(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ベビーカーフレーム、ベビーカー、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20220914BHJP
B62B 9/00 20060101ALI20220914BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220914BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
B62B3/00 G
B62B9/00
B60L15/20 J
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502466
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020070090
(87)【国際公開番号】W WO2021009270
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】202019103919.1
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505222381
【氏名又は名称】サイベックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパウアー、ジリ
【テーマコード(参考)】
3D050
3D051
5H125
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050CC05
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050FF04
3D050KK14
3D051AA02
3D051AA23
3D051BA03
3D051BA05
3D051CE03
5H125AA17
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE41
5H125EE51
(57)【要約】
本発明に係るベビーカーフレーム(10)であって、センサデータ(41)を取得するためのセンサユニット(30,30’,30’’,30’’’)と、駆動ユニット(21)と、演算ユニット(34)とを備え、演算ユニット(34)が、センサデータ(41)の経時的な曲線の関数として、駆動ユニット(21)を駆動状態と非駆動状態との間で切り替えるように設計されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデータ(41)を取得するためのセンサユニット(30,30’,30’’,30’’’)と、
駆動ユニット(21)と、
演算ユニット(34)と
を具備し、
前記演算ユニット(34)は、前記センサデータ(41)の経時的な曲線の関数として、前記駆動ユニット(21)を駆動状態と非駆動状態との間で切り替えるように設計されていることを特徴とする
ベビーカーフレーム(10)。
【請求項2】
前記演算ユニット(34)は、前記センサデータ(41)の少なくとも1つの時間的に連続したサブセット(42)について、少なくとも1つの基準値(F1)を決定するようにさらに設計されていることを特徴とする
請求項1に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項3】
前記基準値(F1)は、平均値、特にトリミングされた平均値、調和的平均値または加重調和的平均値を示すことを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項2に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項4】
前記センサデータ(41)は、複数の測定値(43)を示し、各測定値は記録時間(t)に関連付けられており、時間的に連続した複数の測定値(43)は、前記センサデータ(41)の時間的に連続したサブセット(42)を形成することを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項2に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項5】
前記測定値(43)は、力及び/またはトルクを示すことを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項6】
前記演算ユニット(34)は、前記サブセット(42)の測定値(43)が前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にない場合、特に前記サブセット(42)の全ての測定値(43)が前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にある場合には、前記駆動ユニット(21)を非駆動状態(S1)に切り替えるように設計されており、及び/または、前記サブセット(42)の少なくとも所定数の測定値(43)が前記基準値(F1)の周りの許容区間(44)内にある場合、特にサブセット(42)の測定値(43)の少なくとも1つが許容区間(44)の外側にある場合に、前記駆動ユニット(34)を駆動状態(S2)に切り替えることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項7】
前記演算ユニット(34)は、前記測定値(43)の広がりの統計的測定値が前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にある場合、前記駆動ユニット(21)を非駆動状態(S1)に切り替えるように設計されており、及び/または、前記測定値(43)の広がりの統計的測定値が前記許容範囲(44)外にある場合、前記駆動ユニット(34)を駆動状態(S2)に切り替えるように設計されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項8】
前記センサデータの時間的に連続したサブセット(42)は、少なくとも1つの区間をカバーしており、
前記区間のそれぞれは、少なくとも2つの測定値(43)を含み、
前記少なくとも2つの測定値(43)のうちの少なくとも1つ、特に1つを除く全ての測定値が、前記駆動ユニット(21)の電源が入った状態で記録されており、
前記少なくとも2つの測定値(43)のうちの少なくとも1つ、特に正確に1つの測定値が、前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録されており、
前記演算ユニット(34)は、前記サブセット(42)の測定値(43)が前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にない場合、特に前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録された前記サブセット(42)の全ての測定値が前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にある場合に、前記駆動ユニット(21)を非駆動状態(S1)に切り替え、及び/または、前記サブセット(42)の所定数の測定値(43)が前記基準値(F1)の周りの許容区間(44)内にある場合、特に、前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録されたサブセット(42)の測定値の少なくとも1つが前記許容区間(44)の外側にある場合、前記駆動ユニット(34)を駆動状態(S2)に切り替えるように設計されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項9】
前記センサデータの時間的に連続したサブセット(42)は、少なくとも1つの間隔をカバーしており、
前記区間のそれぞれは、少なくとも2つの測定値(43)を含み、
前記少なくとも2つの測定値(43)のうちの少なくとも1つ、特に1つを除く全ての測定値が、前記駆動ユニット(21)の電源が入った状態で記録され、かつ
前記少なくとも2つの測定値(43)のうちの少なくとも1つ、特に正確に1つの測定値が、前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録されており、
前記演算ユニット(34)は、前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録されたサブセット(42)の測定値の広がりの統計的測定値が、前記基準値(F1)の周りの許容範囲(44)内にある場合に、前記駆動ユニット(21)を非駆動状態(S1)に切り替えるように設計され、及び/または、前記駆動ユニット(21)の非電源状態で記録されたサブセット(42)の測定値の広がりの統計的測定値が前記許容区間(44)の外側にある場合に、前記駆動ユニット(34)を駆動状態(S2)に切り替えることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載のベビーカーフレーム。
【請求項10】
ユーザが前記ベビーカーフレーム(10)を押すために使用するように設計されたプッシャー部(12)を備えることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項11】
前記センサユニット(30,30’,30’’,30’’’)は、ユーザが前記プッシャー部(12)に片手をおいたときに手と接触するように、前記プッシャー部(12)に配置されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載の、特に請求項7に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項12】
前記駆動ユニットは、ブレーキ装置(22)及び/またはモータ(特に電気モータ(21))からなることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項13】
少なくとも3つの車輪(34)を備え、前記駆動ユニットは、車輪(34)のうちの少なくとも1つを駆動及び/またはロックするように配置及び設計されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項14】
前記プッシャー部(12)及び/または前記少なくとも3つの車輪(34)が配置される枠組み(11)を備えることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)
【請求項15】
前記プッシャー部(31)は、接続要素(14)及び/または接続部分を介して前記枠組み(11)に接続可能なように設計されており、前記センサユニット(30,30’,30’’,30’’’)は、前記接続要素(14)または前記接続部分に配置されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項16】
前記枠組み(11)は、少なくとも1つのヒンジ部(15)を含み、前記プッシャー部(12)は、前記ヒンジ部(15)の周りで回転可能なように設計されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項17】
前記センサユニット(30,30’,30’’,30’’’)は、前記ヒンジ部(15)に配置されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項18】
前記枠組み(11)は、特に前記ヒンジ部(15)を使用して、展開された構成から折り畳まれた構成に折り畳めるように設計されていることを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項19】
前記センサユニット(30,30’,30’’,30’’’)は、前記枠組み(11)の展開された構成において、前記駆動ユニット(21)及び/または前記演算ユニット(34)に通信及び/または電気的に接続され、及び/または前記センサユニット(30,30’,30’’,30’’’)は、前記枠組み(11)の折りたたまれた構成において、前記駆動ユニット(21)及び/または前記演算ユニット(34)に通信及び/または電気的に接続されていないことを特徴とする
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)。
【請求項20】
先行する請求項のいずれか1項に記載のベビーカーフレーム(10)を備えることを特徴とするベビーカー(1)。
【請求項21】
命令がプロセッサによって実行されたときに、少なくとも1つのプロセッサに、
-センサデータを提供及び/または受信するステップと、
-前記センサデータの基準値を決定するステップと、
-(少なくとも)1つの測定値を提供及び/または受信するステップと、
-駆動ユニット、特に請求項20に記載のベビーカーの駆動ユニット、及び/または請求項1から19のいずれか1項に記載のベビーカーフレームの駆動ユニットに対して、センサデータ及び基準値を用いて制御コマンドを決定するステップと、
を実施させる命令を含む、
コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
-センサデータを提供及び/または受信するステップと、
-前記センサデータの基準値を決定するステップと、
-少なくとも1つの測定値を提供及び/または受信するステップと、
-駆動ユニット、特に請求項20に記載のベビーカーの駆動ユニット、及び/または請求項1から19のいずれか1項に記載のベビーカーフレームの駆動ユニットに対して、センサデータ及び基準値を用いて制御コマンドを決定するステップと
を含む、制御コマンド決定方法。
【請求項23】
前記制御コマンドは、前記基準値(F1)周辺の許容範囲内に前記サブセットの所定数未満の測定値が存在しない場合、特に前記サブセットの全ての測定値及び/または前記サブセットの測定値の広がりの統計的測定値が前記基準値周辺の許容範囲内に存在する場合に、非駆動状態及び/または制動状態に切り替えるコマンドとして設計されることを特徴とする
請求項22に記載の制御コマンド決定方法。
【請求項24】
前記制御コマンドは、少なくとも所定の数の測定値、特にサブセットの少なくとも1つの測定値及び/またはサブセットの測定値の広がりの統計的測定値が、前記基準値の周囲の許容範囲外にある場合に、駆動コマンドとして設計されることを特徴とする
請求項22乃至23のいずれか1項に記載の制御コマンド決定方法。
【請求項25】
少なくとも1つのプロセッサに、請求項22乃至24のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベビーカーフレーム、ベビーカー、及びコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動式のベビーカーは原理的に知られている。これらは、モータの力によってのみ移動できるように構成することができる。さらに、原則として、ベビーカーを操作する人の駆動力を補助するが、操作者が力を加えていないときは補助を与えないモータアシストをベビーカーに装備することが知られている。
【0003】
また、操作者がベビーカーに手をかけていないときには、ベビーカーにブレーキをかけることが必要である。これにより、ベビーカーが不注意で転がり落ちたり、制御不能な方法で前進し続けたりすることを防ぐことができる。
【0004】
先行技術には、操作者がベビーカーに手をかけているかどうかを検出するための様々な解決策が含まれている。例えば、EP 2 805 867 B1から、ベビーカーのプッシュハンドルに手を検出する静電容量式センサを装備することが知られている。
【0005】
しかし、EP 2 805 867 B1の解決策では、手袋を着用している操作者が効果的に検出されないという欠点がある。
【0006】
さらに、DE 299 01 834 U1から、操作者がベビーカーを押しているかどうかを確認するために、ベビーカーのハンドルに機械的なスイッチを取り付けることが知られている。しかし、この解決策には、例えばジャケットなど、ベビーカーのハンドルに置かれた物品がスイッチを作動させる可能性があるため、ベビーカーの安全な操作が保証されないという欠点がある。
【発明の概要】
【0007】
そこで、本発明の目的は、ベビーカーフレーム、特にベビーカーの安全性を向上させることである。特に、本発明の目的は、操作者がベビーカーのフレームまたはベビーカーを把持しているかどうかの検出を改善することである。特に、本発明の目的は、操作者とベビーカーフレームまたはベビーカーとの間の接触の誤った検出を減らすことである。
【0008】
その目的は、請求項1に記載のベビーカーフレーム、請求項15に記載のベビーカー、及び請求項16に記載のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体によって達成される。
【0009】
特に、その目的は、
- センサデータを取得するセンサユニットと、
- 駆動ユニットと、
を備えるベビーカーフレームであって、
演算ユニットが提供され、前記演算ユニットが、経時的なセンサデータの曲線の関数として、駆動状態と非駆動状態との間で切り替わるように設計されていることを特徴とする。特に、前記駆動ユニットは、(駆動状態から)非駆動状態に切り替えるように設計されており、かつ/または、(非駆動状態から)駆動状態に切り替えるように設計されている。
【0010】
本発明の1つの核心的概念は、非駆動状態と駆動状態のどちらを想定すべきかを判断するために、時間経過に伴うセンサデータの曲線を考慮することである。そのため、非駆動状態や駆動状態への切り替えには、1つの時点や1つのセンサ信号のみを使用することは意図していない。経時的な曲線を考慮することで、センサユニットによって実質的に静的な信号が検出されているのか、動的に変化する信号が検出されているのかを判断することができる。静的な信号は、人がベビーカーフレームを押していないことを示す場合がある。対照的に、動的に変化する信号は、人がベビーカーフレームを押していることを示すことがある。一実施形態では、非駆動状態は、制動状態として設計されてもよい。制動状態とは、ベビーカーフレームを積極的に減速させたり、停止させたりすることを特徴とすることができる。また、非駆動状態には、ベビーカーフレームの積極的な駆動がない場合、例えばアイドルモードが含まれていてもよい。
【0011】
センサユニットは、例えば、力センサまたはトルクセンサであってもよい。センサユニットは、≧5Hzまたは≧10Hzまたは≧15Hz及び/または≦200Hzまたは≦100Hzのサンプリング周波数でセンサデータを取得するように設計されてもよい。
【0012】
一実施形態では、演算ユニットは、センサデータ、特にセンサデータの少なくとも1つの時間的に連続したサブセットについて、少なくとも1つの基準値を決定するように設計されていてもよい。
【0013】
センサデータのサブセットは、特定の期間のセンサデータで構成されていてもよく、例えば、センサデータの時間的に連続したサブセットは、センサデータの0.5秒の部分であってもよい。また、期間が<0.2秒、<0.5秒、≦0.8秒、≦1秒、≦2秒及び/または≦5秒であることも考えられる。
【0014】
一実施形態では、時間的に直接連続するサブセットは、そこに取り込まれた測定値に関して重複することがある。例えば、少なくとも1つの測定値と、最大で1つを除く全ての測定値とが、両方のサブセットに取り込まれてもよい。一実施形態では、追加または代替として、時間的に直接連続するサブセットが、そこに取り込まれた測定値に関して重複しないことが提供される。例えば、一方のサブセットに含まれる測定値は、他方のサブセットには含まれない。特に、重ならない時間的に連続するサブセットは、先のサブセットに取り込まれた最後の測定値の後に、後のサブセットに取り込まれた最初の測定値が直接続くように設計することができる。
【0015】
基準値を形成することで、演算ユニットが、センサデータのカーブと基準値の時間経過の関数として切り替えを実行できるという利点がある。このようにして、センサデータのサブセットの基準量が決定され、1つまたは複数の現在の測定値と比較することができる。これにより、計算が簡単になる。
【0016】
一実施形態では、基準値は、平均値、例えば、トリム平均値、調和平均値または加重調和平均値を示すことができる。
【0017】
したがって、基準値は、センサデータの連続したサブセットの個々のセンサ値の(一種の)要約を提供してもよい。その結果、個々のセンサデータを基準値に関連して設定することができ、その結果、非駆動状態または駆動状態への効率的な切り替えが可能となる。一実施形態では、センサデータは、複数の測定値を示し、それぞれの測定値には記録時間が関連付けられ得る。
【0018】
センサデータを効率的に保存するために、測定値のそれぞれが記録時間と関連付けられていてもよい。これにより、測定値を一定の順序でデータ構造に格納する必要がなくなる。また、時間によって時系列に戻すことができるため、任意のデータ構造に測定値を保存することができる。
【0019】
ただし、保存には、固定サイズで、例えば、1つのサブセットに含まれる測定値の数を少なくともまたは正確に保存するように設計されたデータ構造を使用することも可能である。データ構造は、FIFO(First In - First Out)の原則に従って動作し、新しい測定値が格納されるたびに、最も古い測定値が削除されるようになっていてもよい。
【0020】
一実施形態では、時間的に連続した測定値の数は、センサデータの時間的に連続したサブセットを形成してもよい。
【0021】
一実施形態では、測定値は、力及び/またはトルクを示してもよい。
【0022】
したがって、センサユニットは、力センサ及び/またはトルクセンサであることが可能である。それに応じて、センサユニットは、力の値及び/またはトルクの値を出力するように設計されてもよい。特に、複数のセンサユニットが設けられ、少なくとも1つの力センサ及び/または1つのトルクセンサが設けられ、演算ユニットが、力センサ及び/またはトルクセンサからのセンサデータの経時的な曲線の関数として、駆動ユニットを適切な状態(非駆動状態または駆動状態)に切り替えるように設計されていることが可能である。
【0023】
一実施形態では、演算ユニットは、少なくとも第1の所定数の測定値が基準値の周りの許容範囲外にない場合、特にサブセットの全ての測定値が基準値の周りの許容範囲内にある場合に、駆動ユニットを非駆動状態に切り替えるように設計されてもよく、及び/または、少なくとも第1の所定数の測定値、特にサブセットの測定値の少なくとも1つが許容範囲外にある場合に、駆動ユニットを駆動状態に切り替えるように設計されてもよい。
【0024】
一実施形態では、演算ユニットは、測定値の広がりの統計的測定値が基準値の周りの許容範囲内にある場合に、駆動ユニットを非駆動状態に切り替えるように設計されていてもよく、及び/または、測定値の広がりの統計的測定値が許容範囲外にある場合に、駆動ユニットを駆動状態に切り替えるように設計されていてもよい。
【0025】
一実施形態では、演算ユニットは、複数の、例えば2つ、3つ、5つ、または10個の連続したサブセットを考慮に入れて、非駆動状態への切り替えを実行するように設計されていてもよく、特に、考慮に入れられたサブセットのうち、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または全てのサブセットの測定値が前述の条件のいずれかを満たす場合に、切り替えが実行されてもよい。
【0026】
したがって、許容範囲とは、第1の所定数以下の測定値が配置されるべきウィンドウ(またはウィンドウの一種)を示し、特に、センサユニットからの信号が実質的に静的であるとみなされるためには、考慮された期間における全ての測定値が配置されなければならない。少なくとも第1の所定数の測定値、特に少なくとも1つの測定値がこの許容範囲外にある場合、動的に変化する力がセンサユニットに作用している、すなわち実質的に動的な信号が存在していると仮定することができる。ユーザがベビーカーのフレーム上でセンサユニットに触れると、記録された力の変動が大きくなる。したがって、高度な広がり(例えば、分散または広がりの別の統計的尺度)が確認された場合、人がベビーカーフレームと相互作用していることが想定される。力の大きさがほぼ一定の場合は、例えば、センサに何か物体が作用している可能性がある。例としては、ベビーカーのフレームに掛けられたジャケットなどが考えられる。
【0027】
一実施形態では、演算ユニットは、少なくとも第1の所定数の測定値、特にサブセットの測定値のうちの少なくとも1つが許容範囲外にある場合に、駆動ユニットを駆動状態に切り替えるように設計されていてもよい。
【0028】
一実施形態では、演算ユニットは、駆動状態の駆動ユニットによるベビーカーフレームの駆動を許可するように設計されている。したがって、駆動状態への切り替え時に、駆動ユニットも実際に動的になるとは限らない。むしろ、実際の起動は、例えば、平均的な押し力の大きさ、少なくとも1つの車輪の回転など、さらなるパラメータに依存してもよい。さらに、駆動状態は、ベビーカーフレームのユーザが駆動デバイスを起動できることを示してもよい。
【0029】
一実施形態では、駆動状態への切り替え時に、演算ユニットが、直接的または間接的に駆動装置を起動するように設計されていること、及び/または、駆動装置に電力を供給するように設計されていることを提供してもよい。この実施形態では、駆動ユニットの起動は、ベビーカーフレームの駆動を含んでいてもよい。
【0030】
別の実施形態では、演算ユニットは、測定値の広がりの統計的測定値が基準値の周りの許容範囲外にある場合に、駆動ユニットを駆動状態に切り替えるように設計されてもよい。
【0031】
一実施形態では、演算ユニットは、複数の、例えば2つ、3つ、5つ、または10個の連続したサブセットを考慮して、駆動状態への切り替えを実行するように設計されていてもよく、特に、考慮されたサブセットのうちの少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または全てのサブセットの測定値が前述の条件のいずれかを満たす場合に、駆動状態への切り替えが実行されてもよい。
【0032】
また、人がベビーカーフレームと対話していることを確認すると、駆動ユニットがベビーカーフレームを駆動することも可能である。これは、駆動ユニットがベビーカーフレームを補助的に、または完全に動かすことを意味する。
【0033】
許容範囲は、力の間隔であってもよく、基準値の周りに最大で±30ニュートン、最大で±40ニュートン、または最大で±100ニュートンの許容範囲を考慮すると有利であることが分かっている。
【0034】
一実施形態では、許容範囲を基準値の関数として選択することも可能である。例えば、許容範囲が基準値の最大で±5%であることが可能である。他の実施形態では、公差間隔が基準値の最大で±10%、基準値の最大で±20%、または基準値の最大で±50%であることも可能である。
【0035】
センサデータの1つのサブセット、特に上記の、好ましくは時間的に連続したサブセットは、少なくとも1つのインターバルをカバーしてもよく、各インターバルは、少なくとも2つの測定値を含み、少なくとも2つの測定値のうちの少なくとも1つ、特に1つを除く全ての測定値は、駆動ユニットの電力供給状態で記録され、少なくとも2つの測定値のうちの少なくとも1つ、特に正確に1つの測定値は、駆動ユニットの非電力供給状態で記録される。上記演算ユニットは、駆動ユニットの非電源状態で記録されたサブセットの少なくとも第1の所定数の測定値が、基準値の周囲の許容範囲外にない場合に、駆動ユニットを非駆動状態に切り替えるように設計されており 特に、駆動ユニットの非電源状態で記録されたサブセットの全ての測定値が基準値周辺の許容範囲内にある場合、及び/または、少なくとも第1の所定数、特に、駆動ユニットの非電源状態で記録されたサブセットの測定値の少なくとも1つが許容範囲外にある場合、駆動ユニットを駆動状態に切り替える。
【0036】
センサデータの1つのサブセット、特に上記の、好ましくは時間的に連続したサブセットは、少なくとも1つの区間をカバーしてもよく、各区間は、少なくとも2つの測定値を含み、少なくとも2つの測定値のうちの少なくとも1つ、特に1つを除く全ての測定値が、駆動ユニットの電源が入っている状態で記録され、少なくとも2つの測定値のうちの少なくとも1つ、特に正確に1つの測定値が、駆動ユニットの非電源状態で記録される。上記演算ユニットは、駆動ユニットの非電源状態で記録されたサブセットの測定値の広がりの統計的測定値が基準値の周りの許容範囲内にある場合に、駆動ユニットを非駆動状態に切り替えるように、及び/または、駆動ユニットの非電源状態で記録されたサブセットの測定値の広がりの統計的測定値が許容範囲外にある場合に、駆動ユニットを駆動状態に切り替えるように設計されている。
【0037】
一実施形態では、ベビーカーフレームは、プッシャー部を含んでもよく、このプッシャー部は、ベビーカーフレームを押すためにユーザによって使用されるように設計されてもよい。一実施形態では、センサユニットは、ユーザがプッシャー部に片手を置いたときに、ユーザの手と接触するようにプッシャー部に配置されてもよい。
【0038】
したがって、センサユニットは、ユーザの手と直接接触できるように配置されていてもよい。このようにして、ユーザとベビーカーフレームとの相互作用を確実に検出することができる。
【0039】
さらなる実施形態では、センサユニットは、プッシャーユニットをベビーカーフレームの枠組みに接続する接続部に配置されてもよい。この場合、センサユニットは、プッシャー部から枠組みに作用する力を測定するように設計されてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、センサユニットとユーザとの直接的な相互作用を防ぐことができるので、誤操作による破損を防ぐことができる。
【0041】
なお、駆動ユニットの設計は様々な方法で行うことができる。例えば、駆動ユニットは、電気モータとブレーキから構成され、駆動ユニットが非駆動状態に切り替えられたときに、演算ユニットによってブレーキユニットまたはブレーキが起動されるようにしてもよい。しかし、さらなる実施形態では、駆動ユニットが電気モータで構成されている場合、電気モータを発電機として作動させたり、ブレーキ、特に回生ブレーキとして使用したりすることも考えられ、回生ブレーキは電気エネルギーをアキュムレータに供給するように設計されている。これにより、モータに加えて、さらなるブレーキやブレーキプロセスが必要ないという利点がある。
【0042】
一実施形態では、ベビーカーフレームは、少なくとも3つの車輪を含んでいてもよく、駆動ユニットは、車輪のうちの少なくとも1つを駆動及び/またはロックするように配置及び設計されていてもよい。
【0043】
ベビーカーのフレームは、さまざまな設計が可能である。3つの車輪だけでなく、4つの車輪の構成も提供できる。このように、非常に汎用性の高いソリューションが提供される。
【0044】
一実施形態では、ベビーカーフレームは枠組みで構成され、その上にプッシャー部及び/または少なくとも3つの車輪を配置することができる。
【0045】
プッシャー部及び車輪は、枠組みに取り付けられてもよく、これにより、ベビーカーフレームに安定性が与えられる。
【0046】
一実施形態では、プッシャー部は、接続要素及び/または接続部分を介して枠組みに接続可能なように設計されていてもよく、センサユニットは、接続要素または接続部分に配置されていてもよい。
【0047】
したがって、プッシャー部と枠組みとの間の力を介して、プッシャー部とユーザの相互作用を間接的に検出することができる。
【0048】
一実施形態では、枠組みは、少なくとも1つのヒンジ部を含んでいてもよく、プッシャー部は、ヒンジ部の周りで回転可能に設計されていてもよい。
【0049】
ベビーカーフレームを折り畳んでコンパクトな持ち運びサイズを実現するために、プッシャー部は折り畳み可能に設計されていてもよい。この目的のために、プッシャー部は、ヒンジ部の周りで回転可能である。
【0050】
一実施形態では、センサユニットは、ヒンジ部に配置されてもよい。
【0051】
したがって、ユーザとベビーカーのフレームとの相互作用を、ヒンジ部で測定されるトルクを介して間接的に検出することができると考えられる。これは、相互作用を確認するための更なる可能な方法を提供する。センサユニットをヒンジ部に配置することで、コンパクトなサイズを選択でき、外部からの影響を受けずに安全に配置できるという利点がある。また、プッシャー部に複雑な配線を施す必要もない。
【0052】
一実施形態では、枠組みは、特にヒンジ部を使用して、展開された構成から折り畳まれた構成に折り畳めるように設計されてもよい。
【0053】
一実施形態では、センサユニットは、枠組みの展開された構成において、駆動ユニット及び/または演算ユニットに通信的及び/または電気的に接続されていてもよく、及び/または、センサユニットは、枠組みの折り畳まれた構成において、駆動ユニット及び/または演算ユニットに通信的及び/または電気的に接続されていなくてもよい。
【0054】
一実施形態では、展開された構成は、完全に展開された構成または部分的に展開された構成であってもよい。一実施形態では、折り畳まれた構成は、完全に折り畳まれた構成であってもよいし、部分的に折り畳まれた構成であってもよい。
【0055】
駆動装置は、ベビーカーフレームまたは枠組みを折り畳むことによって、容易に非作動にすることができる。
【0056】
本目的は、上述のようなベビーカーフレームを備えるベビーカーによっても達成される。
【0057】
ベビーカーフレームに関連して既に説明したものと同様または同一の利点が達成される。
【0058】
本目的は、特に、命令がプロセッサによって実行されたときに、少なくとも1つのプロセッサに以下のステップを実施させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体によっても達成される。
- センサデータを提供及び/または受信するステップ;
- 前記センサデータの基準値を決定するステップ;
- (少なくとも)1つの測定値を提供及び/または受信するステップ;
- センサデータ及び基準値を用いて、特に上述したように、駆動ユニット、特にベビーカー及び/またはベビーカーフレームの駆動ユニットに対する制御コマンドを決定するステップ。
【0059】
本目的は、特に、以下のステップを含む制御コマンドを決定するための方法によっても達成される。
- センサデータを提供及び/または受信するステップ;
- 前記センサデータの基準値を決定するステップ;
- 少なくとも1つの測定値を提供及び/または受信するステップ;
- 前記センサデータ及び前記基準値を用いて、上述のように、特にベビーカー及び/またはベビーカーフレームの駆動装置に対する制御コマンドを決定するステップ。
【0060】
一実施形態では、制御コマンドは、少なくとも第1の所定数の測定値が基準値の周りの許容範囲外にない場合、特にサブセットの全ての測定値が基準値の周りの許容範囲内にある場合、及び/またはサブセットの測定値の広がりの統計的測定値が基準値の周りの許容範囲内にある場合に、非駆動状態及び/または制動状態に切り替えるためのコマンドとして設計されてもよい。
【0061】
一実施形態では、制御コマンドは、少なくとも第1の所定数の測定値、特にサブセットの少なくとも1つの測定値及び/またはサブセットの測定値の広がりの統計的測定値が、基準値の周りの許容範囲外にある場合に、駆動コマンドとして設計されてもよい。
【0062】
ベビーカーフレームに関連して既に説明したものと同様または同一の利点が達成される。
【0063】
本目的は、特に、少なくとも1つのプロセッサによって命令が実行されたときに、少なくとも1つのプロセッサに上述の方法を実施させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体によっても達成される。
【0064】
本方法に関連して既に説明したものと同様または同一の利点が達成される。
【0065】
さらなる実施形態は、従属請求項から明らかになるであろう。
【0066】
以下、例示的な実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。図で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、ベビーカーのフレームの概略図である。
【
図2】
図2は、センサユニットの様々な可能な配置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、例示的なセンサデータを表示するグラフである。
【
図4】
図4は、別の例示的な実施形態におけるセンサデータを表示するさらなるグラフである。
【
図5】
図5は、制御コマンドを決定する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下では、同一の部品や同じ機能を持つ部品には同じ参照符号を用いる。
【0069】
図1は、4つの車輪2を備えたベビーカー1を示している。2つの前輪2は、前輪サスペンション18を備えたそれぞれのホイールマウント3を介して、ベビーカー1に接続されている。ベビーカー1の前部領域では、ベビーカー1上の車輪2を安定させるために、前輪支柱19が車輪マウント3の間に配置されている。
【0070】
前輪2のホイールマウント3は、前輪サスペンション18を介して、調整装置15に接続されている。調整装置15は、前輪2の上方に配置され、後方に向かってオフセットされている。また、調整装置15には、後輪サスペンション17が配置されており、この後輪サスペンション17には、後輪2が後輪軸24上に配置されている。後輪軸のほぼ中央には、足で操作できるように設計されたパーキングブレーキ20が配置されている。パーキングブレーキ20は、後輪をロックするためのものである。パーキングブレーキ20を解除することによってのみ、これらを再び動かすことができる。
【0071】
図示の例示的な実施形態では、後輪を駆動するための2つの電気モータ21が、後輪車軸24の両端に配置されている。しかし、他の例示的な実施形態では、1つのモータが、シャフト及び/またはトランスミッションを介して両輪を駆動することも考えられている。
【0072】
図1に示す例示的な実施形態では、後輪車軸24は中空円筒として設計されており、後輪車軸24に配置されているのはアキュムレータ23であり、このアキュムレータ23は電気モータ21に電気的に接続されている。あるいは、後輪軸24を支柱として設計し、その下にアキュムレータ23を部分的にでも配置するようにしてもよい。制御電子機器は、さらに、後輪車軸24内または上に配置されてもよく、この制御電子機器は、モータ21の機能を制御するように設計されている。
【0073】
また、調整装置15には保持装置25が配置されており、この保持装置25は、収容手段(例えば、シートシェル、シートユニットまたはキャリーコット)を受け入れるようになっている。
【0074】
調整装置15は、装置全体としての安定性を確保するために、横方向の支柱16を介して互いに接続されている。また、調整装置15には、プッシャー受け装置26が配置されており、このプッシャー受け装置26は、斜め上方及び斜め後方に延びており、接続要素14を介してプッシャー装置に接続されている。プッシャー装置は、プッシャー受け装置26に変位可能に配置された2つの側部支柱13,13’から構成されている。側部支柱13,13’は、連結要素14を介して位置を固定することができる。側部支柱13,13’の端部には、ユーザがベビーカー1を押すために握ることのできるプッシャー部12が配置されている。
【0075】
図2は、センサユニット30、30’、30’’、30’’’をベビーカー1に配置する様々な可能な方法を示している。例えば、
図2は、第1のセンサ領域31を示しており、図示の例示的な実施形態では、ベビーカー1のプッシャー部分を構成している。力センサ30、30’は、第1センサ領域31に配置されていてもよい。力センサ30は、力を測定するようになっているセンサであってもよい。そのため、力センサ30は、力に変換可能な信号を出力する。
【0076】
図示の例示的な実施形態では、力センサ30は、ベビーカー1のユーザとの相互作用を検出できるように、ベビーカー1のプッシャー部の第1のセンサ領域31に配置されている。1つの例示的な実施形態では、力センサ30はプッシャー部12に一体化されており、力センサ30の接触面は、ベビーカー1の操作者の方を向くように配向されている。
【0077】
センサユニット30をプッシャー部に取り付ける以外にも、さらなる例示的な実施形態では、プッシャー部12がベビーカー1の側部支柱13、13’に接続される接続領域に力センサ30’を配置することも可能である。この場合、プッシャー部12は、側部支柱13、13’に変位可能に配置されてもよく、締結要素または接続要素14’を介して所定の位置に固定されてもよい。ユーザによってプッシャー部12に加えられる力を測定するために、センサユニット、例えば力センサ30’が、接続要素14’に配置されてもよい。力センサ30,30’はまた、細長い態様で設計されてもよく、したがって、プッシャー部12の領域と、接続領域の領域との両方をカバーしてもよい。
【0078】
図2はまた、センサユニット30’’が側部支柱13、13’の連結要素に配置されている第2の例示的な実施形態を、重ね合わせて示している。
【0079】
別の例示的な実施形態では、センサユニット30’’’が、調整装置15上の第3のセンサ領域33または33’に配置されている。これは、好ましくは、トルクセンサ30’’’である。トルクセンサ30’’’は、ユーザによってプッシャー部12または側部支柱13,13’に及ぼされる力によって生じるトルクを測定するようになっている。
【0080】
後輪車軸24には、センサユニット30,30’,30’’,30’’’と通信可能に接続された演算ユニット34が配置されている。演算ユニット34は、センサユニット30,30’,30’’,30’’’によって生成されたセンサデータを受信し、処理するように設計されている。データの処理は、
図3及び
図4に詳細に示されている。
【0081】
図3は、力センサ30,30’,30’’の信号曲線を示しており、これは時間の経過とともに力線
図40で示されている。X軸には時間T[s]がプロットされ、Y軸には力Fがプロットされている。力線
図40には、センサユニット30,30’,30’’によって検出された複数の測定値43がプロットされている。測定値43は、まとめてセンサデータ41を形成する。
【0082】
X軸には、時刻t
0、t
0+1、t
0+2、t
1がプロットされている。人がベビーカー1に手を添えているかどうかを把握するために、演算装置34は、測定値42の時間的に連続した範囲を考慮するように設計されている。一例として、
図3は、0.5秒の期間のセンサデータ42のサブセットを示している。
【0083】
時刻t
1における現在の測定値43’が、ユーザとベビーカー1との相互作用を示しているかどうかを判断するために、測定値43’の前の時間間隔に位置する測定値42について基準値F1が計算され、当該基準値は、時間間隔におけるセンサ値の平均値を示している。さらに、基準値F1の周囲には許容範囲44が設定される。
図3の例示的な実施形態では、公差間隔44は、基準値F1に対して±30ニュートンとして設定されている。
【0084】
そして、測定値43’を処理する際には、この測定値が許容区間44内にあるかどうかがチェックされる。
図3に示すように、現在の測定値43’は、許容範囲44の外にある。これは、先行する値と比較して、力が大幅に増加していることを意味する。このことから、ユーザがベビーカー1と対話していることが推察される。このように、測定値43’は、ベビーカー1が人によって押されている、または保持されていることを示している。
【0085】
図1及び
図2に関連して説明した演算ユニット34は、測定値43’が許容区間44の外側にあることが判明したことに応答して、モータ21を駆動状態に切り替えるように設計されている。これは、モータがベビーカーフレームまたはベビーカー1を駆動することを意味する。
【0086】
許容範囲外のサブセットの複数の測定値(例えば、2つまたは3つまたは5つの測定値)を必要とする他の実施形態では、同じデータが、モータを非駆動状態に切り替えることにつながる可能性がある。しかし、基本的には以下のようになる。測定値に属する力曲線を可視化することで、例えばサンプリング周波数を3倍にした場合、複数の測定値、おそらく3つ程度の測定値が許容範囲外になることがわかる。この場合、許容範囲を広げるか、第1の所定の数を1より大きい値に設定することが有効である。
【0087】
別の例示的な実施形態では、演算ユニット34は、測定値42が広がっているかどうかをチェックする。これは、演算ユニットが、広がりの統計的尺度を計算するように設計されていることを意味する。
図3の例では、演算ユニット34は、測定値42の分散を計算するように設計されていてもよい。算出された分散が許容範囲外であれば、演算ユニット34によってモータ21が駆動状態に切り替えられる。最後に述べた例では、したがって、切り替えは、1つの単一の測定値に依存するのではなく、むしろ、ある間隔での測定値の間の比率に依存する。その結果、より強固なユーザインタラクションの検出が可能となる。
【0088】
図4は、モータ21が駆動状態に切り替わる例を示している。
図4は、同様に、力がY軸にプロットされ、時間がX軸にプロットされた力線
図41を示している。力線
図41には、多数の測定点43が示されている。
図3に関連して既に説明したように、基準値F1は、現在測定されている測定値43’に先立って、所定の時間間隔で決定される。
図4に示す例示的な実施形態では、時間間隔は0.4秒である。また、センサが測定値43を記録するサンプリング周波数は20Hzである。
図3の説明と同様に、基準値F1の周囲には許容範囲44’が設定されている。
図4の例示的な実施形態では、公差間隔44’の限界は、基準値F1の値の±20%に対応するように選択される。したがって、許容範囲は、基準値F1に動的に適応する。
【0089】
図4に示す例示的な実施形態では、現在測定されている測定値43’は、許容範囲44’内にある。しかし、時間間隔内の(少なくとも)1つの値が許容範囲外にあり、したがって、演算ユニット34は、十分に変動する力及び/または十分に変動するトルクがセンサユニットに作用しているので、人がベビーカー1と相互作用している可能性が高いため、モータを駆動状態に切り替える必要があると判断する。
【0090】
また、上述した例と類似した方法で、演算ユニット34は、ある区間の測定値42の分散が許容区間44’内にあるかどうかを計算してもよい。演算ユニット34は、時間間隔の測定値の分散が許容区間44’内にあれば、モータを非駆動状態または制動状態に切り替えるようになっている。
【0091】
図示されていない別の例示的な実施形態では、センサユニットが、50Hzの周波数で力またはトルクを検出するように設計されていることが考えられる。ある回数の測定の後、例えば5回の測定の後(一般的には、n回の測定の後、ここでnは2から100の間、またはヘルツで指定された測定周波数の2から2倍の間であるべきである;本出願の文脈では、2から100の間の全ての整数値n、及びヘルツで指定された測定周波数の2から2倍の間の全ての整数値が本開示によってカバーされることが提供される)、モータ21への電力が1回の測定のために中断される。少なくとも5つ、好ましくは3つの間隔で、モータ21への電力供給なしで測定値が記録されると、非電力状態での値の平均値(例えば算術平均)が形成される。非電源状態における測定値のうち、少なくとも第1の所定数が平均値(算術平均)、すなわち基準値の周囲の許容区間外にない場合、特に、非電源状態における測定値の全てが平均値の周囲の許容区間内にある場合、モータ21は非駆動状態または制動状態に切り替えられる。
【0092】
少なくとも第1の所定数の測定値、特に少なくとも1つの測定値が許容区間の外側、例えば±25ニュートンの外側にある場合、ユーザがベビーカー1と対話している可能性が高いことが確認され、モータ21が駆動状態に切り替えられる。算術平均を算出するには、測定値の絶対値を求めて使用する。
【0093】
上述した例と類似した方法で、演算ユニット34が、非動力状態の値の分散の統計的尺度を計算することも可能である。スプレッドの統計的尺度(分散)が許容範囲内にある場合、モータ21は非駆動状態に切り替えられる。スプレッドの統計的測定値(分散)が許容範囲外にある場合、演算ユニット34によってモータ21が駆動状態に切り替えられる。
【0094】
同様に図示されていない第4の例示的な実施形態では、基準値の周りの第2の許容区間を、例えば±15ニュートンのように定義することができる。したがって、第2の許容範囲は、第1の許容範囲の内側にある。非駆動状態における少なくとも第2の所定数の測定値が第2の許容区間の外側にない場合、特に、非駆動状態における全ての測定値が第2の許容区間の内側にある場合、ブレーキは(モータ21を非駆動状態に切り替えることに加えて)積極的に作動する。
【0095】
図5は、操作者がベビーカーのフレームと対話しているかどうかを判断する方法を示す流れ
図50である。まず、判定ステップ52では、センサデータを受信して処理する。判定ステップでは、基準値53が計算され、これは例えばセンサデータ51の平均値を示すことができる。
【0096】
続く比較ステップ55では、現在の測定値54が受信され、基準値と比較される。間隔決定ステップ57では、基準値の周りに許容間隔が設定される。このためには、基準値の値を考慮に入れることができる。つまり、基準値が大きい場合には、大きな許容間隔が決定され、基準値が小さい場合には、小さな許容間隔が決定されることになる。
【0097】
さらに、現在の測定値54と間隔制限の間のギャップ58が決定される。チェックステップ59では、現在の測定値54または考慮された時間間隔の他の測定値の少なくとも1つが許容範囲の外側にあるかどうか(一般的には:考慮された時間間隔の測定値の少なくとも第1の所定数の合計が許容範囲の外側にあるかどうか)がチェックされる。現在の測定値54及び考慮された時間間隔の他の全ての測定値が許容範囲内にある場合(一般的には:考慮された時間間隔の第1の所定の数より少ない測定値が許容範囲外にある場合)、制動ステップ61においてベビーカーのモータが非駆動状態に切り替えられる。例示的な一実施形態では、ベビーカー1が停止するように、モータが制動状態に切り替えられる。現在の測定値54または考慮された時間間隔における他の測定値の少なくとも1つが許容範囲外にあることが確認された場合(一般的には:考慮された時間間隔における少なくとも第1の所定数の測定値の合計が許容範囲外にある場合)、モータが駆動状態に切り替えられて、ベビーカーがモータによって完全にまたは補助的に駆動されるようになる。
【0098】
また、本発明は、演算処理装置が、ベビーカーフレームまたはベビーカーに通信可能に接続されたサーバによって具現化されるシナリオを明示的に包含する。例えば、センサデータのみを通信装置を介してサーバに送信することができ、その際、全ての計算ステップがサーバ上で実行され、ベビーカー及び/または通信装置への制御コマンドが送り返される。
【0099】
参照番号のリスト
1 ベビーカー
2 ホイール
3 ホイールマウント
10 ベビーカーフレーム
11 枠組み
12 プッシャー部
13、13’ 側部支柱
14,14’ 連結要素
15 調整装置
16 横方向の支柱
17 後輪サスペンション
18 フロント・ホイール・サスペンション
19 前輪ストラット
20 パーキングブレーキ
21 モータ
22 制動装置
23 アキュムレータ
24 後輪アクスル
25 保持装置
26 プッシャー受け装置
31 第1センサ領域
32,32’ 第2センサ領域
33,33’ 第3センサ領域
34 演算ユニット
30、30’、30’’ 力センサ
30’’’ トルクセンサ
40 力線図
41 センサデータ
42 センサデータのサブセット
43,43’ 測定値
44 許容範囲
50 流れ図
51 センサデータ
52 決定ステップ
53 基準値
54 現在の測定値
55 比較ステップ
56 偏差値
57 インターバル判定ステップ
58 インターバルリミットまでのギャップ
59 チェックステップ
60 駆動ステップ
61 ブレーキステップ
F1 平均値
F 力軸
T[s] 時間軸
t0 最初の計測時間
t1 今回の計測時間
S1 非走行状態/制動状態
S2 走行状態
【国際調査報告】