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特表2022-541249特定の患者のがんを治療するための抗体の組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】特定の患者のがんを治療するための抗体の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220914BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220914BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220914BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220914BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61K39/395 T
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/68
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502912
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020070319
(87)【国際公開番号】W WO2021009358
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19186840.5
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520031025
【氏名又は名称】バイオインベント インターナショナル アクティエボラーグ
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン フレンデウス
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド テイゲ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ モルテンソン
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド カールソン
(72)【発明者】
【氏名】マーク クラッグ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ビアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート オールダム
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療における、Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFeγ受容体に結合する第1の抗体分子と、Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFeγ受容体に結合する第2の抗体分子との併用、ならびにこれらの2つの抗体分子を含む医薬組成物およびキット、ならびにこれらの2つの抗体を使用するがんの治療方法が記載される。本明細書に記載される治療の恩恵を受ける患者を特定するための診断試験も記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための、
Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との組み合わせ。
【請求項2】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含む、医薬組成物。
【請求項3】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するためのキットであって、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含む、キット。
【請求項4】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための薬物の製造における、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子、および
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子の使用。
【請求項5】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんを治療するための方法であって、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を投与することを含む、方法。
【請求項6】
患者が、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との併用治療の恩恵を受けるかどうかを判定するための診断試験であって、
試験は前記患者の腫瘍浸潤Tリンパ球におけるPD-1発現を判定することを含み、中程度または高度のPD-1発現は、前記患者が併用治療の恩恵を受けることを示す、診断試験。
【請求項7】
前記患者の腫瘍浸潤CD3陽性Tリンパ球が中程度または高度のPD-1発現を示す、請求項1に記載の使用のための組み合わせ、請求項2に記載の使用のための医薬組成物、請求項3に記載のキット、請求項4に記載の使用、請求項5に記載の方法、または請求項6に記載の診断試験。
【請求項8】
前記患者の腫瘍浸潤CD3陽性Tリンパ球の少なくとも10%が中程度または高度のPD-1発現を有する、請求項7に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項9】
前記患者の腫瘍浸潤CD3陽性CD8陽性Tリンパ球が中程度または高度のPD-1発現を有する、請求項7または8に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項10】
前記患者の腫瘍浸潤CD3陽性CD8陽性Tリンパ球の少なくとも10%が中程度または高度のPD-1発現を有する、請求項9に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項11】
中程度または高度のPD-1発現が、Tリンパ球当たり少なくとも15,500個のPD-1分子の発現を有する患者からの試料中の腫瘍浸潤Tリンパ球の少なくとも10%として定義される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項12】
中程度または高度のPD-1発現が、抗PD1抗体EH12.2H7を使用して測定される、請求項11に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項13】
前記がんが固形がんである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項14】
前記固形がんが、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、膀胱がん、結腸直腸がん、胃がん、子宮頸がん、肝臓がん、メルケル細胞がん、腎臓がんおよび皮膚扁平上皮がんからなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項15】
前記がんが難治性である、請求項13または14に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項16】
前記第1の抗体分子および/または前記第2の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、およびヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項17】
前記第1の抗体分子および/または前記第2の抗体分子がモノクローナル抗体分子またはモノクローナル由来の抗体分子である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項18】
前記第1の抗体分子および/または前記第2の抗体分子が、そのFc領域を介してFc受容体に結合する能力を保持するフルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、およびそれらの抗原結合性フラグメントからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項19】
前記第1の抗体分子および/または前記第2の抗体分子が、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体分子またはヒト由来のIgG抗体分子である、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項20】
前記第1の抗体分子がIgG1抗体分子である、請求項19に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項21】
前記第2の抗体分子がIgG4抗体分子である、請求項19または20に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項22】
前記第1の抗体分子および/または前記第2の抗体分子が、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項23】
前記第1の抗体分子が以下のCDR:
(i)配列番号51および配列番号52および配列番号53、または
(ii)配列番号57および配列番号58および配列番号59、または
(iii)配列番号63および配列番号64および配列番号65、または
(iv)配列番号69および配列番号70および配列番号71、または
(v)配列番号75および配列番号76および配列番号77、または
(vi)配列番号81および配列番号82および配列番号83、または
(vii)配列番号87および配列番号88および配列番号89、または
(viii)配列番号93および配列番号94および配列番号95、または
(ix)配列番号99および配列番号100および配列番号101、または
(x)配列番号105および配列番号106および配列番号107、または
(xi)配列番号111および配列番号112および配列番号113、または
(xii)配列番号117および配列番号118および配列番号119、または
(xiii)配列番号123および配列番号124および配列番号125、または
(xiv)配列番号129および配列番号130および配列番号131、または
(xv)配列番号135および配列番号136および配列番号137、または
(xvi)配列番号141および配列番号142および配列番号143、または
(xvii)配列番号147および配列番号148および配列番号149、または
(xviii)配列番号153および配列番号154および配列番号155、または
(xix)配列番号159および配列番号160および配列番号161、または
(xx)配列番号165および配列番号166および配列番号167、または
(xxi)配列番号171および配列番号172および配列番号173、または
(xxii)配列番号177および配列番号178および配列番号179、または
(xxiii)配列番号183および配列番号184および配列番号185、または
(xxiv)配列番号189および配列番号190および配列番号191、を含む可変重鎖(VH)を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項24】
前記第1の抗体分子が以下のCDR:
(i)配列番号54および配列番号55および配列番号56、または
(ii)配列番号60および配列番号61および配列番号62、または
(iii)配列番号66および配列番号67および配列番号68、または
(iv)配列番号72および配列番号73および配列番号74、または
(v)配列番号78および配列番号79および配列番号80、または
(vi)配列番号84および配列番号85および配列番号86、または
(vii)配列番号90および配列番号91および配列番号92、または
(viii)配列番号96および配列番号97および配列番号98、または
(ix)配列番号102および配列番号103および配列番号104、または
(x)配列番号108および配列番号109および配列番号110、または
(xi)配列番号114および配列番号115および配列番号116、または
(xii)配列番号120および配列番号121および配列番号122、または
(xiii)配列番号126および配列番号127および配列番号128、または
(xiv)配列番号132および配列番号133および配列番号134、または
(xv)配列番号138および配列番号139および配列番号140、または
(xvi)配列番号144および配列番号145および配列番号146、または
(xvii)配列番号150および配列番号151および配列番号152、または
(xviii)配列番号156および配列番号157および配列番号158、または
(xix)配列番号162および配列番号163および配列番号164、または
(xx)配列番号168および配列番号169および配列番号170、または
(xxi)配列番号174および配列番号175および配列番号176、または
(xxii)配列番号180および配列番号181および配列番号182、または
(xxiii)配列番号186および配列番号187および配列番号188、または
(xxiv)配列番号192および配列番号193および配列番号194、を含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項25】
前記第1の抗体分子が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、および配列番号26からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項26】
前記第1の抗体分子が、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、および配列番号50からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項27】
前記第1の抗体分子が以下のCDRアミノ酸配列:
(i)配列番号51および配列番号52および配列番号53および配列番号54および配列番号55および配列番号56、または
(ii)配列番号57および配列番号58および配列番号59および配列番号60および配列番号61および配列番号62、または
(iii)配列番号63および配列番号64および配列番号65および配列番号66および配列番号67および配列番号68、または
(iv)配列番号69および配列番号70および配列番号71および配列番号72および配列番号73および配列番号74、または
(v)配列番号75および配列番号76および配列番号77および配列番号78および配列番号79および配列番号80、または
(vi)配列番号81および配列番号82および配列番号83および配列番号84および配列番号85および配列番号86、または
(vii)配列番号87および配列番号88および配列番号89および配列番号90および配列番号91および配列番号92、または
(viii)配列番号93および配列番号94および配列番号95および配列番号96および配列番号97および配列番号98、または
(ix)配列番号99および配列番号100および配列番号101および配列番号102および配列番号103および配列番号104、または
(x)配列番号105および配列番号106および配列番号107および配列番号108および配列番号109および配列番号110、または
(xi)配列番号111および配列番号112および配列番号113および配列番号114および配列番号115および配列番号116、または
(xii)配列番号117および配列番号118および配列番号119および配列番号120および配列番号121および配列番号122、または
(xiii)配列番号123および配列番号124および配列番号125および配列番号126および配列番号127および配列番号128、または
(xiv)配列番号129および配列番号130および配列番号131および配列番号132および配列番号133および配列番号134、または
(xv)配列番号135および配列番号136および配列番号137および配列番号138および配列番号139および配列番号140、または
(xvi)配列番号141および配列番号142および配列番号143および配列番号144および配列番号145および配列番号146、または
(xvii)配列番号147および配列番号148および配列番号149および配列番号150および配列番号151および配列番号152、または
(xviii)配列番号153および配列番号154および配列番号155および配列番号156および配列番号157および配列番号158、または
(xix)配列番号159および配列番号160および配列番号161および配列番号162および配列番号163および配列番号164、または
(xx)配列番号165および配列番号166および配列番号167および配列番号168および配列番号169および配列番号170、または
(xxi)配列番号171および配列番号172および配列番号173および配列番号174および配列番号175および配列番号176、または
(xxii)配列番号177および配列番号178および配列番号179および配列番号180および配列番号181および配列番号182、または
(xxiii)配列番号183および配列番号184および配列番号185および配列番号186および配列番号187および配列番号188、または
(xxiv)配列番号189および配列番号190および配列番号191および配列番号192および配列番号193および配列番号194を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項28】
前記第1の抗体分子が以下のアミノ酸配列:
(i)配列番号3および配列番号27、または
(ii)配列番号4および配列番号28、または
(iii)配列番号5および配列番号29、または
(iv)配列番号6および配列番号30、または
(v)配列番号7および配列番号31、または
(vi)配列番号8および配列番号32、または
(vii)配列番号9および配列番号33、または
(viii)配列番号10および配列番号34、または
(ix)配列番号11および配列番号35、または
(x)配列番号12および配列番号36、または
(xi)配列番号13および配列番号37、または
(xii)配列番号14および配列番号38、または
(xiii)配列番号15および配列番号39、または
(xiv)配列番号16および配列番号40、または
(xv)配列番号17および配列番号41、または
(xvi)配列番号18および配列番号42、または
(xvii)配列番号19および配列番号43、または
(xviii)配列番号20および配列番号44、または
(xix)配列番号21および配列番号45、または
(xx)配列番号22および配列番号46、または
(xxi)配列番号23および配列番号47、または
(xxii)配列番号24および配列番号48、または
(xxiii)配列番号25および配列番号49、または
(xxiv)配列番号26および配列番号50を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【請求項29】
前記第1の抗体分子が、請求項23~28のいずれか一項に記載の抗体分子とFcyRIIbへの結合について競合することができる抗体分子である、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用のための医薬組成物、キット、使用、方法、または診断試験。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD3陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)でPD-1の中程度または高度の発現を有する患者のがんの治療における、1)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、2)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制性チェックポイント受容体、例えばCTLA-4またはPD-1(PD1とも表される)は、それらのリガンド受容体、例えばB7ファミリーメンバーCD80およびCD86、ならびにPD-L1がそれぞれ結合すると、抑制シグナルを細胞内部に伝達し、細胞の活性化および増殖を制限し、過度の炎症を防ぎ、自己寛容の維持に寄与する細胞表面受容体である。そのような抑制性免疫チェックポイントが遺伝的に不足している動物は、炎症反応の悪化と関連しており、自己に対する寛容を発達させることまたは維持することができず、結果として自己免疫疾患を引き起こす。免疫チェックポイント受容体CTLA-4およびPD-1/PD-L1に対する抗体は、特に複数の固形がん腫、例えば、黒色腫、肺がん、膀胱がん、および頭頸部がんを含む様々ながんを有する患者の全体的な生存率の増加をもたらし、そのような抗体は米国食品医薬品局によって承認されている(Pardoll,D.M.(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252-264;Topalian,S.L.et al(2015)Cancer Cell 27(4):450-461;Sharma,P.et al(2017)Cell 168(4):707-723)。
【0003】
免疫抑制性のチェックポイント軸PD-1/PD-L1に対する抗体は、がん免疫療法で特に効果的であることが証明されており、患者の約20%に客観的奏効(完全奏効および部分奏効)を誘発するが、これは標準治療と比べて著しい改善である(Carretero-Gonzalez,A.et al (2018)Oncotarget 9(9):8706-8715)。しかしながら、奏効率から明らかなように、現在利用可能な抗PD-1/PD-L1抗体は、少数の患者においてのみ有効である。さらに、最初に奏効した患者の一部は、最終的に抵抗性を発症し、それ以上は治療の恩恵を受けることができなくなる。そのため、PD-1/PD-L1抗体に対する無反応性および抵抗性の機構は、臨床的に重要な問題である。PD-1/PD-L1抗体に対する抵抗性の機構を特定して克服することは、この臨床的に重要な薬物クラスに対するがん患者の生存を改善するための大きな課題であり、また機会である。
【0004】
さらに、抗PD-1/PD-L1チェックポイント遮断に反応する可能性が最も高い患者を特定するための予測バイオマーカーが、治療に反応する可能性が高い患者を特定するための重要な戦略であることは一般的に認められている。逆に、重大な、時には致命的な、忍容性の問題に関連することが多いこれらの薬物による患者の不必要な治療を防ぐことも同様に重要である。費用が高いことから、これらの治療法は支払者および医療システムにさらに大きな負担となる。抗PD-1/PD-L1抗体療法にとって臨床的に重要な既存の予測バイオマーカーの例は、マイクロサテライト不安定性(MSI)(Le,D.T.et al(2015)N Engl J Med 372(26):2509-2520;Le,D.T.et al(2017)Science 357(6349):409-413)、腫瘍変異負荷(Gubin,M.M.et al(2014)Nature 515(7528):577-581;Snyder,A.,et al(2014)N Engl J Med 371(23):2189-2199;Tran,E.et al(2014)Science 344(6184):641-645,Tran,E.et al(2015)Science 350(6266):1387-1390)、および腫瘍PD-L1発現(Gibney、Weiner et al.2016、Topalian、Taube et al.2016))、腫瘍変異負荷、および腫瘍PD-L1発現である。
【0005】
Fcガンマ受容体(FcγR)は、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、肥満細胞、好塩基球、好酸球、およびナチュラルキラー細胞、およびBリンパ球等の免疫エフェクター細胞の細胞表面に見られる膜タンパク質である。この名称は、抗体のFc領域へのそれらの結合特異性に由来する。Fc受容体は細胞膜に見られ、原形質膜または細胞質膜としても既知である。FcγRは、活性化FcγRと抑制性FcγRに細分することができ、これらは、クラスター化した免疫グロブリンG Fcの結合により細胞の活性化を協調的に制御し、それぞれ、細胞内ITAMまたはITIMモチーフを介して活性化または抑制性シグナルを細胞に伝達することが知られている。クラスター化した免疫グロブリンまたは免疫複合体のFcγR結合は、細胞への抗体の内在化を媒介し、抗体媒介性食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、または抗原提示もしくは交差提示をもたらす可能性がある。FcγRは、抗体に結合した細胞表面受容体の架橋を媒介または増強することも知られている。このような架橋は、一部の抗体には必要であるが(Li,F.et al(2011)Science 333(6045):1030-1034;White,A.L.et al(2011)J Immunol 187(4):1754-1763)、すべての(Richman、L.P.et al(2014)Oncoimmunology 3:e28610)抗体が標的細胞においてシグナル伝達を活性化する能力に必要ではないことが分かっており、治療効果を達成するために必要な場合と必要でない場合がある。
【0006】
ヒトにおいて、FcγRIIb(CD32b)は、抑制性Fcγ受容体であり、一方FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、およびFcγRIIIa(CD16a)は、活性化Fcγ受容体である。FcγgRIIIbは、ITAMモチーフを欠く好中球に発現するGPI結合受容体であり、活性化FcγRシグナル伝達を相殺するデコイ受容体として作用すると考えられている(Treffers、L.W.et al(2018)Front Immunol 9:3124)。マウスにおいて、活性化受容体は、FcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIVである。
【0007】
抗体がFcγ受容体との相互作用を介して免疫細胞活性を調節し得ることは、公知である。具体的には、抗体免疫複合体が免疫細胞の活性化をどのように調節するかは、活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体の相対的な関与によって判定される。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体に結合し、結果として異なるA:I比率(活性化:抑制の比率)をもたらす(Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510-2)。
【0008】
抗体は、そのFcドメインを介して抑制性Fcγ受容体に結合することにより、エフェクター細胞機能を抑制、遮断、および/または下方調節することができる。抗体は、そのFcドメインを介して抑制性FcγRに結合することにより、標的細胞上の抗体が標的とするシグナル伝達受容体の凝集により細胞活性化を刺激することができる(Li,F.et al(2011)Science 333(6045):1030-1034;White,A.L.et al(2011)J Immunol 187(4):1754-1763;White,A.L.et al(2011)J Immunol 187(4):1754-1763White,A.L.et al(2014)J Immunol 193(4):1828-1835。
【0009】
抗体は、活性化Fcγ受容体に結合することにより、エフェクター細胞の機能を活性化し、それによって抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン放出、および/または抗体依存性エンドサイトーシス、ならびに好中球の場合、ネトーシス(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化および放出)等の機構を誘発することができる。活性化Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、および/またはCD86等の特定の活性化マーカーの増加を引き起こすことができる。
【0010】
活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体による抗体誘導エフェクター細胞応答の協調的調節と一致して、活性化Fcγ受容体は、腫瘍細胞の枯渇および腫瘍を直接標的とする抗体の治療活性を促進することが示されている。前臨床および臨床研究により、腫瘍を直接標的とする抗体、すなわちその治療活性が腫瘍細胞の直接結合および死滅に関与する抗体、例えば、抗CD20、抗Her2および抗EGFR抗体の抗腫瘍活性が、活性化Fcγ受容体に対してより高い親和性を示す対立遺伝子を保有し(Cartron,G.et al(2002)Blood 99(3):754-758;Musolino,A.,et al(2008)J Clin Oncol 26(11):1789-1796;Zhang,W.et al(2007)J Clin Oncol 25(24):3712-3718)、抑制性Fcγ受容体と比較して活性化Fcγ受容体へのより強い結合を示す抗体アイソタイプおよびフォーマット(高A:I比)を有する患者において増強されることが実証されている(Goede,V.et al(2014)N Engl J Med 370(12):1101-1110)。逆に、腫瘍を直接標的とする抗体の治療活性は、抑制性FcγRIIBを欠く動物において(Clynes、R.A.et al(2000)Nat Med 6(4):443-446)、または本発明者の一部によってより最近示されたように、抑制性FcγRIIBが拮抗性抗FcγRIIB抗体によって遮断された場合に増強される(Roghanian、A。et al(2015)Cancer Cell 27(4):473-488)。
【0011】
新たな前臨床および臨床データは、Fcγ受容体が、CTLA-4、PD-1/PD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害抗体を含む免疫調節抗体の有効性も制御することを示している。ヒトおよびマウスにおいて、抗CTLA-4抗体の治療活性が活性化Fcγ受容体の関与によって促進されるという証拠がある:FcγRIIIa遺伝子の高親和性対立遺伝子を保有する黒色腫患者は、低親和性FcγRIIIa対立遺伝子を発現する患者と比較して、イピリムマブに応答して生存率の改善を示した。さらに、活性化受容体および抑制性受容体についてヒト化されたマウスにおいて、治療有効性がFcγR依存性であり、高いA:I比の抗体アイソタイプで増強されることが示された(Arce Vargas,F.et al(2018)Cancer Cell 33(4):649-663 e644)。
【0012】
これらの発見は、FcγRIIB遮断抗体が抗CTLA-4抗体の活性を増強する能力を調査することを私たちに促した。活性化ヒトFcγRおよび抑制性ヒトFcγRの両方に結合する能力が高いヒトIgG1と、Fcドメインを介したFcγRへの結合が著しく損なわれていることを示すFc操作された変異体との、2つの異なるタイプのFcγRIIB遮断抗体が、本発明者らの一部によって以前に生成され、開示されている(Roghanian,A.,et al(2015)Cancer Cell 27(4):473-488)。これらの2つの異なるタイプの抗FcγRIIB抗体は、B細胞におけるCD20内在化およびFcγRIIBシグナル伝達の遮断において同等に拮抗的であることが示されており、どちらもヒトFcγRIIBおよびヒトCD20を発現する動物トランスジェニック動物における抗CD20mAb媒介B細胞枯渇を改善した。
【0013】
国際特許出願第PCT/EP2019/050566号において、我々は、Fc領域を欠いた、またはFc領域がFcγRへの低下したもしくは損なわれた結合を示した抗FcγRIIB抗体のみが、抗CTLA-4抗体の治療活性の治療活性を増強できることを実証した。固形がんの異なるマウス実験モデルにおいて、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIBではなく、Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB抗体との併用治療が、抗CTLA-4の治療活性を増強し、ヒト化PBMCのインビボモデルにおいて、臨床的に関連する抗CTLA-4抗体イピリムマブのTreg枯渇の促進が示された。IL-2R(CD25)およびPD-L1に特異的な抗体の枯渇および/または治療有効性に対する同様の増強効果が、Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB抗体との併用治療後に観察され、促進効果が特定の標的または細胞型に限定されなかったことが示された。
【0014】
抗PD-1/PD-L1抗体の治療活性の制御におけるFcγ受容体の役割は前臨床試験によって示されているが、活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体の個々の役割は明らかになっていない。Dahanらは、PD-L1に対するマウス抗体は抗腫瘍活性に対するFcγRの関与から恩恵を受けるが、逆に抗PD-1抗体の活性はFcγRの関与によって損なわれることを報告した(Dahan,R.et al(2015)Cancer Cell 28(3):285-295)。特に、高いA:I比を有する、すなわち抑制性Fcγ受容体と比較して活性化Fcγ受容体の強い関与をもたらす抗PD-1抗体アイソタイプ(mIgG2a)は、より低いA:I比を有する、すなわち抑制性Fcγ受容体の比較的強い関与を示すmIgG1アイソタイプと比較して、またFc:FcγR結合に欠陥のある抗PD-1変異抗体と比較して、より低い治療活性を示した。
【0015】
臨床的に関連するヒト抗PD-1IgG4抗体ニボルマブ、および特許請求される同様のFcγ受容体結合プロファイルを有する代替ラットIgG2a抗体を使用して、Arlaukasと同僚は、Fc:FcγR結合が損なわれた(脱グリコシル化)抗PD-1変異体抗体が、Fc:FcγR結合能の高い野生型ヒトIgG4およびラットIgG2a抗PD-1同等物と比較して治療活性を改善したことを同様に発見した(Arlauckas,S.P.et al(2017)Sci Transl Med 9(389))。しかしながら、Dahanらとは対照的に、著者らは、個々のFcγ受容体に対する遮断抗体を使用して、抗PD-1抗体の有効性の低下の根底にあるものとして、活性化マウスFcγ受容体IIIおよび抑制性マウスFcγ受容体IIを特定した。その結果、抗PD-1抗体の有効性の低下の根底にある(個々の)活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体の相対的な重要性、それらが臨床的に関連するヒト抗PD-1抗体の有効性をどのように制限するか、または抗PD-1抗体活性を増強するためにどの活性化FcγRまたは抑制性FcγRを遮断する必要があるかは、先行技術からは明らかではない。
【発明の概要】
【0016】
本明細書で開示されるのは、
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための、
Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との組み合わせである。
【0017】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含む医薬組成物もまた本明細書において開示される。
【0018】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するためのキットであって、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含むキットがさらに本明細書において開示される。
【0019】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療に使用するための薬物の製造における、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子、および
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子の使用が本明細書においてさらに開示される
【0020】
中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんを治療するための方法であって、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を投与することを含む方法もまた本明細書において開示される。
【0021】
患者が、
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との併用治療の恩恵を受けるかどうかを判定するための診断試験であって、
試験は患者の腫瘍浸潤Tリンパ球におけるPD-1発現を判定することを含み、中程度または高度のPD-1発現は、患者が併用治療の恩恵を受けることを示す診断試験が、本明細書においてさらに開示される。それに応じて、Tリンパ球における中程度または高度のPD-1発現を欠く一方で、PD-1発現が低いことは、患者が併用治療の恩恵を受けないことを示唆する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIBではなく、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIBのみが、インビボで抗PD-1抗体の治療有効性を高め、インビトロでPD-1高発現T細胞の臨床的に関連するヒト抗PD-1抗体によって誘発される食作用を防ぐことを示す。抗PD-1療法におけるFcγRの役割に関する上記の研究は、根底にある損なわれた抗PD-1抗体活性として、抑制性FcγRと比較した活性化FcγRの幅広い役割(Dahan,R.et al(2015)Cancer Cell 28(3):285-295)、または個々の活性化(FcγRIII)および抑制性FcγRIIB(Arlauckas,S.P.et al(2017)Sci Transl Med 9(389))のいずれかを示しているため、この発見は新規であり、かつ予想外である。
【0023】
本発明は、特に、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIBではなく、Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIBのみが治療活性を増強する、抗CTLA-4を含む、他の免疫チェックポイントに対する抗体に関する本発明者らの以前の発見のいくつかを考慮するとさらに驚くべきことである。
【0024】
したがって、本発明は、中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者のがんの治療における
(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する抗体分子(本明細書では第1の抗体分子と表される)と、
(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する抗体分子(本明細書では第2の抗体分子と表される)との併用に関する。
【0025】
この組み合わせは、FcγRIIBを含むFcγRへの結合を減少させることにより、PD-1に特異的に結合する抗体分子、すなわち抗PD-1抗体の治療有効性を改善することを目的として、患者の固形がん等のがんの治療に使用されることを意図している。
【0026】
FcγRIIbに特異的に結合する本発明による抗体分子、すなわち第1の抗体は、抗体のFab領域を介して、すなわち、それぞれ重鎖および軽鎖の1つの定常領域および1つの可変領域で構成される、抗原に結合する抗体上の抗原結合領域を介して、このFcγ受容体に結合または相互作用する。特に、それは、免疫エフェクター細胞上に存在するFcγRIIb、特に免疫エフェクター細胞の表面に存在するFcγRIIbに結合する。
【0027】
上記に加えて、FcγRIIbに特異的に結合する本発明による抗体分子、すなわち第1の抗体分子は、既知であるように(Bruhns,P.et al(2009)Blood 113(16):3716-3725)、またヒトIgG1アイソタイプの抗体について広く特徴付けられているように、Fc領域とFc受容体との間の相互作用によって活性化Fcγ受容体にも結合する。
【0028】
これは、少なくとも以下の治療上重要な結果をもたらす:活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体の両方が抗FcγRIIB抗体依存性(Fab-およびFc-)の様式で遮断され、マクロファージの食作用、または他のFcγ受容体を発現する免疫エフェクター細胞の抗PD-1抗体によって媒介される、抗PD-1抗体でコーティングされた抗腫瘍T細胞の除去を防止する(この文脈においてコーティングされたということは、抗PD-1抗体が細胞に結合したことを意味する)。この機構は、以前に記載されているように、T細胞からFcγR発現エフェクター細胞、例えばマクロファージへの、PD-1抗体のマクロファージFcγR依存性転移の阻害にさらに関与し得る(Arlauckas,S.P.et al(2017)Sci Transl Med 9(389))。
【0029】
Fcガンマ受容体を発現する免疫エフェクター細胞は、本明細書では主に自然エフェクター細胞を指し、具体的には、マクロファージ、好中球、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、肥満細胞、および血小板を含む。細胞傷害性T細胞およびメモリーT細胞は、通常はFcγRを発現しないが、特定の状況下では発現し得る。いくつかの実施形態において、免疫エフェクター細胞は、自然免疫エフェクター細胞である。いくつかの実施形態において、免疫エフェクター細胞はマクロファージである。
【0030】
PD-1に特異的に結合または相互作用する抗体分子、すなわち第2の抗体分子は、抗PD-1抗体でコーティングされた抗腫瘍T細胞の抗体-PD-1抗体依存性FcγRエフェクター細胞依存性の除去を可能にする活性化Fcγ受容体に結合または相互作用するFc領域を有する。抗PD-1抗体分子が結合する免疫細胞は、CD8+またはCD4+T細胞等の重要な抗腫瘍活性を付与する免疫細胞である。
【0031】
その結果、PD-1を発現する抗腫瘍T細胞のFcγR発現エフェクター細胞の除去をもたらす程度までFc領域が活性化Fcγ受容体に結合または相互作用する、ヒトIgG4、IgG1、IgG2、およびIgG3アイソタイプのものを含む任意の抗PD-1変異抗体は、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIB抗体、すなわち、Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する抗体分子と組み合わせることができる。
【0032】
第2の抗体は抗PD-1抗体である。CD279としても知られるPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)は、免疫チェックポイント、すなわち、免疫細胞上のチェックポイントタンパク質である。それはリンパ節の抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進し、制御性T細胞のアポトーシスを減少させる。ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、およびセミプリマブ(LIBTAYO(登録商標))等のPD-1阻害剤は、免疫系を活性化して腫瘍を攻撃するためにがん治療に使用される。PD-1またはPD-L1のいずれかを標的とするモノクローナル抗体は、PD-1のPD-L1への結合を遮断することができ、がん細胞に対する免疫応答を高め得る。
【0033】
抗PD-1抗体は、腫瘍内T細胞に発現するPD-1に結合する。
【0034】
本発明による治療の恩恵を受ける患者は、承認された抗PD-1抗体含有レジメンの標準的な基準に従って、抗PD-1療法に適格であり、中程度または高度のPD-1発現を伴う腫瘍浸潤Tリンパ球(すなわち、腫瘍浸潤CD3+リンパ球)を有する患者である。抗PD-1療法に適格な患者には、黒色腫;小細胞肺がん(SCLC)および非小細胞肺がん(NSCLC)を含む肺がん(非扁平上皮NSCLCおよび扁平上皮NSCLCを含み、転移性NSCLCを含む);頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)を含む頭頸部がん;ホジキンリンパ腫;原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL);進行性尿路上皮がんを含む膀胱がん;不安定性が高い(MSI-H)および/またはミスマッチ修復欠損(dMMR)のがんを含む結腸直腸がん;進行胃がんおよび胃または胃食道接合部(GEJ)腺がんを含む胃がん;子宮頸がん;肝細胞がんを含む肝臓がん;メルケル細胞がん(MCC);治癒的手術または治癒的放射線療法の候補ではない患者における局所進行CSCCを含む、腎細胞がん(RCC)および皮膚扁平上皮がん(CSCC)を含む腎臓がんを患っている患者が含まれる。当業者には既知であるように、治療することができる適応症の数は、新しい治験、新しい抗PD-1抗体、および新しい組み合わせによって急速に拡大している。
【0035】
本発明に至る研究において、抗PD-1抗体がPD-1の中程度または高度の発現を有するT細胞に投与されると、これは、抗PD-1抗体でコーティングされたT細胞の、特にCD8陽性T細胞の、食作用につながる可能性があることが観察された。本発明に至る研究において、Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する抗体分子を、抗PD-1抗体とともに投与することにより、PD-1の中程度または高度の発現を有するT細胞で食作用が遮断される可能性があることがさらに見出された。後述の実施例でさらに説明される、上記の発見に使用されたインビトロアッセイのインビボ関連性は、免疫能のあるマウスを含む2つの異なる固形がん実験モデルで確認され、抗PD-1による単剤治療と比較して、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIBおよび抗PD-1抗体との併用治療の生存率が大幅に向上したことが観察された。これはまた、後述の実施例により詳細に示される。インビトロアッセイのインビボ関連性をさらに支持するように、腫瘍内インビボT細胞のPD-1発現レベルは2つの設定で類似していた。インビボでの腫瘍内T細胞のPD-1発現は、細胞当たり約20,000~80,000個のPD-1分子の範囲であり、PD-1のインビトロ発現レベルは中程度(15,500~78,000個のPD-1分子)および高度に発現する(細胞当たり65,000~391,000個のPD-1分子)ヒトT細胞におよび、どちらもヒト抗PD-1媒介性食作用のFc:FcγR結合の高い抗FcγRIIBによる遮断に感受性を示した。
【0036】
したがって、本発明の文脈において、本明細書に記載の治療の恩恵を受ける可能性のある患者は、PD-1の中程度または高度の発現を有する少なくとも10%の腫瘍浸潤Tリンパ球を有する患者である。
【0037】
本明細書において、中程度または高度の発現は、腫瘍浸潤Tリンパ球の少なくとも10%の、細胞当たり≧15,500個のPD-1分子の発現を指す。後にさらに説明するように、PD-1発現の絶対数は、どの抗PD-1抗体および/またはどの方法がPD-1発現の測定に使用されるかによって異なる場合がある。したがって、本明細書で使用される細胞当たり15,500個以上のPD-1分子の中程度または高度の発現は、本明細書に記載の方法で、かつ/または抗ヒトPD-1抗体EH12.2H7(BioLegendから入手可能)を使用して測定される。
【0038】
インビボ設定と同様に、個々の患者の腫瘍内T細胞は不均一なPD-1発現を示す。個々の患者は、PD-1の異なる発現を有する異なる細胞集団を有する可能性があり、例えば、ある集団は低度の発現を有し、ある集団は中程度または高度の発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも15%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも20%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも25%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも30%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも35%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも40%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも45%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも50%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも55%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも60%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも65%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも70%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも75%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも80%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも85%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+Tリンパ球の少なくとも90%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、中程度または高度のPD-1発現を有するのは、患者の腫瘍浸潤CD3陽性およびCD8陽性(CD3+CD8+)Tリンパ球である。
【0040】
いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも10%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも15%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも20%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも25%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも30%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも35%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも40%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも45%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも50%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも55%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも60%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも65%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも70%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも75%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも80%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも85%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。いくつかの実施形態において、患者の腫瘍浸潤CD3+CD8+Tリンパ球の少なくとも90%は、中程度または高度のPD-1発現を有する。
【0041】
個々の患者の腫瘍細胞におけるPD-1の発現は、腫瘍生検由来の細胞または組織を使用して測定することができる。より具体的には、T細胞の絶対発現レベルは、本明細書に記載されるか、または同等のフローサイトメトリーおよびビーズベースの抗体および細胞エピトープ定量化キットを使用して定量化することができる。代替的に、腫瘍組織生検を使用した免疫組織化学によって半定量分析を実行し、患者の生検の抗PD-1染色を、抗FcγRIIB媒介性の抗PD-1抗体活性の増強に感受性のある(細胞当たり≧15,500個のPD-1分子)または感受性のない(細胞当たり<15,500個のPD-1分子)ことと関連する定義および判定されたPD-1レベルを発現する組織またはサイトスピンした細胞の染色と比較することができる。重要なことに、ヒトT細胞PD-1発現を判定する方法が本明細書に記載の定量化方法と異なる場合、または異なる抗PD-1抗体クローンまたは蛍光標識を使用する場合、アッセイを、例えば、後述の実施例、特に図1を参照する実施例1に詳細に記載される方法と比較および検証する必要がある。一般的には、図1を参照して実施例1に例示されるように、PD-1発現を定量化する1つの方法は、定義された比率で蛍光色素で標識された抗体を使用することであり、例えば、また好ましくはいくつかの実施形態におけるように、1:1の比率でフィコエリトリン(PE)で標識された抗体を使用することである。これにより、定義された数の蛍光色素(例えばPE)分子を含むビーズを使用して標準曲線を作成し、細胞に結合した抗体の分子数を判定することができる。試験する細胞を標識した抗PD1抗体(BioLegendの抗ヒトPD-1抗体EH12.2H7等)とインキュベートし、ビーズおよび細胞を同じ設定で流すことができるように設定されたFACS機を使用して分析する。例えば、ビーズ当たりのLog分子とLog蛍光をプロットすることによって標準曲線を作成し、次いで蛍光色素で標識した抗PD1抗体染色細胞を流し、Log平均蛍光強度(MFI)を用いて結合した抗体の数を計算する。
【0042】
上で言及されるように、絶対数は、どの抗PD1抗体が測定に使用されるかによって異なる場合がある。
【0043】
免疫細胞上のPD-1に特異的に結合することに加えて、第2の抗体分子は、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する。いくつかの実施形態において、第2の抗体分子は、そのFc領域を介して少なくとも1つの活性化Fcγ受容体に結合する。第2の抗体は、そのFc領域を介して、免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fcγ受容体等の活性化Fcγ受容体に結合することができる可能性がある。活性化Fcγ受容体に結合できるようにするために、第2の抗体のFc領域は、少なくともいくつかの実施形態において、297位でグリコシル化され得る。この位置の炭水化物残基は、Fcγ受容体への結合に役立つ。いくつかの実施形態において、これらの残基は、末端ガラクトース残基およびシアル酸とともに、GlnNAc、マンノースを含む二分岐炭水化物であることが好ましい。Fc分子のCH2部分を含む必要がある。
【0044】
本発明はさらに、本明細書に記載の治療、すなわち、(i)Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合し、Fc領域を介してFcγ受容体に結合する、第1の抗体分子と、(ii)Fc領域を介してPD-1に特異的に結合し、少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との併用治療の恩恵を受ける患者を特定するために使用することができる診断試験に関する。抗FcγRIIB媒介性の抗PD-1抗体の有効性の向上に関連するインビボPD-1発現レベル、ならびに治療上関連するヒト抗PD-1抗体およびヒトT細胞およびマクロファージを組み込んだインビトロ食作用アッセイに基づいて、本発明者らは、特定のT細胞PD-1受容体発現レベルが、抗FcγRIIB媒介性の抗PD-1治療有効性の増強に関連し、またそれに必要であると判定した。本発明による診断試験は、この所見に基づいており、したがって、患者から得られた腫瘍生検由来の細胞または組織等の試料中の腫瘍細胞におけるPD-1の発現の測定を含む。上記のように、T細胞におけるPD-1発現レベルの絶対分析または半定量分析を用いることができる。いくつかの実施形態において、診断試験は、PD-1発現の測定のための抗PD1抗体EH12.2H7の使用に基づく。Tリンパ球当たり少なくとも15,500個のPD-1分子の発現から、上記および実施例1でさらに説明されるように、患者が本発明による併用治療の恩恵を受ける可能性があることが予測される。
【0045】
抗体は、免疫学および分子生物学分野の当業者には公知である。通常は、抗体は、2つの重鎖(H)と、2つの軽鎖(L)と、を含む。本明細書では、時には、この完全な抗体分子をフルサイズ抗体または完全長抗体と称する。抗体の重鎖は、1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2、CH3)を含み、抗体分子の軽鎖は、1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含む。可変領域(時にFV領域と総称される)は、抗体の標的、または抗原に結合する。各可変領域は、相補性決定領域(CDR)と称される3つのループを含み、これらのループが標的の結合に関与する。定常領域は、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、種々のエフェクター機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体または免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがあり、ヒトでは、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4;IgA1およびIgA2に分割される。
【0046】
抗体の別の部分は、Fc領域(あるいはフラグメント結晶化可能ドメインとしても既知である)であり、抗体の重鎖の各々に2つの定常ドメインを含む。上で言及されるように、Fc領域は抗体とFc受容体との間の相互作用に関与する。
【0047】
本明細書で用いる場合、抗体分子という用語は、完全長抗体またはフルサイズ抗体、ならびに完全長抗体の機能的フラグメントおよびこのような抗体分子の誘導体を包含する。
【0048】
フルサイズ抗体の機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有し、対応するフルサイズ抗体と同じ可変ドメイン(すなわち、VH配列およびVL配列)および/または同じCDR配列のいずれかを含む。機能的フラグメントが、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、標的上のフルサイズ抗体と同じエピトープに結合することを意味する。このような機能的フラグメントは、フルサイズ抗体のFv部分に対応し得る。代替的に、このようなフラグメントは、Fc部分を含有しない、一価の抗原結合性フラグメントであるF(ab)とも表されるFab、またはジスルフィド結合によって一緒に結合された2つの抗原結合Fab部分を含有する二価の抗原結合性フラグメントであるF(ab’)2、またはF(ab’)、すなわちF(ab’)2の一価の変異体であり得る。このようなフラグメントは、一本鎖可変フラグメント(scFv)でもあり得る。
【0049】
機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体の6個のCDRのすべてを常に含有するわけではない。3つ以下のCDR領域(場合によっては、単一のCDRだけまたはその一部)を含有する分子は、そのCDRに由来する抗体の抗原結合活性を保持することが可能であることが理解される。例えば、全VL鎖(3個のCDRをすべて含む)がその基質に対して高い親和性を有することが、Gao et al.,1994,J.Biol.Chem.,269:32389-93に記載されている。
【0050】
2つのCDR領域を含有する分子については、例えば、Vaughan&Sollazzo 2001,Combinatorial Chemistry&High Throughput Screening,4:417-430に記載されている。418頁(右欄-3(Our Strategy for Design))に、フレームワーク領域内に散在するH1およびH2 CDR超可変領域のみを含むミニボディについて記載されている。ミニボディは、標的に結合することが可能であると記載されている。Pessi et al.,1993,Nature,362:367-9、およびBianchi et al.,1994,J.Mol.Biol.,236:649-59は、Vaughan&Sollazzoによって参照され、H1およびH2ミニボディ、ならびにその特性についてより詳細に記載している。Qiu et al.,2007,Nature Biotechnology,25:921-9では、2つの結合されたCDRからなる分子が抗原に結合することが可能であることが示されている。Quiocho 1993,Nature,362:293-4は、「ミニボディ」技術の概要を提供している。Ladner 2007,Nature Biotechnology,25:875-7は、2個のCDRを含有する分子が抗原結合活性を保持することが可能であると見解を述べている。
【0051】
単一のCDR領域を含有する抗体分子については、例えば、Laune et al.,1997,JBC,272:30937-44に記載されており、ここでは、CDRに由来する一連のヘキサペプチドが抗原結合活性を示すことが実証され、完全な単一のCDRの合成ペプチドが強力な結合活性を示すことが留意されている。Monnet et al.,1999,JBC,274:3789-96では、様々な12量体ペプチドおよび関連するフレームワーク領域が、抗原結合活性を有することが示されており、CDR3様ペプチド単独で抗原に結合することが可能であると見解を述べている。Heap et al.,2005,J.Gen.Virol.,86:1791-1800では、「マイクロ抗体」(単一のCDRを含有する分子)は抗原に結合することが可能であることが報告されており、抗HIV抗体からの環状ペプチドが、抗原結合活性および機能を有することが示されている。Nicaise et al.,2004,Protein Science,13:1882-91では、単一のCDRが、そのリゾチーム抗原に対する抗原結合活性および親和性を付与し得ることが示されている。
【0052】
したがって、5個、4個、3個またはそれ以下のCDRを有する抗体分子は、それらが由来する完全長抗体の抗原結合特性を保持することが可能である。
【0053】
抗体分子は、完全長抗体の誘導体またはそのような抗体のフラグメントであってもよい。誘導体が、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、フルサイズ抗体と同じ標的上のエピトープに結合することを意味する。
【0054】
したがって、本明細書で用いる場合、「抗体分子」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、組換えで生成された抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト由来抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖のホモ二量体、抗体軽鎖のホモ二量体、抗体重鎖のヘテロ二量体、抗体軽鎖のヘテロ二量体、そのようなホモ二量体およびヘテロ二量体の抗原結合機能的フラグメントを含む、すべての種類の抗体分子、ならびにそれらの機能的フラグメントおよびそれらの誘導体を含む。
【0055】
さらに、本明細書で用いる場合、「抗体分子」という用語は、特に明記しない限り、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含む、すべてのクラスの抗体分子および機能的フラグメントを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1の抗体は、ヒトIgG1である。当業者は、マウスIgG2aおよびヒトIgG1が結合して、活性化Fcガンマ受容体を遮断することができ、それにより、免疫エフェクター細胞上の活性化Fcガンマ受容体の抗PD-1抗体媒介性の関与、およびその後の、例えば、ADCPまたはADCCによる、抗PD-1抗体でコーティングされたエフェクターT細胞の除去を防止することを理解するであろう。このように、マウスIgG2aがマウスにおける欠失に好ましいアイソタイプである実施形態において、ヒトIgG1は、そのような実施形態においてヒトにおける欠失に好ましいアイソタイプである。
【0057】
いくつかの実施形態において、第1の抗体は、ヒトIgG1である。他の実施形態において、第1の抗体は、ヒトIgG4、IgG3またはIgG2である。他の実施形態において、第1の抗体は、Fcガンマ受容体への結合を増強するようにFc操作されたヒトIgG抗体である。いくつかの実施形態において、ヒトIgG抗体は、1つまたはいくつかの活性化Fcγ受容体への結合を改善するようにFc操作され、かつ/または抑制性Fcγ受容体よりも活性化受容体への相対的結合を改善するように操作される。いくつかの実施形態において、抗FcγRIIB抗体は、Fc操作されたヒトIgG抗体である。そのような操作された抗体変異体の例としては、FcγRIIIAへの選択的に改善された抗体結合を有する非フコシル化抗体、および抑制性FcγRIIBと比較して、1つまたはいくつかの活性化Fcγ受容体への結合の改善をもたらす、指向性、突然変異性、または他の手段のアミノ酸置換によって操作された抗体が含まれる(Richards et al.2008.‘Optimization of antibody binding to FcgammaRIIa enhances macrophage phagocytosis of tumor cells’,Mol Cancer Ther,7:2517-27;Lazar et al.2006.‘Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function’,Proc Natl Acad Sci USA,103:4005-10)。いくつかの実施形態において、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作されたヒトIgG抗体は、そのFc部分に、2つの突然変異S239DおよびI332E、または3つの突然変異S239D、I332EおよびA330L、ならびに/またはG236A突然変異を有するヒトIgG抗体であり得る。いくつかの実施形態において、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作されたヒトIgG抗体は、非フコシル化されたヒトIgG抗体であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、第2の抗体は、ヒトIgG4であり、これは、現在FDAによって承認されている抗PD-1抗体であるニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびセプリズマブ(ceplizumab)のアイソタイプである。当業者は、いくつかのマウス抗体アイソタイプが、活性化Fcガンマ受容体および抑制性Fcガンマ受容体の両方に結合することができることを理解するであろう。重要なことに、当業者は、マウス活性化および抑制性Fcガンマ受容体に結合するラットIgG2aアイソタイプが、ヒト活性化および抑制性Fcガンマ受容体に結合するヒトIgG4アイソタイプを厳密に模倣することが既知であることを理解するであろう(Arlauckas,S.P.et al(2017)Sci Transl Med 9(389))。当業者はさらに、ヒトアイソタイプIgG1およびIgG4に加えて、ヒトIgG3およびIgG2抗体がヒトFcγRと生産的に結合し(Sanders,L.A.et al(1995)Infect Immun 63(1):73-81)、免疫細胞を有する活性化Fcガンマ受容体の活性化に続いて、例えば、ADCPおよびADCCによる、抗体依存性T細胞枯渇を媒介し得ることを理解するであろう(Arce Vargas,F.et al(2018)Cancer Cell 33(4):649-663e644)。結果として、いくつかの実施形態において、第2の抗体は、ヒトIgG1またはIgG2またはIgG3抗体であり得る。
【0059】
上記の概略のように、抗体分子の異なる種類および形態は本発明に包含され、免疫学分野の当業者には既知であろう。治療目的に使用される抗体は、多くの場合、抗体分子の特性を修正する追加の構成成分を用いて改変されることが公知である。
【0060】
したがって、本発明の抗体分子または本発明に従って使用される抗体分子(例えば、モノクローナル抗体分子、および/またはポリクローナル抗体分子、および/または二重特異性抗体分子)は、検出可能な部分および/または細胞傷害性部分を備える場合を含む。
【0061】
「検出可能な部分」とは、酵素、放射性原子、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分で構成される群からの1つ以上を含む。検出可能な部分により、抗体分子をインビトロ、および/またはインビボ、および/またはエクスビボで視覚化することが可能になる。
【0062】
「細胞傷害性部分」とは、放射性部分および/または酵素が挙げられ、酵素はカスパーゼおよび/または毒素であり、毒素は細菌毒素または毒液であり、細胞傷害性部分は細胞溶解を誘導することが可能である。
【0063】
さらに、抗体分子は、単離された形態および/または精製された形態であってよく、ならびに/またはPEG化されてもよいことを含む。PEG化は、その挙動を改変する、例えば、その流体力学的サイズを増加させ、腎クリアランスを予防することでその半減期を延ばすように、ポリエチレングリコールポリマーを抗体分子または誘導体等の分子に付加する方法である。
【0064】
上で考察したように、抗体のCDRは、抗体標的に結合する。本明細書に記載の各CDRへのアミノ酸の割り当ては、Kabat EA et al.1991,”Sequences of Proteins of Immunological Interest”Fifth Edition,NIH Publication No.91-3242,pp xv-xviiによる定義に従う。
【0065】
当業者が認識するように、アミノ酸を各CDRに割り当てるための他の方法も存在する。例えば、International ImMunoGeneTics information system(IMGT(登録商標))(http://www.imgt.org/およびAcademic Press,2001により出版のLefranc and Lefranc“The Immunoglobulin FactsBook”)。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明の抗体分子、または本発明に従って使用される抗体分子は、本明細書で提供される特定の抗体と競合することが可能である抗体分子であり、特定の標的に結合するため、例えば、配列番号1~194に提示されるアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体分子である。
【0067】
「競合することが可能である」とは、競合抗体が、本明細書で定義される抗体分子の特定の標的への結合を少なくとも部分的に抑制またはその他の方法で干渉する能力があることを意味する。
【0068】
例えば、そのような競合抗体分子は、本明細書に記載の抗体分子の結合を、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約100%抑制する能力があり得、および/あるいは特定の標的への結合を防止もしくは低減する本明細書に記載の抗体の結合能力を少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%抑制することが可能であり得る。
【0069】
競合結合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等の当業者に公知の方法によって判定することができる。
【0070】
ELISAアッセイを使用して、エピトープ修飾抗体または遮断抗体を評価することができる。競合抗体を同定するために好適な追加の方法は、参照により本明細書に組み込まれるAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow&Laneに開示されている(例えば、567~569頁、574~576頁、583頁、および590~612頁、1988,CSHL,NY,ISBN0-87969-314-2を参照されたい)。
【0071】
抗体が定義された標的分子または抗原に特異的に結合するか、またはそれと相互作用すること、および、これは、抗体が、標的ではない分子ではなく、その標的に優先的かつ選択的に結合することを意味することはよく知られている。
【0072】
本発明による抗体の標的、または本発明に従って使用される抗体の標的は、細胞の表面で発現する、すなわち、それらは抗体にとっての、エピトープ(あるいは、これに関連して細胞表面エピトープとして既知である)を含む細胞表面抗原である。細胞表面抗原およびエピトープは、免疫学または細胞生物学の当業者によって容易に理解される用語である。
【0073】
「細胞表面抗原」とは、細胞表面抗原が、細胞膜の細胞外側に露出されているが、細胞膜の細胞外側に一時的にのみ露出される場合を含む。「一時的に露出される」とは、細胞表面抗原が、細胞内に内部移行する、あるいは細胞膜の細胞外側から細胞外空間に放出されている場合を含む。細胞表面抗原は、切断によって細胞膜の細胞外側から放出され得、これはプロテアーゼによって媒介され得る。
【0074】
また、細胞表面抗原は、細胞膜に結合し得るが、一時的にのみ細胞膜と会合する場合を含む。「一時的に会合する」とは、細胞表面抗原が、細胞膜の細胞外側から細胞外空間に放出されている場合を含む。細胞表面抗原は、切断によって細胞膜の細胞外側から放出され得、これはプロテアーゼによって媒介され得る。
【0075】
さらに、細胞表面抗原は、ペプチド、またはポリペプチド、または炭水化物、またはオリゴ糖鎖、または脂質、および/またはタンパク質、もしくは糖タンパク質、もしくはリポタンパク質上に存在するエピトープである場合を含む。
【0076】
タンパク質の結合を評価する方法は、生化学および免疫学の当業者には既知である。当業者であれば、それらの方法を使用して、抗体の標的への結合および/または抗体のFc領域のFc受容体への結合、ならびにそれらの相互作用の相対的な強度、もしくは特異性、もしくは抑制、もしくは防止、もしくは低減を評価することができることを理解するであろう。タンパク質の結合を評価するために使用され得る方法の例は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)がある(抗体特異性に関する考察については、Fundamental Immunology Second Edition,Raven Press,New York at pages 332-336(1989)を参照されたい)。
【0077】
したがって、「特異的に結合する抗体分子」または「標的特異性抗体分子」とは、抗体分子が標的に特異的に結合するが、非標的には結合しないか、あるいは非標的に、標的よりも(例えば低い親和性で)弱く結合する場合を含む。
【0078】
また、抗体が、非標的よりも標的に少なくとも2倍強く、または少なくとも5倍強く、または少なくとも10倍強く、または少なくとも20倍強く、または少なくとも50倍強く、または少なくとも100倍強く、または少なくとも200倍強く、または少なくとも500倍強く、または少なくとも約1000倍強く、特異的に結合するという意味を含む。
【0079】
加えて、抗体が標的に、少なくとも約10-1d、または少なくとも約10-2d、または少なくとも約10-3d、または少なくとも約10-4d、または少なくとも約10-5d、または少なくとも約10-6d、または少なくとも約10-7d、または少なくとも約10-8d、または少なくとも約10-9d、または少なくとも約10-10d、または少なくとも約10-11d、または少なくとも約10-12d、または少なくとも約10-13d、または少なくとも約10-14d、または少なくとも約10-15dのKdで結合する場合、抗体が標的に特異的に結合するという意味を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト由来の抗体、すなわち、本明細書に記載されるように改変されたヒト由来の抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体に対する類似性を高めるように改変された非ヒト由来の抗体である。ヒト化抗体は、例えば、マウス抗体またはラマ抗体であってよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下の定常領域(CHおよびCL)を含む:
IgG1-CH[配列番号1]
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
IgG1-CL[配列番号2]
QPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0084】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下のクローンのうちの1つ以上の配列を含む:
抗体クローン:1A01
1A01-VH[配列番号:3]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMNWIRQTPGKGLEWVSLIGWDGGSTYYADSVKGRFTISRDNSENTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARAYSGYELDYWGQGTLVTVSS
1A01-VL[配列番号27]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNASIFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMN[配列番号51]
CDRH2:LIGWDGGSTYYADSVKG[配列番号52]
CDRH3:AYSGYELDY[配列番号53]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号54]
CDRL2:DNNNRPS[配列番号55]
CDRL3:AAWDDSLNASI[配列番号56]
抗体クローン:1B07
1B07-VH[配列番号4]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAFTRYDGSNKYYADSVRGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENIDAFDVWGQGTLVTVSS
1B07-VL[配列番号28]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNQQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCEAWDDRLFGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号57]
CDRH2:FTRYDGSNKYYADSVRG[配列番号58]
CDRH3:ENIDAFDV[配列番号59]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号60]
CDRL2:DNQQRPS[配列番号61]
CDRL3:WDDRLFGPV[配列番号62]
抗体クローン:1C04
1C04-VH[配列番号5]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSISDSGAGRYYADSVEGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTHDSGELLDAFDIWGQGTLVTVSS
1C04-VL[配列番号29]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNHVLWYQQLPGTAPKLLIYGNSNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYAMS[配列番号63]
CDRH2:SISDSGAGRYYADSVEG[配列番号64]
CDRH3:THDSGELLDAFDI[配列番号65]
CDRL1:SGSSSNIGSNHVL[配列番号66]
CDRL2:GNSNRPS[配列番号67]
CDRL3:AAWDDSLNGWV[配列番号68]
抗体クローン:1E05
1E05-VH[配列番号6]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNWVRQVPGKGLEWVAVISYDGSNKNYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNFDNSGYAIPDAFDIWGQGTLVTVSS
1E05-VL[配列番号30]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYDNNSRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLGGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYAMN[配列番号69]
CDRH2:VISYDGSNKNYVDSVKG[配列番号70]
CDRH3:NFDNSGYAIPDAFDI[配列番号71]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号72]
CDRL2:DNNSRPS[配列番号73]
CDRL3:AAWDDSLGGPV[配列番号74]
抗体クローン:2A09
2A09-VH[配列番号7]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNAWMSWVRQAPGKGLEWVAYISRDADITHYPASVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTTGFDYAGDDAFDIWGQGTLVTVSS
2A09-VL[配列番号31]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNAVNWYQQLPGTAPKLLIYGNSDRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGRWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NAWMS[配列番号75]
CDRH2:YISRDADITHYPASVKG[配列番号76]
CDRH3:GFDYAGDDAFDI[配列番号77]
CDRL1:SGSSSNIGSNAVN[配列番号78]
CDRL2:GNSDRPS[配列番号79]
CDRL3:AAWDDSLNGRWV[配列番号80]
抗体クローン:2B08
2B08-VH[配列番号8]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWVRQAPGKGLEWVALIGHDGNNKYYLDSLEGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARATDSGYDLLYWGQGTLVTVSS
2B08-VL[配列番号32]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYYDDLLPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCTTWDDSLSGVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMS[配列番号81]
CDRH2:LIGHDGNNKYYLDSLEG[配列番号82]
CDRH3:ATDSGYDLLY[配列番号83]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号84]
CDRL2:YDDLLPS[配列番号85]
CDRL3:TTWDDSLSGVV[配列番号86]
抗体クローン:2E8-VH
2E8-VH[配列番号9]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSAIGFSDDNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAGGDGSGWSFWGQGTLVTVSS
2E8-VL[配列番号33]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDDSLRGWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMS[配列番号87]
CDRH2:AIGFSDDNTYYADSVKG[配列番号88]
CDRH3:GDGSGWSF[配列番号89]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号90]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号91]
CDRL3:ATWDDSLRGWV[配列番号92]
抗体クローン:5C04
5C04-VH[配列番号10]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREWRDAFDIWGQGTLVTVSS
5C04-VL[配列番号34]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSDNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGSWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号93]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号94]
CDRH3:WRDAFDI[配列番号95]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号96]
CDRL2:SDNQRPS[配列番号97]
CDRL3:AAWDDSLSGSWV[配列番号98]
抗体クローン:5C05
5C05-VH[配列番号11]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENFDAFDVWGQGTLVTVSS
5C05-VL[配列番号35]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSNSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGQVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYGMH[配列番号99]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号100]
CDRH3:ENFDAFDV[配列番号101]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号102]
CDRL2:SNSQRPS[配列番号103]
CDRL3:AAWDDSLNGQVV[配列番号104]
抗体クローン:5D07
5D07-VH[配列番号12]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIAYDGSKKDYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREYRDAFDIWGQGTLVTVSS
5D07-VL[配列番号36]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNSNRPSGVPDRFSGSKSGTTASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSVSGWMFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYGMH[配列番号105]
CDRH2:VIAYDGSKKDYADSVKG[配列番号106]
CDRH3:EYRDAFDI[配列番号107]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号108]
CDRL2:GNSNRPS[配列番号109]
CDRL3:AAWDDSVSGWM[配列番号110]
抗体クローン:5E12
5E12-VH[配列番号13]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGINKDYADSMKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARERKDAFDIWGQGTLVTVSS
5E12-VL[配列番号37]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSNNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDDSLNGLVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号111]
CDRH2:VISYDGINKDYADSMKG[配列番号112]
CDRH3:ERKDAFDI[配列番号113]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号114]
CDRL2:SNNQRPS[配列番号115]
CDRL3:ATWDDSLNGLV[配列番号116]
抗体クローン:5G08
5G08-VH[配列番号14]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNRYYADSVKGRFTMSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRWNGMDVWGQGTLVTVSS
5G08-VL[配列番号38]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYANNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGPWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号:117]
CDRH2:VISYDGSNRYYADSVKG[配列番号118]
CDRH3:DRWNGMDV[配列番号119]
CDRL1:SGSSSNIGAGYDVH[配列番号120]
CDRL2:ANNQRPS[配列番号121]
CDRL3:AAWDDSLNGPWV[配列番号122]
抗体クローン:5H06
5H06-VH[配列番号15]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSDTAYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDHSVIGAFDIWGQGTLVTVSS
5H06-VL[配列番号39]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNTVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCSSYAGSNNVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号123]
CDRH2:VISYDGSDTAYADSVKG[配列番号124]
CDRH3:DHSVIGAFDI[配列番号125]
CDRL1:SGSSSNIGSNTVN[配列番号126]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号127]
CDRL3:SSYAGSNNVV[配列番号128]
抗体クローン:6A09
6A09-VH[配列番号16]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVTSYDGNTKYYANSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREDCGGDCFDYWGQGTLVTVSS
6A09-VL[配列番号40]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNSNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNEGVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号129]
CDRH2:VTSYDGNTKYYANSVKG[配列番号130]
CDRH3:EDCGGDCFDY[配列番号131]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号132]
CDRL2:GNSNRPS[配列番号133]
CDRL3:AAWDDSLNEGV[配列番号134]
抗体クローン:6B01
6B01-VH[配列番号17]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDQLGEAFDIWGQGTLVTVSS
6B01-VL[配列番号41]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDDSLSGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号135]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号136]
CDRH3:DQLGEAFDI[配列番号137]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号138]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号139]
CDRL3:ATWDDSLSGPV[配列番号140]
抗体クローン:6C11
6C11-VH[配列番号18]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGSSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAGGDIDYFDYWGQGTLsVTVSS
6C11-VL[配列番号42]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNFGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYENNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYGMS[配列番号141]
CDRH2:AISGSGSSTYYADSVKG[配列番号142]
CDRH3:GDIDYFDY[配列番号143]
CDRL1:TGSSSNFGAGYDVH[配列番号144]
CDRL2:ENNKRPS[配列番号145]
CDRL3:AAWDDSLNGPV[配列番号146]
抗体クローン:6C12
6C12-VH[配列番号19]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARERRDAFDIWGQGTLVTVSS
6C12-VL[配列番号43]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSDNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDSDTPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号147]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号148]
CDRH3:ERRDAFDI[配列番号149]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号150]
CDRL2:SDNQRPS[配列番号151]
CDRL3:ATWDSDTPV[配列番号152]
抗体クローン:6D01
6D01-VH[配列番号20]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAMYYCARDHSAAGYFDYWGQGTLVTVSS
6D01-VL[配列番号44]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNTVNWYQQLPGTAPKLLIYGNSIRPSGGPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCASWDDSLSSPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号153]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号154]
CDRH3:DHSAAGYFDY[配列番号155]
CDRL1:SGSSSNIGSNTVN[配列番号156]
CDRL2:GNSIRPS[配列番号157]
CDRL3:ASWDDSLSSPV[配列番号158]
抗体クローン:6G03
6G03-VH[配列番号21]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFGSYGMHWVRQAPGKGLEWVSGISWDSAIIDYAGSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDEAAAGAFDIWGQGTLVTVSS
6G03-VL[配列番号45]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNTDRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGPVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号159]
CDRH2:GISWDSAIIDYAGSVKG[配列番号160]
CDRH3:DEAAAGAFDI[配列番号161]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号162]
CDRL2:GNTDRPS[配列番号163]
CDRL3:AAWDDSLSGPVV[配列番号164]
抗体クローン:6G08
6G08-VH[配列番号22]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLSSYGISWVRQAPGKGLEWVSGISGSGGNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASSVGAYANDAFDIWGQGTLVTVSS
6G08-VL[配列番号46]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGDTNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGIS[配列番号165]
CDRH2:GISGSGGNTYYADSVKG[配列番号166]
CDRH3:SVGAYANDAFDI[配列番号167]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号168]
CDRL2:GDTNRPS[配列番号169]
CDRL3:AAWDDSLNGPV[配列番号170]
抗体クローン:6G11
6G11-VH[配列番号23]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWMAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARELYDAFDIWGQGTLVTVSS
6G11-VL[配列番号47]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYADDHRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCASWDDSQRAVIFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号171]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号172]
CDRH3:ELYDAFDI[配列番号173]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号174]
CDRL2:ADDHRPS[配列番号175]
CDRL3:ASWDDSQRAVI[配列番号176]
抗体クローン:6H08
6H08-VH[配列番号24]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISKDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREYKDAFDIWGQGTLVTVSS
6H08-VL[配列番号48]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGSNTVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQAWGTGIRVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号177]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号178]
CDRH3:EYKDAFDI[配列番号179]
CDRL1:TGSSSNIGSNTVN[配列番号180]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号181]
CDRL3:QAWGTGIRV[配列番号182]
抗体クローン:7C07
7C07-VH[配列番号25]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSQNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREFGYIILDYWGQGTLVTVSS
7C07-VL[配列番号49]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNTVNWYQQLPGTAPKLLIYRDYERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCMAWDDSLSGVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号183]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号184]
CDRH3:EFGYIILDY[配列番号185]
CDRL1:SGSSSNIGSNTVN[配列番号186]
CDRL2:RDYERPS[配列番号187]
CDRL3:MAWDDSLSGVV[配列番号188]
抗体クローン:4B02
4B02-VH[配列番号26]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNHGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGTNKYYADSVRGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARETWDAFDVWGQGTLVTVSS
4B02-VL[配列番号50]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNNANWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQAWDSSTVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NHGMH[配列番号189]
CDRH2:VISYDGTNKYYADSVRG[配列番号190]
CDRH3:ETWDAFDV[配列番号191]
CDRL1:SGSSSNIGSNNAN[配列番号192]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号193]
CDRL3:QAWDSSTVV[配列番号194]
【0085】
いくつかの実施形態、時として好ましい実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、次のCDR領域、配列番号171(CDRH1)、配列番号172(CDRH2)、配列番号173(CDRH3)、配列番号174(CDRL1)、配列番号175(CDRL2)および配列番号176(CDRL3)、すなわちクローン6G11のCDR領域を含む。
【0086】
いくつかの実施形態、時として好ましい実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、次の定常領域、配列番号1(CH)および配列番号2(CL)、ならびに次の可変領域、配列番号23(VL)および配列番号47(VH)、すなわちクローン6G11の定常領域ならびに可変領域を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、PD-1分子は、ヒト抗体分子またはヒト由来の抗体分子である。いくつかのこのような実施形態において、ヒト抗体分子またはヒト由来の抗体分子は、IgG抗体である。いくつかのこのような実施形態において、ヒト抗体分子またはヒト由来の抗体分子は、IgG4である。
【0088】
抗PD-1抗体分子は、PD-1に特異的に結合する抗体分子である。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を遮断し、次いで、PD-1アンタゴニストと見なされ得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、ヒト化抗体分子である。
【0091】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、キメラ抗体である。
【0092】
上で言及されるように、PD-1抗体は、FcγRに結合する能力を有する必要がある。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))およびセミプリマブ(LIBTAYO(登録商標))からなる群から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子および抗PD-1抗体分子は、同時に患者に投与され、すなわち、それらは同時にまたは互いに非常に近い時間内に別々に投与されるいずれかを意味する。
【0095】
いくつかの実施形態において、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、抗PD-1抗体分子の投与前に患者に投与される。このような連続投与は、2つの抗体を時間的に分離することで達成され得る。代替的に、または第1の選択肢と組み合わせて、連続投与は、抗体分子が抗PD-1抗体分子に先立ってがんに達するように腫瘍内投与等の方法で、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の投与により、次いで、抗体分子が、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の後にがんに達するように全身投与等の方法で投与される、2つの抗体分子の空間的分離によっても達成されてよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の投与前に患者に投与される。上記と同様に、そのような連続投与は、2つの抗体の時間的分離によって、および/または2つの抗体分子の空間的分離によって達成され得る。空間的投与の場合、抗PD-1抗体分子は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子に先立ってがんに到達するように腫瘍内投与等の方法で投与され、次いで、PD-1抗体分子の後にがんに到達するように全身投与等の方法で投与される。
【0097】
例えば、薬剤が体に吸収される速度を変更するように、薬剤は、異なる添加物で改変することができ、例えば身体への特定の投与経路を可能にするように異なる形態で改変することができることは、医薬当業者には既知であろう。
【0098】
したがって、本発明の組成物、および/または抗体、および/または薬物は、賦形剤および/もしくは薬学的に許容される担体および/もしくは薬学的に許容される希釈剤および/もしくはアジュバントと組み合わせる場合を含む。
【0099】
本発明の組成物、および/または抗体、および/または薬物は、抗酸化剤、および/もしくは緩衝剤、および/もしくは静菌剤、および/もしくは意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有することができる、水性および/または非水性の無菌注射溶液、ならびに/または懸濁剤および/もしくは増粘剤を含むことができる水性および/または非水性の無菌懸濁液を含む非経口投与に好適であり得る場合を含む。本発明の組成物、および/または抗体、および/または薬剤、および/または薬物は、単位用量または複数回投与の容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで提供されてもよく、使用直前に無菌液担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0100】
即時注射液および懸濁液剤は、前述の種類の滅菌散剤、および/または顆粒剤、および/または錠剤から調製され得る。
【0101】
ヒト患者への非経口投与の場合、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子、および/または抗PD-1抗体分子の1日投与量レベルは通常、1mg~20mg/kg(患者体重)であり、または場合によっては、最大100mg/kgを単回投与もしくは分割投与で投与される。特別な状況下、例えば長期投与と組み合わせて、より低い用量を使用してもよい。いずれにしても、医師は個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を判定し、それは特定の患者の年齢、体重、および反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いかまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
通常は、本発明の組成物および/または薬物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子、および/または抗PD-1抗体をおよそ2mg/mL~150mg/mL、またはおよそ2mg/mL~200mg/mLの濃度で含有するであろう。好ましい実施形態において、本発明の薬物および/または組成物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子および/または抗PD-1抗体分子を10mg/mLの濃度で含有するであろう。
【0103】
一般に、ヒトでは、本発明の組成物、および/または抗体、および/または薬剤、および/または薬物の経口または非経口投与が好ましい経路であり、最も便利である。獣医学的使用の場合、本発明の組成物、および/または抗体、および/または薬剤、および/または薬物は、通常の獣医学診療に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画および投与経路を判定するであろう。したがって、本発明は、(上記および以下でさらに説明する)様々な状態を治療するのに有効な量の、本発明の抗体および/または薬剤を含む薬学的製剤を提供する。好ましくは、組成物、および/または抗体、および/または薬剤、および/または薬物は、静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)、または腫瘍内を含む群から選択される経路による送達に適合している。
【0104】
本発明はまた、本発明のポリペプチド結合部分の薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩を含む組成物、および/または抗体、および/または薬剤、および/または薬物を含む。本発明で有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモエート、[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩等の薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。また、薬学的に許容可能な塩基付加塩を使用して、本発明に従った薬剤の、薬学的に許容可能な塩の形態を生成してもよい。本質的に酸性である本薬剤の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性塩基塩を形成するものである。そのような非毒性塩基塩には、これらに限定されないが、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えばカリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウムまたは水溶性アミン付加塩、例えばN-メチルグルカミン-(メグルミン)、および低級アルカノールアンモニウム、ならびに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩等のそのような薬理学的に許容されるカチオンに由来するものが挙げられる。本発明の薬剤および/またはポリペプチド結合部分は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体で再構成されてもよい。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、および/または再構成技法を用いてもよい。凍結乾燥および再構成によって、抗体活性低下の程度の変動に至る場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性が大きく低下する傾向を有する)、使用レベルを上方調節して補う必要があり得ることを当業者は理解するであろう。一実施形態において、凍結乾燥(フリーズドライ)ポリペプチド結合部分は、再水和されるとき、(凍結乾燥前の)その活性のうちの約20%未満、または約25%未満、または約30%未満、または約35%未満、または約40%未満、または約45%未満、または約50%未満を損失する。
【0105】
FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子と抗PD-1抗体分子との組み合わせは、がんの治療において使用することができる。
【0106】
本明細書で用いる場合、「患者」という用語は、FcγRIIb陰性がんを有すると診断された、またはFcγRIIb陰性がんである可能性が高いと考えられる、および/またはそのようながんの症状を示すがんを有すると診断された、ヒトを含む動物を指す。
【0107】
患者は、哺乳類または非哺乳類であり得る場合を含む。好ましくは、患者はヒトであるか、またはウマ、もしくはウシ、もしくはヒツジ、もしくはブタ、もしくはラクダ、もしくはイヌ、もしくはネコ等の哺乳類である。最も好ましくは、哺乳類患者はヒトである。
【0108】
「呈する」とは、対象が、がん症状および/もしくはがん診断マーカーを表すこと、ならびに/またはがん症状および/もしくはがん診断マーカーを測定、および/または評価、および/または定量化できる場合を含む。
【0109】
医薬当業者であれば、がん症状およびがん診断マーカーがどのようなものであるか、ならびにがん症状の重症度に低減または増加があるかどうか、またはがん診断マーカーに低減もしくは増加があるかどうかを測定および/もしくは評価および/もしくは定量化する方法、ならびにがん症状および/もしくはがん診断マーカーを使用して、がんに関する予後診断を形成することができる方法は、容易に明らかであろう。
【0110】
がん治療は、多くの場合、一連の治療として投与される、すなわち治療剤は、ある期間にわたって投与される。一連の治療の時間の長さは、他の理由の中でもとりわけ、投与される治療薬の種類、治療されるがんの種類、治療されるがんの重症度、ならびに患者の年齢および健康状態を含むいくつかの要因に依存する。
【0111】
「治療中」とは、患者が現在、一連の治療を受けていること、および/または治療薬を受けていること、および/または一連の治療薬を受けている場合を含む。
【0112】
本発明に従って治療される患者は、PD-1陽性腫瘍を特徴とするがんを有する。
【0113】
いくつかの実施形態において、治療されるがんは固形がんである。
【0114】
いくつかの実施形態において、治療される固形がんは、その治療が通常、抗PD-1抗体による免疫療法からなるか、またはそれを含むがんである。
【0115】
いくつかの実施形態において、治療されるがんは、黒色腫;小細胞肺がん(SCLC)および非小細胞肺がん(NSCLC)を含む肺がん(非扁平上皮NSCLCおよび扁平上皮NSCLCを含み、転移性NSCLCを含む);頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)を含む頭頸部がん;ホジキンリンパ腫;原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL);進行性尿路上皮がんを含む膀胱がん;不安定性が高い(MSI-H)および/またはミスマッチ修復欠損(dMMR)のがんを含む結腸直腸がん;進行胃がんおよび胃または胃食道接合部(GEJ)腺がんを含む胃がん;子宮頸がん;肝細胞がんを含む肝臓がん;メルケル細胞がん(MCC);治癒的手術または治癒的放射線療法の候補ではない患者における局所進行CSCCを含む、腎細胞がん(RCC)および皮膚扁平上皮がん(CSCC)を含む腎臓がんからなる群から選択される。抗PD-1免疫療法に関連する適応症の数および種類が急速に拡大していることは、当業者には既知であろう。
【0116】
いくつかの実施形態において、がんは難治性がんである。いくつかのそのような実施形態において、難治性がんは、治療の開始時に、既に抗PD-1抗体による治療に抵抗性を示すことが分かっているがんである。この抵抗性は、患者が治療にまったく反応しないか、または治療にもかかわらず、がんがいくらか進行したことから明らかとなり得る。いくつかの実施形態において、難治性がんは、抗PD-1抗体による治療中にその抗体に抵抗性を示すようになるがんであり、これは、患者が治療に反応しなくなるか、または治療に対する反応の低下を示すことを意味する。いくつかの実施形態において、難治性がんは、抗PD-1抗体による成功裏の治療の後または最終段階で抵抗性を示し、これは、がんが再発した場合に、抗PD-1抗体は効果がないか、または効果が低下することを意味する。
【0117】
上述のがんのいずれもが公知であり、症状およびがん診断マーカーは、それらのがんを治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上記の種類のがんを治療するために用いられる症状、がん診断マーカーおよび治療剤は、医薬当業者には既知であろう。
【0118】
大多数のがんの診断、予後診断、進行の臨床的定義は、ステージ分類として既知である、ある特定の分類による。それらのステージ分類システムは、多くの異なるがん診断マーカーおよびがん症状を照合して、がんの診断、および/または予後診断、および/または進行の概要を提供するように機能する。ステージ分類システムを使用して、がんの診断、および/または予後診断、および/または進行を評価する方法、ならびにそのためにどのがん診断マーカーおよびがん症状を使用するべきかということは、腫瘍学当業者には既知であろう。
【0119】
「がんのステージ分類」とは、ステージ0、ステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVを含む、Raiステージ分類、ならびに/またはステージA、ステージB、およびステージCを含むBinetステージ分類、ならびに/またはステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVを含む、Ann Arbourステージ分類が挙げられる。
【0120】
がんは、細胞の形態に異常を引き起こし得ることが既知である。これらの異常は、多くの場合、ある特定のがんで再現性よく生じ、これは形態におけるこれらの変化の検査(あるいは組織学的検査としても既知である)が、がんの診断または予後診断に使用することができることを意味する。細胞の形態を検査するために試料を視覚化し、視覚化用に試料を準備するための技法は、例えば、光学顕微鏡法または共焦点顕微鏡法等、当技術分野で公知である。
【0121】
「組織学的検査」とは、小さな成熟リンパ球の存在、および/または細胞質の境界が狭い小さな成熟リンパ球の存在、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、および/または細胞質の境界が狭く、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、および/または異型細胞、および/もしくは切断細胞、および/もしくは前リンパ球の存在が挙げられる。
【0122】
がんは、細胞のDNAの変異の結果であり、これによって細胞の細胞死回避、または制御不能な増殖に至り得ることは公知である。したがって、これらの変異の検査(細胞遺伝学的検査としても既知である)は、がんの診断および/または予後診断を評価するための有用なツールであり得る。この例は、慢性リンパ球性白血病の特徴である染色体上の位置13q14.1の欠失である。細胞内の変異を検査するための技法は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)等、当技術分野で公知である。
【0123】
「細胞遺伝学的検査」とは、細胞内のDNA、具体的には染色体の検査を含む。細胞遺伝学的検査を使用して、難治性がんおよび/または再発したがんの存在に関連し得る、DNAの変化を同定することができる。そのようなものとしては、13番染色体の長腕の欠失、および/または染色体位置13q14.1の欠失、ならびに/または12番染色体のトリソミー、および/または12番染色体の長腕の欠失、ならびに/または11番染色体の長腕の欠失、および/または11qの欠失、ならびに/または6番染色体の長腕の欠失、および/または6qの欠失、ならびに/または17番染色体の短腕の欠失、および/または17pの欠失、ならびに/またはt(11:14)転座、ならびに/または(q13:q32)転座、ならびに/または抗原遺伝子受容体再配列、ならびに/またはBCL2再配列、ならびに/またはBCL6再配列、ならびに/またはt(14:18)転座、ならびに/またはt(11:14)転座、ならびに/または(q13:q32)転座、ならびに/または(3:v)転座、ならびに/または(8:14)転座、ならびに/または(8:v)転座、ならびに/またはt(11:14)および(q13:q32)転座を挙げることができる。
【0124】
がん患者は、ある特定の身体症状を呈することが既知であり、これは多くの場合、がんが身体に負担をかけている結果である。これらの症状は、多くの場合、同じがんで再発するため、疾患の診断、および/または予後診断、および/または進行の特徴であり得る。医薬当業者であれば、どの身体症状がどのがんに関連しているか、ならびにそれらの身体系の評価が疾患の診断、および/または予後診断、および/または進行とどのように相関し得るかを理解するであろう。「身体的症状」としては、肝腫大および/または脾腫が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
以下の実施例では、以下の図を参照している。
【0126】
図1】PD-1をトランスフェクトしたヒトJurkat T細胞におけるPD-1発現を示す。PD-1をトランスフェクトしたJurkat細胞を、低度、中程度、および高度のPD-1を発現する細胞に分類した。増殖後、PD-1発現を3つの異なるサブセットで定量化し、PD-1分子/細胞の数を図1A(低度)、図1B(中程度)、および図1C(高度)に示す。
図2A-B】BI-1206(6G11 WT)は、中程度および高度に発現する細胞のPD-1媒介性食作用を阻害するが、低度に発現する細胞の食作用は阻害しないことを示している。図2Aは、貪食されたJurkat細胞を示す一例を示している。y軸のFL4はCD14+マクロファージを示し、x軸のFL1はCFSEで標識されたJurkat細胞を示す。したがって、丸で囲まれた右上の象限は、貪食されたJurkat細胞である二重陽性CD14+CFSE+細胞を示すこの例は、PD-1高発現Jurkat細胞の食作用を示している。図2Bは、PD-1中発現Jurkat細胞の食作用を示す。
図2C-D】図2Cは、高発現Jurkat細胞を示す。値は、アイソタイプのオプソニン化(ゼロ%に設定)および抗CD3のオプソニン化(OKT3 hIgG1、100%に設定)に対して正規化されている。この図は、BI-1206(図中では6G11 WTと表される)が、試験したすべての濃度でニボルマブ媒介性食作用を阻害することを示している。さらに、この図は、アミノ酸アスパラギン(N)からアミノ酸グルタミン(Q)(すなわち、本明細書で6G11NQと表される抗体)への297位の変異を誘発することによって引き起こされるFcγR結合の破壊が、ニボルマブ媒介性食作用を阻害する能力を低下させるため、6G11抗体が食作用を阻害するために無傷のFc部分を必要とすることを示している。この図は、中程度に発現する細胞における2回の実験、および高程度に発現する細胞における3回の実験を示している。図2Dは、低度に発現する細胞にはニボルマブ媒介性食作用が認められないことを示す。
図3A】Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2aおよびmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性およびインビボでの生存を高めることを示す。CT26(図AおよびB)またはMC38(図3Cおよび図3D)の腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、または200μgの指定された抗FcγRIIB抗体変異体もしくはアイソタイプ対照(WR17)との併用で3回(100μlのPBS中の5x105腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、および15日目に)処理した。最初の処理では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処理のために、両方の抗体を一緒に投与した。すべての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、CT26の場合は400mm2、MC38の場合は225mm2の面積に達したときに末期であると見なした。グラフは、動物の腫瘍増殖(図3Aおよび図3C)および生存(図3Bおよび図3D)を示す(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図3B】Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2aおよびmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性およびインビボでの生存を高めることを示す。CT26(図AおよびB)またはMC38(図3Cおよび図3D)の腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、または200μgの指定された抗FcγRIIB抗体変異体もしくはアイソタイプ対照(WR17)との併用で3回(100μlのPBS中の5x105腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、および15日目に)処理した。最初の処理では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処理のために、両方の抗体を一緒に投与した。すべての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、CT26の場合は400mm2、MC38の場合は225mm2の面積に達したときに末期であると見なした。グラフは、動物の腫瘍増殖(図3Aおよび図3C)および生存(図3Bおよび図3D)を示す(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図3C】Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2aおよびmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性およびインビボでの生存を高めることを示す。CT26(図AおよびB)またはMC38(図3Cおよび図3D)の腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、または200μgの指定された抗FcγRIIB抗体変異体もしくはアイソタイプ対照(WR17)との併用で3回(100μlのPBS中の5x105腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、および15日目に)処理した。最初の処理では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処理のために、両方の抗体を一緒に投与した。すべての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、CT26の場合は400mm2、MC38の場合は225mm2の面積に達したときに末期であると見なした。グラフは、動物の腫瘍増殖(図3Aおよび図3C)および生存(図3Bおよび図3D)を示す(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図3D】Fc:FcγR結合が損なわれた抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合能の高い抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2aおよびmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性およびインビボでの生存を高めることを示す。CT26(図AおよびB)またはMC38(図3Cおよび図3D)の腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、または200μgの指定された抗FcγRIIB抗体変異体もしくはアイソタイプ対照(WR17)との併用で3回(100μlのPBS中の5x105腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、および15日目に)処理した。最初の処理では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処理のために、両方の抗体を一緒に投与した。すべての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、CT26の場合は400mm2、MC38の場合は225mm2の面積に達したときに末期であると見なした。グラフは、動物の腫瘍増殖(図3Aおよび図3C)および生存(図3Bおよび図3D)を示す(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図4】腫瘍担持マウスの免疫細胞におけるPD-1発現を示す。マウス腫瘍からの免疫細胞を、PD-1発現について定量化した。マウスにMC38細胞を注射し、約20日後に腫瘍を採取した。細胞を異なるT細胞サブセットについて染色し、CD8+T細胞におけるPD-1発現をFACSにより分析した。細胞上のPD-1の平均蛍光強度値は、細胞当たりの受容体の数を判定するために同一の抗PD-1抗体で染色したQuantum(商標)Simply Cellular(登録商標)ビーズの値と相関していた。
図5】異なるレベルのPD-1を発現するJurkat細胞、すなわち、PD-1低発現、PD-1中発現(中)、およびPD-1高発現を示す。PD-1の発現は、飽和濃度のAlexa Fluor 647ヒト抗ヒトPD-1(ペムブロリズマブ)を用いて定義した。
図6】「Jurkat PD-1中発現細胞」におけるPD-1発現を示す。ゲートは、腫瘍試料におけるPD-1の「中~高」発現の下端を定義するために使用される半値全幅ゲートを示している。
図7】ヒト腫瘍試料におけるPD-1発現を定義するために使用されるゲーティング戦略を示す。最初にCD45+事象を定義し(A)、続いて生細胞(B)、次いでCD3+(C)またはCD3+CD8+(D)を定義した。PD-1高発現のゲートは、CD3+(E)およびCD3+CD8+集団(F)にそれぞれ設定した。PD-1「高発現」のゲートは、PD-1をトランスフェクトしたJurkat細胞に基づいて定義し、下端は、PD-1中発現Jurkat細胞の半値全幅ゲートの下端に従って設定した。(G)および(H)は、CD3+およびCD3+CD8+集団のそれぞれにおけるAlexa Fluor 647ヒト抗ヒトPD-1(ペムブロリズマブ)のFMOを示す。
図8A】PD-1発現および予測反応等の患者特性を含む、腫瘍試料を採取した各患者のデータをまとめた表を示す。
図8B】PD-1発現および予測反応等の患者特性を含む、腫瘍試料を採取した各患者のデータをまとめた表を示す。
図9】PD-1を中程度~高度に発現するCD3+およびCD3+CD8+リンパ球の割合を示す。点線は10%を定義する。文字(F、G、H等)は、図8の表の患者IDに対応している。
【実施例
【0127】
ここで、本発明のいくつかの態様を具体的に示す、特定の非限定的な実施例を説明する。これらの実施例は、上に提供した図面の簡単な説明と一緒に読まれるべきである。
【0128】
実施例1
Jurkat細胞のトランスフェクション
Jurkat細胞のトランスフェクションのために、10%ウシ胎児血清、FCS(Sigma)、L-グルタミン(Life Technologies)、ピルビン酸ナトリウム(Life Technologies)、およびPen-Strep(Life Technologies)を含有するRPMI-1640培地で細胞を培養した。トランスフェクションの前日、細胞を0.5x106/mLに分割し、一晩培養した。細胞をトランスフェクトするために、1×106細胞を10分間90xGで遠心分離し、その後、2μgのDNA(pcDNA3中のHPD-1)を添加した100μLのNucleofector溶液(Amaxa(登録商標)Cell Line Nucleofector(登録商標)Kit V、Lonza)に再懸濁した。次いで、混合物をNucleofectorキュベットに移した。キュベットをNucleofectorII機に入れ、プログラムX-005でヌクレオフェクトした。室温(約18~22℃)で10分間インキュベートした後、500mLの培地をキュベットに加え、1mLの培地を含む12ウェルプレートに移した。トランスフェクトされた細胞を選択するために、トランスフェクションの48時間後にGeneticinを1mg/mLで添加した。10~14日後、FACSAria II機でFACSソーティングを行うことにより、陽性細胞を低、中、および高PD-1エクスプレッサーに精製した。その後、トランスフェクトされた細胞を、1mg/mLのGeneticinを含有する培地中に維持した。
【0129】
PD-1の定量化
このビーズのセットを使用した定量化の基本原理は、フィコエリトリン(PE)が1:1の比率で抗体を標識するという事実に基づいている。したがって、定義された数のPE分子を含むビーズを使用して標準曲線を作成することにより、細胞に結合した抗体分子の数を判定することができる。
【0130】
Jurkat細胞をFACSバッファー(2%FCSを含むPBS)中でPE標識抗PD1抗体(EH12.2H7、BioLegend)またはアイソタイプ対照を用いて4°Cで30分間染色した後、FACSバッファーで洗浄した。Quantibrite(商標)ビーズのチューブ1本(PEフィコエリトリン定量化キット、BD bioscience(カタログ番号340495)を、500μlのPBSに再懸濁した。
【0131】
その後、Quantibrite(商標)ビーズとJurkat細胞を同じ設定で流すことができるようにFACS機を設定した。10000個の事象が収集されるまでビーズを流し、そこから、BD Biosciences for the PE Phycoerythrin Fluorescence Quantitation Kitに記載されているように、すなわち、送達された4集団のQuantibrite(商標)ビーズについてビーズ当たりのLog分子(キット内のロット固有の情報)とLog MFI(蛍光強度)をプロットすることにより、標準曲線を作成した。次いで、この標準曲線を使用して、MFIを分子数に変換することにより、細胞株上の分子数を計算した。抗体が飽和濃度で使用され、細胞当たりのPD-1分子への抗体の結合が1:1であることを考慮すると、細胞当たりの結合した抗体の数は、細胞当たりに存在するPD-1分子の数に対応する。
【0132】
その後、PD1-PEで染色したJurkat細胞をFACSで流し、目的の試料の対数平均蛍光強度(MFI)を用いて結合した抗体の数を計算した。
【0133】
その結果を図1に示す。
【0134】
図1から、低度の発現を有する細胞集団は、中程度の発現を有するいくつかの細胞(約2%)を含むことが明らかであるが、それは集団の無視できる部分であり、以下に示す(および図2に示される)食作用実験から、この小さな部分が食作用に影響を与えないことは明らかである。同様に、中程度の発現を有する細胞集団が低度の発現を有するいくつかの細胞を含むことは明らかであるが、この場合も同様に、この小さな細胞画分は、以下に示すように食作用の結果に影響を及ぼさない。
【0135】
低発現サブセット(図1A)は、平均して3,249個のPD-1分子/細胞を有し、下部5%カットオフは1,253個のPD-1分子/細胞であり、上部5%カットオフは10,643個のPD-1分子/細胞である。中発現サブセット(図1B)は、平均して32,951個のPD-1分子/細胞を有し、下部5%カットオフは15,498個のPD-1分子/細胞であり、上部5%カットオフは77,822個のPD-1分子/細胞である。高発現サブセット(図1C)は、平均して165,968個のPD-1分子/細胞を有し、下部5%カットオフは65,406個のPD-1分子/細胞であり、上部5%カットオフは390,946個のPD-1分子/細胞である。異なるサブセット間の重複を少なくするために、上部と下部の5%カットオフ値が提供されている。15,498の下部5%カットオフ値、すなわち、上記で測定された約15,500の個のPD-1分子/細胞が、中程度または高度の発現の下限を定義するために本明細書で使用される。
【0136】
食作用
SouthamptonのNational Blood Serviceから入手した白血球コーンから単離したヒトPBMCを、グルタミン、ピルビン酸、PenStrep、およびSigma Heatの1%熱不活化ヒト血清を含有するRPMI培地(Life Technologies)を含むプレートで2時間インキュベートして単球を付着させた。次いで、培地を、グルタミン、ピルビン酸、PenStrep、および+10%FCS(Sigma)を含有するRPMI培地と交換した。24時間後、MCSF(University of Southamptonで生成)を添加した。マクロファージは、2回の培地交換(MCSFを含む)により7日間にわたって誘導した。その後、培地を除去し、2mLのPBSを添加し、氷上に15分間置いてから軽くこすることにより、マクロファージを回収した。次いで、マクロファージを96ウェルプレートに2時間再播種した。マクロファージを抗hFcγRIIb mAb(6G11WTまたは6G11NQ)で45分間、2倍の最終濃度で前処理した後、ニボルマブ(hIgG4)で15分間、2倍の最終濃度でオプソニン化したCFSE(分子プローブ)標識Jurkatを添加した。細胞を37℃で1時間共培養した後、4℃のFACSバッファーで30分間インキュベートしてから洗浄することにより抗CD14(BD-Bioscience)で染色し、次いでFACS機で読み取った。
【0137】
その結果を図2に示す。
【0138】
実施例2.腫瘍担持マウスからの免疫細胞におけるPD-1の定量化
マウス腫瘍からの免疫細胞上のPD-1受容体の数は、Quantum(商標)Simply Cellular(登録商標)ビーズ(Bangs Laboratories,Inc.)を用いて判定した。簡単に説明すると、ビーズをラット抗PD-1抗体(クローン29F.1A12、BioLegend)で染色して、標準曲線を作成した。次いで、発現を判定するために、細胞試料を曲線に対して読み取った。
【0139】
腫瘍担持マウスからの細胞について定量化を行った。マウームオフィスのガイドラインに従って、地元の施設で飼育および維持した。6~8週齢の雌のC57/BL6マウスは、Taconic(Bomholt、Denmark)から供給され、地元の動物施設で維持された。MC38細胞(ATCC)を、10%FBSを添加したグルタマックス緩衝RPMIで増殖させた。細胞が半コンフルエントになったとき、それらをトリプシンで剥離させ、10×106細胞/mLで滅菌PBSに再懸濁した。マウスに1×106細胞/マウスに相当する100μlの細胞懸濁液を皮下注射した。腫瘍は採取前に約20日間増殖させた。CD8+T細胞サブセットは、CD45、CD3、CD4、およびCD8マーカー(すべてBD Biosciences製)を使用したFACSによって同定した。異なるT細胞サブセットにおけるPD-1発現は、対応するアイソタイプ対照(BioLegend)とともに市販のラット抗PD-1抗体(クローン29F.1A12)を使用して定量化した。その結果を図4に示す。
【0140】
実施例3 インビボでの抗PD-1との併用効果
マウス細胞におけるPD-1発現は、トランスフェクトされたJurkat細胞における「中~高」発現レベルに対応する(実施例1、図1)。食作用アッセイにおいて、BI-1206は、これらの「中~高」PD-1発現細胞の食作用のレベルを大幅に低下させることが示された(例1、図2)。このデータは、インビボMC38モデルで抗PD-1と抗FcγRIIb(BI-1206マウス代替)とを組み合わせた場合に見られた改善された治療的な抗腫瘍効果と併せて(図3)、中程度または高度のPD-1発現、すなわち、15,500個のPD-1分子/細胞以上のPD-1発現を有する患者におけるBI-1206と組み合わせた抗PD-1の治療効果の改善を示唆している。
【0141】
実施例4 ヒトT細胞におけるPD-1発現の定量化
解離した生存凍結腫瘍試料(図8の表を参照)を、Discovery Life Sciencesから購入した。以下の抗体の混合物で染色する前に、細胞を解凍し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した:Alexa Fluor 700マウス抗ヒトCD45(クローンHI30、BD 560566)、BV605マウス抗ヒトCD8(クローンSK1、BD 564116)、PerCP-Cy5.5マウス抗ヒトCD3(クローンUCHT1、BD 560835)、Alexa Fluor 647ヒト抗ヒトPD-1(ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、臨床グレード、ロット番号8SNL80406、Merck Sharp&Dohme Limited)。Fixable Viability Dye eFluor 780も抗体染色混合物に含まれていた(Invitrogen、65-0865-14)。染色はBD Horizon Brilliant Stain Buffer(BD 563794)中で行った。抗ヒトPD-1は社内でAlexa Fluor 647と結合させ、滴定前の実験で示された受容体飽和濃度(5.5μg/mL)で使用した。残りの抗体は、製造業者が推奨する濃度で使用した。細胞を抗体と20分間インキュベートし、次いで洗浄してPBSに再懸濁した後、BD FACSAria IIを使用して取得した。分析はFlowJoソフトウェアを使用して行った。PD-1をトランスフェクトしたJurkat細胞におけるPD-1発現分析も同様の方法で行われたが、染色混合物にはAlexa Fluor 647ヒト抗ヒトPD-1およびFixable Viability Dye eFluor 780のみを含めた。その結果を図5に示す。腫瘍試料では、PD-1発現はCD3+およびCD3+CD8+集団内でそれぞれ定義し、生CD45+細胞に対してプレゲートした(図7)。PD-1高発現のゲートは、PD-1をトランスフェクトしたJurkat細胞に基づいて定義し、下端は、PD-1中発現Jurkat細胞の半値全幅ゲートの下端に従って設定した(図6)。
【0142】
図9は、異なる患者から得られた個々の腫瘍試料における、PD-1を中程度~高度に発現するCD3+リンパ球とCD3+CD8+リンパ球の割合をそれぞれ示している。T細胞の10%が中または高レベルでPD-1を発現している患者は、抗PD-1と組み合わせた抗FcγRIIbの恩恵を受けることが期待されるため、10%の発現の点線が含まれている。
図1
図2A-B】
図2C-D】
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【配列表】
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【国際調査報告】