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特表2022-541331エプスタイン・バーウイルス(EBV)を検出するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】エプスタイン・バーウイルス(EBV)を検出するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/70 20060101AFI20220914BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220914BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20220914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C12Q1/70
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/6888 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504712
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2020070896
(87)【国際公開番号】W WO2021013972
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/878,643
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ティー.ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】マリンサ ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】デブラ リジェット
(72)【発明者】
【氏名】チンタオ スン
(72)【発明者】
【氏名】リン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シアオニン ウー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR39
4B063QR79
4B063QS25
(57)【要約】
生物学的もしくは非生物学的サンプル中のエプスタイン・バーウイルス(EBV)の存在もしくは非存在を迅速に検出するための方法が開示される。該方法は、増幅工程、ハイブリダイズ工程、および検出工程を実施することを含み得る。さらに、EBVを標的化するプライマーおよびプローブ、およびEBVの標的領域を検出するために設計されたキットが提供される。EBVの増幅および検出のためのキット、反応混合物およびオリゴヌクレオチド(例えば、プライマーおよびプローブ)も開示される。EBVの異なる領域を検出するプライマーおよびプローブも開示されており、EBVの2つの異なる重複しない標的領域を同時に検出するための二重標的アッセイに使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のエプスタイン・バーウイルス(EBV)の1つ以上の標的核酸を検出するための方法であって、
(a)サンプルを供給すること、
(b)EBVの前記1つ以上の標的核酸がサンプル中に存在する場合、前記サンプルを1つ以上のプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施すること、
(c)EBVの前記1つ以上の標的核酸がサンプル中に存在する場合、前記増幅産物を1つ以上のプローブと接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施すること、および
(d)前記増幅産物の存在もしくは非存在を検出することを含む検出工程を実施することであって、前記増幅産物の存在が、サンプル中にEBVの前記1つ以上の標的核酸が存在することを示唆し、前記増幅産物の非存在が、サンプル中にEBVの前記1つ以上の標的核酸が存在しないことを示唆する、検出工程を実施すること、を含み、
前記1つ以上のプライマーのセット、および前記1つ以上のプローブが、
(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブ、および/または
(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号6の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブとを含む、
方法。
【請求項2】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的サンプルが、血漿もしくは血液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出する方法であって、
EBVの前記第1の標的核酸を検出するためのプライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含み、
EBVの前記第2の標的核酸を検出するためのプライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない、請求項4もしくは5に記載の方法。
【請求項7】
サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するための方法であって、
(a)サンプルを供給すること、
(b)EBVの1以上の前記標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記サンプルをプライマーの少なくとも2つのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施すること、
(c)EBVの1以上の前記標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記増幅産物を少なくとも2つのプローブと接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施すること、および
(d)前記増幅産物の存在または非存在を検出することを含む検出工程を実施することであって、前記増幅産物の存在が前記サンプル中にEBVの1以上の前記標的核酸が存在することを示唆し、前記増幅産物の非存在が前記サンプル中にEBVの1以上の前記標的核酸が存在しないことを示唆する、検出工程を実施することを含み、
プライマーの前記少なくとも2つのセットの一方および前記少なくとも2つのプローブの一方は、EBVの前記第1の標的核酸を検出するためのものであり、
(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含み、
プライマーの前記1以上のセットの一方および前記少なくとも2つのプローブの一方は、EBVの前記第2の標的核酸を検出するためのものであり、
(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含む、
方法。
【請求項8】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない、請求項7もしくは8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的サンプルが、血漿もしくは血液である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サンプル中に存在する可能性のあるEBVの1以上の標的核酸を検出するためのキットであって、前記キットが、
(a)DNAポリメラーゼ、
(b)ヌクレオチドモノマー、
(c)プライマーの1以上のセット、および
(d)1以上のプローブ
を含む増幅試薬を含み、
前記1つ以上のプライマーのセット、および前記1つ以上のプローブが、
(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブ、および/または
(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブとを含む、
キット。
【請求項13】
前記1つ以上のプローブが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するための、請求項12または13に記載のキットであって、
EBVの前記第1の標的核酸を検出するためのプライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、
(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含み、
EBVの前記第2の標的核酸を検出するためのプライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、
(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含む、
キット。
【請求項15】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない、請求項14もしくは15に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するためのキットであって、前記キットが、
(a)DNAポリメラーゼ、
(b)ヌクレオチドモノマー、
(c)EBVの第1の標的核酸を検出するためのプライマーの第1のセットおよび1つのプローブ、ならびに
(d)EBVの第2の標的核酸を検出するためのプライマーの第2のセットおよび1つのプローブ
を含む増幅試薬を含み、
前記プライマーの第1のセットおよび1つのプローブが、EBVの前記第1の標的核酸を検出するためのものであり、配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーと、配列番号2またはその相補体を含むプローブとを含み、
前記プライマーの第2のセットおよび1つのプローブが、EBVの前記第2の標的核酸を検出するためのものであり、配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含む、
キット。
【請求項18】
前記プローブが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる、請求項17もしくは18に記載のキット。
【請求項20】
EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体外診断の分野に関する。この分野では、本発明は、サンプル中に存在し得る標的核酸の増幅および検出、特に、プライマーおよびプローブを使用した、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の配列変異および/または個々の変異を含む標的核酸の増幅、検出および/または定量に関する。本発明はさらに、EBVの増幅および検出のためのプライマーおよびプローブを含有する反応混合物およびキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、ヘルペスウイルス群のメンバーであるDNAウイルスである(ヒトヘルペスウイルス-4もしくはHHV-4との別名称を有する)。EBV感染は一般的であり、成人における有病率は推定90%であり、無症候性であることが多い。EBV感染は、いくつかの潜伏期のうちの1つ以上に入る前に、初期の溶解段階で単核球症を引き起こす可能性がある。EBVは、免疫不全患者の生命を脅かす疾患およびいくつかの形態の癌(バーキットリンパ腫(BL)、ホジキンリンパ腫(HL)、鼻型NK/T細胞リンパ腫(NKTL)、リンパ上皮腫様癌(LELC)、鼻咽頭癌(NPC)、および胃癌(GC)と非常に関連している。免疫反応が抑制された臓器移植患者では、潜在的にEBVに感染したB細胞の増殖が制御されず、深刻な合併症が生じるので、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を引き起こす可能性があるため、特に危険にさらされる。移植は、免疫抑制による拒絶リスクと疾患リスクのバランスを伴う。EBVは、いくつかの一般的な(90%)、しばしば無症候性のウイルス感染症の1つであるが、ウイルスを排除し得ないため、免疫反応が抑制された患者に脅威をもたらす。PTLDは、主にEBV陽性と関連するBリンパ球の増殖である(特に早期発症の場合)。実際、EBVは第2の主要な移植後監視マーカー(サイトメガロウイルス(CMV)感染後)であり、EBV関連PTLDは、固形臓器移植もしくは造血幹細胞移植後の最も一般的な悪性疾患の1つである。移植患者の最大5%がPTLDを発症し、最悪の場合、リンパ腫を引き起こし得る。最大リスク群としては、移植後1年目の患者、EBV陽性ドナーからEBV陰性レシピエントへの臓器移植、幹細胞移植患者および小児患者が挙げられる。
【0003】
EBVは、血漿中のウイルス粒子および断片化DNAにより、また細胞内エピソームDNAウイルスゲノムおよびmRNAにより、血流中に検出される可能性がある。EBVは、(内部反復数および欠失に応じて)約172kb以上のゲノムサイズを有し、線状もしくは環状(エピソーム)構造のいずれかで存在し得る。EBVの遺伝的多様性は、一般に、文献に列挙されている2つの型を含むと報告されているが、ウイルスの実際の多様性の特徴付けはより複雑であり、ゲノムのどの部分をサンプリングするかに依存し得る。EBNA2およびEBNA3A、BおよびC遺伝子配列により、EBV株の従来の「1型」および「2型」カテゴリーへの分類が推進される。一般に、1型はほとんどの地域で多くみられるが、アフリカでは、1型と2型の両方が非常に流行している。これらの遺伝子以外では、1型/2型の相違はあまり関連性がなく、選択された遺伝子については異なる系統発生パターンがあり得る。地理的変異は、EBVの東アジア系統とヨーロッパおよびアフリカの系統との間の違いから記載されているが、EBVゲノム多様性の完全な特徴付けには、2つ以上の遺伝子領域のサンプリングが必要な場合がある。組換えは、ウイルスの履歴において頻繁に起こるようであり、単一細胞において再感染もしくは共感染が起こり得ることを示している。当技術分野では、EBVを検出するための信頼性が高く、高感度で、再現性のある手段が依然として必要とされている。
【0004】
EBVウイルス量の測定は、移植患者を管理し、EBV関連疾患を診断および追跡するための日常的な検査になりつつある。EBVウイルスのモニタリングを受けている患者では、連続DNA測定を使用して、潜在的な治療変更の必要性を示し、治療に対するウイルス反応を評価し得る。世界中におけるEBV感染症の広範な有病率およびEBVで頻繁に起こる組換えを考えると、当技術分野では、サンプル中のEBVの存在を検出および/または定量するための迅速で信頼性が高く、特異的で高感度の方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
分子診断の分野では、核酸の増幅および検出はかなり重要である。そのような方法は、任意の数のウイルスおよび細菌のような微生物を検出するために使用し得る。最も顕著で広く使用されている増幅技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。他の増幅技術としては、リガーゼ連鎖反応、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応、Gap-LCR、修復連鎖反応、3SR、NASBA、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)およびQβ増幅が挙げられる。PCRに基づく分析のための自動化されたシステムは、しばしば、同じ反応容器におけるPCRプロセス中の産物増幅のリアルタイム検出を利用する。そのような方法の鍵は、レポーター基もしくは標識を有する修飾オリゴヌクレオチドの使用である。
【0006】
本発明は、信頼性が高く、高感度で再現性のある、EBVの増幅および検出に関する。EBVは、アッセイ設計のための複数のよく保存された標的領域を有するDNAウイルスであるが、遭遇することのないような置換もしくは欠失の可能性は、二重標的アプローチが賢明であることを意味する。プライマーおよびプローブの設計は、最大限にEBVを含み、他のヘルペスウイルスを排除するために利用可能な公開配列情報を使用した。
【0007】
本発明は、最大限にEBVを含み、他の鋳型との交差反応性を防止するように設計された新規なオリゴヌクレオチド設計からなる。このEBVアッセイは、cobas(登録商標)6800/8800で使用し得る。本発明のプライマーおよびプローブは、ウイルス配列の不均一性に対する対抗手段として、両方の標的が同じ色素を使用する二重標的アッセイとして使用され得る。設計戦略は、EBVゲノムから保存された配列領域を選択し、各標的についていくつかのプライマーおよびプローブの組み合わせを評価することであった。アッセイ設計を選択した5つの領域は、IR-1リピート、LMP2A、EBNA-1(BKRF-1)、BMRF-2およびレダクターゼ/BORF-2であった。配列は、1型および2型の両方のEBV、およびアジア、アフリカ、北米、南米、欧州およびオーストラリアを含む世界中の地理的位置からの配列を含んでいた。スクリーニングおよび最適化プロセスの後、2つの候補がEBNA-1の最終エクソンのすぐ上から、およびBMRF-2のコード配列内から同定された。これらの候補は、二重標的アッセイで個別にもしくは一緒に二重に使用し得る。二重標的アッセイとして使用する場合、2セットのプライマーおよびプローブを使用する(各セットはEBNA-1もしくはBMRF-2のいずれかを検出する)。
【0008】
本開示の特定の実施形態は、生物学的サンプルもしくは非生物学的サンプル中のEBVの存在もしくは非存在の迅速な検出、例えば、単一の試験管もしくは容器内でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるEBVの多重検出のための方法に関する。実施形態は、増幅工程およびハイブリダイズ工程を含み得る少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含むEBVの検出方法を含む。更に、実施形態は、単一の試験管もしくは容器内でのEBVの検出のために設計されたプライマー、プローブおよびキットを含む。
【0009】
本発明の一態様は、サンプル中のエプスタイン・バーウイルス(EBV)の1つ以上の標的核酸を検出するための方法であって:(a)サンプルを供給すること、(b)EBVの前記1以上の標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記サンプルをプライマーの1以上のセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施すること、(c)EBVの前記1以上の標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記増幅産物を1以上のプローブと接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施すること、および(d)前記増幅産物の存在もしくは非存在を検出することを含む検出工程を実施することであって、前記増幅産物の存在が前記サンプル中にEBVの前記1以上の標的核酸が存在することを示唆し、前記増幅産物の非存在が前記サンプル中にEBVの前記1以上の標的核酸が存在しないことを示唆する、検出工程を実施すること、を含み、プライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブ、および/または(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号6の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブとを含む、方法に関する。
【0010】
関連する実施形態では、サンプルは、生物学的サンプルである。関連する実施形態では、生物学的サンプルは血漿である。関連する実施形態では、生物学的サンプルは血液である。別の実施形態では、方法が、サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するためのものであり、EBVの前記第1の標的核酸を検出するための1以上のプライマーのセットおよび1以上のプローブが、(i)配列番号1および3の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含み、EBVの前記第2の標的核酸を検出するための1以上のプライマーのセットおよび1以上のプローブが、(ii)配列番号4および6の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含む、方法である。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない。
【0011】
別の態様は、サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するための方法であって、(a)サンプルを供給すること、(b)EBVの前記1以上の標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記サンプルをプライマーの1以上のセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施すること、(c)EBVの前記1以上の標的核酸が前記サンプル中に存在する場合、前記増幅産物を1以上のプローブと接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施すること、および(d)前記増幅産物の存在もしくは非存在を検出することを含む検出工程を実施することであって、前記増幅産物の存在が前記サンプル中にEBVの前記1以上の標的核酸が存在することを示唆し、前記増幅産物の非存在が前記サンプル中にEBVの前記1以上の標的核酸が存在しないことを示唆する、検出工程を実施すること、を含み、プライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、(i)配列番号1および3の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含み、EBVの前記第2の標的核酸を検出するための1以上のプライマーのセットおよび1以上のプローブが、(ii)配列番号4および6の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含む、方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない。別の実施形態では、サンプルは、生物学的サンプルである。別の実施形態では、生物学的サンプルは血漿である。別の実施形態では、生物学的サンプルは血液である。
【0013】
本発明の別の態様は、サンプル中に存在する可能性のあるEBVの1つ以上の標的核酸を検出するためのキットであって、前記キットが(a)DNAポリメラーゼ、(b)ヌクレオチドモノマー、(c)プライマーの1以上のセット、および(d)1以上のプローブを含む増幅試薬を含み、プライマーの前記1以上のセットおよび前記1以上のプローブが、(i)配列番号1の核酸配列を含む第1のプライマーと配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブ、および/または(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列もしくはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブとを含む、キットに関する。別の実施形態では、前記1つ以上のプローブは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。別の実施形態では、キットが、サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するためのものであり、EBVの前記第1の標的核酸を検出するためのプライマーの1以上のセットおよび1以上のプローブが、(i)配列番号1および3の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含み、EBVの前記第2の標的核酸を検出するための1以上のプライマーのセットおよび1以上のプローブが、(ii)配列番号4の核酸配列を含む第1のプライマーと、配列番号6の核酸配列またはその相補体を含む第2のプライマーとを含むプライマーのセットと、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むプローブとを含む、キットである。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない。
【0014】
本発明の別の態様は、サンプル中のEBVの第1の標的核酸およびEBVの第2の標的核酸を検出するためのキットであって、前記キットが(a)DNAポリメラーゼ、(b)ヌクレオチドモノマー、(c)EBVの第1の標的核酸を検出するためのプライマーの第1のセットおよび1つのプローブ、ならびに(d)EBVの第2の標的核酸を検出するためのプライマーの第2のセットおよび1つのプローブを含む増幅試薬を含み、EBVの第1の標的核酸を検出するための1つのプライマーの第1のセットおよび1つのプローブが、(i)配列番号1および3の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号2の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含み、EBVの第2の標的核酸を検出するためのプライマーの第2のセットおよび1つのプローブが、(ii)配列番号4および6の核酸配列もしくはその相補体を含むプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むプローブを含む、キットに関する。別の実施形態では、プローブは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が異なる。別の実施形態では、EBVの前記第1の標的核酸およびEBVの前記第2の標的核酸が重複していない。
【0015】
他の態様は、100以下のヌクレオチドを有する、配列番号1~6から選択されるヌクレオチドの配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれらからなるオリゴヌクレオチドを提供する。別の実施形態では、本開示は、配列番号1~6もしくはその相補体の1つと少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%もしくは95%など)を有する核酸を含むオリゴヌクレオチドであって、100個以下のヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを提供する。一般に、これらのオリゴヌクレオチドは、これらの実施形態では、プライマー核酸、プローブ核酸などであり得る。これらの実施形態の一定のものでは、オリゴヌクレオチドは、40個以下のヌクレオチド(例えば、35個以下のヌクレオチド、30個以下のヌクレオチド、25個以下のヌクレオチド、20個以下のヌクレオチド、15個以下のヌクレオチドなど)を有する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えば、未修飾ヌクレオチドと比較して核酸ハイブリダイゼーション安定性を変化させるために、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。必要に応じて、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識、および少なくとも1つのクエンチャー部分を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの保存的に修飾された変異を含む。特定の核酸配列の「保存的に修飾された変異」もしくは単に「保存的変異」とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、もしくは核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。当業者であれば、コードされた配列中の単一のアミノ酸もしくは少量のアミノ酸(通常は5%未満、より通常には4%、2%もしくは1%未満)を変更、付加もしくは欠失させる個々の置換、欠失もしくは付加は、修飾がアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、もしくは化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的修飾変異」であることを認識するであろう。
【0016】
一態様では、増幅は、5’から3’へのヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を使用し得る。したがって、ドナー蛍光部分およびアクセプター部分、例えばクエンチャーは、プローブの長さに沿って互いに5~20ヌクレオチド(例えば、7もしくは10ヌクレオチド)以内であり得る。別の態様では、プローブは、二次構造の形成を可能にする核酸配列を含む。そのような二次構造の形成は、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分との間の空間的近接をもたらし得る。該方法によれば、プローブ上の第2の蛍光部分はクエンチャーであり得る。
【0017】
本開示は、また個体由来の生物学的サンプル中のEBVもしくはEBV核酸の存在もしくは非存在を検出する方法を提供する。これらの方法は、例えば、血液スクリーニングおよび診断試験に使用するために、血漿中のEBV核酸の存在もしくは非存在を検出するために使用し得る。さらに、同じ試験を当業者が使用して、尿および他の種類のサンプルを評価し、EBV核酸を検出および/または定量し得る。そのような方法は、一般に、増幅工程および色素結合工程を含む少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含む。典型的には、増幅工程は、核酸分子がサンプル中に存在する場合に、サンプルを複数のオリゴヌクレオチドプライマー対と接触させて1つ以上の増幅産物を生成することを含み、色素結合工程は、増幅産物を二本鎖DNA結合色素と接触させることを含む。そのような方法はまた、増幅産物への二本鎖DNA結合色素の結合の存在もしくは非存在を検出することを含み、結合の存在はサンプル中にEBV核酸が存在することを示し、結合の非存在はサンプル中にEBVが存在しないことを示す。代表的な二本鎖DNA結合色素は、臭化エチジウムである。他の核酸結合色素としては、DAPI、Hoechst色素、PicoGreen(登録商標)、RiboGreen(登録商標)、OliGreen(登録商標)、およびYO-YO(登録商標)およびSYBR(登録商標)Greenなどのシアニン色素が挙げられる。さらに、そのような方法はまた、増幅産物と二本鎖DNA結合色素との間の融解温度を決定することを含み得、融解温度により、EBV核酸の存在もしくは非存在が確認される。
【0018】
さらなる実施形態では、EBVの1以上の核酸を検出および/または定量するためのキットが提供される。キットは、遺伝子標的の増幅に特異的な1つ以上のプライマーのセット;および増幅産物の検出に特異的な1つ以上の検出可能なオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。
【0019】
一態様では、キットは、ドナー部分および対応するアクセプター部分、例えば、別の蛍光部分もしくはダーククエンチャーで既に標識されているプローブを含み得、もしくはプローブを標識するためのフルオロフォア部分を含み得る。キットはまた、ヌクレオシド三リン酸、核酸ポリメラーゼおよび核酸ポリメラーゼの機能に必要な緩衝液を更に含み得る。キットはまた、添付文書およびプライマー、プローブおよびフルオロフォア部分を使用してサンプル中のEBV核酸の存在もしくは非存在を検出するための説明書を含み得る。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様もしくは同等の方法および材料が本主題の実施もしくは試験で使用され得るが、好適な方法および材料が以下に記載される。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合は、定義をも含む本明細書が優先する。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、図面および発明を実施するための形態、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、EBVのゲノム構造を示す。図1Aは、線状EBVゲノム(溶菌型)の模式図を示す。図1Bは、環状EBVゲノム(潜伏型)の模式図を示す。EBVは、約172kb以上の二本鎖DNAウイルスである。以下が存在する。(i)大部分が独特の領域、(ii)内部反復領域(IR1-IR4)、(iii)末端反復(TR)、(iv)プラスミド維持およびDNA複製活性を有する、潜伏感染EBVエピソーム複製の起点であるOri P、(v)潜伏EBV誘導性膜タンパク質および核タンパク質のエクソン。図1は、二重標的アッセイとして使用し得るEBV標的BMRF2およびEBNA1を強調している。
図2図2は、プライマーによって生成され、プローブによって検出された、96塩基対アンプリコンを含むEBV標的およびEBNA1のオリゴヌクレオチドセットを示す。
図3図3は、プライマーによって生成され、プローブによって検出された、98塩基対アンプリコンを含む、EBV標的およびBMRF2に対するオリゴヌクレオチドセットを示す。
図4A図4Aは、8,000IU/ml(図4A)での、EBVについてのWHOの基準(NIBSCコード09/260)に対するQnostics EBV Analytic Panel(Qnosticsカタログ番号EBVAQP03-C)のアッセイの性能の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図4B図4Bは、80IU/ml(図4B)での、EBVについてのWHOの基準(NIBSCコード09/260)に対するQnostics EBV Analytic Panel(Qnosticsカタログ番号EBVAQP03-C)のアッセイの性能の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図4C図4Cは、8IU/ml(図4C)での、EBVについてのWHOの基準(NIBSCコード09/260)に対するQnostics EBV Analytic Panel(Qnosticsカタログ番号EBVAQP03-C)のアッセイの性能の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。 EBV陰性血漿にスパイクした抽出EBV DNAおよびRaji細胞株DNAなどの他のEBVサンプルタイプも試験した(データは示さず)。
図5A図5Aは、対照鋳型(1E9IU/mL)(図5A)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5B図5Bは、対照鋳型(1E8IU/mL)(図5B)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5C図5Cは、対照鋳型(1E7IU/mL)(図5C)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5D図5Dは、対照鋳型(1E6IU/mL)(図5D)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5E図5Eは、対照鋳型(1E5IU/mL)(図5E)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5F図5Fは、対照鋳型(1E4IU/mL)(図5F)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5G図5Gは、対照鋳型(1E4IU/mL)(図5G)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5H図5Hは、細胞培養由来材料(1E3IU/mL)(図5H)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5I図5Iは、細胞培養由来材料(1E3IU/mL)(図5I)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5J図5Jは、細胞培養由来材料(1E2IU/mL)(図5J)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5K図5Kは、細胞培養由来材料(40IU/mL)(図5K)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。
図5L図5Lは、細胞培養由来材料(20IU/mL)(図5L)に対する多重化アッセイの実行の希釈系列のPCR増殖曲線を示す。 チャネル2は二重標的EBVアッセイを示し、チャネル5は内部対照反応である。
図6A図6Aは、個々の標的(E1c、B2c)もしくは両方の標的(dC)を含むプラスミド鋳型、およびB95-8細胞株抽出物(EBV DNAのコピーを含む)における、EBNA1(図6A)についての別々の反応のPCR増殖曲線を示す。
図6B図6Bは、個々の標的(E1c、B2c)もしくは両方の標的(dC)を含むプラスミド鋳型、およびB95-8細胞株抽出物(EBV DNAのコピーを含む)における、BMRF2(図6B)についての別々の反応のPCR増殖曲線を示す。 これらの研究は、二重標的EBNA1およびBMRF2 EBVアッセイが効率的であり、EBNA1およびBMRF2 EBV核酸を特異的に同定することを実証している。
図7図7は、遺伝子型1細胞培養由来材料および対照鋳型に対する二重標的アッセイの直線性データを示す。
図8図8は、遺伝子型2のEBV含有細胞培養由来材料に対する二重標的アッセイの直線性データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
核酸増幅によるEBV感染症の診断は、EBV感染症を迅速、正確、確実に、特異的に、また高感度に検出および/または定量化するための方法を提供する。非生物学的もしくは生物学的サンプル中のDNAおよび/またはRNAを含むEBV核酸を検出および/または定量するためのリアルタイムPCRアッセイを本明細書に開示する。EBVを検出および/または定量するためのプライマーおよびプローブが提供され、そのようなプライマーおよびプローブを含有する製造品もしくはキットも提供される。他の方法と比較してEBVの検出のためのリアルタイムPCRの特異性および感度が上昇し、サンプルの封じ込めおよび増幅産物のリアルタイム検出を含むリアルタイムPCRの機能が改善されたことにより、臨床検査室におけるEBV感染症の日常的な診断のためのこの技術の実施が実現可能になる。さらに、この技術は、血液スクリーニングおよび予後診断に使用し得る。このEBV検出アッセイはまた、他の核酸、例えば、他の細菌および/またはウイルスの検出のための他のアッセイと並行して多重化され得る。
【0024】
本開示は、例えば、TaqMan(登録商標)増幅および検出技術を用いてEBVを特異的に同定するために、EBVゲノムにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光標識加水分解プローブを含む。
【0025】
開示される方法は、1種以上のプライマー対を使用してサンプルからの核酸分子遺伝子標的の1種以上の部分を増幅することを含む少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含み得る。本明細書で使用される「EBVプライマー(複数可)」とは、EBV中に見出される核酸配列を特異的にアニーリングし、それぞれの増幅産物を産生する適切な条件下でそこからDNA合成を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを指す。EBVゲノムに見出される核酸配列の例としては、EBVゲノムのウイルスキャプシドタンパク質領域、例えばVP2領域内の核酸が挙げられる。検討されるEBVプライマーは各々、各増幅産物の少なくとも一部が標的に対応する核酸配列を含むように、標的にアニーリングする。1つ以上の核酸がサンプル中に存在すれば、1つ以上の増幅産物が生成され、したがって、1つ以上の増幅産物の存在がサンプル中にEBVが存在することを示す。増幅産物は、EBVについての1つ以上の検出可能なプローブに相補的な核酸配列を含まなければならない。本明細書で使用される「EBVプローブ(複数可)」は、EBVゲノム中に見出される核酸と特異的にアニーリングするオリゴヌクレオチドプローブを指す。各サイクリング工程は、増幅工程、ハイブリダイゼーション工程および検出工程を含み、サンプル中のEBVの存在もしくは非存在を検出するために、サンプルを1つ以上の検出可能なEBVプローブと接触させる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「増幅する」という用語は、鋳型核酸分子(例えば、EBVゲノムからの核酸分子)の一方もしくは両方の鎖に相補的な核酸分子を合成するプロセスを指す。核酸分子を増幅することは、典型的には、鋳型核酸を変性すること、プライマーの融解温度未満の温度でプライマーを鋳型核酸にアニーリングすること、および増幅産物を生成するためにプライマーから酵素的に伸長することを含む。増幅には、典型的には、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ酵素(例えば、Platinum(登録商標)Taq)およびポリメラーゼ酵素の最適な活性のための適切な緩衝液および/または補因子(例えば、MgCl2および/またはKCl)の存在が必要である。
【0027】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、当業者に知られており、オリゴマー化合物、主にオリゴヌクレオチドを指すが、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA合成を「プライミング」することができる修飾オリゴヌクレオチドも指しており、すなわち、例えばオリゴヌクレオチドの3’末端が遊離3’-OH基を提供し、そこに、3’から5’へのホスホジエステル結合を確立する鋳型依存性DNAポリメラーゼによって更に「ヌクレオチド」が結合され得て、それによってデオキシヌクレオシド三リン酸が使用され、それによってピロリン酸が放出される。
「ハイブリダイズする」という用語は、増幅産物への1つ以上のプローブのアニーリングを指す。ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、プローブの融解温度より低いが、プローブの非特異的ハイブリダイゼーションを回避する温度を含む。
「5’から3’へのヌクレアーゼ活性」という用語は、典型的には核酸鎖合成に関連し、それによってヌクレオチドが核酸鎖の5’末端から除去される核酸ポリメラーゼの活性を指す。
【0028】
「熱安定性ポリメラーゼ」という用語は、熱安定性であるポリメラーゼ酵素を指し、すなわち、該酵素は、鋳型に相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖鋳型核酸の変性をもたらすのに必要な時間にわたり高温に曝された場合、不可逆的には変性しない。一般に、合成は各プライマーの3’末端で開始され、鋳型鎖に沿って5’から3’方向へ進行する。熱安定性ポリメラーゼは、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・ルーバー(T.ruber、サーマス・サーモフィルス(T.thermophilus)、サーマス・アクアティスク(T.aquaticus)、サーマス・ラクテウス(T.lacteus)、サーマス・ルベンス(T.rubens)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、およびメタノサーマス・ファービダス(Methanothermus fervidus)から単離されている。それにもかかわらず、必要に応じて酵素が補充されるならば、熱安定性でないポリメラーゼをPCRアッセイに用いることもできる。
【0029】
「その相補体」という用語は、所与の核酸と同じ長さであり、正確に相補的である核酸を指す。
【0030】
核酸に関して使用される場合の「伸長」もしくは「延長」という用語は、追加のヌクレオチド(もしくは他の類似の分子)が核酸に組み込まれる場合を指す。例えば、核酸は、典型的には核酸の3’末端にヌクレオチドを付加するポリメラーゼなどの生体触媒を組み込むヌクレオチドによって必要に応じて伸長される。
【0031】
2以上の核酸配列の文脈における「同一」もしくは「同一性」パーセントという用語は、例えば、当業者に利用可能な配列比較アルゴリズムの1つを使用してもしくは目視検査によって測定して最大の一致に関して比較およびアラインメントした場合に、同一もしくは特定パーセンテージの同一ヌクレオチドを有する2以上の配列もしくは部分配列を指す。パーセント配列同一性および配列類似性の決定に適した例示的なアルゴリズムは、BLASTプログラムであり、例えば、Altschulら(1990)“Basic local alignment search tool”J.Mol.Biol.215:403-410,Gishら(1993)“Identification of protein coding regions by database similarity search”Nature Genet.3:266-272,Maddenら(1996)“Applications of network BLAST server”Meth.Enzymol.266:131-141,Altschulら(1997)“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”Nucleic Acids Res.25:3389-3402,およびZhangら(1997)“PowerBLAST:A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation”Genome Res.7:649-656に開示され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
オリゴヌクレオチドに関して「修飾ヌクレオチド」とは、オリゴヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドに所望の特性を提供する異なるヌクレオチドによって置き換えられる変化を指す。本明細書に記載のオリゴヌクレオチド中で置換され得る例示的な修飾ヌクレオチドとしては、例えば、t-ブチルベンジル、C5-メチル-dC、C5-エチル-dC、C5-メチル-dU、C5-エチル-dU、2,6-ジアミノプリン、C5-プロピニル-dC、C5-プロピニル-dU、C7-プロピニル-dA、C7-プロピニル-dG、C5-プロパルギルアミノ-dC、C5-プロパルギルアミノ-dU、C7-プロパルギルアミノ-dA、C7-プロパルギルアミノ-dG、7-デアザ-2-デオキシ-キサントシン、ピラゾロピリミジン類似体、擬似dU、ニトロピロール、ニトロインドール、2’-0-メチルリボ-U、2’-0-メチルリボ-C、N4-エチル-dC、N6-メチル-dA、5-プロピニルdU、5-プロピニルdC、7-デアザ-デオキシグアノシン(デアザG(u-デアザ))などが挙げられる。オリゴヌクレオチド中で置換され得る多くの他の修飾ヌクレオチドは、本明細書で言及されるか、もしくは当技術分野で知られている。特定の実施形態では、修飾ヌクレオチド置換は、対応する修飾されていないオリゴヌクレオチドの融解温度と比較して、該オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)を修飾する。更に説明すると、特定の修飾ヌクレオチド置換は、いくつかの実施形態では、非特異的核酸増幅を減少させ(例えば、プライマーダイマー形成などを最小限に抑える)、意図する標的アンプリコンの収率を増加させることなどができる。これらのタイプの核酸修飾の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,001,611号に記載されている。他の修飾ヌクレオチド置換は、オリゴヌクレオチドの安定性を変化させ得るか、もしくは他の望ましい特徴を提供し得る。
【0033】
EBV標的核酸の検出/定量
本開示は、例えばEBV核酸配列の一部を増幅することによってEBVを検出する方法を提供する。具体的には、EBV核酸分子標的を増幅し、検出および/または定量するためのプライマーおよびプローブが本開示の実施形態によって提供される。
【0034】
EBVの検出および/または定量のために、EBVを増幅および検出/定量するためのプライマーおよびプローブが提供される。本明細書に例示される核酸以外のEBV核酸も、サンプル中のEBVを検出するために使用し得る。例えば、機能的バリアントは、日常的な方法を使用して当業者によって特異性および/または感度について評価され得る。代表的な機能的バリアントは、例えば、本明細書に開示されるEBV核酸における1つ以上の欠失、挿入および/または置換を含み得る。
【0035】
より具体的には、オリゴヌクレオチドの実施形態はそれぞれ、配列番号1~6から選択される配列を有する核酸、配列番号1~6の1つと少なくとも、例えば80%、90%、若しくは95%の配列同一性を有するその実質的に同一のバリアント、もしくは配列番号1~6の相補体およびバリアントを含む。
【表1】
【0036】
一実施形態では、EBVを含有すると思われる生物学的サンプル中のEBVの検出を提供するために、前記のプライマーのセットおよびプローブが使用される(表1)。プライマーのセットおよびプローブは、配列番号1~6の核酸配列を含むか、もしくはそれからなるEBV核酸配列に特異的なプライマーおよびプローブを含むか、もしくはそれからなり得る。別の実施形態では、EBV標的のためのプライマーおよびプローブは、配列番号1~6のプライマーおよびプローブのいずれかの機能的に活性なバリアントを含むか、もしくはそれからなる。
【0037】
配列番号1~6のプライマーおよび/またはプローブのいずれかの機能的に活性なバリアントは、開示される方法においてプライマーおよび/またはプローブを使用することによって同定され得る。配列番号1~6のいずれかのプライマーおよび/またはプローブの機能的に活性なバリアントは、配列番号1~6のそれぞれの配列と比較して、記載の方法もしくはキットにおいて、類似し、もしくはより高い特異性および感度を提供するプライマーおよび/またはプローブに関する。
【0038】
バリアントは、例えば、配列番号1~6のそれぞれの配列の5’末端および/または3’末端における1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換などの1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換によって、配列番号1~6の配列から変化し得る。上に詳述したように、プライマーおよび/またはプローブは化学的に修飾されていてもよく、すなわち、プライマーおよび/またはプローブは修飾ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド化合物を含んでいてもよい。したがって、プローブ(もしくはプライマー)は修飾オリゴヌクレオチドである。「修飾ヌクレオチド」(もしくは「ヌクレオチド類縁体」)は、いくつかの修飾によって天然の「ヌクレオチド」とは異なるが、依然として、塩基若しくは塩基様化合物、ペントフラノシル糖若しくはペントフラノシル糖様化合物、リン酸部分若しくはリン酸様部分、もしくはそれらの組み合わせからなる。例えば、「ヌクレオチド」の塩基部分に「標識」を結合させて、「修飾ヌクレオチド」を得ることができる。「ヌクレオチド」中の天然塩基は、例えば7-デアザプリンで置換されてもよく、そのようにしても「修飾ヌクレオチド」が得られる。「修飾ヌクレオチド」もしくは「ヌクレオチド類縁体」という用語は、本出願では互換的に使用される。「修飾ヌクレオシド」(もしくは「ヌクレオシド類縁体」)は、「修飾ヌクレオチド」(もしくは「ヌクレオチド類縁体」)について上に概説したように、何らかの修飾によって天然のヌクレオシドとは異なる。
【0039】
EBV標的をコードする核酸分子を増幅する修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド類縁体を含むオリゴヌクレオチド、EBVの別の部位をコードする核酸は、例えば、OLIGO(Molecular Biology Insights Inc.Cascade,Colo.)などのコンピュータプログラムを使用して設計し得る。増幅プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計する際の重要な特徴としては、検出(例えば、電気泳動によって)を容易にするための適切なサイズの増幅産物、一対のプライマーのメンバーに対する同様の融解温度、および各プライマーの長さ(すなわち、プライマーは、配列特異性でアニーリングし、合成を開始するのに十分な長さである必要があるが、オリゴヌクレオチド合成中に忠実度が低下するほど長くはない)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、オリゴヌクレオチドプライマーは8~50ヌクレオチド長(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48もしくは50ヌクレオチド長)である。
【0040】
プライマーのセットに加えて、本方法は、EBVの存在もしくは非存在を検出するために1つ以上のプローブを使用し得る。「プローブ」という用語は、合成的もしくは生物学的に生成された核酸(DNAもしくはRNA)を指し、これは、設計もしくは選択により、EBV(標的)核酸が存在する場合に、規定される所定のストリンジェンシーの下で特異的に(すなわち、優先的に)、「標的核酸」にハイブリダイズすることを可能にする、特定のヌクレオチド配列を含む。「プローブ」は、標的核酸を検出することを意味する「検出プローブ」と称され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、開示されるプローブは、少なくとも1種の蛍光標識で標識され得る。一実施形態では、EBVプローブは、ドナー蛍光部分、例えば、蛍光色素、および対応するアクセプター部分、例えば、クエンチャーで標識し得る。一実施形態では、プローブは蛍光部分を含むか、もしくはそれからなり、核酸配列は配列番号2および/または5を含むか、もしくはそれからなる。
【0042】
プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドの設計は、プライマーの設計と同様の方法で行い得。実施形態は、増幅産物の検出のために単一のプローブもしくは一対のプローブを使用し得る。実施形態に応じて、使用するプローブ(複数可)は、少なくとも1種の標識および/または少なくとも1種のクエンチャー部分を含み得る。プライマーと同様に、プローブは通常同様の融解温度を有し、各プローブの長さは配列特異的ハイブリダイゼーションが起こるのに十分でなければならないが、合成中に忠実度が低下するほど長くはない。オリゴヌクレオチドプローブは、一般に15~40(例えば、16、18、20、21、22、23、24、もしくは25)ヌクレオチド長である。
【0043】
コンストラクトは、それぞれがEBVプライマーおよびプローブ核酸分子(例えば、配列番号、1、2、3、4および5)のうちの1つを含有するベクターを含み得る。コンストラクトは、例えば、対照鋳型核酸分子として使用し得る。使用に適したベクターは、市販されている、および/または当技術分野で日常的な組換え核酸技術法によって製造される。EBV核酸分子は、例えば、化学合成、EBVからの直接クローニング、もしくは核酸増幅によって得ることができる。
【0044】
本方法での使用に適したコンストラクトは、典型的には、EBV核酸分子(例えば、配列番号1~6の1つ以上の配列を含む核酸分子)に加えて、所望のコンストラクトおよび/または形質転換体を選択するための選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする配列、および複製起点を含む。ベクター系の選択は、通常、宿主細胞の選択、複製効率、選択性、誘導性および回収の容易さを含むがこれらに限定されない、いくつかの要因に依存する。
【0045】
EBV核酸分子を含有するコンストラクトを、宿主細胞内で増殖させ得る。本明細書で使用される宿主細胞という用語は、原核生物および真核生物、例えば酵母、植物細胞および動物細胞を含むことを意味する。原核生物宿主には、大腸菌(E.coli)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)およびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)が含まれ得る。真核生物宿主としては、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ポンベ(S.pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母、COS細胞もしくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞、昆虫細胞、およびアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)およびニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)などの植物細胞が挙げられる。コンストラクトを、当業者に一般的に知られている技術のいずれかを使用して宿主細胞に導入することができる。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクションおよびウイルス媒介核酸移入は、核酸を宿主細胞に導入するための一般的な方法である。更に、ネイキッドDNAを細胞に直接送達し得る(例えば、米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号を参照されたい)。
【0046】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号および同第4,965,188号は、従来のPCR技術を開示している。PCRは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えば、DNAもしくはRNA)に結合する2種のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。いくつかの実施形態では有用なプライマーは、記載されるEBV核酸配列内の核酸合成の開始点として作用し得るオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号1、3、4および6)を含む。プライマーは、従来の方法によって制限消化物から精製し得るか、もしくは合成的に生成し得る。プライマーは増幅における最大効率には一本鎖が好ましいが、プライマーは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーは、最初に変性され、すなわち、鎖を分離するために処理される。二本鎖核酸を変性させる1つの方法は、加熱によるものである。
【0047】
鋳型核酸が二本鎖である場合、PCRで鋳型として使用することができるようにする前に、2本の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、物理的、化学的、もしくは酵素的手段を含む任意の好適な変性方法によって達成し得る。核酸鎖を分離する1つの方法は、核酸が優位に変性する(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%を超える変性)まで加熱することを含む。鋳型核酸を変性させるのに必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩濃度、および変性される核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するが、典型的には、温度および核酸長などの反応の特徴に応じて、約90℃~約105℃の範囲である。変性は、典型的には、約30秒間~4分間(例えば、1分~2分30秒、もしくは1.5分)行われる。
【0048】
二本鎖の鋳型核酸が熱により変性された場合、反応混合物は、その標的配列に対する各プライマーのアニーリングを促進する温度まで冷却される。アニーリングの温度は、通常、約35℃~約65℃、(例えば、約40℃~約60℃、約45℃~約50℃)である。アニーリング時間は、約10秒~約1分(例えば、約20秒~約50秒、約30秒~約40秒)であり得る。次いで、ポリメラーゼの活性が促進もしくは最適化される温度、すなわち、アニーリングされたプライマーから伸長が起こって、鋳型核酸に相補的な産物を生成するのに充分な温度に、反応混合物を調節する。温度は、核酸鋳型にアニーリングされた各プライマーから伸長産物を合成するのに充分でなくてはならないが、その相補的な鋳型から伸長産物を変性させるほど高くすべきではなく(例えば、伸長のための温度は、概して、約40℃~約80℃(例えば、約50℃~約70℃、約60℃)の範囲である)。伸長時間は、約10秒~約5分(例えば、約30秒~約4分、約1分~約3分、約1分30秒~約2分)であり得る。
【0049】
レトロウイルス若しくはRNAウイルスのゲノム、もしくはEBVなどのDNAウイルスによって産生されるmRNAは、リボ核酸、すなわち、RNAからなる。そのような場合、鋳型核酸であるRNAは、酵素逆転写酵素の作用を介して相補的DNA(cDNA)に最初に転写されなければならない。逆転写酵素は、RNA鋳型およびRNAの3’末端に相補的な短いプライマーを使用して、第1鎖cDNAの合成を指示し、次いでこれをポリメラーゼ連鎖反応の鋳型として直接使用し得る。
【0050】
PCRアッセイは、RNAもしくはDNA(cDNA)などの核酸を使用し得る。鋳型核酸を精製する必要はなく、ヒト細胞に含まれるEBV核酸などの複合混合物の微量画分であり得る。EBV核酸分子は、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications(Persing et al.(eds),1993,American Society for Microbiology,Washington D.C.)に記載されているものなどの日常的な技術によって生物学的サンプルから抽出され得る。核酸は、任意の数の供給源、例えばプラスミド、もしくは、細菌、酵母、ウイルス、細胞小器官、もしくは植物若しくは動物などの高等生物を含む天然供給源から得ることができる。
【0051】
オリゴヌクレオチドプライマー(例えば、配列番号1、2、4、および5)を、プライマー伸長を誘導する反応条件下でPCR試薬と組み合わせる。例えば、鎖伸長反応には、一般に、50mM KCl、10mM Tris-HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、0.001%(w/v)ゼラチン、0.5~1.0μgの変性された鋳型DNA、50pmolの各オリゴヌクレオチドプライマー、2.5UのTaqポリメラーゼおよび10%DMSO)が含まれる。反応物は、通常、それぞれ150~320μMのdATP、dCTP、dTTP、dGTP、もしくはそれらの1種以上の類縁体を含有する。
【0052】
新規に合成された鎖は、反応の後続工程で使用できる二本鎖分子を形成する。標的EBV核酸分子に対応する所望の量の増幅産物を生成するために、鎖分離、アニーリング、および伸長の工程を必要に応じて何度でも繰り返すことができる。反応の制限因子は、反応中に存在するプライマー、熱安定性酵素、およびヌクレオシドトリホスフェートの量である。サイクリング工程(すなわち、変性、アニーリング、および伸長)は、好ましくは少なくとも1回繰り返される。検出での使用では、サイクリング工程の数は、例えば、サンプルの性質による。サンプルが核酸の複雑な混合物である場合、検出に充分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクリング工程が必要となる。概して、サイクリング工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40、60、もしくは100回繰り返してもよい。
【0053】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
FRET技術(例えば、米国特許第4,996,143号、同第5,565,322号、同第5,849,489号、同第6,162,603号を参照)は、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分が互いに一定の距離内に配置されると、2つの蛍光部分間でエネルギー移動が生じ、それを可視化することができ、もしくは他の方法で検出および/または定量することができるという概念に基づいている。典型的に、ドナーは好適な波長の光放射によって励起されると、アクセプターにエネルギーを移動させる。典型的に、アクセプターは転移されたエネルギーを異なる波長の光放射の形態で再放射する。特定の系では、非蛍光エネルギーは、実質的に非蛍光のドナー部分(例えば、米国特許第7,741,467号を参照)を含む生体分子を介して、ドナー部分とアクセプター部分との間で移動され得る。
【0054】
一例では、オリゴヌクレオチドプローブは、ドナー蛍光部分もしくは色素(例えば、HEXもしくはFAM)と、蛍光性であってもなくてもよく、光以外の形態で伝達されたエネルギーを散逸させる対応するクエンチャー(例えば、BlackHole Quencher(商標)(BHQ)(BHQ-2など))とを含有することができる。プローブがインタクトである場合、エネルギー移動は、典型的には、ドナー蛍光部分からの蛍光発光がアクセプター部分によってクエンチされるように、ドナー部分とアクセプター部分との間で起こる。ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程中、増幅産物に結合したプローブは、ドナー蛍光部分の蛍光発光がもはやクエンチされないように、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって切断される。この目的のための例示的なプローブは、例えば、米国特許第5,210,015号、同第5,994,056号、および同第6,171,785号に記載されている。一般的に使用されるドナー-アクセプター対は、FAM-TAMRA対を包含する。一般的に使用されるクエンチャーは、DABCYLおよびTAMRAである。一般的に使用されるダーククエンチャーは、BlackHole Quencher(商標)(BHQ)(BHQ2など)、(Biosearch Technologies,Inc.、カリフォルニア州ノヴァト)、Iowa Black(商標)(Integrated DNA Tech.,Inc.、アイオワ州コーラルビル)、BlackBerry(商標)Quencher 650(BBQ-650)(Berry&Assoc、ミシガン州デクスタ)を包含する。
【0055】
別の例では、それぞれが蛍光部分を含有する2つのオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドプローブの相補性によって決定される特定の位置で増幅産物にハイブリダイズすることができる。オリゴヌクレオチドプローブが適切な位置で増幅産物核酸にハイブリダイゼーションすると、FRETシグナルが生成される。ハイブリダイゼーション温度は、約10秒間~約1分間、約35℃~約65℃の範囲であり得る。
【0056】
蛍光分析は、例えば、光子計数落射蛍光顕微鏡システム(適切なダイクロイックミラーおよび特定の範囲の蛍光発光を監視するためのフィルタを備える)、光子計数光電子増倍管システム、もしくは蛍光光度計を使用して行い得る。エネルギー移動を開始するため、もしくは蛍光体の直接検出を可能にするための励起は、アルゴンイオンレーザー、高強度水銀(Hg)アークランプ、キセノンランプ、光ファイバー光源、もしくは所望の範囲の励起のために適切にフィルタリングされた他の高強度光源を用いて行うことができる。
【0057】
ドナー部分および対応するアクセプター部分「対応する」に関して本明細書で使用される場合、ドナー蛍光部分の発光スペクトルと重複する吸光度スペクトルを有するアクセプター蛍光部分もしくはダーククエンチャーを指す。アクセプター蛍光部分の発光スペクトルの波長最大値は、ドナー蛍光部分の励起スペクトルの波長最大値よりも少なくとも100nm大きくなければならない。したがって、それらの間で効率的な非放射エネルギー伝達を行い得る。
【0058】
蛍光ドナー部分および対応するアクセプター部分は、一般に、(a)高効率Foersterエネルギー移動、(b)大きな最終ストークスシフト(>100nm)、(c)可能な限り可視スペクトルの赤色部分(>600nm)への発光のシフト;および(d)ドナー励起波長での励起によって生じるラマン水蛍光発光よりも高い波長への発光のシフトのために選択される。例えば、レーザー線付近のその最大励起波長(例えば、ヘリウム-カドミウム442nmもしくはアルゴン488nm)、高い吸光係数、高い量子収率、およびその蛍光発光に対応するアクセプター蛍光部分の励起スペクトルとの良好な重複を有するドナー蛍光部分を選択することができる。高い吸光係数、高い量子収率、ドナー蛍光部分の発光とのその励起の良好な重複、および可視スペクトルの赤色部分(>600nm)の発光を有する対応するアクセプター蛍光部分を選択することができる。
【0059】
FRET技術において様々なアクセプター蛍光部分と共に使用することができる代表的なドナー蛍光部分としては、フルオレセイン、ルシファーイエロー、B-フィコエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファーイエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアナトスチルベン-2、2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシンイミジル(succinimdyl)1-ピレンブチレート、および4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体が挙げられる。代表的なアクセプター蛍光部分としては、使用されるドナー蛍光部分に応じて、LC Red 640、LC Red 705、Cy5、Cy5.5、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、ローダミンxイソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、フルオレセイン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、もしくはランタニドイオンの他のキレート(例えば、ユウロピウム、もしくはテルビウム)が挙げられる。ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分は、例えば、Molecular Probes(オレゴン州ジャンクションシティ)もしくはSigma Chemical Co.(ミズーリ州セントルイス)から得ることができる。
【0060】
ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分を、リンカーアームを介して適切なプローブオリゴヌクレオチドに結合することができる。リンカーアームはドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分との間の距離に影響を及ぼすので、各リンカーアームの長さは重要である。リンカーアームの長さは、ヌクレオチド塩基から蛍光部分までのオングストローム(Å)の距離であり得る。一般に、リンカーアームは約10A~約25Aである。リンカーアームは、国際公開第84/03285号に記載されている種類のものであってもよい。国際公開第84/03285号はまた、リンカーアームを特定のヌクレオチド塩基に結合させる方法、および蛍光部分をリンカーアームに結合させる方法も開示している。
【0061】
LC Red 640などのアクセプター蛍光部分を、アミノリンカー(例えば、ABI(カリフォルニア州フォスターシティ)もしくはGlen Research(バージニア州スターリング)から入手可能なC6-アミノホスホラミダイト)を含有するオリゴヌクレオチドと組み合わせて、例えば、LC Red 640標識オリゴヌクレオチドを生成することができる。フルオレセインなどのドナー蛍光部分をオリゴヌクレオチドに結合させるためによく使用されるリンカーとしては、チオ尿素リンカー(FITC由来、例えばGlen ResearchもしくはChemGene(マサチューセッツ州アッシュランド)製のフルオレセイン-CPG)、アミド-リンカー(BioGenex(カリフォルニア州サンラモン)製のCX-フルオレセイン-CPGなどの、フルオレセイン-NHS-エステル由来)、もしくはオリゴヌクレオチド合成後にフルオレセイン-NHS-エステルの結合を必要とする3’-アミノ-CPGが挙げられる。
【0062】
本開示は、生体サンプルもしくは非生体サンプル中のEBVの存在もしくは非存在を検出するための方法を提供する。提供される方法は、サンプル汚染、偽陰性、および偽陽性の問題を回避する。上記方法は、1つ以上のプライマー対を使用してサンプルからの標的核酸分子の一部を増幅することを含む少なくとも1つのサイクリング工程を実施すること、およびFRET検出工程を含む。複数のサイクリング工程は、好ましくはサーモサイクラーで行われる。方法を、EBVの存在を検出するためにプライマーおよびプローブを使用して行うことができ、標的EBV遺伝子の検出は、サンプル中のEBVの存在を示す。
本明細書に記載されるように、増幅産物は、FRET技術を利用する標識ハイブリダイゼーションプローブを使用して検出することができる。1つのFRETフォーマットは、TaqMan(登録商標)技術を利用して、増幅産物の存在もしくは非存在、したがってEBVの存在もしくは非存在を検出する。TaqMan(登録商標)技術は、例えば1種の蛍光部分もしくは色素(例えばHEXもしくはFAM)と、蛍光性であってもなくてもよい1種のクエンチャー(例えば、BHQ-2)で標識された1つの一本鎖ハイブリダイゼーションプローブとを利用する。第1の蛍光部分が適切な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーは、FRETの原理に従って第2の蛍光部分もしくはダーククエンチャーに移動する。第2の蛍光部分は、一般的には、クエンチャー分子である。PCR反応のアニーリング工程中、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的DNA(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長段階中に、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、蛍光部分とクエンチャー部分とが、互いに空間的に分離した状態となる。結果として、クエンチャーの不在下において第1の蛍光部分を励起すると、第1の蛍光部分からの蛍光発光を検出することができる。例として、ABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)は、TaqMan(登録商標)技術を使用し、サンプル中のEBVの存在もしくは非存在を検出するための本明細書に記載の方法を実施するのに適している。
【0063】
FRETと組み合わせた分子ビーコンを使用して、リアルタイムPCR法を使用して増幅産物の存在を検出することもできる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部分および第2の蛍光部分で標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する。第2の蛍光部分は一般的にはクエンチャーであり、蛍光標識は典型的にはプローブの各端部に配置される。分子ビーコン技術は、二次構造形成を可能にする配列(例えば、ヘアピン)を有するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。プローブ内で二次構造が形成された結果、プローブが溶液中にある場合、両方の蛍光部分が空間的に近接する。標的核酸(すなわち、増幅産物)へのハイブリダイゼーション後、プローブの二次構造が破壊され、蛍光部分が互いに分離され、それにより、適切な波長の光による励起後、第1の蛍光部分の発光を検出することができる。
【0064】
FRET技術の別の共通形式は、2つのハイブリダイゼーションプローブを利用する。各プローブは、異なる蛍光部分で標識することができ、一般に、標的DNA分子(例えば、増幅産物)内で互いに近接してハイブリダイズするように設計される。ドナー蛍光部分、例えばフルオレセインは、LightCycler(登録商標)Instrumentの光源によって470nmで励起される。FRETの間、フルオレセインは、そのエネルギーをアクセプター蛍光部分、例えばLightCycler(登録商標)-Red 640(LC Red 640)or LightCycler(登録商標)-Red 705(LC Red 705)に移動する。次いで、アクセプター蛍光部分はより長い波長の光を放出し、これはLightCycler(登録商標)機器の光学検出システムによって検出される。効率的なFRETは、蛍光部分が直接局所的に近接しており、ドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプター蛍光部分の吸収スペクトルと重なっている場合にのみ起こり得る。放出されたシグナルの強度は、元の標的DNA分子の数(例えば、EBVゲノムの数)と相関させることができる。標的核酸の増幅が起こり、増幅産物が産生される場合、ハイブリダイズする工程は、プローブ対のメンバー間のFRETに基づく検出可能なシグナルをもたらす。
【0065】
一般に、FRETの存在はサンプル中のEBVの存在を示し、FRETの非存在はサンプル中のEBVの非存在を示す。しかしながら、不十分な検体収集、輸送遅延、不適切な輸送条件、もしくは特定の収集スワブ(アルギン酸カルシウムもしくはアルミニウムシャフト)の使用はいずれも、試験結果の成功および/または精度に影響を及ぼし得る条件である。
【0066】
本方法の実施に使用することができる代表的な生物学的サンプルとしては、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚および軟部組織感染が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的サンプルの収集および保存方法は、当業者に知られている。生物学的サンプルを(例えば、当技術分野で知られている核酸抽出方法および/またはキットによって)処理してEBV核酸を放出させ得、もしくはいくつかの場合では、生物学的サンプルをPCR反応成分および適切なオリゴヌクレオチドと直接接触させ得る。一部の例では、生物学的サンプルは全血である。全血を典型的に収集する場合、全血を適切な温度で保存することを可能にする、ヘパリン、クエン酸塩、もしくはEDTAなどの抗凝固剤を含む容器に収集することが多い。しかし、そのような条件下では、全血内の核酸はかなりの量の分解を受ける。したがって、核酸安定化溶液などの、核酸を含む全血成分を溶解、変性および安定化する試薬に血液を回収することが有利であり得る。そのような場合、核酸は、後続の単離およびPCRなどの核酸試験などによる分析のために、より良好に保存および安定化され得る。そのような核酸安定化溶液は当技術分野で周知であり、これには、限定するものではないが、pH 7.5で4.2 Mグアニジニウム塩(GuHCl)および50 mM Trisを含有するcobas PCR培地が含まれる。
【0067】
サンプルは、分析前にサンプルを適切に保持および保存するように設計された任意の方法もしくは装置によって回収することができる。そのような方法および装置は、当技術分野で周知である。サンプルが全血などの生物学的サンプルである場合、方法もしくは装置は、採血管を含むことができる。このような採血管は、当該技術において周知であり、例えば採血チューブを含むことができる。多くの場合、採血チューブを使用することが有利であり得、この場合、採血管は、サンプル取り込みのために意図された空間内で圧力下にあり、例えば、バキュテナー採血チューブのような、真空チャンバを有する血液管などである。真空チャンバを有するそのような採血チューブ、例えばバキュテナー採血チューブは、当技術分野で周知である。核酸を含む全血成分を溶解、変性、および安定化する溶液、例えば核酸安定化溶液を内部に含む採血管内に、吸引される全血が採血管内の核酸安定化溶液と直ちに接触するように、真空チャンバの有無にかかわらず、血液を回収することがさらに有利であり得る。
【0068】
融解曲線分析は、サイクルプロファイルに含めることができる追加の工程である。融解曲線分析は、DNA二本鎖の半分が一本鎖に分離した温度として定義される融解温度(Tm)と呼ばれる特徴的な温度でDNAが融解するという事実に基づいている。DNAの融解温度は、主にそのヌクレオチド組成に依存する。したがって、GおよびCヌクレオチドが豊富なDNA分子は、AおよびTヌクレオチドが豊富なDNA分子よりも高いTmを有する。シグナルが失われる温度を検出することにより、プローブの融解温度を決定することができる。同様に、シグナルが発生する温度を検出することにより、プローブのアニール温度を決定することができる。増幅産物からのプローブの融解温度(複数可)により、サンプル中のEBVの有無を確認し得る。
【0069】
各サーモサイクラーを運転している間に、対照サンプルも同様にサイクルすることができる。陽性対照サンプルは、例えば、対照プライマーおよび対照プローブを使用して、(記載された標的遺伝子の増幅産物以外の)標的核酸対照鋳型を増幅することができる。陽性対照サンプルはまた、例えば標的核酸分子を含むプラスミドコンストラクトを増幅することができる。そのようなプラスミド対照は、意図された標的の検出に使用されるのと同じプライマーおよびプローブを使用して、内部で(例えば、サンプル中で)もしくは患者のサンプルと並んで実行される別々のサンプル中で増幅することができる。そのような対照は、増幅、ハイブリダイゼーションおよび/またはFRET反応の成功もしくは失敗の指標である。各サーモサイクラー実行はまた、例えば標的鋳型DNAを欠く陰性対照を含むことができる。陰性対照は汚染を測定することができる。これにより、システムおよび試薬が偽陽性シグナルを生じないことが保証される。したがって、対照反応は、例えば、プライマーが配列特異性によりアニールし、伸長を開始する能力、およびプローブが配列特異性によりハイブリダイズし、FRETが発生する能力を容易に決定することができる。
【0070】
一実施形態では、本方法は、汚染を回避する工程を含む。例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼを利用する酵素的方法は、あるサーモサイクラー運転と次のサーモサイクラー運転との間の汚染を低減もしくは排除するために、米国特許第5,035,996号、同第5,683,896号および同第5,945,313号に記載される。
FRET技術と組み合わせた従来のPCR法を使用して、この方法を実施することができる。一実施形態では、LightCycler(登録商標)機器が使用される。以下の特許出願:国際公開第97/46707号、国際公開第97/46714号および国際公開第97/46712号は、LightCycler(登録商標)技術で使用されるリアルタイムPCRを開示している。
【0071】
サンプルからのシグナルは、機械が光学ユニット上に毛細管を順次配置するときに得られる。ソフトウェアは、各測定の直後にリアルタイムで蛍光シグナルを表示し得る。蛍光取得時間は10~100ミリ秒(msec)である。各サイクリング工程の後、蛍光対サイクル数の定量的表示を、全てのサンプルについて連続的に更新し得る。生成されたデータは、さらなる分析のために保存し得る。
【0072】
LightCycler(登録商標)480 II Real-Time PCR Systemは、PCワークステーションを使用しても操作し得る。装置はサーマルブロックサイクラーを有し、ペルチェ素子を使用して加熱および冷却が達成される。サンプルからの蛍光シグナルは、広域スペクトルにわたって光を発する高強度キセノンランプを使用して96ウェルプレートから得られる。特定の励起および発光のための内蔵フィルタの柔軟な組み合わせにより、様々な蛍光色素および検出フォーマットの使用が可能になる。ソフトウェアは、蛍光シグナルを表示し、CT値を計算すし得、生成されたデータは、さらなる分析のために保存し得る。
【0073】
FRETの代替として、蛍光DNA結合色素(例えば、SYBR(登録商標)GreenもしくはSYBR(登録商標)Gold(Molecular Probes))のような二本鎖DNA結合色素を用いて、増幅産物を検出し得る。二本鎖核酸との相互作用の際、このような蛍光DNA結合色素は、好適な波長の光で励起した後、蛍光シグナルを発する。また、核酸インターカレート色素などの二本鎖DNA結合色素を用いることもできる。二本鎖DNA結合色素を使用する場合、増幅産物の存在を確認するために、通常は融解曲線分析を行う。
【0074】
当業者は、他の核酸もしくはシグナル増幅方法も使用され得ることを理解するであろう。そのような方法の例としては、限定されないが、分岐DNAシグナル増幅、ループ媒介等温増幅(LAMP)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、自立配列複製(3 SR)、鎖置換増幅(SDA)、もしくはスマート増幅プロセスバージョン2(SMAP 2)が挙げられる。
【0075】
本開示の実施形態は、1種以上の市販の機器の構成によって限定されないことが理解される。
【0076】
製造品/キット
本開示の実施形態は、EBVを検出するための製造品、組成物もしくはキットを更に提供する。製造品は、適切な包装材料と共に、標的EBV遺伝子を検出するために使用されるプライマーおよびプローブを含み得る。EBVを検出するための代表的なプライマーおよびプローブは、標的核酸分子にハイブリダイズし得る。更に、キットはまた、固体支持体、緩衝液、酵素およびDNA標準のような、DNA固定化、ハイブリダイゼーションおよび検出に必要な適切に包装された試薬および材料を含み得る。プライマーおよびプローブを設計する方法が本明細書に開示され、増幅して標的核酸分子にハイブリダイズするプライマーおよびプローブの代表的な例が提供される。
【0077】
製造品はまた、プローブを標識するための1種以上の蛍光部分を含み得、あるいは、キットと共に供給されるプローブを標識し得る。例えば、製造品は、プローブを標識するためのドナーおよび/またはアクセプター蛍光部分を含み得る。好適なFRETドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分の例を上に提供する。
【0078】
製造品はまた、サンプル中のEBVを検出するプライマーおよびプローブを使用するための説明書を有する添付文書もしくは包装ラベルを含み得る。製造品は、本明細書に開示される方法を実施するための試薬(例えば、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、補因子、もしくは汚染を防止するための薬剤)を更に含み得る。そのような試薬は、本明細書に記載の市販の機器の1種に特異的であり得る。
【0079】
本開示の実施形態はまた、サンプル中のEBVを優先的および/または選択的に検出および/または定量するための一組のプライマーおよび1つ以上の検出可能なプローブを提供する。
【0080】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例において更に説明される。
【実施例
【0081】
以下の実施例および図は、主題の理解を助けるために提供されており、その主題の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【0082】
この試験では、完全に自動化されたサンプル調製(核酸の抽出および精製)に続いてPCR増幅および検出を実施した。使用したシステムは、サンプル供給モジュール、移動モジュール、処理モジュール、および分析モジュールからなる、cobas(登録商標)6800/8800システムであった。自動化したデータ管理は、cobas(登録商標)6800/8800のシステムによって実行された。
【0083】
マスターミックスは、EBVおよび対照核酸に特異的な検出プローブを含んでいた。特異的なEBV検出プローブおよび対照検出プローブを、レポーターとして作用する2つのユニークな蛍光色素の1つでそれぞれ標識した。それぞれのプローブは、クエンチャーとして作用する第2の色素も有していた。レポーター色素を規定された波長で測定し、それによって増幅されたEBV標的および対照の検出および識別が可能になる。完全なプローブの蛍光シグナルは、クエンチャー色素によって抑制された。PCR増幅工程の間、プローブの特異的な一本鎖DNA鋳型へのハイブリダイゼーションにより、DNAポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性により切断され、レポーター色素およびクエンチャー色素が分離し、蛍光シグナルが産生された。各PCRサイクルに伴い、切断プローブ量が増加し、レポーター色素の累積シグナルが同時に増加した。2つの特異的なレポーター色素は、一定の波長で測定されるので、増幅したEBV標的と対照の同時検出および識別が可能であった。
【0084】
EBV試験用のプライマーおよびプローブは、アライメントに基づいて最も保存されている領域中のゲノムに従ってプライマーおよびプローブをシーディングすること(seeding)によって設計した。EBVゲノムのBMRF2領域を検出するために、オリゴヌクレオチドの1セット(配列番号1~3)を設計した。EBVゲノムのEBNA1領域を検出するために、オリゴヌクレオチドの別のセット(配列番号4~6)を設計した。オリゴヌクレオチド(もしくはプライマー/プローブ)の各セットは、興味のある特定の標的領域(すなわち、BMRF2およびEBNA1)を増幅および検出するために、独自の反応でシングルプレックスで使用し得る。しかしながら、オリゴヌクレオチドのセットは、二重標的化アッセイで併用することもでき、これにより、反応混合物に両方のオリゴヌクレオチドセット(配列番号1~3および配列番号4~6)が含まれているため、単一のリアルタイムPCR反応で、BMRF2およびEBNA1の両方がサンプル内で増幅され、検出される。BMRF2領域の検出については、フォワードプライマーは配列番号1の核酸配列に対応し、リバースプライマーは配列番号3の核酸配列に対応し、プローブは配列番号2の核酸配列に対応する。EBNA1領域の検出については、フォワードプライマーは配列番号4の核酸配列に対応し、リバースプライマーは配列番号6の核酸配列に対応し、プローブは配列番号5の核酸配列に対応する。これらのオリゴヌクレオチドは、EBVのBMRF2領域の検出(配列番号1~3を使用)およびEBVのEBNA1領域の検出(配列番号4~6を使用)のための個々のアッセイに使用し得る。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド(配列番号1~6)が、同じサンプル中のEBVのBMRF2領域およびEBNA1領域を同時に検出する二重標的アッセイにおいて使用し得る。二重標的アッセイには、1つ以上の標的領域が何らかの種類のミスマッチもしくはエラーを含む場合、もしくは反応の1つがエラーを経験した場合、別の標的および起こり得る別の反応が存在するという点で、一定の利点がある。
【0085】
実施例1:リアルタイムPCRによるEBV検出のためのプライマーおよびプローブの設計
EBV核酸試験は、2つの標的を意識して設計した。選択された2つの標的は、BMRF2およびEBNA1であり、図1に示されている。これらの候補は、二重標的アッセイで個別にもしくは一緒に二重に使用し得る。二重標的アッセイとして使用する場合、2セットのプライマーおよびプローブを使用する(各セットはEBNA1もしくはBMRF2のいずれかを検出する)。上記表1に示すように、BMRF2標的用プライマーは配列番号1および3の核酸配列を有し、BMRF2標的用プローブは配列番号2の核酸配列を有する。また、上記表1に示すように、EBNA1標的用プライマーは配列番号4および6の核酸配列を有し、EBNA1標的用プローブは配列番号5の核酸配列を有するBMRF2を標的とするプライマーによって生成されたアンプリコンは、96塩基対長のアンプリコンであり、(プライマーおよびプローブがアンプリコンと重複する位置と共に)図2に示されている。EBNA1を標的とするプライマーによって生成されたアンプリコンは、98塩基対長のアンプリコンであり、(プライマーおよびプローブがアンプリコンと重複する位置と共に)図3に示されている。
【0086】
実施例2:EBVプライマーおよびプローブは、リアルタイムPCRアッセイにおいてEBVのBMRF2およびEBNA-1を検出する。
EBV核酸試験は、BMRF2(配列番号1~3)およびEBNA1(配列番号4~6)を検出するためのプライマー/プローブを用いて試験した。EBVアッセイの全過程を実行した。以下の4種類のEBV含有サンプルを使用した:(1)EBV陰性血漿にスパイクした、EBV感染Raji細胞抽出物;(2)抽出したEBV DNA(Advanced Biotechnologies(カタログ番号17-926-500)由来のB95-8細胞株から抽出);(3)Qnostics EBV分析パネル(EBV1604009C);および(4)EBVに関する第1のWHO国際基準。使用される試薬としては、cobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、cobas(登録商標)6800/8800で使用するためのプロファイルおよび条件、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用するものが挙げられる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。使用したcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを以下の表2に示す:
【表2】
【0087】
結果を、以下の表3に示す。
【表3】
【0088】
EBVストックの第1のWHO国際標準は5×106IU/mlの濃度であったが、Qnostics EBV Analytic Panelは様々な一連の濃度のサンプルを有する。WHO材料の連続希釈およびQnosticsパネルの一部のさらなる希釈を行った。Qnostics EBV分析パネルを8,000、800、80および8IU/mlで分析したのに対して、EBVの第1のWHO国際標準は800,000、80,000、8,000、800、80および8IU/mlで分析した。Qnostics EBV分析パネル、およびEBVについての第1のWHO国際標準についての結果を図4A~4Cに示す。二重標的アッセイの別の完全プロセス試験を、図5H図5Lに示されるような細胞培養由来ウイルス材料(正確な診断上清)と、図5A図5Gに示されるような両方の標的領域を含有する対照プラスミド材料との両方で行った。これらの2つの材料をそれぞれ希釈し、推定力価は、両方の材料を試験することができた1E4IU/mLおよび1E3IU/mLで重複した。得られた成長曲線を図5A図5Lに示した。これらのデータおよび結果により、プライマーおよびプローブ(配列番号1~6)が、市販および国際標準を含む様々な種類のサンプルにおいてEBVの存在を増幅および検出することが実証されている。
【0089】
EBV二重標的プラスミドおよび単一標的プラスミドは、単一標的EBVプライマーおよびプローブを使用して試験した。結果を図6Aおよび6Bに示す。これにより、BMRF2およびEBNA1の両方の陽性対照鋳型が、BMRF2(配列番号1~3)およびEBNA1(配列番号4~6)のそれぞれのEBVプライマー/プローブによって増幅および検出されるが、各単一標的対照プラスミドは他の標的と交差反応せず、一方、二重標的対照プラスミドおよびウイルスゲノムDNA抽出物は両方のオリゴセットによって増幅されることが実証される。
【0090】
EBV遺伝子型1およびEBV遺伝子型2の材料に対して、二重標的アッセイの直線性試験を行った。遺伝子型1については、細胞培養由来ウイルス材料(正確な診断)および両方の標的領域を含有する対照プラスミド材料の両方を使用し、その推定力価は重複していた。遺伝子型2については、細胞培養由来ウイルス材料(ATCC株P3)を試験した。結果を図7および8に示す。これらのデータおよび結果は、アッセイがEBV遺伝子型1と遺伝子型2の両方を検出し、それらの定量に使用できることを示している。
【0091】
前述の発明を明確化および理解するためにある程度詳細に説明してきたが、本開示を読むことにより、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることが当業者には明らかであろう。例えば、上述した全ての技術および装置を、様々な組み合わせで使用することができる。本出願で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、あたかも各個別の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が全ての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されているのと同程度に、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図7
図8
【配列表】
2022541331000001.app
【国際調査報告】