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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】遮蔽部材
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20220914BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20220914BHJP
   F01N 3/26 20060101ALI20220914BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220914BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20220914BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20220914BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F01N13/14
F01N5/02 A
F01N3/26 J
F01N3/24 L
F01N13/18
F01N13/08 E
H05B3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503410
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020070234
(87)【国際公開番号】W WO2021009329
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019119294.3
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522020885
【氏名又は名称】アーリングクリンジャー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】フーバート、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ショルツェル ピーター
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
3K092
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004DA15
3G004EA05
3G004FA01
3G091AA02
3G091AB02
3G091AB06
3G091AB13
3G091BA03
3G091BA22
3G091CA03
3K092PP15
3K092QA05
3K092QB26
3K092QB45
3K092VV03
(57)【要約】
本発明は、使用時に内燃機関の排気ライン(1)の三次元形状の外形またはパイプセグメント(R)を所定の長さにわたって包囲するように少なくとも一つの接触面(6)上で互いに隣接する形で連結されるように具現化された、少なくとも二つのセクション(4、5)を備える遮蔽部材(2)に関する。
本発明において前述のタイプの遮蔽部材を改良しながら他の肯定的な特性によってその効果を増幅するために、前記遮蔽部材(2)の各セクション(4、5)はそれぞれ少なくとも一つの電気加熱システム(3)を有し、当該加熱システムは取り付け位置において包囲すべき前記パイプセグメント(R)に熱的に向けられることが提案されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に内燃機関の排気ライン(1)の三次元形状の外形またはパイプセグメント(R)を所定の長さに亘って包囲するように少なくとも一つの接触面(6)上で互いに隣接する形で連結されるように具現化された、少なくとも二つのセクション(4、5)を備える遮蔽部材(2)であって、
前記遮蔽部材(2)の各セクション(4、5)はそれぞれ少なくとも一つの電気加熱システム(3)を有し、当該加熱システムは取り付け位置において包囲すべき前記パイプセグメント(R)に熱的に向けられることを特徴とする遮蔽部材。
【請求項2】
前記二つのセクション(4、5)が互いに少なくとも一つの折り曲げ線(7)を介して接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の遮蔽部材。
【請求項3】
前記折り曲げ線(7)は、Ω形ビードとして具現化されていることを特徴とする、請求項2に記載の遮蔽部材。
【請求項4】
前記加熱システム(3)は、前記パイプセグメント(R)に対して電気絶縁され、排気の流れ方向における所定の長さ(L)に亘って延伸する蛇行経路を有する、少なくとも一つの抵抗導体(8)として具現化されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項5】
前記抵抗導体(8)には電気絶縁体(9)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の遮蔽部材。
【請求項6】
前記抵抗導体(8)の前記電気絶縁体(9)は、かぎ針編み、織物、網目またはニットの形で具現化されていることを特徴とする、請求項5に記載の遮蔽部材。
【請求項7】
前記抵抗導体(8)の前記電気絶縁体(9)として絶縁層の厚さが約0.1から約0.6mmの場合、ガラス、ケイ酸塩または熱的に高性能な材料の混合物からなる繊維が準備されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の遮蔽部材。
【請求項8】
前記抵抗導体(8)は、自身に対して接続された電力供給装置と共に前記電気絶縁体(9)を介して排気ラインの隣接する前記パイプセグメント(R)を約200℃から550℃以上に加熱するように具現化されていることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項9】
前記セクション(4、5)の前記加熱システム(3)は、前記遮蔽部材(2)の熱減衰体(10)の中および/またはこれに対し固定されていることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項10】
前記加熱システム(3)を前記遮蔽部材(2)の前記セクション(4、5)の前記熱減衰体(10)の中および/またはこれに対して固定することは、縫い付け、ニードリングおよび/またはステープリングによって具現化されることを特徴とする、請求項9に記載の遮蔽部材。
【請求項11】
前記電気加熱システム(3)の少なくとも一つの分岐(Z)は、互いに関節接合的に連結された前記遮蔽手段の複数の部分シェルのうち一つに固定されることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項12】
前記遮蔽部材(2)のセクション(4、5)の複数の加熱システム(3)および/または各加熱システム(3)内に作動停止可能な前記各加熱システム(3)および/または前記各加熱システム(3)の作動停止可能な各分岐(Z)によって各熱出力のカスケードが設けられていることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項13】
出力される各加熱力を調整するために前記電気加熱システム(3)を通る電流を切り替えおよび調整するための手段が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載の遮蔽部材。
【請求項14】
前記外表面(O)における前記接触面(6)の領域において前記遮蔽部材(2)が前記パイプセグメント(R)の周りに閉止された状態において前記遮蔽部材(2)を確実に固定するためのフランジ(F)が具現化されていることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項に記載の遮蔽部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽部材に関し、当該遮蔽部材は、使用時に内燃機関の排気ラインの三次元形状の外形またはパイプセグメントを所定の長さに亘って包囲するように少なくとも一つの接触面上で互いに隣接する形で連結されるように具現化された、少なくとも二つのセクションからなるものである。
【背景技術】
【0002】
外形の周りに閉止されたケーシングまたは外被として遮蔽部材を配置するための様々なアプローチは先行技術より公知である。ハーフシェルまたは部分シェルの形における割スリーブおよびセグメント化された遮蔽部材の使用に加え、EP 1 702 803 B1に記載の遮蔽部材が特に有益であることが判明しており、その開示内容は参照により本明細書に含まれるものとする。このように構成された遮蔽部材は、排気ラインにおける比較的高温の領域(好ましくは内燃機関に近い領域)を隣接する各セグメントおよび/または各ユニットから熱的に遮蔽するために使用される。円形から逸脱した断面輪郭であっても一回の取り付け工程において迅速且つ確実に包囲することが可能である。
【0003】
内燃機関を有する車両駆動装置のコンパクト設計への不変且つ不断な傾向は、最大約1100℃まで加熱可能であるマニホールド、ターボチャージャーあるいは触媒コンバータなど、排気ラインの様々なセグメントに沿ってこのような遮蔽部材の好ましい適用領域を生み出す。この関連において前述のタイプの遮蔽部材は、製造時あるいは修理の際に取り付けられた場合、自重が低いことに加えて必要とする工具またはその他の補助具が極めて少ないため、良好な操作性を有するため極めて有利である。
【0004】
加えて音響反射を減衰するためには熱減衰体に代えてあるいはこれに加えて特に外表面および/または充填物の内部構造および材料の実施形態によって遮蔽部材を構成することも知られている。こうしてこの遮蔽部材は、例えば波状および/または隆起状外面などにより騒音公害を低減するために代替的にあるいは付加的に機能する。以下において熱減衰体を有する遮蔽部材および/または音響減衰体を有する遮蔽部材をさらに区別することはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、本発明において前述のタイプの遮蔽部材を改良しながら他の肯定的な特性によってその効果を増幅することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明において遮蔽部材の各セクションがそれぞれ少なくとも一つの、取り付け位置において包囲されるべき外形に向かって熱的に配向される電気加熱システムを有するという請求項1の特徴によって達成される。既に公知であり、排気ラインにおいて完成品として使用される遮蔽部材は、本発明においては加熱システムを有する領域において選択的な加熱を実施する可能性を加えることによって向上されている。公知である遮蔽部材は、単に熱および/または騒音の放出を減衰することしかできなかったのに対し、本発明では加熱システムによって画定される領域においてその断面形状に関わらずパイプセグメントを包囲する外形を選択的に加熱する可能性を付加的に達成するために一般的には既に存在する公知である構成要素を用いる。当業者にはよく知られた方法により、車両の電気システムから加熱システムに対して電力を供給することにより加熱システムを容易に電気的に制御することが可能であり、所定の温度を確実に設定することが可能である。この組み合わせにより減衰遮蔽部材とその中に設けられた電気ヒータとの有利な連携動作が得られる。
【0007】
有利な変形例は従属クレームの主題である。これに相当するものとして二つのセクションが少なくとも一つの折り曲げ線を介して互いに接続されている。これにより各セクションの数が少なくなり、取り付けにおける互いに対する配向も明確に識別可能な方法で予め定められるため、取り付けを著しく簡略化することが可能となる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、遮蔽部材の折り曲げ線はΩ形ビードとして具現化されている。取り付け時に遮蔽部材が閉止される際の機械抵抗が低くなるのに加えてこの種のビードは、例えば電気加熱システムの各電気供給ラインなどを安全に収容且つ保護するための追加の空間をも作り出す。
【0009】
本発明の重要な変形例によると、加熱システムは外形に対して電気的に絶縁され、所定の長さに亘って延伸する蛇行経路が設けられる抵抗導体として具現化されている。例えばフラット導体や導体ネットワークなどの他の導電構造と比べて、ワイヤは一般的に三次元構造を形成する際に良好な変形性を有するという利点を有する。加熱ワイヤが蛇行経路を描くことにより熱導入の均質化とこれに伴ってある領域におけるできる限り均一な、構造の変形性によって微々たる程度しか影響を受けない分配とが得られる。
【0010】
抵抗導体は、電気絶縁体によって包囲されていることが好ましい。これにより抵抗導体が熱伝導を改善するために一般的には金属製のパイプセグメントの上に直接配置されている場合であってもパイプセグメントを介した電気的短絡を防止することが可能である。
【0011】
本発明の変形例においてこの抵抗導体の絶縁は、網目、かぎ針編み、織物またはニットの形態で具現化される。絶縁のために良好な電気絶縁性を有する材料やあるいは高熱抵抗材料の混合物からなる、0.1から0.6mmの厚さを有する繊維が準備される。これに代えてあるいはこれに加えて抵抗導体の電気絶縁体は、セラミックコーティング、特にエマルジョンへの浸漬またはスプレー塗布によって製造され、その後熱硬化されるコーティングとして具現化される。
【0012】
抵抗導体とこれに接続される電源とは、排気ラインの一部である隣接するパイプを電気絶縁体を介して約200℃から550℃以上の温度に加熱するように設計されていなければならない。その結果、内燃機関のコールドスタート時に下流側に後続するように配置された触媒コンバータが到達すると有効に作動することが可能である限界温度以上にこのパイプを通って運ばれる排気をも加熱することが可能となる。したがって厳しい排ガス規制にも対応することが可能である。
【0013】
セクションの加熱システムは、遮蔽部材の熱減衰体の中あるいはこれに対して固定されることが好ましい。包囲されるパイプセグメントと反対方向、すなわち外側に向かって減衰体は、低熱伝導性繊維、具体的にはガラス繊維および/またはセラミック繊維からなるマットから構成されている。これにより加熱システムから加熱すべきパイプセグメントへの熱流が向上される。
【0014】
本発明の好ましい実施例において加熱システムの固定は、熱減衰体の繊維状材料の中、これに対してあるいはこれと加熱システムを縫い付け、ニードリングおよび/またはステープリングすることによって具現化される。
【0015】
電気加熱システムの少なくとも一つの分岐は、遮蔽部材の互いに関節接合的に連結された複数の部分シェルのうち一つに固定されることが有利である。ある取り付け位置において電気加熱システムは、加熱システムをこのセグメントに巻き付けることを必要とせずに排気ラインの各セグメントを包囲する。遮蔽部材の一体化された構成要素として電気絶縁された抵抗導体は、遮蔽部材によって該当するパイプセグメントの周りに簡単に保持および閉止される。
【0016】
本発明の変形例によると遮蔽部材のセクションの加熱システムが複数個設けられるおよび/または各加熱システム内において熱出力のカスケードが設けられる。これら熱出力のカスケードは、遮蔽部分のセクションにおいて作動停止可能な加熱システムおよび/または加熱システムにおける作動停止可能な抵抗分岐によって具現化される。
【0017】
本発明の一実施形態によると出力される各熱出力を調整するために電気加熱システムを通る電流の流れを切り替えおよび調整するための手段、特に電気加熱システムの選択された分岐を通る電流のパルス幅変調を生成するための電子スイッチが設けられる。
【0018】
本発明によると排気ラインのセグメントに確実且つ容易に配置でき、さらに後付けも可能であるように電気加熱システムが遮蔽手段内に一体的に組み込まれる。この種の遮蔽部材は、取り付け位置において電気加熱システムが排気ラインの該当するセグメントに対して十分な電気絶縁を有しながら良好な熱接触が確立されるように熱減衰スリーブを用いて構成される。これによりDE 10 2018 117 049 A1において開示されるような構成を簡単且つ確実な方法で実現することが可能となる。
【0019】
本発明による各実施形態のさらなる特徴および利点について、図面に基づいて実施例を参照しながら以下においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】平面A-Aで切断された、取り付け位置における遮蔽部材の透視図。
図2図1のAA部の拡大図。
図3図1の別のBB部の拡大図。
図4図1の遮蔽部材の一実施形態を表現するための断平面A-Aを有する、先行技術より公知であるコンパクト設計のディーゼル内燃機関の排気ラインのセグメントの透視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
異なる図面に亘って同一要素には常に同一の符号を使用する。本発明を制限することなく、自動車のディーゼル内燃機関の排気ラインの一部として本発明による遮蔽部材を使用することのみが以下において図示および説明されている。しかしながら、特にガソリンエンジンの排気ラインまたは代替駆動装置のサブ領域、あるいは所望の温度に極めて短い時間で到達するおよび/または維持する必要があり、同時に各環境に対して熱減衰を実施しなければならないその他の適用例において、包囲される形状を有する外形または構成要素に亘って有利な形で調整された温度制御を実施するその他の用途への適用も同様に可能であることは当業者にとって明らかである。
【0022】
図4は、例えば乗用車のEURO6規格による2.0リットルのディーゼル内燃機関において現在使用されている類の、先行技術より公知であるコンパクト設計のディーゼル内燃機関の排気ライン1のセグメントを簡略された形で示す透視図である。隣接する各ユニットを熱保護し、騒音放射を防止するためにこのセグメントは既に完全に各遮蔽部材2を用いて包囲されており、当該各遮蔽部材の見えている各外表面Oは詳細には図示されていない 形で騒音放射を低減するように構成されている。排気流Gの流れ方向において図示されている排気ライン1のセグメントでは、排気入口Eと出口Aの間をシステム限界として連続的に極めて近い間隔に配置されるディーゼル酸化触媒DOC、該当する測定センサシステムとパイプセグメントRにおける後続の混合室とを有する尿素噴射手段Hならび選択還元触媒がコーティングされたディーゼル微粒子フィルタSDPFと選択還元触媒SCRとの組み合わせを通って流れが通過する。
【0023】
実験を行う過程で驚くべきことに、特に自動車のコールドスタートの際の汚染物質の排出を減らす上でここでは一点鎖線によって囲まれたパイプセグメントRまたは混合室が尿素噴射手段Hの貯蔵手段として特に重要であることが判明した。ディーゼル酸化触媒DOCの下流および選択還元触媒がコーティングされたディーゼル微粒子フィルタSDPFの上流において接続されたこのパイプセグメントRの一部(外側のみ且つ所定の長さLに亘って)に少なくとも一つの電気加熱システム3が設けられることで排気流Gを尿素を使用したその後の脱硝に必要である約200℃の最低温度にする。これにより図示された排気ライン内またはその一セクションのみにおける変化が回避される。選択的な加熱可能性の新しい機能性は、既に存在する遮蔽部材2内部へと移行された。
【0024】
図1は、図4の拡大細部として取り付け位置における対応して拡大された遮蔽部材2の実施例の断面透視図である。明確に円形から逸脱する断面輪郭を有するパイプセグメントRを減衰遮蔽部材2によって大量生産に適した方法で包囲するため、ここでは遮蔽部材2が互いにハーフシェルとして連結されており、それぞれが一つの電気加熱システム3を支持する二つのセクション4、5から形成されている。これらセクション4、5は、図示される使用例では接触面6において互いに隣接する形で接続されて三次元形状のパイプセグメントRを完全に包囲するように形成されている。その結果、セクション4、5に対応する数の加熱システム3が、パイプセグメントRに例えば抵抗線などを巻き付ける必要なくしてパイプセグメントRを包囲する。確実且つ許容される製造時間内にパイプセグメントRの外側に巻き付けることは不可能である。内部据え付けは、異なるメーカーによって製造されて互いに調整された既存のシステムにおける構成要素への介入となるため選択肢にない。前述のシステムに介入することなく遮蔽部材2に関する本実施例において加熱システム3を備えるセクション4、5を取り付けることは、従来公知である減衰遮蔽部材2の遮蔽ライン1 への取り付けと何ら変わりはない。
【0025】
図1における遮蔽部材2では二つの接触面6のうち一つの領域において遮蔽部材2の外表面Oは折り曲げ線7へと移行し、この折り曲げ線を介してヒンジとして機能するΩ形ビード7によってハーフシェルセクション4、5が互いに関節接合している。ビード7は、取り付け時に遮蔽部材2がパイプセグメントRの周りに閉止される時に低い機械的曲げ抵抗を有することを特徴とし、また例えば加熱システム3の電気供給ラインを安全に収容して保護された状態で案内するための追加の空間を形成するが、その詳細は図面では示されていない。ビード7とは反対側における外表面Oにおける接触面6の領域において遮蔽部材2をパイプセグメントRの周りに閉止した状態において遮蔽部材2を確実に固定するためのフランジFが具現化されている。
【0026】
本実施例における各接触面6は全てパイプセグメントRの入口および出口領域Bの中心をも通る平面内に存在する。したがってこの平面は遮蔽部材2の鏡面対称平面を構成する。したがってここで示される特別な例においてセクション4、5は互いに鏡面対称であるハーフシェルとして具現化される。
【0027】
各ハーフシェルセクション4、5は、完全に取り付けられた位置において熱の集中的な導入を可能にするために包囲される外形またはパイプセグメントRに向かって配向される電気加熱システム3の選択的に切り替え可能な部材として具現化される複数の分岐Zからなる。加熱システム3の各分岐Zは、パイプセグメントRに対して電気的に絶縁された少なくとも一つの抵抗導体8を備え、この抵抗導体8は排気流Gの流れ方向の所定の長さLに亘って延伸する蛇行経路を有する一つの部材またはセグメントを有する。このため抵抗導体8は、耐熱ガラス繊維および/またはセラミック繊維からなる網目構造の電気絶縁体9によって包囲される。抵抗導体8からパイプセグメントRへの熱伝導をよくするために電気絶縁体9は、できる限り薄いように選択される。
【0028】
抵抗導体8のサブ領域や分岐Zの一部だけであってもその変位を恒久的に防止するために加熱システム3、より詳しくはそのセクション4、5内の各分岐は遮蔽部材2の熱減衰体10の中および/またはこれに対して固定されている。加熱システム3の固定は、遮蔽部材2のセクション4、5の熱減衰体10の中および/またはこれに対して加熱システム3を縫い付け、ニードリングおよび/またはステープリングすることによって具現化される。一実施例において熱減衰体10の上に固定される抵抗導体8は、自身の中心軸に沿って縫い目によって覆われるかいわば上から縫われている。別の実施例においては、縫い目が抵抗導体8の蛇行経路に対して実質的に垂直的になるように選択的に上から縫われているだけでも十分である。しかしながら抵抗導体8の電気絶縁体9が繊維からなる場合、例えば一種のフェルト化など、繊維からなる絶縁体9が熱減衰体10に対して固定されることにより抵抗導体8を間接的に固定するだけでも十分である。特に機械的な付加をかけることも可能な成形品の形の減衰体を作成する場合、詳細は示されていない実施例においては熱減衰体10と繊維絶縁体9を有する、少なくとも1つの抵抗導体8とが共に絶縁層の厚さが0.1から0.6mmにおいてエマルジョンによって湿らされ、成形の後に実施される焼き戻しによって得られるセラミック構造によって互いに接続される。
【0029】
図2図1のAA部を拡大したものである。図1および図2における図面は、Ω形ビード7によって関節接合されている、加熱システム3の隣接する各分岐Zを有する、一体型の遮蔽部材2の概略図を示している。Ω形ビード7はその構造故に熱減衰体10の二つの部材の突合せ結合の形成を強制し、よってさもなければ可能であるヒートシンクを遮断する。同時にΩ形ビード7は、その内部において詳細は図示されない供給ラインが、少なくとも一つの関連する加熱システム3の各分岐Zに向かって包囲されて確実に案内される空間を形成する。
【0030】
取り付け状態においてこのΩ形ビード7の反対側に別の接触面6がある。製造時に取り付けられた後、この接触面6はパイプセグメントRの周りに閉止され、例えば溶接、クリンチング、クランピング、接着などにより機械的に恒久であるように接続される。
【0031】
図3は、図1の別の部分の拡大図BBを示している。しかしながらこの装置は二部または複数部からなるシェルシステムにも用いることが可能であり、同システムにおいて組立後外表面OにおいてフランジFとして平らに外側に延伸する隣接する各接触面6は、前述の方法と同様に機械的に恒久であるように接続される。
【0032】
前述の遮蔽部材2は900℃までの適用温度に対応し、必要に応じて少なくとも短時間に亘ってこれを越えて約1500℃までの適用温度に対応できるように設計され得る。前述の実施例において統合された加熱システム3は、電源電圧12Vまたは48Vで約1.5kWから5kWの電気加熱能力を有する。遮蔽部材2は、その断面積ができる限り自由な、直径が20mmから500mmの形状を有し得る。加熱される全長Lは1000mm以下であるべきである。熱減衰体10は、約5mmの層厚を有し、約0.4mmの厚さを有するステンレス鋼またはアルミニウムからなる金属外表面によって包囲されている。金属外表面は、特別な音響特性を設定するためにエンボス加工が施されている。
【0033】
原則として本発明によるシステムは、複数の部材が対称的に配置されて設置される。このことは例えば前述のとおり部分シェルを用いることによって可能である。二つの別のハーフシェルを用いた実施形態に加え、他のいくつかの適用例では一体型の実施形態を実現することも可能であり、当該実施形態では二つ以上の部分シェルを接触面6の反対側において互いに例えばEP 1 702 803 B1の開示内容によるジョイントまたはヒンジとして機能する複数のΩ形ビードを用いて実質的に直線または線状に、また形状における偏差がわずかであるように接続する。
【0034】
したがって簡単な組み立てによって全排気ライン1に亘って触媒コンバータの前および/またはその周辺における様々な領域を個別に且つ互いに独立した形で制御可能な方法で電気的に加熱することが可能である。この組立は、連続したセグメントにおいて実施可能であり、ここでは各セグメントを公知である方法で、原則として車両の下部構造へ固定をも可能にするクランプを用いて互いに接続する。この後付けは、既に存在する排気ラインについても実施することが可能であり、有利なことに排気ライン自体への取り付けはほとんど変わらないため、排気ラインの構造変更を必要としない。これら実施例において、外部に設ける必要があるのは、それぞれ供給される電気エネルギーの設定および調整を実施し、オーム発熱エレメントまたは電熱線を用いてそれらを各分岐Zに分敗するためのスイッチ要素および調整要素だけである。
【符号の説明】
【0035】
1 排気ライン
2 遮蔽部材
3 加熱システム
4 セクション
5 セクション
6 接触面
7 折り曲げ線(Ω形ビード)
8 抵抗導体
9 電気絶縁体
10 熱減衰体
A 出口
B パイプセグメントRの入口および出口領域
E 入口
F フランジ
G 排気流
H 尿素噴射手段
L 排気流方向における加熱システムの長さ
O 遮蔽部材2の外表面
R パイプセグメント

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に内燃機関の排気ライン(1)の三次元形状の外形またはパイプセグメント(R)を所定の長さに亘って包囲するように少なくとも一つの接触面(6)上で互いに隣接する形で連結されるように具現化された、少なくとも二つのセクション(4、5)を備える遮蔽部材(2)であって、
前記遮蔽部材(2)の各セクション(4、5)はそれぞれ少なくとも一つの電気加熱システム(3)を有し、当該電気加熱システムは取り付け位置において包囲すべき前記パイプセグメント(R)に熱的に向けられることを特徴とする遮蔽部材。
【請求項2】
前記二つのセクション(4、5)が互いに少なくとも一つの折り曲げ線(7)を介して接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の遮蔽部材。
【請求項3】
前記折り曲げ線(7)は、Ω形ビードとして具現化されていることを特徴とする、請求項2に記載の遮蔽部材。
【請求項4】
前記電気加熱システム(3)は、前記パイプセグメント(R)に対して電気絶縁され、排気の流れ方向における所定の長さ(L)に亘って延伸する蛇行経路を有する、少なくとも一つの抵抗導体(8)として具現化されていることを特徴とする、請求項1に記載の遮蔽部材。
【請求項5】
前記抵抗導体(8)には電気絶縁体(9)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の遮蔽部材。
【請求項6】
前記抵抗導体(8)の前記電気絶縁体(9)は、かぎ針編み、織物、網目またはニットの形で具現化されていることを特徴とする、請求項5に記載の遮蔽部材。
【請求項7】
前記抵抗導体(8)の前記電気絶縁体(9)として絶縁層の厚さが約0.1から約0.6mmの場合、ガラス、ケイ酸塩または熱的に高性能な材料の混合物からなる繊維が準備されることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項8】
前記抵抗導体(8)は、自身に対して接続された電力供給装置と共に前記電気絶縁体(9)を介して排気ラインの隣接する前記パイプセグメント(R)を約200℃から550℃以上に加熱するように具現化されていることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項9】
前記セクション(4、5)の前記電気加熱システム(3)は、前記遮蔽部材(2)の熱減衰体(10)の中および/またはこれに対し固定されていることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項10】
前記電気加熱システム(3)を前記遮蔽部材(2)の前記セクション(4、5)の前記熱減衰体(10)の中および/またはこれに対して固定することは、縫い付け、ニードリングおよび/またはステープリングによって具現化されることを特徴とする、請求項9に記載の遮蔽部材。
【請求項11】
前記電気加熱システム(3)の少なくとも一つの分岐(Z)は、互いに関節接合的に連結された前記遮蔽部材の複数の部分シェルのうち一つに固定されることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項12】
前記遮蔽部材(2)のセクション(4、5)の複数の加熱システム(3)および/または各加熱システム(3)内に作動停止可能な前記各加熱システム(3)および/または前記各加熱システム(3)の作動停止可能な各分岐(Z)によって各熱出力のカスケードが設けられていることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項13】
出力される各加熱力を調整するために前記電気加熱システム(3)を通る電流を切り替えおよび調整するための手段が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【請求項14】
前記遮蔽部材(2)の外表面(O)における前記接触面(6)の領域において前記遮蔽部材(2)が前記パイプセグメント(R)の周りに閉止された状態において前記遮蔽部材(2)を確実に固定するためのフランジ(F)が具現化されていることを特徴とする、請求項に記載の遮蔽部材。
【国際調査報告】