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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】成長板再生用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/32 20150101AFI20220914BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220914BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/726 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61K35/32
A61L27/38 112
A61L27/36 130
A61P19/04
A61K38/39
A61L27/36 312
A61K31/711
A61K31/726
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502613
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 KR2020009179
(87)【国際公開番号】W WO2021010702
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0086412
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミン ビョン-ヒュン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA12
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA28
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA26
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA28
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA96
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA28
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA03
4C087NA14
4C087ZA96
(57)【要約】
本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む成長板再生用組成物を提供する。成長板再生用組成物は、支持体なしに成長板損傷部位の骨架橋を抑制し、成長板軟骨組織に分化して損傷部位を効果的に充填及び再生させ、再生された成長板組織は成長能を回復することができる。また、組成物は、生体組織に適し、安全であり、再現性及び均質性が高い特徴を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む、成長板再生用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、
水、コラーゲン、グリコサミノグリカン(GAG)及びDNAからなり、ゲル状であることを特徴とする、請求項1に記載の成長板再生用組成物。
【請求項3】
前記組成物は、
前記組成物全体100重量部について、
前記水60~98重量部、前記コラーゲン5~15重量部、前記グリコサミノグリカン1~5重量部及び前記DNA 0.5~3.5重量部であることを特徴とする、請求項2に記載の成長板再生用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の組成物を含む、成長板損傷治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記組成物は、
侵襲点の切開または外傷手術時に手術切開部を通じて挿入されて、成長板損傷または欠損部位を再生させることを特徴とする、請求項4に記載の成長板損傷治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記組成物は、
成長板に移植された後、3~5週まで残存して骨架橋形成を抑制し、以後、前記成長板の組織に分化されることを特徴とする、請求項4に記載の成長板損傷治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記組成物は、
注射剤の形態に製造され、3~5℃の冷蔵状態で24時間保管可能であることを特徴とする、請求項4に記載の成長板損傷治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長板再生用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
成長板(Growth Plate)とは、肢骨の中央部と両端部との間に残っている軟骨組織であって、骨の長さの成長が起こる部分である。骨端軟骨とも称するが、肢骨がいずれも軟骨である胎児が成長しながら、軟骨の中央部が骨に変わりながら、両端に次第に広がり(一次骨化中心)、肢骨の両端にまだ骨に変わっていない軟骨部位に自体的に、また骨に変わる部分が表われる(二次骨化中心)。このように骨に変わり、その間に残りの軟骨部分が成長板になり、思春期になると、成長板もいずれも骨に変わりながら、長さの成長が終わる。
【0003】
成長板骨折形態を5種に分類したソルターハリス(Salter-Harris)分類法によれば、第1型は、骨折が最も軽い場合であって、X線によっても観察されない場合が多く、はやければ3週以内に回復され、他の問題を残さない方である。第2型は、骨折が成長板上にある形態であって、成長板損傷部分及び成長板損傷がない部分が形成され、必要に応じて手術的治療ができる。第3、4型及び第5型は、第1、2型に比べて重い場合であって、まず、第3型は、骨折が成長板下の関節面まで広がっている形態であって、部分的な成長障害を示すことができる。第4型は、骨折が成長板を通過して関節まで進行した場合であって、手術的治療が必要であり、処置なしにそのままにしておく場合、骨の変形などが生じてしまう。第5型は、垂直に力が加えられて生じる骨折であって、成長板骨折中で成長障害などの最も悪い予後をもたらす。第1型及び第2型は、2~40%程度発生し、第3型及び第4型は、8~50%程度発生する。
【0004】
一般的に、損傷した成長板の40~70%で骨架橋が形成され、これによる骨の成長に問題が生じて、長さの成長障害、角変形などの深刻な問題が発生する。現在、このような問題を解決するための治療方法として障害発生以後、成長板が閉じるまで待って施行される変形矯正術があるが、これは、複数回の手術が必要であり、変形残存、神経損傷、フィラーなど多くの後遺症を伴う問題点がある。変形初期に施行することができる手術としては、骨形成部位除去術があるが、成長板で骨化が起こった部位を除去した後、自家脂肪組織、シリコン、ボーンワックス(bone wax)などの骨化遮蔽材を挿入するが、前記骨化遮蔽材は、成長板の機能までは行えない限界がある。したがって、成長板損傷の根本的な治療のための新たな治療剤が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記問題を解決するために、本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む成長板再生用組成物を提供する。
【0006】
また、本発明は、前記成長板再生用組成物を含む成長板損傷治療用薬学組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による成長板再生用組成物は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含みうる。
【0008】
本発明による成長板損傷治療用薬学組成物は、前記成長板再生用組成物を含みうる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による組成物は、生体組織に適し、再現性及び均質性が高く、人工支持体なしに組織工学的にゲル状の成長板類似組織に分化される。
【0010】
前記組成物は、成長板損傷部位の骨架橋を抑制し、成長板軟骨組織に分化して損傷部位を効果的に充填及び再生させ、それによって再生された成長板は、成長能などの機能が回復される。
【0011】
また、前記組成物は、安全であり、手術時に、特別な手術機器を要さず、損傷部位のサイズ及び形状に関係なく、容易に移植することにより、より簡便に損傷した成長板を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による成長板ゲルを利用した成長板治療方法を簡略に示した図面である。
図2】本発明の一実験例によるウサギの損傷した成長板内に前記実施例2によって製造された成長板ゲルを移植する過程を示した図面である。
図3図2によるウサギ成長板損傷モデルのマイクロ-CT(micro-CT)イメージ及び組織分化を確認したイメージである。
図4図2によるウサギ成長板損傷モデル実験の免疫染色イメージである。
図5】本発明の一実験例によるラットモデルである。
図6】本発明の一実験例によるラットモデルの長さ及び角変形の測定結果グラフである。
図7】本発明の一実験例によるラットモデルの組織分化を確認したイメージである。
図8】本発明の一実験例によるラットモデルの組織分化を確認したイメージである。
図9】本発明の一実験例によるラットモデルの4、14、21、28週目のサフラニン-O(Safranin-O)及びu-CTイメージである。
図10】培養方法による成長板ゲルの特徴を観察したものである。
図11】遠心分離(centrifuge)条件による成長板ゲルの特徴を示した図面である。
図12】本発明の一実施例によって製造された成長板ゲルの形状である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む成長板再生用組成物を提供する。
【0015】
本発明において、「胎児軟骨組織由来の細胞」は、胎児軟骨組織から分離された細胞を総称し、望ましくは、コラゲナーゼ(collagenase)などを用いて軟骨組織を完全に消化させた後、分離された軟骨前駆細胞(chondrocytes)である。
【0016】
本発明において、「胎児軟骨組織由来の細胞外基質(Extracellular Matrix)」は、胎児軟骨組織由来の細胞から細胞によって合成され、細胞外に分泌、蓄積された分子で構成されている生体高分子の集合体であって、コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)などの繊維性タンパク質、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan、GAG)などの複合タンパク質、フィブロネクチン(fibronectin)、ラミニン(laminin)などの細胞付着性タンパク質などを含みうる。前記細胞外基質は、前記のようなタンパク質で組織の形状を成しながら、組織の物理的性質を決定し、細胞の環境の保持に重要な役割を果たす。
【0017】
本発明において、「成長板」は、動物の長さの成長を担当する部位かつヒトの身長を伸ばす身体部位であって、長骨(long bone)の端部に存在する一種の軟骨(cartilage)である。組織学的には、ガラス軟骨(硝子軟骨、hyaline cartilage)に属し、骨端板とも称する。
【0018】
本発明において、「再生(regeneration)」は、さまざまな原因で組織または器官の欠損などが起こった場合、以前と同じ組織または器官にその欠損部を補充、修復、回復させようとする作用を言う。
【0019】
本発明による成長板再生用組成物は、水、コラーゲン、グリコサミノグリカン(GAG)及びDNAからなり、ゲル(gel)状である。より詳細には、前記組成物全体100重量部について、前記水60~98重量部、前記コラーゲン5~15重量部、前記グリコサミノグリカン1~5重量部及び前記DNA 0.5~3.5重量部である。
【0020】
本発明において、「ゲル」は、ゼリーと類似した物質であって、柔らかくて弱い範囲から強くて粗い範囲までの物性を有し、ゲルのほとんどの重量は、液体(liquid)であるが、3次元ネットワーク構造によって全体としては固体のように行動し、「ゲル」と混用して使われる。
【0021】
本発明は、前記成長板再生用組成物を含む成長板損傷治療用薬学組成物を提供する。
【0022】
本発明において、前記「成長板損傷」は、成長板、成長板組織などが機械的刺激や炎症反応による損傷、欠陥、欠損が発生したものであって、これによる疾患も含まれる。
【0023】
本発明による薬学組成物は、侵襲点の切開または外傷手術時に手術切開部を通じて挿入されて、成長板損傷または欠損部位を再生させることができる。成長板が損傷した後、4週以内に骨架橋が形成されうるが、前記薬学組成物は、成長板に移植された後、3~5週、望ましくは、4週まで残存して骨架橋形成を抑制し、以後、成長板類似組織に分化される。また、前記成長板類似組織に再生された後、前記組織は、成長板としてのその機能が回復され、成長能などが継続的に行われる。
【0024】
本発明による薬学組成物は、成長板損傷または欠損部位に直接注入可能な形態で剤形化され、例えば、支持体なしに前記細胞及び細胞外基質を含むゲル状である。
図1は、本発明の一実施例による成長板ゲルを利用した成長板治療方法を簡略に示したものであって、前記組成物は、望ましくは、図1のように前記ゲルを含む注射剤の形態に製造されて移植される。
【0025】
また、前記注射剤は、生理食塩液、リンゲル液、Hank溶液または滅菌された水溶液などの水性溶剤、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル及びエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはグリセリンなどの非水性溶剤などを用いて製造可能であり、粘膜透過のために、通過するバリアに適した当業者に公知の非浸透性剤が使われ、変質防止のための安定化剤として、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなどと、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなどの微生物発育を阻止するための保存剤などの薬学的に許容可能な担体をさらに含みうる。前記注射剤は、3~5℃、望ましくは、4℃の冷蔵状態で24時間保管される。
【0026】
本発明による薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与される。前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で成長板損傷の治療に十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味する。
【0027】
前記薬学組成物の有効容量レベルは、使用目的、患者の年齢、性別、体重及び健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって異なるように決定される。本発明による薬学組成物は、前記成長板損傷または欠損部位のサイズによって適切な容量で移植される。
【0028】
また、本発明は、成長板再生用組成物の製造方法を提供する。
【0029】
本発明による成長板再生用組成物の製造方法は、ヒト胎児軟骨組織から分離された軟骨前駆細胞を培養する第1段階;前記培養された軟骨前駆細胞から前記細胞及びその細胞外基質を含む細胞膜を収得する第2段階;前記収得された細胞膜を軟骨分化培地に入れ、遠心分離して細胞ペレットを得る第3段階;及び前記得た細胞ペレットを前記軟骨分化培地で培養して成長板ゲルを製造する第4段階;を含みうる。
【0030】
本発明による製造方法において、前記第1段階は、ヒト胎児軟骨組織から分離された軟骨前駆細胞を培養する段階であって、前記軟骨前駆細胞は、胎児の関節部位から分離された軟骨組織から得られる。本発明の一実施例によれば、12~15週齢の胎児のヒザ関節から軟骨組織を分離した。
【0031】
前記軟骨組織は、コラゲナーゼ、ペプシンのようなプロテアーゼ(protease)で処理され、それによって放出された細胞を集めて遠心分離した後、沈殿された軟骨前駆細胞を培養培地に接種することができる。前記軟骨前駆細胞は、抗生剤が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Egle Medium;DMEM)で培養されるが、これに制限されず、以外の通常使われる培養培地で培養される。本発明の一実施例によれば、前記軟骨前駆細胞は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)、50units/mLペニシリン(penicillin)及び50μg/mLストレプトマイシン(streptomycin)が添加されたDMEMで15~18日間単層培養された。
【0032】
本発明による製造方法において、前記第2段階は、前記第1段階で培養された軟骨前駆細胞から前記細胞及びその細胞外基質を含む細胞膜を収得する段階であって、一般的な細胞の取得方法とは異なって、本発明では、前記細胞及び細胞外基質をいずれも含む細胞膜を収得することができる。本発明の一実施例によれば、培養後、培地を除去し、0.05%トリプシン-EDTAを添加して処理後、細胞をピペットで分離せず、細胞及び細胞外基質を含む細胞膜全体を一回に収得した。
【0033】
本発明による製造方法において、前記第3段階は、前記第2段階で収得された細胞膜を軟骨分化培地に入れ、遠心分離して細胞ペレットを得る段階であって、前記「軟骨分化培地」は、試験管内成長及び生存を支持し、成長板再生用組成物として製造可能に栄養分を供給することができる培地を意味し、培養期間の間に細胞から分泌された基質などと細胞培養に消耗し、残りの栄養成分などをいずれも含みうる。本発明の一実施例によれば、前記軟骨分化培地として1%抗生剤-抗真菌剤(antibiotic-antimycotic)、1.0mg/mLインスリン(insulin)、0.55mg/mLヒトトランスフェリン(human transferrin)、0.5mg/mL亜セレン酸ナトリウム(sodium selenite)、50μg/mLアスコルビン酸(Ascorbic acid)、1.25mg/mLウシ血清アルブミン(bovine serum albumin;BSA)、100nMデキサメタゾン(dexamethasone)、40μg/mLプロリン(proline)及び10ng/ml TGF-βを含むダルベッコ改変イーグル培地-高グルコース(Dulbecco’s Modified Egle Medium-High Glucose;DMEM-HG)を使用した。
【0034】
前記第3段階の遠心分離は、200~1500×gの回転数で10~30分間行われる。望ましくは、1000×gの回転数で20分間行われる。前記遠心分離条件による組織の形状及び物性の変化はないが、前記回転数と遂行時間とで最も安定した再現性が表われる。
【0035】
本発明による製造方法において、前記第4段階は、前記第3段階で得た細胞ペレットを前記軟骨分化培地で培養して成長板ゲルを製造する段階であって、前記培養方法によって成長板ゲルの特性が変わりうる。本発明の一実験例によれば、ウェルプレートで高密度培養時に、培養期間が長くなるほどメンブレンが厚くなりながら、全体的な組織のサイズが大きくなり、物性が柔らかくなる傾向が表われた。また、ウェル数が多くなるほどメンブレンが薄くなり、サイズが小さくなる傾向が表われた。これにより、前記培養は、6~24ウェル(well)プレートで1~3日間行われ、望ましくは、6ウェルプレートで3日間高密度(High density、HD)で培養され、この際、組織の製作再現性及び製作均質性がより高くなる。このように製造された成長板ゲルは、支持体なしに前記細胞及び細胞外基質のみからなり、より詳細には、水、コラーゲン、グリコサミノグリカン(GAG)及びDNAからなりうる。
【0036】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0037】
<実施例1>ヒト胎児軟骨組織由来の軟骨前駆細胞の分離及び培養
【0038】
胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を含む成長板ゲルの製造のために、12~15週齢の胎児のヒザ関節から軟骨前駆細胞を分離した。前記ヒザ関節から分離された軟骨組織をリン酸緩衝溶液(phosphated buffered saline;PBS)で洗浄した後、37℃、5% COインキュベーターで0.2%(w/v)コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corp.,Lakewood,NJ)を含むダルベッコ改変イーグル培地(以下、DMEM、Gibco,Grand Island,NY)で4時間培養した。軟骨組織が完全に消化されて放出された軟骨細胞を1700rpmで10分間遠心分離した後、沈殿された軟骨前駆細胞を組織培養皿(培養皿当たり1×10cellsの密度に150mm(dia.)×20mm(h))に接種した。
【0039】
<実施例2>成長板ゲルの製作
【0040】
前記実施例1から収得した軟骨前駆細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)、50units/mLペニシリン及び50μg/mLストレプトマイシンが添加されたDMEMに2×10cellsで希釈した後、15~18日間単層培養した。培養後、培地を除去し、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)を添加して細胞外基質と結合された細胞膜を収得した。細胞及び細胞外基質が結合された細胞膜の収得は、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)処理後、細胞をピペットで分離せず、細胞及び細胞外基質を含む細胞膜全体を一回に収得した。
【0041】
収得した細胞及び細胞外基質を含む細胞膜を軟骨分化培地(1%抗生剤-抗真菌剤)、1.0mg/mLインスリン、0.55mg/mLヒトトランスフェリン、0.5mg/mL亜セレン酸ナトリウム、50μg/mLアスコルビン酸、1.25mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、100nMデキサメタゾン、40μg/mLプロリン及び10ng/ml TGF-βを含むDulbecco’s Modified Egle Medium-High Glucose;DMEM-HG)が含まれた50mlチューブに入れ、250×gで20分間遠心分離してペレット状の構造体を製造した。
【0042】
製造された細胞ペレットを前記組成と同一の軟骨分化培地が入れられた培養皿に入れ、37℃、5% COインキュベーターで1週、2週及び3週間培養して成長板ゲルを製造した。
【0043】
<実験例1>ウサギ成長板損傷モデルで成長板ゲル注入による組織特性の変化及び成長板組織への活性確認
【0044】
図2は、本発明の一実験例によるウサギの損傷した成長板内に前記実施例2によって製造された成長板ゲルを移植する過程を示したものである。ウサギは、成長板の直接的な役割である骨の長さと角変形とに対する結果を確認することができて、本発明の治療機転でターゲットする成長板ゲルの開発の役割を正確に確認可能なモデルである。
【0045】
図2を参照すれば、ウサギで成長板部分を2mmのパンチで2回斜めに穿孔した後、本発明の実施例2によって製造された成長板ゲルを移植した後、移植部位を分離し、凍結切片機を使用して4μmの厚さに切片してスライドを製作して、骨の成長形態及び移植した成長板ゲルの動態を確認した。グループ1(group 1)は、成長板を損傷させた陰性対照群(negative control)であり、グループ2は、現在臨床で最も多く使われているボーンワックスを移植した陽性対照群(positive control)である。
【0046】
図3は、図2によるウサギ成長板損傷モデルのマイクロ-CTイメージ及び組織分化を確認したイメージである。
【0047】
図3を参照すれば、前記ウサギ成長板損傷モデルのマイクロ-CTイメージを確認した結果、4週目では、各グループ(normal(成長板正常モデル)、group 1(成長板損傷モデル/陰性対照群)、group 2(ボーンワックス移植モデル/陽性対照群)、group 3(成長板ゲル移植モデル))で確実な差はなかったが、8週後の場合、各グループごとに確実な差が表われた。陰性対照群(グループ1)と陽性対照群(グループ2)とで骨の角変形が起こっており、陽性対照群(グループ2)のボーンワックスは、移植空間を満たす効果はあるが、移植材が骨組織で保持される限界があった。一方、成長板ゲル移植モデル(グループ3)の場合、軟骨を形成させて肉眼で観察した時にも、移植した部位が見られないほど成長板正常モデル(normal)の骨角度と同一の正常軟骨で再生されて成長板ゲルの有効性を確認することができた。
【0048】
また、サフラニン-O(SO)、ヘマトキシリン&エオシン(Hematoxylin & Eosin;H&E、HE)染色を通じて、陰性対照群(グループ1)と陽性対照群(グループ2)との場合には、損傷部位に骨組織が形成される一方、成長板ゲル移植モデル(グループ3)の場合には、薄いが、軟骨組織が成長板位置に位置していることを確実に確認することができた。
【0049】
図4は、図2によるウサギ成長板損傷モデル実験の免疫染色イメージであって、Aは、ウサギ成長板正常モデルの免疫染色イメージであり、Bは、成長板ゲル移植モデル(グループ3)の免疫染色イメージである。
【0050】
図4を参照すれば、成長板ゲル移植モデル(グループ3)で成長板正常モデル(normal)の場合と類似にコラーゲンと糖タンパクとを形成していることが確認され、骨形成段階であるコラーゲンX(col X)の場合、8週以後に形成されて骨化が遅く起こるか、防止されると予想された。
【0051】
<実験例2>ラット(rat)成長板損傷モデルで成長板ゲル注入による変化確認
【0052】
図5は、本発明の一実験例によるラットモデルである。前記実験例1によるウサギモデルの場合、成長板の役割を臨床的効果として確認可能な一方、大量の動物試験及び作用機転を研究するには限界があるので、ラットモデルで成長板損傷及び治療効果について実験した。
【0053】
図6は、本発明の一実験例によるラットモデルの長さ及び角変形の測定結果グラフである。陰性対照群であるラット成長板損傷モデル(グループ1)、陽性対照群であるボーンワックス移植モデル(グループ2)及び成長板ゲル移植モデル(グループ3)の4週後の長さの成長及び角変形を測定した。
【0054】
図6を参照すれば、長さの成長の場合には、ラット成長板損傷モデル(グループ1)のみで長さの成長に対する差が観察され、角変形の場合には、ラット成長板損傷モデル(グループ1)で最も大きく観察され、ボーンワックス移植モデル(グループ2)でもグループ1ほどではないが、角変形が観察された。
【0055】
図7及び図8は、本発明の一実験例によるラットモデルの組織分化を確認したイメージである。
【0056】
図7及び図8を参照すれば、サフラニン-O及びヘマトキシリン&エオシンの染色結果、4週後、ラット成長板損傷モデル(グループ1)及びボーンワックス移植モデル(グループ2)では、損傷部位に骨組織が形成されたが、成長板ゲル移植モデル(グループ3)の場合には、骨分化は起こらず、軟骨組織で保持されたことを確認することができた。また、成長する部位に肥大性マーカー(hypertrophic marker)が発現されることにより、長さの成長の可能性を確認することができた。
【0057】
また、成長板ゲル移植モデル(グループ3)で成長板ゲルが移植されたと予想される部位をHuNA(humen cell marker)染色することにより、移植された組織を確認し、PCNA(proliferating cell marker)染色を通じて増殖細胞を確認した。
【0058】
図9は、本発明の一実験例によるラットモデルの4、14、21、28週目のサフラニン-O及びu-CTイメージである。
【0059】
図9を参照すれば、移植後、4、14、21、28週にサフラニン-Oとu-CTとを行った結果、同じ傾向性が表われることを確認した。ラット成長板損傷モデル(グループ1)及びボーンワックス移植モデル(グループ2)では、成長板損傷部位の軟骨組織が発見されず、u-CT結果で骨が形成されたことを確認した。特に、ラット成長板損傷モデル(グループ1)は、あらゆる週齢で角変形が観察された。
【0060】
<実験例3>培養方法による成長板ゲルの特性確認
【0061】
図10は、培養方法による成長板ゲルの特徴を観察したものであって、組織培養容器及び高密度(HD)培養期間による組織のサイズ、物性(Handling test)を確認した。
【0062】
図10を参照すれば、既存に構築された60mmのディッシュ(dish)で高密度(HD)で5~6日間培養していた方法を、6ウェル、12ウェル、24ウェルにおいて高密度で1、2、3日間培養する方法を施行した。培養プレートで高密度で培養時に、1日目にもメンブレン(membrane)がよく形成され、高密度培養期間が長くなるほどメンブレンが厚くなりながら、全体的な組織のサイズが大きくなり、物性も柔らかくなる傾向が表われた。また、6ウェル、12ウェル、24ウェルに行くほどメンブレンは薄くなり、サイズも小さくなる傾向が表われた。このような結果に基づいて、成長板ゲルの製造時に、組織の製作再現性及び製作均質性が高い6ウェルプレートで3日の高密度培養期間を最適化された工程として確立した。
【0063】
図11は、遠心分離条件による成長板ゲルの特徴を示したものであって、2次元培養後、3次元培養に移る前段階である遠心分離条件を調整した時、前記成長板ゲルの物性に如何なる影響を与えるかを確認した。
【0064】
図11を参照すれば、以前に確立された遠心分離条件である1000×g、20分で、500×g、20分、250×g、20分に設定して施行した結果、遠心分離条件による組織の形状と物性の変化はないと表われ、組織のサイズは、1000×gから250×gに行くほど小さくなる傾向を表わした。このような結果に基づいて、250×g、20分の条件で組織の体積が最も大きいが、高密度培養された膜が乾かす過程で1000×g、20分条件の場合に最も安定した再現性が表われるので、1000×g、20分を最適化された工程として確立した。
【0065】
<製造例1>成長板ゲル
【0066】
図12は、本発明の一実施例によって製造された成長板ゲルの形状である。
【0067】
図12を参照すれば、前記成長板ゲルは、無色の円(球)状の人工軟骨ゲルであって、20±15μg/mg(または、2±1.5%)のDNA、800±180μg/mg(または、80±18%)の水分、30±20μg/mg(または、3±2%)のグリコサミノグリカン(GAG)及び100±50μg/mg(または、10±5%)のコラーゲンからなることが確認された。
【0068】
また、4×10cells以上の軟骨細胞で完成医薬品を作った時、重量は、50±20mgと測定され、ゲルタイプの人工軟骨の完成医薬品の物性は、10±8kPaと測定された。
【0069】
<比較例1>ボーンワックス、シラスティック(silastic)との比較
【0070】
既存の製品であるボーンワックス及びシラスティック(シリコン)と本発明の一実施例による成長板ゲルとを比較した時、既存の製品は、骨遮蔽機能に優れた緻密ゲルであるが、単純遮蔽機能の材料であって、むしろ成長板欠損部位を発生させる問題点を有する。
【0071】
一方、前記成長板ゲルは、組織工学製剤であって、遮蔽機能に優れ、細胞分化及び細胞外基質の再生性で組織復元が可能であり、さらにリモデリング及び成長も可能な特徴を有する。
【0072】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】