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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】整形外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61F5/02 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502508
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069984
(87)【国際公開番号】W WO2021013650
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019119645.0
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】トゥーテマン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フォゲル、カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ボーンマン、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】シアマイスター、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ミツェラ、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】パース、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クロイテル、マイケ
(72)【発明者】
【氏名】マルクァルト、シャルロッテ
(72)【発明者】
【氏名】クリンケルト、パウラ
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA10
4C098BB08
4C098BC02
4C098BC50
4C098BD16
(57)【要約】
本発明は、利用者の下背部を支えるための整形外科用器具であって、器具は、-機械的エネルギー貯蔵器(18)と、-骨盤要素(6)と、-第1の力伝達要素(26)を有する上半身要素(4)と、-第2の力伝達要素(28)を有する大腿要素(2)と、を備え、・大腿要素(2)が第1の旋回軸(14)を中心に旋回可能に骨盤要素(6)に配置され、・上半身要素(4)が骨盤要素(6)に相対して可動に配置され、・上半身要素(4)が骨盤要素(6)に相対して動かされることにより、第1の力伝達要素(26)を第2の力伝達要素(28)と、係合及び係合解除させることができ、・第1の力伝達要素(26)が第2の力伝達要素(28)と係合している場合に、大腿要素(2)を上半身要素(4)に相対して旋回させることにより、機械的エネルギー貯蔵器(18)が蓄積可能及び放出可能である、整形外科用器具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の下背部を支えるための整形外科用器具であって、前記器具は、
-機械的エネルギー貯蔵器(18)と、
-骨盤要素(6)と、
-第1の力伝達要素(26)を有する上半身要素(4)と、
-第2の力伝達要素(28)を有する大腿要素(2)と、を備え、
・前記大腿要素(2)が第1の旋回軸(14)を中心に旋回可能に前記骨盤要素(6)に配置され、
・前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に相対して可動に配置され、
・前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に相対して動かされることにより、前記第1の力伝達要素(26)を前記第2の力伝達要素(28)と係合及び係合解除させることができ、
・前記第1の力伝達要素(26)が前記第2の力伝達要素(28)と係合している場合に、
前記大腿要素(2)を前記上半身要素(4)に相対して旋回させることにより、前記機械的エネルギー貯蔵器(18)が蓄積可能及び放出可能である、整形外科用器具。
【請求項2】
前記第1の力伝達要素(26)は、第2の旋回軸を中心に偏心旋回可能に前記骨盤要素(6)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の整形外科用器具。
【請求項3】
前記上半身要素(4)は、前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に相対して動かされる場合に、前記第2の旋回軸を中心に前記第1の力伝達要素(26)を旋回させるように前記第1の力伝達要素(26)と接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の整形外科用器具。
【請求項4】
前記上半身要素(4)と前記第1の力伝達要素(26)は、互いに対応する接続要素(20、22)を有し、それにより前記上半身要素(4)を複数のポジションで前記第1の力伝達要素(26)と接続可能であることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の整形外科用器具。
【請求項5】
前記器具が変位器具(36)を有し、前記変位器具は、前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に対して予め定められた限界角度より小さい角度をなす場合に、前記第1の力伝達要素(26)及び/又は前記第2の力伝達要素(28)を互いに向かって動かすように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の整形外科用器具。
【請求項6】
前記変位器具(36)は、前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に対して予め定められた限界角度より大きい角度をなす場合に、前記第1の力伝達要素(26)及び/又は前記第2の力伝達要素(28)を互いに離れる方向に動かすように設定されていることを特徴とする、請求項5に記載の整形外科用器具。
【請求項7】
前記上半身要素(4)を前記骨盤要素(6)に相対して動かしたときに前記角度が前記予め定められた限界角度を超える場合に方向が変わる力を互いに作用させるように、少なくとも2つの磁石(34)が前記骨盤要素(6)又は前記大腿要素(2)に配置され、少なくとも1つの磁石(34)がそれぞれ他方の要素に配置されていることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の整形外科用器具。
【請求項8】
前記器具は、前記上半身要素(4)が前記骨盤要素(6)に相対して動かされることにより、前記第1の力伝達要素(26)を前記第2の力伝達要素(28)と係合及び係合解除させることができる能動状態に、及び受動状態にすることができることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の整形外科用器具。
【請求項9】
前記器具が少なくとも1つの操作要素を有し、前記操作要素を操作することによって、前記器具を前記能動状態から前記受動状態に、及び/又はその逆にすることができることを特徴とする、請求項8に記載の整形外科用器具。
【請求項10】
前記機械的エネルギー貯蔵器(18)が少なくとも1つのばね、好ましくは少なくとも1つの渦巻きばねを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の整形外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の下背部を支えるための整形外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、かなり以前より従来技術から知られ、特に持ち上げ時、例えば重いものを持ち上げようとする人を補助するために使用される。それに加えて、この種の装置は、かがんだ姿勢で作業しなければならない人々のために使用される。
【0003】
この種の装置は、例えば米国特許第443113号明細書から知られている。この装置は、着用者の大腿に配置される大腿要素を有する。この装置は肩ベルトにより着用者の上半身にも配置される。肩ベルトと大腿要素との間に板ばね要素があり、かがむと板ばねが曲げられ、それにより位置エネルギーが蓄積される。それにより、板ばね要素が上半身に力を加え、この力が体の伸展を補助する。しかし、生じる力が上半身と大腿との間の角度が変更されるたびに加えられることが不利である。したがって、この力は、例えば階段を上るとき、又は座るときにも加えられ、そのことが少なくとも快適でなく、しかし場合によっては邪魔にもなり、かつ煩わしい。
【0004】
原理的に類似の装置が、例えば米国特許出願公開第2017/0196712号明細書及び米国特許出願公開第2017/0360588号明細書から知られている。しかし、人が体を起こし易くするべく下背部又は上半身を補助する力はいつも加えられるとは限らない。最初に述べた従来技術では、ある程度の傾斜角度を越えて初めて、すなわち装置の上半身要素と装置の大腿要素との間の角度が予め定められた角度を越えた場合に初めて力が加えられる。この角度までは、上半身を大腿に相対して傾けることができ、その際、アクチュエータ又はエネルギー貯蔵器にエネルギーは蓄積されない。それでも、この装置の場合、上半身が大腿に相対して予め定められた限界角度よりも小さい角度をなす場合、すなわち上半身が大腿に相対して傾けられる場合にはいつも補助力が生じる。
【0005】
最後に述べた従来技術から、上半身が垂直線、すなわち重量の力が作用する方向に相対して予め定められた角度をなす場合にはいつも補助力が加えられる装置が知られている。したがって、例えば、装置の着用者が座る場合、その際に上半身が垂直線に対して予め定められた角度を超えない限り、力が加えられることが阻止される。しかし人が座るときに、予め定められた角度を超えるほどに上半身が傾いた場合、補助力が自動的に加えられる。
【0006】
従来技術から、継手の、例えば自由な動きが可能である能動状態から、例えば動きが可能でなくなるか、又は抵抗に抗してしか可能でない受動又は制動状態へ移すことができるいくつかの可能性が知られている。欧州特許第2645958号明細書は、例えば磁気的に切り替えられる継手を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第443113号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0196712号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0360588号明細書
【特許文献4】欧州特許第2645958号明細書
【発明の概要】
【0008】
上記のすべての方向性では、必要とされる、及び要求される場合にのみ力が加えられるということを確実には調整及び達成できず、補助力が必要とされないか、あるいは下背部に負荷がかからないか、又は補助される必要のない状況及び動きも生じ得るという点で不利である。したがって、本発明は、従来技術によるこれらの不利な点を解消するか、又は少なくとも軽減する整形外科用器具を提案するという課題にもとづいている。
【0009】
本発明は、設定された課題を、利用者の下背部を支える整形外科用器具であって、機械的エネルギー貯蔵器と、骨盤要素と、第1の力伝達要素を有する上半身要素と、第2の力伝達要素を有する大腿要素とを備える、器具によって解決する。この場合、大腿要素は、第1の旋回軸を中心に旋回可能に骨盤要素に配置されている。これに加えて、上半身要素は、骨盤要素に相対して可動である。上半身要素が骨盤要素に相対して動かされることにより、第1の力伝達要素を第2の力伝達要素と係合及び係合解除させることができる。第1の力伝達要素が第2の力伝達要素と係合している場合に、大腿要素を上半身要素に相対して旋回させることにより、機械的エネルギー貯蔵器が蓄積可能及び放出可能である。
【0010】
本発明は、例えば着用者の上半身の胸部領域又は背部領域に配置される上半身要素と、着用者の大腿との間の角度が予め定められた角度を下回り、すなわち2つの身体部分が互いに旋回される場合に、下背部がいつも補助を必要とするわけでないという認識にもとづいている。むしろ補助は、着用者の上半身、すなわち例えば胸郭と着用者の骨盤との旋回が生じる場合にのみ必要である。本発明による装置によって、着用者の上半身と骨盤との旋回が生じる場合にはいつも補助力が加えられるということが達成される。これに対して、骨盤に相対する上半身の運動が行われずに、大腿に相対して上半身が旋回される場合は力が加えられるべきでない。
【0011】
その際、第1の力伝達要素と第2の力伝達要素は、これらの力伝達要素が係合している場合に2つの力伝達要素間で力を伝達でき、2つの力伝達要素が係合していない場合には力が伝達されないように形成されている。これに加えて、これらの力伝達要素は、係合と係合解除を何度も行うことができるように形成されている。これは好ましくは2つの形状結合要素及び/又は2つの力結合要素、特に好ましくは2つの摩擦結合要素である。
【0012】
本発明によれば、第1の力伝達要素を第2の力伝達要素と係合させるためには、好ましくは着用者の背部又は胸郭に配置される上半身要素が、好ましくは着用者の骨盤に配置される骨盤要素に相対して動かされなければならない。そうして初めて、エネルギー貯蔵器をさらに旋回させることにより機械的エネルギーを蓄積又は放出することができる。上半身要素を骨盤要素に相対して動かすことなしには、両方の力伝達要素は係合解除したままであり、上半身要素に相対する大腿の動きがエネルギー貯蔵器のエネルギー蓄積を伴うことはない。したがって、伸展を補助する力をもたらすこともできない。
【0013】
好ましくは、機械的エネルギー貯蔵器は、少なくとも1つのばね要素を有するか、又はばね要素である。これに代えて、又はこれに加えて、機械的エネルギー貯蔵器は、少なくとも1つの圧力貯蔵器、空気圧システム及び/又は液圧システム、及び/又は液圧的エネルギー貯蔵器を有する。
【0014】
したがって、整形外科用器具の本発明による形態によって、通常、上半身要素と骨盤要素との間に十分な動きが生じる着座又は階段上りの場合に、伸展を補助する付加的な力がもたらされないことが達成されるのに対して、例えば重いものを持ち上げる場合には補助が達成される。この種の動きの場合、上半身要素が骨盤要素に相対して動かされ、それによって、第1の力伝達要素が第2の力伝達要素と係合される。この状態で、大腿要素が骨盤要素に相対して旋回される場合、機械的エネルギー貯蔵器に位置エネルギーが蓄積され、それによって伸展を補助する力がもたらされる。
【0015】
好ましい一実施形態では、第1の力伝達要素が歯車を有し、歯車は、第2旋回軸を中心に偏心旋回可能に骨盤要素に配置されている。この実施形態では、第2の力伝達要素は、好ましくは回転不可能に大腿要素に配置されている歯車である。
【0016】
好ましくは、上半身要素は、上半身要素が骨盤要素に相対して動かされる場合に、第1の力伝達要素が第2旋回軸を中心に旋回されるように、第1の力伝達要素、特に第1の力伝達要素の歯車と接続されている。この動きによって、第1の力伝達要素の歯車が、好ましくは同様に歯車を有する第2の力伝達要素と接触する、かつ第2の力伝達要素と係合される。この状態で、例えば着用者が膝を折ることにより大腿が上半身に相対して動かされる場合、機械的エネルギー蓄積器に位置エネルギーが蓄積される。
【0017】
その逆の動きの場合、まず、着用者の体の伸展を補助する力が着用者の大腿及び/又は上半身に加えられることにより、この位置エネルギーが再び放たれる。
【0018】
上半身、したがって上半身に取り付けられた上半身要素が骨盤に相対して、したがって骨盤に取り付けられた骨盤要素に相対して戻る動きをして初めて、第1の力伝達要素と第2の力伝達要素との係合が解除され、機械的エネルギー貯蔵器を再び蓄積することも、さらに放出することもできない。
【0019】
有利には、上半身要素と第1の力伝達要素は互いに対応する接続要素を有し、それにより上半身要素を複数のポジションで第1力伝達要素と接続可能である。例えば、上半身要素が、第1の力伝達要素の切欠き又は凹部に挿入可能な凸部、又は棒状体又はピンを有することができる。当然のことながら、第1の力伝達要素が凸部、棒状体又はピンを有し、上半身要素に切欠き及び凹部が設けられている逆の形態も可能である。実際の形態とは無関係に、上半身要素と第1の力伝達要素を様々に異なるポジション及び相対する向きで取り付けることができる場合が有利である。特に好ましくはこれらの異なったポジションの結果として、第1の力伝達要素が第2旋回軸を中心とした異なった角度位置に位置決めされる。それによって、2つの力伝達要素を係合させるために必要とされる骨盤要素に相対する上半身要素の動きの大きさを調整することができる。したがって、運動中のどの時点に機械的エネルギー貯蔵器が蓄積できるのかを調整可能である。
【0020】
特に好ましくは、整形外科用器具が変位器具を有し、この変位器具は、上半身要素が骨盤要素に対して予め定められた限界角度より小さい角度をなす場合に、第1の力伝達要素及び/又は第2の力伝達要素を互いに向かって動かすように設定されている。上半身要素と骨盤要素との間の角度は、装置の着用者が直立している場合に約180°である。着用者がかがむか、又は、むしろ上半身を骨盤要素に相対して傾ける場合、この角度は小さくなる。その場合、角度が予め定められた限界角度を超える場合、それに従って角度はこの予め定められた限界角度よりも小さくなり、それにより変位器具が2つの力伝達要素を互いに向かって動かす。好ましくは、変位器具は、第1の力伝達要素又は第2の力伝達要素のいずれかを動かすのに対して、それぞれ他方の力伝達要素は定置にとどまる。これに代えて、変位器具は、第1の力伝達要素と第2の力伝達要素の両方を動かす。
【0021】
上半身要素を骨盤要素に相対して動かす場合に、両方の力伝達要素が互いに向かって連続的に動かされ、限界角度に達した場合に互いに係合するという先に説明した実施形態とは異なり、ここに記載される実施形態では、まず、2つの力伝達要素は互いに向かって動かされない。上半身要素と骨盤要素との間の角度が予め定められた限界値を超えて初めて、上記の動きが行われ、それに従って、2つの力伝達要素が互いに係合する。
【0022】
特に好ましくは、変位器具は、上半身要素が骨盤要素に対して予め定められた限界角度より大きい角度をなす場合に、第1の力伝達要素及び/又は第2の力伝達要素を互いに離れる方向に動かすように設定されている。
【0023】
第1の力伝達要素及び/又は第2の力伝達要素を動かすために、変位器具は、それぞれ動かされるべき力伝達要素に力を加えるように設定されている。それぞれの力伝達要素が動かされ、2つの力伝達要素が係合又は係合解除された後に、この力が維持される場合が有利であることがわかった。これにより、状態が誤って変化しないことを確保することができる。2つの力伝達要素が変位器具の力によって係合された場合、そのために使用された力が維持され、それにより2つの力伝達要素が誤って係合解除されることによって整形外科器具の機能性が損なわれるようなことが阻止される。2つの力伝達要素を係合解除させる力についても同じことが当てはまる。それぞれの力伝達要素が誤って変位し、それによって2つの力伝達要素が再び係合されるようなことを阻止するために、この力も維持されることが好ましい。
【0024】
好ましくは、上半身要素を骨盤要素に相対して動かしたときに角度が予め定められた限界角度を超える場合に方向が変わる力を互いに加えるように、少なくとも2つの磁石が骨盤要素又は大腿要素に配置され、少なくとも1つの磁石がそれぞれ他方の要素に配置されている。したがって、この実施形態では、変位器具は上記の磁石を有している。
【0025】
少なくとも2つの磁石が配置されている要素、上半身要素又は骨盤要素に、磁石は好ましくは異なった配向で配置されている。これは、磁石の少なくとも1つがN極であり、少なくとももう1つがS極である場合、整形外科用器具のそれぞれ他方の要素の方向に向けられていることを意味する。
【0026】
上半身要素と骨盤要素との間の角度が予め定められた限界角度より大きい場合、2つの力伝達要素は互いに係合しない。したがって、好ましくは、2つの力伝達要素を互いに離しておく力が加えられる。このことは、磁石が互いに力を加えることにより起こり得る。これは、例えば反発力であり得る。これは、骨盤要素の磁石と大腿要素の磁石が互いに近くに位置決めされ、それにより同極、すなわちそれぞれS極又はそれぞれN極同士が互いに向けられることにより達成される。その場合、骨盤要素が大腿要素に相対して動かされると、それぞれの要素に配置された磁石も動かされる。したがって、互いに動かされた磁石が変位する。骨盤要素に相対する上半身要素の角度が予め定められた限界角度を超える瞬間に、好ましくは骨盤要素又は大腿要素の第2磁石がそれぞれ他方の要素の少なくとも1つの磁石の領域に移動する。その場合、2つの磁石の異極が互いに向けられるので、引力が生じる。
【0027】
有利には、整形外科用器具を能動状態及び受動状態にすることができる。能動状態は、これまでに説明されたものであり、上半身要素が骨盤要素に相対して動かされることにより第1の力伝達要素と第2の力伝達要素が係合又は係合解除され得ることを特徴とする。受動状態ではこれは可能でない。受動状態において、上半身要素が骨盤要素に相対して動かされた場合、2つの力伝達要素は係合又は係合解除しない。
【0028】
好ましくは、器具は、少なくとも1つの操作要素を有し、この操作要素を操作することによって、器具を能動状態から受動状態に、及び/又はその逆にすることができる。このような操作要素によって、例えば第1の力伝達要素を上半身要素の動きから切り離すことができる。操作要素を新たに操作することによって、動きが再び結合され、それにより力伝達要素を係合させることができる。
【0029】
好ましくは、機械的エネルギー貯蔵器は、少なくとも1つのばね要素、好ましくは渦巻きばねを有する。
【0030】
以下、添付の図を用いて本発明のいくつかの実施例について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施例による装着状態の整形外科用器具の図である。
図2】器具の一部分の図である。
図3】器具の一部分の図である。
図4図2及び図3からの部分の分解図である。
図5】部分的に取り外された状態の上記の部分の図である。
図6】本発明の別の実施形態の一部分の図である。
図7】本発明の別の実施形態の一部分の図である。
図8】本発明の別の実施形態の一部分の図である。
図9】本発明の別の実施形態の一部分の模式図である。
図10】本発明の別の実施形態の一部分の模式図である。
図11】本発明の別の実施形態の一部分の模式図である。
図12】本発明の別の実施形態の一部分の模式図である。
図13】本発明の一実施形態の装着状態の図である。
図14】本発明の一実施形態の装着状態の図である。
図15】本発明の一実施形態の装着状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、装着状態の整形外科器具を示す。整形外科器具は、利用者の大腿に配置された大腿要素2と、上半身に配置された上半身要素4とを有する。装置は、さらに、利用者の骨盤に配置された骨盤要素6を有する。骨盤要素6と大腿要素2及び上半身要素4とは、利用者のそれぞれの身体部分に配置されている。
【0033】
これに加えて、整形外科器具は、図示される実施例では複数のタスクを果たす継手器具10を有する。一方では、大腿要素2は、第1のレール12を介して第1の旋回軸14を中心に旋回可能に骨盤要素6に配置されている。上半身要素4も第2のレール16を介して旋回可能に骨盤要素6に配置され、この実施例では旋回軸が第1の旋回軸14と一致する。
【0034】
これに加えて、整形外科用器具は、図示された実施例では引張ばねである機械的エネルギー貯蔵器18を有する。
【0035】
図2は、骨盤要素6の拡大図である。大腿の第1のレール12が配置されるべき第1の接続要素20と、上半身要素4の第2のレール16が配置される第2の接続要素22とが見て取れる。レバー24が設けられ、このレバーに機械的エネルギー貯蔵器18が位置決めされる。
【0036】
図3は、図2からの装置の側面図を示す。上半身要素4の一部である第2の接続要素22に、図示される実施例では平歯車として形成されている第1の力伝達要素26が設けられている。対応する第2の力伝達要素28は、大腿要素2の一部であるレバー24に位置決めされている。図4の分解図から動作原理が見て取れる。レバー24には、第2の力伝達要素28が設けられている。第2の接続要素22には別個の部材として第1の力伝達要素26が設けられている。第1の力伝達要は、4つの凸部30を有し、これらの凸部は、第2の接続要素22におけるそのために設けられた4つの開口32に係合する。図4において、組立状態でそれぞれの開口32を通って突き出すそれぞれ1つの磁石34が凸部30のうちの2つに配置されていることが見て取れる。本来の最上部要素に変位器具36が回転不可能に配置され、この変位器具も一連の磁石38を有している。図示される実施例では、これらの磁石は、変位器具36の全周にわたって延在し、それにより第1の力伝達要素26の磁石34に作用する。図4において変位器具36の上端に、骨盤要素6に配置された対応する相手磁石42と相互作用する位置決め磁石40が示される。位置決め磁石40と相手磁石42は、異極が向き合うように配置されている。したがって、図示された実施例では、変位器具36を骨盤要素6に相対して4つの異なったポジションで回転不可能に取付可能である。
【0037】
次に、上半身要素4、したがって第2の接続要素22を骨盤要素6に相対して回動させた場合、磁石38に相対する磁石34のポジションも変化する。これらの磁石は、上半身要素4が骨盤要素6に相対して回動する特定の角度の場合に磁石38の極性が変わるように配置され、それにより磁石34及び38間のこの角度までは、例えば引力が働き、この角度からは反発力が働く。引力から反発力になるこの瞬間に、第1の力伝達要素26が図3に示されるポジションから変位し、第2の力伝達要素28と係合する。
【0038】
周方向に変位され得るロック装置44によって、第2の力伝達要素28に相対する第1の力伝達要素26のポジションを固定することができ、それにより2つの力伝達要素のうちの1つが変位できなくなる。それによって、2つの力伝達要素26、28を係合又は係合解除できることが阻止される。
【0039】
図5は、図4に示された要素の一部分を部分的に組み付けた状態で示す。骨盤要素6に変位器具36が設けられている。それに加えて2つの相手磁石42と第1の力伝達要素26を見ることができる。ロック装置44により、第1の力伝達要素26を第2の接続要素22に相対して固定することができる。
【0040】
図6は、本発明の別の実施例による整形外科用器具のための継手器具10を示す。この継手器具も第2の接続要素22と第1の接続要素20とレバー24とを有し、取付プレート46を介して図示されない骨盤要素6に位置決めされる。第1の力伝達要素26は、図示された実施例では巻きばね(Schlingfeder)として形成されている。図6及び図7に第2の力伝達要素28は図示されず、巻きばね26の内部に延在するロッド又はシャフトとして形成されている。
【0041】
図7において、図6に示された装置が別の視角から示されている。第1の力伝達要素26が見て取れる。大腿要素2に連行体48が設けられ、この連行体は、図8の部分的に取り外された図示でより良く見て取れる。連行体は切欠き50を有し、ピン52が連行体48の切欠き50に相対して動かされた場合にこの切欠きにピン52が係合する。これは、湾曲した長穴54に沿って行われる。ピン52が切欠き50と係合した後に、2つの部材のさらなる動きにより、巻きばねも動かされてその横断面が小さくなる。その際、巻きばねとして形成された第1の力伝達要素と、シャフトとして形成され、巻きばね26の内部に入っている第2の力伝達要素28との間に摩擦結合的な接続が生じる。
【0042】
図9は、別の継手器具10の模式図を示す。第1の接続要素20に大腿要素2の一部分が示されている。第2の接続要素22には上半身要素4の一部分が設けられている。これらの間にハウジング62が示されている。機械的エネルギー貯蔵器18は、図示されない骨盤要素6に回転可能に配置されている弾性要素の形態で、第1の接続要素20とハウジング62との間に配置されている。
【0043】
図示される実施例ではハウジング62に円形の摩擦輪郭56が設けられている。第1の接続要素20、したがってこの第1の接続要素に配置された大腿要素2は、第1の旋回軸14を中心に旋回可能に図示されない骨盤要素6に配置されている。第2の接続要素22は、摩擦凸部58を有し、レバー60を介して同じ旋回軸14を中心に旋回可能に骨盤要素6に配置されている。図示される実施例では、摩擦凸部58は第1の力伝達要素26を形成し、摩擦輪郭56は第2の力伝達要素28を形成する。
【0044】
図9は、摩擦凸部58と摩擦輪郭56との間に隙間がある状況を示し、それにより摩擦凸部と摩擦輪郭との間に摩擦結合が生じない。この状況において、大腿要素2と接続された大腿が持ち上げられると、示される図示では大腿が第1の旋回軸14を中心に時計回りに回動される。機械的エネルギー貯蔵器18によって、ハウジング62も旋回軸14を中心に旋回させられる。2つの力伝達要素26、28間に摩擦結合がないので、機械的エネルギー貯蔵器18が蓄積されない。
【0045】
図10は、例えば整形外科用器具の装着者が前にかがんだので、図10にも示されない骨盤要素6に相対して上半身要素4が旋回した状況を示す。したがって、上半身要素4は、骨盤要素6に相対して反時計回りに旋回された。それによって、第2の接続要素22の摩擦凸部58がハウジング62の摩擦輪郭56と接触し、この摩擦輪郭に押し付けられ、それにより2つの要素間に摩擦結合が生じる。この状況で大腿が持ち上げられた、すなわち大腿要素2を旋回軸14を中心に時計回りに旋回させた場合、摩擦結合的接続にもとづいて、ハウジング62を上半身要素4に相対して旋回させることができなくなる。その代わりに、機械的エネルギー貯蔵器18に荷重がかかり、弾性要素が伸びる。それによって、装着者の起き上がり、すなわち大腿要素2の反時計回りの旋回を補助する力が生成される。
【0046】
図11及び図12は、別の実施例を示す。回転可能な歯車64を介して骨盤要素6に第2の接続要素22が配置されている。図11及び図12に図示されない大腿要素2を配置することができる第1の接続要素20に渦巻きばね66が配置されている。歯車64が歯のない領域68を有することが見て取れる。図11において、大腿要素2と第1の接続要素20が、渦巻きばね66のエネルギー蓄積なしに、反時計回りに旋回可能である状況が示されている。この場合、小歯車70が回転する。小歯車70のうちの上の歯車は、その歯が歯車64の歯のない領域68に位置するので、この小歯車70は歯車64と係合せず、それにより、渦巻きばね66に荷重がかからず、小歯車70の回転が可能である。
【0047】
図12は、第2の接続要素22に配置されるべき上半身要素4を腰要素6に相対して旋回させた別の状況を示す。それによって、歯車64もその回転軸を中心回転され、それにより歯のない領域68ではなく、歯を備えた領域が上の小歯車70と係合している。この状況において、大腿要素2を第1の接続要素20とともに旋回させ、かつ第1の旋回軸14を中心に反時計回りに旋回させた場合、渦巻きばね66が蓄積される。
【0048】
図13図15は、装着された状態の図11及び図12の要素を有する装置を様々なポジションで示す。それぞれ1つの大腿要素2と、上半身要素4と、特に渦巻きばね66及び歯車64が明確に見て取れる腰要素(Hueftelement)6が見て取れる。図13は、直立ポジションでの装置の着用者を示す。歯車64は、歯のない領域68があることで、小歯車70と係合せず、それにより大腿要素2のポジションとは無関係に、渦巻きばね66に張力がかけられない。
【0049】
図14は、装置の着用者が上半身を前にかがめた状況を示す。それによって上半身要素4は、第2の接続要素22とともに骨盤要素6に相対して旋回される。歯車64がその旋回軸を中心に回転され、次に、小歯車70の歯と係合し、それによりこの瞬間から渦巻きばね66に張力がかけられる。当然のことながら、渦巻きばね66に張力をかけるために、大腿を必ず動かさなければならないわけではない。機械的エネルギー貯蔵器18、すなわち図示された実施例では渦巻きばね66に張力をかけるために、上半身をさらに下げることも可能である。
【0050】
図15は、歩いている人を示す。この場合も上半身及び上半身要素4は腰継手(Hueftgelenk)6に相対して旋回されず、それにより歯車64は、上の小歯車70と係合せず、したがって渦巻きばね66に張力がかけられない。
【符号の説明】
【0051】
2 大腿要素
4 上半身要素
6 骨盤要素
8 ベルト
10 継手器具
12 第1のレール
14 第1の旋回軸
16 第2のレール
18 機械的エネルギー貯蔵器
20 第1の接続要素
22 第2の接続要素
24 レバー
26 第1の力伝達要素
28 第2の力伝達要素
30 凸部
32 開口
34 磁石
36 変位器具
38 磁石
40 位置決め磁石
42 相手磁石
44 ロック装置
46 取付プレート
48 連行体
50 切欠き
52 ピン
54 長穴
56 摩擦輪郭
58 摩擦凸部
60 レバー
62 ハウジング
64 歯車
66 渦巻きばね
68 歯のない領域
70 小歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】