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特表2022-541217RFIDトランスポンダを備えるグレージング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】RFIDトランスポンダを備えるグレージング
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/12 20060101AFI20220914BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20220914BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E06B1/12 Z
E06B5/16
E06B3/66 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502540
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020068488
(87)【国際公開番号】W WO2021028110
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19190994.4
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】アリツィア ドレゲ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホルトシュティーゲ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マルヤン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン エッフェルツ
【テーマコード(参考)】
2E011
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E011AF06
2E016AA01
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA01
2E016FA01
2E239CA12
2E239CA22
2E239CA32
(57)【要約】
【課題】グレージングユニット及びフレーム構造を有する改良されたグレージングを提供すること。
【解決手段】本発明は、以下の構成を備える、グレージング(2)、特にファサードグレージング、窓、ドア、又は室内間仕切りに関する:
- 金属製の第1のフレーム要素(3.1)と、金属製の第2のフレーム要素(3.2)と、該フレーム要素(3.1、3.2)を少なくともいくつかの部分で、好ましくは完全に取り囲む接続用のポリマー製の第3のフレーム要素(3.3)とからなるフレーム(3)、及び
- 前記フレーム(3)内に配置された、グレージングユニット、
ここで、
- 少なくとも1つのRFIDトランスポンダ(9)が、前記フレーム(3)の内側面のうちの1つに配置され、
- ストリップ状の結合要素(10)が、前記RFIDトランスポンダ(9)に電磁気的に結合され、
- 前記結合要素(10)が、少なくとも1つの結合領域(15)において、前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)のうちの1つに電気的又は容量的に結合され、好ましくは、2つの結合領域(15、15’)において、それぞれの場合において、前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)のうちの1つに電気的又は容量的に結合される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレージング(2)、特にファサードグレージング、窓、ドア、又は室内間仕切りであって、
- 金属製の第1のフレーム要素(3.1)と、金属製の第2のフレーム要素(3.2)と、該フレーム要素(3.1、3.2)を少なくともいくつかの部分で、好ましくは完全に取り囲む接続用のポリマー製の第3のフレーム要素(3.3)とからなるフレーム(3)、及び
- 前記フレーム(3)内に配置された、グレージングユニット、を備え、
- 少なくとも1つのRFIDトランスポンダ(9)が、前記フレーム(3)の内側面のうちの1つに配置され、
- ストリップ状の結合要素(10)が、前記RFIDトランスポンダ(9)に電磁気的に結合され、
- 前記結合要素(10)が、少なくとも1つの結合領域(15)において、前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)のうちの1つに電気的又は容量的に結合され、好ましくは、2つの結合領域(15、15’)において、それぞれの場合において、前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)のうちの1つに電気的又は容量的に結合される、
グレージング(2)。
【請求項2】
前記フレーム(3)は、前記グレージングユニットの端面(14)に係合し、同時に、ガラスペイン(4a、4b)を通したスルービジョン方向(矢印A)においてRFIDトランスポンダ(9)を覆う、請求項1に記載のグレージング(2)。
【請求項3】
前記グレージングユニットは、単一のペイン、複合ペイン、耐火性グレージングユニット、若しくは絶縁グレージングユニット(1)を備えるか、又はそれからなり、前記絶縁グレージングユニット(1)は、以下の構成を備える、請求項1又は2に記載のグレージング(2):
- 少なくとも1つのスペーサ(5)であって、スペーサフレーム(5’)に周方向に形成され、かつ、内部領域(12)を画定する、少なくとも1つのスペーサ(5)、
- 前記スペーサフレーム(5’)のペイン接触面(5.1)に配置された第1のガラスペイン(4a)と、前記スペーサフレーム(5’)の第2のペイン接触面(5.2)に配置された第2のガラスペイン(4b)、及び
- 前記ガラスペイン(4a、4b)は前記スペーサフレーム(5’)を越えて突出し、少なくともいくつかの部分において、好ましくは完全に封止要素(6)で充填された外側領域(13)を形成する。
【請求項4】
前記結合要素(10)は、金属化ポリマーフィルム又は自己支持性の金属箔、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銀、又はステンレス鋼から作製された、金属化ポリマーフィルム又は自己支持性の金属箔を含むか、又はそれからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムの金属被覆は、10μm~200μmの厚さを有し、かつ、前記金属箔は、0.02mm~0.5mm及び特には0.09mm~0.3mmの厚さを有する、請求項4に記載のグレージング(2)。
【請求項6】
前記結合要素(10)は、いくつかの部分において、前記フレーム(3)の前記内側端面(14)を超えて突出し、好ましくは片側又は両側で2mm~30mm、特に好ましくは5mm~15mm、特には7mm~10mmの突出量Uで突出する、請求項1~5のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項7】
前記結合要素(10)を前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)から電気的に分離する電気絶縁層(8)が、前記結合要素(10)と前記金属製のフレーム要素(3.1、3.2)との間に配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項8】
前記RFIDトランスポンダ(9)は、前記フレーム(3)の内面、好ましくは前記フレーム(3)の内側端面、又は前記グレージングユニットの大きな面に平行に配置された第1若しくは第2のフレーム要素(3.1、3.2)の内面に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項9】
前記ストリップ状の結合要素(10)は、前記RFIDトランスポンダ(9)と前記フレーム要素(3.1、3.2)のうちの1つの少なくとも1つの部分との間に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項10】
前記結合要素(10)は、前記RFIDトランスポンダ(9)の上方にいくつかの部分で合同的に配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項11】
前記RFIDトランスポンダ(9)は、第1のアンテナポール(9.1.1)と第2のアンテナポール(9.1.2)を備えたダイポールアンテナ(9.1)を含むか、又はそれからなり、好ましくは、前記ダイポールアンテナ(9.1)が、誘電性キャリア要素(9.2)、特に好ましくはポリマー製のキャリア要素(9.2)に配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項12】
前記結合要素(10)は、一方のアンテナポール(9.1.1又は9.1.2)を正確に覆い、他方のアンテナポール(9.1.2又は9.1.1)とは反対を向く側にアンテナポール(9.1.1又は9.1.2)を越えて突出する、請求項11に記載のグレージング(2)。
【請求項13】
前記結合要素(10)の一方の端部(16)は、投影において、前記ダイポールアンテナ(9.1)の中心(17)からのオフセットVが、前記RFIDトランスポンダ(9)の動作周波数の半波長λ/2の-20%~+20%、好ましくは-10%~+10%、特には-5%~+5%である、請求項11又は12に記載のグレージング(2)。
【請求項14】
前記結合要素(10)の一方の端部(16)は、投影において、UHFの範囲の前記RFIDトランスポンダの動作周波数での前記ダイポールアンテナ(9.1)の中心(17)からのオフセットVが、-30mm~+30mm、好ましくは-20mm~+20mm、及び特には-10mm~+10mmである、請求項11又は12に記載のグレージング(2)。
【請求項15】
前記結合要素(10)は、前記ダイポールアンテナ(9.1)の延伸方向に平行な長さLが、前記ダイポールアンテナ(9.1)の動作周波数の半波長λ/2の40%以上、好ましくは40%~240%、特に好ましくは60%~120%、及び特には70%~95%である、請求項1~14のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項16】
前記結合要素(10)は、前記ダイポールアンテナ(9.1)の延伸方向に平行な長さLが、7cm以上、好ましくは7cm~40cm、特に好ましくは10cm~20cm、特には12cm~16cmである、請求項1~15のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項17】
前記RFIDトランスポンダ(9)は、ポリマー製の前記第3のフレーム要素(3.3)に配置され、かつ、
- 前記ダイポールアンテナ(9.1)の前記第1のアンテナポール(9.1.1)と前記第3のフレーム要素(3.3)との間には、前記第1のフレーム要素(3.1)に電気的に又は容量的に結合された第1のストリップ状の結合要素(10)が配置され、
- 前記ダイポールアンテナ(9.1)の前記第2のアンテナポール(9.1.2)と前記第3のフレーム要素(3.3)との間には、前記第2のフレーム要素(3.2)に電気的に又は容量的に結合された第2のストリップ状の結合要素が配置され、
- 前記第1の結合要素(10)は、前記第1のフレーム要素(3.1)の部分に延在し、前記第2のフレーム要素(3.2)には延在せず、
- 前記第2の結合要素(10)は、前記第2のフレーム要素(3.2)の部分に延在し、前記第1のフレーム要素(3.1)には延在しない、
請求項1~16のいずれか一項に記載のグレージング(2)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のグレージング(2)における識別要素としての前記RFIDトランスポンダ(9)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のフレームと、該フレームに挿入されたグレージングユニット、好ましくは絶縁グレージングユニットとを備えるグレージングであって、フレームがグレージングユニットの端部に係合し、同時に、少なくとも1つのRFIDトランスポンダを覆っているグレージングに関する。RFIDトランスポンダは、識別要素として使用することができる。グレージングは、特に、対応する構造を備える、ファサードグレージング、窓、ドア、又は室内間仕切りを形成するように意図されている。
【背景技術】
【0002】
RFIDトランスポンダは、例えばEP2230626A1から公知のように、物体、例えば固体又は複合固体材料のパネルの識別のために様々な方法で使用される。
【0003】
少なくとも北半球及び温帯地域で使用するために、現代の窓、ドア、及びファサードグレージングは、通常、前述の構造を有するプレハブ式の絶縁グレージングユニット(IGU)を使用して製造されるが、任意に、2枚以上のガラスペインを組み合わせて含むことができる。このような絶縁グレージングユニットは、大量生産され、出荷され、さらには独立して販売される製品であり、最終製品になるまでの間、また場合によってはメンテナンス及びサービスの間でさえも、独自に識別できることが望ましい。
【0004】
識別マーキングを有する絶縁グレージングユニットを提供することは既に知られており、関連する慣行の中で製造業者と使用者に対する一定の要求が生じている:
- 識別マーキングは、完成した窓、ドア、又はファサードの内側からも外側からも見えるべきではない。
- マーキングは、少なくとも30cmの距離から「読み取り可能」であるべきである。
- マーキングは、可能な限り偽造し得ないこと、つまり、上書き又はコピーが容易にできないようにすべきである。
【0005】
バーコード又はQRコード(登録商標)などの従来の識別マーキングの有効性は、その視認性に基づくものであり、これは上記第1の態様における少なくとも1つの制限を意味する。第2の要件を満たすことも困難である。バーコード及びQRコード(登録商標)は写真に撮られる可能性があるため、コピーに対する保護は保証できない。
【0006】
絶縁グレージングユニットに「電子」識別子、特に無線で読み取り可能な識別子、いわゆる「RFIDトランスポンダ」を搭載することも提案されている。このような絶縁グレージングユニットは、例えば、国際公開第00/36261号又は国際公開第2007/137719号に開示されている。
【0007】
このようなRFIDトランスポンダは、パスワードで保護され得るので、相当な努力をしなければ上書きされたり、或いは無線機能が破壊されたりすることはない。
【0008】
ある種の窓及びドアのフレーム、ただし特に絶縁グレージングユニットが設置されるファサード構造は、完全に又は少なくとも部分的に金属(アルミニウム、スチール等)で作製され、これは、絶縁グレージングユニットのRFIDトランスポンダから又はそこへの電波の通過を遮断するか、又は少なくとも大幅に減衰させる。このため、上記第2の要件を満たすことは、特に困難であることが判明した。結果的に、RFIDトランスポンダを備えた公知の絶縁グレージングユニットは、金属製のフレーム構造では容易に使用できない。これは、このようにして識別されるグレージングユニットの潜在的な適用範囲、ひいては、製造業者及び利用者によるこれらのマーキングの解決策の受け入れを減少させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、グレージングユニット及びフレーム構造を有する改良されたグレージングを提供することであり、ここで、フレーム構造は、少なくともかなりの範囲で金属から作製され、また、そのような設置状況において前述の要件を満たすことを保証する。
【0010】
この目的は、本発明の第1の態様に従って、請求項1の特徴を有するグレージングによって達成される。本発明のアイデアの都合のよいさらなる発展は、それぞれの従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を備える、グレージング、特にファサードグレージング、窓、ドア、又は室内間仕切りを含む:
- 金属製の第1のフレーム要素と、金属製の第2のフレーム要素と、該フレーム要素を少なくともいくつかの部分で、好ましくは完全に取り囲む接続用のポリマー製の第3のフレーム要素とからなるフレーム、及び
- フレーム内に配置された、本発明によるグレージングユニット、特に絶縁グレージングユニット、
ここで、
- 少なくとも1つのRFIDトランスポンダが、フレームの内側面のうちの1つに配置され、
- ストリップ状の結合要素が、RFIDトランスポンダに電磁気的に結合され、
- 結合要素が、少なくとも1つの結合領域において、金属製のフレーム要素のうちの1つに電気的又は容量的に結合され、好ましくは、2つの結合領域において、それぞれの場合において、金属製のフレーム要素のうちの1つに電気的又は容量的に結合される。
【0012】
フレームは、グレージングユニットの端面に、好ましくはU字型に係合し、同時に、ガラスペインを通したスルービジョン方向においてRFIDトランスポンダを覆う。通常、第1及び第2のフレーム要素の脚部は、それらがグレージングユニットを通したスルービジョン方向において、少なくとも完全に外側領域及びスペーサフレームを覆うように設計されている。
【0013】
本発明には、RFID信号の特別な結合と結合解除によって、グレージングの金属フレームにおける電波の基本的に好ましくない出射及び入射の放射条件を考慮するというアイデアが含まれる。さらに、グレージングに適切に設置することで、フレームと最適に結合し、フレームからRFIDトランスポンダのアンテナへ、又はRFIDトランスポンダのアンテナからフレームへ、ひいてはグレージングの外側へと信号を伝達するように、RFIDトランスポンダとは別個に絶縁グレージングユニットに設けられた結合要素を配置するというアイデアも含まれている。
【0014】
本発明は、上述の基本構造を有するグレージングについて行われた広範な実験的調査の結果である。
【0015】
本発明によるグレージングユニットは、有利には、単一のペイン、複合ペイン、若しくは耐火性グレージングユニット、特に少なくとも1つの膨張性層を有する耐火性グレージングユニットからなるか、又はそれを含む。
【0016】
本発明によるグレージングユニットは、少なくとも1つ、好ましくは正確に1つの絶縁グレージングユニットからなるか、又はそれを含み、以下の構成を有する:
- 少なくとも1つのスペーサであって、スペーサフレームに周方向に形成され、かつ、内部領域を画定する、少なくとも1つのスペーサ、
- スペーサフレームのペイン接触面に配置された第1のガラスペインと、スペーサフレームの第2のペイン接触面に配置された第2のガラスペイン、及び
- 該ガラスペインがスペーサフレームを越えて突出し、少なくともいくつかの部分において、好ましくは完全に封止要素で充填された外側領域を形成する。
【0017】
有利には、RFIDトランスポンダは、ダイポールアンテナを有し、結合要素は、RFIDトランスポンダのダイポールアンテナの1つのアンテナポールに電磁気的に結合される。
【0018】
ここで、「電磁気的に結合される」という用語は、結合要素及びRFIDトランスポンダが、電磁場によって結合されること、すなわち、容量的にも誘導的にも接続されており、好ましくは電気的に接続されていないことを意味する。
【0019】
本発明によれば、少なくとも1つのRFIDトランスポンダが、フレームの内側領域のフレームに配置される。言い換えれば、RFIDトランスポンダは、フレームの内側面、好ましくはフレームの内側端面、又はグレージングユニットの大きな面に平行に配置された第1若しくは第2のフレーム要素の内側面に配置される。
【0020】
本発明者らは、適用状況に関して、特に、金属フレームに埋め込まれたグレージングユニットの調査を、絶縁グレージングユニットの例を用いて行った。ここで、フレームは、ポリマー製の電気絶縁性フレーム要素を介して接続された、金属でその結果電気伝導性の2つのフレーム要素からなる。ポリマー製のフレーム要素で接続された2つの金属製のフレーム要素から作製されたこのようなフレームは、ポリマー製のフレーム要素が第1のフレーム要素から第2のフレーム要素への、したがって、例えば、外部空間側から内部空間側への熱伝達を大幅に減少させるので、特に有利である。
【0021】
グレージングを封止してガラスペインを固定するエラストマープロファイルは、ガラスペインの外側と、隣接する金属製フレーム要素の内側との間に配置される。
【0022】
市販のUHF-RFIDトランスポンダは、その構造及び機能がよく知られており、したがって、ここでさらに説明する必要はないが、調査において使用された。
【0023】
本発明によるグレージングの有利な実施形態では、RFIDトランスポンダは、ダイポールアンテナとして実装される。このような設計は、スペーサに沿った細長いストリップ状の外側領域内において、ガラスペイン間に、ガラスペインの端面に、又はフレーム内のガラスペインの外面に特に良好に配置され得る。
【0024】
ダイポールアンテナは、少なくとも1つの第1のアンテナポールと、少なくとも1つの第2のアンテナポールを含むか、又はそれらからなる。好ましくは、アンテナポールは、一列に前後に配置され、したがって互いに平行に配置される。RFIDエレクトロニクス又はRFIDエレクトロニクスへの接続は、通常、アンテナポールの間の中心に配置される。
【0025】
本発明による結合要素は、RFIDトランスポンダの上方にいくつかの部分で合同的に配置される。本文脈において、「いくつかの部分で合同的に」とは、RFIDトランスポンダへの直角投影において、結合要素がダイポールアンテナをいくつかの部分において覆うことを意味する。
【0026】
RFIDトランスポンダが、例えば、フレームの端面の内側に配置される場合、結合要素は、RFIDトランスポンダを覆い、特に、RFIDトランスポンダのダイポールアンテナの1つのアンテナポールを、フレームの端面に垂直な視野方向のいくつかの部分で覆っている。本発明による、結合要素のRFIDトランスポンダへの最適な容量結合とRFID無線信号の転送のために、結合要素はRFIDトランスポンダのダイポールアンテナと少なくとも同様の大きさであることは言うまでもない。特に、結合要素は、ダイポールアンテナの延伸方向に沿った片側と、延伸方向に対して横方向の両方で、投影におけるダイポールアンテナを超えて突出している。ここで、ダイポールアンテナの延伸方向とは、ダイポールアンテナの長手方向、すなわち、互いに対して直線的に、かつその直線的延伸方向に配置されたそのアンテナポールに沿った方向である。
【0027】
このようなRFIDトランスポンダシステムで使用される無線波長は、通常、タイプに応じて、865~869MHz(欧州の周波数を含む)若しくは902~928MHz(米国及びその他の周波数帯)でのUHFの範囲、又は2.45GHz及び5.8GHzでのSHFの範囲である。UHF-RFIDトランスポンダ用に公表される周波数は、アジア、ヨーロッパ、及びアメリカでは地域的に異なり、ITUによって調整されている。
【0028】
これらの周波数を有する無線信号は、木材と従来のプラスチックの両方を透過するが、金属は透過しない。特に、ダイポールアンテナがフレームの金属部分に直接的に配置される場合、これは、ダイポールアンテナの短絡を招き、したがって、RFIDトランスポンダの望ましくない障害を招く可能性がある。
【0029】
その結果、RFIDトランスポンダの好ましい実施形態では、ダイポールアンテナは、誘電性キャリア要素、特に好ましくはポリマー製のキャリア要素に配置される。キャリア要素の厚さは、材料、特にキャリア要素の誘電率及びダイポールの幾何学的形状に適合される。
【0030】
エレクトロニクス自体と共にダイポールアンテナを、誘電性キャリア層、例えば、ポリマー製のキャリア層に配置することができ、組み立て及びプレハブ施工を大幅に簡素化し得ることは言うまでもない。
【0031】
本発明者らの知見は、原則として、パッシブ型とアクティブ型の両方のRFIDトランスポンダに適用される。
【0032】
グレージングユニットの周囲に係合する金属フレーム、及び基本的な物理法則に基づき、またそれに基づく当業者の知識によれば、フレーム又はそれらのアンテナ内に設置されたRFIDトランスポンダのHF放射線を完全には抑制しないとしても、敏感に干渉するはずである金属フレームに関して、提案された解決策は驚くべきものである。本発明に従って配置されたRFIDトランスポンダは、本発明によるグレージングが設置されているグレージングから約1.5mの比較的大きな距離でも読み取ることができるという、予期せぬ利点をもたらしている。
【0033】
単純な実験によって、当業者は、有利な送信及び受信特性を有する設計及び位置を見出し得ることは言うまでもない。以下に述べる例示的な実施形態及び態様は、結果的に、本発明の実施可能性を制限することなく、当業者にとって主に推奨されるものである。
【0034】
このように、グレージングは、複数のRFIDトランスポンダを、特にグレージングの様々な側面(上面、底面、右面、左面)の端部又は外側領域に有し得ることは言うまでもない。これは、RFID信号を素早く見つけ、その中に配置されたグレージングユニットと共にグレージングを素早く識別するために、RFIDトランスポンダの範囲が短い従来技術のグレージングでは、通常必要なことである。RFIDトランスポンダの範囲における本発明による拡大の結果、通常、絶縁グレージングごとに正確に1つ又はいくつかのRFIDトランスポンダで十分である。
【0035】
本発明によるグレージングの有利な実施形態では、結合要素は、自己支持性の金属箔、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銀、又はステンレス鋼から作製された、自己支持性の金属箔を含むか、又はそれからなる。好ましい金属箔は、0.02mm~0.5mm、特には0.09mm~0.3mmの厚さを有する。このような結合要素は、グレージングに容易に一体化することができ、さらに、製造するのが簡単で経済的である。金属箔は、ポリマーフィルムによって安定化させることもできるし、或いは、片面又は両面を電気的に絶縁することもできることは言うまでもない。
【0036】
本発明によるグレージングの別の有利な実施形態では、結合要素は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銀、又はステンレス鋼の好ましい金属被覆を有する金属化ポリマーフィルムを含むか、又はそれからなる。好ましい金属層は、10μm~200μmの厚さを有する。このような結合要素はまた、グレージングに容易に一体化することができ、さらに、製造するのが簡単で経済的である。
【0037】
本発明による結合要素は、RFIDトランスポンダとフレーム要素のうちの1つの少なくとも1つの部分との間に有利に配置される。
【0038】
有利な実施形態では、結合要素は、フレーム要素に直接的に配置され、金属製のフレーム要素に容量的に又は電気的に接続される。
【0039】
別の有利な実施形態では、結合要素を金属製のフレーム要素から電気的に分離する電気絶縁層が、結合要素と金属製のフレーム要素との間の一部の部分に配置される。これは、外側と内側との間の熱的結合を低減するために、結合要素自体が電気的絶縁キャリアフィルム又は被覆材をかねてから有していない場合に特に望ましい。このような電気絶縁は、機能を制限する可能性のある、望ましくない領域での結合要素の短絡を防止する。絶縁層は、例えば、ポリマーフィルム又は電気絶縁材料から作製された塗料フィルムである。
【0040】
本発明による結合要素は、有利には、少なくともいくつかの部分において、フレームの内側端面に配置される。
【0041】
結合要素は、少なくとも、金属製のフレーム要素のうちの1つの領域において、延伸方向に対して横方向に内側端面を超えて突出する。ここで、フレームの「延伸方向」とは、グレージングの表面に直交するフレームの奥行きによって単に形成されるフレームの短辺とは対照的なフレームの長辺の方向を意味する。
【0042】
本発明によるグレージングの有利な実施形態では、結合要素は、突出量Uでフレームの内側端面を越えて突出している。結合要素は、グレージングの大きな面に平行なフレーム要素の内面の突出量の領域に配置される。最大突出量は、金属製のフレーム要素の幅に依存し、特に、エラストマープロファイルの厚さに依存し、例えば、6mm~7mmである。
【0043】
突出量Uは、好ましくは2mm~30mm、特に好ましくは5mm~15mm、及び特には7mm~10mmである。
【0044】
結合要素の好ましい長さL、すなわちダイポールアンテナの延伸方向に平行な長さは、RFIDトランスポンダの動作周波数に依存する。
【0045】
本発明によるグレージングの別の有利な実施形態では、結合要素は、ダイポールアンテナに平行な長さLが、ダイポールアンテナの動作周波数の半波長λ/2の40%以上、好ましくは40%~240%、特に好ましくは60%~120%、及び特には70%~95%である。
【0046】
UHFの範囲のRFIDトランスポンダ、特に865~869MHz(欧州の周波数を含む)又は902~928MHz(米国及びその他の周波数帯)のRFIDトランスポンダについては、7cmを超える、好ましくは10cmを超える、及び特には14cmを超える長さLを有する結合要素に対して特に良好な結果が得られた。最大長はそれほど重要ではなかった。例えば、30cmの最大長さは、依然として良好な結果及び良好な読み取り範囲をもたらした。
【0047】
本発明によるグレージングの別の有利な実施形態では、結合要素は、ダイポールアンテナに平行な長さLが、7cm~40cm、好ましくは10cm~20cm、特には12cm~16cmである。
【0048】
本発明によるグレージングの有利な実施形態では、結合要素は、ダイポールアンテナの1つのアンテナポールのみを覆い、他のアンテナポールとは反対を向く側にアンテナポールを越えて突出する。ここで、「覆う」とは、結合要素が、RFIDトランスポンダに向かう視野方向においてそれぞれのアンテナポールの前方に配置され、それを覆うことを意味する。あるいは、言い換えれば、結合要素は、直角投影においてそれぞれのアンテナポールを覆う。
【0049】
例えば、結合要素は、ダイポールアンテナの第1のアンテナポールのみを覆い、第2のアンテナポールとは反対を向く側に第1のアンテナポールを越えて延びる。あるいは、結合要素は、ダイポールアンテナの第2のアンテナポールのみを覆い、第1のアンテナポールとは反対を向く側に第2のアンテナポールを越えて延びる。
【0050】
有利には、結合要素の1つの端部は、ダイポールアンテナの中心を越えて配置され、第1又は第2のアンテナポールにわたって延在する。発明者らによる調査で明らかになったように、結合要素は、結合要素の端部とダイポールアンテナの中心との間に小さなオフセットVを有することもでき、ここで、オフセットVは、結合要素のダイポールアンテナへの投影において測定される。したがって、オフセットVは、結合要素の端部の投影が、ダイポールアンテナのアンテナポール間の中心に正確に配置されず、代わりに、一方のアンテナポールの延伸方向又は他方のアンテナポールの延伸方向に、中心からオフセットVだけ逸脱することを意味する。
【0051】
それぞれの最大オフセットは、ダイポールアンテナの動作周波数の半波長λ/2に依存する。
【0052】
V=0のオフセットが最適である。しかし、これからの逸脱に対し、良好な結果及び読み取り範囲が依然として達成された。有利には、オフセットVは、RFIDトランスポンダの動作周波数の半波長λ/2の-20%~+20%であり、好ましくは-10%~+10%であり、特には-5%~+5%である。
【0053】
本発明の別の有利な実施形態では、UHFの範囲のRFIDトランスポンダの動作周波数におけるオフセットVは、-30mm~+30mm、好ましくは-20mm~+20mm、及び特には-10mm~+10mmである。ここで、正の符号とは、例えば、結合要素の端部が第2のアンテナポールの投影に配置され、残りの第2のアンテナポールが完全に覆われることを意味し;一方、対照的に、第1のアンテナポールは完全に覆われないことを意味する。逆に、負の符号とは、結合要素の端部が第1のアンテナポールの投影に配置され、第1のアンテナポールの一部並びに第2のアンテナポールの残部が完全に覆われることを意味する。
【0054】
結合要素の幅は、有利には、フレームの幅に依存し、任意には、片側又は両側のフレームの内側端面を越えるそれぞれの突出部に依存する。典型的な幅は2cm~10cm、好ましくは3cm~5cmである。
【0055】
具体的な寸法決めは、一方ではグレージングの寸法、他方では周囲のフレームの寸法を考慮して、特にフレームの幅を考慮して、当業者によって実施され得る。
【0056】
本発明による結合要素は、少なくとも1つの結合領域で、金属製のフレーム要素の1つと電気的に又は容量的に結合され、好ましくは2つの結合領域で、それぞれの場合において金属製のフレーム要素の1つと電気的に又は容量的に結合される。結合要素は、好ましくは、金属製のフレーム要素と直接接触し、例えば、それに電気的に接続される。好ましくは、結合要素は、その全長にわたって金属製のフレーム要素と接触する。
【0057】
結合要素は、金属製のフレーム要素にしっかりと固定する必要はない。代わりに、ゆるい接触又はクランプでも十分である。特に、結合領域内の結合要素と金属製のフレーム要素との間の容量結合で十分である。
【0058】
グレージングにおけるRFIDトランスポンダの配置には様々な選択肢があり、当業者であれば、特定の取り付け技術、特定のファサード又は窓構造を考慮し、適切なものを選択することができる。
【0059】
複数のRFIDトランスポンダを、上述したものとは異なる位置に配置し得ることもことは言うまでもない。
【0060】
本発明による別の有利なグレージングでは、RFIDトランスポンダは、ポリマー製の第3のフレーム要素に配置され、かつ、
- ダイポールアンテナの第1のアンテナポールと第3のフレーム要素との間には、第1のフレーム要素に容量的又は電気的に結合された第1のストリップ状の結合要素が配置され、
- ダイポールアンテナの第2のアンテナポールと第3のフレーム要素との間には、第2のフレーム要素に容量的又は電気的に結合された第2のストリップ状の結合要素が配置される。
【0061】
この目的のために、第1の結合要素は、第1のフレーム要素の部分にのみ延在し、第2のフレーム要素には延在しない。さらに、第2の結合要素は、第2のフレーム要素の部分にのみ延在し、第1のフレーム要素には延在しない。
【0062】
本発明の利点及び機能性は、図を参照した本発明の例示的な実施形態及び態様の以下の説明からも明らかである。図面は、単なる概略図であり、縮尺通りではない。それらは、決して本発明を制限するものではない。それらを以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態による絶縁グレージングユニットを有するグレージングの端部領域の詳細図(断面図)である。
図1B図1Bは、図1Aの絶縁グレージングユニットを有するグレージングの詳細図(平面図)である。
図1C図1Cは、図1Aの絶縁グレージングユニットの端面に平行な断面におけるグレージングの詳細図(断面図)である。
図2A図2Aは、本発明の別の実施形態による絶縁グレージングユニットを有するグレージングの端部領域の詳細図(断面図)である。
図2B図2Bは、図2Aの絶縁グレージングユニットの端面に平行な断面におけるグレージングの詳細図(断面図)である。
図3図3は、別の実施形態による絶縁グレージングユニットの端面に平行な断面におけるグレージングの詳細図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図及び以下の説明において、グレージングユニット、グレージング及び個々の構成要素は、それぞれの場合において、特定の実施形態が異なるという事実にかかわらず、同一又は類似の参照番号で識別される。
【0065】
図1Aは、絶縁グレージングユニット1を備えた本発明によるグレージング2の端部領域の詳細図(断面図)を示す。
【0066】
グレージング2はまた、単一のペイン、複合ペイン、又は耐火性グレージングユニット、特に膨張性層を有する耐火性グレージングユニットを含む1つ又は複数のグレージングユニットを有し得ることは言うまでもない。ここに示された全ての実施形態は、全てのタイプのグレージングユニットに単独で、組み合わせて適用される。
【0067】
図1Bは、図1Aの矢印Aによる視野方向での、図1Aの絶縁グレージングユニット1を備えたグレージング2の詳細図(平面図)を示す。
【0068】
図1Cは、図1Aの矢印Bに沿った視野方向での、図1Aの絶縁グレージングユニット1の端面14に平行な断面におけるグレージング2の詳細図(断面図)を示す。
【0069】
絶縁グレージングユニット1は、本実施の形態では、2つのガラスペイン4a及び4bを備える。これらは、絶縁グレージングユニット1の端面14近傍のガラスペイン4a,4bの間に置かれたスペーサ5によって所定の距離に保持されている。スペーサ5の本体は、例えば、ガラス繊維強化スチレンアクリロニトリル(SAN)から作製される。
【0070】
図1Bは、矢印Aで示す視野方向における絶縁グレージングユニット1の概略的な平面図を示す。したがって、図1Bは、上に横たわる第2のガラスペイン4bを示す。
【0071】
複数のスペーサ5(ここでは、例えば、4つ)は、ガラスペイン4a、4bの側端に沿って送り出され、スペーサフレーム5’を形成する。スペーサ5のペイン接触面5.1、5.2、すなわちスペーサ5とガラスペイン4a、4bとの接触面は、それぞれの場合においてガラスペイン4a又は4bに結合され、したがって機械的に固定され、封止される。接着結合は、例えば、ポリイソブチレン又はブチルゴムから作製される。スペーサフレーム5’の内面5.4は、ガラスペイン4a,4bとともに、内側領域12を画定する。
【0072】
スペーサ5は、通常、中空(図示せず)であり、また、乾燥剤(図示せず)で満たされ、これは、小さな内部側開口部(同様に図示せず)を介して、内側領域12に侵入した任意の水分を結合する。乾燥剤は、例えば、天然及び/又は合成ゼオライトなどのモレキュラーシーブを含む。ガラスペイン4a及び4bの間の内側領域12は、例えば、アルゴンなどの希ガスで満たされる。
【0073】
ガラスペイン4a、4bは、通常、スペーサ5の外面5.3とガラスペイン4a、4bの外側部分とが外側領域13を形成するように、全ての側面でスペーサフレーム5’を越えて突出する。絶縁グレージングユニット1のこの外側領域13には、ガラスペイン4a,4bとスペーサ5の外側との間に封止要素(封止プロファイル)6が導入される。これは、ここでは、単一のピースとして簡略化された形態で示されている。実際には、それは、通常、2つの構成要素を含み、そのうちの1つは、スペーサ5とガラスペイン4a、4bとの間の接触面を封止し、侵入する水分及び外部の影響から保護する。封止要素6の第2の構成要素は、絶縁グレージングユニット1を追加的にシールし、機械的に安定させる。封止要素6は、例えば、有機ポリスルフィドから形成される。
【0074】
ポリマー製のスペーサ5を通って内側領域12への熱伝達を低減する絶縁フィルム(ここでは図示せず)は、例えば、スペーサ5の外面、すなわち、外側領域13に面するスペーサ5の側面に適用される。絶縁フィルムは、例えば、ポリウレタンホットメルト接着剤でポリマースペーサー5に取り付けることができる。絶縁フィルムは、例えば、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの3つのポリマー層と、厚さ50nmのアルミニウムから作製された3つの金属層とを含む。金属層及びポリマー層は、それぞれの場合において交互に貼り合わされ、2つの外側プライは、ポリマー層によって形成される。言い換えれば、層配列は、ポリマー層、続いて金属層、続いて接着層、続いてポリマー層、続いて金属層、続いて接着層、続いて金属層、続いてポリマー層からなる。
【0075】
既に述べたように、スペーサ5の本体は、例えば、ガラス繊維強化スチレンアクリロニトリル(SAN)から作製される。スペーサ本体中のガラス繊維含有量の選択により、その熱膨張係数を変化させ、調整することができる。スペーサ本体と絶縁フィルムの熱膨張係数を調整することにより、異種材料間の温度誘起応力及び絶縁フィルムの剥がれを回避することができる。スペーサ本体は、例えば、35%のガラス繊維含有量を有する。スペーサ本体中の該ガラス繊維含有量は、強度及び安定性を同時に改善する。
【0076】
第1のガラスペイン4a及び第2のガラスペイン4bは、例えば、厚さ3mmのソーダライムガラスから作製され、例えば、1000mm×1200mmの寸法を有する。これ及び以下の例示的な実施形態に示される各絶縁グレージングユニット1はまた、3つ以上のガラスペインを有し得ることは言うまでもない。
【0077】
グレージング2は、例えばU字形であるフレーム3をさらに含む。この例では、フレーム3は、金属製の第2のフレーム要素3.2に、ポリマー製で電気絶縁性の第3のフレーム要素3.3を介して接続された金属製の第1のフレーム要素3.1を含む。この例では、第1及び第2のフレーム要素3.1、3.2は、L字形である。その結果、フレーム3は、絶縁グレージングユニット1の端面14とU字状に係合する。ガラスペイン4a、4bの大きい面に対して平行に延びる第1及び第2のフレーム要素の部分は、それらが、絶縁グレージングユニット1を通したスルービジョン方向(矢印A)において、封止要素6及びスペーサフレーム5’で少なくとも外側領域13を完全に覆うように実施される。
【0078】
絶縁グレージングユニット1は、キャリア(ここでは図示せず)に、特にプラスチック製のキャリア又はプラスチックによって電気的に絶縁されたキャリア要素に配置される。さらに、絶縁グレージングユニット1がフレーム3内にしっかりと保持されるように、金属製のフレーム要素3.1、3.2とガラスペイン4a、4bとの間にエラストマープロファイル7がそれぞれの場合に配置される。エラストマープロファイル7は、例えば、6.5mmの厚さを有し、それぞれのフレーム要素3.1、3.2とガラスペイン4a、4bとの間の距離を確定する。
【0079】
図1A図1Cのグレージングは、例として、第2のフレーム要素3.2に配置されたRFIDトランスポンダ9を備える。RFIDトランスポンダ9は、フレーム3内に配置され、そこで、ガラスペイン4a及び4bの大きな表面に対して平行に延びる、第2のフレーム要素3.2の内面に配置される。RFIDトランスポンダ9はまた、フレーム3内の他の位置、例えば、フレーム要素3.1、3.2、3.3の内側端面のうちの1つ、又は、ガラスペイン4a及び4bの大きな表面に対して平行に延びる、第1のフレーム要素3.1の内側面に配置し得ることは言うまでもない。この場合、金属製のフレーム要素3.1、3.2のうちの1つへのRFIDトランスポンダ9の配置は、より良い信号の結合及び分離のために好ましい。
【0080】
RFIDトランスポンダの動作周波数は、UHFの範囲であり、例えば、約866.6MHzである。
【0081】
さらに、絶縁グレージングユニット1の端面14に配置されるのは、結合要素10であり、例えば0.1mm厚の導電性箔からなり、例えばアルミニウム箔から作製される。ここで、結合要素10は、例えば、第1のフレーム要素3.1の内側端面14から、第2のフレーム要素3.3の内側端面14にわたって、かつ、第3のフレーム要素3.2の内側端面14にわたって延びている。
【0082】
ここで、結合要素10は、フレーム要素3.1,3.2,3.3(ここでは図示せず)に直接的に配置され得る。この構成は、特に簡単で経済的に製造することができる。
【0083】
あるいは、例えばポリマーフィルムから作製された絶縁層8が、結合要素10と、例えばポリマーフィルムからなるフレーム要素3.1、3.2、3.3のそれぞれの部分との間に配置される。ポリマーフィルムは、例えば、0.16mm厚のポリイミドフィルムからなる。絶縁層8は、結合要素10の片側又は両側の電気絶縁コーティングの一部であってもよいことは言うまでもない。さらに、結合要素10は、フレーム3に対して内側の第2のフレーム要素3.2の内側コーナーの周りに案内され、ガラスペイン4a及び4bの大きい面に対して平行に延びる第2のフレーム要素3.2の内面に沿って結合要素10の領域10.1に形成される。結合要素10は、RFIDトランスポンダ9と第2のフレーム要素3.2との間のこの領域10.1に配置される。さらに、結合要素10は、この領域10.1において、RFIDトランスポンダ10に電磁気的に結合される。加えて、結合要素10は、例えば、この領域10.1において第2のフレーム要素3.2に電気的に結合される。この領域10.1では、結合要素10は、例えば絶縁フィルムを介して、特に絶縁フィルム8の連続体を介して、第2のフレーム要素3.2にのみ電磁気的に結合され得ることは言うまでもない。領域10.1は、以下では、「片側突出部10.1」とも呼ばれる。突出部10.1の幅Uは、例えば、9mmである。
【0084】
結合要素10の一方の端部は、ダイポールアンテナ9.1の2つのアンテナポールのうちの1つにわたってほぼ一致して配置される。言い換えれば、結合要素10の端部は、ダイポールアンテナ9.1の中心に本質的に配置される。ここで、「一致して配置される」とは、結合要素10が、結合要素10のダイポールアンテナ9.1のアンテナポールの直角投影内に配置され、それを少なくとも完全に覆うことを意味する。言い換えれば、結合要素10は、平面図に関して、RFIDトランスポンダ9に配置され、ダイポールアンテナ9.1の1つのアンテナポールを完全に覆う。
【0085】
ダイポールアンテナ9.1の延びる方向に平行なその延伸方向、ひいてはフレーム3の長辺の延びる方向に平行なその延伸方向における結合要素10の長さLは、例えば15cmである。したがって、結合要素10は、ダイポールアンテナ9.1とほぼ同じ長さであるため、その端部を越えて片側に約50%まで突出している。
【0086】
図示の例では、RFIDトランスポンダ9は、ダイポールアンテナ9.1が誘電性キャリア体9.2に配置されたものである。これは、結合要素10及び第2のフレーム要素3.2の両方が導電性であるので必要である。誘電性キャリア体9.2がない場合、ダイポールアンテナ9.1は、導電性表面に直接的に配置されるため、「短絡」するであろう。誘電性キャリア体9.2を有するRFIDトランスポンダ9(いわゆる「オンメタル」RFIDトランスポンダ)を使用することによって、短絡を回避することができる。
【0087】
ここでの例では、RFIDトランスポンダ9の半分は、金属製のフレーム要素3.2の上方の結合要素10に接着又はクランプされ、他の半分は、フレーム要素3.2自体に接着又はクランプされる。
【0088】
図1Cに示すように、ダイポールアンテナ9.1は、第1のアンテナポール9.1.1と第2のアンテナポール9.1.2からなり、どちらも、RFIDトランスポンダ9の中心で電子機器に接続される。結合要素10は、第1のアンテナポール9.1.1を完全に覆い、第2のアンテナポール9.1.2とは反対を向く側に第1のアンテナポール9.1.1を越えて突出するように配置される。この被覆と、第1のアンテナポール9.1.1及び結合要素10の間の小さな距離との結果として、電磁気結合が生じる。
【0089】
図1A及び図1Cに詳細に示すように、結合要素10は、結合領域15において金属製の第2のフレーム3.2に結合される。この目的のために、結合要素10の導電性箔は、例えば、その全長にわたって、第2のフレーム要素3.2に対して載置され、それに電気的に接続される。RFIDトランスポンダ9の動作範囲において高周波信号を結合するためには、容量結合でも十分であることは言うまでもない。
【0090】
発明者らの調査で驚くべきことに明らかにされたように、結合要素10をグレージング2のフレーム3に結合することによって、RFIDトランスポンダ9のダイポールアンテナ9.1の信号を外部に伝導させることができ;逆に、信号を外部からRFIDトランスポンダ9に供給することができる。驚くべきことに、RFID信号の範囲は、結合要素10を有さない絶縁グレージングユニット1を有するグレージング2と比較して著しく増大する。
【0091】
これにより、RFID読み取り装置を用いて、最大1.5mの距離で信号を読み取り、RFIDトランスポンダ9に信号を送ることができた。特に、第2の結合された金属製のフレーム要素3.2が配置された絶縁グレージングユニット1の側に信号を送ることができた。
【0092】
図2Aは、本発明の別の実施形態による絶縁グレージングユニット1を備えたグレージング2の端部領域の詳細図(断面図)を示す。
【0093】
図2Bは、図2Aの矢印Bの視野方向における、図3Aのグレージング2の端面14に平行な断面におけるグレージングの詳細図(断面図)を示す。
【0094】
図2A及び図2Bは、図1A~Cの絶縁グレージングユニット1を有するグレージング2の要素及び構造を大部分有する変更された設計を示す。したがって、そこと同じ参照番号が使用され、その構造はここでは再び記載されない。図2Bの視野方向は、絶縁グレージングユニット1の側面からフレーム3内を指しており、すなわち、図2Aの矢印B方向に反している。
【0095】
図2A及び図2Bの絶縁グレージングユニット1は、結合要素10の設計において図1A及び図1Cと異なり、ここでは、フレーム2の内側端面を越えて両側に突出部10.1,10.1’を有する。これにより、結合要素10が第1及び第2のフレーム要素3.1、3.2に結合する2つの結合領域15、15’が生じる。全体として、これは、グレージング2の両側で同じ信号強度を達成することができるように、RFID信号の読み取り範囲を改善するための上述した特性の対称化につながる。
【0096】
さらに、ここでは、RFIDトランスポンダ9は、例えば、フレーム3に対して、結合要素10と絶縁層8とを介在させて、第2のフレーム要素3.2の内側端面に配置される。第1フレーム要素3.1又はフレーム要素3.3の内側端面にも配置され得ることは言うまでもない。
【0097】
表1は、図2A及び図2Bに従う絶縁グレージングユニット1を備えた本発明によるグレージング2の測定結果を、比較例と比較して示している。比較例は、図1A~Cに従うRFIDトランスポンダ9を有する本発明によらず、本発明による結合要素10を有さないグレージングである。
【0098】
【表1】
【0099】
比較測定のために、RFIDトランスポンダ9を携帯型RFIDリーダーで読み取り、リーダーをRFIDトランスポンダ9からの距離を増加させて配置した。距離は、レーザー距離測定器で測定した。最大読み取り範囲は、絶縁グレージングに対して測定を行った側とは無関係であった。
【0100】
従来技術のグレージング(結合要素なし)の外側領域13に配置されたRFIDトランスポンダ9の比較例では、0.5mの最大読み取り範囲が得られた。表1に報告された0.3m~0.5mの範囲は、リーダーがグレージングに対して保持された種々の角度から得られた。読み取り範囲は、種々のファサード形状によってさらに減少させられ得る。グレージングにおけるRFIDトランスポンダの位置が不明な場合、フレーム全体を検索しなければならないため、このような短い範囲は実用には不十分である。
【0101】
対照的に、本発明によるグレージング2のフレーム3内に配置された結合要素10を有する絶縁グレージングユニット1の場合、驚くべきことに、1.5mまでの範囲があった。これは、完全に実用上十分であり、RFIDトランスポンダ9が仕様書に従って有する距離の値の約半分に相当する。
【0102】
図3は、本発明の別の実施形態による端面14に平行な断面におけるグレージング2の詳細図(断面図)を示す。ここで、視野方向は、絶縁グレージングユニット1の側面からフレーム3内であり、すなわち、図2Aの矢印B方向に反している。
【0103】
ここで、結合要素10の一方の端部16は、ダイポールアンテナ9.1(ダイポール17の中心)に対して中心に配置されるのではなく、約10mmのオフセットVだけずれている。したがって、結合要素10は、第2のアンテナポール9.1.2の一部も覆っている。それにもかかわらず、ここでは良好なRFID信号が測定された。全体として、RFIDトランスポンダ9の動作周波数の半波長λ/2の20%のオフセットVまで、良好で実用的に利用可能な信号又は十分に大きい最大読み取り範囲を得ることができる。オフセットVが第1のアンテナポール9.1.1の方向にあるか、或いは、第2のアンテナポール9.1.2の方向にあるかは関係ない。本発明者による調査は、このような配置が受信/送信特性にも積極的に影響し、RFIDトランスポンダ9の達成可能な読み取り距離を増大させることを明らかにした。
【0104】
本発明の実施は、上述の実施例及び実施形態の強調された態様に限定されるものではなく、従属請求項から当業者に明らかな多数の変更も可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 絶縁グレージングユニット
2 グレージング、絶縁グレージング
3 フレーム
3.1,3.2 金属製の第1又は第2のフレーム要素
3.3 ポリマー製の第3のフレーム要素
4a,4b ガラスペイン
5 スペーサ
5’ スペーサフレーム
5.1,5.2 ペイン接触面
5.4 スペーサ5の内面
6 封止要素
7 エラストマープロファイル
8 絶縁層
9 RFIDトランスポンダ
9.1 ダイポールアンテナ
9.1.1,9.1.2 第1又は第2のアンテナポール
9.2 誘電性キャリア要素
10 結合要素
10’ 結合要素10の領域
10.1,10.1’ 突出部
12 内側領域
13 外側領域
13.1 外側領域13の外側
14 絶縁グレージングユニット1又はガラスペイン4a、4bの端面
15 結合領域
16 結合要素10の端部
17 ダイポールアンテナ9.1の中心
18 ガラスペイン4a又は4bの外面
19 ガラスペイン4a又は4bの内面
矢印A 平面図方向又はスルービジョン方向
矢印B 平面図方向
A 距離
L 長さ
λ 波長
U 突出量
V オフセット
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】