IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-照明可能な積層中間層及びガラス 図1
  • 特表-照明可能な積層中間層及びガラス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】照明可能な積層中間層及びガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220915BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
B32B17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500837
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020069386
(87)【国際公開番号】W WO2021005162
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19185527.9
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】ビーア,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】マミー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA07C
4F100AA07H
4F100AA08C
4F100AA08H
4F100AA19C
4F100AA19H
4F100AA21C
4F100AA21H
4F100AA25C
4F100AA25H
4F100AA27C
4F100AA27H
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AG00D
4F100AG00H
4F100AJ06B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK01H
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK15B
4F100AK23B
4F100AK23E
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK51B
4F100AK68B
4F100AK70B
4F100AR00C
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA04B
4F100DE01C
4F100EJ172
4F100EJ242
4F100EJ422
4F100JN08
4F100JN08C
4F100JN30C
4F100YY00
4F100YY00C
4G061AA06
4G061AA18
4G061AA20
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB12
4G061CB13
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD14
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
4G061DA38
(57)【要約】
特に透明な照明及びディスプレイ用途のために、光学的に改善された機能層、構造又はパターンの適用を可能にする透明な積層中間層及び積層構造が記載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのガラス板(101,105)と、該2つのガラス板の間に少なくとも1つのポリマー中間層膜(102)とを含む合わせガラスであって、光散乱粒子を含む機能層(103)がポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面に適用され、ポリマー中間層膜(102)は、ポリビニルブチラール及び任意に可塑剤Wを含み、積層前のポリマー中間層膜(102)中の可塑剤Wの含有量は5%以下であることを特徴とする、合わせガラス。
【請求項2】
ポリマー中間層膜(102)は、(メタ)アクリレート、ポリ(ビニル)アセタール、エチレンメタクリル酸コポリマーのようなアイオノマー、ニトロセルロース、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
ポリマー中間層膜(102)はポリ(ビニル)ブチラールを含む、請求項2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記光散乱粒子は、TiO、ZnO、Al、ZrO、PbSO、BaSO、CaCO、ガラス、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記光散乱粒子は、DIN 13320に準拠したレーザー回折法により決定された体積によるメジアン粒径D50が、0.01μm以上1.0μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
機能層(103)は、積層前において、DIN EN 410に準拠して測定された光透過率TL(380~780nm)が80%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
ポリマー中間層膜(102)は、ポリビニルブチラールを含み、可塑剤が添加されていない、請求項1~6のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
ポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面は、積層前において、10μm以下の粗さRzを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
ポリマー中間層膜(102)は、積層前において、10μm以上250μm以下の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項10】
第1のガラス板(101)、さらなるポリマー中間層膜(102A)、機能層(103)、ポリマー中間層膜(102)、及び第2のガラス板(105)をこの順に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項11】
第1のガラス板(101)、ポリマー中間層膜(102)、機能層(103)、さらなるポリマー中間層膜(102A)、及び第2のガラス板(105)をこの順に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記合わせガラスの光透過率は80%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項13】
第1のガラス板(101)、さらなるポリマー中間層膜(102A)、機能層(103)、ポリマー中間層膜(102)、光学分離層(104)、及び第2のガラス板(105)をこの順に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項14】
光源(106)及び第1のガラス板(101)と接触する光コネクタ(107)をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項15】
機能層(103)が、印刷又はコーティング法によりポリマー中間層膜(102)に適用される工程を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に透明な照明及びディスプレイ用途のために、光学的に改善された機能層、構造又は模様の適用を可能とする透明な積層中間層及び積層構造が記載されている。
【背景技術】
【0002】
透明な表面、特に建物のガラスファサード又は自動車のガラスは、ますます機能化の対象となっている。関心のある主な分野は、透過する日光の制御、照明、及び情報の表示である。自動車市場では、透明なガラス表面の照明が特に重要である。
【0003】
DE 10204359 A1には、自動車用サンルーフを照らすための装置が記載されている。しかし、ここに記載されている装置の構造はかなり複雑であり、サンルーフ部分の厚さが増加をもたらす。この厚みの増加は、必然的にドライバーのヘッドスペースの減少と車両重量の増加につながる。
【0004】
DE 10 2012 109 900 B4には、埋め込まれた光散乱粒子、又は物理的に変性された表面で作られた光ガイド層を含む自動社用サンルーフのための照明可能なガラスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10204359号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102012109900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、改善された照明可能なガラスが依然として必要とされている。
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、改善された製造コスト、原材料コスト、及び/又は改善された環境フットプリントを備える合わせガラスである。本発明の別の目的は、改善された熱安定性、改善されたヘーズ、透明性及び/又は透過性のような改善された光学特性、及び/又は改善された設計特徴などの改善された特徴を有する合わせガラスを提供することである。
【0008】
したがって、本発明は、第1の態様において、2つのガラス板(101,105)と、該2つのガラス板の間に少なくとも1つのポリマー中間層膜(102)を含む合わせガラスであって、光散乱粒子を含む機能層(103)がポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面に適用され、ポリマー中間層膜(102)は、ポリビニルブチラール及び任意に可塑剤Wを含み、積層前のポリマー中間層膜(102)中の可塑剤Wの含有量は5%以下であることを特徴とする、合わせガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
可塑剤をほとんど又は全く含まないポリビニルブチラール(PVB)ポリマー中間層膜(102)を使用する1つの利点は、特に平滑な表面を有するフィルム、これにより平滑な面に対するより良好で均一な印刷画像を生成可能なことである。また、膜102に使用されるポリビニルブチラール材料は、当然のことながら、ガラス産業で使用される標準のPVB中間層と非常に適合性がある。さらに、可塑剤を含まない、これにより、剛性のあるPVB膜102は、フレキソ印刷などの新しい、より経済的なロールツーロールプロセスを使用して印刷できる。これは、ガラス又は軟質PVB膜では不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1による本発明の合わせガラス構造の一実施形態を示している。
図2図2は、実施例2による本発明の合わせガラス構造のさらなる実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましくは、ポリマー中間層膜(102)は、また、(メタ)アクリレート、ポリ(ビニル)アセタール、エチレンメタクリル酸コポリマーのようなアイオノマー、ニトロセルロース、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル又はそれらの混合物を含む。
【0012】
光散乱粒子は、通常、コーティング又は印刷法により、ポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面に適用される。印刷の場合、光散乱粒子は、オフセット印刷、回転グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷など、印刷業界で一般的に知られている技術を介して適用できる。
【0013】
機能層(103)の厚さは、積層前において、好ましくは0.1μm~100μm、より好ましくは1.0μm~20μmである。
【0014】
機能層(103)は、光散乱粒子と少なくとも1つのマトリックス材料とを含むことが好ましい。適切なマトリックス材料には、光散乱粒子を分解することなく均一に分散させることができるポリマーが含まれる。好ましくは、マトリックス材料は、(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、ポリ(ビニル)アセタール、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニルのホモ又はコポリマーを含む。最も好ましくは、マトリックス材料はポリビニルブチラールである。
【0015】
機能層(103)には、さらなる成分が存在していてよい。さらなる成分の例としては、共樹脂、溶媒、UV吸収剤、UV安定剤、架橋剤、硬化剤、促進剤、光開始剤、界面活性剤、安定剤、フィラー、チキソトロピー改質剤及び可塑剤が挙げられる。
【0016】
当該技術分野で知られている光散乱材料を使用できる。好ましくは、光散乱粒子は、TiO、ZnO、Al、ZrO、PbSO、BaSO、CaCO、ガラス、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される。光散乱粒子は、堅い若しくは中空のビーズ又は繊維として使用できる。
【0017】
好ましくは、光散乱粒子は、0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~2.5重量%の量で機能層(103)中に存在する。
【0018】
また、好ましくは、光散乱粒子は、DIN 13320に準拠したレーザー回折法により決定された体積によるメジアン粒径D50が、0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、0.05μm以上又は0.1μm以上である。また、好ましくは、前記メジアン粒径D50は、10.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、最も好ましくは1.0μm以下である。好ましくは、DIN 13320に準拠したレーザー回折法により決定された体積による前記メジアン粒径は、0.01μm以上1.0μm以下である。
【0019】
好ましくは、光散乱粒子は、濃度勾配の形態で機能層(103)に存在する。すなわち、機能層(103)中の機能性粒子の濃度は、光源までの距離に応じて変化する。より好ましくは、機能層(102)内の光散乱粒子の濃度は、最も近い光源までの距離が増加するにつれて増加する。
【0020】
一実施形態では、本発明の合わせガラスは、自動車のガラスとして使用される。好ましくは、第2のガラス板(105)は、車両の外側を向いている。また、好ましくは、本発明の合わせガラスは、サンルーフに使用される。その場合、第2のガラス板(105)は、積層体を介して車両に伝達される太陽エネルギーを低減するために着色してよく、これにより、吸収の増加を示してよい。このような光吸収性の高いシートは、光導波路としては特に適していない。
【0021】
好ましくは、機能層(103)は、ポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面を完全に被覆する。
【0022】
また、好ましくは、機能層(103)は、ポリマー中間層膜(102)の一部のみを被覆する。したがって、機能膜(103)は、模様の形態で適用でき、特定の模様の形態で照明(illumination)を達成できるが、これは、光散乱粒子が積層体に均一に分配される場合には可能でない。したがって、好ましくは、機能膜(103)は、ポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面の90%以下、80%以下、75%以下、最も好ましくは50%未満を覆う。この実施形態は、航空機、列車又は船のための有益な及び/又は装飾的なガラス、及び、特にショーウィンドウ、エレベータ又はファサードガラスのための建設エリアでの使用に特に有用である。
【0023】
機能層(103)の厚さは、IR顕微鏡で測定したときに、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは1~30μm、最も好ましくは2~20μmである。
【0024】
本発明において、光学的に透明とは、完全に光学的に透明であること、並びに半透明であることを意味する。したがって、光学的に透明とは、初期光の少なくとも40%が層(103)を含むデバイスを通過することを意味し、さらにより好ましいのは、50~100%であり、さらにより好ましいのは80~100%である。
透明度(光透過率)は、透明なガラスの2つの標準ペイン(standard panes)を使用した試験積層体上のDIN EN 410に基づいた光透過率TL(380~780nm)として決定される。
【0025】
誤解を避けるために、光透過率は、機能層(103)を含む試験積層体の領域で測定され、(同じ積層体で、又は、機能層(103)がポリマー中間層膜(102)の表面を完全に被覆する場合には、同じ種類の膜を使用した機能膜(103)なしに調製された試験積層体で)機能層を含まない領域と比較される。
【0026】
ポリマー中間層膜(102)及び(102A)のヘイズを回避するために、異なる層のいずれかにおける塩化物イオン及び/又は硝酸イオン及び/又は硫酸イオンの量を低減してよい。したがって、塩化物含有量は、150ppm未満、好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満であり得る。最も好ましくは、塩化物含有量は10ppm未満である。硝酸塩含有量は、150ppm未満、好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満であってよい。最も好ましくは、硝酸塩含有量は10ppm未満である。再び、任意に、硫酸塩含有量は、150ppm未満、好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満であってよい。
【0027】
また、好ましくは、ポリマー中間層膜(102)は、ポリビニルブチラールと可塑剤Wとを含み、積層前において、ポリマー中間層膜(102)中の可塑剤Wの含有量は20%以下である。より好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満又は5%未満、より好ましくは0.5%未満又はより好ましくは、ポリマー中間層膜は可塑剤が添加されていない。
【0028】
「積層前」という用語は、膜が本発明の合わせガラスの他の成分のいずれかと接触する前の状態を意味するものとする。
【0029】
ポリビニルブチラールの場合、膜は一般に、キャストフィルムラインを使用した押出成形によって、又はインフレーションフィルムの形で製造される。ここで、表面粗さは、制御されたメルトフラクチャによって、又は構造化されたチルロール及び/又は構造化されたバックロールの使用によってさらにキャストフィルム法を用いて作製してもよい。好ましくは、ポリマー中間層膜(102)の少なくとも1つの表面は、積層前において、EN ISO 4287に準拠して測定された10μm以下の粗さRzを有する。本発明により使用されるポリマー中間層膜(102)は、好ましくは、粗さRzが25μm未満、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくはRzが1~5μmである片面構造を有する。この平滑な表面は、光散乱粒子がポリマー中間層膜(102)の表面に非常に均一な方法で適用されて、照らされたガラスの高品質の光学パターンをもたらすことを可能にする。
【0030】
ポリマー中間層膜のもう一方の表面は、上記のような粗さを有していてよい。
【0031】
しかし、ポリビニルブチラールから形成される通常の積層中間層は、典型的には、積層工程中に適切な脱気を確実にするために、より粗い表面を有する。このような膜の粗さは、通常、Rz値が20~80μmの範囲である。したがって、ポリマー中間層膜のもう一方の表面は、0.1~50μm、好ましくは1~20μm、より好ましくは5~10μmの粗さを有していてよい。
【0032】
好ましくは、ポリマー中間層膜(102)は、積層前において、10μm以上250μm以下、より好ましくは20~160μm、最も好ましくは30~120μm、また好ましくは40~100μm、具体的には50~80μmの厚さを有する。この厚さの範囲には、膜への追加のコーティングは含まれていない。これらの薄いポリマー中間層膜は、粘着の問題を回避し、そのような薄膜に印刷して処理するために必要な剛性を示すために、前述のように可塑剤の含有量が低い又はなく、又は可塑剤を有しないことが特に好ましい。
【0033】
本発明の別の実施形態において、合わせガラスは、第1のガラス板(101)、さらなるポリマー中間層膜(102A)、機能層(103)、ポリマー中間層膜(102)、及び第2のガラス板(105)をこの順に含む。
【0034】
具体的には、さらなるポリマー中間層膜(102A)は、ポリビニルブチラールを含む。好ましくは、さらなるポリマー中間層膜(102A)の少なくとも1つの表面は、積層前において、EN ISO 4287に準拠して測定される20~80μm、より好ましくは25~70μm、最も好ましくは30~60μmの粗さRzを有する。また、好ましくは、もう一方の表面は、積層前において、EN ISO 4287に準拠して測定される20~80μm、より好ましくは25~70μm、最も好ましくは30~60μmの粗さRzを有する。
【0035】
さらにポリマー中間層膜(102A)は、当該技術分野で知られている任意の可塑化P VB膜であり得る。すなわち、可塑剤単独、及び可塑剤の混合物、積層前に少なくとも22重量%、例えば22.0~45.0重量%、好ましくは25.0~32.0重量%、特に26.0~30.0重量%の可塑剤を含有してよい。
【0036】
適切な可塑剤には、以下の群から選択される1つ以上の化合物が含まれる:
-多価脂肪族又は芳香族酸のエステル、例えばアジピン酸ジアルキル、例えばアジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、及びアジピン酸と脂環式エステルアルコール又はエーテル化合物含有エステルアルコールとのエステル、セバシン酸ジアルキル、例えばセバシン酸ジブチル、及びセバシン酸と脂環式エステルアルコール又はエーテル化合物含有エステルアルコールとのエステル、フタル酸のエステル、例えばフタル酸ブチルベンジル又はフタル酸ビス-2-ブトキシエチル。
-多価脂肪族又は芳香族アルコールのエステル又はエーテル又は1つ以上の未分岐又は分枝した脂肪族又は芳香族の置換基を有するオリゴエーテルグリコール、例えばグリセロール、ジグリコール、トリグリコール又はテトラグリコールと直鎖状又は分岐状脂肪族又は脂環式カルボン酸とのエステル;
-脂肪族又は芳香族エステルアルコールを有するリン酸塩、例えばトリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、及び/又はトリクレジルホスフェート。
-クエン酸、コハク酸及び/又はフマル酸のエステル。
【0037】
特に好ましくは、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はトリエチレングリコール-ビス-2-エチルヘキサノエート(3GO又は3G8)である。
【0038】
さらに、ポリマー中間層膜(102)及び(102A)は、さらなる添加剤、例えば
残留量の水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、蛍光増白剤又は蛍光添加剤、安定剤、着色剤、加工助剤、無機又は有機ナノ粒子、焼成ケイ酸及び/又は表面活性物質を含有してよい。
【0039】
あるいは、ポリマー中間層膜(102)及び/又はさらなるポリマー中間層膜は、可視光での色ずれを回避するために、0.15重量%未満含み、より好ましくは紫外線吸収剤を含まない。
【0040】
積層前において、さらなるポリマー中間層膜(102A)の厚さは、好ましくは250~2500μm、より好ましくは300~1600μm、より好ましくは380~1200μm、最も好ましくは600~900μmである。
【0041】
積層工程で十分に脱気できるように、少なくとも1つの粗面を有するポリマー中間層膜(102)、(102A)を用い、該粗面がガラス板(101,105)に接触するように位置を定めることが特に好ましい。
【0042】
最終的なガラスが使用される場所によっては、例えば自動車のサンルーフの場合、積層体を通して車両に透過する太陽エネルギーを低減するために、太陽に面する第2のガラス板(105)が、度々着色され得る。したがって、照明の目的のために吸収されて失われるであろうガラス板(105)に入る光の量を減らすために、任意に着色されたガラス板(105)と光源との間に光学分離層(104)を使用してよい。
【0043】
したがって、本発明の別の実施形態は、第1のガラス板(101)、さらなるポリマー中間層膜(102A)、機能層(103)、ポリマー中間層膜(102)、光学分離層(104)、及び第2のガラス板(105)をこの順に含む、合わせガラスに関する。
【0044】
光学分離層(104)は、ガラス板(105)に入る主要な量の光を防ぐことができる任意の媒体からなっていてよい。通常の積層中間層は、透明ガラス板(101,105)と屈折率が近いため、光学分離層(104)としてはあまり適さない。したがって、光学分離層(104)の屈折率は、著しく低くしなければならない。光学分離層(104)の屈折率が低いほど、光ガイド及び照明はより効率的になる。適した材料は、隣接する層(102)及び(105)の間の強固な結合を可能にするのに十分な接着性、凝集性、及び機械的強度を示す。適切な材料には、ポリマー又は無機材料又はこれらの複合材料が含まれる。さらに、低屈折率層は、その細孔に低屈折率流体を組み込むことを可能にするナノスケールの多孔質材料からなってよい。
【0045】
別の構成では、低屈折率層は、一般的な絶縁ガラスユニットの場合と同様の方法で、空気又は別のガスで満たされる単純なギャップになるように選択することもできる。別の実施形態では、ギャップは埋めないように選択でき、したがって、真空絶縁ガラスと同様の方法で真空を提供できる。後者の場合、ギャップはドット状に印刷された形態で小さなスペーサーにより保持され、崩壊するのを防ぐ必要がある。このスペーサーは、非透過性の、好ましくは白色の材料で作られていることが好ましい。
【0046】
最終的な用途の本質的な部分は、光源(106)であり、これは、光コネクタ(107)を介して光ガイド層(101)及び(102)に結合される光を提供する。光吸収が低く、透明で、光学的透明材料である光コネクタ(107)は、光源(106)と光ガイド層(101)及び(102)との間に、例えば物理的及び/又は化学的硬化、光学的透明接着剤によって永久的な結合を形成してよい。あるいは、ポジティブフィット又はフォースフィット(force-fit)の接続により。後者の場合、例えば光源(106)の変更など、メンテナンス性を向上させることができる。ポジティブフィット又はフォースフィットに適した材料は、光学的に透明なポリマー、特にエラストマーである。光源(106)は、任意の従来の光源であり得、好ましくは、それはLED光源である。
【0047】
本発明の第2の態様は、印刷又はコーティング法によって機能性フィルム(103)がポリマー中間層膜(102)に適用される工程を含む、上記のような合わせガラスの製造方法である。
【0048】
ガラス板(101,105)及び様々な中間層膜は、当技術分野で知られている任意の既知の積層技術によって積層できる。
【実施例
【0049】
実施例
機能層(103)印刷インクを形成するために、DIN 13320に準拠したレーザー回折法により決定された粒径D50が0.15μmである二酸化チタン(光散乱粒子として)0.40重量%、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)(マトリックス材料として)27.0重量%、2-ブトキシエタノールアセテート36.3重量%、及びシクロヘキサノン(犠牲溶媒(sacrificial solvents))として)36.3重量%を選択した。
【0050】
実施例1
可塑剤を添加していない厚さ50μmのポリビニルブチラール中間層を使用した。この基材は、粗さRzが10μmである面Aと、粗さRzが5μmである面Bを有していた。上記の印刷インキを用いたスクリーン印刷により、機能層を中間層の面Bに塗布した。120スレッド/cm、スレッド直径34μmのスクリーンを使用した。スクリーンは、5cm×10cmの長方形の所望の印刷パターンを形成するために部分的に硬化された光エマルジョンで前もって処理された。印刷されたインクを室温で30分間乾燥させた。次いで、印刷された基材を、厚さ2mmの通常のフロートガラスのシート上に置き、印刷されていない面Aがガラスと直接接触するようにした。基材の印刷面Bの上に、通常の可塑化ポリビニルブチラール中間層(0.76mm、Kuraray Europe GmbHから入手可能なTrosifol(登録商標)UltraClear)を配置した。この第2の中間層の上に、厚さ2mmの通常のフロートガラスの第2の板を配置した。すべての層はA4サイズであり、外側のガラス板に粘着テープを適用することにより、上記の順序で固定した。次いで、真空バッグ内で、このスタックに、室温で15分間真空を適用し、続いて110℃でさらに15分間真空を適用することにより、プレラミネートした。プレラミネート後、プレ積層体をオートクレーブ内で140℃、圧力12バールで90分間オートクレーブした。
【0051】
第1のポリビニルブチラール中間層の面Bの粗さが低いため、より高い粗さを有するKuraray Europe GmbH製のTrosifol(登録商標)UltraClearのような印刷された標準の積層中間層で作製された積層体と比較して、印刷領域の均一な照明が得られた。さらに、DIN EN 410に準拠して測定された高い可視光透過率(TL)(380~780nm)が、ラミネートの印刷領域で達成された。
【0052】
TL[%]
印刷領域 88.0
印刷されていない領域 89.5
△ 1.50
【0053】
実施例2
厚さ50μmで可塑剤を添加していないポリビニルブチラール中間層を使用している。この基材は、粗さRzが10μmである面Aと、粗さRzが5μmである面Bを有する。機能層は、上記の印刷インクを使用したスクリーン印刷によって、基材の面Bに塗布される。120スレッド/cm、スレッド直径34μmのスクリーンを使用している。スクリーンは、5cm×10cmの長方形の所望の印刷パターンを形成するために部分的に硬化される光エマルジョンで前もって処理されている。印刷されたインクは、室温で30分間乾燥される。次に、印刷された基材は、印刷されていない面Aがガラスと直接接触するように、厚さ2mmの低鉄ガラスの板上に置かれる。基材の印刷面Bの上に、通常の可塑化ポリビニルブチラール中間層(厚さ:0.76mm、Kuraray Europe GmbHから入手可能なTrosifol(登録商標)UltraClear)を配置する。このより厚い中間層の上に、DIN EN410に準拠して測定された10%の可視光透過率TL(380~780nm)を有する2mm厚の着色ガラスシートが配置される。着色ガラスシートは、中間層に面し、屈折率が1.25の低屈折率コーティングでコーティングされた正常な面Aと面Bを持っている。
【0054】
すべての層はA4サイズであり、外側のガラス板に粘着テープを適用することにより、上記の順序で固定した。次いで、真空バッグ内で、このスタックに、室温で15分間真空を適用し、続いて110℃でさらに15分間真空を適用することにより、プレラミネートした。プレラミネート後、プレ積層体をオートクレーブ内で140℃、圧力12バールで90分間オートクレーブした。
【0055】
低屈折率コーティング104が着色ガラスシート105を光ガイド層101、102、103及び102Aから光学的に分離するため、高吸収性着色ガラスシート105を含むそのような積層体内でさえ、機能層103を十分に照射できる。
【0056】
実施例3
厚さ35μm、上面の表面粗さ1μm、下面の表面粗さ5μmを有する1.05m幅の無可塑剤ポリビニルブチラールフィルムを、下面に厚さ40μmのOPPキャリアフィルムと一緒に2重にして使用した。OPPキャリアフィルムは、印刷工程でウェブを安定させ、PVBの未印刷面への汚染又はインクの移動を防ぐために、薄いPVBと仮ユニットを形成するために熱を適用せずに巻き込み、静電気力で本質的に一緒に保持した。ポリウレタンバインダー、酸化チタン1%、インキ添加剤、及び懸濁液としての水を本質的に含有する水性インキを用いて、一時的なバイラム(bi-lam)のPVB面をフレキソ印刷機で印刷した。印刷マスターとして、連続ドット模様(ドット径1mm、水平・垂直方向のドット間距離2mm)を有するEPDM印刷スリーブを使用した。インク転写量が3g/mのアニロックスローラーを選択し、フィルムを60m/分の速度で印刷し、ロールに巻いた。得られたインクの乾燥層の厚さは1μmの範囲だった。光拡散中間層と標準PVB中間層を備えた50x50cmガラス/ガラス積層体は、次の方法で構築された。上記の寸法の2.1mmPlaniclear(登録商標)ガラスは、ほこりのない状態で洗浄して調製し、OPPキャリアフィルムを慎重に除去し、35μmの印刷されたPVBを上に向けた印刷面で第1のガラスに配置し、5μmの粗い底面をガラス表面に接触させた。TROSIFOL(登録商標)NR200を印刷されたPVBの上に置き、第2のガラスで組み立てを完了した。ラミネートは、標準のゴム製バッグと上からの同じ全体的なプロセス条件を使用して行った。得られた積層体は、検査時に視覚的なヘーズをほとんど示さなかった(通常の照明の下で積層体を検査した場合、ドットは実質的に見えない)。積層体の一方の端にLEDバーが取り付けられており、点灯すると、それに応じた明るい色が結合し、ドット模様が点灯しているように見える。
【0057】
上記の積層体は、同じ構造の積層体の領域と比較されたが、その領域では、ドット印刷されたフィルムの代わりに、印刷されていない35μmのフィルムを使用した。
【0058】
可視光透過率TL及びヘーズは、ISO9050及びASTMD1003に準拠して測定した。結果は、良好な光拡散特性にもかかわらず、薄いPVBの光拡散プリントは、TLをわずかに減少させ、目に見えるヘーズをわずかに増加させるだけであることを示している。
【0059】
TL[%]
印刷領域 88.0
印刷されていない領域 89.5
△ 1.50
図1
図2
【国際調査報告】