(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】コンタクト要素
(51)【国際特許分類】
H01R 13/193 20060101AFI20220914BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01R13/193
H01R13/42 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503580
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2020066888
(87)【国際公開番号】W WO2021013442
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019210695.1
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ヴィットマン
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087FF02
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG16
5E087QQ04
(57)【要約】
本発明は、対応コンタクト要素(62)を差込み方向(E)に沿って差し込むためのコンタクト要素(1)に関する。このコンタクト要素(1)は、対応コンタクト要素(62)を差し込むための差込み開口(2)と、対応コンタクト要素(62)に電気的に接触接続するための少なくとも1つのコンタクトソケット(3)と、差込み方向(E)に沿って少なくとも1つのコンタクトソケット(3)に対して相対的に第1の位置(P1)と第2の位置(P2)との間で変位可能である締付けスリーブ(4)とを有している。締付けスリーブ(4)と少なくとも1つのコンタクトソケット(3)とは互いに作用関係にあり、第1の位置(P1)から第2の位置(P2)への締付けスリーブ(4)の変位時に、少なくとも1つのコンタクトソケット(3)が、差込み方向(E)に対して垂直な半径方向(R)に、特に半径方向内向きに変位させられるようになっている。締付けスリーブ(4)は突当て要素(5)を有しており、この突当て要素(5)は、差込み開口(2)を通る差込み方向(E)に沿った投影図で見て、差込み開口(2)に少なくとも部分的に重なっており、これによって、コンタクト要素(1)内への対応コンタクト要素(62)の差込み時に、この対応コンタクト要素(62)が突当て要素(5)に当接し、対応コンタクト要素(62)の更なる差込み時に、締付けスリーブ(4)が、突当て要素(5)によって第2の位置(P2)の方向に変位させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応コンタクト要素(62)を差込み方向(E)に沿って差し込むためのコンタクト要素(1)であって、
前記対応コンタクト要素(62)を差し込むための差込み開口(2)と、
前記対応コンタクト要素(62)に電気的に接触接続するための少なくとも1つのコンタクトソケット(3)と、
前記差込み方向(E)に沿って前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)に対して相対的に第1の位置(P1)と第2の位置(P2)との間で変位可能である締付けスリーブ(4)と、
を有し、
前記締付けスリーブ(4)と前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)とは互いに作用関係にあり、前記第1の位置(P1)から前記第2の位置(P2)への前記締付けスリーブ(4)の変位時に、前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)が、前記差込み方向(E)に対して垂直な半径方向(R)に、特に半径方向内向きに変位させられるようになっており、
前記締付けスリーブ(4)は突当て要素(5)を有し、該突当て要素(5)は、前記差込み開口(2)を通る、前記差込み方向(E)に沿った投影図で見て、前記差込み開口(2)に少なくとも部分的に重なっており、これによって、前記コンタクト要素(1)内への前記対応コンタクト要素(62)の差込み時に、該対応コンタクト要素(62)が前記突当て要素(5)に当接し、前記対応コンタクト要素(62)の更なる差込み時に、前記締付けスリーブ(4)が、前記突当て要素(5)によって前記第2の位置(P2)の方向に変位させられる、
コンタクト要素(1)。
【請求項2】
前記締付けスリーブ(4)は、前記対応コンタクト要素(62)に向けられた前方の領域(6)に、半径方向内向きに斜めに延在する第1の部分(7)を有し、
前記第1の部分(7)で、特に前記締付けスリーブ(4)の直径(D)が縮径されている、
請求項1記載のコンタクト要素。
【請求項3】
前記差込み方向(E)と逆方向で見て、前記締付けスリーブ(4)の前記第1の部分(7)に、前記差込み方向(E)に対して平行に延在する第2の部分(8)が続いており、
前記第2の部分(8)で、特に前記締付けスリーブ(4)の前記直径(D)は一定である、
請求項2記載のコンタクト要素。
【請求項4】
前記締付けスリーブ(4)に第1の位置固定要素(10)が設けられており、該第1の位置固定要素(10)は、前記対応コンタクト要素(62)が前記コンタクト要素(1)内に差し込まれていない場合に、前記第1の位置(P1)から前記第2の位置(P2)の方向への前記締付けスリーブ(4)の変位を阻止している、請求項1から3までのいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項5】
前記第1の位置固定要素(10)は前記突当て要素(5)に作用結合されている、請求項4記載のコンタクト要素。
【請求項6】
前記締付けスリーブ(4)に第2の位置固定要素(20)が設けられており、該第2の位置固定要素(20)は、前記締付けスリーブ(4)が前記第2の位置(P2)にある場合に、該第2の位置(P2)から前記第1の位置(P1)の方向への前記締付けスリーブ(4)の変位を阻止している、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項7】
前記コンタクト要素(1)に、該コンタクト要素(1)をコネクタ(50)のコンタクト室(52)内に係止するためのアンダカットが設けられており、かつ/または
前記コンタクト要素(1)に、該コンタクト要素(1)をコネクタ(50)のコンタクト室(52)内に係止するための、特に弾性的に可逆的に変位可能な係止ランス(9)が設けられている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のコンタクト要素。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のコンタクト要素(1)と、
前記差込み方向(E)に沿って前記コンタクト要素(1)内に差し込まれた対応コンタクト要素(62)と、
を備える、コンタクトアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)は、少なくとも、特に前記対応コンタクト要素(62)が前記差込み方向(E)に沿って前記コンタクト要素(1)内に差し込まれる場合に、前記対応コンタクト要素(62)が前記突当て要素(5)に当接しない限り、前記対応コンタクト要素(62)に接触しない、請求項8記載のコンタクトアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)は、前記締付けスリーブ(4)が前記第2の位置(P2)にある場合に、前記差込み方向(E)に対して横方向の所定の力で前記対応コンタクト要素(62)に接触している、請求項8または9記載のコンタクトアセンブリ。
【請求項11】
コンタクト室(52)を備えるハウジング(51)と、
前記コンタクト室(52)内に配置され、特に該コンタクト室(52)内に係止された、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンタクト要素(1)と、
を有する、コネクタ。
【請求項12】
コネクタアセンブリであって、
請求項11記載のコネクタ(50)と、
対応コネクタ(60)であって、
対応コネクタハウジング(61)と、
対応コンタクト要素(62)と、
を備える対応コネクタ(60)と、
を有し、
前記コネクタ(50)と前記対応コネクタ(60)とが完全に嵌合した状態で、前記締付けスリーブ(4)は、前記対応コンタクト要素(62)によって前記第2の位置(P2)に変位させられており、
特に前記少なくとも1つのコンタクトソケット(3)は、前記差込み方向(E)に対して横方向の所定の力で前記対応コンタクト要素(62)に接触している、
コネクタアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト要素に関する。
【0002】
背景技術
例えば自動車産業におけるコネクタの分野では、特に外嵌動作のための最大の操作力に関して、顧客側でコネクタの人間工学的な取扱いが見込まれる。差込み力はますます小さくなることが望ましい。他方、コネクタの極数は、多くの用途において、より高い機能性に基づき増加している。これによって、(直接)差込み力がより大きくなってしまう。このトレードオフを解決するためのアプローチは、ピンを最初に力なしにソケットコンタクト内に導入して、コンタクトソケットの所要の押付け力を差込み動作の終了頃にまたは第2のステップで初めて加えるコネクタである。これによって、特に外嵌動作時の強い力過多(こじ開けピーク;Aufschnaebelpeak)を回避することができる。
【0003】
独国特許出願公開第102005062889号明細書に基づき、コンタクト要素を有していて、このコンタクト要素内に差込み可能な対応コンタクト要素に電気的に接触接続するためのコンタクトソケットがコンタクト要素に設けられているコネクタが公知である。この公知のコネクタでは、このコネクタのハウジングに配置されたプラスチック要素がハウジングに対して相対的に変位させられることによって、コネクタ内もしくはコンタクト要素内への対応コンタクト要素の差込みストロークの終端付近で初めて、差し込まれた対応コンタクト要素に対するコンタクトソケットの押付け力もしくは接触力が発生させられる。
【0004】
発明の開示
本発明は、狭められたスペース状況と、電流および/または信号を案内する線路の数の増加とに基づき、コネクタの寸法がますます小さくなることが望ましく、耐用年数にわたって、コンタクト要素と、差し込まれた対応コンタクト要素との間の接触力に高い要求が課されるという知見から出発している。言い換えると、いったん発生させられた接触力が、種々異なる動作条件下で耐用年数にわたって可能な限り一定のままであることが望ましい。
【0005】
同時に、互いに組み立てるべき部材の個数と、組立て時に、例えばケーブル製造業者のもとで実施すべき作業ステップとによって、コストが上昇し、部材同士の組立て時の問題に対するリスクが増加してしまうことが判った。
【0006】
最後に、歩留まりを向上させ、顧客満足度を改善するためには、簡単な保守または修理が重要であることが判っており、例えば欠陥のある対応コンタクト要素を簡単に交換することができることが望ましい。
【0007】
したがって、コンタクト要素内への対応コンタクト要素の差込みが、少なくとも終端差込み位置までの差込みストロークの大部分の間(例えば70%よりも多い差込みストロークまたは80%よりも多い差込みストロークに沿って)、例えばコンタクト要素・対応コンタクト要素ペアあたり3N未満またはほんの2N未満もしくは1N未満、例えば0.05N~0.9Nの極めて少ない差込み力しか必要としないか、もしくは差込み力がほぼ不要となるコンタクト要素、コンタクト要素と対応コンタクト要素とから成るコンタクトアセンブリ、コネクタもしくはコネクタアセンブリを提供する要求があり得る。
【0008】
同時に、コンタクトソケットと対応コンタクト要素との間の接触力を耐用年数にわたって可能な限り一定に保ち、コンタクト要素とaコネクタとを可能な限り簡単にかつ少ない部材で形成する要求があり得る。さらに、組立て工程を少ない回数のステップで実施することができるようにすると共に簡単に保ち、いったん差し込まれた対応コンタクト要素をコンタクト要素から再び取り外して、同一の対応コンタクト要素または新しい対応コンタクト要素によって置き換えることができるようにする要求があり得る。その際には、最初の差込み動作の場合と同様に、終端差込み位置までの差込みストロークの大部分にわたって、少ない差込み力しか必要とならないことが望ましい。
【0009】
発明の利点
こういった要求は、独立請求項に記載の本発明の対象によって満たすことができる。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載してある。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、対応コンタクト要素を差込み方向に沿って差し込むためのコンタクト要素が提案される。
【0011】
コンタクト要素は、対応コンタクト要素を差し込むための差込み開口と、対応コンタクト要素に電気的に接触接続するための少なくとも1つのコンタクトソケットとを有している。さらに、コンタクト要素は、差込み方向に沿って少なくとも1つのコンタクトソケットに対して相対的に第1の位置と第2の位置との間で変位可能である締付けスリーブを有している。この締付けスリーブと少なくとも1つのコンタクトソケットとは互いに作用関係にあり、第1の位置から第2の位置への締付けスリーブの変位時に、少なくとも1つのコンタクトソケットが、差込み方向に対して垂直な半径方向に、特に半径方向内向きに変位させられるようになっている。締付けスリーブは突当て要素を有しており、この突当て要素は、差込み開口を通る差込み方向に沿った投影図で見て、差込み開口に少なくとも部分的に重なっており、これによって、コンタクト要素内への対応コンタクト要素の差込み時に、この対応コンタクト要素が突当て要素に当接し、対応コンタクト要素の更なる差込み時に、締付けスリーブが、突当て要素によって第2の位置の方向に変位させられる。
【0012】
これによって、有利には、対応コンタクト要素の差込みストロークに沿って、対応コンタクト要素をまずコンタクト要素内にほぼ力なしに押し込むことができるかもしくは差し込むことができることが達成される。なぜならば、この状態では、コンタクトソケットを、まだ完全に差し込まれていない対応コンタクト要素から、差込み方向に対して垂直な半径方向に離間させておくことができるかまたは極端に少ない力作用でのみ対応コンタクト要素に接触させることができるからである。
【0013】
特に有利には、差込み力に関して、半径方向内向きのばね弾性を伴うコンタクトソケットを互いに押し拡げることにより必要となり、初期の力過多を成すこじ開けピークが考慮されなくなる。
【0014】
さらに有利には、締付けスリーブに配置された突当て要素によって、別体の要素もしくは付加的に組み付けるべき要素を省略することができる。なぜならば、突当て要素によって締付けスリーブが変位させられ、これによって、対応コンタクト要素の差込みストロークの終端付近において、所要の接触力が、締付けスリーブによって少なくとも1つのコンタクトソケットから対応コンタクト要素に加えられるからである。
【0015】
さらに有利には、こうして、コンタクト要素と対応コンタクト要素との嵌合をただ1回のステップで実施することができる。接触力を加えるための別の要素の操作は考慮されていない。なぜならば、対応コンタクト要素が、差込み方向に沿った差込み動作に基づき、突当て要素に当接し、更なる差込み動作時に締付けスリーブを少なくとも1つのコンタクトソケットに対して相対的に移動もしくは変位させることによって、締付けスリーブを簡単に連行するからである。突当て要素への当接は、例えば差込みストロークの終端付近、例えば差込み開口の通過以降から計算して、例えば差込みストロークの所定の長さの70%または80%後に生じさせることができる。これによって、さらに有利には、対応コンタクト要素とコンタクト要素との引っ掛かりのリスクが減じられる。
【0016】
締付けスリーブは、例えば材料として金属を含んでいてもよく、または金属から成っていてもよい。締付けスリーブは、例えば良耐緩和性の材料(例えばばね鋼)から形成されていてもよい。締付けスリーブは、例えば少なくとも一部で環状に閉じられて形成されていてもよい。こうして、有利には、締付けスリーブにより少なくとも1つのコンタクトソケットに伝達される接触力が、例えば材料疲労に基づく老化プロセスによって軽減されてしまうリスクを減じることができる。言い換えると、こうして、老化時のばね力の軽減を減じることができる。
【0017】
コンタクト要素は、例えば取付け部分または圧着部分によってケーブルもしくは線路に、例えば力接続的または材料接続的に接続されていてもよい。コンタクト要素は、少なくとも1つのコンタクトソケットが内部に配置されたコンタクトボックスを有していてもよい。少なくとも1つのコンタクトソケットは、例えばコンタクトボックスの一部から切抜き加工されていてもよく、もしくは切断加工されていてもよい。しかしながら、コンタクトボックスは、少なくとも1つのコンタクトソケットと別個に、例えばコンタクトボックス内に差し込まれたかつ/または取り付けられた一種の被覆用のボックスとして形成されていてもよい。コンタクト要素は、例えば弾性的に可逆的に変位可能な係止ランスを有していてもよい。この係止ランスは、コンタクト要素から突出していて、このコンタクト要素をコネクタのハウジングのコンタクト室内に係止するように構成されている。コンタクト要素には、例えばアンダカットが設けられていてもよい。このアンダカットは、コネクタのコンタクト室のハウジング係止ランスによって係合され、コンタクト要素をコンタクト室内に係止する。
【0018】
当然ながら、コンタクト要素は正確に1つのコンタクトソケットを有していてもよいし、複数、例えば2つ、3つ、4つまたはさらに多くのコンタクトソケットを有していてもよい。コンタクトソケットは、例えば差込み方向を取り囲む周方向に円形に配置されていてもよい。例えば2つのコンタクトソケットの場合には、例えば両方のコンタクトソケットが互いに反対側に位置しており、これによって、対応コンタクト要素の差込み時に、この対応コンタクト要素が、例えば両方のコンタクトソケットの間の1つの線上に位置していることが特定されていてもよい。
【0019】
少なくとも1つのコンタクトソケットは、金属、例えば銅またはアルミニウムまたはばね鋼を含んでいてもよい。少なくとも1つのコンタクトソケットは、弾性的に可逆的にばね力を伴って形成されていてもよい。少なくとも1つのコンタクトソケットは、例えば締付けスリーブの第1の位置では力なしの状態にあり、対応コンタクト要素の通常の差込み動作(つまり、引っ掛かりのない差込み)時には、対応コンタクト要素から半径方向に離間させられているかまたは対応コンタクト要素に僅かしか接触していないかもしくは触れていないように形成されていてもよい。少なくとも1つのコンタクトソケットは、さらに、締付けスリーブの第2の位置では締付けスリーブによって弾性的に可逆的に半径方向内向きに、つまり、差し込まれた対応コンタクト要素の方向に押圧されるか、もしくはねじられるか、もしくは移動させられるか、もしくは変位させられ、これによって、対応コンタクト要素に機械的に接触させられるように形成されていてもよい。仮に締付けスリーブが第1の位置に再び変位させられたとすると、この例では、少なくとも1つのコンタクトソケットがその弾性に基づき再び力なしの状態にばね弾性的に戻り、これによって、対応コンタクト要素から再び離間させられてしまうかまたは対応コンタクト要素に単に触れているだけになってしまう。
【0020】
締付けスリーブの第1の位置は、差し込むべき対応コンタクト要素が、例えば差込み開口の通過以降から計算して、例えば差込みストロークの所定の長さの70%後に突当て要素に当接するように設定されていてもよい。この突当て要素は、例えば差込み方向に対して横方向、つまり、半径方向で締付けスリーブから内向きに突出していてもよい。突当て要素は、対応コンタクト要素の挿入ストロークもしくは差込み経路もしくは差込み通路内に突出しており、これによって、対応コンタクト要素が、例えば突当て要素に当接することができるように形成されていてもよい。この突当て要素は、例えば締付けスリーブから内向きに突出した金属薄板シールドによって形成されていてもよい。突当て要素は、ねじれ剛性を有しているように、つまり、対応コンタクト要素の突当てによって、この対応コンタクト要素が突当て要素の下方に入り込む(この場合には突当て要素が曲げられる)ほど強く曲げられないように形成されていてもよい。突当て要素は、例えば締付けスリーブと一体に形成されていてもよい。この締付けスリーブと突当て要素とは、例えば一体形の打抜き/曲げ加工部材として製造されていてもよい。しかしながら、突当て要素が、まずは締付けスリーブと別個の部材であり、コンタクト要素の完成時に初めて締付けスリーブに作用結合されることも可能である。
【0021】
締付けスリーブの第2の位置は、コンタクト要素内に差し込まれた対応コンタクト要素の終端差込み位置で達成されるかもしくは達成されているように設定されていてもよい。
【0022】
差込み開口は、例えば少なくとも1つのコンタクトソケットの、対応コンタクト要素に向けられた前方の端部によって形成されていてもよい。コンタクトソケットがコンタクトボックスを有している場合には、このコンタクトボックスに設けられていて、対応コンタクト要素がコンタクト要素内への差込み時に通過する前方の開口も差込み開口と見なされてもよい。
【0023】
締付けスリーブは、この締付けスリーブの単に幾つかの例示的な変位を説明するために、例えばコンタクトスリーブの純粋に線形の移動または締付けスリーブの、線形の運動に結び付けられた傾倒または締付けスリーブの、線形の運動に結び付けられた回動によって少なくとも1つのコンタクトソケットに接触力を加えることができる。締付けスリーブは、この締付けスリーブの変位に基づき、例えば傾倒または回動させられ、これによって、少なくとも1つのコンタクトソケットに接触力を加える更なる要素を有していてもよい。
【0024】
対応コンタクト要素は、例えば対応コネクタハウジングを有する対応コネクタの構成要素であってもよい。対応コンタクト要素は、対応コンタクト要素ハウジングに接して配置されていてもよいし、対応コンタクト要素ハウジング内に配置されていてもよい。対応コンタクト要素は、例えばコンタクトブレードまたはコンタクトピンまたは円形コンタクトとして形成されていてもよい。対応コンタクト要素は、例えば半径方向における寸法に関して、対応コンタクト要素が所定の終端差込み位置にまでコンタクト要素内に押し込まれた場合に、少なくとも1つのコンタクトソケットによって所定の接触力が加えられるように形成されていてもよい。対応コンタクト要素は、例えば材料として金属、例えば銅またはアルミニウムを含んでいてもよい。
【0025】
特に有利には、提案されたコンタクト要素によって、最大限必要となる差込み力をコンタクト要素・対応コンタクト要素ペアあたり3N未満、好適には2N未満、全く特に好適には1N未満、例えば0.05N~0.9Nに制限することができる。
【0026】
締付けスリーブが、対応コンタクト要素に向けられた前方の領域に、半径方向内向きに斜めに延在する第1の部分を有していることによって、有利には、少なくとも1つのコンタクトソケットを、急激にではなく、ある程度の区間にわたって半径方向内向きに変位させ、これによって、対応コンタクト要素に接触力を加えることが達成される。第1の部分における傾斜の険しさによって、差込み力の増加を調整することができる。
【0027】
第1の部分は、例えば、この第1の部分で締付けスリーブの直径が縮径されていることによって形成されていてもよい。
【0028】
差込み方向と逆方向で見て、締付けスリーブの第1の部分に、差込み方向に対して平行に延在する第2の部分が続いていることによって、有利には、例えば締付けスリーブまたはコンタクトソケットまたはコンタクトボックスの長さに製造誤差があっても、差込みストロークの終端において少なくとも1つのコンタクトソケットに常に所定の接触力が加えられているかもしくは加えられることが達成される。なぜならば、水平な第2の部分が、このような長さ誤差または対応コンタクト要素の差込みストロークもしくは挿入ストロークの所定の長さの誤差を補償することができるからである。
【0029】
例えば、第2の部分では、締付けスリーブの直径が一定に形成されていてもよい。
【0030】
締付けスリーブに第1の位置固定要素が設けられており、この第1の位置固定要素が、対応コンタクト要素がコンタクト要素内に差し込まれていない場合に、第1の位置から第2の位置の方向への締付けスリーブの変位を阻止していることによって、有利には、締付けスリーブが不本意に移動させられず、対応コンタクト要素の力なしの差込みが困難となっているかまたは阻止されていることが達成される。例えば、第1の位置固定要素は、コンタクト要素の搬送時の一種の搬送時位置固定要素として役立ち得る。
【0031】
単に例示的には、第1の位置固定要素は、対応コンタクト要素がコンタクト要素内に挿入されるかもしくは差し込まれる前に、手を使って、つまり、対応コンタクト要素に依存せずに操作可能であってもよい。こうして、位置固定を解除することができ、第1の位置から第2の位置への締付けスリーブの移動を実現することができる。
【0032】
第1の位置固定要素が突当て要素に作用結合されていることによって、第1の位置固定要素の特に確実かつ自動的な機能を達成することができる。なぜならば、例えば突当て要素への対応コンタクト要素の当接時に、第1の位置固定要素が、第1の位置から第2の位置への締付けスリーブの変位の阻止を自動的に解放することができるからである。
【0033】
単に例示的には、第1の位置固定要素は一種の係止フックとして形成されていてもよい。この係止フックは、突当て要素に作用結合されていて、締付けスリーブの第1の位置でコンタクト要素もしくはコンタクトボックスもしくはコンタクトソケットの第1のアンダカットに係合している。この場合には、突当て要素への対応コンタクト要素の当接時に、係止フックを、例えば突当て要素の僅かな傾倒によって第1のアンダカットから滑り出させることができ、第2の位置の方向への締付けスリーブの変位を実現することができる。
【0034】
当然ながら、第1の位置固定要素は、コンタクト要素もしくはコンタクトボックスもしくはコンタクトソケットに設けられた係止フックが係合する切欠きとして形成されていてもよい。
【0035】
締付けスリーブに第2の位置固定要素が設けられており、この第2の位置固定要素が、締付けスリーブが第2の位置にある場合に、この第2の位置から第1の位置の方向への締付けスリーブの変位を阻止していることによって、有利には、いったん締付けスリーブにより加えられた接触力が、コンタクトスリーブの不本意な移動によって再び減じられないことが達成される。突当て要素が曲げられているかまたは損傷を受けているかまたは紛失してしまっている場合でさえ、第2の位置固定要素によって締付けスリーブの不本意な移動が阻止される。当然ながら、第2の位置固定要素は、例えば解除工具または外部から操作可能な別の機構によって再び解除することができ、その後、つまり、締付けスリーブを第2の位置から第1の位置の方向に再び変位させることができるように形成されていてもよい。
【0036】
単に例示的には、第2の位置固定要素は、第1の位置固定要素と別個の要素として形成されていてもよい。しかしながら、第1の位置固定要素が第2の位置固定要素の機能も果たし、ひいては、同時に第1および第2の位置固定要素を成していることも特定されていてもよい。第2の位置固定要素は、例えば一種の係止フックとして形成されていてもよい。この係止フックは、コンタクト要素もしくはコンタクトボックスもしくはコンタクトソケットに形成された第2のアンダカットに係合してもよい。
【0037】
一実施形態では、コンタクト要素に、このコンタクト要素をコネクタのコンタクト室内に係止するためのアンダカットが設けられていることが特定されていてもよい。これによって、有利には、対応コンタクト要素に対する差込みストロークの所定の長さもしくは所定の差込み長さもしくは所定の差込みストロークを特に簡単に調整することができる。
【0038】
代替的または付加的には、コンタクト要素に、このコンタクト要素をコネクタのコンタクト室内に係止するための、特に弾性的に可逆的に変位可能な係止ランスが設けられていることが特定されていてもよい。これによって、有利には、対応コンタクト要素に対する所定の差込みストロークもしくは差込みストロークの所定の長さを特に簡単に調整することができる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、コンタクトアセンブリが特定されている。このコンタクトアセンブリは、上述したようなコンタクト要素を備えているかもしくは有している。コンタクトアセンブリは、さらに、差込み方向に沿ってコンタクト要素内に差し込まれた対応コンタクト要素を備えている。これによって、有利には、特に少ない差込み力を必要とし、少ない部材を有し、少ない回数の作業ステップで組立て可能となるコンタクトアセンブリが提供される。さらに有利には、コンタクトアセンブリを簡単に保守することができる。
【0040】
少なくとも対応コンタクト要素が突当て要素に当接しない限り、少なくとも1つのコンタクトソケットが対応コンタクト要素に接触しないことによって、有利には、コンタクトアセンブリの嵌合のための特に少ない差込み力が達成される。
【0041】
この場合、接触しない状態は、例えば少なくとも対応コンタクト要素が引っ掛からずに、つまり、差込み方向に沿ってコンタクト要素内に差し込まれる場合に実現することができる。
【0042】
締付けスリーブが第2の位置にある場合に、少なくとも1つのコンタクトソケットが、差込み方向に対して横方向の所定の力で対応コンタクト要素に接触していることによって、有利には、再現可能な電気的な特性、例えば再現可能な電気的な接触抵抗との電気的なインタフェースが実現される。これによって、有利には、コンタクトアセンブリにより互いに接続された電気的なコンポーネントの信頼度とフォールトトレランスとが高められる。
【0043】
本発明の更なる態様によれば、コネクタが提案される。このコネクタは、コンタクト室を備えたハウジングを有している。コネクタは、さらに、コンタクト室内に配置された上述したようなコンタクト要素を有している。これによって、有利には、ほんの僅かな差込み力と少ない回数の作業ステップとで対応コネクタに嵌合可能であり、少ない部材を有し、廉価に製造可能であり、簡単に保守することができるコネクタが提供される。
【0044】
コンタクト要素は、例えばコンタクト室内に係止されていてもよい。これによって、有利には、対応コンタクト要素に対する差込みストロークの所定の長さもしくは所定の差込みストロークを調整することができる。したがって、やはり有利には、差込みストロークの終端における所定の接触力を再現可能かつ確実に達成することができる。
【0045】
本発明の更なる態様によれば、コネクタアセンブリが提案される。このコネクタアセンブリは、上述したようなコネクタを有している。コネクタアセンブリは、さらに、対応コネクタを有している。この対応コネクタは、対応コネクタハウジングと対応コンタクト要素とを備えている。コネクタと対応コネクタとが完全に嵌合した状態では、締付けスリーブが、対応コンタクト要素によって第2の位置に変位させられている。これによって、有利には、こじ開け力ピークなしの嵌合を可能にし、少ない部材と組立てステップとで十分であり、良好に保守もしくは修理することができるコネクタアセンブリを提供することができる。
【0046】
少なくとも1つのコンタクトソケットは、例えば差込み方向に対して横方向の所定の力で対応コンタクト要素に接触していてもよい。これによって、有利には、特に良好に再現可能な電気的な特性を有するコネクタアセンブリを提供することができる。
【0047】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を参照して以下に記載の複数の例示的な実施形態から当業者に明らかになるが、これらの実施形態は、本発明として限定的に解釈すべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】コネクタアセンブリの概略的な横断面図である。
【
図2a】締付けスリーブが第1の位置にあるコンタクト要素の概略的な横断面図である。
【
図2b】差し込まれた対応コンタクト要素が終端差込み位置にあり、締付けスリーブが第2の位置にある、
図2aに示したコンタクト要素の概略的な横断面図である。
【
図3a】締付けスリーブが第1の位置にある別のコンタクト要素の概略的な横断面図である。
【
図3b】対応コンタクト要素が差し込まれていて、コンタクト要素の突当て要素に丁度当接していて、締付けスリーブがまだ第1の位置にある、
図3aに示したコンタクト要素の概略的な横断面図である。
【
図3c】差し込まれた対応コンタクト要素が終端差込み位置にあり、締付けスリーブが第2の位置にある、
図3aおよび
図3bに示したコンタクト要素の概略的な横断面図である。
【0049】
図1には、コネクタアセンブリ100の概略的な横断面が示してある。このコネクタアセンブリ100は、コネクタ50と、このコネクタ50に嵌合可能である対応コネクタ60とを有している。
【0050】
コネクタ50は、コンタクト室52を備えたハウジング51と、コンタクト室52内に配置されたコンタクト要素1とを有している。
【0051】
対応コネクタ60は、図示の構成ではカップ状に形成された対応コネクタハウジング61と、この対応コネクタハウジング61内に配置された対応コンタクト要素62とを有している。この対応コンタクト要素62は、例えば平形のコンタクトブレードまたはピンまたは円形コンタクトの形態で形成されていてもよい。対応コネクタハウジング61の、コネクタ50に向けられた側には、この、コネクタ50と対応コネクタ60とが嵌合した状態でコネクタアセンブリ100の共通の内室を汚物および湿分の侵入に対して密封する半径方向シール要素63が配置されている。
【0052】
コンタクト要素1は、対応コンタクト要素62を差込み方向Eに沿って差し込むために適している。コンタクト要素1は、対応コンタクト要素62を差し込むための差込み開口2を有している。コンタクト要素1は、さらに、対応コンタクト要素62に電気的に接触接続するための少なくとも1つのコンタクトソケット3を有している。
図1の横断面には、2つのコンタクトソケット3を認めることができる。しかしながら、基本的には、正確に1つのコンタクトソケット3が設けられていてもよいし、2つよりも多くのコンタクトソケット3が設けられていてもよい。コンタクト要素1は、さらに、差込み方向Eに沿って少なくとも1つのコンタクトソケット3に対して相対的に第1の位置P1と第2の位置P2との間で変位可能である締付けスリーブ4を有している。この締付けスリーブ4と少なくとも1つのコンタクトソケット3とは互いに作用関係にあり、第1の位置P1から第2の位置P2への締付けスリーブ4の変位時に、少なくとも1つのコンタクトソケット3が、差込み方向Eに対して垂直な半径方向Rに、例えば半径方向内向きに変位させられるようになっている。締付けスリーブ4は突当て要素5を有している。この突当て要素5は、差込み開口2を通る差込み方向Eに沿った投影図で見て、差込み開口2に少なくとも部分的に重なっており、これによって、コンタクト要素1内への対応コンタクト要素62の差込み時に、この対応コンタクト要素62が突当て要素5に当接し(
図2b、
図3bおよび
図3c参照)、対応コンタクト要素62の更なる差込み時に、締付けスリーブ4が突当て要素5によって第2の位置P2の方向に変位させられる。
【0053】
締付けスリーブ4は、例えば金属薄板から製造されていてもよい。突当て要素5は、図示の構成では、例えば半径方向内向きに曲げられていてもよく、一種のシールドのように対応コンタクト要素62の差込み経路内に突出していてもよい。
【0054】
差込み開口2は、
図1では、コネクタ50のハウジング51に設けられた開口によって付与されている。コンタクト要素1だけを考慮すると、差込み開口2は、少なくとも1つのコンタクトソケット3の前方の端部によって付与されていてもよい(
図2a~
図3c)。
【0055】
締付けスリーブ4は、対応コンタクト要素62に向けられた前方の領域6に、半径方向内向きに斜めに延在する第1の部分7を有している。前方の領域では、締付けスリーブ4の直径Dが、第1の直径D1から第2の直径D2に縮径されている。
【0056】
差込み方向Eと逆方向で見て、締付けスリーブ4の第1の部分7には、差込み方向Eに対して実質的に平行に延在する第2の部分8が続いている。この第2の部分8では、締付けスリーブ4の直径Dが一定であり、
図1では、これが第2の直径D2である。
【0057】
締付けスリーブ4は、例えば紛失してしまうことがないようにコンタクト要素1に取り付けられていると同時に変位可能であってもよい。このためには、コンタクト要素1に、例えば締付けスリーブ4の可能な変位ストロークを予め設定するスライドガイド構造が設けられていてもよい。
【0058】
コンタクト要素1は、
図1では、コンタクトソケット3を取り囲むコンタクトボックス35を有している。コンタクトソケット3は、例えばコンタクトボックス35から切断加工されていてもよい。しかしながら、このコンタクトボックス35は、コンタクトソケット3が内部に押し込まれているかまたは折り込まれているボックスとして形成されていてもよい。
図1において下側のコンタクトソケット3では、差込み方向Eに沿って見て、前方の接触接続領域30に中間部分31が続いており、この中間部分31には、電気的な線路もしくはケーブル40を取り付けるための取付け部分32が続いている。ケーブル40は、電気的な導体42と、この導体42を取り囲む絶縁体41とを有している。取付け部分32には、図示の構成では、例えば絶縁体圧着部37と線路圧着部38とが設けられている(それぞれ概略的に破線で図示した)。なお、別の取付け形態(例えばろう接、溶接等)も可能である。絶縁体圧着部37によって、ケーブル40の絶縁体41が取付け部分32内に取り付けられ、線路圧着部38によって、電気的な導体42がコンタクト要素1に機械的に取り付けられると共に電気的に接続される。
【0059】
コンタクトボックス35には、斜め外向きに突出した、例えば弾性的に可逆的に変位可能な係止ランス9が配置されている。この係止ランス9は、コネクタ50のハウジング51のハウジングアンダカット53内に係止していてもよく、これによって、コンタクト要素1が、紛失してしまうことがないようにハウジング51のコンタクト室52内に配置されていて、この場合、このコンタクト室52内に係止している。当然ながら、逆の配置形態、つまり、コンタクト要素1に配置されたアンダカットが、ハウジング51に配置されたハウジング係止ランスに係止していることも可能である。
【0060】
当然ながら、コンタクトボックス35は、両方のコンタクトソケット3によって形成されてもよい。また、係止ランス9は1つのコンタクトソケット3から切断加工されていてもよい。
【0061】
コンタクト要素1と対応コンタクト要素62とから成る全体は、特に対応コンタクト要素62がコンタクト要素1内に差し込まれている場合、コンタクトアセンブリ70と呼ぶこともできる。
【0062】
図1に示していない、コネクタ50と対応コネクタ60と完全に嵌合した状態では、締付けスリーブ4が、対応コンタクト要素62によって第2の位置P2に変位させられている。この場合には、少なくとも1つのコンタクトソケット3が、差込み方向Eに対して横方向の所定の力で対応コンタクト要素62に接触していてもよい。
【0063】
図1に良好に認めることができるように、コンタクトソケット3は、締付けスリーブ4が第1の位置P1にある限り、半径方向Rで対応コンタクト要素62から離間させられている。これによって、コンタクト要素1内への対応コンタクト要素62の差込みを充分に力なしに行うことができ、特にコンタクトソケット3を外向きに押し拡げるための力が不要になる。有利には、初期の高い差込み力に繋がってしまう、いわゆる「こじ開け力ピーク」が考慮されない。
【0064】
方向設定を容易にするために、
図1には、差込み方向Eのほかに、半径方向Rと、差込み方向Eを取り囲む周方向Uとが記載してある。
【0065】
図2aには、締付けスリーブ4が第1の位置P1にあるコンタクト要素1の簡略化された概略的な横断面が示してある。図示の構成では、見やすさの理由から係止ランス9を省略してある。対応コンタクト要素62は、まだ差込み開口2の前方に位置しているかもしくは差込み開口2を丁度通過するところである。この差込み開口2は、図示の構成では、コンタクトソケット3の前方の端部によって定められている。したがって、対応コンタクト要素62は、差込みストロークの始まりひいては差込みストロークの所定の長さLの始端に位置している。差込みストロークは、図示の構成では、対応コンタクト要素62が完全に差し込まれている場合、つまり、終端差込みポジションにある場合に終端している。
【0066】
図2aには、コンタクト要素1が、コンタクトソケット3を取り囲むコンタクトボックス35なしで示してある。しかしながら、基本的には、コンタクトソケット3により形成されたボックスが、コンタクトボックス35と見なされてもよい。
【0067】
図2bには、差し込まれた対応コンタクト要素62が終端差込み位置もしくは終端差込みポジションにあり、締付けスリーブ4が第2の位置P2にある、
図2aに示したコンタクト要素1の概略的な横断面が示してある。
【0068】
良好に認めることができるように、対応コンタクト要素62の自由端部64もしくは先端部が、差込み動作時に差込みストロークの所定の長さLの約75%後に突当て要素5に当接させられている。更なる差込み時には、突当て要素5が締付けスリーブ4を差込みストロークに沿って一緒に引きずるかもしくは連行して、コンタクトソケット3に対して相対的に第1の位置P1から第2の位置P2に変位させる。突当て要素5と締付けスリーブ4とは、例えば、比較的剛性的な連結によって作用結合されているか、もしくは対応コンタクト要素62が突当て要素5に当接している場合に、この突当て要素5がその休止位置に対して相対的に僅かしか傾倒させられない程度に作用結合されている。
【0069】
第2の位置P2への締付けスリーブ4の変位によって、コンタクトソケット3は、締付けスリーブ4の直径Dが縮径されている締付けスリーブ4の第1の部分7における内壁に突き当たる。これによって、コンタクトソケット3が半径方向内向きに変位させられ、差込みストロークの終端付近で対応コンタクト要素62に押し付けられる。この場合、差込みストロークの所定の長さLの終端直前では、締付けスリーブ4の第2の部分8における直径Dが一定のままであり、これによって、発生させられた接触力も同じく一定のままである。
【0070】
図3aには、締付けスリーブ4が第1の位置P1にある別のコンタクト要素1の概略的な横断面が示してある。ここでも、見やすさの理由から係止ランス9を図示していない。
図3aに示したコンタクト要素1では、
図2aに示したコンタクト要素1と異なり、締付けスリーブ4に第1の位置固定要素10と第2の位置固定要素10とが形成もしくは配置されているかまたは設けられている。
【0071】
図3bおよび
図3cには、差込みストロークの所定の長さLのそれぞれ異なる部分に沿って対応コンタクト要素62をさらに差し込んだ場合の、
図3aに示したコンタクト要素1が示してある。
【0072】
図3bには、対応コンタクト要素62がコンタクト要素1内に差し込まれていて、このコンタクト要素1の突当て要素5に丁度当接している状態が示してある。このとき、締付けスリーブ4はまだ第1の位置P1にある。
【0073】
その後、
図3cには、差し込まれた対応コンタクト要素62が終端差込み位置にあり、締付けスリーブ4が第2の位置P2にあるコンタクト要素1が示してある。
【0074】
第1の位置固定要素10は、一種の係止フックとして形成されている。この係止フックは、締付けスリーブ4が第1の位置P1にある場合もしくは限り、コンタクトボックス35の第1のアンダカット15に係合している。これによって、対応コンタクト要素62がコンタクト要素1内に差し込まれていない場合に、第1の位置固定要素10が、第1の位置P1から第2の位置P2の方向への締付けスリーブ4の不本意な変位を阻止している。
図3aから認めることができるように、第1の位置固定要素10は突当て要素5に作用結合されている。
図3aでは、単に例示的に係止フックとして形成された第1の位置固定要素10が、例えば突当て要素5と一体に形成されている。第1の位置固定要素10は、差込み方向Eに対してほぼ平行に突当て要素5から差込み開口2の方向に突出している。このとき、係止フックは、第1の位置固定要素10の自由端部に形成されていて、半径方向外向きに突出している。
【0075】
第2の位置固定要素20は、締付けスリーブ4が第2の位置P2にある場合に、この第2の位置P2から第1の位置P1の方向への締付けスリーブ4の変位を阻止するために設けられている。これについては
図3cを参照のこと。
【0076】
図示の構成では、第2の位置固定要素20が二重に存在している。まず、
図3aでは、締付けスリーブ4の、差込み開口2と反対側の端部における下側部分に、半径方向内側に向けられた係止フックが形成されている。この係止フックは、例えば締付けスリーブ4を半径方向内向きに折り曲げることによって形成されてもよい。これに対して相補的に、
図3aにおいて下側のコンタクトソケット3に第2の位置P2の領域で第2の切欠き25が設けられている。この第2の切欠き25内には、締付けスリーブ4が第2の位置P2に達した場合に、係止フックとして形成された第2の位置固定要素20が係合してもよい(
図3c)。
【0077】
図3aおよび
図3cに認めることができるように、この実施形態では、第1の位置固定要素10が、単に例示的に同時に第2の位置固定要素20としても働く。突当て要素5は、対応コンタクト要素62によって当接時に一種のばねのように弾性的に可逆的に差込み方向Eの方向に変位させられてもよい。
図3aにおいて上側のコンタクトソケット3と対応コンタクト要素62との間に配置された第1の位置固定要素10が、コンタクトソケット3の、差込み開口2と反対側の端部を通過し、対応コンタクト要素62による力作用が減じられると、突当て要素5はその休止位置にばね弾性的に戻ることができる(
図3c)。こうして、第1の位置固定要素10の係止フックが、
図3aにおいて上側のコンタクトソケット3の端部に係合することができ、こうして、第2の位置P2から第1の位置P1への締付けスリーブ4の不本意な戻りを阻止することができる。これによって、図示の構成では、第1の位置固定要素10が、同時に第2の位置固定要素20としての二重機能をも有することができる。
【0078】
当然ながら、二重機能を有するただ1つの位置固定要素10,20しか設けられていない実施形態が存在してもよい。しかしながら、各々の位置固定要素が第1の位置固定要素10としてのみ働くかまたは第2の位置固定要素20としてのみ働く実施形態も存在してもよい。
【0079】
図3bに示したように、突当て要素5への対応コンタクト要素62の当接によって、突当て要素5は差込み方向Eに沿って僅かに傾倒させられる。これによって、係止フックとして形成された第1の位置固定要素10が解離される。なぜならば、係止フックが傾倒し、第1のアンダカット15から進出するからである。その結果、差込み方向Eに沿った対応コンタクト要素62の更なる運動によって、締付けスリーブ4を第1の位置P1から第2の位置P2の方向に変位させることができる。
【0080】
例えば保守目的で対応コンタクト要素62をコンタクト要素1から取り外すためには、締付けスリーブ4が第2の位置P2から第1の位置P1に変位させられてもよい。これによって、コンタクトソケット3が締付けスリーブ4の前方の領域6から再び解放され、半径方向外向きにばね弾性的に拡がる。これによって、コンタクトソケット3が対応コンタクト要素62から遠ざけられるかもしくは解離され、次いで、この対応コンタクト要素62をコンタクト要素1から(ほぼ)力なしに取り外すことができる。第2の位置P2から第1の位置P1への締付けスリーブ4の変位時には、対応コンタクト要素62が、例えば突当て要素5によって差込み開口2の方向にすでに連行されてもよい。
【0081】
1つの第2の位置固定要素20を有するコンタクト要素1の場合には、この第2の位置固定要素20が、第2の位置P2から第1の位置P1への締付けスリーブ4の変位前に好適に解除もしくは位置固定解除されなければならない。このことは、例えば、アンダカットに係合している係止フックをこの係合状態から解除する解除工具によって行われてもよい。
【0082】
最後に念のために付言しておくと、コンタクト要素1もしくはコンタクトアセンブリ70もしくはコネクタ50もしくはコネクタアセンブリ100は、例えば自動車またはインバータ、モータ、制御装置、バッテリ、充電装置もしくはジェネレータに使用もしくは利用するために考えられているかもしくは考えられていてもよく、または適しているかもしくは適していてもよいか、または構成されているかもしくは構成されていてもよい。しかしながら、コンタクト要素1もしくはコンタクトアセンブリ70もしくはコネクタ50もしくはコネクタアセンブリ100は、このような使用もしくは利用に限定されるものではない。
【国際調査報告】