(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】動脈穿刺支援のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61M5/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502436
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2020042181
(87)【国際公開番号】W WO2021011687
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514198183
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マイアミ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デックラー、エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】パラシオス、リカルド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL30
(57)【要約】
動脈穿刺支援のためのデバイスである。ある実施形態において、デバイスは、上側コンポーネントと、下側コンポーネントと、下側コンポーネントを上側コンポーネントに連結するカップリングメカニズムとを含む。上側コンポーネントは、シリンジを支持するように構成されているプラットフォームを含むことが可能である。下側コンポーネントは、1つまたは複数のフィンガーホールを含むことが可能であり、1つまたは複数のフィンガーホールのそれぞれは、それを通して人間の指を受け入れるように構成されており、人間の指の上での下側コンポーネントの安定化および動脈穿刺の間の人間の指による動脈拍動の触診を同時に可能にするようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈穿刺を支援するためのデバイスであって、前記デバイスは、
シリンジを支持するように構成されているプラットフォームを含む上側コンポーネントと;
1つまたは複数のフィンガーホールを含む下側コンポーネントであって、前記1つまたは複数のフィンガーホールのそれぞれは、前記1つまたは複数のフィンガーホールを通して人間の指を受け入れるように構成されており、前記人間の指の上での前記下側コンポーネントの安定化および動脈穿刺の間の前記人間の指による動脈拍動の触診を同時に可能にするようになっている、下側コンポーネントと;
前記下側コンポーネントを前記上側コンポーネントに連結するカップリングコンポーネントと
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記プラットフォームは、長手方向軸線を画定する近位端部および遠位端部を有しており、前記遠位端部は、前記シリンジが前記プラットフォームによって支持されているときに、前記シリンジの針のより近くにある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記上側コンポーネントは、フィンガーガードをさらに含み、前記フィンガーガードは、前記プラットフォームの前記遠位端部から延在している、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フィンガーガードは、前記プラットフォームに対して平行に延在している、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フィンガーガードは、前記プラットフォームの前記遠位端部に可動に取り付けられており、前記フィンガーガードが、前記プラットフォームに対して所定の角度の範囲の間で枢動することができるようになっている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記角度の範囲は、0度の角度および90度の角度を含み、前記0度の角度では、前記フィンガーガードは、前記プラットフォームに対して平行になっており、前記90度の角度では、前記フィンガーガードは、前記プラットフォームに対して垂直になっている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記プラットフォームは、取り付けコンポーネントを含み、前記取り付けコンポーネントは、前記シリンジの上の対応する取り付けコンポーネントに解放可能に取り付けるように構成されており、前記シリンジの上の前記対応する取り付けコンポーネントに取り付けられているときには、前記長手方向軸線に対して平行の線形の軸線に前記シリンジの移動を制限するように構成されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記取り付けコンポーネントは、前記プラットフォームの前記近位端部から前記遠位端部へ延在するT字形状のトラックを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記長手方向軸線に対して垂直の平面において、前記プラットフォームの断面は、半円形になっている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記プラットフォームは、テーパー状になっており、前記長手方向軸線に対して垂直の平面における前記プラットフォームの断面が、前記遠位端部よりも前記近位端部において、円形のより小さい部分から構成されるようになっている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項11】
前記長手方向軸線に対して垂直の平面における前記プラットフォームの断面は、前記近位端部から前記遠位端部へ円形になっており、前記近位端部における前記断面の直径は、前記遠位端部における前記断面の直径と等しくない、請求項2に記載のデバイス。
【請求項12】
前記下側コンポーネントは、少なくとも2つのフィンガーホールを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記下側コンポーネントは、2つのフィンガーホールから構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも2つのフィンガーホールのうちの第1のフィンガーホールは、前記少なくとも2つのフィンガーホールのうちの第2のフィンガーホールとは異なる内径を有している、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のフィンガーホールは、人間の中指を受け入れるように構成されており、前記第2のフィンガーホールは、人間の人差し指を受け入れるように構成されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、人間の指の基節骨のみを取り囲むように構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、近位端部および遠位端部を有しており、前記遠位端部は、前記シリンジが前記プラットフォームによって支持されているときに、前記シリンジの針のより近くにあり、前記少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれの前記遠位端部は、テーパー状になっている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれの前記遠位端部は、テーパー状になっており、それぞれのフィンガーホールの長さが、前記フィンガーホールの上部から底部へ減少するようになっている、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、前記フィンガーホールの中に環状のグリップを含み、それぞれの環状のグリップは、圧縮可能な材料のチューブを含み、前記チューブは、前記チューブを通して人間の指を受け入れるように構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項20】
前記カップリングコンポーネントは、手動の力が印加されるときに、前記下側コンポーネントに対する前記上側コンポーネントの移動を可能にするように構成されており、前記上側コンポーネントが、前記下側コンポーネントに対して、所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっており、前記カップリングコンポーネントは、手動の力が印加されていないときに、前記下側コンポーネントに対する前記上側コンポーネントの移動を防止するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記カップリングコンポーネントは、ボールおよびソケットを含み、前記上側コンポーネントが、前記下側コンポーネントに対して、3次元で所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記下側コンポーネントは、単一のフィンガーホールから構成されており、前記単一のフィンガーホールは、前記単一のフィンガーホールを通して人間の指を受け入れるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
動脈穿刺を支援するためのデバイスであって、前記デバイスは、
シリンジを支持するように構成されているプラットフォームを含む上側コンポーネントであって、前記プラットフォームは、長手方向軸線を画定する近位端部および遠位端部を有しており、前記遠位端部は、前記シリンジが前記プラットフォームによって支持されているときに、前記シリンジの針のより近くにあり、前記上側コンポーネントは、フィンガーガードをさらに含み、前記フィンガーガードは、前記プラットフォームの前記遠位端部から延在している、上側コンポーネントと;
1つまたは複数のフィンガーホールを含む下側コンポーネントであって、前記1つまたは複数のフィンガーホールのそれぞれは、前記1つまたは複数のフィンガーホールを通して人間の指を受け入れるように構成されており、前記人間の指の上での前記下側コンポーネントの安定化および動脈穿刺の間の前記人間の指による動脈拍動の触診を同時に可能にするようになっている、下側コンポーネントと;
前記下側コンポーネントを前記上側コンポーネントに連結するカップリングコンポーネントであって、前記カップリングコンポーネントは、ボールおよびソケットを含み、前記上側コンポーネントが、前記下側コンポーネントに対して、3次元で所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっている、カップリングコンポーネントと
を含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年7月16日に出願された米国仮特許出願第62/874,825号、および、2019年11月12日に出願された米国仮特許出願第62/934,248号の優先権を主張し、それらの文献は、両方とも、それらが完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本明細書で説明されている実施形態は、概して、動脈穿刺に関し、より具体的には、動脈の中へのシリンジの挿入を補助するデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(たとえば、動脈血液サンプリングのために)シリンジ針によって動脈を穿刺するための現在の方法は、エラーを発生しやすい可能性がある。施術者の技能レベルに応じて、これらの方法は、望まれるよりも多くの時間および針挿入を必要とする可能性がある。
【0004】
たとえば、動脈血液サンプリングの現在の方法は、施術者が一方の手によって橈骨動脈拍動を触診すると同時に、他方の手によって、触診の部位の遠位にある橈骨動脈の中へ45度の角度で針を挿入することを必要とする。これは、1回(ましてや、複数回)実現するには困難な操縦である可能性がある。針が所望の動脈を穿刺すると、施術者は、次いで、必要な体積の動脈血液が抽出されるまで、針を固定された位置に保持しなければならない。
【0005】
加えて、現在の方法は、同時の脈拍の近位触診の部位の遠位に施術者が針を挿入することを必要とする可能性がある。しかし、これは、施術者の指への針刺し損傷のリスクを増加させる。その理由は、針が、挿入されるときに施術者の触診している指を横切るからである。
【0006】
とりわけ、緊急事態は、施術者が動脈穿刺を正確におよび効率的に実行する際に困難をもたらす可能性がある。たとえば、緊迫した緊急事態による複雑さは、外科手術の前に動脈血液をサンプリングするためにまたは連続的な動脈血液ガス(ABG)モニターを設置するために必要とされる時間の量を長引かせる可能性がある。したがって、動脈血液サンプルの収集、ABGモニターの設置、または、動脈への任意の他の必要なアクセスは、緊急手術または他の緊急処置の開始を大幅に遅らせる可能性がある。
【0007】
したがって、必要とされているものは、動脈穿刺のための改善された方法である。とりわけ、選ばれたまたは最適な角度で針の安定性を維持しながら、選ばれたまたは最適な角度で橈骨動脈を一貫して穿刺することを支援することができ、3次元空間における針の移動を可能にすることができ、および/または、針が患者の皮膚の中へ挿入されている間に、橈骨動脈を探す際に施術者を補助することができるデバイスによって、上記の問題のうちの1つまたは複数が軽減され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、動脈穿刺を支援するためのデバイスが開示されている。ある実施形態において、デバイスは、シリンジを支持するように構成されているプラットフォームを含む上側コンポーネントと;1つまたは複数のフィンガーホールを含む下側コンポーネントであって、1つまたは複数のフィンガーホールのそれぞれは、1つまたは複数のフィンガーホールを通して人間の指を受け入れるように構成されており、人間の指の上での下側コンポーネントの安定化および動脈穿刺の間の人間の指による動脈拍動の触診を同時に可能にするようになっている、下側コンポーネントと;下側コンポーネントを上側コンポーネントに連結するカップリングコンポーネントとを含む。プラットフォームは、長手方向軸線を画定する近位端部および遠位端部を有しており、遠位端部は、シリンジがプラットフォームによって支持されているときに、シリンジの針のより近くにある。
【0009】
上側コンポーネントは、フィンガーガードをさらに含むことが可能であり、フィンガーガードは、プラットフォームの遠位端部から延在している。フィンガーガードは、プラットフォームに対して平行に延在することが可能である。フィンガーガードは、プラットフォームの遠位端部に可動に取り付けられ得り、フィンガーガードが、プラットフォームに対して所定の角度の範囲の間で枢動することができるようになっている。角度の範囲は、0度の角度および90度の角度を含むことが可能であり、0度の角度では、フィンガーガードは、プラットフォームに対して平行になっており、90度の角度では、フィンガーガードは、プラットフォームに対して垂直になっている。
【0010】
プラットフォームは、取り付けコンポーネントを含むことが可能であり、取り付けコンポーネントは、シリンジの上の対応する取り付けコンポーネントに解放可能に取り付けるように構成されており、シリンジの上の対応する取り付けコンポーネントに取り付けられているときには、長手方向軸線に対して平行の線形の軸線にシリンジの移動を制限するように構成されている。取り付けコンポーネントは、プラットフォームの近位端部から遠位端部へ延在するT字形状のトラックを含むことが可能である。
【0011】
長手方向軸線に対して垂直の平面において、プラットフォームの断面は、半円形になっていることが可能である。プラットフォームは、テーパー状になっていることが可能であり、長手方向軸線に対して垂直の平面におけるプラットフォームの断面が、遠位端部よりも近位端部において、円形のより小さい部分から構成されるようになっている。長手方向軸線に対して垂直の平面におけるプラットフォームの断面は、近位端部から遠位端部へ円形になっていることが可能であり、近位端部における断面の直径は、遠位端部における断面の直径と等しくない。
【0012】
下側コンポーネントは、少なくとも2つのフィンガーホールを含むことが可能である。下側コンポーネントは、2つのフィンガーホールから構成され得る。少なくとも2つのフィンガーホールのうちの第1のフィンガーホールは、少なくとも2つのフィンガーホールのうちの第2のフィンガーホールとは異なる内径を有することが可能である。第1のフィンガーホールは、人間の中指を受け入れるように構成され得り、第2のフィンガーホールは、人間の人差し指を受け入れるように構成され得る。少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、人間の指の基節骨のみを取り囲むように構成され得る。少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、近位端部および遠位端部を有することが可能であり、遠位端部は、シリンジがプラットフォームによって支持されているときに、シリンジの針のより近くにあり、少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれの遠位端部は、テーパー状になっている。少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれの遠位端部は、テーパー状になっていることが可能であり、それぞれのフィンガーホールの長さが、フィンガーホールの上部から底部へ減少するようになっている。少なくとも2つのフィンガーホールのそれぞれは、フィンガーホールの中に環状のグリップを含むことが可能であり、それぞれの環状のグリップは、圧縮可能な材料のチューブを含み、チューブは、それを通して人間の指を受け入れるように構成されている。代替的に、下側コンポーネントは、単一のフィンガーホールから構成され得り、単一のフィンガーホールは、それを通して人間の指を受け入れるように構成されている。
【0013】
カップリングコンポーネントは、手動の力が印加されるときに、下側コンポーネントに対する上側コンポーネントの移動を可能にするように構成され得り、上側コンポーネントが、下側コンポーネントに対して、所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっており、カップリングコンポーネントは、手動の力が印加されていないときに、下側コンポーネントに対する上側コンポーネントの移動を防止するように構成されている。カップリングコンポーネントは、ボールおよびソケットを含むことが可能であり、上側コンポーネントが、下側コンポーネントに対して、3次元で所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっている。
【0014】
ある実施形態において、デバイスは、シリンジを支持するように構成されているプラットフォームを含む上側コンポーネントであって、プラットフォームは、長手方向軸線を画定する近位端部および遠位端部を有しており、遠位端部は、シリンジがプラットフォームによって支持されているときに、シリンジの針のより近くにあり、上側コンポーネントは、フィンガーガードをさらに含み、フィンガーガードは、プラットフォームの遠位端部から延在している、上側コンポーネントと;1つまたは複数のフィンガーホールを含む下側コンポーネントであって、1つまたは複数のフィンガーホールのそれぞれは、1つまたは複数のフィンガーホールを通して人間の指を受け入れるように構成されており、人間の指の上での下側コンポーネントの安定化および動脈穿刺の間の人間の指による動脈拍動の触診を同時に可能にするようになっている、下側コンポーネントと;下側コンポーネントを上側コンポーネントに連結するカップリングコンポーネントであって、カップリングコンポーネントは、ボールおよびソケットを含み、上側コンポーネントが、下側コンポーネントに対して、3次元で所定の角度の範囲にわたって可動であるようになっている、カップリングコンポーネントとを含む。
【0015】
本発明の詳細は、その構造および動作の両方に関して、添付の図面の検討によって部分的に収集され得り、図面において、同様の参照番号は、同様のパーツを指している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態による、動脈穿刺を支援するために使用されているデバイスの斜視図である。
【
図2A】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図2B】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図2C】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図2D】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図2E】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図2F】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな図である。
【
図3】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな特徴を図示する図である。
【
図4】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな特徴を図示する図である。
【
図5】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな特徴を図示する図である。
【
図6】実施形態による、動脈穿刺を支援するためのデバイスのさまざまな特徴を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある実施形態において、(たとえば、動脈血液サンプリングのための)動脈穿刺を改善するためのデバイスが開示されている。この説明を読んだ後に、さまざまな代替的な実施形態および代替的な用途においてどのように本発明を実装するかということが、当業者に明らかになることとなる。しかし、本発明のさまざまな実施形態が本明細書で説明されることとなるが、これらの実施形態は、単なる例および図示として提示されているに過ぎず、限定として提示されているのではないということが理解される。そうであるので、さまざまな実施形態のこの詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に記載されているような本発明の範囲または幅を限定するように解釈されるべきではない。
【0018】
開示されているデバイスは、医学的施術者または他のユーザー(集合的に、本明細書で「施術者」と称される)が、針の挿入部位の遠位にある位置(たとえば、挿入部位の前の位置)において自分の指によって橈骨動脈の脈動を同時に触診しながら、シリンジまたは他の医療器具の針によって橈骨動脈を正確におよび効率的に穿刺することを支援することが可能である。ある実施形態において、デバイスは、下側コンポーネントを有しており、下側コンポーネントは、フィンガーホルダーを含み、フィンガーホルダーは、デバイスの使用の間に安定性および安全を施術者に提供する。フィンガーホルダーは、施術者の指のうちの2本以上を受け入れるように構成されている少なくとも2つのフィンガーホールを有することが可能である。たとえば、フィンガーホルダーは、2つのフィンガーホールを含むかまたはそれから構成され得り、それは、1対の隣接する指(たとえば、施術者の中指および人差し指など)を受け入れるように構成されている。それぞれのフィンガーホールは、それぞれの指(その指のために、それは設計されている)の平均直径に基づくサイズまたは直径を有することが可能である。ある実施形態において、それぞれのフィンガーホールは、フィンガーホールの中にスポンジまたはスポンジのような材料を含み、施術者の指の周りでのフィンガーホールのフィットを強化することが可能である。施術者は、下側コンポーネントのフィンガーホルダーの中へ自分の指を挿入し、患者の手首に対してフィンガーホルダーをしっかりと保持することが可能である。
【0019】
また、デバイスは、上側コンポーネントを有することが可能であり、上側コンポーネントは、プラットフォームを備えており、プラットフォームは、動脈に向けて針とともにシリンジをガイドするように使用される。シリンジプラットフォームは、半円形または円形の断面を有することが可能であり、近位端部から遠位端部へ延在しており、それは、シリンジを受け入れて支持するようにサイズ決めされているかまたはその他の方法で構成されている。また、シリンジプラットフォームは、一方の端部に固着されたフィンガーガードを有することが可能である。フィンガーガードは、調節可能であり得る。ある実施形態において、プラットフォームは、取り付けメカニズム(たとえば、オス型の/メス型のT字形トラック構造体)を含むことが可能であり、取り付けメカニズムは、プラットフォームへのシリンジの接合を可能にし、プラットフォームの長手方向軸線に対して平行な線形の軸線にシリンジの移動を限定するようになっている。
【0020】
下側コンポーネントおよび上側コンポーネントは、ジョイント(たとえば、ボール-アンド-ソケットメカニズム)および/または磁力などのようなカップリングメカニズムによって、インターフェースにおいて連結または接合され得る。インターフェースにおける摩擦は、それが下側コンポーネントと上側コンポーネントとの間に(たとえば、フィンガーホールとシリンジプラットフォームとの間に)所望の角度を維持するのに十分に高くなっているが、施術者によって印加される最小の手動の力に応答して、上側コンポーネントが下側コンポーネントに対して移動させられ得るのに十分に低くなるように設定され得る。カップリングメカニズムは、好ましくは、上側コンポーネントと下側コンポーネントとの間の相対的な移動を可能にするが、代替的な実施形態において、カップリングメカニズムは、上側コンポーネントと下側コンポーネントとの間の相対的な移動を可能にしない固定された構造体を含むことが可能である。任意のケースにおいて、上側コンポーネントは、施術者にプラットフォームを提供し、シリンジは、患者の動脈に対して所望の角度で、プラットフォームの上に着座および安定化させられ得り、それによって、シリンジの望ましくない移動を低減させるかまたは排除する。したがって、デバイスは、動脈血液サンプリングの間に、または、(たとえば、流体および/または他の物質の挿入または抽出のために)針の挿入を伴う任意の他の処置の間に、シリンジの角度および安定性の一貫性を改善することが可能である。
【0021】
有利には、開示されているデバイスは、望まれない移動を低減させ、針が患者の上の所望の穿刺部位を逃すリスクを減少させ、および/または、動脈の周りの構造体(たとえば、橈骨神経)を損傷させるリスクを減少させることが可能である。加えて、抽出の間に針を静止して維持することによって、橈骨動脈の中の穿刺のサイズが低減され得る。その理由は、穿刺を引き伸ばすためにより少ない移動が存在することとなるからである。そのうえ、上側コンポーネントと下側コンポーネントとの間のカップリングメカニズムは、挿入されている間に、および、特定の角度を依然として維持しながら、施術者がシリンジを任意の方向に選択的に移動させることを可能にする。これは、必要とされる場合には、針を引き抜いて皮膚の中へ針を再挿入する必要なしに、施術者が動脈を探すことを可能にする。
【0022】
1. 例示的な実施形態
【0023】
図1は、実施形態による、動脈穿刺を支援するために使用されているデバイス100の斜視図を図示している。加えて、
図2Aは、実施形態による、デバイス100の上部斜視図を図示しており、
図2Bは、デバイス100の上面図を図示しており、
図2Cおよび
図2Dは、デバイス100の両側の側面図を図示しており、
図2Eは、デバイス100の正面図(すなわち、遠位端部に面している)を図示しており、
図2Fは、デバイス100の背面図(すなわち、近位端部に面している)を図示している。
【0024】
図1において、デバイス100は、施術者の手の上にある状態で図示されており、患者の皮膚20の中への挿入のための針12を有する外部シリンジ10とともに図示されている。有利には、デバイス100は、たとえば、動脈採血のための動脈穿刺の間に、シリンジ10を安定化させる。デバイス100は、下側コンポーネント120および上側コンポーネント130を含み、それらは、カップリングコンポーネント110によって連結されている。下側コンポーネント120は、シリンジ10が上側コンポーネント130によって支持されているときに、施術者がシリンジ10を安定して安全に保持することを可能にする。実際には、施術者は、デバイス100を安定化させるために、処置の間に、患者の身体(たとえば、患者の前腕)の上に下側コンポーネント120を置くことが可能である。
【0025】
図示されている実施形態において、下側コンポーネント120は、2つのフィンガーホール122Aおよび122Bを備えたフィンガーホルダーを含む。図示されているように、フィンガーホール122は、断面が円形になっており、典型的な人間の指を収容することが可能である。しかし、フィンガーホール122は、異なる断面形状(たとえば、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、または任意の他の多面多角形)を有することが可能である。加えて、代替的な実施形態において、フィンガーホルダーは、施術者が患者の身体にデバイス100をアンカー固定することを支援する任意の他の構造体と交換され得る。
【0026】
例として、フィンガーホール122Aは、施術者の中指のために設計され得り、フィンガーホール122Bは、施術者の人差し指のために設計され得る。それぞれのフィンガーホール122の直径は、それが受け入れるように設計された特定の指に関する平均直径に基づいて設計され得り、異なるフィンガーホール122が異なる直径を有することができるようになっている。たとえば、フィンガーホール122A(それは、施術者の中指の上をスライドするように設計されている)は、フィンガーホール122B(それは、施術者の人差し指の上をスライドするように設計されている)よりも小さい直径を有することが可能である。このケースでは、デバイス100は、右利きおよび左利きの両方の実施形態において製造され得る。代替的に、すべてのフィンガーホール122は、それらが受け入れるように設計された指の平均直径に基づいて同じ直径を有することが可能である。このケースでは、同じデバイス100は、右利きおよび左利きの両方の施術者によって使用され得る。いずれのケースでも、デバイス100は、たとえば、小さいサイズ(たとえば、人間の指の平均直径よりも小さい直径を有するフィンガーホール122を備える)、中間サイズ(たとえば、人間の指の平均直径に等しい直径を有するフィンガーホール122を備える)、および、大きいサイズ(たとえば、人間の指の平均直径よりも大きい直径を有するフィンガーホール122を備える)など、異なるサイズで製造され得る。
【0027】
図示されている実施形態は、2つのフィンガーホール122のみから構成されているが、代替的な実施形態は、1つの、3つの、4つの、または5つのフィンガーホール122を含むことが可能であるということが理解されるべきである。しかし、デバイス100は、好ましくは、少なくとも2つのフィンガーホール122を有し、単一のフィンガーホール122のみを備えた実施形態よりも安定性を提供しており、単一のフィンガーホール122は、施術者の指の周りでのフィンガーホルダーの不注意な回転を可能にする可能性がある。加えて、2つのフィンガーホール122のみから構成される実施形態は、好ましい可能性がある。その理由は、それが、3つ以上のフィンガーホール122を備えた実施形態よりも幅広い範囲の施術者の手のサイズにフィットすることができるからである。したがって、2つのフィンガーホール122は、適当に、安定性とフレキシビリティーのバランスをとっている。
【0028】
そのうえ、フィンガーホール122は、施術者の中指(たとえば、第3の指)および人差し指(たとえば、第2の指)を受け入れるものとして図示されているが、フィンガーホール122は、異なるフィンガーを受け入れるように構成され得る。たとえば、フィンガーホール122Aは、第4の指(たとえば、薬指)を受け入れるように設計され得り、一方では、フィンガーホール122Bは、中指を受け入れるように設計され得る。しかし、中指および人差し指は、施術者の大多数に最大の安定性および制御を提供することが可能である。
【0029】
フィンガーホール122の長さは、施術者の指のかなりの部分がそれぞれのフィンガーホール122の遠位端部から外へ延在するように設計され得る。たとえば、それぞれのフィンガーホール122の長さは、それぞれの指の平均的な人の基節骨(すなわち、手を指に接合する第1の指関節から第2の指関節まで)の長さより小さいかまたはそれに等しくなっていることが可能である。これは、施術者が第2の指関節および第3の指関節において自分の指を曲げることを可能にし、たとえば、施術者が、フィンガーホール122を通って延在している同じ指を使用して患者の脈拍を感じることができるようになっている。それぞれのフィンガーホール122は、同じ長さを有することが可能であり、または、異なる長さを有することが可能であり、たとえば、フィンガーホール122が設計されている指の基節骨の平均長さ、互いに対する指の第2の指関節の平均位置に対応しており、または、別の指よりも高い可動性を1つの指に提供する(たとえば、長さが短いほどより高い可動性を示し、長さが長いほど低い可動性を示す)。したがって、フィンガーホール122A(たとえば、中指のためのもの)は、フィンガーホール122B(たとえば、人差し指のためのもの)よりも短くなっていることが可能であり、フィンガーホール122Aは、フィンガーホール122Bよりも長くなっていることが可能であり、または、フィンガーホール122Aは、フィンガーホール122Bと実質的に同じ長さになっていることが可能である。
【0030】
ある実施形態において、フィンガーホール122のうちの1つまたは複数は、少なくとも1つの端部においてテーパー状になっていることが可能であり、および/または、少なくとも1つの端部において非テーパー状になっていることが可能である。たとえば、図示されている実施形態では、フィンガーホール122は、両方とも、近位端部において(すなわち、第1の指関節のより近くにおいて)非テーパー状になっており、それらの遠位端部において(たとえば、第1の指関節のより遠くにおいて)テーパー状になっている。代替的に、それぞれのフィンガーホール122は、近位端部および遠位端部の両方においてテーパー状になっているか、近位端部および遠位端部の両方において非テーパー状になっているか、または、近位端部においてテーパー状になっており、遠位端部において非テーパー状になっていることが可能である。そのうえ、異なるフィンガーホール122の近位端部および/または遠位端部は、他のフィンガーホール122とは異なるようにテーパー状および/または非テーパー状になっていることが可能である。テーパー付けは、任意の方向になっていることが可能である。たとえば、
図1に図示されている実施形態では、フィンガーホール122は、フィンガーホール122の底部において(たとえば、上側コンポーネント130からより遠くにおいて)、より大きい長さを有しており、フィンガーホール122の上部において(たとえば、上側コンポーネント130のより近くにおいて)、より小さい長さへとテーパー付きになっている。代替的に、
図2A~
図2Fに図示されているように、テーパー付けは、フィンガーホール122の底部において、より小さい長さを含むことが可能であり、それは、フィンガーホール122の上部においてより大きい長さへとテーパー付きになっている。
図2A~
図2Fにおけるテーパー付けの方向は、
図1におけるテーパー付けの方向よりも好ましい可能性がある。その理由は、それが、より良好に、施術者の指が指関節(たとえば、第2および第3の指関節)において下向きに曲がることを可能にし、たとえば、施術者の指関節をカバーし、それによって、針12による針刺し損傷から施術者の指関節を保護しながら、同時に患者の脈拍をとることを可能にするからである。
【0031】
デバイス100の上側コンポーネント130は、プラットフォーム132を含むことが可能であり、プラットフォーム132は、処置の間にシリンジ10をガイドするように構成されている。具体的には、シリンジ10は、プラットフォーム132の上に安定して置かれ、遠位端部Dに向けてスライドし、所望の角度および挿入部位において、針12によって患者の皮膚20を穿刺することが可能である。図示されている実施形態において、プラットフォーム132は、プラットフォーム132の長手方向軸線に直交する平面において、実質的に半円形のまたはU字形状の断面を有するチューブまたはシリンダーの一部分として形成されており、近位端部P(たとえば、使用の間に、施術者のより近くにあり、針12からより遠くにある)から遠位端部D(たとえば、使用の間に、施術者からより遠くにあり、針12のより近くにある)へ延在している。代替的に、プラットフォーム132は、実質的に円形の断面を有するチューブまたはシリンダーであることが可能であり、実質的に半円形の断面を有する実施形態ほど、プラットフォーム132が多くの異なるサイズのシリンジ10を収容することができない可能性があるという不利益を伴う。そのような実施形態では、プラットフォーム132の1つの端部における円形断面の直径は、プラットフォーム132の反対側端部における円形断面の直径と同じであってもまたは異なっていてもよい。さらに別の代替的例として、プラットフォーム132の断面は、半円形または円形でない形状、たとえば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、もしくは、任意の他の多面多角形、または、任意のそのような形状の一部分(たとえば、半分)などを有することが可能である。本明細書で使用されているように、「半円形」または「円形」は、半卵形または卵形の形状を指すことも可能である。加えて、「半円形」は、円形もしくは楕円形の半分を形成する弧、円形もしくは楕円形の半分よりも小さい弧、または、円形もしくは楕円形の半分よりもわずかに大きい弧になっている断面を含むように理解されるべきである。
【0032】
プラットフォーム132の長さ(すなわち、近位端部Pの縁部から遠位端部Dの縁部への距離)は、プラットフォーム132が支持することを意図するシリンジ10の長さに基づくことが可能である。換言すれば、プラットフォーム132の長さは、単一のサイズのシリンジ10または複数の異なるサイズのシリンジ10を安定して支持するように選ばれ得り、シリンジ10がぐらつくことまたはプラットフォーム132の近位端部Pもしくは遠位端部Dからひっくり返ることを防止するようになっている。
【0033】
同様に、プラットフォーム132の断面の半径、幅、および/または深さは、シリンジの単一の直径またはシリンジ10の複数の異なる直径を安定して支持するように選ばれ得る(たとえば、シリンジ10がプラットフォーム132の中で横方向に転がることまたはプラットフォーム132から転がり落ちることを防止する)。たとえば、半円形断面の内側半径は、使用されることとなるシリンジ10の外側半径よりも大きいかまたはそれに等しくなっていることが可能であり、使用されることとなるシリンジ10の全直径または直径のかなりの部分を包含するのに十分に幅広くなっていることが可能である。
【0034】
しかし、プラットフォーム132は、シリンジ10または他の医療器具がプラットフォーム132の上に支持されるのに適切な任意の長さまたは断面形状で実装され得るということが理解されるべきである。たとえば、プラットフォーム132の長さは、使用されることとなるシリンジ10の長さに基づくことが可能であり、プラットフォーム132の断面は、使用されることとなるシリンジ10の断面の少なくとも一部分に実質的にマッチすることが可能である。このように、プラットフォーム132は、シリンジ10または他の医療器具の任意のさまざまな異なる形状およびサイズを収容するように設計され得る。
【0035】
ある実施形態において、シリンジ10とインターフェース接続して接触するプラットフォーム132の上部表面は、テクスチャー加工され得るか、または、表面とシリンジ10との間の摩擦を増加させるように設計されている材料もしくは物質から作製されるか、または、それによってコーティングされ得る。たとえば、表面は、シリンジ10を軽く、解放可能に、および一時的に保持するように構成されている粘着性を有する材料もしくは物質から作製されるか、または、それによってコーティングされ得る。テクスチャー加工またはコーティングは、プラットフォーム132の上部表面全体にわたって提供されてもよく、または、プラットフォーム132の上部表面の1つもしくは複数の部分的な領域だけに提供されてもよい。摩擦の増加は、シリンジ10の安定性を改善することが可能であり、たとえば、緊急時など、施術者が著しいストレスの下で(たとえば、震える手で)処置を行うときに、特に、役立つ可能性がある。
【0036】
また、デバイス100の上側コンポーネント130は、フィンガーガード134を含むことが可能であり、フィンガーガード134は、遠位端部Dにおいてまたは遠位端部Dの近くにおいて、プラットフォーム132から所定の角度で下向きに延在している。フィンガーガード134は、針12からの不注意な針刺しによる損傷から施術者の指を保護する。たとえば、フィンガーガード134は、(たとえば、フィンガーホール122から延在している)施術者の指の遠位端部が存在している領域、および、針12が存在している領域を分離し、施術者の指と針12との間の接触を防止するようになっている。フィンガーガード134は、プラットフォーム134のすべての配向および相対的角度において、施術者の指を保護するように構成されているべきである。この目的のために、フィンガーガード134は、所与の用途に関して、サイズ、形状、幅、および/または長さを変化させられ、施術者の指の保護を最大化することが可能である。そのうえ、フィンガーガード134は、意図した用途に応じて、任意の適切な角度で(たとえば、0度よりも大きく、90度よりも小さい範囲において)、プラットフォーム132から延在することが可能である。たとえば、フィンガーガード134は、おおよそ45度の角度で、プラットフォーム132から延在することが可能である。別の例として、フィンガーガード134は、おおよそ90度の角度で、プラットフォーム132から延在することが可能である。さらに別の例として、フィンガーガード134は、0度の角度でプラットフォーム132および針12と平行に延在することが可能であり、施術者の指が針12に極めて近接して安全に置かれること(すなわち、針12の経路に触れることなくまたはその中へ入ることなく)を可能にする。
【0037】
ある実施形態において、フィンガーガード134は、プラットフォーム132に枢動可能に接続され得り、フィンガーガード134とプラットフォーム132との間の角度がさまざまな程度の範囲にわたって手動で調節され得るようになっている。たとえば、フィンガーガード134は、0度(たとえば、プラットフォーム132の底部表面に対して実質的に平行になっている)から90度(たとえば、プラットフォーム132の底部表面に対して実質的に垂直になっている)までの範囲において調節可能であり得る。したがって、施術者は、施術者の好適な角度に対応する任意の傾斜に、フィンガーガード134を調節することが可能である。
【0038】
追加的にまたは代替的に、フィンガーガード134は、プラットフォーム132に取り付け可能であり、プラットフォーム132から取り外し可能であり得る。そのような実施形態では、施術者は、望まれる場合には(たとえば、改善された操縦のために)、フィンガーガード134をプラットフォーム132から取り外すことが可能であり、または、望まれる場合には(たとえば、改善された安全のために)、フィンガーガード134をプラットフォーム132に取り付けることが可能である。加えて、施術者は、必要に応じてまたは所望の通りに、複数のフィンガーガード134をインまたはアウトに切り替えることが可能である。たとえば、より大きい指を有する施術者は、保護を高めるために、より小さいフィンガーガード134をより大きいフィンガーガード134と交換することが可能であり、または、追加的な操縦性のために、より大きいフィンガーガード134をより小さいフィンガーガード134と交換することが可能である。
【0039】
ある実施形態において、下側コンポーネント120および上側コンポーネント130は、カップリングメカニズム110を介して一緒に連結されている。
図1~
図2Fに図示されている実施形態では、カップリングメカニズム110は、ボール-アンド-ソケットメカニズムを含む。具体的には、ボール-アンド-ロッド部分112は、ボール-アンド-ロッド部分112のロッドの端部におけるボールをソケット部分114のソケットの中へ挿入することによって、ソケット部分114に可動に接合されている。ソケット部分114のソケットは、実質的に半球形の位置の範囲を通って、ソケット内において3次元で、ボール-アンド-ロッド部分112のボール自由に回転することを可能にする。ある実施形態において、ソケット部分114は、ボール-アンド-ロッド部分112の回転を可能にすることが可能であり、上側コンポーネント130が、水平方向の平面の中で360度回転させられ得るようになっている。代替的に、カップリングメカニズム110は、上側コンポーネント130の回転を水平方向の平面の中で360度よりも小さい範囲に制限するように設計されており、たとえば、シリンジ針12が施術者の方を向くことを防止することが可能である。同様に、ソケット部分114は、また、上側コンポーネント130が、垂直方向の平面の中で180度回転させられ得るように、ボール-アンド-ロッド部分112の回転を可能にすることが可能であり、または、上側コンポーネント130の回転を垂直方向の平面の中で180度よりも小さい範囲に制限することが可能である。
【0040】
図示されている実施形態では、ボール-アンド-ロッド部分112が上側コンポーネント130から延在しており、ソケット部分114が下側コンポーネント130から延在しているが、これらの部分は、代替的な実施形態において逆にされ得り、ボール-アンド-ロッド部分112が下側コンポーネント120から延在し、ソケット部分114が上側コンポーネント130から延在するようになっている。したがって、どのコンポーネントがボール-アンド-ソケットメカニズムのオス型の部分に対応し、どのコンポーネントがボール-アンド-ソケットメカニズムのメス型の部分に対応するかについて、特別の区別はなされていない。
【0041】
ソケット部分114のソケットは、締まり嵌めでボール-アンド-ロッド部分112のボールを受け入れることが可能である。したがって、ボール-アンド-ソケットメカニズムは、ソケット部分114とボール-アンド-ロッド部分112との間で、ある程度の摩擦を示す。ある実施形態において、この摩擦の程度は、シリンジ10がプラットフォーム132によって支持されている間に、プラットフォーム132の最小の移動を伴ってまたは全く移動を伴わずに、プラットフォーム132の所望の角度を維持するのに十分に高い。換言すれば、摩擦の程度は、シリンジ10がプラットフォーム132の上に保持されているときでも、施術者が意図的にプラットフォーム132に手動で力を印加しない限り、プラットフォーム132がデバイス100の任意の他のコンポーネントに対して移動しないようになっているべきである。当然のことながら、プラットフォーム132は、たとえば、施術者が自分の手または指を移動させるときに、依然としてデバイス100とともに移動することが可能である。本明細書で使用されているように、プラットフォーム132の「角度」は、下側コンポーネント120、施術者の指、患者、または、患者の皮膚20の中への針52の挿入部位に対する、プラットフォーム132の長手方向軸線の角度を指すことが可能であるということが理解されるべきである。
【0042】
代替的な実施形態において、カップリングメカニズム110は、磁石を用いて実装され得る。たとえば、ボール-アンド-ソケットメカニズムの代わりに、または、ボール-アンド-ソケットメカニズムに加えて、上側コンポーネント130の上の部分112および下側コンポーネント120の上の部分114のうちの一方または両方は、磁石を含むことが可能であり、磁石は、他方の部分の磁石または金属表面を引き付け、2つの部分112と部分114との間の可動性を依然として可能にしながら、隣接する部分を一緒に保持する。磁石の強度は、部分112と部分114との間に所望の可動性を実現するように必要に応じて選択され得る。さらに代替的な実施形態において、カップリングメカニズム110は、ツイスト-ロックカップリング、ボルト-ナットカップリング、および/または、曲げ可能なカップリング(たとえば、ゴムでコーティングされたワイヤー)などを含むことが可能である。さらに別の代替的例として、下側コンポーネント120および上側コンポーネント130は、1つの連続的な構造体であることが可能であり、上側コンポーネント130のプラットフォーム132は、下側コンポーネント120に対して固定された角度を有している。
【0043】
2. 代替的な特徴
【0044】
図3~
図6は、デバイス100のさまざまな代替的な特徴を図示している。具体的には、
図3は、さまざまな代替的な実施形態による、デバイス100の切り離されたコンポーネントの斜視図を図示しており、
図4および
図5は、デバイス100の側面図を図示しており、
図6は、デバイス100の後方斜視図を図示している。すべての実施形態が本明細書で説明されているとは限らないということ、および、実施形態は、本明細書で説明されている実施形態のいずれかに関して説明されている特徴のいずれかの任意の組み合わせを含むことが可能であるということが理解されるべきである。たとえば、第2の特徴を含む実施形態に関して第1の特徴が説明され得るという事実は、第1の特徴を備えるすべての実施形態が第2の特徴も含まなければならないということを意味しているのではなく、または、その逆もまた同様である。むしろ、第1の特徴は、第2の特徴の有無にかかわらず、任意の他の実施形態の中の任意の他の特徴と組み合わせられ、本明細書で明示的に説明されていない実施形態を生成させることが可能である。加えて、第1の特徴は、ある実施形態において、実施形態から完全に省略されるか、または、(すなわち、任意の他の説明されている特徴なしに)それ自身で使用され得る。
【0045】
図3に図示されている実施形態では、下側コンポーネント120は、それぞれのフィンガーホール122の中に環状のグリップ124を含む。それぞれの環状のグリップ124は、チューブ状または実質的に円筒形状になっており、そのそれぞれのフィンガーホール122の内径に対応する外径を有している。環状のグリップ124は、軟質のまたは圧縮可能な(たとえば、スポンジまたはスポンジのような)材料(たとえば、ゴムまたは同様の材料など)から作製され得る。それぞれの環状のグリップ124の内径は、環状のグリップ124が受け入れることを意図している指の平均直径にしたがってサイズ決めされ得る。たとえば、それぞれの環状のグリップ124の内径は、環状のグリップ124が受け入れることを意図している指の平均直径よりもわずかに小さくなっていることが可能である。したがって、施術者は自分の指を所与のフィンガーホール122の中へ挿入するときに、そのフィンガーホール122の中の環状のグリップ124の材料が、外向きに圧縮することが可能であり、施術者の指がフィンガーホール122の中に受け入れられるときに、環状のグリップ124が指を取り囲み、指の周りに緊密な摩擦フィットを形成するようになっている。このように、環状のグリップ124は、フィンガーホール122が広範囲の異なる指の直径を確実に収容することを可能にする。環状のグリップ124は、接着剤および/または別の固定メカニズムを介して、それらのそれぞれのフィンガーホール122の中に固定され得る。それぞれの環状のグリップ124の内径および/または外径は、他の環状のグリップ124の内径および/または外径とは異なっていてもよいということが理解されるべきである。その理由は、それぞれの環状のグリップ124が、異なる指にフィットするようにサイズ決めされ、および/または、異なってサイズ決めされたフィンガーホール122の中にフィットするようにサイズ決めされ得るからからである。たとえば、環状のグリップ124Aは、環状のグリップ124Bよりも小さい内径および外径を有することが可能であるか、環状のグリップ124Bよりも大きい内径および外径を有することが可能であるか、環状のグリップ124Bよりも小さい内径、しかし、それよりも大きい外径を有することが可能であるか、または、環状のグリップ124Bよりも大きい内径、しかし、それよりも小さい外径を有することが可能である。
【0046】
特に、
図3に図示されている実施形態のプラットフォーム132は、また、
図1~
図2Fに図示されている実施形態よりも薄い断面および大きい内側半径を有している。したがって、
図3のデバイス100は、
図1~
図2Fのデバイス100よりも大きい直径を有するシリンジ10を支持することが可能である。デバイス100の中のプラットフォーム132の異なる実施形態の内側半径および/または外側半径は、デバイス100が支持することを意図しているシリンジ10または他の医療器具のサイズにしたがって、任意の実用的な範囲の中に入るように選択され得るということが理解されるべきである。一般的に、意図されたシリンジ10の外側半径に厳密にマッチする内側半径を有するプラットフォーム132は、針12の挿入の間に、より大きい安定性および制御を提供することとなる。また、プラットフォーム132のサイズおよび形状は、行われることとなる処置によって決定付けられ得る。たとえば、異なる処置は、より大きいレベルの安定性および/または制御を必要とする可能性がある。
【0047】
また、
図3は、
図1~
図2Fに図示されているソケット部分114とはわずかに異なる、カップリングメカニズム110のためのソケット部分114を図示している。具体的には、
図3に図示されている実施形態におけるソケット部分114は、より低いプロファイルを有しているが、上側コンポーネント130の相対的角度のフレキシブルな制御を可能にしながら、依然として上側コンポーネント130を安定化させるように形状決めおよびサイズ決めされている。カップリングメカニズム110が上側コンポーネント130を構造的に安定して支持することができる限りにおいて、カップリングメカニズム110のボール-アンド-ソケットメカニズムの多くの他の変形例、および、カップリングメカニズム110自身の多くの他の変形例が可能であるということが理解されるべきである。また、下側コンポーネント120の多くの変形例(下側コンポーネント120の完全な省略を含む)も可能であるということが理解されるべきである。しかし、施術者が関連の処置(たとえば、シリンジ10を使用する任意の処置)を安全に効果的に完了することを可能にしながら、上側コンポーネント130のプラットフォーム132を安定化させることを助けるために、患者の身体(たとえば、前腕)に少なくとも寄り掛かることができる下側コンポーネント120を有することが好ましい。
【0048】
図4に図示されている実施形態では、カップリングメカニズム110は、下側コンポーネント120に対して上側コンポーネント130の配向および角度を固定する構造体である。したがって、以前に説明された実施形態とは異なり、上側コンポーネント130のプラットフォーム132は、下側コンポーネント120に対して回転させられることができない。しかし、この実施形態では、カップリングメカニズム110は、依然として、遠位端部Dおよび近位端部Pによって画定される長手方向軸線に沿って、プラットフォーム132がスライドすることを可能にすることができる。したがって、施術者は、患者に向けて(すなわち、遠位端部Dの方向に)、または、患者から離れるように(すなわち、近位端部Pの方向に)、プラットフォーム132をスライドさせることが可能である。カップリングメカニズム110の長さ(下側コンポーネント120と上側コンポーネント130との間の距離を画定している)は、シリンジ10のための任意の所望の角度を実現するように設定され得る。たとえば、より短い長さを有するカップリングメカニズム110は、一般的に、より鈍角(たとえば、挿入部位に対してより平坦なアプローチ)を実現することとなり、一方では、より大きい長さを有するカップリングメカニズム110は、一般的に、より鋭角(たとえば、挿入部位に対してより高い角度)を実現することとなる。
【0049】
加えて、
図4に図示されている実施形態におけるプラットフォーム132は、遠位端部Dから近位端部Pへ変化する断面を有している。具体的には、プラットフォーム132は、その近位端部Pよりもその遠位端部Dにおいて、より深い断面を有している。たとえば、遠位端部Dにおいて、プラットフォーム132の断面は、ほとんど円形(たとえば、三日月形状)または実質的に円形になっていることが可能であり、一方では、近位端部Pにおいて、プラットフォーム132の断面は、半円形になっていることが可能である。結果的に、
図4に図示されているように、プラットフォーム132の側面は、近位端部Pにおけるより浅い断面から、遠位端部Dにおけるより深い断面へ、テーパー状になっている。この構成は、シリンジ10がプラットフォーム132の中へ挿入されるときに(すなわち、近位端部Pにおけるプラットフォーム132の浅さに起因して)、シリンジ10の移動に関してより大きいフレキシビリティーを可能にし、一方では、シリンジ10がプラットフォーム132の中へ完全に挿入されると(すなわち、遠位端部Dにおけるプラットフォーム132の深さに起因して)、シリンジ10を完全に制限する。
【0050】
図5に図示されている実施形態では、フィンガーガード134は、プラットフォーム132の長手方向軸線に対して実質的に平行になっている。特に、下側コンポーネント120の遠位端部とフィンガーガード134の遠位端部との間に距離Gが存在しており、それは、カップリングメカニズム110を介して下側コンポーネント120に対して上側コンポーネント130を調節することによって、増加または減少させられ得る。距離Gの範囲は、処置(たとえば、動脈血液サンプリングなど)の間に、下側コンポーネント120のフィンガーホール122の中の指が患者の脈拍をとるなどのようなアクションを行うことを可能にしながら、平均的な指のサイズを快適に収容するように設定され得る。
【0051】
図6に図示されている実施形態では、プラットフォーム132は、取り付けメカニズム600を含む。示されているように、取り付けメカニズム600は、T字形トラック構造体を含むことが可能であり、T字形トラック構造体は、T字形状のトラックまたはレール(本明細書で「オス型の」部分と称される)と、「メス型の」部分とを備え、「メス型の」部分は、T字形状のトラックを受け入れてT字形状のトラックの上に保持し、T字形状のトラックに沿ってスライドするようになっている。
図6において、オス型の部分は、プラットフォーム132の中へ一体化されており、メス型の部分は、シリンジ10に取り付けられている。したがって、施術者は、シリンジ10のメス型の部分をプラットフォーム132のオス型の部分(たとえば、T字形状のトラック)の上にスライドさせることが可能である。代替的な実施形態において、メス型の部分は、プラットフォーム132の中へ一体化され得り、オス型の部分は、シリンジ10に取り付けられ得る。他の代替的な実施形態において、異なる取り付けメカニズム600が、プラットフォーム132にシリンジ10を解放可能に取り付けるために使用され得る(トラック-ベースのメカニズムおよび非トラック-ベースのメカニズムを含む)。
【0052】
任意のケースにおいて、取り付けメカニズム600は、シリンジ10がプラットフォーム132に取り付けられることおよびプラットフォーム132から取り外されることを可能にする。取り付けメカニズム600は、シリンジ10がプラットフォーム132に取り付けられているときに、プラットフォーム132の長手方向軸線に沿ったまたはそれに対して平行の線形の移動にシリンジ10の移動を制限するように構成されている。換言すれば、取り付けメカニズム600は、近位方向または遠位方向のいずれかに、プラットフォーム132の上の線形の経路に沿ってシリンジ10をガイドする。たとえば、取り付けメカニズム600は、患者の皮膚20の中へのシリンジ10の挿入の間に、シリンジ10の下向き経路をロックまたは固定する。この移動の制限は、より高い安定性、制御、および安全を提供することが可能である。処置の後に、施術者は、取り付けメカニズム600のコンポーネントを切り離すことによって(たとえば、トラックまたは他のオス型の部分からメス型の部分をスライドさせて外すことによって)、シリンジ10を除去することが可能である。
【0053】
ある実施形態において(図示せず)、フィンガーホール122は、複数の指を収容するようにサイズ決めされ、形状決めされ、および/または、その他の方法で構成され得る。たとえば、単一の指を受け入れるようにそれぞれ構成されている複数のフィンガーホールの代わりに、下側コンポーネント120は、2本以上の指を受け入れるようにそれぞれ構成されている1つまたは複数のフィンガーホールを含むことが可能である。たとえば、下側コンポーネントは、単一のフィンガーホール122から構成され得り、単一のフィンガーホール122は、中指および人差し指の平均的なペアを受け入れるようにサイズ決めおよび形状決めされている。そのような実施形態では、フィンガーホール122(それは、複数の指を受け入れるように構成されている)は、個々の指を分離するために半円形の仕切りを含むことが可能である。
【0054】
ある実施形態において(図示せず)、デバイス100は、ホールを有していないかまたは指を受け入れるように構成されたホールを有していない下側コンポーネント120を含むことが可能である。このケースでは、下側コンポーネント120は、施術者が患者の脈拍を感じることおよび/または患者の脈拍の位置を探すことを助ける任意の装置を含むことが可能である。別の代替例として、下側コンポーネント120は、デバイス100から完全に省略されてもよい。このケースでは、デバイス100は、上側コンポーネント130を含むか、または、上側コンポーネント130から構成され得り、解剖学的ランドマークを使用し、針12の挿入部位を決定することが可能である。
【0055】
3. 例示的な使用法
【0056】
好適な実施形態において、デバイス100は、プラットフォーム132(ひいては、プラットフォーム132の上に支持されているシリンジ10)が複数の自由度および角度を通して下側コンポーネント120に対して移動させられることを可能にし、医学的処置を促進させる。施術者は、自分自身の裁量の範囲内でプラットフォーム132を手動で移動させ、患者の皮膚に対して、処置(たとえば、動脈採血)のために望まれる角度にそれを設定する。施術者は、プラットフォーム132の上にシリンジ10を位置決めする前または後に(たとえば、プラットフォーム132の上にシリンジ10を設置するかまたはスライドさせる前または後に、取り付けメカニズム600を使用してプラットフォーム132にシリンジ10を取り付ける前または後になど)、これを行うことが可能である。いくつかのケースでは、施術者は、使用の前に、適当な角度を精密に設定するために、分度器または他のデバイスを利用することが可能である。
【0057】
プラットフォーム132の相対的角度を設定する前または後に、施術者は、それぞれのフィンガーホール122の中へ自分の指を挿入することが可能である。たとえば、好適な実施形態において、デバイス100は、中指のためのフィンガーホール122A、および、人差し指のためのフィンガーホール122Bを含むことが可能である。したがって、施術者は、自分の中指をフィンガーホール122Aの中に挿入し、人差し指をフィンガーホール122Bの中に挿入することが可能である。環状のグリップ124を含む実施形態では、環状のグリップ124は、フィンガーホール122の中に施術者の指をぴったりと保持する。
【0058】
自分の指がフィンガーホール122を通っている状態で、それによって、デバイス100を安定して保持している状態で、施術者は、それらの同じ指を使用して患者の脈拍をとることが可能である。たとえば、プラットフォーム132の下で(たとえば、
図5の中の距離Gによって画定されているスペースの中で)、フィンガーホール122の遠位端部から延在している施術者の中指および人差し指の部分(たとえば、末節骨および/または中節骨)を使用して、施術者は、患者の脈拍を識別するために、患者の動脈に圧力を印加することが可能である。施術者は、自分の中指および人差し指の先端部(フィンガーホール122から延在している)が針12のための所望の挿入部位の可能な限り近くに設置されることを可能にする角度まで、フィンガーガード134を枢動させることが可能である。しかし、施術者は、自分が望む任意の角度までフィンガーガード134を枢動させることが可能であり、針12のための挿入部位から任意の所望の距離に自分の指を設置することが可能であるということが理解されるべきである。任意のケースにおいて、フィンガーガード134は、フィンガー指と針12との間の接触を防止することによって、施術者の指への針刺し損傷のリスクを低減させるかまたは排除する。
【0059】
患者の皮膚20の上への施術者の指および/または下側コンポーネント120の設置は、シリンジ10を支持するプラットフォーム132を安定化させる役割を果たす。したがって、施術者は、片手(たとえば、右手)を使用してデバイス100を安定して設置することが可能であり、シリンジ10の針12が、所望の角度にあり、所望の挿入部位に向けて線形の経路の上にあるようになっている。次いで、施術者は、自分の他方の手(たとえば、左手)を使用し、プラットフォーム132の長手方向軸線に沿って下向きの線形の軌跡の上でシリンジ10をスライドさせ、それによって、所望の挿入部位において患者の皮膚20の中へ針12を押し込むことが可能である。取り付けメカニズム600を備えた実施形態では、シリンジ10は、線形の軌跡に沿ってのみ移動するように制限されており、それによって、針12の不注意な横方向の移動を低減させるかまたは排除する。
【0060】
動脈血液サンプリングの従来の方法(たとえば、ABG決定のためのもの)と比較して、デバイス100の使用は、処置のための全体的な時間を減少させる。ABG決定は、緊急事態の際に実施されることが多いので、処置の時間の減少は、全体的な患者の転帰を改善することが可能である。実際に、改善された時間は、生存する患者と死亡する患者との間の差である可能性がある。そのうえ、外科手術の前に実施される動脈採血のための時間の減少は、患者が麻酔をかけられたままでなければならない時間の量を有利に減少させる。
【0061】
現在、動脈血液サンプリングを実施するために、訓練された医療専門家(一般には医師)が必要とされる。しかし、デバイス100の使用は、経験の浅い施術者または研修生でさえもが動脈血液サンプリングを実施することを可能にする可能性を有している。具体的には、精度を向上させることによって、デバイス100は、患者の痛みおよび感染のリスクを減少させることが可能である。その理由は、穿刺が少ないほど、患者の皮膚20の中に感染しやすい傷口が少なくなるからである。したがって、手術中または緊急時に、熟練度の低い医療従事者が、動脈血液サンプリングを実施することが可能であり、一方では、より経験豊富な医療従事者は、他の問題に対処するために自分の時間および専門知識を使用するように解放される。
【0062】
有利には、デバイス100は、針12の挿入の間に針挿入部位の遠位にある橈骨動脈拍動を施術者が触診することを可能にし、それによって、針挿入部位への血流の減少の問題を排除する。デバイス100のプラットフォーム132の下方の保護フィンガーガード134の存在に起因して、施術者は、施術者の指への針刺し損傷について心配する必要なく、触診の部位のより近くに針12を挿入することが可能である。その針12が識別された脈動に近いほど、成功的に動脈を穿刺する可能性が高くなる。
【0063】
入院している患者または外科手術を受ける患者は、デバイス100から利益を受けることが可能である。たとえば、外科患者に関して、動脈血液サンプリングまたは動脈ラインの挿入のために必要とされる時間の減少は、全身麻酔下で費やされる時間を減少させる。全身麻酔下の患者は、挿管されなければならない。挿管は、多数の合併症のリスクを上昇させるので、患者が全身麻酔下で費やす(ひいては、挿管されている)時間を減少させることは、外科手術に関連付けられる全体的な罹患率および死亡率を減少させることが可能である。非外科患者に関して、より迅速で、より効率的で、より正確なABGサンプリングは、患者が経験する痛みおよび処置への露出からの患者の損傷のリスクの両方を減少させることが可能である。
【0064】
開示されている実施形態の上記の説明は、任意の当業者が本発明を作製または使用することを可能にするために提供されている。これらの実施形態に対するさまざまな修正例が、容易に当業者に明らかになることとなり、本明細書で説明されている一般的な原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態にも適用され得る。したがって、本明細書で提示されている説明および図面は、本発明の現在好適な実施形態を表しており、したがって、本発明によって広く企図されている主題を代表しているということが理解されるべきである。本発明の範囲は、当業者に明らかになり得る他の実施形態を完全に包含しているということ、および、本発明の範囲は、それにしたがって限定されないということがさらに理解される。
【0065】
本明細書で説明されている組み合わせ、たとえば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの1つまたは複数」、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つまたは複数」、および、「A、B、C、または、それらの任意の組み合わせ」などは、A、B、および/またはCの任意の組み合わせを含み、複数のA、複数のB、または、複数のCを含むことが可能である。具体的には、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの1つまたは複数」、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つまたは複数」、ならびに、「A、B、C、または、それらの任意の組み合わせ」などのような組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、または、AおよびBおよびCであることが可能であり、任意のそのような組み合わせは、その構成要素A、B、および/またはCの1つまたは複数のメンバーを含有することが可能である。たとえば、AおよびBの組み合わせは、1つのAおよび複数のB、複数のAおよび1つのB、または、複数のAおよび複数のBを含むことが可能である。
【国際調査報告】