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特表2022-541471ヘキソースの生成のための固定化酵素組成物
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  • 特表-ヘキソースの生成のための固定化酵素組成物 図1A
  • 特表-ヘキソースの生成のための固定化酵素組成物 図1B
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  • 特表-ヘキソースの生成のための固定化酵素組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ヘキソースの生成のための固定化酵素組成物
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20220915BHJP
   C12N 11/08 20200101ALI20220915BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20220915BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20220915BHJP
   C12N 9/90 20060101ALN20220915BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
C12P19/02
C12N11/08
C12N9/10
C12N9/16 B
C12N9/90
C12N15/52 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502510
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2020042562
(87)【国際公開番号】W WO2021011881
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/875,321
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/924,323
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518059587
【氏名又は名称】ボヌモーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィチェレキー、ダニエル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B033
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B033NA25
4B033NA26
4B033NA35
4B033NB40
4B033NC04
4B033ND02
4B033ND20
4B050CC08
4B050DD01
4B050GG10
4B050LL05
4B064AF02
4B064CA31
4B064DA10
(57)【要約】
本発明は、ヘキソースの調製のための固定化酵素組成物に関する。ヘキソースとしては、例えば、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、およびイノシトールが挙げられる。また、本発明は、デンプン誘導体を本発明の固定化酵素組成物と接触させることによって、糖からヘキソースを調製するための酵素プロセスに関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキソースの調製のための固定化酵素組成物であって、少なくとも1つの担体または担体の混合物に固定化された以下の酵素のうちの、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、または少なくとも8つを含む、固定化酵素組成物:
a)αグルカンホスホリラーゼ(αGP)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、および任意選択的に、1,4-グルカントランスフェラーゼ(4-GT)、ならびに
b)以下から選択される酵素の組み合わせの中からの酵素:
(i)タガトースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、フルクトース-6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)、およびタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)、
(ii)アルロースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、ピスコース-6-リン酸エピメラーゼ(P6PE)、およびピコース-6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)、
(iii)アロースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、P6PE、アロース-6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)、およびアロース-6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)、
(iv)マンノースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)またはホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)、およびマンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)、
(v)ガラクトースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、F6PE、ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)、およびガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)、
(vi)フルクトースを調製するための、PGIおよびフルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)、
(vii)アルトロースを調製するための、PGI、P6PE、アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)、およびアルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)、
(viii)タロースを調製するための、PGI、F6PE、タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)、およびタロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)、
(ix)ソルボースを調製するための、PGI、F6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)、およびソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)、
(x)グロースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)、およびグロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)、
(xi)イドースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)、およびイドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)、ならびに
(xii)イノシトールを調製するための、イノシトール3-リン酸シンターゼ(IPS)およびイノシトールモノホスファターゼ(IMP)。
【請求項2】
前記酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%が、0.1%~40%の範囲である、請求項1に記載の固定化酵素組成物。
【請求項3】
10~30%(αGP)、0~10%(4GT)、10~30%(PGM)、および存在する場合、0.1~10%(PGI)を含む、請求項1または2に記載の固定化酵素組成物。
【請求項4】
タガトースを調製するために、PGI、F6PE、およびT6PPをさらに含む、請求項3のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項5】
前記酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%が、10~30%(αGP)、0~10%(4GT)、10~30%(PGM)、0.1~10%(PGI)、15~35%(F6PE)、およびT6PP(25~45%)であり、前記組成物中の酵素の総重量が、前記酵素の総重量に対して、合計100w/w%である、請求項4に記載の固定化酵素組成物。
【請求項6】
前記αGPが、配列番号1のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記4-GTが、配列番号6のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記PGMが、配列番号2のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記PGIが、配列番号3のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記F6PEが、配列番号4のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記T6PPが、配列番号5のアミノ酸配列、またはその断片を含む、請求項5に記載の固定化酵素組成物。
【請求項7】
アルロースを調製するために、PGI、P6PE、およびP6PPをさらに含む、請求項3のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項8】
前記酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%が、10~30%(αGP)、0~10%(4GT)、10~30%(PGM)、0.1~10%(PGI)、0.1~10%(P6PE)、および(45~65%)P6PPであり、前記組成物中の酵素の総重量が、前記酵素の総重量に対して、合計100w/w%である、請求項7に記載の固定化酵素組成物。
【請求項9】
前記αGPが、配列番号1のアミノ酸配列、またはその断片を含み、
前記4-GTが、配列番号6のアミノ酸配列を含み、
前記PGMが、配列番号2のアミノ酸配列を含み、
前記PGIが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、
前記P6PEが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、
前記P6PPが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の固定化酵素組成物。
【請求項10】
前記担体の重量に対する前記酵素の総重量(重量/重量)が、2.5%~12.5%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項11】
前記担体が、弱塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1~10のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項12】
前記担体が、フェノールホルムアルデヒド重縮合体を含む、請求項11に記載の固定化酵素組成物。
【請求項13】
前記担体が、三級アミン官能基を含み、前記組成物が、任意選択的に、DUOLITE(商標)A568である、請求項11または12に記載の固定化酵素組成物。
【請求項14】
前記担体が、二級アミン官能基を含み、前記組成物が、任意選択的に、DUOLITE(商標)PWA7である、請求項11または12に記載の固定化酵素組成物。
【請求項15】
前記担体が、Hisタグ親和性樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項16】
前記担体が、制御多孔性ガラス(CPG)粒子を含む、請求項15のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物。
【請求項17】
前記担体が、キレート金属によって官能化されている、請求項15または16に記載の固定化酵素組成物。
【請求項18】
前記キレート金属が、鉄もしくは亜鉛であるか、または前記担体が、任意選択的に、EziG(商標)Opalである、請求項18に記載の固定化酵素組成物。
【請求項19】
好適な反応条件下で、デンプン誘導体を請求項1~18のいずれか一項に記載の固定化酵素組成物と接触させて、前記デンプン誘導体をヘキソースに変換するステップを含む、糖からヘキソースを調製するための酵素プロセス。
【請求項20】
前記プロセスのステップが、約40℃~約85℃の範囲の温度で、約5.0~約8.0の範囲のpHで、および/または約0.5時間~約48時間行われる、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記プロセスのステップが、単一のバイオ反応器、直列に配置された複数のバイオ反応器、または並列に配置された複数のバイオ反応器で行われる、請求項19または20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記プロセスのステップが、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で、ATP不含、NAD(P)(H)不含で行われ、前記リン酸が、酵素カスケード反応内で再利用され、かつ/または前記プロセスの少なくとも1つのステップが、非常にエネルギー的に有利な化学反応を伴う、請求項19~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月17日に出願された米国出願第62/875,321号、および2019年10月22日に出願された米国出願第62/924,323号の優先権を主張し、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、固定化酵素組成物を使用するヘキソース単糖類の調製に関する。より具体的には、本発明は、糖類(例えば、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、スクロース、D-グルコース、およびD-フルクトース)からD-ヘキソース(またはヘキソース)を調製する方法に関し、フルクトース6-リン酸が、固定化酵素により触媒される1つ以上の酵素ステップによって、ヘキソースに変換されるステップを含む。
【背景技術】
【0003】
ヘキソースは、6個の炭素原子を有する単糖類である。ヘキソースとしては、例えば、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、およびイノシトールが挙げられる。ヘキソースは、多くの業界で使用されており、明らかに、製薬業界、バイオテクノロジー、ならびに食品および飲料業界で、様々な用途を有する。ヘキソースは、糖類(例えば、単糖類、オリゴ糖類、デンプン、デンプン誘導体、セルロースなど)から、酵素プロセスを使用して調製され得る。溶液ベースの酵素プロセスは、公開PCT出願第2018/169957号、同第2017/059278号、および同第2018/112139号に記載されている(それらは、参照により本明細書に援用される)。
【0004】
酵素プロセスの商業的な開発は、グリーンケミストリーを利用し、したがって、環境に対する合成の影響を低減する工業プロセスの数を増やすために不可欠である。多くの酵素プロセスが、商業的な生産のために開発されているが(例えば、PCT出願第2018/169957号、同第2017/059278号、および同第2018/112139号)、これらのプロセスが低コスト製品(代替甘味料など)用である場合、酵素の使用コストに関連して、商業化へのハードルがある。この問題に対する一般的な解決策は、酵素を担体に固定化することである(例えば、WO2016/160573)。固定化により、酵素を、バッチ間で再利用し、または連続的なプロセスで使用することが可能になる。酵素の再利用能力は、1kgの生成物当たりの酵素の使用コストを大幅に低減し、商業的な実現性に不可欠であり得る。酵素固定化のための多くの方法が存在し、特定のプロセスによってどの方法が優先されるのかに関して定まったルールはない(Datta et al.,Enzyme immobilization:an overview on techniques and support materials.3 Biotech(2013),3:1-9)。したがって、プロセスごとに、独自の解決策を開発する必要がある。
【0005】
商業的なプロセスでは、酵素は、当該技術分野で既知であるように、機能性を向上させるために一般的に使用される不溶性の有機支持体または無機支持体に吸着させることができる。これらには、アガロース、メタクリレート、ポリスチレン、フェノールホルムアルデヒド、またはデキストランなどの高分子支持体、ならびにガラス、金属、または炭素系材料などの無機支持体が含まれる。これらの材料は、しばしば、固定化酵素の付着および活性を促進する大きい表面積対体積比および特殊化された表面で生成される。酵素は、共有結合性、イオン性、または疎水性の相互作用を介して、これらの固体支持体に付着され得る。酵素はまた、共有結合性融合などの遺伝子操作された相互作用を介して、固体支持体への親和性を有する別のタンパク質またはペプチド配列(最も多くの場合、ポリヒスチジン配列)に付着され得る。酵素は、表面もしくは表面コーティングに直接付着されてもよく、または表面もしくは表面コーティング上に既に存在する他のタンパク質に付着されてもよい。酵素は、すべて1つの担体上で、個々の担体上で、または2つの担体の組み合わせ上で(例えば、担体当たり2つの酵素、次いで、それらの担体を混合する)、固定化することができる。これらのバリエーションは、連続反応器内のターンオーバーを最適化するために、均一にまたは所定の層内で混合することができる。これらの酵素は、ターンオーバーを最適化するために、均一にまたは所定の層もしくはゾーン内で混合されてもよい。例えば、反応器の始まりは、aGPの層を有して、高い初期G1P増加を確実にしてもよい。酵素は、すべて1つの担体ビーズ上に固定化されるか、各々、個々の担体ビーズ上に固定化されるか、または酵素群として担体ビーズ上に固定化され得る。同様に、酵素は、1つ以上の固定化の方法論を使用して、1つのプロセス内で、特定の担体または複数の担体上に固定化され得る。
【0006】
高収率の所望のヘキソースを達成しながら、拡張性のある再利用可能な酵素組成物を可能にする、ヘキソースを生産するための改善されたプロセスを有する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ヘキソースの調製のための固定化酵素組成物に関する。ヘキソースとしては、例えば、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、およびイノシトールが挙げられる。本発明の固定化酵素組成物は、少なくとも1つの担体または担体の混合物に固定化された以下の酵素のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、または少なくとも8つを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる:
a)αグルカンホスホリラーゼ(αGP)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、および任意選択的に、1,4-グルカントランスフェラーゼ(4-GT)、ならびに
b)以下から選択される酵素の組み合わせの中からの酵素:
(i)タガトースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、フルクトース-6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)、およびタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)、
(ii)アルロースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、ピスコース-6-リン酸エピメラーゼ(P6PE)、およびピコース-6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)、
(iii)アロースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、P6PE、アロース-6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)、およびアロース-6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)、
(iv)マンノースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)またはホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)、およびマンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)、
(v)ガラクトースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、F6PE、ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)、およびガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)、
(vi)フルクトースを調製するための、PGIおよびフルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)、
(vii)アルトロースを調製するための、PGI、P6PE、アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)、およびアルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)、
(viii)タロースを調製するための、PGI、F6PE、タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)、およびタロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)、
(ix)ソルボースを調製するための、PGI、F6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)、およびソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)、
(x)グロースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)、およびグロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)、
(xi)イドースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)、およびイドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)、ならびに
(xii)イノシトールを調製するための、イノシトール3-リン酸シンターゼ(IPS)およびイノシトールモノホスファターゼ(IMP)。
【0008】
本発明の固定化酵素組成物では、酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%は、0.1%~40%の範囲である。
【0009】
また、本発明は、好適な反応条件下で、デンプン誘導体を本発明の固定化酵素組成物と接触させて、デンプン誘導体をヘキソースに変換することによって、糖からヘキソースを調製するための酵素プロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】タガトース生成のために最適化される固定化酵素組成物中の酵素の量を示すグラフである。
図1B】固定化酵素組成物中の酵素の量を示すグラフであり、カスケード内で同等の活性単位を有するために、T6PP活性に対する各酵素の観察された反応速度に基づいて、それらの量が正規化される。
図1C】固定化酵素組成物中の酵素の量を示すグラフであり、その量は、1:1:1:1:1:1のw/w比であった。
図2】DUOLITE(商標)A568におけるタガトース生成のために最適化される、固定化酵素組成物の活性に対する酵素負荷(酵素総重量/担体重量のw/w%)の関係を示すグラフである。示された結果は、5%負荷の担体に対する相対的な酵素カスケード速度に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソース単糖類(例えば、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、およびイノシトールを含む)に変換するためのプロセスにおいて、担体に固定化された酵素(「固定化酵素組成物」)の製造および使用に関する実施形態に従って、本発明を開示する。これらのプロセスは、概して、遊離リン酸(ATPなし)を使用して、デンプン、デンプン誘導体、または糖から、リン酸化中間体を生成する酵素反応として説明され得る。遊離リン酸は、非常にエネルギー的に有利な最終ステップで放出されて、目的のヘキソース(例えば、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトール)を生成する。次に、リン酸を再利用して、プロセスを繰り返すことができるように、追加のデンプン、デンプン誘導体、または糖をリン酸化中間体に変換する。これにより、非化学量論的な量のリン酸を利用することが可能になり、プロセスにおけるリン酸の使用のコストが低減され、廃棄物中のリン酸のレベルが制限される。
【0012】
本発明の実施形態は、担体上で固定化された少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、または少なくとも8つの酵素の組成物を含み、それらは、それぞれ、デンプン、デンプン誘導体、および/もしくは糖をヘキソースに変換するための酵素プロセスにおける反応を触媒する。本発明の固定化酵素組成物は、遊離溶液におけるそれらの使用よりも多くの利点を提供し、これには、より長い活性持続時間(タンパク質の構造的特徴の保護による)、複数サイクルの再利用、および下流の酵素を除去する必要性の排除が含まれる。さらに、固体表面への酵素の固定化は、撹拌槽反応器、充填床反応器、または回転床反応器のいずれかで機能することができ、スケールアップでの柔軟性が可能になる。
【0013】
本発明の固定化酵素組成物に含まれる酵素は、デンプン、デンプン誘導体、または糖類のヘキソースへの段階的な変換に関与する、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、または少なくとも8つの反応を触媒する。以下の特許公開は、すべてそれらの全体が本明細書で開示され、溶液中でヘキソースを生成するための酵素プロセス(すなわち、酵素反応カスケード)を開示する:公開PCT出願第2018/169957号、同第2017/059278号、および同第2018/112139号。本発明の固定化酵素組成物は、これらの参考文献に開示された酵素および酵素の組み合わせのいずれかを含み得るが、これらに限定されない。
【0014】
本発明のいくつかの固定化酵素組成物は、反応を触媒する酵素の組み合わせを含み、これらは、異なるヘキソースを生成するプロセス(例えば、グルコース6-リン酸(G6P)のフルクトース6-リン酸(F6P)への変換につながる反応ステップ)の間で一般的である。これらの一般的な反応ステップを触媒する酵素は、「コア酵素」と呼ばれることもある。したがって、本発明のいくつかの固定化酵素組成物では、固定化酵素組成物は、少なくとも、コア酵素、糖をグルコース1-リン酸(G1P)に変換するαグルカンホスホリラーゼ(αGP)と、G1Pをグルコース6-リン酸(G6P)に変換するホスホグルコムターゼ(PGM)と、を含む。本発明の固定化酵素組成物中の酵素は、G6Pを様々なヘキソース生成物に変換するための追加の反応ステップを触媒し、コア酵素と共に共固定化されてもよく、または別個の固定化酵素組成物中に含まれてもよい。
【0015】
典型的には、コア酵素は、固定化組成物中で、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールの生成に使用される酵素のうちの1つ以上と組み合わされる。したがって、本発明によるいくつかの固定化酵素組成物は、αGPおよびPGMに加えて、以下も含む:(i)タガトースを調製するための、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)、フルクトース-6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)、およびタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)、(ii)アルロースを調製するための、PGI、ピスコース-6-リン酸エピメラーゼ(P6PE)、およびピコース-6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)、(iii)アロースを調製するための、PGI、P6PE、アロース-6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)、およびアロース-6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)、(iv)マンノースを調製するための、PGI、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)またはホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)、およびマンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)、(v)ガラクトースを調製するための、PGI、F6PE、ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)、およびガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)、(vi)フルクトースを調製するための、PGIおよびフルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)、(vii)アルトロースを調製するための、PGI、P6PE、アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)、およびアルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)、(viii)タロースを調製するための、PGI、F6PE、タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)、およびタロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)、(ix)タロースを調製するための、PGI、F6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)、およびソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)、(x)グロースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)、およびグロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)、(xi)イドースを調製するための、PGI、F6PE、S6PE、イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)、およびイドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)、ならびに(xii)イノシトールを調製するための、イノシトール3-リン酸シンターゼ(IPS)およびイノシトールモノホスファターゼ(IMP)。コア酵素および酵素組成物(i)~(xii)の各組み合わせは、本発明の別個の実施形態である。
【0016】
上記の固定化酵素組成物は、任意選択的に、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を含むこともできる。4GTは、分解生成物であるグルコース、マルトース、およびマルトトリオースを、より長いマルトオリゴ糖類に再利用することによって、ヘキソースの収率を増加させるために使用することができ、これは、αGPによって加リン酸分解的に切断されて、G1Pを生成することができる。
【0017】
本発明の固定化酵素組成物中の酵素間の相対重量比は、固定化組成物中の任意の2つの酵素を比較する場合、1:1000~1000:1、1:100~100:1、または1:50~50:1の範囲であり得る。酵素比は、以下で考察される他の任意選択的な酵素を含めて、ヘキソース生成の効率を増加させるために変えることができる。例えば、特定の酵素は、別の酵素の量に対して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍などの量で存在し得る。
【0018】
本発明の固定化酵素組成物中の酵素間の相対重量/重量比は、プロセス性能および/またはヘキソース収率を増加させるように最適化することができる。その点に関して、酵素の総重量に対する固定化酵素組成物中の各酵素の重量(w/w)%は、0.1%~70%の範囲である。例えば、本発明のいくつかの固定化酵素組成物は、10~30%(αGP)、10~30%(PGM)、ならびに0.1~10%(PGI)(存在する場合)および0.1~10%(4GT)(存在する場合)を含む。例えば、本発明の固定化酵素組成物は、タガトースの生成に使用することができ、酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%は、10~30%(αGP)、0~10%(4GT)、10~30%(PGM)、0.1~10%(PGI)、15~35%(F6PE)、およびT6PP(25~45%)であり、組成物中の酵素の総重量は、酵素の総重量に対して100w/w%である。タガトースの生成に使用する場合、本発明のいくつかの固定化酵素組成物は、19%のαGP、3%の4GT、17%PGM、3%のPGI、23%のF6PE、および35%のT6PPを含み、各酵素の重量%は、本発明の固定化酵素組成物中の酵素の総重量に対して相対的であり、組成物中の酵素の総重量は、酵素の総重量に対して100w/w%である。他の実施例では、本発明の固定化酵素組成物は、アルロースの生成に使用され、酵素の総重量に対する各酵素の重量(w/w)%は、10~30%(αGP)、0~10%(4GT)、10~30%(PGM)、0.1~10%(PGI)、0.1~10%(P6PE)、および45~65%(P6PP)であり、組成物中の酵素の総重量は、酵素の総重量に対して100w/w%である。アルロースの生成に使用する場合、本発明のいくつかの固定化酵素組成物は、20%のαGP、3%の4GT、16.5%のPGM、3%のPGI、3%P6PE、および54%のP6PPを含み、各酵素の重量%は、本発明の固定化酵素組成物中の酵素の総重量に対して相対的であり、組成物中の酵素の総重量は、酵素の総重量に対して100w/w%である。
【0019】
本発明の固定化組成物に含まれる酵素は、概して、それらが触媒する反応に基づいて(すなわち、特異性および機能によって)言及されるが、酵素は、通常、アミノ酸配列(例えば、配列番号、UniProt IDなどのデータベース識別番号)、既知の機能の酵素に対するアミノ酸配列の同一性/類似性、ヌクレオチド配列、または既知の機能の酵素に対するヌクレオチド配列の同一性/類似性によっても特定される。当該技術分野で既知であり、ヘキソースを調製するために使用される酵素は、本発明の固定化酵素組成物に使用することができ、これには、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、およびイノシトールを生成するために使用され得る固定化酵素組成物が含まれる。当該技術分野で既知の例示的な酵素は、本発明の固定化酵素組成物に使用することができ、以下の関連する特許文献で特定される。列挙された特許における酵素の開示は、参照により本明細書に具体的に援用される。
【表1】
【0020】
したがって、特定の固定化酵素組成物では、表1に、UniProt IDおよび配列番号が提供され、本発明の固定化酵素組成物中に含まれ得る以下の非限定的な例の酵素のアミノ酸配列が特定される:αGP、PGM、PGI、F6PE、T6PP、4-GT、P6PE、およびP6PP。
【表2】
【0021】
本発明の固定化酵素組成物に含まれる酵素のアミノ酸配列には、例えば、活性、安定性(すなわち、半減期)、または収率を向上させるためなどの何らかの理由で修飾され得る酵素も含まれる。そのような修飾された酵素としては、例えば、酵素の断片、アミノ酸置換、およびキメラタンパク質が挙げられる。修飾された酵素には、本明細書に開示される任意の酵素のバリアントが含まれる。バリアントは、1つ以上のアミノ酸残基で、アミノ酸置換を含むことができる。バリアントは、天然に存在する酵素と比較して、15個以下、12個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、もしくは1個以下の保存的アミノ酸置換、および/または天然に存在する酵素と比較して、5個以下、4個以下、3個以下、もしくは2個以下の非保存的アミノ酸置換、もしくは1個以下の非保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)を有するアミノ酸を含む。本発明のバリアント酵素は、本明細書に記載されるように、アミノ酸類似体、ならびにアミノ酸によるアミノ酸置換を含み得る。
【0022】
本発明の酵素組成物に含まれる酵素は、i)本明細書に開示される酵素のアミノ酸配列と少なくとも35%の配列同一性を共有する酵素、およびii)プロセスに必要な特異性を有する特定の開示される酵素の同じ反応を触媒することができる酵素であってもよい。したがって、本発明の組成物中の酵素は、本明細書に開示される酵素のアミノ酸配列と、少なくとも35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性であるアミノ酸配列を有する酵素を含む。本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つ以上のアミノ酸配列または核酸配列間の類似性を指す。配列同一性は、典型的には、アミノ酸配列間の同一性のパーセンテージ(または類似性もしくは相同性)に関して測定され、そのパーセンテージが高いほど、互いに比較される配列の類似性がより高い。
【0023】
上記のように、本発明の酵素組成物は、少なくとも1つの担体に固定化される。担体はまた、概して、本明細書において、「担体材料」、「担体樹脂」、または「担体ビーズ」と称され得る。本発明の固定化酵素組成物では、複数の異なる担体を使用して、1つ以上の酵素を固定化することができる。本発明の固定化酵素組成物における担体は、必ずしも特定の材料に限定されないが、本発明のいくつかの固定化酵素組成物では、担体は、任意選択的に、フェノールホルムアルデヒド(すなわち、フェノールホルムアルデヒド重縮合体)から構成され得る弱塩基性イオン交換樹脂である。本発明のさらに他の固定化酵素組成物では、担体材料は、制御多孔性ガラス(controlled pore glass、CPG)粒子またはハイブリッドCPG粒子(WO2015/115993A1)に基づく。本発明のいくつかの固定化酵素組成物中の担体は、三級アミン基を含むことによって官能化され、一方、他のものでは、二級アミン基が官能性を提供する。本発明のいくつかの固定化酵素組成物では、担体樹脂は、例えば、鉄または亜鉛などの金属をキレート化するために使用される基で官能化される。キレート金属基は、例えば、ヒスチジン(His)タグなどの適切な結合基を介した分子の高親和性結合を可能にする。かかる官能基の例は、WO2015/115993A1およびCassimjee et al.A general protein purification and immobilization method on controlled porosity glass: biocatalytic applications.Chem.Commun.,2014,50,9134に見出され、2,4-ジヒドロキシベンジル残基を含むが、これに限定されない。
【0024】
本発明のいくつかの固定化酵素組成物中の担体は、上で列挙された様々な担体の特徴のうちの2つ以上を有する。例えば、本発明のいくつかの固定化酵素組成物では、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソース単糖類に変換するプロセス(タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールを生成するプロセスを含む)で使用するための、本明細書に記載の固定化酵素組成物のいずれかの酵素組成物は、弱塩基性陰イオン交換樹脂に固定化され、これは、フェノールホルムアルデヒド重縮合体から構成されていても、構成されていなくてもよく、三級アミン基によって官能化されていても、官能化されていなくてもよい。上記の特徴を有する担体樹脂は、DUOLITE(商標)A568として市販されている。本発明の他の固定化酵素組成物では、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソース単糖類に変換するプロセス(タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールを生成するプロセスを含む)で使用するための、本明細書に記載の固定化酵素組成物のいずれかの酵素組成物は、弱塩基性陰イオン交換樹脂に固定化され、これは、フェノールホルムアルデヒド重縮合体から構成されていても、構成されていなくてもよく、二級アミン基によって官能化されていても、官能化されていなくてもよい。上記の特徴を有する担体樹脂は、DUOLITE(商標)PWA7として市販されている。本発明のさらに他の固定化酵素組成物では、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソース単糖類に変換するプロセス(タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールを生成するプロセスを含む)で使用するための、本明細書に記載の固定化酵素組成物のいずれかの酵素組成物は、Hisタグ親和性樹脂に固定化され、これは、CPGまたはハイブリッドCPG粒子材料担体から構成されていても、構成されていなくてもよく、鉄または亜鉛をキレート化してもよく、キレート化しなくてもよい。上記の特徴を有する担体樹脂は、EziG(商標)Opalとして市販されている。
【0025】
一般に、本発明の固定化酵素組成物中の酵素の総重量は、担体の重量(w/w)%に対して、2.5%~12.5%の範囲である。したがって、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソース単糖類に変換するプロセス(タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールを生成するプロセスを含む)で使用するための、本明細書に記載の固定化酵素組成物のいずれかの酵素組成物の総重量は、担体の重量(w/w)%に対して、約2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、またはそれらの間の任意のw/w%であり得る。例えば、タガトースを生成するために使用されるいくつかの固定化酵素組成物中の酵素(αGP、PGM、PGI、F6PE、およびT6PP)または(αGP、4GT、PGM、PGI、F6PE、およびT6PP)の総重量は5%であり、一方、酵素(αGP、PGM、PGI、P6PE、およびP6PP)または(αGP、4GT、PGM、PGI、P6PE、およびP6PP)の総重量は6.5%である。
【0026】
また、本発明は、糖からヘキソースを調製するための酵素プロセスに関し、好適な反応条件下で、デンプン誘導体を本発明の固定化酵素組成物と接触させて、デンプン誘導体をヘキソースに変換するステップを含む。ヘキソースを調製するための本発明の酵素プロセスでは、プロセスの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、または少なくとも8つの酵素を、同じ担体上に固定化してもよく、または複数の担体上に固定化してもよい。例えば、本発明の酵素プロセスでは、酵素は、同じ担体上に固定化されてもよく、または固定化された酵素は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの担体、少なくとも7つ、もしくは少なくとも8つの担体間で分配されてもよく(同じタイプの担体、または異なる担体の任意の組み合わせであってもよい)、固定化の方法は、弱塩基性陰イオン交換樹脂担体、フェノールホルムアルデヒド重縮合体担体、三級アミン官能基を含む担体(例えば、DUOLITE(商標)A568)、二級アミン官能基を含む担体(例えば、DUOLITE(商標)PWA7)、Hisタグ親和性樹脂を含む担体、制御多孔性ガラス(CPG)粒子を含む担体、およびキレート金属によって官能化された担体(キレート金属が、鉄または亜鉛である担体(例えば、EziG(商標)Opal)を含む)を含む。
【0027】
本明細書に記載の担体のいずれかに酵素を固定化するための方法は、当該技術分野において既知であり、酵素を担体樹脂に結合させるための適切な緩衝液および反応条件が含まれる。例えば、WO2016/160573を参照されたい(その全体が本明細書に援用される)。
【0028】
本発明の固定化酵素組成物を使用してデンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類をヘキソースに変換するためのプロセスは、溶液中の非固定化酵素を使用してヘキソースを生成するために使用されるものと同じ温度、緩衝液、および反応時間のパラメータの下で実施することができる。例えば、本発明の固定化酵素組成物は、公開PCT出願第2018/169957号、同第2017/059278号、および同第2018/112139号に記載されている反応条件下で、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに糖類から、タガトース、プシコース、フルクトース、アロース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、またはイノシトールを生成するために使用され得る。本発明の固定化酵素組成物を使用してヘキソースを生成するプロセスにおける複数の触媒反応ステップは、単一のバイオ反応器、もしくは直列に配置される複数のバイオ反応器、または反応容器内で実施することができる。あるいは、これらのステップは、直列または並列に配置される複数のバイオ反応器、または反応容器で実施することもできる。前述のすべてのプロセスは、バッチモードまたは連続モードで実行することができる。単一バイオ反応器での「ワンポット(one-pot)」プロセスが好ましい。
【0029】
本発明の酵素プロセスにおけるステップは、約35℃~約90℃、約40℃~約70℃、約50℃~約60℃、または約55℃の範囲の温度、および約5.0~約8.0、約6.5~約7.5、または約7.0~約7.5の範囲のpHで実施することができる。これらは、約0.5時間~約48時間、約4時間~24時間、または約8時間~12時間実施され得る。本発明の酵素プロセスのステップは、ATP不含で、かつ/またはNAD(P)(H)不含で行われてもよい。ステップは、約0.1mM~約150mMの範囲のリン酸濃度で実行され得る。本発明によるプロセスのリン酸化ステップおよび脱リン酸化ステップで使用されるリン酸は、酵素カスケード反応内で再利用することができる。本発明のプロセスは、充填されたカラムで、またはスラリー中で実行することができる。
【0030】
例えば、各プロセスにおける反応リン酸濃度は、約0.1mM~約300mM、約0mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、またはより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であり得る。例えば、各プロセスにおける反応のリン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約55mMであり得る。
【0031】
リン酸濃度が低いと、総リン酸濃度が低いことから、生産コストが低減され、したがって、リン酸を除去するコストが低減される。また、高濃度の遊離リン酸によるプロセス酵素の阻害が防止され、リン酸汚染の可能性が低減される。
【0032】
さらに、本明細書に開示されるプロセスの各々は、リン酸の供給源としてATPを添加することなく(すなわち、ATP不含)、実施することができる。各プロセスは、NAD(P)(H)を添加する必要がなく(すなわち、NAD(P)(H)不含)、実施することもできる。他の利点としては、ヘキソースを生成するための開示されたプロセスの少なくとも1つのステップが、非常にエネルギー的に有利な化学反応を伴うという事実が挙げられ、これは、高収率に不可欠である。本発明のプロセスのための非常にエネルギー的に有利な化学反応は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの平衡定数(Keq)を有する。
【0033】
本発明のプロセスの最初のステップとして、デンプン誘導体は、デンプンの酵素加水分解によって、またはデンプンの酸加水分解によって調製することができる。例えば、WO2017/059278を参照されたい。例えば、デンプンの酵素加水分解は、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(IA、EC.3.2.1.68)、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するプルラナーゼ(PA、EC.3.2.1.41)、短いマルトオリゴ糖類のトランスグリコシル化を触媒し、より長いマルトオリゴ糖類を生成する4-α-グルカノトランスフェラーゼ(4GT、EC.2.4.1.25)、またはα-1,4-グルコシド結合を切断するαアミラーゼ(EC3.2.1.1)によって触媒または増強され得る。さらに、セルロースの誘導体は、セルロースの酵素加水分解によって調製され得、セルラーゼ混合物によって、酸によって、またはバイオマスの前処理によって触媒される。
【実施例
【0034】
実施例1.酵素担体の評価。酵素担体を、タガトースを生成するための酵素組成物の相対反応速度、ならびに酵素の安定性に対するそれらの効果について評価した。これらの目的を念頭に置いて、以下の酵素担体材料を評価した:4つのブランドのフェノール-ホルムアルデヒドマトリックス樹脂(DUOLITE(商標)A568、DUOLITE(商標)A561、DUOLITE(商標)PWA7、AmberLite(商標)FPA54)、2つのブランドのポリスチレン樹脂(Lifetech(商標)ECR1640およびLifeTech(商標)ECR1504)、2つのブランドのポリメチルアクリレート樹脂(Lifetech(商標)ECR8309MおよびChromolite(商標)D6154)、ならびに1つのブランドの制御多孔性ガラス樹脂(EziG Opal(商標))。
【0035】
DUOLITE(商標)A568(DuPont)イオン交換樹脂は、架橋フェノール-ホルムアルデヒド重縮合体系の、高い多孔性の粒状の弱塩基性陰イオン交換樹脂である。その親水性および制御された孔径分布から、多くのバイオプロセス用途で、酵素担体として使用するのに最も好適な樹脂となる。DUOLITE(商標)A568のイオン強度、孔体積、孔径、および粒径は、デンプンおよび脂肪(および他の)産業で使用される酵素の最適な固定化のために設計されている。
【0036】
DUOLITE(商標)A561イオン交換樹脂は、三級アミン官能基を有するフェノールホルムアルデヒドから作製される弱塩基性陰イオン交換体であり、その広範な仕様は、DUOLITE(商標)A568樹脂に類似しているが、DUOLITE(商標)A561は異なるビーズ形態を有する。
【0037】
DUOLITE(商標)PWA7は、アミン官能性、および塩形態を有する弱塩基性陰イオン交換体である。
【0038】
AMBERLITE(商標)FPA54イオン交換樹脂は、架橋フェノール-ホルムアルデヒドマトリックス系の、高い多孔性の弱塩基性陰イオン交換樹脂である。AMBERLITE(商標)FPA54の低膨潤特性は、優れた浸透圧安定性および物理的安定性を提供し、食品加工およびバイオプロセス用途において、従来のスチレン系樹脂よりも、少ない製品ロスおよび長い製品寿命をもたらす。AMBERLITE(商標)FPA54の親水性のフェノール系多孔性マトリックスは、天然産物および発酵産物の溶液中に頻繁に見られる高分子量の有機性色体の可逆的吸着を可能にする。AMBERLITE(商標)FPA54は、硫酸およびリン酸に対して高い選択性を示し、したがって、長期間使用する場合、特に、その優れた浸透圧安定性により、発酵に由来するクエン酸および乳酸の両方の処理に理想的である。
【0039】
Lifetech(商標)ECR1640は、四級アミンで官能化されたジビニルベンゼン(DVB)とスチレンのコポリマーである。これは、イオン化可能な表面アミノ酸(Lys、Arg、His、Asp、Glu)とポリマー上の三級アミンとのイオン相互作用による酵素固定化に使用されている。多くのグリコシダーゼのように、3~5の範囲のpIを有する酵素の固定化に特に好適である。Lifetech(商標)ECR1640の主な特徴は、樹脂の再生の可能性、固定化前のpH調整、およびカラム用途の大きい粒径である。DVB/スチレンで、四級アミン、300~1200ミクロン、pH安定性1~14、湿式供給(66~72%水)、容量0.85当量/l、Cl形態を有する。
【0040】
Lifetech(商標)ECR1504は、三級アミンで官能化されたジビニルベンゼン(DVB)とスチレンのコポリマーである。これは、イオン化可能な表面アミノ酸(Lys、Arg、His、Asp、Glu)とポリマー上の三級アミンとのイオン相互作用による酵素固定化に使用されている。多くのグリコシダーゼのように、3~5の範囲のpIを有する酵素の固定化に特に好適である。Lifetech(商標)ECR1504の主な特徴は、樹脂の再生の可能性、固定化前のpH調整、およびカラム用途の大きい粒径である。DVB/スチレンで、三級アミン、300~1200ミクロン、pH安定性1~14、湿式供給(53~62%水)、容量1.3当量/l遊離塩基を有する。
【0041】
Lifetech(商標)ECR8309Mは、短いスペーサー(C2)上のアミノ基で官能化された親水性で高い多孔性のメタクリレートポリマーである。
【0042】
Chromolite(商標)D6154は、マクロ多孔性ポリメタクリレートであり、ポリHisタグに特異的な親和性結合のために官能化された材料である。官能基は、イミノ二酢酸、Na形態である。
【0043】
EziG(商標)Opalは、制御多孔性ガラス(CPG)粒子から作製され、親水性表面を有する。この素材は、狭い孔径分布を有し、標準的に、約500Åの孔径で生産されている。15~60%の活性酵素の質量負荷が予想される。EziG(商標)の他のバリエーションが存在し、(AmberおよびCoralを)試験したが、それらは、Opalと比較して最適ではなかった。
【0044】
総組成酵素重量に対して、以下の酵素の各々を、それぞれ、以下の重量/重量(w/w)%で含む酵素組成物:19%のα-グルカンホスホリラーゼ(αGP、UNIPROT ID G8NCC0、配列番号1)、17%のホスホグルコムターゼ(PGM、UNIPROT ID A0A0P6YKY9、配列番号2)、3%のホスホグルコイソメラーゼ(PGI、UNIPROT ID Q5SLL6、配列番号3)、23%のフルクトース-6-リン酸エピメラーゼ(F6PE、UNIPROT ID A0A0P6XN50、配列番号4)、35%のタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(T6PP、UNIPROT ID D1C7G9、配列番号5)、および3%の1,4-グルカントランスフェラーゼ(4-GT、UNIPROT ID E8MXP8、配列番号6)を、上に記載の各担体上に固定化した。すべての固定化酵素調製物は、酵素総重量/担体が5%であった。表2を参照。前述の酵素比は、以下に記載される固定化方法を使用して、タガトースの生成のために以前に最適化された。
【表3】
【0045】
組成物中の酵素を各担体に付着させる前に、担体を、2当量の水、次いで、3当量の固定化緩衝液(pH7.2)(5mMのNaPO、5mMのMgSO、0.25mMのMnCl)で平衡化した。酵素を固定化緩衝液中に懸濁して、酵素組成物を形成させ(好ましくは、酵素5~10g/L)、次いで、担体に添加して、スラリーを作製した。800rpmのオービタルシェーカー上で、室温でインキュベーションする間、酵素組成物および担体スラリーの吸光度を280nmで測定して、95%超の可溶性酵素が溶液中に懸濁されなくなるまで、酵素の担体への吸着を追跡した。これは、5%(w/w、酵素/担体)負荷試料の場合、約6時間であった。上清を除去し、固定化された担体を、反応緩衝液(pH7.2)(25mMのNaPO、4mMのNaSO、2.5mMのMgSO、0.25mMのMnCl)で洗浄して、残存する可溶性酵素をすべて除去した。各スラリー試料を、等量の2倍濃縮供給溶液(320g/Lのマルトデキストリンデキストロース当量5(DE5)pH7.2、25mMのNaPO、4mMのNaSO、2.5mMのMgSO、0.25mMのMnCl)と混合し、反応条件で、最終マルトデキストリン基質濃度を160g/Lにした。マルトデキストリン-担体混合物を、EppendorfサーモミキサーF2.0の2.0mLマイクロフュージチューブ内で、800~1500rpmで、DUOLITE(商標)A568、Lifetech(商標)ECR1640、LifeTech(商標)ECR1504、Lifetech(商標)ECR8309M、Chromolite(商標)D6154、およびEziG(商標)Opal組成物-担体組み合わせの場合は50℃、DUOLITE(商標)A561、DUOLITE(商標)PWA7、AmberLite(商標)FPA54の組成物-担体組み合わせの場合は55℃のいずれかで、一晩振盪した。この反応を15~18時間続けた。得られた生成物は、インライン屈折率検出器を備えたAgilent1100シリーズHPLCシステムを使用して(5mMのHSO移動相を用いて65℃で0.6mL/分)、HiPlex Hリガンド交換カラム(Agilent)上で展開した。タガトースの濃度は、試料のピーク面積を、既知のタガトース標準溶液のものと比較することによって決定された。固定化酵素組成物のカスケード活性率(タガトース生成μmol/分/mg総酵素)を、各担体について計算した。各担体-組成物調製物のカスケード活性率は、Duolite A568担体-組成物調製物のカスケード活性率と比較して、表1に報告されている。残りのマルトデキストリンおよびタガトースを、各々、少なくとも3体積当量の反応緩衝液からなる5回の洗浄によって、各固定化酵素調製物から洗い流し、再利用のための調製物を平衡化した。固定化酵素調製物を、前のように2倍濃縮マルトデキストリン供給溶液を添加することによって、再利用した。反応速度を、その後の使用ごとに計算し、プロットして、固定化触媒の作動半減期を確認した。半減期は、(0日目と比較して)活性の半分未満が一貫して失われるまで、0日目および後日に、カスケード速度(μmol/分/mg)を測定することによって決定した。表3におけるn/dの指定は、10%未満の半減期が見出されたか、またはカスケード活性がDuolite A568の50%未満であったことを示す。
【表4】
【0046】
実施例2.カスケード速度に対する酵素比の影響。タガトースの生成に対する様々な固定化酵素の比率の変化の影響を評価するために、DUOLITE(商標)A568上に固定化されたαGP、PGM、PGI、F6PE、T6PP、および4-GTの量を、実施例1および表1に記載される酵素比(「実施例1の固定化組成物」)を使用して調製されたDUOLITE(商標)A568固定化組成物と比較して、2つの固定化組成物調製物において、変化させた。それらの活性率を、実施例1の固定化組成物の性能に対して評価した。様々な濃度の固定化組成物のうちの1つでは、酵素の量は、表4(図1B)に示されるように、溶液中のT6PPに対する各酵素の観察された速度に基づいており、酵素ごとに、等量の酵素活性(μmol/分)が添加された。この固定化組成物の活性率は、最適比の74%であった。他の様々な濃度の固定化組成物には、重量で等量の各酵素が含まれた(図1C)。この固定化組成物の活性率は、最適比の85%であった。反応を実施し、変換速度を、実施例1に記載されるように、μmol/分/mg総酵素で測定した。
【表5】
【0047】
実施例3.1つ以上の担体に対する酵素の分布の影響。実施例1に記載されるように、単一の固定化反応で調製されたDUOLITE(商標)A568固定化組成物(19%のαGP、17%のPGM、3%のPGI、23%のF6PE、35%のT6PP、および3%の4-GT)を使用して、マルトデキストリンからタガトースを生成するプロセスを、以下を使用して実施されるプロセスの活性率と比較した:(1)コア生成酵素(αGP、PGM、PGI、および4GT)のDUOLITE(商標)A568固定化組成物と、タガトース生成特異的酵素(F6PEおよびT6PP)のDUOLITE(商標)A568固定化組成物の混合物、ならびに(2)6種の別個の固定化酵素調製物:DUOLITE(商標)A568固定化αGP、DUOLITE(商標)A568固定化PGM、DUOLITE(商標)A568固定化PGI、DUOLITE(商標)A568固定化4GT、DUOLITE(商標)A568固定化F6PEおよびDUOLITE(商標)A568固定化T6PP。(1)および(2)のすべての酵素は、参照されるDUOLITE(商標)A568固定化組成物と同じ比率で存在し、すべての固定化は、実施例1に記載されるように、5%w/w比(酵素/担体)および緩衝液/反応条件を使用して行われた。結果を表5に示す。
【表6】
【0048】
実施例4.酵素負荷の影響。異なる負荷における酵素(g酵素/g担体、2.5%間隔で2.5%~12.5%の範囲)を、実施例1に記載のように、また表2に列挙される比率で、Duolite A568上に固定化した。しかし、実施例1とは異なり、固定化を、6時間ではなく、各試料について16時間継続させ、より高い負荷で、酵素の結合が完了に達するように時間をかけた。可溶性酵素を、少なくとも3つの試料体積の反応緩衝液pH7.2(25mMのNaPO4、4mMのNaSO、2.5mMのMgSO、0.25mMのMnCl)を含有する5回の洗浄で洗い流した。試料をマルトデキストリン供給溶液と16時間反応させ、変換速度を実施例1のようにμmol/分/mgの合計酵素で測定した。5%負荷の試料に対する相対的な酵素カスケード速度を、図2の負荷の関数としてプロットする。負荷応答は、酵素および支持体の価格と併せて、最もコスト効率の高い触媒の設計を可能にする。
【0049】
実施例5.固定化酵素組成物を使用したアルロースの調製。表6に記載されるように、酵素間で3つの異なる比率で以下の酵素:αGP、PGM、PGI、プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)、プシコース6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)、および4-GTを含む酵素組成物を、それぞれの固定化反応において、DUOLITE(商標)A568に固定化した。マルトデキストリンからアルロースを生成するための3つの固定化組成物調製物の比較分析を行った。
【表7】
【0050】
固定化カクテルを調製するために、DUOLITE(商標)A568を、1%のグルタルアルデヒド(GA)水溶液中で、エンドオーバーエンドローテーターで、室温で2時間前処理した。GAを、水で5回洗浄し、固定化緩(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)、5mMのMgSO、および80μMのCoCl)で2回洗浄することによって除去した。次いで、酵素溶液(表5)を、最終洗浄ステップ後(上清は廃棄される)、GAで前処理された担体に添加した。酵素溶液は、反応緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)、5mMのMgSO、5mMのNaSOおよび80μMのCoCl)中の5g/Lの酵素で構成された。酵素および担体の溶液を、800rpmに設定されたオービタルシェーカー上で、室温で16時間インキュベートし、酵素混合物を担体に固定化した。総パーセント負荷は、6.5%(担体1mg当たりのmg酵素)であった。上清を、反応緩衝液からなる6回の洗浄で洗い流して、残存する結合されていない酵素を除去した。最終上清を除去し、事前に反応緩衝液に溶解された150g/Lのマルトデキストリンを添加した。マルトデキストリン-担体混合物を、EppendorfサーモミキサーF2.0の2.0mLマイクロフュージチューブ内で、800~1500rpmで、55℃で一晩(15~16時間)振盪した。得られた生成物は、インライン屈折率検出器を備えたAgilent1100シリーズHPLCシステムを使用して(超純水の移動相を用いて80℃で0.6mL/分)、SupelCogel Pbカラム(Sigma Aldrich)上で展開した。アルロース濃度は、試料ピーク面積を、既知のアルロース標準溶液のものと比較することによって決定し、酵素カスケード比活性率を計算した。アルロース生成反応物を、各固定化調製物について、4回の反応緩衝液の洗浄で洗い流し、再利用のために固定化調製物を平衡化した。各試料組成物の相対的な比活性の結果を、以下の表7に示す。
【表8】
【0051】
実施例6.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのアロースの調製。アロースは、αGP、PGM、PGI、4GTおよびP6PE、A6PI、ならびにA6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0052】
実施例7.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのフルクトースの調製。フルクトースは、αGP、PGM、PGI、4GT、およびF6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0053】
実施例8.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのマンノースの調製。フルクトースは、αGP、PGM、PGI、4GT、およびM6PIまたはPGPMIおよびM6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0054】
実施例9.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのガラクトースの調製。ガラクトースは、αGP、PGM、PGI、F6PE、4GT、Gal6PI、およびGal6Pを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0055】
実施例10.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのアルトロースの調製。アルトロースは、αGP、PGM、PGI、P6PE、Alt6PI、およびAlt6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0056】
実施例11.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのタロースの調製。タロースは、αGP、PGM、PGI、F6PE、Tal6PI、およびTal6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0057】
実施例12.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのソルボースの調製。ソルボースは、αGP、PGM、PGI、F6PE、S6PE、およびS6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0058】
実施例13.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのグロースの調製。グロースは、αGP、PGM、PGI、F6PE、S6PE、Gul6PI、およびGul6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0059】
実施例15.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのイドースの調製。イドースは、αGP、PGM、PGI、F6PE、S6PE、I6PI、およびI6PPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
【0060】
実施例16.固定化酵素組成物を使用したマルトデキストリンからのイノシトールの調製。イノシトールは、αGP、PGM、4GT、IPS、およびIMPを含む固定化酵素組成物を使用して、マルトデキストリンから生成される。
図1A
図1B
図1C
図2
【配列表】
2022541471000001.app
【国際調査報告】