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特表2022-541239二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材
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  • 特表-二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/04 20060101AFI20220914BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20220914BHJP
   H01B 12/08 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01B12/04
D01F9/08 D
H01B12/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502846
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020067507
(87)【国際公開番号】W WO2021008827
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19250011.4
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(71)【出願人】
【識別番号】522018745
【氏名又は名称】イーポック ワイヤーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EPOCH WIRES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Unit 8 - Burlington Park Foxton, Cambridge Cambridgeshire CB22 6SA Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】クリス ドゥフルスト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン メスダーク
(72)【発明者】
【氏名】メメット クトゥックチュ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ファンデピュッテ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ファベーケ
【テーマコード(参考)】
4L037
5G321
【Fターム(参考)】
4L037CS17
4L037FA01
4L037UA05
5G321AA98
5G321CA08
5G321CA16
5G321DA06
(57)【要約】
二ホウ化マグネシウム(MgB)パウダ・イン・チューブ(PIT)線材の断面には、エネルギ分散型X線分光法により測定した場合に、ボイド、二ホウ化マグネシウム、及び酸化物が見られる。酸化物はボイドと二ホウ化マグネシウムとの間の境界に位置する。MgB PIT線材は、高い超電導性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ボイド、
-二ホウ化マグネシウム及び、
-酸化物
を示す断面を有する二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材であって、
酸化物は前記ボイドと前記二ホウ化マグネシウムとの境界に位置する、二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材。
【請求項2】
前記線材はin situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材である、請求項1に記載の線材。
【請求項3】
存在する前記酸化物の60%超が前記ボイドと前記二ホウ化マグネシウムとの境界に位置する、
請求項1又は請求項2に記載の線材。
【請求項4】
前記酸化物は酸化マグネシウムである、
請求項3に記載の線材。
【請求項5】
前記酸化マグネシウムはMgOである、
請求項4に記載の線材。
【請求項6】
酸素の量は、断面のボイドを含めずに測定した場合に5wt%未満である、請求項1~5の何れか1項に記載の線材。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の線材を2本以上含むマルチワイヤ。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の線材の製作プロセスであって、
以下のステップ:
a)マグネシウム粉末及び/又はホウ素粉末を第一のキャリア液中で混合し、第一のスラリを作ること;
b)前記第一のスラリを洗浄して、酸化マグネシウム及び/又は酸化ホウ素を洗い落とし、マグネシウム粉末及び/又はホウ素粉末、及び残りの酸化物の残留物を取り出すこと;
c)第二のキャリア液を前記残留物に添加して、第二のスラリを作ること;
d)前記第二のスラリを予備成形された金属シースに加えること;
e)前記予備成形された金属シースを閉じて、管を形成すること;
を含むプロセス。
【請求項9】
前記第一のキャリア液は前記第二のキャリア液と同じである、
請求項8に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材に関し、より詳しくは超電導線材として使用されるin situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材に関する。本発明はまた、かかる線材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/064471 A1号パンフレットは、in situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材及びこの線材の製作法を開示している。
【0003】
パウダ・イン・チューブ線材は既知のパウダ・イン・チューブ(PIT)技術により製作される。この技術によれば、前駆体のマグネシウム粉末とホウ素粉末が1つ又は複数の金属管に詰められる。これらの管が展伸、スウェージング、圧延、及び熱処理によって機械的に変形されて、最終的な二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ超電導線材が得られる。
【0004】
ex situ方式では、反応済みの二ホウ化マグネシウム粉末が開始材料として使用される。
【0005】
in situ方式では、反応前のマグネシウム及びホウ素粉末と使用される可能性のあるドーパント粉末が開始材料として使用される。
【0006】
国際公開第2017/064471 A1号パンフレットは、マグネシウム粉末若しくはホウ素粉末の何れに関して、又はそれらの両方に関して化学的に不活性のキャリア液の使用を開示している。この液体は、マグネシウム粉末に対して酸化性を持たず、及び/又はホウ素粉末に対しても酸化性を持たない。液体キャリアは粉末と共にスラリを形成し、それが1つ又は複数の管のチャネル内に連続的に供給される。その後、非酸化性雰囲気中で加熱され、その結果、固体残留物が得られる。粉末を不活性キャリア液に混入させることによって、酸化、吸水等の問題が軽減され、粉末はより高い均一性レベルに混合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一般的態様は、超電導性の程度をさらに高めることを目指す。
【0008】
本発明のより具体的な態様は、酸素又は酸化物を超電導線材中の、超電導性にとってより害のない位置に位置付けることを目指す。
【0009】
本発明の他の特定の態様は、超電導線材中の酸素又は酸化物の含有量をさらに減らすことを目指す。
【0010】
本発明のまた別の態様は、電導性を低下させずにより大きいマグネシウム粉末の使用を可能にすることである。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、超電導線材の常電導伝播速度を速めることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によれば、
-ボイド又は空洞、
-二ホウ化マグネシウム及び、
-酸化物
を示す断面を有する二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材が提供され、
酸化物はボイドと二ホウ化マグネシウムとの境界に位置する。
【0013】
ボイド、二ホウ化マグネシウム、及び酸化物の可視化は、エネルギ分散型X線分光法により実現できる。
【0014】
二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材は好ましくは、in situ法によるパウダ・イン・チューブ線材である。
【0015】
存在する酸素の量の大半が高反応性のマグネシウムと反応し、酸化マグネシウムを形成している。この酸化マグネシウムの大部分が不可避的なボイド又は空洞と二ホウ化マグネシウムとの境界にあるため、二ホウ化マグネシウム結晶材料中に依然として存在する酸素はほとんどない。
【0016】
したがって、二ホウ化マグネシウムは、その酸素による汚染が極めて限定的にすぎないため、より強力な粒界を有する。
【0017】
電流の経路は二ホウ化マグネシウムを通るため、より高い臨界電流Iを得ることができる。
【0018】
二ホウ化マグネシウムマトリクス内のより強力な粒界は、粒間結合の改善及びよりよい曲げ性能につながる。これは、同じ線径でより小さい曲げ半径が可能であり、それによって最終的なコイル製作が容易になることを意味する。
【0019】
他の利点は、二ホウ化マグネシウムの含有量と位置がマグネシウム粉末の粒径に依存しないことである。その結果、100μm~350μmの範囲の、より大型のマグネシウム粉末を開始材料として使用してよく、それによって開始材料のコストが削減され、爆発のリスクが低下する。実際、マグネシウムは高い反応性を有することが知られており、マグネシウム粉末の粒径が小さいほど、発火のリスクが高いことが知られている。
【0020】
また別の利点は、長さ方向の常電導伝播速度が先行技術の二ホウ化マグネシウム線材より速いことである。長さ方向の常電導伝播速度は、線材の長さに沿った局所的ホットスポットの伝播速度を決定する。長さ方向の常電導伝播速度が速いことは、超電導体内の通常の抵抗ゾーンの長さが素早く拡張し、その結果、コイル端で測定される抵抗電圧が急上昇すること意味する。この測定を高速で行うことができるほど、これから起ころうとしている急冷を素早く検出でき、磁石を局所的過熱及び不可逆的ダメージから防護し、保護するための保護スキームをより素早くトリガできる。
【0021】
酸素濃度のより低い、より均一な二ホウ化マグネシウムマトリクスは、より高いn値と、したがってより高い常電導伝播速度につながると考えられている。n値は、導電体の均一性を測定するために一般的に使用されるパラメータである。n値が高いほど、常電導伝播速度がより速い。
【0022】
存在する酸化物の好ましくは60%超、最も好ましくは70%、80%、90%、又は95%超がボイドと二ホウ化マグネシウムとの境界に位置する。マグネシウムの高い反応性から、これらの酸化物の大部分が酸化マグネシウムである。酸化マグネシウムは主としてMgOである。
【0023】
国際公開第2017/064471 A1号パンフレットのスラリ方式を適用した場合であっても、酸化物を回避することはできない。マグネシウムは酸化に対して最も反応性の高い元素のひとつである。したがって、酸化はマグネシウム粉末の表面だけでなく、ホウ素粉末の表面でも起こる。酸化マグネシウム(主としてMgO)と酸化ホウ素(B)が形成される。マグネシウム粉末又はホウ素粉末、或いはそれらの両方と、SiC等の考え得るドーパントが、粉末の少なくとも一方に対して化学的に不活性な第一のキャリア液に添加される。最終的なPIT線材の中の酸化物をさらに減らす1つの方法は、第一のキャリア液と粉末の少なくとも一方で第一のスラリを形成した後、スラリを洗浄することである。この洗浄ステップによって、酸化マグネシウム及び/又は酸化ホウ素及び/又はドーパント材料で形成された酸化物の実質的部分が除去される。その後、第一のキャリア液と同じでも又は異なっていてもよい第二のキャリア液が残りの残留物に添加されて、第二のスラリが形成される。その結果、酸素及び酸化物の全量はこの第二のスラリにおいて、第一のスラリより少ない。しかしながら、第二のスラリ中にも酸化マグネシウムは依然として存在する。酸化マグネシウムは、金属マグネシウム粒子の隣に存在する。どちらも、ホウ素粒子の粒径と比べて比較的大きい。プロセス中の後の段階で、加熱処理により二ホウ化マグネシウムの形成が始まると、加熱された金属マグネシウムには、ホウ素粉末内に浸透して反応し、二ホウ化マグネシウムを形成することにおける問題がほぼなくなる。酸化物の大部分は、ボイドと二ホウ化マグネシウムマトリクスとの境界領域に残る。二ホウ化マグネシウムマトリクスに入り込み、二ホウ化マグネシウム粒子の粒間結合に影響を与える可能性のある酸素はほとんどない。
【0024】
洗浄ステップに加えて、又は洗浄ステップの代わりに、例えば溶剤の使用により、スラリ中の酸化物との制御された化学反応によって最終的なPIT線材における酸素の含有量が低減されてもよい。
【0025】
特に好ましい実施形態において、洗浄ステップの結果として、二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材の酸素量は、5重量パーセント(wt%)未満、例えば4wt%未満、好ましくは3wt%未満、最も好ましくは2.5wt%未満である。酸素の量は、超電導材料の断面の統計的に有意な部分について行われる走査型電子顕微鏡法及びエネルギ分散型X線分光法によって、ボイドと空洞の領域を除いて、したがってボイド又は空洞の領域以外の測定又は計算によって特定されてよい。
【0026】
本発明の他の特定の好ましい実施形態において、2つ以上のin situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材を含むマルチワイヤが提供される。これらの線材はまとめて束にすることができ、又は好ましくは撚線とすることができる。
【0027】
本発明の第二の態様によれば、in situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材の製作プロセスが提供される。このプロセスは以下のステップを含む:
a)マグネシウム粉末及び/又はホウ素粉末を第一のキャリア液中で混合し、第一のスラリを作ること;
b)第一のスラリを洗浄して、酸化マグネシウム及び/又は酸化ホウ素を洗い落とし、マグネシウム粉末、ホウ素粉末、及び残りの酸化物の残留物を取り出すこと;
c)第二のキャリア液を残留物に添加して、第二のスラリを作ること;
d)第二のスラリを予備成形された金属シースに加えること;
e)予備成形された金属シースを閉じて、管を形成すること。
【0028】
好ましくは、ステップc)は残留物を乾燥させずに行われる。
【0029】
好ましくは、第二のキャリア液は第一のキャリア液と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】1本のin situ法による二ホウ化マグネシウムパウダ・イン・チューブ線材の第一の製作ステップを概略的に示す。
図2】マルチフィラメント線材を製作するためのその後のステップを概略的に示す。
図3a】先行技術のex situ法によるMgB線材の走査領域を示す。
図3b図3aの走査領域における先行技術のex situ法によるMgB線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。
図4a】先行技術のin situ法によるMgB線材の走査領域を示す。
図4b図4aの走査領域における先行技術のin situ法によるMgB線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。
図5a】本発明のin situ法によるMgB線材の走査領域を示す。
図5b図5aの走査領域における本発明のin situ法によるMgB線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
in situ法によるMgB PIT線材の第一の製作ステップは、スラリの調製に関する。
【0032】
第一のスラリは、B粉末及び/又はMg粉末を第一のキャリア液中で混合することによって調製される。前述のように、小粒径のMg粉末を使用する必要はない。100μm~350μmの範囲の粒径のMg粉末が好適である。B粉末はナノ~マイクロサイズであってよい。SiC等のドーパント粉末が添加されてよい。適当な第一のキャリア液の例は液体炭化水素、エチルアルコール、アセトン、メチルアセテート、及びエチルアセテートである。適当な第二のキャリア液の例はアルコールとアセトンである。
【0033】
その後、この第一のスラリが洗浄される。洗浄プロセスにより、流体物質だけでなく、MgO及び/又はB等の存在する酸化物の実質的部分も除去される。B粉末及びMg粉末並びに考え得るドーパント粉末の残留物と、より少量となった酸化物が残る。
【0034】
洗浄ステップの後、第二の液体キャリアが残留物に添加されて、第二のスラリが形成される。この第二の液体キャリアは第一の液体キャリアと違うものとすることができるが、同じであることが好ましい。
【0035】
ここで、1本のin situ法によるMgB PIT線材の第一の製作ステップを概略的に示す図1を参照する。
【0036】
ステップ100は、金属又は2種金属シート102を巻き出すことである。シートはCu、Ni、Nb、Ti、Fe、ステンレススチール、Cu-Ni、モネル、Ag-Mg、及びNb-Tiのもの又はこれらの何れかの組合せのものとすることができる。好ましくは、2種類の金属からなる2種金属シートが使用されるか、又は異なる金属の2枚のシートが使用される。2つの金属の一方は、他方より電導性が高い。好ましい例は銅と鋼鉄の組合せである。
【0037】
ステップ104は、予備成形要素106によって金属シート102を、例えばU字形態に予備成形することである。U字形態は、第二のスラリを各種の粉末と共に受けるのに適している。
【0038】
ステップ108は、第二のスラリを粉末と共に送達することである。これは1ステップで行うことができ、全ての粉末、B、Mg、及びいかなるドーパント粉末も、1つのノズル110から変形されたシート102に添加される。代替的に、別の第二のスラリ中の各種の粉末をノズル110、112、及び114を介して別々に添加できる。
【0039】
ステップ116は、ヒータ118によって粉末をプレコンデショニングすることである。
【0040】
ステップ120は、予備成形装置122及び溶接作業によって金属シート102を閉じて、閉鎖金属管を形成することである。
【0041】
ステップ124は、管の断面を縮小して、1本の線材を形成することである。この縮小はローラ126によって、又は一連の金型によって行うことができる。
【0042】
ステップ128は、品質管理ステップである。
【0043】
この第一の一連の製造ステップ100、104、108、116、120、124、及び128の結果として、金属シート内部の反応前のB及びMg粉末並びに考え得るドーパント粉末による1本のPIT線材130が得られる。
【0044】
図2は、マルチフィラメント線材を製作するための各種のステップを図解する。
【0045】
1本のPIT線材130は、マルチフィラメント線材を製作するための主な開始製品を形成する。
【0046】
ステップ200で、各種の単独のPIT線材130が相互に隣り合わせに、及び巻き出して撚ることのできる状態の銅又はアルミニウム線材202と並べて配置される。
【0047】
ステップ204は撚りプロセスであり、各種のPIT線材130が銅又はアルミニウム線材202を中心として撚られて撚線構造が形成される。
【0048】
ステップ208で、伸張された絶縁材料210が撚線構造の周囲に巻き付けられ、又は編み込まれて、結合されたマルチフィラメント212が形成される。
【0049】
その後、好ましくは撚り及び巻き付け又は編み込みプロセスと共に、結合されたマルチフィラメント212に加熱処理が行われ、MgがBと反応してMgBが形成される。
【0050】
最後のステップ214で、マルチフィラメント212に樹脂216が含侵される。
【0051】
エネルギ分散型X線分光法を2種類の先行技術によるMgB PIT超電導線材の幾つかのサンプルと本発明によるMgB PIT超電導線材の幾つかのサンプルについて行った。
【0052】
全てのサンプルはアルゴンイオンのプラズマにより切断し、JEOLタイプ(JSM 09010)のクロスセクションポリッシャを使用した。クリーンな断面を生成した後、サンプルを分析のためにサンプルホルダ上に載せ、分析を開始できるまで真空室内に保管した。これは、空気による酸化を回避するために行った。
【0053】
数種類の分析を、80mmのウィンドウのOxford Instruments社製Oxford X-max EDX検出器を備えるJEOL 7200Fで行った。使用したソフトウェアはOxford Aztecバージョン3.3である。
【0054】
全サンプルについて、プロセス時間5、固定カウント/スペクトル数500000で測定を実施した。B、O、又はMg以外のあらゆる元素は、これらをOxford Aztecソフトウェア内で排除することによって、スペクトルから除去した。
【0055】
この方法で使用した加速電圧は5kV又は15kVであった。
【0056】
結果は重量パーセント(wt%)の単位で示す。測定値の精度は0.1wt%である。
【0057】
先行技術の線材1:ex situ法によるMgB PIT線材
図3aは、ex situ法によるMgB PIT線材の走査領域を示す。図3bは、図3aの走査領域内の先行技術のex situ法によるMgB線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。図3b中の白いスポットは酸素に対応する。
【0058】
酸素は断面積全体に均一に分散し、それゆえMgBマトリクス中に広く存在する。
【0059】
ボイド又は空洞は、断面全体の広い範囲に広がっている。
【0060】
特定の数の空洞を含めない純粋な材料の測定は不可能であった。
【0061】
9種類のサンプルを異なる倍率(2000x又は10000x)及び異なる加速電圧(5kV又は15kV)で測定した。これらの9種類のサンプルは以下の範囲を示している:
-B:51.0wt%~52.2wt%
-O:6.8wt%~8.7wt%
-Mg:40.5wt%~42.2wt%。
【0062】
先行技術の線材2:in situ法によるMgB PIT線材
図4aは、先行技術のin situ法によるMgB2線材の走査領域を示す。図4bは、図4aの走査領域内の先行技術のin situ法によるMgB2線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。
【0063】
図4b中の白いスポットは酸素に対応する。酸素は、酸素豊富(oxygen right)領域及び貧酸素領域に分散するが、酸素濃度を空洞又はボイドに関連付けることはできない。
【0064】
先行技術の線材1と異なり、ここでは空洞を含めた場合と含まない場合の測定を行うことができた。
【0065】
空洞を含め、加速電圧15kV、倍率2000x又は10000xの何れかを用いたところ、4種類のサンプルについて以下の範囲が見られた:
-B:40.9wt%~50.3wt%
-O:13.8wt%~23.4wt%
-Mg:29.4wt%~38.3wt%。
【0066】
このような広い範囲から、酸素の不均一な分布が確認される。
【0067】
空洞を除き、加速電圧5kV又は15kVの何れかを用いたところ、以下の範囲が見られた:
-B:29.9wt%~57.3wt%
-O:1.6wt%~34.1wt%
-Mg:33.8wt%~42.6wt%。
【0068】
再び、このような広い範囲から、酸素の不均一な分布が確認される。
【0069】
本発明のin situ法によるMgB PIT線材
図5aは、本発明のin situ法によるMgB線材の走査領域を示す。図5bは、図5aの走査領域内の本発明のin situ法によるMgB線材の酸素のエネルギ分散型X線マッピングを示す。図5b中の白いスポットは酸素に対応する。酸素は、MgBマトリクスと空洞との間の境界に集中している。
【0070】
空洞を含め、加速電圧5kV又は15kV、倍率2000xの何れかを用いたところ、4種類のサンプルについて以下の範囲が見られた:
-B:52.8wt%~54.4wt%
-O:6.2wt%~8.4wt%
-Mg:37.2wt%~40.2wt%。
【0071】
先行技術のin situ法によるMgB PIT線材と比較して、これらの範囲はより狭い。
【0072】
空洞を除き、加速電圧5kV又は15kV及び可変倍率を用いたところ、以下の範囲が見られた:
-B:56.0wt%~58.1wt%
-O:0.9wt%~2.3wt%
-Mg:41.0wt%~42.3wt%。
【0073】
ここでも、範囲はかなり狭い。非常に少量の酸素(常に2.5wt%未満)は顕著であり、本発明の利点を説明している。
【0074】
本発明によるMgB PIT線材は超電導体に使用できる。超電導体は好ましくは、磁気共鳴画像装置の超電導磁石で使用される。本発明による超電導体はまた、磁気浮上式車両、超電導電磁推進船、核融合炉、超電導発電機、加速器、電子顕微鏡、エネルギ貯蔵装置、及び電力ケーブルにおいても応用されてよい。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
【国際調査報告】