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特表2022-541371トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の新規な使用法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の新規な使用法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220915BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C07D487/04 146
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61K51/04 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570937
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2020070721
(87)【国際公開番号】W WO2021013903
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】1910656.6
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513311778
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ド・リエージュ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LIEGE
(71)【出願人】
【識別番号】513311804
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・リエージュ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE LIEGE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウリ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ランセロッティ,パトリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ンシミ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ルクセン,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ゴファン,エリク
【テーマコード(参考)】
4C050
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB06
4C050CC08
4C050EE05
4C050FF01
4C050GG04
4C050GG06
4C050HH01
4C085HH03
4C085HH07
4C085KA29
4C085KB56
4C085LL20
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC78
(57)【要約】
宿主哺乳動物における細菌感染の予後及び/又は診断に使用するための、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体、並びにその画像化の方法。式(I)[式中、Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC3-5アルキルであり;Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたフェニル基であり;R及びRは、それぞれヒドロキシルであり;Rは、XOHであって、ここでXは、CH、OCHCH、又は結合である]、又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はそのような塩の溶媒和物[ただし、Xが、CH又は結合である場合、Rはプロピルではなく;XがCHであり、そしてRが、CHCHCF、ブチル又はペンチルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要があり;XがOCHCHであり、そしてRがプロピルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要がある]。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主哺乳動物における細菌感染の予後及び/又は診断に使用するための、式(I):
【化4】

[式中、Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC3-5アルキルであり;Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたフェニル基であり;R及びRは、それぞれヒドロキシルであり;Rは、XOHであって、ここでXは、CH、OCHCH、又は結合である]で示される、トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体、又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はそのような塩の溶媒和物[ただし、Xが、CH又は結合である場合、Rはプロピルではなく;XがCHであり、そしてRが、CHCHCF、ブチル又はペンチルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要があり;XがOCHCHであり、そしてRがプロピルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要がある]。
【請求項2】
誘導体が、検出可能なマーカーを含むか、又はそれに結合していることを特徴とする、請求項1に記載の使用のための式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項3】
誘導体が、検出可能なマーカーであるか、又は検出可能なマーカーを含む、トランスポーターに結合している、請求項1又は請求項2に記載の使用のための式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項4】
検出可能なマーカーが、シグナル増幅因子である、請求項2~3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項5】
トランスポーターが、ミセル、ミクロスフェア、リポソーム、ナノスフェア、ナノ懸濁液、ナノエマルション、又はナノカプセルである、請求項3に記載の使用のための式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項6】
検出可能なマーカーが、H、H、13F、18F、19F、11C、13C、14C、75Br、76Br、120I、123I、125I、131I、15O、13N、及び/又は78Brのうちの1種以上である、請求項2に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項7】
検出可能なマーカーが、99Tc、123I又は111Inのうちの1種以上である、請求項2に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項8】
が、フッ素原子によって置換されたフェニルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項9】
Rが、OH又はOCHCHOHであり、好ましくはRが、OHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体であって、以下:
(1R-(1α,2α,3β(1R,2),5β))-3-(7-((2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-((3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(ヒドロキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
(1S-(1α,2α,3β(1R,2),5β))-3-(7-((2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール;
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(4-フルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール;
(1S,2R,3S,4R)-4-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-1,2,3-シクロペンタントリオール;
から選択される誘導体又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はその溶媒和物若しくはそのような塩の溶媒和物。
【請求項11】
トリアフルオシル(Triafluocyl)とも呼ばれる(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオールである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項12】
フルオメタシル(Fluometacyl)とも呼ばれる(1S,2R,3S,4R)-4-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-1,2,3-シクロペンタントリオールである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項13】
細菌感染が、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、グリコペプチド低感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、β溶血性連鎖球菌(beta-hemolytic Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌、GBS)又は他の連鎖球菌のから選択される1種以上の細菌に起因する、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項14】
細菌感染が、アシネトバクター・バウマニ( Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カルバペネム耐性緑膿菌、腸内細菌、及び第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属菌(Enterobacter spp)、セラチア属菌(Serratia spp)、プロテウス属菌(Proteus spp)、プロビデンシア属菌(Providencia spp)、及びモルガネラ属菌(Morganella spp))から選択される1種以上の細菌に起因する、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体。
【請求項15】
宿主哺乳動物における細菌感染をインビボで診断及び/又は予後予測するのに使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体及び薬学的に許容し得る添加剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
宿主哺乳動物における細菌感染を画像化する方法であって:
(a)請求項2~7のいずれか一項記載の検出可能なマーカーを含む、請求項1及び8~12のいずれか一項記載の有効量の式(I):
【化5】

で示されるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又は請求項15に記載の医薬組成物を宿主哺乳動物に投与すること;及び
(b)細菌感染を表示するための画像化技術によって前記検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を追跡すること
を含む方法。
【請求項17】
画像化技術が、磁気共鳴画像法(MRI)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、コンピューター断層撮影法(CT)、コンピューター断層撮影(CT)を伴う単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、陽電子放出型断層撮影画像法(PET)、コンピューター断層撮影(CT)を伴う陽電子放出型断層撮影画像法、磁気共鳴を伴う陽電子放出型断層撮影画像法、又は超音波画像法(US)である、請求項16に記載の細菌感染を画像化する方法。
【請求項18】
宿主哺乳動物における細菌感染の予後及び/又は診断に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の式(I):
【化6】

で示されるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を含むトレーサー、好ましくは、陽電子放出型断層撮影法(PET)トレーサー又は単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)トレーサー。
【請求項19】
細菌感染が、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、グリコペプチド低感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、β溶血性連鎖球菌(B群連鎖球菌、GBS)又は他の連鎖球菌から選択される1種以上の細菌に起因する、請求項16又は17に記載の宿主哺乳動物における細菌感染を画像化する方法。
【請求項20】
細菌感染が、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、カルバペネム耐性緑膿菌、腸内細菌、及び第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌(クレブシエラ・ニューモニエ、大腸菌、エンテロバクター属菌、セラチア属菌、プロテウス属菌、プロビデンシア属菌、及びモルガネラ属菌)から選択される1種以上の細菌に起因する、請求項16又は17に記載の宿主哺乳動物における細菌感染を画像化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主哺乳動物における細菌感染、特に深在性細菌感染のインビボでの予後及び/又は診断に使用するためのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体に関する。本発明はまた、前記細菌感染を画像化する方法、並びに細菌感染のインビトロでの予後及び/又は診断におけるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導入部
細菌感染は、特に深在性感染がある場合には、疾病率及び死亡率の主な原因である。
【0003】
深在性感染は、他の炎症の原因から診断するのが困難である。現在の実務では、生検、血液、尿試料分析、又は例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波(US)、X線コンピューター断層撮影法(CT)などの放射線技術に依存しているが、これらは感染部位を特定することができ、感染、宿主反応又はその両方に関連する形態学的変化を検出する。残念ながら、そのような形態学的変化は、炎症又は癌腫瘍と変わらないかもしれない。更に、これらの形態学的変化は、感染の初期段階では検出できない可能性があり、存在する場合は非特異的なままである。
【0004】
深在性感染はまた、放射性元素で標識されたトレーサーを使用して識別することができるが、これは放射性マーカーと呼ばれる。放射性トレーサーとも呼ばれる放射性マーカーは、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)又は陽電子放出型断層撮影法(PET)などの核イメージング技術によって検出できる。放射性トレーサーの例は、18F-フルオロデオキシグルコースPET、67Ga-クエン酸塩SPECT又は放射性標識白血球SPECTであるが、これらは細菌感染に特異的ではなく、感染と無菌炎症又は癌とを区別することができない。
【0005】
したがって、当技術分野では、細菌感染、特に宿主哺乳動物における深在性感染の予後又は診断に使用するための新しいトレーサーが緊急に必要とされている。細菌特異的で感受性が高いが、毒性がなく、手頃な価格で、広く入手可能で、そして容易かつ迅速に調製されるトレーサーが必要である。
【0006】
発明の要約
驚くべきことに、我々は、トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又はその組成物が、宿主哺乳動物での細菌感染の予後及び/又は診断におけるトレーサーとして使用できることを見い出した。トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、早期感染を迅速かつ非侵襲的に標的とするため、感染と無菌炎症又は癌とを区別するのに有利である。トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、グラム陽性種又はグラム陰性種に属する広範囲の細菌を診断又は予後予測するのに有利である。
【0007】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、細菌細胞に吸収され得るため、細菌感染のインビボ又はインビトロでの予後及び/又は診断のためのトレーサーとして使用することができる。
【0008】
詳細な説明
1つの態様において、本発明は、宿主哺乳動物における細菌感染のインビボでの予後及び/又は診断に使用するための式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、細菌感染のインビトロでの予後及び/又は診断における式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の使用を提供する。
【0010】
「細菌感染」という用語は、例えば、肺炎、敗血症、心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎、尿路、皮膚、及び軟組織感染のことをいうが、心臓インプラント関連感染性心内膜炎、人工弁心内膜炎又は関節置換手術の1若しくは2パーセントで発生する人工関節周囲感染症のこともいう。
【0011】
細菌感染は、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、グリコペプチド低感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、β溶血性連鎖球菌(beta-hemolytic Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌、GBS)又はグラム陽性菌に属する他の連鎖球菌のうちの1種以上に、あるいはグラム陰性菌に属する、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カルバペネム耐性緑膿菌、腸内細菌、及び第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属菌(Enterobacter spp)、セラチア属菌(Serratia spp)、プロテウス属菌(Proteus spp)、プロビデンシア属菌(Providencia spp)、及びモルガネラ属菌(Morganella spp))のうちの1種以上に起因し得る。
【0012】
本明細書に使用されるとき診断という用語は、宿主哺乳動物における細菌感染を識別することをいう。
【0013】
本明細書に使用されるとき予後という用語は、任意の段階、特に初期段階での宿主哺乳動物における細菌感染の強度を判定することをいう。
【0014】
本明細書に使用されるとき宿主哺乳動物という用語は、好ましくはヒトのことをいうが、動物のこともいう。
【0015】
特定の実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、検出可能なマーカーを含む。
【0016】
別の特定の実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、検出可能なマーカーに結合している。
【0017】
本明細書に使用されるとき「検出可能なマーカー」という用語は、検出可能であり、よってトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の存在を:
-直接、例えば誘導体の1個の原子が、H、H、13F、18F、19F、11C、13C、14C、75Br、76Br、120I、123I、124I、125I、131I、15O、13N、78Brなどの群から選択される1個の放射性同位体マーカーにより置換されている;好ましくは、1個のハロゲン原子が、13F、18F、19F、75Br、76Br、120I、123I、124I、125I、131I、78Brなどから選択される1個の放射性同位体により置換されている、例えば、放射性標識トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体として;又は
-直接、誘導体が、99Tc、63Ga、67Ga、111Inなどの放射性マーカーと複合体を形成していてもよい、放射性標識トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体として;又は
-間接的に、例えば、シグナル増幅因子を含むトランスポーターを介して、判定可能にする任意のタイプのタグのことをいう。次にトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体がトランスポーターに化学的に結合するため、誘導体を細菌感染のセンサーと見なすことができる。
【0018】
本明細書に使用されるとき「シグナル増幅因子」という用語は、細菌に感染した組織又はインプラントでのシグナルの戻りを増幅する任意の物質のことをいう。
【0019】
シグナル増幅因子は、例えば、細菌に感染した組織又はインプラントでのUSイメージング断層撮影法における超音波の反射、屈折、散乱、透過又は減衰を増強し得るか;あるいは、細菌に感染した組織又はインプラントでの磁気共鳴画像法における、磁場によって放出される高周波パルスに反応した異なる水素配列の共鳴を増強し得るか;あるいは、X線コンピューター断層撮影法(CT)における細菌に感染した組織又はインプラントで吸収又は散乱されたX線の割合を増強し得る。
【0020】
本明細書に使用されるとき「トランスポーター」という用語は、例えば、ミセル、ミクロスフェア、リポソーム、ポリマー粒子、ナノスフェア、ナノ懸濁液、ナノエマルション、ナノカプセルなどの、シグナル増幅因子として作用するか、又はシグナル増幅因子が組み込まれ得る物体のことをいう。
【0021】
放射性同位体を介して検出可能なマーカーを含むか、又は検出可能なマーカーとの複合体を介してか、若しくは検出可能なマーカーを含むトランスポーターを介してかのいずれかで検出可能なマーカーに結合している、トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、以下で検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体とも呼ばれる。
【0022】
特定の実施態様において、検出可能なマーカーは、マーカーの性質に依存する検出方法で使用されるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体に間接的に結合するシグナル増幅因子である。
【0023】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、例えば、磁気共鳴画像法を増強することができる強磁性化合物であるガドリニウム(例えば、64Gd)キレートなどのシグナル増幅因子と結合してもよい。Gdキレートは、イオン性(例えば、メグルミン又はナトリウム塩)であっても、又は非イオン性のシグナル増幅因子であってもよい。酸化鉄もまた、MRIのシグナル増幅因子として使用することができる。例えば、マンガンをドープした超常磁性酸化鉄ナノ粒子を使用して、超高感度MRI造影剤を形成してもよい。このようなMn-SPIOナノ粒子は、次に自己組織化して、MRIで検出可能なミセル内のクラスターになる。MRIの他のシグナル増幅因子は、例えば、マンガンキレート、鉄白金(FePt)合金ナノ結晶、マンガンフェライト(MnO-Fe)ナノ結晶、又はCo-FeやNiO-Feなどの他の金属をドープした酸化鉄ナノ粒子である。
【0024】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、造影剤増強超音波画像法(US)に使用されるマイクロバブルなどのシグナル増幅因子と結合してもよい。
【0025】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、X線コンピューター断層撮影法(CT)用のヨウ素又はバリウムを含有する造影剤とも呼ばれるシグナル増幅因子と結合してもよい。造影剤は、標的細菌感染と周囲組織との間の絶対CT減衰差を増大させる必要がある。X線コンピューター断層撮影法に適した造影剤の例は、イオヘキソール(Omnipaque(商標)、GE Healthcare);イオプロミド(Ultravist(商標)、Bayer Healthcare);イオジキサノール(Visipaque(商標)、GE Healthcare);イオキサグレート(Hexabrix(商標)、Mallinckrodt Imaging);イオタラム酸(Cysto-Conray II(商標)、Mallinckrodt Imaging);及びイオパミドール(Isovue(商標)、Bracco Imaging)である。
【0026】
別の特定の実施態様において、検出可能なマーカーは、マーカーの性質に依存する検出方法におけるトレーサーとしてトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の使用が可能な同位体である。したがって、少なくとも1つの検出可能な同位体を含むトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、例えば、ベータ又はガンマ照射が、妥当な同位体によって提供され、そして適切な波長で検出される、ベータ、ガンマ、陽電子又はX線画像法を使用することによって検出することができる。
【0027】
少なくとも1つの検出可能な同位体を含むトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、例えば、磁気共鳴分光法(MRS)又は磁気共鳴画像法(MRI)、X線コンピューター断層撮影法(CT)、陽電子放出型断層撮影法(PET)及び単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)で使用することができる。
【0028】
検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、周知の有機化学技術により、MRS/MRI用の同位体19F若しくは13C又はそれらの組合せによって検出され得る。
【0029】
他の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、PET法用の19F、11C、75Br、76Br若しくは120I又はそれらの組合せから選択される同位体によって検出され得る。
【0030】
他の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、PETインビボイメージング用の18F若しくは11C又はそれらの組合せから選択される同位体によって検出され得、Bengt LangstromによりActa ChemicaScandinavia 53:651-669(1999)若しくはJournal of Nuclear Medicine 58(7):1094-1099(2017)に、又はA M J Paansによりhttps://cds.cern.ch/record/1005065/files/p363.pdfに記載されるとおり調製され得る。
【0031】
他の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、SPECTイメージング用に123I及び131Iによって検出され得、KulkarniによりInt.J.Rad.Appl.& Inst (partB)18:647(1991)に記載されるとおり調製され得る。
【0032】
他の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体はまた、SPECTイメージング用のテクネチウム-99m(99mTc)、123I及び111Inで検出され得る。適切に放射性標識されるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、当業者によって当技術分野において周知の手法により容易に調製され得、ZhuangによりNuclear Medicine & Biology 26(2):217-24 (1999)に、又はKulkarniによりNuclear Medicine & Biology 18(6):647-654 (1991)若しくはtechnical reports 466 published by the International Atomic Energy Agency in 2008に記載されている。
【0033】
1個以上の原子が放射性核種又は同位体で置換されているトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を放射性トレーサーとして使用して、宿主哺乳動物の細胞、組織又は体液を試験し、そして宿主における、例えば、人工弁の表面での細菌感染の存在及び重要性を識別することができる。
【0034】
本明細書に使用されるとき「宿主哺乳動物」という用語は、好ましくはヒトのことをいうが、動物のこともいう。
【0035】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体という用語は、下記式(I):
【0036】
【化1】

[式中、Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC3-5アルキルであり;Rは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたフェニル基であり;R及びRは、それぞれヒドロキシルであり;Rは、XOHであって、ここでXは、CH、OCHCH、又は結合である]で示される化合物、又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はその溶媒和物若しくはそのような塩の溶媒和物のことをいう[ただし、Xが、CH又は結合である場合、Rはプロピルではなく;XがCHであり、そしてRが、CHCHCF、ブチル又はペンチルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要があり;XがOCHCHであり、そしてRがプロピルである場合、Rのフェニル基はフッ素で置換される必要がある]。
【0037】
アルキル基は、単独であろうと別の基の一部であろうと、直鎖状であり、そして完全飽和である。
【0038】
幾つかの実施態様において、Rは、場合により1個以上のフッ素原子によって置換されたC3-5アルキルを表し得る。好ましくは、Rは、3,3,3-トリフルオロプロピル、ブチル又はプロピルである。
【0039】
幾つかの実施態様において、Rは、フェニル又は1個以上のハロゲン原子によって置換されたフェニルを表し得る。好ましくは、Rは、1個以上のフッ素原子によって置換されたフェニルである。最も好ましくは、Rは、4-フルオロフェニル又は3,4-ジフルオロフェニルである。
【0040】
幾つかの実施態様において、RはXOHを表し得るが、ここで、Xは、CH、OCHCH、又は結合である;好ましくは、Rは、OH又はOCHCHOHである。
【0041】
最も好ましいトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、Rが、4-フルオロフェニル又は3,4-ジフルオロフェニルを表し、かつ/又はRがOCHCHOHを表す、式(I)の化合物である。
【0042】
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、周知の化合物である。それらは、US6,525,060(引用例として本明細書に取り込まれる)に記載されている方法(カラム3の26行目からカラム8の14行目に記載されている)により得ることができる。
【0043】
好ましいトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、Rが、OH又はOCHCHOHを表し、かつ/又はRが、4-フルオロフェニル又は3,4-ジフルオロフェニルを表す、誘導体である。
【0044】
最も好ましいトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は次のとおりである:
(1R-(1α,2α,3β(1R,2),5β))-3-(7-((2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-((3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(ヒドロキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
(1S-(1α,2α,3β(1R,2),5β))-3-(7-((2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール;
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール;
(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(4-フルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール
又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はその溶媒和物若しくはそのような塩の溶媒和物。
【0045】
予後及び/又は診断に使用される最も好ましいトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、式(II):
【0046】
【化2】

で定義される、(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール(以下、トリアフルオシル(Triafluocyl)とも呼ばれる)、又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はその溶媒和物若しくはそのような塩の溶媒和物である。
【0047】
予後及び/又は診断に使用される別の最も好ましいトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体は、式(III):
【0048】
【化3】

で定義される、(1S,2R,3S,4R)-4-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-1,2,3-シクロペンタントリオール(フルオメタシル(Fluometacyl)とも呼ばれる)、又は薬学的に許容し得るその塩若しくは溶媒和物、又はその溶媒和物若しくはそのような塩の溶媒和物である。
【0049】
幾つかの実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の1個の原子は、H、13F、18F、19F、11C、13C、14C、75Br、76Br、120I、123I、124I、125I、131I、15O、13N、78Brからなる群より選択される。
【0050】
幾つかの実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の1個のハロゲン置換基は、18F又は123Iであってよい。
【0051】
幾つかの実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の1個のハロゲン置換基は、18Fであってよい。
【0052】
幾つかの実施態様において、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体におけるRの1個のハロゲン置換基は、18Fであってよい。
【0053】
更なる態様において、本発明は、宿主哺乳動物における細菌感染をインビボで診断及び/又は予後予測するのに使用するための、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体及び薬学的に許容し得る添加剤を含む医薬組成物を提供する。
【0054】
更に別の態様において、本発明は、細菌感染のインビトロでの予後及び/又は診断における、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体及び薬学的に許容し得る添加剤を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0055】
本医薬組成物は、生理学的適合性を有する乾燥粉末又は液体組成物であってよい。幾つかの実施態様において、薬学的に許容し得る添加剤は、補助物質、保存料、溶媒及び/又は粘度調節剤であってよい。
【0056】
溶媒とは、例えば、水、生理食塩水若しくは任意の他の生理学的溶液、エタノール、グリセロール、植物油などの油又はそれらの混合物などの、任意の適切な生理学的に適合性の溶媒を意味する。粘度調節剤とは、例えば、カルボキシメチルセルロースなどの糖ポリマー、サッカリンなどの多糖類などを意味する。
【0057】
幾つかの実施態様において、検出可能なマーカーを含み、放射性トレーサーとして使用される、トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又はその医薬組成物は、選択された画像化装置に適切な用量での吸入、経口摂取又は注入によって、局所投与又は全身投与され得る。投与は、経口、非経口、局所、直腸内、鼻内、膣内投与であってよい。
【0058】
非経口とは、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内などを意味する。
【0059】
宿主哺乳動物への投与の用量レベルは、その年齢、体重、一般的健康状態、性別、投与の時間、投与の剤形などに依存し、そして当業者には周知であろう。用量レベルは、選択された画像化技術に応じて、0.001μg/kg/日と10,000mg/kg/日の間で変動し得る。
【0060】
他の実施態様において、検出可能なマーカーを含み、放射性トレーサーとして使用される、トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又はその医薬組成物は、選択された画像化装置に適切な有効量で、宿主哺乳動物から得られた試料に添加され得る。
【0061】
宿主哺乳動物から得られた試料とは、細菌感染を判定することができる、細胞、組織、又は体液の任意の試料採取を意味する。このような試料の例は、血液、リンパ液、尿、生検、又は骨髄を包含する。
【0062】
試料はまた、その表面で細菌感染を判定することができるインプラントのことをいう場合もある。
【0063】
インプラントとは、人工関節、ペースメーカー、植え込み型除細動器、血管内又は尿路カテーテル、冠動脈ステントを含むステント、人工心臓弁、眼内レンズ、歯科インプラントなど、宿主哺乳動物で臨床使用するための全ての埋め込み可能な異物を意味する。
【0064】
更に別の態様において、本発明はまた、宿主哺乳動物における細菌感染を画像化する方法であって、検出可能な量のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を宿主哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。
【0065】
更なる態様において、本発明はまた、細菌感染を画像化するインビトロ法におけるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体の使用を提供する。
【0066】
幾つかの実施態様において、画像化の方法は、以下の工程を含み得る:
(a)検出可能な量の上記の検出可能なマーカーを含む式(1)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又は医薬組成物を宿主哺乳動物に投与すること;あるいは宿主哺乳動物から得られた試料に、検出可能な量の上記の検出可能なマーカー含む式(1)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又は医薬組成物を添加すること;並びに
(b)例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、陽電子放出型断層撮影画像法(PET)、コンピューター断層撮影を伴う陽電子放出型断層撮影画像法、磁気共鳴を伴う陽電子放出型断層撮影画像法などの画像化技術によって前記検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を追跡すること;及び前記細菌感染の画像を表示すること。
【0067】
特定の実施態様において、画像化技術は、陽電子放出型断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)である。
【0068】
式(I)の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又はその組成物の使用は、細菌感染を表示するためだけでなく、宿主における細菌感染の処置をモニターするためにも有用である。実際に、細菌感染の重症度について知識が深まれば、適切な処置法を更に厳選し、細菌耐性の発現可能性を低減することが可能である。
【0069】
式(I)の検出可能なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体又はその組成物が、感染の処置(例えば、抗生物質の投与によって)前に投与されるか、又は宿主から得られた試料に添加される場合、正に有効量の抗生物質を宿主に投与することが可能であろう。
【0070】
更に別の態様において、本発明はまた、細菌感染のインビボでの予後及び/又は診断、あるいは細菌感染のインビトロでの予後及び/又は診断のための、式(I)のトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体を含むトレーサー、好ましくは、陽電子放出型断層撮影法(PET)トレーサー又は単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)トレーサーを提供する。
【0071】
幾つかの実施態様において、トレーサーは、イメージング用トレーサーであってよい。幾つかの実施態様において、トレーサーは、医薬組成物を含んでもよい。
【0072】
ここで本発明は、添付の図面の以下の図を参照して説明されるが、これらは特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、実施例1の工程(i)で詳述された標識前駆体の合成を説明する反応スキームを示し;そして
図2図2は、実施例1の工程(ii)に詳述された更なる標識前駆体の合成を説明する反応スキームを示す。
【0074】
本発明は、以下の実施例において更に詳細に説明されるが、これらは特許請求される発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【実施例
【0075】
検出可能なマーカー18Fを含むトリアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体としての18F-トリアフルオシルの調製。
i)図1に示される最初の標識前駆体の合成:(3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)((1R,2S)-2-(3-フルオロ-4-(トリメチルスタンニル)フェニル)シクロプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(5)。
最初の工程(i)において、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-((5-アミノ-6-クロロ-2-(プロピルチオ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノール(1)は、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-アミノ-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノールと4,6-ジクロロ-2-(プロピルチオ)ピリミジン-5-アミンとの反応によって得られるが、この反応は、110℃で密閉容器でアセトニトリル中で行われる。
次の工程(ii)は、5℃~20℃の温度で酢酸中の亜硝酸ナトリウムでのジアゾ化反応による中間体1の閉環反応(工程(ii))で構成され、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-(7-クロロ-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノール(2)が生じる。
工程(iii)において、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-(7-(((1R,2S)-2-(4-ブロモ-3-フルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノール(3)は、例えば20℃の温度で、中間体(2)の塩素原子を2-(4-ブロモ-3-フルオロフェニル)シクロプロパンアミン塩酸塩で求核置換することにより得られる。
次に(3)の感受性アミノ及びヒドロキシル官能基を、例えば、20℃の温度でテトラヒドロフラン中で(3)を二炭酸ジ-tert-ブチルと反応させて、tert-ブトキシカルボニル基で保護する(工程(iv))ことによって、((1R,2S)-2-(4-ブロモ-3-フルオロフェニル)シクロプロピル)(3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)カルバミン酸tert-ブチル(4)を与える。
次の工程(工程(v))において、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の存在下でヘキサメチルジスタンナンを使用して(4)の臭素原子をトリメチルスタンニル基で求核置換して標識位置を活性化することによって、(3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)((1R,2S)-2-(3-フルオロ-4-(トリメチルスタンニル)フェニル)シクロプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(5)を与える。
【0076】
図1に示される中間生成物(1)~(5)は、以下で中間体(1)~中間体(5)と呼ばれる。
中間体(1)は以下のとおり得られる:アセトニトリル(10mL)中の4,6-ジクロロ-2-(プロピルチオ)ピリミジン-5-アミン(1.0g、4.2mmol)、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-アミノ-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノール(1.17g、5.4mmol)及びトリエチルアミン(0.6mL、4.2mmol)の混合物を密閉容器に導入し、110℃で一晩加熱する。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:77%。
融点:112~114℃。
1H NMR (CDCl3) δ 1.03 (t, J=7.4 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.26 (s, 3H, CH3), 1.43 (s, 3H, CH3), 1.75 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 1.92 (d, J=14.5 Hz, 1H, 5’-Ha), 2.28 (ddd, J=14.5 Hz/5.9 Hz/4.4 Hz, 1H, 5’-Hb), 2.59 (bs, 1H, OH), 2.99 (ddd, J=13.4 Hz/8.2 Hz/6.4 Hz, 1H, SCHa), 3.14 (ddd, J=13.5 Hz/8.2 Hz/6.4 Hz, 1H, SCHb), 3.38 (bs, 2H, NH2), 3.60 (ddd, J=9.9 Hz/6.1 Hz/2.6 Hz, 1H, OCHa), 3.70 (ddd, J=9.9 Hz/5.8 Hz/2.5 Hz, 1H, OCHb), 3.79 (m, 2H, OCH2CH2OH), 3.97 (d, J=4.1 Hz, 1H, 4’-H), 4.53 (dd, J=5.4 Hz/1.2 Hz, 1H, 3a’-H), 4.59 (m, 1H, 6’-H), 4.61 (dd, J=5.5 Hz/1.8 Hz, 1H, 6a’-H), 6.17 (d, J=8.4 Hz, 1H, NH). 13C NMR (CDCl3) δ 13.5, 23.2, 23.8, 26.2, 32.5, 33.2, 56.8, 61.9, 70.4, 82.8, 84.5, 85.3, 110.3, 116.9, 144.5, 154.4, 162.0.
【0077】
中間体(2)は以下のとおり得られる:氷浴上で冷却された酢酸(10mL)中の(1)(1.0g、2.4mmol)の溶液に、NaNO(225mg、3.2mmol)を加える。得られた混合物を1時間以内に室温に到達させ、次に水(40mL)を加える。得られた混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させて油性残渣を与える。
収率:94%。
融点:油。
1H NMR (CDCl3) δ 1.09 (t, J=7.4 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.37 (s, 3H, CH3), 1.55 (s, 3H, CH3), 1.83 (h, J=7.4 Hz, 2H, SCH2CH2CH3), 2.14 (t, J=6.0 Hz, 1H, OH), 2.54 (m, 1H, 5’-Ha), 2.70 (m, 1H, 5’-Hb), 3.21 (t, J=7.2 Hz, 2H, SCH2CH2CH3), 3.49-3.65 (m, 4H, OCH2CH2OH), 4.05 (m, 1H, 4’-H), 4.88 (d, J=6.3 Hz, 1H, 3a’-H), 5.21 (td, J=7.4 Hz/6.4 Hz/2.5 Hz, 1H, 6’-H), 5.53 (dd, J=6.3 Hz/2.1 Hz, 1H, 6a’-H). 13C NMR (CDCl3) δ13.6, 22.3, 24.5, 26.8, 33.9, 35.9, 61.8, 63.4, 70.7, 82.9, 83.6, 84.0, 112.4, 132.2, 150.7, 153.4, 171.8.
【0078】
中間体(3)は、(2)(0.5g、1.16mmol)、2-(4-ブロモ-3-フルオロフェニル)シクロプロパンアミン塩酸塩(0.3g、1.16mmol)をアセトニトリル(10mL)中でトリエチルアミン(0.21mL、1.45mmol)と混合し、得られた混合物を、室温で2時間反応させることにより得られる。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:98%。
融点:122~124℃。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.82 (t, J=7.4 Hz, 2.4H, SCH2CH2CH3 メジャー), 0.99 (t, J=7.3 Hz, 0.6H, SCH2CH2CH3マイナー), 1.26 (s, 3H, CH3), 1.42 (m, 1H, 3’-Ha), 1.48 (s, 3H, CH3), 1.51 (m, 2H, SCH2CH2CH3メジャー), 1.59 (dt, J=10.0 Hz/5.4 Hz, 1H, 3’-Hb), 1.70 (h, J=7.3 Hz, 0.4H, SCH2CH2CH3 マイナー), 2.14 (ddd, J=9.6 Hz/6.4 Hz/3.3 Hz, 0.8H, 2’-H メジャー), 2.24 (m, 0.2H, 2’-H マイナー), 2.52 (m, 1H, 5’’’-Ha), 2.65 (m, 1H, 5’’’-Hb), 2.87 (m, 1.6H, SCH2CH2CH3メジャー), 3.08 (m, 0.4H, SCH2CH2CH3マイナー), 3.19 (dd, J=7.6 Hz/4.2 Hz, 0.8H, 1’-H メジャー), 3.39-3.51 (m, 4H, OCH2CH2OH), 3.75 (m, 0.2H, 1’-H マイナー), 4.00 (m, 1H, 4’’’-H), 4.56 (t, J=5.2 Hz, 1H, OH), 4.64 (m, 0.2H, 3a’’’-H マイナー), 4.67 (dt, J=7.0 Hz/3.3 Hz, 0.8H, 3a’’’-H メジャー), 5.01 (m, 1H, 6’’’-H), 5.16 (m, 0.2H, 6a’’’-H マイナー), 5.20 (dt, J=7.3 Hz/4.8 Hz, 0.8H, 6a’’’-H メジャー), 6.97 (d, J=7.1 Hz, 0.2H, 6’’-H マイナー), 7.03 (dd, J=8.3 Hz/1.9 Hz, 0.8H, 6’’-H メジャー), 7.18 (d, J=10.0 Hz, 0.2H, 2’’-H マイナー), 7.24 (dd, J=10.4 Hz/1.9 Hz, 0.8H, 2’’-H メジャー), 7.59 (t, J=7.9 Hz, 1H, 5’’-H), 9.01 (d, J=4.7 Hz, 0.2H, NH マイナー), 9.41 (dd, J=3.9 Hz/1.2 Hz, 0.8H, NH メジャー). 13C NMR (DMSO-d6) δ 13.0, 15.3, 22.3, 24.3, 24.8, 26.9, 32.4, 34.5, 35.4, 60.0, 61.4, 70.7, 81.9, 83.7, 104.5, 112.5, 114.1, 123.2, 123.9, 132.9, 144.3, 149.1, 153.9, 157.3, 159.3, 169.5.
【0079】
中間体(4)は、(3)(0.62g、1.0mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(1g、4.6mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)中で4-(ジメチルアミノ)ピリジン(30mg、触媒)を混合し、得られた混合物を室温で一晩反応させることにより得られる。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:56%
融点:156~158℃。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.99 (td, J=7.3 Hz/2.6 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.28 (s, 3H, CH3), 1.35 (m, 1H, 3’-Ha), 1.39 (s, 9H, C(CH3)3), 1.40 (s, 9H, C(CH3)3), 1.50 (s, 3H, CH3), 1.55 (qd, J=7.2 Hz/2.2 Hz, 1H, 3’-Hb), 1.70 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 2.26 (m, 1H, 2’-H), 2.61 (m, 1H, 5’’’-Ha), 2.73 (m, 1H, 5’’’-Hb), 3.05 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 3.27 (m, 1H, 1’-H), 3.62 (m, 2H, OCH2CH2OC(CH3)3), 4.04 (m, 3H, OCH2CH2OC(CH3)3/4’’’-H), 4.71 (dd, J=7.2 Hz/3.0 Hz, 1H, 3a’’’-H), 5.15 (m, 1H, 6’’’-H), 5.27 (m, 1H, 6a’’’-H), 7.02 (dd, J=8.3 Hz/1.9 Hz, 1H, 6’’-H), 7.24 (dt, J=10.4 Hz/1.8 Hz, 1H, 2’’-H), 7.59 (t, J=7.9 Hz, 1H, 5’’-H). 13C NMR (DMSO-d6) δ13.3, 18.1, 22.1, 24.7, 26.0, 26.8, 27.3, 27.4, 32.6, 35.1, 39.0, 61.8, 65.5, 66.7, 81.4, 82.0, 82.1, 82.8, 83.6, 104.9, 112.5, 114.7, 124.3, 127.8, 132.9, 143.4, 150.6, 152.3, 152.9, 154.3, 157.2, 159.1, 169.1.
【0080】
前駆体(1):(3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)((1R,2S)-2-(3-フルオロ-4-(トリメチルスタンニル)フェニル)シクロプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(5)は、(4)(0.41g、0.5mmol)、ヘキサメチルジスタンナン(0.49g、1.5mmol)を、乾燥トルエン(5mL)中でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg、触媒)と混合し、密閉容器に導入し、窒素下で100℃で一晩加熱することにより得られる。冷却後、酢酸エチル(50mL)を加え、不溶性物質を濾別する。濾液を蒸発乾固し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:65%
融点:60~62℃。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.30 (s, 9H, Sn(CH3)3), 0.96 (td, J=7.3 Hz/2.9 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.28 (s, 3H, CH3), 1.32 (m, 1H, 3’-Ha), 1.39 (s, 9H, C(CH3)3), 1.40 (s, 9H, C(CH3)3), 1.50 (m, 4H, CH3/3’-Hb), 1.67 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 2.23 (m, 1H, 2’-H), 2.58 (m, 1H, 5’’’-Ha), 2.72 (m, 1H, 5’’’-Hb), 3.03 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 3.24 (m, 1H, 1’-H), 3.61 (m, 2H, OCH2CH2OC(CH3)3), 4.03 (m, 3H, OCH2CH2OC(CH3)3/4’’’-H), 4.71 (d, J=7.1 Hz, 1H, 3a’’’-H), 5.15 (t, J=9.9 Hz, 1H, 6’’’-H), 5.27 (dt, J=7.9 Hz/4.4 Hz, 1H, 6a’’’-H), 6.95 (m, 1H, 2’’-H), 7.02 (d, J=7.4 Hz, 1H, 6’’-H), 7.59 (m, 1H, 5’’-H). 13C NMR (DMSO-d6) δ -8.9, 13.3, 17.9, 22.1, 24.7, 26.2, 26.8, 27.3, 27.4, 32.6, 35.1, 39.0, 61.8, 65.5, 66.7, 81.4, 82.0, 82.1, 82.7, 83.6, 112.1, 112.5, 122.7, 123.6, 127.9, 136.4, 144.2, 150.6, 152.4, 152.9, 154.4, 166.1, 167.9, 169.1.
【0081】
ii)図2に示される更に別の標識前駆体の合成
他の前駆体は、(5)からヒドロキシ(トシルオキシ)ヨードベンゼン(工程(vi))を使用して対応するヨードニウムトシラート(6)を与えるか、又はヨウ素(工程(vii))を使用して(7)を与え、続いてメルドラム酸(工程(viii))を加えてヨードニウムイリド(8)を与えることによって合成することができる。
【0082】
標識前駆体(6)は、ヒドロキシ(トシルオキシ)ヨードベンゼン(0.13g、0.33mmol)をジクロロメタン(5mL)中の(5)(0.27g、0.3mmol)の溶液に0℃で加えることによって得られる。得られた混合物を室温で1時間反応させる。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:72%。
融点:92~95℃。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.96 (t, J=7.0 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.27 (s, 3H, CH3), 1.37 (s, 9H, C(CH3)3), 1.39 (s, 9H, C(CH3)3), 1.43 (m, 1H, 3’-Ha), 1.50 (s, 3H, CH3), 1.63 (m, 3H, SCH2CH2CH3/3’-Hb), 2.29 (s, 3H, CH3 tos), 2.32 (m, 1H, 2’-H), 2.57 (m, 1H, 5’’’-Ha), 2.72 (m, 1H, 5’’’-Hb), 2.83-3.07 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 3.30 (m, 1H, 1’-H), 3.62 (m, 2H, OCH2CH2OC(CH3)3), 4.04 (m, 3H, OCH2CH2OC(CH3)3/4’’’-H), 4.70 (dd, J=7.2 Hz/2.9 Hz, 1H, 3a’’’-H), 5.14 (m, 1H, 6’’’-H), 5.25 (dd, J=7.0 Hz/4.6 Hz, 1H, 6a’’’-H), 7.11 (d, J=7.8 Hz, 2H, 3-Htos/5-Htos), 7.20 (dd, J=8.4 Hz/1.7 Hz, 1H, 6’’-H), 7.41 (dd, J=10.0 Hz/1.6 Hz, 1H, 2’’-H), 7.47 (d, J=8.1 Hz, 2H, 2-Htos/6-Htos), 7.54 (t, J=7.8 Hz, 2H, 3’’’’-H/5’’’’-H), 7.68 (t, J=7.4 Hz, 1H, 4’’’’-H), 8.21 (d, J=7.6 Hz, 2H, 2’’’’-H/6’’’’-H), 8.29 (dd, J=8.2 Hz/6.6 Hz, 1H, 5’’-H). 13C NMR (DMSO-d6) δ13.2, 19.0, 20.8, 22.1, 24.7, 26.5, 26.8, 27.3, 27.4, 32.5, 35.2, 39.9, 61.8, 65.5, 66.7, 81.4, 82.0, 82.9, 83.6, 100.3, 112.5, 114.5, 117.0, 125.5, 127.8, 128.0, 131.9, 132.2, 135.0, 136.5, 137.5, 145.9, 150.6, 152.2, 152.9, 154.1, 158.3, 160.3, 169.0.
【0083】
標識前駆体(3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)((1R,2S)-2-(3-フルオロ-4-ヨードフェニル)シクロプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(7)は、ジクロロメタン(5mL)中の(5)(0.27g、0.3mmol)の溶液にヨウ素(0.15g、0.6mmol)を加えることによって得られる。得られた混合物を室温で1時間反応させる。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。
収率:61%。
融点:151~153℃。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.98 (t, J=7.3 Hz, 3H, SCH2CH2CH3), 1.28 (s, 3H, CH3), 1.34 (m, 1H, 3’-Ha), 1.39 (s, 9H, C(CH3)3), 1.40 (s, 9H, C(CH3)3), 1.50 (s, 3H, CH3), 1.53 (q, J=6.9 Hz, 1H, 3’-Hb), 1.70 (h, J=7.3 Hz, 2H, SCH2CH2CH3), 2.24 (m, 1H, 2’-H), 2.59 (m, 1H, 5’’’-Ha), 2.72 (m, 1H, 5’’’-Hb), 3.05 (m, 2H, SCH2CH2CH3), 3.26 (m, 1H, 1’-H), 3.56-3.68 (m, 2H, OCH2CH2OC(CH3)3), 4.03 (m, 3H, OCH2CH2OC(CH3)3/4’’’-H), 4.70 (dd, J=7.2 Hz/3.0 Hz, 1H, 3a’’’-H), 5.15 (m, 1H, 6’’’-H), 5.26 (m, 1H, 6a’’’-H), 6.87 (dd, J=8.2 Hz/1.8 Hz, 1H, 6’’-H), 7.13 (dt, J=9.7 Hz/1.8 Hz, 1H, 2’’-H), 7.71 (dd, J=7.9 Hz/7.1 Hz, 1H, 5’’-H). 13C NMR (DMSO-d6) δ13.3, 18.1, 22.1, 24.7, 26.1, 26.8, 27.3, 27.4, 31.0, 32.6, 35.1, 39.1, 61.9, 65.5, 66.7, 78.3, 78.5, 81.4, 81.9, 82.0, 82.7, 83.6, 112.5, 113.7, 113.9, 124.7, 127.9, 138.6, 144.0, 150.6, 152.3, 152.9, 154.3, 160.2, 162.1, 169.1.
【0084】
iii)標識前駆体(6)及び(8)の18F-トリアフルオシルへの変換。
標識前駆体(6)及び(8)両方のヨードニウム基は、文献に記載されているプロセスにより18F-トリアフルオシルに変換される:
前駆体(6)に関しての文献:Copper-Mediated Radiofluorination of Arylstannanes with [18F]KF; Makaravage, Katarina J.; Brooks, Allen F.; Mossine, Andrew V.; Sanford, Melanie S.; Scott, Peter J. H.による (Organic Letters (2016), 18(20), 5440-5443から)
前駆体(8)に関しての文献:Spirocyclic hypervalent iodine(III)-mediated radiofluorination of non-activated and hindered aromatics; Rotstein, Benjamin H.; Stephenson, Nickeisha A.; Vasdev, Neil; Liang, Steven H.による (Nature Communications (2014), 5, 4365から)
【実施例
【0085】
インビトロでの18F-トリアフルオシル及び18F-FDG取り込みアッセイの比較
18F-トリアフルオシルの細菌への選択的取り込み及び細菌感染の特異的診断に対するその有用性を評価するために、我々は、18F-トリアフルオシル及び18F-FDGの細菌への取り込みを比較するインビトロアッセイを実施した。
この目的のために、表皮ブドウ球菌を18F-FDG又は18F-トリアフルオシルとインキュベートし、細菌細胞に結合する相対放射能を以下のとおり判定した。
表皮ブドウ球菌は、トリプチケースソイブイヨン培地(Trypticase soy broth)(TSB)中で37℃で、250rpmで振盪しながら一晩増殖させた。一晩培養物をOD6000.1に希釈し、指数増殖期中期に達するまでインキュベートした。1×10 CFUを、Sigma-Aldrichから提供された細胞培地RPMI 1640(R7638)1mlに再懸濁した。
細菌及び細菌を含まない対照を、実施例1に記載のとおり調製した2MBq 18F-FDG又は2MBq 18F-トリアフルオシルと共に37℃で1時間インキュベートした。細菌を遠心分離(600×g、5分)で回収し、連続遠心分離で3回洗浄した。洗浄後、細胞をシンチレーションバイアルに移した。上清もシンチレーションバイアルに収集した。細菌及び上清をガンマカウンター(2470 Wizard(商標)(Perkin Elmer))でカウントした。
結果は、1分あたりのカウントとして取得された。結果は、対照(細菌を含まない)に対して、及び総カウント(細胞及び上清を合わせた)と比較した細胞含有シンチレーションバイアルの放射能の割合を計算することによって正規化された。
細菌とのインキュベーション後、我々は、細菌細胞に結合する18F-トリアフルオシルの相対放射能が、18F-FDGの放射能よりも1.5~2倍高いことを見い出した。
【実施例
【0086】
宿主哺乳動物(ヒト)から得られた血液試料からの細菌感染の予後及び/又は診断のためのインビトロ18F-トリアフルオシルの使用。
トリアフルオシル(チカグレロル(Ticagrelor)とも呼ばれる)が血小板P2Y12受容体に可逆的に結合し、血小板が細菌感染部位に蓄積することは当技術分野で周知であるため(Hamzeh-Cognasse H, Damien P, Chabert A, Pozzetto B, Cognasse F, Garraud O. Platelets and infections - complex interactions with bacteria. Front Immunol. 2015;6:82. Published 2015 Feb 26. doi:10.3389/fimmu.2015.00082に記載されているとおり)、我々はまた、細菌の存在下又は非存在下でのヒト血小板への放射性トレーサーの取り込みを比較した。
ヒト洗浄血小板の調製:血液試料は、1U/ml アピラーゼを含有する酸性クエン酸デキストロース(ACD:93mM クエン酸Na、7mM クエン酸、14mM デキストロース、pH 6.0)上にACD対血液1:6の体積比で健康なボランティアから収集された。血液を800×gで5秒間、続いて100×gで5分間遠心分離して、多血小板血漿(PRP)を得た。PRPは、1U/ml アピラーゼ(ジャガイモ由来のアピラーゼ、グレードI(A6132 Sigma-Aldrich))を含有するACDで3倍に希釈し、1000×gで遠心分離して血小板ペレットを得た。血小板ペレットをタイロード(Tyrode's)緩衝液(137mM NaCl、12mM NaHCO、2mM KCl、0.34mM NaHPO、1mM MgCl、5.5mM グルコース、5mM ヘペス(Hepes)、Sigma Aldrich A3294の0.35%ウシ血清アルブミン)に3×10mlの濃度で再懸濁したが、ここでヘペスとは、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(H4034、Sigma-Aldrich)のことをいう。
細菌、血小板、及び細菌を含まない対照を、2MBq 18F-FDG又は2MBq 18F-トリアフルオシルと共に37℃で1時間インキュベートした。細菌及び血小板を遠心分離(1000×g、10分)で回収し、連続遠心分離(1000×g、10分)で3回洗浄した。上清をシンチレーションバイアルに収集した。洗浄後、細胞をシンチレーションバイアルに移した。細胞及び上清をガンマカウンター(2470 Wizard(商標)(Perkin Elmer))でカウントした。
結果は、1分あたりのカウントとして取得された。結果は、対照(細胞を含まない)に対して、及び総カウント(細胞及び上清を合わせた)と比較した細胞含有シンチレーションバイアルの放射能の割合を計算することによって正規化された。
結果は、18F-トリアフルオシルの血小板への取り込みを確認したが、18F-FDGはこれらの細胞に輸送されなかった。更に、細菌を含有する血小板懸濁液とのインキュベーション後、我々は、細胞混合物に結合した18F-トリアフルオシルの相対放射能が、18F-FDGの放射能よりも約10倍高いことを見い出した。
【実施例
【0087】
ヒト宿主から得られた哺乳動物細胞に対する細菌感染の予後及び/又は診断のための18F-トリアフルオシルの選択的使用
表皮ブドウ球菌は、トリプチケースソイブイヨン培地(TSB)中で37℃で、250rpmで振盪しながら一晩増殖させた。一晩培養物をOD600 0.1に希釈し、指数増殖期中期に達するまでインキュベートした。1×10 CFUをRPMI 1640 1mlに再懸濁した。1×10 CFUを、RPMI 1640 1mlに再懸濁した。
THP1(ATCC(登録商標)TIB-202(商標))及びHL60(ATCC(登録商標)CCL-240(商標))細胞株は、L-グルタミン、10% ウシ胎仔血清及び1% ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI 1640組織培地で37℃及び5% COで増殖させた。HT29細胞株(ATCC(登録商標)HTB-38)は、マッコイ(McCoy's)5A培地及び10%ウシ胎仔血清で37℃及び5% COで増殖させた。
非接着性細胞株(HL60、THP1;1×10細胞ml-1)を回収し、洗浄して、組織培地 1mlに再懸濁した。接着細胞HT29は、80% コンフルエンスで6ウェルプレートで維持培養された。
細菌、細胞株、及び細胞を含まない対照を、2MBq 18F-FDG又は2MBq 18F-チカグレロルと共に37℃で1時間インキュベートした。細菌及び非接着性細胞を遠心分離(600×g、5分)で回収し、連続遠心分離で3回洗浄した。細胞上清をシンチレーションバイアルに収集した。洗浄後、細胞をシンチレーションバイアルに移した。接着細胞を新鮮培地(マッコイ5A培地に10%ウシ胎仔血清を添加)で3回洗浄した。上清をシンチレーションバイアルに収集した。接着細胞をトリプシン処理によって剥離し、シンチレーションバイアルに入れた。細胞及び上清用のシンチレーションバイアルをガンマカウンターでカウントした。結果は、1分あたりのカウントとして取得された。結果は、対照(細菌を含まない)に対して、及び総カウント(細胞及び上清を合わせた)と比較した細胞含有シンチレーションバイアルの放射能の割合を計算することによって正規化された。
結果は、18F-トリアフルオシルの細菌への取り込みを確認したが、哺乳動物細胞の白血球(THP1及びHL-60)又は腫瘍(HT29)細胞のいずれにも取り込みは観察されなかった。対照的に、我々は、哺乳類細胞の3種の株への18F-FDGの取り込みを観察した。よって18F-トリアフルオシルを、ヒト由来の試料における細菌感染の特異的インビトロ検出に使用することができる。
【実施例
【0088】
インビボの予後及び/又は診断のプロトコル
患者の細菌感染のインビボの予後及び/又は診断のための試験プロトコルが確立されており、放射性トレーサーとしての18F-トリアフルオシルの使用に適合している。
以下のプロトコルは、PET-CT画像法のために開発されたが、当業者には、SPECTなどの他のイメージング技術に容易に外挿することができよう。
プロトコルは、各患者について同じ画像取得に基づく。
最低6時間の絶食後、3.7MBq 18F-トリアフルオシル/Kg体重(平均放射能/患者:277MBq、範囲:202~394MBq)を末梢静脈カテーテルから注入する。患者は静かな部屋に入れられ、動かないように指示される。18F-トリアフルオシルの注入の約1時間(平均:69分、範囲:54~100分)後、PET-CTスキャナーで全身の静的検査が行われる。体積測定低線量体軸方向CT画像が取得される。次に、放射生データ画像が各ベッドで記録され、CT減衰モデルに基づく散乱補正(コンボリューション・サブトラクション)及び正規化補正後に、重なり合う冠状スライスとして再構成される。
本プロトコルは、筋肉、上皮、結合組織及び神経などの患者の体の全ての組織に深在することが可能な細菌感染を患う患者に適用できるが、一方、癌又は無菌性炎症を患う患者は、本プロトコルでは検出されにくい。
図1
図2
【国際調査報告】