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特表2022-541112二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法
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  • 特表-二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法 図1
  • 特表-二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/565 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
C07K14/565 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576305
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2020008847
(87)【国際公開番号】W WO2021010638
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0087244
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556602
【氏名又は名称】アビオン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA17
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法に関するものであり、より詳細には、宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得し、アフィニティークロマトグラフィー、低pHによる不活性化、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び陽イオン交換クロマトグラフィーを行う、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法、並びに前記方法によって分離された二糖化インターフェロンβタンパク質に関する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法:
(a)宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階、
(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階、
(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階、
(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階、
(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階、及び
(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階。
【請求項2】
前記インターフェロンβタンパク質が、配列番号1のペプチド配列からなることを特徴とする、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項3】
前記宿主細胞が、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞である、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項4】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、ブルーセファロースをレジンとして用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項5】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーが、ブチルセファロースをレジンとして用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項6】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、Qレジンをレジンとして用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項7】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーが、SPセファロースをレジンとして用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法。
【請求項8】
請求項1記載の精製方法によって収得された二糖化インターフェロンβタンパク質。
【請求項9】
前記インターフェロンβタンパク質が、配列番号1の塩基配列を有し、25位のアミノ酸及び80位のアミノ酸に糖鎖を有することを特徴とする、請求項8記載のインターフェロンβタンパク質。
【請求項10】
前記インターフェロンβタンパク質が、A2G2、FA2G2、FA2G2S1、FA2G2S2、FA2G2S2、FA3G3S1、FA3G3S3、FA3G3S3、FA4G4S1、FA4G4S3,FA4G4S4、FA4G4S3、FA4G4S4,FA4G4Lac1S3、FA4G4Lac1S3、FA4G4Lac1S4、FA4G4Lac2S3、FA4G4Lac1S3のうちいずれか2つの糖鎖構造を含むことを特徴とする、請求項8記載のインターフェロンβタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月18日に出願された韓国特許出願第10-2019-0087244号に基づく優先権を主張し、前記明細書全体は参照により本出願に援用する。
【0002】
本発明は、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法に関するものであり、より詳細には、(a)宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階、(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階、(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階、(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階、(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階、及び(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階を含む、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法、並びに前記方法によって分離された二糖化インターフェロンβタンパク質に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在、ヒトのインターフェロン(IFN)は、8種類存在することが知られており、それらは物理化学的及び機能的特徴に基づいて、1型と2型、この2種類に分類される。1型インターフェロンとしては、α(アルファ、alpha)-、β(ベータ、beta)-、κ(カッパ、kappa)-、δ(デルタ、delta)-、ε(イプシロン、epsilon)-、τ(タウ、tau)-、及びω(オメガ、omega)-インターフェロンがあり、2型インターフェロンとしては、γ(ガンマ、gamma)-インターフェロンがある。
【0004】
インターフェロン(IFN)は、ウイルスの複製を抑制することで抗ウイルス活性を示し、細胞増殖を抑制し、免疫反応を調節する。インターフェロンβは、ウイルス感染等による反応時に産生されるサイトカインであり、特に多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)治療剤等として使用され、抗がん活性も示し、がん治療剤として使用される可能性もある。
【0005】
現在、治療用に使用されるインターフェロンβは、2種類がある。第一に、インターフェロンβ1aは、ヒトインターフェロンβ遺伝子を含むチャイニーズハムスター卵巣(chinese hamster ovary、CHO)から産生され、166個のアミノ酸残基で構成されており、サイズが25kDである糖化されたタンパク質である。第二に、インターフェロンβ1bは、大腸菌から産生される165個のアミノ酸残基で構成されるタンパク質であり、糖が欠けており、アミノ酸1番のメチオニン残基が欠けており、17番システイン残基がセリンに置換されている。現在市販されているインターフェロンβ1aとしては、レビフ(Rebif)とアボネックス(Avonex)があり、インターフェロンβ1bとしては、βセロン(Betaseron)とエクタビア(Extavia)がある。
【0006】
一方、糖タンパク質は、ポリペプチド側鎖に共有結合で付加されたオリゴ糖類の鎖を含むタンパク質である。糖タンパク質は、構造、保護、運搬、ホルモン、又は酵素機能を含む非常に多様な生理学的機能を有し、付加された糖鎖が、これらの生理学的機能に重要に作用することが一般的に知られている。現在、糖タンパク質は、組換え技術で生産することができるが、これは細胞培養収集物から標的化された糖タンパク質を抽出するために広範な精製の手続を必要とする。製造/発現及び精製過程における糖鎖の脱落、修飾等は、生理学的機能に影響を及ぼすため、製造/発現過程で正しく形成するようにしたり、精製過程における糖鎖の脱落/修飾が起こらないように各過程を構成したりすることが重要である。
【0007】
インターフェロンも一種の糖タンパク質であり、野生型インターフェロンβの場合、80位のアミノ酸に糖鎖が付着している。特に、2004年には、インターフェロンの糖化に変異をもたらすインターフェロンβ突然変異タンパク質が開発され、これを治療剤として活用しようとする研究が進んでいる。インターフェロンβを治療薬として使用するためには、十分なタンパク質の量と高純度を有し、長期保存に適した形態に精製する必要がある。インターフェロンβは安定性が悪いため、精製過程においてペプチド結合の切断、脱アミド化、メチオニンのメチオニンスルフィドへの酸化、ジスルフィド交換等の分解反応がよく起こる(特許文献1)。精製過程において、これらに対する考慮が必要である。
【0008】
さらに、一般的な精製過程には、多くの異なるクロマトグラフィー法を用いることができるため、適切な精製方法を求めるためには、多数の組み合わせを試みる必要がある。これらの組み合わせにおいて、相異する順序、さらには異なる数のクロマトグラフィー法を組み合わせて使用することができるが、これらの組み合わせによって不十分な精製効果、又は精製されたタンパク質に損傷が発生する可能性があり、糖化されたタンパク質を精製するために適切な順序のクロマトグラフィー段階を決定する方法は、当該業界において常に要求される課題である。
【0009】
特に、従来の技術では、精製段階において有機溶媒を使用することから、大規模に生産時に特別な設備を必要とする、又は精製段階が複雑でコストがかかるという短所がある。よって、有機溶媒を使用しないことにより、大量精製が容易であり、簡単で、経済的であり、かつ収率が高い二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0177603号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[発明の詳細説明]
[技術的課題]
ここで、本発明者らは、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法を開発するために研究した結果、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製を行う場合に、十分なタンパク質の量と高純度を有し、糖化の修飾又はその他のインターフェロンβの修飾の懸念が少ない新たな精製方法であることを確認して、本発明を完成した。
【0012】
よって、本発明の目的は、(a)宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階、(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階、(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階、(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階、(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階、及び(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階を含む、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法を提供する。
【0013】
本発明の他の目的は、本発明の精製方法によって収得した二糖化インターフェロンβタンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、(a)宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階、(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階、(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階、(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階、(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階、及び(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階を含む、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法を提供する。
【0015】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、本発明の精製方法によって収得した二糖化インターフェロンβタンパク質を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
一般的なクロマトグラフィー法及びそれらの使用は当業者に公知となっている。
【0018】
本明細書において、用語「クロマトグラフィー材料」とは、クロマトグラフィー材料として追加の改質なしで利用され得る固形材料、例えば、ヒドロキシアパタイト又はアフィニティークロマトグラフィー材料を意味し、クロマトグラフィー官能基が好ましくは共有結合で付加されたバルクコア材料を含む材料を意味する。バルクコア材料は、クロマトグラフィー過程、すなわち、分離しようとするポリペプチドとクロマトグラフィー材料のクロマトグラフィー官能基との間において、相互作用が実質的に行われないことを示す。クロマトグラフィー材料は、単に、クロマトグラフィー官能基が付着し、分離されるべき材料を含む溶液がクロマトグラフィー官能基に近づくことができるように保障する3次元フレームワークを提供する役割を果たす。好ましくは、前記バルクコア材料は固形である。よって、好ましく、前記「クロマトグラフィー材料」は、クロマトグラフィー官能基が、好ましくは、共有結合で付加され、固相である。好ましくは、前記「クロマトグラフィー官能基」とは、イオン化が可能な疎水性基、疎水性基、又は相異するクロマトグラフィー官能基が一部のポリペプチドのみを結合するように組み合わされた複合基、又は共有結合した荷電基である。
【0019】
本明細書において、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」とは、通常(従来)の意味に従って使用されるものであり、すなわち、アミノ酸残基の重合体を意味する。ポリペプチドは、特定の長さに限定されないが、本発明の文脈においては、一般的に全長(full length)タンパク質の断片を示すことがある。前記ポリペプチド又はタンパク質は、翻訳後の修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等、及び当該業界に公知となった他の修飾(天然に発生する修飾及び天然に発生しない修飾)を含んでもよい。本発明のポリペプチド及びタンパク質は、任意の様々な公知の組換え及び/又は合成の技術を用いて調製することができる。
【0020】
本明細書において、用語「結合モード」及び「溶出モード」とは、所望の物質(例えば、二糖化インターフェロンβ)を含有する溶液が固定相、好ましくは固相と接触し、所望の物質が固相のクロマトグラフィー材料に結合するクロマトグラフィー法の作動方式を意味する。その結果、所望の物質が固相に付着するが、好ましくない物質は、溶媒の流れに沿って又は上清液と共に除去される。その後、所望の物質を固相から溶出し、これにより溶出溶液と共に固相から回収される。これは、全ての不要な物質が除去されることを必ずしも意味するわけではないが、不要な物質の50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは95%以上が除去される。
【0021】
本明細書において、用語「連続溶出」及び「連続溶出法」とは、例えば、溶出、つまり、結合された物質のクロマトグラフィー材料からの分離をもたらす物質の濃度が、連続的に上昇又は減少することを意味する。つまり、各段階が溶出をもたらす物質の濃度を2%以下、好ましくは1%以下で変化させる一連の小段階によって濃度が変化される。この「連続溶出」において、クロマトグラフィー法の1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩の濃度、及び/又は流速が線形変化するか、又は指数関数的に変化する。好ましくは、変化は線形変化するものである。
【0022】
本明細書において、用語「段階溶出」及び「段階溶出法」とは、例えば、溶出、つまり結合された物質のクロマトグラフィー材料からの分離をもたらす物質の濃度が一度に、つまり、1つの値/レベルで次の値/レベルに上昇又は減少するクロマトグラフィー法を意味する。このような「段階溶出」において、クロマトグラフィー法の1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩の濃度、及び/又は流速が、第1の値(例えば、出発値)から第2の値(例えば、最終値)に一度に変化する。段階における変化は、溶出をもたらす物質の濃度を5%より大きく、好ましくは10%より大きく変化させる。「段階溶出」は線形変化とは対照的かつ増分的に、つまり段階的に変化される。「段階溶出法」においては、それぞれの増加後に新しい画分が収集される。それぞれの増加後、溶出法における次の段階まで条件が維持される。
【0023】
本明細書において、用語「分離されたタンパク質」及び「分離されたポリペプチド」とは、炭化水素、脂質、又は天然のポリペプチドに関連する他のタンパク質の不純物等の汚染細胞成分を実質的に含まないポリペプチドである。典型的には、分離されたタンパク質の製造は、非常に精製された状態、つまり、約80%以上の純粋、約90%以上の純粋、約95%以上の純粋、又は99%以上の純粋なポリペプチドを含む。特定のタンパク質調製物が分離されたポリペプチドを含有することを示す方法は、例えば、タンパク質調製物に電気泳動を行い、ゲルをクマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)で染色した後に単一バンドが現れることである。しかしながら、用語「分離された」とは、二量体、誘導体化された形態、正確に折り畳まれていない形態、不正確なジスルフィド架橋形態、又はスクランブル形態のような他の物理的形態の同一なポリペプチドの存在を排除しない。
【0024】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」とは、一本鎖又は二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)を意味する。他の制限がない限り、天然に産生されるヌクレオチドと同様の方法で核酸に混成する天然ヌクレオチドの公知となったアナログも含まれる。
【0025】
本明細書において使用される用語「ヒトインターフェロンβの活性」とは、ヒトインターフェロンβが有することが知られている活性のうち、任意のポリペプチドがヒトインターフェロンβとして同定されるのに十分な1つ以上の活性として定義される。そのような活性としては、既に述べたように多発性硬化症の軽減、緩和、又は治療活性、抗ウイルス活性、細胞成長抑制活性、抗成長活性、抗増殖活性、リンパ球細胞毒性増強活性、免疫調節活性、標的細胞の分化誘導又は抑制活性、サイトカイン産生の増加活性、細胞傷害性T細胞の効果増加活性、マクロファージの効果増加活性、ナチュラルキラー細胞の増加活性、癌の予防又は治療活性、自己免疫障害の予防又は治療活性、ウイルス感染の予防又は治療活性、HIV関連疾病の予防又は治療活性、C型肝炎の予防又は治療活性、関節リウマチの予防又は治療活性等を例示することができる。
【0026】
本明細書において使用される用語「発現」とは、細胞内のタンパク質又は核酸の産生を意味する。
【0027】
本明細書において使用されるアミノ酸の一文字(三文字)は、生化学分野における標準略語規定に従って以下のアミノ酸を意味する。A(Ala):アラニン;C(Cys):システイン;D(Asp):アスパラギン酸;E(Glu):グルタミン酸;F(Phe):フェニルアラニン;G(Gly):グリシン;H(His):ヒスチジン;I(IIe):イソロイシン;K(Lys):リジン;L(Leu):ロイシン;M(Met):メチオニン;N(Asn):アスパラギン;O(Ply):ピロリシン;P(Pro):プロリン;Q(Gln):グルタミン;R(Arg):アルギニン;S(Ser):セリン;T(Thr):トレオニン;U(Sec):セレノシステイン;V(Val):バリン;W(Trp):トリプトファン;Y(Tyr):チロシン。
【0028】
本発明は、
(a)宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階、
(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階、
(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階、
(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階、
(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階、及び
(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階を含む、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製方法を提供する。
【0029】
本発明の精製方法(又は分離方法)における各段階については、以下の通りである。
【0030】
(a)段階:宿主細胞で発現されたインターフェロンβを含む培養液を収得する段階
本発明のインターフェロンβ(インターフェロンβポリペプチド又はインターフェロンβタンパク質)は、野生型のインターフェロンβの27番アルギニン(R27)部位がトレオニンに変異(R27T)されたものでもよい。好ましくは、配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドでもよい。本発明のインターフェロンβは、配列番号1のアミノ酸25位及びアミノ酸80位の2ヶ所に糖鎖が結合したものであり、インターフェロンβ活性を有するポリペプチドとして理解されるべきである。好ましくは、本発明のインターフェロンβは、ヒトインターフェロンβを示す。
【0031】
本発明のインターフェロンβは、該当遺伝子が発現されるように形質転換された宿主細胞から発現され、細胞内又は細胞外の位置で発現されうる。本発明において、宿主細胞は、挿入された配列の発現を調節すること、又は好ましい特定の方式で遺伝子産物を処理することを選択してもよい。相異な宿主細胞は、タンパク質の翻訳及び翻訳後のプロセシングと修飾に対する特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。発現された異種タンパク質の好ましい修飾及びプロセシングを提供する適切な細胞株系又は宿主系を選択してもよい。酵母における発現は、生物学的活性生成物を産生することができる。真核細胞における発現は、天然の折り畳みの可能性を高めることができる。
【0032】
本発明において、インターフェロンβを安定させつつ連続的に発現させることができる宿主細胞としては、当該業界に公知となった任意の宿主細胞を用いることができるが、二糖化インターフェロンβの発現のために、原核生物である宿主細胞を使用することはできない。本発明の宿主細胞は、例えば、イースト(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、動物細胞、及びヒト細胞でもよく、好ましくは、CHO細胞株(Chinese hamster ovary)、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RIN、及びMDCK細胞株を用いることができ、最も好ましくは、本発明における宿主細胞はCHO細胞株でもよい。
【0033】
本発明における培養は、目的タンパク質であるインターフェロンβの発現を可能にする適切な条件下で行われ、そのような条件は公知の方法に基づいて実施できる。形質転換宿主細胞は、通常の培養方法により大量培養することができる。培養培地としては、炭素源、窒素源、ビタミン、及びミネラルで構成された培地を使用してもよく、例えば、SFM4CHO、optiCHO SFM等の培地を使用し、添加物として200mM L-グルタミン等を使用してもよい。宿主細胞の培養は、通常の宿主細胞培養条件で可能であり、例えば、温度範囲15℃~45℃で10時間~40時間培養してもよい。培養液中の培養培地を除去し、濃縮された菌体のみを回収するために、遠心分離(centrifugation)又は濾過(filtration)段階を経てもよく、これらの段階は当業者の必要に応じて行ってもよい。
【0034】
(b)前記(a)段階で収得した培養液についてアフィニティークロマトグラフィーを行う段階
本明細書において、「アフィニティークロマトグラフィー」とは、アフィニティークロマトグラフィー材料を用いるクロマトグラフィー法を意味する。アフィニティークロマトグラフィーにおいて、ポリペプチドは、クロマトグラフィー官能基に対する静電相互作用、疎水性結合、及び/又は水素結合形成により、それらの生物学的活性又は化学構造に基づいて分離される。特異的に結合したポリペプチドをアフィニティークロマトグラフィー材料から回収するために、競合リガンドを添加したり、又はpH値、極性、もしくは緩衝剤のイオン強度等のようなクロマトグラフィー条件を変更したりする。アフィニティークロマトグラフィー材料は、一定の類型のポリペプチドにのみ結合するように相異かつ単一のクロマトグラフィー官能基が組み合わせられた複合クロマトグラフィー官能基を含むクロマトグラフィー材料である。このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー官能基の特異性に応じて、一部の類型のポリペプチドに特異的に結合する。
【0035】
本発明におけるアフィニティークロマトグラフィー材料は、インターフェロン、好ましくはインターフェロンβに親和性を有する染料性アフィニティークロマトグラフィー(dye affinity chromatography)でもよく、ブルーセファロースをレジンとして用いてもよい。染料性アフィニティークロマトグラフィーは、例えば、ブルーデキストランセファロースR(Blue Dextran Sepharose R)又はシバクロンRブルー(Cibacron R Blue)が固定されたマトリックスであってもよい。例えば、アミコン(Amicon)社のマトリックスジェルブルー(Matrex Gel Blue A、Merck)、メルク社のフラクトゲル45TSK AFブルー(Fraktogel 45 TSK AF-Blue)、又はGEヘルスケア(GE Healthcare)社のブルーセファロースR 6FF(Blue-Sepharose R 6FF)(fastflow)を使用してもよい。
【0036】
本発明の一実施例において、二糖化インターフェロンβタンパク質は、ブルーセファロースR 6FFを用いたアフィニティークロマトグラフィーによってインターフェロンβタンパク質が分離され、特に、糖化状態が維持されたままインターフェロンβタンパク質が分離されることを確認した。よって、本発明においては、好ましくは、アフィニティークロマトグラフィー材料としてブルーセファロースR 6FFを使用してもよい。
【0037】
ブルーセファロースR 6FFを用いた染料性アフィニティークロマトグラフィーによるインターフェロンβの分離、精製は、当該業界に様々な技術文献として公知となっており、当該技術文献におけるクロマトグラフィーの遂行方法は、本明細書に参考として含まれる。
【0038】
インターフェロンβは、ブルーセファロースR 6FFに強く結合し、結合されたタンパク質は、溶出前に様々な緩衝液で洗浄することができる。通常の条件において、インターフェロンβは、低濃度であってもブルーセファロースR 6FFに結合しやすいので、この段階は、本発明による精製工程の第一のクロマトグラフィー段階として適している。IFN-βの溶出に用いられる試薬としては、カオトロピック剤(Chaotropic agent)又は塩(salt)等を使用してもよく、エチレングリコール(ethylene glycol)又はプロピレングリコール(propylene glycol)等の還元剤を含む水溶液を使用してもよい。好ましくは、本段階における溶出のために、プロピレングリコール水溶液を使用してもよく、20%~40%のプロピレングリコール水溶液を使用してもよい。
【0039】
(c)段階:(c)前記(b)段階で収得した溶液について低pHによる不活性化を行う段階
本明細書において、用語「低pHによる不活性化」とは、エンベロープウイルスを不活性化する目的のために酸を添加し、pH4.0又はその以下のpHの酸性条件でウイルス性の外的流入物を不活性化することを示す。
【0040】
好ましくは、低pHによる不活性化は、酸を添加してpH2.0~pH4.0、より好ましくはpH3.0~pH4.0又はpH3.5~pH4.0になるように処理する。処理時間及び温度は、10~30℃又は15~25℃で、30分~4時間でもよい。処理後、必要に応じて、塩基性溶液を用いてpH6~7.5、好ましくはpH6.5~7.5に中和し、次の段階に進む。
【0041】
添加される酸は、無機酸、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、又は有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸でもよく、好ましくはリン酸水溶液でもよい。
【0042】
本発明の一実施例において、前記(b)段階の溶出物に、10倍希釈されたpH3.5のリン酸水溶液を添加してpHを4又はそれ以下に下げ、15~25℃で1時間処理して低pH不活性化を行い、その後、2M トリズマ塩基(2M Trizma base)を用いて再び中和した。
【0043】
(d)前記(c)段階で収得した溶液について疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う段階
本明細書において、用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー」とは、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料が用いられるクロマトグラフィー法を意味する。疎水性相互作用クロマトグラフィー材料は、疎水性基、例えば、ブチル基、オクチル基、又はフェニル基がクロマトグラフィー官能基として結合されているクロマトグラフィー材料である。ポリペプチドは、その表面に露出された疎水性部位の性質により、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料の疎水性基との相互作用を通して分離できる。ポリペプチドとクロマトグラフィー材料との間の相互作用は、温度、溶媒、及び溶媒のイオン強度の影響を受けうる。温度増加により、アミノ酸側鎖の動きが増加し、低い温度ではポリペプチドの内部に埋め込まれていた疎水性アミノ酸側鎖が接近可能になるので、温度増加は、例えば、ポリペプチドと疎水性相互作用クロマトグラフィー材料との間の相互作用をより大きくする。さらに、疎水性相互作用は、コスモトロピック塩によって促進され、カオトロピック塩によって減少する。
【0044】
疎水性相互作用クロマトグラフィー材料は、ブチルセファロース、フェニルセファロース、オクチルセファロースをレジンとする、例えば、フェニルセファロースCL-4B、6FF、HP、フェニルスーパーロース、オクチルセファロースCL-4B、4FF、及びブチルセファロース4FFでもよく、好ましくはブチルセファロース、より好ましくはブチルセファロース4FFをレジンとして用いて行われるものでもよい。
【0045】
(e)前記(d)段階で収得した溶液について陰イオン交換クロマトグラフィーを行う段階
本明細書において、用語「陰イオン交換クロマトグラフィー」とは、陰イオン交換クロマトグラフィー材料を用いたクロマトグラフィー法を意味する。陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー官能基として陽イオンに荷電した基を有する固相の高分子材料であり、陰イオンが交換される材料を意味する。一般的に、カウンターイオンは、陰イオン交換クロマトグラフィー材料と結合しており、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、周囲の溶液にある同様に荷電した陰イオンを、カウンターイオンと交換することができる。
【0046】
例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーは、商用の陰イオン交換クロマトグラフィー材料を用いたクロマトグラフィーであってもよく、バイオ・ラッドラボラトリーズ(Biorad Laboratories)社、サイファージェン(Cyphergen)社、GEヘルスケア(GE Healthcare)社等の製造会社によって提供される陰イオン交換クロマトグラフィー材料を用いてもよい。
【0047】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、4価アンモニウムを陰イオン交換樹脂として用い、好ましくはQレジンをレジンとして用いて遂行してもよく、より好ましくは、カプトQインプレス(Capto Q ImpRes)を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーを遂行してもよい。
【0048】
好ましくは、イオン交換クロマトグラフィーにおいて、陰イオン交換クロマトグラフィーが最初に行われる。これは、インターフェロンβ精製過程における不純物に該当する塩基性変異体(basic variant)、ウイルス、HCP(宿主細胞由来タンパク質、host cell protein)、HCD(宿主細胞由来DNA,host cell DNA)、及び内毒素(endotoxin)を、より効果的に除去するために必要な段階である。
【0049】
(f)前記(e)段階で収得した溶液について陽イオン交換クロマトグラフィーを行う段階
本明細書において、用語「陽イオン交換クロマトグラフィー」とは、陽イオン交換クロマトグラフィー材料を用いたクロマトグラフィー法を意味する。陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー官能基として陰イオンに荷電した基を有する固相の高分子材料であり、陽イオンが交換される材料を意味する。一般的に、カウンターイオンは陽イオン交換クロマトグラフィー材料と結合しており、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、周囲の溶液にある同様に荷電した陽イオンを、カウンターイオンと交換することができる。
【0050】
荷電基の性質に応じて、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、例えば、スルホン酸基(SP)又はカルボキシメチル基(CM)を有してもよい。あるいは、荷電基の性質に応じて、荷電した置換基の強度によって強い又は弱い陽イオン交換クロマトグラフィー材料として追加的に分類してもよい。例えば、強い陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー官能基としてスルホン酸基を有し、弱い陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー官能基としてカルボン酸基を有する。
【0051】
例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーは、商用の陽イオン交換クロマトグラフィー材料を用いたクロマトグラフィーでもよく、バイオ・ラッドラボラトリーズ(Biorad Laboratories)社、サイファージェン(Cyphergen)社、GEヘルスケア(GE Healthcare)社等の製造会社によって提供される陰イオン交換クロマトグラフィー材料を用いてもよいが、好ましくは、SPセファロースをレジンとして用いて遂行してもよく、より好ましくはセファデックス(sephadex)S.F.F.を用いて陽イオン交換クロマトグラフィーを遂行してもよい。
【0052】
本発明の精製によって分離されるインターフェロンβは、ヒトインターフェロンβの活性を有し、インターフェロンβの生物学的及び/又は免疫学的特徴を有しながら、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則)の観点で日常的処理における適用が可能であるので、好ましくは規制による容認要件(バリデーション、再現性)及びインターフェロンβが特定の生化学的特質(疎水性等)を有する。
【0053】
分離された二糖化インターフェロンβの比活性は、少なくとも2×10IU/mgであるべきであり、好ましくは少なくとも3×10IU/mg、より好ましくは少なくとも4×10IU/mgの比活性を有してもよい。測定可能なIFN-βの2つの必須的な生物学的活性は、その抗ウイルス効果及び抗増殖効果である。この生物学的活性は、それぞれウイルスの細胞変性効果阻害を介する標準的な方法によって測定することができる。インターフェロンβの活性の測定は、当該業界に公知となった方法を用いることができる。
【0054】
本発明の二糖化インターフェロンβの精製方法には、好ましくは逆相クロマトグラフィー、限外濾過又は透析、及びサイズ排除クロマトグラフィーは含まれない。逆相クロマトグラフィーは、一般的に使用するバッファーであるアセトニトリル(acetonitrile)が有機溶媒であるので、大量培養及び精製のためには防爆施設等の追加的設備が必要であるという短所があり、限外濾過と透析は、大量培養及び精製に適切ではなく、廃液が多数発生する可能性があるという短所がある。さらに、サイズ排除クロマトグラフィーは、大量培養及び精製に適さないという短所がある。
【0055】
好ましくは、逆相クロマトグラフィー、限外濾過又は透析、サイズ排除クロマトグラフィーを排除したことは、相当な労働を要したり、多くの投資を要する高価の設備を必須に使用したり、又は引火性溶媒、爆発防護、廃液の処理等、安全と環境に影響を及ぼす様々な制約を根本的に排除することができることが理由である。
【0056】
さらに、本発明は、前記本発明の精製方法によって収得した二糖化インターフェロンβタンパク質を提供する。好ましくは、本発明のインターフェロンβタンパク質は、配列番号1の塩基配列を有し、アミノ酸25位及びアミノ酸80位に糖鎖を有する。
【0057】
前記インターフェロンβタンパク質が有する糖鎖は、オックスフォードノーテーション(oxford notation)法に基づいて表記されたA2G2、FA2G2、FA2G2S1、FA2G2S2、FA2G2S2、FA3G3S1、FA3G3S3、FA3G3S3、FA4G4S1、FA4G4S3、FA4G4S4、FA4G4S3、FA4G4S4,FA4G4Lac1S3、FA4G4Lac1S3、FA4G4Lac1S4、FA4G4Lac2S3、FA4G4Lac1S3の構造の糖鎖でもよく、好ましくは前記糖鎖のうちいずれか2つの糖鎖構造を有する。
(F=コア・フコース化;
A2,2つのGlcNAcがβ1-2結合された2アンテナ型;
A3,2つのマンノースにβ1-2結合されたGlcNAcと、α1-3結合されたマンノースにβ1-4結合された第3のGlcNAcを有する3アンテナ型;
A3’,2つのマンノースにβ1-2結合されたGlcNAcと、α1-6結合されたマンノースにβ1-6結合された3番目のGlcNAcを有する3アンテナ型;
A4,A3のように結合されたGlcNAcにおいて、α1-6結合されたマンノースにβ1-6結合されたGlcNAcを追加で有する;
Gx,アンテナにβ1-4結合されたガラクトースの数(x);
Sx,ガラクトースに結合されたシアル酸の数(x)であって、シアル酸は、α2-3結合であり、aで示される場合はα2-6結合も有する;
Lacx,ラクトサミン(Gal-GlcNAc)延長の数(x)。
追加的に可能なラクトサミン構造はイタリック体で記載される。)
【0058】
本発明の一実施例において、5リットルスケールで培養し、インターフェロンβを発現した後、本発明の二糖化インターフェロンβの精製方法を用いて精製した。二糖化インターフェロンβの精製は、それぞれブルーセファロース(Blue sepharose 6 fast flow)レジンを用いたアフィニティークロマトグラフィー、酸の添加による低pHによる不活性化、ブチルセファロース(Butyl 4 fast flow)レジンを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー、カプトQ(Capto Q ImpRes)レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、SPセファロース(SP sepharose fast flow)カラムを用いた陽イオン交換クロマトグラフィーを順に従って遂行することにより進行した。
【0059】
これに対する比較例として、同一な培養発現により作製されたインターフェロンβを、既存のインターフェロンβタンパク質の精製方法に基づいて、ブルーセファロース(Blue sepharose 6 fast flow)カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー、CMセファロース(CM sepharose fast flow)レジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー、VYDAC C4を用いた逆相クロマトグラフィー、限外濾過・濃縮、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl 100HR)を順に従って遂行することにより進行した。
【0060】
本発明の一実施例において、各精製方法に基づいて分離、精製されたインターフェロンβを、収率(yield)、タンパク質修飾の程度、比活性、含量、及び全活性の観点から評価した結果、本発明の方法が、比較例の方法に比べて、全体含量、収率、メチオニンが欠失された形態(Met deletion form)の全てが優れていることが示された。比活性の場合、比較例の方法が、本発明の方法に比べて大きく出たが、全体的な精製量を考慮した全体的な活性において、本発明の方法が著しく優れていることが示された。よって、本発明の方法による場合、二糖化インターフェロンβは、優れた品質及び収率を有し、より大きい活性を有するように分離/精製することができることを確認した。
【0061】
本発明の一実施例において、各精製方法に基づいて分離、精製されたインターフェロンβの不純物を、CHO細胞の細胞由来タンパク質(CHO-HCP)の含量、エンドトキシンの含量、IEFにおけるパターンの観点から確認した結果、CHO細胞のタンパク質、エンドトキシンの場合、いずれも通常の基準値に合致したが、本発明の方法が、不純物の含量をより少なく検出させることが確認できた。なお、本発明の方法による場合、塩基性変異体(basic variant)が存在しないので、比較例1の方法に比べてより高純度の精製方法であることが確認できた。
【0062】
上述したような一連の工程を通じて、各段階別の精製収率及び純度を、下記表1にて示した。
【0063】
【表1】
【発明の効果】
【0064】
本発明において提供するインターフェロンβタンパク質の精製方法は、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製収率が顕著に優れており、大量培養における製造管理及び品質管理が容易であり、医薬品としての使用における規制に適した、優れた品質の二糖化インターフェロンβタンパク質を精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、本発明の精製方法を模式的に記載したものである。
図2図2は、本発明の精製方法(右側パネル)及び比較精製方法(左側パネル)によって精製された精製物に対してIEF実験を行った結果である。赤い矢印は塩基性変異体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明を詳細に説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:宿主細胞における二糖化インターフェロンβの発現及び収得
培養液は、二糖化インターフェロンβ遺伝子を含む産生CHO細胞株をハイクロン(Hyclone)社のoptiCHO SFMをベースとする培地を用いて5リットルスケールで培養し、インターフェロンβが発現できるようにした。
【0068】
培養時の初期温度は34.0℃、pH7.0、溶存酸素量50%とし、ゆっくり攪拌しながら培養を行い、9日間培養した後、培養器で回収した培養液を4500rpm、4℃の条件で30分間遠心分離を行った。遠心分離後、上清液を無菌的に0.22μm濾過(filtration)した後、精製を行った。
【0069】
実施例2:二糖化インターフェロンβの精製
実施例1で収得したインターフェロンβを、アフィニティークロマトグラフィーを用いた精製段階に投入した。
【0070】
まず、収得したインターフェロンβ画分を、10mM リン酸ナトリウム、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4の溶液で予め平衡化したブルーセファロース(Blue sepharose 6 fast flow;GE社)カラムに結合させ、700mM チオシアン酸ナトリウム溶液で十分に洗浄した。その後、20mM リン酸ナトリウム、1.4M NaCl、35% プロピレングリコール、250mM L-アルギニン、pH7.4の溶液で溶出し、この画分を収得した。
【0071】
HPLC分析の結果、94%~96%の純度を示し、残存HCP検出の結果としては6300~9500ppmの含量で、第一精製が完了した。
【0072】
第2段階として、pH3.5のリン酸(99%、蒸留水を用いて10倍希釈)を添加し、pHを3.0になるように調整した。その後、22℃で1時間処理した後、2M トリズマ塩基で中和して、サンプルとした。
【0073】
第3段階として、20mM トリス(Tris)、1.4M NaCl、300mM Arg、pH7.4の溶液で予め平衡化したブチルセファロース(Butyl 4 fast flow;GE社)カラムに結合させ、その後、20mM トリス、pH8.0の溶液で溶出させ、この画分を収得した。
【0074】
第4段階として、収得した溶出画分を用いて、20mM トリス(Tris)、pH8.0の溶液を用いて、カプトQ(Capto Q ImpRes;GE社)レジンを充填した陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。溶媒を溶出した溶液には、20mM トリス、140mM NaCl、pH8.0を使用した。
【0075】
最終段階として、陰イオン交換樹脂から溶出した分画物を、50mM 酢酸ナトリウム、pH5.0で平衡化されたSPセファロース(SP sepharose fast flow;GE社)カラムに投入し、150mMから500mMまでの塩濃度差による陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。
【0076】
これにより、最終的に32%の収率で得たインターフェロンβ材料は、95%以上の純度を示し、HCPは基準値以下である100ppmを記録し、IEF及びSDS-PAGEゲル分析の結果にて特異事項がない最終産物を収得した。
【0077】
比較例1:従来のインターフェロンβタンパク質精製方法による精製
培養を通じて収得したインターフェロンβ画分を、10mM リン酸ナトリウム、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4の溶液で予め平衡化したブルーセファロース(Blue sepharose 6 fast flow;GE社)カラムに結合させ、700mM ナトリウムで十分に洗浄した。その後、20mM リン酸ナトリウム、1.4M NaCl、35% プロピレングリコール、pH7.0の溶液で溶出してこの画分を収得した。
【0078】
上述の工程を通じて収得した分画物を、20mM リン酸ナトリウム、pH2.7の溶液で5倍希釈し、CMセファロース(CM sepharose fast flow;GE社)レジンを用い、第2工程である陽イオン交換クロマトグラフィーに投入した。このときに使用した溶出溶媒は、50mM NaPi、0.145M NaCl、10% PG、pH 7.0とした。
【0079】
その後、溶出したインターフェロンβ試料は、有機溶媒である30% アセトニトリルと0.1% トリフルオロ酢酸とをバッファー溶液として使用し、HPLC逆相クロマトグラフィーカラム(VYDAC C4;アジレント(Agilent)社)を介して溶出させた。この際、溶出される試料の収集容器に20mM リン酸ナトリウム 一塩基性 pH2.9を予め入れておき、試料が溶出されると同時に希釈されるようにし、インターフェロンβを収得した。
【0080】
前記工程において7倍希釈したインターフェロンβの溶出試料は、容量を減らすと同時に、最も効率的な方法で精製するために、限外濾過・濃縮のためのミリポア(Millipore)社のTFFシステム(ペリコン・バイオマックス(Pellicon Biomax)10;ミリポア社)を介し、約7倍の濃縮を行った。交換する溶液は、20mM リン酸ナトリウム pH2.9とし、濃縮の濃度は、通常のサイズ排除クロマトグラフィーのレジンの特性に基づくことを基本とする。
【0081】
最後の工程として、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl 100HR;GE社)を用いて不要な材料を除去した。溶出試料を25mLずつ回収し、最終的にインターフェロンβを含む分画物を収得した。
【0082】
実施例3:精製方法の評価
3-1.活性及び収率等の評価
実施例2及び比較例1の精製方法を、収率(yield)、タンパク質修飾の程度、比活性、含量、及び全活性の観点にて評価した。
【0083】
タンパク質定量は、UV測定方法を用いた。0.5M NaOHとサイズ排除クロマトグラフィーの溶出溶媒とを1:1で加えた溶液にてゼロ点を合わせ、サイズ排除クロマトグラフィーで収得した目的物と0.5M NaOHとを1:1に混合し、UV波長290nmで測定した。測定は3回を基本とし、以下の計算式で数値化した。
-(3回分の測定値の平均÷吸光係数)×希釈倍数(mg/mL)
【0084】
収率は、ブルーセファロースを通過した溶出物を基準(100%)にして、これに対する相対含量を、インターフェロンβに特異的な1次抗体を用いた酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。このときに使用された酵素免疫測定方法は、以下の通りである。酵素結合抗体溶液を測定プレートに濃度に合わせて分注した後、標準溶液と測定しようとする試験溶液とを少なくとも8つの希釈濃度で2回に分けて添加した。その後、一定時間の反応後に、洗浄過程を経た後、発色反応を起こす基質溶液を添加して反応を誘導した。その後、反応が停止した後に450nmで吸光度を測定した。
【0085】
タンパク質修飾の程度は、HPLC装置を用いたペプチドマッピング(peptide mapping)を遂行し測定した。クロマトグラフィーシステムと測定器を用いて分析試料を注入し、214nmの波長で測定された数値に対して、保持値と積分値に該当するタンパク質の構造及びアミノ酸の変性を確認した。
【0086】
比活性の測定は、細胞変性効果分析法(CPE(Cytopathic effect) assay)によって以下のように測定した。比活性測定のための標準材料は、以下のように用意した:NIBSC(国立生物学的製剤品質標準化研究所)から購入したインターフェロンβを、MEM培養培地に混合し、適正な活性度(Activity)(標準原液(2,000IU/mL)))に作製した後、STD活性度(IU/mL)を、200から0.390625IU/mLまで順次希釈し調製した。
【0087】
精製された各サンプルを、予想活性度が50IU/mLになるようにMEM培養培地を使用して希釈し、(体積は1500μL以上)、これを再び50から0.390625IU/mLまで順次希釈し、測定用サンプルを準備した。
【0088】
測定用サンプルと標準材料とをそれぞれ96ウェル培養プレートに分注し、A549細胞を3x10細胞/ウェルでウェルに投入した後、37℃、5% CO条件で22時間インキュベーションを行った。プレートから培地を除去した後、ウイルス溶液(1000 TCID50/mL)を各ウェルに分注し、37℃、5% CO条件で22時間インキュベートを行った。プレートから溶液を除去した後、クリスタルバイオレット溶液で室温染色し、2-メトキシエタノールで脱染色を行い、570nmでの吸光度を測定して比活性を計算した。
各分析項目の結果は以下の表の通りである。
【0089】
【表2】
【0090】
測定の結果、比較例1の方法においては、全含量が16.5mg、収率が11%程度、メチオニン欠失形(Met deletion form)が3.6%を示した。比活性は327MIU/mgであり、本発明の方法に比べて大きいが、精製された含量が16.5mgに過ぎず、全活性は5395MIUにとどまった。
【0091】
これに比べて、本発明の方法においては、全含量が26.4mg、収率が20%程度、メチオニン欠失形が2.8%であり、全活性が6520MIUと大きく出た。
【0092】
よって、本発明の方法による場合、二糖化インターフェロンβが優れた品質及び収率を有し、より大きい活性を有するように分離/精製することができることが確認できた。
【0093】
3-2.不純物評価
比較例1及び実施例2における精製時の不純物を、CHO細胞の細胞由来タンパク質(CHO-HCP)の含量、エンドトキシンの含量、IEFにおけるパターンの観点にて確認した。
【0094】
目的タンパク質であるインターフェロンβから分離されるべきCHO細胞由来のタンパク質含量の測定には、酵素免疫測定法(ELISA)を用いた。希釈溶液を準備してプレートに分注しておき、分析用試料を最終的な容量の半分まで希釈した。希釈した試料と共に標準溶液を、分析用キットに含まれるプレートに移して分注し(このときにキット付属プレートには酵素結合抗体が塗布されている)、発色反応を起こす基質溶液を添加し、反応を誘導した。その後、プレートは、450nm波長での吸光度を測定し、標準検量曲線に対するCHO細胞由来のタンパク質の量を分析した。
【0095】
残留エンドトキシンのレベルを測定するために、LAL(リムルスアメーバ細胞溶解物、Limulus Amebocyte Lysate)分析法を活用した。エンドトキシン標準試料をLAL分析専用蒸留水によく混ぜて溶かした後、分析用のテストチューブに標準検量曲線を描くための濃度で準備した。その後、準備した濃度別標準試料、ゼロ点溶液、分析試料をプレートに同量で分注した。分析専用蒸留水にLAL試薬をよく溶かした後、先に用意したプレートに均等に分注し、反応を誘導した。反応が終わったプレートは、405nm波長での吸光度を測定し、目的材料に存在するエンドトキシンのレベルを測定した。
【0096】
IEFゲル分析に使える陽極バッファーと陰極バッファーを用意し、分析試料と標準試料の量が等しくなるように計算し、IEF分析バッファー(pH3-10)とそれぞれ混合し、分析用展開サンプルを作った。pH3-10のIEGゲルを展開容器に固定した後、展開容器の中には陽極バッファーを、外の空間に陰極バッファーを充填し、用意した試料をゲルに注入した。準備された展開容器に200Vで1時間、500Vで30分の順に従って展開した後、完了したゲルを分離し、クマシー染色及び脱色を行い、化学発光分析器を通じてタンパク質の等電点を決定した。
【0097】
【表3】
【0098】
その結果、CHO細胞のタンパク質は、比較例1の場合、65ppmであったが、本発明の方法によると、42ppmであった。両方とも通常の基準値である100ppm以下として示されたが、本発明においては、陰イオン交換クロマトグラフィーに次いで陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことによって、より低く示されたことが確認できた。
【0099】
エンドトキシンは、両方とも含有されず、IEF結果を確認した結果(図1)、比較例1においては約pH7.7付近に微量の塩基性変異体(basic variant)が確認できた反面(矢印)、本発明の方法においては、塩基性変異体が確認できず、より高純度の精製方法であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上記の通り、本発明において提供するインターフェロンβタンパク質の精製方法は、二糖化インターフェロンβタンパク質の精製収率が顕著に優れており、大量培養における製造管理及び品質管理が容易であり、医薬品としての使用における規制に適した優れる品質の二糖化インターフェロンβタンパク質を分離することができ、産業上の利用可能性が大きい。

図1
図2
【国際調査報告】