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  • 特表-抗菌組成物及びその使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】抗菌組成物及びその使用法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20220914BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220914BHJP
   A01N 37/16 20060101ALI20220914BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220914BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01P3/00
A01N37/16
A61L2/18 102
A61L101:22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502094
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020040505
(87)【国際公開番号】W WO2021011197
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/873,629
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520061734
【氏名又は名称】アークサーダ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ARXADA, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】オセイ-オウス,ルーク・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン,シヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ベントレー,マーカス
【テーマコード(参考)】
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA06
4C058AA12
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ06
4C058JJ23
4H011AA02
4H011BA02
4H011BB06
4H011BB18
4H011BC06
4H011BC07
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
抗菌組成物は、過酸化水素、有機スルホン酸、及び過酸化物アジュバントを含有する。過酸化物アジュバントは小分子有機酸、例えばギ酸である。抗菌組成物は、あらゆる種類の分野、例えば保健医療業界で表面を消毒するのに非常に有効である。当該抗菌組成物はC.ディフィシレの制御によく適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌組成物であって、
過酸化水素源と;
過酸化物アジュバントと
を含み、前記過酸化物アジュバントは約1~約6のpKaを有する有機酸及び/又はその塩を含み、前記抗菌組成物は酢酸を含まず、そしてASTM試験法E2197-11及びE2839-11に従ってクロストリジウム・ディフィシレに対して試験された場合に3分間の接触時間後、当該組成物が3log10以上の減少を達成するのに十分な量で、前記過酸化物アジュバントが当該組成物中に存在する、前記抗菌組成物。
【請求項2】
有機スルホン酸をさらに含む、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
過酸化物アジュバントが、1個又は2個の炭素原子を含有する有機酸及び/又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
過酸化物アジュバントが、ギ酸、ギ酸塩、又はそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項5】
過酸化物アジュバントが、グリコール酸、グリコール酸の塩、又はそれらの混合物を含む、請求項1~2のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項6】
過酸化物アジュバントが、シュウ酸などのジカルボン酸又はトリカルボン酸を含む、請求項1~5のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項7】
過酢酸を含まない、請求項1~6のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項8】
漂白剤を含まない、請求項1~7のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項9】
有機スルホン酸が、C-Cアルキルスルホン酸、スルホン化C-Cカルボン酸、置換又は非置換芳香族スルホン酸、モノ-アルキルフェニルスルホン酸、ジ-アルキルフェニルスルホン酸、又はそれらの混合物を含み、前記置換芳香族スルホン酸が少なくとも一つのC-Cアルキル基で置換されている、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項10】
有機スルホン酸が、メタンスルホン酸又はベンゼンスルホン酸を含む、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
有機スルホン酸が、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、又はそれらの混合物を含む、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
過酸化水素源が過酸化水素を含み、過酸化水素と過酸化物アジュバントが当該組成物中に、約100:1~約1:2、例えば約20:1~約1:1、例えば約8:1~約2:1の重量比で存在する、請求項1~11のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項13】
過酸化水素源が過酸化水素を含み、過酸化水素と有機スルホン酸が当該組成物中に、約100:1~約1:3、例えば約10:1~約1:1.1、例えば約3:1~約1:0.9の重量比で存在する、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
過酸化水素源が過酸化水素を含み、過酸化水素が当該組成物中に約0.2重量%~約20重量%、例えば約1重量%~約15重量%、例えば約1重量%~約8重量%の量で存在する、請求項1~13のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項15】
過酸化物アジュバントが当該組成物中に、約0.05重量%~約7重量%、例えば約0.08重量%~約5重量%、例えば約0.1重量%~約4重量%の量で存在する、請求項1~14のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項16】
有機スルホン酸が当該組成物中に、約0.1重量%~約8重量%の量、例えば約0.5重量%~約6重量%の量、例えば約1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項17】
ギ酸及び/又はギ酸塩をグリコール酸及び/又はグリコール酸塩と組み合わせて含有する、請求項1~16のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項18】
約1~約5のpHを有する、請求項1~17のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項19】
液体担体をさらに含有し、前記液体担体は、水、アルコール、又はそれらの混合物を含む、請求項1~18のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項20】
前記組成物が、ASTM試験法E2197-11及びE2839-11に従ってC.ディフィシレに対して試験された場合に3分間の接触時間後、少なくとも4log10の減少、例えば少なくとも5log10の減少、例えば少なくとも6log10の減少を達成する、請求項1~19のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項21】
ワイピング製品であって、
液体吸収基材と;そして
請求項1~20のいずれかに記載の抗菌組成物と
を含み、前記抗菌組成物が当該基材に吸収されている製品。
【請求項22】
硬質表面の消毒法であって、
請求項1~20のいずれかに記載の抗菌組成物を表面に接触させることを含む方法。
【請求項23】
硬質表面が、保健医療業界又は獣医業界で使用される表面を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
硬質表面が、食品加工装置又は食品調理表面を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記抗菌組成物が、液体吸収基材に適用された後、前記基材を用いて前記表面に接触される、請求項22~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
抗菌組成物前駆体であって、
有機スルホン酸と;
過酸化物アジュバントと
を含み、前記過酸化物アジュバントは約1~約6のpKaを有する有機酸及び/又はその塩を含み、前記抗菌組成物前駆体は酸性酸(acidic acid)を含まず、有機スルホン酸は当該組成物中に約15重量%~約60重量%の量で存在し、前記過酸化物アジュバントは当該組成物中に約5重量%~約20重量%の量で存在する、前記抗菌組成物前駆体。
【請求項27】
過酸化物アジュバントが、ギ酸、ギ酸塩、又はそれらの混合物を含む、請求項26に記載の抗菌組成物前駆体。
【請求項28】
過酸化水素源と組み合わされた請求項26又は27に記載の抗菌組成物前駆体を含む抗菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本願は、2019年7月12日出願の米国仮特許出願第62/873,629号に基づく優先権を主張し、前記出願を引用によって本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[002]抗菌組成物は多種多様な用途に使用されている。一般に、抗菌組成物は微生物を破壊及び/又は微生物の増殖を防止するために使用される。抗菌組成物は、例えば、外食産業、保健医療業界、工業環境において、また消費者の家庭用として、目的物を消毒又は衛生的にするために使用される。一態様において、抗菌組成物は、硬質、非孔質表面などの表面を衛生的にする又は消毒するために使用される。
【0003】
[003]一部の抗菌組成物は過酸化水素を含有することが知られている。過酸化水素は、酸素と水に分解し、従って非常に安全に使用できるため、消毒剤及び殺生物剤として使用されることの利点及び利益を有する。過酸化水素の別の利点は、様々な種類の生物に対して広域の殺生物活性を有することである。しかしながら、残念なことに、過酸化水素は、単独で使用された場合、比較的低い活性率しか持てない。
【0004】
[004]上記に鑑み、当業者は、増強された殺生物特性を有する過酸化水素含有抗菌溶液を製造しようと試みてきた。特に、当業者は、様々な微生物に対して改良された有効性及び殺菌率を有する過酸化水素溶液を製造しようとしてきた。これに関連して、過酸化水素はこれまで、様々な微生物に対する有効性を改良するために様々なその他の化学種と組み合わされてきた。例えば、かつては過酸化水素は酢酸及び/又は過酢酸と組み合わされていた。過酸化水素に酢酸及び/又は過酢酸を添加すると抗菌組成物の有効性を高めることができるが、得られる組成物は非常に不快な刺激臭を有する。
【0005】
[005]過酸化水素組成物による制御が困難な一つの特別な微生物はクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)である。C.ディフィシレは、哺乳動物、特にヒトに重症の胃腸疾患を引き起こすことができる病原体である。実際、C.ディフィシレは院内感染下痢の原因の第1位であり、偽膜性大腸炎の主因である。C.ディフィシレ関連疾患の症例数は毎年増加を続けている。例えば、抗生物質を服用中の患者又は化学療法を受けている患者は、特にC.ディフィシレ関連疾患に罹りやすい。疾患の頻度が増加すると、病院はC.ディフィシレの胞子でなおさらに汚染され、感染しやすい患者の感染の可能性はさらに高まる。
【0006】
[006]上記に鑑み、微生物に対して高い有効性を有し、不快臭のない過酸化水素含有抗菌組成物を求めるニーズが現在存在する。また、微生物、クロストリジウム・ディフィシレに対して有効な過酸化水素ベースの抗菌組成物を求めるニーズも存在する。
【発明の概要】
【0007】
[007]本開示は、一般的に、クロストリジウム・ディフィシレを含む広範囲の微生物に対して有効な抗菌組成物に向けられる。本発明の抗菌組成物は安全で無害であるだけでなく、当該組成物は非常に低濃度に希釈した場合でも広範囲の微生物に対して有効である。抗菌組成物は酢酸及び/又は過酢酸なしで処方できるので、該組成物の使用に伴う不快臭はない。
【0008】
[008]一般に、本開示の抗菌組成物は、過酸化水素などの過酸化物源を含有する。本開示に従って、該過酸化物源を有機スルホン酸及び過酸化物アジュバントと組み合わせる。過酸化物アジュバントは、約1より大きいpKa、例えば約2より大きい、例えば約3より大きい、そして一般的に約6未満、例えば約5未満、例えば約4未満のpKaを有する有機酸を含む。一態様において、過酸化物アジュバントは、低分子量有機酸及び/又はその塩を含む。本開示に従って、ASTM試験法ASTM E2197-11及びE2839-11に従ってクロストリジウム・ディフィシレに対して試験された場合に3分間の接触時間後、当該組成物が少なくとも3log10の減少を達成するのに十分な量で、過酸化物アジュバントは抗菌組成物中に存在する。例えば、本開示の組成物は、3分間の接触時間後、少なくとも4log10の減少、例えば少なくとも5log10の減少、例えば少なくとも6log10の減少を達成できる。
【0009】
[009]一側面において、過酸化物アジュバントは、わずか1個又は2個の炭素原子しか含有しない有機酸又はその塩である。例えば、過酸化物アジュバントは、ギ酸、ギ酸塩、又はそれらの混合物でありうる。あるいは、過酸化物アジュバントは、グリコール酸、グリコール酸の塩、又はそれらの混合物でもよい。一態様において、当該組成物は、ギ酸及び/又はギ酸の塩とグリコール酸及び/又はグリコール酸の塩の両方を含有する。
【0010】
[0010]有機スルホン酸は界面活性剤でないスルホン酸である。例えば、有機スルホン酸は、C-Cアルキルスルホン酸、スルホン化C-Cカルボン酸、置換又は非置換芳香族スルホン酸、それらの混合物及びそれらの塩でありうる。別の態様において、アルキルスルホン酸及びスルホン化カルボン酸はC-C鎖を有する。置換芳香族スルホン酸の場合、芳香環は少なくとも一つのC-Cアルキル基で置換することができる。別の言い方をすれば、芳香環が置換されている場合、アルキル基は3個以下の炭素を含有しうる。界面活性剤でない有機スルホン酸の塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩である。塩にはアンモニウム塩も含まれうる。界面活性剤でない有機スルホン酸の代表例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物である。
【0011】
[0011]使用できる有機スルホン酸の例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物などである。
【0012】
[0012]一側面において、過酸化水素と過酸化物アジュバントとの間の重量比は、約100:1~約1:2、例えば約20:1~約1:1、例えば約8:1~約2:1である。他方、過酸化水素と有機スルホン酸との間の重量比は、約100:1~約1:3、例えば約10:1~約1:1.1、例えば約3:1~約1:0.9でありうる。
【0013】
[0013]過酸化水素源(又は過酸化水素)は、一般的に、組成物中に約0.2重量%~約20重量%、例えば約1重量%~約15重量%、例えば約1重量%~約8重量%、例えば約2重量%~約6重量%の量で存在しうる。有機スルホン酸は、組成物中に一般的に約0.1重量%~8重量%、例えば約0.5重量%~約6重量%、例えば約1重量%~約5重量%の量で存在しうる。他方、過酸化物アジュバントは、一般的に、抗菌組成物中に約0.05重量%~約7重量%、例えば約0.08重量%~約5重量%、例えば約0.1重量%~約4重量%の量で存在しうる。
【0014】
[0014]抗菌組成物は、一般的に、pHが約6未満、例えば約5未満、例えば約4未満、例えば約3未満、例えば約2未満の液状媒体(liquid medium)を含む。pHは、一般的に、約0.5より大、例えば約1より大、例えば約1.25より大である。組成物は液体担体(liquid carrier)も含有しうる。液体担体は、水、アルコール、又はそれらの混合物を含みうる。
【0015】
[0015]本開示は、抗菌組成物前駆体にも向けられる。該前駆体は、後で過酸化水素源と組み合わせるように処方される。抗菌組成物前駆体は、上記のように過酸化物アジュバントと組み合わされ、一般的に約15重量%~約60重量%の量で存在する有機スルホン酸を含みうる。過酸化物アジュバントは、組成物中に約5重量%~約20重量%の量で存在しうる。組成物はさらに、水酸化ナトリウムを約3重量%~約20重量%の量、例えば約8重量%~約15重量%の量で含有しうる。組成物の残り部分は、水及びヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸でありうる。
【0016】
[0016]本開示は、硬質又は軟質表面の消毒法にも向けられる。該方法は、表面を上記抗菌組成物と接触させる工程を含む。硬質表面は、保健医療業界又は獣医業界で使用される表面でありうる。あるいは、硬質表面は、食品加工装置又は食品調理表面を含みうる。
【0017】
[0017]本開示の抗菌組成物は、様々な技術を用いて表面に適用できる。例えば、当該組成物は噴霧されても又は他の方法で表面に直接適用されてもよい。あるいは、当該抗菌組成物をワイピング製品に適用し、それを用いて組成物を表面に適用することもできる。これに関連し、本開示は、上記の抗菌組成物を含有するウエットタイプ(premoistened)のワイピング製品にも向けられる。
【0018】
[0018]本開示のその他の特徴及び側面は以下でさらに詳細に議論される。
[0019]本開示の完全かつ実施可能な開示を、添付図面への参照も含めて本明細書の残り部分に示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示に従って製造されたワイピング製品の一態様の、切り取り部分付き斜視図を示す。
図2図2は、本開示に従って製造されたワイピング製品の別の態様の斜視図を示す。
【0020】
[0020]本明細書及び図面における参照文字の反復使用は、本発明の同じ又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0021]当業者であれば、本議論は例示的態様の説明に過ぎず、本開示のより広範な側面を制限することを意図したものでないことは理解されるはずである。
[0022]一般に、本開示は、過酸化水素源を有機スルホン酸及び過酸化物アジュバントと組み合わせて含有する抗菌組成物に向けられる。過酸化物アジュバントは、有機酸及び/又はその塩、特に低分子量の有機酸及び/又はその塩である。有機スルホン酸と組み合わせた過酸化物アジュバントの存在は、特に過酸化水素だけを含有する組成物、又は過酸化水素と酢酸を含有する組成物と比較した場合、組成物の抗菌特性を劇的に改良する。過酸化水素源と有機スルホン酸及び過酸化物アジュバントとの組合せは、広範囲の微生物に対する抗菌活性を著しく増強することが見出された。さらに詳しくは、本開示の抗菌組成物は、接触時間が比較的短い場合でも、クロストリジウム・ディフィシレの破壊及び増殖阻害に特によく適していることが見出された。例えば、本開示の抗菌組成物は、ASTM試験法ASTM E2197-11及びE2839-11に従って試験された場合に3分間の接触時間後、C.ディフィシレに対して少なくとも3log10の減少を達成することができる。本開示の抗菌組成物は、3分間の接触時間後、C.ディフィシレに対して少なくとも4log10の減少、例えば少なくとも5log10の減少、例えば少なくとも6log10の減少を達成することもできる。
【0022】
[0023]知られていないことではあるが、小型の有機酸分子及び有機スルホン酸は、過酸化水素の効力を活性化する独自の組合せを創出すると考えられている。特に好都合なことに、本開示の抗菌組成物は、多くの従来製品に比べて劇的に低い臭気特性を有する。例えば、本開示の抗菌組成物は、酢酸を含まない、過酢酸を含まない、及び/又は塩素系漂白剤を含まないように処方できる。抗菌組成物中に含有される三つの主要成分は、C.ディフィシレを含む様々な微生物に対して相乗効果を示した。
【0023】
[0024]本開示の抗菌組成物は多種多様な用途に使用できる。一態様において、例えば、抗菌組成物は、硬質、非孔質表面を衛生的にする又は消毒するために使用できる。例えば、抗菌組成物は、床材、調理台、セラミック表面、金属表面、ガラス表面、石表面などを消毒又は衛生的にするのによく適している。
【0024】
[0025]抗菌組成物は軟質表面を衛生的にするのにもよく適している。軟質表面の例は、これらに限定されないが、室内装飾材料(upholstery)、織物、布張り(upholstered)カウチ、ソファ、椅子、シートクッション、布張りクッション、枕、布張り家具、織物製の窓周り装飾、カーテン、ドレープカーテン、シャワーカーテン、織物製のジム/洗濯/おむつ用バッグ、バックパック、織物製のかご(hamper)、織物製のイヌ/ペット用寝具、毛布、布張りカーシート、織物製の動物ぬいぐるみ、玩具などである。
【0025】
[0026]抗菌組成物は、表面を清浄にし、表面上の微生物を破壊及び/又は表面上の微生物の増殖を防止するために使用できる。抗菌組成物は様々な分野で使用できる。例えば、抗菌組成物は、表面の消毒及び/又は器具の消毒のために保健医療業界で使用するのによく適している。抗菌組成物は、例えば、C.ディフィシレの拡散を防止するために病院で使用できる。抗菌組成物は、食品加工装置及びその他の食品加工表面を消毒及び衛生的にするため、又は野菜などの生産物を洗浄するために外食産業で使用できる。また、抗菌組成物は、消費者の家庭用として販売することもできる。当該組成物は、用途に応じて、濃縮形又は希釈形で使用できる。
【0026】
[0027]抗菌組成物は、一般的に、有機スルホン酸及び過酸化物アジュバントと組み合わせた過酸化物源を含有する。過酸化物源は過酸化水素を含みうる。しかしながら、他の態様において、過酸化物源は、過酸化水素を生成する化合物を含むこともできる。過酸化水素源は、例えば、アルカリ金属過酸化水素、過炭酸及び過硫酸のアルカリ塩、及び有機過酸化物の溶液などでありうる。有機過酸化物は、過酸化ジクミル、ジアルキル過酸化物、過酸化尿素などを含みうる。過酸化水素自体は多数の利点及び利益を提供できる。過酸化水素は広範囲の微生物に対する活性を有するだけでなく、比較的安全に使用できる。過酸化水素は、表面を酸化及び/又は漂白できる一方で、非常に安全な副産物、すなわち酸素と水に分解する。
【0027】
[0028]組成物に含有される過酸化水素の量は、究極的な最終用途を含む多数の因子に左右されうる。過酸化水素は、一つ又は複数のペルオキシ酸を生成させるために組成物に添加できる。一般に、過酸化水素は、他の成分に関して反応平衡に達した後も組成物中に残るように過剰に添加できる。一側面において、抗菌組成物は過酸化水素源を一般的に約0.2重量%~約20重量%の量(この間のすべての0.1重量%きざみの量を含む)で含有できる。例えば、過酸化水素源は、抗菌組成物中に約0.5重量%より多い量、例えば約1重量%より多い量、例えば約1.5重量%より多い量、例えば約2重量%より多い量、例えば約2.5重量%より多い量、例えば約3重量%より多い量で存在できる。過酸化水素源は、一般的に約15重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量、例えば約8重量%未満の量、例えば約6重量%未満の量で存在できる。
【0028】
[0029]本開示によれば、抗菌組成物は有機スルホン酸も含有する。有機スルホン酸は界面活性剤でないスルホン酸でありうる。使用できるスルホン酸の例は、C-Cアルキルスルホン酸、スルホン化C-Cカルボン酸、置換又は非置換芳香族スルホン酸、それらの混合物及びそれらの塩などである。別の態様において、アルキルスルホン酸及びスルホン化カルボン酸はC-C鎖を有する。置換芳香族スルホン酸の場合、芳香環は少なくとも一つのC-Cアルキル基で置換することができる。別の言い方をすれば、芳香環が置換されている場合、アルキル基は3個以下の炭素を含有しうる。界面活性剤でない有機スルホン酸の塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩である。塩にはアンモニウム塩も含まれうる。界面活性剤でない有機スルホン酸の代表例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物である。
【0029】
[0030]有機スルホン酸は、一般的に抗菌組成物中に約0.1重量%~約10重量%の量(この間のすべての0.1重量%きざみの量を含む)で存在しうる。例えば、有機スルホン酸は、抗菌組成物中に約0.5重量%より多い量、例えば約1重量%より多い量、例えば約1.5重量%より多い量、例えば約2重量%より多い量、そして一般的に、約8重量%未満の量、例えば約6重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量で存在できる。
【0030】
[0031]本開示の抗菌組成物は、さらに過酸化物アジュバントも含有する。一側面において、過酸化物アジュバントは、pKaが約6未満、例えば約5未満、例えば約4未満、例えば約3未満、例えば約2未満の有機酸である。有機酸のpKaは一般的に約1より大きい、例えば約2より大きい、例えば約3より大きい、例えば約4より大きい。一側面において、過酸化物アジュバントは、低分子量有機酸及び/又はその塩を含む。有機酸又はその塩は、例えば、1分子あたり約10個以下の炭素原子、例えば約8個未満の炭素原子、例えば約6個未満の炭素原子、例えば約4個未満の炭素原子、例えば約3個未満の炭素原子を含有しうる。一側面において、過酸化物アジュバントは、1個の炭素原子のみを有するギ酸のようなカルボン酸及び/又は炭酸を含みうる。他の態様において、有機酸はシュウ酸などのジカルボン酸を含むこともできる。さらに別の側面において、有機酸はクエン酸などのトリカルボン酸でありうる。あるいは、過酸化物アジュバントは3個未満の炭素原子を有するアルファヒドロキシ酸を含んでいてもよく、グリコール酸又はその塩を含みうる。過酸化物アジュバントは、上記有機酸のいずれかの混合物を含むこともできる。
【0031】
[0032]相乗的結果を生じさせるためには、ごくわずかな量の過酸化物アジュバントが抗菌組成物中に存在するだけでよい。例えば、過酸化物アジュバントは、抗菌組成物中に一般的に約0.05重量%~約10重量%の量(この間のすべての0.1重量%きざみの量を含む)で存在できる。一側面において、過酸化物アジュバントは、抗菌組成物中に約0.08重量%より多い量、例えば約0.1重量%より多い量、例えば0.2重量%より多い量、例えば0.5重量%より多い量、例えば0.8重量%より多い量、例えば1重量%より多い量で存在する。過酸化物アジュバントは、一般的に約7重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量で存在する。
【0032】
[0033]過酸化水素源と有機スルホン酸との間の重量比、及び過酸化水素源と過酸化物アジュバントとの間の重量比は、特定の用途及び所望の結果に応じて変動しうる。一側面において、過酸化水素源と有機スルホン酸との間の重量比は、約100:1~約1:3、例えば約10:1~約1:1.1、例えば約3:1~約1:0.9でありうる。他方、過酸化水素源と過酸化物アジュバントとの間の重量比は、一般的に約100:1~約1:2、例えば約20:1~約1:1、例えば約8:1~約2:1である。本明細書中で使用されている重量比及び重量パーセンテージは、存在する有機スルホン酸の全量及び存在する過酸化物アジュバントの全量を指す。
【0033】
[0034]抗菌組成物は液体担体も含有しうる。液体担体は、組成物中の成分の一つの可溶化剤でありうる。液体担体は、水、アルコール、又はそれらの混合物を含みうる。使用できるアルコール溶媒は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、又はそれらの混合物などである。組成物中に存在する液体担体の量は、組成物中の過酸化水素レベルを調整するために調整できる。液体担体は、約20重量%~約95重量%、例えば約50重量%~約92重量%の量で存在しうる。例えば、一つ又は複数の液体担体は、抗菌組成物中に約60重量%より多い量、例えば約70重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約85重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量、そして一般的に、約95重量%未満の量で存在できる。
【0034】
[0035]液体抗菌組成物の溶解性及び適合性(相溶性)は、適切な量の他の可溶化剤、例えばヒドロトロープ(hydrotrope)、界面活性剤、又はそれらの混合物を添加することによってさらに改良され、溶液の溶解性及び物理的特性を改善できる。
【0035】
[0036]ヒドロトロープ剤の例は、n-オクタンスルホネート、キシレンスルホネート、ナフタレンスルホネート、又はそれらの混合物などである。適切な界面活性剤は、イオン性、非イオン性及び両性界面活性剤の群、好ましくは、非イオン性及び/又はイオン性界面活性剤又はそれらの混合物から選ぶことができる。適合性のある非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化アルコール、例えばエトキシ化アルコール、アルコキシル化グリコール、例えば、C-C18アルキル基を有するアルコキシル化エチレングリコール又はプロピレングリコール、アルキル化グリコール、又はそれらの混合物などである。使用できるイオン性界面活性剤は、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、及びそれらのアルキルスルホン酸、アルキルエーテルスルホン酸、アルキルベンゼンスルフェート、及びそれらの対応スルホン酸などである。使用できる他の界面活性剤は、第四級アンモニウム塩、又は第三級アミンN-オキシドなどである。上記界面活性剤のそれぞれは単独で使用することも又は他の界面活性剤と組み合わせて使用することもできる。
【0036】
[0037]存在する場合、一つ又は複数のヒドロトロープは、抗菌組成物中に約0.1重量%~約10重量%、例えば約0.2重量%~約2重量%の量で含めることができる。一つ又は複数の界面活性剤は、組成物中に約0.005重量%~約12重量%、例えば約0.2重量%~約7重量%の量で存在しうる。
【0037】
[0038]一態様において、本開示の抗菌組成物はさらに安定剤も含みうる。安定剤は、濃縮物の保管中及び/又は表面もしくは微生物との接触前に成分が早期分解するのを防止するために添加できる。安定剤は過酸化水素を安定化させるためのものでありうる。適切な安定剤の例は、リン含有酸、ポリカルボン酸、及びホスフェートなどである。一態様において、安定剤はリン酸、又はリン酸の誘導体を含みうる。安定剤は金属キレート化剤も含みうる。安定剤の例は、リン酸、1-ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、フィチン酸、アミノホスフェート、ホスホネート及びグルタミン酸ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、NaHPO、トリポリリン酸Na、有機ホスホン酸、アミノ-ホスホネート、クエン酸二水素銀、ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリ(メチレンリン酸)、ジエチレントリアミン-ペンタ(メチレンリン酸)、2-ヒドロキシエチルイミノビス(エチレンリン酸)、クエン酸、ニトロ三酢酸(NTA)、2-ヒドロキシエチルイミノ-二酢酸(HEIDA)、及びその塩、シクロヘキサン-1,2-ジアミノテトラキスメチレンホスホン酸又はウォーターゾル、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、コロイド状スタネート(stannate)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シトレート(citrate)、ガレート(gallate)、マレート(malate)、マロネート(malonate)、オキサロアセテート(oxaloacetate)、オキサレート(oxalate)、ピルベート(pyruvate)、及びスクシネート(succinate)、又はそれらの混合物を含みうる。
【0038】
[0039]安定剤は、上記のリン酸の誘導体及びキレート化剤の単一成分でも又は混合物でもよい。安定剤の量は、約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~約1.0重量%でありうる。
【0039】
[0040]本開示の抗菌組成物には他の添加剤を添加して、最終用途に適切な特性を該組成物に提供することもできる。典型的な例は、腐食防止剤、乳化剤、香料、色素、保存剤、消泡剤及びそれらの混合物などである。
【0040】
[0041]一態様において、例えば、抗菌組成物は腐食防止剤を含有しうる。使用できる腐食防止剤は、ボレート(borate)、ホスフェート、ポリホスフェート、安息香酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ベンゾトリアゾール又はそれらの混合物などである。存在する場合、腐食防止剤は組成物中に、約0.001重量%~約10重量%、例えば約0.01重量%~約1重量%の量で含有されうる。
【0041】
[0042]本開示による抗菌組成物を製造するために、様々な成分は一緒に添加されて液状媒体を形成できる。一般に、抗菌組成物の製造に使用される成分及び構成要素は任意の適切な順序で混合できる。しかしながら、一側面において、過酸化水素源は最後に成分の残り部分に添加されうる。
【0042】
[0043]一側面において、過酸化物アジュバントは最初に水と混合できる。次に有機スルホン酸を添加し、その後過酸化水素を添加できる。所望であれば、次に安定剤を添加し、その後所望のpHレベルにするための量の水酸化ナトリウムを添加できる。
【0043】
[0044]一態様において、比較的濃縮された抗菌組成物が製造及び販売又は他の方法で最終使用者に分配される。最終使用者はその後、使用中又は使用前に濃縮溶液を希釈できる。特に好都合なことに、該抗菌組成物は水道水などの水で希釈できる。
【0044】
[0045]一態様において、約15重量%~約60重量%、例えば約30重量%~約55重量%の量の過酸化水素、約5重量%~約35重量%、例えば約15重量%~約30重量%の量の一つ又は複数の有機スルホン酸、そして約2重量%~約12重量%、例えば約4重量%~約10重量%の量の一つ又は複数の過酸化物アジュバントを含有する比較的濃縮された抗菌組成物を製造する。一側面において、濃縮抗菌組成物は、約35重量%~約50重量%の量の過酸化水素、約22重量%~約27重量%の量の有機スルホン酸、約4重量%~約8重量%の量の過酸化物アジュバント、そして約15重量%~約22重量%の量の水を含有しうる。他の成分が存在する場合は、その分、水の含量が削減されうる。
【0045】
[0046]さらに別の側面において、後で過酸化物源と組み合わせることができる抗菌組成物前駆体を処方することもできる。過酸化物源は、例えば、適用の時点で組成物に添加できる。この方法では過酸化物源は完全に活性化された状態を保持している。例えば、抗菌組成物前駆体は、有機スルホン酸を過酸化物アジュバント及び金属水酸化物などの塩基と組み合わせて含有できる。塩基は例えば水酸化ナトリウムでありうる。一側面において、抗菌組成物前駆体は、有機スルホン酸を、約15重量%より多い量、例えば約25重量%より多い量、例えば約35重量%より多い量、そして一般的に約60重量%未満の量、例えば約50重量%未満の量、例えば約45重量%未満の量で含有できる。過酸化物アジュバントは、組成物中に、約5重量%より多い量、例えば約8重量%より多い量、そして一般的に約20重量%未満の量、例えば約15重量%未満の量、例えば約12重量%未満の量で存在しうる。組成物は水酸化ナトリウムのような塩基を、約3重量%より多い量、例えば約7重量%より多い量、例えば約9重量%より多い量、そして一般的に約20重量%未満の量、例えば約15重量%未満の量、例えば約12重量%未満の量で含有しうる。抗菌組成物前駆体は、さらに水及びその他の添加剤も含有しうる。使用の準備が整ったら、抗菌組成物前駆体は、上記抗菌処方の範囲内になるように過酸化水素源及び更なる量の水と組み合わせることができる。
【0046】
[0047]一般に、抗菌組成物は中性から酸性のpHを有する。組成物のpHは、例えば、約2~約6、例えば約1~約4、例えば約1.25~約3でありうる。
[0048]抗菌組成物は、消毒、衛生化、清浄化及び/又は漂白が所望される任意の適切な用途に使用できる。抗菌組成物は、消費者の家庭での用途、保健医療分野での用途、食品加工分野又は食品サービス分野での用途、酪農場及び醸造所における表面滅菌用途、獣医分野での用途、及び/又はクリーンルームでの用途のために使用できる。
【0047】
[0049]抗菌組成物は、様々な方法及び技術を用いて対向表面に適用することもできる。例えば、抗菌組成物を対向表面に噴霧するか又は目的物を組成物中に浸漬することができる。
【0048】
[0050]一つの特に有用な適用法は、抗菌組成物をワイプ基材に含浸させることである。ワイプは、抗菌組成物が含浸され、ワイプを使用者に分配するための容器中に収納されている1回用(使い捨て)のワイプでありうる。ワイプ入り容器は1枚のワイプ又は数枚のワイプを含有しうる。適切な容器は、使用者が引き裂いて開封するウェットティッシュのような1枚のワイプを含有するパウチなどであるか、又は積み重ね方式、ロール方式もしくは一時に1枚のワイプを開口部から取り出すことが可能なその他の適切な形式で数枚のワイプを含有する再封可能開口部を有するパウチ又はその他の容器でありうる。パウチは一般的に流体不透性材料、例えば、フィルム、コート紙又はホイル、又はその他の類似の流体不透性材料から製造される。本開示のワイプを分配するための別の方法では、容器内のワイプを取り出すための開口部を有する流体不透性容器にワイプを収納する。容器は流体不透性の蓋付き成形プラスチック容器でありうる。一般的に、蓋は容器内のワイプを取り出すための開口部を有する。容器内のワイプは、1枚のワイプが容器から取り出されたら次のワイプが容器の開口部に配置されて使用者が次のワイプを取り出す準備が整うように交互的に積み重ねられた形式でありうる。あるいは、ワイプは連続材料で、連続材料の個別ワイプ間にミシン目が入ったものでもよい。ミシン目入りの連続ワイプ材料は、折り畳み形でも又はロール形でもよい。通常、ロール形では、ワイプ材料はロールされた材料の中心部から供給される。交互に積み重ねられた形式と同様、ワイプが容器から取り出されると、次のワイプが開口部に配置されて、必要な場合に次のワイプの取り出しを容易にする。
【0049】
[0051]抗菌組成物をワイプに含浸させてワイプをウエットタイプにし、処理される表面をワイプで拭うと抗菌組成物が表面に送られる又は放出されるようにすることができる。一般的に、抗菌組成物は、拭き取り動作を通じてワイプが抗菌組成物を表面に放出するようにワイプ内に飽和されている。一般的に、抗菌組成物は、ワイパー基材1重量部あたり約2重量部~6重量部、さらに好ましくはワイパー基材1重量部あたり約3重量部~約5重量部の量で存在する。これらの範囲で基材の完全飽和が達成できる。抗菌組成物の量は、特定のワイプ基材に応じて、ワイプ基材の完全飽和を達成するために上下しうることに注意する。
【0050】
[0052]適切なワイプ基材は、織布及び不織布などである。本質的に任意の不織布が使用できる。例示的な不織布は、これらに限定されないが、メルトブローン(meltblown)、コフォーム(coform)、スパンボンド(spunbond)、エアレイド(airlaid)、水流交絡不織布(hydroentangled nonwovens)、スパンレース(spunlace)、ボンドカードウェブ(bonded carded webs)、及びそれらのラミネートなどでありうる。任意に、不織布はフィルム材料とラミネートすることもできる。ワイプ基材の製造に使用される繊維は、セルロース系繊維、熱可塑性繊維及びそれらの混合物でありうる。繊維は、連続繊維、不連続繊維、ステープル繊維及びそれらの混合物でもよい。不織布の坪量は、1平方メートルあたり約12グラム~1平方メートルあたり200グラム以上の範囲で変動しうる。
【0051】
[0053]表面に適用されると、抗菌組成物は一定時間表面に留まることができる。前述の通り、記載の抗菌組成物は、標的微生物の殺滅に必要な接触時間を劇的に減少させることが思いがけず見出された。
【0052】
[0054]図1及び2を参照すると、本開示に従って製造されたワイピング製品の例示的態様が示されている。図1を参照すると、例えば、ワイピング製品10が示されている。ワイピング製品10はディスペンサー12を含む。ディスペンサー12は、底部14と頂部16を含む。頂部16は、開口部又はスロット18を規定し、そこからウェットタイプのワイプが分配される。ウェットタイプのワイプは、ディスペンサー12に単一ロール材料として収納されていても又は個別ワイプとして積み重ねられていてもよい。ワイプ20は、任意の適切な硬質表面を消毒するためのものであり、上記のような本開示の抗菌組成物で予め飽和又は予め湿らせておくことができる。
【0053】
[0055]図2を参照すると、ワイピング製品22の代替の態様が示されている。図2に示されているように、ワイピング製品22は床のクリーニングに特によく適している。上記のように、例えば、本開示の抗菌組成物は、床のコーティング又は床の仕上げ剤を害したり又は悪影響を及ぼすことなく、床用に処方できる。
【0054】
[0056]図2に示されているように、ワイピング製品22は基材ホルダー26に取り付けられたハンドル24を含む。基材ホルダー26は、ウェットタイプのワイプ30に噛み合って取り付けられるように設計された複数の取付装置28を含む。ウェットタイプのワイプ30は、本開示の抗菌組成物で飽和又は湿らせた液体吸収基材を含む。
【0055】
[0057]本開示は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【実施例
【0056】
[0058]以下の実施例で本開示の利点及び利益のいくつかを示す。
[0059]様々な抗菌製剤を製造し、クロストリジウム・ディフィシレに対して試験した。下記の試験手順を使用した。
【0057】
[0060]ASTM標準E2197-11。化学物質の殺菌、殺ウイルス、殺真菌、殺マイコバクテリア及び殺胞子活性を決定するための標準定量ディスクキャリア試験法(QCT-2)(Standard Quantitative Disk Carrier Test Method (QCT-2) for Determining Bactericidal, Virucidal, Fungicidal, Mycobactericidal and Sporicidal Activities of Chemicals)。
【0058】
[0061]ASTM E2839-11。抗菌剤の有効性評価に使用するためのクロストリジウム・ディフィシレ胞子生成のための標準試験法(Standard Test Method for Production of Clostridium difficile Spores for Use in Efficacy Evaluation of Antimicrobial Agents)。
【0059】
[0062]農薬プログラム局微生物学研究所環境科学センター(Office of Pesticides Programs Microbiology Laboratory Environmental Science Center)、メリーランド州フォート・ミード SOP番号:MB-31.01 改訂日:02-05-2014。
【0060】
[0063]第一セットの実験で、2種類の異なる抗菌組成物を処方及び試験した。サンプル番号1は本開示に従って製造され、有機スルホン酸と過酸化物アジュバントの両方を含有していた。以下の結果が得られた。
【0061】
[0064]表1
【0062】
【表1】
【0063】
[0065]上記液体製剤を、ASTM定量キャリア試験法(ASTM Quantitative Carrier test Method)(ASTM E2197-11及びASTM E2839-11)を用い、3分間の接触時間でクロストリジウム・ディフィシレ(C.ディフィシレ)胞子に対する有効性について評価した。
【0064】
[0066]上に示されているように、本開示に従って製造されたサンプル番号1は、C.ディフィシレに対して試験された場合、サンプル番号2より劇的かつ予想外に良好な性能を示した。
【0065】
[0067]次に、以下の表に示されているように、さらに4種類の抗菌組成物を処方及び試験した。
[0068]表2
【0066】
【表2】
【0067】
[0069]上に示されているように、有機スルホン酸とギ酸の両方を含有するサンプル番号5と6は、C.ディフィシレに対して有効であった。サンプル番号6にはグリコール酸も存在し、組成物の効力を増強していた。
【0068】
[0070]本開示に従ってさらに4種類の抗菌製剤を処方した。ギ酸ナトリウム及びギ酸の量は各サンプルで様々であった。以下の結果が得られた。
[0071]表3
【0069】
【表3】
【0070】
[0072]本開示に従ってさらに3種類の抗菌製剤を処方した。製剤中の全遊離ギ酸の量は様々であった。
[0073]表4
【0071】
【表4】
【0072】
[0074]上に示されているように、全製剤とも(全ギ酸0.9%以上含有)、C.ディフィシレに対する過酸化水素の効力を増強するのに十分であった。
[0075]さらに3種類の抗菌製剤を処方した。製剤のpHを調整して、その効果を判定した。
【0073】
[0076]表6
【0074】
【表5】
【0075】
[0077]水酸化ナトリウムを用いて上記製剤のpHを調整した。上に示されているように、約1~約3のpH範囲はC.ディフィシレに対して高い効力を示す。
[0078]以下は、後から水で希釈して抗菌組成物として使用できる濃縮製剤の例である。
【0076】
[0079]表7.濃縮製剤の例
【0077】
【表6】
【0078】
[0080]一側面において、後で過酸化水素源と組み合わせられる抗菌組成物前駆体が処方できる。以下は抗菌組成物前駆体の例である。
[0081]表8
【0079】
【表7】
【0080】
[0082]上記抗菌組成物前駆体は、例えば下記処方を用いて抗菌組成物に製剤化できる。
[0083]表9
【0081】
【表8】
【0082】
[0084]本発明に対するこれら及びその他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲にさらに詳しく示されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。さらに、様々な態様の側面は、全体的にも又は部分的にも交換されうることも理解されるはずである。さらに、当業者であれば、前述の説明は単なる例に過ぎず、添付の特許請求の範囲においてさらに記載されている本発明を制限する意図はないことも分かるであろう。
【符号の説明】
【0083】
10 ワイピング製品
12 ディスペンサー
14 底部
16 頂部
18 スロット
20 ワイプ
22 ワイピング製品
24 ハンドル
26 基材ホルダー
28 取付装置
30 ワイプ
図1
図2
【国際調査報告】