(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】非平坦基板のスパッタコーティングのための移動システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
C23C14/34 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502082
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069854
(87)【国際公開番号】W WO2021009158
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505360498
【氏名又は名称】ソレラス・アドヴァンスト・コーティングス・ビーヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】デ・ボッシャー,ヴィルメルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・デ・プッテ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】デウィルデ,ニーク
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA21
4K029CA05
4K029DC13
4K029DC16
4K029DC45
4K029EA01
4K029JA01
4K029JA02
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
第1の態様では、本発明は、非平坦基板(100)をスパッタフラックス分布(110)に周囲的に曝すことなく、当該スパッタフラックス分布(110)を横断して非平坦基板(100)を移動させるための移動システム(300))に関する。移動システム(300)は、スパッタフラックス分布(110)に沿って非平坦基板(100)を並進的に移送する第1の移動(310)と、スパッタフラックス分布(110)に対して非平坦基板(100)を並進および/または回転させる第2の移動(320、330、340)と、のための移動手段を備える。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平坦基板(100)をスパッタフラックス分布(110)に周囲的に曝すことなく、前記スパッタフラックス分布(110)を横断して前記非平坦基板(100)を移動させるための移動システム(300)であって、
前記スパッタフラックス分布(110)に沿って前記非平坦基板(100)を並進的に移送する第1の移動(310)と、
前記スパッタフラックス分布(110)に対して前記非平坦基板(100)を並進および/または回転させる追加の第2の移動(320、330、340)と、のための移動手段を備える、移動システム(300)。
【請求項2】
前記移動システム(300)が、前記非平坦基板(100)を保持するための基板キャリア(110)を備える、請求項1に記載の移動システム(300)。
【請求項3】
前記移動手段が、前記非平坦基板(100)のためのガイドシステム(303)を備え、前記ガイドシステムが、
第1の部材と、
前記第1の部材と係合するための第2の部材と、を備える、請求項1及び2のいずれか一項に記載の移動システム(300)。
【請求項4】
前記移動手段が、アクチュエータ(302)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の移動システム(300)。
【請求項5】
前記アクチュエータ(302)が、多軸アクチュエータである、請求項4に記載の移動システム(300)。
【請求項6】
前記非平坦シート基板(100)の少なくとも1つの主表面を前記スパッタフラックス分布(110)に露出させることなく、前記スパッタフラックス分布(110)に沿って非平坦シート基板(100)を移動させるための、請求項1~5のいずれか一項に記載の移動システム(300)。
【請求項7】
非平坦基板(100)の非周囲コーティングのためのコーティングデバイス(200)であって、
i.長手方向スパッタターゲット(510)を装着するための少なくとも1つのマグネトロン(520)を備える、スパッタシステム(500)と、
ii.請求項1~6のいずれか一項に定義される移動システム(300)と、を備える、コーティングデバイス(200)。
【請求項8】
前記マグネトロン(520)が、円筒形スパッタターゲット(520)を装着するように構成されている、請求項7に記載のコーティングデバイス(200)。
【請求項9】
前記スパッタシステム(500)が、少なくとも2つのマグネトロン(520)を備える、請求項7または8に記載のコーティングデバイス(200)。
【請求項10】
さらに、前記スパッタシステム(500)が、動作中に、前記非平坦基板(100)に対してそのスパッタフラックス分布(110)を調整するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載のコーティングデバイス(200)。
【請求項11】
連続的またはインラインコーティングデバイスである、請求項7~10のいずれか一項に記載のコーティングデバイス(200)。
【請求項12】
非平坦基板(100)を非周囲的にコーティングするための方法であって、
a.請求項7~11のいずれか一項に定義されるコーティングデバイス(200)を提供することと、
b.前記非平坦基板(100)の上にコーティングをスパッタリングしながら、前記スパッタシステム(500)に沿って前記非平坦基板(100)を移動させることと、を含み、
前記移動させることが、
b1.前記スパッタシステム(500)に沿って前記非平坦基板(100)を並進的に移送すること(310)と、
b2.前記スパッタシステム(500)に対して前記非平坦基板(100)を追加的に並進および/または回転させること(320、330、340)と、を含む、方法。
【請求項13】
ステップb2での前記非平坦基板(100)を回転させることが、0°よりも大きく、360°よりも小さい回転角度にわたる少なくとも1つの回転成分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非平坦基板(100)の少なくとも1つの主表面上に、その少なくとも1つの他の主表面に対して選択的に、均一コーティングを提供するための、請求項7~11のいずれか一項に記載のコーティングデバイス(200)の使用。
【請求項15】
前記均一コーティングの局所層厚さが、前記均一コーティングの平均層厚さとは15%以下、好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下で異なる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタコーティングデバイス用の基板移動システムに関し、特に、非平坦基板の非周囲コーティング(non-circumferential coating)のために構成された移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非平坦物品を周囲コーティングする(circumferentially coat)ことができる様々な種類のスパッタコーティングデバイスが知られている。例えば、比較的均一な周囲(周回、円周)コーティングを提供するように、コーティングされる物品の多層回転木馬(carrousel)移動を特徴とするバッチコーターが存在し、そのようなバッチコーターは、例えば、ドリルおよびビットなどの様々なツールをコーティングするためにしばしば使用される。別の既知の例は、コーティングチューブのためのインラインコーターの例であり、チューブは、コーティングゾーンに沿って移送されながら、その長手方向軸を中心に回転される。
【0003】
平坦基板を非周囲的(非周回的、非円周的)に(non-circumferentially)コーティングする(または基板の非平坦形状を考慮しない)ためのスパッタコーティングデバイスもまた知られている。これらは、例えば、ミラーまたはレンズなどの物品の単一面をコーティングするのに適したバッチまたはインラインコーターを含む。これらのバッチコーターのいくつかでは、特にコーティングソースが比較的小さい場合、スパッタフラックス分布(flux)での局所変動を平均化するように物品を回転ドームに固定させ、これにより、取得されたコーティングの均一性を改善させることができる。場合によっては、コーティングされるべきではないこれらの物品の表面は、このような移動中にコーティングソースに対面する(すなわち、それは常に当該ソースから離れているわけではない)。代わりに、非周囲コーティングは、支持体(例えば、基板キャリア)に対しておよび/または互いに対して物品が装着される方法を通してマスキング効果によってその中で達成される。それらの例は、例えば、US2008/152799A1およびUS2017/298783A9に見出される。
【0004】
US2008/152799A1には、コーティング装置が中心軸を中心に回転し、コーティングユニットがそれ自体で同期して回転し、それによって、コーティングユニットにクランプおよび固定されたレンズのための多軸回転を生じるバッチコーターを記載する。
【0005】
US2017/298783A9には、カムシャフトに組み付けるための個々のカムに、硬質ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを施すことが開示されている。この方法は、支持体にカムを配置することと、カムを洗浄するために支持体およびカムを真空下に配置されたチャンバ内に入れることと、支持体をコーティングソースに対する移動軌道に沿って(回転または並進によって)相対移動させることと、カムをカムシャフトに組み付ける前にカムを支持体から取り外すことと、を必然的に含む。より具体的には、その方法は、カムのソースに向けられた部分の一部にDLCコーティングを選択的に蒸着させるために、カムがソースに対して実質的に同一の配向および距離でソースと反対側に連続してもたらされるように定義された固定構成で、支持体にカムを配置することを必然的に含む。
【0006】
しかしながら、様々な用途のために、非平坦基板上に高均一な非周囲(非周回、非円周)コーティングを形成することができるスパッタコーティングデバイスに対する需要が増大している。例としては、成形されたガラス基板(例えば、車両のためのフロントガラス)の一方の面をコーティングすること、または(例えば、スマートウォッチもしくは携帯電話などの電子デバイス、またはチップもしくはセンサなどの電子構成要素のための)カバーもしくはハウジングの外側をコーティングすること、を含む。ここで、基板の非平坦形状は、典型的には、当該形状が無視された場合に所望の均一性を達成することができないようなものであり、したがって、非平坦基板上の非常に均一な非周囲コーティングは、上述のスパッタコーティングデバイスを使用して実現することができない。実際、これらのスパッタコーティングデバイスでのコーティングの達成可能な均一性は、基板の非平坦形状によって制限され、支配されている。例えば、US2017/298783A9のいくつかの実施形態では、コーティングは、コーティングソースに曝された表面のサブフラクション(subfraction)に関して±20%を超えて変化しない厚さを有することが見出された。次いで、コーティング全体をこの厚さの範囲内に維持するために提案された解決策は、望ましいと思われるものであり、マスクを使用して、曝される表面をそのサブフラクションに制限することであった。しかしながら、他の領域も典型的にコーティングする必要があるため、所望の均一性を達成することができる表面の部分にだけコーティングを制限することは、しばしば実行可能なアプローチではないことは言うまでもない。
【0007】
WO2016/005476には、移動する円筒形ターゲットを含むスパッタデバイスを記載しており、基板は湾曲していてもよく、この湾曲に従うように円筒ターゲットを移動させることができ、それによって上述の需要をある程度満たすことを可能にする。しかしながら、スパッタリングは、典型的には、高品質の真空チャンバ内で行われ、チャンバの容積が増大するにつれて、その維持は非常に厳しいものとなる。さらに、円筒形ターゲットおよび接続されたマグネトロンを備えるスパッタシステムは、高仕様の電源および冷却接続を必要とする。これらを柔軟にしスパッタシステムの自由な移動を支持するために必要とすることは、真空リークのための潜在的なソースを同時に追加しながら、すでに厳しい要件をさらに増大させる。このようにして、複雑な非平坦基板を収容するために、真空を破壊しないで、スパッタシステムが十分に自由に移動させることができるスパッタデバイスを作成することは簡単ではない。
【0008】
したがって、当技術分野では、上記で概説した問題の一部またはすべてに対処するコーティングシステムのための必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、非平坦基板の非周囲コーティングのための良好なシステムおよびデバイスを提供することである。本発明のさらなる目的は、それに関連する良好な実施を提供することである。この目的は、本発明による移動システム、コーティングデバイス、方法および使用によって達成される。
【0010】
第1の態様では、本発明は、非平坦基板(a non-flat substrate)をスパッタフラックス分布(a spatter flux distribution)に周囲的(周回的、円周的)に曝す(circumferentially exposing)ことなく、当該スパッタフラックス分布を横断して非平坦基板を移動させるための移動システムに関する。移動システムは、スパッタフラックス分布に沿って非平坦基板を並進的に移送する第1の移動と、スパッタフラックス分布に対して非平坦基板を並進および/または回転させる追加の第2の移動と、のための移動手段を備える。
【0011】
本発明の実施形態の利点は、非平坦基板に、標準的な並進移送の移動を超える、追加の移動を与えることである。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、非平坦基板上のスパッタフラックス入射が、非平坦基板の形状に依存して(in function)制御され得ることである。
【0013】
本発明の実施形態の利点は、均一非周囲コーティングが、非平坦基板上で取得され得ることである。「均一非周囲コーティング」の下では、コーティングは、非周囲(非周回)様式(すなわち、非平坦基板のすべての表面の周りを一周ぐるりと包み込まないコーティング)で提供されるが、それにもかかわらず、それが提供される場所では比較的均一であることが本明細書で理解される。
【0014】
実施形態では、移動システムは、非平坦基板を保持するための基板キャリアを備え得る。
【0015】
本発明の実施形態の利点は、非平坦基板が、基板キャリアに保持され得、これにより、非平坦基板の取り扱いを容易にすることができることである。
【0016】
実施形態では、移動手段は、非平坦基板のためのガイドシステムを備え得る。
【0017】
実施形態では、移動手段は、アクチュエータを備え得る。
【0018】
実施形態では、アクチュエータは、多軸アクチュエータであり得る。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、様々なタイプの移動手段が、使用され得ることである。
【0020】
本発明の実施形態の利点は、様々なタイプの非平坦基板が、コーティングされ得ることである。
【0021】
本発明の実施形態の利点は、様々なタイプのコーティングが、適用され得ることである。
【0022】
第2の態様では、本発明は、非平坦基板の非周囲コーティングのためのコーティングデバイスに関する。コーティングデバイスは、(i)長手方向スパッタターゲットを装着するための少なくとも1つのマグネトロンを備える、スパッタシステムと、(ii)第1の態様の任意の実施形態で定義された移動システムと、を備える。
【0023】
本発明の実施形態の利点は、スパッタシステムが、固定位置に維持され得ること、またはその調整が、最小限に抑えられ得ることである。
【0024】
実施形態では、マグネトロンは、円筒形スパッタターゲットを装着するために構成され得る。
【0025】
実施形態では、スパッタシステムは、少なくとも2つのマグネトロンを備え得る。
【0026】
本発明の実施形態の利点は、市販のスパッタシステムが、非平坦基板をコーティングするために使用され得ることである。
【0027】
実施形態では、さらに、スパッタシステムは、動作中に、非平坦基板に対するそのスパッタフラックス分布を調整するように構成され得る。これは、例えば、スパッタシステムの磁気システムを調整することによって、例えば、局所磁場強度を調整することによって、または例えば、円筒形ターゲットチューブ内の磁気システムの向きを調整することによって、実現することができる。
【0028】
実施形態では、コーティングデバイスは、連続的またはインラインコーティングデバイスであり得る。
【0029】
第3の態様では、本発明は、非平坦基板を非周囲的にコーティングするための方法に関する。その方法は、(a)第2の態様での任意の実施形態で定義されたコーティングデバイスを提供することと、(b)非平坦基板の上にコーティングをスパッタリングしながら、スパッタシステムに沿って非平坦基板を移動させることと、を含み、移動させることが、(b1)スパッタシステムに沿って非平坦基板を並進的に移送することと、(b2)スパッタシステムに対して非平坦基板を追加的に並進および/または回転させることと、を含む。
【0030】
実施形態では、ステップb2での非平坦基板を並進および/または回転させることは、非平坦基板の形状に依存し得る。
【0031】
実施形態では、ステップb2での非平坦基板を回転させることは、0°より大きく、360°より小さい回転角度にわたる少なくとも1つの回転成分を含み得る。
【0032】
第4の態様では、本発明は、非平坦基板の少なくとも1つの他の主表面に対して選択的に、非平坦基板の少なくとも1つの主表面上に均一コーティングを提供するための、第2の態様の任意の実施形態によるコーティングデバイスの使用に関する。
【0033】
実施形態では、均一非周囲コーティングの局所層厚さは、当該均一非周囲コーティングの平均層厚さと15%以下、好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下、またはさらにより良好な例えば2%以下で異なり得る。
【0034】
本発明の特定の好ましい態様は、添付の独立および従属請求項に記載されている。従属請求項からの特徴は、単に特許請求の範囲で明示的に述べられるだけではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0035】
この分野では常にデバイスの改善、変更、および進化があったが、本概念は、従前の実施からの逸脱を含め、この性質のより効率的、安定した、および信頼性の高いデバイスの提供をもたらす、実質的な新しく新規な改善を表していると考えられる。
【0036】
本発明の上記および他の特性、特徴、および利点は、例えば、本発明の原理を例示する添付の図面と併せて、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。この記載は、本発明の範囲を限定することなく、例のみの目的のために与えられる。以下に引用される参照図面は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による2次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による2次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による2次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による2次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図5】2つのスパッタターゲットを含むスパッタシステム配列を概略的に描写する。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による3次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図7】本発明の例示的な実施形態による3次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図8】本発明の例示的な実施形態による3次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図9】本発明の例示的な実施形態による3次元湾曲基板のコーティングを概略的に描写する。
【
図10】展開可能な基板キャリアを作製するための基準となる、異なるモザイク状配列(tessellation)を示す。
【
図11】展開可能な基板キャリアを作製するための基準となる、異なるモザイク状配列(tessellation)を示す。
【
図12】展開可能な基板キャリアを作製するための基準となる、異なるモザイク状配列(tessellation)を示す。
【
図13】展開可能な基板キャリアを作製するための基準となる、異なるモザイク状配列(tessellation)を示す。
【
図14】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図15】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図16】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図17】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図18】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図19】本発明の例示的な実施形態による、デュアルマグネトロンを使用したドーム形状の基板およびそのコーティングを概略的に描写する。
【
図20】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図21】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図22】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図23】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図24】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図25】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【
図26】本発明の例示的な実施形態による様々な移動システムを概略的に示す。
【0038】
異なる図面では、同一参照符号は、同一または類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は、模式図のみであるが、非限定的である。図面では、いくつかの要素のサイズは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描画されていない場合がある。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応していない。
【0040】
さらに、記載および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランク付け、または任意の他の方法のいずれかで順序を記載するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0041】
さらに、記載および特許請求の範囲における上部、下部、上に、下になどの用語は、説明目的で使用されており、必ずしも相対位置を説明するために使用されているわけではない。そのように使用されている用語は、適切な状況下ではその反意語と交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または例示される以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0042】
特許請求の範囲で使用される「備える(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを除外するものではないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ、または言及されたような構成要素の存在を指定すると解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップもしくは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、「備える」という用語は、記載された特徴のみが存在する状況、およびこれらの特徴および1つ以上の他の特徴が存在する状況をカバーする。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されると解釈されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素のみが、AおよびBであることを意味する。
【0043】
同様に、特許請求の範囲中でも使用される「結合された」という用語も、直接的な接続のみに限定されると解釈されるべきではないことに留意されたい。「結合された」および「接続された」という用語は、それらの派生語とともに使用され得る。これらの用語は、互いに同義語として意図されていないことを理解されたい。したがって、「デバイスBに結合されたデバイスA」という表現の範囲は、デバイスAの出力がデバイスBの入力に直接接続されるデバイスまたはシステムに限定されるべきではない。これは、Aの出力と、他のデバイスまたは手段を含む経路であり得るBの入力との間に経路が存在することを意味する。「結合された」とは、2つ以上の要素が直接物理的もしくは電気的に接触しているか、または2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、依然として互いに協働もしくは相互作用していることを意味し得る。
【0044】
本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らないが、そうであってもよい。さらに、この開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態では、特定の特徴、構造、または特性を任意の好適な方法で組み合わせられ得る。
【0045】
同様に、本発明の例示的な実施形態の記載では、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解において助けとなる目的で、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられることがあることが理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、特許請求された発明が、各請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、前述の単一の開示された実施形態のすべての特徴より少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、これによってこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0046】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴は含まず、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0047】
さらに、いくつかの実施形態は、コンピュータシステムのプロセッサによって、または機能を実施する他の手段によって実装され得る方法の要素の方法または組み合わせとして本明細書に記載される。したがって、そのような方法または方法の要素を実施するために必要な命令を有するプロセッサは、方法または方法の要素を実施するための手段を形成する。さらに、装置の実施形態の本明細書で記載される要素は、本発明を実施する目的で要素によって実行される機能を実施するための手段の例である。
【0048】
本明細書で提供される記載では、多数の特定の詳細が明記されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、および技術は、詳細には示されていない。
【0049】
第1の態様では、本発明は、非平坦基板をスパッタフラックス分布に周囲的(周回的)に曝すことなく、当該スパッタフラックス分布を横断して非平坦基板を移動させるための移動システムに関する。移動システムは、スパッタフラックス分布に沿って非平坦基板を並進的に移送する第1の移動に加えて、スパッタフラックス分布に対して非平坦基板を並進および/または回転させる追加の第2の移動のための移動手段を備える。本明細書では、非平坦基板を並進的に移送する第1の移動は、基板の形状に比較的依存しない移動(動き)の部分に対応し得、または、言い換えれば、第1の移動は、基板が平坦であった場合に供されるであろう移動(動き)に対応し得る。逆に、並進および/または回転の第2の移動は、次いで、基板の形状に依存して(基板の形状の関数で)典型的に選択される追加の移動(動き)である。
【0050】
本発明内では、WO2016/005476に記載されているようなスパッタシステムではなく、スパッタフラックス分布に対する非平坦基板の配向(例えば、傾斜)および/または距離(例えば、間隔)の相対的な変化も、基板に追加の第2の移動を追加することによって達成することができることが想定された。基板が第1の移動に起因してスパッタフラックス分布を横切るにつれて、相対的配向および/または距離も典型的に連続的に変化するが、第2の移動は、制御された方法でこれらのパラメータを調整するためのさらなる可能性を追加し、それによって非平坦基板の形状を考慮することを可能にする。そうすることによって、得られるコーティングの均一性を、向上させることができ、同時にスパッタシステムを固定位置に維持し、または少なくともそのために実行される必要がある移動を低減させることができる。
【0051】
実施形態では、非平坦基板をスパッタフラックス分布に周囲的に曝さないことは、非平坦基板が供される移動に起因し得る。これは、US2008/152799A1およびUS2017/298783A9での多軸回転を有する実施形態とは対照的であり、非周囲的な暴露は、移動のためではなく、それにもかかわらず達成される。そのような移動を通して非周囲暴露を実現することは、有利に、表面の一部分をマスクする補助構造(例えば、隣接する基板および/または基板キャリア)の厳密な必要性を排除する。
【0052】
本明細書において、非平坦基板を並進的に移送することは、(例えば、線形インラインコーターに典型的に見られるように)並進させることによって非平坦基板を並進することに相当する。実施形態では、非平坦基板を並進的に移送する第1の移動は、基板の中心点(例えば、重心点)を並進させることを含み得る。実施形態では、並進移送は、直線並進(すなわち、直線経路に沿って)、曲線並進(すなわち、湾曲経路に沿った)、または1つ以上の直線並進および/もしくは曲線並進の連続であり得る。実施形態では、並進的に移送する第1の移動は、非平坦基板を移送方向に並進させることを含み(例えば、からなり)得る。実施形態では、第2の移動は、移送方向とは異なる方向に非平坦基板を移動(例えば、移送)することを含み得る。実施形態では、非平坦基板を並進的に移送することは、実質的に一定速さで非平坦基板を並進的に移送することを含み得る(すなわち、並進移送の速度ベクトルのスカラーの大きさは、一定のままであり得る)。例えば、並進移送中の任意の所与の時点で、瞬間速さは、平均速さと最大で20%、好ましくは最大で10%、より好ましくは最大で5%、さらにより好ましくは最大で2%、最も好ましくは0%異なり得る。実施形態では、非平坦基板を並進的に移送することは、実質的に一定速度で非平坦基板を並進的に移送することを含み得る(すなわち、並進的移送の速度ベクトルの速さおよび方向の両方は、一定のままであり得る)。例えば、並進移送中の任意の所与の時点で、瞬間速さは、平均速さと最大で20%、好ましくは最大で10%、より好ましくは最大で5%、さらにより好ましくは最大で2%、最も好ましくは0%異なり得、瞬間方向は、平均方向と最大で20°、好ましくは最大で10°、より好ましくは最大で5°、さらにより好ましくは最大で2°、最も好ましくは0°異なり得る。
【0053】
実施形態では、スパッタフラックス分布に対して非平坦基板を並進させることは、非平坦基板を、スパッタフラックス分布の中心に平行な方向(例えば、スパッタシステムに向かってまたはスパッタシステムから離れる方向)に、および/またはそれに垂直な方向(例えば、スパッタフラックス分布の縁部に向かってまたはスパッタフラックス分布から離れる方向)に移動させることを含み得る。
【0054】
実施形態では、非平坦基板を回転させることは、枢動軸または枢動点周りの回転を含み得る。実施形態では、非平坦基板を回転させることは、0°より大きく、360°より小さい、好ましくは1°より大きく、300°より小さい、より好ましくは3°より大きく、240°より小さい、最も好ましくは5°より大きく、180°より小さい回転角度にわたる少なくとも1つの回転成分を含み得る。基板がフルターン(1回転)未満で回転するこのような回転は、本明細書では、「傾斜」とも称される。実施形態では、非平坦基板を回転させることは、360°以上の回転角にわたる回転成分を含み得る。基板がフルターンまたはそれ以上回転するこのような回転は、本明細書では「旋回(公転)する(revolving)」とも称される。非平坦基板が、スパッタリング中に、補助構造(例えば、隣接基板および/または基板キャリア)にさらに依存して表面の一部をマスクすることなく、すべての方向に自由に回転される(例えば、旋回される)場合、取得されるコーティングは、非周囲ではなく、これは本発明の範囲外であることが明らかであろう。それでも、非平坦基板を周囲的に曝さないようにしながら、基板をその周りで旋回(公転)させることができる1つ以上の回転軸を選択することが典型的に可能である。
【0055】
好適な第2の移動を決定するとき、ある特定の効果は、考慮され得、これは、実施例4でより詳細に記載される。しかしながら、特に、スパッタフラックス分布および/または非平坦基板形状の複雑さが増加するにつれて、それらの相互作用およびそれらの相対移動の効果は、正確に予測することが困難であり得る。それにもかかわらず、目標が均一な非周囲コーティングを達成することであり、合理的な均一性閾値が選択される(これは典型的には、基板の形状、スパッタシステムの特性などの異なる要因に依存する)と仮定すると、好適な第2の移動は、典型的には、試行錯誤またはコンピュータシミュレーションによって見つけることができる。
【0056】
実施形態では、非平坦基板は、少なくとも1次元測定で25cm以上を有する。実施形態では、非平坦基板は、湾曲基板であり得るか、または少なくとも湾曲部分を含み得る。実施形態では、非平坦基板は、1つ以上の平坦面を含み得る。実施形態では、非平坦基板は、多面体部分を含み得る。実施形態では、非平坦基板は、凸状および/または凹状であり得る。実施形態では、非平坦基板は、非平坦シートであり得る。ここで、非平坦シート基板は、基板の他のマイナー表面(例えば、シートの厚さを画定する境界線)よりもかなり大きな面積(例えば、合計で総表面積の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%を構成する)を有する2つの主要表面を含む非平坦基板であるとみなされる。非平坦シート基板は、開口部を有する空洞を画定するような方法で非平坦であり得る。このような場合、依然として非平坦シート基板とみなされるために、開口部は、空洞の総内面積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%の領域を有し得る。したがって、非平坦シート基板は、例えば、ドーム(すなわち、カバーもしくはハウジングなどの半球状もしくは非半球状)または成形されたガラス片(例えば、車両のフロントガラス)であり得る。逆に、ボトルまたはジャーなどの物体は、「非平坦シート基板」とはみなされない。
【0057】
典型的には、主表面の1つは、コーティングされる非平坦表面である。実施形態では、「非平坦基板を当該スパッタフラックス分布に周囲的(周回的)に曝することなく」は、「非平坦シート基板の少なくとも1つの主表面を当該スパッタフラックス分布に実質的に曝すことなく」であり得る。実施形態では、コーティングされる主表面は、非平坦シート基板の総表面積の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の領域を有し得る。
【0058】
実施形態では、移動システムは、非平坦基板を保持するための基板キャリアを備え得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、移動手段は、(例えば、基板と一緒に移動する)基板キャリアの一部であり得る。そのような実施形態は、有利には、既存のコーティングデバイスに、非平坦基板を第2の移動に供する能力を比較的容易に後付けすることができる。他の実施形態では、移動手段は、基板の外部であり得、存在する場合、基板キャリア(例えば、第2の態様によってコーティングデバイスの内部に装着されている)の外部であり得る。そのような実施形態は、有利には、すべての基板および/または基板キャリアに移動手段を装備させることを必要とすることなく、非平坦基板を第2の移動に供することを可能にする。さらに他の実施形態では、移動手段の一部(例えば、第2の部材、以下を参照)は、基板キャリアの一部であり得、移動手段の別の部分(例えば、第1の部材、以下を参照)は、その外部であり得る(例えば、第2の態様によってコーティングデバイス内に装着されている)。実施形態では、移動手段は、それが使用されるコーティングデバイスの特性に依存して設計され得る。例えば、移動手段は、コーティングデバイス内のスパッタシステムによって生成されたスパッタフラックス分布(例えば、当該スパッタシステムに固有のスパッタフラックス分布)にしたがって設計され得る。
【0060】
実施形態では、移動手段は、非平坦基板のためのガイドシステムを備え得る。実施形態では、ガイドシステムは、第1の移動、第2の移動、または両方を生成(発生)するものであってもよい。実施形態では、ガイドシステムは、第1の部材(例えば、レール、溝、またはノッチ)および第1の部材を係合するための第2の部材(例えば、ピン、または1つ以上の車輪などの1つ以上の突起)を備え得る。いくつかの実施形態では、第1の部材は、基板または基板キャリアの一部であり得、第2の部材は、基板または基板キャリアの外部であり得る。他の実施形態では、第2の部材は、基板または基板キャリアの一部であり得、第1の部材は、基板または基板キャリアの外部であり得る。
【0061】
実施形態では、移動手段は、アクチュエータを備え得る。実施形態では、アクチュエータは、第1の移動、第2の移動、または両方を生成(発生)するものであってもよい。実施形態では、アクチュエータは、単軸または多軸アクチュエータであり得る。実施形態では、1つ以上の軸は、1つ以上の並進自由度および/または1つ以上の回転自由度であり得る。実施形態では、アクチュエータは、6軸アクチュエータ(すなわち、3つの並進自由度および3つの回転自由度を有するアクチュエータ)であり得る。実施形態では、アクチュエータは、制御手段と通信し得る。実施形態では、制御手段は、位置決定手段を備え得る。そのようにして、アクチュエータは、スパッタフラックス分布に対する基板の位置に依存して有利に動作され得る。
【0062】
実施形態では、第1の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、他の態様のいずれかの任意の実施形態について対応して記載されるように独立し得る。
【0063】
第2の態様では、本発明は、非平坦基板の非周囲コーティングのためのコーティングデバイスに関する。コーティングデバイスは、(i)長手方向スパッタターゲットを装着するための少なくとも1つのマグネトロンを備える、スパッタシステムと、(ii)第1の態様の任意の実施形態で定義された移動システムと、を備える。
【0064】
好ましい実施形態では、マグネトロンは、円筒形スパッタターゲットを装着するために構成され得る。実施形態では、マグネトロンは、回転する円筒形マグネトロンであり得る。他の実施形態では、マグネトロンは、少なくとも1つの平面(例えば、長手方向平面)スパッタターゲットを装着するように構成され得る。それらを好む潜在的な理由のうち、円筒形スパッタターゲットは、典型的には、平面スパッタターゲットよりも高いターゲット利用を可能にし、それにもかかわらず、本発明は、平面スパッタターゲットでも機能することができる。実施形態では、スパッタシステムは、少なくとも2つのマグネトロン(デュアルマグネトロンとも称され得る)を備え得る。
【0065】
実施形態では、スパッタシステムは、選択されたスパッタフラックス分布を得るように構成され得る。この目的のために、スパッタシステムは、典型的には、任意の構成を有する任意の数のマグネトロン(および対応するターゲット)を備え得る。そのようにして、長手方向スパッタターゲットの軸(例えば、長手方向軸)は、非平坦基板の大部分に平行である必要はない。長手方向スパッタターゲットの軸は、基板移送移動に垂直である必要はない。長手方向スパッタターゲットは、非平坦基板の寸法に対応する長さを有する必要はない。スパッタフラックス分布の中心は、基板移送移動に垂直に配向される必要はなく、適切な放出角度を有する。
【0066】
実施形態では、さらに、スパッタシステムは、動作中に、非平坦基板に対してそのスパッタフラックス分布を(例えば、時間依存摂動(time-dependent perturbation)によって)調整するように構成され得る。これは、例えば、スパッタシステムを並進および/または回転させること、および/またはマグネトロン内の磁石配列を調整することを含み得、これは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2016/005476(その内、とりわけ、10頁3~21行目および22頁27行目~23頁11行目を参照)に記載されている。互いに対してスパッタシステムおよび基板の両方を調整することは、両方のための調整振幅を特定の限度内に維持することができるという利点を有する。実際、特に、基板が長かったり幅広であったりすると、非平坦基板をある角度で傾けるには、基板の長さおよび/または幅に対応するために、非常に大きい(例えば、高い)スパッタチャンバを必要とし得る。このような場合、スパッタシステムの調整に関連付けられ得る任意の欠点にかかわらず、スパッタシステムを比較的小さな調整(例えば、その小さな傾斜)に供し、それによって非平坦基板が傾斜される角度を大幅に低減することが有利であり得る。
【0067】
実施形態では、コーティングデバイスは、連続的コーティングデバイスであり得る。実施形態では、コーティングデバイスは、インラインコーターまたはバッチコーターであって、好ましくはインラインコーターであり得る。インラインコーターは、基板が真空を破壊することなく、その中に入り、そこから取り外されるコーティングシステムであり、これは、例えば、基板を大気圧から真空レベルに又は、その逆にするためのロードロックコンパートメントを使用して達成され得る。これは、基板をコーティングデバイスにロードし、空気をポンプアウトして、コーティングを実行し、次いで、コーティングデバイスを通気してから基板をアンロードし、プロセスを繰り返す、典型的なバッチコーターとは対照的である。
【0068】
実施形態では、第2の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、他の態様のいずれかの任意の実施形態について対応して記載されるように独立し得る。
【0069】
第3の態様では、本発明は、非平坦基板を非周囲的にコーティングするための方法に関する。その方法は、(a)第2の態様での任意の実施形態で定義されたコーティングデバイスを提供することと、(b)その上にコーティングをスパッタリングしながら、スパッタシステムに沿って非平坦基板を移動させることと、を含み、移動させることが、(b1)スパッタシステムに沿って非平坦基板を並進的に移送することと、(b2)スパッタシステムに対して非平坦基板を追加的に並進および/または回転させることと、を含む。
【0070】
実施形態では、ステップb2での非平坦基板を並進および/または回転させることは、非平坦基板の形状に依存し得る。
【0071】
実施形態では、ステップb2での非平坦基板を回転させることは、0°より大きく、360°より小さい回転角度にわたる少なくとも1つの回転成分を含み得る。
【0072】
実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、他の態様のいずれかの任意の実施形態について対応して記載されるように独立し得る。
【0073】
第4の態様では、本発明は、その少なくとも1つの他の主表面に対して選択的に、非平坦基板の少なくとも1つの主表面上に均一コーティングを提供するための、第2の態様の任意の実施形態によるコーティングデバイスの使用に関する。本明細書では、少なくとも1つの主表面が均一にコーティングされている一方で、少なくとも1つの他の主表面は、実質的にコーティングされていないことが理解される。
【0074】
実施形態では、均一コーティングの局所層厚さ(すなわち、コーティングの任意の所与の位置で測定され得る層厚さ)は、当該均一コーティングの平均層厚さと15%以下、好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下、例えば2%で異なり得る。
【0075】
実施形態では、第4の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、他の態様のいずれかの任意の実施形態について対応して記載されるように独立し得る。
【0076】
ここで、本発明は、本発明のいくつかの実施形態の詳細な記載によって記載される。本発明の他の実施形態は、本発明の真の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識によって構成され得、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限されることは明らかである。
【0077】
実施例1:2次元非平坦基板の非周囲コーティングのためのコーティングデバイス
図1~
図4は、本発明によるコーティングデバイス(200)によってコーティングされる2次元湾曲基板(100)(すなわち、コーティングされる表面が1次元(one dimension)で曲率(curvature)を有し、それに垂直な次元(dimension)で直線である基板)を概略的に描写する。2次元湾曲基板(100)は、まず、ロードロックコンパートメント(400)のゲートバルブ(410)を通して、コーティングデバイス(200)に入れられる(
図1)。次いで、2次元湾曲基板(100)は、二重回転マグネトロン上に装着された2つの円筒形スパッタターゲット(510)を備える、スパッタシステム(500)に向かってさらに並進的に移送される(310)。移送移動(310)に加えて、2次元湾曲基板(100)は、コーティングゾーンに入るときに、コーティングされる表面がスパッタシステム(500)の方向に向くように傾斜される(320)(
図2)。2次元湾曲基板(100)がコーティングゾーンを通過し、それによってスパッタシステムのスパッタフラックス分布を横切る際、2次元湾曲基板(100)の配向および/または距離は、回転(例えば、傾斜を変化させる)および/またはその並進(例えば、間隔を変化させる)によって常に徐々に調整される(
図3)。2次元湾曲基板(100)は、最終的にコーティングゾーンを離れ(
図4)、次いで、出口ゲートバルブ(描写せず)を通してコーティングデバイス(200)からアンロードされ得る。描写されるように、移送方向(310)は、2次元湾曲基板(100)の湾曲ディメンジョン(the curved dimension)と平行に走り、両方とも、(平行な円筒形スパッタターゲットを有する)スパッタシステム(500)の長手方向軸に垂直である。これは、スパッタフラックス分布に関して2次元湾曲基板(100)の配向および/または距離を最も容易に調整することを可能にし、基板の形状を考慮してコーティングされる表面上に均一コーティングを達成することを目的とするため、(少なくともコーティングゾーンでは)2次元湾曲基板(100)の好ましい構成であり得る。現在の実施例では、二重回転マグネトロンの磁気システムは、描写されていない。所望される、または必要とされる場合、スパッタシステム(500)の磁気システムは、好ましくは、コーティングゾーンに沿った2次元湾曲基板(100)の位置および移動と同期して、移動またはスイングし得る。
【0078】
図1~
図4について記載されるスパッタシステム構成は、例示に過ぎず、より概して、長手方向スパッタターゲット(510)の任意の数、幾何学的形状および配向を含み得、それによって、所望のスパッタフラックス分布を達成することに留意されたい。これは、
図5に概略的に表されている。
【0079】
実施例2:3次元非平坦基板の非周囲コーティングのためのコーティングデバイス
実施例2a
図6~
図9は、本発明によるコーティングデバイス(200)によってコーティングされる3次元湾曲基板(100)(すなわち、コーティングされる表面が2つの垂直な次元で曲率を有する基板)を概略的に描写する。3次元湾曲基板(100)は、まず、ロードロックコンパートメント(400)のゲートバルブ(410)を通じて、コーティングデバイス(200)に入れられる(310)(
図6)。次いで、3次元湾曲基板(100)は、回転マグネトロン上に装着された1つの円筒形スパッタターゲットを備える、スパッタシステム(500)に向かってさらに並進的に移送される(310)。描写されるように、移送方向(310)は、3次元基板の湾曲ディメンジョンと平行に走り、両方とも、スパッタシステム(500)の長手方向軸に垂直または平行である。次いで、移送移動(310)に加えて、3次元湾曲基板(100)もまた、コーティングゾーンに入るときに、コーティングされる表面がスパッタシステム(500)の方向に向くように傾斜されている(320)(
図7)。傾斜移動(320)に加えて、3次元湾曲基板(100)は、コーティングされる曲面の全面を等しく曝すように、枢動点(301)周りをさらに任意選択的に旋回し(330)得る。3次元湾曲基板(100)がコーティングゾーンを通過すると、3次元湾曲基板(100)の配向および/または距離は、回転(例えば、傾斜を変化させる)および/または並進(例えば、間隔を変化させる)によって常に徐々に調整される(
図8)。3次元湾曲基板(100)は、最終的にコーティングゾーンを離れ(
図9)、次いで、出口ゲートバルブ(描写せず)を通してコーティングデバイス(200)からアンロードされ得る。
【0080】
実施例2b
複数の基板は、基板キャリア上に詰めた配置で(in a packed configuration)装着され得、この配置の結果、コーティングデバイス内(例えば、コーティングゾーンの前および/またはコーティングゾーン内)で3次元非平坦基板に展開(unfold)させる(広げる)ことができる。折り畳み/展開は、基板キャリア上で動作し、基板キャリアまたはコーティングデバイスに固定される1つ以上のアクチュエータによって行うことができる。良好な詰め(まとまり)および展開を達成するために、ジョイント式又はヒンジ式のテッセレーション(tessellations:モザイク状配列)からなる基板キャリアを使用することができ、そのいくつかの実施例は、
図10~
図13に描写されている。
【0081】
実施例2c
本発明の別の興味深い用途は、カバーまたはハウジングとして使用される非平坦ドーム形状基板(100)(
図14)の外側を均一にコーティングするものである。ここで、典型的には、ドーム形状基板(100)のすべての垂直外面について、上部外面の少なくとも50%のコーティング厚さを有することが望ましく、好ましくは、底面または内面を著しくコーティングすることなく、すべての外面について同等の厚さを有することが望ましい。このような基板(100)は、例えば、単一のアレイで、または基板キャリア(110)上の複数のアレイで、互いに並んで配列され得、これは、
図15(上面図)および
図16(側面図)の底部ならびに頂部にそれぞれ示される。これらの非平坦基板(100)をコーティングするために、二重回転マグネトロン(520)上に装着された単一(図示せず)または2つの円筒形スパッタターゲット(510)を備えるスパッタシステム(500)は、使用され得る。各ターゲット(510)からの個別の、およびスパッタシステム(500)全体についての、対応する予想されるスパッタフラックス分布(600)は、
図17に示されている。矢印は、到達スパッタフラックス分布(600)の優先(2次元)配向を指し、一方曲線は、第1の移動方向によって画定された平面上の到達スパッタフラックス分布(600)の(2次元)強度を示す。次いで、非平坦基板(100)の外側の均一コーティングは、
図15に描写されるように配列することによって、および
図18に描写されるように、基板(100)を並進的に移送(310)し、傾斜する(320)ことによって達成され得る。さらに、
図19に示されるように、追加の並進移動(340)をさらに追加することができ、例えば、これは、非平坦表面の上部におけるコーティングの厚さを、その側面と比較して制御することを可能にする。
【0082】
実施例3:非平坦基板の非周囲コーティングのための移動システム
上述の追加の第2の移動が実現され得るいくつかの異なる方法は、
図20~
図23に概略的に描写されている。
図20は、基板(100)が、枢動部(301、例えば、枢動点または軸)および線形アクチュエータ(302、すなわち、単軸アクチュエータのタイプ)を有する基板キャリア(110)上に装着される、移動システム(300)を示す。アクチュエータ(302)は、ピボット(301)周りの回転(320)によって基板(100)の傾斜を調整することを可能にする。次いで、スパッタフラックス分布に対する並進は、任意選択的に、さらなる並進手段(描写せず)によってもたらされ得る。
図21は、基板(100)が、2つのリニアアクチュエータ(302)を有する基板キャリア(110)上に装着される移動システム(300)を示す。2つのアクチュエータ(302)を使用することによって、スパッタフラックス分布に対する基板(100)の傾斜および間隔は、同時に調整され得る。なお、移動システムの搬送手段は、
図20~
図21には描写されていないことに留意されたい。
図22~
図23は、基板(100)が、ガイドシステム(303)と結合された基板キャリア(110)上に装着される移動システム(300)を示す(例えば、基板キャリアは、ガイドシステムのレール、溝またはノッチに係合する突起または車輪を有し得、またはその逆もまた同様であり得る)。ガイドシステム(303)は、その移送移動に加えて、基板がスパッタフラックス分布を横切るときに、追加的に回転および/または並進する(それによって、その傾斜および間隔を調整する)ように形成される。
図22では、ガイドシステム(303)は、固定軌道を有し、これは、ガイドステム(303)が典型的には、特定の基板形状に固有であり、異なる形状の基板(100)がコーティングされるときに交換される必要があることを伴う。逆に、
図23では、ガイドシステム(303)は、別々に移動され得る部分を含み、それによって、ガイド軌道をある程度調整することを可能にし、したがって、単一のガイドシステム(303)で異なる基板(100)形状に対応することができる。基板(100)は、特定の部品を所望の並進移動および/または回転移動に押し込む、または引き込むために、基板キャリア(110)の内部に懸架され得る。システムは、外力が加えられていないときに、基板(100)を原点位置に戻すために、ばね荷重(111)などを備え得る。
【0083】
上述の追加の移動を実現することができる別の方法は、
図24に概略的に描写されており、これは、6軸アクチュエータ(302)(すなわち、3つの並進自由度および3つの回転自由度を有するアクチュエータ)上に装着された湾曲基板(100)を示す。
【0084】
しかしながら、
図20~
図23および
図24に描写される移動システム(300)が例示的なものに過ぎず、基板キャリア(110)の有無にかかわらず、多くの他の適切なシステムが、1つ以上の単軸または多軸アクチュエータ(302)の組み合わせによって構想され得ることが明らかであろう。さらなる一実施例を挙げると、基板の並進および/または回転は、基板または基板キャリア上に装着された基板を把持するように適合されたロボットアームによってももたらされ得る。
【0085】
さらに、移動システムは、コーティングデバイス内に1つ以上の基板を展開(deploy)するように構成され得る。その一実施例は、
図10~
図13を参照して先に記載されている。別の実施例は、
図25~
図26に概略的に描写され、2つの湾曲基板(100)は、多かれ少なかれ積み重ねられた状態でコーティングデバイス(200)に入り(
図25)、その後、コーティングゾーンに入る前に(
図26)、互いに並んで移動され、最後に、コーティングデバイス(200)を出る前に、任意選択的に、再び積み重ねられ得る(描写せず)。コーティングデバイス内で1つ以上の基板を展開することは、例えば、入口および出口ロードロックコンパートメントならびにそれらのゲートバルブなどのコーティングデバイスの一部の部分は、小さくされ得、それによって、コーティングゾーン内の良好な真空状態の維持を容易にするという利点を有する。
【0086】
実施例4:適切な第2の移動を選択すること
実施例4a:基板は、長手方向スパッタシステムに平行な軸を有する円筒形の湾曲を有する。
マグネトロンと基板の間隔を調整すること:本発明者らは、一次近似では、長手方向マグネトロンからの2次元基板上の厚さは、両者の間の間隔にほぼ反比例することが分かっているため、本発明者らは、マグネトロンシステムに最も集中的に曝される部分の間隔を、マグネトロンに対して比較的一定に保つために、基板に並進移動を取り入れ得る。
【0087】
基板の傾斜を調整すること:本発明者らは、一次近似では、長手方向マグネトロンからの2次元基板上の厚さは、基板上の法線とマグネトロンシステムを指すベクトルとの間に形成される余弦にほぼ直線的に比例することが分かっているため、本発明者らは、基板の最も集中的に曝された部分の法線とマグネトロンの向きとの間の角度を比較的一定に保つために、基板に枢動移動を取り入れ得る。
【0088】
実施例4b:基板は、長手方向マグネトロンに垂直な軸を有する円筒形の湾曲を有する。
マグネトロンエンドゾーンに対する基板の位置を調整すること:本発明者らは、一方で、縦方向のマグネトロンのエンドゾーンの蒸着率(deposition rate)が低く、他方で、マグネトロンにより近い基板上の蒸着率が高いことが分かっているため、本発明者らは、マグネトロンにより近い基板上のゾーンについて、基板をマグネトロン縁部に近づけることにより、両方の効果のバランスをとり得る。
【0089】
基板の傾斜を調整すること:厚さの不均一性を補正するために、マグネトロンシステム(基板形状)に近い基板部分をマグネトロン縁部に近づけること(追加の移動)は、マグネトロンシステムに近く、マグネトロン縁部に近づけることができない基板の他の部分に問題をもたらし得る。これは、基板の他の部分の厚さを均衡させるために、追加の枢動移動(例えば、回転または傾斜)を基板に導入することによって補正され得る。
【0090】
好ましい実施形態、特定の構造および構成、ならびに材料は、本発明によるデバイスについて本明細書で考察されてきたが、形態および詳細の様々な変化または修正は、本発明の範囲および技術的教示から逸脱することなく行われ得ることを理解されたい。例えば、上記の任意の式は、使用され得る手順を単に表すだけである。機能は、ブロック図から追加または削除され得、動作は、機能ブロック間で交換され得る。ステップは、本発明の範囲内で記載される方法に追加または削除され得る。
【国際調査報告】