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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】人工心臓弁用のクリンピング装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576491
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020042141
(87)【国際公開番号】W WO2021016018
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/876,206
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オーレン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】オフィル・ウィッツマン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC12
4C097CC18
4C097MM09
4C097SB10
(57)【要約】
クリンピング装置がハウジングおよびクリンピングバンドを含む。ハウジングは、人口弁を受け入れるための内腔を有する。クリンピングバンドはハウジングに調整可能に結合され、第1の端部、第2の端部、およびループを有する。クリンピングバンドのループは内腔内に配置され、第1および第2の構成間で移動する。第1の構成において、ループは第1の直径を有し、径方向に拡張された構成の人口弁をループ内に径方向に配置することができるように構成される。第2の構成において、ループは第2の直径を有し、人口弁に径方向の力を加えて心臓弁を径方向に圧縮された構成へ移動させるように構成される。クリンピングバンドのループは、人口弁の軸方向長さの半分未満に接触するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁を受け入れるように構成された内腔を有するハウジングと、
前記ハウジングに調整可能に結合され、第1の端部、第2の端部、およびループを含むクリンピングバンドと、
を含むクリンピング装置であって、
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記ハウジングの前記内腔内に配置され、かつ第1の構成と第2の構成との間で移動することができ、
前記第1の構成において、前記クリンピングバンドの前記ループは、第1の直径を有し、かつ径方向に拡張された構成の前記人工心臓弁を前記ループ内に径方向に配置することができるように構成されており、
前記第2の構成において、前記クリンピングバンドの前記ループは、第2の直径を有し、かつ前記人工心臓弁に径方向の力を加えて、前記人工心臓弁を前記径方向に拡張された構成から径方向に圧縮された構成へ移動させるように構成され、
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記人工心臓弁の軸方向長さの半分未満に接触するように構成される、クリンピング装置。
【請求項2】
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記人工心臓弁の前記軸方向長さの4分の1未満に接触するように構成される、請求項1に記載のクリンピング装置。
【請求項3】
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記人工心臓弁の前記軸方向長さの8分の1未満に接触するように構成される、請求項1に記載のクリンピング装置。
【請求項4】
前記クリンピングバンドの前記第1の端部は前記ハウジングに対して固定され、前記クリンピングバンドの前記第2の端部は、前記クリンピングバンドの前記ループを前記第1の構成と前記第2の構成との間で移動させるように前記ハウジングに対して移動可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項5】
前記クリンピングバンドの前記第1および第2の端部は、前記クリンピングバンドの前記ループを前記第1の構成と前記第2の構成との間で移動させるように前記ハウジングに対して移動可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記内腔から前記ハウジングの外面まで延在するバンド開口を含み、前記バンド開口は、前記クリンピングバンドが前記バンド開口を通って延在することができるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項7】
前記ハウジングの前記バンド開口は作動部分およびロック部分を含み、前記クリンピングバンドが前記バンド開口の前記作動部分と径方向に位置を合わせているとき、前記クリンピングバンドは前記ハウジングに対して移動することができ、前記クリンピングバンドが前記バンド開口の前記ロック部分と径方向に位置を合わせているとき、前記ハウジングは前記クリンピングバンドと前記ハウジングとの間の相対移動を制限する、請求項6に記載のクリンピング装置。
【請求項8】
前記ハウジングに結合され、前記クリンピングバンドと前記ハウジングとの間の相対移動を制限するように構成されたロック機構をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項9】
前記ロック機構は、前記ハウジングの前記バンド開口に隣接して配置されている、請求項8に記載のクリンピング装置。
【請求項10】
前記ロック機構は複数の顎部を含み、前記顎部は、前記クリンピングバンドから離間した開構成と前記クリンピングバンドに接触する閉構成との間で移動可能である、請求項8または9に記載のクリンピング装置。
【請求項11】
前記顎部は、前記顎部を前記閉構成に保持するように構成された嵌合フィーチャを含む、請求項10に記載のクリンピング装置。
【請求項12】
前記顎部の前記嵌合フィーチャは、前記顎部から延在するインターロックタブを含む、請求項11に記載のクリンピング装置。
【請求項13】
前記クリンピングバンドは、前記人工心臓弁が完全に径方向に圧縮されていることをユーザに示すように構成されたインジケータを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項14】
前記クリンピングバンドから外向きに延在する1つ以上のストッパ要素をさらに含み、前記ストッパ要素は、前記クリンピングバンドと前記ハウジングとの間の相対移動を制限するように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項15】
前記クリンピングバンドは1つのループのみを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項16】
機械的拡張型人工心臓弁用のクリンピング装置であって、
ベースおよび本体を含むハウジングであって、前記本体は前記ベースから延在し、機械的拡張型人工心臓弁を受け入れるように構成された内腔を含み、前記本体は第1の開口および第2の開口をさらに含み、前記第1の開口および前記第2の開口は離間し、前記内腔を画定する前記本体の内面から前記本体の外面まで延在する、ハウジングと、
第1の端部、第2の端部、ならびに前記第1および第2の端部間に配置された1つのみのループを含むクリンピングバンドであって、前記クリンピングバンドの前記ループは、前記機械的拡張型人工心臓弁の軸方向長さ未満の幅を含む、クリンピングバンドと、
を含む、クリンピング装置。
【請求項17】
前記クリンピングバンドは可撓性ポリマーバンドである、請求項16に記載のクリンピング装置。
【請求項18】
前記クリンピングバンドは可撓性縫合糸である、請求項16に記載のクリンピング装置。
【請求項19】
前記クリンピングバンドは可撓性ワイヤである、請求項16に記載のクリンピング装置。
【請求項20】
埋め込み型装置をクリンプする方法であって、
前記埋め込み型装置をクリンピングバンドのループ内に配置するステップであって、前記埋め込み型装置は径方向に拡張された状態にある、ステップと、
前記ループの直径が減少し、前記埋め込み型装置の第1の部分に接触し、前記埋め込み型装置を径方向に圧縮された構成へ移動させるように前記クリンピングバンドを引っ張るステップであって、前記クリンピングバンドは、前記クリンピングバンドが引っ張られたとき、前記埋め込み型装置に径方向の圧縮力を加えるように構成され、前記埋め込み型装置の前記第1の部分は、前記埋め込み型装置の軸方向長さの半分未満を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
クリンピングバンドが引っ張られている間に前記埋め込み型装置の第2の部分にわたって送達装置のカプセルを前進させるステップをさらに含み、前記第2の部分は、前記埋め込み型装置の軸方向長さの半分未満を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記クリンピングバンドを緩め、前記埋め込み型装置の前記第1の部分および前記埋め込み型装置の第3の部分にわたって前記送達装置の前記カプセルを前進させるステップをさらに含み、前記埋め込み型装置の前記第1の部分、前記第2の部分、および前記第3の部分は一緒に、前記埋め込み型装置の前記軸方向長さを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
内腔および1つ以上のバンド開口を有するハウジングであって、前記内腔は、その中に人工心臓弁を受け入れるように構成されている、ハウジングと、
前記ハウジングに調整可能に結合され、第1の端部、第2の端部、およびループを含むクリンピングバンドと、
を備えるクリンピング装置であって、
前記第1の端部は前記ハウジングに結合され、前記第2の端部は前記1つ以上のバンド開口を通って延在し、前記クリンピングバンドの前記ループは、前記ハウジングの前記内腔内に配置されかつ第1の構成と第2の構成との間で移動することができ、
前記第1の構成において、前記クリンピングバンドの前記ループは、第1の直径を有し、径方向に拡張された構成の前記人工心臓弁を前記ループ内に径方向に配置することができるように構成されており、
前記第2の構成において、前記クリンピングバンドの前記ループは、第2の直径を有し、前記人工心臓弁に径方向の力を加えて、前記人工心臓弁を前記径方向に拡張された構成から径方向に圧縮された構成へ移動させるように構成される、クリンピング装置。
【請求項24】
前記クリンピングバンドの前記第1の端部は前記ハウジングに固定的に結合されている、請求項23に記載のクリンピング装置。
【請求項25】
前記クリンピングバンドの前記第1の端部は前記ハウジングに可動に結合されている、請求項23に記載のクリンピング装置。
【請求項26】
前記1つ以上のバンド開口は複数のバンド開口である、請求項23から25のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項27】
前記複数のバンド開口は第1のバンド開口および第2のバンド開口を含み、前記クリンピングバンドの前記第1の端部は前記第1のバンド開口を通って延在し、前記クリンピングバンドの前記第2の端部は前記第2のバンド開口を通って延在する、請求項26に記載のクリンピング装置。
【請求項28】
前記1つ以上のバンド開口の少なくとも1つが作動部分およびロック部分を含む、請求項23から27のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項29】
前記1つ以上のバンド開口の前記少なくとも1つは、前記ロック部分でより前記作動部分で大きい、請求項28に記載のクリンピング装置。
【請求項30】
前記1つ以上のバンド開口の前記少なくとも1つは、前記作動部分と前記ロック部分との間に配置された接続部分を含む、請求項28または29に記載のクリンピング装置。
【請求項31】
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記人工心臓弁の前記軸方向長さの4分の1未満に接触するように構成される、請求項23から30のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項32】
前記クリンピングバンドの前記ループは、前記人工心臓弁の前記軸方向長さの8分の1未満に接触するように構成される、請求項23から31のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項33】
前記クリンピングバンドは1つ以上のストッパ要素を含む、請求項23から32のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項34】
前記1つ以上のストッパ要素は、互いに対して軸方向に離間している複数のストッパ要素である、請求項33に記載のクリンピング装置。
【請求項35】
前記ハウジングに結合され、前記クリンピングバンドと前記ハウジングとの間の相対移動を制限するように構成されたロック機構をさらに含む、請求項23から34のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項36】
前記ロック機構は、前記1つ以上のバンド開口に隣接して配置されている、請求項35に記載のクリンピング装置。
【請求項37】
前記ロック機構は複数の顎部を含み、前記顎部は、前記クリンピングバンドから離間した開構成と前記クリンピングバンドに接触する閉構成との間で移動可能である、請求項35または36に記載のクリンピング装置。
【請求項38】
前記顎部は、前記顎部を前記閉構成に保持するように構成された嵌合フィーチャを含む、請求項37に記載のクリンピング装置。
【請求項39】
前記顎部の前記嵌合フィーチャは、前記顎部から延在するインターロックタブを含む、請求項38に記載のクリンピング装置。
【請求項40】
前記クリンピングバンドは、前記人工心臓弁が完全に径方向に圧縮されていることをユーザに示すように構成されたインジケータを含む、請求項23から39のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項41】
前記クリンピングバンドは1つのループのみを有する、請求項23から40のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項42】
前記クリンピングバンドに加えられる力を限定および/または表示するように構成された力制御機構をさらに含む、請求項1から19または23から41のいずれか一項に記載のクリンピング装置。
【請求項43】
前記力制御機構はばね荷重計を含む、請求項42に記載のクリンピング装置。
【請求項44】
前記力制御機構は、前記クリンピングバンドに加えられた力が所定の大きさに到達すると伸長する前記クリンピングバンドの一部を含む、請求項42に記載のクリンピング装置。
【請求項45】
機械的拡張型人工心臓弁と、
請求項1から19または23から44のいずれか一項に記載のクリンピング装置と、
を含むアセンブリ。
【請求項46】
送達装置をさらに含む、請求項45に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年7月19日に出願された米国出願第62/876,206号の利益を主張するものであり、この特許出願を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、一般に人工心臓弁に関し、より詳細には人工心臓弁用のクリンピング装置に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の心臓はさまざまな弁膜症を患う可能性がある。これらの弁膜症の結果、心臓の重大な機能不全を引き起こす可能性があり、最終的には自然弁の修復または自然弁の人工弁との交換が要求される。いくつかの既知の修復装置(たとえば、ステント)および人工弁、ならびにこれらの装置および弁を人に移植するいくつかの既知の方法がある。経皮的で低侵襲の外科的アプローチは、外科手術によって容易にアクセス可能でない、または外科手術なしでのアクセスが望ましい体内の場所に人工医療機器を送達するさまざまな手順で用いられる。1つの具体的な例において、人工心臓弁をクリンプ状態で送達装置の遠位端に取り付け、人工心臓弁が心臓内の移植部位に到達するまで患者の血管系を通して(たとえば、大腿動脈および大動脈を通して)前進させることができる。次いで人工心臓弁をその機能的サイズに拡張する。バルーン拡張型、自己拡張型、および機械的拡張型を含む、さまざまなタイプの拡張可能人工心臓弁がある。
【0004】
機械的拡張型人工心臓弁は、一緒に枢動可能に接続された複数の支柱を備えたフレームを含むことができる。フレームの枢動可能に接続された支柱は、フレームに結合された機械的アクチュエータを作動させることによって、径方向に拡張された構成と径方向に圧縮された構成との間で移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10,603,165号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0311039号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0344456号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0060057号明細書
【特許文献5】国際公開第2020/081893号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機械的拡張型人工心臓弁の独特の構成のため、機械的拡張型人工心臓弁のために特別に構成された装置および方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるのは、人工心臓弁およびステントを含む、機械的拡張型の人工機器のために特別に構成された装置および方法である。特に、本開示は、機械的拡張型の人工物をクリンプするために構成されたさまざまな装置および方法を説明する。開示されるクリンピング装置および方法は、以下でさらに説明するように、先行のクリンピング装置および方法に勝る利点を提供することができる。
【0008】
1つの代表的な実施形態において、クリンピング装置がハウジングおよびクリンピングバンドを含む。ハウジングは、人工心臓弁を受け入れるように構成された内腔を有する。クリンピングバンドはハウジングに調整可能に結合され、第1の端部、第2の端部、およびループを含む。クリンピングバンドのループはハウジングの内腔内に配置され、第1の構成と第2の構成との間で移動することができる。第1の構成において、クリンピングバンドのループは第1の直径を有し、径方向に拡張された構成の人工心臓弁をループ内に径方向に配置することができるように構成される。第2の構成において、クリンピングバンドのループは第2の直径を有し、人工心臓弁に径方向の力を加えて、人工心臓弁を径方向に拡張された構成から径方向に圧縮された構成へ移動させるように構成される。クリンピングバンドのループは、人工心臓弁の軸方向長さの半分未満に接触するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドのループは、人工心臓弁の軸方向長さの4分の1未満に接触するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドのループは、人工心臓弁の軸方向長さの8分の1未満に接触するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドの第1の端部はハウジングに対して固定され、クリンピングバンドの第2の端部は、クリンピングバンドのループを第1の構成と第2の構成との間で移動させるようにハウジングに対して移動可能である。
【0012】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドの第1および第2の端部は、クリンピングバンドのループを第1の構成と第2の構成との間で移動させるようにハウジングに対して移動可能である。
【0013】
いくつかの実施形態において、ハウジングは、ハウジングの内腔からハウジングの外面まで延在するバンド開口を含み、バンド開口は、クリンピングバンドがそれを通って延在することができるように構成されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、ハウジングのバンド開口は作動部分およびロック部分を含む。クリンピングバンドがバンド開口の作動部分と径方向に位置を合わせているとき、クリンピングバンドはハウジングに対して移動することができ、クリンピングバンドがバンド開口のロック部分と径方向に位置を合わせているとき、ハウジングはクリンピングバンドとハウジングとの間の相対移動を制限する。
【0015】
いくつかの実施形態において、クリンピング装置は、ハウジングに結合され、クリンピングバンドとハウジングとの間の相対移動を制限するように構成されたロック機構をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、ロック機構は、ハウジングのバンド開口に隣接して配置されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、ロック機構は複数の顎部を含み、顎部は、クリンピングバンドから離間した開構成とクリンピングバンドに接触する閉構成との間で移動可能である。
【0018】
いくつかの実施形態において、顎部は、顎部を閉構成に保持するように構成された嵌合フィーチャを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、顎部の嵌合フィーチャは、顎部から延在するインターロックタブを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドは、人工心臓弁が完全に径方向に圧縮されていることをユーザに示すように構成されたインジケータを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、クリンピング装置は、クリンピングバンドから外向きに延在する1つ以上のストッパ要素をさらに含み、ストッパ要素は、クリンピングバンドとハウジングとの間の相対移動を制限するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドは1つのループのみを有する。
【0023】
他の代表的な一実施形態において、機械的拡張型人工心臓弁用のクリンピング装置がハウジングおよびクリンピングバンドを含む。ハウジングはベースおよび本体を含む。本体はベースから延在し、機械的拡張型人工心臓弁を受け入れるように構成された内腔を含む。本体は第1の開口および第2の開口をさらに含む。第1の開口および第2の開口は離間し、内腔を画定する本体の内面から本体の外面まで延在する。クリンピングバンドは、第1の端部、第2の端部、および第1および第2の端部間に配置された1つのみのループを含む。クリンピングバンドのループは、機械的拡張型人工心臓弁の軸方向長さ未満の幅を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドは可撓性ポリマーバンドである。
【0025】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドは可撓性縫合糸である。
【0026】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンドは可撓性ワイヤである。
【0027】
他の代表的な一実施形態において、埋め込み型装置をクリンピングする方法が提供される。この方法は、埋め込み型装置が径方向に拡張された状態で埋め込み型装置をクリンピングバンドのループ内に配置することを含む。この方法は、ループの直径が減少し、埋め込み型装置の第1の部分に接触し、埋め込み型装置を径方向に圧縮された構成へ移動させるようにクリンピングバンドを引っ張ることをさらに含む。クリンピングバンドは、クリンピングバンドが引っ張られたとき、埋め込み型装置に径方向の圧縮力を加えるように構成されている。埋め込み型装置の第1の部分は、埋め込み型装置の軸方向長さの半分未満を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、この方法は、クリンピングバンドが引っ張られている間に埋め込み型装置の第2の部分上で送達装置のカプセルを前進させることをさらに含む。第2の部分は、埋め込み型装置の軸方向長さの半分未満を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、この方法は、クリンピングバンドを緩め、埋め込み型装置の第1の部分および埋め込み型装置の第3の部分上で送達装置のカプセルを前進させることをさらに含む。埋め込み型装置の第1の部分、第2の部分、および第3の部分は一緒に、埋め込み型装置の軸方向長さを含む。
【0030】
本開示のさまざまな革新は、組み合わせてまたは別個に用いることができる。この概要は、詳細な説明において以下でさらに説明する概念の選択を簡略化した形式で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定するように意図されておらず、特許請求された主題の範囲を限定するために用いられるようにも意図されていない。本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、次の詳細な説明、請求項、および付随する図からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例示的なクリンピング装置の斜視図である。
図2図1のクリンピング装置のクリンピングバンドの斜視図である。
図3図1のクリンピング装置のロック機構の詳細図であり、ロック解除構成のロック機構を示している。
図4図1のクリンピング装置のロック機構の詳細図であり、ロック構成のロック機構を示している。
図5図1のクリンピング装置および例示的な送達アセンブリの斜視図であり、送達アセンブリは人工心臓弁および送達装置を含む。
図6図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、径方向に拡張された構成で、クリンピング装置内に径方向に配置された人工心臓弁を示している。
図7図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、クリンピング装置内に径方向に配置され、径方向に圧縮された構成の人工心臓弁を示している。
図8】力制御機構、図1のクリンピング装置、および図5の送達アセンブリの斜視図であり、クリンピング装置に結合された力制御機構を示している。
図9図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、クリンピング装置のロック機構によって径方向に圧縮された構成で保持された人工心臓弁を示している。
図10図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、クリンピング装置のロック機構および送達装置のカプセルによって径方向に圧縮された構成で保持された人工心臓弁を示している。
図11図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、送達装置のカプセルによって径方向に圧縮された構成で保持され、クリンピング装置から解放された人工心臓弁を示している。
図12図1のクリンピング装置および図5の送達アセンブリの斜視図であり、送達装置のカプセル内へ完全に装填された人工心臓弁を示している。
図13】他の例示的なクリンピング装置の斜視図であり、緩められた状態のクリンピングバンドを示している。
図14図13のクリンピング装置の斜視図であり、引っ張られた状態のクリンピングバンドを示している。
図15図13のクリンピング装置のハウジングの詳細側面図である。
図16図13のクリンピング装置の詳細斜視図であり、ロック解除構成のクリンピングバンドを示している。
図17図13のクリンピング装置の詳細斜視図であり、ロック構成のクリンピングバンドを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
全体的な考慮事項
【0033】
この説明の目的のため、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特徴を本明細書で説明する。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる方法でも限定的であるとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独でならびに互いにさまざまな組み合わせおよび部分的組み合わせにおいて、さまざまな開示された実施形態のすべての新規で非自明な特徴および態様に向けられている。これらの方法、装置、およびシステムは、いかなる特定の態様もしくは特徴またはこれらの組み合わせに限定されず、開示された実施形態には、任意の1つ以上の具体的な利点が存在することも問題が解決されることも要求されない。
【0034】
開示された実施形態のいくつかの動作は、都合よく提示するために特定の、連続的な順序で説明しているが、この説明の方法は、以下に示す具体的な文言によって特定の順序が要求されない限り、再配置を含むことが理解されるべきである。たとえば、順番に説明する動作をいくつかの場合において再配置または同時に実行することができる。また、簡単にするため、添付の図は、開示された方法を他の方法と併せて用いることができるさまざまな方法を示していないことがある。加えて、説明では時には「提供する」または「達成する」のような用語を用いて開示された方法を説明している。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて変化することがあるが、当業者によって容易に識別可能である。
【0035】
本願においておよび請求項において用いられるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含む。加えて、「includes(含む)」という用語は「comprises(備える)」を意味する。さらに、「結合された」という用語は通常、物理的、機械的、化学的、磁気的、および/または電気的に結合または連結されていることを意味し、具体的な反対の文言がなければ、結合または関連する項目間の中間要素の存在を排除しない。
【0036】
本明細書で用いられるとき、「近位」という用語は、ユーザの方に近く、移植部位の方から遠い装置の位置、方向、または部分を指す。本明細書で用いられるとき、「遠位」という用語は、ユーザの方から遠く、移植部位の方に近い装置の位置、方向、または部分を指す。したがって、たとえば、装置の近位運動は、移植部位から離れてユーザに向かう(たとえば、患者の体外へ)装置の運動である一方、装置の遠位運動は、ユーザから離れて移植部位に向かう(たとえば、患者の体内へ)装置の運動である。「長手方向」および「軸方向」という用語は、他に明確に定義されていない限り、近位および遠位方向に延在する軸を指す。
【0037】
例示的な実施形態
【0038】
本明細書に開示されるのは、機械的拡張型人工心臓弁のために特別に構成された装置および方法であるが、開示される装置および方法は、いくつかの場合において他のタイプの人工心臓弁(たとえば、バルーン拡張型および/または自己拡張型人工心臓弁)または他の人工物(たとえば、ステント)で用いることができる。特に、本開示は、機械的拡張型人工心臓弁を径方向に圧縮する(「クリンピング」)ために構成されたさまざまな装置および方法を説明する。
【0039】
開示される装置および方法は、人工心臓弁に加えられる局所的なクリンピング力の結果として均一に畳む/クリンプすることができる、機械的拡張型人工心臓弁のような、いくつかの弁のクリンピング挙動を活用および/または利用するように構成されている。換言すれば、本明細書に開示される装置および方法は、弁の一部を畳む結果、人工心臓弁全体を畳むことになる人工心臓弁をクリンプするのに特に有利であり得る。
【0040】
したがって、開示されるクリンピング装置および方法は、特に機械的拡張型人工心臓弁で用いられるとき、先行のクリンピング装置および方法に勝る利点を提供することができる。たとえば、開示されたクリンピング装置は迅速かつ容易に用いられる。開示されるクリンピング装置はまた、移動部品/機構が比較的少ないため、典型的なクリンピング装置より製造が簡単、安全、安価である。追加の特徴および利点を以下に説明する。
【0041】
図1は、一実施形態によるクリンピング装置100を示す。クリンピング装置100は、2つの主要な構成要素、すなわち、ハウジング102およびクリンピングバンド104を含むことができる。いくつかの実施形態において、クリンピング装置100は、ロック機構106も含むことができる。ハウジング102は、クリンピングバンド104および/またはロック機構106を支持するように構成することができる。クリンピングバンド104はループ108を形成することができ、投げ縄のような方法で、ハウジング102およびロック機構106に対して移動してループ108のサイズを調整することができる。ロック機構106は、ハウジング102に対してクリンピングバンド104を選択的に固定し、これによってループ108を所望の構成で固定することができる。したがって、クリンピング装置100を用いて、たとえば、図5図12に示すように、機械的拡張型人工心臓弁を径方向に拡張された構成(たとえば、機能的構成)から径方向に圧縮された構成(たとえば、送達構成)へ径方向に圧縮またはクリンプすることができる。クリンピング装置100に関する追加の詳細およびクリンピング装置100を用いて人工心臓弁をクリンプする方法を以下に提供する。
【0042】
再び図1を参照すると、クリンピング装置100のハウジング102は、ベース110および本体112を含むことができる。ハウジング102のベース110は、クリンピング装置100を支持および/または安定化するように構成することができる。本体112はベース110から延在し、クリンピングバンド104を支持するように、そして人工心臓弁を受け入れるように構成することができる。
【0043】
ハウジング102のベース110は、いくつかの場合において、テーブルまたはベンチを係合するように構成することができる。いくつかの実施形態において、ベース110は、ハウジング102をテーブルに取り付けることができるように構成された1つ以上の取り付けフィーチャを含むことができる。たとえば、取り付けフィーチャは、ハウジング102をテーブルに結合することができる留め具(たとえば、ボルト、ねじなど)を受け入れるように構成された開口、スロットなどを含むことができる。いくつかの実施形態において、ベース110の1つ以上の表面は、ベース110とベース110が配置される表面(たとえば、テーブル)との間の摩擦係合を強化するように構成された摩擦要素(たとえば、ポリマーパッドおよび/またはコーティング)を含むことができる。
【0044】
ハウジング102の本体112は、人工心臓弁および/または送達装置を受け入れるように構成された内腔114を含むことができる(たとえば、図6参照)。本体112はまた、クリンピングバンド104を受け入れるために構成された1つ以上の開口を含むことができる。たとえば、図示の実施形態において、本体112は、第1の開口116および第2の開口118を含む。第1および第2の開口116、118は、本体112の外面120から、内腔114を画定する、本体112の内面122まで延在することができる。
【0045】
本体112における第1および第2の開口116、118は、内腔114の周りで互いに対して周方向に離間することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、第1および第2の開口116、118は、本体112に対して互いに真向かいにある(たとえば、180度離れている)。他の実施形態において、第1および第2の開口116、118は、互いに対して周方向に約90~180度離間することができる。いくつかの実施形態において、第1および第2の開口116、118は、互いに対して周方向に約135~180度離間することができる。
【0046】
図示していないが、いくつかの実施形態において、本体112は、内面122に形成された溝または窪みを含むこともできる。溝は、クリンピングバンド104のループ108を少なくとも部分的に受け入れてクリンピングバンド104のループを本体112の内面122に対して選択的に保持する(たとえば、人工心臓弁を内腔114内に配置するとき)ように構成することができる。
【0047】
図示の実施形態において、本体112の外面120は、本体112が略環状の形状を含むように略U形状を含む。他の実施形態において、本体112の外面120は、さまざまな他の形状(たとえば、長方形、三角形など)を含むことができる。
【0048】
ハウジング102は、ポリマー、金属、複合材料などのようなさまざまな材料で形成することができる。
【0049】
図2を参照すると、クリンピング装置100のクリンピングバンド104は、第1の端部124および第2の端部126を含むことができる。上記のように、クリンピングバンド104は、第1および第2の端部124、126間にループ108を形成するように配置することができる。いくつかの場合において、クリンピングバンド104は1つのループのみを有する。他の場合において、クリンピングバンド104は複数のループ(たとえば、2~5)を含むことができる。いくつかの実施形態において、ループ108は、クリンピングバンド104をらせん状に巻くことによって形成することができる。他の実施形態において、ループ108は、クリンピングバンド104に結び目(たとえば、止め結び)を結ぶことによって形成することができる。
【0050】
図1を参照すると、クリンピングバンド104は、クリンピングバンド104の第1の端部124がハウジング102の第1の開口116を通って延在し、クリンピングバンド104のループ108がハウジング102の内腔114内に配置され、クリンピングバンド104の第2の端部126がハウジング102の第2の開口118を通って延在するように、ハウジング102に結合することができる。クリンピングバンド104を引っ張ってまたは緩めてループ108の直径を調整することができる。
【0051】
クリンピングバンド104およびハウジング102の第1および第2の開口116、118は、クリンピングバンド104がハウジング102の第1および第2の開口116、118に対して移動することができるように構成することができる。したがって、クリンピングバンド104のループ108の直径は、クリンピングバンド104を引っ張るまたは緩めることによって調整することができる。いくつかの実施形態において、クリンピングバンド104の第1および第2の端部124、126の両方が、ハウジング102に対して移動することができる。このような実施形態において、クリンピングバンド104は、第1および第2の端部124、126の両方を互いに離れるように移動させることによって(たとえば、両端部を引っ張ることによって)張力をかけることができる。他の実施形態において、図示の実施形態に示すように、クリンピングバンド104の一方の端部(たとえば、第1の端部124)をハウジング102に対して固定したままにすることができ、クリンピングバンド104の他方の端部(たとえば、第2の端部126)をハウジング102に対して移動させることができる。このような実施形態において、クリンピングバンドの自由端をクリンピングバンド104の固定端から離れるように移動させることによって、クリンピングバンド104に張力をかけることができる。
【0052】
クリンピングバンド104の張力は、手動および/または自動で調整することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、手によってクリンピングバンド104を手動で引っ張る/緩めることによって、クリンピングバンド104を引っ張るおよび/または緩めることができる。他の実施形態において、クリンピングバンド104は、クリンピングバンド104(および/またはスプール)を電気モータに結合することなどによって、自動的に調整することができる。このような実施形態において、クリンピング装置100は、電気モータを作動させるように構成された1つ以上のアクチュエータ(たとえば、ボタン、スイッチなど)をさらに含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、クリンピングバンド104の一端部をハウジング102に対して固定することができる。たとえば、クリンピングバンド104の一端部を接着剤および/または留め具でハウジング102に固定することができる。他の一例として、クリンピングバンド104の一端部をハウジング102と一体的に形成(たとえば、共成形)することができる。さらに他の一例として、クリンピングバンド104は、その上に配置および/またはそれに結合され、クリンピングバンド104とハウジング102との間の移動を制限するように構成されたストッパ要素を有することができる。図示の実施形態において、クリンピングバンド104は、クリンピングバンド104の第1の端部124に配置されたストッパ要素128を有する。クリンピングバンド104に張力が加えられたとき(たとえば、クリンピングバンド104の第2の端部126がハウジング102から引き離されたとき)、クリンピングバンド104の第1の端部124が第1の開口116を「通り抜ける」ことができないように、ストッパ要素128はハウジング102の第1の開口116より大きくすることができる。
【0054】
図示の実施形態において、ストッパ要素128は、クリンピングバンド104の主要部分と一体的に形成されてここから径方向外向きに延在するフランジを含む。他の実施形態において、ストッパ要素は、クリンピングバンド104に形成された結び目とすることができる。さらに他の実施形態において、ストッパ要素は、クリンピングバンド104の端部に結合された(たとえば、クランプされた)フェルール、キャップ、および/または他の部材とすることができる。
【0055】
クリンピングバンド104は、バンド、コード、ワイヤ、縫合糸などのような可撓性要素とすることができる。クリンピングバンド104はさまざまな材料で形成することができる。たとえば、クリンピングバンド104は、ポリマー(たとえば、ナイロン、ポリエチレン(PE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)(たとえば、Dyneema(登録商標)繊維)など)および/または金属(たとえば、ステンレス鋼、ニチノール、チタンなど)で形成することができる。
【0056】
図示の実施形態において、クリンピングバンド104は、クリンピングバンド104の長手方向軸に垂直な平面において略円形の断面輪郭を有する。他の実施形態において、クリンピングバンド104は、さまざまな他の断面輪郭(たとえば、長方形、卵形など)を有することができる。
【0057】
図1を参照すると、クリンピング装置100のロック機構106はハウジング102に結合させることができる。図3図4に移ると、ロック機構106は、ロック解除構成(図3)とロック構成(図4)との間で移動して、クリンピングバンド104とロック機構106(およびハウジング102)との間の相対移動を選択的に制限することができる。したがって、ロック機構106を用いてクリンピングバンド104を所望の構成(たとえば、特定の直径および/または引っ張られた/緩められた状態)に選択的に保持することができる。
【0058】
ロック機構106は一対の顎部130を含むことができる。ロック機構106の顎部130は、顎部130が開状態(たとえば、図3)と閉状態(たとえば、図4)との間で移動することができるように、一緒に枢動可能に結合することができる。開状態において、ロック機構106の顎部130は、クリンピングバンド104が顎部130およびハウジング102に対して移動することができるように、クリンピングバンド104から離間している。したがって、顎部130が開状態で、クリンピングバンド104の第2の端部126は、ロック機構106およびハウジング102に対して移動してクリンピングバンド104のループ108の直径を調整することができる。閉状態において、ロック機構106の顎部130はクリンピングバンド104の第2の端部126を係合し、これによって、クリンピングバンド104のループ108の直径が固定されるように、クリンピングバンド104、ロック機構106、およびハウジング102の間の相対移動を制限する。
【0059】
いくつかの実施形態において、ロック機構106の顎部130は嵌合フィーチャ132を有することができる。嵌合フィーチャ132は、図4に示すように、顎部を閉状態に解放可能に固定することができるように、互いに係合するように構成することができる。たとえば、顎部130の嵌合フィーチャ132は、互いに重複および係合するように(たとえば、止血鉗子のロックフィーチャと同様に)構成されたタブを含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、ロック機構106の顎部130の1つ以上は、クリンピングバンド104の一部を受け入れるように構成された窪みを含むことができる。窪みは、クリンピングバンド104に接触する顎部の表面積を増加させることによって顎部130とクリンピングバンド104との間の摩擦係合を改善するように構成することができる。いくつかの実施形態において、窪みは、クリンピングバンド104の長手方向軸に垂直な平面において半円形の断面輪郭を含むことができる。
【0061】
窪みの代わりに、またはこれに加えて、ロック機構106の顎部130は、1つ以上の摩擦増大要素またはコーティングを含むことができる。たとえば、顎部130は、顎部130とクリンピングバンド104との間の摩擦係合を増大させるように構成された突起(たとえば、リブ)および/または質感(たとえば、滑らかでない)を含むことができる。加えて、またはあるいは、顎部130は、顎部130とクリンピングバンド104との間の摩擦係合を増大させるコーティングを含むことができる。
【0062】
図示の実施形態において、クリンピング装置100は1つのロック機構106のみを含み、これはハウジング102の第2の開口118に隣接して配置され、クリンピングバンド104の第2の端部126を係合するように構成されている。他の実施形態において、ロック機構106は、第1の開口116に隣接して配置することができる。さらに他の実施形態において、クリンピング装置100は、1より多く(たとえば、2つ)のロック機構を含むことができる。たとえば、クリンピング装置は、ハウジングの各開口に隣接して配置され、クリンピングバンドのそれぞれの端部を係合するように構成されたロック機構を含むことができる。
【0063】
クリンピング装置100を用いて、たとえば、人工心臓弁を径方向に拡張された構成から径方向に圧縮された構成へクリンプすることができる。人工心臓弁は、人工心臓弁を移植するために構成された送達装置に解放可能に結合することができる。たとえば、図5図12は、人工心臓弁202および送達装置204を含む送達アセンブリ200で用いられているクリンピング装置100を示す。クリンピング装置100を用いて人工心臓弁202を径方向に圧縮し、人工心臓弁202が送達装置204のカプセル206に装填されている間、人工心臓弁202を径方向に圧縮された状態に保持することができる。例示的なクリンピング手順および送達アセンブリ200の追加の詳細を以下に提供する。
【0064】
図5を参照すると、送達アセンブリ200の人工心臓弁202は、フレーム208および弁構造(例示の目的のために図示せず)を含むことができる。人工心臓弁202のフレーム208は、一緒に枢動可能に結合された複数の支柱を有することができる。したがって、人工心臓弁202のフレーム208は、人工心臓弁202に力(たとえば、径方向および/または軸方向)を加えることによって、径方向に拡張され軸方向に短縮された構成(たとえば、図5)と径方向に圧縮され軸方向に細長い構成(たとえば、図7)との間で移動することができる。人工心臓弁202は、機械的拡張型人工心臓弁と呼ぶことができる。
【0065】
人工心臓弁202のフレームの支柱は互いに対して枢動することができるため、人工心臓弁202(および/または他の機械的拡張型人工心臓弁)を径方向に圧縮するために必要とされる力は、典型的な自己拡張型およびバルーン拡張型人工心臓弁を径方向に圧縮するために要求される力より比較的少ない。
【0066】
図示していないが、人工心臓弁202は、フレーム208に力を加えるように、および/またはフレーム208を所望の構成にロックするように構成された1つ以上の機械的アクチュエータを含むことができる。例示的な機械的拡張型人工弁に関する追加の詳細は、たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4、ならびに国際公開第特許文献5に見出すことができ、これらを参照により本明細書に組み込む。
【0067】
さらに図5を参照すると、送達アセンブリ200の送達装置204は、第1のシャフト210(これは「外側シャフト210」と呼ぶこともできる)、第2のシャフト212(これは「内側シャフト212」と呼ぶこともできる)、およびノーズコーン214を含むことができる。外側シャフト210は、外側シャフト210の遠位端部に配置され、径方向に圧縮された中の人工心臓弁を受容および保持するように構成されたカプセル206(これは「シース」と呼ぶこともできる)を含むことができる。内側シャフト212は、外側シャフト210を通って延在することができる。ノーズコーン214は、内側シャフト212の遠位端部に結合することができる。内側および外側シャフト210、212は互いに対して移動することができる。図示していないが、送達装置204は、人工心臓弁202を送達装置204に解放可能に結合するために構成された1つもしくは複数の追加のシャフトおよび/またはシャフト210、212に結合された1つもしくは複数のハンドルを含む、1つ以上の他の構成要素を含むことができる。送達装置および人工心臓弁を送達装置に結合することに関するさらなる詳細は、たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献4に見出すことができる。
【0068】
人工心臓弁202を受け入れるように送達装置204を準備するため、送達装置204の内側シャフト212は、図5に示すように、ノーズコーン214がカプセル206の遠位端に対して遠位に配置されるように外側シャフト210に対して配置することができる。人工心臓弁202は、人工心臓弁202がノーズコーン214とカプセル206の遠位端との間に軸方向に配置されるように、ノーズコーン214および内側シャフト212にわたって配置することができる。
【0069】
図示していないが、人工心臓弁は、送達装置に解放可能に結合することができる。これは、たとえば、送達装置の作動シャフトを人工心臓弁の1つ以上のアクチュエータに解放可能に結合することによって達成することができる。
【0070】
図6を参照すると、送達アセンブリ200は、ノーズコーン214および内側シャフト212の遠位端がクリンピング装置100の内腔114(図5)を通って延在し、人工心臓弁202がクリンピング装置100の内腔114内に配置されるように、クリンピング装置100に対して配置される。
【0071】
図6に示すように、クリンピング装置100は、クリンピングバンド104が人工心臓弁202の軸方向長さの一部のみに軸方向に重複および接触するように構成することができる。本明細書で用いられるとき、人工心臓弁の軸方向長さは、フレームが完全に拡張された、機能的構成にあるとき、フレームの流入端からフレームの流出端まで測定されたときの人工心臓弁のフレームの長さである。いくつかの実施形態において、クリンピングバンド104は、人工心臓弁202の軸方向長さの半分未満に軸方向に重複および接触することができる。いくつかの実施形態において、クリンピングバンド104は、人工心臓弁202の軸方向長さの4分の1未満に軸方向に重複および接触することができる。特定の実施形態において、クリンピングバンド104は、人工心臓弁202の軸方向長さの8分の1未満に軸方向に重複および接触することができる。これは、人工心臓弁の全(または少なくともほとんどの)長さに軸方向に重複および接触するように構成されたクリンピング要素(たとえば、顎部)を有する、典型的なクリンピング装置とは著しく異なる。クリンピング装置100は、機械的拡張型人工心臓弁202を圧縮するために必要とされる低いクリンピング力を利用するように構成され、したがって、人工心臓弁の比較的小さな部分のみに接触することによって人工心臓弁全体を圧縮することができるので、クリンピング装置100のクリンピングバンド104は比較的狭くすることができる。
【0072】
図7に示すように、人工心臓弁がクリンピング装置100内に配置された状態で、クリンピングバンド104を引っ張ることによって人工心臓弁202を径方向に圧縮することができる。これは、クリンピングバンド104の第2の端部126をハウジング102から引き離すことによって達成することができる。結果として、クリンピングバンド104のループ108は径方向に収縮し、人工心臓弁202のフレーム208の一部に径方向の圧縮力を加え、これによりフレーム208の支柱が互いに対して枢動し、これにより、フレーム208の支柱間の枢動接続のため、フレーム208全体が径方向に圧縮される。
【0073】
また、人工心臓弁202の枢動する支柱のため、人工心臓弁202を圧縮するために必要とされる力の量は比較的低い。したがって、ユーザは、クリンピングバンド104の第2の端部126を単に手で握り、クリンピングバンド104をハウジング102から引き離す(たとえば、矢印134の方向に)ことによって、人工心臓弁202を径方向に圧縮するのに必要な力を供給することができる。したがって、クリンピング装置100は、複雑な機構が要求され、および/または人工心臓弁を径方向に圧縮する大きな力を加えることがユーザに要求される可能性がある、典型的なクリンピング装置と比較して、比較的単純で用いるのが容易であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、クリンピング装置100は、人工心臓弁のクリンピングについての情報またはその状態をユーザに提供するように構成された1つ以上のインジケータを含むことができる。インジケータは、たとえば、人工心臓弁が完全に径方向に圧縮されていることをユーザに示すように構成することができる。図7に示すように、クリンピングバンド104はインジケータ136を含む。インジケータ136は、マーキング、着色、記号、および/または任意の他のタイプの視覚的表示とすることができる。
【0075】
クリンピングバンド104のループ108(およびしたがって人工心臓弁)が径方向に拡張された構成(たとえば、図6)にあるとき、インジケータ136がハウジング102内に(たとえば、ハウジング102の内面122に隣接して)配置されるように、そしてクリンピングバンド104のループ108(およびしたがって人工心臓弁)が所定の径方向に圧縮された構成(たとえば、図7)にあるとき、インジケータ136がハウジング102の外側に(たとえば、ロック機構106に隣接して)配置されるように、インジケータ136をクリンピングバンド104に対して配置することができる。このように、インジケータ136は、人工心臓弁が完全にクリンプされていることをユーザに通知することができ、これは、人工心臓弁が過度にクリンプされるのを防止するのに役立つことができる。
【0076】
加えて、またはあるいは、クリンピング装置100は、クリンピングバンドに結合されたストッパ要素(図示せず)を含むことができる。ストッパ要素は、クリンピングバンド104とハウジング102との間の相対移動を所定の点まで可能にし、クリンピングバンド104とハウジング102との間の所定の点を超える相対移動を制限するように構成することができる。ストッパ要素は、ハウジング102の第2の開口118より径方向に大きくすることができる。したがって、ストッパ要素は、クリンピングバンド104のループ108が径方向に拡張された構成(たとえば、図6)にあるとき、ハウジング102の内腔114内に配置することができる。クリンピングバンド104が引っ張られてループ108が収縮するにつれて、ストッパ要素は、ハウジング102の第2の開口118に向かって移動することができる。クリンピングバンド104が所定の点に到達すると、ストッパ要素は、第2の開口118に隣接するハウジング102の内面122に接触し、これによってクリンピングバンド104がハウジング102に対してさらに移動するのを防止することができる。いくつかの実施形態において、ストッパ要素は、クリンピングバンドの一体部分である結び目または他の径方向の突起とすることができる。他の実施形態において、ストッパ要素は、クリンピングバンド104に結合された別個の要素(たとえば、フェルールまたはケーブルストップ)とすることができる。
【0077】
インジケータ136および/またはストッパ要素の代わりに、またはこれに加えて、クリンピング装置100は力制御機構をさらに含むことができる。力制御機構は、クリンピングバンド104に加えられる力を限定および/または表示するように構成することができる。たとえば、図8に示すように、クリンピング装置100は、クリンピングバンド104の第2の端部126に結合されたばね荷重計138(これは「ばねばかり」と呼ぶこともできる)を含むことができる。ばね荷重計138は、クリンピングバンド104に加えられた力の量の読み取りを提供することができる(たとえば、ポンドおよび/またはニュートンで)。他の実施形態において、力制御機構は、クリンピングバンドにかかる力が特定の大きさに到達すると伸長する(すなわち、弾性変形する)ように構成された弾性材料で形成されたクリンピングバンドの形態をとることができる。このような実施形態において、ユーザは、クリンピングバンド104が伸長し始めるまでクリンピングバンド104を引っ張ることができ、その時点でユーザは、人工心臓弁が完全にクリンプされたことを知り、したがってクリンピングバンド104を引っ張るのを停止するであろう。
【0078】
クリンピングバンド104の張力を調整するように構成された電気モータを含む実施形態において、クリンピング装置100は、クリンピングバンドが人工心臓弁に加えることができる力を限定するように構成された1つ以上の力(たとえば、トルク)限定機構を含むことができる。たとえば、クリンピング装置100は、モータへの電流を限定するように構成されたスリップクラッチおよび/または電子回路を含むことができる。
【0079】
人工心臓弁が所望の径方向に圧縮された構成にクリンプされると、ロック機構を用いて人工心臓弁202をクリンプ構成に保持することができる。ロック機構106は、図9に示すように、ロック機構106の顎部130をクリンピングバンド104と接触させるように移動させることによって作動させることができる。したがって、顎部130は、クリンピングバンド104とハウジング102との間の相対運動を制限することができる。これにより、クリンピングバンド104のループ108が人工心臓弁202と接触して保持され、これによって人工心臓弁202が径方向に圧縮された構成に保持される。
【0080】
径方向に圧縮された構成にあるとき、人工心臓弁202は、送達装置204のカプセル206内へ装填することができる。これは、図10に示すように、カプセル206が人工心臓弁202の近位端部にわたって径方向に延在するように、送達装置204の外側シャフト210を人工心臓弁202に対して軸方向に移動させることによって達成することができる。外側シャフト210は、カプセル206の遠位端がクリンピングバンド104に隣接して配置されるまで、人工心臓弁202に対して軸方向に移動することができる。
【0081】
カプセル206が人工心臓弁202の一部のみにわたって配置されていても、送達装置204のカプセル206を用いて、人工心臓弁202がクリンピング装置100から解放されている間、人工心臓弁202を径方向に圧縮された構成で保持することができる。人工心臓弁202を解放するため、ロック機構106は、顎部130を開くことによってロック解除することができ、クリンピングバンド104は、図11に示すように、人工心臓弁202から径方向に離間するように径方向に拡張することができる。
【0082】
図12に示すように、送達装置204のカプセル206は次いで、カプセル206が人工心臓弁202全体にわたって延在するように人工心臓弁202に対して軸方向に移動することができる。シャフト210、212は、ノーズコーン214およびカプセル206が互いに接触するように互いに対して移動することができ、送達アセンブリ200は、クリンピング装置100の内腔114から引き抜くことができる。
【0083】
送達アセンブリ200を次いで患者の血管系に挿入することができ、送達装置204を用いて人工心臓弁202を所望の移植場所(たとえば、自然の大動脈弁輪)に送達することができる。
【0084】
図13図14は、他の一実施形態によるクリンピング装置300を示す。大まかに言えば、クリンピング装置300は、クリンピング装置100のハウジング102、クリンピングバンド104、およびループ108とそれぞれ同様に機能するハウジング302およびクリンピングバンド304ならびに調整可能なループ306を含むという点で、クリンピング装置300はクリンピング装置100と同様である。クリンピング装置300はいくつかの点でクリンピング装置100とは異なる。たとえば、クリンピング装置300のクリンピングバンド304は、クリンピングバンド304の両端部308がハウジング302に対して移動することができるように構成されている一方、クリンピングバンド104は、クリンピングバンド104の第2の端部126のみがハウジング102に対して移動することができる(たとえば、通常の動作中)ように構成されている。クリンピングバンド304はまたその長さに沿って配置された複数のストッパ要素310を含む一方、クリンピングバンド104はその長さに沿って実質的に均一な直径を有する。また、図15図17に示すように、クリンピング装置300は、ハウジング302に一体的に形成されたロック機構を含む一方、クリンピング装置100は、ハウジング102に結合された別個のロック機構106を有する。クリンピング装置300およびその構成要素に関する追加の詳細を以下に提供する。
【0085】
図13図14を参照すると、クリンピング装置300のハウジング302はベース312および本体314を含む。本体314は、送達アセンブリを挿入することができる(たとえば、図6図7を参照)ように構成された内腔316を含む。本体314はまた、本体314の内面320(これは内腔316を画定する)から本体314の外面322まで延在するバンド開口318を含む。バンド開口318は互いに周方向に離間しており、クリンピングバンド304を受け入れるように構成することができる。
【0086】
クリンピングバンド304のループ306は、例示の目的のため円形を有するとして示していることが留意されるべきである。しかしながら、人工心臓弁がループ306内に配置されずにクリンピングバンド304が引っ張られれば、ループ306は消失する(または結ばれる)ことになり、クリンピングバンド304は実質的に平坦になるであろう。
【0087】
ここで図15に移ると、各バンド開口318は、作動部分324、ロック部分326、および作動部分324とロック部分326との間に配置された接続部分328を含むことができる。作動部分324は、ロック部分326および接続部分328より大きく(たとえば、径方向に)することができる。いくつかの実施形態において、ロック部分326は接続部分328より大きくすることができる。他の実施形態において、ロック部分326および接続部分328は同じサイズとすることができる。
【0088】
図16に示すように、バンド開口318の作動部分324は、クリンピングバンド304のストッパ要素310が通過することができるように構成することができる。したがって、クリンピングバンド304がハウジング302に対して移動しているとき、クリンピングバンド304はバンド開口318の作動部分324と位置を合わせることができる。
【0089】
図17に示すように、バンド開口318のロック部分326および接続部分328は、クリンピングバンド304の主要部分(すなわち、ストッパ要素310間の部分)が通過することができるように、かつクリンピングバンド304のストッパ要素310が通過することができないように構成することができる。したがって、バンド開口318の作動部分324を通してクリンピングバンド304を移動させることによってクリンピングバンドをハウジング302に対して所望の直径に調整すると、バンド開口318の作動部分324からバンド開口318の接続部分328を通してバンド開口318のロック部分326内へクリンピングバンド304を移動させることができる。この「ロック」構成において、クリンピングバンド304のストッパ要素310は、バンド開口318に隣接するハウジング302の外面322を係合し、これによってクリンピングバンド304とハウジング302との間の相対移動を制限することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、ストッパ要素は互いに対して等間隔にすることができる。他の実施形態において、ストッパ要素は不等間隔にすることができる。たとえば、クリンピングバンドの端部に向かって配置されたストッパ要素は、クリンピングバンドの中央部分に配置されたストッパ要素より、隣接するストッパ要素からさらに離間させることができる。
【0091】
クリンピングバンド304のストッパ要素310は、クリンピングバンド304の主要部分から径方向外向きに延在することができる。たとえば、図示の実施形態において、ストッパ要素310は、クリンピングバンド304から径方向外向きに延在する円錐台形状を有する。いくつかの実施形態において、図示のように、各ストッパ要素の小さい方の径方向部分を、大きい方の径方向部分より、隣接する端部に近く配置することができる。この構成により、クリンピングバンド304は、一方の方向に他方より比較的容易に移動することが可能になる。具体的には、この「方向性」構成により、クリンピングバンド304は、ハウジング302の外面322から内面320へ移動するときより、ハウジング302の内面320から外面322へ移動するときの方が、バンド開口318を容易に通過することができる。いくつかの場合において、クリンピングバンド304がバンド開口318の作動部分324と位置を合わせているとき(たとえば、クリンピングバンドを引っ張っているとき)、クリンピングバンド304の端部308がハウジング302から離れるように移動することができるように、そしてクリンピングバンド304がバンド開口318のロック部分326と位置を合わせているとき(たとえば、クリンピングバンドを緩めているとき)、端部308がハウジング302に向かって移動することができないように、ストッパ要素310を構成することができる。換言すれば、クリンピングバンド304のループ306の直径は減少させることができるが、ストッパ要素310がバンド開口318のロック部分326と位置を合わせているときに拡張することはできない。
【0092】
他の実施形態において、ストッパ要素はさまざまな他の形状を含むことができる。たとえば、ストッパ要素は、クリンピングバンドの長手方向軸に平行な平面においてT形状またはV形状のような、外向きに突出するタブまたは脚を含むことができる。いくつかのこのような実施形態において、バンド開口は長方形の断面輪郭を含むことができ、これにより、クリンピングバンドのストッパ要素が、タブを長方形の開口の長軸と位置を合わせる第1の配向(たとえば、垂直)にあるとき、クリンピングバンドのストッパ要素がバンド開口を通過することが可能になり、そしてクリンピングバンドのストッパ要素が、タブがハウジングの外面に接触するようにタブを長方形の短軸と位置を合わせる第2の配向(たとえば、水平)にあるとき、クリンピングバンドのストッパ要素のハウジングに対する移動を制限する。このように、クリンピングバンドを(たとえば、90度)ハウジングに対して回転させる(たとえば、ねじる)ことによってクリンピングバンドをロックおよびロック解除状態間で移動させることができる。
【0093】
クリンピング装置300を用いて機械的拡張型人工心臓弁(たとえば、人工心臓弁202)をクリンプすることができる。クリンピングバンド304のループ306が径方向に拡張された構成にあるとき(たとえば、図13)、径方向に拡張された人工心臓弁および送達装置の端部をハウジング302の内腔316内へ挿入することができる。次いでクリンピングバンド304の端部308をハウジング302のバンド開口318の作動部分324と位置を合わせて(たとえば、図16参照)クリンピングバンド304の端部308をハウジング302から離れるように移動させることによってクリンピングバンド304のループ306の直径を減少させることができる。この結果、クリンピングバンドのループ306が人工心臓弁に接触して人工心臓弁に径方向内向きの力を加える。
【0094】
クリンピングバンド304をハウジング302に対してバンド開口318の作動部分324からバンド開口318の接続部分328を通して、図17に示すように、バンド開口318のロック部分326内へ移動させることによって、人工心臓弁を径方向に圧縮された状態に保持することができる。したがって、クリンピングバンド304のストッパ要素310はハウジング302の外面322に接触し、これによってクリンピングバンド304とハウジング302との間の相対移動(たとえば、少なくとも緩み)を制限する。
【0095】
人工心臓弁は送達装置のカプセル内へ部分的に装填することができる。送達装置のカプセルは径方向に圧縮された構成で人工心臓弁を保持することができ、クリンピング装置300は人工心臓弁から解放することができる。人工心臓弁を解放するため、ストッパ要素310がバンド開口318の作動部分324と径方向に位置を合わせるように、クリンピングバンド304をハウジング302に対して移動させることができる。クリンピングバンド304は、クリンピングバンド304のループ306の直径が増加するように緩めることができる。人工心臓弁および送達装置をループ306内から後退させることができ、送達装置のカプセルを人工心臓弁の残りにわたって前進させることができ、またはその逆もある。
【0096】
本明細書に記載のクリンピング装置は、大抵複雑な機構を有する典型的なクリンピング装置と比較して、迅速かつ簡単に用いられ、製造が安価である。
【0097】
開示されたクリンピング装置は主に人工心臓弁で用いるとして記載しているが、開示されたクリンピング装置は他の埋め込み型装置(たとえば、ステント)でも用いることができるということが留意されるべきである。
【0098】
あらゆる例に関して本明細書に記載された特徴は、他に述べていない限り、他の例の任意の1つ以上に記載された他の特徴と組み合わせることができる。たとえば、クリンピング装置100の1つ以上の特徴を、クリンピング装置300の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。特に、クリンピングバンド304は、クリンピングバンド104の代わりにクリンピング装置100で用いることができる。
【0099】
本開示の原理を適用することができる多くの可能な実施形態を考慮して、図示の実施形態は単なる好ましい例であり、特許請求の範囲を限定するとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、特許請求された主題の範囲は、次の請求項およびそれらの均等物によって定義される。
【符号の説明】
【0100】
100 クリンピング装置
102 ハウジング
104 クリンピングバンド
106 ロック機構
108 ループ
110 ベース
112 本体
114 内腔
116 第1の開口
118 第2の開口
120 外面
122 内面
124 第1の端部
126 第2の端部
128 ストッパ要素
130 顎部
132 嵌合フィーチャ
134 矢印
136 インジケータ
138 ばね荷重計
200 送達アセンブリ
202 人工心臓弁
204 送達装置
206 カプセル
208 フレーム
210 外側シャフト
212 内側シャフト
214 ノーズコーン
300 クリンピング装置
302 ハウジング
304 クリンピングバンド
306 ループ
308 端部
310 ストッパ要素
312 ベース
314 本体
316 内腔
318 バンド開口
320 内面
322 外面
324 作動部分
326 ロック部分
328 接続部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】