(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502083
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 US2020040951
(87)【国際公開番号】W WO2021011220
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】グリンステイナー,ダーリン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE10
4C601EE19
4C601GA07
4C601GB31
4C601GB43
4C601GB45
4C601GB46
4C601GB47
4C601GB48
(57)【要約】
トランスデューサー素子のアレイ及び減衰材料を含む超音波トランスデューサーを含む超音波プローブが提供される。減衰材料は、液晶ポリマー及び熱伝導性粒子材料を含むポリマー組成物を含む。液晶ポリマーは、約270℃以上の融点、及びISO試験番号11443:2005にしたがって融点より45℃高い温度及び400秒
-1の剪断速度において求めて約500Pa・秒以下の溶融粘度を有し、更にポリマー組成物は約0.2W/m・K以上の面直方向伝導率を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブであって、
対象領域に向かって放射するための超音波音響エネルギーに電気エネルギーを変換することができるトランスデューサー素子のアレイを含む超音波トランスデューサー;及び
前記対象領域に向かって放射した後に、前記超音波音響エネルギーが前記超音波トランスデューサーに向かって戻るのを阻害することができる減衰材料であって、前記減衰材料は液晶ポリマー及び熱伝導性粒子材料を含むポリマー組成物を含み、前記液晶ポリマーは、約270℃以上の融点、及びISO試験番号11443:2005にしたがって前記融点より45℃高い温度及び400秒
-1の剪断速度において求めて約500Pa・秒以下の溶融粘度を有し、更に前記ポリマー組成物は約0.2W/m・K以上の面直方向伝導率を有する上記減衰材料;
を含む、前記超音波プローブ。
【請求項2】
前記液晶ポリマーが繰り返し単位(1)~(3):
【化1】
(式中、
Ra、Rb、及びRfは、独立して、アルキニル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、又はハロアルキルであり、
l、m、及びqは、独立して0~4の整数である)
を含む、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記繰り返し単位(1)が4-ヒドロキシ安息香酸から誘導され、前記繰り返し単位(2)がヒドロキノンから誘導され、前記繰り返し単位(3)がイソフタル酸から誘導される、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記繰り返し単位(1)が前記ポリマーの約40モル%~約80モル%を構成し、前記繰り返し単位(2)及び(3)がそれぞれ前記ポリマーの約1モル%~約20モル%を構成する、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記繰り返し単位(2)の前記繰り返し単位(3)に対するモル比が約0.8~約2である、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記液晶ポリマーが繰り返し単位(4)及び(5):
【化2】
(式中、
Rc、Rd、及びReは、独立して、アルキニル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、又はハロアルキルであり、
n、o、及びpは、独立して0~4の整数である)
を更に含む、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記繰り返し単位(4)が4,4’-ビフェノールから誘導され、前記繰り返し単位(5)がテレフタル酸から誘導される、請求項6に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記繰り返し単位(4)及び(5)が、それぞれ前記ポリマーの約5モル%~約30モル%を構成する、請求項7に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記繰り返し単位(5)の前記繰り返し単位(4)に対するモル比が約0.8~約2である、請求項7に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記熱伝導性粒子材料が約100~約2,000マイクロメートルの平均寸法を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記熱伝導性粒子材料が約50W/m・K以上の固有熱伝導率を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記熱伝導性粒子材料が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウムケイ素、グラファイト、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属酸化物、金属粉末、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記熱伝導性粒子材料が、前記液晶ポリマー100部あたり約50~約200部の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記熱伝導性粒子材料が前記ポリマー組成物の約25重量%~約70重量%を構成し、前記液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の約30重量%~約75重量%を構成する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が約4~約15W/m・Kの面直方向伝導率を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項16】
前記超音波プローブが、前記電気エネルギーを前記超音波トランスデューサーに送るように構成されている超音波イメージング装置に接続されている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項17】
前記減衰材料が、前記超音波トランスデューサーの表面に電気的に接続されている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項18】
前記超音波トランスデューサーを被包するハウジングを更に含む、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項19】
前記ハウジングの少なくとも一部が前記減衰材料から形成されている、請求項18に記載の超音波プローブ。
【請求項20】
前記減衰材料が前記ハウジングの表面上に配置されている、請求項19に記載の超音波プローブ。
【請求項21】
前記超音波トランスデューサーがバッキングに隣接して配置されている圧電層を含む、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項22】
前記バッキングが前記減衰材料を含む、請求項21に記載の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年7月17日出願の米国仮出願第62/875,025号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]超音波イメージングプローブは医療分野において広く使用され続けている。例として、超音波プローブは、広範囲の外部、腹腔鏡、内視鏡、及び血管内イメージング用途のために利用されている。イメージングプローブによって与えられる超音波画像は、例えば診断目的のために使用することができる。プローブは、通常は縦軸に沿って配置された複数の平行な圧電トランスデューサー素子を含み、それぞれの素子は一対の電極に相互接続されている。電子回路によってトランスデューサー素子を励起させて、それらに超音波エネルギーを放出させる。次に、トランスデューサー素子は、受信した超音波エネルギーを電気信号に変換し、これを次に処理して画像を生成するために使用することができる。通常は、トランスデューサーは、それから音響信号が放出される音響面を有する圧電材料の活性層を含む。また、一般に、音響減衰部材が活性層の裏面上に配置されて、望ましくない音響信号(例えば、トランスデューサーから発信され、反射してトランスデューサーの後面に戻され得る信号:これは減衰させなければ音響面で受信される音響信号を妨害する)を減衰させる。残念ながら、殆どのプローブ設計の増大した複雑さのために、電力消費が増大し、これによりプローブによって生成される熱の量の増加をもたらす。この増加した熱の生成は、殆どの音響減衰部材が熱感受性が高くないという事実により問題となり得る。時間経過と共に、これは最終的にカメラセンサーの故障を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、より高度の熱感受性を有する改善された超音波プローブが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、対象領域に向かって放射するための超音波音響エネルギーに電気エネルギーを変換することができるトランスデューサー素子のアレイを含む超音波トランスデューサー;及び、対象領域に向かって放射した後に、超音波音響エネルギーが超音波トランスデューサーに向かって戻るのを阻害することができる減衰材料を含む超音波プローブが開示される。減衰材料は、液晶ポリマー及び熱伝導性粒子材料を含むポリマー組成物を含む。液晶ポリマーは、約270℃以上の融点、及びISO試験番号11443:2005にしたがって、融点より45℃高い温度及び400秒-1の剪断速度において求めて約500Pa・秒以下の溶融粘度を有し、ポリマー組成物はまた、約0.2W/m・K以上の面直方向伝導率を有する。
【0005】
[0005]下記において、本発明の他の特徴及び態様をより詳細に示す。
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面への参照を含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0007]
図1は、超音波プローブ及び対象領域の一実施形態の概略図である。
【
図2】[0008]
図2は、本発明の超音波プローブの一実施形態の等角図である。
【
図3】[0009]
図3は、
図2の超音波トランスデューサーの一部の概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
[0010]当業者であれば、本議論は例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定することは意図しないことを理解する。
[0011]一般的に言えば、本発明は、超音波トランスデューサー、及び100kHz~100MHzの周波数を有するエネルギーのような、材料に入射する音響エネルギーを減衰させることができる減衰材料を含む超音波プローブに関する。減衰材料は、液晶ポリマー及び熱伝導性粒子材料を含有するポリマー組成物を含む。ポリマー組成物中の成分の性質及びそれらの相対濃度を選択的に制御することによって、得られる組成物は有効な音響減衰材料として働くことができるが、また熱伝達を可能にする良好な熱特性も示すので、「ホットスポット」を速やかに排除することができ、部品の全体的な温度を使用中に低下させることができる。より詳細には、本組成物は、ASTM-E1461-13にしたがって求めて約0.2W/m・K以上、幾つかの実施形態においては約0.4W/m・K以上、幾つかの実施形態においては約0.5W/m・K以上、幾つかの実施形態においては約1~約25W/m・K、幾つかの実施形態においては約2~約20W/m・K、幾つかの実施形態においては約4~約15W/m・Kの面直方向熱伝導率を示す。
【0008】
[0012]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物
A.液晶ポリマー
[0013]上記に示したように、ポリマーマトリックスにおいて使用される液晶ポリマーは、約270℃~約400℃、幾つかの実施形態においては約280℃~約380℃、幾つかの実施形態においては約290℃~約370℃、幾つかの実施形態においては約300℃~約350℃の注意深く制御された範囲内の融点を有する。1つの特に好適な液晶ポリマーは、以下の繰り返し単位(1)~(3):
【0009】
【0010】
(式中、
Ra、Rb、及びRfは、独立して、アルキニル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、又はハロアルキルであり、
l、m、及びqは、独立して、0~4、幾つかの実施形態においては0~2、幾つかの実施形態においては0~1の整数である)
を含む。
【0011】
[0014]幾つかの実施形態においては、繰り返し単位(1)は4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)(lは0)から誘導されていてよく、繰り返し単位(2)はヒドロキノン(HQ)(mは0)から誘導されていてよく、及び/又は繰り返し単位(3)はイソフタル酸(IA)(qは0)から誘導されていてよい。
【0012】
[0015]繰り返し単位(1)~(3)の性質及び相対割合を選択的に制御することによって、本発明者らは、得られるポリマーが上記の範囲内の融点を達成し得るだけでなく、更に有意な程度の連鎖の絡み合いを達成してポリマーが良好な溶融強度を示すことができ、これによりそれを本発明の超音波プローブにおいて容易に使用することが可能になることを見出した。例えば、繰り返し単位(1)は、ポリマーの約40モル%~約80モル%、幾つかの実施形態においては約50モル%~約70モル%、幾つかの実施形態においては約55モル%~約65モル%を構成し得る。また、繰り返し単位(2)及び(3)は、それぞれポリマーの約1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約15モル%、幾つかの実施形態においては約5モル%~約10モル%を構成し得る。使用される正確なモル量に関係なく、繰り返し単位(2)の繰り返し単位(3)に対するモル比は、約0.8~約2、幾つかの実施形態においては約0.9~約1.6、及び幾つかの実施形態においては約1~約1.5であるように選択的に制御することができる。幾つかの場合においては、繰り返し単位(2)は繰り返し単位(3)よりも多いモル量で使用され、モル比は1よりも大きい。
【0013】
[0016]もちろん、ポリマー中に他の繰り返し単位も使用することができることを理解すべきである。
【0014】
【0015】
(式中、
Rc、Rd、及びReは、独立して、アルケニル、アルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、又はハロアルキルであり、
n、o、及びpは、独立して、0~4、幾つかの実施形態においては0~2、幾つかの実施形態においては0~1の整数である)
[0017]幾つかの実施形態においては、繰り返し単位(4)は4,4’-ビフェノール(BP)(n及びoは0である)から誘導されていてよく、及び/又は繰り返し単位(5)はテレフタル酸(TA)(pは0である)から誘導されていてよい。
【0016】
[0018]繰り返し単位(4)及び(5)は、それぞれ、ポリマーの約5モル%~約30モル%、幾つかの実施形態においては約6モル%~約25モル%、幾つかの実施形態においては約8モル%~約15モル%を構成してよい。使用される正確なモル量にか関係なく、繰り返し単位(5)の繰り返し単位(4)に対するモル比は、約0.8~約2、幾つかの実施形態においては約0.9~約1.6、及び幾つかの実施形態においては約1~約1.5であるように選択的に制御することができる。幾つかの場合においては、繰り返し単位(5)は繰り返し単位(4)よりも多いモル量で使用され、モル比は1よりも大きい。
【0017】
[0019]更に他の繰り返し単位をポリマー中において使用することもできる。例えば、4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA)、2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、並びにそれらのアルキル、アルコキシ、アリール及びそれらのハロゲン置換体、並びにそれらの組み合わせのようなHBA以外の芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される他の芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を使用することもできる。また、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、並びにそれらのアルキル、アルコキシ、アリール及びハロゲン置換体、並びにそれらの組み合わせのようなTA及びIA以外の芳香族ジカルボン酸から誘導される他の芳香族ジカルボン酸を使用することができる。また、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(又は4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、並びにそれらのアルキル、アルコキシ、アリール及びハロゲン置換体、並びにそれらの組合せのようなHQ及びBP以外の芳香族ジオールから誘導される芳香族ジオール繰り返し単位を使用することもできる。また、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(APAP))及び/又は芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(AP)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導されたもののような繰り返し単位を使用することもできる。種々の他のモノマー繰り返し単位がポリマーに組み込まれてもよいことも理解するべきである。例えば、幾つかの実施形態においては、ポリマーは、脂肪族又は脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸)、ジオール、アミド、アミンなどのような非芳香族モノマーから誘導される1以上の繰り返し単位を含み得る。もちろん、他の実施形態においては、ポリマーは非芳香族(例えば脂肪族又は脂環式)モノマーから誘導される繰り返し単位を有しない点で「完全芳香族」であってもよい。
【0018】
[0020]必ずしも必須ではないが、液晶ポリマーは、NDA、HNA、又はそれらの組み合わせのようなナフテンヒドロキシカルボン酸及びナフテンジカルボン酸から誘導される繰り返し単位を低含量で含むことが望ましい場合がある。即ち、ナフテンヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、又はHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の合計量は、通常はポリマーの約10モル%未満、幾つかの実施形態においては約5モル%未満、幾つかの実施形態においては約1モル%未満である。液晶ポリマーはまた、APAP、AP、又はそれらの組み合わせのような芳香族アミド及び芳香族アミンから誘導される繰り返し単位を低含量で含み得る。すなわち、芳香族アミド及び/又はアミン(例えば、APAP、AP、又はAPAPとAPの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の合計量は、通常はポリマーの約10モル%未満、幾つかの実施形態においては約5モル%未満、幾つかの実施形態においては約1モル%未満である。特定の実施形態においては、ポリマーは、0モル%のナフテンヒドロキシカルボン酸(例えばHNA)、0モル%のナフテンジカルボン酸(例えばNDA)、0モル%の芳香族アミド(例えばAPAP)、及び/又は0モル%の芳香族アミン(例えばAP)を含む。実際、液晶ポリマーは、所望であれば、繰り返し単位(1)~(5)の合計モルパーセントが100%に等しくなるように、完全に繰り返し単位(1)~(5)から形成されていてよい。
【0019】
[0021]液晶ポリマーは溶融重合プロセスで合成することができる。この方法には、最初に、重縮合反応を開始するために、繰り返し単位(例えば、HBA、IA、HQ、TA、及び/又はBP)を形成するために使用される1種類又複数のモノマーを反応容器中に導入することを含ませることができる。かかる反応において使用される特定の条件及び工程は周知であり、Calundannの米国特許第4,161,470号;Linstid, IIIらの米国特許第5,616,680号;Linstid, IIIらの米国特許第6,114,492号;Shepherdらの米国特許第6,514,611号;及びWaggonerのWO-2004/058851においてより詳細に説明することができる。反応において使用される容器は特に限定されないが、通常は高粘度流体の反応において一般的に使用されるものを使用することが望ましい。かかる反応容器としては、例えば、アンカー型、多段型、スパイラルリボン型、スクリューシャフト型等ようの可変形状の攪拌羽根付き攪拌機を有する撹拌タンク型装置、又はその変形形状を挙げることができる。かかる反応容器の更なる例としては、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等のような樹脂混練において一般的に使用される混合装置を挙げることができる。
【0020】
[0022]所望であれば、反応は、当該技術において公知のモノマーのアセチル化によって進行させることができる。これは、アセチル化剤(例えば無水酢酸)をモノマーに加えることによって達成することができる。アセチル化は一般に約90℃の温度で開始される。アセチル化の初期段階の間、還流を用いて、酢酸副生成物及び無水物が蒸留し始める点より低い蒸気相温度を維持することができる。アセチル化中の温度は、通常は90℃~150℃、幾つかの実施形態においては約110℃~約150℃の範囲である。還流を使用する場合、蒸気相温度は通常は酢酸の沸点より高いが、残留無水酢酸を保持するのに十分低い温度に維持する。例えば、無水酢酸は約140℃の温度で気化する。したがって、反応器に約110℃~約130℃の温度の蒸気相還流を与えることが特に望ましい。実質的に完全な反応を確実にするために、過剰量の無水酢酸を使用することができる。過剰の無水物の量は、使用される特定のアセチル化条件(還流の有無を含む)に依存して変化する。存在する反応物質のヒドロキシル基の全モル数を基準として約1~約10モルパーセントの過剰量の無水酢酸を使用することは珍しくない。
【0021】
[0023]アセチル化は別の反応容器内で行うことができ、或いは重合反応容器内でin situで行うことができる。別の反応容器を用いる場合には、モノマーの1以上をアセチル化反応器に導入し、続いて重合反応器に移すことができる。更に、1以上のモノマーを予めアセチル化にかけないで反応容器に直接導入することもできる。
【0022】
[0024]モノマー及び随意的なアセチル化剤に加えて、重合の促進を助けるために他の成分を反応混合物内に含ませることもできる。例えば、場合によっては、金属塩触媒(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(I)、チタン酸テトラブチル、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、及び有機化合物触媒(例えばN-メチルイミダゾール)のような触媒を用いることができる。かかる触媒は、通常は、繰り返し単位前駆体の全重量を基準として約50~約500ppmの量で用いる。別の反応器を用いる場合には、重合反応器ではなくアセチル化反応器に触媒を加えることが通常は望ましいが、これは決して必須要件ではない。
【0023】
[0025]反応混合物は、一般に重合反応容器内で昇温温度に加熱して、反応物質の溶融重縮合を開始させる。重縮合は、例えば約270℃~約400℃の温度範囲内で行うことができる。例えば、ポリマーを形成するための1つの好適な方法には、前駆体モノマー及び無水酢酸を反応器中に充填し、混合物を約90℃~約150℃の温度に加熱してモノマーのヒドロキシル基をアセチル化し(例えばアセトキシを形成し)、次に温度を約270℃~約400℃に上昇させて溶融重縮合を行うことを含ませることができる。最終重合温度に近付いたら、反応の揮発性副生成物(例えば酢酸)を除去して、所望の分子量を容易に達成することができるようにすることもできる。反応混合物は、一般に重合中に撹拌にかけて、良好な熱及び物質の移動、並びにその結果として良好な材料の均一性を確保する。撹拌器の回転速度は反応の過程中に変動させることができるが、通常は約10~約100の毎分回転数(rpm)、幾つかの態様においては約20~約80rpmの範囲である。溶融体における分子量を構築するために、重合反応はまた真空下で行うこともでき、これを加えると重縮合の最終段階中に形成される揮発性化合物の除去が促進される。真空は、約5~約30ポンド/平方インチ(psi)、幾つかの態様においては約10~約20psiの範囲内のような吸引圧を加えることによって生起させることができる。
【0024】
[0026]溶融重合の後、溶融したポリマーは、通常は所望の形状のダイを取り付けた押出しオリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、回収することができる。通常は、溶融体は、有孔ダイを通して排出してストランドを形成し、これを水浴内で巻き取り、ペレット化し、乾燥する。樹脂はまた、ストランド、顆粒、又は粉末の形態であってもよい。
【0025】
[0027]使用される特定の方法に関係なく、得られるポリマーは、400秒-1のせん断速度で求めて約25~約350Pa・秒、幾つかの実施形態においては約30~約305Pa・秒、幾つかの実施形態においては約35~約250Pa・秒のような比較的低い溶融粘度有し得る。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、ポリマーの融点よりも約45℃高い温度(例えば、305℃の融点を有するポリマーについては350℃)で求めることができる。
【0026】
B.熱伝導性粒子材料
[0028]所望の熱特性を達成するのを助けるために、本ポリマー組成物はまた、熱伝導性粒子材料も含む。粒子状材料は、通常は、例えばISO-13320:2009にしたがい、レーザー回折法を用いて(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)求めて約100~約2,000マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約250~約1,400マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約300~約1,300マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約400~約1,200マイクロメートルの平均寸法(例えば直径)を有する。また、熱伝導性粒子材料は、狭い寸法分布を有し得る。即ち、粒子の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約80体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約90体積%が、上記の範囲内の寸法を有し得る。幾つかの実施形態においては、粒子材料は、約4:1以上、幾つかの実施形態においては約8:1以上、幾つかの実施形態においては約10:1~約2000:1のような比較的高いアスペクト比(例えば、平均長さ又は直径を平均厚さで割った値)を有する点で「フレーク」形状を有し得る。平均厚さは、例えば約10マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.01マイクロメートル~約8マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.05マイクロメートル~約5マイクロメートルであってよい。また、材料の比表面積は、約0.5m2/g以上、幾つかの実施形態においては約1m2/g以上、幾つかの実施形態においては約2~約40m2/gのように比較的高くてよい。比表面積は、当該技術において一般に知られており、Brunauer, Emmet, and Teller(J.Amer.Chem.Soc., vol.60, 1938年2月, pp.309-319)に記載されているように、吸着ガスとして窒素を用いる物理的ガス吸着法(BET法)のような標準的な方法にしたがって求めることができる。粒子材料はまた、例えばASTM-B527-15にしたがって求めて約0.2~約1.0g/cm3、幾つかの実施形態においては約0.3~約0.9g/cm3、幾つかの実施形態においては約0.4~約0.8g/cm3の粉末タップ密度を有し得る。
【0027】
[0029]更に、熱伝導性粒子状材料は、約50W/m・K以上、幾つかの実施形態においては約100W/m・K以上、幾つかの態様においては約150W/m・K以上のような高い固有熱伝導率を有していてもよい。かかる材料の例としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素マグネシウム(MgSiN2)、グラファイト(例えば膨張グラファイト)、炭化ケイ素(SiC)、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム等)、金属粉末(例えば、アルミニウム、銅、青銅、黄銅等)並びにこれらの組合せを挙げることができる。グラファイトは、本発明のポリマー組成物において用いるのに特に好適である。実際、幾つかの実施形態においては、グラファイトは、ポリマー組成物中において用いる熱伝導性粒子状材料の大部分、例えば熱伝導性粒子状材料の約50重量%以上、幾つかの態様においては約70重量%以上、幾つかの態様においては約90重量%~100重量%を構成し得る。
【0028】
[0030]熱伝導性粒子材料は、通常は液晶ポリマー100部あたり約50~約200重量部、幾つかの実施形態においては約70~約180重量部、幾つかの実施形態においては約100~約150重量部の量でポリマー組成物中において使用される。例えば、熱伝導性粒子材料は、ポリマー組成物の約25重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約60重量%を構成し得る。また、液晶ポリマーは、ポリマー組成物の約30重量%~約75重量%、幾つかの実施形態においては約35重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約60重量%を構成し得る。
【0029】
C.随意的な成分
[0031]また、流動性改良剤、滑剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、滴下防止添加剤、成核剤(例えば窒化ホウ素)、無機粒子フィラー(例えば、タルク、マイカなど)、無機繊維フィラー(例えばガラス繊維)、並びに特性及び加工性を向上させるために加えられる他の材料、並びに特性及び加工性を向上させるために加えられる他の材料のような種々の他の成分をポリマー組成物中に含ませることもできる。例えば、実質的な分解なしに液晶ポリマーの処理条件に耐えることができる滑剤をポリマー組成物中において使用することができる。かかる滑剤の例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の加工において滑剤として一般に使用されるタイプの炭化水素ワックス、並びにそれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸は、通常はミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシン酸、パリナリン酸などのような約12~約60個の炭素原子の主鎖炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及び複合エステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪第一級アミド、脂肪第二級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、及びアルカノールアミド、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶ワックスのような炭化水素ワックスも好適である。特に好適な滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’-エチレンビスステアラミドである。使用する場合には、1種類又は複数の滑剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.05重量%~約1.5重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%(重量基準)を構成する。
【0030】
II.形成
[0032]ポリマー組成物の成分(例えば、1種類又複数の液晶ポリマー、1種類又複数の熱伝導性粒子材料など)は、溶融加工又は一緒にブレンドすることができる。成分は、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられてその中に収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って供給セクション、及び供給セクションから下流に位置する溶融セクションを画定し得る押出機に、別々か又は組み合わせて供給することができる。押出機は、一軸又は二軸押出機であってよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、約50~約800回転/分(rpm)、幾つかの実施形態においては約70~約150rpm、幾つかの実施形態においては約80~約120rpmの範囲であってよい。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態においては約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態においては約800秒-1~約1200秒-1の範囲であってよい。みかけせん断速度は、4Q/πR3(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(m3/秒)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(m)である)に等しい。
【0031】
[0033]それを形成する特定の様式に関係なく、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有し得る。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、400秒-1の剪断速度において求めて約500Pa・秒以下、幾つかの実施形態においては約50~約450Pa・秒、幾つかの実施形態においては約60~約400Pa・秒、幾つかの実施形態においては約80~約370Pa・秒、幾つかの実施形態においては約150~約350Pa・秒の溶融粘度を有し得る。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、組成物の融点よりも45℃高い温度(例えば350℃)において求めることができる。
【0032】
[0034]勿論、上記のものに加えて、本ポリマー組成物はまた、他の良好な強度特性を示し得る。例えば、本組成物は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃で測定して約1kJ/m2、幾つかの実施形態においては約2~約40kJ/m2、幾つかの実施形態においては約3~約30kJ/m2のシャルピーノッチ無し衝撃強さを示し得る。本組成物はまた、約10~約500MPa、幾つかの実施形態においては約20~約400MPa、幾つかの実施形態においては約30~約350MPaの引張強さ;約0.3%以上、幾つかの実施形態においては約0.5%~約15%、幾つかの実施形態においては約0.6%~約10%の引張破断歪み、及び/又は約4,000MPa~約30,000MPa、幾つかの実施形態においは約6,000MPa~約25,000MPa、幾つかの実施形態においては約7,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を示し得る。引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本組成物はまた、約30~約500MPa、幾つかの実施形態においては約40~約400MPa、幾つかの実施形態においては約50~約350MPaの曲げ強度、及び/又は約0.3%以上、幾つかの実施形態においては約0.4%~約15%、幾つかの実施形態においては約0.6%~約10%の曲げ破断歪みも示し得る。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本組成物はまた、ASTM-D648-07(ISO試験No.75-2:2013と技術的に等価)にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して約180℃以上、幾つかの実施形態においては約190℃~約280℃の荷重撓み温度(DTUL)も示し得る。
【0033】
III.超音波プローブ
[0035]上記のように、本発明のポリマー組成物は、超音波トランスデューサープローブの少なくとも一部において使用される。このプローブは、二次元及び/又は三次元イメージングを生成するために使用することができ、直線状、凸状(湾曲)、フェーズド(セクター)、単一、又はTV型プローブであってもよい。一般的に言えば、超音波プローブは、対象領域に向かって放出させるための超音波音響エネルギーに電気エネルギーを変換することができるトランスデューサー素子のアレイを含む少なくとも1つの超音波トランスデューサーを含む。また、プローブは、超音波音響エネルギーが対象領域に向かって放出された後に超音波トランスデューサーに向かって戻るのを阻害することができる減衰材料も含む。
【0034】
[0036]プローブの特定の構成は、当業者に公知なように変更することができる。例えば
図1を参照すると、少なくとも1つの超音波トランスデューサー103を含む超音波プローブ100の一実施形態が示されている。超音波トランスデューサー103は、電気エネルギーを機械(例えば音響)エネルギーに変換し、及び/又は機械エネルギーを電気エネルギーに変換するように動作させることができる機械的活性層であってよい。例えば、超音波トランスデューサー103は、超音波イメージング装置109からの電気信号を超音波音響エネルギーに変換するように動作させることができる。更に、超音波トランスデューサー103は、受信した超音波音響エネルギーを電気信号に変換するように動作させることができる。超音波トランスデューサー103には、少なくとも1つの接地電極112及び少なくとも1つの信号電極113を含ませることができる。信号電極113及び接地電極112は、それぞれ、少なくとも1つの信号接続110(例えば少なくとも1つの信号ワイヤ)及び少なくとも1つの接地接続111(例えば少なくとも1つの接地ワイヤ)によって超音波イメージング装置109に電気的に相互接続することができる。また、超音波トランスデューサー103には、それぞれを信号接続及び接地接続を介して超音波イメージング装置109に電気的に接続することができる個々のトランスデューサー素子(図示せず)のアレイを含ませることもできる。アレイは、個々のトランスデューサー素子の単一の行を含む一次元アレイ、又は例えば複数の列及び複数の行で配置された個々のトランスデューサー素子を含む多次元アレイ(例えば二次元)であってよい。アレイ全体の接地接続は集合させることができ、単一の接地接続を介して超音波イメージング装置109に電気的に接続することができる。
【0035】
[0037]超音波画像を生成させるために、超音波イメージング装置109は、超音波トランスデューサー103に電気信号を送ることができ、次に超音波トランスデューサー103は対象領域102に向かって放射させるための超音波音響エネルギー104に電気エネルギーを変換することができる。対象領域102は、臓器のような患者の内部構造物であってよい。対象領域102内の構造物は、音響エネルギー106の一部を反射して超音波トランスデューサー103に向かって戻すことができる。反射された音響エネルギー106は、超音波トランスデューサー103によって電気信号に変換することができ、これを超音波イメージング装置109に送ることができ、そこで信号を処理することができ、対象領域102の画像を生成させることができる。超音波イメージング装置109からの電気信号を超音波音響エネルギー104に変換するプロセスは、対象領域102に向かう方向以外の方向に向かう更なる音響エネルギー107を生成する可能性がある。この更なる音響エネルギー107は、超音波プローブ100のハウジング101のような種々の構造物から反射して超音波トランスデューサー103に戻り、そこで電気信号に変換され得る。反射された更なる音響エネルギー107からの電気信号は、反射された音響エネルギー106からの電気信号と干渉する可能性がある。かかる干渉は、画像品質の劣化をもたらす可能性がある。
【0036】
[0038]したがって、反射された更なる音響エネルギー107からの干渉を低減するために、音響減衰材料108を超音波プローブ100内に含ませることができる。音響減衰材料108は、対象領域102に対向する超音波トランスデューサー103の面(例えば超音波トランスデューサー103の裏面)と反対側の超音波トランスデューサー103の表面に沿って、超音波トランスデューサー103に相互接続することができる。音響減衰材料108は、更なる音響エネルギー107の相当量が超音波トランスデューサー103の裏面に戻るのを妨げることができる。また、音響減衰材料108は、他のソースから超音波トランスデューサー103の裏面に到達する音響エネルギーの量を減少させることができる。この点に関し、音響減衰材料108は、減少した干渉及び画質の向上をもたらすことができる。音響減衰材料108が超音波トランスデューサー103に直接接続される実施形態においては、信号接続部110は音響減衰材料108を通過させることができる。
【0037】
[0039]音響減衰材料108は、超音波プローブ100内の音響エネルギーを減衰させるために、超音波プローブ100内の他の位置に配置することもできる。例えば、一定量の音響減衰材料114をハウジング101に対して配置することができ、又はこれによってハウジング101の全部又は一部を形成して、そのようにしない場合にはハウジング101の内面から反射し、画質を低下させ得る音響エネルギーを減衰(例えば吸収)することができる。
図1ではハウジング101の内部の一方の側全体をライニングするように図示されているが、音響減衰材料114は、音響エネルギーを減衰させることが有益であり得るハウジング101の任意の表面又はその部分に沿って配置することができることも理解すべきである。また、音響減衰材料114は、超音波プローブ100内の他の構造物(例えば回路基板)に隣接して配置して、これがなければ他の構造物から反射する可能性のある音響エネルギーを減衰させることができる。
【0038】
[0040]
図2は、超音波プローブアセンブリ1200の1つの特定の実施形態の斜視図を示す。プローブアセンブリ1200は、ハウジング1201及びケーブル1202を含む。ケーブル1202は、超音波イメージング装置(図示せず)に相互接続される。一般に、プローブアセンブリ1200は、ハウジング1201内に収容され、プローブアセンブリ1200の一端に沿ってプローブアセンブリ面1203を通して超音波エネルギーを伝達するように動作させることができる複数の超音波トランスデューサーを含む。超音波エネルギーは、音波の形態で、患者の外面に向けるか、又は患者の内部構造物中に向けることができる。音波は種々の内部の特徴と相互作用して反射することができる。次に、これらの反射をプローブアセンブリ1200によって検出して、超音波イメージング装置によって患者の内部構造物の画像として表示することができる。
【0039】
[0041]プローブアセンブリ1200は、イメージングボリューム1208をスキャンするように動作させることができる。これは、可動部材上に一次元トランスデューサーアレイを取り付けることによって達成することができる。一般に、一次元トランスデューサーアレイは、縦軸1205に沿って複数のトランスデューサー素子を含む単一の行を含む。電子制御によって、音響エネルギーのビームを縦軸1205に沿って掃引することができる。音響エネルギーの一部が反射してトランスデューサーアレイに戻り、そこでトランスデューサーアレイによって音響エネルギーから電気信号に変換される。次に、これらの電気信号を、音響エネルギーによって掃引された領域の二次元画像に変換することができる。プローブアセンブリ1200には、仰角軸1204に沿って機械的に掃引(例えば回転)することができる一次元トランスデューサーアレイを含ませることができる。したがって、縦軸1205に沿った電子掃引と、仰角軸1204に沿ったトランスデューサーアレイの機械的掃引との組み合わせによって、音響エネルギーのビームを、イメージング領域1208を通して掃引することができる。反射してトランスデューサーアレイに戻されたエネルギーーは、イメージングボリューム1208の三次元画像に変換することができる。
【0040】
[0042]プローブアセンブリ1200内のトランスデューサーアレイはまた、仰角軸1204に沿って機械的に掃引(例えば回転)することができる二次元アレイであってもよい。回転軸(例えば仰角軸1204)に対して垂直のアレイの寸法を利用して、伝達された音響エネルギーを更に制御することができる。例えば、仰角軸1204に沿ってトランスデューサーを使用して音響エネルギーを成形して、サイドローブを低減し、仰角軸1204に沿った焦点を改善することができる。
【0041】
[0043]
図3を参照すると、一次元超音波トランスデューサーシステム1300の断面概略図が提示される。超音波トランスデューサーシステム1300は、縦軸1305及び仰角軸1304を有し、それらは例えば
図2のプローブアセンブリの縦軸1205及び仰角軸1204にそれぞれ類似している。超音波トランスデューサーシステム1300は、超音波信号を送信及び/又は受信するように動作させることができる。
【0042】
[0044]一般に、当業者に公知なように、トランスデューサー1315(圧電層1306のような活性層、及びそれに取り付けられた任意の随意的な整合層(下記において説明する)を含む)は、長手軸1305に沿って所定数の別個のセクション(例えばセクション1309a~1309n(ここで、nは所定数の別個のセクションを表す))に分割することができる。これらの別個のセクションのそれぞれはトランスデューサー素子であってよい(例えば、別個のセクション1309aはトランスデューサー素子であってよい)。別個のセクションは、2以上の別個のセクションが単一のトランスデューサー素子として動作するように電気的に相互接続することができる(例えば、別個のセクション1309a及び1309bを電気的に相互接続して、単一のトランスデューサー素子として機能させることができる)。バッキング1313も存在し得る。
【0043】
[0045]
図3は、超音波トランスデューサーシステム1300を縦軸1305に沿って直線であるように示している。超音波トランスデューサーシステム1300は、縦軸1305に沿って湾曲させてもよい。この曲率は、例えば、個々の平面状トランスデューサー素子を縦軸1305に沿って互いに角度をなして配置することによって達成することができる。
図3はまた、超音波トランスデューサーシステム1300の個々のトランスデューサー素子を仰角軸1304に沿った平面として示している。別の構成においては、超音波トランスデューサーシステム1300の個々のトランスデューサー素子を、仰角軸1304に沿って湾曲させてもよい。
【0044】
[0046]トランスデューサー1315には圧電層1306を含ませることができる。圧電層1306には、圧電材料1320の層、第1の電極層1321、及び第2の電極層1322を含ませることができる。圧電材料1320の層には、セラミックベースの材料(例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT))を含ませることができる。第1の電極層1321及び第2の電極層1322には、導電性材料の1以上の層を含ませることができる。それぞれの個々のトランスデューサー素子に接続された第1の電極層1321の部分は、その個々のトランスデューサー素子のための信号電極として働かせることができる。同様に、それぞれの個々のトランスデューサー素子に接続された第2の電極層1322の部分は、その個々のトランスデューサー素子のため接地電極として働かせることができる。
【0045】
[0047]一般に、信号電極及び接地電極は
図3に示すように配置され、接地電極は圧電材料1320のイメージングする領域に対向する面上に配置される。信号電極と接地電極の位置は逆転させることができる。かかる実施形態においては、信号層をシールドするために更なる接地層を設ける必要がある場合がある。接地電極は、
図3に示されるように個々の電極であってよく、又は個々のトランスデューサー素子のそれぞれの上に配置された接地材料の1つの連続層であってもよい。個々のトランスデューサー素子電極を電子回路に相互接続することができ、これによって音波の発生及び感知を与えることができる。
【0046】
[0048]随意的な音響整合層を圧電層1306に相互接続することができる。
図3の超音波トランスデューサーシステム1300は、第1の随意的な整合層1307、及び圧電層1306に相互接続された第2の随意的な整合層1308を示している。随意的な整合層の存在及び数は、
図3に示す構成と異なってもいてもよい。トランスデューサー1315は、圧電層1306を、それに取り付けられた任意の随意的な整合層と共に含む。
【0047】
[0049]圧電層1306は、電気エネルギーを機械エネルギーに、及び機械エネルギーを電気エネルギーに変換するように動作させることができる機械的活性層であってよい。前述のように、圧電層1306には、接地電極と信号電極との間にサンドイッチされたPZT材料の層を含ませることができる。音響信号を生成させることができる種々の部品及び材料を、圧電層1306の少なくとも一部に代えて使用することができる。かかる部品及び材料としては、セラミック材料、強誘電体材料、複合材料、コンデンサ微細加工超音波トランスデューサー(CMUT)、圧電微細加工超音波トランスデューサー(PMUT)、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。具体的な部品、動作の電気機械原理、又は材料に関係なく、機械的活性層には、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する手段を含ませることができ、これは音響面1314、及び個別に制御することができる複数のトランスデューサー素子を有する。一般に、イメージング目的のために使用することができる超音波音響信号を生成させるための当業者に公知の任意のシステムを、機械的活性層において利用することができる。
【0048】
[0050]それぞれの個々の別個のセクションは、トランスデューサー1315のダイシング中に生成されるカーフ(例えば、別個のセクション1309cと1309dの間のカーフ1310)によって、隣接する別個のセクションから分離することができる。カーフにフィラー材料を充填することができる。更に、1つ又は複数の音響レンズを音響面1314に相互接続することができる。
【0049】
[0051]圧電層1306が音響エネルギーを放出すると、一部の音響エネルギーはバッキング1313中に透過する。かかる音響エネルギーはイメージングボリューム1208に向けられないので、この音響エネルギーは減衰させることが望ましい。この音響エネルギーを減衰させることは、反射して圧電層1306の裏側を通って圧電層1306中に戻される音響エネルギーの量を減少させるのに役立つ。かかる反射音響エネルギーは、反射してイメージングボリューム1208から圧電体1306に戻される音響エネルギーを妨害し、その結果、画像の劣化を生じさせる可能性がある。
【0050】
[0052]示される実施形態においては、バッキング1313は複数の層(例えば、第1の層1301及び第2の層1302)を含む。勿論、バッキング1313は単一の層から形成することもできることを理解すべきである。それにもかかわらず、バッキング1313の少なくとも一部に、音響減衰材料として働かせるために本発明のポリマー組成物を含ませることができる。例えば一実施形態においては、第2の層1302及び/又は第1の層1301をポリマー組成物から形成することができる。勿論、かかる層に、例えばエポキシ樹脂、シリコーンゴム、タングステン、酸化アルミニウム、マイカ、微小球体、又はこれらの組み合わせのような超音波トランスデューサー設計の当業者に公知の他の材料を含ませることもできる。
【0051】
[0053]ポリマー組成物から形成される超音波プローブの部品(例えば、バッキング、ハウジングなど)は、種々の異なる技術を使用して形成することができる。例えば好適な技術としては、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、フォーム射出成形、低圧ガス射出成形、低圧フォーム射出成形、ガス押出圧縮成形、フォーム押出圧縮成形、押出成形、フォーム押出成形、圧縮成形、フォーム圧縮成形、ガス圧縮成形などを挙げることができる。例えば、その中でポリマー組成物を射出することができる金型を含む射出成形システムを使用することができる。射出機内部の時間は、ポリマーマトリクスが早期に固化しないように制御及び最適化することができる。サイクル時間に達して、バレルが排出のために満杯になった時点で、ピストンを使用して組成物を金型キャビティに射出することができる。圧縮成形システムを使用することもできる。射出成形と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は任意の公知の技術を使用して、例えば自動化ロボットアームによって取り上げることによって圧縮金型中に配置することができる。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間、ポリマーマトリクスの固化温度又はそれ以上に維持することができる。次に、成形品を融点より低い温度にすることによって固化させることができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形プロセスに関するサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合するように、十分な結合を達成するように、及びプロセス全体の生産性を高めるように調整することができる。
【実施例】
【0052】
[0054]本発明は以下の実施例を参照することにより、より良好に理解することができる。
試験方法
[0055]熱伝導率:面内方向及び面直方向熱伝導率の値は、ASTM-1461-13にしたがって求める。
【0053】
[0056]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、400秒-1の剪断速度、及び融点(例えば305℃)より45℃高い温度において、Dynisco LCR7001毛細管流量計を用いて求めることができる。流量計オリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0054】
[0057]融点:融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11357:2013によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0055】
[0058]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させ、0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させることができる。
【0056】
[0059]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0057】
[0060]曲げ弾性率、曲げ応力、及び曲げ歪み:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0058】
[0061]ノッチ無しシャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10,方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0059】
実施例
[0062]超音波プローブにおいて使用するためのポリマー組成物は、55重量%のグラファイトフレーク及び45重量%の本明細書に記載の液晶ポリマーから形成することができる。この組成物は、下表に示す熱的及び機械的特性を示すことができる。
【0060】
【0061】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の態様の複数の形態は、全体的又は部分的の両方で相互に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は例のみの目的であり、添付の特許請求の範囲において更に記載されている発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
【国際調査報告】