(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】レーザー透過性組成物およびレーザー溶着方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20220915BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20220915BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K7/04
B32B7/12
B32B27/32
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502169
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2020042609
(87)【国際公開番号】W WO2021016107
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520484209
【氏名又は名称】ライオンデルバセル アドヴァンスド ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シー、イン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、デニス シー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37C
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4J002BB121
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4J002FD058
4J002FD097
4J002FD202
4J002GT00
(57)【要約】
色が黒でありうるレーザー透過性組成物。レーザー透過性組成物は、ポリプロピレンを含むマトリックス材、1つの、任意選択的に2つ以上の極性有機化合物を含む染料系、複数のガラス繊維、およびUV安定剤を含みうる。界面においてレーザー透過性組成物と接触するレーザー吸収組成物を照射することを含みうるレーザー溶着方法。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色を有するレーザー透過性組成物であって、
ポリプロピレンを含むマトリックス材と;
(i)前記マトリックス材中に分散されており、(ii)前記レーザー透過性組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.5重量%の量で存在する、染料系と;
(i)前記マトリックス材中に分散されており、(ii)前記レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、相溶化剤と;
(i)前記マトリックス材中に分散されており、(ii)前記レーザー透過性組成物の重量に対して約1重量%~約40重量%の量で存在する、複数のガラス繊維と;
(i)前記マトリックス材中に分散されており、(ii)前記レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約2重量%の量で存在する、UV安定剤と;
を含み、少なくとも50%のレーザー透過性を有する、レーザー透過性組成物。
【請求項2】
少なくとも65%のレーザー透過性を有する、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項3】
前記染料系が、2つ以上の極性有機化合物を含む、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項4】
前記染料系の2つ以上の極性有機化合物が、赤色染料および緑色染料を含み、前記赤色染料および前記緑色染料が、約40:60(赤色染料:緑色染料)~約60:40(赤色染料:緑色染料)の重量比で前記染料系中に存在する、請求項3に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項5】
(i)前記赤色染料が、MACROLEX(登録商標)レッドEG染料を含むか、(ii)前記緑色染料が、MACROLEX(登録商標)グリーン5Bを含むか、または(iii)前記赤色染料がMACROLEX(登録商標)レッドEG染料を含み、前記緑色染料がMACROLEX(登録商標)グリーン5Bを含む、請求項4に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤が、変性ポリプロピレンホモポリマーを含み、前記変性ポリプロピレンホモポリマーが、
(i)ポリプロピレンホモポリマーと;
(ii)極性官能基を含むモノマーと;
を含み、前記極性官能基を含むモノマーが、(a)前記ポリプロピレンホモポリマーにグラフトされ、(b)前記ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約3モル%~約10モル%の量で存在する、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項7】
前記相溶化剤が、(i)約0.8g/cm
3~約1g/cm
3の密度、(ii)約30g/10分~約50g/10分のメルトフローレート、または(iii)それらの組合せを有する、請求項6に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項8】
前記相溶化剤が、(i)約0.91g/cm
3の密度、(ii)約42g/10分のメルトフローレート、または(iii)それらの組合せを有する、請求項6に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項9】
前記極性官能基が、カルボン酸を含む、請求項6に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項10】
前記極性官能基を含むモノマーが、アクリル酸、無水マレイン酸、またはそれらの組合せを含む、請求項9に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項11】
前記複数のガラス繊維が、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約1mm~約10mmの平均長を有する、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項12】
前記レーザー透過性組成物の重量に対して、前記複数のガラス繊維が約10重量%~約30重量%の量で存在する、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項13】
前記複数のガラス繊維が、THERMOFLOW(登録商標)EC14-738ガラス繊維を含む、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項14】
前記レーザー透過性組成物の重量に対して、前記UV安定剤が約0.5重量%~約0.7重量%の量で存在する、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項15】
前記UV安定剤が、HOSTAVIN(登録商標)N 30UV安定剤、CHIMASSORB(登録商標)-LS119 UV安定剤、SABOSTAB(登録商標)UV 62UV安定剤、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項16】
少なくとも2000KJ/m
2までUV安定性である、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項17】
前記マトリックス材のポリプロピレンが、EXXONMOBIL(登録商標)PP1105E1ポリプロピレン、EXXONMOBIL(登録商標)ACHIEVE(登録商標)Advanced PP1605ポリプロピレン、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のレーザー透過性組成物。
【請求項18】
レーザー溶着方法であって、
界面において互いに接触している(i)請求項1に記載のレーザー透過性組成物および(ii)色が黒であるレーザー吸収組成物を用意することと;
前記レーザー透過性組成物を通過するレーザー照射を行って、(i)前記界面における前記レーザー吸収組成物の部分、(ii)前記界面における前記レーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せのうちの、少なくとも一部を液化するのに有効な時間、前記界面における前記レーザー吸収組成物の少なくとも一部分を、加熱することと;を含む、方法。
【請求項19】
(i)前記界面における前記レーザー吸収組成物の部分、(ii)前記界面における前記レーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せを、固化して、前記界面において前記レーザー透過性組成物と前記レーザー吸収組成物とを溶着することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記レーザー吸収組成物が、カーボンブラックを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許協力条約に基づいて出願されており、2019年7月19日出願の米国仮出願第62/876,088号の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体を参照として本明細書中に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
レーザー溶着は、2つの材料を溶着するために使用されうる技法である。第1の材料は、少なくともある程度レーザー透過性であり得、第2の材料はレーザー吸収性である。レーザー吸収材は、したがって、第1の材料に当てられ第1の材料を通過するレーザー照射によって、加熱され(続いて液化され)うる。レーザー溶着の例は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2003/0039837号および米国特許出願公開第2005/0203225号で開示されている。
【0003】
カーボンブラックは、プラスチックにおける一般的な着色剤であるが、カーボンブラックは、レーザーエネルギーを吸収しやすい。したがって、カーボンブラックを含む2つのプラスチック材のレーザー溶着は、両材料中のカーボンブラックの存在によって、材料をその界面において照射し加熱する能力が妨害または干渉されるため、不可能でないとしても困難である。
【0004】
ほどんどのポリプロピレン樹脂はレーザー透過性であるが、ポリプロピレン樹脂は、色が黒であることはない。したがって、そのようなポリプロピレン樹脂をカーボンブラック含有材へレーザー溶着した場合、異なる色領域を有する1つの材料が生成されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス繊維で強化されたかつ/またはUV安定化されたものを含む、色が黒である、レーザー透過性ポリプロピレン系材が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、色が黒であり、レーザー吸収組成物にレーザー溶着されうる、レーザー透過性組成物が提供される。レーザー透過性組成物は、(i)2つ以上の極性有機化合物を含み、(ii)驚くべきことに、着色剤としてカーボンブラックを含むレーザー吸収組成物の色と同一でないとしても類似の黒色を有する、非極性ポリプロピレンマトリックス材に付与することができる染料系を含みうる。染料系はまた、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物のレーザー透過性に望ましくない影響を与えることなく、レーザー透過性組成物に付加されうる。本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、少なくとも50%のレーザー透過性を有し得、一部の実施形態において、広範囲の1つまたは複数の波長(例えば、740nm以上)を含むレーザー照射に対して透過性である。
【0007】
一態様において、色が黒であるレーザー透過性組成物を含むレーザー透過性組成物が提供される。一部の実施形態において、レーザー透過性組成物は、ポリプロピレンを含むマトリックス材と;2つ以上の極性有機化合物を含む染料系と;相溶化剤と;複数のガラス繊維と;UV安定剤と;を含み、少なくとも50%のレーザー透過性を有する。
【0008】
一部の実施形態において、レーザー透過性組成物は、ポリプロピレンを含むマトリックス材と;(i)マトリックス材中に分散されており、(ii)レーザー透過性組成物に黒色を付与するのに有効な量で存在する、2つ以上の極性有機化合物を含む染料系と;(i)マトリックス材中に分散されており、(ii)レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、相溶化剤と;(i)マトリックス材中に分散されており、(ii)レーザー透過性組成物の重量に対して約1重量%~約40重量%の量で存在する、複数のガラス繊維と;(i)マトリックス材中に分散されており、(ii)レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約2重量%の量で存在する、UV安定剤と;を含み、少なくとも50%のレーザー透過性を有する。
【0009】
別の態様において、レーザー溶着方法が提供される。一部の実施形態において、レーザー溶着方法は、界面において互いに接触している(i)本明細書に記載のレーザー透過性組成物および(ii)色が黒であるレーザー吸収組成物を用意することと;レーザー透過性組成物を通過するレーザー照射を行って、(i)界面におけるレーザー吸収組成物の部分、(ii)界面におけるレーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せのうちの、少なくとも一部を液化するのに有効な時間、界面におけるレーザー吸収組成物の少なくとも一部分を、加熱することと;を含む。一部の実施形態において、レーザー溶着方法はまた、(i)界面におけるレーザー吸収組成物の部分、(ii)界面におけるレーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せを、固化して、少なくとも界面においてレーザー透過性組成物とレーザー吸収組成物とを溶着することを含む。
【0010】
追加の態様は、以下の説明で部分的に記述され、説明から部分的に明白であるか、または本願に記述する態様の実施によって学習され得る。本願に記載される利点は、添付された特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成され得る。前述した一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれもただ例示的及び説明的なものであり、限定的なものではないということを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】レーザー溶着に先立ち、界面において互いに接触しているレーザー透過性組成物の実施形態およびレーザー吸収組成物の実施形態を示す図である。
【
図1B】界面においてレーザー吸収組成物の実施形態を加熱し、続いて液化するように、レーザー放射線を当てられる、レーザー透過性組成物の実施形態を示す図である。
【
図1C】レーザー吸収組成物の部分からの熱伝導によって加熱され、続いて液化された部分を含むレーザー透過性組成物の実施形態を示す図である。
【
図1D】レーザー吸収組成物の実施形態にレーザー溶着されたレーザー透過性組成物の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、少なくとも50%のレーザー透過性を有しうる。組成物に当てられた1つまたは複数の特定の波長のレーザー放射線の少なくとも50%が、組成物中を透過し、組成物によって吸収されない場合、組成物は、少なくとも50%のレーザー透過性を有する。一部の実施形態において、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、740nm以上の1つまたは複数の波長のレーザー放射線に対して、少なくとも50%のレーザー透過性を有する。一部の実施形態において、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、少なくとも65%のレーザー透過性を有する。一部の実施形態において、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、740nm以上の1つまたは複数の波長のレーザー放射線に対して、少なくとも65%のレーザー透過性を有する。
【0013】
マトリックス材
【0014】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、ポリプロピレンを含むマトリックス材を含みうる。本明細書において使用される場合、「マトリックス材」という句は、組成物の1つまたは複数の成分(例えば、ガラス繊維、相溶化剤など)が分散されている材料を指す。マトリックス材のポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマーなどの1つまたは複数のタイプのポリプロピレンを含んでいてもよい。一部の実施形態において、本明細書に記載のレーザー透過性組成物のマトリックス材は、マトリックス材の重量に対して少なくとも95重量%または少なくとも99重量%のポリプロピレン(例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、またはそれらの組合せ)を含む。
【0015】
一部の実施形態において、マトリックス材のポリプロピレンは、EXXONMOBIL(登録商標)PP1105E1ポリプロピレン、EXXONMOBIL(登録商標)ACHIEVE(登録商標)Advanced PP1605ポリプロピレン、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、マトリックス材のポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレンであってもよく、25~50g/10分(ASTMD1238、230℃/2.16kg)、あるいは30~45g/10分、あるいは35g/10分のメルトマスフローレート(melt mass-flow rate)、ならびに、0.85~0.95g/cm3あるいは0.900g/cm3の密度、30~50MPa(D638に基づく)、あるいは34~40MPa、あるいは34.6MPaの降伏点引張強度(51mm/分)を有しうる。一部の実施形態において、マトリックス材のポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレンであってもよく、25~50g/10分(ASTMD1238、230℃/2.16kg)、あるいは30~45g/10分、あるいは32g/10分のメルトマスフローレート、ならびに、0.85~0.95g/cm3あるいは0.900g/cm3の密度、30~50MPa(D638に基づく)、あるいは32~40MPa、あるいは33.3MPaの降伏点引張強度(51mm/分)を有しうる。
【0016】
染料系
【0017】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、染料系を含みうる。染料系は、所望の色をレーザー透過性組成物に付与するように構成されうる。所望の色は、一部の実施形態において、黒である。染料系は、2つ以上の極性有機化合物を含みうる。
【0018】
「黒」という用語、「黒色」または「色が黒」などの句は、本明細書において使用される場合、純粋な黒および様々な色合いの黒(すなわち、他の色の混ざった黒色)を指す。「黒」という用語、「黒色」または「色が黒」などの句によって包含される黒の色合いの非限定的な例としては、本明細書において使用される場合、以下の色合いが挙げられる。一般名称により記し、CMYK座標を用いて示す。リコリス(0、35、39、90);イアリーブラック(0、0、0、89);チャールストングリーン(18、0、0、83);レーズンブラック(0、8、0、86);ブラックレザージャケット(30、0、23、79);ジェット(0、0、0、80);オニキス(7、0、2、78);ブラックオリーブ(2、9、10、77);ブラックビーン(0、80、97、6);カフェノワール(0、28、56、71);アウタースペース(15、0、3、70);チャコール(32、13、0、69);デイビズグレイ(0、0、0、67);トープ(0、60、60、30);エボニー(9、0、14、64);ディムグレイ(0、0、0、59);ミッドナイトブルー(97、78、39、29)など。
【0019】
2つ以上の極性有機化合物は、異なる色を有していてもよい。例えば、赤色染料および緑色染料の組合せ;青色染料、赤色染料、および黄色染料の組合せ;緑色染料、赤色染料、および黄色染料の組合せ;青色染料、緑色染料、赤色染料、および黄色染料の組合せ;ならびに緑色染料、バイオレット染料、および黄色染料の組合せが使用できる。本明細書で提供される、染料系における染料の比率は、染料の色調、使用されるマトリックス材、レーザー透過性組成物中の染料系の濃度、染料系における染料の濃度などの、1つまたは複数の因子に基づいて調整されうる。組合せによって黒着色を得るために使用することができる染料化学の種類には、キノフタロン染料、アントラキノン染料、ペリノン染料、およびモノアゾ錯体染料がある。
【0020】
有用なキノフタロン系染料の例としては、黄色染料:C.I.ソルベントイエロー33および157がある。
【0021】
有用なアントラキノン染料の例としては、緑色染料:C.I.ソルベントグリーン3、20、22、23、26、28、29;青色染料:C.I.ソルベントブルー11、13、14、35、36、59、63、69、94、132;C.I.バットブルー4、6、14;バイオレット染料:C.I.ソルベントバイオレット12、13、14、31、34;赤色染料:C.I.ソルベントレッド52、111、114、152、155;黄色染料:C.I.ソルベントイエロー163;C.I.バットイエロー1、2、3がある。
【0022】
有用なペリノン染料の例としては、バイオレット染料:C.I.ソルベントバイオレット29;赤色染料:C.I.ソルベントレッド135、162、178、179;C.I.バットレッド7;オレンジ染料:C.I.ソルベントオレンジ60、78;およびC.I.バットオレンジ15がある。
【0023】
有用なモノアゾ錯体染料の例としては、黒色染料:C.I.ソルベントブラック21、22、23、27、28、29、31;C.Iアシッドブラック52、60、99;青色染料:C.I.アシッドブルー167;バイオレット染料:C.I.ソルベントバイオレット21;赤色染料:C.I.ソルベントレッド8、83、84、121、132;C.I.アシッドレッド215、296;オレンジ染料:C.I.ソルベントオレンジ37、40、44、45;C.I.アシッドオレンジ76;黄色染料:C.I.ソルベントイエロー21、61、81;C.I.アシッドイエロー59、151がある。
【0024】
黒着色を達成するために、排他的にまたは組み合わせて使用することができる有用なペリレン染料の例としては、ペリレン系のNIR透過性黒色顔料、BASF Lumogen(登録商標)K8007およびLumogen(登録商標)ブラックK0088があり、これらは、色が黒であり、500ミクロンのPETフィルムに7.5%顔料で添加して適用された場合、808~1064ナノメートルで50~90%のレーザー透過性でありうる。
【0025】
一部の実施形態において、染料系は、マトリックス材中に分散されており、レーザー透過性組成物に、黒などの所望の色を付与するのに有効な量で存在する。一部の実施形態において、染料系は、マトリックス材中に均等に分散されている。一部の実施形態において、レーザー透過性組成物中に分散された染料系は、ベースとなる被溶着組成物の色に(通りすがりの人が肉眼で見て)一致した色を、レーザー透過性組成物に付与する。
【0026】
一部の実施形態において、染料系の2つ以上の極性有機化合物は、赤色染料および緑色染料を含む。赤色染料および緑色染料は、レーザー透過性組成物に黒などの所望の色を付与するのに有効な任意の比率で存在しうる。一部の実施形態において、赤色染料および緑色染料は、染料系中に、約40:60(赤色染料:緑色染料)~約60:40(赤色染料:緑色染料)の重量比で存在する。一部の実施形態において、赤色染料および緑色染料は、染料系中に、約45:55(赤色染料:緑色染料)~約55:45(赤色染料:緑色染料)の重量比で存在する。一部の実施形態において、赤色染料および緑色染料は、染料系中に、約50:50(赤色染料:緑色染料)の重量比で存在する。一部の実施形態において、赤色染料は、MACROLEX(登録商標)レッドEG染料(LANXESS、米国)を含む。一部の実施形態において、緑色染料は、MACROLEX(登録商標)グリーン5B(LANXESS、米国)を含む。一部の実施形態において、赤色染料はMACROLEX(登録商標)レッドEG染料(LANXESS、米国)を含み、緑色染料はMACROLEX(登録商標)グリーン5B(LANXESS、米国)を含む。一部の実施形態において、赤色染料は、ソルベントレッド135のパートIおよび564120のパートIIカラーインデックスを有する。一部の実施形態において、赤色染料は、ペリノン染料として化学的に説明されうる。一部の実施形態において、赤色染料は、以下の特性:23℃で1.74g/cm3に近似の密度;黄色味を帯びた赤色の色合い;0.40%染料の1/3標準染色濃度(standard depth)(2%TiO2を含むGP-PSにおいて決定);0.44g/cm3のかさ密度(DIN ISO 787-11による);318℃の融点、およびそれらの組合せのうちの、いずれかを有しうる。一部の実施形態において、緑色染料は、ソルベントグリーン3のパートIおよび61565のパートIIカラーインデックスを有する。一部の実施形態において、赤色染料は、アントラキノン染料として化学的に説明されうる。一部の実施形態において、赤色染料は、以下の特性:23℃で1.35g/cm3に近似の密度;青色味を帯びた緑色の色合い;0.20%染料の1/3標準染色濃度(2%TiO2を含むGP-PSにおいて決定);0.18g/cm3のかさ密度(DIN ISO 787-11による);213℃の融点、およびそれらの組合せのうちの、いずれかを有しうる。
【0027】
一部の実施形態において、染料系は、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.05重量%~約0.5重量%の量で存在する。一部の実施形態において、染料系は、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約0.5重量%の量で存在する。一部の実施形態において、染料系は、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約0.4重量%の量で存在する。一部の実施形態において、染料系は、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約0.3重量%の量で存在する。一部の実施形態において、染料系は、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.2重量%の量で存在する。
【0028】
相溶化剤
【0029】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、相溶化剤を含みうる。本明細書において使用される場合、「相溶化剤」という用語は、例えば極性および非極性の特徴によって異なる、2つの成分を含む組成物の安定性を改善することができる、任意の1つまたは複数の材料を指す。例えば、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物において、ポリプロピレンを含むマトリックス材は非極性であるが、少なくとも2つの極性有機化合物を含む染料系は極性である。
【0030】
一部の実施形態において、相溶化剤は、ポリプロピレンを含むマトリックス材中に分散されている。相溶化剤は、マトリックス材中に均等に分散されうる。
【0031】
一部の実施形態において、相溶化剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約10重量%の量で存在する。一部の実施形態において、相溶化剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約8重量%の量で存在する。一部の実施形態において、相溶化剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約6重量%の量で存在する。一部の実施形態において、相溶化剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約4重量%の量で存在する。一部の実施形態において、相溶化剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約1重量%~約3重量%の量で存在する。
【0032】
一部の実施形態において、相溶化剤は、変性ポリプロピレンホモポリマーを含む。変性ポリプロピレンホモポリマーは、(i)ポリプロピレンホモポリマーおよび(ii)極性官能基を含むモノマーを含んでいてもよく、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマーにグラフトされている(例えば、共有結合されている)。極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマーと反応して極性官能基を含むモノマーをポリプロピレンホモポリマーにグラフトすることができる二重結合または三重結合などの任意の部分を含んでいてもよい。
【0033】
極性官能基を含むモノマーの任意の量を、所望の程度の相溶化を達成するのに有効であるポリプロピレンホモポリマーにグラフトしてもよい。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約1モル%~約10モル%の量で存在する。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約2モル%~約10モル%の量で存在する。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約3モル%~約10モル%の量で存在する。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約3モル%~約8モル%の量で存在する。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、ポリプロピレンホモポリマー中に、ポリプロピレンモノマーのモルに対して約5モル%~約7モル%の量で存在する。
【0034】
極性官能基を含むモノマーは、所望のレベルの相溶化を達成することができる任意の極性基を含みうる。一部の実施形態において、極性官能基は、カルボン酸を含む。一部の実施形態において、極性官能基を含むモノマーは、アクリル酸、無水マレイン酸、またはそれらの組合せを含む。
【0035】
一部の実施形態において、相溶化剤は、(i)約0.8g/cm3~約1g/cm3の密度、(ii)約30g/10分~約50g/10分のメルトフローレート(230℃で2.16kg)、または(iii)それらの組合せを有する。一部の実施形態において、相溶化剤は、(i)約0.91g/cm3の密度、(ii)約42g/10分のメルトフローレート(230℃で2.16kg)、または(iii)それらの組合せを有する。メルトマスフローレート(MFR)は、グラム/10分(g/10分)の単位で与えられ、本願に特定される条件の下、表題「Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer」のASTM D 1238を使用して測定した。本明細書において使用される「ASTM D1238」という用語は、押出弾性率計により実施された熱可塑性物質のメルトフローレート判定のための標準試験方法をいう。通常、この試験方法は、押出弾性率計を使用した溶融熱可塑性樹脂の押出率の判定を網羅している。特定の予加熱後、規定の温度、負荷、及びバレル中のピストン位置といった条件下において、特定長さ及びオリフィス径を有するダイを通じて樹脂を押し出す。この試験方法は、2013年8月1日に承認され、2013年8月に公開されており、その内容全体を参照として本明細書中に組み込まれている。参照したASTMに対しては、ASTMのウェブサイト、wwwastm.orgを訪問するか、ASTMの顧客サービスservice@astm.orgに連絡する。密度は、単位をg/cm3とし、表題「Plastics-Methods for Determining the Density of Non-Cellular Plastics-Part1: Immersion method、liquid pycnometer method and titration method」のISO1183-1を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO1183-1」という用語は、2012年5月15日付で第二版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に組み込まれている。
【0036】
ガラス繊維
【0037】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、複数のガラス繊維を含みうる。複数のガラス繊維は、これだけに限定されないが、引張強度などの、1つまたは複数の改善された機械的特性を含む1つまたは複数の特徴をレーザー透過性組成物に付与するように選択される、少なくとも2つのガラス繊維を含みうる。本明細書において使用される場合、「ガラス繊維」という句は、ガラスを含み、少なくとも2:1のアスペクト比、または一部の実施形態では10:1、25:1、もしくは50:1のアスペクト比を有する任意の材料を指す。
【0038】
複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物のマトリックス材中に分散されうる。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物のマトリックス材中に均等に分散されている。
【0039】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物の重量に対して約1重量%~約40重量%の量で存在する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物の重量に対して約10重量%~約40重量%の量で存在する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物の重量に対して約10重量%~約30重量%の量で存在する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、レーザー透過性組成物の重量に対して約20重量%の量で存在する。
【0040】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、ガラスの細断されたストランドを含む。ガラスの細断されたストランドは、Eガラス繊維を細断することによって作製してもよい。
【0041】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約13μm~約15μmの平均フィラメント径を有する。
【0042】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約1mm~約10mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約1mm~約8mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約1mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約2mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約3mm~約5mmの平均長を有する。
【0043】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約1mm~約10mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約1mm~約8mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約1mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約2mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約25μmの平均フィラメント径および約3mm~約5mmの平均長を有する。
【0044】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径および約1mm~約10mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径および約1mm~約8mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径および約1mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径および約2mm~約6mmの平均長を有する。一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、約10μm~約20μmの平均フィラメント径および約3mm~約5mmの平均長を有する。
【0045】
一部の実施形態において、複数のガラス繊維は、THERMOFLOW(登録商標)EC14-738ガラス繊維(Johns Manville、米国)を含む。
【0046】
カップリング剤
【0047】
一部の実施形態において、レーザー透過性組成物は、ガラス繊維とマトリックス材とを結合させうるカップリング剤を含む。カップリング剤には、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーが含まれる。無水マレイン酸は、カップリング剤の重量に対して約1重量%の量で存在していてもよい。一部の実施形態において、カップリング剤は、レーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.5重量%~約5重量%の量で存在する。一部の実施形態において、カップリング剤は、BONDYRAM(登録商標)1001(Polyram、Ram-On Industries、米国)であり、これは無水マレイン酸グラフト化ホモポリマーである。一部の実施形態において、BONDYRAM(登録商標)1001は、組成物中に、組成物の重量に対して約1重量%の量で存在する。
【0048】
UV安定剤
【0049】
レーザー透過性組成物は、UV安定剤を含みうる。本明細書において使用される場合、「UV安定剤」という句は、UV放射線を吸収し、そのエネルギーを、レーザー透過性組成物の劣化を防止するかまたは遅らせるレベルで熱として放出することができる、任意の化合物を指す。
【0050】
一部の実施形態において、UV安定剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約2重量%の量で存在する。一部の実施形態において、UV安定剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。一部の実施形態において、UV安定剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.4重量%~約0.8重量%の量で存在する。一部の実施形態において、UV安定剤は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中に、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.6重量%の量で存在する。
【0051】
任意のUV安定剤を、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物中で使用することができる。一部の実施形態において、レーザー透過性組成物のUV安定剤には、HOSTAVIN(登録商標)N 30UV安定剤、CHIMASSORB(登録商標)-LS119 UV安定剤、SABOSTAB(登録商標)UV 62UV安定剤、またはそれらの組合せが含まれる。
【0052】
添加剤
【0053】
本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、1つまたは複数の添加剤を含みうる。1つまたは複数の添加剤の非限定的な例としては、補助着色剤、分散剤、充填剤、可塑剤、改質剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶化促進剤、核形成剤、難燃剤、エラストマー、またはそれらの組合せが挙げられる。1つまたは複数の添加剤は、当技術分野において開示されている技法に従って添加されうる。
【0054】
1つまたは複数の添加剤は、1つまたは複数の添加剤の所望の目的を達成することができる量で、レーザー透過性組成物中に含まれうる。一部の実施形態において、1つまたは複数の添加剤は、全体では、レーザー透過性組成物の総重量に対して10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下の量で、レーザー透過性組成物中に存在する。例えば、1つまたは複数の添加剤は、独立して、レーザー透過性組成物の重量に対して約0.01重量%~約0.2重量%、約0.1重量%、または約0.2重量%の量で存在しうる。
【0055】
一部の実施形態において、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、酸化防止剤を含む。一部の実施形態において、酸化防止剤には、SONGNOX(登録商標)1680、SONGNOX(登録商標)1010、またはそれらの組合せ(SONGWON Industrial Group、米国)が含まれる。
【0056】
一部の実施形態において、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物は、滑剤を含む。一部の実施形態において、滑剤には、ステアリン酸カルシウムが含まれる。
【0057】
方法
【0058】
レーザー溶着方法が提供される。本明細書において提供されるレーザー溶着方法は、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物をレーザー吸収組成物と接合させるために使用されうる。
【0059】
一部の実施形態において、レーザー溶着方法は、界面において互いに接触している(i)本明細書において提供されるレーザー透過性組成物および(ii)色が黒であるレーザー吸収組成物を用意することを含む。レーザー透過性組成物およびレーザー吸収組成物は、任意の形状であってよく、2つの組成物の形状は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、一方の組成物は、プラグの形状であってもよく、もう一方の組成物は、プラグを受けるように設計されたオリフィスの形状であってもよい。レーザー透過性組成物およびレーザー吸収組成物は、独立して、可撓性または硬質でありうる。
【0060】
一部の実施形態において、レーザー溶着方法はまた、レーザー透過性組成物を通過するレーザー放射線を行って、(i)界面におけるレーザー吸収組成物の部分、(ii)界面におけるレーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せのうちの、少なくとも一部を液化するのに有効な時間、界面におけるレーザー吸収組成物の少なくとも一部分を、加熱することを含む。一部の実施形態において、レーザー溶着方法はまた、(i)界面におけるレーザー吸収組成物の部分、(ii)界面におけるレーザー透過性組成物の部分、または(iii)それらの組合せを、固化して、界面においてレーザー透過性組成物とレーザー吸収組成物とを溶着することを含む。
【0061】
レーザー溶着プロセスの実施形態の概略図を
図1A~
図1Dに示す。
図1Aは、本明細書において提供されるレーザー透過性組成物の実施形態の、形成されたシート101を図示している。シート101は、界面110においてレーザー吸収組成物のシート102に接触している。
図1Aの界面110は、シート101とシート102との部分的な重なり合いの結果として生じているが、一方のシートに他方のシートが完全に重なり合うことによって形成された界面など、その他の構成も想定される。
【0062】
図1Bは、レーザー放射線120を、レーザー透過性組成物のシート101に当てて通過させて、界面110においてレーザー吸収組成物のシート102の部分を加熱する実施形態を図示している。レーザー放射線120の少なくとも一部分は、レーザー吸収組成物のシート102によって吸収され、吸収されたエネルギーは熱に変換され、これによって、加熱され、続いて液化された部分130が得られる。
【0063】
図1Cに示すように、レーザー吸収組成物のシート102の部分130の加熱、または加熱および液化は、伝導または別の状況を経て、レーザー透過性組成物のシート101の部分140を、加熱された状態か、または加熱され、続いて液化された状態にしうる。レーザー透過性組成物のシート101の部分140の加熱、または加熱および液化は、レーザー放射線120の印加中または後に起こりうる。液化された部分(130、140)は、少なくとも界面付近で混ざり合っていることもあれば、または境界が液化された部分(130、140)の間に維持されていることもある。
【0064】
液化された部分(130、140)は、固化が可能となり、これによって、シート101とシート102とが溶着される、固化された領域150が形成されうる。固化された領域150の少なくとも一部分は、シート101であるレーザー透過性組成物とシート102であるレーザー吸収組成物との混合物を含みうる。
【0065】
本明細書において提供される方法において、レーザー放射線を発生できる任意の設備が使用されうる。レーザー放射線は、Nd:YAGレーザーまたはダイオードレーザーによって提供され得、これらのレーザーは、レーザー透過性組成物を通過する少なくとも50%透過率を達成することとなる放射線を発しうる。一部の実施形態において、レーザーは、740nm以上の1つまたは複数の波長を含む。一部の実施形態において、レーザー放射線は、ダイオードレーザーによって提供される。
【0066】
レーザーの強度、密度、および/または照射領域は、レーザー吸収組成物の加熱およびこれに続く液化を達成するように選択してもよい。例えば、これらのパラメータのうちの1つまたは複数は、強度、恒久性などの1つまたは複数の特徴を有する溶着を達成するように調整されうる。
【0067】
レーザー吸収組成物
【0068】
本明細書において提供される方法において、任意のレーザー吸収組成物が使用されうる。レーザー吸収組成物の例は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2003/0039837号および米国特許出願公開第2005/0203225号に示されている。レーザー吸収組成物とレーザー透過性組成物の色は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、レーザー吸収組成物とレーザー透過性組成物とは、黒の異なる色合いであってもよい。
【0069】
レーザー吸収組成物は、1つまたは複数のレーザー吸収材を含む。一部の実施形態において、レーザー吸収材は、着色剤として作用しうるカーボンブラックである。レーザー吸収材のその他の例としては、アジン化合物、フタロシアニン化合物、ポリメチン化合物(シアニン化合物、ピリリウム化合物、チオピリリウム化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、アズレニウム化合物)、ジイモニウム化合物、ジチオール金属錯塩化合物(M=Ni、Feなど)、インドアニリン金属錯体化合物、およびメルカプトナフトール金属錯塩化合物が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0070】
レーザー吸収組成物中で使用されるレーザー吸収材の量は、レーザー放射線による所望の加熱を達成するのに十分であるべきである。一部の実施形態において、カーボンブラックなどのレーザー吸収材は、レーザー吸収組成物中に、レーザー吸収組成物の重量に対して約0.01重量%~約20重量%の量で存在する。一部の実施形態において、カーボンブラックなどのレーザー吸収材は、レーザー吸収組成物中に、レーザー吸収組成物の重量に対して約0.01重量%~約15重量%の量で存在する。一部の実施形態において、カーボンブラックなどのレーザー吸収材は、レーザー吸収組成物中に、レーザー吸収組成物の重量に対して約0.01重量%~約10重量%の量で存在する。一部の実施形態において、カーボンブラックなどのレーザー吸収材は、レーザー吸収組成物中に、レーザー吸収組成物の重量に対して約0.01重量%~約5重量%の量で存在する。
【0071】
本明細書の説明において、「含む」、「である」、「含有する」、「有する」及び「備える」という用語は、非制限的に使用されているため、「含むが、これに限定されない」ということを意味するものと解されなければならない。方法または組成物が様々の要素又は特徴を「備える(comprising)」又は「含む(including)」という用語で請求又は説明されるとき、同方法は、指摘の無い限り、種々の成分又は特徴から「基本的になる(consist essentially of)」又は「なる(consist of)」ものとすることもできる。
【0072】
単数形の用語は、複数の代替、例えば少なくとも1つの代替も含み得ることが意図されている。例えば、「相溶化剤」、「UV安定剤」、「マトリックス材」等の開示は、指摘の無い限り、1種を超える相溶化剤、UV安定剤、マトリックス材等のうちの1つ、これらの混合物、又は組み合わせを網羅することを意味する。
【0073】
種々の数値範囲が、本明細書中に開示されうる。出願人が任意のタイプの範囲について開示又は請求するとき、出願人の意図は、指摘の無い限り、範囲の終点や、その中に含まれる任意の部分範囲、及び部分範囲の組み合わせを含めて、そのような範囲が合理的に網羅できる、各々個別に可能な数字を開示又は請求することである。さらに、本明細書に開示の範囲の数値的終点は近似値である。代表的な例として、出願人は、一部の実施形態において、UV安定剤がレーザー透過性組成物の重量に対して約0.1重量%~約2重量%の量で存在することを開示している。この開示では、約0.1重量%~約2重量%の値を包含すると解釈されるべきであり、さらに、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、および1.9%それぞれの「約」を包含し、これらの値の任意の間のあらゆる範囲および部分範囲を含むものである。
【0074】
本実施形態は、本明細書で多様な実施形態を参照して例示され、これらは決してその範囲に制限を加えるものと解釈されてはならない。一方、本明細書に記載の説明を読んだ後に、本実施形態の要旨又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者に対して提示されてもよい、その他種々の態様、実施形態、変形例、及びそれらの同等物に頼らなければならない可能性があることを理解されたい。従って、本実施形態の他の態様は、本明細書に開示した本実施形態の詳細と実施を考慮することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0075】
本開示について、以下の実施例によりさらに説明を行うが、これらの実施例は、いかなる方法においても、その範囲に限定を課すものとして理解されてはならない。一方、本明細書に記載の説明を読んだ後に、本開示の要旨又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者に対して提示されてもよい、その他種々の態様、実施形態、変形例、及びそれらの同等物に頼らなければならない可能性があることを理解されたい。従って、本開示の他の態様は、本明細書に開示した本開示の詳細と実施を考慮することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0076】
実施例
【0077】
実施例1 - レーザー透過性
【0078】
以下の表の成分を含むレーザー透過性組成物を調製した。
【表1】
【0079】
本実施例のレーザー透過性組成物は、厚さ3mmであり、約740nm以上の波長で100%のレーザー透過性を有した。したがって、本実施例のレーザー透過性組成物は、機械の種類にほぼ関係なく、他方のレーザー吸収組成物にレーザー溶着されうる。
【0080】
実施例2 - 耐候性試験
【0081】
本実施例では、4つのレーザー透過性組成物を作製し、耐候性試験(SAE J2527(商標)標準試験、「Performance Based Standard for Accelerated Exposure of Automotive Exterior Materials Using a Controlled Irradiance Xenon-Arc Apparatus(自動車外装材ための、放射照度制御キセノンアーク装置を用いた促進暴露の実施規格)」を行った。
【0082】
SAE J2527(商標)標準試験は、120分の明サイクルおよび60分の暗サイクル、すなわち、表裏両側への噴霧を行う60分の暗サイクル、40分の明サイクル、次いで試料表側への噴霧を行う20分の明サイクル、次いで60分の明サイクルを繰り返し実行する、プログラムサイクルに基づいた。本試験は、次の表の条件に従って配列した。
【表2】
【0083】
上記の表では、放射線量は、340nmでの0.55Wm
-2nm
-1の放射照度レベルに基づいた。SAE J2527(商標)標準試験での制御パネルセンサーの目標値を、次の表に示す。
【表3】
【0084】
本実施例で試験した4つの透過性組成物は、次表の指定を除き、前の実施例の透過性組成物に同一とした。
【表4-1】
【表4-2】
【0085】
本実施例の耐候性試験から、サンプル2~4の各dE(すなわち、色差)は、2,000KJ/m2で4.0未満であったことが示された。サンプル2については、dEは2,500KJ/m2で4.00未満であった。dEは、色変数「L」(明度)、「a」(赤色/緑色)、および「b」(青色/黄色)の変化の測定に基づいた。
【0086】
上記の実施例の組成物は、特定の特徴を論証するために示されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定するものでない。
【国際調査報告】