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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ナノワイヤデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/20 20100101AFI20220915BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20220915BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 33/30 20100101ALI20220915BHJP
   H01L 33/40 20100101ALI20220915BHJP
   H01L 31/0352 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20220915BHJP
   C30B 25/04 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L33/20
C30B29/38 D
C23C16/34
H01L21/20
H01L21/28 301B
H01L21/28 301Z
H01L29/91 H
H01L29/91 F
H01L29/91 A
H01L33/30
H01L33/40
H01L31/04 342B
H01L31/04 260
C30B25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022502585
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020070228
(87)【国際公開番号】W WO2021009325
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】1910170.8
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518013796
【氏名又は名称】クラヨナノ エーエス
(71)【出願人】
【識別番号】512101187
【氏名又は名称】ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ムンシ、マジィド
(72)【発明者】
【氏名】ヴェマン、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】デーラージ、ダサ エル
(72)【発明者】
【氏名】フィムランド、ビョルン オヴェ エム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィゲン、レイダルフ
(72)【発明者】
【氏名】バリエト、デイビッド
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
4M104
5F151
5F152
5F241
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077AB04
4G077BE13
4G077BE15
4G077DA05
4G077DB08
4G077ED02
4G077ED06
4G077EE07
4G077EF03
4G077HA02
4G077SC10
4G077TB05
4G077TK01
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA20
4K030BA02
4K030BA08
4K030BA38
4K030BB02
4K030BB12
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA05
4K030CA12
4K030CA17
4K030DA09
4K030FA10
4K030JA01
4K030LA14
4M104AA04
4M104AA05
4M104AA07
4M104BB36
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4M104DD55
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4M104DD86
4M104DD91
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5F152NN06
5F152NN12
5F152NN13
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5F152NP09
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5F152NP14
5F152NP17
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5F152NQ17
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5F241CA03
5F241CA10
5F241CA35
5F241CA40
5F241CA88
5F241CB25
(57)【要約】
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層を備え、前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア、Si、Sic、Ga23、またはIII-V族半導体の基板と、
前記基板の上面に直接配置されたIII-V族半導体中間層と、
前記中間層の上面に直接設けられたグラフェン層と、を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記中間層から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体。
【請求項2】
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体。
【請求項3】
前記グラフェン層上に直接成長したIII-V族ナノアイランドをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項4】
前記ナノアイランドのエピタキシー、結晶方位、およびファセット方位が、前記中間層がある場合は前記中間層によって、中間層がない場合には前記基板によって方向付けられる、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
前記中間層が、GaN、AlGaN、AlInGaN、またはAlN、好ましくはAlNである、請求項1または請求項3から4のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記中間層の厚さが200未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは75nm未満である、請求項1または3~5のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
前記グラフェン層の上面に直接設けられた追加のマスキング層を含まない、例えば、前記グラフェン層の上面に直接設けられた、酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層を含まない、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドおよび任意にナノアイランドの少なくとも一部または全部が合体している、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項9】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが、グラフェン内の前記孔を通って前記基板または前記中間層からエピタキシャル成長する、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項10】
前記グラフェン層の厚さが、最大20nmであり、好ましくは最大10nmであり、より好ましくは最大5nmであり、さらに好ましくは最大2nmである、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項11】
前記基板がサファイア、特にサファイア(0001)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項12】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドがドープされている、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項13】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが軸方向にヘテロ構造化されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項14】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが、コア-シェル状または放射状にヘテロ構造化されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項15】
グラファイトトップコンタクト層、または従来の金属コンタクトもしくは金属スタックコンタクト層が、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部に存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項16】
前記グラフェン層の表面を化学的/物理的に改質して、その電気的特性を改質する、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項17】
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層と、を備え、
前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体。
【請求項18】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが、前記基板からエピタキシャル成長する、請求項17記載の構造体。
【請求項19】
前記グラフェン層の厚さが、最大20nmである、請求項17または18に記載の構造体。
【請求項20】
前記マスキング層が、金属酸化物、金属窒化物、または金属フッ化物を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項21】
前記マスキング層が、Al23、W23、HfO2、TiO2、MoO2、SiO2、AlN、BN(例えば、h-BN)、Si34、MgF2、またはCaF2を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項22】
前記基板がサファイア、特にサファイア(0001)を含む、請求項17~21のいずれかに記載の構造体。
【請求項23】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドがドープされている、請求項17~22のいずれかに記載の構造体。
【請求項24】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが軸方向にヘテロ構造化されている、請求項17から23のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項25】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが、コア-シェル構造であるか、または放射状にヘテロ構造化されている、請求項17から24のいずれかに記載の構造体。
【請求項26】
グラファイトトップコンタクト層、または従来の金属コンタクトもしくは金属スタックコンタクト層が、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの上面に存在する、請求項17から25のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項27】
前記グラフェン層の孔を前記マスキング層の孔よりも小さくし、ナノワイヤまたはナノピラミッド成長時に前記グラフェン層の一部が露出するようにする、請求項17~26のいずれかに記載の構造体。
【請求項28】
前記マスキング層における複数の孔内で前記グラフェン層の表面を化学的/物理的に改質し、ナノワイヤまたはナノピラミッドのエピタキシャル成長を促進するか、またはその電気的特性を改質する、請求項17から27のいずれかに記載の構造体。
【請求項29】
前記グラフェン層が、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部と電気的に接触している、先行する請求項のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項30】
(I)グラフェン層がIII-V族中間層上に直接担持され、前記中間層がサファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されている構造体を得ることと、
(II)前記グラフェン層を貫通する複数の孔をエッチングすることと、
(III)少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを、前記孔内で前記中間層から成長させることと、
を含む方法。
【請求項31】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドを、触媒の存在下または不在下で成長させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項30または31に記載の方法により得られる生成物。
【請求項33】
請求項1から16のいずれか一項に記載の構造体を含む、光電子デバイス(例えば、太陽電池、光検出器、またはLED)等のデバイス。
【請求項34】
(I)サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に担持されるグラフェン層を設けることと、
(II)酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層を前記グラフェン層上に堆積させることと、
(III)前記マスキング層および前記グラフェン層に、これらを貫通して前記基板に達する複数の孔を導入することと、
(IV)好ましくは分子線エピタキシーまたは有機金属気相エピタキシーにより、複数の半導電性III-V族ナノワイヤまたはナノピラミッドを前記孔内において成長させることと、
を含む方法。
【請求項35】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドを、触媒の存在下または不在下で成長させる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項34または35に記載の方法により得られる生成物。
【請求項37】
請求項17から29のいずれか一項に記載の構造体を含む、光電子デバイス(例えば、太陽電池、光検出器、またはLED)等のデバイス。
【請求項38】
(I)グラフェン層がサファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されている構造体を得ることと、
(II)前記グラフェン層を貫通する複数の孔をエッチングすることと、
(III)少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを、前記孔内で前記基板から成長させることと、を含む方法。
【請求項39】
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドを、触媒の存在下または不在下で成長させる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項38または39に記載の方法により得られる生成物。
【請求項41】
請求項2から16のいずれか一項に記載の構造体を含む、光電子デバイス(例えば、太陽電池、光検出器、またはLED)等のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン層を透明電極および/または導電電極として使用する、基板上での光電子デバイスの成長および製造に関する。グラフェン層にはマスキング層を設けることができ、これらの両層にホールパターン形成することにより、位置決めされた半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドを基板から成長させることが可能となる。さらに本発明は、基板とグラフェン層との間に中間層を有する構造体(composition of matter、コンポジション)であって、この中間層が、ホールパターン形成されたグラフェン上の半導体構造の成長にリモートエピタキシーを介して影響を与える/促進することができる構造体に関する。また、本発明は、リモートエピタキシーに影響を与える/促進するための、半導体基板を有する構造体に関する。形成された構造体は、LEDまたは光検出器等の光電子デバイスに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーが重要な工学分野となるにつれ、半導体ナノワイヤへの関心が高まっている。ナノワイヤは、著者によっては、ナノウィスカー、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム等ともよばれ、センサー、太陽電池、およびLED等の様々な電気デバイスにおいて重要な用途を見出している。
【0003】
従来、半導体ナノワイヤは、ナノワイヤ自体と同一の基板上に成長させていた(ホモエピタキシャル成長)。よって、GaAsナノワイヤはGaAs基板上に成長させ、GaNナノワイヤはGaN基板上に成長させる、等が行われている。これにより、当然ながら、基板の結晶構造と成長するナノワイヤの結晶構造間での格子整合が確実なものとなる。ヘテロエピタキシャル成長の場合は、GaNナノワイヤは、サファイアまたはシリコンの基板上等に成長させる。基板およびナノワイヤの両方の結晶構造を同一とすることができる。サファイア等の非導電性の基板の場合には、半導体ナノワイヤとの接触のため、基板に電極を設ける必要があるという問題がある。
【0004】
使用可能な電極として、グラフェンが提案されている。半導体基板上での成長に代わるものとして、グラフェン上でナノワイヤ(NW)を成長させることが公知であり、この場合、グラフェンが電極として機能する。特許文献1では、グラフェン基板上で半導電性のナノワイヤを成長させることが検討されている。特許文献2は、グラフェン上に成長させたNW上にグラフェントップコンタクトを採用するという特許文献1の開示の改良に関するものである。しかしながら、これらの場合、ナノワイヤの成長はグラフェン層上で起こり、その下にある支持体上では起こらない。
【0005】
ナノワイヤを位置決めするため、ホールアレイパターンを備えたマスクを使用し、当該ホールパターンの領域でのみ/主として当該ホールパターンの領域において、ナノワイヤの成長を可能とすることが知られている。マスクは、基板に垂直な方向へのNWの成長を促進することもできる。一般的には、基板にシリカ層を塗布し、エッチングにより所望のパターンの孔を形成する。そして、これらの孔の箇所でのみ/主としてこれらの孔の箇所において、ナノワイヤが成長する。グラフェン上のナノワイヤ成長と連動させてマスク層が使用されている(特許文献2参照)。
【0006】
本発明者らは、基板上の透明層および/または導電層としてグラフェン層を使用することを提案している。さらに重要なことは、本発明の特定の態様において、ホールパターニングおよびNWまたはナノピラミッド(NP)の成長の前に、当該グラフェン層もまたマスキング層で覆われることである。
【0007】
本発明者らは、グラフェン層をエッチングすることにより、基板から、または当該グラフェンの下の中間層から、位置決めされたNWまたはNPを成長させるための孔を形成できることを見出した。驚くべきことに、ホールパターンを形成したグラフェン層は、NWまたはNPが、当該グラフェン層そのものの上ではなく、基板(または中間層)から成長しているにもかかわらず、依然としてNWまたはNPの電極として機能できる。グラフェン層の縁部とNWまたはNPの縁部とが接触することにより、電気的な接触が生じることが想定されている。
【0008】
本発明者らは、グラフェンと基板との間に中間層を使用することで、リモートエピタキシャル効果による利点が生じることも見出した。グラフェン上面から直接成長した、すなわち、孔内以外で成長した追加のナノ構造は、リモートエピタキシーにより、グラフェンの下の中間層とエピタキシャルな関係となることができる。これにより、特にNW/NPが合体するように成長した場合、構造的および光学的/電気的な利点が得られる。このような態様では、グラフェンの上面にマスキング層が存在しないことが一般的である。このような有益な効果は、適切な半導体基板の選択によっても得ることができる。
【0009】
グラフェンがマスクとして機能することは特許文献3でこれまで報告されているが、この文献の教示は、半導体成長後に2Dグラフェン層を除去すべきというものである。ナノワイヤ/ナノピラミッドが基板から成長しているにもかかわらず、グラフェン層がナノワイヤ/ナノピラミッドの電極として機能し得ることは、全く認識されていない。
【0010】
非特許文献1において、グラフェンマスクを有するSiC基板からGaN半導体メサを成長させることが提案され、グラフェンが低散逸背面電極として機能し得るとコメントされている。しかしながら、前記成長は、追加のマスキング層が存在しない状態で起こり、グラフェン層は、SiCの昇華によって成長する。さらに、リモートエピタキシーによりグラフェンマスク上で起こり得るナノ構造の成長に影響を与え得る中間層については、何ら開示されていない。
【0011】
追加のマスキング層の存在は、様々な理由から重要と考えられる。マスキング層は、グラフェン層の堆積後に堆積させることができるものであり、よって、グラフェン表面を保護する。グラフェン層に異物混入や欠陥があると、その電子特性が劣化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2012/080252号
【特許文献2】国際公開第2013/104723号
【特許文献3】国際公開第2017/044577号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 108,103105(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
また、マスキング層は、望ましくないナノワイヤ/ナノ構造がグラフェン層上で直接成長するリスクを排除することもできる。マスキング層の存在は、特にナノワイヤ/ナノピラミッドのコアシェル型デバイスに関連して、電気的短絡を防止することができる。さらに、マスキング層は、マスクの孔を通した基板上での成長に対する選択性を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、一態様において、
サファイア、Si、Sic、Ga23、またはIII-V族半導体の基板と、
前記基板の上面に直接配置されたIII-V族半導体中間層と、
前記中間層の上面に直接設けられたグラフェン層と、を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記中間層から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【0016】
本発明は、別の態様において、
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【0017】
本発明は、別の態様において、
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物または窒化物のマスキング層と、を備え、
前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【0018】
本発明は、別の態様において、
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層と、を備え、
前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【0019】
本発明は、別の態様において、
(I)グラフェン層がIII-V族中間層上に直接担持され、前記中間層がサファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されている構造体を得ることと、
(II)前記グラフェン層を貫通する複数の孔をエッチングすることと、
(III)少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを、前記孔内で前記中間層から成長させることと、
を含む方法を提供する。
【0020】
本発明は、別の態様において、
(I)サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に担持されるグラフェン層を設けることと、
(II)酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層を前記グラフェン層上に堆積させることと、
(III)前記マスキング層および前記グラフェン層に、これらを貫通して前記基板に達する複数の孔を導入することと、
(IV)好ましくは分子線エピタキシーまたは有機金属気相エピタキシーにより、複数の半導電性III-V族ナノワイヤまたは半導電性III-V族ナノピラミッドを前記孔内において成長させることと、を含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、別の態様において、
(I)グラフェン層がサファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されている構造体を得ることと、
(II)前記グラフェン層を貫通する複数の孔をエッチングすることと、
(III)少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを前記孔内で前記基板から成長させることと、を含む方法を提供する。
【0022】
本発明は、別の態様において、
(I)サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されるグラフェン層を設けることと、
(II)酸化物または窒化物のマスキング層を前記グラフェン層上に直接堆積させることと、
(III)前記マスキング層および前記グラフェン層に、これらを貫通して前記基板に達する複数の孔を導入することと、
(IV)好ましくは分子線エピタキシーまたは有機金属気相エピタキシーにより、複数の半導電性III-V族ナノワイヤまたは半導電性III-V族ナノピラミッドを前記孔内において成長させることと、を含む方法を提供する。
【0023】
さらに別の態様として、本発明は、
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物または窒化物のマスキング層と、を備え、
前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
前記マスキング層の孔を前記グラフェン層の孔よりも大きくし、前記マスク層の下で前記グラフェン層の一部が露出するようにし、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【0024】
本発明は、別の態様において、先に定義した方法により得られる生成物を提供する。
【0025】
本発明は、別の態様において、先に定義した構造体、例えば、太陽電池、発光デバイス、または光検出器を含む、電子デバイス等のデバイスを提供する。
【0026】
本発明は、別の態様において、
サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含む、構造体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図2図2は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図3図3は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図4図4は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図5図5は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図6図6は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図7-1】図7は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図7-2】図7は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。
図8図8は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図9図9は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図10図10は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図11図11は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図12図12は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図13図13は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図14図14は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図15図15は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
図16図16は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[定義]
III-V族化合物半導体とは、少なくとも1つのIII族元素および少なくとも1つのV族元素を含むものを意味する。各族から2つ以上の元素が含まれていてもよく、例えば、InGaAs、AlGaN(すなわち、三元化合物)、AlInGaN(すなわち、四元化合物)等であってもよい。半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドという用語は、III-V族元素からなる半導体材料から作られるナノワイヤまたはナノピラミッドを指す。
【0029】
本明細書中で使用するナノワイヤという用語は、ナノメートル寸法の固体のワイヤー様構造を指す。ナノワイヤは、ナノワイヤの大部分、例えば、その長さの少なくとも75%にわたって均一な直径を有することが好ましい。ナノワイヤという用語は、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム、またはナノウィスカーの使用を包含しようとするものであり、これらのいくつかは、テーパー状の末端構造を有する場合がある。ナノワイヤは、本質的に、その幅または直径がナノメートル寸法であり、かつその長さが一般的には数百nm~数μmの範囲内である一次元形態であるといえる。理想的には、ナノワイヤの直径は、500nm以下である。理想的には、ナノワイヤの直径は、50~500nmであるが、直径は、数マイクロメータを超えてもよい(マイクロワイヤと呼ばれる)。
【0030】
ナノワイヤの基底部(base)およびナノワイヤの頂部(top)の直径は、ほぼ同一(例えば、それぞれの20%以内)であることが理想的である。
【0031】
ナノピラミッドという用語は、固体ピラミッド型構造を指す。本明細書中で使用するピラミッド型(pyramidal)という用語は、基底部を有し、基底部の概ね中心上方の単一の点に向かって側面が先細になる構造を定義するために使用されている。単一頂点が面取りされているように見える、例えば、ピラミッドが平坦な頂部を有するように見える場合があることが理解されるであろう。一般的には、面取りされた部分は、ナノピラミッドの縁部の全長の50%未満、例えば40%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、例えば10%未満、例えば、5%未満に相当する。ナノピラミッドは、3面~8面または4面~7面等の複数の面を有していてもよい。したがって、ナノピラミッドの基底部は、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形等であってもよい。ピラミッドは、基底部から中心点に向かって面が先細になる(よって、三角形の面を形成する)ように形成される。三角形の面は、通常、(1-101)面または(1-102)面で終端している。(1-101)ファセットを有する三角形の側面は、先端の単一の点に収束するか、または先端に収束する前に新しいファセット((1-102)面)を形成し得る。場合によっては、ナノピラミッドは、その頂部が{0001}面で終端され、切頂されている。基底部自体は、ピラミッド構造を形成すべく先細になり始めるまでは、断面が均一である部分を有していてもよい。したがって、基底部の厚さは、最大500nmであってもよく、例えば、最大200nmであってもよく、50nm等であってもよい。
【0032】
ナノピラミッドの基底部は、最も幅広な箇所での直径が50~500nmとすることができる。他の実施形態において、ナノピラミッドの基底部は、最も幅広な箇所での直径を200nm~1マイクロメータとすることができる。ナノピラミッドの高さは、200nm~数マイクロメータであってもよく、長さ400nm~1マイクロメータ等であってもよい。
【0033】
基板には、複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが含まれることが理解されるであろう。これは、ナノワイヤまたはナノピラミッドのアレイと呼ばれることがある。
【0034】
グラフェン層は、グラフェンまたはその誘導体の単層または多層からなる膜である。グラフェンという用語は、ハニカム結晶構造のsp2結合炭素原子の平面状シートを指す。グラフェンを使用することが好ましいが、表面改質グラフェン等、グラフェン誘導体を使用することも可能である。例えば、水素原子はグラフェン表面に結合してグラファン(graphane)を形成することができる。炭素原子および水素原子と共に酸素原子が表面に結合したグラフェンは、酸化グラフェンと呼ばれる。表面改質は、化学ドーピングまたは酸素/水素もしくは窒素プラズマ処理によっても可能である。
【0035】
エピタキシーという用語は、「上方に(above)」を意味するギリシャ語起源のepiと、「規則正しい状態に(in ordered manner)」を意味するtaxisに由来する。ナノワイヤまたはナノピラミッドの原子配列は、基板の結晶学的構造に基づく。これは当技術分野でよく使用される用語である。本明細書において、エピタキシャル成長とは、基板の方位に倣ったナノワイヤまたはナノピラミッドの基板上での成長を意味する。
【0036】
選択領域成長(SAG)は、位置決めされたナノワイヤまたはナノピラミッドを成長させる最も有望な方法である。この方法は、金属触媒がランダムな位置でナノワイヤまたはナノピラミッドの成長のための核生成部位として機能する自己組織化金属触媒支援気相-液相-固相(VLS)法とは異なる。ナノワイヤまたはナノピラミッドを成長させるための他の自己組織化法は、ナノワイヤまたはナノピラミッドがランダムな位置で核生成される無触媒法である。これらの方法では、ナノワイヤの長さおよび直径、ナノピラミッドの高さおよび幅が大きく変動する。位置決めされたナノワイヤまたはナノピラミッドは、触媒支援型の方法によって成長させることもできる。
【0037】
SAG法または触媒支援型の位置決め成長法では、一般的に、ナノ孔パターンを有するマスクが基板上に必要である。ナノワイヤまたはナノピラミッドは、主に基板上のパターン化されたマスクの孔内で核生成する。これにより、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、均一なサイズで、所定の位置に得られる。
【0038】
マスキング層という用語は、グラフェン層上に直接堆積するマスク材を指す。理想的には、マスク材は、LEDの場合には放出光(可視光、UV-A、UV-B、またはUV-Cであり得る)を吸収しないか、または光検出器の場合には、検出対象の入射光を吸収しない。通常、マスクは非導電性とすべきである。マスクは、1つまたは2つ以上の材料を含むことができ、前記材料としてはAl23、SiO2、Si34、MoO2、TiO2、W23、HfO2、h-BN、AlN、MgF2、CaF2等が挙げられる。
【0039】
その後、マスク材における孔パターンを、電子線リソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー等のリソグラフィー、およびドライまたはウェットエッチングを用いて作製することができる。
【0040】
分子線エピタキシー(MBE)は、結晶基板上に堆積物を形成する方法である。MBEプロセスは、真空中で結晶基板を加熱して、基板の格子構造を活性化させることにより行われる。その後、原子質量ビームまたは分子質量ビームを前記基板の表面に向かわせる。上記で用いた元素という用語は、その元素の原子、分子、またはイオンの適用を包含しようとするものである。基板に向かった原子または分子が基板表面に到達すると、当該基板に向かった原子または分子は、以下に詳細に説明するように、基板の活性化された格子構造または触媒液滴にぶつかる。時間の経過と共に、向かってくる原子によってナノワイヤが形成される。
【0041】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)とも呼ばれる有機金属気相エピタキシー法(MOVPE)は、結晶基板上に堆積物を形成するMBEの代替となる方法である。MOVPEの場合、堆積材料は有機金属前駆体の形態で供給されるが、当該有機金属前駆体は、高温の基板に到達すると分解し、基板表面に原子が残る。さらに、この方法は、基板表面全体にわたって堆積材料(原子/分子)を運ぶためにキャリアガス(一般的には、H2および/またはN2)を必要とする。他の原子と反応するこれらの原子は、基板表面上にエピタキシャル層を形成する。堆積パラメータを注意深く選択することにより、ナノワイヤが形成される。
【0042】
担持されるという用語は、対象の層が隣接していることを直接的に示すものである。
【0043】
[発明の詳細な説明]
本発明は、グラフェン層の孔を通るように行われる、位置決めされたナノワイヤまたはナノピラミッドの成長に関する。半導体ナノワイヤアレイまたは半導体ナノピラミッドアレイは、基板から、または基板とグラフェン層との間に位置する中間層から、エピタキシャルに成長した複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを含む。
【0044】
ある特定の態様では、この発明は、位置決めされたナノワイヤまたはナノピラミッドの成長のための基板上のマスクとして、上部/追加のマスキング層と組み合わせたグラフェン層の使用に関する。グラフェン層は、透明で導電性であり、フレキシブルである。半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドアレイは、前記基板からエピタキシャル成長した複数のナノワイヤまたはナノピラミッドを含む。構造体が、基板とグラフェン層との間に中間層を含む場合、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、前記中間層からエピタキシャルに成長する。
【0045】
ナノワイヤまたはナノピラミッドをエピタキシャル成長させることにより、形成された材料が均質となり、これにより、例えば、構造的、機械的、光学的、または電気的特性等、様々な最終特性を向上し得る。
【0046】
エピタキシャルナノワイヤまたはエピタキシャルナノピラミッドは、気体、液体、または固体の前駆体から成長させてもよい。基板または中間層が種結晶としての機能を果たすため、堆積したナノワイヤまたはナノピラミッドは、基板または中間層のものと類似の格子構造および方位を有することができる。エピタキシーは、単結晶基板上においても多結晶膜または非晶質膜が堆積される他の薄膜堆積法とは異なる。
【0047】
[グラフェン層]
本明細書で使用するグラフェンという用語は、ハニカム(六方晶)結晶格子に高密度に充填されたsp2結合炭素原子の平面状シートのことを指す。グラフェン層は、厚さを20nm以下とすることが好ましい。理想的には、含有するグラフェンまたはその誘導体の層は10層以下とすべきであり、好ましくは5層以下(これを少数層グラフェンと呼ぶ)、好ましくはグラフェンを4層以下、好ましくはグラフェンを3層以下、好ましくはグラフェンを1~5層、好ましくはグラフェンを1~4層、例えば、グラフェンを2~4層とすべきである。厚さが一原子分であるグラフェンの平面状シートとすることが特に好ましい。
【0048】
グラフェン層の厚さは、一般に、20nm以下であることが好ましい。グラフェンシートを積層し、面間隔が0.335nmのグラファイトを形成する。好ましいグラフェン層は、このような層を数層のみ有し、かつ、理想的には10nm未満の厚さを有してもよい。より好ましくは、グラフェン層の厚さは5nm以下、さらに好ましくは4nm以下、さらに好ましくは3nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。好ましい厚さの範囲は、0.3~10nm、好ましくは1~5nm、1~3nm、または1~2nmである。薄いグラフェン層を備えることは、光学/電子特性のためのみならず、リモートエピタキシャル効果(すなわち、グラフェンの上面の構造の結晶方位は、前記グラフェン層の下にある中間層/基板の結晶方位に影響される)のためにも重要である。一般的には、グラフェン層を3~4層以下(約1~2nmに相当)使用した場合に、リモートエピタキシーに関して最良の結果が得られる。
【0049】
グラフェン層の面積は、一般的には制限されない。この面積は、0.5mm2以上、例えば、最大5mm2、もしくはそれ以上(10cm2まで等)とすることができる。このように、グラフェン層の面積は、実用性によってのみ制限される。グラフェンウェーハは、1.0~100平方インチであってもよく、2平方インチまたは50平方インチの大きさ等であってもよい。
【0050】
非常に好ましい実施形態では、グラフェン層は、化学気相成長(CVD)法を用いて金属触媒上に成長させた単層または多層のグラフェンである。金属触媒は、例えば、Cu、Ni、またはPtからなる金属フィルムまたは金属箔である。これらの金属触媒上で成長したグラフェン層の別の基板への転写は、以下に詳述する技術の影響を受ける場合がある。グラフェン層は、基板または中間層上で直接成長させることもできる。この場合は、転写工程は不要である。グラフェン層は、熱昇華プロセスを用いてSiC基板上に成長させることも可能であり、必要に応じてターゲット基板上に転写してもよい。あるいは、基板は、グラファイトの単結晶であるキッシュグラファイトから剥離された積層基板であるか、または高配向性熱分解グラファイト(HOPG)である。
【0051】
グラフェン層は改質なしで使用することが好ましいが、グラフェン層の表面は改質することができる。例えば、水素、酸素、窒素、NO2、またはこれらの組み合わせのプラズマで処理することができる。グラフェン層の酸化により、ナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成が促進される場合もある。例えば、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長前に純度を確保するために、グラフェン層を前処理することが好ましい場合もある。HFまたはBOE等の強酸での処理が選択肢として挙げられる。
【0052】
グラフェン層は、その導電率を向上させるためにドープされていてもよい。グラフェン層は電極として使用してもよいため、ナノワイヤ/ナノピラミッドの底部とのオーミック接触を向上させるためにドープされてもよい。
【0053】
表面の不純物を除くために、イソプロパノール、アセトン、またはn-メチル-2-ピロリドンでグラフェン層を洗浄してもよい。
【0054】
洗浄したグラフェン表面を、ドーピングによってさらに改質することができる。FeCl3、AuCl3、またはGaCl3の溶液を、ドーピング工程で用いることができる。
【0055】
グラフェン層は、それらの優れた光学的、電気的、熱的、および機械的特性で周知となっている。これらは非常に薄いが非常に強く、軽く、フレキシブルであり、不浸透性である。本発明において最も重要なことは、これらが電気的および熱的に伝導性が高く、フレキシブルであり、透明であることである。よって重要なことに、グラフェン層は、基板または中間層から成長したナノワイヤやナノピラミッドに対し、電極として機能し得る。したがって、一般的には、グラフェン層は、ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部と電気的に接触している。
【0056】
[基板]
ナノワイヤおよびナノピラミッドは基板から成長するため、基板は結晶性の基板であることが好ましい。適切な基板としては、サファイア、Si、SiC、Ga23、または、GaN、AlN、GaAs等のIII-V族半導体基板が挙げられる。Ga23は、β-Ga23であることが好ましい。適切なIII-V族半導体は、ナノワイヤまたはナノピラミッドとの関連において、以下に説明するものである。
【0057】
さらに、III-V族半導体の選択肢について、III族の選択肢は、B、Al、Ga、In、およびTlである。ここで好ましい選択肢は、Ga、Al、およびInである。V属の選択肢は、N、P、As、Sbである。好ましい選択肢は、Nである。もちろん、2つ以上のIII族元素および/または2つ以上のV族元素を前記基板層に用いることができる。基板層に用いる好ましいIII-V族半導体化合物としては、BN、AlAs、GaSb、GaP、GaN、AlN、AlGaN、AlGaInN、GaAs、InP、InN、InGaN、InGaAs、InSb、InAs、またはAlGaAsが挙げられる。選択肢としては、Nと組み合わせたAl、Ga、およびInをベースとする化合物が挙げられる。GaN、AlGaN、AlInGaN、またはAlNの使用が非常に好ましい。これらの材料は、強いイオン力を持ち、その結果、リモートエピタキシーを促進することができる(後述)。AlNが特に好ましいが、これは、イオン力が強いだけでなく、UVC透過性があるため、フリップチップUVC LEDにより適しているためである。AlNは、例えば、サファイアよりもはるかに強いイオン力を有し、これにより、グラフェン上のIII-V族アイランド成長のリモートエピタキシーの収率を高めることができる。
【0058】
上記の基板材料の混合物を使用してもよい。特に好ましい選択肢としては、サファイア、GaN、GaN/サファイア;AlGaN、AlGaN/サファイア;AlN、AlN/サファイア、Si;GaN/Si;AlGaN/Si;AlN/Si、SiC;GaN/SiC;AlGaN/SiC;AlN/SiCが挙げられる。非常に好ましい選択肢として、Ga23または(AlxGa1-x23が挙げられる。AlN/サファイア、AlN/Si、またはAlN/SiCの組み合わせが特に好ましく、中でも、AlN/サファイアが好ましい。上記の命名では、まとまり内の最初の化合物(すなわち「/」の前の化合物)は、一般的には中間層であり、2番目の化合物は、中間層の下にある基板である。中間層については、以下で詳述する。
【0059】
基板は結晶性で、表面に垂直な結晶方位が[111]、[110]、または[100]であってもよい。
【0060】
結晶方位[0001]のサファイアの使用が特に好ましい。
【0061】
特定の実施形態では、サファイア、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板を使用することが好ましい(特に、III-V族半導体基板)。これにより、中間層が存在しない場合に、グラフェン層を介したリモートエピタキシーをもたらし、グラフェンの上面のナノ構造の成長に影響を与えることができるからである。特定の実施形態では、中間層が存在しない場合には特に、III-V族半導体基板が好ましい(例えば、AlN)。
【0062】
特定の実施形態では、基板は、中間層がある場合には、サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板から選択され、中間層がない場合には、サファイア、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板から選択される(これらは、リモートエピタキシャル効果をもたらし得るため)。
【0063】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、
基板と、
前記基板の上面に直接設けられた任意のIII-V族半導体中間層と、
前記中間層が存在する場合にはその上面に直接設けられるか、または前記基板の上面に直接設けられたグラフェン層と、を備え、
前記グラフェン層を貫通する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板または前記中間層から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含み、
中間層がある場合には、前記基板は、サファイア、Si、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板から選択され、中間層がない場合には、前記基板は、サファイア、SiC、Ga23、またはIII-V族半導体の基板から選択される、構造体を提供する。
【0064】
[中間層/リモートエピタキシー/ナノアイランド]
特定の実施形態では、基板は、その上面に配置された中間層を有する。このような中間層は、基板とグラフェン層の間に配置される。言い換えれば、構造体は、基板、中間層、およびグラフェン層を、この順で含む。
【0065】
中間層は、少なくとも1つのIII-V族化合物から形成されている。半導体基板がIII-V族半導体基板である場合には、中間層は異なるIII-V族化合物から形成される。一般的には、中間層は結晶質である。
【0066】
III族の選択肢は、B、Al、Ga、In、およびTlである。ここで好ましい選択肢は、Ga、Al、およびInである。V族の選択肢は、N、P、As、Sbである。好ましい選択肢はNである。もちろん、中間層に2つ以上のIII族元素および/または2つ以上のV族元素を用いることも可能である。中間層に用いる好ましい化合物としては、BN、AlAs、GaSb、GaP、GaN、AlN、AlGaN、AlGaInN、GaAs、InP、InN、InGaN、InGaAs、InSb、InAs、またはAlGaAsが挙げられる。選択肢としては、Nと組み合わせたAl、Ga、およびInをベースとする化合物が挙げられる。GaN、AlGaN、AlInGaN、またはAlNの使用が非常に好ましい。これらの材料は、強いイオン力を持ち、その結果、リモートエピタキシーを促進することができる(以下の記載を参照)。AlNが特に好ましいが、これは、イオン力が強いだけでなく、UVC透過性があるため、フリップチップUVC LEDにより適しているためである。AlNは、例えば、サファイアよりもはるかに強いイオン力を有し、これにより、グラフェン上のIII-V族アイランド成長のリモートエピタキシーの収率を高めることができる。
【0067】
特定の実施形態では、中間層と、グラフェン層の上面に成長した半導体ナノ構造との間に、リモートエピタキシャル関係がある。別の実施形態では、基板と、グラフェン層の上に成長した半導体ナノ構造との間に、リモートエピタキシャル関係がある。
【0068】
特定の実施形態では、中間層は、200未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは75nm未満、例えば、約50nmの厚さを有する。適切な厚さの範囲は、1~200nm、好ましくは10~100nm、例えば25~75nmである。薄い中間層を使用することで、全体が高価な半導体材料でできた基板を使用することなく、リモートエピタキシャル効果を起こすことが可能となる。
【0069】
酸化物または窒化物のマスクは必ずしも完全に選択的である必要はなく、マスクの上面に多少のナノワイヤ/ナノピラミッド/ナノアイランドを成長させることが可能である。このマスクは一般的には非晶質であるため、面内秩序のないランダムな核生成のため、ナノワイヤ/ナノピラミッドは低品質となる可能性がある。また、孔の外側にあるグラフェン層の上面での成長(いわゆる「ナノアイランド」の成長)を防ぐことが困難な場合も多い。そのため、グラフェン層またはマスク層の上面で成長するIII-V族構造の高い結晶性を確保することが必要である。このことは、「合体」の場合、すなわち、孔から成長した位置決めされたナノワイヤ/ナノピラミッド同士が結合する場合に特に重要である。
【0070】
リモートエピタキシーとは、非常に薄いグラフェン層を用いて、ナノ構造(あるいはさらに薄い膜)をエピタキシー成長させる現象であり、グラフェンが多結晶であっても、ナノ構造の結晶方位はグラフェン層ではなくその下にある基板に一致する。したがって、グラフェン層が基板または中間層とナノ構造との間の緩衝材として機能しているにもかかわらず、ナノ構造は、グラフェンではなく基板または中間層を反映した結晶方向/ファセット方向で成長する。これを「リモートエピタキシー」と呼んでいる。結果として得られるナノワイヤアレイは、たとえグラフェンが多結晶であっても、ファセットが平行でより規則的なものとなる。これにより、材料の様々な特性が向上する。
【0071】
ナノワイヤ/ナノピラミッドは、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの結晶方位およびファセット方位が、結晶性基板/中間層によって方向付けられるように成長する。したがって、結晶方位およびファセット方位は、全てのナノワイヤ/ナノピラミッドで同一である。
【0072】
リモートエピタキシーが起こると、成長中のナノ構造は、その結晶(よって、ならびにファセット)方位をグラフェン層の下にある結晶質の層から採用する。そのため、ナノ構造は、平行なファセットを有すると考えることができる。一方、ナノ構造が多結晶グラフェンからエピタキシャル成長する場合、得られるナノワイヤのファセットは、異なるドメイン/粒子内でランダムに配向している、すなわち、六角ナノワイヤの側面(ファセット)は、1つのグラフェンドメイン/粒子内では平行になり得るが、隣接するグラフェンドメイン/粒子内の六角ナノワイヤの側面(ファセット)に対しては、平行ではなくランダムな配向となる。ナノワイヤの断面は、六角形でも四角形でもよく、好ましくは六角形である。リモートエピタキシーは、全ての結晶方位およびファセット方位が同じである場合に起こる。
【0073】
好ましくはグラフェンの上面に追加のホールマスクがない場合における中間層の使用は、グラフェンホールマスクの上面で起こるナノアイランド化のためのより質の高い成長をもたらすことができる特定の実施形態である。したがって、特定の実施形態では、構造体は、グラフェンホールマスクを含み、任意にグラフェンの上面に追加のホールマスク(例えば、酸化物/窒化物マスキング層)がなく、基板およびグラフェンの間に中間層、好ましくはAlNを備えている。したがって、特定の実施形態では、酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層は存在しない。この設定によれば、1)選択性の向上、および、2)完全に回避することは不可能な場合が多いグラフェンホールマスク上のIII-V族アイランド化に対するリモートエピタキシーの誘発という利点がある。
【0074】
このリモートエピタキシーにより、III-V族アイランド化(すなわち、グラフェン上に形成されたナノアイランド)は、III-V族ナノワイヤ/ナノピラミッドと面内エピタキシャルであるため、ナノワイヤ/ナノピラミッドが合体した場合にも欠陥が生じない。したがって、特定の実施形態では、本発明の構造体は、グラフェン上でリモートエピタキシーによって核生成されたIII-V族ナノアイランド(すなわち、グラフェン内の孔を介して中間/基板層上で成長していないもの)を含む。一般的には、ナノアイランドは、ナノワイヤ/ナノピラミッドと同じ材料で形成される。これは、ナノアイランドの成長が、NW/NPの成長と同時に起こるためである。よって、NWおよびNPに対するIII-V族材料の定義は、ナノアイランドにも当てはまる。「ナノアイランド」は、ナノピラミッド、ナノワイヤ、ナノメサ、およびその他の構造を包含し、本明細書では、当該構造をグラフェンの孔内で成長したナノワイヤ/ナノピラミッドと区別するために使用している。好ましくは、前記ナノアイランドのエピタキシー、結晶方位、およびファセット方位は、中間層によって方向付けられる。したがって、一般的には、ナノアイランドの結晶方位は、(孔内で成長した)ナノワイヤおよびナノピラミッドの結晶方位、ならびに中間層の結晶方位と一致する。
【0075】
リモートエピタキシーを用いることで、最終的なデバイスの電気/光学特性を向上させることができる。
【0076】
[合体]
位置決めされたナノワイヤ/ナノピラミッドの合体によって大面積の構造を形成することが有益となり得る。合体とは、成長過程における2つ以上のナノ構造が側面から結合することを指し、一般的には、これらの間で成長した「アイランド」ナノ構造の不可避的な結合を指す。これにより、2Dまたは3D構造となる。このような合体構造は、一般的には、表面にピラミッド型の先端を持つ波形の(非平面的な)薄膜に似ている、すなわち、合体構造は一般的には隆起している。特定の実施形態では、合体構造は平面ではない。そのため、一般的には、基板上で成長した平面的な薄膜とは異なる。合体のためには、ナノ構造体は、空隙の形成や転位の大部分を排除できるように、好ましくはそれらの結晶格子が同一方位でなければならない。すなわち、合体するナノワイヤ/ナノピラミッドおよび結合するナノアイランドは、好ましくは、基板/中間層に対してほぼ同一のエピタキシャル関係でなければならない。
【0077】
合体のためには、グラフェンの上面に追加のマスク層が存在しないこと、すなわち、酸化物/窒化物/フッ化物のマスク層が存在しないことが好ましいが、これは、このようなマスク層が非晶質であり、合体構造が低結晶性となる可能性があるためである。
【0078】
特定の実施形態では、ナノワイヤ/ナノピラミッドの少なくとも一部または全部が合体している。合体構造には、ナノワイヤ/ナノピラミッドの間で成長したナノ構造、例えば、ナノアイランドが、グラフェンそのものの上に含まれる場合がある。
【0079】
グラフェンホールマスクを介したリモートエピタキシーを促進する基板/中間層の使用は、合体に特に有益である。なぜなら、ナノワイヤ/ナノピラミッドの結晶方位およびファセット方位が基板/中間層と整合するだけでなく、グラフェン上、すなわちホールの外側で形成されたあらゆるナノアイランドもまた、リモートエピタキシーによって基板/中間層と格子整合するからである。したがって、グラフェン上に形成されたナノアイランドは、ナノワイヤ/ナノピラミッドを備えた合体構造の一部を成すことができる。このリモートエピタキシー効果により、合体構造は、高い結晶性を示し、かつ実質的に欠陥がない。一般的に、転位や積層欠陥はほとんど観察されないか、まったく観察されない。リモートエピタキシーを行わないと、ナノワイヤ/ナノピラミッドが合体した際に、当該ナノワイヤ/ナノピラミッドの間に、欠陥のある不「活性」領域(dead “active” region)ができてしまう。
【0080】
[マスキング層]
前記グラフェン層の上面に、マスキング層を任意に堆積させてもよい。酸化物、窒化物、またはフッ化物のマスキング層、好ましくは、半金属酸化物または半金属窒化物等の金属酸化物、金属窒化物、または金属フッ化物の層が、グラフェン層の上に任意に堆積される。これは、原子層堆積、スパッタリング、電子ビーム、および前駆体層の堆積との熱蒸着による接続によって達成することができる。使用される酸化物は、金属、好ましくは半金属(Si等)ベースであることが好ましい。マスキング層に使用されるカチオンの性質は、Al、Si、または遷移金属、特に、第一3d遷移金属(Sc-Zn)であってもよい。
【0081】
好ましい酸化物としては、SiO2、MoO2、TiO2、Al23、W23、HfO2が挙げられる。好ましい窒化物としては、Si34、BN(例えば、h-BN)、およびAlNが挙げられる。好ましいフッ化物としては、MgF2またはCaF2が挙げられる。中でも特に、前記マスキング層は、酸化ケイ素または窒化珪素である。
【0082】
第1マスキング層の上面に第2マスキング層を塗布することは、特に、下層のマスキング層としてAl23を採用した場合には、本発明の範囲内である。ここでも、この層に使用される材料は、金属酸化物、金属フッ化物、または遷移金属、AlまたはSiの窒化物等の、酸化物、フッ化物、または窒化物である。シリカの使用が好ましい。第2マスキング層が第1マスキング層と異なることが好ましい。当該第2マスキング層には、原子層堆積法を適用するのが適切であるが、上述したように、第1マスキング層について述べたのと同じ手法を採用することもできる。しかしながら、マスキング層が1層のみ存在することが好ましい。
【0083】
各マスキング層の厚さは、5~100nmであってもよく、10~50nm等でもよい。このような層は、2層、3層、または4層のマスキング層等、複数存在してもよい。
【0084】
前記マスキング層は、好ましくは、連続しており、グラフェン層全体を覆う。マスキング層の1つの重要な特徴は、それがグラフェン層上のナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成を防止することである。
【0085】
マスキング層は、ナノワイヤまたはナノピラミッドがマスキング層上で核生成できないように、滑らかで欠陥のないものとすべきである。したがって、マスキング層があることで、選択性を向上することができる。また、これによりグラフェン層が損傷から保護される。グラフェン層は電極として機能するため、その層に何らかの損傷があると、電荷を運ぶ能力が妨げられる。マスク層は、高温のナノワイヤ成長プロセス中および/またはデバイス処理中にグラフェンを損傷から保護する。また、マスキング層は、グラフェン層のドーピングを制御するために使用することもできる。
【0086】
また、コアシェル構造の場合、マスキング層があることで、短絡も防止できる場合がある。マスキング層の孔内でナノワイヤを成長させ、その後、そのナノワイヤ上にシェルを成長させると、そのシェルの基底部がマスキング層に接触する。したがって、マスキング層は、シェルとその下のグラフェン層との短絡を防止する。もしマスキング層がなければ、ナノワイヤ上のコア成分およびシェル成分の両方がグラフェン層と電気的に接触することになり、電気的短絡のおそれがある。
【0087】
[パターニング]
位置決めされたナノワイヤまたはナノピラミッドは、基板または中間層から成長する必要がある。つまり、基板または中間層の上面に存在する、マスキング層およびグラフェン層等の全ての層を貫通する孔をパターニングする必要がある。これらの孔の形成は、よく知られたプロセスであり、電子ビームリソグラフィーまたはその他の公知の技術を用いて行うことができる。マスクの孔のパターンは、光/電子ビームリソグラフィー、ナノインプリント等の従来のリソグラフィー技術を用いて容易に作製できる。ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長のための基板表面または中間層表面上に規則的な核生成部位のアレイを生成するために、集束イオンビーム技術を使用してもよい。マスキング層やシード層に形成された孔は、所望の任意のパターンで配置することができる。
【0088】
孔の直径は、好ましくは500nm以下であり、100nm以下等であり、理想的には20~200nm以下である。孔の直径は、ナノワイヤまたはナノピラミッドのサイズの最大直径を設定するため、孔のサイズとナノワイヤまたはナノピラミッドの直径は一致するはずである。しかしながら、孔の大きさよりも大きなナノワイヤまたはナノピラミッドの直径は、成長パラメータを変えるか、コアシェル型のナノワイヤまたはナノピラミッドの形状を採用することで実現できる。
【0089】
孔の数は、基板(および任意に中間層)の面積と、所望のナノワイヤまたはナノピラミッドの密度の関数である。
【0090】
孔の形状は限定されない。これらは円形であってもよいが、孔は、三角形、長方形、楕円形等、他の形状であってもよい。
【0091】
一実施形態では、マスキング層にエッチングされた孔は、その下のグラフェン層にエッチングされた孔よりも大きく、グラフェン層の一部がマスキング層の下に露出している。例えば、マスキング層およびグラフェン層のそれぞれに、大きな円形の孔と小さな円形の孔をエッチングしてもよい。これは、図5に示したように、グラフェン層がナノワイヤとよりよく接触できるように、潜在的に重要である。グラフェン層の小さな孔内で成長したナノワイヤは、成長するとこれらの孔を埋めることになる。その後、ナノワイヤにシェルを適用すると、そのシェルの基底部がグラフェン層の上面に成長する。このようにして、ナノワイヤの基底部がグラフェン層に接触し、電気的接触がより強くなる。
【0092】
ナノワイヤまたはナノピラミッドが孔内で成長し始めると、これにより、基板に対して実質的に垂直なナノワイヤまたはナノピラミッドの初期成長が確保される傾向がある。これは、本発明のさらに好ましい特徴である。孔1つ当たり、1つのナノワイヤまたはナノピラミッドが成長することが好ましい。
【0093】
[ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長]
商業的に重要なナノワイヤまたはナノピラミッドを調製するために、これらは基板上(または、存在する場合には、中間層上)でエピタキシャル成長することが好ましい。また、前記基板(または中間層)に垂直に成長することが理想的であり、したがって、[111](立方晶構造の場合)方向または[0001](六方晶構造の場合)方向に成長することが理想的である。
【0094】
成長するナノピラミッドにおいて、三角形の面は、通常、(1-101)面または(1-102)面で終端している。(1-101)ファセットを有する三角形の側面は、先端の単一の点に収束するか、または先端に収束する前に新しいファセット(1-102)面を形成し得る。場合によっては、ナノピラミッドは、その頂部が{0001}面で終端し、切頂されている。
【0095】
成長しているナノワイヤまたはナノピラミッドと基板/中間層との間に格子不整合がないことが理想的であるが、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、例えば、薄膜と比べてはるかに多くの格子不整合を収容できる。基板または中間層は、ナノワイヤ/ナノピラミッドと同様にIII-V族半導体とすることができるため、格子不整合を極めて少なくすることが可能である。
【0096】
ナノワイヤ/ナノピラミッドの成長は、フラックス比によって制御することができる。ナノピラミッドは、例えば、高V族フラックスが採用される場合に推奨される。
【0097】
成長したナノワイヤは、本質的に、その幅または直径がナノメートル寸法であり、かつその長さが一般的には数百nm~数μmの範囲内である一次元形態であるといえる。理想的には、ナノワイヤの直径は、500nm以下である。理想的には、ナノワイヤの直径は、50~500nmであるが、前記直径は、数マイクロメータを超えてもよい(マイクロワイヤと呼ばれる)。
【0098】
よって、本発明において成長させるナノワイヤの長さは、250nmから数マイクロメータの範囲であってもよく、例えば、最大5マイクロメータでもよい。好ましくは、ナノワイヤの長さは少なくとも1マイクロメータである。複数のナノワイヤを成長させる場合、全てのナノワイヤがこれらの寸法要件を満たすことが好ましい。基板または中間層上に成長させるナノワイヤの少なくとも90%は、長さが少なくとも1マイクロメータであることが理想的である。実質的に全てのナノワイヤの長さが、少なくとも1マイクロメータであることが好ましい。
【0099】
ナノピラミッドは、高さ250nm~1マイクロメータであってもよく、高さ400~800nm等であってもよく、約500nm等であってもよい。
【0100】
さらに、成長したナノワイヤまたはナノピラミッドが同じ寸法を有することが好ましく、例えば、その差が互いの10%以内であることが好ましい。よって、基板/中間層上のナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも90%(好ましくは、実質的に全て)が、同一の直径および/または同一の長さ(すなわち、その差が互いの直径/長さの10%以内)であることが好ましい。したがって、本質的には、当業者は、均質性と、実質的に寸法が同一であるナノワイヤまたはナノピラミッドを求めている。
【0101】
ナノワイヤまたはナノピラミッドの長さは、成長プロセスを実行する時間の長さによって制御されることが多い。一般的に、プロセスが長い程、ナノワイヤは(かなり)長くなる。
【0102】
ナノワイヤまたはナノピラミッドは、一般的には、六角形の断面形状を有する。ナノワイヤの断面直径(すなわち、その厚さ)は、25nm~数マイクロメータであってもよい。上述の通り、直径は、理想的には、ナノワイヤの大部分にわたって一定である。ナノワイヤの直径は、以下にさらに説明するように、基板の温度および/またはナノワイヤの製造に使用される原子の割合等の成長パラメータを操作することによって制御可能である。
【0103】
さらに、ナノワイヤまたはナノピラミッドの長さおよび直径は、それらが形成される温度に影響され得る。温度が高くなるほど、アスペクト比が高くなる(すなわち、より長いおよび/またはより細いナノワイヤ)。当業者は、成長プロセスを操作して、所望の寸法のナノワイヤまたはナノピラミッドを設計することができる。
【0104】
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、少なくとも1つのIII-V化合物から形成される。ナノワイヤまたはナノピラミッドに関して本明細書に記載するIII-V族化合物は、III-V族半導体基板にも適している。
【0105】
III族の選択肢は、B、Al、Ga、In、およびTlである。ここで好ましい選択肢は、Ga、Al、およびInである。
【0106】
V族の選択肢は、N、P、As、Sbである。これらは全て好ましい。
【0107】
もちろん、2つ以上のIII族元素および/または2つ以上のV族元素を用いることができる。ナノワイヤまたはナノピラミッド製造用の好ましい化合物としては、AlAs、GaSb、GaP、GaN、AlN、AlGaN、AlGaInN、GaAs、InP、InN、InGaN、InGaAs、InSb、InAs、またはAlGaAsが挙げられる。Nと組み合わせたAl、Ga、およびInをベースとする化合物が選択肢として挙げられる。GaN、AlGaN、AlInGaN、またはAlNの使用が非常に好ましい。
【0108】
ナノワイヤまたはナノピラミッドは、(後述の任意のドーピング原子と共に)Ga、Al、In、およびNからなることが最も好ましい。
【0109】
GaN等の二元材料の使用が可能であるが、ここでは、AlGaN等、2つのIII族カチオンと1つのV族アニオンが存在する三元ナノワイヤまたは三元ナノピラミッドを使用することが好ましい。したがって、この三元化合物は、式XYZ(式中、XはIII族元素であり、YはXとは異なるIII族であり、ZはV族元素である)で表されるものであってもよい。XYZにおけるYに対するXのモル比は、好ましくは0.1~0.9であり、すなわち、前記式は、好ましくはXx1-xZ(式中、下付き文字xは0.1~0.9)である。
【0110】
四元系も使用することが可能であり、例えば、式Ax1-xy1-y(式中、AおよびBはIII族元素であり、CおよびDはV族元素である)またはAxy1-x-yD(式中、A、B、およびCはIII族元素であり、DはV族元素である)で表すことができる。ここでも、下付き文字xとyは、一般的には、0.1~0.9である。他の選択肢は、当業者には明らかであろう。
【0111】
[ドーピング]
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、例えば、LEDにおけるこれらの使用を可能にするために、pn接合またはpin接合を含むことができる。したがって、本発明のNWまたはナノピラミッドは、p型半導体とn型半導体領域との間に、非ドープ真性半導体領域を任意に備えている。真性領域は、材料の単一層からなるか、または複数の量子井戸および障壁からなるヘテロ構造からなる領域であってもよい。
【0112】
したがって、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、ドープされていることが好ましい。ドーピングは、一般的には、例えば、MBEまたはMOVPE成長中に、ナノワイヤに不純物イオンを導入することを伴なう。ドーピングレベルは、約1015/cm3~1020/cm3の範囲で制御することができる。ナノワイヤまたはナノピラミッドは、所望の通りに、p型ドープまたはn型ドープすることができる。
【0113】
真性半導体にドナー(アクセプタ)不純物をドープすることにより、n(p)型半導体は、正孔(電子)濃度よりも高い電子(正孔)濃度を有する。III-V族化合物の好適なドナー(アクセプタ)は、Te、Sn(Be、Mg、およびZn)とすることができる。Siは、両性とすることができ、Siが向かう部位、成長表面の方位および成長条件に応じて、ドナーまたはアクセプタのいずれかとなり得る。ドーパントは成長プロセス中に導入するか、またはナノワイヤもしくはナノピラミッドの形成後にイオン注入によって導入できる。
【0114】
LEDの外部量子効率(EQE)をより高くするためには、キャリア注入効率をより高くする必要がある。しかしながら、AlGaN合金中のAl含有量の増加に伴ないMgアクセプタのイオン化エネルギーが増加すると、Al含有量の高いAlGaN合金において、より高い正孔濃度を得ることが困難となる。正孔注入効率(特に、Al含有量の高いクラッド層/バリア層において)をより高くするために、本発明者らは、個々に、あるいは一緒に使用することができるいくつかの戦略を考案している。
【0115】
よって、ドーピングプロセスにおいて、解決すべき課題がある。本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、Alを含むことが好ましい。Alの使用は、高Al含有量が高バンドギャップをもたらし、ナノワイヤまたはナノピラミッドの活性層からのUV-C LED発光を可能にし、および/またはドープされたクラッド層/バリア層での放出光の吸収が回避されるため有益である。バンドギャップが高ければ、ナノワイヤまたはナノピラミッドのこの部分により紫外光が吸収される可能性は低い。したがって、ナノワイヤまたはナノピラミッドにAlNまたはAlGaNを使用することが好ましい。
【0116】
しかしながら、高い導電率(高い正孔濃度)を得るためのAlGaNまたはAlNのp型ドーピングは、MgまたはBeアクセプタのイオン化エネルギーがAlGaN合金中のAl含有量の増加と共に増加するため困難である。本発明者らは、平均Al含有量のより高いAlGaN合金において導電率を最大にする(すなわち、正孔濃度を最大にする)ため、様々な解決策を提案している。
【0117】
ナノワイヤまたはナノピラミッドがAlNまたはAlGaNを含む場合、p型ドーパントの導入により高導電率を得ることが課題である。1つの解決策は、短周期超格子(SPSL)によるものである。この方法では、Al組成のより高い均一なAlGaN層の代わりに、Al含有量の異なる交互に重なる層からなる超格子構造体を成長させる。例えば、Al含有量が35%のクラッド層を、例えば、交互に重なるAlxGa1-xN:Mg/AlyGa1-yN:Mg(x=0.30/y=0.40)からなる、厚さ1.8~2.0nmのSPSLで置き換えることができる。Al組成のより低い層におけるアクセプタの低イオン化エネルギーにより、クラッド層のバリア高さを損なうことなく、正孔注入効率が向上する。この効果は、界面の分極場によりさらに増強される。SPSLに続いて、より良好な正孔注入のために、高度にp型ドープされたGaN:Mg層を設けることができる。
【0118】
より一般的には、本発明者らは、p型ドープされたAlzGa1-zN合金(式中、x<z<y)の代わりに、p型ドープされたAlxGa1-xN/AlyGa1-yN短周期超格子(すなわち、AlxGa1-xNおよびAlyGa1-yNが交互に重なる薄層)であって、Alモル分率xがyより低いものを、ナノワイヤまたはナノピラミッド構造に導入することを提案している。xは0といった低い値(すなわち、GaN)であってもよく、yは1といった高い値(すなわち、AlN)であってもよいことが理解されるであろう。超格子周期は、好ましくは5nm以下、2nm等とすべきであり、この場合、超格子は単一のAlzGa1-zN合金(zは、xおよびyの層厚加重平均である)として機能するが、Al含有量のより低いAlxGa1-xN層に対するp型ドーピング効率がより高いため、AlzGa1-zN合金よりも高い導電率を有する。
【0119】
p型ドープされた超格子を有するナノワイヤまたはナノピラミッドでは、p型ドーパントがMgまたはBe等のアルカリ土類金属であることが好ましい。
【0120】
Al含有ナノワイヤ/ナノピラミッドのドーピングの問題を解決するためのさらなる選択肢は、同様の原理に基づく。Al含有量が少ないかまたはAlを含有しない薄いAlGaN層を含む超格子の代わりに、ナノワイヤまたはナノピラミッド内のAlGaNの成長方向にAl含有量(モル分率)の勾配を有するナノ構造を設計することができる。したがって、ナノワイヤまたはナノピラミッドが成長するにつれて、Al含有量を減少/増加させ、その後、再度増加/減少させ、ナノワイヤまたはナノピラミッド内にAl含有量勾配を生じさせる。
【0121】
これは、分極ドーピングと呼ばれる場合がある。一方法において、前記層において、GaNからAlNに向かって、またはAlNからGaNに向かって勾配を付与する。GaNからAlNへの勾配領域およびAlNからGaNへの勾配領域は、それぞれ、n型導電性およびp型導電性をもたらし得る。これは、隣接ダイポールと比較して大きさの異なるダイポールの存在により生じ得る。GaNからAlNへの勾配領域およびAlNからGaNへの勾配領域は、それぞれ、n型ドーパントおよびp型ドーパントでさらにドーピングすることができる。
【0122】
好ましい実施形態では、ドーパントとしてBeを使用し、AlGaNナノワイヤにおいてp型ドーピングが用いられる。
【0123】
よって、一選択肢として、GaNナノワイヤ/ナノピラミッドから開始し、Alを増加させ、Ga含有量を徐々に減少させて、成長厚がおそらく100nmを超えるAlNを形成することが挙げられる。この勾配領域は、結晶面、極性、ならびに、勾配領域においてAl含量が減少しているか増加しているかに応じて、p型またはn型領域としてそれぞれ機能し得る。次に、反対のプロセスを実施し、GaNをもう一度生成し、n型またはp型領域(先に調製したものとは反対の領域)を生じさせる。これらの勾配領域に、Si等のn型ドーパントおよびMgまたはBe等のp型ドーパントをさらにドープし、電荷キャリア密度の高いn型またはp型領域をそれぞれ得ることが可能である。結晶面および極性は、当該技術分野において公知であるように、ナノワイヤ/ナノピラミッドのタイプによって決定される。
【0124】
したがって、別の態様において、本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、Al、Ga、およびN原子を含み、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長中に、Al濃度を変化させ、ナノワイヤまたはナノピラミッド内にAl濃度勾配を生じさせる。
【0125】
第3の実施形態では、Al含有ナノワイヤまたはAl含有ナノピラミッドにおけるドーピングに関する課題に、トンネル接合を用いて対応する。トンネル接合は、2つの導電性材料間の、薄層等の障壁である。本発明において、障壁は、半導体デバイスの中央のオーム電気接点として機能する。
【0126】
一方法においては、薄い電子ブロック層が活性領域の直後に挿入され、その後、活性層に使用されるAl含有量より高いAl含有量を有するp型ドープされたAlGaNクラッド層が続く。p型ドープされたクラッド層の後に、高濃度にp型ドープされたクラッド層と非常に薄いトンネル接合層が続き、さらに、n型ドープされたAlGaN層が続く。トンネル接合層は、p-AlGaN中の価電子帯から電子がn-AlGaN中の伝導帯へとトンネルし、p-AlGaN層に注入される正孔を生成するように選択される。
【0127】
より一般的には、ナノワイヤまたはナノピラミッドが、非常に薄いAl層等のAl層により分離された、ドープGaNの2つの領域(1つのp型ドープ領域と1つのn型ドープ領域)を有することが好ましい。Al層の厚さは、数nmであってもよく、1~10nm等であってもよい。高濃度にドープされたInGaN層を含むトンネル接合としての機能を果たすことができる材料の選択肢は他にもあることが理解されるであろう。
【0128】
ドープGaN層をAl層上に成長させることが可能であることは、特に驚くべき事項である。
【0129】
したがって、本発明は、一実施形態において、Al層により分離された、p型ドープ(Al)GaN領域およびn型ドープ(Al)GaN領域を有するナノワイヤまたはナノピラミッドを提供する。
【0130】
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、放射状または軸方向にヘテロ構造形態を有するように成長させることができる。例えば、軸方向にヘテロ構造化されたナノワイヤまたはナノピラミッドの場合、p型ドープコアを最初に成長させ、次に、n型ドープコアを続けて成長させる(またはその逆)ことによって、pn接合を軸方向に形成することができる。放射状にヘテロ構造化されたナノワイヤまたはナノピラミッドの場合、p型ドープナノワイヤコアまたはp型ドープナノピラミッドコアを最初に成長させた後、n型ドープ半導体シェルを成長させる(またはその逆)ことにより、pn接合を放射状に形成することができる。前記コアは、軸方向にヘテロ構造化することもでき、前記シェルは、放射状にヘテロ構造化することもできる。真性シェルは、pin型ナノワイヤの場合、ドープ領域間に配置することができる。NWまたはナノピラミッドは、軸方向または放射状に成長し、よって、第1のセクションおよび第2のセクションから形成される。これら2つのセクションに異なるドーピングを行い、pn接合またはpin接合を生成する。NWまたはナノピラミッドの第1または第2のセクションは、p型ドープセクションまたはn型ドープセクションである。
【0131】
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、エピタキシャル成長することが好ましい。それらは、共有結合、イオン結合、または準ファンデルワールス(quasi van der Waals)結合を介して、下地基板/中間層に結合する。したがって、基板/中間層とナノワイヤの基底部との接合部において、ナノワイヤ内に結晶面がエピタキシャルに形成される。これらは、同一の結晶学的方向に互いに積み重なり合うことにより、ナノワイヤをエピタキシャル成長させる。ナノワイヤまたはナノピラミッドは、鉛直に成長することが好ましい。本明細書において使用する鉛直という用語は、ナノワイヤまたはナノピラミッドが、支持体に対して垂直に成長することを意味する。実験科学では、成長角度は正確に90°でなくてもよいが、鉛直という用語は、ナノワイヤまたはナノピラミッドが、鉛直/垂直方向から約10°の範囲内、例えば、5°の範囲内にあることを意味することが理解されるであろう。共有結合、イオン結合、または準ファンデルワールス結合を介したエピタキシャル成長により、ナノワイヤまたはナノピラミッドと基板/中間層とが密着することが期待される。
【0132】
基板には、複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが含まれることが理解されるであろう。ナノワイヤまたはナノピラミッドは、互いにほぼ平行に成長することが好ましい。したがって、ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは実質的それらの全てが、基板/中間層の同一面から同一方向に成長することが好ましい。
【0133】
基板内にはエピタキシャル成長が起こり得る多くの面が存在することが理解されるであろう。実質的に全てのナノワイヤまたはナノピラミッドが、同一面から成長することが好ましい。その面が、基板/中間層に平行であることが好ましい。理想的には、成長したナノワイヤまたはナノピラミッドは、実質的に平行である。ナノワイヤまたはナノピラミッドは、基板/中間層に対して実質的に垂直に成長するのが好ましい。
【0134】
本発明のナノワイヤは、立方晶構造を有するナノワイヤまたはナノピラミッドの場合は[111]方向に、六方晶構造を有するナノワイヤまたはナノピラミッドの場合は[0001]方向に成長することが好ましい。成長するナノワイヤまたはナノピラミッドの結晶構造が立方晶である場合、ナノワイヤまたはナノピラミッドと基板/中間層との間の(111)界面が、軸方向成長が生じる面である。ナノワイヤまたはナノピラミッドが六方晶構造を有する場合、ナノワイヤまたはナノピラミッドと基板/中間層との間の(0001)界面が、軸方向成長が生じる面である。面(111)および(0001)は、いずれもナノワイヤの同一の(六方晶の)面を示すが、成長するナノワイヤの結晶構造に応じて面の命名法が異なるだけである。
【0135】
ナノワイヤまたはナノピラミッドは、好ましくは、MBEまたはMOVPEにより成長させる。MBE法では、基板/中間層に各反応物の分子ビームが供給されるが、例えば、III族元素とV族元素とを同時に供給することが好ましい。基板/中間層上におけるナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成および成長は、MBE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給できるマイグレーション・エンハンスト・エピタキシー(MEE)または原子層MBE(ALMBE)を使用することでより高度に制御し得る。
【0136】
好ましい技術は、固体ソースMBEであり、ガリウムおよびヒ素等の非常に純度の高い元素を、これらの元素がゆっくりと蒸発(例えば、ガリウム)または昇華(例えば、ヒ素)し始めるまで、別個のエフュージョンセル内で加熱する。その後、ガス状の元素は、基板/中間層上で凝結し、そこで互いに反応し得る。ガリウムおよびヒ素の例では、単結晶GaAsが形成される。「ビーム」という用語の使用は、蒸発した原子(例えば、ガリウム)または分子(例えば、As4またはAs2)が、基板/中間層に到達するまで、互いにまたは真空チャンバーガスと相互作用しないことを意味する。
【0137】
MBEは、バックグラウンド圧力が通常約10-10~10-9Torrの超高真空中で行われる。ナノ構造は、一般的にはゆっくりと成長し、1時間当たり数μmまでの速度等、例えば、約10μmまでの速度で成長する。これにより、ナノワイヤまたはナノピラミッドをエピタキシャル成長させ、構造性能を最大化することができる。
【0138】
MOVPE法において、基板(および任意に中間層)は反応器内に保持され、当該反応器内において、キャリアガスおよび各反応物の有機金属ガス、例えば、III族元素を含む有機金属前駆体およびV族元素を含む有機金属前駆体が、好ましくは同時に基板に供給される。一般的なキャリアガスは、水素、窒素、またはこれら2つの混合物である。基板/中間層上におけるナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成および成長は、MOVPE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給することができるパルス層成長技術を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0139】
[ナノワイヤまたはナノピラミッドの選択領域成長]
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、例えば、III族窒化物ナノワイヤの場合には、選択領域成長(SAG)法により成長させる。MBEの場合は成長チャンバ内、MOVPEの場合は反応器内において、基板温度を対象のナノワイヤまたはナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。MBEの場合、成長温度は300℃~1000℃の範囲であってよい。しかしながら、ナノワイヤの材料の性質に応じた特定の温度が採用される。GaNの場合、好ましい温度は700℃~950℃、例えば、800℃~900℃、810℃等である。AlGaNの場合、その範囲はわずかに高く、例えば、800℃~980℃であり、830℃~950℃等、例えば、850℃である。
【0140】
したがって、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、ナノワイヤ内に異なるIII-V族半導体を含むことができ、例えば、GaN基部に始まり、これにAlGaN成分またはAlGaInN成分が続く等とすることができることが理解されるであろう。
【0141】
ナノワイヤの成長は、Gaエフュージョンセル、窒素プラズマセル、およびドーパントセルのシャッターを同時に開くことで開始され、ドープされたGaNナノワイヤまたはナノピラミッド(本明細書においては「基部(stem)」と呼ぶ)の成長を開始することができる。GaN基部の長さは、10nmから数百ナノメートルの範囲内に保つことができる。その後、必要であれば基板温度を上昇させ、Alシャッターを開いてAlGaNナノワイヤまたはAlGaNナノピラミッドの成長を開始することができる。GaN基部を成長させることなく、基板層上においてAlGaNナノワイヤまたはAlGaNナノピラミッドの成長を開始することができる。n型ドープおよびp型ドープされたナノワイヤまたはナノピラミッドは、当該ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長中に、それぞれ、n型ドーパントセルおよびp型ドーパントセルのシャッターを開くことにより得られる。例えば、ナノワイヤまたはナノピラミッドのn型ドーピングのためのSiドーパントセル、およびナノワイヤまたはナノピラミッドのp型ドーピングのためのMgドーパントセルが挙げられる。
【0142】
エフュージョンセルの温度を使用して成長速度を制御することができる。便利な成長速度は、従来の面(層ごとの)成長中に測定される速度で、1時間当たり0.05~2μm、例えば、1時間当たり0.1μmである。Al/Gaの比は、エフュージョンセルの温度を変えることで変更できる。
【0143】
成長しているナノワイヤまたはナノピラミッドの性質に応じて、分子ビームの圧力を調整することもできる。好適なレベルのビーム等価圧力は、1×10-7~1×10-4Torrである。
【0144】
反応物(例えば、III族原子およびV族分子)間のビームフラックス比は変更可能であり、好ましいフラックス比は、他の成長パラメータおよび成長中であるナノワイヤまたはナノピラミッドの性質によって決まる。窒化物の場合、ナノワイヤまたはナノピラミッドは、常に窒素が豊富な条件下で成長させる。
【0145】
本発明の一実施形態では、2段階成長法等の多段階成長法を採用し、例えば、ナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成およびナノワイヤまたはナノピラミッドの成長を別々に最適化する。
【0146】
MOVPEの場合、大きな利点は、ナノワイヤまたはナノピラミッドを、大幅に速い成長速度で成長させることが可能なことである。この方法は、放射状のヘテロ構造のナノワイヤまたはナノピラミッドおよびマイクロワイヤの成長、例えば、真性AlN/Al(In)GaN多重量子井戸(MQW)、AlGaN電子ブロック層(EBL)、およびp型ドープされた(Al)GaNシェルからなるシェルを有するn型ドープされたGaNコアの成長に有利である。この方法はまた、パルス成長技術、または例えば、V/IIIモル比をより低くし、基板温度をより高くするように成長パラメータを変更した連続成長モード等の技術を用いて、軸方向にヘテロ構造化されたナノワイヤまたはナノピラミッドの成長も可能にする。
【0147】
より詳細には、サンプルを配置した後に反応器内を排気しなければならず、さらに、N2置換により反応器内の酸素および水分を除去する。これは、成長温度でのグラフェンへの損傷を避けるためであり、かつ、前駆体と酸素および水との望ましくない反応を回避するためである。全圧は、50~400Torrになるよう設定する。反応器内をN2置換した後、約1200℃の基板温度でH2雰囲気下において基板の熱的クリーニングを行う。その後、基板温度は、対象のナノワイヤまたはナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、700℃~1200℃の範囲であってもよい。しかしながら、ナノワイヤの材料の性質に応じた特定の温度が採用される。GaNの場合、好ましい温度は、800℃~1150℃であり、例えば、900℃~1100℃であり、1100℃または1000℃等である。AlGaNの場合、その範囲はわずかに高く、例えば、900℃~1250℃であり、1050℃~1250℃等であり、例えば、1250℃または1150℃である。
【0148】
ナノワイヤまたはナノピラミッド成長のための有機金属前駆体は、Gaの場合はトリメチルガリウム(TMGa)またはトリエチルガリウム(TEGa)のいずれか、Alの場合はトリメチルアルミニウム(TMAl)またはトリエチルアルミニウム(TEAl)のいずれか、Inの場合はトリメチルインジウム(TMIn)またはトリエチルインジウム(TEIn)のいずれかとすることができる。ドーパント用の前駆体は、シリコンの場合はSiH4、Mgの場合はビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)またはビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム((MeCp)2Mg)とすることができる。TMGa、TMAl、およびTMInの流量は、5~100sccmの間に維持することができる。NH3の流量は、5~150sccmの間で変化させることができる。
【0149】
特に、気相-固相成長の簡易な使用により、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長を可能とし得る。したがって、MBEの場合、触媒を用いることなく基板に反応物(例えば、InおよびN)を簡易に適用することにより、ナノワイヤを形成し得る。したがって、これは、上述の元素から形成された半導体ナノワイヤまたはナノピラミッドを基板上で直接成長させる本発明のさらに別の態様である。よって、直接という用語は、成長を可能にする触媒のフィルムが存在しないことを意味する。
【0150】
[ナノワイヤまたはナノピラミッドの触媒支援成長]
本発明のナノワイヤまたはナノピラミッドは、触媒の存在下で成長させてもよい。触媒をこれらの孔に導入し、ナノワイヤまたはナノピラミッドを成長させるための核生成部位を提供することができる。触媒は、ナノワイヤまたはナノピラミッドを構成する元素のうちの1つ、いわゆる自己触媒であるか、または、ナノワイヤを構成する元素のいずれとも異なっていてもよい。
【0151】
触媒支援成長の場合、触媒はAuまたはAgであってもよく、あるいは、触媒は、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長に使用される族の金属(例えば、III族金属)、特に、実際のナノワイヤまたはナノピラミッドを構成する金属元素の1つ(自己触媒)であってもよい。したがって、III-V族ナノワイヤまたはIII-V族ナノピラミッドを成長させるための触媒として、III族の別の元素を使用することが可能であり、例えば、Ga-V族ナノワイヤまたはGa-V族ナノピラミッド等の触媒としてGaを用いることが可能である。触媒はAuであるか、または成長が自己触媒(すなわち、Ga-V族ナノワイヤまたはGa-V族ナノピラミッド等の場合はGa)により起こることが好ましい。触媒は、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長のための核生成部位として作用するように、グラフェンおよび任意にマスキング層を介してパターン化された孔内における基板または中間層上に堆積させることができる。これは、層に孔をエッチングした後、マスキング層上に形成された触媒材料の薄膜を設けることで行えることが理想的である。NWまたはナノピラミッドの成長温度まで温度が上昇するにつれて触媒膜が溶融すると、触媒は、基板または中間層上にナノメートルサイズの粒子状の液滴を形成し、これらの液滴が、ナノワイヤまたはナノピラミッドが成長できるポイントを形成する。
【0152】
これは、触媒が液体であり、分子ビームが蒸気であり、かつ、ナノワイヤまたはナノピラミッドが固体成分となることから、気相-液相-固相成長(VLS)と呼ばれる。場合によっては、触媒粒子は、いわゆる気相-固相-固相成長(VSS)機構により、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成長中に固体とすることもできる。ナノワイヤまたはナノピラミッドが(VLS法により)成長するにしたがい、(例えば、金の)液滴は、ナノワイヤの頂部に滞留する。その液滴が、成長後にナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部に滞留することにより、トップ電極と接触する際に主要な役割を果たし得る。
【0153】
上述のように、自己触媒型ナノワイヤまたは自己触媒型ナノピラミッドを製造することも可能である。自己触媒化とは、ナノワイヤまたはナノピラミッドの成分の1つがその成長のための触媒として作用することを意味する。
【0154】
例えば、Ga層をマスキング層に適用し、溶融し、Ga含有ナノワイヤまたはGa含有ナノピラミッドを成長させるための核生成部位として作用する液滴を形成することができる。ここでも、Ga金属部分は、最終的にはナノワイヤの頂部に配置され得る。
【0155】
より詳細には、例えば、MBE成長NWの場合には、Ga/Inフラックスを基板/中間層表面に一定時間供給し、基板の加熱と同時に表面上にGa/In液滴の形成を開始させることができる。その後、基板温度は、対象のナノワイヤまたはナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、300℃~700℃の範囲内とすればよい。しかしながら、ナノワイヤの材料、触媒材料、および基板/中間層材料の性質に応じた特定の温度が採用される。GaAsの場合、好ましい温度は540℃~630℃であり、例えば、590℃~630℃であり、610℃等である。InAsの場合、その範囲はより低く、例えば、420℃~540℃であり、430℃~540℃等であり、例えば、450℃である。
【0156】
ナノワイヤの成長は、触媒膜が堆積され、融解されると同時に、Ga/Inエフュージョンセルおよび対イオンエフュージョンセルのシャッターを開くことによって開始できる。
【0157】
エフュージョンセルの温度を使用して成長速度を制御することができる。便利な成長速度は、従来の面(層ごとの)成長中に測定される速度で、1時間当たり0.05~2μm、例えば、1時間当たり0.1μmである。
【0158】
成長しているナノワイヤまたはナノピラミッドの性質に応じて、分子ビームの圧力を調整することもできる。好適なレベルのビーム等価圧力は、1×10-7~1×10-5Torrである。
【0159】
反応物(例えば、III族原子およびV族分子)間のビームフラックス比は変更可能であり、好ましいフラックス比は、他の成長パラメータおよび成長中であるナノワイヤまたはナノピラミッドの性質によって決まる。
【0160】
反応物間のビームフラックス比は、ナノワイヤの結晶構造に影響を及ぼし得ることが分かっている。例えば、触媒としてAu、成長温度540℃でのGaAsナノワイヤまたはGaAsナノピラミッドの成長、面(層ごとの)成長速度1時間当たり0.6μmに相当するGaフラックス、As4に対して9×10-6Torrのビーム等価圧力(BEP)を用いることにより、ウルツ鉱結晶構造が得られる。これとは対照的に、同じ成長温度でGaAsナノワイヤまたはGaAsナノピラミッドを成長させるが、1時間当たり0.9μmの面成長速度に相当するGaフラックスおよびAs4に対して4×10-6TorrのBEPを用いることにより、亜鉛鉱型結晶構造が得られる。
【0161】
ナノワイヤの直径は、成長パラメータを変えることにより変更できる場合がある。例えば、軸方向へのナノワイヤまたはナノピラミッド成長速度がAs4フラックスにより決定される条件下で自己触媒型GaAsナノワイヤまたは自己触媒型ナノピラミッドを成長させる場合、Ga:As4フラックス比を増加/減少させることにより、ナノワイヤまたはナノピラミッドの直径を増加/減少させることができる。したがって、当業者は、多くの方法でナノワイヤまたはナノピラミッドを操作することができる。さらに、直径は、ナノワイヤまたはナノピラミッドコアの周りにシェルを成長させてコア-シェル形状とすることによっても変化させることができる。
【0162】
よって、本発明の一実施形態では、2段階成長法等の多段階成長法を採用し、例えば、ナノワイヤまたはナノピラミッドの核生成およびナノワイヤまたはナノピラミッドの成長を別々に最適化する。
【0163】
さらに、孔のサイズを制御し、各孔内に確実に1つのナノワイヤまたはナノピラミッドしか成長できないようにすることができる。したがって、マスクの孔1つ当たり、ナノワイヤまたはナノピラミッドが1つだけ成長することが好ましい。最終的に、孔は、孔内に形成される触媒の液滴がナノワイヤまたはナノピラミッドの成長を可能にするのに十分なサイズとすることができる。このようにして、Au触媒を使用した場合であっても、ナノワイヤまたはナノピラミッドの規則的なアレイを成長させることができる。
【0164】
多数のナノワイヤが基板/中間層から成長するにつれて、ナノワイヤは、基板から一定距離の箇所で合体することができる。合体したナノワイヤは、上述のように、ほぼフィルム状に見える場合がある。
【0165】
[トップコンタクト]
光電子デバイスを作製するためには、ナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部は、トップコンタクトを有する必要がある。一実施形態において、従来のトップコンタクト型金属層積層体を使用することができる。
【0166】
一実施形態では、例えば、光反射層が導電性でない場合、トップコンタクトは別のグラフェン層を用いて形成される。そして、本発明は、形成されたナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部にグラフェン層を配置し、トップコンタクトを形成することを含む。グラフェントップコンタクト層は、下層のグラフェン層と実質的に平行であることが好ましい。当該グラフェン層の面積は、下層のグラフェン層の面積と同じである必要はないことが理解されるであろう。ナノワイヤまたはナノピラミッドのアレイを有する基板とのトップコンタクトを形成するために、多数のグラフェン層が必要となる場合がある。
【0167】
使用されるグラフェン層は、グラフェン電気接触層に関して先に詳述したものと同じとすることができる。
【0168】
トップコンタクトの厚さは、20nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、グラフェントップコンタクトの厚さを5nm以下としてもよい。
【0169】
グラフェンが半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドに直接接触する場合、通常、当該グラフェンによりショットキーコンタクトが形成され、コンタクト接合部で障壁が形成されることによって電流の流れが妨げられる。この問題のため、半導体上に堆積したグラフェンについての研究は、主としてグラフェン/半導体ショットキー接合部の使用に関するものに限られていた。
【0170】
形成されたナノワイヤまたはナノピラミッドへのトップコンタクトの適用は、任意の便利な方法によって実現できる。グラファイト層を基板に移すための方法として上述したものと同様の方法を用いてもよい。キッシュグラファイト、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)、またはCVDに由来するグラファイト層は、機械的方法または化学的方法により剥離すればよい。その後、これらの層を、HFまたは酸溶液等のエッチング溶液に移し、剥離プロセスで生じるあらゆる夾雑物およびCu(Ni、Pt等)(特に、CVD成長グラファイト層の場合)を除去することができる。エッチング溶液を脱イオン水等の他の溶液にさらに交換し、グラファイト層を洗浄することができる。次いで、グラフェン層を、形成されたナノワイヤまたはナノピラミッド上に容易に移動させ、トップコンタクトとすることができる。ここでも、剥離および移動プロセスの間、薄いグラフェン層を支持するために電子ビームレジストまたはフォトレジストを使用してもよく、これは、堆積後に容易に除去することができる。
【0171】
グラフェン層は、ナノワイヤアレイまたはナノピラミッドアレイの上面に移される前に、エッチングおよび水洗してから完全に乾燥させることが好ましい。グラフェン層とナノワイヤまたはナノピラミッドとの接触を強化するために、この「乾式」移動中に穏やかな圧力および熱を加えることができる。
【0172】
あるいは、グラフェン層は、溶液(例えば、脱イオン水)と共に、ナノワイヤまたはナノピラミッドアレイの頂部に移動させることができる。溶液が乾燥するにつれて、グラフェン層は、その下にあるナノワイヤまたはナノピラミッドと自然に密着する。この「湿式」移動法では、乾燥プロセス中の溶液の表面張力により、ナノワイヤまたはナノピラミッドアレイの湾曲または破損が生じる可能性がある。これを防ぐために、この湿式法を使用する場合には、より強固なナノワイヤまたはナノピラミッドを用いることが好ましい。直径80nmを超えるナノワイヤが好適であり得る。臨界点乾燥技術を使用し、乾燥プロセス中に表面張力により生じる損傷を回避してもよい。これを防止する別の方法は、ナノワイヤまたはナノピラミッド間の充填材として電気絶縁性の支持体を使用することである。
【0173】
ナノワイヤまたはナノピラミッドアレイ上に水滴があり、それを除去する試みが、例えば、窒素ブローを伴う場合には、蒸発により水滴は小さくなるものの、水滴は表面張力により常に球形を維持しようとする。これにより、水滴の周囲または内部のナノ構造が損傷または破壊される場合がある。
【0174】
臨界点乾燥法により、この問題は回避される。温度と圧力を上昇させることにより、液体と気体との間の相境界を除去することができ、容易に水を除去することができる。
【0175】
グラフェントップコンタクトのドーピングを利用することもできる。グラフェントップコンタクトの主要なキャリアは、ドーピングにより正孔または電子のいずれかとして制御可能である。グラフェントップコンタクトおよび半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドにおけるドーピング型は、同じであることが好ましい。
【0176】
[応用]
半導体ナノワイヤまたは半導体ナノピラミッドは、広範囲にわたる有用性を有する。これらは半導体であるため、半導体技術が有用なあらゆる分野での応用が期待できる。これらは、主に集積ナノエレクトロニクスおよびナノオプトエレクトロニクスの用途に使用される。
【0177】
これらを配置するのに理想的なデバイスとして、太陽電池、LED、または光検出器が挙げられる。考えられるデバイスの一つは、2つの端子として作用する2層のグラフェン層間に挟まれたナノワイヤまたはナノピラミッド太陽電池である。
【0178】
このような太陽電池は、効率的、安価、かつフレキシブルという条件を同時に満たす可能性がある。これは急速に発展している分野であり、これらの有益な材料に関するさらなる応用が、今後数年間に見出されるであろう。同一の概念を用いて、発光ダイオード(LED)、導波管、およびレーザ等の他の光電子デバイスも製造することができる。
【0179】
好ましくは、半導体ナノワイヤまたはナノピラミッドは、LED、特に、UV-LED、中でもUV-A型、UV-B型、またはUV-C型LEDにおいて有用性がある。LEDは、通常のデバイスと比べてチップが反転している、いわゆる「フリップチップ」として設計されることが好ましい。
【0180】
LED配列全体は、平均直列抵抗を低減するために分散され離間したフリップチップボンディング用のコンタクトパッドを備えることができる。このようなナノ構造LEDは、ナノワイヤまたはナノピラミッドLEDチップ上のp型コンタクトパッドおよびn型コンタクトパッドの位置に相当する箇所にコンタクトパッドを有するキャリア上に配置し、はんだ付け、超音波溶接、ボンディング、または導電性接着剤を使用して取り付けることができる。キャリア上のコンタクトパッドは、LEDパッケージの適切な電源リード線に電気的に接続することができる。
【0181】
このようなナノワイヤベースのLEDデバイスは、通常、機械的支持体および電気的接続を提供するキャリア上に搭載される。効率の向上したLEDを構成するための1つの好ましい方法は、フリップチップデバイスを作製することである。反射率の高い光反射層を、ナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部に形成する。支持体は、光が前記基板層を透過して出射されるのに十分な透明性を有することが好ましい。中間層が存在する場合には、同様の考察が中間層にも適用される。特定の実施形態では、中間層は透明である。ナノワイヤまたはナノピラミッドの頂部に向けられた放出光は、反射層に当たると反射され、これにより、構造体から離れる光に対し、明らかに優位な方向を作り出す。構造体を製造するこの方法により、放出光の大部分を所望の方向に導くことが可能となり、LEDの効率が高められる。したがって、本発明は、可視LEDおよびUV-LEDの製造を可能にする。
【0182】
本発明はまた、デバイスが光を吸収し、光電流を生成する光検出器に関する。光反射層は、光検出を向上させるために、デバイスへ入射した光を反射してナノワイヤまたはナノピラミッドへと戻すことができる。
【0183】
本発明は、別の態様において、発光ダイオードデバイスであって、
サファイア、Si、SiC、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物または窒化物のマスキング層と、を備え、
ここで、前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含み、また、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の頂部と電気的に接触している光反射層であって、任意に電極として機能する光反射層と、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の頂部と電気的に接触している任意の電極であり、前記光反射層が電極として機能しない場合には当該第2の電極が必須である電極と、を備え、
使用時には、前記デバイスから、前記光反射層と実質的に反対方向に光が放出される、発光ダイオードデバイスを提供する。
【0184】
したがって、本発明は、別の態様において、光検出デバイスであって、
サファイア、Si、SiC、またはIII-V族半導体の基板上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物または窒化物のマスキング層と、を備え、
ここで、前記グラフェン層および前記マスキング層を貫通して前記基板に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含み、また、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の頂部と接触している電極であり、任意に光反射層の形態である電極を備え、
使用時に、前記デバイスに光が吸収される、光検出デバイスを提供する。
【0185】
本発明は、別の態様において、発光ダイオードデバイスであって、
サファイア、Si、SiC、Ga23、もしくはIII-V族半導体基板上に直接担持されるか、または前記基板の上面に直接配置されたIII-V族半導体中間層上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物、窒化物、またはフッ化物の任意のマスキング層と、を備え、
ここで、前記グラフェン層および前記任意のマスキング層を貫通して前記基板/中間層に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板/中間層から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含み、また、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の上面と電気的に接触している光反射層であって、任意に電極として機能する光反射層と、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の頂部と電気的に接触している任意の電極であり、前記光反射層が電極として機能しない場合には当該第2の電極が必須である電極と、を備え、
使用時には、前記デバイスから、前記光反射層と実質的に反対方向に光が放出される、発光ダイオードデバイスを提供する。
【0186】
本発明は、別の態様において、光検出デバイスであって、
サファイア、Si、SiC、Ga23、もしくはIII-V族半導体基板上に直接担持されるか、または前記基板の上面に直接配置されたIII-V族半導体中間層上に直接担持されたグラフェン層と、
前記グラフェン層の上面に直接設けられた酸化物、窒化物、またはフッ化物の任意のマスキング層と、を備え、
ここで、前記グラフェン層および前記任意のマスキング層を貫通して前記基板/中間層に達する複数の孔が存在し、
複数のナノワイヤまたはナノピラミッドが前記孔内で前記基板/中間層から成長し、前記ナノワイヤまたはナノピラミッドが、少なくとも1つの半導電性III-V族化合物を含み、また、
前記ナノワイヤまたはナノピラミッドの少なくとも一部の上面と接触している電極であり、任意に光反射層の形態である電極を備え、
使用時に、前記デバイスに光が吸収される、光検出デバイスを提供する。
【0187】
本発明のデバイスは、デバイスへの電荷の通過を可能にする電極を備えていることが理解されるであろう。
【0188】
ここで、以下に述べる非限定的な実施例および図面と関連させ、本発明についてさらに説明する。
【0189】
[図面の簡単な説明]
図1図7は、結晶性基板/中間層上のグラフェンをホールマスクとして用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法を用いて製造したLEDについての実験結果に関する。図8図16は、結晶性基板/中間層上のグラフェン上へのホールマスク層の堆積を用いて位置決めしたナノワイヤ/ナノピラミッドと、この方法で製造したLEDについての実験結果に関する。
【0190】
図1(事例1.1)は、孔がエッチングされたグラフェンマスク層を担持する結晶基板/中間層上でエピタキシャル成長した、位置決めされたフラットチップナノワイヤを示す。前記ナノワイヤは、まず、グラフェンの孔を通して、基板/中間層上にエピタキシャルに核生成する。前記ナノワイヤは、軸方向および放射状の両方に成長を続けつつ、基板/中間層とのエピタキシャルな関係を維持しながらグラフェン層の上面でも成長する。グラフェン層は、グラフェン表面とのナノワイヤ接触と、グラフェン孔の縁部との接触の両方により、ナノワイヤとの電気的接触を形成する。したがって、グラフェン層は導電性透明電極を形成する。ナノワイヤは、軸方向または放射状のnip/pin接合ナノワイヤデバイス構造をそれぞれ作製するために、軸方向または放射状のいずれかのヘテロ構造で成長させることができる。放射状のnip/pin接合ナノワイヤデバイス構造の場合、n/pナノワイヤコアおよびp/nナノワイヤシェルの間の短縮を回避するために、グラフェン上のp/nナノワイヤシェル層の成長を回避しなければならない(間隙が必要)。
【0191】
図2(事例1.2)は、図1と類似の図であり、ナノワイヤがピラミッド型の先端を有する点のみが相違する。図2は、孔がエッチングされたグラフェンマスク層を担持する結晶基板/中間層上でエピタキシャル成長した、先端がピラミッド型の位置決めされたナノワイヤを示す。図3(事例1.3)は、図2の軸方向nip接合デバイスに類似するが、図3のナノワイヤは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。したがって、図3は、孔がエッチングされたグラフェンマスク層を担持する結晶基板/中間層上でエピタキシャル成長した、先端がピラミッド型の位置決めされたナノワイヤを示すが、当該ナノワイヤは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。
【0192】
図4(事例1.4)は、図3と類似の図であるが、合体したナノワイヤではなく、合体したナノピラミッドを示している。したがって、図4は、孔がエッチングされたグラフェンマスク層を担持する結晶基板/中間層上でエピタキシャル成長した、位置決めされたナノピラミッドを示し、前記ナノピラミッドは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。
【0193】
図5は、サファイア(0001)基板上のグラフェンホールマスク層上でのナノピラミッドの成長を示している。成長した構造は、合体した軸方向nnip接合GaN/AlGaNナノピラミッド発光ダイオード(LED)構造である(上記図4で概略的に示している)。図5aは、n-AlGaNナノピラミッドの初期成長後に撮影された上面SEM画像であり、図5bは、n-AlGaN/n-AlGaN/i-GaN/p-AlGaNナノピラミッドLED構造が完全に成長した後に撮影された上面SEM画像である。
【0194】
図6は、50μm×50μmサイズのフリップチップLEDへと加工された、図5bに示すサンプルのデバイス特性を示す。(a)は電流-電圧曲線、(b)は360nmで発光を示す、対応するLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルである。
【0195】
図7は、AlN/サファイア(0001)基板上のグラフェンホールマスク層上でのナノピラミッドの成長を示している。成長した合体構造は、軸方向nnip接合GaN/AlGaNナノピラミッド発光ダイオード(LED)の構造である(上記図4で概略的に示している)。図7aは、n-GaNナノピラミッドの初期成長後に撮影された上面SEM画像であり、図7bは、n-GaN/n-AlGaN/i-GaN/p-AlGaNナノピラミッドLED構造が完全に成長した後に撮影された上面SEM画像である。図7cは、7つの位置決めされたn-GaNナノピラミッドの上面SEM画像を示し、リモートエピタキシーによってグラフェンマスク上に核生成された1つのn-GaN三角形ベースのナノピラミッドを示す。ナノアイランドは、その3つのファセットが、六角形のナノピラミッドの6つのファセットのうちの3つのファセットの向きと平行になるように核生成されていることがわかる。図7dは、50μm×50μmサイズのフリップチップLEDへと加工された、図7bに示すサンプルの電流-電圧曲線を示す。
【0196】
図8(事例2.1)は、グラフェンの上面にマスク層を担持する結晶性基板/中間層上にエピタキシャルに成長した位置決めされた先端が平坦なナノワイヤを示し、マスク層およびグラフェン層の両方を貫通する孔がエッチングされ、その下の結晶性基板/中間層を露出させる。前記ナノワイヤは、まず、マスク層の孔を通して、結晶性基板/中間層上にエピタキシャルに核生成する。前記ナノワイヤは、軸方向および放射状の両方に成長を続けつつ、基板/中間層とのエピタキシャルな関係を維持しながらマスク層の上面でも成長する。グラフェン層は、グラフェン孔の縁部とのナノワイヤ接触により、ナノワイヤとの電気的接触を形成する。したがって、グラフェン層は導電性透明電極を形成する。ナノワイヤは、軸方向または放射状のnip/pin接合ナノワイヤデバイス構造をそれぞれ作製するために、軸方向または放射状のいずれかのヘテロ構造で成長させることができる。
【0197】
図9(事例2.2)は、図8と類似の図であり、ナノワイヤがピラミッド型の先端を有する点のみが相違する。したがって、図9は、グラフェンの上面にマスク層を担持する結晶性基板/中間層上にエピタキシャルに成長した、先端がピラミッド型の位置決めされたナノワイヤを示し、マスク層およびグラフェン層の両方を貫通する孔がエッチングされ、その下の結晶性基板/中間層を露出させる。
【0198】
図10(事例2.3)は、図9の軸方向nip接合ヘテロ構造に類似するが、図10のナノワイヤは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。したがって、図10は、グラフェンの上面にマスク層を担持する結晶性基板/中間層上にエピタキシャルに成長した、先端がピラミッド型の位置決めされたナノワイヤを示し、マスク層およびグラフェン層の両方を貫通する孔がエッチングされ、その下の結晶性基板/中間層を露出させるが、当該ナノワイヤは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。図11(事例2.4)は、図10と類似の図であるが、合体したナノワイヤではなく、合体したナノピラミッドを示している。したがって、図11は、グラフェンの上面にマスク層を担持する結晶性基板/中間層上にエピタキシャルに成長した、位置決めされたナノピラミッドを示し、マスク層およびグラフェン層の両方を貫通する孔がエッチングされ、その下の結晶性基板/中間層を露出させるが、当該ナノピラミッドは、さらなるn-AlGaNナノワイヤシェル層が成長した結果、完全に合体している。
【0199】
図12は、サファイア(0001)基板上に担持されたグラフェン上に堆積された酸化ケイ素ホールマスク層を用いたナノワイヤ成長を示す。成長させた合体構造は、軸方向nnip接合GaN/AlGaNナノワイヤ発光ダイオード(LED)構造である(上記の図10に概略的に記載されている)。図12aは、n-AlGaNナノワイヤの初期成長後に撮影された鳥瞰SEM画像であり、図12bは、n-AlGaN/n-AlGaN/i-GaN/p-AlGaNナノワイヤLED構造の完全な成長後に撮影された鳥瞰SEM画像である。
【0200】
図13は、50μm×50μmのサイズのフリップチップLEDに加工された、図12bに示されるサンプルのデバイス特性を示す。(a)は電流-電圧曲線、(b)は372nmでの発光を示す、対応するLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルである。
【0201】
図14(事例2.2)は、酸化ケイ素層とグラフェンとを組み合わせたホールマスクを用いたサファイア(0001)基板上でのAlGaNナノワイヤの直接成長と、酸化シリコン層をホールマスクとして用いたグラフェン上での直接成長とを対比している。図14aおよび図14bは、本発明において生じる成長を示す。ここで、AlGaNナノワイヤは、サファイア基板上で直接成長させる。ナノワイヤは、形態が均一であり、かつ、面内配向が同一である。角部が対向し(図14a)、ファセットが対向している(図14b)。対照的に、図14cは、酸化ケイ素マスクを用いてグラフェン上で直接成長させた場合に生じるナノワイヤ構造を示す。ナノワイヤは、形態が不均一であり、かつランダムな面内配向を有する。
【0202】
図15(事例3.1)は、酸化シリコンマスキング層にエッチングされた孔がグラフェン層においてエッチングされた孔よりも大きい実施形態を示している。これにより、下層のグラフェン層が露出し、特に、放射状ナノワイヤコア-シェル型デバイス構造について、軸方向および/または放射状にヘテロ構造化されたナノワイヤとのより良好な電気的接触が可能となる。
【0203】
図16(事例3.2)は、図15と類似の図であるが、ナノピラミッドを示している。
【0204】
[実施例]
[位置決めされたAlGaNのNW/NPを成長させる実験手順]
銅箔上にグラフェンをCVD法で成長させ、続いて、実験のため、サファイア(0001)基板(図5、12、14に示す成長の場合)またはAlN/サファイア(0001)基板(図7に示す成長の場合)上に転写した。図12および図14に示す実験では、グラフェン層上に厚さ30~50nmの酸化ケイ素(SiO2)マスク層を堆積した。電子ビームリソグラフィーを用いて、孔のパターニングを行った。SiO2マスク層およびグラフェン層のエッチングを、ウェットエッチングとドライエッチングを併用して行い(図12および図14の実験の場合)、グラフェン層のエッチングをドライエッチングにより行った(図5および図7の実験の場合)。このプロセスにより、サファイア基板(図5、12、および14に示す成長の場合)またはAlNテンプレート表面(図7に示す成長の場合)が、孔の中に露出する。ナノワイヤ/ナノピラミッドの成長は、MOCVD反応器内で行った。Al、Ga、およびNの前駆体として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、およびアンモニア(NH3)をそれぞれ用いた。n型ドーピングのため、n-AlGaN(図5a、図12a、図14に示す成長の場合)またはn-GaN(図7aおよび図7cに示す成長の場合)のNW/NPの成長中に、シランを供給した。n-AlGaN/n-AlGaN(図5bおよび図12bに示す成長の場合)またはn-GaN/n-AlGaN(図7bに示す成長の場合)のNW/NPを成長させた後、完全なLED構造を成長させるために、真性GaN活性層、次いでp-AlGaN層およびp-GaN層を成長させた。p型ドーピングのためのMgの前駆体として、ビス-シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を使用した。Mgドーパントは、N2環境下でのアニーリングプロセスにより活性化した。
【0205】
[グラフェン上およびサファイア上で直接NWを成長させた場合の比較]
図14(a)は、図12(a)に示すものと同一の位置決めAlGaN NWの上面SEM画像を示す。ここでは、六角形のNWの角部が対向している。図14(b)は、図14(a)と同じ成長条件を使用して得た、位置決めされたAlGaN NWの上面SEM画像を示しているが、電子ビームリソグラフィー中に、ホールパターンを面内サファイア表面配向に対して30°回転させた。ここでは、六角形のNWの縁部が対向している。いずれの場合も(図14(a,b))、NWは均一であり、かつ同一の面内配向を有している。サファイア上で直接成長させたNWと、グラフェン上で直接成長させたNWとを比較するため、さらに1つのホールパターンサンプルを用意した。この場合、グラフェンは孔内でエッチングされていない、すなわち、サファイア基板は孔内で露出していない。図14(c)は、図14(a,b)と同じ成長条件を用いてグラフェン上で直接成長させた、AlGaNのNWの上面SEM画像を示す。NWは不均一であり、かつ面内方位がランダムであることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】