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特表2022-541355ごま油粕抽出物の製造方法、及びこれを有効成分として含む大腸炎予防又は改善用食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ごま油粕抽出物の製造方法、及びこれを有効成分として含む大腸炎予防又は改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20220915BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220915BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220915BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220915BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20220915BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20220915BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20220915BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20220915BHJP
   A23G 9/42 20060101ALI20220915BHJP
   C12G 3/05 20190101ALI20220915BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20220915BHJP
   A23L 13/40 20160101ALI20220915BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A61K36/185
A61P1/04
A61P3/04
A61P29/00
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A23G3/48
A23G1/48
A21D2/36
A23L7/109 A
A23G9/42
C12G3/05
A23G4/06
A23L13/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020557171
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 KR2020012832
(87)【国際公開番号】W WO2021261660
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077938
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519426531
【氏名又は名称】クイーンズバケット カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム, ヨスク
【テーマコード(参考)】
4B014
4B016
4B018
4B032
4B042
4B046
4B115
4B117
4C088
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB04
4B014GB06
4B014GB07
4B014GB13
4B014GB17
4B014GB18
4B014GB19
4B014GB21
4B014GG09
4B016LC04
4B016LC07
4B016LE04
4B016LG05
4B016LP02
4B016LP13
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD56
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B032DB32
4B032DK29
4B042AC04
4B042AH01
4B042AK11
4B046LA01
4B046LG25
4B115LH01
4B117LC04
4B117LG07
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA18
4C088NA14
4C088ZA66
4C088ZA68
4C088ZA70
4C088ZB11
(57)【要約】
【課題】ごま油粕抽出物の製造方法、及びこれを有効成分として含む大腸炎予防又は改善用食品組成物の提供。
【解決手段】本発明は、水を溶媒にして、ごま油粕を超音波抽出する抗大腸炎の効能があるごま油粕抽出物の製造方法を提供する。本発明に係るごま油粕抽出物は、体重減少を抑制させ、糞便異常、直腸出血と腸の長さの減少を抑制させ、炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αの発現を抑制させる効果を持つため、これを有効成分として含む組成物は、炎症性疾患、特に大腸炎疾患を予防/改善し、又は治療することができる組成物として、医薬品や機能性健康食品など、様々な産業分野で有用に使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごま油粕に溶媒を添加してごま油粕泊混合物を製造する段階と、
上記ごま油粕混合物を超音波抽出する段階と、
上記超音波抽出した抽出物を濾過した後、濃縮する段階と、
上記濃縮した濃縮液を乾燥する段階
を含む、ごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項2】
上記超音波抽出段階で、10~50kHzの周波数、20℃~30℃の温度、3~5時間及び70~90%の振幅条件で超音波処理することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項3】
上記超音波抽出段階を1~5回繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項4】
上記ごま油粕混合物は、ごま油粕対溶媒を1:10~1:30の重量比(w/v)で混合したものであることを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項5】
上記濃縮段階で、50℃~60℃の温度、15~25の攪拌RPM、-9~-7torrの真空度及び170~190L/hrの蒸発速度の条件で濃縮することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項6】
上記乾燥段階で、
-50℃~-40℃の温度、5~7時間の条件で凍結し、25℃~35℃の温度、48~52時間の条件で乾燥することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたごま油粕抽出物。
【請求項8】
請求項7のごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項9】
上記食品は、健康機能食品であることを特徴とする請求項8に記載の食品組成物。
【請求項10】
上記炎症性疾患は、大腸炎であることを特徴とする請求項8に記載の食品組成物。
【請求項11】
上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の食品組成物。
【請求項12】
請求項7のごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品。
【請求項13】
上記の健康機能食品は、飲料類、肉類、チョコレート、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の健康機能食品。
【請求項14】
上記健康機能食品は、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、液状、粉末、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、ゼリー、バーの健康機能食品製剤類、飲料類、ガム類及びキャンディー類からなる群から選択される1つ以上の剤形であることを特徴とする請求項12に記載の健康機能食品。
【請求項15】
上記炎症性疾患は、大腸炎であることを特徴とする請求項12に記載の健康機能食品。
【請求項16】
上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の健康機能食品。
【請求項17】
請求項7のごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項18】
上記炎症性疾患は、大腸炎であることを特徴とする請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
上記抽出物は、体重減少、糞便異常、直腸出血及び大腸の長さの減少を抑制させ、IL-6、IL-1β、TNF-αの発現を減少させることを特徴とする請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
炎症性疾患の予防または治療のためのごま油粕抽出物の用途。
【請求項22】
上記ごま油粕抽出物は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする請求項21に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごま油粕抽出物の製造方法、これを有効成分として含む大腸炎の予防又は改善用食品組成物及び健康機能食品、これを有効成分として含む腸炎の予防又は治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごま油粕(sesame oil meal)は油を搾って残る茶色の副産物(物質)である。ごま油粕は、粗タンパク質の含有量が40~50%ほど高く、タンパク質以外にもカルシウムとリンの含有量が高く、すべての家畜の嗜好に合い、長期間の保存も可能である。
【0003】
ごま油粕は、タンパク質、食物繊維、ミネラルなどの栄養成分だけでなく、抗酸化物質としてよく知られているリグナン成分が多量に含まれている。特に、ごま油粕に含まれているリグナンの一種であるセサミノール配糖体は、抗酸化や脳細胞の損傷の抑制など様々な機能を持つことが知られている。
【0004】
一方、免疫の70%は腸で決まる。腸の細菌は、我らが摂取した食べ物を分解し、消化できるようにし、免疫系を訓練する役割もする。一方、がんや下痢などを引き起こすこともある。したがって、腸内細菌のバランスがよく取れることで腸が健康になり、身体が健康になる。最近の研究を通じても、肥満や各種難病が、これらの腸内細菌及び腸管免疫と関係が深いということが続々と明らかになっている。
【0005】
炎症は、有害な要素を除去して、細胞及び組織を回復させることで、損傷または感染から保護する重要な免疫反応である。しかし、過度の急性または慢性炎症は、大腸炎、関節炎、喘息、大腸炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、および敗血症のような深刻な障害を引き起こすことがある。
【0006】
炎症性疾患の中でも大腸炎(colitis)は、大腸に炎症が発生する疾患で、感染症、劣悪な血液供給及び自己免疫反応など、さまざまな原因によって発生する。腹部膨満感、下腹部痛、下痢などが主な症状で、糞便中に粘液、膿や血液が混じる場合もある。大腸炎は、原因に応じて大きく感染性大腸炎と非感染性大腸炎に区分され、発症期間に応じて急性大腸炎と慢性大腸炎に区分される。急性大腸炎には、アメーバ赤痢、細菌性赤痢、サルモネラや抗生物質による偽膜性大腸炎(pseudomembranous enteritis)などがあり、慢性大腸炎には、潰瘍性大腸炎、クローン病、結核、梅毒、X線などによるものがある。また、大腸炎は、炎症性大腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)だけでなく、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)などを含む。
【0007】
一般的に、炎症性腸疾患は、ステロイド、免疫抑制剤などで効果がなかった患者等が抗TNF製剤のような生物学的製剤を使用する。研究によると、抗TNF製剤で治療していた患者のうち、20~40%は、耐性によって、1年以内に効果が消えることが分かった。また、全身にわたって免疫抑制作用をするので、日和見感染、結核、潜伏結核の活性化などの危険性が高まる副作用が存在する。これらの問題のために、副作用がなく、長期間服用可能な健康機能性食品の開発が求められている。
【0008】
また、健康機能食品の原料として現在まで開発された、腸の健康に役立つ機能性原料は、腸内有益菌の増殖及び有害菌の抑制、免疫調節、排泄活動に役立つという3つのカテゴリに分けられ、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、及びプロバイオティクスなどがある。このうち、免疫調節に役立つ健康機能食品の原料としては、プロバイオティクスが唯一である。しかし、炎症性腸疾患の患者は腸内壁が不安定で、プロバイオティクスの摂取時に敗血症や菌血症感染のリスクが高く、注意が必要であり、これを解決するための研究が必要な実情で、様々な素材の健康機能食品の開発が求められている状況である。
【0009】
ごま油粕に様々な効能があるという事実は、すでに相当に研究が進められたが、これを商用化するための抽出工程の開発に困難があり、その活用可能性にもかかわらず、ごま油粕は依然として廃棄されているのが実情である。ごま油粕は一部が飼料や肥料として利用されることもあるが、ほとんどは廃棄されているのが実情で、これによる追加の処理コスト、環境汚染などの問題が発生している。
【0010】
このように、ごま油粕は高付加価値素材として十分な活用の可能性が期待されてきたが、抽出物の生産に困難があり、これに関連する特定疾患の治療用医薬品または機能性食品の素材としての用途では、研究が足らないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、水を抽出溶媒として使用して、ごま油粕抽出物の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明は、他の目的は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む大腸炎の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0013】
本発明は、他の目的は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む大腸炎の予防または改善用健康機能食品を提供することにある。
【0014】
本発明は、他の目的は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む大腸炎の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の技術的思想によるごま油粕抽出物の製造方法が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、
本発明は、ごま油粕に溶媒を添加してごま油粕混合物を製造する段階と、上記ごま油粕混合物を超音波抽出する段階と、上記超音波抽出した抽出物を濾過した後、濃縮する段階と、上記濃縮した濃縮液を乾燥する段階を含む、ごま油粕抽出物の製造方法を提供する。
【0017】
一実施形態によれば、上記溶媒は水であることができる。
【0018】
一実施形態によれば、上記超音波抽出段階で、10~50kHzの周波数、20℃~30℃の温度、3~5時間及び70~90%の振幅条件で超音波処理することができる。
【0019】
一実施形態によれば、上記超音波抽出段階を1~5回繰り返して行うことができる。
【0020】
一実施形態によれば、上記ごま油粕混合物は、ごま油粕対溶媒を1:10~1:30の重量比(w/v)で混合したものである。
【0021】
また、本発明は、上記の方法によって製造されたごま油粕抽出物を提供する。
【0022】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0023】
一実施形態によれば、上記食品は、健康機能食品であることができる。
【0024】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0025】
一実施形態によれば、上記健康機能食品は、飲料類、肉類、チョコレート、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品からなる群から選択することができる。
【0026】
一実施形態によれば、上記健康機能食品は、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、液状、粉末、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、ゼリー、バーなどの健康機能食品製剤類、飲料類、ガム類、及びキャンディー類からなる群から選択される1つ以上の剤形であることができる。
【0027】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0028】
一実施形態によると、上記抽出物は、体重減少、糞便異常、直腸出血及び大腸の長さの減少を抑制させ、炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αの発現を減少させる効果を持つことができる。
【0029】
一実施形態によれば、上記炎症性疾患は、大腸炎であることができる。
【0030】
一実施形態によれば、上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択される。
【0031】
また、本発明は、炎症性疾患の予防または治療のためのごま油粕抽出物の用途を提供する。
【0032】
一実施形態によれば、上記ごま油粕抽出物は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るごま油粕は、体重減少、糞便異常、直腸出血などのような大腸炎の症状を緩和させ、大腸の長さの減少を抑制させるとともに、炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αの発現を抑制させる効果を有するため、これを有効成分として含む組成物は、炎症性疾患、特に大腸炎疾患を予防/改善し、治療できる組成物として、医薬品や機能性健康食品のような様々な産業分野に有用に使用することができる。
【0034】
また、ごま油粕は食糧作物として食用が可能なので、これに由来した抽出物を有効成分として含む本発明の組成物は、長期間の使用にも安全な利点を有する。特に、ごま油粕抽出物を含む食品組成物、健康機能食品は、副作用がなく、長期間服用が可能であり、炎症性腸疾患を効果的に抑制することができる利点がある。
【0035】
ただし、本発明の一実施形態に係るごま油粕抽出物の製造方法が達成できる効果は、以上で言及したものに限定されず、言及していない他の効果は以下の記載から、通常の技術者に明確に理解されるだろう。
【0036】
本明細書で引用される図面をより十分に理解するために、各図面の簡単な説明が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係るごま油粕抽出物の製造方法によるごま油粕の大量抽出過程を示したものである。
図2】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの体重を測定して示したものである。
図3】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの飲水量を測定して示したものである。
図4】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの糞便異常程度を測定して示したものである。
図5】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの直腸出血程度を測定して示したものである。
図6】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの大腸の長さを測定して示したものである。
図7】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルの大腸組織のH&E染色の結果を示したものである。
図8】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルのIL-6を測定した結果を示したものである。
図9】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルのIL-1βを測定した結果を示したものである。
図10】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルのIFN-γを測定した結果を示したものである。
図11】本発明の一実施形態に係るDSS大腸炎マウスモデルのTNF-αを測定した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるため、特定の実施例等を図面に例示し、これを詳細な説明を通じて詳しく説明しようとするものである。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明は、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0039】
本発明は、ごま油粕に溶媒を添加してごま油粕混合物を製造する段階と、上記ごま油粕混合物を超音波抽出する段階と、上記超音波抽出した抽出物を濾過した後、濃縮する段階と、上記濃縮された濃縮液を乾燥する段階を含む、ごま油粕抽出物の製造方法を提供する。
【0040】
本発明において、「ごま油粕」はごまから圧搾工程を経た後、ごま油を除いて収得された副産物である。上記のごまは、低温または高温で加熱処理されたごま、又は加熱工程を経ていない生ごまを制限なく使用することができる。
【0041】
一実施形態によれば、上記溶媒は、ごま油粕を効率的に抽出できる溶媒を使用することが望ましいが、例えば、水、炭素水1乃至4の水溶性アルコール、またはこれらの混合溶媒から選択して使用することができるが、最も望ましくは、水100%である。水を溶媒として使用する場合、高価なエタノール溶媒を使用する必要がなく、エタノール気化のための加熱処理及び中和の追加工程、廃水処理のための経済的費用負担が減る利点がある。
【0042】
本発明において、用語「抽出物」は、上記抽出物をさらに分画(fractionation)した分画物も含まれる。すなわち、水、炭素水1乃至4の低級アルコール、非極性溶媒、またはこれらの混合溶媒の抽出物だけではなく、上記の溶媒等で再分画した分画物、または様々なクロマトグラフィーや、一定の分子量カットオフ値を持つ限外濾過膜を通じて得た分画物を含む。
【0043】
一実施形態によれば、上記超音波抽出段階で10~50kHzの周波数、20℃~30℃の温度、3~5時間及び70~90%の振幅条件で超音波処理をすることができる。
【0044】
従来天然物から生理活性物質の収得のための方法で熱水抽出、超音波抽出などの工程が使用されているが、対象物質の特性に応じて最適な抽出条件が異なるため、対象物質に応じた最適抽出条件の確立が必要である。
【0045】
一方、従来の超音波抽出工程は、酒精と酸の使用により、中和及び排水処理に伴う環境的費用負担が発生しており、長時間の抽出時間が必要なため、経済性が非常に低い方法であった。
【0046】
本発明に係るごま油粕抽出物の製造方法は、有機溶媒を全く使用せずに、水のみを使用するので、中和するための追加工程が必要なく、廃水処理のための経済的費用負担も減少するという特徴がある。具体的には、本発明に係るごま油粕抽出物の大量生産と安定性維持、及び抽出物の生理活性機能維持のための最適抽出条件は、10~50kHzの周波数、20℃~30℃の温度、3~5時間及び70~90%の振幅条件で行うことが望ましく、20kHzの周波数、25℃の温度、4時間及び80%の振幅条件で行うことがより望ましい。
【0047】
一実施形態によれば、上記超音波抽出段階を1~5回繰り返して行うことができ、望ましくは、3~5回繰り返して超音波抽出をすることができる。
【0048】
一実施形態によれば、上記ごま油粕混合物は、ごま油粕対溶媒を1:10~1:30の重量比(w/v)で混合したものであることができる。具体的には、乾燥されたごま油粕に上記ごま油粕重量の約10倍乃至30倍(w/v)、望ましくは20倍乃至30倍(w/v)の精製水を含む水を加えて混合したものであることができる。
【0049】
一実施形態によれば、上記超音波抽出した抽出物を濾布で濾過し、凍結乾燥したり、またはフィルターハウジング(100μm、50μm)を用いて濾過した後、凍結乾燥したりすることができる。
【0050】
一実施形態によれば、上記濃縮条件は、50℃~60℃の温度、15~25の攪拌RPM、-9~-7torrの真空度、170~190L/hrの蒸発速度の条件で行うことができ、望ましくは、温度55℃~60℃、撹拌RPM20、真空度-8torr、蒸発速度180L/hrの条件で行うことができる。
【0051】
一実施形態によれば、上記濃縮方法は、ダイアフラムポンプを使用して攪拌型濃縮器にろ過液を移送し、移送完了後、上記濃縮条件で濃縮を開始する。以後濃縮が完了すると、加圧して液モバイルタンクに移送する。
【0052】
一実施形態によれば、上記乾燥は、凍結乾燥、噴霧乾燥、低温冷風乾燥などの方法で乾燥することができる。望ましくは、-50℃~-40℃の温度、5~7時間の凍結条件と、25℃~35℃の温度、48~52時間の乾燥条件で行うことができ、より望ましくは、温度-45℃、6時間の凍結条件と、温度30℃、51時間の乾燥条件で行うことができる。
【0053】
一実施形態によると、上記の乾燥方法は、トレイを棚にセットした後、ビーカーに濃縮液を入れた後、上記の条件で凍結及び乾燥させる。
【0054】
また、本発明は、上記の方法に基づいて製造されるごま油粕抽出物を提供する。上記ごま油粕抽出物は、大腸炎の症状を抑制したり、症状を改善したりする効果を持つ。
【0055】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0056】
一実施形態によれば、上記の食品は、健康機能食品であることができる。
【0057】
一実施形態によれば、上記の炎症性疾患は、大腸炎であることができる。
【0058】
本発明において、用語「予防」は、本発明に係るごま油粕抽出物を含む組成物の投与によって特定疾患(例えば、大腸炎)の発症を抑制または遅延させるすべての行為をいう。
【0059】
本発明で使用される用語「改善」は、治療される状態に関連するパラメータ、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0060】
本発明において、用語「炎症性疾患」は、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、乾癬、アナフィラキシー、皮膚炎、糖尿病性網膜症、網膜炎、黄斑変性症、ぶどう膜炎、結膜炎、脳卒中、冠状動脈疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、不安定狭心症、脈管炎、血管狭窄、川崎病、巨大細胞性動脈炎、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、骨関節炎、骨粗しょう症、アレルギー、糖尿病、糖尿病性腎臓病、腎炎、腎臓炎、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、歯周病、喘息、移植片対宿主病、慢性骨盤炎症性疾患、子宮内膜炎、鼻炎、腫瘍転移、移植拒否及び慢性前立腺炎などを例示することができる。
【0061】
本発明において、用語「大腸炎」は、大腸に炎症が発生した状態を意味し、例えば、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎、又は不確定性大腸炎であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明において、用語「食品組成物」は、これを摂取する対象体に提供される栄養素にかかわらず、その生物の一つ以上の機能に有利に作用して、より良い健康状態を提供する食品を意味する。結果的に、上記の食品組成物は、疾患または病気-誘発因子の予防、改善または治療のために使用することができる。
【0063】
本発明の食品組成物は、ごま油粕抽出物を有効成分として含有する食品組成物であることができる。一実施形態によれば、上記ごま油粕抽出物は、組成物の総重量に対して0.001~99.9重量%で含まれていてもよい。
【0064】
本発明の食品組成物は、有効成分であるごま油粕抽出物を含有する以外に、通常の食品組成物のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0065】
上述した天然炭水化物の例は、単糖類、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖類、例えばマルトース、スクロースなど;及び多糖類、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述した香味剤は、天然香味剤(ソーマチン)、ステビア抽出物(例えば、レバウディオシドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。
【0066】
また、本発明の食品組成物は、上記の有効成分に加えて、追加に食品学的に許容可能であるか、あるいは薬学的に許容可能な担体を1種以上含み、食品組成物として望ましく製剤化することができる。
【0067】
上記食品組成物の製剤形態は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状、丸剤、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、または点滴剤などとすることができる。例えば、錠剤またはカプセル剤の形で製剤化するために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などの経口、無毒性の薬学的に許容可能な不活性担体と結合することができる。また、必要な場合には、適切な結合剤、潤滑剤、崩解剤、および発色剤も混合物に含むことができる。適切な結合剤は、これらに限定されるものではないが、でんぷん、ゼラチン、グルコースまたはベータ‐ラクトースのような天然糖、コーン甘味料、アカシア、トラガントまたはオレイン酸ナトリウムのような天然および合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムなどを含む。崩解剤は、これらに限定されるものではないが、でんぷん、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液に製剤化される組成物において許容可能な薬学的担体としては、滅菌および生体に適したものとして、生理食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。またシンナー、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0068】
上記のような方法で製剤化された本発明の食品組成物は、機能性食品として利用したり、様々な食品に添加したりすることができる。
【0069】
本発明の組成物を添加することができる食品としては、例えば、飲料類、肉類、チョコレート、食品類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品類などがある。
【0070】
また、上記食品組成物は、有効成分であるごま油粕抽出物のほか、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成香味剤及び天然香味剤などの香味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他、本発明の食品組成物は、天然果実ジュース、果実ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0071】
本発明の有効成分であるごま油粕抽出物は、天然物質として化学薬品のような副作用はほとんどないので、抗酸化機能性を付与する目的に長期間服用しても安心して使用することができる。
【0072】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む食品組成物の炎症性疾患の予防または改善用途を提供する。
【0073】
本発明の食品組成物は、副作用がなく、長期間服用が可能であり、炎症性疾患の抑制効果がある。また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0074】
一実施形態によれば、上記炎症性疾患は、大腸炎であることができる。
【0075】
本発明の健康機能食品は、炎症関連の疾患予防または改善を目的に、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態で製造及び加工することができる。
【0076】
本発明において、用語「健康機能食品」は、健康機能食品に関する法律に基づいて人体に有用な機能性を持った原料や成分を使用して製造及び加工した食品をいい、人体の構造及び機能について、栄養素の調節や生理学的作用などのような、保健の用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0077】
本発明の健康機能食品は、通常の食品添加物を含むことができ、食品添加物としての適否は、他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法等に応じて、当該品目に関する規格及び基準によって判定する。
【0078】
上記食品添加物公典に収載された品目には、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カルシウム、ニコチン酸、桂皮酸などの化学的合成物;カキ色素、甘草抽出物、結晶セルロース、高梁色素、グアーガムなどの天然添加物;L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類などを挙げることができる。
【0079】
例えば、錠剤の形態の健康機能食品は、本発明の有効成分であるごま油粕抽出物を賦形剤、結合剤、崩解剤、及び他の添加剤と混合した混合物を通常の方法で顆粒化した後、滑沢剤などを入れて圧縮成形したり、上記の混合物を直接圧縮成形したりすることができる。また、上記の錠剤形態の健康機能食品は、必要に応じて矯味剤などを含有することもできる。
【0080】
カプセル形態の健康機能食品のうち、硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルに、本発明の有効成分であるごま油粕抽出物を賦形剤などの添加剤と混合した混合物を充填して製造することができ、軟質カプセル剤は、上記の抽出物を賦形剤などの添加剤と混合した混合物をゼラチンなどのカプセル基剤に充填して製造することができる。上記軟質カプセル剤は、必要に応じてグリセリン又はソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有することができる。
【0081】
丸剤形態の健康機能食品は、本発明の有効成分であるごま油粕抽出物と賦形剤、結合剤、崩解剤などを混合した混合物を、従来の公知の方法で成形して調製することができ、必要に応じて白糖や他のコーティング剤でコーティングすることができ、または澱粉、タルクのような物質で表面をコーティングすることもできる。
【0082】
顆粒状の健康機能食品は、本発明の有効成分であるごま油粕抽出物と賦形剤、結合剤、崩解剤などを混合した混合物を、従来の公知の方法で粒状に製造することができ、必要に応じて着香剤、矯味剤などを含有することができる。
【0083】
本発明のごま油粕抽出物は、優柔な抗炎症、特に抗大腸炎の効果を実験的に証明したところ、炎症関連疾患の予防または改善に有効である。
【0084】
一実施形態によれば、上記健康機能食品は、飲料類、肉類、チョコレート、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品などであることができる。
【0085】
一実施形態によれば、上記健康機能食品は、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、液状、粉末、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、ゼリー、バーなどの健康機能食品の製剤類、飲料類、ガム類、及びキャンディー類からなる群から選択される1つ以上の剤形であることができる。
【0086】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む健康機能食品の炎症性疾患の予防または改善用途を提供する。
【0087】
本発明の健康機能食品は、副作用がなく、長期間服用が可能であり、炎症性疾患の抑制効果がある。
【0088】
また、本発明は、ごま油粕抽出物を有効成分として含む大腸炎の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0089】
一実施形態によれば、ごま油粕抽出物を有効成分として含む大腸炎の予防または治療用の薬学的組成物は、ごま油粕抽出物と薬学的に許容される塩を含んで製造することができ、体重減少、糞便異常、直腸出血及び大腸の長さの減少を抑制し、大腸炎の治療及び予防のための用途として使用することができる。
【0090】
本発明において、用語「薬学的に許容される塩」とは、通常の方法で製造した塩を意味し、当業者が公知の方法で制限なく使用することができる。上記薬学的に許容される塩は、薬理学的または生理学的に許容される次の無機酸と有機酸及び塩基から誘導された塩を含むが、これに限定されない。適切な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。適切な塩基から誘導された塩は、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、アルカリ土類金属、例えば、マグネシウム、アンモニウムなどを含むことができる。
【0091】
本発明において、用語「治療」は、本発明に係るごま油粕抽出物を含む組成物の投与によって、特定疾患(例えば、大腸炎)の症状が好転し、又は有利に変化するすべての行為をいう。
【0092】
本発明において、用語「投与」は、何らかの適切な方法で患者に本発明の組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達することができる限り、経口または非経口の多様な経路を通じて投与することができ、具体的に、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻側内、吸入、眼内、または皮内経路を通じて通常の方法で投与することができる。本発明の治療方法は、本発明の組成物を薬学的有効量で投与することを含む。適切な総1日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医によって決まるということは、当業者に自明なことである。特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって、他の製剤が使用されるか否かを含め、具体的組成物、患者の年齢、体重、一般の健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と一緒に使用又は同時使用される薬物などの様々な因子と医薬分野によく知られている類似因子に応じて異なる適用が望ましい。したがって、本発明の目的に適した組成物の有効量は、前述した事項を考慮して決定することが望ましい。
【0093】
一実施形態によれば、上記ごま油粕抽出物は、組成物の総重量に対して0.001~99.9重量%で含まれていてもよい。
【0094】
また、本発明の組成物は、大腸炎疾患の治療及び予防が必要な任意の動物に適用可能であり、動物は人間及び霊長類に加えて、牛、豚、羊、馬、犬及び猫などの家畜を含む。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、臨床投与時に経口または非経口投与が可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
【0096】
上記の薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤または注射剤の形で剤形化されることを特徴とすることができる。
【0097】
より詳細には、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射液、事前充填式注射溶液の形、または凍結乾燥された形で剤形化することができるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
剤形化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造することができる。
【0099】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれており、これらの固形製剤は、上記有効成分に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して製造することができる。また、単純な賦形剤以外にも、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用することができる。
【0100】
経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般的に使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが一緒に含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0101】
本発明の薬学的組成物の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、症状の程度、薬物形態、投与経路及び期間に応じて適宜選択することができる。
【0102】
また、本発明は、ごま油粕抽出物の炎症性疾患の予防または治療のための用途を提供する。
【0103】
本発明のごま油粕抽出物は、体重減少、糞便異常、直腸出血などを抑制させ、大腸の長さの減少を抑制させる。また、上記抽出物は、炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αの発現を減少させる効果を持つことができる。
【0104】
本発明は、DSS(Dextran Sodium Sulfate)を利用した大腸炎マウスモデルで、ごま油粕超音波抽出物の抗大腸炎効能を確認するために、体重、飲水量、糞便異常の程度、直腸出血の程度、大腸の長さ、組織染色、サイトカインを測定した。陽性対照群には、抗大腸炎の効能があると知られているchlorogenic acidを使用した。本発明の実施例によると、ごま油粕超音波抽出物は、DSS単独処理群よりも大腸炎の症状を抑えたり、症状を改善したりする効果を確認することができた。
【0105】
マウスの大腸炎の主な症状は、体重減少、大腸の縮小、粘膜潰瘍などが発生し、人と類似した症状を示す。本発明の実施例では、マウスの炎症性腸疾患の誘導のためにDSSを使用した。 DSSは、腸膜(intestinal flora)に変化を与えて粘膜内の炎症反応を誘導して、大腸炎の初期には血便や体重減少、大腸の長さの減少を誘発する。大腸炎が慢性的に進行するにつれ、粘膜に、様々な免疫反応が起こり、腸内の炎症を起こす。本発明の実施例では、ごま油粕抽出物の成分のうちsesaminとsesamolinを指標物質として設定し、ごま油粕抽出物と一緒に、DSSにより誘導された大腸炎モデルマウスで抗大腸炎の効能があるかについて実験した。
【0106】
本発明の実施例によると、DSS単独処理群はCON(正常)群と比較して体重減少、糞便異常、直腸出血、大腸の長さの減少、組織壊死、炎症性サイトカインの増加を示した。一方、ごま油粕抽出物を処理した群では、DSS単独処理群と比較したとき、体重減少を抑制し、糞便異常、直腸出血と腸の長さの減少を抑制した。
【0107】
一般的に、DSSは、上皮細胞に直接的な毒性効果を示して、マクロファージとT cellの活性化を誘導して、Th1、Th2サイトカインと他の炎症媒介体をすべて増加させて大腸炎を誘発するものと知られている。Th1とTh2が関与する炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αでは、ごま油粕抽出物で処理した群で減少することを確認しており、特にTNF-αで有意なサイトカインの減少を示した。これにより、ごま油粕抽出物はTh1 pathwayを通じた抗炎症効能を示す可能性があると考えられる。大腸の炎症反応が減少するにつれ、大腸の長さが減少することを抑制し、組織壊死が減ったと言える。組織壊死が減り、糞便異常と肛門出血も減少しており、これらの大腸の抗炎症効能は、体重減少を抑えることに効果を示した。
【0108】
従って、本発明に係るごま油粕抽出物は、Th1 pathwayによる抗炎症効能を通じて炎症性腸疾患を改善し、腸の健康に役立つ可能性を持っている言える。
【0109】
また、本発明に係るごま油粕抽出物は、腸の健康に役立つ機能性原料として活用価値が高い。具体的には、本発明に係るごま油粕抽出物は、従来の個別認定原料であるイソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖に比べて腸内の免疫反応を調節して炎症性腸疾患を効果的に抑制することができ、免疫力が弱い患者から報告されているプロバイオティクス(乳酸菌)の各種副作用のリスク無しに、長期間服用が可能な長所がある。
【0110】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び実験例を挙げて詳細に説明することにする。しかし、本発明に係る実施例及び実験例は、様々な他の形態に変形させることができ、本発明の範囲が以下詳述する実施例及び実験例に限定されるものではない。また、該実施例及び実験例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0111】
1. 材料及び方法
【0112】
1.1 ごま油粕超音波抽出物の製造
【0113】
本発明に使用されたごまは、国立食糧科学院の種子をもらい、全羅北道高敞郡の農家との契約栽培により生産されたものである。上記のごまを洗浄して、40~70℃の温度でスクリュー式圧搾機を使用して、油が分離された後のごま油粕を試料として使用した。
【0114】
収得した33kgのごま油粕に1tonの水を添加して攪拌機を用いて混合した。超音波発振器と循環ポンプを稼動して、酒精濃度0%、20kHzの周波数、25℃の温度、4時間および80%の振幅の条件で抽出工程を開始した後、抽出物の分析のために試料の一部をサンプリングした。このとき、排出ポンプを通じて試料の一部を排出した。以後、超音波抽出した抽出物を濾布で濾過し、一部は、フィルターハウジング(100μm、50μm)を用いて濾過した。
【0115】
濾液をダイアフラムポンプを使用して攪拌型濃縮器に移送し(汚泥によりバックフィルター(20mesh、40mesh)使用フィルタリング、底部に沈殿された汚泥は、移送しない)、移送完了後、温度55℃~60℃、攪拌RPM 20、真空度-8torr、蒸発速度180L/hrの条件で濃縮を開始した。液量を確認した後、液量が200L前後、攪拌機の下部ゴムパーキングの下のボルトまでになると、濃縮を終了した。以後加圧して液モバイルタンクに移送した。機器は、CIP(苛性ソーダ)を行った。
【0116】
以後、トレイを棚にセットした後、ビーカーに濃縮液を2~2.5Lずつ入れ、濃縮液を全部入れた後、温度センサーを確認してサンプリングした。冷凍条件は、温度-45℃、6時間に設定し、乾燥条件は、温度30℃、51時間に設定した後、機器を稼動した。凍結乾燥終了後、小分け用ビニール(大)に原料を回収した。機器は、CIP(トレイ、本体、高圧水で洗浄)で行われた。
【0117】
1.2 比較例の製造
【0118】
抽出方法別に最適のごま油粕抽出物を探索するために、ごま油粕の熱水抽出物と常温抽出物を比較例で製造した。
【0119】
(比較例1:熱水抽出)ごま油粕対水を1:30の割合で混合し、100℃で4時間熱水抽出した後、常温で30分間放冷した。
【0120】
(比較例2:常温抽出)ごま油粕対水を1:30の割合で混合して、常温(25℃)で4時間抽出した。
【0121】
上記の熱水抽出物と常温抽出物を減圧ろ過システムとフィルタペーパー(現代マイクロ、KOREA)を用いて濾過した後、減圧回転濃縮器を用いて1/4(v/v)に濃縮した。以後、濃縮液を凍結乾燥機(一新、KOREA)を利用して、4日間乾燥して粉末状にして、比較例1及び2を製造した。
【0122】
2. ごま油粕抽出物の効能評価
【0123】
2.1 実験動物及び投与方法
【0124】
8週齢のC57BL/6 mouse雄を一週間順化させた後、実験に使用した。実験期間中の飼料と飲水は自由に摂取できるようにし、飼育室の温度は22±2℃、湿度は55±15%、そして明暗は12時間周期を維持する。ごま油粕抽出物の標準物質Sesamin(Sigma aldrich、USA)、Sesamolin(Sigma aldrich、USA)を使用した。実験群は、蒸留水を投与した正常群10匹、2.5%DSS(Dextran Sodium Sulfate、MPBIO、CANADA)を飲水に混ぜて投与したDSS単独処理群10匹、2.5%DSSと一緒にそれぞれ10、100、1000mg/kgのごま油粕超音波抽出物を投与したごま油粕抽出物の低、中、高処理群のそれぞれ10匹、2.5%DSSと一緒にそれぞれ120 mg/kg Sesamin、120mg/kg Sesamolinを投与したSesamin、Sesamolin処理群のそれぞれ10匹、2.5 %DSSと一緒に200mg/kg Chlorogenic acidを投与した陽性対照群10匹、というように合計8つの群に分け、1日1回投与した。試験期間は、予備実験の結果をもとに、マウスの体重の20%が減る8日に設定した(表1)。
【0125】
【表1】
【0126】
2.2 試料の製造
【0127】
抽出粉末は、常温で保管しており、経口投与の直前に5%Dimethyl Sulfoxide(Sigma aldrich、USA)が含まれている1次蒸留水に溶かして使用した。
【0128】
2.3 大腸炎症状の測定
【0129】
各実験群の大腸炎誘導によるマウス体重、飲水量、糞便異常の程度、直腸出血の程度を測定した。マウスの体重及び飲水量は毎日同じ時間に測定した。糞便異常の程度はDSS投与8日目に、個別ケージに移して排泄を誘導して糞便の状態を観察した。糞便のゆるい程度、血便の有無によって点数を、Kim et al.,2013,Gastroenterology論文の測定方式を参考にして算定して数値化した。直腸出血の程度はDSS投与8日目に排泄直後糞便と肛門からの出血程度をHema-screen kitを活用したfecal occult blood testを実施して色の変化を数値化した。
【0130】
2.4 大腸の長さの測定
【0131】
各実験群の大腸炎誘導による大腸の長さを測定した。DSS投与8日目に実験動物を犠牲にした後、剖検を通じて盲腸から肛門に至るまでの腸器を摘出し、写真を撮影して大腸の長さを測定した。
【0132】
2.5 大腸の組織学的検査
【0133】
各実験群の大腸炎誘導による粘膜組織の肥厚、発赤、炎症細胞の増加、組織壊死による潰瘍などの大腸病変の程度を観察するために、組織学的検査を実施した。DSS投与8日目に実験動物を犠牲にした後、剖検を通じて盲腸から肛門に至るまでの腸器を摘出し、Phosphate-buffer saline(PBS、Gibco、USA)で洗浄した後、4%のformaldehydeにより2日間固定させた。その後、組織スライドを製作して、Hematoxylin&Eosin(H&E)染色を通じて組織を観察した。
【0134】
2.6 炎症性サイトカインの測定(IL-6、IL-1β、IFN-γ、TNF-α)
【0135】
各実験群の大腸炎誘導による炎症性サイトカインの程度を観察するためにELISAを実施した。DSS投与8日目に実験動物を犠牲にした後、剖検を通じて盲腸から肛門に至るまでの腸器を摘出して、PBSで洗浄した後、Lysis bufferを入れて組織を溶解させ、遠心分離を通じて上層液を回収した。
【0136】
組織のInterleukin(IL)-6の濃度は、ELISAを使用して測定した。組織を溶解させて得た上層液はsampleとし、各wellにRD1-14 Assay Diluentを50uLずつ入れて、Standard、sample、controlをそれぞれ50uLずつ入れて2時間常温で反応させる。その後、100uLのMouse IL-6 Conjugateを入れ、常温で2時間、100uL Substrate Solutionを入れて遮光状態で、常温で30分間反応させた後、50uLずつStop Solutionを入れてspectrophotometerを用いて450nmで吸光度を測定した。各過程の間には、washing bufferを使用して、各wellの洗浄を3回行った。
【0137】
組織のInterleukin(IL)-1β濃度は、ELISAを使用して測定した。組織を溶解させて得た上層液はsampleとし、各wellにRD1N Assay Diluentを50uLずつ入れて、Standard、sample、controlをそれぞれ50uLずつ入れて2時間常温で反応させる。その後、100uLのMouse IL-1βConjugateを入れ、常温で2時間、100uL Substrate Solutionを入れて遮光状態で、常温で30分間反応させた後、50uLずつStop Solutionを入れてspectrophotometerを用いて450nmで吸光度を測定した。各過程の間には、washing bufferを使用して、各wellの洗浄を3回行った。
【0138】
組織のInferferon(IFN)-γ濃度は、ELISAを使用して測定した。組織を溶解させて得た上層液はsampleとし、各wellにRD1-21 Assay Diluentを50uLずつ入れて、Standard、sample、controlをそれぞれ50uLずつ入れて2時間常温で反応させる。その後、100uLのMouse IFN-γConjugateを入れ、常温で2時間、100uL Substrate Solutionを入れて遮光状態で、常温で30分間反応させた後、50uLずつStop Solutionを入れてspectrophotometerを用いて450nmで吸光度を測定した。各過程の間には、washing bufferを使用して、各wellの洗浄を3回行った。
【0139】
組織のTumor necrosis factor(TNF)-α濃度は、ELISAを使用して測定した。組織を溶解させて得た上層液はsampleとし、各wellにRD1-63 Assay Diluentを50uLずつ入れて、Standard、sample、controlをそれぞれ50uLずつ入れて2時間常温で反応させる。その後、100uLのMouse TNF-αConjugateを入れ、常温で2時間、100uL Substrate Solutionを入れて遮光状態で、常温で30分間反応させた後、50uLずつStop Solutionを入れてspectrophotometerを用いて450nmで吸光度を測定した。各過程の間には、washing bufferを使用して、各wellの洗浄を3回行った。
【0140】
2.7 統計分析
【0141】
実験のすべての結果は、平均±標準誤差で表記した。各群別有意性検証のためにone-way analysis of variance(ANOVA)testを実行し、統計的有意性は、p*<0.05,p**<0.005,p***<0.001 vs CON,p#<0.05,p##<0.005,p###<0.001 vs DSSにより示した。
【0142】
3. 結果の分析
【0143】
3.1 ごま油粕抽出物の製造結果
【0144】
クエンズバケットから提供したごま油粕を利用して、ごま油粕熱水抽出物(比較例1)と常温抽出物(比較例2)を製造しており、凍結乾燥を完了した最終収率は熱水抽出8.1%、常温抽出7.8%であると確認された。
【0145】
4. ごま油粕抽出物の効能評価
【0146】
4.1 大腸炎症状の測定
【0147】
4.1.1 マウス体重測定
【0148】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために毎日体重を測定した。図2を参照すると、体重測定の結果、DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群で5日目からマウスの体重減少を抑制する傾向を示したが、8日目の体重に有意な変化はなかった。
【0149】
4.1.2 マウスウムスリャン測定
【0150】
図3を参照すると、飲水量の測定結果、DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物処理群は、有意な差を示さなかった。本実験の結果をもとに、同じ飲水量を通じてDSSによる大腸炎誘発は、群別に差がなく進行したと見ることができる。
【0151】
4.1.3 糞便異常程度の測定
【0152】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために、実験8日目のマウスの糞便異常程度を測定した。DSSにより大腸炎が誘発されると、ゆるい便が出て、症状がひどくなると血便が出てくることが知られている。図4を参照すると、測定の結果、DSS単独処理群は、すべてのマウスが血便を示し、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群で血便の症状のマウスが有意に減少した。
【0153】
4.1.4 直腸出血程度の測定
【0154】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために大腸での炎症反応時に発生する直腸出血を測定した。図5を参照すると、測定の結果、CON(正常)群と比較したとき、DSSを投与したすべての群は、直腸出血の症状が増加した。DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群で直腸出血の程度が減少した。
【0155】
4.2 大腸の長さの測定
【0156】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して盲腸から肛門までの長さを測定した。大腸での炎症反応が過剰に起こると長さが短くなることが知られている。図6を参照すると、測定の結果、CON(正常)群と比較したとき、DSSを投与したすべての群は、大腸の長さが減少した。DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群で大腸の長さが減少することが抑制された。
【0157】
4.3 大腸の組織学的検査
【0158】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して、大腸の組織を摘出し、組織スライド切片を作り、H&E染色を行った。DSSを投与すると、大腸で粘膜組織の肥厚、発赤、炎症細胞の増加、組織の壊死による潰瘍などの大腸病変が増加することが知られている。図7を参照すると、測定の結果、DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群で粘膜組織の肥厚、発赤、炎症細胞の増加、組織壊死による潰瘍などの大腸病変の程度が減少する傾向を示した。
【0159】
4.4 炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β、IFN-γ、TNF-α)の測定
【0160】
4.4.1 IL-6の測定
【0161】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して、大腸の組織を溶解させ、組織内の炎症性サイトカイン(IL-6)濃度を測定した。IL-6は、Th2細胞で主に生産されて体液性免疫を担当し、過度に分泌されると、炎症を誘発することが知られている。図8を参照すると、測定の結果、CON(正常)群と比較したとき、DSSを投与したすべての群は、IL-6が増加した。DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群でIL-6濃度が減少した。
【0162】
4.4.2 IL-1βの測定
【0163】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して、大腸の組織を溶解させ、組織内の炎症性サイトカイン(IL-1β)濃度を測定した。IL-1βは、細胞の適応免疫に関与し、大腸炎の誘発時に増加することが知られている。図9を参照すると、測定の結果、CON(正常)群と比較したとき、DSSを投与したすべての群は、IL-1βが増加した。DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群でIL-1β濃度が有意に減少した。本実験の結果をもとに、ごま油粕抽出物は、細胞の適応免疫を担当するIL-1βの増加を抑制することにより抗大腸炎の効能を持っていると考えられる。
【0164】
4.4.3 IFN-γの測定
【0165】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して、大腸の組織を溶解させ、組織内の炎症性サイトカイン(IFN-γ)の濃度を測定した。IFN-γは、Th1細胞で主に生産され、細胞性免疫を担当し、過度に分泌されると、炎症を誘発することが知られている。図10を参照すると、測定の結果、DSSを投与した群でもIFN-γの増加がみられなかったので、DSSを投与したマウスモデルでIFN-γの分泌が誘導されなかったと考えられる。
【0166】
4.4.4 TNF-αの測定
【0167】
ごま油粕抽出物に抗大腸炎の効能があるかを調べるために実験8日目のマウスを剖検して、大腸の組織を溶解させ、組織内の炎症性サイトカイン(TNF-α)の濃度を測定した。TNF-αはTh1細胞で主に生産され、細胞性免疫を担当し、過度に分泌されると、炎症を誘発することが知られている。図11を参照すると、測定の結果、CON(正常)群と比較したとき、DSSを投与したすべての群は、TNF-αが増加した。DSS単独処理群と比較したとき、ごま油粕抽出物の中濃度(100mg/kg)処理群でTNF-α濃度が有意に減少した。本実験の結果をもとに、ごま油粕抽出物は、体液性免疫を担当するTh1のTNF-αの分泌を調節することで抗大腸炎の効能を持っていると考えらえる。
【0168】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から脱しない範囲内で、多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野の通常の知識を有する者には自明であるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごま油粕に溶媒を添加してごま油粕泊混合物を製造する段階と、
上記ごま油粕混合物を超音波抽出する段階と、
上記超音波抽出した抽出物を濾過した後、濃縮する段階と、
上記濃縮した濃縮液を乾燥する段階
を含む、ごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項2】
上記超音波抽出段階で、10~50kHzの周波数、20℃~30℃の温度、3~5時間及び70~90%の振幅条件で超音波処理することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項3】
上記超音波抽出段階を1~5回繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項4】
上記ごま油粕混合物は、ごま油粕対溶媒を1:10~1:30の重量比(w/v)で混合したものであることを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項5】
上記濃縮段階で、50℃~60℃の温度、15~25の攪拌RPM、-9~-7torrの真空度及び170~190L/hrの蒸発速度の条件で濃縮することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項6】
上記乾燥段階で、
-50℃~-40℃の温度、5~7時間の条件で凍結し、25℃~35℃の温度、48~52時間の条件で乾燥することを特徴とする請求項1に記載のごま油粕抽出物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防又は改善用食品組成物
【請求項8】
上記食品は、健康機能食品であることを特徴とする請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
上記炎症性疾患は、大腸炎であることを特徴とする請求項7に記載の食品組成物。
【請求項10】
上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の食品組成物。
【請求項11】
上記抽出物は、体重減少、糞便異常、直腸出血及び大腸の長さの減少を抑制させ、IL-6、IL-1β、TNF-αの発現を減少させることを特徴とする請求項7に記載の食品組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたごま油粕抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
上記炎症性疾患は、大腸炎であることを特徴とする請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
上記大腸炎は、急性腸炎、細菌性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、旅行者下痢、ウイルス性大腸炎、偽膜性大腸炎、アメーバ性大腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、薬剤起因性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、放射線大腸炎及び不確定性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
上記抽出物は、体重減少、糞便異常、直腸出血及び大腸の長さの減少を抑制させ、IL-6、IL-1β、TNF-αの発現を減少させることを特徴とする請求項12に記載の薬学的組成物。
【国際調査報告】