インプラントを第1の構成から第2の構成に変更するように生体電気インプラントを流体的に作動させるステップと、をさらに含む。
【0064】
生体電気インプラントは、経皮的に、または穿頭孔を通して展開され得、穿頭孔は、任意選択的に直径20mm以下、さらに任意選択的に10mm以下、さらに任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下である。
【0065】
任意選択的に、作動させるステップは、生体電気インプラントの電極を標的組織と接触または近接させるステップをさらに含む。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の身体を治療する方法が提供され、本方法は、上記態様の方法の変形例のいずれかによる医療デバイスまたは生体電気インプラントを埋め込むステップを含む。
【0067】
本発明は、例として、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】可撓性電極アレイおよび流体構成要素を備える医療デバイスの図である。
図2図1に示すような医療デバイスの(A)長手方向および(B)横方向のアンフォールディング/広がりの例を示す図である。
図3】医療デバイスの流体構成要素に使用され得るさまざまなパターンを示す図である。
図4】本発明の一実施形態による医療デバイスを示す図である。
図5】本発明の一実施形態による医療デバイスおよびデバイスの特定の構成要素の被覆材を示す図である。
図6】脊髄位置へのデバイスの展開を示す図である。
図7】医療デバイス内の流体チャネルの断面構成を概略的に示す図である。
図8】可撓性電極アレイを作成するためのプロトコルのステップを示す図である。
図9】可撓性電極アレイを作成するための別のプロトコルのステップを示す図である。
図10】流体構成要素を可撓性電極アレイと組み合わせるためのプロトコルのステップを示す図である。
図11】流体構成要素を可撓性電極アレイと組み合わせるための別のプロトコルのステップを示す図である。
図12】流体構成要素を可撓性電極アレイと組み合わせるためのさらに別のプロトコルのステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本開示は、医療デバイス、特に、埋め込み後に前記デバイスのアンフォールディング/解きほどきを作動させるために使用することができる流体構成要素を組み込んだ埋め込み型バイオ電子デバイスに関する(なお、「流体」は、液体、気体、ゲル、もしくはフォーム、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る;「流体構成要素」は、空気圧構成要素と油圧構成要素の両方、およびゲルやフォーム、あるいはそれらの組み合わせによって作動する構成要素を対象としている;「流体的に作動可能」とは、構成要素が液体、気体、ゲル、もしくはフォーム、またはそれらの組み合わせのいずれかによって作動する可能性があることを意味する)。埋め込み前に巻き上げることができる可撓性デバイスを提供することにより、デバイスを比較的簡単に、例えば経皮的に展開することができる。展開されると、アンフォールディングを制御することができることによって、デバイスは必要に応じて位置決めされ、巻き構成のデバイスのサイズと比較して比較的大きな活性表面積を有することができる。
【0070】
そのようなデバイスは、大きなインプラントの経皮的埋め込みを可能にする埋め込みの外科的侵襲性を低減するという点で、上述の脊髄刺激(SCS)に使用されるものなどの他のインプラント技術の重大な欠点に対処する。
【0071】
以下の説明では、参照を容易にするために、「ギャザー(gathered)」構成または「圧縮(compressed)」構成という用語は、「拡張(expanded)」構成と対比するために使用される。当業者は、ギャザー構成が、折り畳み、巻き、プリーツ加工などの任意の形態または組み合わせを包含し得ることを理解されよう。
【0072】
図1は、医療デバイス100を示している。医療100は、例えば、生体電気インプラントであってもよい。生体電気インプラント100は、脊髄刺激(SCS)デバイスなどの能動インプラントであってもよい。あるいは、生体電気インプラントは、皮質脳波記録センサなどの受動インプラントであってもよい。他の用途では、デバイス100は、能動機能と受動機能の両方を有してもよい。そのようなデバイス100の他の用途には、末梢神経インプラントまたは筋活動の記録/刺激における使用が含まれる。
【0073】
医療デバイス100は、可撓性電極アレイ10を備える。可撓性電極アレイ10は、可撓性基板30上に設けられた導電線12に接続された電極11を備える。非限定的な例として、可撓性電極アレイは、約5μmの厚さであってもよい。電極アレイ10は、以下に説明するように、流体構成要素20によって作動されることに応答して構成を変化させることができるように可撓性である。したがって、本明細書では、「可撓性電極アレイ」という語句は、そのような構成の変更を受けることができるアレイを意味するために使用される。これは、完全に可撓性または半可撓性であるアレイを含む(例えば、剛性であるか、または他の可撓性の高い部分よりも剛性であるいくつかの部分または特徴を含む、ただし、それらが依然として流体構成要素によって作動される構成の変化を受けることができることを条件とする)。
【0074】
医療デバイス100はまた、流体構成要素20を含む。流体構成要素20は、後述するように、流体構成要素20に構成を変更させるように流体的に作動可能である。流体構成要素20を、マイクロ流体構成要素とすることができる。他の配置では、1つまたは複数の流体構成要素が存在してもよいが、理解を容易にするために単一の流体構成要素20が示されている。
【0075】
流体構成要素20および可撓性電極アレイ10は、流体構成要素20の構成の変化が可撓性電極アレイ10の構成の変化を引き起こすように構成される。
【0076】
図示の実施形態では、電極アレイ10の基板30が流体構成要素20を含むので、流体構成要素20の構成の変化は、電極アレイ10の構成の変化を引き起こす。このように、流体構成要素20と電極アレイ10とは一体的に接続されている。
【0077】
しかしながら、他の構成では、流体構成要素20は、電極アレイ10とは別個であってもよく、または分離可能であってもよい。実際、以下の説明から理解されるように、流体構成要素20および電極アレイ10は、埋め込み前に構成要素を一緒に集めること以外の手段によって接続されなくてもよい。別個の、または分離可能な電極アレイ10および流体構成要素20を有することの利点は、電極アレイ10の埋め込み後に流体構成要素20を取り外しできることである。しかしながら、他のシナリオでは、流体構成要素20を原位置に維持して、埋め込みデバイス100の一部のままにすることが許容可能であり得る(または実際に好ましい)。
【0078】
可撓性基板30は、厚さ500μm以下であってもよく、任意選択的に厚さ200μm以下、さらに任意選択的に厚さ100μm以下、さらに任意選択的に厚さ50μm以下、さらに任意選択的に厚さ25μm以下、さらに任意選択的に厚さ10μm以下、さらに任意選択的に厚さ5μm以下であってもよい。薄い基板は、医療デバイス100の小さなギャザー構成の作成を容易にする。
【0079】
可撓性基板30は、ポリマー材料、任意選択的に熱可塑性樹脂から作製されてもよく、任意選択的にポリウレタン、シリコーン、パリレン、ポリイミド、ポリアミド、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはエポキシのうちの1つまたは複数を含んでもよい。そのような材料は、体内への埋め込みに適しており、デバイスを拡張構成に作動させることができるギャザー構成に構成することを容易にする可撓性を提供する。
【0080】
図1の図示の実施形態では、流体構成要素20は、基板30を通って延びる流体チャネル21を備え、入口22および出口23を有する。入口22(および出口23)は、例えば、別個に形成され、続いて流体チャネル21に接続されたチューブとして具体化されてもよい。
【0081】
入口22は、流体(すなわち、液体または気体)を流体構成要素20に供給するためのものである。一般に、1つまたは複数のそのような入口22があってもよい。そのような供給は、流体構成要素20を作動させる。作動は、流体構成要素20の流体チャネル21内の流体圧力および/または流体の量を増加させる供給の結果であり得る。いくつかの配置では、流体の供給は、例えば、基板30内のチャネル21の膨張または直線化を引き起こすことができる。
【0082】
いくつかの配置では、入口22とは別個の特定の出口23が存在しなくてもよい。例えば、作動流体として気体を使用する場合、気体を入口22に供給してデバイス100を作動させることができ、その後、供給を除去することにより、圧力をチャネル21内で解放し、元の入口22を介してチャネル21から気体を流出させることができる。他の配置では、チャネル21は、専用の入口(または複数の入口)22から1つまたは複数の別個の出口23まで延在してもよい。
【0083】
いくつかの配置では、流体構成要素20は、それぞれが独自の入口22および出口23(存在する場合)を有する独立した流体チャネル21を有してもよい。
【0084】
いずれの場合も、基板30を通るチャネル21の経路は、異なる形態をとることができる。経路の形態は、デバイス100がギャザー構成に配置される方法、およびデバイスが拡張構成に移行することが望ましい方法によって決定され得る。いくつかの配置では、チャネル21は、流体構成要素20内に分岐および/または対称構造を有してもよい。そのような配置は、基板30全体にわたってチャネル21の均一な分布を提供することができ、これはデバイス100の均一な展開に有利であり得る。チャネル21は、単一のチャンバ(例えば、膨張したときに「バルーン」または「ピロー」形状を有する)、またはその種の一連の相互接続されたチャンバの形態をとり得る。より大きなチャンバはまた、膨張した形状を制御し、過膨張に抵抗するのを助けるために、チャンバの一方の側から他方の側への接続タイまたは「ピラー」を有してもよい。
【0085】
図3は、流体構成要素のチャネル21に使用され得るさまざまなパターン(平面図)を示しているが、他のパターンも可能である。パターンにおいて、黒色はチャネル21を表し、黒色領域内の白色の領域は、上述のタイまたは「ピラー」などのチャネル21が延在していない領域、またはチャネル21によって囲まれた基板のより大きな領域を示す。
【0086】
観察されるように、図3A図3C図3D図3Gおよび図3Hのパターンは、入口および出口の両方として機能することができる単一の入口を(各パターンの底部に)有する。図3Bは、底部に2つの偏心ラインを有し、これらは両方とも入口として同時に使用することができ、続いて出口として同時に使用することができ、または専用の入口および出口ラインとして提供することができる。図3Eは、底部からパターンに近づくラインと、上部から離れるラインとを有し、この配置は、例えば、底部のラインが入口として機能し、上部のラインが出口として機能するか、またはその逆の自然な「フロースルー(flow-through)」配置を提供する。図3Fは、底部から接近する3つのラインを有する;図3Bに関して、これらはすべて、必要に応じて入口または出口として一緒に使用することもできるし、入口または出口チャネルとして個別に専用にすることもできる。例えば、中央ラインは入口であり、外側ラインは出口であり、またはその逆であってもよい。
【0087】
図3A図3B図3C図3F図3Gおよび図3Hのパターンは、本質的に対称であることも観察されよう。上述したように、これは、解きほどき/広がりさえも助けることができる。図3Dおよび図3Eの設計は、3Dの単一の入口/出口ラインおよびパターンの上部から図3Eに戻る入口/出口ラインの配置を除いて、主に対称的である。
【0088】
パターンを個別に考慮すると、図3Aは、単一のチャンバを形成するチャネル21を示す。そのチャンバは、「バルーン」または「ピロー」タイプであり、タイを含まない。チャンバは、例えば、SCS電極アレイの形状に対応し得る典型的なパドル形状を有する。
【0089】
図3Bは、大きなチャンバを形成するチャネルを示しているが、図3Aと比較すると、図3Bのチャンバは、(脳の表面用に設計された)皮質センサに有用であり得る種類の形状の正方形である。図3Bのチャンバはまた、チャンバの上側と下側とを接続するタイまたは「ピラー」を含む。それらのタイは、白い円および楕円として示されている。タイは、チャンバが膨張してチャンバ設計を強化する方法を制御するのに役立つ。
【0090】
図3Cは、中央チャネルから両方向(左右)に分岐した分岐チャネル設計を示している。分岐部は、パターンの上部に向かって(すなわち、パターンの底部の入口/出口ラインから離れるほど)厚くなる。そのような配置は、より厚い分岐部における流れに対する抵抗をより少なくし、入口に最も近い端部から単に充填するのではなく、流体が導入されるときに流体がパターン全体を充填するように促すのを助けることができる。
【0091】
図3Dは、図3Cと同様の分岐設計であるが、入口ラインは側方にオフセットされており、その結果、分岐部はそのラインから一方向に(すなわち、図示されているように右に)延びる。
【0092】
図3Eは、さまざまな分岐部が再び一緒に戻る前に、入口分岐部、次いでそれらの分岐部も分岐する分岐設計である。この設計は、チャネルによって境界付けられた基板の囲まれた領域を効果的に作り出す。チャネルはそれらの領域を通過しないが、それらの領域の周りにチャネルが存在することは、その領域の広がりが依然として作動可能であることを意味する。
【0093】
図3Fは、チャネルおよび囲まれた領域のネットワークを作成する多重分岐設計である。図3Gは、既に説明したように、異なる入口配置を有する同様の設計である(ただし、より広い)。
【0094】
図3Hは、最初の分岐部が相互接続されていないが、その後それぞれがさらに分岐して基板内の異なる位置にチャネルのローカルネットワークを形成する分岐設計である。そのような手法は、例えば、電極位置に対応する領域にチャネルの集中(すなわち、ネットワーク化された領域)を提供して、それらの領域が特にうまく広げられることを確実にするために所望され得る。
【0095】
さまざまな配置が図3に関して説明されているが、当業者は、それらが例示にすぎず、複数の独立した流体チャンバを有する設計を含む他の変形および設計も可能であることを認識されよう。
【0096】
いくつかの配置では、流体チャネル21は、チャネル21がチャネル内に基板材料が存在しないことによってのみ画定されるように、基板30内に完全に埋め込まれてもよい。他の配置では、チャネルは、周囲の基板30とは異なる材料で形成されてもよく、または基板30と同じ材料で形成されてもよいが、その基板30内に直接埋め込まれなくてもよい。したがって、流体チャネルは、構築方法に応じて、基板と比較して比較的可撓性または剛性であり得る。いずれの場合も、流体チャネルは、5mm以下、任意選択的に3mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下、さらに任意選択的に100μm以下、さらに任意選択的に50μm以下、さらに任意選択的に5μm以下の最大非膨張幅寸法(すなわち、チャネルが加圧によって拡張されるか、または流体で満たされる前に、チャネル21の中心ラインに垂直なチャネル21を通る断面を横切る最大サイズである)を有することができる。流体チャネルはまた、5mm以下、任意選択的に2mm以下、さらに任意選択的に1mm以下、さらに任意選択的に500μm以下の最大膨張厚さ(すなわち、流体構成要素を作動させるために流体が加圧/充填された後のチャネルの拡張後の最大寸法)を有してもよい。
【0097】
図2は、医療デバイス100の可撓性を利用してその展開を支援することができる方法を示している。電極アレイ10および流体構成要素20は両方とも可撓性であるため、デバイス100全体を、経皮的展開を可能にすることができる構成に集めることができる。特に、電極アレイの可撓性、および好ましくは少なくともギャザー構成の流体構成要素は、電極アレイの機能性に影響を及ぼすことなく医療デバイスを巻くことを可能にすることができる。
【0098】
図2Aの左側は、デバイス100の長手方向範囲に沿って巻かれたデバイス100を側面図で示している。すなわち、デバイス100は、その最長軸に沿って巻かれる。デバイス100は、右側に示すように、比較的平坦な構成に解きほどくことができる。
【0099】
図2Bは、代替配置(このときは平面図)を示している。左側では、デバイス100は、デバイスの幅(平坦な構成に拡張されたときの電極アレイ10の平面内のより短い方向)にわたって巻かれるかまたは折り畳まれる。再び、デバイスは、続いて、右側に示すように、完全に展開されたデバイスを提供するために解きほどかれまたはアンフォールドされてもよい。
【0100】
両方の場合において、デバイス100のギャザー構成は、デバイス100が経皮的に埋め込まれる可能性を可能にする。適切に薄い可撓性基板30を提供することにより、比較的大きな拡張表面積を有するデバイス100であっても、適切な針による経皮的展開を可能にする比較的狭い構成に巻くことができる。好ましくは、ギャザー構成は、その構成におけるデバイス(すなわち、集める方向の断面において)の最大幅が1cm以下、任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下であるような構成である。最大幅は可能な限り小さくすることが有利であり、これにより、より小さい直径の針を経皮的展開に使用することが可能になる。したがって、より長い長さ寸法とは対照的にデバイス100のより狭い幅寸法でデバイス100を巻いて、より小さいギャザー幅に到達することが有利であり得る(集まる材料が少なくなるため)。
【0101】
図2Aは単一のロールを有する例を示しているが、図2Bに示すように、2つの方向、例えば2つの縁部から中心ラインまでデバイスを巻く、折り畳む、または別の方法で集めることが有利であり得る。そのような配置は、以下に説明するように、より均一な展開を可能にすることができる。すなわち、それは、両側が同時に展開することを可能にすることができ、それによって、デバイス100が配置されるときにその場でねじれを回避する。
【0102】
集める方法は、特定のデバイスによって決定されるが、例えば、手動で、ガイドを使用して、または他の方法で実行されることができ、あるいは自動化されてもよい。集めることは、ガイド構成要素(これは、デバイス100に一体化されていてもよく、または別個の構成要素であってもよい)を使用して、集められたデバイス100に追加の剛性/構造を与え、経皮的送達を助けることができる。そのようなガイド構成要素は、集められたデバイス100の内部または周囲のいずれかで、ワイヤもしくはチューブ、または生体再吸収性シャンクの形態をとることができる。すなわち、ガイド構成要素は、比較的剛性の「バックボーン」または支持体を提供することができ、その周りにデバイス100を集めることができ、その後、ギャザー構成内からその展開位置にデバイスを導くのを助けるために使用され得る。代替的に、または組み合わせて、ガイド構成要素は、ガイド構成要素が集められたデバイスの外側にあるように、集められたとき/集められた後にデバイスが供給されるシースまたはチューブであってもよい。内部ガイド構成要素の場合、デバイス100が展開されると、その構成要素は取り外されてもされなくてもよい。外部チューブまたはシースの場合、ガイド構成要素は、展開構成への変更を可能にするのに十分にデバイスに対して引き抜かれ、または引っ込められなければならない(しかしながら、場合によっては、これは、例えば、内部および外部ガイド構成要素が組み合わせて使用される場合、全く引っ込めなくても可能であり得る)。
【0103】
使用時に、デバイス100は、上述のように集められ、次いで、当技術分野で知られている方法に従って最初に展開され得る。例えば、SCSデバイスは、経皮的に展開され得る。あるいは、脳センサは、頭蓋の穿頭孔を通して展開されることができる。そのような穿頭孔は、直径が20mm以下、さらに任意選択的に10mm以下、さらに任意選択的に5mm以下、さらに任意選択的に2mm以下であり得る。
【0104】
初期展開後、流体を入口22に供給してチャネル21を充填および/または加圧することができる。チャネル21が充填/加圧されると、チャネル21はその拡張構成に付勢され、したがって流体構成要素20を解きほどき/アンフォールドし始める。したがって、流体構成要素20のギャザー構成から拡張構成への移行は、流体チャネル21に流体を供給することによって作動される。この移行は、デバイスを標的組織と接触させるか、または標的組織に適切に近接させる。
【0105】
流体構成要素20の構成の変化は、関連する可撓性電極アレイ10の構成の変化を引き起こす。図1の実施形態では、電極アレイ10は、流体構成要素20が含まれる基板30を含む。上述したように、他の配置では、流体構成要素20および電極アレイ10は、それぞれ独立して可撓性である別個のまたは分離可能な構成要素であってもよい。これらの配置では、別個の/分離可能な構成要素が一緒に集められることにより、例えば、電極アレイ10および流体構成要素20が同じ基板30を共有しない場合でも、流体構成要素の作動は依然として電極アレイ10の構成の変化を引き起こす。
【0106】
デバイス100の流体作動は、デバイス100を、拡張構成よりも大きい投影表面積を有する構成に拡張させる。電極アレイの拡張された形状および面積は、用途に応じて変化する。例えば、脳センサ用の電極アレイは、比較的正方形または円形であってもよく、例えば、最大100mm×100mm(すなわち、0.01mの総面積)またはそれ以上の寸法を有してもよい。対照的に、SCSデバイスは、同様の総面積を有することができるが、比較的長くて薄く、最大30mm×300mm以上の寸法を有することができる。いずれの場合も、より標的化された検知/刺激のために、より小さなデバイスを使用することができる。さらに、流体構成要素20は、拡張電極アレイ10の位置決めを助けるための支持体として作用することができる。流体構成要素20は、例えば、展開後に自己硬化性ゲルまたは発泡体で充填されて、継続的な剛性および支持を提供することができる。
【0107】
デバイス100が展開および配置されると、チャネル21に供給された流体を除去することができる。ただし、これは必須ではない。例えば、流体は、流体が何らかの形でデバイス100から漏れるという予想外のシナリオで臨床的リスクをもたらさない生理食塩水などであってもよい。同様に、任意選択的に、流体構成要素20と電極アレイ10とが別個であるか分離可能であるという条件で、電極10の位置決め後に流体構成要素20自体を取り外すことができる。例えば、流体構成要素20と電極アレイ10とが完全に分離している場合、流体構成要素20を作動させて構成の変化を引き起こすことができ、それによって流体構成要素と電極アレイ10の両方をアンフォールドし、その後、流体構成要素20をアンフォールドすることにより、自由に取り外し可能になり得る。
【0108】
インプラント100の展開および位置決めに続いて、埋め込みデバイス100は、それがセンサであるか、または患者の治療における刺激装置としてのものであるかにかかわらず、所望の容量で使用され得る。そのような治療は、セラピーまたは診断を含むことができ、または手術の方法の一部であり得る。
【0109】
図4は、膨張状態の本発明の一実施形態の医療デバイス100を示している。図4に見えるデバイス100の構成要素は、図1および図2と同じ番号を使用してラベル付けされている。一般に、複数のTi/AuまたはPt電極11を含む電極アレイ10は、デバイスの遠位端または機能端110で基板30を覆っているのが分かる。
【0110】
デバイスの近位端において、第1のセクション120は、流体構成要素20を外部膨張デバイスに接続するための流体接続用の1つまたは複数の流体コネクタ102を提供する。流体コネクタ102は、医療グレードのポリエチレンチューブ(ただし、上記のように他の材料が使用されてもよい)であり、約1mm未満の外径を有する。
【0111】
第2のより近位のセクション130は、刺激用のパルス発生器または電極からのデータを記録するためのセンサなどの外部電子機器への電極アレイ10の電気的接続のための1つまたは複数の電気コネクタ101を提供する。電気コネクタ101は、各々が約0.07mmの厚さを有する3本の銅/ポリイミド・フレックス・ケーブルである。
【0112】
図4の配置では、遠位端110は、流体構成要素が作動されると、その構成をギャザー配置または圧縮配置からより大きな展開配置に変更することができるデバイス100の部分である。この遠位端110は、概して可撓性であるが、デバイスの近位端の第1および第2のセクション120,130は、可撓性が低いか、または剛性でさえあり得、それにより、外部供給源から流体構成要素20および電極アレイ10への確実な接続を可能にする。流体コネクタ102および電気コネクタ101は、外部供給源に直接接続されない可能性が高いが、医療デバイス100から離れて延びるチューブまたはワイヤ(図示せず)などのさらなる要素へのコネクタであってもよく、デバイス100が患者内に展開されると、管腔を通って患者の外側に延びてもよいことが理解されよう。第1および第2のセクション120,130も膨張可能ではなく、流体構成要素が作動されるときに形状または構成を変化させない。
【0113】
特に、デバイス100の遠位端110、特に電極アレイ10は、図4の軸に示すように、x方向に2mm以下の曲げ半径を有する。これは、図2Bに示され、図2Bに関連して上述されたように、z方向に平行なデバイス100の中心ラインを中心に巻くことによってデバイスを容易に巻いてギャザー構成にすることができ、次いで、流体構成要素が作動されると、その巻き構成から図4に示される配置に展開することができることを意味する。
【0114】
図4に示すデバイス100では、デバイスは、図示のx方向(z方向に垂直)に平行な軸の周りの曲げに対して著しく可撓性が低い。したがって、図4に示すデバイス100は、図2Aに示し、図2Aに関連して上述した方法での展開には適していない。この配置は、デバイス100がデバイス100の長手方向範囲に沿って位置合わせされるという条件で、デバイス100が遠位部分110に特定の剛性のまたは可撓性の低い構成要素を有することを可能にする。
【0115】
例えば、デバイス100の遠位部分110は、デバイスの中心長手方向軸に沿ってz方向に延びる支持体(図示せず)を有してもよい。この支持体は、例えば展開を容易にするため、および/または展開されたときにデバイスが所望の長手方向構成を保持することを確実にするために必要とされ得る支持および剛性をデバイス100に提供することができる。この剛性のまたは可撓性が低い支持にもかかわらず、デバイス100の遠位部分110は、依然として、中心軸で交わる(z方向に沿って見たときに)2つのコイルを形成するように両側を巻くことによって圧縮構成に集められることができる。
【0116】
代替的な実施形態では、デバイス100は、図4に示すz方向においてより可撓性があり、x方向において可撓性がより低くてもよい(または剛性である)ことが理解されよう。これにより、図2Aに示され、図2Aに関連して上述されたように、デバイスの巻きおよび展開が可能になる。そのようなデバイスでは、遠位部分110の剛性のまたは可撓性の低い構成要素は、x方向(すなわち、デバイス100の長手方向の範囲に対して横方向)に平行に整列させることができる。
【0117】
そのようなデバイス100の変形例では、遠位端110の剛性のまたは可撓性の低い構成要素は、着脱可能または取り外し可能であってもよい。例えば、デバイスの遠位端が展開中に押し潰されたり変形したりするのを防ぐために、患者へのデバイスの展開中にデバイス100の長手方向範囲に沿って延びる剛性の支持体を使用することができる。次いで、この支持体は、デバイスが所望の位置になると取り外され得る。これらの変形デバイスでは、剛性のまたは可撓性の低い構成要素のすべてが遠位端から取り外されると、遠位端は、x方向およびz方向の両方において可撓性であってもよく、両方の方向において同様の曲げ半径を有してもよい。
【0118】
代替的な実施形態では、デバイス100の遠位端110は、剛性のまたは可撓性の低い構成要素を有さず、したがってx方向およびz方向の両方において同様に可撓性であってもよい。このようなデバイスは、デバイスが展開された後に解きほどきまたは広がりによる展開がx方向およびz方向の両方で可能であるように構成され得る。
【0119】
図5は、図4に示され、上述されたようなデバイス100が展開のためにどのようにパッケージ化され得るかを示している。図5に示すデバイスは、図4に示すデバイスと同一であり、個々の構成要素については再度説明しない。
【0120】
図5Aは、第1のシースまたは接続チューブ200が流体および電気コネクタをどのように覆うかを示している。第1のシース200は、内径約1.5mm、肉厚約0.07mmの医療グレードポリウレタンである(ただし、上記のように、代替材料を使用してもよい)。第1のシース200は、流体および電気コネクタ(およびそれらのコネクタが接続されるさらなるチューブおよび/またはワイヤなど)を覆い、保護する。
【0121】
図5Bは、両方とも第2のシースまたは展開チューブ300内に含まれる第1のシース200と共に、巻き構成(上記の図4に関連して説明したようにz方向に平行な軸を中心にダブルロールになっている)のデバイス100を示している。第2のシース300は、内径約1.82mm、肉厚約0.15mmの医療グレードポリウレタンである(上記のように、代替材料を使用してもよい)。
【0122】
損傷することなくダブル巻き構成で第2のシース300に適合するために、デバイスの遠位部分110、したがって流体構成要素20および電極アレイ10は、0.455mm未満(1.82mm/2=各ロールの最大利用可能直径スペース0.91mm=>0.91mm/2=各ロールの最大半径0.455mm)の曲げ半径を有する必要があることが理解されよう。
【0123】
図6は、本発明の実施形態による、患者の脊髄領域400への、図4および図5に示されるような医療デバイス100の展開を示している。図6に示されるデバイス100は、脊髄410の横にあるように設計されたSCSデバイスである。図6Aおよび図6Bのそれぞれにおいて、左手側の図は、脊髄を通る断面に沿った患者の側面図であり、右手側の図は、デバイスが位置する点における脊髄を通る横断面図である。
【0124】
図6Aは、デバイス100がどのようにして(例えば、シース300または他のカテーテル送達システムを使用して)椎骨420の間に、脊髄410に実質的に平行になるように挿入されるかを示している。右側の図は、2つのロールをデバイス100の中心線から離れるように外向きに解きほどく流体作動によってデバイス100がどのように展開され始めるかを示している。
【0125】
図6Bは、デバイスが完全に解きほどかれまたは広げられ、実質的に平面構成を有する展開状態のデバイス100を示しているが、デバイスの電極アレイが脊髄に隣接するように、脊髄410の曲率に柔軟に適合している。
【0126】
特に図6Aおよび図6Bの右側の図から、デバイス100を展開するために利用可能な硬膜外腔430が図6Aおよび図6Bの垂直方向(患者に関して前後方向(AP)寸法)に制限されていることが分かる。デバイス100をこの空間に展開するためには、デバイスが最初に挿入されるギャザー構成または圧縮構成にあるときに、その垂直方向の厚さがその方向のデバイスの厚さを(仮にあったとしても)大幅に超えないように、デバイスが解きほどかれ得るまたは広げられ得ることが有利である。展開時にアンフォールドする複数の層から構成されるデバイスは、そのような空間での展開には(仮にあったとしても)あまり適していない。
【0127】
この限られた空間は、特に脊髄領域400への脊髄刺激装置および他のデバイスの展開におけるケースであるが、他の医療デバイス、例えば脳領域への展開にも同様の制限が適用される。
【0128】
デバイス100の展開のための空間が制限されていることを意味するだけでなく、この方向における制限はまた、この方向(すなわち、解きほどく方向に対して垂直)におけるデバイスの任意の拡張が制限される必要があり、理想的には、デバイスが挿入されるギャザー構成におけるデバイスの厚さを(仮にあったとしても)実質的に超えないことを意味する。垂直方向の過度の拡張は、周囲組織の損傷、血管の閉塞または他の合併症につながる可能性がある。
【0129】
既知の膨張式デバイスに見られるような流体構成要素の単純な膨張は、典型的には、例えば20~500ミクロンの厚さを有する薄く平坦な収縮構造をもたらし、膨張して球根状の形状をとる傾向があり、多くの場合、最大1cmの厚さの円形または楕円形の断面を有する。これは、図6に関連して上述した実装態様では実用的ではない。
【0130】
展開中にデバイス内に注入される膨張流体の量または圧力を制限することによって、デバイスの膨張厚さを制御できることが示唆されている。しかしながら、実際には、デバイスの流体構成要素内の著しい圧力上昇が、圧縮構成から展開構成への展開を開始するために必要とされる。垂直方向における流体構成要素(したがって、デバイス全体)の膨張を引き起こすのに必要な力は、典型的には、デバイスを展開するのに必要な力よりも小さいので、そのようなデバイスにおける展開に必要な膨張は、望ましくない垂直拡張を必然的にもたらす。
【0131】
本発明の特定の実施形態のデバイス100は、デバイスの垂直方向(すなわち、デバイスの展開方向に垂直な方向および/またはその展開構成におけるデバイスの実質的に平面的な配置に垂直な方向)の拡張を制限するように設計される。特定の構成では、デバイスは、展開構成(および好ましくは展開中のすべての段階)における垂直方向のデバイスの厚さが、展開前のギャザー構成における同じ方向のデバイスの寸法よりも決して大きくならないように制限される。特定の用途では、これは数ミリメートル(例えば、2mm、3mmまたは5mm)以下であり得る。
【0132】
これを達成するために、デバイス100および/または流体構成要素20のさまざまな配置を使用することができる。もちろん、特定の実施形態では、以下でさらに説明する配置の2つ以上を組み合わせることができる。
【0133】
特定の実施形態では、垂直拡張の制限は、流体チャネル21の上方および/または下方の1つまたは複数の層に剛性(あるいは非弾性または最小弾性)材料を組み込むことによって達成される。この剛性材料は変形に抵抗し、したがって垂直方向の拡張を制限する。そのような剛性材料の組み込みはまた、展開プロセスのためのデバイスの全体的な可撓性の要件を考慮する必要がある。これは、例えば、剛性材料のストリップ間に可撓性材料の領域を設けることによって達成することができ、ストリップは展開中にデバイスの解きほどき(unrolling)または広がり(unfurling)の方向に対して垂直に配向され、その結果、可撓性材料は、デバイス全体が依然として展開するのに十分に可撓性であることを保証し、剛性ストリップは、そのような拡張を引き起こすのに必要な力を増加させることによって垂直拡張を防止または低減する。
【0134】
上記の変形例では、材料を使用して、異方性特性を有する流体チャネル21の上方および/または下方のデバイス内に層を形成することができ、それにより、材料は、巻き/解きほどきの方向に可撓性であるが、垂直方向(例えば長手方向)に剛性または非弾性である。
【0135】
特定の実施形態では、流体チャネル21自体は、垂直拡張を制限するように構成される。例えば、流体チャネル21は、図7に示すような断面を有してもよい。図7Aは、デバイス100が非膨張(すなわち、圧縮された/集められた)状態(便宜上、チャネルは平面的に示されているが、実際にはその状態で巻かれる/曲げられる可能性が高い)にあるときの流体チャネル21の概略断面図を示している。チャネル21は、上層21cおよび底層21dを物理的に結合し、それによって流体チャネルの垂直拡張を抑制する複数のタイまたはポスト21bによって複数の平行なサブチャネル21aに分割される。タイまたはポスト21bを、チャネル自体の一部として製造することができ、または上層21cと底層21dとの間の結合または溶接によって形成することができる。タイまたはポスト21bは、チャネルに沿って分布する複数のそのような接合を有するスポット接合であってもよく、またはチャネル21の全部または一部に沿って連続していてもよい。
【0136】
図7Bに示されるように、デバイスが膨張すると、垂直方向の流体チャネル21の拡張は、タイまたはポスト21bによって抑制または制限され、したがって、個々のサブチャネル21aは垂直に拡張することができるが、デバイスの全体的な拡張を制御および制限できる。
【0137】
同様に、流体チャネル21の断面が十分に小さい場合、図7に示す個々のサブチャネル21aに関して、垂直拡張を防止または制限することができる。したがって、断面が小さい流体チャネル21の全体的な設計を提供することができる。複数のこのようなチャネルは、互いに平行に配置され、いずれかの端で接合されてもよい。
【0138】
他の実施形態では、デバイスの膨張時に順次充填するように配置された、流体チャネル21に沿って画定された複数の流体チャンバが存在する。圧力制御弁は、チャンバが、次のチャンバに接続する弁が強制的に開かれる前に所定の圧力限界まで膨張するように、チャンバの各々の間に配置される。このプロセスは、デバイス全体にわたって繰り返すことができる。デバイスの垂直拡張は、チャンバの形状の設計と弁によって設定された圧力制限によって制限され得る。
【0139】
デバイス100の構成および使用について説明してきたので、以下のセクションでは、そのようなデバイス100の製造のための選択肢を検討する。説明は、電極アレイ10をどのように形成することができるかについての2つの選択肢を提示し、次いでアレイを流体構成要素20とどのように一体化することができるかについての3つの別個の選択肢を提示する。これらのプロトコルは特定の製造技術を指すが、当業者は、所望の材料などに応じて、他の技術がデバイスを製造するために代替可能であり得ることを理解されよう。そのようなプロセスは、例えばフォトリソグラフィプロセス、キャステッド・エラストマー・プロセス、デジタル製造プロセス(制御された押出、付加製造)を含む。
【0140】
電極アレイの作製
図8のステップ1に示すように、(ガラスまたはシリコンウェハなどの任意の適切な材料の)清浄で剛性の基板41を、可撓性材料42(最終的に電極アレイ10の一部を形成する)の薄層の堆積に使用することができる。適切な可撓性材料には、パリレン、シリコーン、ポリウレタン、他の熱可塑性ポリマーなどが含まれるが、これらに限定されない。可撓性材料42の堆積の前に、解放層を使用して、可撓性材料フィルム42と剛性支持体41との接着を最小限に抑え、最終構造の解放を容易にすることができる。
【0141】
次いで、可撓性材料42の薄層は、電極および導電ラインがパターニングされるベースとして機能することができる(図8、ステップ2-5)。パターニングは、金、イリジウムおよび/または白金などの金属を使用することができるが、これに限定されない。パターニングは、当業者によく知られているリフトオフ技術によって達成され得る。簡単に説明すると、フォトレジスト層43をスピンコーティングし(図8、ステップ2)、ソフトベークし、コンタクトアライナーを使用して(典型的にはUV光によって)露光することができる。次いで、露光されたフォトレジスト43を適切な現像液中で現像することができる(図8、ステップ3)。次いで、接着促進剤金属(典型的にはクロムまたはチタン)の層を堆積させることができる。その層の厚さは、例えば、5nm~10nmであってもよい。その後、電極/導電性材料、例えば金または白金の比較的厚い層44の堆積が続くことができる(図8、ステップ4)。その層44は、例えば100nm以上の厚さであってもよい。異なる金属の多層堆積も行うことができる。最終的な金属パターンは、適切なフォトレジスト除去媒体(水溶液または溶媒/溶媒混合物)中でフォトレジスト43をリフトオフすることによって得られる(図8、ステップ5)。
【0142】
図示されていないが、電極および導電ラインのパターニングは、代わりに、金属層のウェットまたはドライエッチングによって実行され得る。別の可能な金属パターニング技術は、ベースの薄いプラスチック層に接着したコンフォーマル金属箔のレーザアブレーションである。
【0143】
パターニングされた電極アレイの作成に続いて、デバイス100の微細加工は、可撓性材料42の第2のフィルムの堆積を続けることができる(図8、ステップ6)。この層は、電極11のパッシベーション層として機能する。
【0144】
任意選択的に、接着促進剤を使用して、可撓性材料42のベース層とパッシベーション層との間の接着を改善することができる。例として、パリレンの典型的な接着促進剤は、A-174(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)である。あるいは、ベースプラスチック層の表面の粗面化はまた、パッシベーション層の接着性を改善することができる。
【0145】
次に、別のフォトレジスト43をスピンコーティングし、露光し、適切な現像液を使用して現像し(図8、ステップ7)、続いて例えば反応性イオンエッチングを行ってデバイスの外形を画定することができる(図8、ステップ8)。ドライエッチングステップ後の残留フォトレジストは、適切な溶媒を使用して除去することができる。あるいは、デバイスの外形は、例えば、2つの薄いプラスチック層のレーザアブレーションによって画定され得る。
【0146】
次いで、可撓性材料42の第3の犠牲層をこの構造上に堆積させることができる(図8、ステップ9)。接着を最小限に抑えるために、可撓性材料の第2の層と第3の層との間に、接着防止層45、例えば2%v/vの石鹸溶液をスピンコーティングすることができる。
【0147】
次いで、製造は、フォトレジスト44の層の堆積と共に継続して、電極領域を画定することができる(図8、ステップ10)。次に、フォトレジスト44を露光および現像し、続いて、可撓性材料42の犠牲層および不動態化層をドライエッチングすることができる(図8、ステップ11)。次いで、このステップの後に、適切なフォトレジスト除去媒体(水溶液または溶媒/溶媒混合物)中の残りのフォトレジスト43をリフトオフする(図8、ステップ12)。
【0148】
ドライエッチング後、導電性ポリマー46の水性分散体を基板上にスピンコーティングすることができる(図8、ステップ13)。導電性ポリマー46は、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)であってもよく、添加剤(例えば、5体積%のエチレングリコール、0.1体積%のドデシルベンゼンスルホン酸、1重量%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GOPS))を含んでいてもよい。導電性ポリマーの厚さを制御するために、複数の堆積を使用することができる。各堆積の間に、例えば1分のソフトベーク工程(例えば、上記のPEDOT:PSSシステムでは110℃で)を使用してもよい。
【0149】
最後に(図8、ステップ14)、可撓性材料42の第3の犠牲層を除去して、導電性ポリマーのパターニングおよびハードベークを完了する(例えば、140℃で1時間)。
【0150】
上記のプロトコルには、有機材料(すなわち、PEDOT:PSSなどの導電性ポリマー)を使用したパターニングが含まれる。しかしながら、デバイス100を、有機層46なしで製造することができる。その場合、ワークフローはわずかに異なり、図9に示されているのは、上記の図8に関連して説明した通りである。次いで、エッチングされたデバイス外形の作成に続いて、フォトレジスト43の層を適用して電極領域を画定し(図9、ステップ9)、電極領域をエッチングし(図9、ステップ10)、残りのフォトレジスト43を除去することができる。
【0151】
あるいは、(1)ドライエッチング、(2)浸漬コーティング、(3)光重合、または(4)電極表面上で電解重合するなど、PEDOT:PSSなどの有機材料でパターニングする他の方法を使用することができる。
【0152】
電極アレイとマイクロ流体との統合
図8および図9に関連して説明した方法によって作成された電極アレイを統合するための第1の戦略を図10のステップ15’からステップ21’に示す。デバイスを、水溶性犠牲層51でコーティングすることができる(図10、ステップ15’)。これは、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)水溶液であり得る。次いで、デバイスを剛性基板41から解放し、剛性基板41上に下向きの犠牲層51を有する同じまたは異なる剛性基板41上に再配置することができる(図10、ステップ16’)。グリセロールなどの除去可能なパターニング材料52を使用して、マイクロ流体を封止するための可撓性材料の別の層の堆積(図10、ステップ18’)の前に、マイクロ流体構造を画定することができる(図10、ステップ17’)。次いで、マイクロ流体の外形が画定される(図10、ステップ19’)。次いで、除去可能なパターニング材料が除去され(図10、ステップ20’)、チューブがマイクロ流体の入口に配置され固定される。次いで、最終構造が解放される(図10、ステップ21’)。
【0153】
図8および図9に関連して説明した方法によって作成された電極アレイを統合するための第2の戦略を図11のステップ15’’からステップ18’’に示す。マイクロ流体構造は、CADソフトウェアを使用して設計される。薄い可撓性の両面テープ53は、マイクロ流体構造を画定するためにレーザ切断される(例えばCO2レーザ切断)(図11、ステップ15’’)。テープの一方の面は、(支持体41上に保持され得る)可撓性材料42の初期状態の層に恒久的に結合され得る。次に、マイクロ流体を封止するために、生体電気デバイス(例えば、図8および図9に関連して説明した方法に従って作成される)をそれ自体の基板41から解放し(図11、ステップ16’’)、次いでテープの他方の面に位置合わせして結合することができる(図11、ステップ17’’)。次いで、チューブをマイクロ流体の入口に配置および固定することができる。次いで、最終構造を解放することができる(図11、ステップ18’’)。
【0154】
図8および図9に関連して説明した方法によって作成された電極アレイを統合するための第3の戦略を図12のステップ15’’’からステップ19’’’に示す。第2の戦略と同様に、マイクロ流体構造はCADソフトウェアを使用して設計され得、薄い可撓性の両面テープ53がレーザ切断(例えばCO2レーザ切断)されてマイクロ流体構造を画定する(図12、ステップ15’’’)。テープの一方の面は、(支持体41上に保持され得る)可撓性材料42の初期状態の層に恒久的に結合され得る。次いで、マイクロ流体デバイスは、レーザ切断両面テープ53の他方の側に可撓性材料42のさらなる層を位置決めすることによって実現され得る(図12、ステップ16’’’)。両面テープの追加の層をマイクロ流体の上面に配置し(図12、ステップ17’’’)、続いて生体電気デバイスの位置合わせと結合を行うことができる(図12、ステップ18’’’)。チューブをマイクロ流体の入口に配置および固定することができる。次いで、最終構造を解放することができる(図12、ステップ20’’’)。
【0155】
第2および第3の戦略の変形例として、両面テープを使用する代わりに、例えば粘性接着剤の印刷/スタンピング、またはプラスチックのレーザ溶接などの異なる結合戦略を使用することができる。
【0156】
上記の説明は本質的に例示にすぎず、当業者は、開示された実施形態に対する変更および変形が特許請求の範囲内で可能であることを理解されよう。特許請求の範囲は、本発明を規定する。
【0157】
確認:
この研究は、欧州連合のHorizon2020研究およびイノベーションプログラムから、グラント契約No732032の下で資金提供を受けている。
図1
図2
図3A)】
図3B)】
図3C)】
図3D)】
図3E)】
図3F)】
図3G)】
図3H)】
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】