(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】内側足根小球を保護するための装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/30 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A61F5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501347
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2020056647
(87)【国際公開番号】W WO2021009691
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515315576
【氏名又は名称】ミレー イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ローレント,ユーゴー
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】トレピエル-ル ベラー,マリアールイサ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,オセアンヌ
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB12
4C098BC34
4C098BC41
4C098BD15
(57)【要約】
本発明は、足の内側足根小球を保護するための装置であって、粘弾性材料を含み、足底領域の皮膚上で保持され、足の全ての中足骨頭および中足指節関節を覆うように構成されたパッド(1)と、パッドの外側縁(24、25)に取り付けられ、横断部分(21)および足の母趾と隣接する足趾との間を通るように構成されたブレースを形成する長手方向部分(22)を含む弾性ストラップ(2)であって、長手方向部分(22)は、パッドの遠位縁(16)に固定される遠位縁(28)を有し、横断部分は、パッドと長手方向部分の外側縁(26)と共に、第2趾~第5趾を通すための開口部を画定する遠位縁(23)を有し、横断部分の遠位縁および外側縁は、未伸張平坦状態において、それらの間に75~100°の角度(α)を形成する直線部分を有し、外側縁(26)は、横断部分(21)の遠位縁(23)の長さ(L1)の40~60%の長さ(L2)を有し、横断部分の遠位縁の長さは、横断部分の長さの55~65%である、弾性ストラップ(2)と、を含む装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の内側足根小球を保護する装置であって、
粘弾性材料を含み、足底領域の皮膚上で保持され、足の全ての中足骨頭および中足指節関節を覆うように構成されたパッド(1)と、
前記パッドの外側縁(24、25)に取り付けられ、横断部分(21)および足の母趾と隣接する足趾との間を通るように構成されたブレースを形成する長手方向部分(22)を含む弾性ストラップ(2)であって、前記長手方向部分は、前記パッドの遠位縁(16)に固定される遠位縁(28)を有し、前記横断部分は、前記パッドと前記長手方向部分の外側縁(26)と共に、第2趾~第5趾を通すための開口部を画定する遠位縁(23)を有し、前記横断部分の遠位縁および外側縁は、未伸張平坦状態において、それらの間に75~100°の角度(α)を形成する直線部分を有し、前記外側縁(26)は、前記横断部分(21)の遠位縁(23)の長さ(L1)の40~60%の長さ(L2)を有し、前記横断部分の遠位縁の長さは、前記横断部分の長さの55~65%である、弾性ストラップ(2)と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記長手方向部分(22)の遠位縁は、前記パッド(1)の平面内で80~100°の角度だけ回転された後に前記パッド(1)の遠位縁(16)に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記長手方向部分(22)を前記パッド(1)に固定する前に、前記長手方向部分(22)の遠位縁(28)および前記パッド(1)の遠位縁(16)は、互いに70~90°の角度を成す、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記長手方向部分(22)は、その遠位端(28)において1.5cm±20%の幅を有する、請求項1乃至3の一項に記載の装置。
【請求項5】
前記パッド(1)は、インサート(11)が収容されるポケットを形成するように内側布片(13)と接合された外側布片(12)を含む、請求項1乃至4の一項に記載の装置。
【請求項6】
前記外側布片(12)は0.5~0.8mmの厚みを有し、前記内側布片(13)は0.1~0.5mmの厚みを有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記インサート(11)は、前記外側布片(12)に接着される、請求項5および6の一項に記載の装置。
【請求項8】
前記インサート(11)は、平面状基部(15)と、前記平面状基部(15)の上側に形成されたスタッド(14)とを有する、請求項5乃至7の一項に記載の装置。
【請求項9】
前記平坦な基部(15)は、1.4~2mmの厚みを有し、前記スタッド(14)は、1.3~1.7mmの前記平坦な基部(15)の上方の高さ(h)まで延在し、1/3の高さを有する平坦な層の単位面積当たりの全体積と同等(±10%以内)の単位面積当たりの全体積を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記スタッド(14)は、4mm±0.2mmの直径(d1)を有する球状キャップ形状を有し、0°、60°および120°方向に5mmの間隔(d2)(±0.2mm以内)だけ互いに離間される、請求項8および9の一項に記載の装置。
【請求項11】
前記粘弾性材料は、ポリジメチルシロキサンシリコーンゲル組成物をベースとする、請求項1乃至10の一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に足裏の前部の圧力を分散させるための足保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
足は「内側足根小球」と呼ばれる保護層を有し、これは体重の最大8倍まで耐えることができる。内側足根小球は、体重によって中足骨に加えられる機械的負荷を分散させる。しかしながら、多くの人々は、年齢とともに生来の内側足根小球の必然的な摩耗に関連する過熱、タコまたは疼痛に悩まされており、もはや負荷分散の役割を効果的に果たしていない。人が年を取るにつれて、内側足根小球は薄くなり硬くなる傾向がある。足はまた、皮膚障害(炎症、ひび割れ、足底疣贅など)を患うこともある。
【0003】
これらの疼痛および/または障害を軽減または防止するために、中足骨頭の下および/または中足指節関節の下の負荷を分散させるために、特に一般にタコと呼ばれる局所的な過角化症の形成を回避するために、選択された粘弾性材料のパッドを配置することが知られている。そのようなパッドを作製するために、シリコーンゲルまたはヒドロゲルなどのポリマーゲルベースのインサートを使用して内側足根小球の代替機能を提供することも知られている。したがって、サイズが数平方センチメートルであるそのようなインサートは、例えば、Epithelium 26(登録商標)の名称で本出願人によって販売されているPDMS(ポリジメチルシロキサン)シリコーンゲル組成物から作製され得る。仏国特許出願公開第2712487号明細書は、本質的に足の上または下で生じる過圧病変の予防に使用される、内側足根小球の特性と同様の特性を有するシリコーンゲルを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より詳細には、中足骨頭の領域における内側足根小球を保護すること、および、中足骨頭全体に人体の体重によって引き起こされる圧力を分散させることによって、その領域の劣化を補償することを目的とする。しかしながら、中足骨頭の下にパッドが存在すると、歩行時に使用者の姿勢およびバランスが崩れてしまうことがある。実際に、立位におけるバランスは、3つの受容体系、すなわち視覚系、自己受容系、および前庭系から来るデータの永続的統合から生じる。
【0005】
視覚系(環境に対する位置)および前庭系(耳内の器官による空間内の頭部の回転加速度および直線加速度の検出)は、足の下のパッドの存在によって影響を受けてはならない。これは、皮膚機械受容器および深部機械受容器による地面の知覚がパッドの介在によって減衰されるので、自己受容系には当てはまらない。しかしながら、これらの感覚器からの信号を意識すると、意識的または非意識的な平衡失調感を消失させることを目的とした筋反応が得られる。これらの筋反応は、痙攣のような一時的なものであるか、または身体の全体的な運動学における腱炎のようなより長期的なものであり得る病変の原因になり得る。
【0006】
本出願人は、内側足根小球が摩耗した(薄くなり、硬くなった)高齢者に適合するパッドを開発し、商品化した。このパッドは、2.2mmの粘弾性材料厚みに対して3mmを超える足の下の余分な厚みを形成する。このパッドは、内側足根小球の摩耗を補償する機能を果たす。しかしながら、パッドを足に保持する方法、嵩高さ、および靴内でパッドを装着することに伴う快適さは、当然改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、使用者の姿勢の不安定性を引き起こさずに、パッドを足の所定位置で快適に保持することができる保持手段に関連する圧力分散機能を有するパッドを提供することが望ましい。したがって、パッドおよび保持手段は、不快感をもたらすことなく、履いている靴に適合するように、あまり嵩張らないことも望ましい。パッドが、特に足趾の損傷も、また皮膚反応も引き起こさないことも望ましい場合もある。また、パッドと保持手段の両方が数ヶ月間使用可能であり、容易に製造可能であることが望ましい場合もある。
【0008】
実施形態は、足の内側足根小球を保護するための装置であって、粘弾性材料を含み、足底領域の皮膚上で保持され、足の全ての中足骨頭および中足指節関節を覆うように構成されたパッドと、パッドの外側縁に取り付けられ、横断部分および足の母趾と隣接する足趾との間を通るように構成されたブレースを形成する長手方向部分を含む弾性ストラップであって、長手方向部分は、パッドの遠位縁に固定される遠位縁を有し、横断部分は、パッドと長手方向部分の外側縁と共に、第2趾~第5趾を通すための開口部を画定する遠位縁を有し、横断部分の遠位縁および外側縁は、未伸張平坦状態において、それらの間に75~100°の角度を形成する直線部分を有し、外側縁は、横断部分の遠位縁の長さの40~60%の長さを有し、横断部分の遠位縁の長さは、横断部分の長さの55~65%である、弾性ストラップと、を含む装置に関する。
【0009】
一実施形態によれば、長手方向部分の遠位縁は、パッドの平面内で80~100°の角度だけ回転された後にパッドの遠位縁に取り付けられる。
【0010】
一実施形態によれば、長手方向部分をパッドに固定する前に、長手方向部分の遠位縁およびパッドの遠位縁は、互いに70~90°の角度を成す。
【0011】
一実施形態によれば、長手方向部分は、その遠位端において1.5cm±20%の幅を有する。
【0012】
一実施形態によれば、パッドは、インサートが収容されるポケットを形成するように内側布片と接合された外側布片を含む。
【0013】
一実施形態によれば、外側布片は0.5~0.8mmの厚みを有し、内側布片は0.1~0.5mmの厚みを有する。
【0014】
一実施形態によれば、インサートは外側布片に接着される。
【0015】
一実施形態によれば、インサートは、平面状基部と、平面状基部の上側に形成されたスタッドとを有する。
【0016】
一実施形態によれば、平坦な基部は、1.4~2mmの厚みを有し、スタッドは、1.3~1.7mmの平坦な基部の上方の高さまで延在し、1/3の高さを有する平坦な層の単位面積当たりの全体積と同等(±10%以内)の単位面積当たりの全体積を有する。
【0017】
一実施形態によれば、スタッドは、4mm±0.2mmの直径を有する球状キャップ形状を有し、0°、60°および120°方向に5mmの間隔(±0.2mm以内)だけ互いに離間される。
【0018】
一実施形態によれば、粘弾性材料は、ポリジメチルシロキサンシリコーンゲル組成物をベースとする。
【0019】
以下に、本発明の実施形態の非限定的な例を、添付図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】中足骨頭の領域における内側足根小球を保護するための保護装置の上面図を概略的に示す。
【
図2】
図1に示される平面AA’における保護装置の断面図である。
【
図3】ブレースを取り付ける前に、足を覆うストラップを取り付けるときの保護装置の上面図である。
【
図4】ブレースが取り付けられた後に、ストラップを取り付けている間の保護装置の上面図である。
【
図5】保護装置を取り付けられた足を概略的に示す。
【
図6】ブレース内に収容されたパッドの上面図である。
【
図7】
図6に示された平面CC’に沿った
図7のパッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および
図2は、一実施形態に係る足保護装置を示す。保護装置は、パッド1と、パッド1の2つの対向する側縁24、25に沿ってパッド1に取り付けられた横断部分21を有する弾性ストラップ2とを含む。パッド1とストラップ2との組立体は、このようにして、足の前部をわずかに締め付けるように適合された2つの対向する開口部31~32、33を有するスリーブを形成する。ストラップ2はさらに、ストラップ2と一体のブレース22によってパッド1に取り付けられ、パッドの遠位長手方向縁部16に取り付けられる。したがって、ブレース22は2つの遠位開口部31、32を画定し、開口部31は足の母趾を通すために設けられ、開口部32は他の足趾を通すために設けられる。ストラップ2のパッド1への側方および遠位方向の取り付けは、例えば、縫い目によって行われる。
【0022】
一実施形態によれば、ストラップ2は、弾性布帛、例えば伝線しにくい布帛で作られ、0.5~1mm、例えば0.6mm程度の厚みを有する。
【0023】
一実施形態によれば、開口部32は、ストラップ2側で、直線部分を有する2つの縁部、すなわち、横断部分21によって形成された長さL1の横断縁部23と、ブレース22によって形成された長さL2の長手方向縁部26とによって画定される。縁部23、26は、ストラップ2の領域40における曲線縁部によって互いに接続されている。縁部23は軸SS’に沿って延び、縁部26は軸BB’に沿って延び、軸BB’は軸SS’に対して角度αを成す。一実施形態によれば、角度αは75~100°であり、比率L2/L1は40~60%、好ましくは45~55%であり、曲線縁部は1cm未満の曲率半径を有する。
【0024】
パッド1は、圧力分散機能を提供するように構成された粘弾性材料で作られたインサート11を含む(
図2)。一実施形態によれば、インサート11は、内側布片13と接合された外側布片12によって形成されたポケット内に収容される。ポケットの形状および寸法は、インサート11の形状および寸法に正確に一致され得る。インサート11は、その表面全体にわたって、2つの布片12、13の一方、例えば外側布片12に接着され得る。外側布片12および内側布片13は弾性であり、0.5~0.8mmの厚み、例えば0.6mm程度の厚みを有し得る。一実施形態によれば、内側布片13は、それより薄い厚み、例えば0.1~0.5mm、例えば0.2mm程度の厚みを有する。布片12、13は、例えば縫い目によって、インサート11の周囲に沿って互いに接合され得る。
【0025】
一実施形態によれば、インサート11は、粘弾性ポリマーゲル、例えばシリコーンゲルで作製される。したがって、インサート11は、例えば、10~40ショア00硬度(05のショアA硬度と同等である)、好ましくは17のショア00硬度を有するPDMS(ポリジメチルシロキサン)で作製され得る。
【0026】
インサート11は、1.7~3.5mm、例えば1.8mm程度の厚みを有し得る。このようにして、足の下の保護装置の総厚みは、少なくとも2.5mmになり得る。これらのインサート11の厚みならびに硬度およびその布被覆(12、13)の厚みの条件下で、インサート11は、使用者の姿勢安定性を妨げることなく、内側足根小球の効果的な保護を確実にすることができると同時に、履物内の占有空間を最小にすることができる。
【0027】
図3および
図4は、ストラップ2の形状を示しており、
図3では平坦形状であり、
図4ではパッド1に縫い付けられている。
図3では、ストラップ2は、パッド1上に平らに広げられており、その後、パッド1の側縁24、25に沿ったこの位置で、側縁24、25間の取り付け後の静止時のストラップ2の長さが、これらの側縁間のパッド1の幅に実質的に(10%以内)一致するように、伸張されずにパッド1に取り付けられる(
図4)。この位置では、ブレース22の側縁26は、開口部32側の横断部分21の縁部23の方向SS’と角度γを成して方向UU’に延びている。ブレース22は、実質的にストラップ2の横断部分21の方向に延びる遠位部分27を有する。ブレース22の遠位部分27は、方向UU’に対して角度δを成す方向VV’に延びるので、方向VV’は方向SS’に対して角度γ-δを成す。
図3に示される例では、角度γは60°~85°であり、角度γ-δは0°~20°の範囲である。
【0028】
図3および
図4に示されるように、ブレース22の遠位部分27は、遠位部分27(方向VV’)に対して実質的に垂直(±10°以内)に延在し、静止時のブレース22の外側縁26とパッド1の遠位縁16との交点から延在する固定線28(
図3)によって、パッド1の遠位縁16に、伸張されずに平らに固定される。ブレース22は、ブレース22をパッド1の平面内で回転させ、軸SS’'と軸UU’との間の角度γを増大させて角度αにして、軸UU’を軸BB’(
図1)と一致させ、ブレースの側縁26とパッド1の遠位縁16との間の交点を中心としてブレース22上の取付線28を回転させてパッド1の遠位縁16と一致させることによって、パッド1の遠位縁16に固定される。このようにして、ブレース22はパッド1に固定されて反り曲線部が形成され、開口部31を開いたままにし、この反り曲線部のサイズはこれら2つの回転の大きさによって決まる。これらの条件下で、ブレース22の外側縁26は、開口側32において、軸SS’と角度αを形成する軸BB’に沿って延在する。ブレース22の取り付け位置における遠位縁16が軸SS’に実質的に平行であることを考慮すると、取付線28の回転角度は実質的に90°-(γ-δ)に等しく、すなわち70°~90°である。
【0029】
足に装着された保護装置を示す
図5に示されるように、パッド1(ひいてはインサート11)の形状および寸法は、足の中足骨頭および中足指節関節の全体と、必要に応じて、足の一方または両方の外側縁の一部とを覆うように意図されている。パッド1は、その遠位縁16が、エジプト型足の場合には足趾の付け根を通る線と実質的に一致するように、足に装着されることが意図されている。ストラップ2の横断部分21に属する開口部32の縁部23は軸線OO’に沿って延び、ブレース22に属する開口部32の縁部26は軸線PP’に沿って延びる。開口部32側のブレース22の縁部26は、母趾と第2趾との間の交連領域41を通る。加えて、反り曲線部は母趾を取り囲む。
【0030】
支持装置が足の周りで(XX’軸を中心として)回転して正確に位置決めされると、PP’軸は、踵の中心および第2趾の端部の中央を通る足のXX’長手方向軸に実質的に平行(足の形態に応じて±10°以内)になる。さらに、支持装置が足の軸XX’に沿って正確に位置決めされると、軸PP’は、足の形態に応じて、軸OO’と100~120°の角度βを成す。
図5に示される例では、角度βは約110°である。
【0031】
支持装置を足に適切に配置するためのこれらの条件が満たされたときに、上述したストラップ22の形状および配置は、小趾側の足の外側領域(取付線25)と、母趾と第2趾との間の交連領域41との間の張力付与を回避する。これらの張力は、装置の前方移動を促し、母趾と第2趾との間の交連上に不快な剪断作用を生成する傾向があることが分かった。したがって、これらの張力の除去は、使用中の支持装置の変位、ひいては誤配置のリスクを最小限に抑え、母趾周りの支持装置の快適さを改善するのに役立つ。
【0032】
さらに、母趾周りのブレース22の湾曲により、第2趾との交連領域41に著しい張力を加えずに、布を第1の中足指節関節の内側縁に接着することが可能になる。この配置はまた、母趾周りの支持装置の快適さを改善するのに役立つ。
【0033】
湾曲がなく、長さL2が短いか長さL2が存在しないストラップと比較して、ストラップ22の特性はさらに、母趾と第2趾との間の交連上の通路に相当するストラップの一部に有意な伸張能力を付与する。その結果、使用者はストラップ22の存在をあまり感じることはなく、そのため、使用者に不快感を与えずに支持装置の長期使用が可能になる。したがって、支持装置の毎日の使用時間が増加する。
【0034】
一実施形態によれば、ブレース22は、縫い目28に沿って比較的大きな幅(約1.5cm(20%増減する))を有する。反り曲線部の形成によって可能になるこの大きな幅は、第1趾と第2趾との間の交連部(領域41)においてストラップ22によって引き起こされ得る剪断のリスクをさらに低減する。
【0035】
図6および
図7は、一実施形態に係るインサート11を示す。インサート11の上面(足側)は、厚みeの平坦な基部15を有し、その上にスタッド14が分布している。
図6および
図7の例では、スタッド14は、直径d1の球状キャップSの形状を有し、インサート11の基部15上に規則的に分布している。スタッド14は、インサート11の基部15の上方に高さhだけ突出し、0°、60°、および120°の3方向に沿って距離d2だけ互いに離間している。一実施形態によれば、厚みeは1.7mm(±0.3mm)に選択され、高さhは1.5mm(±0.2mm)に選択され、球面の直径d1は4mm(±0.2mm)に選択され、スタッド14間の距離d2は5mm(±0.2mm)に選択される。これらの条件下で、厚みeの平坦な基部15の上の材料の体積は、高さhを有する一定の厚みの層と比較して、約3分の1になる。すなわち、この体積は、高さhの約1/3(±10%)に等しい一定の厚みの層の体積に相当する。
【0036】
図8は、異なるインサートについて、加わる力F(N)対圧潰深さT(mm)の曲線C1、C2を示す。曲線C1は、インサート11(
図6)を使用して得られた曲線であり、曲線C2は、単位面積当たりの材料の体積がインサート11とほぼ同じである平坦なインサート11を使用して得られた曲線である。
図8はさらに、インサート11の初期厚みe1(=2.9mm)および他方のインサートの初期厚みe2(=2mm)を示す。曲線C1およびC2はそれぞれ、3つの段階、すなわち、パッドの圧潰がほとんど抵抗を与えない(パッドの厚さが圧潰力の関数として急速に減少する)「接触」と呼ばれる第1の段階と、圧潰力が曲線C1およびC2について数ニュートン~約20Nであるときにインサートの圧潰がインサート11について約1mmに達し、他方のインサートについて0.6に達したときに始まる第2の中間段階と、インサートの圧潰が圧潰力軸に沿って実質的に直線的にかつより迅速に増加する「補剛」段階として知られる第3の段階とを示す。曲線C1について約1.9mmの圧潰深さに対して約200Nの力で始まり、曲線C2について約0.95mmの圧潰深さに対して約100Nの力で始まる補剛段階の間、曲線C1およびC2はほぼ同じ傾斜を有する。これは、この段階の間、インサート11が実質的に平板のように挙動するという事実によって説明できる。
【0037】
曲線C2と比較して、曲線C1の中間段階はより長く、約0.95mmのさらなる圧縮で終了する。これは、スタッド14が互いに接触した後、スタッド14間の空間が埋まるまでスタッド14が圧潰し、インサート11の平坦な基部15の追従性が低下するためである。この中間段階の間、インサート11の圧潰は、インサートに加わる力に比例しない。この中間段階は、足がパッドを地面に対して圧縮し始めると、パッド1に持続的な心地良い快適さを付与する。補剛段階中に力が500Nに達すると、インサート11は約0.48mmの厚みを有し、他方のインサートは約0.33mmの厚みを有する。補剛段階は、姿勢安定性に影響を及ぼさず、パッドによって提供される圧力分散のおかげで、タコ層の過剰な局所成長(角化)を防止する。
【0038】
インサート11を同じ圧力分散能力を有する厚みの平坦なインサートと比較すると、インサート11の基部15が1.5mmの厚みおよび1.4mmのスタッド14の高さhを有する場合、平坦なインサートは、インサート11の基部15の厚みeよりも厚い厚み2mmを有さなければならない。スタッド14は、負荷に応答して平坦なインサートの基部よりも容易に圧潰し、平坦な基部15の圧縮段階の前に生じるスタッド14の圧縮段階を生じさせ、成人の平均体重(500N)を考慮すると、最終的な実質的に同様の厚み(インサート11では0.48mm、他方のインサートでは0.33mm)を有する平坦なインサートと同様の圧縮応答をもたらす。
【0039】
スタッド14は内側足根小球の軟組織にわずかに貫入し、平坦なインサートと比較して足の下で感じられる厚みをさらに減少させることに留意されたい。結果として、インサート11は、平坦なインサートよりも靴内で潜在的に小さい占有面積を有するので、使用者の快適さが改善され、歩行時の安定性の低下が少なくなる。内側足根小球の軟組織へのスタッド14の貫入はさらに、足の下でのパッド1の保持を改善するのに寄与する。
【0040】
また、同じ圧力分散能力(単位表面当たりの材料の同じ体積)を提供する厚みを有する平坦なインサートと比較して、インサート11の基部15の厚みeが減少することにより、インサート11は、両凸形状(長手方向および横断方向に凸状)を有する中足骨ゾーンの解剖学的構造に密接に追従することに留意されたい。実際に、スタッド14は互いに連結されていないので、インサート11の耐屈曲性を高めない。したがって、曲げ強度、ひいてはインサートが中足骨頭の領域における内側足根小球の形状に適合する能力を規定するのは平坦な基部15の厚さeである。
【0041】
さらに、前足部の下にパッドを着用することにより、この領域に有意な量の軟質材料が追加される。これは、(前足部を上げることによって)地面に対する足の向きを変化させると共に、静止状態および運動中に体重で負荷をかけたときの地面の感触を変化させる。使用者によって知覚される地面の感触は、直接的な感触ではなくなり、時間的には遅れ、パッドの嵩の剪断変形によって修正され得る。パッドの追加は、歩行中に使用者のバランスを崩し、特に前屈傾向段階中に片足で支持されるときに、安定性の円錐内で姿勢を調節する能力を減少させることになる。使用者のバランスは、硬さが変化し得る地面の性質(例えば、砂または草)、突風、および靴底のグリップの存在などの多くの外的要因によって影響され得ることに留意されたい。しかしながら、中足骨頭の下に保護具を着用する必要がある人々の大多数は、既に安定性が劣っている、または低下している高齢者である。したがって、スタッド14によって調整された平坦な基部15を有するパッド1は、同じ圧力分散特性を有するパッドと比較して、負荷下での厚みの減少により、歩行運動中に予測される不安定性を最小限に抑えることができるという利点を有する。
【0042】
当業者には明らかなように、本発明は種々の代替形態および応用が可能である。特に、本発明は、スタッドを有するインサートに限定されない。実際に、インサートは平坦であってもよく、そのようなインサートも圧力分散機能を果たすことができることが知られている。インサートはさらに、インサートをポケット内に包み込まずに、ストラップ2に直接取り付けることができる粘弾性材料で作製されてもよい。
【0043】
インサート11は、他の形状のスタッドを有してもよい。スタッドを含む層に関して考慮すべきパラメータは、スタッドの高さh、スタッド間の距離d2およびこの層の充填率、すなわち厚み(以下では、単位面積当たりのスタッド内に分布した材料の体積が全層内に分布したときの「等価厚」と呼ぶ)である。一実施形態によれば、スタッドの高さは1~2mmであり、スタッドを含む層の充填率は20~40%である、すなわちスタッドの等価厚はスタッドの高さの20~40%である。
【0044】
スタッド14の高さhおよび形状、ならびにスタッド14間の距離は、必ずしもインサート11全体にわたって均一ではないが、必要性に応じて、特に圧力分散および負荷下の厚みに応じて局所的に規定されてもよい。例えば、第1および第2の中足骨の頭部によって地面に加えられる圧力は、第5中足骨の頭部によって加えられる圧力よりも高いことがある。したがって、スタッド14の等価厚は、第1中足骨の頭部から第5中足骨の頭部までの線に沿って次第に薄くなり得る。
【0045】
さらに、ストラップ2およびパッド1に対するブレース22の位置を調整することによって、装置の快適さに影響を及ぼさずに、反り曲線部、ひいてはパッド1に固定するためのブレース22の回転を省略することができる。
【0046】
いくつかの用途では、皮膚へのインサートのより良好な接着を得ることが望ましい場合がある。この場合、内側布片13の全てまたは一部のみを省略してもよい。同様に、支持装置の使用は靴下の着用と組み合わされてもよい。これに関連して、足を覆う靴下へのインサート11のより良好な接着が求められ得る。外側布片12の一部、特に中央部分は省略されてもよい。
【0047】
布片がインサート11に埋め込まれてもよく、この布片は、特に、例えば縫い目によってストラップ2をインサート11に固定するために使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の内側足根小球を保護する装置であって、
粘弾性材料を含み、足底領域の皮膚上で保持され、足の全ての中足骨頭および中足指節関節を覆うように構成されたパッ
ドと、
前記パッドの外側
縁に取り付けられ、横断部
分および足の母趾と隣接する足趾との間を通るように構成されたブレースを形成する長手方向部
分を含む弾性ストラッ
プであって、前記長手方向部分は、前記パッドの遠位
縁に固定される遠位
縁を有し、前記横断部分は、前記パッドと前記長手方向部分の外側
縁と共に、第2趾~第5趾を通すための開口部を画定する遠位
縁を有し、前記横断部分の遠位縁および外側縁は、未伸張平坦状態において、それらの間に75~100°の角
度を形成する直線部分を有し、前記外側
縁は、前記横断部
分の遠位
縁の長
さの40~60%の長
さを有し、前記横断部分の遠位縁の長さは、前記横断部分の長さの55~65%である、弾性ストラッ
プと、
を含む、装置。
【請求項2】
前記長手方向部
分の遠位縁は、前記パッ
ドの平面内で80~100°の角度だけ回転された後に前記パッ
ドの遠位
縁に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記長手方向部
分を前記パッ
ドに固定する前に、前記長手方向部
分の遠位
縁および前記パッ
ドの遠位
縁は、互いに70~90°の角度を成す、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記長手方向部
分は、その遠位
端において1.5cm±20%の幅を有する、請求項1乃至3の一項に記載の装置。
【請求項5】
前記パッ
ドは、インサー
トが収容されるポケットを形成するように内側布
片と接合された外側布
片を含む、請求項1乃至4の一項に記載の装置。
【請求項6】
前記外側布
片は0.5~0.8mmの厚みを有し、前記内側布
片は0.1~0.5mmの厚みを有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記インサー
トは、前記外側布
片に接着される、請求項5および6の一項に記載の装置。
【請求項8】
前記インサー
トは、平面状基
部と、前記平面状基
部の上側に形成されたスタッ
ドとを有する、請求項5乃至7の一項に記載の装置。
【請求項9】
前記平坦な基
部は、1.4~2mmの厚みを有し、前記スタッ
ドは、1.3~1.7mmの前記平坦な基
部の上方の高
さまで延在し、1/3の高さを有する平坦な層の単位面積当たりの全体積と同等(±10%以内)の単位面積当たりの全体積を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記スタッ
ドは、4mm±0.2mmの直
径を有する球状キャップ形状を有し、0°、60°および120°方向に5mmの間
隔(±0.2mm以内)だけ互いに離間される、請求項8および9の一項に記載の装置。
【請求項11】
前記粘弾性材料は、ポリジメチルシロキサンシリコーンゲル組成物をベースとする、請求項1乃至10の一項に記載の装置。
【国際調査報告】