(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】外科手術のためのパラメータを推奨するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20220914BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20220914BHJP
【FI】
A61B34/10
G16H30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502811
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2020042143
(87)【国際公開番号】W WO2021011657
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521123079
【氏名又は名称】サージカル シアター,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アヴィサル,モルデチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ゲリ,アロン,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ナブロツキー,ギディ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA26
(57)【要約】
人工知能外科計画システムは、入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信することと、受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成することであって、外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成することと、外科手術が行われるべき患者のための現在の外科手術データを受信することと、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、受信された現在の外科手術データに適用することと、推奨される手術パラメータをディスプレイに出力することとを行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工知能外科計画システムであって、
ディスプレイと、
1つ以上のプロセッサ、1つ以上のコンピュータ可読有形記憶デバイス、および前記1つ以上のプロセッサのうちの少なくとも1つによる実行のために前記1つ以上の記憶デバイスのうちの少なくとも1つに記憶されたプログラム命令を含むコンピュータであって、前記プログラム命令が、
入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信することと、
前記受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成することであって、前記外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成することと、
外科手術が行われるべき患者のための現在の外科手術データを受信することと、
前記現在の患者に対して行われるべき前記外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、前記生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、前記受信された現在の外科手術データに適用することと、
前記推奨される手術パラメータを前記ディスプレイに出力することと
を行うように構成されている、コンピュータとを備える
人工知能外科計画システム。
【請求項2】
前記コンピュータが、複数のデータソースとネットワーク接続され、複数の場所の複数の病院で複数の外科医によって行われた外科手術の履歴データを受信するように構成されている、請求項1に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項3】
前記外科手術履歴データが、患者に固有の外科手術に関する情報、特定の外科手術に使用されるパラメータ、および患者のための外科手術の結果のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項4】
前記外科手術パラメータアルゴリズムが、開頭術を行うための推奨パラメータを識別するように構成されている、請求項1に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項5】
前記推奨されるパラメータが、入口点および軌道を含む、請求項5に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項6】
前記ディスプレイが、拡張現実ヘッドマウントディスプレイを含み、前記コンピュータが、前記推奨される手術パラメータを前記現在の患者の実際のビューの上に重ねることによって、前記推奨される手術パラメータを出力するように構成されている、請求項1に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項7】
前記外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の患者のための複数の推奨される手術パラメータを識別し、前記外科手術履歴データに基づいて、前記複数の推奨される手術パラメータの各々の対応する成功率を計算するように構成されており、前記コンピュータが、前記複数の推奨される手術パラメータおよび前記対応する成功率を前記ディスプレイに出力するように構成されている、請求項1に記載の人工知能外科計画システム。
【請求項8】
外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するための方法であって、
入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信するステップと、
前記受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成するステップであって、前記外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成するステップと、
外科手術が行われるべき患者のための現在の外科手術データを受信するステップと、
前記現在の患者に対して行われるべき前記外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、前記生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、前記受信された現在の外科手術データに適用するステップと、
前記推奨される手術パラメータをディスプレイに出力するステップと
を含む方法。
【請求項9】
入力として、外科手術履歴データを受信することが、複数の場所の複数の病院で複数の外科医によって行われた外科手術の履歴データを受信することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記外科手術履歴データが、患者に固有の外科手術に関する情報、特定の外科手術に使用されるパラメータ、および患者のための外科手術の結果のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記外科手術パラメータアルゴリズムが、開頭術を行うための推奨パラメータを識別するように構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記推奨されるパラメータが、入口点および軌道を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記推奨される手術パラメータをディスプレイに出力することが、前記推奨される手術パラメータを拡張現実ヘッドマウントディスプレイに出力し、前記推奨される手術パラメータを前記現在の患者の実際のビューの上に重ねることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の患者のための複数の推奨される手術パラメータを識別し、前記外科手術履歴データに基づいて、前記複数の推奨される手術パラメータの各々の対応する成功率を計算するように構成されており、前記推奨される手術パラメータをディスプレイに出力することが、前記複数の推奨される手術パラメータおよび前記対応する成功率を前記ディスプレイに出力することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するための方法であって、
入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信するステップであって、前記外科手術データが、患者に固有の開頭手術に関する情報を含む、受信するステップと、
開頭術を行うための入口点と軌道の両方を含む推奨されたパラメータを識別するように構成された外科手術パラメータアルゴリズムを生成するステップであって、前記アルゴリズムが、前記受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用し、前記外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成するステップと、
外科手術が行われるべき前記患者のための現在の外科手術データを受信するステップと、
前記現在の患者に対して行われるべき前記外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、前記生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、前記受信された現在の外科手術データに適用するステップと、
前記推奨される手術パラメータを拡張現実ヘッドマウントディスプレイに出力し、前記推奨される手術パラメータを前記現在の患者の実際のビューの上に重ねるステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記外科手術パラメータアルゴリズムが、入口点と軌道の両方を含む現在の患者のための複数の推奨される手術パラメータを識別するようにも構成されており、前記外科手術パラメータアルゴリズムが、前記外科手術履歴データに基づいて、前記複数の推奨される手術パラメータの各々の対応する成功率を計算するようにも構成されており、前記推奨される手術パラメータをディスプレイに出力することが、前記複数の推奨される手術パラメータおよび前記対応する成功率を前記ディスプレイに出力することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
入力として、外科手術履歴データを受信することが、複数の場所の複数の病院で複数の外科医によって行われた外科手術の履歴データを受信することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
入力として、外科手術履歴データを受信することが、複数の場所の複数の病院で複数の外科医によって行われた外科手術の履歴データを受信することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/874,307号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、外科手術の分野に関し、より詳細には、人工知能支援手術の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
外科手術は、一般に、様々な患者のニーズに対処するために、訓練された医療専門家によって行われる。例えば、腫瘍を取り除くために脳手術が行われ、冠動脈の血流を改善するために心臓バイパス手術が行われ、腰痛を緩和するために脊椎手術が行われ得る。これらの外科手術を行うために、最初に様々なパラメータを決定しなければならない。例えば、どこを切開するか、およびどの程度切開するかは、多くの場合、手術の開始前に決定されなければならない。これらのパラメータを適切に選択することで、例えば、結果が成功し、回復時間が速くなる可能性がある。しかしながら、パラメータの選択を誤ると、回復時間が遅くなったり、合併症のために、さらなる通院および外科手術が必要になったりする可能性がある。
【0004】
特に、脳手術を行うには、まず頭蓋骨の骨の一部を取り外して脳を露出させる開頭術を行う必要がある。開頭術を行う前に、外科医は、脳内の脳腫瘍に到達するための軌道を含む適切なアプローチを選択しなければならない。この軌道に基づいて、外科医はまた、頭蓋内の入口点、ならびに露出されるべき入口点のサイズおよび形状を選択しなければならない。
【0005】
外科手術のためのそのようなパラメータを決定するために、外科医は、一般に、X線、MRI、およびCTスキャンのような医用画像をレビューすることによって開始する。次いで、外科医は、医用画像のレビューに基づいて、また、外科医の個々の訓練および経験に基づいて、パラメータを決定する。しかしながら、外科医の経験が限られているか、または訓練が不十分である場合、外科医のパラメータの選択は、最適な結果をもたらさない可能性がある。さらに、医用画像の分析は、少なくとも部分的に主観的プロセスであり得るので、同じような訓練および経験を有する複数の外科医は、依然として、若干異なるパラメータを選択し得、そのうちの一部は、最適な結果をもたらさない可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
人工知能外科計画システムは、ディスプレイと、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のコンピュータ可読有形記憶デバイス、および1つ以上のプロセッサのうちの少なくとも1つによる実行のために1つ以上の記憶デバイスのうちの少なくとも1つに記憶されたプログラム命令を有するコンピュータとを含む。プログラム命令は、入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信することと、受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成することであって、外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成することと、外科手術が行われるべき患者のための現在の外科手術データを受信することと、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、受信された現在の外科手術データに適用することと、推奨される手術パラメータをディスプレイに出力することとを行うように構成されている。
【0007】
外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するための方法は、入力として、複数の患者に対して以前に行われた複数の外科手術に関する外科手術履歴データを受信するステップと、受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成するステップであって、外科手術パラメータアルゴリズムが、現在の外科手術データに基づいて、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するように構成されている、生成するステップと、外科手術が行われるべき患者のための現在の外科手術データを受信するステップと、現在の患者に対して行われるべき外科手術のための推奨される手術パラメータを識別するために、生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、受信された現在の外科手術データに適用するステップと、推奨される手術パラメータをディスプレイに出力するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面において、以下に提供される詳細な説明とともに、特許請求される本発明の例示的な実施形態を説明する構造が示される。同様の要素は、同じ参照番号で識別される。単一の構成要素として示される要素は、複数の構成要素で置き換えられてもよく、複数の構成要素として示される要素は、単一の構成要素で置き換えられてもよいことを理解されたい。図面は縮尺通りではなく、特定の要素の比率は、例示の目的のために誇張されている場合がある。
【0009】
【
図1】例示的なAI外科計画システムを示す図である。
【
図2】例示的なAI外科計画システムを示す図である。
【
図4】例示的なAI外科計画システムを示す図である。
【
図5】外科手術のためのパラメータを推奨するための例示的な方法を示す図である。
【
図6】
図1~
図4の例示的なAI外科計画システムを実装する例示的なコンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の頭字語および定義は、詳細な説明の理解を助けるであろう。
【0011】
AR-拡張現実(Augmented Reality)-サウンド、ビデオ、またはグラフィックスなどコンピュータで生成された感覚的な要素によって要素が拡張された、物理的な現実世界環境のライブビュー。
【0012】
VR-仮想現実(Virtual Reality)-人が様々な程度で探索し、対話することができる、3次元コンピュータ生成環境。
【0013】
HMD-ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)は、ARまたはVR環境で使用することができるヘッドセットを指す。これは、有線でも無線でもよい。また、ヘッドホン、マイクロホン、HDカメラ、赤外線カメラ、ハンドトラッカ、位置トラッカなど1つ以上のアドオンを含むこともできる。
【0014】
コントローラ-ボタンおよび方向コントローラを含むデバイス。これは、有線でも無線でもよい。このデバイスの例としては、Xboxゲームパッド、PlayStationゲームパッド、Oculus touchなどがある。
【0015】
SNAP Model-SNAPケースは、DICOMファイル形式で患者の1つ以上のスキャン(CT、MR、fMR、DTIなど)を使用して作成された3Dテクスチャまたは3Dオブジェクトを指す。これはまた、特定の範囲をフィルタリングし、3Dテクスチャ内の他の範囲を着色するための異なるプリセットのセグメンテーションを含む。また、特定の点または関係する解剖学的構造をマークするための3D形状、3Dラベル、3D測定マーカ、ガイダンス用の3D矢印、および3D外科用ツールを含む、シーン内に配置された3Dオブジェクトも含み得る。外科用ツールおよびデバイスは、教育および患者固有のリハーサルのために、特に動脈瘤クリップを適切にサイジングするためにモデル化されてきた。
【0016】
アバター-アバターは、仮想環境内のユーザを表す。
【0017】
MD6DM-多次元完全球形仮想現実、6自由度モデル(Multi Dimension full spherical virtual reality,6 Degrees of Freedom Model)。これは、医師が完全球形仮想現実環境において介入を経験し、計画し、実行し、ナビゲートすることを可能にするグラフィカルシミュレーション環境を提供する。
【0018】
参照により本出願に組み込まれる、米国特許出願第8,311,791号に以前に記載された手術リハーサルおよび準備ツールは、静的CTおよびMRI医用画像を、医師が医学的処置をリアルタイムでシミュレートするために使用することができる、あらかじめ構築されたSNAPモデルに基づいて、動的な対話型の多次元完全球形仮想現実、6自由度モデル(「MD6DM」)に変換するために開発された。MD6DMは、医師が完全球形仮想現実環境において介入を経験し、計画し、実行し、ナビゲートすることを可能にするグラフィカルシミュレーション環境を提供する。特に、MD6DMは、外科医に、従来の2次元患者医療スキャンから構築された一意の多次元モデルを使用してナビゲートする能力を与え、これは、体積球形仮想現実モデル全体において、6自由度(すなわち、線形、x、y、z、および角度、ヨー、ピッチ、ロール)の球形仮想現実を与える。
【0019】
MD6DMは、CT、MRI、DTIなどを含む医用画像の患者自身のデータセットから構築されたSNAPモデルを使用してリアルタイムでレンダリングされ、患者固有である。Atlasデータなどの代表的な脳モデルを統合して、外科医がそのように望む場合、部分的に患者固有のモデルを作成することができる。このモデルは、MD6DM上の任意の点から360°の球形ビューを与える。MD6DMを使用して、視聴者は、解剖学的構造の実質的に内側に位置し、あたかも患者の体内に立っているかのように、解剖学的構造と病理学的構造の両方を見て観察することができる。視聴者は、上、下、肩越しなどを見ることができ、患者に見られるのとまったく同じように、互いに対して本来の構造を見ることになる。内部構造間の空間関係が維持され、MD6DMを使用して認識することができる。
【0020】
MD6DMのアルゴリズムは、医用画像情報を取得し、それを球形モデルに構築し、これは、解剖学的構造内を「飛行」しながら任意の角度から見ることができる完全な連続的リアルタイムモデルである。具体的には、CT、MRIなどが実際の生体を撮影し、数千ポイントから構築される数百枚のスライスに分解した後、MD6DMは、内側と外側の両方からこれらの各ポイントの360°ビューを内外から表現することによって、それを3Dモデルに戻す。
【0021】
本明細書では、あらかじめ構築されたMD6DMモデルを活用し、機械学習および人工知能アルゴリズムを実装して、外科手術の実行に備えてパラメータの推奨を識別し、識別された推奨パラメータをMD6DMモデルを介して伝達する、AI外科計画システムについて記載する。特に、AI外科計画システムは、2つのサブシステム、すなわち、履歴データから学習する第1のサブシステムと、学習に基づいて1つ以上のパラメータまたはアプローチを識別し、推奨する第2のサブシステムとを含む。パラメータは、例えば、外科手術のために、どこをどのように切開を行うか、およびどの程度の大きさの切開を行うかについての提案または推奨を含み得る。AI外科計画システムは、2つの別個のサブシステムとして記載されているが、AI外科計画システムは、両方のサブシステムに関して記載された機能および特徴を組み込んだ単一のシステムとして実装することもできることを理解されたい。本明細書に記載される例は、開頭術を行うこと、および開頭術を行うための入口点および軌道を識別することなど特定のパラメータを識別することに特に言及し得るが、例示的なAI外科計画システムは、同様に、他の外科手術のための入口点および軌道を決定するために、または任意のタイプの外科手術のための任意の他のタイプのパラメータを決定するために使用され得ることをさらに理解されたい。
【0022】
図1は、機械学習および人工知能アルゴリズムが、外科手術の実行に備えてパラメータを識別することを可能にするために、あらかじめ構築されたMD6DMモデルを活用する例示的なAI外科計画システム100を示す。AI外科計画システム100は、行われた外科手術の手術履歴データ104を入力として受信するトレーニングコンピュータ102を含む。トレーニングコンピュータ102は、例えば、履歴データストア106から履歴データ104を受信し得る。一例では、トレーニングコンピュータ102は、複数のデータソース(図示せず)から履歴データ104を受信し得る。例えば、トレーニングコンピュータ102は、複数の病院システム、コンピュータ、またはデータストアとネットワーク接続され、様々な場所の様々な病院で様々な外科医によって行われた外科手術の履歴データ104を受信するように設定されてもよい。したがって、様々なソースから履歴データ104を入力として受信し、したがって、より多様なデータセットにアクセスすることによって、トレーニングコンピュータ102は、よりロバストな方法で機能し、トレーニングコンピュータ102があまり多様でないデータセットにアクセスするときと比較して、AI外科計画システム100がパラメータをより正確に識別することを可能にし得る。履歴データ104は、例えば、患者に固有の外科手術に関する情報、特定の外科手術に使用/選択されたパラメータ、およびその患者に対する外科手術の結果を含み得る。
【0023】
トレーニングコンピュータ102はまた、受信された履歴データ104に基づいて訓練または学習し、外科手術を行うためのパラメータを識別し、推奨するための推奨アルゴリズム108を生成する。特に、トレーニングコンピュータ102は、履歴データ104を分析して、多くの外科手術を取り巻くシナリオ、個々の手術のために選択されたパラメータ、ならびに外科手術の結果を理解する。分析およびトレーニングコンピュータ102が履歴データ104から学習したものに基づいて、トレーニングコンピュータ102は、新しい外科手術に関するデータを処理し、その新しい外科手術を行うためのパラメータを識別または提案することができる推奨アルゴリズム108を生成する。
【0024】
AI外科計画システム100は、推奨アルゴリズム108を使用して、新しい外科手術のためのパラメータを識別し、推奨する処理コンピュータ110をさらに含む。特に、処理コンピュータ110は、現在の外科手術データ112、すなわち、行われるべき外科手術に関するデータであって、外科手術パラメータの識別および推奨が望まれるデータを受信するように構成される。現在の外科手術データ112は、現在のデータストア114など適切なソースから受信され得る。処理コンピュータ110は、推奨アルゴリズム108を使用して現在の外科手術データ112を処理し、新しい外科手術のためのパラメータ116を決定する。処理コンピュータ110はさらに、パラメータまたは推奨116を、ディスプレイ118、HMD120、または別の適切な周辺機器(図示せず)を介して出力するように構成される。一例では、処理コンピュータ110は、トレーニングコンピュータ102が、追加的に取得された、または開発された外科手術データに基づいて、推奨アルゴリズム108をさらに訓練し、改良し続けることができるように、履歴データストア106にパラメータ116を記憶するように構成される。
【0025】
手術履歴データ104および現在の手術データ112などの手術データは、患者の解剖学的構造に固有の外科手術に関する情報を記述または提供する任意の適切なデータを含み得ることを理解されたい。一例では、手術データは、特定の患者の解剖学的構造を表すMD6DMモデルを含むことができる。さらに、トレーニングコンピュータ102および処理コンピュータ110は、2つの別個のコンピューティングシステムとして示されているが、トレーニングコンピュータ102および処理コンピュータ110の特徴および機能は、単一のコンピューティングシステムに結合されてもよいことを理解されたい。
【0026】
トレーニングコンピュータ102および処理コンピュータ110は、1つ以上のAI機械学習アルゴリズムを活用して、説明した機能を実行するように構成されてもよい。機械学習アルゴリズムは、データ入力と所望の出力の両方が提供される教師あり学習アルゴリズムを含み得る。教師あり機械学習アルゴリズムの一例は、サポートベクトルマシンであり、このアルゴリズムは、履歴データに基づいて異なるクラスを学習し、新しいデータを適切に分類することができるようにする。ナイーブベイズ分類器は、特にベイズ定理を適用することによってデータを分類する教師あり機械学習アルゴリズムの一例である。教師あり機械学習アルゴリズムの別の例は、予測モデルアプローチにおいて観測から結論へ進むために分岐方法が使用される決定木である。一例では、機械学習アルゴリズムは、人工ニューラルネットワークとして実装される。
【0027】
一例では、AI外科計画システム100は、開頭術を行うための入口点および軌道を識別するなど、開頭術を行うためのパラメータを識別し、推奨するように特に構成され得る。
図2は、開頭術200のためのAI外科計画システムを示す。AI外科計画システム200は、開頭術を行うためのパラメータを識別するための開頭術パラメータアルゴリズム212を生成するために、開頭術履歴データ204を受信し、開頭術履歴データ204から学習するためのトレーニングコンピュータ202(例えば、
図1のトレーニングコンピュータ102)を含む。特に、開頭術データ204は、例えば、患者のMD6DMモデルを含むことができ、外科手術が行われた患者の脳の領域を示す。一例では、開頭術データ204は、手術結果208を表すデータを含み得る。一例では、開頭術データ204は、選択されたアプローチ(例えば、入口点および軌道)を含む、開頭術のために企図された1つ以上のアプローチ210またはパラメータを表すデータを含み得る。
【0028】
図3に示されるように、開頭術のためのAI外科計画システム200は、トレーニングコンピュータ200によって生成された開頭術パラメータアルゴリズム212を活用して開頭術パラメータ出力306を生成するための処理コンピュータ302(例えば、
図1の処理コンピュータ110)をさらに含む。特に、処理コンピュータ302は、患者に関する情報と、外科手術が行われるべき患者の脳の領域を示す患者のMD6DMモデルとを受信する。処理コンピュータ302は、入力データ304のMD6DMモデルによって表される患者の頭蓋骨に対して開頭術を行うための最適なアプローチを選択するために、開頭術パラメータアルゴリズム212を適用する。一例では、出力306は、MD6DM内に重ねられた仮想ビュー、または患者の実際のビューの上に重ねられた拡張現実ビューのいずれかにおいて、HMDを介した、選択された入口点および軌道の視覚化を含む。
【0029】
一例では、出力306は、
図4に示されるように、単一のパラメータまたはパラメータのセットを選択するのとは対照的に、パラメータについての複数の推奨または提案を提供するための推奨ユーザインターフェース400を含む。例えば、処理コンピュータ302は、推奨ユーザインターフェース400を介して、開頭術履歴データ204から学習されたAI外科計画システム200の知識に基づいて、計算された成功率とともに、いくつかの異なるアプローチを提供し得る。特に、処理コンピュータ302は、推奨ユーザインターフェース400を介して、Pterionalアプローチが第1の推奨ウィンドウ402において98%の成功率を有し得ること、Supraorbitalアプローチが第2の推奨ウィンドウ404においてam 80%の成功率を有し得ること、およびTranscallosalアプローチが第3の推奨ウィンドウ406において86%の成功率を有し得ることを推奨し得る。推奨ウィンドウ402、404、および406は各々、開頭術を行うための適切なアプローチまたはパラメータの選択を支援するためのそれぞれの説明、図、および他の適切な情報を含み得る。
【0030】
図5は、外科手術のためのパラメータを決定するための例示的な方法を示す。502において、AI外科計画システム(例えば、
図1のAI外科計画システム)は、入力として、外科手術履歴データを受信する。504において、AI外科計画システムは、受信された外科手術履歴データに基づいて、1つ以上の人工知能機械学習アルゴリズムを使用して外科手術パラメータアルゴリズムを生成する。506において、AI外科計画システムは、外科手術が行われるべき特定の患者のための現在の外科手術データを受信する。508において、AI外科計画システムは、特定の患者に対して行われるべき外科手術のための手術パラメータを決定するために、生成された外科手術パラメータアルゴリズムを、受信された現在の外科手術データに適用する。510において、AI外科計画システムは、識別されたパラメータを出力する。
【0031】
図6は、
図1のトレーニングコンピュータ102および処理コンピュータ110を実装するための例示的なコンピュータの概略図である。例示的なコンピュータ600は、ラップトップ、デスクトップ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、サーバ、および他の同様のタイプのコンピューティングデバイスを含む、様々な形態のデジタルコンピュータを表すことを意図している。コンピュータ600は、プロセッサ602と、メモリ604と、記憶デバイス606と、通信ポート608とを含み、これらは、バス612を介してインターフェース610によって動作可能に接続されている。
【0032】
プロセッサ602は、コンピュータ600内で実行するために、メモリ604を介して命令を処理する。例示的な実施形態では、複数のメモリとともに複数のプロセッサが使用され得る。
【0033】
メモリ604は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリとすることができる。メモリ604は、磁気ディスクまたは光ディスクなどのコンピュータ可読媒体とすることができる。記憶デバイス606は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、テープデバイス、フラッシュメモリ、相変化メモリ、または他の類似のソリッドステートメモリデバイスなどのコンピュータ可読媒体、または他の構成の記憶エリアネットワーク内のデバイスを含むデバイスのアレイとすることができる。コンピュータプログラム製品は、メモリ604または記憶デバイス606などのコンピュータ可読媒体で有形に実施することができる。
【0034】
コンピュータ600は、ディスプレイ614、プリンタ616、スキャナ618、マウス620、およびHMD624などの1つ以上の入出力デバイスに結合することができる。
【0035】
当業者によって理解されるように、例示的な実施形態は、方法、システム、コンピュータプログラム製品、または上記の組み合わせとして実現されてもよく、または一般にそれらを利用し得る。したがって、実施形態のいずれも、コンピュータハードウェア上で実行するために記憶デバイスに記憶された実行可能命令を含む専用ソフトウェアの形態をとることができ、ソフトウェアは、媒体内に具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上に記憶することができる。
【0036】
データベースは、MySQLなどのオープンソースソリューション、または開示されたサーバ上もしくは追加のコンピュータサーバ上で動作することができるMicrosoft SQLなどのクローズドソリューションなど、市販のコンピュータアプリケーションを使用して実装され得る。データベースは、上記で開示された例示的な実施形態のために使用されるデータ、モデル、およびモデルパラメータを記憶するために、リレーショナルまたはオブジェクト指向パラダイムを利用することができる。そのようなデータベースは、本明細書に開示されるような特殊化された適用可能性のために、既知のデータベースプログラミング技術を使用してカスタマイズされてもよい。
【0037】
実行可能命令を含むソフトウェアを記憶するために、任意の適切なコンピュータ使用可能(コンピュータ可読)媒体を利用することができる。コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、限定はしないが、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体システム、装置、デバイス、または伝播媒体であってもよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)には、1つ以上のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CDROM)、または他の有形の光学または磁気記憶デバイスなどの有形の媒体、あるいはインターネットまたはイントラネットをサポートするものなどの伝送媒体がある。
【0038】
本明細書の文脈では、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、1つ以上のプログラマブルまたは専用プロセッサ/コントローラを含む任意の適切なコンピュータ(またはコンピュータシステム)を含むことができる、命令実行システム、プラットフォーム、装置、またはデバイスによって、またはそれらに関連して使用するためのプログラム命令を含み、記憶し、通信し、伝播し、または移送することができる任意の媒体とすることができる。コンピュータ使用可能媒体は、ベースバンドで、または搬送波の一部として、コンピュータ使用可能プログラムコードを具現化した伝搬データ信号を含み得る。コンピュータ使用可能プログラムコードは、限定はしないが、インターネット、有線、光ファイバケーブル、ローカル通信バス、無線周波数(RF)、または他の手段を含む、任意の適切な媒体を使用して送信され得る。
【0039】
例示的な実施形態の動作を実行するための実行可能命令を有するコンピュータプログラムコードは、限定しないが、BASIC、Lisp、VBA、もしくVBScriptなどのインタプリタまたはイベント駆動型言語、またはビジュアルベーシックなどのGUI実施形態、FORTRAN、COBOL、もしくはPascalなどのコンパイル済みプログラミング言語、Java、JavaScript、Perl、Smalltalk、C++、C#、Object Pascalなどのオブジェクト指向、スクリプト型、非スクリプト型のプログラミング言語、Prologなどの人工知能言語、Adaなどのリアルタイム組み込み言語、またはラダーロジックを使用するさらにより直接的または簡略化されたプログラミング、アセンブラ言語、または適切な機械言語を使用する直接プログラミングを含む、任意のコンピュータ言語を使用する従来の手段によって書かれ得る。
【0040】
「含む(includes)」または「含む(including)」という用語が明細書または特許請求の範囲で使用される限り、その用語が特許項での遷移語として使用されるときに解釈される「備える(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。さらに、「または」という用語(例えば、AまたはB)が使用される限り、それは「AまたはBまたはその両方」を意味することが意図される。出願人が「AまたはBのみであって、両方ではない」を示すことを意図するとき、「AまたはBのみであって、両方ではない」という用語が使用される。したがって、本明細書における用語「または」の使用は、包括的であり、排他的使用ではない。Bryan A. Garner, A Dictionary of Modern Legal Usage 624(2d.Ed.1995)を参照されたい。また、用語「in」または「into」が明細書または特許請求の範囲で使用される限り、それはさらに「on」または「onto」を意味することが意図される。さらに、「接続する」という用語が明細書または特許請求の範囲で使用される限り、それは、「直接接続される」だけでなく、別の構成要素を介して接続されるような「間接的に接続される」ことも意味することが意図される。
【0041】
本出願は、その実施形態の説明によって示されており、実施形態は、かなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定したり、いかなる方法でも制限したりすることは、出願人の意図ではない。追加の利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本出願は、そのより広い態様では、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに示され、説明された例示的な例に限定されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【国際調査報告】