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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】油圧式カム噴射システム
(51)【国際特許分類】
   F02M 57/02 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
F02M57/02 310B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576143
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 FR2020051283
(87)【国際公開番号】W WO2021009466
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】1908158
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1910882
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1913538
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501211925
【氏名又は名称】ラビー,ヴィアニー
【氏名又は名称原語表記】RABHI Vianney
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラビー,ヴィアニー
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA44
3G066BA51
3G066CA09
3G066CB04
3G066CB05
3G066CC14
3G066CC22
3G066CE02
3G066DA09
(57)【要約】
油圧式カム噴射システム(100)は、管状噴射ノズル(54)内に収納された噴射弁(50)を備え、弁(50)の弁ステム(51)と管状噴射ノズル(54)の内面との間にギャップが残されて、噴射可能流体(58)が加圧手段(10)から流れることを可能にする一方で、弁(50)に剛性的に接続された受容ピストン(62)は、一方では、弁(50)を閉じたままにするための噴射可能流体(58)の圧力を受容し、他方では、弁(50)を開くための油圧流体(60)の圧力を受容し、噴射カム(67)は、伝達ピストン(69)および油圧流体(60)によって、受容ピストン(62)を移動させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムを備えた油圧式噴射システム(100)であって、
-弁ステム(51)を備え、かつ拡大部分すなわちチューリップ(52)内で終端する、少なくとも1つの噴射弁(50)であって、後者が、弁密封シート(53)を形成し、前記弁(50)が、前記弁密封面(53)が上に密封的に載ることができる噴射弁シート(55)によって終端された管状噴射ノズル(54)内に完全にまたは部分的に収納されている一方で、加圧手段(10)によって加圧された噴射可能流体(58)が流れることを可能にするように、前記弁ステム(51)と前記管状噴射ノズル(54)の内面との間にギャップが形成されている、少なくとも1つの噴射弁(50)と、
-前記管状噴射ノズル(54)中に設けられ、前記噴射可能流体(58)が内部を通って前記ノズル(54)内に導入される、少なくとも1つのノズル注入口ポート(59)と、
-前記管状噴射ノズル(54)の端部に対して直接または間接的に固定されている、少なくとも1つの受容シリンダ(61)と、
-前記弁ステム(51)に対して固定され、かつ前記受容シリンダ(61)内に収納された、少なくとも1つの受容ピストン(62)であって、前記ピストン(62)が、前記シリンダ(61)内を長手方向に並進して移動することができ、かつ前記管状噴射ノズル(54)の内部体積と連通する噴射可能流体側に軸方向面(63)、および前記受容シリンダ(61)と共に、油圧流体(60)で満たされた可変体積受容チャンバ(71)を形成する油圧流体側に軸方向面(64)を有する、少なくとも1つの受容ピストン(62)と、
-前記受容チャンバ(71)に接続されており、作動油圧導管(78)を介して前記油圧流体(60)によって前記受容ピストン(62)を作動させることを可能にする、少なくとも1つの油圧流体供給デバイス(65)と、を備えることを特徴とする、カムを備えた油圧式噴射システム(100)。
【請求項2】
受容ピストンリターンスプリング(79)が、前記受容ピストン(62)を受容シリンダヘッド(74)のにより近づけるのに役立つことを特徴とする、請求項1に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項3】
透過性ガイド手段(56)が、前記噴射弁(50)および/または前記管状噴射ノズル(54)に対して直接または間接的に固定されており、前記手段(56)が、前記噴射弁(50)を前記管状噴射ノズル(54)中のほぼ中央にあるように維持することを特徴とする、請求項1に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項4】
前記油圧流体供給デバイス(65)が、放出器シリンダ(70)内に収容された放出器ピストン(69)の作動軸方向面(75)と直接または間接的に接触して保持された少なくとも1つのカムプロファイル(68)を有する噴射カム(67)からなり、前記ピストン(69)が、前記作動軸方向面(75)とは反対側に、前記放出シリンダ(70)と共に放出チャンバ(72)を形成する軸方向油圧流体放出面(76)を有し、その上、前記カムプロファイル(68)が、前記噴射カム(67)が駆動源(73)によって回転させられるときに、前記放出シリンダ(70)内で前記放出ピストン(69)を長手方向に並進させて移動させることができることを特徴とする、請求項1に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項5】
前記作動油圧導管(78)が、前記放出器チャンバ(72)を前記受容チャンバ(71)に接続し、前記導管(78)、放出器チャンバ(72)、および受容チャンバ(71)が、油圧流体(60)で満たされていることを特徴とする、請求項4に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項6】
前記カムプロファイル(68)が、少なくとも1つの角度リフトセクタ(15)であって、前記セクタ(15)が前記軸方向作動面(75)と接触しているとき、および前記噴射カム(67)が回転しているときに、前記放出器ピストン(69)を移動させる、少なくとも1つの角度リフトセクタ(15)と、少なくとも1つの角度維持セクタ(16)であって、円形であり、前記セクタ(16)が前記作動軸方向面(75)と接触しているときに、これは、噴射カム(67)が回転しているという事実にかかわらず、前記放出器ピストン(69)を静止する前記噴射カム(67)の回転軸を中心とした、少なくとも1つの角度維持セクタ(16)と、を備えることを特徴とする、請求項4に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項7】
前記カムプロファイル(68)が、前記噴射カム(67)がその中で回転するカムハウジング(81)上で直接または間接的に支持されるロッカーアーム(80)によって、前記作動軸方向面(75)と接触して保持されることを特徴とする、請求項4に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項8】
前記ロッカーアーム(80)が、可動ロッカーポイント(82)を介して前記カムハウジング(81)上に支持され、前記カムプロファイル(68)と前記軸方向作動面(75)との間のその位置が、噴射装置リフトアクチュエータ(83)によって変化することができることを特徴とする、請求項7に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項9】
前記可動ロッカーポイント(82)が、前記カムハウジング(81)中に設けられた変位トラック(85)上で転がりまたはスライドすることができる可動押圧ローラ(84)からなり、前記ローラ(84)が、前記ロッカーアーム(80)の背面上に設けられたロッカートラック(87)と協働することを特徴とする、請求項8に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項10】
前記可動押圧ローラ(84)が、その端部のうちの各々において配向ピニオン(89)を受容し、前記ピニオン(89)が固定されて回転する一方で、同時に各前記ピニオン(89)が、前記カムケーシング(81)上に留められた配向ラック(90)と協働することを特徴とする、請求項9に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項11】
前記可動押圧ローラ(84)が、前記カムハウジング(81)に対して軸方向位置が固定されているウォーム(92)と協働するウォームホイール(91)を受容し、前記ウォーム(92)が、前記噴射装置リフトアクチュエータ(83)によって回転可能に駆動されることを特徴とする、請求項10に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項12】
前記可動押圧ローラ(84)が、前記噴射装置リフトアクチュエータ(83)が前記カムハウジング(81)に対して所定の位置に固定されているが、その長手方向軸を中心に自由に回転できる、変位ねじ(17)をその中で回転させることができる、内側ねじを備えていることを特徴とする、請求項10に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項13】
噴射カム位相シフタ(96)が、前記噴射カム(67)と前記駆動源(73)との間に介在することを特徴とする、請求項4に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項14】
前記噴射弁シート(55)と共に終端する前記管状噴射ノズル(54)の前記端部が、穿孔拡散器(94)によって覆われていることを特徴とする、請求項1に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項15】
前記穿孔拡散器(94)の内壁の少なくとも一部が、円筒形であり、それ自体と前記チューリップ(52)の外周面との間に小さな隙間を形成し、それによって前記拡散器(94)が前記透過性ガイド手段(56)を形成するようになっていることを特徴とする、請求項14に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項16】
チャージポンプ(7)が、チャージチェック弁(8)を介して前記作動油圧導管(78)内に油圧流体(60)を導入するのに役立ち、前記油圧流体(60)が、油圧流体タンク(11)から来ることを特徴とする、請求項1に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項17】
排水導管(99)に接続された少なくとも1つの排水孔(97)が、前記受容シリンダ(61)内に開口し、前記噴射可能流体側上の前記軸方向面(63)、および前記油圧流体側上の前記軸方向面(64)が、前記受容ピストン(62)の位置にかかわらず、前記孔(97)のいずれかの側に常に軸方向に位置決めされたままであることを特徴とする、請求項1に記載の油圧式噴射カムシステム。
【請求項18】
前記受容ピストン(62)が、前記排水孔(97)と連通する排水溝(98)を有することを特徴とする、請求項17に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項19】
前記受容ピストン(62)が、前記噴射可能流体側の前記軸方向面(63)を受容し、前記弁ステム(51)に対して固定された第1の本体と、前記第1の本体に対して固定されてもよく、または固定されなくてもよく、前記油圧流体側の前記軸方向面(64)を受容する、第2の本体と、によって構成されており、前記排水溝(98)を形成する前記本体のうちの一方、他方、または両方に、外側ショルダ(20)が設けられていることを特徴とする、請求項18に記載の油圧式噴射カムシステム。
【請求項20】
前記カムプロファイル(68)と前記作動軸方向面(75)との間の前記可動ロッカーポイント(82)の最大変位範囲が、少なくとも1つのストローク終了停止部(19)によって決定されることを特徴とする、請求項8に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項21】
前記変位トラック(85)が、少なくとも1つのトラック配向ボールジョイント(18)によって前記カムハウジング(81)に固定的に接続されていることを特徴とする、請求項9に記載のカムを備えた油圧式噴射システム。
【請求項22】
前記受容ピストン(62)が、前記噴射可能流体側の前記軸方向面(63)を受容し、前記弁ステム(51)に対して固定された、少なくとも1つの第1の本体と、前記第1の本体に対して固定されてもよく、または固定されなくてもよく、前記油圧流体側の前記軸方向面(64)を受容する、少なくとも1つの第2の本体と、で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の油圧式噴射カムシステム。
【請求項23】
前記受容ピストン(62)が、前記本体のうちの一方、他方、または両方に配置された外側ショルダ(20)を備え、前記ショルダ(20)が、前記受容シリンダ(61)中に配置されており排水導管(99)に接続された少なくとも1つの排水孔(97)と連通する排水溝(98)を形成することを特徴とする、請求項22に記載の油圧式噴射カムシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、とりわけ、空気および容易に燃焼可能な燃料の混合物からなるパイロットチャージを弁点火プレチャンバ内に、またはより付随的には、シャトル電極を備えたスパークプラグによって形成されるプレチャンバ内に噴射するように設計された、カムを備えた油圧式噴射システムである。
【0002】
該パイロットチャージがスパークによって点火されるとき、該プレチャンバは、該チャンバに含まれている主チャージに点火するために、内燃機関の燃焼チャンバ内に熱いガスフレアを噴出する。
【0003】
2018年7月13日にNo.3061743の下で公開された、弁点火プレチャンバに関する、2017年1月12日のフランス特許出願第FR1750264号が知られている。また、2019年5月17日にNo.3060222の下で公開された、シャトル電極スパークプラグに関するフランスの特許も知られている。いずれの該出願も出願人に帰属している。
【0004】
該出願および該特許は、共通して、同様に出願人に帰属する改良のための2つのフランス特許出願の主体となっている。2018年9月10日付の最初の該出願は、No.1858111で登録され、弁のための磁気リターンデバイスに関するものである。第2の該出願は、2019年5月13日にNo.1904961で登録され、アクティブプレチャンバを備えた点火インサートに関するものである。
【0005】
前述の特許出願および特許に関連する発明は、主チャージが新鮮な空気または予め冷却された再循環排気ガスで大きく希釈されている、あらゆる任意の種類の任意の往復式スパーク点火機関に主に適用される。
【0006】
安定した、急速かつ十分に完全な燃焼の対象となり、高希釈された該主チャージは、スパーク点火単独の機関と比較して、それを受容する該機関の平均および/または最大熱力学的効率を増加させ、したがって、生成された同じ作業に対する該機関の燃料消費を減少させる。
【0007】
安定した、急速かつ十分に完全な燃焼のこの目的を達成するために、該発明は、燃料消費の予想される削減が得られないことを伴わない、強力、安定、かつ安全な点火を生成するように設計されている。
【0008】
上述の特許および特許出願に関する発明は、空気および燃料の混合物をプレチャンバ内に直接噴射する噴射装置を必要とし、燃料は先に圧縮機によって加圧されていることが分かる。
【0009】
該噴射装置は、任意の往復式スパーク点火機関のシリンダヘッド内に統合されるために、可能な限りコンパクトであり、該シリンダヘッドに含まれている吸気ダクト、排気ダクト、または冷却水チャンバを極度に干渉することないようにしなければならないことに留意されたい。
【0010】
コンパクトであることに加えて、該噴射装置は、長さが大きく、直径が小さいノズルを有利に有する必要があることが、フランス特許出願第1904961号から分かる。この特定の構成は、該噴射装置が、シリンダヘッドの機能組織および体積に致命的な(redhibitory)方法で干渉することなく、スパーク点火を伴う任意の往復式内燃機関の該シリンダヘッド内に統合されることができるように、必要である。これは、特に、大きな長さの噴射装置針を備えた噴射装置の提供を意味し、その高質量は、強力なアクチュエータを必要とする。
【0011】
問題の噴射装置は、高いダイナミクスおよび透過性を提供しなければならない。これらの品質は、内燃機関の速度および負荷を問わず、かつ比較的低く提供される噴射装置の注入口の空気および燃料混合物の圧力にかかわらず、指定された時間内にプレチャンバ内にパイロットチャージを噴射できるようにするために必要である。
【0012】
これは、ほとんどのスパーク点火を伴う往復式内燃機関は、その温度が100℃程度に維持された水回路によって冷却されるためである。このことから、好ましくは、噴射装置を加熱するための任意の追加のデバイスを回避するために、フランス特許出願第FR1750264号およびフランス特許第3060222号の発明で提供される空気および燃料混合物噴射装置もまた、100℃を超えない温度に維持されなければならない。
【0013】
しかしながら、非限定的な例として、噴射装置の温度が100℃を超えない場合、およびそれが噴射する空気-燃料混合物の豊富度が1.2または1.3である場合、該噴射装置の注入口での該混合物の圧力は、50barを超えてはならない。
【0014】
実際、上記のこの限界圧力を超えると、混合物に含まれている燃料の一部が噴射装置の内壁上で凝縮し、ガス状態から液体状態に移行することとなり得る。この飽和蒸気限界圧力を超えた結果、ガス状態のままのパイロットチャージのごく一部は、より少ない豊富度であり得、着火が困難である可能性があり、その燃焼は潜在的に不安定であり得る。さらに、豊富な混合物の燃焼により生じる反応性の高い化学種は、もはや所望の量が生成されなくなり得、主チャージのフレア点火効率が低下し得る。
【0015】
つい先に述べたことを考慮すると、100℃で維持された豊富度1.2~1.3の空気-燃料混合物を噴射することができるようにするために、フランス特許出願第FR1750264号およびフランス特許第3060222号に記載されているプレチャンバ内にパイロットチャージを噴射しなければならない噴射装置の注入口における圧力は、50barを超えてはならない。この比較的低い圧力は、噴射装置の透過性が高いことで補償する必要がある。
【0016】
この高い透過性を達成するために、噴射装置の直径を大きくしすぎることはできない。これにより、噴射装置がかさばりすぎる可能性があるためである。最も適切な解決策は、50~60マイクロメートル程度の直接的なガソリン噴射装置のストロークと比較して、噴射装置針のストロークを大幅に増加させることである。
【0017】
問題は、針ストロークを増加させるには、針を移動させるソレノイドアクチュエータのサイズおよび電力を比例的に増加させるよりも多くのことが必要であることである。実際には、同じ期間内に針をさらに上げると、針の上昇および下降の平均速度が増加する。このリフトおよび静止の速度の増加の反響は、往復式内燃機関自体が高速で稼働しているソレノイドアクチュエータのサイジングに対してより大きくなる。
【0018】
さらに、該針のストロークが増加すると、該針を作動させるソレノイドベーンが、該ベーンが協働する固定子から離れるように移動する。該ベーンによって該針に及ぼされる力は、該ベーンと該固定子との間のおよそ距離の二乗に起因して減少するため、ソレノイドアクチュエータの構成コイルは、非常に強力な磁場を生成しなければならない。これは、なおさら、針がそのシートから離れて移動するにつれて、所与の時間内に該針をそのシートに戻すことができる強力なリターンスプリングを提供しなければならない。
【0019】
したがって、針のストロークを増加させることは、その電流要件が内燃機関の効率を損ない、そのサイズおよび重量が機関のシリンダヘッド中で利用可能なギャップとほとんど一致しない、アクチュエータコイルにつながる。さらに、そのようなアクチュエータコイルのコスト価格は、自動車大量生産の経済的制約と一致しない可能性があり得る。
【0020】
さらに、そのシート上の該針の高静止速度は、該針および該シートの耐久性を損なう過度の電力ショックを生成し得る。噴射装置は、潤滑特性がほとんど存在しない低密度のガス混合物を噴射するため、この衝撃による損傷はますます大きくなり得る。
【0021】
これらの様々な問題を解決するために、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、フランス特許出願第FR1750264号およびフランス特許第3060222号に開示されている発明と関連して、および特定の実現様式に従って、以下を可能にする。
-往復式内燃機関のシリンダヘッド内に容易に統合される長さおよび小径のノズルを備えた、パイロットチャージ噴射装置を製造する。
-パイロットチャージ噴射装置が、該噴射装置の注入口における空気および燃料混合物の限られた圧力、例えば、50barにもかかわらず、往復式内燃機関の動作範囲全体にわたってプレチャンバの充填を確実にするように、該パイロットチャージ噴射装置に、その小さな直径にもかかわらず、従来の直接的ガソリン噴射装置の数十倍の通路断面、および透過性を与える、大きな噴射装置針リフトを提供する。
-高い針リフトにもかかわらず、かつ、該噴射装置が、実質的に存在しない潤滑特性を有する低密度ガス混合物を噴射する事実にもかかわらず、長い寿命を有するパイロットチャージ噴射装置を製造する。
-自動車業界での大量生産に特に適したコスト価格のパイロットチャージ噴射装置を製造する。
-該アクチュエータを、任意の往復式内燃機関のシリンダヘッド内またはその近くに容易に収納できるように、パイロットチャージ噴射装置針を移動させるアクチュエータの重量およびサイズを劇的に減らす。
【0022】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの用途は、フランス特許出願第FR1750264号およびフランス特許第3060222号に関連する発明に限定されない。
【0023】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、特に、該噴射装置が、任意の種類の熱機関で使用されるか、または適用の制限なしに任意の他の機械で使用されるかにかかわらず、弁を使用して、または使用せずに任意のアクティブプレチャンバ内にガスまたは液体を噴射することができ、または、純粋なまたは化合物のガスおよび/もしくは液体を噴射する当業者に従った任意の直接または間接的な噴射装置に取って変わることができる。
【0024】
カムを備えた油圧式噴射システムは、
-弁ステムを備え、かつ拡大部分すなわちチューリップ内で終端する、少なくとも1つの噴射弁であって、後者が、弁密封面を形成し、該弁が、弁密封面が上に密封的に載ることができる噴射弁シートによって終端された管状噴射ノズル内に完全にまたは部分的に収納されている一方、加圧手段によって加圧された噴射可能流体が流れることを可能にするように、弁ステムと管状噴射ノズルの内面との間にギャップが形成されている、少なくとも1つの噴射弁と、
-管状噴射ノズル中に設けられ、噴射可能流体が内部を通って該ノズル内に導入される、少なくとも1つのノズル注入口ポートと、
-管状噴射ノズルの端部に対して直接または間接的に固定されている、少なくとも1つの受容シリンダと、
-弁ステムに対して固定され、かつ受容シリンダ内に収納された、少なくとも1つの受容ピストンであって、該ピストンが、該シリンダ内で長手方向に並進して移動することができ、かつ管状噴射ノズルの内部体積と連通する噴射可能流体側に軸方向面、および受容シリンダと共に、油圧流体で満たされた可変体積受容チャンバを形成する油圧流体側に軸方向面を有する、少なくとも1つの受容ピストンと、
-受容チャンバに接続されており、作動油圧導管を介して油圧流体によって受容ピストンを作動させることを可能にする、少なくとも1つの油圧流体供給デバイスと、を備える。
【0025】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、受容ピストンを受容シリンダヘッドにより近づけるのに役立つ、受容ピストンリターンスプリングを備える。
【0026】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、噴射弁および/または管状噴射ノズルに対して直接または間接的に固定されている透過性ガイド手段を備えており、該手段が、噴射弁を管状噴射ノズル中のほぼ中央にあるように維持する。
【0027】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、放出器シリンダ内に収納された放出器ピストンによって提供される作動軸方向面と直接または間接的に接触して保持された少なくとも1つのカムプロファイルを有する噴射カムからなる、油圧流体供給デバイスを備え、該ピストンが、作動軸方向面とは反対側に、放出器シリンダと共に放出チャンバを形成する軸方向油圧流体放出面を有する一方、カムプロファイルが、噴射カムが駆動源によって回転させられるときに、放出器シリンダ内で放出器ピストンを長手方向に並進させて移動させることができる。
【0028】
本発明に従うカムを備えた油圧式噴射システムは、放出器チャンバを受容チャンバに接続している作動油圧導管を備え、導管、放出器チャンバ、および受容チャンバが、油圧流体で満たされている。
【0029】
本発明による油圧式噴射カムシステムは、カムプロファイルを備え、カムプロファイルは、少なくとも1つの角度リフトセクタであって、該セクタが作動軸方向面と接触しているとき、および噴射カムが回転しているときに、放出器ピストンを移動させる、少なくとも1つの角度リフトセクタと、少なくとも1つの角度維持セクタであって、円形であり、該セクタが作動軸方向面と接触しているときに、これは、噴射カムが回転しているという事実にかかわらず、放出器ピストンを静止する該噴射カムの回転軸を中心とした、少なくとも1つの角度維持セクタと、を備える。
【0030】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、カムプロファイルを備え、カムプロファイルは、噴射カムがその中で回転するカムハウジング上で直接または間接的に支持されるロッカーアームによって、作動軸方向面と接触して保持されている。
【0031】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、ロッカーアームを備え、ロッカーアームは、可動ロッカーポイントを介してカムハウジング上に支持され、カムプロファイルと作動軸方向面との間のその位置が、噴射装置リフトアクチュエータによって変化することができる。
【0032】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、可動ロッカーポイントを備え、可動ロッカーポイントは、カムハウジング中に設けられた変位トラック上で転がりまたはスライドすることができる可動押圧ローラからなり、該ローラが、ロッカーアームの背面上に設けられたロッカートラックと協働する。
【0033】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、可動押圧ローラを備え、可動押圧ローラは、その端部のうちの各々において配向ピニオンを受容し、該ピニオンが固定されて回転し、該ピニオンのうちの各々が、カムケーシング上に留められた配向ラックと協働する。
【0034】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、可動押圧ローラを備え、可動押圧ローラは、カムハウジングに対して軸方向位置が固定されているウォームと協働するウォームホイールを受容し、該ウォームが、噴射装置リフトアクチュエータによって回転可能に駆動される。
【0035】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、可動押圧ローラを備え、可動押圧ローラは、噴射装置リフトアクチュエータがカムハウジングに対して所定の位置に固定されているが、その長手方向軸を中心に自由に回転できる変位ねじを、その中で回転させることができる、内側ねじを備えている。
【0036】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、噴射カムと駆動源との間に介在している噴射カム位相シフタを備える。
【0037】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、その端部が噴射弁シートと共に終端し、穿孔拡散器によって覆われている、管状噴射ノズルを備える。
【0038】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、穿孔拡散器を備え、穿孔拡散器の内壁の少なくとも一部が、円筒形であり、それ自体とチューリップの外周面との間に小さな隙間を形成し、それによって該拡散器が透過性ガイド手段を形成する。
【0039】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、チャージポンプを備え、チャージポンプは、フィードチェック弁を介して作動油圧導管内に油圧流体を導入するのに役立ち、該油圧流体が、油圧流体タンクから来る。
【0040】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、排水導管に接続された少なくとも1つの排水孔を備え、少なくとも1つの排水孔は、受容シリンダ内に開口し、噴射可能流体側上の軸方向面、および油圧流体側上の軸方向面が、受容ピストンの位置にかかわらず、該孔のいずれかの側に常に軸方向に位置決めされたままである。
【0041】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、排水孔と連通する排水溝を有する、受容ピストンを備える。
【0042】
本発明による油圧式噴射カムシステムは受容ピストンを備え、受容ピストンは、噴射可能流体側の軸方向面を受容し、弁ステムに対して固定された第1の本体と、該第1の本体に対して固定されてもよく、または固定されなくてもよく、油圧流体側の軸方向面を受容する、第2の本体と、によって構成されており、排水溝を形成する該本体のうちの一方、他方、または両方に、外側ショルダが設けられている。
【0043】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、少なくとも1つのストローク終了停止部によって決定される、カムプロファイルと作動軸方向面との間の可動ロッカーポイントの最大変位範囲を備える。
【0044】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、少なくとも1つのトラック配向ボールジョイントによってカムハウジングに固定的に接続されている、変位トラックを備える。
【0045】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、受容ピストンを備え、受容ピストンは、噴射可能流体側の軸方向面を受容し、弁ステムに対して固定された、少なくとも1つの第1の本体と、該第1の本体に対して固定されてもよく、または固定されなくてもよく、油圧流体側の軸方向面を受容する、少なくとも1つの第2の本体と、で構成される。
【0046】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムは、受容ピストンを備え、受容ピストンは、一方、他方、または両方の本体上に配置された外側ショルダを備え、該ショルダが、受容シリンダ中に配置されており排水導管に接続された少なくとも1つの排水孔と連通する排水溝を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下の説明は、本明細書に添付され、非限定的な例として提供される図面と共に、本発明、その特徴、およびそれが提供する可能性のある利点のより良い理解を提供する。
【0048】
図1】フランス特許出願第FR1750264号による弁点火プレチャンバ、およびフランス特許出願第3060222号によるアクティブプレチャンバを備えた点火インサートを備えた、内燃機関のシリンダヘッドに設置することができるように、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの概略断面図である。
図2】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムのカムプロファイルによって収容され得るものとして角度リフトおよびセクタの維持を示す概略断面図である。
図3】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの噴射カムおよび放出ピストンの動作を示す概略断面図であって、該カムは、可動押圧ローラの位置に従ってレバーアームを変化させることができるロッカーアームと協働しており、該位置は、ウォームおよびウォームホイールを介して電動ステッピングモータによって制御される、概略断面図である。
図4】同上。
図5】同上。
図6】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの噴射カム、およびカムが協働する図3~5に示されている主な機能構成要素の三次元図である。
図7】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの管状噴射ノズル、およびそれが収容する、またはそれと協働する主な構成要素の三次元図である。
図8】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの管状噴射ノズル、およびそれが収容する、またはそれと協働する主な構成要素の三次元断面図である。
図9】受容ピストンおよび受容ピストンリターンスプリングを備えた、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの噴射弁の三次元図である。
図10】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの噴射ノズルを終端させるために提供され得る、穿孔拡散器の三次元図である。
図11】フランス特許出願番号FR1750264による弁点火プレチャンバ、およびフランス特許出願第3060222号によるアクティブプレチャンバが備える点火インサートを備えた内燃機関のシリンダヘッドに設置することができるように、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの管状噴射ノズルと、それが収容する、またはそれと協働する主要構成要素の概略断面図である。
図12】本発明によるカムを備えた油圧式噴射システムの噴射カムの三次元透視図であり、その可動押圧ローラは、噴射装置リフトアクチュエータが変位ねじをその中で回転させることができる、内側ねじを備えている。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1~12は、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100、その構成要素、変形例、および付属品の様々な詳細を示している。
【0050】
図1および図7~11に示されるように、カムを備えた油圧式噴射システム100は、弁ステム51を備えかつ弁密封面53を形成する拡張端部すなわちチューリップ52内で終わる、少なくとも1つの噴射弁50を備える。
【0051】
図1および図7~11において、弁50は、弁密封面53をその上に密封的に取り付けることができる噴射弁シート55によって終端された管状噴射ノズル54内に完全にまたは部分的に収容されており、一方で、弁ステム51と管状噴射ノズル54の内面との間にギャップが形成されていることによって、加圧手段10によって加圧された噴射可能流体58が通過することを可能にすることが分かる。さらに、本発明に従ってカムを備える油圧式噴射システムを製造する特定の方法によって、弁密封面53は、噴射弁シート55が円錐形である間、切頂球体の形状を示し得ることに留意されたい。
【0052】
図8、9、10、および11において、カムを備えた油圧式噴射システム100は、噴射弁50および/または管状噴射ノズル54に対して直接または間接的に固定された透過性ガイド手段56を提供することが分かる。該手段56は、該弁50の該ノズル54に対する軸方向位置にかかわらず、噴射弁50を管状噴射ノズル54のほぼ中央にあるように維持する。
【0053】
図8、9、10および11において、透過性ガイド手段56は、噴射可能流体58が噴射弁50と管状噴射ノズル54との間を流れることを可能にする、少なくとも1つのガス通路チャネル57を備え得ることに留意されたい。
【0054】
図7および8ならびに11において、カムを備えた油圧式噴射システム100は、ノズル注入口ポート59であって管状噴射ノズル54中に配置されており、かつ噴射可能流体58が加圧手段10を該ポート59に接続している噴射可能流体供給導管66を介して搬送された後、内部を通って該ノズル54内に導入される、ノズル注入口ポート59を備えることに留意されたい。
【0055】
噴射可能流体供給導管66とノズル注入口ポート59との間の接続は、溶接、圧着、それ自体既知の「バンジョー」継手によって、または任意の種類の接続ブロックを使用することによって行うことができることに留意されたい。
【0056】
さらに、噴射可能流体供給導管66は、電気抵抗によって、水もしくは油などの熱伝導流体の外部循環によって、または任意の他の手段によって加熱するための加熱手段を備え得る。該加熱手段は、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の低温環境での起動中に、噴射可能流体供給導管66の温度上昇を加速させることを有利に可能にする。
【0057】
これらの手段、または同様の手段はまた、作動油圧導管78および/または管状噴射ノズル54にも適用されてもよい。
【0058】
図8および11に特に示されているように、カムを備えた油圧式噴射システム100は、噴射弁シート55を受容する該ノズル54の端部の反対側に位置する管状噴射ノズル54の端部に対して直接または間接的に固定された、少なくとも1つの受容シリンダ61を備え、該受容シリンダ61は、該ノズル54の延長部中に位置決めされている。
【0059】
また、図1、8、9、および11は、カムを備えた油圧式噴射システム100が、弁ステム51に対して固定されておりかつ受容シリンダ61内に収納された少なくとも1つの受容ピストン62を備え、該ピストン62は、該シリンダ61内で長手方向に並進して移動することが可能であり、管状噴射ノズル54の内部体積と連通する噴射可能流体側の軸方向面63と、受容シリンダ61および該シリンダ61を終端する受容シリンダヘッド74と共に、可変体積の受容チャンバ71を形成する油圧流体側の軸方向面64と、を有することを示している。
【0060】
受容ピストン62は、1つ以上の部品で作製することができ、任意の種類の密封材、特に低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有する複合密封材を受容することができることに留意されたい。この特定の構成は、放出器ピストン69に適用することもできる。
【0061】
図1~6および図12において、カムを備えた油圧式噴射システム100は、放出器シリンダ70内に収納された放出器ピストン69の作動軸方向面75と直接または間接的に接触して保持された少なくとも1つのカムプロファイル68を有する、少なくとも1つの噴射カム67からなる油圧流体供給デバイス65を備えることが分かる。
【0062】
特に図3~6および図12において、該ピストン69は、作動軸方向面75の反対側に、放出シリンダ70と共に放出チャンバ72を形成する軸方向油圧流体放出面76、および該シリンダ70を終端する放出シリンダヘッド77を有し、その上、カムプロファイル68は、噴射カム67が駆動源73によって回転させられるときに、放出シリンダ70内で放出ピストン69を長手方向に並進させて移動させることができることに留意されたい。
【0063】
駆動源73は、電気モータ、油圧モータ、内燃機関2のクランクシャフト、または噴射カム67がシャフト、ベルトもしくは歯付きベルト、チェーン、またはスプロケットであるかにかかわらず、任意の種類の変速機によって接続される任意の他の駆動源73であってもよい。
【0064】
噴射カム67が内燃機関2のクランクシャフトによって駆動される場合、それは該機関2のカムシャフトに対して固定されるか、もしくは加圧手段10を形成する空気圧縮機の中央シャフトの端部に取り付けられるか、または該機関2のタイミングベルトによって駆動される専用プーリを受容し得ることに留意されたい。
【0065】
特に図1において、カムを備えた油圧式噴射システム100が、放出器チャンバ72を受容チャンバ71に接続している少なくとも1つの作動油圧導管78を備え、該導管78、放出器チャンバ72、および受容チャンバ71が、油圧流体60で満たされていることが分かる。
【0066】
図8、9、および11は、受容ピストン62を受容シリンダヘッド74により近づけるのに役立ち、その結果、弁密封シート53の噴射弁シート55との接触が維持されるのに役立つ、受容ピストンリターンスプリング79が提供され得ることを示している。
【0067】
該スプリング79は、例えば、受容シリンダ61および/または管状噴射ノズル54内に収納され、かつ螺旋状であってもよく、もしくはスプリングワッシャの積み重ねによって形成されてもよく、または当業者に既知の任意の他の種類であってもよい。同様のリターンスプリングは、放出器ピストン69を放出器シリンダヘッド77に近づけるのに役立つことに留意されたい。
【0068】
図2が明確に示すように、カムプロファイル68は、少なくとも1つの角度リフトセクタ15であって、該セクタ15が作動軸方向面75と接触し、噴射カム67が回転しているときに、放出器ピストン69を移動させる少なくとも1つの角度リフトセクタ15と、少なくとも1つの角度維持セクタ16であって、円形であり、該セクタ16が作動軸方向面75と接触しているときに、これは、噴射カム67が回転しているという事実にかかわらず、放出器ピストン69を静止する該噴射カム67の回転軸を中心とした、少なくとも1つの角度維持セクタ16と、を備えることができる。
【0069】
維持角度セクタ16で見出されるものと、リフト角度セクタ15で見出される最大半径との間のカムプロファイル68の半径の差は、カムプロファイル68のレベルで噴射カム67によって生成されるリフトLを決定することに留意されたい。可能な機械的および/または油圧レバーアームを考慮に入れると、噴射弁50のより高いまたはより低いリフトは、該L値に対応する。
【0070】
図1図3~6および図12に示す本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の変形実施形態では、カムプロファイル68は、噴射カム67がその中で回転するカムハウジング81を直接または間接的に圧迫するロッカーアーム80によって、作動軸方向面75と接触して保持され得る。
【0071】
図1図3図6、および図12において、有利には、ロッカーアーム80が、該ロッカーアーム80と該カムプロファイル68との間の界面における摩擦損失を制限する既知の押圧ローラ86自体によって、カムプロファイル68と接触した状態で維持され得ることに留意されたい。
【0072】
また、図1図3図6、および図12において、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の特定の実施形態によれば、ロッカーアーム80は、ロッカーアームリターンスプリング14によって、カムプロファイル68または作動軸方向面75のいずれかと接触して保持され得ることに留意されたい。
【0073】
さらに、ロッカーアーム80は、該ロッカーアーム80がその動作ロッキング軸に垂直な軸を中心に回転できないような方法で、カムハウジング81に配置された図示されていないガイド手段と協働することができる。
【0074】
図1図3図6、および図12において、ロッカーアーム80は、カムプロファイル68と作動軸方向面75との間のその位置を噴射装置リフトアクチュエータ83によって変更することができる、可動ロッカーポイント82を介してカムハウジング81を圧迫することができることが分かる。
【0075】
図1図3~6、および図12から容易に推測できるように、同じカムプロファイル68について、可動ロッカーポイント82の位置は、作動軸方向面75の変位量、したがって、それが協働する噴射弁シート55に対する噴射弁50のリフト高さを決定する。
【0076】
したがって、管状噴射ノズル54が、噴射カム67の所与の回転速度および噴射可能流体供給導管66内の噴射可能流体58の所与の圧力に対して一定の圧力でのボリュームに開く場合、噴射弁50のリフト高さが大きいほど、弁密封面53と噴射弁シート55との間に形成される通路を介して管状噴射ノズル54から排出される噴射可能流体58の量が大きくなる。
【0077】
図1図3~6、および図12は、可動ロッカーポイント82が、カムハウジング81に形成された変位トラック85上で転がりまたはスライドすることができる可動押圧ローラ84によって有利に形成され得、ローラ84は、ロッカーアーム80の背面上のロッカートラック87と協働することを示している。
【0078】
図1図3~6、および図12において、作動軸方向面75に対して固定されたボールジョイント88の周りに、ロッカーアーム80が有利に関節接合することができることが分かる。改良として、軸受ローラ86は、外側バレル形状を有することができる。この特定の構成によれば、変位トラック85および傾斜トラック87は、完全に平坦であり得、可動押圧ローラ84は、完全に円筒形であり得る。この非限定的な構成は、外側軸方向表面が湾曲しているカムプロファイル68を生成する必要性を回避しながら、上記に列挙される様々な部分84、85、86、87間のどの超静的な関係でも回避することを可能にする。
【0079】
図6は、可動押圧ローラ84がその端部のうちのそれぞれで配向ピニオン89を受容することができ、該ピニオン89は固定されて回転し、同時に各該ピニオン89は、カムハウジング81に対して固定された配向ラック90と協働することを明確に示している。
【0080】
この特定の構成は、可動押圧ローラ84を、それが協働する変位トラック85に対して垂直に保つことを可能にし、これは該トラック85に対する該ローラ84の位置にかかわらない。
【0081】
図6はまた、可動押圧ローラ84が、カムハウジング81に対して軸方向位置が固定されているウォーム92と協働するウォームホイール91を受容することができることを明確に示している。この場合、該ウォーム92は、図1および図3~6に示すように、任意の種類のギヤボックスを有し、または有さず、ECUによって制御される電動ステッピングモータ93であり得る、噴射装置リフトアクチュエータ83によって回転させられ得る。
【0082】
電動ステッピングモータ93ならびに任意の噴射装置リフトアクチュエータ83は、ベルト、チェーン、スプロケット、または当業者に既知の任意の他の種類による変速機を介して、ウォームねじ92に直接接続され得ることに留意されたい。
【0083】
したがって、噴射装置リフトアクチュエータ83がウォームねじ92を回転させると、可動押圧ローラ84は、それが協働する変位トラック85に対して移動し、カムハウジング81に対する可動ロッカーポイント82の位置の変位をもたらす。これにより、管状噴射ノズル54から排出される噴射可能流体58の量を調整することが可能になる。
【0084】
1つおよび同一の可動押圧ローラ84は、いくつかのロッカーアーム80と協働してレバーアームを同時に変化させることができるか、または1つおよび同一の電動ステッピングモータ93は、いくつかの可動押圧ローラ84を移動させることができることに留意されたい。
【0085】
あるいは、図12に示すように、可動押圧ローラ84は、噴射装置リフトアクチュエータ83が、カムハウジング81に所定の位置に固定されているが、その長手方向軸を中心に自由に回転する変位ねじ17を回転させることができ、それによって、可動押圧ローラ84を変位トラック85上でスライドさせる、ねじ込み穴を備えることができる。
【0086】
図1において、噴射カム位相シフタ96は、噴射カム67と駆動源73との間に介在することが可能であり、該位相シフタ96は、例えば、該源73が内燃機関2のクランクシャフトからなる場合に、噴射カム67が放出ピストン69に与える動きを駆動源73に対して角度的に前進または遅延させることを可能にすることが示されている。
【0087】
噴射カム位相シフタ96の原理は、自動車内燃機関の油圧または電動カムシャフト位相シフタの原理に類似し得ることに留意されたい。
【0088】
図10において、噴射弁シート55で終わる管状噴射ノズル54の端部は、噴射可能流体58のジェットを作り出すように、弁密封面53と噴射弁シート55との間に形成された通路を介して管状噴射ノズル54から排出され、1つ以上の噴出孔95を通る、噴射可能流体58を強制する、穿孔拡散器94で覆われ得ることが示されている。
【0089】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100のこの変形例によれば、穿孔拡散器94の内壁の少なくとも一部は円筒形であってよく、それ自体とチューリップ52の外周面との間に小さな隙間を形成し、それによって該拡散器94が透過性ガイド手段56を形成するようにしてもよい。
【0090】
最後に、図1は、チャージチェック弁8を介して作動油圧導管78内に油圧流体60を導入するのに役立つチャージポンプ7が提供され得、該油圧流体60は、油圧流体タンク11から来ることを示している。
【0091】
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の特定の実施形態によれば、チャージポンプ7は、内燃機関2の潤滑ポンプによって構成され得るが、油圧流体タンク11は、該機関2のオイルサンプによって構成されることに留意されたい。作動油圧導管78は、それ自体既知の圧力リミッタおよびパージデバイスを備えてもよいことにさらに留意されたい。
【0092】
図11に示すように、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100は、排水導管99に接続されかつ受容シリンダ61内に開口する、少なくとも1つの排水孔97を受容できることが分かる。この場合、噴射可能流体側の軸方向面63および油圧流体側の軸方向面64は、受容ピストン62の位置にかかわらず、該孔97のいずれかの側に常に軸方向に位置決めされたままであることを理解されたい。
【0093】
この特定の構成によれば、受容ピストン62は、排水孔97と連通する排水溝98を有し、一方では、該溝98は、受容ピストン62と受容シリンダ61との間に噴射可能流体側の軸方向面63から漏出する噴射可能流体58を収集し、他方では、該ピストン62と該シリンダ61との間に油圧流体側軸方向面64から漏出する油圧流体60および/または収集を集め、したがって、該噴射可能流体58、該油圧流体60および/または該空気を、排水導管99を介して放出することができる。
【0094】
それによって、排水溝98、排水ポート97、および排水導管99は、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の適切な機能に害を及ぼすあらゆる空気の入った作動油圧導管78を永久的にパージすることに留意されたい。
【0095】
図11において、受容ピストン62は、噴射可能流体側の軸方向面63を受容し、弁ステム51に対して固定された第1の本体と、該第1の本体に対して固定され得、または固定され得ず、油圧流体側の軸方向面64を受容し得る第2の本体と、で構成され得、排水溝98を形成する該本体のうちの一方、他方、または両方に外側ショルダ20が設けられ得ることが分かる。
【0096】
図12において、カムプロファイル68と作動軸方向面75との間の可動ロッカーポイント82の最大変位範囲は、とりわけ、噴射装置リフトアクチュエータ83によって使用され得、可動ロッカーポイント82の位置を再調整し、かつ弁密封面53と噴射弁シート55との間に形成された通路を介して管状噴射ノズル54から排出される正しい噴射可能流体58の量を調整するために使用され得る幾何学的基準位置を構成する、少なくとも1つのストローク終了停止部19によって有利に決定され得ることに留意されたい。
【0097】
図12はまた、変位トラック85を、該トラック85がロッカーアーム80の配向に適合することを可能にする少なくとも1つのトラック配向ボールジョイント18によって、カムハウジング81に対して固定されるようにすることができ、該配向は、該ロッカーアーム80の幾何学的環境によって課されることを示している。
【0098】
図12に示すように、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の変形実施形態によれば、カムハウジング81内のトラックボールジョイント18の軸方向位置は、調整ねじ21によって調整することができる。
【0099】
本発明の動作:
本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100の動作は、図1~12から容易に理解される。
【0100】
該システム100の動作を詳細に説明するために、ここでは、フランス特許出願第FR1750264号の主題であった弁点火プレチャンバを適用し、該プレチャンバは、一方では、フランス特許出願第1858111号の主題である弁磁気リターンデバイスを受容し、他方では、フランス特許出願第1904961号の主題であるアクティブプレチャンバ点火インサートを受容する。
【0101】
図1および11は、この非制限的な例によれば、シリンダヘッド3が被せられているシリンダ4を特に備える内燃機関2を備え、該シリンダ4および該シリンダヘッド3がピストン31と共に燃焼チャンバ5を形成する、カムを備えた油圧式噴射システム100を示している。
【0102】
図1および11では、弁点火プレチャンバ1は、シリンダヘッド3に収容されたアクティブプレチャンバ6を備えた点火インサートに配置されていることが示されている。図1および11はまた、管状噴射ノズル54および噴射弁50が、この例によれば、空気およびガソリンの、高い引火性のAF混合物からなる噴射可能流体58を導入するために、弁点火プレチャンバ1内に開くことを示している。
【0103】
該AF混合物は、フラップ点火プレチャンバ1内に出るスパークプラグ12によって点火されることが意図されるパイロットチャージ9を形成する。点火されると、このパイロットチャージ9は、高温ガスフレアの形態で、ガス噴出孔24を通して燃焼チャンバ5に噴出されることとなる。該フレアは、該燃焼チャンバ5に含まれている主チャージ30を点火することが意図されている。
【0104】
図1および11において、弁プレ点火チャンバ1および燃焼チャンバ5は、出願人に属するフランス特許出願第1858111号に記載されているように、弁磁気リターンデバイス42の一部である永久磁石49によってその座に戻される弁部材13によって分離されることが分かる。該弁部材13は、弁プレチャンバ1に含まれているガスが燃焼チャンバ5内に流れることを可能にするが、該チャンバ5に含まれているガスが弁点火プレチャンバ1に入ることを防止する。
【0105】
弁部材13は、閉じられると、弁点火プレチャンバ1を燃焼チャンバ5内のものよりも低い圧力および温度の閉ざされた体積にする。これにより、該プレチャンバ1内のパイロットチャージ9のあらゆる自己点火リスクを防止する。
【0106】
弁13を閉じた状態で、管状噴射ノズル54は、パイロットチャージ9と、点火が困難であり、その点火を可能にしかつ促進するために、より高い圧力および温度にしなければならない主チャージ30とを混合するリスクなしに、必要な高い引火性のパイロットチャージ9を弁点火プレチャンバ1に噴射することができる。
【0107】
シリンダヘッド3およびアクティブプレチャンバ点火インサート6の図1および11に示されている特別な構成は、大きな長さを有する管状噴射ノズル54を必要とすることに留意されたい。後者は、通常自動車両で使用される小型かつ経済的な噴射装置の技術的および製造上の制約とは一致しない。しかしながら、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100が使用される場合、該大きな長さは、特に問題を提示しない。
【0108】
ここでは、加圧手段10によって管状噴射ノズル54に供給される噴射可能流体58の圧力は、50barであると仮定される。噴射可能流体58は、空気およびガソリンのAFガス混合物からなるため、この圧力を超えてはならない。実際には、噴射可能流体58は、100℃の温度で維持されるべきである。この温度は、内燃機関2のシリンダヘッド3の冷却水チャンバ41内を循環する水によって課される。しかしながら、そのような温度での噴射可能流体58の圧力が50barを超える場合、AFガス混合物中のガソリンのいくらかは必然的に凝縮することとなる。
【0109】
管状噴射ノズル54は、内燃機関2の圧縮ストローク中に該プレチャンバ1内の圧力が常に燃焼チャンバ5内の圧力よりも低く保たれることが確実になるように注意して、噴射可能流体58を弁点火プレチャンバ1内に噴射し、パイロットチャージ9を形成することを覚えておかれたい。
【0110】
この制約は、内燃機関2のクランクシャフトの、例えば40度までに制限されたパイロットチャージ9の噴射持続時間をもたらす。
【0111】
上述の長さ、温度、および圧力の制約により、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100は特に興味深くなる。実際、該システム100は、その温度が100℃に制限されていることにより、噴射可能流体58の上流圧力が50barに制限されているにもかかわらず、40度未満のクランクシャフトで弁点火プレチャンバ1内に必要なパイロットチャージ9を噴射することができる長くかつコンパクトな管状噴射ノズル54を生成することを可能にする。
【0112】
この結果を達成するために、図8および11において、噴射可能流体58の圧力にさらされた受容ピストン62の噴射可能流体側の軸方向面63のセクションが、該弁50がそれと協働する噴射弁シート55上に載っているときに、噴射弁50のチューリップ52によって該圧力にさらされたセクションよりも大きくなるように設計されていることが分かる。
【0113】
その結果、管状噴射ノズル54内の圧力は、受容ピストンリターンスプリング79のさらなる作動により、弁密封面53を噴射弁シート55に押し付け、噴射弁50を閉じたままにするのに役立つ。噴射可能流体58の圧力によって発生するこの高いリターン力は、重くかつ手間がかかり得る高い力の受容ピストンリターンスプリング79の必要性を回避することを可能にする。
【0114】
図1に関連して、チャージチェック弁8を介して油圧流体60を作動油圧導管78に供給するチャージポンプ7は、内燃機関2の潤滑ポンプであり、一方、油圧流体タンク11は、内燃機関2のオイルサンプからなると仮定される。
【0115】
この文脈では、有利には、受容ピストンリターンスプリング79の力は、受容ピストン62上の内燃機関2の潤滑ポンプによって発生する圧力の力よりもかなり大きくなるように提供される。
【0116】
この場合、噴射可能流体供給導管66は、シリンダヘッドキャスティング3内に直接配置され、一方噴射カム67は、内燃機関2のカムシャフトによって駆動されることもまた、図1および11から分かる。
【0117】
ここで、図1図3~6、および図12に示すように、噴射カム67のカムプロファイル68は、ロッカーアーム80を介して放出器ピストン69の作動軸方向面75と接触して保持され、後者は、押圧ローラ86を介してカムプロファイル68と接触して保持されると仮定される。
【0118】
図1図3~6、および図12に示すように、ロッカーアーム80は、カムハウジング81に設けられた変位トラック85上で転がりまたはスライドすることができる可動押圧ローラ84を介してカムハウジング81を圧迫し、該ローラ84がロッカーアーム80の背面に設けられた傾斜トラック87と協働することも仮定される。
【0119】
図1図3~6、および図12において、変位トラック85が有利に、放出ピストン69の軸に対して完全に垂直であることが分かる。加えて、図1、3、5、6、および12において、押圧ローラ86が角度維持セクタ16と接触し、可動押圧ローラ84を介して変位トラック85上にロッカーアーム80を押し付けるために放出ピストン69がその作動軸方向面75を介してロッカーアーム80を押すとき、ロッカーアーム80の傾斜トラック87は、可動押圧ローラ84の位置に関係なく、変位トラック85に平行なままであることが分かる。
【0120】
この点では、放出ピストン69の軸に対する変位トラック85の垂直性および/または放出ピストン69の軸に平行な軸に沿う噴射カム67からの変位トラック85の距離を調整することを可能にする、ねじもしくはカム調整デバイス、または任意の他の調整手段を提供することが可能であることに留意されたい。図12において、該調整デバイスは、調整ねじ21として設計することができることが分かる。
【0121】
上述の設定における任意の不正確さを回避するために、少量の油圧流体60が、噴射弁50の各開口周期に伴って作動油圧導管78から直接または間接的に出ることを可能にすることが有利である。これは、例えば、不完全に密封されている放出器ピストン69を介して、または放出器チャンバ72を受容チャンバ71に接続する回路の任意のポイントに取り付けられた非常に小さなセクションのノズルを介して実施することができ、該ノズルは、いくらかの油圧流体60が出て、油圧流体タンク11に戻ることを可能にする。
【0122】
特に図6において、可動押圧ローラ84がその端部のうちの各々において配向ピニオン89を受容し、該ピニオン89が固定されて回転し、同時に各該ピニオン89がカムハウジング81と一体化した配向ラック90と協働することが分かる。
【0123】
また、可動押圧ローラ84は、カムハウジング81に対して軸方向位置が固定されているウォーム92と協働するウォームホイール91を受容し、該ウォーム92は、この非限定的な例によれば、電動ステッピングモータ93からなる噴射装置リフトアクチュエータ83によって回転駆動されることに留意されたい。
【0124】
有利には、配向ピニオン89のピッチ円径とウォームホイール91のピッチ円径とは一致しており、これは、それらが異なる可能性を排除しないことに留意されたい。
【0125】
したがって、電動ステッピングモータ93がウォームホイール92を回転させるとき、可動押圧ローラ84は、それが協働する変位トラック85に関連して移動し、その結果、可動ロッカーポイント82の位置は、カムハウジング81に関連して移動する。
【0126】
これにより、管状噴射ノズル54から弁点火プレチャンバ1に排出される噴射可能流体58の量を調整することが可能になる。
【0127】
内燃機関2が稼働しているとき、例えば、噴射弁50は、まず、受容ピストンリターンスプリング79により、噴射ノズルチューブ内の圧力、およびより小さな程度に起因して、受容ピストン62によって閉じられたままにされている。この状況は、図1および11に示されており、例えば、図1、3、5、または6に示されている噴射カム67の角度位置のいずれかから生じる。
【0128】
図4に示すように、内燃機関2がまだ稼働している状態で、カムプロファイル68がロッカーアーム80を押す。ロッカーアーム80は傾き、放出器ピストン69を移動させ、次に、放出器ピストン69は、放出器チャンバ72から受容チャンバ71に油圧流体60を押し進める。これは、受容ピストン62を変位させ、弁密封面53を噴射弁シート55から離して移動させ、その結果、噴射可能流体58が管状噴射ノズル54から弁点火プレチャンバ1に移る。
【0129】
図5は、噴射弁50のリフト高さを調整するため、電動ステッピングモータ93が、ロッカーアーム80のレバーアームを変更するために、そこで放出器ピストン69のものと受容ピストン62のものとの間の変位比を変更するために、ウォームねじ92を介して放出器ピストン69に向かってまたは放出器ピストン69から離して可動押圧ローラ84を移動させることができることを示している。
【0130】
実際には、放出器ピストン69の変位と噴射弁50の有効なリフトとの間の変位比は、ロッカーアーム80のレバーアームに依存するが、放出器チャンバ72、受容チャンバ71、および作動油圧導管78内の油圧流体60の圧縮性にも依存する。
【0131】
ロッカーアーム80によって放出器ピストン69の作動軸方向面75に印加される力は、特に、管状噴射ノズル54内の噴射可能流体58の圧力、および噴射可能流体側の軸方向面63を介して噴射可能流体58の圧力にさらされるセクションと、チューリップ52を介してこの圧力にさらされるセクションとの間の比率に依存する。
【0132】
より少ない程度では、該力はまた、受容ピストンリターンスプリング79によって生成される力に依存する。これに加えて、様々な可動部品の慣性ならびにそれらが互いに摩擦することによって生成されるエネルギー損失、および特に作動油圧導管78内を流れる油圧流体60によって生成される圧力損失がある。
【0133】
しかしながら、内燃機関2の各動作ポイントに、電動ステッピングモータ93の位置があり、これは、内燃機関2の熱力学的効率に最も有益なパイロットチャージ量9を弁点火プレチャンバ1内に導入することを可能にする。電動ステッピングモータ93の位置とパイロットチャージ量9との既存の関係を求めることは、内燃機関2の各動作ポイントに対して試験台上で行うことができるため、この文脈では無用な予測数値モデルの策定を避ける。
【0134】
したがって、電動ステッピングモータ93の位置は、必要に応じて、特に内燃機関2の主負荷30の速度、負荷、および希釈の関数として変化するように設計される。該希釈に関して、主チャージ30が新鮮な空気で希釈されるか、または再循環される排気ガスで希釈されるほど、点火に対する耐性が高くなり、パイロットチャージ9に含まれているエネルギーが主チャージ30に含まれているエネルギーよりも大きくなければならないことに留意されたい。
【0135】
さらに、同じ量のパイロットチャージ9を導入するには、内燃機関2が稼働している速度が速いほど、噴射弁50のリフトが高くなければならない。実際には、可動押圧ローラ84の同じ位置について、同じ質量の噴射可能流体58を弁点火プレチャンバ1内に噴射するため、機関2が速く稼働するほど、噴射弁リフト50の絶対持続時間は短くなる。したがって、噴射持続時間の減少は、弁密封面53と噴射弁シート55との間に存在する流れ断面を増加させることによって、したがって、噴射弁リフト50を増加させることによって補償されなければならない。
【0136】
また、内燃機関2が高速に稼働しているため、移動される部品の加速度の増加、およびその結果として、該流体60によって到達されるピーク圧力の増加により、油圧流体60の圧縮性の影響がより顕著であることが分かる。この影響はまた、電動ステッピングモータ93を介した可動押圧ローラ84の適切な位置によって補償される。
【0137】
内燃機関2の動作条件を考慮した電動ステッピングモータ93の理想位置のマップは、温度または経年などのコンテキスト動作パラメータを考慮したアルゴリズムによって補正されるか否かにかかわらず、コンピュータ48のメモリに記憶される。
【0138】
内燃機関2が非常に低い温度、例えば、マイナス30℃で始動するとき、噴射可能流体供給導管66および管状噴射ノズル54内の噴射可能流体58の圧力は、例えば、50barの代わりに5barに大幅に低減されなければならないことに留意されたい。
【0139】
このより低い圧力により、AFガソリン/空気混合物中のガソリンが凝縮せず、AFガソリン/空気混合物の通常の豊富度が維持されることが確実となる。その結果、内燃機関2のウォームアップ段階では、機関の最大負荷は有効な圧力を意味する約10barに制限されており、これにより、それを装備したあらゆる自動車両が即座に使用可能になる。
【0140】
数秒後、加圧手段10、噴射可能流体供給導管66、および管状噴射ノズル54の急速な温度上昇により、管状噴射ノズル54内の噴射可能流体58の圧力が約50barに達すると、通常の動作を再開することができる。
【0141】
本発明によるカムを備える油圧式噴射システム100の動作の上記の例は、決して限定するものではない。実際、該システムは、天然ガス、重油、ディーゼル油、またはガソリンを、その原理にかかわらず、任意の内燃機関2に直接または間接的に噴射することを可能にすることができる。
【0142】
一般に、本発明によるカムを備えた油圧式噴射システム100は、噴射装置リフトアクチュエータ83によって制御されるか否かにかかわらず、そのような噴射を必要とする任意の機械内への任意のガスおよび/または任意の液体の噴射を可能にすることができる。
【0143】
また、本発明に続くカムを備えた油圧式噴射システム100の可能性は、上記に記載された用途に限定されず、かつ、前述の説明が一例として与えられたに過ぎず、他の同等のものによって記載された実行の詳細を置き換えることによって、逸脱しないこととなる該発明の分野をいかなる方法によっても制限しないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】