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特表2022-541238組換えアデノ随伴ウイルスのパッケージング効率を増加させるためのイオン濃度の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】組換えアデノ随伴ウイルスのパッケージング効率を増加させるためのイオン濃度の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220914BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220914BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502843
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2020045906
(87)【国際公開番号】W WO2021011941
(87)【国際公開日】2021-01-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502097366
【氏名又は名称】チャールズ・リバー・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ワング,チィツァオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB02
4B065BC11
4C084AA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BB64
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
(57)【要約】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させるために、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)をパッケージングする効率を増加させる方法に関する。より具体的には、本発明は、さらなるイオンの投与を介して細胞培養培地のイオン強度を増加させることによって、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生力価を増加させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させる方法であって、前記方法が以下の工程を含む方法:
(A)初期の培養培地において、初期の期間、rAAVの産生を可能にするのに十分な条件下で、前記rAAVでトランスフェクトされた細胞を培養することであって、前記細胞はさらにAAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドおよび非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを含有する、培養すること;
(B)前記初期の期間の後、前記培養培地にNa以外の1以上のイオンを加えることにより、前記培養培地のイオン強度を変更すること;および
(C)(B)の非存在下で得られる力価よりも大きい前記rAAVの産生力価を産生するように、前記細胞の前記培養を継続すること。
【請求項2】
前記加えられるイオンの各々が、前記初期の培養培地中の前記イオンの濃度を約10mMから約80mM増加させるのに十分な量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記産生力価が、前記工程(B)の非存在下で同様に実施される細胞培養から得られる力価より少なくとも50%高い、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記rAAVが、タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを含み、または、転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記rAAVが、rAAV1、rAAV2、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9またはrAAV10の血清型、または前記血清型のハイブリッドに属する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記rAAVが、rAAV2、rAAV5、またはrAAV9の血清型、または前記血清型のハイブリッドに属する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加えられるイオンが、K、Ca++またはMg++の1つ以上を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加えられるイオンが、CO --、HCO 、HPO 、PO --、SCN、SO --、HSO 、およびClの1つ以上を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加えられるイオンが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、フタル酸水素塩、酒石酸水素塩、ブトキシエトキシ酢酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩、デヒドロ酢酸塩、二酢酸塩、ジヒドロキシグリシナート、d-サッカレート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシナート、グリコ硫酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、乳酸塩、メチオニン酸塩、シュウ酸塩、フェネート、フェノスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリン、サリチル酸塩、サルコシン酸塩、ソルビン酸塩、チオグリコール酸塩、およびトルエンスルホン酸塩の1つ以上を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加えられるイオンがKおよびCO --を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞がヒト胚性腎細胞である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞がHEK293細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、ベビーハムスター腎細胞である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞がBHK21細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞がsf9昆虫細胞である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記初期の培養培地がダルベッコの改変イーグル培地である、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記初期の培養培地に血清が補足される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下を含む薬学的組成物:
(A)請求項1から17のいずれか1項に記載の方法によって製造された、組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製物であって、前記rAAVが、タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または、転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的であり、前記薬学的組成物は、有効量の前記rAAV調製物を含有する、調製物;および
(B)薬学的に許容される担体。
【請求項19】
遺伝子または遺伝性の疾患または状態の治療において使用するための、
タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または転写された核酸、を含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法によって産生される組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製物、または
請求項18に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月15日に出願された米国特許出願番号第16/511,612号(係属中)の継続であり、米国特許出願に対する優先権を主張する。2019年7月15日に出願された米国特許出願番号第16/511,612号(係属中)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させるために、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)をパッケージングする効率を増加させる方法に関する。より具体的には、本発明は、追加的なイオンの投与を介し細胞培養培地のイオン強度を増加させることにより、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生力価を増加させる方法に関する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、37C.F.R.1.821以下に従った一以上の配列一覧を含み、この配列表は、コンピュータ可読媒体(ファイル名:2650-0002US_ST25.txt(2019年7月15日作成、サイズ38,334バイト))に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0004】
I.アデノ随伴ウイルス(AAV)
アデノ随伴ウイルス(AAV)はParvoviridaeのDependovirus属に属する小型の自然発生非病原性ウイルスである(Balakrishnan,B.他(2014)“Basic Biology of Adeno-Associated Virus(AAV)Vectors Used in Gene Therapy,”Curr.Gene Ther.14(2):86-100;Zinn,E.他(2014)“Adeno-Associated Virus:Fit To Serve,”Curr.Opin.Virol.0:90-97)。疾患を引き起こさないにもかかわらず、AAVはヒトおよび他の霊長類に感染し、ヒト集団で流行することが知られる(Johnson,F.B.他(1972)“Immunological Reactivity of Antisera Prepared Against the Sodium Dodecyl Sulfate-Treated Structural Polypeptides of Adenovirus-Associated Virus,”J.Virol.9(6):1017-1026)。AAVは広範囲の異なる細胞型(例えば、中枢神経系、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、網膜色素上皮の細胞、または光受容細胞、または骨格筋細胞)に感染する。異なる組織感染能(「トロピズム」)を示すウイルスの12の血清型(例えば、AAV2、AAV5、AAV6など)が同定されている(Colella,P.他(2018)“Emerging Issues in AAV-Mediated In Vivo Gene Therapy,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:87-104;Hocquemiller,M.他(2016)“Adeno-Associated Virus-Based Gene Therapy for CNS Diseases,”Hum.Gene Ther.27(7):478-496;Lisowski,L.他(2015)“Adeno-Associated Virus Serotypes For Gene Therapeutics,”24:59-67)。
【0005】
AAVは約4,700ヌクレオチドからなる一本鎖DNAウイルスである。ウイルスゲノムは、ウイルスのタンパク質をコードする遺伝子を一緒に含む5’ハーフおよび3’ハーフを有するものとして記載することができる。(図1)。AAVゲノムの5’ハーフはAAV rep遺伝子を含み、AAV rep遺伝子は、複数のリーディングフレーム、スタガード開始プロモーター(p5、p19、およびp40)、および選択的スプライシングを用いて、ウイルスの転写制御および複製、ならびにウイルスゲノムのウイルスカプセルへのパッケージングに必要な4つの非構造Repタンパク質(Rep40、Rep52、Rep68、およびRep78)をコードする(Lackner,D.F.他(2002)“Studies of the Mechanism of Transactivation of the Adeno-Associated Virus p19 Promoter by Rep Protein,”J.Virol.76(16):8225-8235)。AAVゲノムの3’ハーフはAAVキャプシド遺伝子(cap)を含み、VP1,VP2,VP3の3つのキャプシドタンパク質(VP)をコードする。3つのキャプシドタンパク質は、単一のプロモーター(AAV2の場合はp40)によって制御される単一のmRNA転写産物から翻訳される。AAVゲノムの3’ハーフはまた、AAP遺伝子を含み、AAVアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードする。60個のVPモノマー(約5コピーのVP1、5コピーのVP2、および50コピーのVP3を含む)がAAVゲノムの周囲で自己集合し、成熟ウイルス粒子の正二十面体のタンパク質の殻(キャプシド)を形成する(Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265;Van Vliet K.M.他(2008)The Role of the Adeno-Associated Virus Capsid in Gene Transfer.In:DRUG DELIVERY SYSTEMS,Jain,K.K.(編集),Meth.Molec.Biol.437:51-91)。AAV AAPタンパク質は、新たに産生されたVPタンパク質を安定化し、細胞質から細胞核へ輸送するために必要であると考えられている。AAVゲノムの3’ハーフはまた、AAV X遺伝子を含み、ゲノム複製をサポートするタンパク質をコードすると考えられている(Colella,P.他(2018)“Emerging Issues in AAV-Mediated In Vivo Gene Therapy,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:87-104;Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265;Cao,M.他(2014)“The X Gene Of Adeno-Associated Virus2(AAV2) Is Involved In Viral DNA Replication,”PLoS ONE 9,e104596:1-10)。
【0006】
上述のAAV遺伝子コード配列は、145ヌクレオチドの二つのAAV特異的回文逆末端反復配列(ITR)に隣接している(Balakrishnan,B.他(2014)“Basic Biology of Adeno-Associated Virus(AAV) Vectors Used in Gene Therapy,”Curr.Gene Ther.14(2):86-100;Colella,P.他(2018)“Emerging Issues in AAV-Mediated In Vivo Gene Therapy,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:87-104)。
【0007】
AAVは本質的に欠陥のあるウイルスであり、少なくとも2つの重要な機能を果たす能力を欠いている:すなわち、ウイルス特異的産物の合成を開始する能力と、そのような産物を集めて成熟した感染性ウイルス粒子の正二十面体のタンパク質の殻(キャプシド)を形成する能力である。したがって、AAVゲノムの遺伝子によってコードされていないウイルス関連(VA)RNAを提供するために、アデノウイルス(Ad)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルスまたはヒトパピローマウイルスのような、同時感染する「ヘルパー」ウイルスを必要とする。このようなVA RNAは翻訳されないが、他のウイルス遺伝子の翻訳を調節する役割を果たす。同様に、AAVゲノムはAdのウイルスタンパク質E1a、E1b、E2a、およびE4をコードする遺伝子を含まない;したがって、これらのタンパク質は、また、同時に感染する「ヘルパー」ウイルスによって供給されなければならない。E1aタンパク質は増殖性感染中のウイルス遺伝子転写を大きく刺激する。E1bタンパク質はアデノウイルス感染細胞のアポトーシスを阻止し、増殖性感染を進行させる。E2aタンパク質は、鋳型をほどいて転写開始を促進することにより、ウイルス鎖置換複製の伸長の段階において役割を果たす。E4タンパク質は、導入遺伝子の持続性、ベクター毒性、および免疫原性に影響を及ぼすことが示されている(Grieger,J.C.他(2012)“Adeno-Associated Virus Vectorology,Manufacturing,and Clinical Applications,”Meth.Enzymol.507:229-254;Dyson,N.他(1992)“Adenovirus E1A Targets Key Regulators Of Cell Proliferation,”Canc.Surv.12:161-195;Jones N.C.(1990)“Transformation By The Human Adenoviruses,”Semin.Cancer Biol.1(6):425-435;Ben-Israel,H.他(2002)“Adenovirus and Cell Cycle Control,”Front.Biosci.7:d1369-d1395;Hoeben,R.C.他(2013)“Adenovirus DNA Replication,”Cold Spring Harb.Perspect.Biol.5:a013003(1-11ページ);Berk,A.J.(2013)“Adenoviridae:The Viruses And Their Replication,In:FIELDS VIROLOGY,6th Edition(Knipe,D.M.他編集.),Vol.2.,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,1704-1731ページ;Weitzman,M.D.(2005)“Functions Of The Adenovirus E4 Proteins And Their Impact On Viral Vectors,”Front.Biosci.10:1106-1117参照のこと)。
【0008】
AAVウイルスは分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染し、環状エピソーム分子として存続するか、または特定の染色体座(アデノ随伴ウイルス組込み部位またはAAVS)において宿主細胞のDNAに組み込まれる。(Duan,D.(2016)“Systemic Delivery Of Adeno-Associated Viral Vectors,”Curr.Opin.Virol.21:16-25;Grieger,J.C.他(2012)“Adeno-Associated Virus Vectorology,Manufacturing,and Clinical Applications,”Meth.Enzymol.507:229-254)。AAVの複製と成熟に必要な機能を果たすヘルパーウイルスが存在しない限り、AAVは感染細胞内に潜伏したままである。
【0009】
II.遺伝子治療におけるrAAVとその利用
AAVの特性に照らして、組換え改変されたバージョンのAAV(rAAV)は、遺伝子治療用ベクターとして実質的な有用性を見出している(Naso,M.F.他(2017)“Adeno-Associated Virus(AAV) as a Vector for Gene Therapy,”BioDrugs31:317-334;Berns,K.I.他(2017)“AAV:An Overview of Unanswered Questions,”Human Gene Ther.28(4):308-313;Berry,G.E.他(2016)“Cellular Transduction Mechanisms Of Adeno-Associated Viral Vectors,”Curr.Opin.Virol.21:54-60;Blessing,D.他(2016)“Adeno-Associated Virus And Lentivirus Vectors:A Refined Toolkit For The Central Nervous System,”21:61-66;Santiago-Ortiz,J.L.(2016)“Adeno-Associated Virus(AAV) Vectors in Cancer Gene Therapy,”J.Control Release240:287-301;Salganik,M.他(2015)“Adeno-Associated Virus As A Mammalian DNA Vector,”Microbiol.Spectr.3(4):1-32;Hocquemiller,M.他(2016)“Adeno-Associated Virus-Based Gene Therapy for CNS Diseases,”Hum.Gene Ther.27(7):478-496;Lykken,E.A.他(2018)“Recent Progress And Considerations For AAV Gene Therapies Targeting The Central Nervous System,”J.Neurodevelop.Dis.10:16:1-10;Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265;During,M.J.他(1998)“In Vivo Expression Of Therapeutic Human Genes For Dopamine Production In The Caudates Of MPTP-Treated Monkeys Using An AAV Vector,”Gene Ther.5:820-827;Grieger,J.C.他(2012)“Adeno-Associated Virus Vectorology,Manufacturing,and Clinical Applications,”Meth.Enzymol.507:229-254;Kotterman,M.A.他(2014)“Engineering Adeno-Associated Viruses For Clinical Gene Therapy,”Nat.Rev.Genet.15(7):445-451;Kwon,I.他(2007)“Designer Gene Delivery Vectors:Molecular Engineering and Evolution of Adeno-Associated Viral Vectors for Enhanced Gene Transfer,”Pharm.Res.25(3):489-499参照のこと)。
【0010】
rAAVは、典型的には環状プラスミド(「rAAVプラスミドベクター」)を用いて産生される。AAV repおよびcap遺伝子は、典型的には、そのような構築物から欠失され、プロモーター、βグロビンイントロン、選択された治療用遺伝子(導入遺伝子)が挿入されたクローニング部位、およびポリアデニル化(「polyA」)部位で置換される。しかし、rAAVの逆方向末端反復配列(ITR)は保持されるので、rAAVプラスミドベクターの導入遺伝子発現カセットはAAV ITR配列によって挟まれる(Colella,P.他(2018)“Emerging Issues in AAV-Mediated In Vivo Gene Therapy,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:87-104;Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265)。したがって、5’から3’方向に、rAAVは、5’ITR、rAAVの導入遺伝子発現カセット、および3’ITRを含む。
【0011】
rAAVは、多数の遺伝子に関する疾患(例えば、遺伝性リポ蛋白リパーゼ欠損症(LPLD)、レーバー先天性黒内障(LCA)、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症(AADC)、脈絡膜血症、血友病)のいずれかに罹患している患者に導入遺伝子を送達するために使用されており、干渉RNA(RNAi)療法およびCrispr/Cas9などの遺伝子改変戦略などの新しい臨床的方法において有用である(米国特許第8,697,359号,米国特許第10,000,772号,米国特許第10,113,167号,米国特許第10,227,611号;Lino,C.A.他(2018)“Delivering CRISPR:A Review Of The Challenges And Approaches,”Drug Deliv.25(1):1234-1237;Ferreira,V.他(2014)“Immune Responses To AAV-Vectors,The Glybera Example From Bench To Bedside”Front.Immunol.5(82):1-15),Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265;Rastall,D.P.W.(2017)“Current and Future Treatments for Lysosomal Storage Disorders,”Curr.Treat Options Neurol.19(12):45;Kay,M.他(2017)“Future Of rAAV Gene Therapy:Platform For RNAi,Gene Editing And Beyond,”Human Gene Ther.28:361-372);Berns,K.I.他(2017)“AAV:An Overview of Unanswered Questions,”Human Gene Ther.28(4):308-313)。rAAVに関与する150以上の臨床試験が開始されている(Buning,H.他(2019)“Capsid Modifications for Targeting and Improving the Efficacy of AAV Vectors,”Mol.Ther.Meth.Clin.Devel.12:P248-P265;Clement,N.他(2016)“Manufacturing Of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors For Clinical Trials,”Meth.Clin.Develop.3:16002:1-7)。このような組換え改変AAVに最も一般的に使用されるAAV血清型はAAV2であり、中枢神経系、腎臓、網膜色素上皮および光受容体細胞の細胞に感染することができる。もう1つのAAV血清型はAAV9であり、筋細胞に感染し、また広く使用される(Duan,D.(2016)“Systemic Delivery Of Adeno-Associated Viral Vectors,”Curr.Opin.Virol.21:16-25)。AAV血清型は以下に記載される:米国特許第10,301,650号;米国特許第10,266,846号;米国特許第10,265,417号;米国特許第10,214,785号;米国特許第10,214,566号;米国特許第10,202,657号;米国特許第10,046,016号;米国特許第9,884,071号;米国特許第9,856,539号;米国特許第9,737,618号;米国特許第9,677,089号;米国特許第9,458,517号;米国特許第9,457,103号;米国特許第9,441,244号;米国特許第9,193,956号;米国特許第8,846,389号;米国特許第8,507,267号;米国特許第7,906,111号;米国特許第7,479,554号;米国特許第7,186,552号;米国特許第7,105,345号;米国特許第6,984,517号;米国特許第6,962,815号;および,米国特許733,757号。
【0012】
III.rAAV製造の方法
所望の導入遺伝子発現カセットを含むrAAVは、典型的には、接着または懸濁のいずれかで増殖させたヒト細胞(HEK293など)によって産生される。上述したように、rAAVは欠陥ウイルスであるため、rAAVを複製してパッケージングするためには、さらなる機能が提供されなければならない。
【0013】
典型的には、rAAVは、rAAVプラスミドベクターおよび第2のプラスミドベクターで細胞を一過性にトランスフェクトすることによって産生され得る。第2のプラスミドベクターはAAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを含む。AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドは、ベクター転写制御および複製に、そしてウイルスゲノムのウイルスカプセルへのパッケージングに必要なRep52およびRep78遺伝子(Rep40およびRep68やrAAVの産生には必要とされない)、ならびにrAAVを産生するためにAAVから削除されたcap遺伝子を提供する。第2のプラスミドベクターは、さらに、AAV増殖に必要なウイルス転写因子および翻訳因子(E1a、E1b、E2a、VAおよびE4)をコードする非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを含むことができ、それにより、rAAVと協調して、ダブルプラスミドトランスフェクションシステムを含み得る(Grimm,D.他(1998)“Novel Tools For Production And Purification Of Recombinant Adeno-Associated Virus Vectors,”Hum.Gene Ther.9:2745-2760;Penaud-Budloo,M.他(2018)“Pharmacology of Recombinant Adeno-associated Virus Production,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:166-180)。
【0014】
しかし、(必要とされるrepおよびcap遺伝子を提供する)AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを「AAVヘルパープラスミド」にクローニングし、(ウイルスの転写因子と翻訳因子をコードする遺伝子を提供する)非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを異なるプラスミド(すなわち、「Adヘルパープラスミド」)上にクローニングすることは、ますます一般的になってきており、そのようなプラスミドは、rAAVプラスミドベクターと協働して、トリプルプラスミドトランスフェクションシステムを含む(図2)。トリプルプラスミドトランスフェクションシステムの使用は、1つのcap遺伝子を別のcap遺伝子に容易に切り替えることができ、それによってrAAVの血清型の変化を容易にするという利点を有する。ヘルパーウイルスではなくヘルパープラスミドを用いることにより、ヘルパーウイルスの粒子をさらに産生することなく、rAAVを産生することができる(Francois,A.他(2018)“Accurate Titration of Infectious AAV Particles Requires Measurement of Biologically Active Vector Genomes and Suitable Controls,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.10:223-236;Matsushita,T.他(1998)“Adeno-Associated Virus Vectors Can Be Efficiently Produced Without Helper Virus,”Gene Ther.5:938-945)。
【0015】
rAAVプラスミドベクター、AAVヘルパー機能repおよびcap遺伝子を提供するプラスミドベクター、ならびに非AAVヘルパー機能を提供するプラスミドベクターを含むプラスミドDNAのリン酸カルシウム共沈によるHEK293細胞への一過性トランスフェクションは、研究室でrAAVを産生するための標準的な方法となっている(Grimm,D.他(1998)“Novel Tools For Production And Purification Of Recombinant Adeno-Associated Virus Vectors,”Hum.Gene Ther.9:2745-2760)。しかし、このようなリン酸カルシウムを介したトランスフェクション過程を懸濁培養されたトランスフェクトされた哺乳動物細胞で使用するには、培地交換が必要であり、したがって、治療用量のrAAVを産生するために必要とされる大規模なrAAV産生には理想的ではないと考えられる(Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271)。この理由ため、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミン(PEI)が使用され、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションを用いて得られたものと類似のウイルスの収率を提供することが見出されている(Durocher,Y.他(2007)“Scalable Serum-Free Production Of Recombinant Adeno-Associated Virus Type2 By Transfection Of 293 Suspension Cells,”J.Virol.Meth.144:32-40)。
【0016】
あるいは、バキュロウイルスベクター(例えば、米国特許第9,879,282号;米国特許第9,879,279号;米国特許第8,945,918号;米国特許第8,163,543号;米国特許第7,271,002号;米国特許第6,723,551号を参照のこと)を用いて昆虫細胞(例えば、sf9細胞)、または、HSV感染ベビーハムスター腎(BHK)細胞(例えばBHK21)でrAAVを産生することができる(Francois,A.他(2018)“Accurate Titration of Infectious AAV Particles Requires Measurement of Biologically Active Vector Genomes and Suitable Controls,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.10:223-236)。rAAVの産生の方法はGrieger,J.C.他(2012)“Adeno-Associated Virus Vectorology,Manufacturing,and Clinical Applications,”Meth.Enzymol.507:229-254,and in Penaud-Budloo,M.他(2018)“Pharmacology of Recombinant Adeno-associated Virus Production,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.8:166-180でレビューされる。
【0017】
IV.rAAVの精製および回収方法
産生後、rAAVは、典型的には、1回以上、オーバーナイトのCsCl勾配遠心分離によって収集および精製され(Zolotukhin,S.他(1999)“Recombinant Adeno-Associated Virus Purification Using Novel Methods Improves Infectious Titer And Yield,”Gene Ther.6:973-985)、次いで脱塩によって精製されたrAAV産生ストックを形成する。1012~1013の感染性rAAVキャプシド/mLの力価が得られる。
【0018】
rAAV感染は細胞変性効果を引き起こさないためrAAV製剤の感染力価を測定するために、プラークアッセイは使用できない。したがって、感染力価は典型的には組織培養感染量の中央値(TCID50)として測定される。この方法では、HeLa由来AAV2 repおよびcap発現細胞株を96ウェルプレート中で増殖させ、血清型5のアデノウイルスの存在下で、rAAV調製物の複製10倍連続希釈液で感染させる。感染後、定量的PCR(qPCR)によりベクターゲノム複製を決定する(Zen,Z.他(2004)“Infectious Titer Assay For Adeno-Associated Virus Vectors With Sensitivity Sufficient To Detect Single Infectious Events,”Hum.Gene Ther.15:709-715)。あるいは、調製rAAVの感染力価は、感染中枢アッセイ(ICA)を用いて測定することができる。このアッセイは、HeLa rep-cap細胞およびAdを使用するが、インキュベーション後、細胞を膜に移すことを含む。使用される導入遺伝子の一部に相補的な標識プローブを用いて、ハイブリダイゼーションを介して(個々の感染細胞を表す)感染中心を検出する。より広く使用されるが、TCID50アッセイは、ICAよりも高いバックグラウンドを導き、ICAと比較してベクター感染性を過大評価することが報告されている(Francois,A.他(2018)“Accurate Titration of Infectious AAV Particles Requires Measurement of Biologically Active Vector Genomes and Suitable Controls,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.10:223-236)。rAAVを産生および精製する方法は、特に米国特許第10,294,452号;米国特許第10,161,011号;米国特許第10,017,746号;米国特許第9,598,703号;米国特許第7,625,570号;米国特許第7,439,065号;米国特許第7,419,817号;米国特許第7,208,315号;米国特許第6,995,006号;米国特許第6,989,264号;米国特許第6,846,665号;および米国特許第6,841,357に記載される。
【0019】
上述のように、研究室でrAAVを産生するために、典型的には、複数回のオーバーナイトの塩化セシウム勾配遠心分離が用いられる。しかし、CsClへの長期曝露は、rAAVプラスミドベクターの効力を損なうことが報告されている(Zolotukhin,S.他(1999)“Recombinant Adeno-Associated Virus Purification Using Novel Methods Improves Infectious Titer And Yield,”Gene Ther.6:973-985)。さらに、このような勾配は細胞溶解物に対し制限された負荷能力を有し、したがって、精製され得るrAAVの量を制限する。等張代替勾配培地、イオジキサノールはrAAVプラスミドベクターの精製に用いられているが、イオジキサノールはrAAV産生のためのCsClと同じ負荷能力の欠点を共有する。
【0020】
このような勾配特異的な制約を克服するために、研究者らはイオン交換クロマトグラフィー法、アフィニティー精製法、および抗体アフィニティーに基づくrAAV精製法を開発した(Auricchio,A.他(2001)“Isolation Of Highly Infectious And Pure Adeno-Associated Virus Type2 Vectors With A Single-Step Gravity-Flow Column,”Hum.Gene Ther.12:71-76;Brument,N.他(2002)“A Versatile And Scalable Two-Step Ion-Exchange Chromatography Process For The Purification Of Recombinant Adeno-Associated Virus Serotypes-2 And -5,”Mol.Ther.6:678-686;Zolotukhin,S.他(2002)“Production And Purification Of Serotype 1,2,And 5 Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors,”Methods 28:158-167;Davidoff,A.M.他(2004)“Purification Of Recombinant Adeno-Associated Virus Type 8 Vectors By Ion Exchange Chromatography Generates Clinical Grade Vector Stock,”J.Virol.Methods 121:209-215;Smith,R.H.他(2009)“A Simplified Baculovirus-AAV Expression Vector System Coupled With One-Step Affinity Purification Yields High-Titer rAAV Stocks From Insect Cells,”Mol.Ther.17:1888-1896;Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271)。しかし、残念ながら、そのようなクロマトグラフィーに基づく精製方法は、一般的に、十分な機能的なベクター粒子から空のキャプシドのようなベクター関連不純物を分離することはできない。このように、CsCl勾配遠心分離が、その欠点にもかかわらず、依然としてrAAVベクター調製物から空の粒子を除去するための最もよく特徴付けられた方法である。
【0021】
リン酸カルシウムおよびPEIでトランスフェクトした培養物の両方において、様々な血清型のrAAVが、上清に放出されることが観察された(Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271;米国特許第6,566,118号;米国特許第6,989,264号;米国特許出願公開第2005/0266567号)。米国特許第6,566,118号、米国特許第6,989,264号、および米国特許出願公開第2005/0266567号はNaCl(すなわち、50~325mM NaCl)およびその他の不特定の塩、マンニトールまたはグルコースを用いて、またはNaまたはKなどのイオン性溶質を用いて培地の導電率を少なくとも約5mSに操作することによって、培地が最初に約100mOsMから約650mOsMの浸透圧を含むように処方されていた場合、高力価の組換えAAVベクターが細胞懸濁液の上清中に放出されることを開示する。初期の浸透圧は300mOsM(150mM)NaClが最適であることが見いだされた。Adamson-Small,L.他(2017)は、同様に、形質導入後増加された塩化ナトリウムが4~6時間存在する感染条件下で、産生培地中の60~90mM塩化ナトリウムが、rAAV9形質導入単位およびキャプシドタンパク質の有意な増加をもたらすことを示した。(国際公開第2017/112948号;Adamson-Small,L.他(2017)“Sodium Chloride Enhances Recombinant Adeno-Associated Virus Production in a Serum-Free Suspension Manufacturing Platform Using the Herpes Simplex Virus System,”Hum.Gene Ther.Meth.28(1):1-14)。
【0022】
Lock,M.他(2010)は、rAAV粒子の回収を促進するためのPEIトランスフェクションに基づくおよび上清ハーベストに基づく技術を開示する(Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271)。この方法は、AAV2以外のAAV血清型に属するrAAVが、リン酸カルシウムトランスフェクト細胞の培地に主に放出され、細胞溶解物に保持されないという観察に基づいている。このように、Lock,M.他(2010)は、このようなrAAV血清型にとって、産生培地がより低いレベルの細胞汚染物質を有するrAAVプラスミドベクターの比較的純粋な源であり、これらの因子が、負荷能力および精製勾配の分解能を改善することを開示する。開示された方法では、AAV2血清型に属するrAAVを含むrAAVを、リン酸カルシウムを用いてHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後(または120時間後)、無血清培地を加え、さらに28時間インキュベーションを続けた。次に、すべての形態のDNAおよびRNAを分解する遺伝子改変(genetically engineered)エンドヌクレアーゼであるベンゾナーゼ(商標)(Benzonase)を培養上清に加えた。2時間後、NaClを500mMとなるよう加え、培養を再開しさらに2時間後、培地を回収した。その後、清澄化した培地をタンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)により125倍濃縮し、rAAVをイオジキサノール段階勾配を用いて精製した。この方法は血清型AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9のAAVに用いることができた。Lock他(2010)の高塩培養の使用は、rAAV6およびrAAV9プラスミドベクターの、さらなる20%の放出を培地へもたらすことを開示する(米国特許第6,566,118号および米国特許第6,989,264号、ならびに米国特許公開第2005/0266567号の方法と比較して)、しかし、他の血清型に関してはほとんど違いを導かなかった。rAAV8とrAAV9の平均総収量は高かったが(2.2×1014ゲノムコピー)、他のrAAV血清型の収量は有意に低かった(例えば、rAAV6については6.7×1013ゲノムコピー)。産生されたrAAVの推定純度は90%を超えたが、産生されたrAAV8とrAAV9の35%と50%は処理段階で失われ、産生されたrAAV6の80~85%は処理で失われ、rAAV2はほとんど細胞内に保持され、培地に放出されなかった。
【0023】
塩の供給は、トランスジーン関連遺伝子発現をより容易に測定するために細胞を透過化するためにも用いられている。したがって、例えば、During,M.J.他(1998)は、135mM NaCl、3mM KCl、1.2mM CaCl、1.0mM MgCl、10mmグルコース、200mMアスコルビン酸および2mMモノ-および二塩基リン酸ナトリウムを含むpH7.4に緩衝化された「放出緩衝液」を用いて、ヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)および芳香族アミノデカルボキシラーゼ(AADC)を発現するrAAVでトランスフェクトされたHEK293細胞からのドーパミンの放出を促進した(During,M.J.他(1998)“In Vivo Expression Of Therapeutic Human Genes For Dopamine Production In The Caudates Of MPTP-Treated Monkeys Using An AAV Vector,”Gene Ther.5:820-827)。
【0024】
しかし、このような以前のすべての成功にもかかわらず、遺伝子治療へのrAAVの適用性を現在制限している問題に取り組むことができる方法を開発する必要が残っている(Grieger,J.C.他(2012)“Adeno-Associated Virus Vectorology,Manufacturing,and Clinical Applications,”Meth.Enzymol.507:229-254;Kotterman,M.A.他(2014)“Engineering Adeno-Associated Viruses For Clinical Gene Therapy,”Nat.Rev.Genet.15(7):445-451;Kwon,I.他(2007)“Designer Gene Delivery Vectors:Molecular Engineering and Evolution of Adeno-Associated Viral Vectors for Enhanced Gene Transfer,”Pharm.Res.25(3):489-499;Naso,M.F.他(2017)“Adeno-Associated Virus(AAV) as a Vector for Gene Therapy,”BioDrugs 31:317-334)。そのような問題とは以下を含む:
(1)rAAVの限定された組織特異的向性:このような問題の1つは、AAVおよびrAAVの限られた組織特異的向性を反映する。異なる血清型のキャプシドタンパク質(すなわち、「モザイク」キャプシド)をコードする複数のヘルパープラスミドの使用は、rAAVによって感染され得る組織型の範囲を増加させる方法として利用されてきた(Hauck,B.他(2003)“Generation And Characterization Of Chimeric Recombinant AAV Vectors,”Mol.Ther.7:419-425;Rabinowitz,J.E.他(2004)“Crossdressing The Virion:The Transcapsidation Of Adeno-Associated Virus Serotypes Functionally Defines Subgroups,”J.Virol.78:4421-4432;Lisowski,L.他(2015)“Adeno-Associated Virus Serotypes For Gene Therapeutics,”24:59-67)。
(2)抗rAAV免疫応答の普及:第2の問題は、ヒトの30~80%が自然にAAV感染(主にAAV2)に曝露されており、ヒトの20~67%が血液および他の体液中に中和抗AAVキャプシド抗体の力価を有するという事実を反映している(Liu,Q.他(2014)“Neutralizing Antibodies Against AAV2,AAV5 And AAV8 In Healthy And HIV-1-Infected Subjects In China:Implications For Gene Therapy Using AAV Vectors,”Gene Ther.21:732-738;Vandamme,C.他(2017)“Unraveling the Complex Story of Immune Responses to AAV Vectors Trial After Trial,”Hum.Gene.Ther.28(11):1061-1074)。これらの抗体の存在は導入遺伝子発現を阻害することによりrAAV療法の有効性を減弱させる。合成ポリマー結合体(例えばポリエチレングリコール(PEG))は、中和抗体からrAAVを遮蔽するための手段として使用されてきた(Le,H.T.他(2005)“Utility Of Pegylated Recombinant Adeno-Associated Viruses For Gene Transfer,”J.Control.Release 108:161-177;Lee,G.K.他(2005)“PEG Conjugation Moderately Protects Adeno-Associated Viral Vectors Against Antibody Neutralization,”Biotechnol.Bioeng.92:24-34)。代替血清型または変異非免疫原性キャプシドを有するrAAVの使用も追求されている(Smith,J.K.他(2018)“Creating An Arsenal Of Adeno-Associated Virus(AAV) Gene Delivery Stealth Vehicles,”PLoS Pathog.14(5):1-6)。
(3)rAAVのパッケージング能力の限界:rAAVのパッケージング効率は、5kbを超えると有意に減少することが見出されており、より大きなゲノムは5’切断でキャプシド化される(Wu,Z.他(2010)“Effect Of Genome Size On AAV Vector Packaging,”Molec.Ther.18:80-86;Ghosh,A.他(2007)“Expanding Adeno-Associated Viral Vector Capacity:A Tale Of Two Vectors,”Biotechnol.Genet.Eng.Rev.24:165-177;McClements,M.E.et a.(2017)“Adeno-associated Virus(AAV) Dual Vector Strategies for Gene Therapy Encoding Large Transgenes,”Yale J.Biol.Med.90:611-623)。
(4)大規模製造技術の限界:大規模治療に使用するのに十分な量のrAAVを製造する能力は、プロセス収率が5%未満から30%未満の範囲であるため、この技術の成功的な適用に対する障壁となっている。(Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271)。
これらの問題は、場合によっては相互に関連している。例えば、最終生成物中に空の粒子が存在すると、ベクターの受容者は、望ましくない免疫応答および毒性につながる可能性のあるAAV抗原の大きな供給源にさらされる。このように、パッケージング効率を高め、高い産生力価を得るための改善された方法は非常に重要である。
【0025】
本発明は、rAAVの製造中に培地中のイオン濃度を変化させることによる、rAAVパッケージングの効率を増加させるための改善された方法に関する。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させるために、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)をパッケージングする効率を増加させる方法に関する。より具体的には、本発明は、追加的なイオンの投与を介して細胞培養培地のイオン強度を増加させることによって、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生力価を増加させる方法に関する。
【0027】
より詳細には、本発明は組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させる方法であって、該方法が以下の工程を含む方法を提供する。
(A)初期の培養培地において、初期の期間、rAAVの産生を可能にするのに十分な条件下で、前記rAAVでトランスフェクトされた細胞を培養することであって、前記細胞はさらにAAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドおよび非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを含有する、培養すること;
(B)前記初期の期間の後、前記培養培地にNa以外の1以上のイオンを加えることにより、前記培養培地のイオン強度を変更すること;および
(C)(B)の非存在下で得られる力価よりも大きい前記rAAVの産生力価を産生するように、前記細胞の前記培養を継続すること、
【0028】
本発明は、さらに、加えられるイオンの各々が、初期の培養培地中のイオンの濃度を約10mMから約80mM増加させるのに十分な量で提供される上記の方法の実施形態を提供する。
【0029】
本発明は、さらに、産生力価が、工程(B)の非存在下で同様に実施される細胞培養から得られる力価より少なくとも50%高い、上記の方法の実施形態を提供する。
【0030】
本発明は、さらに、rAAVが、タンパク質をコードする遺伝子導入カセットを含むか、または転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的である、上記の方法の実施形態を提供する。
【0031】
本発明は、さらに、rAAVが、rAAV1、rAAV2、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9またはrAAV10の血清型、またはこれらの血清型のハイブリッドに属する上記の方法の実施形態を提供する。
【0032】
本発明は、さらに、rAAVが、rAAV2、rAAV5、またはrAAV9の血清型、またはこれらの血清型のハイブリッドに属する上記の方法の実施形態を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、加えられるイオンが、K、Ca++またはMg++の1つ以上を含む上記の方法の実施形態を提供する。
【0034】
本発明は、さらに、加えられるイオンが、CO --、HCO 、HPO 、PO --、SCN、SO --、HSO 、およびClの1つ以上を含む上記の方法の実施形態を提供する。
【0035】
本発明は、さらに、加えられるイオンが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、フタル酸水素塩、酒石酸水素塩、ブトキシエトキシ酢酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩、デヒドロ酢酸塩、二酢酸塩、ジヒドロキシグリシナート、d-サッカレート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシナート、グリコ硫酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、乳酸塩、メチオニン酸塩、シュウ酸塩、フェネート、フェノスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリン、サリチル酸塩、サルコシン酸塩、ソルビン酸塩、チオグリコール酸塩、およびトルエンスルホン酸塩の1つ以上を含む上記の方法の実施形態を提供する。
【0036】
本発明は、さらに、加えられるイオンがKおよびCO --を含む上記の方法の実施形態を提供する。
【0037】
本発明は、さらに、細胞がヒト胚性腎細胞、ベビーハムスター腎細胞、またはsf9昆虫細胞である上記の方法の実施形態を提供する。
【0038】
本発明は、さらに、細胞がHEK293ヒト胚性腎細胞である上記の方法の実施形態を提供する。
【0039】
本発明は、さらに、細胞がBHK21ベビーハムスター腎細胞である上記の方法の実施形態を提供する。
【0040】
本発明は、さらに、初期の培養培地がダルベッコの改変イーグル培地または血清が補足されたダルベッコの改変イーグル培地である、上記の方法の実施形態を提供する。
【0041】
本発明は、さらに、以下を含む薬学的組成物を提供する:
(A)上述された、いずれかの方法によって製造された、組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製物であって、前記rAAVが、タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または、転写された核酸を含み、それは遺伝子のまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的であり、前記薬学的組成物は、有効量の前記rAAV調製物を含有する、調製物;および
【0042】
(B)薬学的に許容される担体。
本発明は、さらに、遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態の治療において使用するための、タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または転写された核酸を含む、上述のいずれかの方法によって産生される組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製、または上述の薬学的組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は野生型(Wt)AAVゲノムの概略的な遺伝子の地図を提供する。
図2図2は、野生型AAV2ゲノム(1)、組換え型AAV(rAAV)(2)、補足する「AAVヘルパープラスミド」(3)、およびアデノウイルスヘルパープラスミド(「Adヘルパープラスミド」)(4)の構造ドメインの概略図を提供する。野生型(Wt)AAV2(1)は、AAV特異的回文逆末端反復配列(ITR)、Repタンパク質をコードする遺伝子を含む5’ハーフ、およびCapタンパク質をコードする遺伝子を含む3’ハーフからなる。rAAV(2)は、野生型(Wt)AAV2(1)のRepおよびCapをコードする遺伝子を、プロモーター(Pro)、目的の外来性導入遺伝子、およびポリアデニル化部位(pA)を含む導入遺伝子カセットで置換することによって形成される。rAAV(2)を産生するために、補足する「AAVヘルパー」プラスミドベクター(3)およびアデノウイルスヘルパープラスミドベクター(Adヘルパープラスミド)(4)が提供される。補足するAAVヘルパープラスミド(3)は、RepおよびCapタンパク質を提供する。Adヘルパープラスミド(4)は、アデノウイルスタンパク質E1a、E1b、E2a、VAおよびE4を提供する。
図3図3は、AAVヘルパープラスミドベクターpAAV-RC2の地図を示す。
図4図4は、非AAVヘルパープラスミドベクターpHelper-Kanの地図を示す。
図5図5はrAAVプラスミドベクターpAV-CMV-EGFPの地図を示す。
図6図6はrAAVプラスミドベクターpAV-TBG-EGFPの地図を示す。
図7A図7Aは、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生に対するカチオンおよびカチオン濃度の効果を示す。図7Aは、トランスフェクトされた細胞における増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現の程度、および感染中心アッセイを用いたrAAVストックの力価を示す。ストックは追加的に加えられるNaCl、KCl、CaClまたはMgClの存在下、ダルベッコの改変イーグル培地で、トランスフェクトされたHEK293細胞を増殖させることによって作製された。このように提供された塩の追加的な濃度は、0、20、40、60、80または100mMである。図7Aは感染中心アッセイを示す。
図7B図7Bは、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生に対するカチオンおよびカチオン濃度の効果を示す。図7BはAAVベクターの力価の倍率変化と塩濃度のグラフである。
図7C図7Cは、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生に対するカチオンおよびカチオン濃度の効果を示す。図7Cは、カチオンおよびカチオン濃度の関数としてのAAVの総ゲノム(TG)における倍率変化のグラフである。図に示される濃度は、上記のような塩を加えることによって得られる培地中の濃度増加である。
図8A図8Aは、トランスフェクトされた細胞によるrAAVストックの産生に対するカチオンおよびカチオン濃度の効果を示す。図8Aは、トランスフェクトされた細胞における増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現の程度、および感染中心アッセイを用いたrAAVストックの力価を示す。ストックは12の塩を追加的に加えたダルベッコの改変イーグル培地で、トランスフェクトしたHEK293細胞を増殖させることによって作製された。このように提供された塩の追加的な濃度は、40、50、60または70mMである。図8Aは感染中心アッセイを示す。
図8B図8Bは、トランスフェクトされた細胞によるrAAVストックの産生に対するカチオンおよびカチオン濃度の効果を示す。図8BはAAVベクターの力価の倍率変化と塩濃度のグラフである。図は、異なる陰イオンの存在下で、追加的にそのような供給される陰イオンの濃度を変化して産生されたrAAVに対するrAAV力価の倍率変化を示す。図に示した濃度は、このような陰イオンの添加による培地中の濃度増加である。
図9A図9Aは、KHCOの供給が、他のイオンと比較して、予想外に高いrAAVの力価を引き起こしたことを示す(図9A:培地中のAAV力価の倍率変化;図9B:総ゲノムの倍率変化)。図に示される濃度(40、50、60または70mM)は、上述のKHCOの添加によってもたらされる培地中の濃度増加である。
図9B図9Bは、KHCOの供給が、他のイオンと比較して、予想外に高いrAAVの力価を引き起こしたことを示す(図9A:培地中のAAV力価の倍率変化;図9B:総ゲノムの倍率変化)。図に示される濃度(40、50、60または70mM)は、上述のKHCOの添加によってもたらされる培地中の濃度増加である。
図10図10は、AAV repおよびcap遺伝子機能を提供するために、Adヘルパープラスミドと、AAV ITRを提供するプラスミドと、増強された緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子カセットと、およびAAV2ヘルパープラスミドまたはAAV8ヘルパープラスミドのいずれかを共トランスフェクトした細胞によって培地中に放出されたrAAVの総産生量およびrAAVの放出量の倍率変化を示す。トランスフェクション後2、4、6、8、および10時間で、KHCOを加えて培地中に30mMの追加的な濃度を生じさせ、培地中に放出されたrAAV(AAV2-培地およびAAV8-培地)の倍率変化および細胞溶解物における総ゲノム(AAV2-総およびAAV8-総)をトランスフェクション後72時間に評価した。
図11A図11Aは、異なる血清型のrAAVの産生の増強に対するKHCOの提供の効果を示す。図11Aは24時間後に培地中に放出されたrAAVの倍率変化を示す;KHCO3-30は、KHCOが培地中に30mMの追加的濃度を生じさせるために加えられたことを示す。KHCO3-55は、KHCOが培地中に55mMの追加的濃度を生じさせるために加えられたことを示す。
図11B図11Bは、異なる血清型のrAAVの産生の増強に対するKHCOの提供の効果を示す。図11BはrAAVの総ゲノムの倍率変化を示す;KHCO3-30は、KHCOが培地中に30mMの追加的濃度を生じさせるために加えられたことを示す。KHCO3-55は、KHCOが培地中に55mMの追加的濃度を生じさせるために加えられたことを示す。
図12図12は、KHCOの供給に応答してrAAVのレベルを増加させる、懸濁液中で培養された細胞の能力を示す。培養液中のKHCO濃度を約20mM以上増加させるのに十分なKHCOを供給すると、20時間後のrAAV5およびrAAV6の産生が増加した。
【発明を実施するための形態】
【0044】
I.本発明の方法
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させるために、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)をパッケージングする効率を増加させる方法に関する。より具体的には、本発明は、追加的なイオンの投与を介して細胞培養培地のイオン強度を増加させることによって、トランスフェクトされた細胞によるrAAVの産生力価を増加させる方法に関する。
【0045】
本明細書での使用において、用語「AAV」は、アデノ随伴ウイルスを示すことを意図し、ウイルス自体またはその誘導体を指すために使用され得る。この用語は、全ての亜型および自然発生型と組換え型の両方を含む。本明細書での使用において、用語「rAAV」は、AAV起源でないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVに対して異種性のポリヌクレオチド)を含む、AAVの組換え改変型を示すことを意図する。rAAVは一本鎖または二本鎖であり得、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドで構成され得る。
【0046】
本明細書での使用において、「AAVヘルパー機能」は、rAAVの複製およびパッケージングに必要なAAVタンパク質(例えば、RepとCap)および/またはAAVのポリヌクレオチドを示す。このようなAAVヘルパー機能は、「AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチド」によって提供され、この用語は、本明細書での使用において、AAVヘルパー機能を提供する、ウイルス、プラスミドベクター、非プラスミドベクター、または細胞染色体に組み込まれたポリヌクレオチドである。AAVヘルパー機能を提供するために本発明に従って使用され得るAAVヘルパープラスミド、例えばpAAV-RC(Agilent;Addgene;Cell Biolabs)、pAAV-RC2(Cell Biolabs)などは商業的に入手可能である。プラスミドpAAV-RC2(配列番号1;図3)は、AAVヘルパー機能を提供するために本発明に従って使用され得るAAVヘルパープラスミドである。
プラスミドpAAV-RC2のコード鎖(配列番号1):
ccgggccccc cctcgaggtc gacggtatcg ggggagctcg cagggtctcc
attttgaagc gggaggtttg aacgcgcagc cgccatgccg gggttttacg agattgtgat taaggtcccc agcgaccttg acgagcatct gcccggcatt tctgacagct ttgtgaactg ggtggccgag aaggaatggg agttgccgcc agattctgac atggatctga atctgattga gcaggcaccc ctgaccgtgg ccgagaagct gcagcgcgac tttctgacgg aatggcgccg tgtgagtaag gccccggagg ctcttttctt tgtgcaattt gagaagggag agagctactt ccacatgcac gtgctcgtgg aaaccaccgg ggtgaaatcc atggttttgg gacgtttcct gagtcagatt cgcgaaaaac tgattcagag aatttaccgc gggatcgagc cgactttgcc aaactggttc gcggtcacaa agaccagaaa tggcgccgga ggcgggaaca aggtggtgga tgagtgctac atccccaatt acttgctccc caaaacccag cctgagctcc agtgggcgtg gactaatatg gaacagtatt taagcgcctg tttgaatctc acggagcgta aacggttggt ggcgcagcat ctgacgcacg tgtcgcagac gcaggagcag aacaaagaga atcagaatcc caattctgat gcgccggtga tcagatcaaa aacttcagcc aggtacatgg agctggtcgg gtggctcgtg gacaagggga ttacctcgga gaagcagtgg atccaggagg accaggcctc atacatctcc ttcaatgcgg cctccaactc gcggtcccaa atcaaggctg ccttggacaa tgcgggaaag attatgagcc tgactaaaac cgcccccgac tacctggtgg gccagcagcc cgtggaggac atttccagca atcggattta taaaattttg gaactaaacg ggtacgatcc ccaatatgcg gcttccgtct ttctgggatg ggccacgaaa aagttcggca agaggaacac catctggctg tttgggcctg caactaccgg gaagaccaac atcgcggagg ccatagccca cactgtgccc ttctacgggt gcgtaaactg gaccaatgag aactttccct tcaacgactg tgtcgacaag atggtgatct ggtgggagga ggggaagatg accgccaagg tcgtggagtc ggccaaagcc attctcggag gaagcaaggt gcgcgtggac cagaaatgca agtcctcggc ccagatagac ccgactcccg tgatcgtcac ctccaacacc aacatgtgcg ccgtgattga cgggaactca acgaccttcg aacaccagca gccgttgcaa gaccggatgt tcaaatttga actcacccgc cgtctggatc atgactttgg gaaggtcacc aagcaggaag tcaaagactt tttccggtgg gcaaaggatc acgtggttga ggtggagcat gaattctacg tcaaaaaggg tggagccaag aaaagacccg cccccagtga cgcagatata agtgagccca aacgggtgcg cgagtcagtt gcgcagccat cgacgtcaga cgcggaagct tcgatcaact acgcagacag gtaccaaaac aaatgttctc gtcacgtggg catgaatctg atgctgtttc cctgcagaca atgcgagaga atgaatcaga attcaaatat ctgcttcact cacggacaga aagactgttt agagtgcttt cccgtgtcag aatctcaacc cgtttctgtc gtcaaaaagg cgtatcagaa actgtgctac attcatcata 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actttggcta cagcacccct tgggggtatt ttgacttcaa cagattccac tgccactttt caccacgtga ctggcaaaga ctcatcaaca acaactgggg attccgaccc aagagactca acttcaagct ctttaacatt caagtcaaag aggtcacgca gaatgacggt acgacgacga ttgccaataa ccttaccagc acggttcagg tgtttactga ctcggagtac cagctcccgt acgtcctcgg ctcggcgcat caaggatgcc tcccgccgtt cccagcagac gtcttcatgg tgccacagta tggatacctc accctgaaca acgggagtca ggcagtagga cgctcttcat tttactgcct ggagtacttt ccttctcaga tgctgcgtac cggaaacaac tttaccttca gctacacttt tgaggacgtt cctttccaca gcagctacgc tcacagccag agtctggacc gtctcatgaa tcctctcatc gaccagtacc tgtattactt gagcagaaca aacactccaa gtggaaccac cacgcagtca aggcttcagt tttctcaggc cggagcgagt gacattcggg accagtctag gaactggctt cctggaccct gttaccgcca gcagcgagta tcaaagacat ctgcggataa caacaacagt gaatactcgt ggactggagc taccaagtac cacctcaatg gcagagactc tctggtgaat ccgggcccgg ccatggcaag ccacaaggac gatgaagaaa agttttttcc tcagagcggg gttctcatct ttgggaagca aggctcagag aaaacaaatg tggacattga aaaggtcatg attacagacg aagaggaaat caggacaacc aatcccgtgg ctacggagca 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【0047】
配列番号1において、pAAV-RC2の85-1950残基はRepタンパク質、Rep78をコードし(484-663残基はP19プロモーターに相当、1464-1643残基はP40プロモーターに相当、1668-1676残基はドナー部位);1967-4174残基はキャプシドタンパク質VP1をコードし;1992-2016残基はRep68の部分をコードし;4175-4256残基はポリA配列をコードし;4610-4626残基はM13Rev配列であり;4634-4650残基はLacオペレーター配列であり、;4658-4688はLacプロモーター配列であり;4951-5675残基はpMB ori配列に相当し、5771-6631残基はアンピシリン耐性決定因子をコードし;そして、6632-6730残基はblaプロモーター配列である(図3)。
【0048】
本明細書での使用において、「非AAVヘルパー機能」との用語は、rAVVの複製およびパッケージングに必要なAd、CMV、HSVまたは他の非AADウイルス(例えば、E1a、E1b、E2a、VA and E4)のタンパク質、および/またはAd、CMV、HSVまたは他の非AADウイルスのポリヌクレオチドを意味する。これらの非AAVヘルパー機能は「非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチド」によって提供され、この用語は、本明細書での使用において、非AAVヘルパー機能を提供する、ウイルス、プラスミドベクター、非プラスミドベクター、または細胞染色体に組み込まれたポリヌクレオチドである。ベクター、pHelperおよびそれらの誘導体(Cell Biolabs,Inc.,InvitrogenおよびStratageneから商業的に利用可能である)は、適切な非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドである(例えばMatsushita,T.他(1998)“Adeno-Associated Virus Vectors Can Be Efficiently Produced Without Helper Virus,”Gene Ther.5:938-945;Sharma,A.他(2010)“Transduction Efficiency Of AAV2/6,2/8 And 2/9 Vectors For Delivering Genes In Human Corneal Fibroblasts,”Brain Res.Bull.81(2-3):273-278を参照のこと)。pHelper-Kanプラスミド(配列番号2;図4)は非AAVヘルパー機能を提供するために本発明に従って使用され得る非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドである。
プラスミドpHelper-Kanのコード鎖(配列番号2):
ggtacccaac tccatgctta acagtcccca ggtacagccc accctgcgtc gcaaccagga acagctctac agcttcctgg agcgccactc gccctacttc cgcagccaca gtgcgcagat taggagcgcc acttcttttt gtcacttgaa aaacatgtaa aaataatgta ctaggagaca ctttcaataa aggcaaatgt ttttatttgt acactctcgg gtgattattt accccccacc cttgccgtct gcgccgttta aaaatcaaag gggttctgcc gcgcatcgct atgcgccact ggcagggaca cgttgcgata ctggtgttta gtgctccact taaactcagg cacaaccatc cgcggcagct cggtgaagtt ttcactccac aggctgcgca ccatcaccaa cgcgtttagc aggtcgggcg ccgatatctt gaagtcgcag ttggggcctc cgccctgcgc gcgcgagttg cgatacacag ggttgcagca ctggaacact atcagcgccg ggtggtgcac gctggccagc acgctcttgt cggagatcag atccgcgtcc aggtcctccg cgttgctcag ggcgaacgga gtcaactttg gtagctgcct tcccaaaaag ggtgcatgcc caggctttga gttgcactcg caccgtagtg gcatcagaag gtgaccgtgc ccggtctggg cgttaggata cagcgcctgc atgaaagcct tgatctgctt aaaagccacc tgagcctttg cgccttcaga gaagaacatg ccgcaagact tgccggaaaa ctgattggcc ggacaggccg cgtcatgcac gcagcacctt gcgtcggtgt tggagatctg caccacattt cggccccacc ggttcttcac gatcttggcc ttgctagact 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gcagcaacag cagcggtcac acagaagcaa aggcgaccgg atagcaagac tctgacaaag cccaagaaat ccacagcggc ggcagcagca ggaggaggag cgctgcgtct ggcgcccaac gaacccgtat cgacccgcga gcttagaaat aggatttttc ccactctgta tgctatattt caacaaagca ggggccaaga acaagagctg aaaataaaaa acaggtctct gcgctccctc acccgcagct gcctgtatca caaaagcgaa gatcagcttc ggcgcacgct ggaagacgcg gaggctctct tcagcaaata ctgcgcgctg actcttaagg actagtttcg cgccctttct caaatttaag cgcgaaaact acgtcatctc cagcggccac acccggcgcc agcacctgtc gtcagcgcca ttatgagcaa ggaaattccc acgccctaca tgtggagtta ccagccacaa atgggacttg cggctggagc tgcccaagac tactcaaccc gaataaacta catgagcgcg ggaccccaca tgatatcccg ggtcaacgga atccgcgccc accgaaaccg aattctcctc gaacaggcgg ctattaccac cacacctcgt aataacctta atccccgtag ttggcccgct gccctggtgt accaggaaag tcccgctccc accactgtgg tacttcccag agacgcccag gccgaagttc agatgactaa ctcaggggcg cagcttgcgg gcggctttcg tcacagggtg cggtcgcccg ggcgttttag ggcggagtaa cttgcatgta ttgggaattg tagttttttt aaaatgggaa gtgacgtatc gtgggaaaac ggaagtgaag atttgaggaa gttgtgggtt ttttggcttt 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gttcagctgg ccctgcgaag ggacctacgg gatcgcggta tttttgttaa tgttccgctt ttgaatctta tacaggtctg tgaggaacct gaatttttgc aatcatgatt cgctgcttga ggctgaaggt ggagggcgct ctggagcaga tttttacaat ggccggactt aatattcggg atttgcttag agacatattg ataaggtggc gagatgaaaa ttatttgggc atggttgaag gtgctggaat gtttatagag gagattcacc ctgaagggtt tagcctttac gtccacttgg acgtgagggc agtttgcctt ttggaagcca ttgtgcaaca tcttacaaat gccattatct gttctttggc tgtagagttt gaccacgcca ccggagggga gcgcgttcac ttaatagatc ttcattttga ggttttggat aatcttttgg aataaaaaaa aaaaaacatg gttcttccag ctcttcccgc tcctcccgtg tgtgactcgc agaacgaatg tgtaggttgg ctgggtgtgg cttattctgc ggtggtggat gttatcaggg cagcggcgca tgaaggagtt tacatagaac ccgaagccag ggggcgcctg gatgctttga gagagtggat atactacaac tactacacag agcgagctaa gcgacgagac cggagacgca gatctgtttg tcacgcccgc acctggtttt gcttcaggaa atatgactac gtccggcgtt ccatttggca tgacactacg accaacacga tctcggttgt ctcggcgcac tccgtacagt agggatcgcc tacctccttt tgagacagag acccgcgcta ccatactgga ggatcatccg ctgctgcccg aatgtaacac tttgacaatg cacaacgtga 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gctctccttt tgcacggtct agagcgtcaa cgactgcgca cgcctcaccg gccagagcgt cccgaccatg gagcactttt tgccgctgcg caacatctgg aaccgcgtcc gcgactttcc gcgcgcctcc accaccgccg ccggcatcac ctggatgtcc aggtacatct acggattacg tcgacgttta aaccatatga tcagctcact
caaaggcggt aatacggtta tccacagaat caggggataa cgcaggaaag aacatgtgag caaaaggcca gcaaaaggcc aggaaccgta aaaaggccgc gttgctggcg tttttccata ggctccgccc ccctgacgag catcacaaaa atcgacgctc aagtcagagg tggcgaaacc cgacaggact ataaagatac caggcgtttc cccctggaag ctccctcgtg cgctctcctg ttccgaccct gccgcttacc ggatacctgt ccgcctttct cccttcggga agcgtggcgc tttctcatag ctcacgctgt aggtatctca gttcggtgta ggtcgttcgc tccaagctgg gctgtgtgca cgaacccccc gttcagcccg accgctgcgc cttatccggt aactatcgtc ttgagtccaa cccggtaaga cacgacttat cgccactggc agcagccact ggtaacagga ttagcagagc gaggtatgta ggcggtgcta cagagttctt gaagtggtgg cctaactacg gctacactag aagaacagta tttggtatct gcgctctgct gaagccagtt accttcggaa aaagagttgg tagctcttga tccggcaaac aaaccaccgc tggtagcggt ggtttttttg tttgcaagca gcagattacg cgcagaaaaa aaggatctca agaagatcct ttgatctttt ctacggggtc tgacgctcag tggaacgaaa actcacgtta agggattttg gtcatgagat tatcaaaaag gatcttcacc tagatccttt taaattaaaa atgaagtttt aaatcaatct aaagtatata tgagtaaact tggtctgaca gtcagaagaa ctcgtcaaga aggcgataga aggcgatgcg ctgcgaatcg ggagcggcga taccgtaaag cacgaggaag cggtcagccc attcgccgcc aagctcttca gcaatatcac gggtagccaa cgctatgtcc tgatagcggt ccgccacacc cagccggcca cagtcgatga atccagaaaa gcggccattt tccaccatga tattcggcaa gcaggcatcg ccatgggtca cgacgagatc ctcgccgtcg ggcatgctcg ccttgagcct ggcgaacagt tcggctggcg cgagcccctg atgctcttcg tccagatcat cctgatcgac aagaccggct tccatccgag tacgtgctcg ctcgatgcga tgtttcgctt ggtggtcgaa tgggcaggta gccggatcaa gcgtatgcag ccgccgcatt gcatcagcca tgatggatac tttctcggca ggagcaaggt gagatgacag gagatcctgc cccggcactt cgcccaatag cagccagtcc cttcccgctt cagtgacaac gtcgagtaca gctgcgcaag gaacgcccgt cgtggccagc cacgatagcc gcgctgcctc gtcttgcagt tcattcaggg caccggacag gtcggtcttg acaaaaagaa ccgggcgccc ctgcgctgac agccggaaca cggcggcatc agagcagccg attgtctgtt gtgcccagtc atagccgaat agcctctcca cccaagcggc cggagaacct gcgtgcaatc catcttgttc aatcatactc ttcctttttc aatattattg aagcatttat cagggttatt gtctcatgag cggatacata tttgaatgta tttagaaaaa taaacaaata ggggttccgc gcacatttcc ccgaaaagtg ccacctaaat tgtaagcgtt aatattttgt taaaattcgc gttaaatttt tgttaaatca gctcattttt taaccaatag gccgaaatcg gcaaaatccc ttataaatca aaagaataga ccgagatagg gttgagtgtt gttccagttt ggaacaagag tccactatta aagaacgtgg actccaacgt caaagggcga aaaaccgtct atcagggcga tggcccacta cgtgaaccat caccctaatc aagttttttg gggtcgaggt gccgtaaagc actaaatcgg aaccctaaag ggagcccccg atttagagct tgacggggaa agccggcgaa cgtggcgaga aaggaaggga agaaagcgaa aggagcgggc gctagggcgc tggcaagtgt agcggtcacg ctgcgcgtaa ccaccacacc cgccgcgctt aatgcgccgc tacagggcgc gatggatcc
【0049】
配列番号2において、pHelper-Kanの1-5343残基はアデノウイルスに由来しE2Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド(258-1847残基)を含み;5344-8535残基はアデノウイルスに由来し、E4orf6タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み;9423-10011残基はori配列に相当し;10182-10976残基はblaプロモーター配列によって発現されるカナマイシン耐性決定因子(10977-11081残基)をコードし;11107-11561残基はf1 ori配列に相当する(図4)。
【0050】
上記で議論されたように、AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドと非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドは典型的にはrAAVプラスミドベクターと協働して使用され、トリプルトランスフェクションシステムを含む。複数の商業的に利用可能なrAAVプラスミドベクター(例えばpAV-CMV-EGFP、pGOIなど(Cell Biolabs,Inc.,Invitrogen and Stratagene))は、本発明に従って使用され得る。本発明に従って使用され得る例示的なrAAVプラスミドベクターは、5’ITR、U6プロモーター、CMVエンハンサーおよびプロモーター配列、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードするポリヌクレオチド(Gambotto,A.他(2000)“Immunogenicity Of Enhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)In BALB/C Mice:Identification Of An H2-Kd-Restricted CTL Epitope,”Gene Ther.7(23):2036-2040;Tsien,R.Y.(1998)“The Green Fluorescent Protein,”Annu.Rev.Biochem.67:509-544;Cinelli,R.A.他(2000)“The Enhanced Green Fluorescent Protein As A Tool For The Analysis Of Protein Dynamics And Localization:Local Fluorescence Study At The Single-Molecule Level,”Photochem.Photobiol.71(6):771-776;Chopra A.(2008)“Recombinant Adenovirus With Enhanced Green Fluorescent Protein,”In:MOLECULAR IMAGING AND CONTRAST AGENT DATABASE(MICAD),National Center for Biotechnology Information,Bethesda MD)、発現タンパク質の回収および局在を容易化するFLAGタグおよび6×Hisタグ部位、SV40ポリ(A)部位および3’ITR.を含むpAV-CMV-EGFP(配列番号3;図5)である。
プラスミドpAV-CMV-EGFPのコード鎖(配列番号3):
cctgcaggca gctgcgcgct cgctcgctca ctgaggccgc ccgggcgtcg ggcgaccttt ggtcgcccgg ccctccagtg agcgagcgcg cagagaggga gtggccaact ccatcactag gggttcctgc ggccgcacgc gtctagttat taatagtaat cgaattcgtg ttactcataa ctagtaaggt cgggcaggaa gagggcctat ttcccatgat tccttcatat ttgcatatac gatacaaggc tgttagagag ataattagaa ttaatttgac tgtaaacaca aagatattag tacaaaatac gtgacgtaga aagtaataat ttcttgggta gtttgcagtt ttaaaattat gttttaaaat ggactatcat atgcttaccg taacttgaaa gtatttcgat ttcttgggtt tatatatctt gtggaaagga cgcgggatcc actggaccag gcagcagcgt cagaagactt ttttggaaaa gcttgactag taatactgta atagtaatca attacggggt cattagttca tagcccatat atggagttcc gcgttacata acttacggta aatggcccgc ctggctgacc gcccaacgac ccccgcccat tgacgtcaat aatgacgtat gttcccatag taacgccaat agggactttc cattgacgtc aatgggtgga gtatttacgg taaactgccc acttggcagt acatcaagtg tatcatatgc caagtacgcc ccctattgac gtcaatgacg gtaaatggcc cgcctggcat tatgcccagt acatgacctt atgggacttt cctacttggc agtacatcta cgtattagtc atcgctatta ccatggtgat gcggttttgg cagtacatca atgggcgtgg atagcggttt 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【0051】
配列番号3において、pAV-CMV-EGFPの1-128残基は5’ITRに相当し;201-441残基はU6プロモーター配列であり、562-865残基はヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー配列、866-1068残基はCMV前初期プロモーター配列を含み;1192-1911残基はEGFPをコードする哺乳動物コドン最適化ポリヌクレオチドを含み;1918-1941残基はFLAGタグをコードし;1951-1968残基は6×Hisタグをコードし、2139-2260残基はSV40ポリ(A)配列をコードし、2293-2433残基は3’ITRに相当し;2508-22963残基はF1 ori配列に相当し;3350-4210残基はblaプロモーター配列(3245-3349残基)によって発現されるアンピシリン耐性決定因子とそのシグナル配列(3350-3418残基)をコードし;4381-4969残基はori配列に相当する(図5)。
【0052】
本発明に従って使用され得る第二の例示的なプラスミドベクターは5’ITR、甲状腺ホルモン結合グロブリン(TBG)プロモーター、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードするポリヌクレオチド、発現タンパク質の回収および局在を容易化するFLAGタグおよび6×Hisタグ部位、SV40ポリ(A)部位および3’ITRを含むpAV-TBG-EGFP(配列番号4;図6)である。
pAV-TBG-EGFPプラスミドのコード鎖(配列番号4):
cctgcaggca gctgcgcgct cgctcgctca ctgaggccgc ccgggcgtcg ggcgaccttt ggtcgcccgg cctcagtgag cgagcgagcg cgcagagagg gagtggccaa ctccatcact aggggttcct gcggccggtc gcgtctagta ctagtaggtt aatttttaaa aagcagtcaa aagtccaagt ggcccttggc agcatttact ctctctgttt gctctggtta ataatctcag gagcacaaac attccagatc caggttaatt tttaaaaagc agtcaaaagt ccaagtggcc cttggcagca tttactctct ctgtttgctc tggttaataa tctcaggagc acaaacattc cagatccggc gcgccagggc tggaagctac ctttgacatc atttcctctg cgaatgcatg tataatttct acagaaccta ttagaaagga tcacccagcc tctgcttttg tacaactttc ccttaaaaaa ctgccaattc cactgctgtt tggcccaata gtgagaactt tttcctgctg cctcttggtg cttttgccta tggcccctat tctgcctgct gaagacactc ttgccagcat ggacttaaac ccctccagct ctgacaatcc tctttctctt ttgttttaca tgaagggtct ggcagccaaa gcaatcactc aaagttcaaa ccttatcatt ttttgctttg ttcctcttgg ccttggtttt gtacatcagc tttgaaaata ccatcccagg gttaatgctg gggttaattt ataactaaga gtgctctagt tttgcaatac aggacatgct ataaaaatgg aaagatgttg ctttctgaga gacaggtacc gaggagatct gccgccgcga tcgccaccat ggtgagcaag ggcgaggagc 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aaacataaaa tgaatgcaat tgttgttgtt aacttgttta ttgcagctta taatggttac aaataaagca atagcatcac aaatttcaca aataaagcat ttttttcact gcattctagt tgtggtttgt ccaaactcat caatgtatct taacgcggta accacgtgcg gacccaacgg ccgcaggaac ccctagtgat ggagttggcc actccctctc tgcgcgctcg ctcgctcact gaggccgggc gaccaaaggt cgcccgacgc ccgggctttg cccgggcggc ctcagtgagc gagcgagcgc gcagctgcct gcaggggcgc ctgatgcggt attttctcct tacgcatctg tgcggtattt cacaccgcat acgtcaaagc aaccatagta cgcgccctgt agcggcacat taagcgcggc gggtgtggtg gttacgcgca gcgtgaccgc tacacctgcc agcgccttag cgcccgctcc tttcgctttc ttcccttcct ttctcgccac gttcgccggc tttccccgtc aagctctaaa tcgggggctc cctttagggt tccgatttag tgctttacgg cacctcgacc ccaaaaaact tgatttgggt gatggttcac gtagtgggcc atcgccctga tagacggttt ttcgcccttt gacgttggag tccacgttct ttaatagtgg actcttgttc caaactggaa caacactcaa ctctatctcg ggctattctt ttgatttata agggattttg ccgatttcgg tctattggtt aaaaaatgag ctgatttaac aaaaatttaa cgcgaatttt aacaaaatat taacgtttac aattttatgg tgcactctca gtacaatctg ctctgatgcc gcatagttaa gccagccccg acacccgcca acacccgctg acgcgccctg acgggcttgt ctgctcccgg catccgctta cagacaagct gtgaccgtct ccgggagctg catgtgtcag aggttttcac cgtcatcacc gaaacgcgcg agacgaaagg gcctcgtgat acgcctattt ttataggtta atgtcatgat aataatggtt tcttagacgt caggtggcac ttttcgggga aatgtgcgcg gaacccctat ttgtttattt ttctaaatac attcaaatat gtatccgctc atgagacaat aaccctgata aatgcttcaa taatattgaa aaaggaagag tatgagtatt caacatttcc gtgtcgccct tattcccttt tttgcggcat tttgccttcc tgtttttgct cacccagaaa cgctggtgaa agtaaaagat gctgaagatc agttgggtgc acgagtgggt tacatcgaac tggatctcaa cagcggtaag atccttgaga gttttcgccc cgaagaacgt tttccaatga tgagcacttt taaagttctg ctatgtggcg cggtattatc ccgtattgac gccgggcaag agcaactcgg tcgccgcata cactattctc agaatgactt ggttgagtac tcaccagtca cagaaaagca tcttacggat ggcatgacag taagagaatt atgcagtgct gccataacca tgagtgataa cactgcggcc aacttacttc tgacaacgat cggaggaccg aaggagctaa ccgctttttt gcacaacatg ggggatcatg taactcgcct tgatcgttgg gaaccggagc tgaatgaagc cataccaaac gacgagcgtg acaccacgat gcctgtagca atggcaacaa cgttgcgcaa actattaact ggcgaactac ttactctagc ttcccggcaa caattaatag actggatgga ggcggataaa gttgcaggac cacttctgcg ctcggccctt ccggctggct ggtttattgc tgataaatct ggagccggtg agcgtgggtc tcgcggtatc attgcagcac tggggccaga tggtaagccc tcccgtatcg tagttatcta cacgacgggg agtcaggcaa ctatggatga acgaaataga cagatcgctg agataggtgc ctcactgatt aagcattggt aactgtcaga ccaagtttac tcatatatac tttagattga tttaaaactt catttttaat ttaaaaggat ctaggtgaag atcctttttg ataatctcat gaccaaaatc ccttaacgtg agttttcgtt ccactgagcg tcagaccccg tagaaaagat caaaggatct tcttgagatc ctttttttct gcgcgtaatc tgctgcttgc aaacaaaaaa accaccgcta ccagcggtgg tttgtttgcc ggatcaagag ctaccaactc tttttccgaa ggtaactggc ttcagcagag cgcagatacc aaatactgtt cttctagtgt agccgtagtt aggccaccac ttcaagaact ctgtagcacc gcctacatac ctcgctctgc taatcctgtt accagtggct gctgccagtg gcgataagtc gtgtcttacc gggttggact caagacgata gttaccggat aaggcgcagc ggtcgggctg aacggggggt tcgtgcacac agcccagctt ggagcgaacg acctacaccg aactgagata cctacagcgt gagctatgag aaagcgccac gcttcccgaa gggagaaagg cggacaggta tccggtaagc ggcagggtcg gaacaggaga gcgcacgagg gagcttccag ggggaaacgc ctggtatctt tatagtcctg tcgggtttcg ccacctctga cttgagcgtc gatttttgtg atgctcgtca ggggggcgga gcctatggaa aaacgccagc aacgcggcct ttttacggtt cctggccttt tgctggcctt ttgctcacat gt
【0053】
配列番号4において、pAV-TBG-EGFPの1-130残基は5’ITRに相当し;150-854残基は、TBGを含む415-824残基と共にTBGプロモーター配列であり;886-1608残基はEGFPをコードし;1630-1653残基はFLAGタグをコードし;1663-1680残基は6×Hisタグをコードし;1851-1972残基はポリ(A)配列をコードし;2005-2145残基は3’ITRに相当し;2220-2675残基はF1 ori配列に相当し;3062-3922残基はblaプロモーター配列(2957-3061残基)によって発現されるアンピシリン耐性決定因子とそのシグナル配列(3062-3130残基)をコードし;4093-4681残基はori配列に相当する(図6)。
【0054】
本明細書での使用において、用語「産生力価」は調製物中の感染性rAAVの濃度の量を示すことを意図する。このような量または濃度は、好ましくは、このような調製物中のAAVまたはrAAVを力価化(titering)することによって決定される。本発明のrAAV調製物の産生力価は、好ましくは、産生細胞(例えば、rAAVプラスミドベクター、RepおよびCapタンパク質を提供するAAVヘルパーベクター、および必要なアデノウイルス転写および翻訳因子を提供するAdヘルパーベクターで形質転換されたHEK293)を3回凍結/解凍した後、超音波処理してrAAV粒子の放出に供した後、力価化される。次いで、調製物は遠心分離される。使用されるAAVベクターは上清に局在する。調製物のアリコートはプロテイナーゼKで処理され、AAVゲノムの数が決定される。調製物のアリコートを(AAV2 RepおよびCapを発現する)HeLa-32C2細胞に感染させ、感染力価は感染中心アッセイ(ICA)(Francois,A.他(2018)“Accurate Titration of Infectious AAV Particles Requires Measurement of
Biologically Active Vector Genomes and Suitable Controls,”Molec.Ther.Meth.Clin.Develop.10:223-236)を用いて、またはより好ましくは、組織培養感染用量の中央値(TCID50)として測定される(Zen,Z.他(2004)“Infectious Titer Assay For Adeno-Associated Virus Vectors With Sensitivity Sufficient To Detect Single Infectious Events,”Hum.Gene Ther.15:709-715)。
【0055】
本明細書中において、本発明の方法の使用から得られた産生力価が、追加的に提供されたイオンが提供されずに同様に実施された産生から得られた力価より、少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも20%大きい、さらに好ましくは少なくとも30%大きい、より好ましくは少なくとも40%大きい、より好ましくは少なくとも50%大きい、より好ましくは少なくとも60%大きい、より好ましくは少なくとも70%大きい、より好ましくは少なくとも80%大きい、より好ましくは少なくとも90%大きい、より好ましくは少なくとも2倍大きい、より好ましくは少なくとも110%大きい、より好ましくは少なくとも120%大きい、より好ましくは少なくとも130%大きい、より好ましくは少なくとも140%大きい、より好ましくは少なくとも2.5倍大きい、より好ましくは少なくとも160%大きい、より好ましくは少なくとも170%大きい、より好ましくは少なくとも180%大きい、より好ましくは少なくとも190%大きい、より好ましくは少なくとも3倍大きければ、rAAV産生力価が、本発明の方法によって「増加した(された)」と言われる。
【0056】
本発明の方法を用いて産生力価を増加させることができるrAAVは、AAVキャプシド粒子内にカプセル化され得るrAAVプラスミドベクターにrAAVがパッケージングされることを可能にする任意の導入遺伝子カセットを含むことができる。限定されるものではないが、このような導入遺伝子カセットは、ヒト、霊長類(チンパンジー、テナガザル、ゴリラ、オランウータンなどを含む)、セルコピテクシン(cercopithecine)(ヒヒ、カニクイザル、ビロードサルなどを含む)、イヌ、グリリン(glirine)(ラット、マウス、ハムスター、モルモットなどを含む)、ネコ、ヒツジ、ヤギ、またはウマ起源であってもよい。
【0057】
好ましい実施形態において、そのようなrAAVまたはrAAVプラスミドベクターは、タンパク質(例えば、酵素、ホルモン、抗体、受容体、リガンドなど)をコードするか、または遺伝的もしくは遺伝的疾患もしくは状態に関連する転写された核酸を含み、その結果、そのような疾患もしくは状態を治療するための遺伝子治療において使用され得る。
【0058】
本発明の方法は、所望のrAAVまたはrAAVプラスミドベクター、ならびにそのようなrAAVまたはrAAVプラスミドベクターによって提供されないタンパク質またはRNA分子を提供することができる、1以上のウイルスおよび/またはヘルパープラスミドでトランスフェクトされた細胞において、rAAVおよびrAAVプラスミドベクターの産生力価を増加させるために使用することができる。上述のように、このようなタンパク質またはRNA分子には、ベクターの転写制御および複製、ならびにウイルスゲノムのウイルスカプセルへのパッケージングに必要なRep52およびRep78タンパク質をコードする遺伝子、およびrAAVの場合には、感染性粒子の形成に必要なVPキャプシドタンパク質をコードするcap遺伝子が含まれる。このようなタンパク質またはRNA分子には、AAVの増殖に必要なウイルス転写因子および翻訳因子(E1a、E1b、E2a、VAおよびE4)も含まれる。本発明のrAAVを産生するための、本発明の一実施形態において、これらの遺伝子およびRNA分子の全ては、rAAVと協働してダブルプラスミドトランスフェクションシステムを含むように、同一のヘルパーウイルス(より好ましくは、ヘルパーベクター)上に提供される。しかし、より好ましくは、本発明のrAAVを産生するために、必要なrepおよびcap遺伝子は、1つのプラスミドによって提供され、ウイルス転写および翻訳因子をコードする遺伝子は、第2のプラスミド上に提供され、そのようなプラスミドは、rAAVと協働して、トリプルプラスミドトランスフェクションシステムを含む。
【0059】
本発明の方法は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10血清型ならびにrAAV1、rAAV2、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9およびrAAV10血清型を含み、ハイブリッド血清型(例えば、AAV2/5およびrAAV2/5は、血清型2および5のハイブリッドであり、したがって、このような血清型の両方のトロフィズム(trophism)を有する)を含む、いずれかの血清型に属するrAAVの産生力価を増加させるために使用することができる。
【0060】
本発明の方法は、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルスまたはパピローマウイルスによって提供される「ヘルパー」RNAまたはタンパク質を用いて産生されるrAAVの産生力価を増強するために使用することができる。
【0061】
本発明の方法は、接着単層培養または懸濁培養において細胞によって産生されるrAAVの産生力価を増強するために使用することができ、rAAVを産生することができる任意の方法とともに使用することができる。しかし、rAAVは、好ましくは、組織培養で成長させたベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、またはより好ましくは、ヒト胚腎臓(HEK)細胞を上述されたプラスミドベクターでトランスフェクトすることによって産生される。内因性レトロウイルスを欠くBHK細胞株BHK-21(ATCC CCL-10)は、好ましいBHK細胞株である。HEK細胞株HEK293(ATCC CRL-1573)、およびHEK293T(ATCC CRL-3216:SV40T抗原に対する温度感受性遺伝子が挿入されたHEK293細胞株の高度にトランスフェクト可能な誘導体)またはHEK293T/17(トランスフェクションの容易さのために選択されたATCC(商標)CRL-11268)のような、その誘導体が特に好ましい。HEK293T/17SF細胞株(ATCC ACS-4500)は、無血清培地および懸濁液に適合した293T/17細胞株(ATCC CRL-11268)の誘導体であり、希望によって用いることができる。
【0062】
このような細胞を培養するための本発明の好ましい基本培地は、イーグル最小必須培地(ATCCカタログNo.30-2003)またはダルベッコの改変イーグル培地(DMEM;Mediatech,Manassas,VA)である。ウシ胎児血清(例えばFBS;HyClone Laboratories,South Logan,UT)を10%の最終濃度まで加えて完全増殖培地が作製される。イーグル最小必須培地およびダルベッコの改変イーグル培地は、様々な無機塩に加えて、アミノ酸、ビタミン、および必要に応じてグルコースを含有する複合培地である。このような塩の濃度は起源によって若干異なるが、ダルベッコの改変イーグル培地(例えばThermoFisher Scientificから商業的入手可能)はさらにおよそ表1に示されている無機塩を含む。ダルベッコの改変イーグル培地は、オリジナルのイーグル最小必須培地の約4倍のビタミンとアミノ酸を含み、2~4倍のグルコースを含むという点で培地は異なる。追加的に、それはpH表示用に硫酸第二鉄の形態の鉄とフェノールレッドを含有する(Yao,T他(2017)“Animal-Cell Culture Media:History,Characteristics,And Current Issues,”Reproduc.Med.Biol.16(2):99-117)。
【表1】
【0063】
このようなトランスフェクションに使用される細胞は、好ましくは、指数増殖期に維持するために週2回継代される。小規模トランスフェクションについては、例えば、マルチウェルプレート上のウェル当たり1×10 HEK293またはBHK細胞、または15cmディッシュ当たり1.5×10 HEK293細胞のアリコートを使用することができる。大規模産生のために、HEK293またはBHK細胞は、複数のコンフルエントな15cmプレートから収集され、1リットルの完全な培養培地を含有する2つの10層細胞スタック(Corning,Corning,NY)に分割され得る。一実施形態において、そのような細胞は、トランスフェクション前にそのような培地中で4日間増殖される。トランスフェクションの前日に、2つの細胞スタックをトリプシン処理し、細胞(例えば、約6×10細胞)を200mlの培地中に再懸濁させてもよい。好ましくは、細胞をトランスフェクション前に24時間付着させる。細胞スタックの集密性は、顕微鏡ステージ上に細胞スタックを収容するために、位相コントラストハードウェアが除去された、ダイアポット(Diaphot)倒立顕微鏡(Nikon,Melville,NY)を用いてモニターすることができる。
【0064】
本明細書で使用される用語「イオン強度」は、溶液中のイオンの濃度を示すことを意図される。本発明は、rAAVトランスフェクト細胞を培養するために使用される培地に追加的なイオンを提供することによって、培地のイオン強度を増加させることによって、rAAV産生力価を増強する。
一実施形態においては、提供されるイオンはカチオンである。適当なカチオンには、Na、K、Ca++、およびMg++を含む。このようなカチオンは、無機塩または有機分子の塩として提供することができる。別の実施形態では、提供されるイオンはアニオンである。適当なアニオンは、以下のような無機アニオンを含む:CO --、HCO 、HPO 、PO --、SCN(チオシアナート)、SO4--、HSO4、およびC、および有機イオン、例えば:酢酸塩(CHCOO)、アスパラギン酸塩、フタル酸水素塩、酒石酸水素塩、ブトキシエトキシ酢酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩(C ---)、デヒドロ酢酸塩、二酢酸塩、ジヒドロキシグリシナート、d-サッカレート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシナート、グリコ硫酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、乳酸塩、メチオニン酸塩、シュウ酸塩、フェネート、フェノスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリン、サリチル酸塩、サルコシン酸塩、ソルビン酸塩、チオグリコール酸塩、およびトルエンスルホン酸塩。
【0065】
そのような陽イオンまたは陰イオンは、そのような追加的に提供された陽イオンなしで同じ培地中で産生される力価を超えてrAAV産生力価を増加するのに十分な任意の濃度で提供され得る。そのような陽イオンまたは陰イオンの適切な濃度は、そのような添加の前に、そのような培地中に存在する、そのようなイオンの任意の濃度に加えて、培養培地中のそのようなイオンの初期濃度を約30mMから約80mM、約40mMから約80mM、約50mMから約80mM、約60mMから約80mM、約70mMから約80mM、または約80mM増加させるのに十分な濃度を含む。もし、そのような培地が最初に投与されるべきイオンを含まなかった場合、そのような加えられるイオンは、好ましくは、そのような培地中に約30mMから約80mM、約40mMから約80mM、約50mMから約80mM、約60mMから約80mM、約70mMから約80mM、または約80mMの、イオンの濃度を提供するのに十分な量で提供される。
【0066】
最初の培地に加えられるイオンまたは塩は、産生されるrAAVの回収前にいつでも加えることができる。好ましくは、そのようなイオンまたは塩は、培養開始後、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約15時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、または少なくとも約24時間で加えられる。
【0067】
本明細書中での使用において、用語「約」は、濃度、量、または時間に関して使用される場合、そのような濃度、およびそのような濃度の±40%以内、より好ましくはそのような濃度の±30%以内、さらにより好ましくはそのような濃度の±20%以内、さらにより好ましくはそのような濃度の±10%以内、さらにより好ましくはそのような濃度の±5%以内である濃度の範囲を示すことが意図される。つまり、例えば、記載された10.0mMの濃度は、10.0mMの濃度、ならびに6~14mMの濃度、より好ましくは7~13mMの濃度、さらにより好ましくは8~12mMの濃度、さらにより好ましくは9~11mMの濃度、さらにより好ましくは9.5~10.5mMの濃度を示す。
【0068】
つまり、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地は約5.37mMの初期K濃度を有するので、そのようなカチオンの濃度を約30mM増加させるのに十分な追加的なKを供給すると、培地は約35.4mMのNa濃度を有することになる。同様に、ダルベッコの改変イーグル培地は、約44.04mMの初期HCO -濃度を有するので、そのようなカチオンの濃度を約30mM増加させるのに十分な追加的なHCO -の供給は、培養培地に約74.04mMのHCO -濃度を生じさせる。
【0069】
すなわち、特に本発明は、組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させる方法であって、該方法が以下の工程を含む方法を提供する。
(A)培養培地において、初期の期間、rAAVの産生を可能にするのに十分な条件下で、そのようなrAAVでトランスフェクトされた細胞を培養すること;
(B)前記初期の期間の後、培地に1以上のイオン、好ましくはNa以外の1以上のイオンを、培養培地中のそのようなイオンの濃度を約30mMから約80mM増加させるのに十分な量、加えることにより、培地のイオン強度を変更すること;
(C)(B)の非存在下で得られる力価よりも大きい前記rAAVの産生力価を産生するように、前記細胞の前記培養を継続すること。
【0070】
本発明は、特に、rAAV産生力価を高めるためのKHCOの使用を意図している。このようなKHCOは、好ましくは、培地中のKおよびHCO -の濃度を約20mM、約30mM、約40mM、または約50mM増加させるのに十分な量で提供される。このような添加は、ダルベッコ改変イーグル培地中のK濃度を約25mM、約35mM、約45mM、または約55mMとし、このような培地中のHCO -濃度を約64mM、約74mM、約84mM、または約94mMとする。もし、そのような培地がKおよびHCO -イオンを含まない場合、そのようなKHCOは、好ましくは、そのような培地中のKおよびHCO -の濃度を約20mM、約30mM、または約40mMとするのに十分な量で提供される。
【0071】
II.本発明の薬学的組成物
本発明は、さらに、本発明の方法に従って製造されたrAAVの薬学的に許容される調製物、および薬学的に受容可能な担体を含む薬学的組成物を含む。そのような薬学的組成物のrAAVは、タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを含むか、または転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態を治療する、そのような薬学的組成物中に有効な量(「有効量」)で存在する。
【0072】
用語「薬学的に許容される」は、連邦政府または州政府の規制機関あるいは米国薬局方(US Pharmacopeia)または他の一般に認められた薬局方にリストされた規制機関によって、動物、特にヒトにおける使用が承認されたことを意味する。用語「担体」は、それと共に治療薬が投与される、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントの完全および不完全アジュバント)、賦形剤、または賦形剤を指す。そのような医薬担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような、石油、動物、植物または合成起源のものを含む、水および油のような滅菌液体であり得る。薬学的組成物を静脈内投与する場合、水は好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も液体担体として、特に注射用溶液のための液体担体として用いることができる。適切な薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、所望すれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとることができる。適切な薬学的形剤は、米国特許第8,852,607号;米国特許第8,192,975号;米国特許第6,764,845;米国特許第6,759,050号および米国特許第7,598,070号に記載される。
【0073】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば、乾燥凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、または活性剤の量を示すバイアル、アンプルまたはサシェットのような密封容器中の水溶液として、単位投与形態で別々に、または一緒に混合されて供給される。この組成物を注入によって投与する場合には、無菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて投与することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射または生理食塩水のための滅菌水のアンプル、または他の希釈剤を提供して、成分を投与前に混合することができる。
【0074】
本発明はまた、このような薬学的組成物の1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。このような容器には、適宜、薬品または生物由来製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定める様式による通知を関連付けることができる。その通知とは、人の投与のための、製造、使用または販売の機関による承認を反映するものである。
【0075】
このような薬学的組成物のrAAVは、好ましくは、バイアル、アンプルまたはサシェットのような密封容器内に包装され、分子の量を示し、任意に使用指示書を含む。一実施形態では、このようなキットのrAAVは、乾燥滅菌凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として密閉容器内に供給され、対象への投与のための適切な濃度まで、例えば、水、生理食塩水または他の希釈剤で再構成することができる。凍結乾燥物は、元の容器で2~8°Cで保存され、再構成された後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内、または溶解後1時間以内に投与される。別の実施形態では、このようなキットのrAAVは、密閉容器内の水溶液として供給され、例えば、水、生理食塩水、または他の希釈剤で、被験体への投与のための適切な濃度に希釈され得る。キットは、1つ以上の容器中に、疾患または状態の治療に有用な1つ以上の他の予防および/または治療剤をさらに含むことができる;および/またはキットは、癌に関連する1以上の癌抗原に結合する1以上の細胞傷害性抗体をさらに含むことができる。ある態様において、他の予防または治療剤は化学療法剤である。他の態様において、予防剤または治療剤は、生物学的またはホルモン治療剤である。
【0076】
III.本発明の使用
本発明の方法は、rAAVの産生を容易にするために使用することができ、特に、タンパク質(例えば、酵素、ホルモン、抗体、受容体、リガンドなど)をコードする導入遺伝子カセットを含むrAAVの産生を容易にするために使用することができ、または転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態を治療し、そのような疾患または状態を治療するための遺伝子治療において使用することができる。そのような疾患および状態の例には、色盲(ACHM)、α1アンチトリプシン(AAT)欠損症;アルツハイマー病;芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)欠損症;脈絡膜血症(CHM);癌;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;ジスフェルリン欠損症;ホリスタチン遺伝子欠損症(BMDSIBM);血友病A;血友病B;A型肝炎;B型肝炎;C型肝炎;ハンチントン病;特発性パーキンソン病;乳児後期神経セロイドリポフスチン症(LINCL、バッテン病の乳児型);レーベル先天性黒内障(LCA);レーベル遺伝性視神経症(LHON);肢帯型筋ジストロフィー1B(LGMD1B);肢帯型筋ジストロフィー1C(LGMD1C);肢帯型筋ジストロフィー2A(LGMD2A);肢帯型筋ジストロフィー2B(LGMD2B);肢帯型筋ジストロフィー2I(LGMD2I);肢帯型筋ジストロフィー2L(LGMD2L);リポタンパクリパーゼ(LPL)欠損症;異染性白質ジストロフィー;神経学的障害;神経運動障害;神経骨格障害;パーキンソン病;関節リウマチ;サンフィリッポA症候群;脊髄性筋萎縮症(SMA);X連鎖性網膜分離症(XLRS);αサルコグリカン欠損症(LGMD2D);βサルコグリカン欠損症(LGMD2E);γ-サルコグリカン欠損症(LGMD2C)およびδ-サルコグリカン欠損症(LGMD2F)。
【0077】
IV.本発明の実施形態
本発明は組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させる方法、そのような方法から産生される組換え改変アデノ随伴ウイルス(AAV)ヘルパーベクター、その使用および組成物に関する。特に以下の実施形態E1~E19に向けられる。
E1.組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生力価を増加させる方法であって、該方法が以下の工程を含む方法:
(A)初期の培養培地において、初期の期間、rAAVの産生を可能にするのに十分な条件下で、前記rAAVでトランスフェクトされた細胞の培養することであって、前記細胞はさらにAAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドおよび非AAVヘルパー機能提供ポリヌクレオチドを含有する、培養すること;
(B)前記初期の期間の後、前記培養培地にNa以外の1以上のイオンを加えることにより、前記培養培地のイオン強度を変更すること;および
(C)(B)の非存在下で得られる力価よりも大きい前記rAAVの産生力価を産生するように、前記細胞の前記培養を継続すること。
E2.前記加えられるイオンの各々が、前記初期の培養培地中の前記イオンの濃度を約10mMから約80mM増加させるのに十分な量で提供される、E1に記載の方法。
E3.産生力価が、工程(B)の非存在下で同様に実施される細胞培養から得られる力価より少なくとも50%高い、E1またはE2のいずれかの方法。
E4.rAAVが、タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを含み、または、転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的である、E1からE3のいずれかの方法。
E5.rAAVが、rAAV1、rAAV2、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9またはrAAV10の血清型、または前記血清型のハイブリッドに属する、E1からE4のいずれかの方法。
E6.rAAVが、rAAV2、rAAV5、またはrAAV9の血清型、または前記血清型のハイブリッドに属する、E5に記載の方法。
E7.加えられるイオンが、K、Ca++またはMg++の1つ以上を含む、E1からE6のいずれかの方法。
E8.加えられるイオンが、CO --、HCO 、HPO 、PO --、SCN、SO --、HSO 、およびClの1つ以上を含む、E1からE7のいずれか1項に記載の方法。
E9.加えられるイオンが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、フタル酸水素塩、酒石酸水素塩、ブトキシエトキシ酢酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩、デヒドロ酢酸塩、二酢酸塩、ジヒドロキシグリシナート、d-サッカレート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシナート、グリコ硫酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、乳酸塩、メチオニン酸塩、シュウ酸塩、フェネート、フェノスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリン、サリチル酸塩、サルコシン酸塩、ソルビン酸塩、チオグリコール酸塩、およびトルエンスルホン酸塩の1つ以上を含む、E1からE7のいずれかの方法。
E10.加えられるイオンがKおよびCO --を含む、E1からE8のいずれかの方法。
E11.細胞がヒト胚性腎細胞である、E1からE10のいずれかの方法。
E12.細胞がHEK293細胞である、E11に記載の方法。
E13.細胞が、ベビーハムスター腎細胞である、E1からE10のいずれかの方法。
E14.細胞がBHK21細胞である、E13の方法。
E15.細胞がsf9昆虫細胞である、E1からE10のいずれかの方法。
E16.初期の培養培地がダルベッコの改変イーグル培地である、E1からE15のいずれかの方法。
E17.初期の培養培地に血清が補足される、E16の方法。
E18.以下を含む薬学的組成物:
(A)E1からE17のいずれか1項に記載の方法によって製造された、組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製物、ただし、前記rAAVが、タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または、転写された核酸を含み、それは遺伝子に関するまたは遺伝性の疾患または状態に対して治療的であり、また、前記薬学的組成物は、有効量の前記rAAV調製物を含有する;および
(B)薬学的に許容される担体。
E19.遺伝子または遺伝性の疾患または状態の治療において使用するための、タンパク質をコードする導入遺伝子カセット、または転写された核酸、を含む、E1からE17のいずれかの方法によって産生される組換え改変アデノ随伴ウイルス(rAAV)の調製物、またはE18の薬学的組成物。
【実施例
【0078】
本発明を一般的に説明した後、以下の実施例を参照することにより、同じことがより容易に理解されるであろう。これらの実施例は、例示として提供され、特定されない限り、本発明を限定することを意図しない。
【0079】
実施例1
rAAV産生に及ぼすカチオンおよびカチオン濃度の効果
AAV産生に対する陽イオンおよび陽イオン濃度の効果は培養HEK293細胞を用いて示された。培地を変え、1時間後、細胞を以下でトランスフェクトした:
(1)rAAVの複製およびパッケージングに必要なAAV repおよびcap遺伝子機能を発現することができるプラスミドベクターpAAV-RC2;
(2)AAV増殖に必要なウイルス転写および翻訳因子(E1a、E1b、E2a、VAおよびE4)を提供することができるプラスミドベクターpHelper;
(3)増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードする導入遺伝子カセットおよびAAV ITRを含むrAAVプラスミドベクターpAV-CMV-EGFP。
【0080】
このようなトランスフェクションの5時間後、塩(NaCl、KCl、CaClまたはMgClのいずれか)を最終濃度0、20、40、60、80または100mMに提供した。図7Aは、トランスフェクトされた細胞におけるEGFPの発現の程度および感染中心アッセイを用いたrAAV株の力価を示す。図7Bは、このような陽イオンおよび陽イオン濃度の関数としての感染中心における倍率変化のグラフである。図7Cは、このようなカチオンおよびカチオン濃度の関数としてのAAVの総ゲノム(TG)における倍率変化のグラフである。結果は、カチオンの供給は産生された総ゲノム(TG)に影響し、NaCl、KClおよびMgCl2の供給はAAVゲノム複製およびAAV産生を増加させたことを示す。NaClおよびKClの供給は、総ゲノムの最高力価およびAAV産生の最大増加を引き起こすことが見出され、培地中のそのようなイオンの濃度を約40mMから約80mMの範囲だけ増加させるのに十分であるNaClおよびKCl濃度で、見られる最大増加を伴った。より高濃度のカチオンの供給はEGFP発現を阻害することが分かった(NaCl≧180mM;KCl≧100mM;MgCl≧60mM)。
【0081】
実施例2
rAAV産生に及ぼすアニオンおよびアニオン濃度の効果
AAV産生に対するアニオンおよびアニオン濃度の効果は、また培養HEK293細胞を用いて示された。実施例1と同様に、培地を変え、1時間後に、細胞はAdヘルパープラスミド、AAVヘルパープラスミド、およびAAV ITRおよび増強された緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを提供するpAAV-ITRプラスミドベクターでトランスフェクトされた。このようなトランスフェクションの5時間後、塩(KCO、KHCO、KHPO、KCHCOO(酢酸カリウム)、KCNS、KSO、KNO、K(クエン酸カリウム)またはKCLのいずれか)は、培地中のこのようなイオンの濃度を40、50、60または70mM増加させるのに十分な量提供された。rAAV感染中心の倍率変化を72時間後に測定した。KHCOの供給は、総ゲノムの最高力価およびAAV産生の最大増加を引き起こすことが見出され、培地中のそのようなイオンの濃度を約40mMから約50mMの範囲だけ増加させるのに十分である濃度で最大増加を伴った(図8A)。図8Bは、このようなアニオンおよびアニオン濃度の関数としてのrAAVベクターの力価の倍率変化のグラフである。結果は、陰イオンの供給が産生された全ゲノム(TG)に影響することを示す。高濃度イオン(>60mM)の供給はrAAV産生を減弱することが分かった。結果は、培地中のそのようなイオンの濃度を約30mMから約50mMの範囲だけ増加させるのに十分な量のKHCOの供給が、他の塩で得られたものよりも予想外に良好な結果を提供することを示す(図9Aから図9B)。約30mMの濃度増加が最適と考えられた。
【0082】
実施例3
rAAV産生に及ぼすKHCOの供給の時間の効果
トランスフェクション後の異なる時間にKHCOを供給することによって引き起こされる効果もまた調査された。HEK293細胞を培養し、以下で共トランスフェクトされた:(1)上記Adヘルパープラスミド、(2)AAV ITRおよび増強された緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを提供するpAAV-ITRプラスミドベクター、および(3)AAV repおよびcap遺伝子機能を提供するためのAAV2ヘルパープラスミドまたはAAV8ヘルパープラスミド。共トランスフェクションの1時間前に培地は交換された。トランスフェクション後2、4、6、8、および10時間に、KHCOを、培地中のそのようなイオンの濃度を30mM濃度増加させるのに十分な量加え、培地中に放出されたrAAVの倍率変化を72時間で評価した。rAAVの総産生量の変化もまた評価された(図10)。結果は、塩がトランスフェクションの4~8時間後に加えられたときに最大の増強が見られたことを示す。
【0083】
実施例4
rAAV産生に対する血清型の影響
上述のように、rAAVの産生を増強する以前の方法は、AAV2血清型を有するrAAVについては成功しなかった(Lock,M.他(2010)“Rapid,Simple,and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale,”Hum.Gene Ther.21:1259-1271)。異なる血清型のrAAVの産生を増強するKHCO添加の能力を評価するために、血清型1、2、5、6、7、8、9または10のCapタンパク質をコードするAAV2ヘルパープラスミドを、上述のAdヘルパープラスミドおよびAAV ITRおよび増強された緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを提供するpAAV-ITRプラスミドベクター(pAV-TBG-EGFP)と共にHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、KHCOを最終濃度30mMとなるよう加え、培地に放出されたrAAVの倍率変化が72時間に評価された。この研究の結果は、図11Aから11Bに示され、イオンの添加、特にKHCOの添加は、rAAV2血清型を含む、試験した全ての血清型のrAAVの産生力価を有意に増加させたことを示す。
【0084】
実施例5
大規模rAAV産生へのイオン供給の効果
イオンの供給が大規模調製物におけるrAAVの産生を増強することを実証するために、緑色蛍光蛋白質または他の外因性分子をコードする導入遺伝子カセットを有する血清型1、5、6および9のrAAVを、5つの15cmディッシュ中の総濃度30mM KHCOの存在下または非存在下で大規模に産生した。AAV力価は精製後に得られた。結果は表2に示される(pDNA_001ドナー構築物、PiBFXNco3およびPiBFXNco11は対照ベクターである)。
【表2】
【0085】
表2に示すように、イオンの供給、特にKHCOの供給は、rAAV産生を1.2倍から4.6倍の増加であり、平均で約3倍の増加の結果であった。
【0086】
実施例6
懸濁液中で増殖させた細胞によるrAAVの産生に対するイオン供給の影響
イオンの供給が懸濁液中で増殖させた細胞によるrAAVの産生を増強することを実証するために、HEK293細胞を以下で共トランスフェクトした:(1)上記Adヘルパープラスミド、(2)AAV ITRおよび増強された緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子カセットを提供するpAAV-ITRプラスミドベクター、および(3)AAV repおよびcap遺伝子機能を提供するためのAAV5ヘルパープラスミドまたはAAV6ヘルパープラスミド。KHCOを、トランスフェクション後5時間または20時間で培養培地中のそのようなイオンの濃度を10、20、30、40、50または60mM増加させるのに十分な量加えた。作製したrAAVの全ゲノムをトランスフェクション後72時間で測定した。産生されたrAAVの総ゲノムはトランスフェクション後72時間に決定された。懸濁細胞を120rpmの撹拌速度で37°C、5%COで培養した。懸濁液中で培養された細胞の、イオンの供給に応答して増強されたレベルのrAAVを産生する能力を図8に示す。図12に示すように、最終濃度が約20mMを超えるイオンを供給は、rAAV5およびrAAV6の産生を増強した。
【0087】
本明細書に記載されているすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許出願がその全体が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、それは更なる修正が可能であることが理解されるであろうし、本出願は、一般的に、本発明の原理に従った、本開示からの逸脱を含む、本発明が関係する技術分野における公知のまたは慣習的な実施の範囲内で、かつ、先に述べた本質的特徴に適用され得る、本開示からの任意の変形、用途または適合をカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】