(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】特にディスクブレーキ部品用の鋳鉄
(51)【国際特許分類】
C22C 37/00 20060101AFI20220914BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C22C37/00 C
C22C38/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504304
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 IB2020056968
(87)【国際公開番号】W WO2021014404
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012738
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ドゥジック,ボゼナ
(72)【発明者】
【氏名】ビエロンスキー,マリウシュ
(72)【発明者】
【氏名】カルミナーティ,ファビアーノ
(57)【要約】
本発明は、炭素、ケイ素、バナジウム、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、硫黄、リン、錫およびチタンを含むねずみ鋳鉄であって、炭素の重量パーセントが3.70から3.90パーセント、ケイ素の重量パーセントが1.30から2.10パーセント、バナジウムの重量パーセントが0.10から0.15パーセント、マンガンの重量パーセントが0.60から0.90パーセント、ニッケルの重量パーセントが0.05から0.5パーセント;クロムの重量割合は0.20から0.35パーセント;モリブデンの重量割合は0.10パーセント以下;銅の重量割合は0.35パーセント以下;硫黄の重量割合は0.10パーセント以下;リンの重量割合は0.10パーセント以下;錫の重量割合は0.10パーセント以下;チタンの重量割合は0.01パーセント以下;残りは鉄である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、ケイ素、バナジウム、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、硫黄、リン、錫およびチタンを含むねずみ鋳鉄であって、ここで
- 炭素の重量パーセントは3.70から3.90、
- ケイ素の重量パーセントは1.30から2.10、
- バナジウムの重量パーセントは0.10から0.15、
- マンガンの重量パーセントは0.60から0.90、
- ニッケルの重量パーセントは0.05から0.50、
- クロムの重量パーセントは0.20から0.35、
- モリブデンの重量パーセントは0.10以下、
- 銅の重量パーセントは0.35以下、
- 硫黄の重量パーセントは0.10未満、
- リンの重量パーセントは0.10未満、
- 錫の重量パーセントは0.10未満、
- チタンの重量パーセントは0.01未満、
残りの重量は鉄で構成されているねずみ鋳鉄。
【請求項2】
炭素の重量パーセントが3.70パーセントから3.86パーセントであることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳鉄。
【請求項3】
ケイ素の重量パーセントが1.40パーセントから2.08パーセントである請求項1、2または3に記載の鋳鉄。
【請求項4】
バナジウムの重量パーセントが0.12パーセントから0.14パーセントである、請求項1から3のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項5】
マンガンの重量パーセントが0.63パーセントから0.85パーセントである、請求項1から4のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項6】
ニッケルの重量パーセントが0.06パーセントから0.47パーセントであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項7】
クロムの重量パーセントが0.21パーセントから0.35パーセントであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項8】
銅の重量パーセントが0.19パーセントから0.35パーセントであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項9】
錫の重量パーセントが0.09パーセント以下である、請求項1から8のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項10】
チタンの重量パーセントが0.0079パーセントから0.01パーセントであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項11】
炭素3.86重量パーセント、シリコン1.85重量パーセント、バナジウム0.12重量パーセント、マンガン0.63重量パーセント、ニッケル0.06重量パーセント、0.21重量パーセントのクロム、0.002重量パーセントのモリブデン、0.19重量パーセントの銅、0.065重量パーセントの硫黄、0.04重量パーセントのリン、0.023重量パーセントの錫、0.0079重量パーセントのチタンで、残りの重量は鉄である、請求項1から10のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項12】
炭素3.70重量パーセント、シリコン2.08重量パーセント、バナジウム0.12重量パーセント、マンガン0.658重量パーセント、ニッケル0.47重量パーセント、0.255重量パーセントのクロム、0.0312重量パーセントのモリブデン、0.238重量パーセントの銅、0.0463重量パーセントの硫黄、0.031重量パーセントのリン、0.038重量パーセントの錫、0.01重量パーセントのチタン、残りの重量は鉄である、請求項1から11のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項13】
タングステンをさらに含み、タングステンの重量パーセントが0.10から0.14であり、好ましくは0.12パーセントである請求項1から12のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項14】
炭素3.75重量パーセント、ケイ素1.40重量パーセント、バナジウム0.14重量パーセント、タングステン0.12重量パーセント、マンガn0.85重量パーセント、ニッケル0.1重量パーセント、0.35重量パーセントのクロム、0.1重量パーセントのモリブデン、0.35重量パーセントの銅、0.1重量パーセント未満の硫黄、0.1重量パーセント未満のリン、0.09重量パーセントの錫、0.01重量パーセントのチタン、残りの重量が鉄である請求項13に記載の鋳鉄。
【請求項15】
前記鋳鉄のマトリックスがパーライト質、または微細ラメラ質であり、好ましくは、鉄マトリックスの重量に対するパーライトの重量パーセントが95パーセント以下である、請求項1から14のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項16】
フェライトを、鉄マトリックスの重量に対して5パーセントより低い重量パーセント、好ましくは1パーセントに等しい重量パーセントで含む、請求項1から15のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項17】
鉄マトリックスの重量に対して1パーセント以下の重量パーセントのセメンタイトおよび遊離炭化物を含む、請求項1から16のいずれか一つに記載の鋳鉄。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の鋳鉄製の制動面からなるディスクブレーキ用ブレーキディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にブレーキディスク製造用鋳鉄、および当該鋳鉄を用いたディスクブレーキ用ブレーキディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ねずみ鋳鉄製のブレーキディスクは、時間の経過とともにブレーキバンドが摩耗する。必然的に、そのような現象は、ディスクの持続時間に影響を与える。
【0003】
そのため、自動車分野、特に高性能車では、耐摩耗性の高い鋳鉄製ブレーキディスクの製造の必要性が大きく感じられる。
【0004】
耐摩耗性の向上は、環境中に放出される金属粉の低減につながる。
【0005】
しかし、ねずみ鋳鉄製のディスクの耐摩耗性を高めるには、ブレーキディスクが受ける強度の高い機械的および熱的応力を考慮する必要がある。このような応力は、ブレーキバンドに高温をもたらし、ブレーキ性能の低下、さらにはブレーキバンドにクラックの形成をもたらす可能性がある。
【0006】
また、ねずみ鋳鉄製のブレーキディスクは、その耐久性を高めるために、高い耐食性を有することが必要であると考えられている。したがって、耐摩耗性の向上が耐食性に悪影響を及ぼしてはならない。
【0007】
当技術分野では、高い耐摩耗性と機械的耐性、耐熱性、耐食性などの高性能を同時に兼ね備えることができるねずみ鋳鉄の解決策は知られていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、先行技術を参照して述べた欠点を克服したねずみ鋳鉄を提供することである。
【0009】
このような欠点は、請求項1に係るねずみ鋳鉄によって克服される。
【0010】
本発明による鋳鉄の他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【0011】
本発明の更なる特徴及び利点は、その好ましい非限定的な実施形態の以下に与えられる説明から、より明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的な実施形態によれば、本発明のねずみ鋳鉄は、合金中に、炭素、ケイ素、バナジウム、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、硫黄、リン、錫およびチタンを含む。
【0013】
このような合金元素は、鋳鉄の全重量に対する重量割合が以下の範囲となるように含有される。
- 炭素3.70から3.90重量パーセント。
- ケイ素 1.30から2.10重量パーセント。
- バナジウム 0.10から0.15重量パーセント。
- マンガン 0.60から0.90重量パーセント。
- ニッケル 0.05~0.50重量パーセント。
- クロム 0.20~0.35重量パーセント。
- モリブデンは0.10重量パーセント以下。
- 銅 0.35重量パーセント以下。
- 硫黄 0.10重量パーセント未満。
- リン0.10重量パーセント未満。
- 錫0.10重量パーセント未満。
- チタン0.01重量パーセント以下。
残りの重量は鉄である。
【0014】
好ましくは、炭素の重量パーセントは、3.70、3.86パーセントである。
【0015】
好ましくは、シリコンの重量パーセントは1.40から2.08パーセントである。
【0016】
好ましくは、バナジウムの重量パーセントは0.12から0.14パーセントである。
【0017】
好ましくは、マンガンの重量パーセントは0.63から0.85パーセントである。
【0018】
好ましくは、ニッケルの重量パーセントは0.06から0.47パーセントである。
【0019】
好ましくは、クロムの重量パーセントは0.21から0.35パーセントである。
【0020】
好ましくは、銅の重量パーセントは0.19から0.35パーセントである。
【0021】
好ましくは、錫の重量パーセントは0.09パーセント以下である。
【0022】
好ましくは、チタンの重量パーセントは0.0079から0.01パーセントである。
【0023】
第1の好ましい実施形態によれば、ねずみ鋳鉄は、以下の組成を有する。
- 炭素3.86重量パーセント。
- シリコン1.85重量パーセント。
- バナジウム0.12重量パーセント。
- マンガン0.63重量パーセント。
- ニッケル0.06重量パーセント。
- クロム0.21重量パーセント。
- モリブデン0.002重量パーセント。
- 銅0.19重量パーセント。
- 硫黄0.065重量パーセント。
- リン0.04重量パーセント。
- 錫0.023重量パーセント。
- チタン0.0079重量パーセント。
残りの重量は鉄である。
【0024】
第2の好ましい実施形態によれば、ねずみ鋳鉄は、以下の組成を有する。
- 炭素3.70重量パーセント。
- 珪素2.08重量パーセント。
- バナジウム0.12重量パーセント。
- マンガン0.658重量パーセント。
- ニッケル0.47重量パーセント。
- クロム0.255重量パーセント。
- モリブデン0.0312重量パーセント。
- 銅0.238重量パーセント。
- 硫黄0.0463重量パーセント。
- リン0.031重量パーセント。
- 錫0.038重量パーセント。
- チタン0.01重量パーセント。
残りの重量は鉄である。
【0025】
有利には、ねずみ鋳鉄は、0.10から0.14パーセント、好ましくは0.12パーセントに等しい重量パーセントで、タングステンをさらに含むことができる。
【0026】
第3の特に好ましい実施形態によれば、ねずみ鋳鉄は、以下の組成を有する。
- 炭素3.75重量パーセント。
- シリコン1.40重量パーセント。
- バナジウム0.14重量パーセント。
- タングステン0.12重量パーセント。
- マンガン0.85重量パーセント。
- ニッケル0.1重量パーセント。
- クロム0.35重量パーセント。
- モリブデン0.1重量パーセント。
- 銅0.35重量パーセント。
- 硫黄0.1重量パーセント未満。
- リン0.1重量パーセント未満。
- 錫0.09重量パーセント。
- チタン0.01重量パーセント。
残りの重量は鉄である。
【0027】
好ましくは、鋳鉄の鉄系マトリックスは、パーライト型または微細ラメラ型である。特に、鉄系マトリックスの重量に対するパーライトの重量パーセントは95パーセント以上である。
【0028】
好ましくは、ねずみ鋳鉄は、鉄マトリックスの重量に対して5パーセント未満の重量パーセントでフェライトからなる。さらに好ましくは、鉄マトリックスの重量に対するフェライトの重量パーセントは、1パーセントに等しい。
【0029】
特に、ねずみ鋳鉄は、鉄マトリックスの重量に対して1パーセント以下の重量パーセントのセメンタイトおよび遊離炭化物からなる。
【0030】
有利なことに、本発明の鋳鉄は、ディスクブレーキの部品の製造に使用することができる。
【0031】
例えば、鋳鉄は、任意のタイプのディスクブレーキ用のブレーキディスクの少なくとも1つのブレーキバンドを製造するために使用することができる。
【0032】
標準的な組成のねずみ鋳鉄からなるブレーキディスクと、本発明に該当する3つの異なる組成を有する3つの鋳鉄からなるブレーキディスクとを比較する実験的摩耗試験が行われた。
【比較例】
【0033】
以下の組成を有するねずみ鋳鉄を用いて、ブレーキディスクを得た。炭素3.74重量パーセント;ケイ素1.65重量パーセント;マンガン0.55重量パーセント;ニッケル0.1重量パーセント;クロム0.15重量パーセント;モリブデン0.1重量パーセント;銅0.2重量パーセント;硫黄0.1重量パーセント未満;リン0.08重量パーセント未満;錫0.023重量パーセント;チタン0.09重量パーセント;残りは重量で鉄。
【0034】
鉄系マトリックスは、1重量パーセントのフェライト、98.5重量パーセントのパーライトおよび0.5重量パーセントの炭化物からなる。
【0035】
このようなねずみ鋳鉄製のブレーキディスクを、以下、比較ディスクと呼ぶ。
【実施例1】
【0036】
比較ディスクと同一であるが、本発明によるねずみ鋳鉄を使用し、以下の第1の組成を有する、第1のブレーキディスクを得た。炭素3.86重量パーセント;ケイ素1.85重量パーセント;バナジウム0.12重量パーセント;マンガン0.63重量パーセント;ニッケル0.06重量パーセント;クロム0.21重量パーセント;モリブデン0.002重量パーセント;銅0.19重量パーセント;硫黄0.065重量パーセント;リン0.04重量パーセント;錫0.023重量パーセント;チタン0.0079重量パーセント;残りが鉄。
【0037】
鉄系マトリックスは、1重量パーセントのフェライト、98重量パーセントのパーライト、1重量パーセントの炭化物からなる。
【0038】
以下、このようなねずみ鋳鉄製のブレーキディスクをディスク1と称する。
【実施例2】
【0039】
比較ディスクと同一であるが、本発明によるねずみ鋳鉄を使用し、以下の第2の組成を有する第2のブレーキディスクを得た。炭素3.70重量パーセント;ケイ素2.08重量パーセント;バナジウム0.12重量パーセント;マンガン0.658重量パーセント;ニッケル0.47重量パーセント;クロム0.255重量パーセント;モリブデン0.0312重量パーセント;銅0.238重量パーセント;硫黄0.0463重量パーセント;リン0.031重量パーセント;錫0.038重量パーセント;チタン0.01重量パーセント;残りは鉄。
【0040】
鉄系マトリックスは、1重量パーセントのフェライト、98重量パーセントのパーライト、1重量パーセントの炭化物から構成されている。
【0041】
以下、このようなねずみ鋳鉄製のブレーキディスクをディスク2と称する。
【実施例3】
【0042】
比較ディスクと同一であるが、本発明によるねずみ鋳鉄を使用し、以下の第3の組成を有する第3のブレーキディスクを得た。炭素3.75重量パーセント;ケイ素1.40重量パーセント;バナジウム0.14重量パーセント;タングステン0.12重量パーセント;マンガン0.85重量パーセント;ニッケル0.1重量パーセント;クロム0.35重量パーセント;モリブデン0.1重量パーセント;銅0.35重量パーセント;硫黄0.1重量パーセント未満;リン0.1重量パーセント未満;錫0.09重量パーセント。チタン0.01重量パーセント。残りが鉄。
【0043】
鉄系マトリックスは、約1重量パーセントのフェライト、97.5重量パーセントのパーライトおよび1重量パーセント未満の炭化物からなる。
【0044】
以下、このようなねずみ鋳鉄製のブレーキディスクをディスク3と称する。
【0045】
実証実験
【0046】
比較用ブレーキディスクと本発明による3つのブレーキディスク(ディスク1、2、3)は、ブレーキシステムの分野でよく知られている技術試験を5回繰り返して実施された。このような試験の終わりに、3つのディスクの重量損失の低減は、基準ディスクと比較して50-55パーセントであることが浮かび上がった。
【0047】
このような試験から、等しい条件下で、本発明によるブレーキディスク(ディスク1、2及び3)は、比較ディスクが経験する重量損失よりも著しく小さい重量損失を経験したことが浮かび上がった。平均して、本発明によるブレーキディスク(ディスク1、2及び3)は、比較ディスクのそれと比較して、50パーセント未満の重量損失を有していた。
【0048】
これは、本発明によるねずみ鋳鉄が、参照として取られる標準的なねずみ鋳鉄よりも大きな耐摩耗性を提供することを意味する。
【0049】
試験結果の分析から、ディスク3は比較ディスクよりも重量損失の減少が顕著であることも判明した。このことから、このようなディスク3の製造に用いられるねずみ鋳鉄は、より顕著な耐摩耗性を得ることを可能にしていることが分かる。
【0050】
同じブレーキディスク(比較ディスク、ディスク1、ディスク2、ディスク3)について、さらに機械的な観点と機能的なパラメーターの特徴を調べた。その結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1に示すデータの比較から、機械的耐性、耐熱性および耐食性の点で、ディスク1、2および3の性能は、標準的なねずみ鋳鉄を用いて作成したブレーキディスクの性能と実質的に同等であることが判明した。
【0053】
このことはすべて、比較ディスクの製造に使用された標準的なねずみ鋳鉄に関して、本発明によるねずみ鋳鉄は、炭素(黒鉛)、ケイ素の重量パーセント、クロムおよびモリブデンの重量パーセントの合計に大きな変化を伴わないという事実によっても間接的に確認されている。
【0054】
多量の炭素(グラファイト)により、本発明による鋳鉄は高い熱伝導性を有し、これにより制動ショックの間に高い熱交換を行うことができる。それにより、ブレーキシステムを多用した後でも、熱応力によるクラックの危険性が著しく低減される。また、本発明に係る鋳鉄は、高い減衰能力を有し、これは、亀裂の形成及び拡散に対する抵抗力を高めることに寄与する。
【0055】
本発明の鋳鉄に含まれるケイ素の割合により、黒鉛化効果が得られ、セメンタイトや炭化物の生成を防止することができる。
【0056】
さらに、クロムとモリブデンは、金属マトリックス中のラメラパーライトの形成を安定化させる。
【0057】
ブレーキシステムに適したブレーキディスクの設計中に使用される標準試験の5回の繰り返しの終わりに、比較ディスクとディスク1,2及び3と関連して使用されるパッドの重量損失も次に測定された。
【0058】
データ比較から、ディスク1、2、3は、比較ディスクによって引き起こされる摩耗と実質的に同等である、パッドの摩耗を引き起こすことが浮かび上がった。したがって、耐摩耗性の増加は、本発明による鋳鉄を使用して作られたディスクに関連するパッドの摩耗の増加を引き起こさない。
【0059】
説明から理解できるように、本発明のねずみ鋳鉄は、先行技術に示された欠点を克服することを可能にする。
【0060】
特に、本発明による鋳鉄及び当該鋳鉄からなる関連するブレーキディスクは、参考としてとられる標準的なねずみ鋳鉄よりも有意に大きな耐摩耗性を提供する。このような増加は、機械的耐性、耐熱性、及び耐腐食性の悪化をもたらさない。
【0061】
実際、本発明によるねずみ鋳鉄からなるブレーキディスクの性能は、機械的耐性、耐熱性、耐食性の点で標準的なねずみ鋳鉄からなるブレーキディスクの性能と同等である。
【0062】
また、本発明によるねずみ鋳鉄によって確保された耐摩耗性の向上も、パッドの摩耗を大きく変化させないことが明らかになった。実際、重量損失から得られるデータから、ディスク1、2及び3に関連するパッドは、比較ディスクに関連するパッドと実質的に(重量損失の点で)同様の方法で摩耗していることが浮かび上がった。特に、比較ディスクと比較して、ディスク3の場合、パッドの摩耗の減少が実際に見られる。
【0063】
特定の偶発的なニーズを満たすために、当業者は、上述した鋳鉄およびブレーキディスクにいくつかの変更および変形を加えることができ、これらはすべて以下の請求項によって定義される本発明の範囲に含まれるものである。
【国際調査報告】