(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュールおよびその形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/607 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
H01L21/607 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504702
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2020070879
(87)【国際公開番号】W WO2021013967
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(57)【要約】
本発明は、超音波溶接を用いることによってパワー半導体モジュール(10)を形成するために端子(24)を基板(12)に接続する方法に関する。端子(24)は、端子脚(26)に位置する第1の接続領域(28)を含む。第1の接続領域(28)は端子(24)を基板(12)に接続するように適合される。端子(24)はさらに第2の接続領域(32)を含み、第2の接続領域(32)は、端子脚(26)において第1の接続領域(28)の反側に位置する。基板(12)は、端子(12)の第1の接続領域(28)に接続されるように適合された第3の接続領域(30)を含む。当該方法は、a)第1の接続領域(28)を第3の接続領域(30)に接触させるステップと、b)超音波溶接工具(38)を用いて第2の接続領域(32)に対して作用することによって、端子(24)を基板(12)に接続するステップと、ステップc)を実行した後、平滑化するステップを実行することによって第2の接続領域(32)を平滑化するステップc)とを含む。ステップc)の後、当該方法はさらに、少なくとも1つの電気接続部を第2の接続領域(32)に接続するステップd)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶接を用いることによってパワー半導体モジュール(10)を形成するために端子(24)を基板(12)に接続する方法であって、前記端子(24)は、端子脚(26)に位置する第1の接続領域(28)を含み、前記第1の接続領域(28)は、前記端子(24)を前記基板(12)に接続するように適合され、前記端子(24)はさらに、第2の接続領域(32)を備え、前記第2の接続領域(32)は、前記端子脚(26)において前記第1の接続領域(28)の反対側に位置し、前記基板(12)は、前記第1の接続領域(28)に接続されるように適合された第3の接続領域(30)を含み、前記方法は、
a)前記第1の接続領域(28)を前記第3の接続領域(30)に接触させるステップと、
b)超音波溶接工具(38)を用いて前記第2の接続領域(32)に対して作用することによって前記端子(24)を前記基板(12)に接続するステップと、
c)ステップb)を実行した後、平滑化するステップを実行することによって前記第2の接続領域(32)を平滑化するステップとを含み、ステップc)の後、前記方法はさらに、
d)少なくとも1つの電気接続部を前記第2の接続領域(32)に接続するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ステップd)は、ワイヤボンド(34)を前記第2の接続領域(32)に溶接するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)は材料除去ステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料除去ステップは、研削、研磨、平坦化、せん断のうち少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップc)は、圧力および熱のうち少なくとも1つを前記第2の接続領域(32)に加えるステップを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
端子(24)および基板(12)から形成される、パワー半導体モジュール(10)の半製品(36)であって、前記端子(24)は、端子脚(26)に位置する第1の接続領域(28)を含み、前記第1の接続領域(28)は、前記端子(24)を前記基板(12)に接続するように適合され、前記端子(24)はさらに、第2の接続領域(32)を含み、前記第2の接続領域(32)は、前記端子脚(26)において前記第1の接続領域(28)の反対側に位置し、前記基板(12)は、前記第1の接続領域(28)に接続されるように適合された第3の接続領域(30)を含み、前記第1の接続領域(28)は前記第3の接続領域(30)に接続され、前記第2の接続領域(32)は、平滑化された表面を有し、電気接続部は前記第2の接続領域(32)に接続される、半製品(36)。
【請求項7】
パワー半導体モジュール(10)であって、前記パワー半導体モジュール(10)は、請求項6に記載の半製品(36)から形成される、パワー半導体モジュール(10)。
【請求項8】
パワー半導体モジュール(10)を形成する方法であって、前記方法は請求項1から5のいずれか1項に記載の方法を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、パワー半導体モジュールを形成する方法に関し、特に、パワー半導体モジュールの形成過程において端子を基板に溶接することに関する。本発明はさらに、パワー半導体モジュールの半製品に関する。本発明はさらに、パワー半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
パワー半導体モジュールは、一般に、当該技術分野において広く公知である。端子を基板または基板金属被覆などの導電性構造に接続するためにさまざまな接続技術がある。
【0003】
超音波溶接とも称される超音波溶接(ultrasound welding:USW)などの溶接は、信頼性が高く高温のパワーエレクトロニクスモジュールを製造するために使用され得る基板金属被覆に端子を接続するための公知の技術である。特に、超音波溶接は、銅金属被覆が施されたセラミック基板に銅製の端子を接合するために広く用いられている。
【0004】
好ましくは端子脚上面に溶接力を加えることによって溶接ステップを実行した後、溶接工具の力によってこの面にローレットパターンが施される。
【0005】
代替例として、レーザ溶接を用いて端子を基板または基板金属被覆に接合することが公知である。しかしながら、この技術について考察すると、異種材料同士を接続する際に脆い金属間相が形成されるリスクがある。
【0006】
DE102014104496A1は、パワー半導体モジュールの接続素子を溶接によって導体トラックに接続するための装置および方法を記載する。当該装置は、基板の配置用の当接部を含む。当接部は第1の部分的当接部および第2の部分的当接部を有する。第1の部分的当接部は、50kN/mm2~300kN/mm2の弾性係数を有する金属成形体であり、第2の部分的当接部は、10N/mm2~500N/mm2の弾性係数を有する弾性成形体である。第2の部分的当接部上に下部要素が載っている。当該装置はさらに、下部要素を当接部に固定するための保持装置と、ソノトロードと、接続要素を基板に対して位置決めするための位置決め装置とを含む。
【0007】
US2011/058342A1は、電子部品が搭載された複数のリードフレームを積層し、この積層体を樹脂で封止することによって得られる多層フレームを有する半導体デバイスである。電子部品が搭載されたリードフレームと、当該リードフレームの上に積層されてその上にさらに電子部品が搭載されたリードフレームとの間の層間距離は、リードフレームの面から電子部品の上面までの距離よりも短い。
【0008】
JP2015146393Aは、下層ボンディングワイヤを被接合部材(電極または配線パターン)に超音波接合することによって下層超音波接合部を形成することを記載している。さらに、下層超音波接合部の上側に上層ボンディングワイヤを重ねた状態で超音波接合によって接合することにより、上層超音波接合部を形成する。上層ボンディングワイヤを切断することにより、上層超音波接合部の配線方向下流側に切込みが設けられる。このとき、切込みの下方には、当該切込みを下側から支持するための支持部が設けられている。
【0009】
このように、先行技術は、特に、パワー半導体モジュールを形成する過程において、無理な力を加えることなく確実に端子を基板に接続することに関して依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの不利点を少なくとも部分的に克服するための解決策を提供することである。特に本発明の目的は、無理な力を加えることなく確実に端子を基板に接続することでパワー半導体モジュールのための高品質な配置をもたらすための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、独立請求項1の特徴を有するパワー半導体モジュールを形成するために端子を基板に接続する方法によって少なくとも部分的に解決される。これらの目的はさらに、独立請求項6の特徴を有するパワー半導体モジュールの半製品によって、独立請求項7の特徴を有するパワー半導体モジュールによって、さらに、独立請求項8の特徴を有するパワー半導体モジュールを形成する方法によって、少なくとも部分的に解決される。有利な実施形態は従属請求項、さらなる記載、および添付の図面において提示される。記載される実施形態は、単独で、またはそれぞれの実施形態を任意に組合わせることで、明確に排除されない限り、本発明の特徴を提供し得る。
【0012】
超音波溶接を用いることによってパワー半導体モジュールを形成するために端子を基板に接続する方法を記載する。端子は、端子脚に位置する第1の接続領域を備える。第1の接続領域は、端子を基板に接続するように適合される。端子はさらに、第2の接続領域を備え、第2の接続領域は、端子脚において第1の接続領域の反対側に位置する。基板は、端子の第1の接続領域に接続されるように適合された第3の接続領域を備える。当該方法は、
a)第1の接続領域を第3の接続領域に接触させるステップと、
b)超音波溶接工具で第2の接続領域に対して作用することによって端子を基板に接続するステップと、
c)ステップb)を実行した後、平滑化するステップを実行することによって第2の接続領域を平滑化するステップとを含み、
ステップc)の後、当該方法はさらに、
d)少なくとも1つの電気接続部を第2の接続領域に接続するステップを含む。
【0013】
このような方法は、特に、端子を基板または基板金属被覆に確実かつ堅固に接続することによって高品質な配置をもたらすことに関して、先行技術の解決策に勝る有意な利点を提供する。
【0014】
このように、本発明は、パワー半導体モジュールを形成するために端子を基板に接続する方法を参照する。このため、当該方法は、パワー半導体モジュールの製造過程で実行されるのに適しているとともに当該製造過程で実行されるように意図されたものであり、詳細には、端子を基板と、これにより特に基板金属被覆とに接続することに対処するものである。
【0015】
接続とは、本発明の意味においては、これにより端子を基板または基板金属被覆に機械的および電気的に接続することを意味するものとする。
【0016】
端子は概してL型形を有してもよく、その下側部分は、溶接領域などのその第1の接続領域で基板に接続される。端子は、本発明の意味では、600μm以上、例示的には1000μm以上の厚さと、2mm以上の幅とを有し得る。さらに、溶接領域などの接続領域は、2mm×2mm以上の寸法を有し得る。端子の断面は矩形であってもよく、L字形のうち異なる配向で整列させた2つの部分の間の角度は直角であり得るかまたは90°を超える角度であり得る。
【0017】
端子とは対照的に、ワイヤボンドについての典型的なパラメータは、400μm以下の直径と、0.5mm×1mm以下の溶接面積などの接続面積とを含む。接続領域と隣接部分との間の角度は斜角であってもよく、たとえば90度をはるかに上回る角度であってもよく、断面は円形であってもよい。
【0018】
さらに、端子とは対照的にリボンに関して、典型的なパラメータは、300μm以下の厚さと、2mm以上の幅と、0.5mm×2mm以下の溶接面積などの接続面積とを含む。接続領域と隣接部分との間の角度は斜角であってもよく、たとえば90度をはるかに上回る角度であってもよく、断面は長方形であってもよい。
【0019】
パワー半導体モジュールは、当該技術分野において公知の機能を有し得る。たとえば、製造されるべきパワー半導体モジュールは、セラミック基板上に設けられるような金属被覆を含み、この金属被覆は、当該金属被覆に接続されるべき端子をそれぞれのパワー半導体デバイスと電気的に接続するように適合される。
【0020】
基板金属被覆上には、チップとも称されるパワー半導体デバイスも配置される。このようなパワー半導体デバイスは、一般に、当該技術分野で公知のとおりに形成され得るとともに、とりわけ、MOSFETおよび/もしくはIGBTなどのトランジスタまたはスイッチをそれぞれ備え得るとともに、ならびに/または、複数のパワー半導体デバイスはダイオードを備え得る。パワー半導体デバイスは、それぞれ相互接続されてもよく、このため、金属被覆と電気的接触、たとえばガルバニック接触、してもよい。
【0021】
基板は、概して、セラミック主層である主層から、ならびに上部金属被覆および下部金属被覆から形成され得る。たとえば、基板がAl/AlN/Al基板であり、このため、AlN主層とアルミニウムの上部金属被覆および下部金属被覆とを有することが規定され得る。これにより、高サイクリング信頼性が可能となり、銀イオン移動の問題は生じない。しかしながら、上部金属被覆および/または下部金属被覆として銅金属被覆が好ましい場合もある。
【0022】
互いに接続されるべき端子および金属被覆に関して、端子が第1の接続領域を有し、基板または基板金属被覆がそれぞれ第3の接続領域を有することが規定されている。
【0023】
したがって、第1の接続領域は、端子のうち基板金属被覆に接続されるように意図されている領域であり、これに対応して、第3の接続領域は、基板または基板金属被覆のうち端子に接続されるように意図されている領域である。
【0024】
実際には、パワー半導体モジュールの高度先進設計では、端子を基板に溶接する必要があり、このため、特に第1の接続領域を第3の接続領域に溶接する必要があることも公知である。一例として、銅ベースの端子をセラミック基板のアルミニウム金属被覆に接続することが公知である。さらに、銅金属被覆が施されたセラミック基板上に、CuNiSiプレスピン補助端子などの硬質の銅端子を接続することが必要となる可能性もある。しかしながら、使用される材料の組合わせとは無関係に、超音波溶接は、端子を基板に接続するための好ましい選択肢である。これは、信頼性の高い高温のパワーエレクトロニクスモジュールを形成するために端子を基板に接続するための上述のような技術が公知であるという事実に起因し得る。特に、超音波溶接は、たとえば、銅金属被覆が施されたセラミック基板に銅製の端子を接合するために広く用いられている。
【0025】
さらに、端子が第2の接続領域を有し、第2の接続領域が端子脚において第1の接続領域の反対側に位置することが規定されている。このため、第2の接続領域は、端子または端子脚にそれぞれ溶接エネルギを加えるために溶接工具の作用力を受けるように適合され得る。
【0026】
端子を基板または基板金属被覆にそれぞれ接続する方法に関して、さらに、この方法が以下のステップを含むことが規定される。
【0027】
第1に、当該方法のステップa)に従うと、当該方法は、第1の接続領域を第3の接続領域に接触させるステップを含む。このステップに従うと、端子は、これにより、たとえば、基板金属被覆に接続されるべき最終位置に位置決めされる。このステップは、たとえば手動で、または自動位置決め装置などによって自動で、実現され得る。
【0028】
さらに、当該方法のステップb)に従うと、当該方法は、溶接工具で第2の接続領域に対して作用することによって端子を基板に接続するステップを含む。このステップは、概して、従来の超音波溶接を用いることによって、たとえば、ソノトロードを用いることによって、および/または、溶接エネルギを端子脚に加えることによって、当該技術分野で公知のとおりに実行され得る。
【0029】
詳細には、端子が最終位置、すなわち端子が基板に接続されるべき位置、に位置する場合、このため、ステップa)を実行した後、溶接工具が設けられる。ソノトロードなどの溶接工具は、溶接エネルギが第2の接続領域において端子脚に加えられるように位置決めおよび操作される。第2の接続領域はほとんどが端子脚の上側にある。
【0030】
使用される溶接パラメータは、適切な態様で選択され得るとともに、先行技術で使用されるこれらのパラメータに対応し得る。概して、溶接パラメータは、端子の材料、基板の材料、または基板金属被覆にそれぞれ依存し得るものであり、このため、第1の接続領域、第2の接続領域および第3の接続領域の材料には依存し得ない。さらに、端子脚の厚さは、溶接パラメータと、これにより第1の接続領域と第3の接続領域との間の距離とに影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
しかしながら、接続技術として超音波溶接を用いると、特にワイヤボンド接続などのさらに別の電気接続部を第2の接続領域に接続するために当該第2の接続領域が用いられるべき場合に不利点を招く可能性がある。これに関して、特に超音波溶接を用いることによって、溶接工具によって溶接エネルギを加えるために用いられた表面が比較的粗いことが判明した。より詳細には、ソノトロードなどの溶接工具のローレットパターンによって第2の接続領域と、これにより、特に端子脚上面とが変形され得る可能性がある。
【0032】
このような状況において、或る種のローレットパターンが端子または端子脚の表面に加えられるように、溶接ステップを実行した後の第2の接続領域が変形されることが判明した。
【0033】
さらに、本明細書に記載の方法に従うと、方法ステップc)によれば、当該方法は、平滑化ステップを実行することによって第3の接続領域を平滑化するさらなるステップを含むことが規定されている。
【0034】
表面の平滑化は、溶接ステップを実行した直後に実行されてもよく、または、全く異なる単独のプロセスステップとして実行されてもよい。さらに、平滑化は、1つのステップを用いることによって実現されてもよく、または、特に後続の複数のステップを用いることによって実現されてもよい。このため、ステップc)の後、第2の接続領域は、ステップc)前の第2の接続領域と比較してより平滑である。
【0035】
特に、このステップは、超音波溶接によって端子を基板に接続する先行技術に勝る有意な利点を提供し得る。
【0036】
特に、端子脚の表面と、これにより第2の接続領域とを平滑化することにより、ローレット構造などのそれぞれの粗面が除去され得る。代わりに、表面が平滑になる。ここで、第2の接続領域と、これにより、大抵の場合には端子脚の上面とを平滑化することにより、第2の接続領域と、これにより、特に端子脚の上側表面とに電気接続部を接続するさらなるステップを提供するのに極めて優れた特性が生じ得ることが判明した。
【0037】
したがって、このステップは、第2の接続領域にワイヤボンドなどの電気接続部を固定するように当該第2の接続領域が設計され得ることを可能にする。これにより、パワー半導体モジュールの電気回路のさらに別の部分を端子に接続することが可能となり得る。たとえば、端子を電気回路のパワー半導体デバイスに接続する第2の接続領域にワイヤボンドを固定することが規定され得る。このステップは、端子を基板に接続するための溶接ステップの後に実行されるステップであり得る溶接ステップによって実現され得る。
【0038】
したがって、本方法は、たとえば第2の接続領域においてワイヤボンドを接続するためにさらに別の溶接ステップが行われる場合に、端子脚の構造と、特に第2の接続領域の構造とが有する特性が劣化する原因となる一般に発生する超音波溶接の影響を回避する。言換えれば、電気接続部を接合するさらに別の接合ステップを行なうために、たとえば超音波溶接を行った後の脚上面は配置されないか、または配置されることはほとんどまれである。
【0039】
このような一般に発生する影響とは対照的に、本発明は、超音波溶接またはレーザ溶接によって端子を導電性構造に接続する際に溶接工具と接触する表面が、この領域にさらに別の電気接点を電気的に接触させることを可能にするのに十分に適した構造を備えることを可能にする。これは、端子を電気回路のさらに別の構成要素、たとえば特にパワー半導体デバイスなど、に接続するために実現され得る。
【0040】
このため、ワイヤボンドなどの、端子と電気接続部との間の極めて高品質の接合が達成され得ることが可能となり得る。
【0041】
したがって、それぞれの表面が極めて確実に接続され得ることとなり、これにより、パワー半導体モジュールの高い作業能力が可能となり得ることで、低品質の接合に起因する破損が回避され得る。
【0042】
これとは別に、パワー半導体モジュールは、端子と基板または基板金属被覆との間の安定した確実な接続により、高い安全性で機能し得る。
【0043】
上述の利点はさらに、端子自体がパワー半導体デバイスとの接続に用いられ得るという点で、製造されるパワー半導体モジュールの設計およびパッケージの有意な改善を可能にする。結果として、先行技術に従って金属被覆に接続された電気接続部を平滑化された表面上の端子に接続することができるようになるという点で、より高い設計自由度を達成することによって、金属被覆の表面などの基板表面が最適化され得る。その結果、金属被覆上に得られる面積を、より多くのパワー半導体デバイスを配置するために用いることができ、これにより、パワー半導体モジュールが特に優れた性能および効率で動作することが可能となる。
【0044】
このため、本発明は、所与のフットプリントを有するパワーモジュールパッケージの設計が、パワー半導体デバイスに必要な基板金属被覆の面積と、ワイヤボンド、端子、処理マージンのための空間などのさらに別の構成要素に必要な基板金属被覆の面積との間のトレードオフになっているという、パワー半導体モジュールの製造過程における課題に対する解決策を提供する。
【0045】
このように、本明細書に記載の方法が、パワー半導体モジュールを形成するための先行技術の解決策に勝る有意な利点を提供することが分かる。
【0046】
このため、本発明はまた、端子を基板に接続する方法を含む、パワー半導体モジュールを形成する方法に関し、それぞれの特徴および利点に関して、端子を基板に接続する方法を参照する。
【0047】
したがって、パワー半導体モジュールを形成するこの方法はさらに、先行技術において一般に公知であるように、パワー半導体デバイス、内部のおよび/または外部の電気接続部、ならびに、保護手段、たとえば1つ以上の金型本体および/またはハウジングなどを設けるステップを含み得る。
【0048】
上述の記載によれば、パワー半導体モジュールの製造過程などの、本明細書に記載される方法は、ステップc)の後、さらに、
d)少なくとも1つの電気接続部を第2の接続領域に接続するステップを含む。
【0049】
これは、特に、端子脚または第2の接続領域を平滑化した後、電気接続部が第2の接続領域に確実に接続され得るという事実を利用するものである。実際には、電気接続部の長期安定性が達成され得るとともに、さらに、パワー半導体モジュールの効率が改善され得る。
【0050】
これに関して、上述の利点は、ステップd)がワイヤボンドを第2の接続領域に溶接するステップを含む場合に特に有効である。ワイヤボンドは、たとえば、銅、アルミニウム、およびこれらの金属のうちの少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される材料から形成されてもよい。
【0051】
さらに、第2の接続領域に固定されるワイヤボンドまたは他の電気接続部は、端子脚をパワー半導体デバイスに接続し得る。
【0052】
平滑化ステップに関して、平滑度が増し、これにより、この平滑度がステップc)の前の状態と比較してステップc)の後により高くなった場合、概して、平滑化が実現される。
【0053】
ステップc)が材料除去ステップによって実行されること、これにより、材料除去ステップを含むことが好ましい場合がある。このため、本実施形態に従うと、材料を除去することによって、たとえば第2の接続領域上に形成されたローレット構造が除去され得ることが規定され得る。このステップは、特に滑らかな表面をもたらすことを可能にし、このため、上述の利点が特に有効に実現され得る。さらに、この実施形態は、端子脚が適切な厚さを有する場合に特に確実に実現され得る。
【0054】
上述の記載に従うと、この方法ステップは、たとえば、端子または端子脚がそれぞれ、比較的高い硬度を有する材料から形成される場合に実行され得る。このため、たとえば、本実施形態は、CuNiSiなどの銅合金から形成される端子と組合わせて、少なくとも端子脚または第2の接続領域において実現されてもよいが、これらの例は限定を意図したものではない。
【0055】
概して、この方法を実行するための特定のステップが特定のニーズに応じて選択され得る。非限定的な例として、材料除去ステップが研削、研磨、平坦化、せん断からなる群から選択される少なくとも1つのプロセスを含むことが規定され得る。特にこれらの例が非常に滑らかな表面を提供し得るとともに、たとえば上述のような端子脚の材料に十分に適用可能であり得ることが判明した。さらに、これらの方法は、たとえば溶接などによってワイヤボンドを接続するために適切に使用され得る表面をもたらす。
【0056】
ステップc)が、圧力および熱のうち少なくとも1つを第2の接続領域に加えるステップを含むことがさらに規定され得る。このため、本実施形態は、圧力ベースの平滑化ステップおよび/または熱ベースの平滑化ステップを含む。本実施形態はまた、非常に滑らかな表面をもたらし得る。特に、同等の軟質材料と組合わせて、および/または、融点の低い材料と組合わせて実現され得る。このため、たとえば、本実施形態は、少なくとも端子脚または第2の接続領域において、軟焼鈍銅などの銅から形成される端子と組合わせて実現されてもよい。
【0057】
このステップは、たとえば、第2の接続領域に対して作用する圧力印加工具を用いることによって、または、接続領域に対して作用する熱印加工具とともに、またはこれら両方の工具もしくはこれら工具の組合わせとともに、用いられてもよい。
【0058】
端子が少なくともその端子脚において、したがって第2の接続領域において、軟焼鈍銅などの銅またはCu-NiSiなどの銅合金からなる群から選択される材料から形成されることがさらに規定され得る。
【0059】
これらの材料は、優れた電子特性と良好な加工性とを兼ね備えている。このため、これらの材料から形成される端子は優れた動作条件を示し、これにより、パワー半導体モジュールが非常に効率的に機能することを可能にする。このこととは別に、第2の接続領域が、上述のような方法を用いることなどによって、非常に滑らかな表面を備えることが可能となり得る。
【0060】
当該方法のさらに別の利点および技術的特徴に関して、半製品、パワー半導体モジュール、パワー半導体モジュールを形成する方法、図、および、さらなる説明について言及する。
【0061】
さらに、端子および基板から形成されており、このため、特に当該端子および当該基板を含むパワー半導体モジュールの半製品について説明する。端子は、端子脚に位置する第1の接続領域を含む。第1の接続領域は、端子を基板に接続するように適合される。端子はさらに、第2の接続領域を含む。第2の接続領域は、端子脚において第1の接続領域の反対側に位置する。基板は、端子の第1の接続領域に接続されるように適合された第3の接続領域を含む。第1の接続領域は第3の接続領域に接続される。第2の接続領域は平滑化された表面を有する。電気接続部は第2の接続領域に接続される。
【0062】
このような半製品は、特にパワー半導体モジュールを形成する過程において、先行技術の解決策に勝る有意な利点を可能にする。
【0063】
これに関して、特に、第2の接続領域が平滑化された表面を有するという特徴は、端子が超音波溶接によって基板に接続されるという先行技術に勝る有意な利点を提供し得る。
【0064】
特に、端子脚の表面と、これにより第2の接続領域とを平滑化することによって、超音波溶接の過程において現われるローレット構造などのそれぞれの粗面が除去され得る。代わりに、表面が平滑になり、これにより、後続の溶接ステップのために、したがって、さらに別の電気接続部を第2の接続領域に接続するために優れた特性を有することとなる。
【0065】
このため、電気接続部が第2の接続領域に接続される。たとえば、ワイヤボンドまたは複数のワイヤボンドが第2の接続領域に接続されることが規定されてもよい。
【0066】
平滑化された表面に関して、第2の接続領域の表面が、≦400μm、特に≦300μm、たとえば≦200μmなどの範囲の表面粗さRaを有することが好ましい場合もある。表面粗さRaは、評価長さ内の中心線を中心とした偏差から決定される、特にフィルタリングされた粗さプロファイルの算術平均値として理解され得るとともに、走査型電子顕微鏡によって決定され得る。
【0067】
端子に関して、コレクタ端子、エミッタ端子および補助端子のうちの1つ以上を備え得ることが規定され得る。
【0068】
したがって、このステップは、超音波溶接によって端子を導電性構造に接続する際に溶接工具と接触していた表面が、後でこの領域にさらに別の電気接点を電気的に接触させることを可能にするのに十分に適した構造を有することを可能にする。これは、端子を電気回路のさらに別の構成要素、たとえば特にパワー半導体デバイス、に接続するために実現されてもよい。
【0069】
このため、端子と電気接続部との間にワイヤボンドなどの非常に高品質なボンドを達成し得ることが可能となり得る。
【0070】
したがって、それぞれの表面が極めて確実に接続され得ることとなり、これにより、パワー半導体モジュールの高い作業能力を可能にし得ることで、低品質の接合による破損を回避し得る。
【0071】
これとは別に、パワー半導体モジュールは、端子と基板または基板金属被覆との間の安定した確実な接続により、高い安全性で機能し得る。
【0072】
さらに、半製品は、特に高い性能および効率で機能し得るパワー半導体モジュールを製造することを可能にし得る。
【0073】
半製品のさらに別の利点および技術的特徴に関して、方法、パワー半導体モジュール、図およびさらに別の説明を参照する。
【0074】
パワー半導体モジュールについてさらに説明する。パワー半導体モジュールは、さらなる説明において記載されるような半製品から形成される。さらに、パワー半導体モジュールが前述のような半製品を含むとともに、パワー半導体モジュール、たとえばパワー半導体デバイスなどについての当該技術分野において本質的に公知である特徴をさらに有し得ることが規定され得る。たとえば、パワー半導体モジュールはIGBTを含み得る。
【0075】
このようなパワー半導体モジュールは先行技術に勝る有意な利点を提供し得る。特に、当該利点は、電気接続部が第2の接続領域に接続される場合に特に有効である。特に、ワイヤボンドが第2の接続領域に溶接されることが規定され得る。
【0076】
要約すると、ワイヤボンドなどの電気コネクタの第2の接続面への接続は、高品質接続を実現することによって形成され得るものであって、これにより、モジュールの高い作業安定性および優れた長期安定性をもたらし得る。
【0077】
さらに、パワー半導体モジュールは、特に高い効率で機能し得る。
パワー半導体モジュールのさらに別の利点および技術的特徴に関して、半製品、方法、図およびさらなる説明を参照する。
【0078】
図面の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の局面は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これら実施形態を参照して解明されるだろう。これら実施形態に開示される個々の特徴は、単独で、または組合わせて、本発明の局面を構成し得る。さまざまな実施形態の特徴を、或る実施形態から別の実施形態に引継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明に従ったパワー半導体モジュールを示す側断面図である。
【
図2】溶接工具によって端子を基板に接続するための溶接ステップを示す側断面図である。
【
図3】端子を平滑化するための平滑化ステップ後の、パワー半導体モジュールを形成するための半製品を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
実施形態の説明
図1はパワー半導体モジュール10を示す。パワー半導体モジュール10は、下部金属被覆14および上部金属被覆16を備えた基板12を含む。下部金属被覆14は、はんだ層18によって基板12またはその主層13にそれぞれ接続され得るとともに、反対側ではこれらの図に示されていない底板に接続され得る。さらに、上部金属被覆16は、さらに別のはんだ層20によって基板主層13に接続され得る。
【0081】
さらに、上部金属被覆16の左側部分には、パワー半導体デバイス22が設けられている。ここに設けられるパワー半導体デバイス22または複数のパワー半導体デバイス22は、概して、当該技術分野で公知であるように形成されてもよく、とりわけ、それぞれ、MOSFETおよび/もしくはIGBTなどのトランジスタもしくはスイッチを備えてもよく、ならびに/または、複数のパワー半導体デバイス22はダイオードを備えてもよい。
【0082】
パワー半導体デバイス22とは別に、上部金属被覆16の右側部分に端子24が設けられていることが示されている。端子24は、たとえばエミッタ端子、コレクタ端子または補助端子であってもよい。
【0083】
さらに、端子24が基板12またはその基板上部金属被覆16に接続された端子脚26を含むことが示されている。これに関して、端子24が端子脚26に位置する第1の接続領域28を含むことが示されている。この場合、第1の接続領域28は基板12またはその基板上部金属被覆16に接続されている。基板12は、上部金属被覆16において第3の接続領域30を有する。第3の接続領域30はさらに、端子14の第1の接続領域28に接続されている。
【0084】
端子24に関して、端子脚26が第2の接続領域32を有し、第2の接続領域32が端子脚26において第1の接続領域28の反対側に位置することがさらに規定されている。第2の接続領域32には、さらに別の電気接続部が配置されている。より詳細には、ワイヤボンド34が第2の接続領域32に固定され、特に溶接されていることが示されている。
【0085】
ワイヤボンド34は、端子24からパワー半導体デバイス22までの電気接続部をもたらす。
【0086】
さらに、第2の接続領域32が平滑化された表面を有することが分かる。この特徴により、電気接続部またはワイヤボンド34を第2の接続領域32に耐久的かつ有効に接続することが可能となる。
【0087】
この特徴は
図2および
図3においてより詳細に説明される。これに関して、
図2および
図3は端子24を基板12に接続する方法を示す。この方法は、特に、パワー半導体モジュール10の半製品36をもたらすものであり、これにより、パワー半導体モジュール10を形成する過程で使用され得る。
【0088】
これに関して、
図2は、端子24を基板12に接続するための超音波溶接ステップを実行した後の端子24の状態を示す。溶接工具38のローレット構造により、端子脚26の第2の接続領域32もローレット構造40を有していることが分かる。
【0089】
しかしながら、この状態では、さらに別の電気接続部を第2の接続領域32に適切な態様で接続することはできない。したがって、本発明は、溶接するステップ後に第2の接続領域32を平滑化することを提案している。
【0090】
このことは
図3により詳細に示されている。
図3に従うと、第2の接続領域32が平滑化され、これにより、非常に滑らかな表面を有する第2の接続領域32が設けられることが示されている。第2の接続領域32の平滑化は、たとえば、
図3に示されるように、熱および/または圧力で、好ましくは熱および圧力の両方で第2の接続領域32に対して作用する、平坦な表面44を有する平滑化工具42を用いることによって実現されてもよい。代替的または付加的には、第2の接続領域32の平滑化は研削などの材料除去ステップによって実現され得ることが規定され得る。
【0091】
したがって、
図3に示される状態では、
図1に示されるワイヤボンド34などの電気接続部を第2の接続領域32に接続することが十分に可能となる。
【0092】
これにより、ワイヤボンド34の耐久性のある長期にわたる安定した接続が可能となり、さらに、パワー半導体モジュール10の高く有効な性能が可能となる。
【0093】
本発明が添付の図面および上述の記載において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は例示的または典型的なものと見なされるべきであって限定的なものではない。本発明は開示した実施形態に限定されない。開示した実施形態に対する他の変形例は、添付の図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を検討することにより、主張される発明を実施する際に当業者によって理解されて実施され得る。請求項において、「含む」という語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、「a」または「an」といった不定冠詞は複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組合わせが有利に使用できないことを示しているわけではない。請求項における参照符号はいずれも範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0094】
10 パワー半導体モジュール
12 基板
13 主層
14 金属被覆
16 金属被覆
18 はんだ層
20 はんだ層
22 パワー半導体デバイス
24 端子
26 端子脚
28 第1の接続領域
30 第3の接続領域
32 第2の接続領域
34 ワイヤボンド
36 半製品
38 溶接工具
40 構造
42 平滑化工具
44 表面
【国際調査報告】