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特表2022-541382自動車構成部品で支持される少なくとも1つの伸縮自在の締付装置を備えた少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車用の電池、および自動車
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  • 特表-自動車構成部品で支持される少なくとも1つの伸縮自在の締付装置を備えた少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車用の電池、および自動車 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】自動車構成部品で支持される少なくとも1つの伸縮自在の締付装置を備えた少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車用の電池、および自動車
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220915BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/00 P
H02J7/00 301E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576174
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020069175
(87)【国際公開番号】W WO2021008952
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019004928.4
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】レイナー・カオフマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ソクズカ-グース
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ベック
(72)【発明者】
【氏名】アンゼルム・ミュルベルガー
(72)【発明者】
【氏名】イェンズ・マイントシェル
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BA02
5G503BB02
5G503DA04
5G503FA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF31
5H030FF41
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車(10)用の電池(12)に関するものであり、複数の電池セル(14)を備え、電池セル(14)のそれぞれは、電池セル(14)の放電状態において第1の体積を有し、電池セル(14)の充電状態において第1の体積とは異なる第2の体積を有し、放電状態および充電状態において所定の力(K)を複数の電池セル(14)に加えるための少なくとも1つの第1の伸縮自在の締付装置(20)を備え、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、所定の力(K)を複数の電池セル(14)に加えるために、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)が自動車(10)の少なくとも自動車構成部品(22、24、26)に支持されるように形成されている。さらに、本発明は、電池(12)を備えた自動車(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車(10)用の電池(12)、特に全固体電池であって、複数の電池セル(14)を備え、前記電池セル(14)のそれぞれが、前記電池セル(14)の放電状態において第1の体積を有し、前記電池セル(14)の充電状態において前記第1の体積とは異なる第2の体積を有し、前記放電状態および前記充電状態において所定の力(K)を前記複数の電池セル(14)に加えるための少なくとも1つの第1の伸縮自在の締付装置(20)を備え、
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、前記所定の力(K)を前記複数の電池セル(14)に加えるために、前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)が前記自動車(10)の少なくとも自動車構成部品(22、24、26)に支持されるように形成されていることを特徴とする、電池(12)。
【請求項2】
前記全固体電池(12)は、第1の数の電池セル(14)を備えた第1の電池モジュール(28)と、第2の数の電池セル(14)を備えた別個の第2の電池モジュール(30)とを有し、前記第1の電池モジュール(28)は、第1の伸縮自在の締付装置(20)を有し、前記第2の電池モジュール(30)は、第2の伸縮自在の締付装置(34)を有し、前記第1の伸縮自在の締付装置(20)および前記第2の伸縮自在の締付装置(34)は、前記自動車(10)内に取り付けられた状態において、前記自動車構成部品(22、24、26)に支持されることを特徴とする、請求項1に記載の全固体電池(12)。
【請求項3】
前記自動車(10)内に前記全固体電池(12)が取り付けられた状態において、前記全固体電池(12)の少なくとも2つのハウジング壁は、自動車構成部品(22、24、26)として形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の全固体電池(12)。
【請求項4】
少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車(10)用の電池(12)、特に全固体電池であって、複数の電池セル(14)を備え、前記電池セル(14)のそれぞれは、前記電池セル(14)の放電状態において第1の体積を有し、前記電池セル(14)の充電状態において前記第1の体積とは異なる第2の体積を有し、前記放電状態および前記充電状態において所定の力(K)を前記複数の電池セル(14)に加えるための少なくとも1つの第1の伸縮自在の締付装置(20)を備え、
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、前記所定の力(K)を前記複数の電池セル(14)に加えるために、前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)が少なくとも前記電池ハウジングの内側またはセルハウジングで支持されるように形成されていることを特徴とする、電池(12)。
【請求項5】
少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車(10)用の電池(12)、特に全固体電池であって、複数の電池セル(14)を備え、前記電池セル(14)のそれぞれは、前記電池セル(14)の放電状態において第1の体積を有し、前記電池セル(14)の充電状態において前記第1の体積とは異なる第2の体積を有し、
第1の伸縮自在の締付装置(20)が、少なくとも1つの電池セルの内部に取り付けられており、圧力が、セルブロック内の弾性ハウジングを備えたセルに加えられ、または前記セル内の電極に直接加えられることを特徴とする、電池(12)。
【請求項6】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、前記所定の力(K)が調整可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項7】
前記全固体電池(12)は、判断基準に従って前記所定の力(K)を調整するために形成されている電子計算機(38)を有することを特徴とする、請求項6に記載の全固体電池(12)。
【請求項8】
前記電子計算機(38)は、判断基準として、前記複数の電池セル(14)について検出された現在の充電状態に応じて、および/または前記全固体電池(12)の内部で検出された圧力値に応じて、前記所定の力(K)を調整することを特徴とする、請求項7に記載の全固体電池(12)。
【請求項9】
前記全固体電池(12)は、前記複数の電池セル(14)が移動可能に配置されている、少なくとも1つの母線(36)を有していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項10】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、液圧式締付装置として形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項11】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、空圧式締付装置として形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項12】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、ばね式締付装置として形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項13】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、電動式締付装置として形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項14】
前記電動式締付装置は、自己ロック式に形成されている、特に前記電動式締付装置のスピンドル(44)は、自己ロック式に形成されていることを特徴とする、請求項13に記載の全固体電池(12)。
【請求項15】
前記少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、プラスチックまたはラバーによる締付装置として形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の全固体電池(12)。
【請求項16】
電池(12)、特に請求項1~15のいずれか一項に記載の全固体電池と、少なくとも1つの自動車構成部品(22、24、26)とを備えた自動車(10)であって、前記全固体電池12の少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)は、前記自動車構成部品(22、24、26)で支持されている、自動車(10)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車用の電池、特に全固体電池に関するものであり、複数の電池セルを備え、電池セルのそれぞれは、電池セルの放電状態において第1の体積を有し、電池セルの充電状態において第1の体積とは異なる第2の体積を有し、放電状態および充電状態において複数の電池セルに所定の力を加えるために、少なくとも1つの第1の伸縮自在の締付装置を備える。さらに、本発明は、電池、特に全固体電池を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、ソリッドステートバッテリーとも称される、例えば、リチウム金属アノードおよびケイ素アノードを有する全固体電池は、対応する充電状態、いわゆるState of Charge(SOC)を通じて大きな体積変化を有することが先行技術から知られている。さらに、このような全固体電池は、耐用期間、いわゆるState of Health(SOH)を通じてセル厚さの増加を示す場合がある。全固体電池の動作中、特に全固体電池の充電時または放電時、電池セル面に少なくとも実質的に一定の圧力を加える必要があることが企図されている。セル体積の変化によって、電池セルの電圧タップは、電池ハウジングに対して移動する。
【0003】
特許文献1には、複数の単一電池セルを備えた電池が開示されている。それらの単一電池セルは、フラット構造で形成されており、少なくとも2つの端部プレート間で1つのセルスタックに付勢した状態にある。セルスタックをスタック方向の圧力負荷にさらすための手段が設けられている。
【0004】
さらに、特許文献2には、車両用貯蔵モジュールが開示されている。貯蔵モジュールは、貯蔵モジュールの縦方向に直立して隣接配置されている複数のプレート状の蓄電池を有する。さらに、貯蔵モジュールは、複数のプレート状の蓄電池を縦方向に少なくとも2つの相互に対向する側で取り囲み、引張り力を縦方向に受けることができ、貯蔵モジュールを縦方向に対して横への曲げに対して強化するように形成されているハウジングを有する。この場合、ハウジングは、少なくとも部分的に、貯蔵モジュールが取り付けられることとなる車両の車両アンダーボディを有する。このほか、貯蔵モジュールは、ハウジングとの相互作用で複数のプレート状の蓄電池を押し付けるために、縦方向に逆向きの、貯蔵モジュールの端部に配置されている2つのプレッシャプレートを有する。
【0005】
さらに、特許文献3から、1つまたは2つ以上の再充電可能な電池セルを含む電池システムの動作が知られている。電池セルの1つまたは2つ以上の動作パラメータの監視が行われる。少なくとも部分的に、監視される動作パラメータのうちの1つまたは2つ以上に基づいて、1つまたは2つ以上の電池セルに加えられる圧力の動的制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE102009035482A1
【特許文献2】DE102015216221A1
【特許文献3】WO2013/188094A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、自動車の動作を改善することができる電池、特に全固体電池、および自動車を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、独立請求項に記載の電池および自動車によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の態様は、少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車用の電池、特に全固体電池に関するものであり、複数の電池セルを備え、電池セルのそれぞれは、電池セルの放電状態において第1の体積を有し、電池セルの充電状態において第1の体積とは異なる第2の体積を有し、放電状態および充電状態において所定の力を複数の電池セルに加えるための少なくとも1つの第1の伸縮自在の締付装置を備える。
【0010】
少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、所定の力を複数の電池セルに加えるために、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置が自動車の少なくとも自動車構成部品で支持されるように形成されていることが企図されている。
【0011】
したがって、特に、電池が取り付けられた状態では、伸縮自在の締付装置は、少なくとも1つの自動車構成部品に支持されていることが企図されている。これによって、締付装置を支持するために、既に自動車に取り付けられている構成部品を使用することができるので、電池は、構成部品を削減して設けることが可能になる。例えば、自動車構成部品として、自動車フロアまたは自動車フロアパネルを使用することができる。
【0012】
所定の力は、特に実質的に一定の力と理解すべきである。言い換えれば、伸縮自在の締付装置を使用して、一定の力が電池セルに加えられる。それにもかかわらず、特に電池セルの充電状態中の体積変化によって、一定の力が維持されたままとなる。特に、電池セルの充電状態において、電池セルは、放電状態におけるよりも大きな体積を有することが企図されている。
【0013】
特に、例えば、所定の力は、0.1~0.5ミリパスカルの一定の圧力が電池セルのセル表面に加えられるように設定されることが企図されてもよい。
【0014】
特に、これによって、本発明によれば、自動車のユーザが全固体電池を自分の走行サイクルに設定できるようにするために、電池をモジュール化可能にすることができる。特に、走行サイクルとして、必要な走行距離を設定することができる。さらに、モジュール性は、様々な車両クラス間で実現することができる。
【0015】
特に、本発明によれば、それは例えば少なくとも部分的な電気自動車用に連続的にモジュール化可能な電池のことである。順々に複数の異なる電池セルからなり得る複数の電池セルまたは電池モジュールは、特に、自動車縦方向に縦置きで並べられる。これに加えて、ユーザが望む限り多くの電池セルを取り付けることができる。電池セルの数は、例えば、最大容量に到達しない限り、いつでも増やすことができる。電池セル列または電池モジュール列の端部には、一定の間隔で伸縮自在の締付装置を取り付けることができる。この締付装置は、大きな費用をかけずに再度取り出すことができるので、例えば、新品の電池セルまたは新品の電池モジュールを取り付けて、それにより電池の電池容量を増やしたり、例えば、損傷した要素を交換したりすることができる。したがって、締付装置によって、連続して実質的に一定の圧力または一定の力をセルまたは電池モジュールにかけることができる。
【0016】
特に、電池は、電池自体が特別な底面を有しておらず、その代わりに底面として自動車フロアが設けられるように、例えば、車両メインフロア上に縦置きで、または車両メインフロア下に吊り下げて自動車に組み込まれる。特に、完全な構造的組込み、特に全固体電池の剛性が、自動車によって提供される。
【0017】
電池セルは、特に、車両縦方向に自動車に対して縦置きで隣接して並べられる。電池セルまたは電池モジュールは、少なくとも2つの電池セルが並べられる。電池セルまたは電池モジュールは、電池ハウジング内に連続的に固定可能であるか、または別の方法でその場所に保持できる締付装置の、電池の自動車縦方向境界と自動車横方向境界との間にある。例えば、固定は、ボルト接続またはプラグ接続によって実現することができる。伸縮自在の締付装置は、電池容量を変化させる目的で、この締付装置を車両縦方向で移動させることができるように形成されている。この伸縮自在の締付装置は、それを取り外すこともでき、例えば、電池内部の他の箇所に再度取り付けることができるように形成される。これによって、電池容量の増大または損傷した電池セルの交換が可能になる。
【0018】
これによって、総じて、全固体電池を複数の異なる自動車内に取り付けることが可能である。それにより経費削減を実現することができ、自動車のユーザは、連続的に電池容量を選択することができる。特に、これにより自動車の重量を削減することができる。
【0019】
有利な実施形態によれば、全固体電池は、第1の数の電池セルを備えた第1の電池モジュールと、第2の数の電池セルを備えた別個の第2の電池モジュールとを有し、第1の電池モジュールは、第1の伸縮自在の締付装置を有し、第2の電池モジュールは、第2の伸縮自在の締付装置を有し、第1の伸縮自在の締付装置および第2の伸縮自在の締付装置は、自動車内に取り付けられた状態において、自動車構成部品に支持される。言い換えれば、電池は、少なくとも2つの電池モジュールを有し、一方で電池モジュールは、複数の電池セルで形成されていることが企図されている。これによって、電池の内部で電池容量を増大できることが実現される。電池モジュールのそれぞれが別個の伸縮自在の締付装置を有していることによって、それぞれ所定の力を各電池モジュールにかけることができる。特に、各電池モジュールの充電状態から各電池モジュールの放電状態までの体積変化を通じて、このような体積変化を確実に補正することができる。特にこの場合、第1の伸縮自在の締付装置および第2の伸縮自在の締付装置が同じ自動車構成部品で支持されることが企図されていてもよい。例えば、この自動車構成部品は、自動車内部のクロスストラット、特に自動車フロアのクロスストラットであってもよい。これによって、より少ない構成部品で、一定の力を電池セルにかけることが可能になる。
【0020】
さらに、自動車内に電池が取り付けられた状態のとき、電池の少なくとも2つのハウジング壁が自動車構成部品として形成されている場合に有利であることが明らかにされた。言い換えれば、電池は、電池が全固体電池ハウジングなしであるように自動車内に取り付けられてもよい。ハウジングは、特に、種々の自動車構成部品によって提供される。言い換えれば、電池の構成部品はそれぞれ、自動車構成部品で支持される。これによって、重量を削減して、全固体電池を設けることができる。
【0021】
同様に、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、所定の力が調整可能であるように形成されている場合に有利である。言い換えれば、所定の力は、設定することができることが企図されていてもよい。特に、これは、例えば、電池の耐用期間の過程では、異なる所定の力を電池セルに加える必要があるという利点を有する。したがって、所定の力が調整可能であることによって、電池の動作の改善も、耐用期間にわたって実現することができる。
【0022】
有利な別の実施形態では、電池は、判断基準に従って所定の力を調整するために形成されている電子計算機を有する。電子計算機は、特に、対応する回路および配線を有しているため、制御信号を生成することができる。したがって、特に、電子計算機は、自動的に、かつ現在の充電状態に応じて所定の力を調整することができる。これによって、電池の動作の向上が実現される。
【0023】
そのうえ、電子計算機が、判断基準として複数の電池セルについて検出された現在の充電状態に応じて、および/または電池内部で検出された圧力値に応じて、所定の力を調整する場合に有利である。特に、このために、電池は、例えば、適切な電圧センサを有しており、これによって複数の電池セルまたは各電池セルの充電状態を検出することができ、それにより、検出された充電状態に応じて力を適切に設定することができることが企図されている。代替的または追加的に、圧力センサが電池内部に取り付けられており、これが電池内部の内部圧力を測定し、この検出された圧力値に応じて、少なくとも1つの伸縮自在の締付装置の設定または調整を行うことができる。言い換えれば、電池セルの充電状態の対応するセンサまたは引出し導線によって、加えられるべき必要な圧力、特に所定の力の値が決定され、電池セルが、電池セルの各表面にわたって一定の圧力を受けて、体積変化が引き起こされ得るように、または体積変化時においても一定の圧力がセルに作用するように、常に設定されることが企図されている。圧力または締付けは、セル並列配置の側面で、各ハウジング壁またはその下にある車両構造によって支持されるように設定される。これにより、自動車内部で電池の動作の向上が実現される。
【0024】
有利な別の実施形態によれば、電池、特に全固体電池は、複数の電池セルが移動可能に配置されている、少なくとも1つの母線を有する。この場合、特に、電池セルがハードケースセルとして形成されているか、またはパウチセルとして形成されているかのいずれかが企図されている。電圧タップは、導体レール、言い換えれば母線の上を摺動することができる、したがって、セルが移動しても体積変化によって随伴することができる適切な端子を介して実現される。これによって、電池セルの体積変化によって電池セルが移動するときに、引出し導線に過度に不相応な機械的負荷が発生することはない。母線は、例えば、ばねによってセル引出し導線に押し付けられて、接触を確保することができる。セル引出し導線または母線は、電池セルの側面、または上面もしくは下面のいずれかに配置することができる。これによって、電池の動作の向上が実現される。
【0025】
さらに、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置が液圧式締付装置として形成されている場合に有利である。この場合、特に、圧力は、液体によって加えられる。次いで、伸縮自在の締付装置では、液体によって電池セルの伸長を特に縦方向で補正することができる。このために、例えば、パッドによって、または液圧要素としてのシリンダによって、体積変化および所定の力を実現することができる。
【0026】
さらに、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置が空圧式締付装置として形成されている場合に有利であることが明らかとなった。特に、空圧装置の場合、適切な所定の力または圧力は、気体によって加えられ、例えば、伸縮自在の締付装置では、パッドによって、またはシリンダによって、車両縦方向への伸長変化に合わせて補正される。これは、特に、伸縮自在の締付装置の好ましい変形形態である。
【0027】
別の有利な実施形態では、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、ばね式締付装置として形成される。言い換えれば、ばね力によって所定の力が電池セルに加えられる。次いで、特に、伸縮自在の締付装置の各ばね要素は、少なくとも1つの自動車構成部品で支持されることによって、所定の力を電池セルに加えることができる。これによって、わずかなコストで電池の動作の向上が実現される。
【0028】
代替的に、例えば、電池セルと伸縮自在の締付装置との間に配置されているテンションマットを使用して、所定の力を実現することができる。さらに代替的に、例えば、弾性プラスチック構成部品またはラバー構成部品によって、特に超弾性ラバーによって圧力を加えることができ、弾性ラバー構成部品は、特に適切に変形可能である。さらに代替的または追加的に、伸縮自在の締付装置の内部のフォーム材によって、所定の力を電池セルに加えることができる。
【0029】
別の有利な実施形態では、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、電動式締付装置として形成される。特に、これによって、例えば、制御モータによる電気的移動を行うことができ、それによって一方では、次に伸縮自在の締付装置が全体で移動され、次いで特に、制御モータは、自動車構成部品で、例えば、ねじ山付きロッドによって支持されている。代替的または追加的に、内部で、シリンダによって、または伸縮自在の締付装置の壁を移動することによって、一定の力を形成することができる。
【0030】
有利な実施形態では、電動式締付装置は、自己ロック式であり、特に電動式締付装置のねじ山付きスピンドルは、自己ロック式に形成されている。これによって、所定の力を確実に電池セルに加えることが可能になり、この場合、自己ロック式の実施形態によって、エネルギーを削減して、力を維持することができる。
【0031】
有利な別の実施形態によれば、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、プラスチックまたはラバーによる締付装置として形成されている。これは、例えば、弾性プラスチック構成部品またはラバー構成部品によって、特に超弾性ラバーによって実現することができ、弾性ラバー構成部品は、特に適切に変形可能である。これによって、簡単に、しかも確実に所定の力を電池セルに加えることが可能になる。
【0032】
特に、電池が、少なくとも2つの伸縮自在の締付装置、特に複数の伸縮自在の締付装置を利用できる場合、伸縮自在の締付装置が、好ましくは等しく形成されていることが企図されていてもよく、しかし、それぞれの締付装置が相互に異なるように形成されていることもまた可能である。例えば、第1の伸縮自在の締付装置は、電動式締付装置として形成されていてもよく、第2の伸縮自在の締付装置は、空圧式締付装置として形成されていてもよい。この列挙は単なる例示であり、決して最終的なものとして見なすべきではなく、このような実施形態の具体的説明のみを目的とするものである。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、前述の態様に従った電池を備え、少なくとも1つの自動車構成部品を備えた自動車に関し、電池の少なくとも第1の伸縮自在の締付装置は、自動車構成部品で支持される。自動車は、特に、乗用車として形成されている。
【0034】
本発明のその他の利点、特徴、および詳細については、下記の好ましい実施例の説明および図面を参照して行う説明を通して明らかとなる。本明細書に記載した前述の特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図面の説明で以下に記載し、および/または図面だけに示す特徴及び特徴の組み合わせは、本発明の範囲から逸脱せずに、記載するそれぞれの組み合わせだけではなく、別の組み合わせでも単独でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電池を備えた自動車の一実施形態の概略平面図である。
図2】別の実施形態の電池を備えた自動車の一実施形態の別の概略平面図である。
図3】電池の一実施形態の概略側面図である。
図4】電池の別の実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図では、同じ要素、または機能が同じ要素には同じ参照符号が付与されている。
【0037】
図1は、電池12の一実施形態を備えた自動車10の一実施形態の概略平面図である。特に全固体電池であり得る電池12は、特に、少なくとも部分的に電気駆動可能な自動車10用に形成されている。電池12は、複数の電池セル14を有する。電池セル14のそれぞれは、電池セル14の放電状態において第1の体積を有し、電池セル14の充電状態において第1の体積と異なる第2の体積を有する。この体積変化は、図1で特に矢印16および18によって表されている。第1の矢印16によって、特に、体積増大が表され、第2の矢印18によって体積縮小が表されている。特に、充電状態において、各電池セル14は、より大きくなり、放電状態におけるよりも増大した体積を有する。
【0038】
さらに、電池12は、放電状態および充電状態において所定の力Kを複数の電池セル14に加えるために、伸縮自在の締付装置20を有する。
【0039】
少なくとも第1の伸縮自在の締付装置20が所定の力Kを複数の電池セル14に加えるために、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置20が自動車10の少なくとも自動車構成部品22で支持されるように形成されていることが企図されている。言い換えれば、自動車構成部品22は、構造化要素である。本明細書の実施例では、構造化要素は、例えば、自動車10のクロスストラットまたは車軸であってもよい。特に、図1では、自動車10内に電池12が取り付けられた状態において、電池12の少なくとも2つのハウジング壁が自動車構成部品22、24として形成されていることが示されている。本明細書の実施例では、例えば、電池12、または電池セル14が、ハウジング壁として第2の自動車構成部品24で支持され、本明細書では、それはまた車軸として、例えば、自動車10の後車軸として形成することができる。さらに、自動車10のシル26によって、対応するハウジング壁が電池12用に形成されてもよい。
【0040】
図1では、特に、自動車10の主要進行方向にある自動車10が示されている。その場合、矢印Xは、特に自動車10の自動車縦方向および特に自動車10の主要進行方向を示す。矢印Yは、特に自動車10の自動車横方向を示す。
【0041】
図2は、電池12の一実施形態を備えた自動車10の別の実施形態の概略平面図である。以下の実施例では、電池12は、第1の数の電池セル14を備えた第1の電池モジュール28と、第2の数の電池セル14を備えた別個の第2の電池モジュール30とを有する。本明細書の実施例では、第1の電池モジュール28は、3つの電池サブモジュール32によって形成されており、電池サブモジュール32のそれぞれは、電池セル14を有する。本明細書の例では、第2の電池モジュール30は、電池セル14によってのみ形成されている。特に、この例では、電池12がモジュール式に形成されており、特にユーザの希望により、特に電池容量に関して調整することができることが示されている。さらに、図2では、第1の電池モジュール28が第1の伸縮自在の締付装置20を有し、第2の電池モジュール30が、本明細書の実施例では、第2の伸縮自在の締付装置34を有していることが示されている。第1の伸縮自在の締付装置20および第2の伸縮自在の締付装置34は、自動車10に取り付けられた状態において、自動車構成部品22で支持されることが企図されている。
【0042】
さらに、図2では、複数の電池セル14、すなわち本明細書の実施例では電池サブモジュール32が移動可能に配置されている、少なくとも1つの母線36を電池12が有していることが示されている。
【0043】
図3は、電池12の一実施形態の概略側面図である。本明細書の実施例では、特に、所定の力Kが調整可能であるように、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置20が形成されていることが示されている。そのために、例えば、判断基準に従って所定の力Kを調整するように形成されている電子計算機38を電池12が有していることが企図されていてもよい。電子計算機38は、判断基準として、複数の電池セル14の検出された現在の充電状態に応じて、および/または電池12の内部で検出された圧力値に応じて、この場合もまた所定の力Kを調整することができる。このために、例えば、圧力または充電状態を検出するのに適切な検出装置40が電池12の内部に配置されていることが企図されていてもよい。
【0044】
特に、図3では、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置が電動式締付装置として形成されていることが示されている。このために、本明細書の実施例では、電動式締付装置は、スピンドル44を駆動することができる電動モータ42を有する。特に、ねじ山46が自動車構成部品22に配置されていることにより、スピンドル44の回転によって力Kをプレッシャプレート48に加え、次いで、プレッシャプレート48が力Kを一定に電池セル14に分配することができる。
【0045】
電動式締付装置の代わりに、伸縮自在の締付装置20、34が、ばね式締付装置として、またはプラスチックまたはラバーによる締付装置として設けられていてもよい。
【0046】
特に、締付装置20、34によって、電池セル14の厚みが充電もしくは放電により、または経年劣化により変化し得ることが実現される。このために、例えば、平坦なプレッシャプレート48が厚みの変化に応じて能動的に前後移動することができるため、軸線方向の一定の圧縮が生じる。特に、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置20は、厚みの変化の補正のために、好ましくは水平力・移動距離特性曲線により能動的に制御される定力装置を有する。
【0047】
言い換えれば、本明細書の実施例では、力Kは電気機械的に形成することができる。この場合、運動エネルギーが、好ましくは電動モータ42によって生成され、例えば、ギア列によって、またはスピンドル44によって、変速ギア付きランプ装置またはレバー装置を介してプレッシャプレート48に直接導かれる。停止エネルギーを加える必要がないようにするため、スピンドル44を備えた変形形態では、これは自己ロック式で形成される。ギア列を備えた変形形態では、無電流で動作するロックまたはブレーキが設けられる。ディスク装置の常時再調整を回避するために、電池モジュール28、30とプレッシャプレート48との間に弾性装置、例えば、薄いテンションマットを追加配置することは有意義であり得る。
【0048】
特に、伸縮自在の締付装置20、34の水平力・移動距離特性曲線により、必要な最小締付け力のみが常時印加されるため、電池セル14または電池モジュール28、30または電池サブモジュール32をより軽量に、しかもより低コストかつより省スペースで設けることができる。電極スタックは、所定の力Kによって常時圧縮されるため、セルの性能およびセルの耐用年数に悪影響が及ぶことはない。さらに、所定の力Kの能動的調整によって、運転状態に応じて所定の力Kを適切に変化させることが可能である。これにより、例えば、輸送時、静止時、または車両衝突などの危険発生時であっても、力Kを0に戻すことができるであろう。伸縮自在の締付装置20、34は、電池セル14または電池モジュール28、30に1回または何回でも取り付けることができる。電池モジュール28、30内で各電池セル14の後ろ側に適切な伸縮自在の締付装置20、34が配置されている場合、電池セル14は、厚みが変化しても、その軸線方向位置が同じであり続ける。
【0049】
図3に示されたものの代わりに、例えば、電動モータ42、スピンドル44およびランプ装置を使用した、伸縮自在の電動駆動式締付装置20を設けることができる。あるいは、さらに、電動モータ42、スピンドル44およびレバー装置を使用した、伸縮自在の電動駆動式締付装置20が形成されていることが企図されていてもよい。
【0050】
図4は、電池12の別の実施形態の概略斜視図である。特に、図4では、例えば、図2による第2の電池モジュール30の実施形態が示されている。以下の実施例では、第2の伸縮自在の締付装置34は、空圧式締付装置として形成されている。あるいは、伸縮自在の締付装置20、34は、液圧式締付装置として形成されていてもよい。本明細書の実施例では、第2の伸縮自在の締付装置34が示されている。同様の実施例は、第1の伸縮自在の締付装置20に適用される。空圧式伸縮自在の締付装置としての伸縮自在の締付装置20、34の実施形態は、好ましい実施例である。第2の電池モジュール30は、固体化学物質を使用して形成され得る、複数の電池セル14を有する。空圧式アクチュエータは、ベローズの動作原理に従って、本明細書の実施例では、直列接続された3つの空気チャンバにより形成されている。長方形の形状を確保するために、チャンバ壁は、例えば、プラスチック製またはラバー製で、正面側が金属支持プレートに接着または硬化されている。空圧式アクチュエータの正面側の平坦な成形によって、アクチュエータと電極スタックとの間には、力を分配するプレッシャプレートが設けられている必要がない。空圧式アクチュエータおよび電極スタックは、全面閉鎖型の金属ハウジング50内に取り付けられ、金属ハウジング50の正面側の壁は、締付け力の方向に、特に所定の力Kによって押し付けられており、例えば、自動車構成部品20で直接支持されている。ベローズへの圧縮空気供給52は、電動駆動コンプレッサによって調整弁を介して行われる。長期間にわたって必要な圧力を、コンプレッサの作動なしで維持するために、空圧式装置内に蓄圧容器を配置することができる。自動車10に既に、専用コンプレッサを使用する空気ばね装置が装備されている場合、対応して形成された電池セル14または電池モジュール28、30に必要な追加費用は著しく削減される。
【0051】
本発明の構成では、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)が所定の力(K)を複数の電池セル(14)に加えるために、少なくとも第1の伸縮自在の締付装置(20)が少なくとも電池ハウジングの内側またはセルハウジングで支持されている。
【0052】
あるいは、本発明による締付装置は、電池またはセルブロック内だけでなく、各電池セルの内部にも取り付けることができる。この場合、圧力は、セルブロック内の弾性ハウジングを備えたセルに加えられるか、またはセル内の電極に直接加えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 自動車
12 全固体電池
14 電池セル
16 矢印
18 矢印
20 第1の伸縮自在の締付装置
22 第1の自動車構成部品
24 第2の自動車構成部品
26 シル
28 第1の電池モジュール
30 第2の電池モジュール
32 電池サブモジュール
34 第2の伸縮自在の締付装置
36 母線
38 電子計算機
40 検出装置
42 電動モータ
44 スピンドル
46 ねじ山
48 プレッシャプレート
50 ハウジング
52 圧縮空気供給
K 所定の力
X 自動車縦方向
Y 自動車横方向

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】